説明

入札監視システム

【課題】入札を監視し、入札に関する分析を好適に行う手助けを行う入札監視システムを提供する。
【解決手段】DB1に記憶された入札に関する各種データを基に、分析部2が所定の分析を行い、当該分析の結果を適切な視覚情報として表示させるように分析結果を表示する画面を生成して表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公共工事の入札を監視する入札監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
公共工事は、国や各自治体等の行政府が発注者となり、競争入札によって発注先の業者を決定することになっている。しかし、古くからの習慣により、発注者と業者との談合による落札がしばしば行われており、問題となっていた。
しかし近年では、談合を排除するための法整備や行政府の体質改善、課徴金制度の実施等が行われ、公正な競争入札が行われるようになってきている。
【0003】
特に、平成12年に公布された「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」を踏まえて各自治体に入札監視委員会等の監視機関が設置されるようになり、公共工事の競争入札に関して透明性が上がって来ている。
入札監視委員会は、行政府が発注した工事の契約の実施状況について報告を求め、報告から抽出等した工事の入札や契約が適正かつ適切に行われているかを審議し、改善点等を提言する、或いは、発注した工事の入札及び契約手続についての再苦情(苦情の申立てに対する回答に不服がある者が再度申し立てる苦情をいう。)についての審議を行う役割を果たす委員の集まりである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した入札監視委員会等の監視機関の各委員は、発注者の入札結果データを基に様々な分析を行い、入札の正当性について監視を行うことになる。
ところが、監視機関の委員が、工事業界や入札に関する知識をあまり有さない人物であった場合には、入札に関するデータを与えられてもうまく分析を行うことができない事態が生じていた。このような事態は、委員選定の条件として、建設会社(土木・建築・電気等の工事をする会社)に勤めている人や、特定の建設会社と密接な関係がある人を除くことが定められている場合に起こりうる(委員選定の条件は、行政府ごとに決定されている)。
或いは、工事・建設業界や入札に関する知識を十分に有する委員であっても、入札に関するデータが膨大なものになった場合、委員がそのデータをうまく処理することができず、有効な分析を行うことができないという事態が生じる場合がある。
【0005】
本発明は上述したような事態を回避するためになされたものであり、入札を監視し、入札に関する分析を好適に行う手助けを行う入札監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した不利益を解消するために、第1の発明の入札監視システムは、公共工事の請負業者選定の際の競争入札に関して監視及び分析を行う入札監視システムであって、所定の入札に関する各種情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された入札に関する各種情報を基に、当該入札に関する各種分析を行う分析部と、表示画面を生成する表示制御部と、を有し、前記表示制御部は、前記所定の入札に関する各種情報及び、前記分析部の分析の結果を好適に表示する表示画面を生成する。
【0007】
第2の発明の入札監視システムは、公共工事の発注及び当該発注に関する競争入札を実行した際に、所定の入札に関する各種情報を出力する発注者システムと、前記競争入札に参加した請負業者に関する情報を出力する業者システムと、前記入札を監視する入札監視部と、を有し、前記入札監視部は、前記発注者システム及び前記業者システムが出力する情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された入札に関する各種情報を基に、当該入札に関する各種分析を行う分析部と、表示画面を生成する表示制御部と、を有し、前記表示制御部は、前記所定の入札に関する各種情報及び、前記分析部の分析の結果を好適に表示する表示画面を生成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、入札を監視し、入札に関する分析を好適に行う手助けを行う入札監視システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<第1実施形態>
本発明の入札監視システムの一例として、本第1実施形態では、入札監視システム100について説明する。
入札監視システム100は、図1に示すように、データベース(DB:本発明の記憶部に対応)1、データ入力部11、分析部2、表示制御部3、表示装置31、入力部4、通信部5、制御部6を有する。
図1は、本実施形態の入札監視システム100の構成例を示すブロック図である。
