説明

入退場管理方法および顔画像認識セキュリティシステム

【課題】不特定多数の者が入場する病院等の施設における不正や犯罪の発生を抑止・防止する。
【解決手段】病院等の施設の一以上の扉(12a,12b,12c,・・・)を順次開け進もうとする対象者(P)の顔画像を撮影する一以上の施錠された扉に設けられたモニタカメラ(14Ain,14Bin,14Cin,・・・)と、該モニタカメラの設けられた扉の解錠・施錠を行なう開閉装置(21)と、前記モニタカメラで撮影した対象者の顔画像から対象者の顔の所定の構成要素を認識するとともに顔の特徴量を抽出してこれらを撮影時刻と関連させてデータベース部(33)に記録し、また、前記開閉装置の動作を集中管理する中央処理装置(23)と、を有し、該中央処理装置は、撮影した対象者の顔の所定の構成要素が正しく認識され、かつ、対象者の顔の特徴量の抽出が正常に行われることを最低限の解錠条件として前記開閉装置に扉を解錠するための指令を出す、ことを特徴とする顔画像認識セキュリティシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不特定多数の者が入場する病院、図書館、大学等の施設の扉の施錠・解錠の管理を、顔画像の認識技術を用いて行なうことで、不正や犯罪の発生を抑止・防止するための入退場管理方法および顔画像認識セキュリティシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
会社や研究所など原則として職員等などの特定の者のみが出入りする施設においては、職員等の入退室を管理するためにICカードや生体認証で本人確認を行ない登録されているICカードや生体認証情報と一致した際にドアを解錠する入退出管理システムを導入しているところも多い。
【0003】
例えば特許文献1の「入場管理装置および入退場管理方法」では、予め発行されている磁気カード、ICカード等や受け付けでの入力から訪問者(対象者)の識別情報を訪問先の入口で取得し、また訪問先の入口で訪問者の顔画像を取得するとともにこの顔画像から訪問者の顔の特徴量を抽出し、その後、入場を許可する入場許可時間を決定する。また、訪問先においても訪問者の顔画像を取得するとともにこの顔画像から訪問者の顔の特徴量を再び抽出し、訪問先入口および訪問先で抽出した特徴量とを照合し、その認識結果と決定した入場許可時間に基づき訪問者の訪問場所に対する入場を制御することを特徴とした発明が開示されている。
【0004】
この発明は訪問者(対象者)を指定時間以内のみに通過させて高いセキュリティを保証するとともに、訪問者に対しては特別の操作を要さずに簡単に入場することのできる入場管理装置および入退場管理方法を提供することを目的としている。
【特許文献1】特開2002−279466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の発明は訪問者(対象者)の訪問場所に対する入場を制御を時間に基づき行なうことができる点では優れているものの、予め発行された磁気カード等の所持又は受け付けにおける情報の手入力が必要となるため、不特定多数の者が入場する病院、図書館、大学等の施設にこの発明を適用することは実質的には不可能であった。すなわち不特定多数の者の全てに受け付けにおいて情報の手入力を要求すると、その作業の手間から訪問者の入場が滞るおそれがあるため、この発明を病院等の施設に適用することができなかった。
【0006】
また磁気カード等のみを用いた入場管理では、解錠の履歴は残るものの、磁気カード等をもっていれば誰でも解錠できるため磁気カード等が不正に取得された場合に誰が解錠したのかを知ることはできなかった。
なお訪問者(対象者)を特定するために入場の際に訪問者の顔をモニタカメラで撮影・保存することもあるが、来訪者がサングラスやマスクで顔を隠していた場合には、撮影した画像も訪問者を特定するための有効な手段とはならないといった問題があった。
【0007】
磁気カードやICカードの悪用防止、個人の特定の観点から、近年ではこれらの代わりに指紋・指静脈・虹彩・声紋等を用いた生体認証により入場を管理することも行われているが、生体認証の場合にも磁気カード等と同様に基本情報(名前、ID No、所属、生年月日、パスワードなど)と生体情報(指紋、指静脈、虹彩、声紋、顔など)を予め登録しておく必要があるため、不特定多数の者が出入する施設の入場管理に生体認証を用いることはできない。
【0008】
本発明は上記問題を解決するために創案されたものであり、不特定多数の者が入場する病院、図書館、大学等の施設において、事前の登録がない訪問者(対象者)についても顔画像の認識技術を用いてその入場管理を行なうことで、犯罪の発生を抑止・防止するための入退場管理方法および顔画像認識セキュリティシステムを提供することを目的とする。
また本発明は、施設職員等についても各人の入室権限に基づいて特定の部屋などへの入室を制限し、セキュリティレベルに軽重をつけてその入場管理を行なうことをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するために本発明は、不特定の者が入場する病院、図書館、大学等の施設の一以上の扉(12A,12B,・・・)を順次開け進もうとする対象者(P)の入退場管理方法であって、施錠された一以上の扉の外側に設置したモニタカメラ(14Ain,14Bin,・・・)によって対象者の顔画像を撮影する顔画像撮影段階(S1)と、撮影した対象者の顔の所定の構成要素を認識する構成要素認識段階(S2)と、撮影した対象者の顔の特徴量の抽出を行なう特徴量抽出段階(S3)と、撮影した対象者の顔画像および抽出した特徴量を撮影時刻とともに記録する顔画像記録段階(S4)と、撮影した対象者の顔の所定の構成要素が正しく認識され、かつ、対象者の顔の特徴量の抽出が正常に行われることを最低限の解錠条件として扉を解錠して入場を許可する入場許可段階(S5)と、を備えた、ことを特徴とする。
【0010】
ここで、前記構成要素認識段階(S2)で対象者(P)の顔の所定の構成要素の少なくとも一つが正しく認識されない場合に、対象者にその旨を告知することでサングラスやマスクなどを外した状態での顔画像の再撮影を促す警告段階(S6)を含む、ことが好ましい。
【0011】
