説明

入札対象推薦装置、システム及び方法

【課題】リスティング広告において、指定された対象を基に、潜在的なより良い代替候補の活用を図る。
【解決手段】受け付けた入札対象のグループ、見込クリック数などの基準評価値、発生が見込まれる総額を表す基準金額を基に、同じグループの入札対象から、同等金額までの合計額、同等以上の評価値となる入札対象を特定し、入札対象の候補として出力することにより、広告主が入力した入札対象よりも低額で同等の効果を見込める入札対象群や、同じ予算でより優れた効果を見込める入札対象群などを提案できる。このため、指定された入札対象を基に、潜在的なより良い代替候補の活用を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リスティング広告に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットにおける検索連動型広告やコンテンツ連動型広告などのリスティング広告では(例えば、非特許文献1参照)、広告主が広告ごとに、広告を表示したいウェブページを指定する語(キーワード)などの入札対象を指定して単価を入札しておく。そして典型的には、その指定された語(「入札語」と呼ぶこととする)に関連する内容のウェブページに単価の高い広告から優先して表示され、その広告がクリックされると広告主に単価に基づく課金が行われる。このような入札語の指定を支援するため、様々な語同士の意味の近さ遠さを予めデータ化しておき、広告主が指定した入札語に近い他の語も候補として推薦する提案は知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ヤフー株式会社、「Yahoo!リスティング広告」、[online]、[2011年6月14日検索]、インターネット〈URL: http://listing.yahoo.co.jp/>
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−267001号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、あるグループ内の語の知名度に格差が大きいなどの場合、広告主が思いつく入札語が一部に偏り、同じグループに関する他の語であればより割安な単価の入札でも表示される見込みがあったり、割安な割にクリック見込数などの評価値がさほど悪くない語があるなど、潜在的なより良い代替候補が存在する場合もあった。
【0006】
しかし、従来は、そのような潜在的なより良い代替候補を活用する技術は存在しなかったため、入札語の偏りは是正されにくかった。このため、一部の語に入札が集中して単価が高騰し、金額的には広告主の負担となるが、その語に対応するウェブページの表示回数すなわち広告在庫は限りがあるため、表示やクリックの量など希望の実績値が達成されにくい問題があった。一方、他の語は、実際は入札語として指定する価値があっても気付かれず閑散なままで、対応するウェブページでは広告表示数が乏しかったり単価が低い広告が多くなるなど、広告在庫が有効活用されない問題もあった。
【0007】
この点、本発明者独自の新たな着眼によれば、例えば、クラシック音楽の作曲家名「チャイコフスキー」に入札している広告主はチャイコフスキーに限ってCDを販売したいだけではなく、クラシック音楽全般について商品を販売したいような場合も多く考えられる。そのような場合、クラシック音楽全般について入札対象候補を提示するのは有効と考えられる。すなわち、「チャイコフスキー」に入札している人に、他のクラシックの作曲家名をサジェストするのは有効な場合も期待できる。
【0008】
上記の課題に対し、本発明の目的は、リスティング広告において、指定された入札対象を基に、潜在的なより良い代替候補の活用を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的をふまえ、本発明の一態様(1)は、リスティング広告の入札の対象となる候補を推薦する入札対象推薦装置であって、入札対象の候補をグループごとに記憶している入札対象記憶手段と、前記入札対象ごとに対応する所定の評価値及び金額を記憶している評価値等記憶手段と、入札対象の指定を受け付ける入札対象受付手段と、前記入札対象記憶手段を参照して前記受け付けた入札対象を含む前記グループを特定するグループ特定手段と、前記評価値等記憶手段から、前記受け付けた入札対象に対応する前記評価値を基準評価値として取得する基準評価値取得手段と、取得された前記基準評価値と、前記評価値等記憶手段に前記受け付けた入札対象に対応して記憶されている前記金額と、に基づいて所定の基準金額を算出する基準金額算出手段と、特定