説明

入射光調節装置

【課題】形状記憶素材を用いること自体による小型化・薄型化のみならず、絞り羽根に平行な方向における面積も低減することのできる入射光調節装置を提供する。
【解決手段】開口を有する第1の基板101に対して回転軸を中心に回転することで挿入・退避動作を行う入射光調節手段である絞り環部108と絞り環部108に連結して第1の基板101の外周から突出したリンク部110と、一端がリンク部110またはリンク結合部112に、他端が第1の基板101の第1の部位にそれぞれ固定され、基板101の外周に沿って配置された第1の形状記憶合金コイル116とを有し、第1の形状記憶合金コイル116の変形によって絞り環部108が挿入・退避動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光調節装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯電話や内視鏡に用いられる超小型撮像機構には、絞り調節機能を持たない単純な構成の光学系が適用されてきたが、近年になって小型撮像素子の多画素化に伴い、高画質化のための超小型絞り調節機構の要望が高まっている。このような超小型撮像機構に適用できる光学絞り装置の例として、特許文献1(特開2005−128450)に開示されている絞り調節機構がある。この絞り調節機構について、図5を用いて説明する。図5は、従来の絞り調節機構の概略構成図である。
【0003】
絞り羽根1、2が地板20に枢着され、羽根1、2の一方端に第1の形状記憶合金3の一端が係止され、連結板7に掛け渡されている。スプリング4a、4bにより一対の絞り羽根1、2は閉じる方向に付勢されている。連結板7には第2の形状記憶合金5の一端が取り付けられ、さらにスプリング6の一端が係止され、連結板7は下方向に付勢されている。SMA駆動回路12で第1の形状記憶合金3を自己発熱させることにより、絞り羽根1、2が動作する。大きな環境変化があっても第2の形状記憶合金5により装置が保護され、また温度変化に依存することなく安定した制御を行うことができる。
【0004】
この絞り調節機構で用いられている形状記憶合金は、従来の絞り装置に適用されてきた電磁ソレノイドなどと比較すると、材料自体がアクチュエータとして機能するので格段に小型化が可能である。また、形状記憶合金とバイアスバネを絞り羽根に平行な平面上に配置することで、非常に薄い絞り装置を構成することが可能となっている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−128450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、形状記憶合金の変位はその長さに比例するため、絞りの開閉に必要なストロークを確保するにはある程度の長さが必要となる。前述の従来の絞り調節機構では、単純に絞り羽根に平行な平面上に形状記憶合金とバイアスバネを直線状に配置している。このため、絞り羽根に平行な方向にある程度の面積を必要としてしまう。この結果、撮像機構の小型化の障害となっていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、形状記憶素材を用いること自体による小型化・薄型化のみならず、絞り羽根に平行な方向における面積も低減することができる入射光調節装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、開口を有する第1の基板に対して回転軸を中心に回転することで挿入・退避動作を行う入射光調節手段と入射光調節手段に連結して第1の基板外周から突出したリンク部と、一端がリンク部またはリンク結合部に、他端が第1の基板の第1の部位にそれぞれ固定され、基板外周に沿って配置された第1の形状記憶素材とを有し、第1の形状記憶素材の変形によって入射光調節手段が挿入・退避動作を行うことを特徴とする入射光調節装置を提供できる。
【0009】
また、本発明の好ましい態様によれば、一端がリンク部に、他端が第1の基板の第2の部位に固定されたバイアスバネが配置されていることが望ましい。
【0010】
さらにまた、本発明の好ましい態様によれば、一端がリンク部に、他端が第1の基板の第2の部位に固定された第2の形状記憶素材が配置され、第1の形状記憶素子もしくは第2の形状記憶素子の変形によって入射光調節手段が挿入・退避することが好ましい。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、第1の基板の、入射光調節手段が配置された側に対向して、所定の間隙をもって配置された第2の基板を有し、第1の基板の外周部端部と、それに対向する第2の基板の外周部端部において第1の形状記憶素子が摺動可能に支持されているとよい。
【0012】