また、対象者(P)がモニタカメラ(14Ain,14Bin,・・・)が設けられた二以上の扉(12A,12B,・・・)を開け進む場合には、施設の奥側に位置する扉の前記入場許可段階(S5)における解錠条件に、その手前側に位置する一以上の扉の解錠記録が存在することが条件として付加され、さらには、対象者(P)がモニタカメラ(14Ain,14Bin,14Cin,・・・)が設けられた三以上の扉(12A,12B,12C,・・・)を開け進む場合には、施設の奥側に位置する扉の前記入場許可段階(S5)における解錠条件に、その手前側に位置する二以上の扉(12A,12B,・・・)の解錠記録が正しい順番で存在することが条件として付加される、ようにすることもできる。
【0012】
また本発明は、関係者以外の立ち入りが禁止された施設内の区域に通じる扉(12D,・・・)からの入場を管理するために、施設職員等の関係者の顔の特徴量を予め登録しておく関係者登録段階(Sa)と、前記特徴量抽出段階(S3)で抽出した特徴量と前記関係者登録段階で予め登録した特徴量とを比較照合することで撮影した対象者(P)が関係者であるか否かを判定する第一照合判定段階(Sb)と、をさらに含み、前記入場許可段階(S5)における解錠条件には、前記第一照合判定段階で関係者であるとの判定がなされることが条件として付加される、ことを特徴とする。
【0013】
なお、前記第一照合判定段階(Sb)において関係者ではないとの判定がなされた場合に、その対象者(P)を不審者として顔の特徴量を登録する不審者登録段階(Sc)と、前記特徴量抽出段階(S3)で抽出した特徴量と前記不審者登録段階で予め登録した特徴量とを比較照合することで撮影した対象者が不審者であるか否かを判定する第二照合判定段階(Sd’)と、該第二照合判定段階で不審者であるとの判定がなされた場合に警備員等にその旨を通報する通報段階(Se)を含む、ようにしてやることも好ましい。
【0014】
ここで、前記関係者登録段階(Sa)では暗証番号、ICカード、磁気カード、指紋・指静脈・虹彩・声紋等を用いた生体認証により本人認証するための情報並びに各関係者の各区域への立ち入り権限の有無が更に登録され、前記入場許可段階(S5)における解錠条件には、前記ICカード等による本人認証が完了し、かつ、その区域への立ち入り権限があるとの判定がなされることが条件としてさらに付加される、ようにすることも好ましい。
【0015】
さらに本発明は、不審者の顔の特徴量を予め登録しておく不審者登録段階(Sf)と、前記特徴量抽出段階(S3)で抽出した特徴量と前記不審者登録段階で予め登録した特徴量とを比較照合することで撮影した対象者(P)が不審者であるか否かを判定する第二照合判定段階(Sd)と、該第二照合判定段階で不審者であるとの判定がなされた場合に警備員等にその旨を通報する通報段階(Se)を含む、ようにすることも好ましい。
【0016】
また、顔の特徴量が一致する対象者(P)がモニタカメラ(14Ain,14Bin,・・・)が設けられた二以上の扉(12A,12B,・・・)を開け進んだ時刻から、該対象者の足跡をトレースして記録する足跡追跡段階(Sg)を含む、ことも好ましい。
【0017】
さらに本発明は、施設内から一以上の扉(12A,12B,・・・)を順次開けて退場しようとする対象者(P)の入退場管理方法であって、施錠された一以上の扉の内側に設置したモニタカメラ(14Aout,14Bout,・・・)によって撮影した対象者の顔画像から特徴量の抽出を行ない、その特徴量が前記顔画像記録段階(S1)で記録した特徴量と一致することを最低限の解錠条件として扉を解錠して退場を許可する退場許可段階(Sα)をさらに備える、ものとすることもできる。
【0018】
また本発明は、不特定多数の者が入場する病院、図書館、大学等の施設の一以上の扉(12A,12B,12C,・・・)を順次開け進もうとする対象者(P)の顔画像を撮影する一以上の施錠された扉に設けられたモニタカメラ(14Ain,14Bin,14Cin,・・・)と、該モニタカメラの設けられた扉の解錠・施錠を行なう開閉装置(21)と、前記モニタカメラで撮影した対象者の顔画像から対象者の顔の所定の構成要素を認識するとともに顔の特徴量を抽出してこれらを撮影時刻と関連させてデータベース部(33)に記録し、また、前記開閉装置の動作を集中管理する中央処理装置(23)と、を有し、該中央処理装置は、撮影した対象者の顔の所定の構成要素が正しく認識され、かつ、対象者の顔の特徴量の抽出が正常に行われることを最低限の解錠条件として前記開閉装置に扉を解錠するための指令を出す、ことを特徴とする顔画像認識セキュリティシステムを提供する。
【0019】
ここで、関係者以外の立ち入りが禁止された施設内の区域に通じる扉(12D,・・・)からの入場を管理するために、前記データベース部(33)には施設職員等の関係者の顔の特徴量が予め登録されており、前記中央処理装置(23)はデータベースに記録された顔の特徴量と抽出した対象者の顔の特徴量とを比較照合することで撮影した対象者が関係者であるか否かを判定し、関係者であるとの判定がされることを条件として前記開閉装置に扉を解錠するための指令を出す、ようにすることが好ましい。
【0020】
さらにまた、前記データベース部(33)には施設職員等の関係者が各扉(12A,12B,12C,12D,・・・)から入場する権限の有無が予め記録されており、前記中央処理装置(23)は関係者であると判定された対象者が、その扉からの入場権限を有している場合にのみ前記開閉装置(21)に扉を解錠するための指令を出す、ようにすることも好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の入退場管理方法および顔画像認識セキュリティシステムによれば、施設の施錠された一以上の扉に設置したモニタカメラによって対象者(訪問者)の顔を撮影・記録し、その顔画像から目、鼻、口など所定の構成要素を自動的に認識すると同時に顔の特徴量を抽出し、構成要素の認識(および特徴量の抽出)が正常に行えた場合にのみ扉を解錠するため、対象者(訪問者)の顔が必ず明瞭に撮影・記録され、例えば、サングラスやマスクなどによって顔を隠した状態の対象者の入場を制限することができる。本発明では予め対象者に関する情報が登録されていなくとも対象者の顔を明瞭に撮影することで入場を管理し、心理的な面から不正や犯罪の発生を有効に抑止・防止することができる。また、万が一犯罪等が発生した場合にも、明瞭に記録された顔画像があるため、犯人特定のための有効な情報を確保することができる。なおシステムが自動的に施錠・解錠を管理するため、人を介することなく入場を管理することができる。
