説明

入退室管理システム

【課題】メインテナンス性を向上した入退室管理システムを提供すること。
【解決手段】ICカード読取装置23からの認証結果に基づく有接点リレー35の接点切替により電気錠22の作動を制御する電気錠制御装置30と、電気錠制御装置30と通信可能に接続された中央制御装置40とを備える入退室管理システム10において、電気錠制御装置30には、複数組のICカード読取装置23及び電気錠22が接続され、電気錠制御装置30は、各電気錠22に対応する有接点リレー35ごとにユニット化された複数個のリレーユニットモジュール31を備え、リレーユニットモジュール31ごとの有接点リレー35の切替回数に基づいて各有接点リレー35の劣化状態を推定し、その劣化状態を表示部37にて表示する。また、中央制御送致においても、リレーユニットモジュール31ごとの有接点リレー35の劣化状態を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、建物における入退室管理に用いて好適な入退室管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ICカードに記録された利用者の識別情報(ID情報)を読み取るICカード読取装置からのID情報に基づいて建物内のドアなどに取り付けられた電気錠を制御し、建物の特定のエリアに出入りする人を管理する入退室管理システムがある(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の入退室管理システムでは、ICカード読取装置からIDの認証信号を受けて電気錠の作動制御を行う電気錠制御装置は、各ドアに設けられた電気錠ごとにそれぞれ分散させて設けられている。
【特許文献1】特開平10−49767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の入退室管理システムのように、各ドアの電気錠ごとに分散させて電気錠制御装置を設けることは、コストアップの原因となる。コストアップを抑えるためには、各ドアに対応する電気錠制御部を一の電気錠制御装置にまとめて設けることが考えられる。しかし、複数の電気錠制御部をまとめて設けると、その中の一の電気錠制御部の交換等のメインテナンスをする必要が生じた場合に、誤って他の電気錠制御部を交換してしまう虞がある。
【0004】
本願発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、複数の電気錠の作動をそれぞれ制御するためのモジュールを電気錠制御装置に複数備えた入退室管理システムにおいて、メインテナンス性を向上した構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき説明する。なお以下では、理解を容易にするため、発明の実施の形態において対応する構成例を括弧書きで適宜示すが、この括弧書きで示した具体的構成例に限定されるものではない。
【0006】
請求項1記載の発明は、ICタグ(ICカード21)に記録された識別情報を非接触で読み取り、当該識別情報の認証を行う非接触式ICタグ読取装置(ICカード読取装置23)と、前記ICタグ読取装置からの認証結果に基づく有接点リレー(有接点リレー35)の接点切替により、前記ICタグ読取装置に対応して設けられた電気錠(電気錠22)の作動を制御する電気錠制御装置(電気錠制御装置30)と、前記電気錠制御装置と通信可能に接続された中央制御装置(中央制御装置40)とを備える入退室管理システム(入退室管理システム10)に関するものである。そして、前記電気錠制御装置には、前記ICタグ読取装置及びそれに対応する電気錠の組が複数組接続されるとともに、前記電気錠制御装置は、前記各組の電気錠に対応する有接点リレーごとに回路基板上にユニット化されて構成される複数個のリレーユニット(リレーユニットモジュール31)と、前記リレーユニットごとの有接点リレーの切替回数をカウントするカウント手段(CPU32)と、前記カウント手段によりカウントされた前記リレーユニットごとの有接点リレーの切替回数に基づいて前記リレーユニットごとの有接点リレーの劣化状態を推定する劣化状態推定手段(CPU32)と、前記劣化状態推定手段により推定された前記リレーユニットごとの有接点リレーの劣化状態を報知する第1報知手段(表示部37)と、前記リレーユニットごとの有接点リレーの切替回数及び劣化状態の少なくとも一方を前記中央制御装置に送信する送信手段(伝送ドライバ部34)とを備え、前記中央制御装置は、前記リレーユニットごとの有接点リレーの切替回数及び劣化状態の少なくとも一方を報知する第2報知手段(中央表示部41)を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本願請求項1に記載の入退室管理システムによると、中央制御装置にはリレーユニットごとの有接点リレーの切替回数及び劣化状態の少なくとも一方が送信される。これにより、リレーユニットごとの有接点リレーの切替回数や劣化状態を、中央制御装置で一括して管理することが可能となる。また、中央制御装置は、それらを第2報知手段で報知するので、第2報知手段の報知結果に基づいて、リレーユニットのメインテナンスを施行業者等に指示することも可能となる。