【0010】
DB1は、公共工事の発注者(行政府等)が入札を行った末、落札者(業者等)が決定した場合の、入札に関する各種データを記憶する記憶部である。
データ入力部11は、DB1にデータを入力するための入力装置であり、例えば、キーボード等の入力デバイスであったり、CDやDVDドライブ等のメディア読み取り装置であったり、後述する通信部5を介してネットワークを介して入手したデータをDB1に記憶させる受信装置であったりする。
【0011】
分析部2は、データ入力部11からDB1に入力された入札に関する各種データを基に、入札に関する分析を行う。
分析部2が行う分析については、後に詳しく説明する。
表示制御部3は、DB1のデータ及び分析部2が分析を行った結果を基に、表示装置31に表示する表示の制御を行う。具体的には、表示装置31に表示する画面を生成する。表示制御部3が生成する画面については後述する。
表示制御部3は、後述する入力部4を介したユーザ(例えば入札監視委員等)の入力を基に、表示装置31に表示させる画面を好適に切り替える。
【0012】
入力部4は、例えばキーボード、マウス、タッチパネル等の入力デバイスであり、表示装置31に表示された画面に応じた操作入力を受け付ける。
通信部5は、インターネット等の通信網を介した通信を行う。通信部5は、例えば入札の発注者である行政府のシステム等と通信を行い、所定のデータを取得する。
制御部6は、入札監視システム100全体の動作を統括的に制御する。
【0013】
以下、表示制御部3が生成する画面について説明する。
表示制御部は、上述したように、DB1に記憶された入札に関する各種データを好適に表示する。
例えば、ユーザが入力部4を介して入札に関するデータを閲覧する操作を入力した場合、表示制御部3は、入札に関する情報を一覧表示する案件リスト画面200を生成して表示装置31に表示させる。
案件リスト画面200の一例を図2に示す。
案件リスト画面200には、DB1に記憶された入札に関する情報が一覧表示されている。
図2に示すように、案件リスト画面200は、例えば散布図ボタン201、入札調書ボタン202、検索ウインドウ203、応札数欄204、件名欄205、工事種別欄206、入札方式欄207、発注者欄208、発注部署欄209、開札日/契約日欄210、契約企業名欄211、契約金額欄212、予定価格欄213、落札率欄214、ソートボタン215を有する。
【0014】
散布図ボタン201は、後述する散布図画面400へと表示装置31を遷移させるためのタブボタンである。
入札調書ボタン202は、後述する入札調書画面300へと表示画面を遷移させるためのタブボタンである。入札調書ボタン202が入力部4によって押下されることにより、案件リスト画面200内で選択された案件の後述する入札調書画面300へと表示画面が遷移するようになっている。
検索ウインドウ203は、キーワードを入力するウインドウと、ウインドウに入力されたキーワードで案件リスト画面200に表示された案件を検索する検索ボタンとからなる。
応札数欄204は、その案件の入札に応じた業者の数を示す欄である。
【0015】
件名欄205は、案件の件名を示す欄である。
工事種別欄206は、当該案件の種類(例えば、土木工事、管工事、舗装工事等)の工事種別を表示する欄である。
入札方式欄207は、入札の方式について説明する欄である。
発注者欄208は、当該案件の発注者を示す欄である。
【0016】
発注部署欄209は、発注者欄208内の発注を行った部署名を示す欄である。
開札日/契約日欄210は、当該案件の入札が開札された日、或いは開札により請負業者が決定されて契約が交わされた日を示す欄である。
契約企業名欄211は、入札の結果落札した業者を示す欄である。
契約金額欄212は、当該案件の契約価格(落札した業者が実際に契約した金額)を示す欄である。
予定価格欄213は、発注者が入札開始前に予め設定した、当該案件の最高落札価格である予定価格を示す欄である。
【0017】
落札率欄214は、発注者が設定した予定価格に対する落札価格の比率である落札率を示す欄である。
ソートボタン215は、上述した各欄の最上部に配置され、これが押下されることによりその欄に示された内容に応じたソートが行われる。すなわち、例えば、落札率欄214のソートボタン215が押下されると、落札率が高い順(或いは低い順)にソートされた状態に案件リスト画面200が変化する。また、例えば件名欄205のソートボタン215が押下された場合には、件名があいうえお順にソートされた状態に案件リスト画面200が変化する。
【0018】
以上のように、案件リスト画面200には入札に関する各種情報が一覧表示されている。さらに、件名欄205に表示されている各件名を選択することにより、当該案件の入札調書画面300へと表示画面が遷移するようになっている。
【0019】
次に、入札調書画面300について説明する。
表示制御部3は、例えば上述した案件リスト画面200において入札調書ボタンが押下される等、入力部4を介した所定の入力に応じて、入札調書画面300を生成する。