【0022】
ここで、顔の構成要素が正しく認識されない場合に、自動でその旨を告知してサングラスやマスクなどを外した状態での再撮影を促してやれば、善意の対象者の円滑な入場を損なうことがなくなる。
【0023】
また、対象者がモニタカメラが設けられた二又は三以上の扉を開け進む場合に、それまで通ってきた扉の解錠履歴(解錠記録の存在や解錠の正しい順番)を解錠条件に付加することで、不正な手段によって施設に入場した対象者がさらに施設奥側に侵入することを有効に防止することができる。
【0024】
また施設職員等の関係者については、予め顔の特徴量を登録しておき、その特徴量と扉の前に設置したモニタカメラによって撮影した顔の特徴量とを比較照合し、施設職員等であることが確認された場合にのみ特定区域に通じる扉を解錠することで、関係者以外が施設内の特定の区域に入場してしまうことを防止することができる。
【0025】
なお、関係者以外立ち入り禁止の区域への入場を試みた対象者を不審者としてその特徴量等を登録し、再びその対象者が関係者以外立ち入り禁止の区域への入場を試みた場合や後日に施設への入場を試みた場合にそれを判定して警備員等に通報することで、不審者が施設内の特定の区域に入場してしまうことを防止するだけでなく、その取り締まりなども可能となる。
【0026】
また上記に加え暗証番号、ICカード、磁気カード、指紋・指静脈・虹彩・声紋等を用いた生体認証による本人認証をも行なうこととすれば、より一層確実に関係者以外の特定の区域への入場防止を防止することができる。さらに施設職員等についてその区域への立ち入り権限を登録し、これを扉においてチェックすることで、施設職員等であっても例えば病院の薬品庫などへの自由な入場を制限することができる。
【0027】
さらに、不審者の顔の特徴量を予め登録し、入口の扉においてこれを対象者の顔の特徴量と比較照合し、一致した場合に警備員等にその旨を通報することとすれば、例えば指名手配犯や施設のブラックリストに載った人物の入場を排除し、適切な対応を取ることができる。
【0028】
なお、顔の特徴量が一致する対象者が二以上の扉を開け進んだ履歴から、対象者の足跡をトレースすることで、その動きから不審な行動を判別することも可能となり、犯罪等の発生防止のための対策をとることも可能となる。また施設職員等については、その足跡から勤務状況などを把握することが可能となる。
【0029】
また、施錠された扉の内側にもモニタカメラを設け、これによって扉を開けて施設から退場しようとする対象者の顔画像を撮影し、その顔画像から抽出した特徴量が、入場時に記録した顔画像の特徴量と一致するときのみ、すなわちその対象者の入場記録が存在するときのみ、扉を解錠して退場を許可することとすれば、不正な手段によって施設に入場した対象者が退場することを有効に防止することができ、その対象者を取り締まることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の入退場管理方法および顔画像認識セキュリティシステムは、本発明は不特定多数の者が入場する病院、図書館、大学等の施設の扉の施錠・解錠の管理を、顔画像の認識技術を用いて行なうことで、不正や犯罪の発生を抑止・防止し、また万一盗難などの犯罪が発生してしまった場合にも犯人の特定を容易化するためのものである。
以下、本発明の入退場管理方法および顔画像認識セキュリティシステムの好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0031】
図1は、本発明の第一の実施例の入退場管理方法を実施するための顔画像認識セキュリティシステム10の全体像を示したものである。
この顔画像認識セキュリティシステム10は不特定多数の者が入場する病院等の施設の入口扉12Aに開け進もうとする対象者Pの顔画像を撮影するモニタカメラ14Ain、モニタカメラ14Ainの設けられた入口扉12Aの解錠・施錠を行なう開閉装置21、モニタカメラ14Ainで撮影した対象者Pの顔画像から対象者Pの顔の所定の構成要素を認識するとともに顔の特徴量を抽出してこれらを撮影時刻と関連させてデータベースに記録し、また、開閉装置21の動作を集中管理する中央処理装置23等を有している。
【0032】
対象者Pの顔画像を撮影するモニタカメラ14Ainは、施錠された施設の入口扉12Aに取り付けられたCCDカメラ等のデジタルカメラであり、入口扉12Aの正面に立った対象者Pの顔画像を正面から撮影するために高さ160cm程度の位置に取り付けられている。なお本実施例ではモニタカメラ14Ainは施錠された入口扉12Aの外側にのみ設けられている。またこのモニタカメラ14Ainには中央処理装置23からの指令に基づき音声を発するスピーカ25が併設されている。
このモニタカメラ14Ainで撮影された顔画像のデジタルデータは、後述する中央処理装置23に有線又は無線によって伝達される。
【0033】
開閉装置21は後述する中央処理装置23からの指令に基づき入口扉12Aの施錠・解錠を行なう装置であり、モータドライブ式や電磁式など一般に用いられている駆動方式が採用される。解錠された後には、対象者Pは入口扉12Aを手で開けて施設内に入場することができる。
なおこの入口扉12Aには1回の解錠につき1人の入場のみを許容するように回転扉や回転式バーを備えたゲートや、駅の自動改札のようにセンサや画像解析によって1人のみの入場を許容し2人目以降の入場を羽根扉等で禁止(供連れ禁止)するゲートを採用することも好ましい。このような場合の開閉装置21による施錠・解錠とは、回転扉や回転式バーの回転の制御や羽根扉等の立倒などを意味しているものとする。
【0034】
中央処理装置23はデータの解析処理やデータの保存を行なうサーバコンピュータであり、施設内の警備室などに設置されている。この中央処理装置23の概略構成を図2にブロック図で示した。図に示したように中央処理装置23は、送受信部27、入力部29、演算部31、データベース部33および出力部35とから構成されている。
【0035】