【0008】
また、請求項1に記載の発明では、電気錠制御装置にはリレーユニットごとの有接点リレーの劣化状態を報知する第1報知手段を備えているので、リレーユニットのメインテナンスを依頼された作業者が、交換すべきリレーユニットを現場において容易に確認することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明にかかる入退室管理システムを具体化した一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る入退室管理システムの全体構成を示すブロック図である。図2は電気錠制御装置の構成を示すブロック図である。図3は、リレーユニットモジュールの構成を示すブロック図である。
【0010】
本実施形態の入退室管理システム10は、ドアの通過希望者が携行するICカード21に記録された識別情報(ID情報)に基づいて、建物内のドアに取り付けられた電気錠22を制御し、建物の特定のエリアに出入りする人を管理するものである。また、入退室管理システム10は、システム内の構成要素の状態(作動回数や劣化状態等)をも管理するものである。
【0011】
図1に示すように、入退室管理システム10は、ICカード読取装置23及びそれに対応する電気錠22と、電気錠制御装置30と、中央制御装置40とを含んで構成されている。本実施形態では、中央制御装置40には、複数個の電気錠制御装置30が接続されている。また、各電気錠制御装置30には、複数組のICカード読取装置23及び電気錠22が接続されている。
【0012】
ICカード読取装置23は入退室管理が行われているドアの近傍に設けられている。ドアの通過希望者は、個人の識別情報(ID情報)が記憶されたICタグを内蔵するICカード21を携行している。ICカード読取装置23は、ドアの通過希望者が携行するICカード21に記憶されたID情報を非接触で読み取るものである。ICカード読取装置23にはドアの通過を許可された者のID情報が予め登録されている。そして、IDカード読取装置は、読み取ったID情報が予め記憶されているID情報と一致するか否かを判定し、それらが一致した場合に読み取ったID情報を認証して電気錠制御装置30に認証信号を出力する。
【0013】
電気錠制御装置30は、リレーユニットモジュール31、CPU32、記憶部33及び伝送ドライバ部34を含んで構成されている。リレーユニットモジュール31はICカード読取装置23及びそれに対応する電気錠22の各組に対応して複数個設けられている。各リレーユニットモジュール31は、対応するICカード読取装置23及び電気錠22ごとに分割された回路基板上に、有接点リレー35と当該有接点リレー35の駆動回路36と表示部37とを備えて構成されている。そして、各リレーユニットモジュール31は、それぞれ独立して電気錠制御装置30に対して着脱可能とされている。各リレーユニットモジュール31には、対応するICカード読取装置23及び電気錠22が接続されている。そして、ICカード読取装置23からの認証信号は対応するリレーユニットモジュール31の駆動回路36に入力され、この認証信号を受けた駆動回路36により有接点リレー35の接点が切り替えられて対応する電気錠22の制御が行われる。
【0014】
表示部37は複数のLEDを備えており、CPU32からの信号によりLEDが点灯するようになっている。駆動回路36はCPU32にも接続されている。そしてCPU32では各有接点リレー35の切替回数の累積加算を行い、その累積加算結果を記憶部33に記憶する。CPU32では各電気錠22の作動回数の累積加算も行っており、この累積加算結果も記憶部33に記憶する。CPU32は、有接点リレー35の切替回数及び電気錠22の作動回数に基づいて、有接点リレー35及び電気錠22の劣化状態の推定を行う。
【0015】
詳述すると、CPU32は記憶部33に記憶された有接点リレー35の切替回数の累積加算値と予め設定された閾値とを比較して、有接点リレー35の劣化状態を推定する。すなわち、有接点リレー35は、接点切替の回数が多くなると接点が磨耗し、磨耗故障を起こす虞がある。このため、切替回数を所定の閾値と比較し、切替回数が閾値を超えた場合に有接点リレー35の接点が磨耗劣化したものと推定するものである。
【0016】