された前記グループに属するものとして前記入札対象記憶手段に記憶されている一以上の前記入札対象であって、その入札対象に対応する前記評価値の合計が前記基準評価値からみて所定範囲で、かつ、その入札対象に対応する前記評価値及び前記金額に基づく額の合計額が前記基準金額からみて所定範囲となる入札対象を入札候補となる対象として特定する入札候補特定手段と、特定された前記入札候補となる対象を出力する入札候補出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様(5)は、上記態様を方法のカテゴリで捉えたもので、リスティング広告の入札の対象となる候補をコンピュータが推薦する入札対象推薦方法であって、入札対象の候補をグループごとに記憶している入札対象記憶手段と、前記入札対象ごとに対応する所定の評価値及び金額を記憶している評価値等記憶手段と、を有するコンピュータが、入札対象の指定を受け付ける入札対象受付処理と、前記入札対象記憶手段を参照して前記受け付けた入札対象を含む前記グループを特定するグループ特定処理と、前記評価値等記憶手段から、前記受け付けた入札対象に対応する前記評価値を基準評価値として取得する基準評価値取得処理と、取得された前記基準評価値と、前記評価値等記憶手段に前記受け付けた入札対象に対応して記憶されている前記金額と、に基づいて所定の基準金額を算出する基準金額算出処理と、特定された前記グループに属するものとして前記入札対象記憶手段に記憶されている一以上の前記入札対象であって、その入札対象に対応する前記評価値の合計が前記基準評価値からみて所定範囲で、かつ、その入札対象に対応する前記評価値及び前記金額に基づく額の合計額が前記基準金額からみて所定範囲となる入札対象を入札候補となる対象として特定する入札候補特定処理と、特定された前記入札候補となる対象を出力する入札候補出力処理と、を実行することを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様(4)である情報処理システムは、上記態様をシステムのカテゴリで捉えたもので、リスティング広告の入札対象の候補をサーバシステムとして推薦する本発明のいずれかの態様における入札対象推薦装置と、前記入札対象推薦装置と通信することでクライアントシステムとしてリスティング広告について入札対象の候補の取得及び表示並びに入札対象への入札を行うための端末と、を通信ネットワークを介して組み合わせたことを特徴とする。
【0012】
このように、受け付けた入札対象のグループ、見込クリック数などの基準評価値、発生が見込まれる総額を表す基準金額を基に、同じグループの入札対象から、同等金額までの合計額、同等以上の評価値となる入札対象を特定し、入札対象の候補として出力することにより、広告主が入力した入札対象よりも低額で同等の効果を見込める入札対象群や、同じ予算でより優れた効果を見込める入札対象群などを提案できる。このため、指定された入札対象を基に、潜在的なより良い代替候補の活用を図ることができる。
【0013】
本発明の他の態様(2)は、上記いずれかの態様において、前記入札候補特定手段は、前記受け付けた入札対象を含む前記グループに属する前記入札対象を、その入札対象に対応する前記評価値及び前記金額に基づく前記額が小さいものから順に取得し、取得した入札対象に対応する前記額の合計が前記基準金額を超える前に最後に取得した入札対象までの前記評価値の合計が前記基準評価値と同等以上であるとき、前記最後に取得した入札対象までの入札対象を前記入札候補となる対象として特定することを特徴とする。
【0014】
このように、受け付けた入札対象と同じグループの入札対象を、その入札対象について発生が見込まれる額が小さい順に、その合計が基準金額に収まる範囲までを取得し、その評価値の合計が基準評価値以上の場合に、取得済の入札対象を入札候補となる対象とすることにより、負荷の軽い簡明なアルゴリズムで迅速に入札候補となる対象を特定することが可能となり、また、最大の広告効果が実現できる。
【0015】
本発明の他の態様(3)は、上記いずれかの態様において、前記候補特定手段は、前記受け付けた入札対象を含む前記グループに属する前記入札対象を、その入札対象に対応する前記評価値及び前記金額に基づく前記額が小さいものから順に取得し、取得した入札対象に対応する前記額の合計が前記基準金額を超えず、かつ、最後に取得した入札対象までの前記評価値の合計が前記基準評価値と同等以上となったとき、前記最後に取得した入札対象までの入札対象を前記入札候補となる対象として特定することを特徴とする。
【0016】