送受信部27はモニタカメラ14Ainからのデジタルデータを受信し、また、開閉装置21を制御するための制御信号の送信を行なう装置である。また送受信部27は警備室に備えた警報装置37に警報信号などの情報の送信も行なう。さらに送受信部27はインターネット通信回線39に常時接続されており、この顔画像認識セキュリティシステム10の保守管理を行なう管理会社の管理サーバ41にインターネット通信回線39を通じて対象者Pの顔画像のデータを送信する。管理サーバ41は指名手配犯などの不審者の顔画像およびその特徴量を記録した不審者データベース43を有しており、送られてきた顔画像から特徴量を抽出しその特徴量を不審者データベース43に記録された不審者の特徴量と比較することで、対象者Pが指名手配犯などの不審者の可能性がないかの判断を行ない、不審者の可能性がある場合には施設の警報装置37にその旨の通知(不審者警告)を行なう。
【0036】
入力部29は各種情報の入力を行なうキーボードやマウス、記録媒体の読込み手段である。
【0037】
演算部31は、送受信部27および入力部29からの入力に基づきアプリケーションプログラムを実行して各種データの演算処理を行なう装置である。このアプリケーションプログラムは演算部31内の記録媒体に格納された構成要素認識プログラム、特徴量抽出プログラム、顔画像記録プログラム、開閉装置制御プログラム、音声案内プログラム、供連れ検出プログラム等のプログラムである。
構成要素認識プログラムは、送受信部27で受信したモニタカメラ14Ainで撮影した対象者Pの顔画像を解析処理することで、目、鼻、口、顔の輪郭などの顔の主な構成要素が通常存在する位置に存在するか否かの判断を行なうためのプログラムである。
特徴量抽出プログラムは、対象者Pの顔画像を解析処理することで、目・鼻・口・顔の形状やそれら構成要素間の距離などを特徴量として抽出するためのプログラムである。
顔画像記録プログラムは、撮影した対象者Pの顔画像および抽出した特徴量を撮影時刻とともにデータベース部33(後述)に記録するためのプログラムである。
開閉装置制御プログラムは、所定の解錠条件(顔の構成要素が正しく認識されること)が満たされたか否かを判断し、満たされた場合にのみ送受信部27を介して開閉装置21に入口扉を解錠するための指令を送信するためのプログラムである。また解錠を行なった場合に、その解錠記録のデータベース部への登録も行なう。
音声案内プログラムは、対象者Pに対して様々な音声案内を行なうためのプログラムである。
供連れ検出プログラムは、顔画像を撮影した対象者Pと一緒に他の者が解錠した扉から入ってこようとした場合にこれを検出て阻止するためのプログラムである。
【0038】
データベース部33は各種データを記録するための記憶装置であり大容量のハードディスクが用いられる。本実施例ではこのデータベース部33には、前述した顔画像記録プログラムを実行することにより、撮影した対象者Pの顔画像および抽出した特徴量が撮影時刻とともに記録される。また解錠を行なった場合に、解錠記録の登録も行なう。
【0039】
出力部35は入力画面や出力画面、処理データの表示などを行なうディスプレイや印刷を行なうプリンタなどである。
【0040】
次に以上に説明した本実施例の顔画像認識セキュリティシステム10を用いた入退場管理方法について説明する。
本実施例の入退場管理方法は、不特定多数の者が入場する病院、図書館、大学等の施設の入口扉12Aの施錠・解錠の管理を、顔画像の認識技術を用いて行なうことで、不正や犯罪の発生を抑止・防止するためのものである。すなわち本発明は、不特定の者を対象者Pとするが故に事前の登録(対象者Pを識別するための登録)が不可能な場合にも、不正や犯罪の発生を抑止等することができる入退場管理方法を提供するものである。
【0041】
図3は本実施例の入退場管理方法を説明するためのフロー図であり、施設に設けられたモニタカメラ14Ain、開閉装置21、中央処理装置23、警報装置37および管理会社に設けられた管理サーバ41間でのやり取りや処理を表したものである。以下図1等も参照して実施例を説明する。
【0042】
[顔画像撮影段階(S1)]
この段階は病院、図書館、大学等の施設内に入場するための扉(入口扉12A)において、入場を希望する対象者Pの顔の画像を撮影する段階である。
施設内に入場しようとする対象者Pがモニタカメラ14Ainの撮影範囲内に入ると中央処理装置23がそれを感知し、音声案内プログラムを実行することで対象者Pに対してモニタカメラ14Ainに併設したスピーカ25から音声案内を行なう。音声案内は、施設内に入場するためにはモニタカメラ14Ainに正対し静止し、正面からの顔画像を撮影する必要があることを内容とするものである。
【0043】
[構成要素認識段階(S2)]
この段階は中央処理装置23がモニタカメラ14Ainで撮影した対象者Pの顔画像のデジタルデータを解析処理することによって、顔の所定の構成要素(目、鼻、口、顔の輪郭など)を認識する段階である。
中央処理装置23はモニタカメラ14Ainから送られた顔画像のデジタルデータを送受信部27によって受信し、演算部31で構成要素認識プログラムを実行することによって顔画像を解析処理し、顔の所定の構成要素が通常存在する位置に存在するか否かの判断を行なう。すなわち、対象者Pがサングラスやマスクなどを装用しており、顔の全部又は一部が隠れた状態である場合には、顔の所定の構成要素は認識されないこととなる。本段階において顔の所定の構成要素が正しく認識された場合には特徴量抽出段階に進み、正しく認識されなかった場合には警告段階に進む。
【0044】
[特徴量抽出段階(S3)]
この段階は前記構成要素認識段階において顔の所定の構成要素が正しく認識された場合に、対象者Pの顔画像をさらに詳細に解析処理することによって、顔の特徴量を抽出する段階である。
中央処理装置23は演算部31で特徴量抽出プログラムを実行することによって顔画像をより詳細に解析処理し、目・鼻・口・顔の形状やそれら構成要素間の距離などを特徴量として抽出する。なお特徴量抽出プログラムで用いられる技術は既存の顔認識技術であり、現在のところその識別率(対象者Pを識別することができる確率)は99%程度となっている。
【0045】
[警告段階(S6)]
この段階は前記構成要素認識段階において顔の所定の構成要素が正しく認識されなかった場合に、対象者Pにその旨を告知する段階である。