入札調書画面300の一例を図3に示す。
入札調書画面300は、特定の案件(入札)に関する各種情報の詳細を表示する画面である。入札調書とは、例えば入札の発注者である行政府が所定の入札に関する情報として公開している文書であり、例えば所定の文書ファイル形式でインターネット等の公衆ネットワーク上にアップロードされているものである。入札調書は、本実施形態の入札監視システムでは、入力部4により所定の案件の入札調書画面の表示を求める入力がなされた場合は、通信部5が所定の案件の発注者である行政府等のサーバと通信を行い、当該案件の入札調書データを取得し、表示制御部3がこれを使用して入札調書画面300を生成する。
【0020】
図3に示すように、入札調書画面300は、案件リストボタン301、散布図ボタン302、案件選択ウインドウ303、HP閲覧ボタン304、件名欄305、工事種別欄306、入札方式欄307、契約企業名308、契約金額欄309、落札率310、発注者欄311、開札日欄312、入札結果欄313、入札企業一覧314を有する。
案件リストボタン301は、入札調書画面300に表示されている所定の案件を含む案件リスト画面200へ表示装置31を遷移させるためのボタンである。
散布図ボタン302は、入札調書画面300に表示されている案件を含む散布図画面400へと表示装置31を遷移させるためのボタンである。
【0021】
案件選択ウインドウ303は、入札調書画面300内に表示されている案件の入札調書を別の案件の入札調書に遷移させるための選択ウインドウである。案件選択ウインドウ303においては、案件リスト画面200に表示されるリストに表示されたリストの順番に応じて案件を選択することができる。すなわち、案件選択ウインドウ303において「前」が選択された場合には、表示制御部3は現在表示されている案件の入札調書画面300から、案件リスト画面200において現在の案件の1つ前に位置する案件の入札調書画面300へと表示画面を変化させる。「次」が選択された場合には、反対に、案件リスト画面200において現在の案件の1つ後に位置する案件の入札調書画面300へと表示画面を変化させる。
【0022】
HP閲覧ボタン304は、入札調書画面300内に表示されている案件に対応した入札結果の詳細な情報を含むHP(ホームページ)へのリンクボタンである。入札結果の詳細な情報を含むHPは、例えば当該案件の入札発注者である行政府等によって入札調書とは別にインターネット等のネットワーク上に用意され、誰でも閲覧可能であるHPである。HP閲覧ボタン304が押下されることにより、表示制御部3はウェブブラウザが起動して表示し、ウェブブラウザには、通信部5がネットワークを介して取得した、入札調書画面300内に表示されている案件の入札結果の詳細な情報のHPを表示する。
【0023】
件名欄305は、入札調書画面300に表示された入札調書の案件の案件名を表示する欄である。
工事種別欄306は、入札調書の案件の工事種別を表示する欄である。
入札方式欄307は、入札調書の案件の入札方式を表示する欄である。
契約企業名308は、入札調書の案件において最終的に契約を行った企業名を表示する欄である。
契約金額欄309は、入札調書の案件において最終的に契約を行った企業の契約金額を表示する欄である。
落札率310は、入札調書の案件における契約の落札率を表示する欄である。
発注者欄311は、入札調書の案件の発注を行った行政府等の名称を表示する欄である。
開札日欄312は、入札調書の案件の開札日を表示する欄である。
入札結果欄313は、入札調書の案件の入札結果を表示する欄である。
入札企業一覧314は、入札に参加した企業を示す一覧表である。
【0024】
入札調書画面300は上述したような欄を有し、入札に関する各種情報を表示している。ただし、本発明では、入札調書画面300は上述した欄に限定されることはなく、上述した件名欄305〜入札結果欄313以外にも入札に関する情報を表示してもよい。
【0025】
次に、散布図画面400について説明する。
上述した案件リスト画面200及び入札調書画面300は、DB1のデータを基に表示制御部3が生成した画面であるのに対して、散布図画面400は分析部2がDB1のデータを基に生成した分析データを基に表示制御部3が生成した画面である。
分析部2は、後述するように、DB1のデータを使用して、所定の入札に対して各種分析を行う。表示制御部3は、その分析結果を基に後述する散布図画面400の落札率散布図404を生成して表示させる。
分析部2が生成した分析データを基に、表示制御部3が生成した散布図画面400の一例を図4に示す。
【0026】
散布図画面400は、案件リストボタン401、集計対象の絞込みウインドウ402と、X軸の選択ウインドウ403と、落札率散布図404とを有する。
案件リストボタン401は、上述した案件リスト画面200へと表示装置31に表示される画面を遷移させるためのボタンである。