さらに、本発明の好ましい態様によれば、入射光調節手段が第1の基板の開口よりも小さい開口を有する絞り環であることが望ましい。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、入射光調節手段を、透過する光量もしくは波長範囲を制限する光学フィルタとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる入射光調節装置によれば、形状記憶素材を用いること自体による小型化・薄型化のみならず、絞り羽根に平行な方向における面積も低減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1乃至図3を用いて説明する。ここで、図1は第1実施形態に係る入射光調節装置の構成を示す斜視図であり、第1の形状記憶合金コイル116を低温(加熱していない常温)状態を示す図である。図2は、第1実施形態に係る入射光調節装置の構成を示す分解斜視図である。図3は、第1実施形態に係る入射光調節装置の構成を示す斜視図であり、第1の形状記憶合金コイル116を加熱した高温の状態を示す図である。
【0016】
第1の基板101と第2の基板102は所定の間隙を隔てて対向しており、その間隙にブレード103が配置されている。第1の基板101と第2の基板102の中心には入射光を透過するための開口104、105がそれぞれ形成されている。第1の基板101と第2の基板102において、開口104、105に対して、径方向外側には、回転軸挿入孔106、107がそれぞれ形成されている。
【0017】
ブレード103には開口104よりも小さな開口を有する絞り環部(入射光調節手段)108と、回転軸109および二又状(U字状)のリンク部110が形成されている。また、回転軸109は、回転軸挿入孔106、107に挿入され、リンク部110は第1の基板101および第2の基板102の外周から突出している。
【0018】
第1の基板101と第2の基板102はその外周部端面において基板連結部材111に対して固定されている。また、第1の基板101と第2の基板102の外周部端面にはリンク結合部材(リンク結合部)112が回動摺動可能に配置されている。
【0019】
リンク結合部材112は下板113と上板114が連結軸115で連結された形状となっており、下板113の端面が第1の基板101の外周端面に回動摺動し、上板114の端面が第2の基板102の外周端面に回動摺動する構成となっている。
【0020】
また、連結軸115は二又状のリンク部110で挟まれており、リンク結合部材112が第1の基板101、第2の基板102に対して回動摺動したときにブレード103は回転軸109を中心に所定の範囲の角度で回転(回動)する。
【0021】
間隙を配して対向する第1の基板101と第2の基板102の間の外周部に沿って、第1の形状記憶合金コイル(第1の形状記憶素材)116が配置され、その一端118は基板連結部材111に、他端119はリンク結合部材112にそれぞれ結合されている。
【0022】
また、第1の形状記憶合金コイル116が配置されたのとは反対側の第1の基板101と第2の基板102の外周部に沿ってバイアスバネ117が配置され、その一端120は基板連結部材111に、他端121はリンク結合部材112にそれぞれ結合されている。
【0023】
ここで、第1の形状記憶合金コイル116とバイアスバネ117は、第1の基板101と第2の基板102の間隙に少なくとも一部がはめ込まれ、第1の基板101と第2の基板102の外周面に対して摺動可能な状態となっている。この構成により、第1の基板101と第2の基板102は、第1の形状記憶合金コイル116とバイアスバネ117が湾曲した状態で伸縮するためのガイドとして機能する。
【0024】
特に図示しないが、第1の形状記憶合金コイル116にはリード線が接続されて、通電によって加熱することができる。第1の形状記憶合金コイル116は、通電加熱により所定温度(例えば60°C〜80°C)に達すると、通電前の状態に関わらず、所定長さに収縮する。一方、通電加熱していない状態の第1の形状記憶合金コイル116は、後述するように、外力、例えばバイアスバネ117の力によって伸縮可能である。
図1に示す、第1の形状記憶合金コイル116に通電加熱していない低温状態では、第1の形状記憶合金コイル116は伸縮可能である。そして、バイアスバネ117が収縮しようとする弾性力によって伸張する。これに伴ってリンク結合部材112が回動する。このため、絞り環部108は開口104から退避した部位に位置している。
【0025】
これに対して、第1の形状記憶合金コイル116を加熱して高温状態とすると、バイアスバネ117の弾性力に抗して第1の形状記憶合金コイル116が収縮する。そして、リンク結合部材112を回動摺動させる。この結果、図3に示すように、絞り環部108が開口104と開口105との間に挿入される。従って、開口104を覆う状態となり、これにより第1実施形態の入射光調節装置の開口径を変化させる。