中央処理装置23は構成要素認識プログラムによる顔画像の解析処理によって、顔の所定の構成要素の少なくとも一つが正しく認識されないと判断した場合に、音声案内プログラムを実行し、入口扉12Aのモニタカメラ14Ainに併設したスピーカ25から対象者Pに対して音声案内を行なう。音声案内は、顔の構成要素が正しく認識されないのでサングラスやマスクをしている場合にはそれを外した状態での顔画像を再撮影する必要があることを内容とするものである。顔画像の再撮影のためには、前記の顔画像撮影段階が再度行なわれることになる。
【0046】
[顔画像記録段階(S4)]
この段階は前記特徴量抽出段階において特徴量の抽出が正しく行なわれた後に、その対象者Pの顔画像および抽出した特徴量を撮影時刻とともにデータベース部33に記録する段階である。
前記特徴量抽出段階が正しく行なわれた後に、中央処理装置23は演算部31で顔画像記録プログラムを実行することによって、顔画像、特徴量、撮影時刻を中央処理装置23のデータベース部33に検索のためのインデックスを付して記録する。
【0047】
[入場許可段階(S5)]
この段階は前記構成要素認識段階において顔の所定の構成要素が正しく認識され、かつ、前記特徴量抽出段階において特徴量の抽出が正しく行なわれた後に、入口扉12Aを解錠して入場を許可する段階である。
中央処理装置23は構成要素認識段階および特徴量抽出段階が正常に完了した後に、開閉装置制御プログラムを実行することによって、送受信部27を介して入口扉12Aの開閉装置21に指令を送り一時的に解錠を行なうとともに、その解錠履歴の記録も行なう。このとき入口扉12Aを自動的に開けてやるか、解錠したので入口扉12Aを開けることができる旨を音声案内してやることも好ましい。なお前述したように、供連れ検出プログラムなどの実行によって、顔画像を撮影した対象者Pと一緒に他の者が解錠した入口扉12Aから入ってくることを防止してやることが極めて好ましい。
【0048】
その他として指名手配犯などの不審者が施設内に入場することを防止し、または、入場した不審者を取り締まることを目的として以下の段階を実行することも好ましい。
[不審者登録段階(Sf)]
この段階は本発明の顔画像認識セキュリティシステム10の保守管理を行なう管理会社の管理サーバ41の不審者データベース43に指名手配犯などの不審者の顔画像およびその特徴量を予め記録しておく段階である。なお中央処理装置23のデータベース部33に不審者の特徴量を予め記録しておくことによって管理サーバ41の不審者データベース43を利用しないようにすることもできるが、個々の施設における不審者に関するデータの更新作業が煩雑となるため、管理サーバ41の不審者データベース43を利用することが好ましい。
[第二照合判定段階(Sd)]
この段階はインターネット通信回線39を通じて管理サーバ41に送られてきた顔画像から特徴量を抽出し、その特徴量を不審者データベース43に記録された不審者の特徴量と比較することで、対象者Pが指名手配犯などの不審者の可能性がないかの判断を行なう段階である。
[通報段階(Se)]
この段階は第二照合判定段階で対象者Pが不審者であるとの判定がなされた場合に、警報装置37で警報信号などを発することによって警備員等にその旨を通報する段階である。なお第二照合判定段階で不審者であるとの判定がなされた場合には、前記の入場許可段階において原則として入口扉12Aの解錠は行なわれないが、不審者の取り締まりを目的とする場合にはあえて解錠を行ない施設内で不審者を確保するようにしてやることも可能である。
【0049】
以上に説明した本実施例の顔画像認識セキュリティシステムおよび入退場管理方法によれば、予め対象者Pに関する情報の登録をすることができない不特定多数の者が利用する病院等の施設においても、対象者Pの顔が明瞭に撮影されることを条件に入場を許可することによって、心理的な面から不正や犯罪の発生を有効に抑止・防止することができる。また万が一犯罪等が発生した場合にも、明瞭に記録された顔画像があるため、犯人特定のための有効な情報を確保することができる。さらに対象者Pが指名手配犯などの不審者でないかをチェックすることにより、不審者の入場の排除等、適切な対応を取ることができる。
【実施例2】
【0050】
図4は、本発明の第二の実施例の入退場管理方法を実施するための顔画像認識セキュリティシステムの全体像を示したものである。以下図を参照して本実施例の顔画像認識セキュリティシステムについて説明する。
本実施例の顔画像認識セキュリティシステム10は、実施例1で説明した顔画像認識セキュリティシステムとほぼ同様のものであるが、施設内に施錠された扉が二以上あり、各扉12A,12B,・・・には中央処理装置23と接続されたモニタカメラ14Ain,14Bin,・・・(スピーカ25を含む)と開閉装置21が設けられ、より一層セキュリティ管理が厳重なものとなっている。なお各モニタカメラ14Ain,14Bin,・・・は扉12A,12B,・・・の外側に設置されおり、また、各扉12A,12B,・・・の解錠記録はインデックスをつけた顔画像とともにデータベース部33に記録される。
【0051】
また図面は省略するが、中央処理装置23には解錠記録検索プログラムが追加されている。解錠記録検索プログラムは、特徴量によって特定された対象者Pが、通過してきた扉の解錠記録が(正しい順番で)存在するか否かを検索するためのプログラムである。
【0052】
以下本実施例の顔画像認識セキュリティシステム10を用いた入退場管理方法について説明するが、実施例1と同様の部分に付いてはその説明を省略する。
【0053】
図5のフロー図に示したように、前述した顔画像撮影段階(S1)、構成要素認識段階(S2)、特徴量抽出段階(S3)、警告段階(S6)、顔画像記録段階(S4)は、対象者Pが施錠された各扉12A,12B,・・・を解錠しようとする場合にその都度上記と同様の方法で実施される。なお前述の不審者登録段階(Sf)、第二照合判定段階(Sd)、通報段階(Se)を実施してやることももちろん可能である。
【0054】
本実施例では前記入場許可段階(S5)において、実施例1の解錠条件(顔の所定の構成要素が正しく認識される(および特徴量の抽出が正しく行なわれる)ことに加え、対象者Pがモニタカメラ14Ain,14Bin,・・・が設けられた二以上の扉12A,12B,・・・を開け進む場合には、施設の奥側に位置する扉の手前側に位置する一以上の扉の解錠記録が存在することが条件として付加されている(解錠記録確認)。
