説明

入浴剤

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、入浴剤に関する。
【0002】
【従来技術及びその問題点】従来、入浴剤としては、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウムなどの複数の無機酸のアルカリ金属塩を含む粉末タイプのものや、生薬成分を含む液状タイプのものが知られている。前者は、各所の温泉の成分を模倣し、かつ入浴中に炭酸ガスを発生させて微細な炭酸ガスの気泡によって皮膚を刺激し、保温効果を得るものである。一方、後者は、保湿作用や抗菌作用を有する生薬成分を添加して皮膚にしっとり感を与えることを目的としたものが多い。
【0003】ところで、人体において、細胞中に1個のカルシウムイオンが存在するとすると、血液中には1000個、骨には1億個という濃度勾配でカルシウムが存在するのが、健康な状態と言われている。しかし、日本人の食生活ではカルシウムの摂取量が不足しているため、上記濃度勾配を保持するように生理機能が働き、骨から血液中にカルシウムが溶出することによって、血液や細胞中に一定の濃度でカルシウムを存在させている。特開平4−166290号公報には、澱粉及び/又は穀類と種子と卵殻とを粉砕混合した後、加水分解して発酵熟成し、さらに濾過して得られる水溶性ミネラル含有液が開示されており、この水溶性ミネラル含有液においては、水の分子集団が細分化され、水分子の単集団がミネラルイオンを取り囲んでミネラルイオンを分散しているため、細分化された水と共にミネラルイオンが皮膚細胞から吸収されることが報告されている。また、この水溶性ミネラル含有液を通常の水に少量添加すると、水の分子集団が細分化されることが記載されている。
【0004】
【発明の目的】本発明の目的は、カルシウムイオンが皮膚から吸収されうる状態で含まれており、保湿効果と水分子集団の細分化作用及び水道水中の次亜塩素酸の中和と刺激の緩和に優れた入浴剤を提供することを目的とする。
【0005】
【発明の概要】本発明の入浴剤は、液状化リン酸カルシウム系化合物を0.01〜95重量%含有することを特徴とする。液状化リン酸カルシウム系化合物の含有量が0.01重量%未満であると、量が少なく効果を発揮できず、また、95重量%を超えると、酸味臭が著しくなり実用に適さない。液状化リン酸カルシウム系化合物の含有量は、1〜30重量%であるのが好ましく、2〜20重量%であるのがさらに好ましい。
【0006】本発明に使用する液状化リン酸カルシウム系化合物は、Ca/P比1.0〜2.0のリン酸カルシウム系化合物と卵殻との和1〜80重量部及び澱粉及び/又は穀類粉末10〜50重量部からなる粉砕混合物を発酵熟成させて得られる液体である。
【0007】リン酸カルシウム系化合物と卵殻との和が80重量部を超えると溶解不良を起こし、残渣が残ってしまう。一方、1重量部未満では液状化した際のミネラルが少なく、有効成分が得られない。澱粉及び/又は穀類粉末が10重量部未満では有機酸生成量が少なく、ミネラルの溶解力が低下し、50重量部を超えると発酵不良と残渣が多く、有効成分を抽出できなくなる。
【0008】本発明に使用しうる澱粉としては、特に制限はなく、サツマイモ澱粉、バレイショ澱粉などの芋澱粉、トウモロコシ澱粉などが挙げられる。また、穀類粉末についても特に制限はなく、例えば、米粉、小麦粉、そば粉などを使用することができる。
【0009】本発明に使用するリン酸カルシウム系化合物としては、Ca/P比が1.0〜2.0のものであれば各種のものを使用することができるが、ハイドロキシアパタイト、ハロゲン化アパタイト等の各種のアパタイト、リン酸第一カルシウム、リン酸第二カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウムなどが挙げられ、これらを単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0010】本発明に用いる液状化リン酸カルシウム系化合物を製造するには、上記のような各原料を所定の割合で配合し、粉砕混合し、得られた混合物を発酵タンクに投入し、この混合原料1に対して水2〜8を加え、攪拌しながら50〜100℃に加熱して澱粉をα化した後、30〜40℃に保温して粘稠な混合液とする。この混合液を5〜10℃に保温して所定量の麹菌などを加えて複合発酵させる。その後、複合発酵させた混合液を1ケ月〜2ケ月間熟成させるのが好ましい。こうして得られた発酵熟成液は、酸臭を有し、発酵によって生成した有機酸を含む。