具体的には、CPU32は有接点リレー35の切替回数を接点切替回数第1閾値及び接点切替回数第2閾値と順次比較する。接点切替回数第1閾値としては、統計上この閾値以上の回数の接点切替が行われると接点の磨耗劣化の可能性があると判断される程度の値が設定されている。また、接点切替回数第2閾値は接点切替回数第1閾値よりも大きな値が設定されており、この値以上の接点切替が行われると、接点の磨耗劣化の可能性が高いと判断される値が設定されている。そして、有接点リレー35の切替回数が接点切替回数第1閾値以上接点切替回数第2閾値未満であると判断された場合には、有接点リレー35の交換が推奨される状態にあるとして、表示部37にリレーユニットモジュール31交換推奨LEDを点灯させる。また、有接点リレー35の切替回数が接点切替回数第2閾値以上であると判断された場合には、有接点リレー35の交換が必要な状態にあるとして、表示部37にリレーユニットモジュール31交換警報LEDを点灯させる。
【0017】
電気錠22についても、作動回数が多くなると内部モータ等が劣化し得るため、電気錠22作動回数第1閾値と第2閾値とを設定しておき、これらとの比較結果に応じて、表示部37に電気錠22交換推奨LED又は電気錠22交換警報LEDを点灯させる。また、CPU32は、有接点リレー35の切替回数及び電気錠22の作動回数と各閾値との比較結果を、伝送ドライバ部34を介して中央制御装置40に送信する。
【0018】
中央制御装置40は管理センターに設置されている。中央制御装置40には、各有接点リレー35及び電気錠22の劣化状態を表示する中央表示部41が設けられている。そして、中央制御装置40は、各電気錠制御装置30からの信号に基づいて、各有接点リレー35(リレーユニットモジュール31)及び電気錠22ごとの劣化状態を中央表示部41に表示する。
【0019】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0020】
本実施形態では、電気錠制御装置30に装備されている複数個のリレーユニットモジュール31は、それぞれ独立して着脱可能に構成されている。このため、電気錠制御装置30内の特定のリレーユニットモジュール31の有接点リレー35が磨耗劣化した場合においても、当該磨耗劣化したリレーユニットモジュール31のみを交換することが可能となる。その結果、電気錠制御装置30のメインテナンス性を向上させることが可能となる。また、一の電気錠制御装置30に複数個のリレーユニットモジュール31を装備可能な構成としたので、建物内のレイアウト変更等で電気錠22を設置するドアの個数が変更された場合でも容易に対応することが可能となる。
【0021】
本実施形態では、電気錠制御装置30において各リレーユニットモジュール31における有接点リレー35の接点切替回数値を累積加算し、この累積加算値を接点切替第1閾値及び接点切替第2閾値と比較することで有接点リレー35の接点の磨耗劣化状態の推定をしている。そして、この推定結果は中央制御装置40に送信されるとともに中央表示部41に表示される。これにより、中央制御装置40が設置された管理センターにおいて、入退室管理システム10内の各有接点リレー35の磨耗劣化状態を一括して把握することができる。このため、管理センターにおいて、全てのリレーユニットモジュール31の劣化状態を把握することが可能となる。その結果、管理センターにおいて、中央表示部41の表示に基づいて、リレーユニットモジュール31のメインテナンスを施行業者等に指示することが可能となる。
【0022】
本実施形態では、各リレーユニットモジュール31には、各リレーユニットモジュール31内の有接点リレー35の磨耗劣化状態を表示する表示部37が備えられている。これにより、リレーユニットモジュール31のメインテナンスを依頼された作業者が、交換すべきリレーユニットモジュール31を現場において容易に確認することが可能となる。すなわち、本実施形態では、一の電気錠制御装置30内に複数のリレーユニットモジュール31が存在し得るため、作業現場において作業者は電気錠制御装置30内のいずれのリレーユニットモジュール31を交換すべきなのかの判別が困難な可能性もある。この点本実施形態では、各リレーユニットモジュール31に有接点リレー35の磨耗劣化状態を示すLEDが設けられている。このため、作業者は現場においてリレーユニットモジュール31のLEDが点灯しているかを確認することで、交換が必要なリレーユニットモジュール31を容易に確認することが可能となる。
【0023】
本実施形態では、有接点リレー35の接点切替回数に加えて電気錠22の作動回数の累積加算もされている。そして、電気錠22の作動回数の累積加算値に基づいて電気錠22の劣化状態も推定され、その推定結果が中央制御装置40に送信されるとともに、中央表示部41に表示される。この結果、中央表示部41の表示に基づいて電気錠22のメインテナンスを施工業者に指示することが可能となる。
【0024】
本実施形態では、リレーユニットモジュール31の劣化状態を示すLED表示は、モジュール交換推奨LEDとモジュール交換警告LEDの2段階表示としている。モジュール交換警告の前にモジュール交換推奨のプレアラームを発することで交換実施時期を予め計画することが可能となり、メインテナンス性が向上する。