さらにはモニタカメラ14Ain,14Bin,14Cin,・・・が設けられた扉12A,12B,12C,・・・が三以上である場合には、これらの解錠条件に、その手前側に位置する二以上の扉の解錠記録が正しい順番で存在することが条件として付加される(解錠記録確認)。
【0055】
中央処理装置23は解錠記録検索プログラムを実行することによって付加された解錠条件が充足されているかを判定し、全ての解錠条件が充足されている場合には開閉装置制御プログラムを実行することによって、送受信部27を介して扉12A,12B,・・・の開閉装置21に指令を送り一時的に解錠を行なう。解錠条件の少なくとも一つが充足されていない場合には、中央処理装置23は音声案内プログラムを実行することにより対象者Pに対して適正な解錠履歴(通過記録)がないため解錠できない旨を音声案内する。
【0056】
以上に説明した本実施例の顔画像認識セキュリティシステムおよび入退場管理方法によれば、施設の奥側に位置する扉を解錠するためにその手前側の扉の解錠記録を要求することで、不正な手段によって施設に入場した対象者Pがさらに施設奥側に侵入することを有効に防止することができる。
【実施例3】
【0057】
図6は、本発明の第三の実施例の入退場管理方法を実施するための顔画像認識セキュリティシステムの全体像を示したものである。
本実施例の顔画像認識セキュリティシステム10は、実施例2で説明した顔画像認識セキュリティシステムとほぼ同様のものであるが、関係者以外の立ち入りが禁止された施設内の区域(特定区域)への入場を管理するために、その区域へつながる扉12D,・・・に中央処理装置23と接続されたモニタカメラ14Din,・・・(スピーカ25を含む)と開閉装置21が設けられている。なおこのモニタカメラ14Din,・・・も区域へつながる扉の外側に設置されおり、また、データベース部33には職員等の関係者の顔の特徴量がインデックスをつけて予め記録されている。
【0058】
また図面は省略するが、中央処理装置23には関係者判断プログラムが追加されている。関係者判断プログラムは、特徴量によって特定された対象者Pが、予め登録された関係者であるか否かを特徴量から判断するためのプログラムである。
【0059】
以下本実施例の顔画像認識セキュリティシステム10を用いた入退場管理方法について図7のフロー図を用いて説明するが、実施例2と同様の部分に付いてはその説明を省略する。また実施例2の管理会社における処理についてはその記載を省略する。
【0060】
[関係者登録段階(Sa)]
この段階は施設職員等の関係者の顔の特徴量を予め中央処理装置23のデータベース部33に登録しておく段階である。
本実施例の顔画像認識セキュリティシステム10の管理者は全ての施設職員等の関係者の顔を撮影し、特徴量抽出プログラムを実行することによって各関係者の特徴量の抽出を行なう。中央処理装置23はその特徴量を氏名、所属部署などとともに顔画像にインデックスをつけてデータベース部33に記録する。
【0061】
[第一照合判定段階(Sb)]
この段階は関係者以外の立ち入りが禁止された施設内の区域につながる扉12D,・・・のモニタカメラ14Din,・・・で撮影した対象者Pの顔画像から抽出した特徴量を予め登録されている関係者の特徴量と比較照合することで対象者Pが関係者であるか否かを判定する段階である。
関係者以外の立ち入りが禁止された施設内の区域につながる扉12D,・・・を開け進もうとする対象者Pは、まずその扉外側に設けられたモニタカメラ14Din,・・・で顔の撮影を行なう。中央処理装置23は顔画像をデータベースに記録するとともに特徴量抽出プログラムを実行することによってその対象者Pの特徴量の抽出を行ない、また、関係者判断プログラムを実行することによって抽出した特徴量が、予め登録された関係者の特徴量と一致するか否かを判断する。一致する場合には一時的に扉12D,・・・を解錠するとともに、その対象者P(関係者)の解錠履歴を記録する。一致しない場合には解錠しないのはもちろんであるが、音声案内プログラムを実行することで関係者以外は中に入ることができない旨を音声案内してやることも好ましい。
【0062】
その他として不審者を取り締まることを目的として以下の段階を追加して実行することも好ましい。
[不審者登録段階(Sc)]
この段階は前記第一照合判定段階において関係者ではないとの判定がなされた場合に、その対象者Pを不審者として顔の特徴量を登録しておく段階である。なお実施例1における不審者登録段階の指名手配犯などの不審者の登録は管理サーバ41の不審者データベース43に行なわれるが、この不審者の特徴量の登録は中央処理装置23のデータベース部33に行なわれるのが原則である。しかしながら、この不審者の特徴量を中央処理装置23から管理サーバ41にアップロードすることで、複数の施設において不審者情報を共有できるようにしてやることももちろんできる。
[第二照合判定段階(Sd’)]
この段階は前記特徴量抽出段階で抽出した特徴量と前記不審者登録段階で登録した特徴量とを比較照合することで撮影した対象者Pが不審者であるか否かを判定する段階である。
[通報段階(Se)]
この段階は実施例1の通報段階と同様である。
【0063】
その他として対象者Pの不審な行動を判別して犯罪等の発生防止のための対策をとることを目的として以下の段階を実行することも好ましい。なお図7ではかかる段階の記載は省略している。
[足跡追跡段階(Sg)]
この段階は顔の特徴量が一致する対象者Pがモニタカメラ14Ain,14Bin,・・・が設けられた二以上の扉12A,12B,・・・を開け進んだ時刻から、その対象者Pの足跡をトレースして記録する段階である。
中央処理装置23は対象者Pの足跡をトレースするための足跡トレースプログラムおよびトレースした足跡が不審なものでないかを判断する不審行動判別プログラムを有しており、これらを実行することで対象者Pが不審な行動をとっている場合には警報装置37からその旨を警備員等に通知する。通知を受けた警備員等はその対象者Pに対する監視を強化することにより、犯罪等の発生を有効に防止することができる。また不審行動判別プログラムが、対象者Pが不審な行動をとっている場合にその顔画像およびその特徴量を不審者データベース43に登録することももちろん好ましい。
【0064】