このように、受け付けた入札対象と同じグループの入札対象を、その入札対象について発生が見込まれる額が小さい順に取得し、その合計が基準金額を超えないうちに、その評価値の合計が基準評価値以上に達した時点で、取得済の入札対象を入札候補となる対象とする。これにより、入札対象と同等以上の評価値が見込める最も廉価な入札候補となる対象を、最小の処理負荷と処理時間で特定でき、広告主の需要に迅速に応じることが可能となる。
【0017】
なお、上記の各態様は、明記しない他のカテゴリ(方法、プログラム、システムなど)としても把握することができ、方法やプログラムのカテゴリについては、装置のカテゴリで示した「手段」を、「処理」や「ステップ」のように適宜読み替えるものとする。また、処理やステップの実行順序は本出願に直接明記するものに限定されず、処理順序を変更したり、一部の処理をまとめてもしくは随時一部分ずつ実行するなど、変更可能である。さらに、方法やプログラムのカテゴリにおいて、個々の処理やステップを実行するサーバや端末などのコンピュータは共通でもよいし、処理ごとにもしくはタイミングごとに異なってもよい。加えて、本発明は、後述するさらに具体的な各態様を含むものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、リスティング広告において、指定された対象を基に、潜在的なより良い代替候補の活用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態について構成を示す機能ブロック図。
【図2】本発明の実施形態におけるデータ例を示す図。
【図3】本発明の実施形態における処理手順の概要を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施形態における画面表示例を示す図(指定語の入力)。
【図5】本発明の実施形態における画面表示例を示す図(候補ワードの表示)。
【図6】本発明の実施形態における処理手順を示すフローチャート(金額到達に基づく終了)。
【図7】本発明の実施形態における処理手順を示すフローチャート(評価値充足に基づく終了)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」と呼ぶ)について図に沿って例示する。なお、背景技術や課題などで既に述べた内容と共通の前提事項は適宜省略する。
【0021】
〔1.構成〕
本実施形態は、図1(構成例)に示すように、リスティング広告の入札対象の候補をサーバシステムとして推薦する入札対象推薦装置1(以下「本装置1」や「本装置」とも呼ぶ)と、本装置1と通信することでクライアントシステムとしてリスティング広告について入札対象の候補の取得及び表示、入札対象への入札を行うための端末Tと、を、インターネットや携帯電話網などの通信ネットワークNを介して組み合わせた情報処理システムに関する。
【0022】
このうち本装置1は、コンピュータの構成として少なくとも、CPUなどの演算制御部6と、主メモリや補助記憶装置等の記憶装置7と、通信ネットワークNとの通信手段8(通信ゲートウェイ装置、移動通信網との通信回路、無線LANアダプタなど)と、を有する。また、端末Tは、スマートフォン、携帯電話端末やパーソナルコンピュータなどの情報処理装置で、図示はしないが、上記のようなコンピュータの構成に加え、液晶表示パネルやタッチパネル、ボタンなどのスイッチ類、キーボードやマウスなどを用いた入出力部と、ウェブページを表示するブラウザなどの関連要素を有し、模式的な図1に拘らず、実際はユーザ数に応じ多数存在する。
【0023】
また、本装置1では、記憶装置7に記憶(インストール)した所定のコンピュータ・プログラムが演算制御部6を制御することで、図1に示す各手段などの要素(20,30ほか)を実現する。それら要素のうち情報の記憶手段は、記憶装置7上のファイルなど任意のデータ形式で実現できるほか、ネットワークコンピューティング(クラウド)によるリモート記憶でもよい。また、記憶手段は、データの格納領域だけでなく、データの入出力や管理などの手段を含んでもよい。また、本出願に示す記憶手段の単位は説明上の便宜によるもので、適宜、構成を分けたり一体化できるほか、明示する記憶手段以外にも、各手段の処理データや処理結果などを記憶する記憶手段を適宜用いるものとする。
【0024】
記憶手段のうち、入札対象記憶手段35は、入札対象の候補をグループごとに記憶している手段であり、評価値等記憶手段45は、前記入札対象ごとに対応する所定の評価値及び金額を記憶している手段である。図2は、これら入札対象記憶手段35と評価値等記憶手段45とを一体に構成又は表現したデータ例を示す図である。このデータ例のうち、入札対象記憶手段35にあたる部分では、グループであるカテゴリ(例えば「作曲家」)ごとに、入札対象であるキーワードを複数(例えば「チャイコフスキー」「ハチャトゥリアン」など)記憶している。