【0011】こうして得られた液状化リン酸カルシウム系化合物は、カルシウムイオン及びリン酸イオン、さらには卵殻中に含まれていた微量のミネラルイオンを含むが、これらの各イオンは個々に、細分化された水分子に包囲されて水中に微細に分散されており、細分化された水と共に皮膚細胞中に吸収される。
【0012】本発明の入浴剤は、上記の液状化リン酸カルシウム系化合物の他に、さらに、無機酸のアルカリ金属塩、保湿剤、抗菌剤、皮膚保護剤、防腐剤、香料、着色料などを含有してもよい。無機酸のアルカリ金属塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩酸ナトリウムあるいは対応するカリウム塩が使用される。この種のアルカリ金属塩は、1〜80重量%の範囲で添加される。1重量%未満では効果が充分に発揮されず、80重量%を超えると、沈殿し溶解しない。
【0013】本発明に使用しうる保湿剤としては、特に制限はなく、桃の葉エキス、アロエエキス等の生薬成分、水添ひまし油、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、コラーゲン、ヒアルロン酸などが挙げられ、これらを単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。保湿剤は、通常、1〜50重量%の範囲で添加される。1重量%未満では効果が充分に発揮されず、50重量%を超えると、皮膚に悪影響を及ぼす。
【0014】また、抗菌剤としては、特に制限はなく、例えば、ヒノキチオール(香料を兼ねる)、茶カテキン等の生薬成分、ベタイン、キトサンなどが挙げられ、これらを単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。抗菌剤は、通常、0.1〜5重量%の範囲で添加される。0.1重量%未満では効果が充分に発揮されず、5重量%を超えると、皮膚への刺激が大きい。
【0015】皮膚保護剤についても特に制限はなく、例えば、水添ひまし油、ミリスチン酸イソプロピルエステルなどを使用することができる。皮膚保護剤は、通常、1〜7重量%の範囲で添加される。1重量%未満では効果が充分に発揮されず、7重量%を超えると、皮膚に悪影響を及ぼす。
【0016】また、防腐剤としては、特に制限はないが、p−オキシ安息香酸メチルが繁用されている。香料や着色料については、様々なものを自由に使用することができる。さらに、エタノールが殺菌作用を有する溶剤としてしばしば使用される。
【0017】本発明の入浴剤の使用量は、好みによって広範囲に変動することができるが、一般には、200リットルの湯に対して10〜80ミリリットル程度で充分である。
【0018】
【発明の実施例】次に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
【0019】実施例1(1)液状化ハイドロキシアパタイトの製造原料としてバレイショ澱粉20重量部及び平均粒径4μmのハイドロキシアパタイト粉末と卵殻の合計量30重量部を混合し、粉砕した。次に、この混合粉体を発酵タンクに投入し、混合粉体に対して純水を3倍加え、攪拌し、80℃に2時間加熱して澱粉粒をα化させ、その後38℃に保持し、所定量のコウジ菌を加えて複合発酵させた。この際、曝気及び光の照射により発酵の促進を図った。得られた発酵液を10℃以下の場所で1.5ケ月間熟成させた。こうして得られた液状化ハイドロキシアパタイトは、この液100g中にミネラル成分としてカルシウム10700mg、マグネシウム9280mgを含んでいた。
【0020】(2)入浴剤の製造下記の成分を混合し、均一に攪拌して入浴剤を得た。