以上に説明した本実施例の顔画像認識セキュリティシステムおよび入退場管理方法によれば、施設内の特定の区域へ関係者以外の者が立ち入ることを禁止することができ、また、関係者以外がその区域への立ち入りを試みた場合にはその者を不審者として登録することで犯罪の発生防止や取り締まりに役立てることができる。なお関係者登録段階(Sa)で各関係者に特定区域への立ち入り権限を各扉ごとに記録し、第一照合判定段階(Sb)でその権限の有無をチェックし、権限がある場合にのみ解錠するようにしてやることもできる。
【実施例4】
【0065】
図面は省略するが、本実施例の顔画像認識セキュリティシステムは、実施例3で説明した顔画像認識セキュリティシステムに従来からある認証システムを追加したもので、ICカード、磁気カード、生体認証による本人認証を解錠条件に付加した入退場管理方法を実施するものである。
すなわち本実施例の入退場管理方法は、実施例3の関係者登録段階(Sa)において、データベース部33に職員等の関係者の顔の特徴量の他に暗証番号、ICカード、磁気カード、指紋・指静脈・虹彩・声紋等を用いた生体認証により本人認証するための情報並びに各関係者の各区域への立ち入り権限の有無を更に予め記録しておき、前記入場許可段階(S5)における解錠条件に、ICカード等による本人認証が完了し、かつ、その区域への立ち入り権限があるとの判定がなされることを付加したものである。
【0066】
以上に説明した本実施例の顔画像認識セキュリティシステムおよび入退場管理方法によれば、施設内の特定の区域への立ち入りのセキィリティレベルをより高めることができることはもちろん、関係者別に各特定区域への立ち入りを制限することができる。
【実施例5】
【0067】
図面は省略するが、本実施例の顔画像認識セキュリティシステムは、実施例3のシステムに、施錠された一以上の扉(施設の入口扉が好ましい)の内側にも中央処理装置23に接続されたモニタカメラを追加して設置したものである。この本実施例の入退場管理方法は、この顔画像認識セキュリティシステムを用い、退場時においても扉を解錠して開けることを必要とすることでセキィリティレベルをより一層高めたものである。
【0068】
そのためにこの入退場管理方法には以下の段階がさらに備えられる。
[退場許可段階(Sα)]
この段階は施錠された一以上の扉の内側に設置したモニタカメラ14Aout,14Bout,・・・によって撮影した対象者Pの顔画像から特徴量の抽出を行ない、その特徴量が前記顔画像記録段階で記録した特徴量と一致することを条件として扉を解錠して退場を許可する段階である。
中央処理装置23は前述した解錠記録検索プログラムを実行することで、特徴量によって特定した対象者Pの入場記録がきちんと存在するかどうかを判断し、存在した場合にのみ解錠して退場を許可する。これにより不正な手段によって入場した対象者Pが施設外に容易に退場してしまうことを防止することができ、その者の取り締まりも容易に行なうことができるようになる。
【0069】
なお入場と退場とを管理することで、実施例3のシステムに本実施例のシステムを応用して追加することで、登録した関係者の出勤退社時刻の管理なども行なうことができる。
【0070】
以上に説明した各実施例による顔画像認識セキュリティシステムおよび入退場管理方法によれば、不特定数の者が入場する病院、図書館、大学等における不正や犯罪の発生を有効に抑止・防止することができる。
なお本発明は上記実施例に限られず本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施例1の顔画像認識セキュリティシステムの全体像を示したものである。
【図2】中央処理装置の概略構成を示したブロック図である。
【図3】実施例1の入退場管理方法を説明するためのフロー図である。
【図4】実施例2の顔画像認識セキュリティシステムの全体像を示したものである。
【図5】実施例2の入退場管理方法を説明するためのフロー図である。
【図6】実施例3の顔画像認識セキュリティシステムの全体像を示したものである。
【図7】実施例3の入退場管理方法を説明するためのフロー図である。
【符号の説明】
【0072】
P 対象者
10 顔画像認識セキュリティシステム
12A,12B,・・・,12D,・・・ 扉
14A,14B,・・・,14D,・・・ モニタカメラ
21 開閉装置
23 中央処理装置
25 スピーカ
27 送受信部
29 入力部
31 演算部
33 データベース部
35 出力部
37 警報装置
39 インターネット通信回線
41 管理サーバ
43 不審者データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不特定の者が入場する病院、図書館、大学等の施設の一以上の扉(12A,12B,・・・)を順次開け進もうとする対象者(P)の入退場管理方法であって、
施錠された一以上の扉の外側に設置したモニタカメラ(14Ain,14Bin,・・・)によって対象者の顔画像を撮影する顔画像撮影段階(S1)と、
撮影した対象者の顔の所定の構成要素を認識する構成要素認識段階(S2)と、
撮影した対象者の顔の特徴量の抽出を行なう特徴量抽出段階(S3)と、
撮影した対象者の顔画像および抽出した特徴量を撮影時刻とともに記録する顔画像記録段階(S4)と、
撮影した対象者の顔の所定の構成要素が正しく認識され、かつ、対象者の顔の特徴量の抽出が正常に行われることを最低限の解錠条件として扉を解錠して入場を許可する入場許可段階(S5)と、
を備えた、ことを特徴とする入退場管理方法。
【請求項2】
前記構成要素認識段階(S2)で対象者(P)の顔の所定の構成要素の少なくとも一つが正しく認識されない場合に、対象者にその旨を告知することでサングラスやマスクなどを外した状態での顔画像の再撮影を促す警告段階(S6)を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の入退場管理方法。
【請求項3】
対象者(P)がモニタカメラ(14Ain,14Bin,・・・)が設けられた二以上の扉(12A,12B,・・・)を開け進む場合には、施設の奥側に位置する扉の前記入場許可段階(S5)における解錠条件に、その手前側に位置する一以上の扉の解錠記録が存在することが条件として付加される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の入退場管理方法。
【請求項4】