【0025】
これら入札対象記憶手段35や評価値等記憶手段45は定期的に更新し、特に、評価値等記憶手段45に記憶されている評価値である見込クリック数や金額である実績単価について、本装置1で入札された広告を広告配信サーバ2で配信した結果に基づいて更新することにより、最新の情報に基づいてより良い代替候補の活用を一層促進できる。
【0026】
また、評価値等記憶手段45にあたる部分では、キーワードごとに対応する評価値として、広告を実際に配信した結果に基づいた見込クリック数(例えば「3回/日」など)を記憶していると共に、キーワードごとに対応する金額として、同様に広告を配信した結果に基づいた実績単価(例えば「126円/クリック」)を記憶している。見込クリック数の例は、キーワードごとにそのキーワードに入札している広告の一日当たりのクリック数の平均である。
【0027】
また、実績単価の例は、キーワードごとにそのキーワードに入札している広告のうち実際に表示された広告に課金されたクリック課金単価を直近所定期間(例えば一日)について平均したものである。あるキーワードに基づく広告配信に係る実際の課金単価は、広告事業者ごとの基準で決定される。
【0028】
また、図1など図中の矢印は、データや制御などの流れについて主要な方向を補助的に示すもので、他の流れを否定するものでも、方向の限定を意味するものでもない。例えばデータをある方向に取得する場合、事前のデータリクエストや事後のアクノリッジ(ACK)が逆方向に送信される。また、記憶手段以外の各手段は、以下に説明するような情報処理の機能・作用を実現・実行する処理手段であるが、これらは説明のために整理した機能単位であり、実際のハードウェア要素やソフトウェアモジュールとの一致は問わない。
【0029】
〔2.作用及び効果〕
上記のように構成された本実施形態における処理手順の概要を図3のフローチャートに示す。
〔2−1.入札語の指定〕
まず、入札対象受付手段20が、広告主などが用いる端末Tから、入札対象の指定を受け付ける(ステップS1)。ここでは「入札対象」は単語(例えば「チャイコフスキー」)などのキーワードであり、入札対象は「入札語」と呼ぶことができる。また、指定を受け付けたキーワードを「指定語」と呼ぶこととする。図4は、広告の入稿すなわち受付に際して指定語の入力を受け付けている画面例であり、テキスト入力欄TXに指定語として任意のキーワードを入力して「次へ進む」ボタンB4をマウスカーソルMなどで操作すると後述するような処理へ進む。
【0030】
なお、本発明を適用する場合の「入札対象」は前記のようなキーワードなどの文字列に限らない。入札対象として、複数の語にそれぞれ関係するテーマやカテゴリなどの概念や、広告内容から言語処理などでコンピュータが判定する概念を単位に、指定や入札を受け付けることにより、指定のキーワードと広告内容の関連性が広告主によりばらつくためにCTRの改善が困難になるという問題が回避できる。
【0031】
〔2−2.カテゴリの特定と基準の取得〕
続いて、グループ特定手段30が、入札対象記憶手段35を参照して(例えば図2)、指定語(例えば「チャイコフスキー」)を含むグループとしてカテゴリ(ここでは「作曲家」)を特定する(ステップS2)。なお、「グループ」は「作曲家」など独立した概念のカテゴリに限らず、同義語や類義語のグループその他、任意の基準によるグループでもよい。
【0032】
そして、基準評価値取得手段40が、評価値等記憶手段45から、指定語(例えば「チャイコフスキー」)に対応する評価値(ここでは見込クリック数とする。例えば「チャイコフスキー」に対応するものは3回/日)を基準評価値として取得する(ステップS3)。また、基準金額算出手段50は、取得された基準評価値(3回/日)と、評価値等記憶手段45に指定語(ここでは「チャイコフスキー」)に対応して記憶されている金額(ここでは実績単価とする。例えば「チャイコフスキー」に対応するものは126円/クリック)と、に基づいて所定の基準金額を算出する(ステップS4)。基準金額の例は、基準評価値と実績単価との積で、例えば、126円×3回=378円のように求める。
【0033】
〔2−3.候補ワードの特定と出力〕
すると、入札候補特定手段60は、特定されたグループに属するものとして入札対象記憶手段35に記憶されている一以上のキーワードを所定基準で入札候補となる対象(ここでは入札対象はキーワードであるから「候補ワード」と呼ぶこととする)として特定し(ステップS5)、このように特定された候補ワードを入札語の候補として入札候補出力手段70が出力する(ステップS6。例えば図5)。
【0034】