集計対象の絞込みウインドウ402は、落札率散布図404にプロットされる集計対象を選択するための選択ウインドウである。
集計対象の絞込みウインドウ402は、図4に示すように、入札方式選択ウインドウ4021、工種選択ウインドウ4022、予定価格選択ウインドウ4023の3つのウインドウを有し、それぞれのウインドウでは、入力部4による落札率散布図404にプロットされる集計対象の選択が可能になっている。
【0027】
入札方式選択ウインドウ4021では、例えば「指名競争入札」、「一般競争入札」、「随意契約」の3つの入札方式の中から選択可能である。これらの入札方式の中から1つが選択されることにより、落札率散布図404にプロットされる集計対象が変化する。
工種選択ウインドウ4022では、例えば、「土木一式工事」、「プレストレストコンクリート工事」、「とび・土工・コンクリート工事」、「法面処理工事」等、複数の工種の中から選択可能である。これらの工種の中から1つが選択されることにより、落札率散布図404にプロットされる集計対象が変化する。
予定価格選択ウインドウ4023では、例えば「1千万円未満」、「1千万円以上3千万円未満」、「3千万円以上1億円未満」、「1億円以上」等の価格帯から選択可能である。これらの価格帯の中から1つが選択されることにより、落札率散布図404にプロットされる集計対象が変化する。
【0028】
X軸の選択ウインドウ403は、落札率散布図404のX軸(横軸)を選択するためのウインドウであり、例えば「応札数」、「予定価格」、「ランク」等の中から選択が可能である。これらの中から1つが選択されることにより、落札率散布図404のX軸が変化する。
上述した集計対象の絞込みウインドウ402及びX軸の選択ウインドウ403における選択に従って、分析部2は集計対象をプロットした散布図を生成する。分析部2が生成した分析データを基に、表示制御部3は散布図画面400を生成して表示装置31に表示させる。
【0029】
以下、散布図画面400が表示装置31に表示される際の入札監視システム100の動作について説明する。
入力部4を介した入力等により、散布図画面400を表示装置31に表示することが要求される(すなわち、上述した案件リスト画面200において散布図ボタン201が押下された場合等)と、分析部2は、DB1に記憶された入札に関するデータを使用して分析処理を行う。
【0030】
分析部2が行う分析の一例として、以下では所定の条件を満たす入札を、談合が行われている可能性のある入札として抽出するための方法について説明する。すなわち、どのような条件を満たす入札に対して、談合の可能性があると判断するか、について、以下に示すような方法を用いることができる。
分析部2は、例えば、落札率散布図404の集計対象とされる全ての案件に対して、落札率が95%以上であるか否かについて判定を行い、落札率が95%以上であるときには談合の可能性があると分析し、落札率が95%未満である場合にはそうでないと判断する。
そして、表示制御部3は、分析部2が分析した結果を基に散布図画面400を生成する。
この際、表示制御部3は、談合の可能性があると分析部2によって分析された案件を例えば青色の点で、談合の可能性がないと分析された案件を例えば赤い色で表示させる。すなわち、表示制御部3は、散布図画面400生成時に、落札率散布図404内の談合の可能性がある案件と、そうでない案件とを異なる視覚効果で表示させるようにする。異なる視覚効果とは、上述したように異なる色で表示させるようにしてもよいし、他にも例えば異なる大きさ、形で表示させるようにしてもよい。
このようにすることにより、落札率が高く、談合の可能性があると思われる案件については、表示制御部3により表示装置31に落札率散布図404を表示させる際に赤い点で表示させることができ、落札率散布図404を見たユーザに対して、談合の可能性を指摘することができるようになる。
【0031】
或いは、分析部2は、例えば、談合の可能性があるか否かを分析するための所定の条件として、応札数が5以下かつ落札率が95%以上である場合に談合の可能性があると判断し、そうでない場合に談合の可能性がないと判断するようにしてもよい。このようにすることにより、応札数が小さいにもかかわらず落札率が高く、談合の可能性が考えられるような案件に対して、談合の可能性についてユーザの注意を喚起することができる。
このように、分析部2が談合の可能性があるか否かを分析するための所定の条件については、本発明では限定しない。この所定の条件は、例えば入力部4により設定し、設定条件情報としてDB1に記憶させることが可能であってもよい。この場合には、分析部2は分析実行時にDB1から当該設定条件情報を読み出し、これに従って分析を行うようにすればよい。
【0032】