対象者(P)がモニタカメラ(14Ain,14Bin,14Cin,・・・)が設けられた三以上の扉(12A,12B,12C,・・・)を開け進む場合には、施設の奥側に位置する扉の前記入場許可段階(S5)における解錠条件に、その手前側に位置する二以上の扉(12A,12B,・・・)の解錠記録が正しい順番で存在することが条件として付加される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の入退場管理方法。
【請求項5】
関係者以外の立ち入りが禁止された施設内の区域に通じる扉(12D,・・・)からの入場を管理するために、
施設職員等の関係者の顔の特徴量を予め登録しておく関係者登録段階(Sa)と、
前記特徴量抽出段階(S3)で抽出した特徴量と前記関係者登録段階で予め登録した特徴量とを比較照合することで撮影した対象者(P)が関係者であるか否かを判定する第一照合判定段階(Sb)と、
をさらに含み、
前記入場許可段階(S5)における解錠条件には、前記第一照合判定段階で関係者であるとの判定がなされることが条件として付加される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の入退場管理方法。
【請求項6】
前記第一照合判定段階(Sb)において関係者ではないとの判定がなされた場合に、その対象者(P)を不審者として顔の特徴量を登録する不審者登録段階(Sc)と、
前記特徴量抽出段階(S3)で抽出した特徴量と前記不審者登録段階で予め登録した特徴量とを比較照合することで撮影した対象者が不審者であるか否かを判定する第二照合判定段階(Sd’)と、
該第二照合判定段階で不審者であるとの判定がなされた場合に警備員等にその旨を通報する通報段階(Se)を含む、ことを特徴とする請求項5に記載の入退場管理方法。
【請求項7】
前記関係者登録段階(Sa)では暗証番号、ICカード、磁気カード、指紋・指静脈・虹彩・声紋等を用いた生体認証により本人認証するための情報並びに各関係者の各区域への立ち入り権限の有無が更に登録され、
前記入場許可段階(S5)における解錠条件には、前記ICカード等による本人認証が完了し、かつ、その区域への立ち入り権限があるとの判定がなされることが条件としてさらに付加される、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の入退場管理方法。
【請求項8】
不審者の顔の特徴量を予め登録しておく不審者登録段階(Sf)と、
前記特徴量抽出段階(S3)で抽出した特徴量と前記不審者登録段階で予め登録した特徴量とを比較照合することで撮影した対象者(P)が不審者であるか否かを判定する第二照合判定段階(Sd)と、
該第二照合判定段階で不審者であるとの判定がなされた場合に警備員等にその旨を通報する通報段階(Se)を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の入退場管理方法。
【請求項9】
顔の特徴量が一致する対象者(P)がモニタカメラ(14Ain,14Bin,・・・)が設けられた二以上の扉(12A,12B,・・・)を開け進んだ時刻から、該対象者の足跡をトレースして記録する足跡追跡段階(Sg)を含む、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の入退場管理方法。
【請求項10】
施設内から一以上の扉(12A,12B,・・・)を順次開けて退場しようとする対象者(P)の入退場管理方法であって、
施錠された一以上の扉の内側に設置したモニタカメラ(14Aout,14Bout,・・・)によって撮影した対象者の顔画像から特徴量の抽出を行ない、その特徴量が前記顔画像記録段階(S1)で記録した特徴量と一致することを最低限の解錠条件として扉を解錠して退場を許可する退場許可段階(Sα)をさらに備えた、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の入退場管理方法。
【請求項11】
不特定多数の者が入場する病院、図書館、大学等の施設の一以上の扉(12A,12B,12C,・・・)を順次開け進もうとする対象者(P)の顔画像を撮影する一以上の施錠された扉に設けられたモニタカメラ(14Ain,14Bin,14Cin,・・・)と、
該モニタカメラの設けられた扉の解錠・施錠を行なう開閉装置(21)と、
前記モニタカメラで撮影した対象者の顔画像から対象者の顔の所定の構成要素を認識するとともに顔の特徴量を抽出してこれらを撮影時刻と関連させてデータベース部(33)に記録し、また、前記開閉装置の動作を集中管理する中央処理装置(23)と、を有し、
該中央処理装置は、撮影した対象者の顔の所定の構成要素が正しく認識され、かつ、対象者の顔の特徴量の抽出が正常に行われることを最低限の解錠条件として前記開閉装置に扉を解錠するための指令を出す、ことを特徴とする顔画像認識セキュリティシステム。
【請求項12】
関係者以外の立ち入りが禁止された施設内の区域に通じる扉(12D,・・・)からの入場を管理するために、
前記データベース部(33)には施設職員等の関係者の顔の特徴量が予め登録されており、
前記中央処理装置(23)はデータベースに記録された顔の特徴量と抽出した対象者の顔の特徴量とを比較照合することで撮影した対象者が関係者であるか否かを判定し、関係者であるとの判定がされることを条件として前記開閉装置に扉を解錠するための指令を出す、ことを特徴とする請求項11に記載の顔画像認識セキュリティシステム。
【請求項13】
前記データベース部(33)には施設職員等の関係者が各扉(12A,12B,12C,12D,・・・)から入場する権限の有無が予め記録されており、
前記中央処理装置(23)は関係者であると判定された対象者が、その扉からの入場権限を有している場合にのみ前記開閉装置(21)に扉を解錠するための指令を出す、ことを特徴とする請求項12に記載の顔画像認識セキュリティシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−98814(P2009−98814A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268335(P2007−268335)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(593056635)日本事務器株式会社 (3)
【Fターム(参考)】