そして、出力された候補ワードを、ユーザが入力した指定語に代えるなど活用しつつ、入札受付手段80がリスティング広告への入札を受け付け(ステップS7)、入札の内容を表す入札情報を入札情報記憶手段85に記憶させて広告配信サーバ2による広告配信に供する。但し、入札受付手段80や入札情報記憶手段85といった入札受付に関する構成については必須ではないので省略可能であり、本装置1は、候補ワードの出力まで行って専ら入札の支援のみを行う装置として実現してもよい。
【0035】
〔2−4.候補ワードの基準と例〕
ここで、候補ワードを特定する所定基準としては、一以上のキーワードであって、そのキーワードに対応する見込クリック数の合計(「評価合計」と呼ぶこととする)が基準評価値(例えば3回/日)からみて所定範囲(例えば3回/日以上)で、かつ、そのキーワードに対応する見込クリック数及び実績単価に基づく額(「見込額」と呼ぶこととする)の合計額(「費用合計」と呼ぶこととする)が基準金額(例えば378円)からみて所定範囲(例えば基準金額以下)となるキーワードであることが挙げられる。費用合計は、一以上のキーワードに対応して発生が見込まれる費用の合計を意味する。
【0036】
例えば、図2のデータでは、指定語「チャイコフスキー」の見込クリック数3回/日に対し、「ハチャトゥリアン」「クセナキス」「メトネル」という3語のキーワードの集合は、見込クリック数が3語合計で1回+1回+1回=3回/日で「チャイコフスキー」と同等である。また、指定語「チャイコフスキー」の基準金額378円に対し、「ハチャトゥリアン」の見込額は45円×1回=45円、「クセナキス」の見込額は18円×1回=18円、「メトネル」の見込額は20円×1回=20円、で費用合計が45円+18円+20円=83円となり、「チャイコフスキー」と比べて約22%と大幅に割安である。
【0037】
図5は、図4に例示した画面での入力を受けて、上記のような3語を組み合わせたパッケージとして候補ワードを提示している画面例であり、「変更する」ボタンB5を操作すれば、図4で入力した指定語「チャイコフスキー」が、候補ワード「ハチャトゥリアン」「クセナキス」「メトネル」の組に変更される。なお、この候補ワードの例は3語という複数キーワードのいわばパッケージであるが、候補ワードは必ずしも複数のパッケージでなくてもよく、単数で同等の効果やより安い語を推薦してもよい。
【0038】
また、パッケージなどとして一括出力されたキーワードなどの入札対象のうち任意の一部をユーザが選択する手段を設ければ、ユーザのポリシーなど事情に応じて候補ワードなど入札候補となる対象を柔軟に有効活用することができる。もちろん、もとの指定語(「チャイコフスキー」)を候補ワードで置き換えることに限らず、候補ワードの一部または全部をもとの指定語に入札の対象として追加する操作を入札受付手段80又は他の適宜な手段が受け付けるようにすれば、もとの指定語を指定した意向を尊重しつつ、潜在的なより良い代替候補も活用することで、より効率よく大きな広告効果を実現することができる。
【0039】
また、候補ワードを特定する所定基準において、見込クリック数の合計について基準評価値(例えば3回/日)からみて「所定範囲」とは、基準評価値「以上」に限らず、基準評価値より大きい場合や、基準評価値を基に数値の幅や割合で定める所定の許容下限値まで基準評価値を下回ってもよいなど、柔軟に定めてよい。同様に、費用合計について基準金額(例えば378円)からみて「所定範囲」とは、基準金額「以下」に限らず、基準評価値より小さい場合や、基準金額を基に金額の幅や割合で定める所定の許容上限額まで基準金額を上回ってもよいなど、柔軟に定めてよい。以降の例において「以上」や「超過」などとして例示する数値間の関係についても同様である。
【0040】
〔2−5.基本的な効果〕
以上のように、本実施形態では、受け付けた入札語のグループ(カテゴリ。ステップS2)、見込クリック数などの基準評価値(ステップS3)、発生が見込まれる総額を表す基準金額を基に(ステップS4)、同じグループの入札対象から、同等金額までの合計額、同等以上の評価値となる入札対象を特定し(ステップS5)、入札語の候補として出力する(ステップS6)。これにより、広告主が入力した入札語よりも低額で同等の効果を見込める入札対象群や、同じ予算でより優れた効果を見込める入札対象群などを提案でき、広告主などのユーザは候補ワードを活用し入札を行うことができる(ステップS7)。このため、指定された入札対象を基に、潜在的なより良い代替候補の活用を図ることができ、入札の偏りが緩和できて広告在庫もより満遍なく消化される。
【0041】