ヒノキチオール 1.0重量部 モモノ葉エキス 2.0重量部 水添加ヒマシ油 2.0重量部 ヘキシレングリコール 35.0重量部 グリセリン 8.0重量部 ポリプロピレングリコール 8.0重量部 95%エタノール 20.0重量部 脱イオン水 19.0重量部 上記(1)で製造したハイドロキシアパタイト 5.0重量部 合計100.0重量部得られた入浴剤を200リットルの湯に20ml程度入れ、入浴後に50人の被験者について下記の性能を下記の方法で評価し、結果を表1に示す。
【0021】保湿性入浴10分後の皮膚表面の角質層の水分量を高周波伝導度測定装置で測定した(3.5MHz)。
○・・・平均的伝導度より高い△・・・平均的伝導度(通常)
×・・・平均的伝導度より低い保温性入浴30分後の皮膚表面の温度○・・・平均値より高い△・・・平均値温度×・・・平均値より低い湯上がりのすべすべ感入浴30分後の感覚を評価する。
○・・・すべすべ感ずる△・・・普通×・・・悪い湯垢付着防止風呂掃除時のカスの除去容易さを評価する。
○・・・良好△・・・普通×・・・残留物あり
【0022】実施例2下記の成分を混合し、均一に攪拌して入浴剤を得た。
アロエエキス 0.5重量部 ヘキシレングリコール 30.0重量部 ベタイン 1.5重量部 イソプロピルエステル 2.0重量部 オキシ安息香酸メチル 0.1重量部 グリセリン 8.0重量部 95%エタノール 25.9重量部 脱イオン水 22.0重量部 実施例1の(1)で製造した液状化ハイドロキシアパタイト 10.0重量部 合計 100.0重量部。
得られた入浴剤を、200リットルの湯に20ml程度入れ、入浴後に実施例1と同様にして性能を評価し、結果を表1に示す。
【0023】比較例1実施例1において、液状化ハイドロキシアパタイトを除き、脱イオン水を24.0重量部用いた以外は、実施例1と同様に操作し、入浴剤を作製した。
【0024】比較例2下記の成分を混合し、均一に攪拌して入浴剤を得た。
炭酸水素ナトリウム 55重量部 炭酸ナトリウム 25重量部 酸化チタン 5重量部 ポリエチレングリコール 15重量部 香料 微量 合計100重量部。
150〜200リットルの浴槽に対して25gを1回量として使用し、入浴後に実施例1と同様にして性能を評価し、結果を表1に示す。
【0025】
【表1】


【0026】
【発明の効果】本発明の入浴剤を風呂の湯に添加すると、水の分子集団が著しく細分化されるため、入浴したときに肌にやわらかい感じを与え、また、カルシウムイオンが細分化された水分子に取り囲まれて水と共に皮膚から吸収され、皮膚細胞を活性化し、保湿性と保温性を向上する。さらに、浴槽への湯垢の付着が防止され、これは水の細分化作用によるものと考えられる。また、抗菌剤を配合するなどして、皮膚の創傷や炎症の治癒を促進することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 Ca/P比1.0〜2.0のリン酸カルシウム系化合物と卵殻との和1〜80重量部及び澱粉及び/又は穀類粉末10〜50重量部からなる粉砕混合物を発酵熟成させて得られる液状化リン酸カルシウム系化合物組成物を0.01〜95重量%含有することを特徴とする入浴剤。
【請求項2】 液状化リン酸カルシウム系化合物組成物の他に、無機酸のアルカリ金属塩、生薬成分、保湿剤及び皮膚保護剤のうちの1種以上を含む請求項1記載の入浴剤。

【特許番号】特許第3471932号(P3471932)
【登録日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【発行日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−288447
【出願日】平成6年11月22日(1994.11.22)
【公開番号】特開平8−143446
【公開日】平成8年6月4日(1996.6.4)
【審査請求日】平成13年8月9日(2001.8.9)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【出願人】(592065988)株式会社エフ・エル・アイ (3)
【出願人】(592121767)株式会社クレアライフ (2)
【参考文献】
【文献】特開 平1−186814(JP,A)