【0026】
また、第1の形状記憶合金コイル116への通電加熱を停止して再び低温(常温)状態とすると、第1の形状記憶合金コイル116はバイアスバネ117の収縮力によって伸張する。そして、絞り環部108は再び図1に示したように開口104に対して退避した部位に位置する。
【0027】
なお、特に図示しないが、第1の基板101のブレード103側の主面、又は、第2の基板102のブレード103側の主面の所定部位には2つのストッパ突起が設けられている。これら2つのストッパ突起がブレード103に接触することによって、ブレード103の回転を規制する。これにより、ブレード103の回転範囲を、図1に示した状態と図3に示した状態の範囲に制限することができる。
【0028】
このように、第1実施形態の入射光調節装置にあっては、第1の形状記憶合金コイル116への通電加熱のON/OFFによって開口径を変化させることができるので、開口径を変化させる絞り装置として機能させることができる。
【0029】
また、第1実施形態における絞り環部108を光学フィルタに置き換えることによって、透過光量もしくは透過波長域を変える光学フィルタ脱着装置として用いることも可能である。さらに、ブレード103と同様に回動するブレードを複数設けて、それぞれに、絞り環部や光学フィルタを形成することもできる。これにより、例えば、絞り環部と光学フィルタを併存させるタイプ、複数の絞り環部を備えて絞り径を複数段階、例えば2段階に設定可能とするタイプ、又は、複数の光学フィルタを設けて複雑な効果を発揮可能とするタイプを実現することができ、高機能の入射光調節装置を提供することができる。
【0030】
さらにまた、第1の基板101及び第2の基板102を1枚の基板に置き換えることにより部品点数を削減することができる。この場合は、第1の形状記憶合金コイル116及びバイアスバネ117は、1枚の基板の外周に沿って回動する。
【0031】
また、第1の形状記憶合金コイル116及びバイアスバネ117を、リンク結合部材112を介さずに、リンク部110に直接結合するとリンク結合部材112を省略できるので、部品点数を削減することができる。
【0032】
以上説明したように、第1実施形態の入射光調節装置においては、第1の形状記憶合金コイル116が装置の外周に沿って湾曲して配置されている。このため、小さな面積で大きな長さの形状記憶合金コイルを配置できる。これにより、絞り環部108を変位させるのに必要なストロークを最小限の面積で得ることができる。また、第1の形状記憶合金コイル116とバイアスバネ117は絞り環が形成されたブレード103と同一面に配置されていることから装置厚さを非常に小さくすることができる。加えて、第1の形状記憶合金コイル116とバイアスバネ117に対して、対向する一対の基板101、102の端部が摺動のガイドとして機能することから、少ない部品点数で効率的な配置が可能となり、結果として小型化に寄与できる。
【0033】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について図4を用いて説明する。第2実施形態においては、第1実施形態のバイアスバネ117に代えて、第2の形状記憶合金コイル(第2の形状記憶素材)122を用いている。第2の形状記憶合金コイル122は、バイアスバネ117と同様に、一端123が基板連結部材111に、他端124がリンク結合部材112にそれぞれ結合されている。また、特に図示しないが第2の形状記憶合金コイル122にもリード線が接続され、第1の形状記憶合金116とは独立に通電加熱ができる。なお、第2の形状記憶合金コイル122以外の部材については、第1実施形態と同じ部材には同じ符号を付する。
【0034】
図4は、第2実施形態に係る入射光調節装置の構成を示す斜視図であり、第2の形状記憶合金コイル122が通電加熱されて高温となり収縮している一方、第1の形状記憶合金コイル116は加熱されていない低温(常温)の状態を示す図である。図4に示す状態では、第2の形状記憶合金コイル122が収縮しようとする力によって第1の形状記憶合金コイル116は伸張する。これに伴ってリンク結合部材112が回動して、絞り環部108は開口104から退避した部位に位置する。ここで第2の形状記憶合金コイル122への通電加熱をやめて第1の形状記憶合金コイル116に通電加熱すると、第1の形状記憶合金コイル116が収縮するとともに第2の形状記憶合金コイル122は伸張する。これにより、絞り環部108は、開口104と開口105との間に挿入されて、開口104を覆う部位に位置することになる。このように、第1の形状記憶合金コイル116及び第2の形状記憶合金コイル122のいずれかに通電加熱することによって、第1実施形態の場合と同様に開口径を変化させることが可能になる。