なお、基準金額(例えば378円)を上限としながら、基準評価値(例えば3回/日)を満たす候補ワードを特定する場合、候補ワードは複数のキーワードの集合でよいので、同じカテゴリに属するキーワードで見込額が小さいものから取得して候補ワードに加えていく処理手順が考えられる。この処理は、上限の基準金額(例えば378円)まで続けてから終了(金額到達に基づく終了)すれば、候補ワードとするキーワードの集合を最大化して最大の広告効果を実現でき、また、基準評価値(例えば3回/日)が充足された時点で終了(評価値充足に基づく終了)すれば、最大のコスト削減効果が得られる。
以下、これら両方の場合について説明する。
【0042】
〔2−6.金額到達に基づく終了〕
まず、基準金額まで処理を続けて候補ワードを最大化する場合、入札候補特定手段60は、入札語を含むカテゴリに属するキーワードを、そのキーワードに対応する見込クリック数及び実績単価に基づく見込額が小さいものから順に取得し、取得したキーワードに対応する費用合計について基準金額をいったん超えさせ、そのように費用合計が基準金額を超える前に最後に(つまり直前に)取得したキーワードまでの評価合計が基準評価値と同等以上であるとき、最後に取得したキーワードまでのキーワード集合を候補ワードとして特定する。
【0043】
具体的には、図6のフローチャートに示すように、入札候補特定手段60は、まず、入札語を含むグループに属するキーワードを、そのキーワードに対応する評価値及び金額に基づく見込額が小さい順にソートする(ステップS11)。また、入札候補特定手段60は、キーワードに対応する見込額の合計額である費用合計と、キーワードに対応する見込クリック数の合計である評価合計と、候補ワードとして特定するキーワードの集合を記憶しておくためのキーワード集合と、をそれぞれゼロに初期化する(ステップS12)。
【0044】
そして、ソートしたグループ内のキーワードに未処理の残りが有れば(ステップS13:「YES」)を、そのうち見込額が最小のキーワードを一つ新たに取得し(ステップS14)、この新たに取得したキーワードに対応する見込額を費用合計に加算する(ステップS15)。
【0045】
新たに取得したキーワードに対応する見込額を加算しても(ステップS15)費用合計が基準金額を超えなかった場合(ステップS16:「NO」)、新たに取得したキーワードをキーワード集合に加え(ステップS17)、新たに取得したキーワードの見込クリック数を評価合計に加算し(ステップS18)、次のキーワードの処理へ移る(ステップS13)。
【0046】
一方、新たに取得したキーワード(ステップS14)に対応する見込額を加算した結果(ステップS15)、費用合計が基準金額を超過した場合(ステップS16:「YES」)、又は処理すべき残りが無かった場合は(ステップS13:「NO」)、評価合計が基準評価値と同等以上であれば(ステップS19:「YES」)、キーワード集合内のキーワードを候補ワードとして特定する(ステップS20)。
【0047】
費用合計が基準金額を超過した時点において(ステップS16:「YES」)、その超過を招いたキーワードはまだキーワード集合に加えられて(ステップS17)いない。このため、その時点のキーワード集合を候補ワードとすることで、費用合計が基準金額を超える前に最後に取得したキーワードまでのキーワード集合すなわち基準金額に収まる範囲までのキーワード集合を候補ワードとして特定したことになる。また、基準評価値と同等以上と判断された評価合計には(ステップS19)、新たに取得したキーワードの見込クリック数は加算(ステップS18)されていないので、候補ワードとして特定されたキーワード集合、すなわち最後に取得したキーワードまでのキーワード集合に係る評価合計は基準評価値と同等以上である。
【0048】
なお、費用合計が基準金額を超過した場合(ステップS16:「YES」)、又は処理すべき残りが無くなった場合(ステップS13:「NO」)において、評価合計が基準評価値と同等以上でない場合(ステップS19:「NO」)、候補ワード無しという処理結果となる(ステップS21)。
【0049】
このように、入札語と同じグループのキーワードを、そのキーワードについて発生が見込まれる見込額が小さい順に(ステップS11,S14)、その費用合計が(ステップS15)基準金額に収まる範囲までを(ステップS16:「NO」)取得し(ステップS14)、その見込クリック数の合計が(ステップS18)基準評価値以上の場合に(ステップS19:「YES」)、取得済のキーワード集合を候補ワードとすることにより(ステップS20)、負荷の軽い簡明なアルゴリズムで迅速に入札候補となる対象を特定することが可能となり、また、最大の広告効果が実現できる。
【0050】
〔2−7.評価値充足に基づく終了〕