なお、表示制御部3が生成した落札率散布図404においては、1つの案件は1つの点としてプロットされているが、それぞれの点が入力部4の例えばマウス機能により選択可能となっている。すなわち、表示装置31に表示された落札率散布図404におけるそれぞれの案件に対応した各点は、それぞれの案件の入札調書画面300へのリンクポインタとなっており、ユーザが入力部によっていずれかの点を選択することにより、表示制御部3は選択された案件に対応する入札調書を表示させることができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の入札監視システム100によれば、DB1に記憶された入札に関する各種データを基に、分析部2が各種分析を行うために、所定の条件を満たす入札案件を抽出し、その結果に従って表示制御部3が分析結果を好適な視覚情報として表示させるように分析結果を表示する画面(上述した実施形態における散布図画面400)を生成して表示させるので、入札監視システム100のユーザに対して、不正が行われた可能性が高い案件に対する注意を喚起することができる。
また、本実施形態の入札監視システム100によれば、表示制御部3は、ユーザの入力部4を介した入力に従って、DB1に記憶された入札に関するデータの中から、案件の一覧画面(上述した実施形態における案件リスト画面200)及び、案件リスト画面中において選択された案件の詳しい情報を示す入札調書画面(上述した実施形態における入札調書画面300)を表示装置31に表示させるので、入札監視システム100のユーザに対して、膨大な数の入札データの中から必要なデータを探し出して閲覧することが容易になる。
【0034】
なお、上述した第1実施形態では、分析部2が分析した結果を表示制御部3が表示するための画面として、散布図画面400における落札率散布図404を一例として説明したが、本発明はこれには限定されない。すなわち、分析部2の分析結果を表示するための表示制御部3が生成する画面は、散布図である必要はない。例えば、表示制御部3は、他の形式のグラフや、表等の形式で表示する画面を生成してもよい。
【0035】
また、上述した第1実施形態では、分析部2は各案件の落札率が所定のしきい値以上であるか否かに応じて分析を行い、所定のしきい値よりも落札率が高い案件を談合の可能性がある案件であると分析していたが、本発明はこれには限られない。
例えば分析部2は、上述した以外に以下のような分析を行ってもよい。
【0036】
すなわち、分析部2は、DB1に記憶された過去の入札に関するデータを基に、各業者の競争力を示す値である競争力値を算出し、これを基に談合の可能性の分析を行ってもよい。
競争力値とは、業者の過去の入札履歴を参照して、案件ごとに入札価格と落札価格との偏差を算出したものであり、どの程度落札価格に近い入札価格を提示していたかを意味する値である。
分析部2は、各業者ごとに競争力値を算出し、例えば算出した競争力値が所定のしきい値よりも大きい場合に、その業者に談合の可能性があると判断する。すなわち、落札価格に近い入札価格ばかり提示する業者に対して、何らかの談合を行っている可能性がある、と判断する。
【0037】
或いは、分析部2は、予めDB1に記憶されている各業者の経営事項審査の結果を参照し、経営事項審査結果に反した落札がなされていないか、のチェックを行う。経営事項審査とは、公共工事の入札に参加する建設業者の企業規模・経営状況などの客観事項を数値化した、建設業法に規定する審査である。これにより、各業者が会社の規模・経営状態に合った仕事を請けているか否かについて分析することができる。また、分析部2は、経営事項審査の結果に加えて、完成高・技術者数等、その他の要素に応じて、各請負業者の入札行動全体についての分析を行うようにしてもよい。
【0038】
或いは、分析部2は、過去の入札において、地域要件が設定された案件を抽出し、設定された地域要件が適当なものであったか否かの分析を行う。地域要件とは、本店所在地が発注者により設定された地域内にある業者のみ入札に参加できるように設定されることを指し、地域要件が適切でない場合には、地元の業者を不公平に優先した入札となる場合がある。分析部2は、地域要件が設定された案件を抽出し、当該案件の落札率と応札者数分布とから、設定された地域要件が適切であったか否かの分析を行う。例えば、具体的には、分析部2は、応札者数が少なく落札率が高い案件は、特定の業者に落札させるために不適切な地域要件が設定された可能性があると判断する。
【0039】
或いは、分析部2は、総合評価方式において適切な評価がなされていない可能性のある案件を抽出することができる。平成17年4月に「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(品確法)が施行されており、品確法では、公共工事の品質は、「経済性に配慮しつつ価格以外の多様な要素をも考慮し、価格及び品質が総合的に優れた内容の契約がなされることにより、確保されなければならない」とされる。これを満たすための評価方式として、総合評価方式による入札が行われている。