【0035】
第2実施形態では、第1の形状記憶合金コイル116と第2の形状記憶合金コイル122を別体としたが、これらに代えて一体の形状記憶合金コイルを用い、その両端が基板連結部材111に接続され、中間部位がリンク結合部材112に固定されている形態としてもよい。この場合は形状記憶合金コイルの中間部位を接地して、いずれかの端部に電圧を印加することで形状記憶合金コイルのいずれか半分の領域を加熱・収縮させることで、第2実施形態と同様に絞り環部108を変位させることが可能となる。このように一体の形状記憶合金コイルを用いる方式はアセンブリを単純化させる点で好ましい。
【0036】
なお、第2実施形態にあっても第1実施形態と同様に、絞り環部108を光学フィルタに置き換えることによって、透過光量もしくは透過波長域を変える光学フィルタ脱着装置として用いることも可能である。また、その他の変形例、効果も第1実施形態と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明にかかる入射光調節装置は、小型・薄型の絞り調節機構が要求される機器に有用であり、特に、内視鏡や携帯電話のカメラに適している。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1実施形態に係る入射光調節装置において第1の形状記憶合金コイルを低温状態(加熱していない常温状態)を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る入射光調節装置の構成を示す分解斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る入射光調節装置において第1の形状記憶合金コイルを加熱した高温状態を示す斜視図である。
【図4】第2実施形態に係る入射光調節装置において、第2の形状記憶合金コイルは加熱されて高温となり、第1の形状記憶合金コイルは加熱されずに低温(常温)である状態を示す斜視図である。
【図5】従来の絞り調節機構の概略構成図である。
【符号の説明】
【0039】
101 第1の基板
102 第2の基板
103 ブレード
108 絞り環部(入射光調節手段)
110 リンク部
111 基板連結部材
112 リンク結合部材(リンク結合部)
116 第1の形状記憶合金コイル(第1の形状記憶素材)
117 バイアスバネ
122 第2の形状記憶合金コイル(第2の形状記憶素材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する第1の基板に対して回転軸を中心に回転することで挿入・退避動作を行う入射光調節手段と、
前記入射光調節手段に連結して第1の基板外周から突出したリンク部と、
一端が前記リンク部またはリンク結合部に、他端が前記第1の基板の第1の部位にそれぞれ固定され、基板外周に沿って配置された第1の形状記憶素材とを有し、
前記第1の形状記憶素材の変形によって入射光調節手段が挿入・退避動作を行うことを特徴とする入射光調節装置。
【請求項2】
一端が前記リンク部に、他端が前記第1の基板の第2の部位に固定されたバイアスバネが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の入射光調節装置。
【請求項3】
一端が前記リンク部に、他端が前記第1の基板の第2の部位に固定された第2の形状記憶素材が配置され、前記第1の形状記憶素子もしくは前記第2の形状記憶素子の変形によって前記入射光調節手段が挿入・退避することを特徴とする請求項1に記載の入射光調節装置。
【請求項4】
前記第1の基板の、前記入射光調節手段が配置された側に対向して、所定の間隙をもって配置された第2の基板を有し、
前記第1の基板の外周部端部と、それに対向する第2の基板の外周部端部において前記第1の形状記憶素子が摺動可能に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の入射光調節装置。
【請求項5】
前記入射光調節手段が前記第1の基板の開口よりも小さい開口を有する絞り環であることを特徴とする請求項1に記載の入射光調節装置。
【請求項6】
前記入射光調節手段が、透過する光量もしくは波長範囲を制限する光学フィルタであることを特徴とする請求項1に記載の入射光調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−257028(P2008−257028A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100451(P2007−100451)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】