一方、評価値の充足により処理を終了してコスト抑制を優先する場合、入札候補特定手段60は、入札語を含むカテゴリに属するキーワードを、そのキーワードに対応する見込クリック数及び実績単価に基づく見込額が小さいものから順に取得し、取得したキーワードに対応する見込額の費用合計が基準金額を超えず、かつ、最後に取得したキーワードまでの見込クリック数の合計である評価合計が基準評価値と同等以上となったとき、最後に取得したキーワードまでのキーワード集合を候補ワードとして特定する。
【0051】
具体的には、図7のフローチャートに示すように、入札候補特定手段60が、まず、入札語を含むグループに属するキーワードを見込額が小さい順にソートし(ステップS31)、費用合計、評価合計、キーワード集合を初期化する(ステップS32)点は、金額到達に基づく終了(図5)の場合と同様である。
【0052】
そして、入札候補特定手段60は、ソートしたグループ内のキーワードに未処理の残りが有れば(ステップS33:「YES」)を、そのうち見込額が最小のキーワードを一つ新たに取得し(ステップS34)、この新たに取得したキーワードに対応する見込額を費用合計に加算する(ステップS35)。
【0053】
新たに取得したキーワードに対応する見込額を加算しても(ステップS35)費用合計が基準金額を超えなかった場合(ステップS36:「NO」)、新たに取得したキーワードをキーワード集合に加え(ステップS37)、新たに取得したキーワードの見込クリック数を評価合計に加算する(ステップS38)。この結果、評価合計が基準評価値と同等以上となったときは(ステップS39:「YES」)、新たに取得したキーワードまでのキーワードすなわちキーワード集合内のキーワードを候補ワードとして特定する(ステップS40)。
【0054】
新たに取得したキーワードの見込クリック数を加算しても(ステップS38)評価合計が基準評価値と同等以上に達しなければ(ステップS39:「NO」)、次のキーワードの処理へ移る(ステップS33)。但し、評価合計が基準評価値と同等以上に達しないまま(ステップS39:「NO」)未処理の残りが無くなった場合(ステップS33:「NO」)、又は新たに取得したキーワードに対応する見込額を費用合計に加算した結果(ステップS35)費用合計が基準金額を超過した場合(ステップS36:「YES」)は、基準金額内で評価合計が基準評価値と同等以上のキーワードの集合は発見できなかったことになるので、候補ワード無しという処理結果となる(ステップS41)。
【0055】
このように、入札語と同じグループのキーワードを、そのキーワードについて発生が見込まれる見込額が小さい順に取得し(ステップS31,S34)、その合計である費用合計が基準金額を超えないうちに(ステップS36:「NO」)、その評価値の合計が基準評価値以上に達した時点で(ステップS39:「YES」)、取得済のキーワードを候補ワードとする(ステップS40)。これにより、入札語と同等以上の評価値が見込める最も廉価な候補ワードを、最小の処理負荷と処理時間で特定でき、広告主の需要に迅速に応じることが可能となる。
【0056】
〔3.他の実施形態〕
なお、上記実施形態は例示に過ぎず、本発明は、以下に例示するものやそれ以外の他の実施態様も含むものである。例えば、本出願における構成図、データの図、フローチャートなどは例示に過ぎず、各要素の有無、その配置や処理実行などの順序、具体的内容などは適宜変更可能である。一例として、上記実施形態においてサーバとしての装置の要素として示した手段を、スマートフォンなど端末へアプリケーション・プログラムとして送信して実行させるサーバ装置も、本発明の一態様である。
【0057】
また、上記実施形態で示した各手段を、それぞれ異なるサーバなどのハードウェアで実現したり、外部のプラットフォーム等をAPI(アプリケーション・プログラム・インタフェース)やネットワークコンピューティング(いわゆるクラウドなど)といった任意の形態で実現するなど、本発明の構成は柔軟に変更できる。さらに、本発明に関する手段などの各要素は、コンピュータの演算制御部に限らず物理的な電子回路など他の情報処理機構で実現してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 入札対象推薦装置
2 広告配信サーバ
6 演算制御部
7 記憶装置
8 通信手段
20 入札対象受付手段
30 グループ特定手段
35 入札対象記憶手段
40 基準評価値取得手段
45 評価値等記憶手段
50 基準金額取得手段
60 入札候補特定手段
70 入札候補出力手段
80 入札受付手段
85 入札情報記憶手段
B4,B5 ボタン
M マウスカーソル
N 通信ネットワーク
T 端末