総合評価方式とは、新しい技術やノウハウといった価格以外の要素を含め、「価格と価格以外の性能(技術提案性能など)」の項目を評価して落札者を決定する落札方式である。総合評価方式により、公共工事の施工に必要な技術的能力を有する者が落札することが期待されるが、例えば分析部2は、DB1に記憶された過去の案件に関する各種情報を基に、総合評価方式による落札結果と価格競争による落札結果が相違する案件を入札監視委員会等に報知することができ、報知を受けた入札監視委員会等は報知された案件について、最低価格でありながら落札できなかった企業の技術提案書、並びに最低価格以外で落札できた企業の技術提案書を審査することにより、技術点の配点における発注者側の恣意性等、技術評価の適正性に関して発注者に注意を喚起することができる。
【0040】
或いは、分析部2は、ある業者について、総合評価方式における工事成績と落札率とを参照し、平均落札率が所定のしきい値より低いにもかかわらず工事成績の平均点が所定のしきい値より高い業者を抽出する。このようにすることにより、入札監視委員等に対して該当する業者への注意を喚起することができる。この場合、当該業者が優秀であればよいが、公示成績の評定に問題がある場合や、予定価格が高く設定されてしまっている場合も考えられる。本発明の入札監視システムによれば、このような問題点を抽出することが可能である。
【0041】
或いは、分析部2は、DB1に記憶された各種情報を基に、指名競争入札の案件における入札辞退の割合を算出し、所定のしきい値以上である案件を抽出する。指名競争入札において入札辞退の割合が高い場合は、当該案件の指名基準に問題がある可能性が考えられるため、入札自体の割合が所定のしきい値以上である案件を抽出することにより、入札監視委員等の注意を喚起することができる。
以上説明したように、分析部2は、様々な方法により過去の入札に関する分析を行うことができる。
【0042】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態の入札監視システム1000について説明する。
本実施形態の入札監視システム1000の構成例を図5に示す。
図5に示すように、本実施形態の入札監視システム1000は、公共工事の競争入札を実施する発注者の有する発注者システム600と、競争入札に参加する業者が有する業者システム700と、発注者システム600及び業者システム700から所定のデータを取得して、競争入札の分析及び監視を行う入札監視部800と、これらを結ぶネットワーク900とを有する。
【0043】
発注者システム600は、例えば行政府等、公共工事の競争入札を実施する発注者が有するシステムである。
発注者システム600は、例えば、通信部601、DB602及び処理装置603を有する。
通信部601は、ネットワーク900を介して、業者システム700及び入札監視部800との通信を行う。
DB602は、例えば業者に関するデータや、過去の入札に関するデータ等を記憶している。
処理装置603は、CPU(Central Processing Unit)等の情報処理装置であり、競争入札に関する各種処理を行う。具体的には、例えば、通信部601に業者システム700との通信を行わせ、入札に参加した業者のデータや、落札した業者に関する各種データを収集して、DB602に記憶させたり、DB602に記憶された入札に関する各種データを、入札監視部800に伝達させたりする。
なお、本実施形態の処理装置603は、ネットワーク900を介して業者システム700が参加可能な電子入札処理を行う。すなわち、例えば、処理装置603は、ネットワーク900上に電子入札用のウェブサイト等を用意し、業者システムからアクセス可能にして、業者システムのネットワーク900を介した入札を受け付ける仕組みを有する。なお、処理装置603の電子入札処理は従来の技術を利用して実行される。
そして、処理装置603は、電子入札により得られたデータを入札に関するデータとしてDB602に記憶させる。
【0044】
業者システム700は、例えば公共工事の競争入札に参加する業者が有するシステムである。
業者システム700は、例えば、通信部701、DB702及び処理装置703を有する。
通信部701は、ネットワーク900を介して、発注者システム600及び入札監視部800との通信を行う。
DB702は、例えば業者システム700を有する業者が過去に参加した競争入札に関するデータや過去に落札した競争入札に関するデータを記憶している。
処理装置703は、CPU等の情報処理装置であり、競争入札に関する各種処理を行う。具体的には、例えば、ネットワーク900を介して発注者システム600と通信を行い、発注者システム600が実行する電子入札に参加する処理等を行う。また、処理装置703は、参加した電子入札に関するデータ(案件名、日時、入札価格等)をDB702に記憶させる処理を行う。
【0045】
入札監視部800は、発注者システム600が実施し業者システム700が参加する競争入札の監視を行うシステムである。具体的には、入札監視部800は、発注者システム600から、発注者システム600が実施する電子入札に関する情報(実施日、案件名、入札方式、工事種別、予定価格、落札価格、契約企業名等)を、業者システム700から、業者システム700が参加した電子入札に関する情報(実施日、案件名、入札価格等)をネットワーク900を介して取得し、集計して分析し、表示を行う。