【0025】
なお、本発明は上記実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施しても良い。
【0026】
上記実施形態では、有接点リレー35の切替回数及び電気錠22の作動回数と各閾値との比較結果に基づいて有接点リレー35及び電気錠22の劣化状態を推定し、その推定結果を電気錠制御装置30から中央制御装置40に送信した。しかし、推定結果に代えて又は推定結果に加えて、有接点リレー35の切替回数及び電気錠22の作動回数自体を中央制御装置40に送信するようにしてもよい。これにより、中央制御装置40が設置された管理センター等でリレーユニットモジュール31及び電気錠22の都度の切替及び作動回数を把握することが可能となる。
【0027】
上記実施形態では、リレーユニットモジュール31及び電気錠22のそれぞれについて、劣化状態を判断するための2つの閾値を設定した。しかし、それぞれの劣化状態を判断するための閾値は、1つずつ設定するようにしてもよいし、更に多段階に設定してもよい。
【0028】
上記実施形態では、各リレーユニットモジュール31に表示部37を設け、そこに各リレーユニットモジュール31及び電気錠22の劣化状態を表示した。しかし、リレーユニットモジュール31とは別個の表示装置に各リレーユニットモジュール31及び電気錠22の劣化状態を表示するようにしてもよい。
【0029】
上記実施形態では、一の電気錠制御装置30に設けられるリレーユニットモジュール31を4個としたが、一の電気錠制御装置30に設けられるリレーユニットモジュール31の個数は、電気錠制御装置30に接続されるICカード読取装置23及び電気錠22の組数に応じて変更することが可能である。
【0030】
上記実施形態では、表示部37及び中央表示部41において、LEDを点灯させてリレーユニットモジュール31の劣化状態等を表示したが、ブザーや音声等の方法で報知するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本願発明の実施形態に係る入退室管理システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】本願発明の実施形態に係る電子錠制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本願発明の実施形態に係るリレーユニットモジュールの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0032】
10…入退室管理システム、21…ICカード、22…電気錠、23…ICカード読取装置、30…電気錠制御装置、31…リレーユニットモジュール、32…CPU、33…記憶部、34…伝送ドライバ部、35…有接点リレー、36…駆動回路、37…表示部、40…中央制御装置、41…中央表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICタグに記録された識別情報を非接触で読み取り、当該識別情報の認証を行う非接触式ICタグ読取装置と、
前記ICタグ読取装置からの認証結果に基づく有接点リレーの接点切替により、前記ICタグ読取装置に対応して設けられた電気錠の作動を制御する電気錠制御装置と、
前記電気錠制御装置と通信可能に接続された中央制御装置とを備える入退室管理システムにおいて、
前記電気錠制御装置には、前記ICタグ読取装置及びそれに対応する電気錠の組が複数組接続されるとともに、
前記電気錠制御装置は、前記各組の電気錠に対応する有接点リレーごとに回路基板上にユニット化されて構成される複数個のリレーユニットと、前記リレーユニットごとの有接点リレーの切替回数をカウントするカウント手段と、前記カウント手段によりカウントされた前記リレーユニットごとの有接点リレーの切替回数に基づいて前記リレーユニットごとの有接点リレーの劣化状態を推定する劣化状態推定手段と、前記劣化状態推定手段により推定された前記リレーユニットごとの有接点リレーの劣化状態を報知する第1報知手段と、前記リレーユニットごとの有接点リレーの切替回数及び劣化状態の少なくとも一方を前記中央制御装置に送信する送信手段とを備え、
前記中央制御装置は、前記リレーユニットごとの有接点リレーの切替回数及び劣化状態の少なくとも一方を報知する第2報知手段を備えることを特徴とする入退室管理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−214860(P2008−214860A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49382(P2007−49382)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】