TX テキスト入力欄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リスティング広告の入札の対象となる候補を推薦する入札対象推薦装置であって、
入札対象の候補をグループごとに記憶している入札対象記憶手段と、
前記入札対象ごとに対応する所定の評価値及び金額を記憶している評価値等記憶手段と、
入札対象の指定を受け付ける入札対象受付手段と、
前記入札対象記憶手段を参照して前記受け付けた入札対象を含む前記グループを特定するグループ特定手段と、
前記評価値等記憶手段から、前記受け付けた入札対象に対応する前記評価値を基準評価値として取得する基準評価値取得手段と、
取得された前記基準評価値と、前記評価値等記憶手段に前記受け付けた入札対象に対応して記憶されている前記金額と、に基づいて所定の基準金額を算出する基準金額算出手段と、
特定された前記グループに属するものとして前記入札対象記憶手段に記憶されている一以上の前記入札対象であって、その入札対象に対応する前記評価値の合計が前記基準評価値からみて所定範囲で、かつ、その入札対象に対応する前記評価値及び前記金額に基づく額の合計額が前記基準金額からみて所定範囲となる入札対象を入札候補となる対象として特定する入札候補特定手段と、
特定された前記入札候補となる対象を出力する入札候補出力手段と、
を備えたことを特徴とする入札対象推薦装置。
【請求項2】
前記入札候補特定手段は、
前記受け付けた入札対象を含む前記グループに属する前記入札対象を、その入札対象に対応する前記評価値及び前記金額に基づく前記額が小さいものから順に取得し、取得した入札対象に対応する前記額の合計が前記基準金額を超える前に最後に取得した入札対象までの前記評価値の合計が前記基準評価値と同等以上であるとき、前記最後に取得した入札対象までの入札対象を前記入札候補となる対象として特定することを特徴とする請求項1記載の入札対象推薦装置。
【請求項3】
前記入札候補特定手段は、
前記受け付けた入札対象を含む前記グループに属する前記入札対象を、その入札対象に対応する前記評価値及び前記金額に基づく前記額が小さいものから順に取得し、取得した入札対象に対応する前記額の合計が前記基準金額を超えず、かつ、最後に取得した入札対象までの前記評価値の合計が前記基準評価値と同等以上となったとき、前記最後に取得した入札対象までの入札対象を前記入札候補となる対象として特定することを特徴とする請求項1記載の入札対象推薦装置。
【請求項4】
リスティング広告の入札対象の候補をサーバシステムとして推薦する請求項1から3のいずれか一項に記載の入札対象推薦装置と、
前記入札対象推薦装置と通信することでクライアントシステムとしてリスティング広告について入札対象の候補の取得及び表示並びに入札対象への入札を行うための端末と、
を通信ネットワークを介して組み合わせたことを特徴とする情報処理システム。
【請求項5】
リスティング広告の入札の対象となる候補をコンピュータが推薦する入札対象推薦方法であって、
入札対象の候補をグループごとに記憶している入札対象記憶手段と、
前記入札対象ごとに対応する所定の評価値及び金額を記憶している評価値等記憶手段と、
を有するコンピュータが、
入札対象の指定を受け付ける入札対象受付処理と、
前記入札対象記憶手段を参照して前記受け付けた入札対象を含む前記グループを特定するグループ特定処理と、
前記評価値等記憶手段から、前記受け付けた入札対象に対応する前記評価値を基準評価値として取得する基準評価値取得処理と、
取得された前記基準評価値と、前記評価値等記憶手段に前記受け付けた入札対象に対応して記憶されている前記金額と、に基づいて所定の基準金額を算出する基準金額算出処理と、
特定された前記グループに属するものとして前記入札対象記憶手段に記憶されている一以上の前記入札対象であって、その入札対象に対応する前記評価値の合計が前記基準評価値からみて所定範囲で、かつ、その入札対象に対応する前記評価値及び前記金額に基づく額の合計額が前記基準金額からみて所定範囲となる入札対象を入札候補となる対象として特定する入札候補特定処理と、
特定された前記入札候補となる対象を出力する入札候補出力処理と、
を実行することを特徴とする入札対象推薦方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−20463(P2013−20463A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153490(P2011−153490)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(500257300)ヤフー株式会社 (1,128)