なお、本実施形態の入札監視部800としては、第1実施形態において説明した入札監視システム100と同様の構成を使用する。
【0046】
入札監視部800は、通信部801、データベース(DB:本発明の記憶部に対応)802、分析部803、表示制御部804、表示装置8041、入力部805、制御部806を有する。
【0047】
通信部801は、ネットワーク900を介して発注者システム600及び業者システム700と通信を行い、発注者が行う競争入札に関する各種データを取得する。各種データとは、上述したように、発注者システム600が実施する電子入札に関する情報(実施日、案件名、入札方式、工事種別、予定価格、落札価格、契約企業名等)及び、業者システム700から、業者システム700が参加した電子入札に関する情報(実施日、案件名、入札価格等)である。
DB802は、通信部801が発注者システム600及び業者システム700から得た電子入札に関する情報を記憶する。
【0048】
分析部803は、DB802に記憶された電子入札に関する各種データを基に、入札に関する各種分析を行う。
分析部803が行う各種分析については、第1実施形態において説明した分析部2の行う分析と同様であるため、本実施形態では説明を省略する。
表示制御部804は、DB802に記憶されたデータ及び分析部803が分析を行った結果を基に、表示装置8041に表示する表示の制御を行う。具体的には、表示装置8041に表示する画面を生成する。表示制御部804が生成する画面についても、第1実施形態において説明した表示制御部3が生成する画面と同様であるため、本実施形態では説明を省略する。
表示制御部804は、入力部805を介したユーザ(例えば入札監視委員等)の入力を基に、表示装置8041に表示させる画面を好適に切り替える。
【0049】
入力部805は、例えばキーボード、マウス、タッチパネル等の入力デバイスであり、入力操作を受け付ける。
制御部806は、入札監視システム1000全体の動作を統括的に制御する。
【0050】
以下、本実施形態の入札監視システム1000の動作例について説明する。
図6は、発注者システム600、業者システム700、入札監視部800の動作例を示すシーケンス図である。
ステップST1:
発注者システム600は、ネットワーク900を介した電子入札処理を開始する。
ステップST2:
発注者システム600は、ステップST1において開始した電子入札について、業者システム700に通知する。
【0051】
ステップST3:
業者システム700は、ステップST2において発注者システム600から通知された電子入札に対して、応札(入札に応じること)処理を行う。具体的には、入札価格や業者名等の入札に関するデータを、ネットワーク900を介して発注者システム600に対して送信する。
ステップST4:
発注者システム600は、ステップST3において業者システム700から送信された入札に関する各種データを基に、落札業者を決定する。
【0052】
ステップST5:
発注者システム600は、ステップST4において決定した落札業者の業者システム700との契約処理を行う。具体的な契約処理については、本実施形態では限定しない。
ステップST6:
発注者システム600は、入札処理が終了し契約業者が決定したことを入札監視部800に通知する。
【0053】
ステップST7:
入札監視部800は、ステップST6における発注者システムからの入札完了の通知を受け、完了した入札に関するデータを発注者システム600に要求する。要求するきっかけは、例えば入札監視部800のユーザにより、当該入札に関する分析処理実行命令の入力等であり、これらのきっかけに応じて、入札監視部800は自動的に発注者システム600に対して入札に関するデータを要求する。ただし、要求するきっかけについては本実施形態では限定しない。例えば、入札監視部800が定期的に発注者システム600に入札に関するデータを要求するようにしてもよい。この場合、例えば一定期間内に行われた電子入札に関するデータを全て発注者システム600は入札監視部800に送信するようにすればよい。
ステップST8:
発注者システム600は、ステップST7において入札監視部800から要求された、ステップST1〜5における入札処理に関するデータを入札監視部800に送信する。
【0054】
ステップST9:
入札監視部800は、ステップST8において発注者システム600から送信された入札処理に関するデータを受信し、記憶する。
ステップST10:
入札監視部800は、ステップST9において記憶した入札処理に関するデータを基に、ユーザが指定した電子入札に関する分析を行う。ユーザはこの際、例えば入力部4により、記憶された複数の電子入札に関するデータの中から分析したい入札を指定することが可能であり、入札監視部800はこれに応じた分析を行う。
【0055】
ステップST11:
入札監視部800は、ステップST9において受信し記憶したデータ及びステップST10において分析した結果を基に、当該入札に関するデータ或いはその分析結果を表示する表示画面を生成し表示を行う。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の入札監視システム1000によれば、発注者システム600及び業者システム700によって行われる電子入札に関するデータを入札監視部800が自動的に取得して記憶し、入札監視部800のユーザ(例えば入札監視委員等)の指定した入札に関するデータに関する分析を行い、表示するので、入札監視部800のユーザに対して、多大な電子入札の適切な分析を行うことができる。
【0057】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、本発明の実施に際しては、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、第1実施形態の入札監視システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】図2は、案件リスト画面の一例を示す図である。
【図3】図3は、入札調書画面の一例を示す図である。
【図4】図4は、分析部が生成した分析データを基に、表示制御部が生成した落札率散布図画面の一例を示す図である。
【図5】図5は、第2実施形態の入札監視システムの構成例を示す図である。
【図6】図6は、第2実施形態の発注者システム、業者システム、入札監視部の動作例を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0059】
100…入札監視システム、1…DB、11…データ入力部、2…分析部、3…表示制御部、31…表示装置、4…入力部、5…通信部、6…制御部、1000…入札監視システム、600…発注者システム、601…通信部、602…DB、603…処理装置、700…業者システム、701…通信部、702…DB、703…処理装置、800…入札監視部、801…通信部、802…DB、803…分析部、804…表示制御部、8041…表示装置、805…入力部、806…制御部、900…ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
公共工事の請負業者選定の際の競争入札に関して監視及び分析を行う入札監視システムであって、
所定の入札に関する各種情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された入札に関する各種情報を基に、当該入札に関する各種分析を行う分析部と、
表示画面を生成する表示制御部と、
を有し、
前記表示制御部は、前記所定の入札に関する各種情報及び、前記分析部の分析の結果を好適に表示する表示画面を生成する
入札監視システム。
【請求項2】
前記分析部は、前記記憶部に記憶された前記情報を基に落札率を算出し、当該落札率が所定のしきい値よりも大きい場合に談合の可能性があると分析する
請求項1に記載の入札監視システム。
【請求項3】
前記分析部は、前記記憶部に記憶された前記情報を基に、過去の入札における、各請負業者の過去の入札価格と落札価格との偏差である競争力値を算出し、当該競争力値が所定のしきい値より大きい場合に談合の可能性があると分析する
請求項1に記載の入札監視システム。
【請求項4】
前記分析部は、前記記憶部に記憶された前記情報を基に、各請負業者の経営事項審査の結果、完成高、技術者数等に応じて、各請負業者の入札行動について分析する
請求項1に記載の入札監視システム。
【請求項5】
外部からの入力を受け付ける入力部を有し、
前記表示制御部は、前記入力部による入力に応じて、前記表示画面を好適に変化させる
請求項1または2に記載の入札監視システム。
【請求項6】
公共工事の発注及び当該発注に関する競争入札を実行した際に、所定の入札に関する各種情報を出力する発注者システムと、
前記競争入札に参加した請負業者に関する情報を出力する業者システムと、
前記入札を監視する入札監視部と、
を有し、
前記入札監視部は、
前記発注者システム及び前記業者システムが出力する情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された入札に関する各種情報を基に、当該入札に関する各種分析を行う分析部と、
表示画面を生成する表示制御部と、
を有し、
前記表示制御部は、前記所定の入札に関する各種情報及び、前記分析部の分析の結果を好適に表示する表示画面を生成する
入札監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−32103(P2009−32103A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196492(P2007−196492)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)