説明

入退室管理システム

【課題】ICカード認証と生体認証の後にICカードに情報書込する入退室管理システムであって、利用者がICカードをICカードリーダ・ライタに1回だけ接近させるだけで済むようにする。
【解決手段】生体情報を読み取り、その生体情報を記憶する。次に、ICカードの固有情報を読み取り、その固有情報から正当性を認証する。次に、固有情報に対応する登録生体情報と記憶生体情報とを照合し、正当性を認証する。次に、記憶生体情報を消去する。さらに、入室時の認証が正当性有のときには、ICカードに対して付加情報の記録を行う。また、退室時の認証が正当性有のときには、その付加情報の消去を行う。そして、その記録または消去が行われた後には、電気錠扉を開錠する出力を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はICカード認証と生体認証を適用した入退室管理システムの技術分野に属する。特に、ICカード認証と生体認証における利用者の操作負荷を軽減することができ、しかも高度なセキュリティ管理を達成することができる入退室管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティ室へ入室するときに、ICカード認証と生体認証とを行って、正当性を有するICカードで、かつ正当性を有する利用者であることが認証された後に、ICカードに入室情報を書き込むセキュリティシステムの発明が知られている(特許文献1)。このセキュリティシステムにおいては、セキュリティ室への入退室だけでなく、書き込まれた入室情報に基づいて、セキュリティ室内の機器へのログオンを許可するかどうかを判定する。
【特許文献1】特開2002−197500
【0003】
この従来のセキュリティシステムにおける、入室時の動作を図4を参照して説明する。その動作の過程をフロー図として示す。まず、ステップS101において、セキュリティ室に入室するときには、利用者は携帯するICカードを入室用ICカードリーダ・ライタの読取部に接近させ、ICカードに記録されている登録番号と指紋情報を読み取らせる。次に、ステップS102において、利用者は自分の指先を入室用指紋入力装置の読取部に接触させ、入室用指紋入力装置に指紋を読み取らせる。次に、ステップS103において、入室用ICカードリーダ・ライタは、ICカードから読み取った登録番号が予め登録されている登録番号と一致するか比較する。次に、ステップS104において、入室用指紋入力装置より読み取った指紋情報がICカードに記録されている指紋情報と一致するか比較する。登録番号と指紋の両方が一致した場合、ステップS105において、電気錠扉を開け、セキュリティ室への入室を許可する。次に、ステップS106において、入室用ICカードリーダ・ライタは、ICカードの入室履歴に入室情報を記録する。入室情報は、例えば、入室許可(入室許可時オン)、入室日時などで構成される。
【0004】
このように、この従来のセキュリティシステムにおいては、ICカードから登録番号と指紋情報を読み取り、次に、利用者の指先から指紋情報を読み取り、照合処理を行った後に、ICカードに入室情報を記録する(書き込む)というステップから構成されている。すなわち、利用者の指先から指紋情報を読み取るステップを挟むように前後の2回のステップにおいて、利用者はICカードを入室用ICカードリーダ・ライタに接近させ読み取りと書き込みを行う必要性がある。前後2回も同じICカードに対して同じ操作することは、利用者にとっては不合理かつ極めて煩雑な操作であるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題を解決するために成されたものである。その目的は、ICカード認証と生体認証による認証後にICカードに情報の書き込み(記録/消去)を行う態様の入退室管理システムにおいて、利用者がICカードをICカードリーダ・ライタに1回だけ接近させるだけで済む入退室管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る入退室管理システムは、 利用者を特定するための生体情報を利用者から読み取る生体情報読取手段と、 前記読み取った生体情報を記憶する生体情報記憶手段と、 前記生体情報記憶手段による生体情報の記憶が行われた後において、ICカードの固有情報をICカードから読み取るICカード読取手段と、 前記読み取った固有情報から正当性を有するICカードであるか否かを認証するICカード認証手段と、 前記ICカード認証手段による認証が行われた後において、前記固有情報に対応して登録されている生体情報と前記生体情報記憶手段が記憶する生体情報とを照合し、正当性を有する利用者であるか否かを認証する生体認証手段と、 前記生体認証手段による認証が行われた後において、前記生体情報記憶手段が記憶する前記生体情報を消去する生体情報消去手段と、 入室するときに前記生体認証手段によって正当性を有する利用者であると認証されたときには、前記ICカードに対して付加情報の記録を行う付加情報記録手段と、 退室するときに前記生体認証手段によって正当性を有する利用者であると認証されたときには、前記ICカードに記録されている付加情報の消去を行う付加情報消去手段と、 前記付加情報記録手段による付加情報の記録または前記付加情報消去手段による付加情報の消去が行われた後には、電気錠扉を開錠する出力を行う開錠出力手段と、 を備えるようにしたものである。
また、本発明の請求項2に係る入退室管理システムは、請求項1に係る入退室管理システムにおいて、前記生体情報記憶手段は前記読み取った生体情報を暗号化して記憶し、前記生体認証手段は前記生体情報記憶手段が記憶する生体情報を復号化して前記照合を行うとともに、前記照合の後に復号化した生体情報を消去するようにしたものである。
また、本発明の請求項3に係る入退室管理システムは、請求項1または2に係る入退室管理システムにおいて、前記生体情報読取手段と前記生体情報記憶手段の部分は指先静脈入力装置によって実現され、前記ICカード読取手段と前記付加情報記録手段と前記付加情報消去手段の部分は非接触ICカードリーダ・ライタによって実現され、手のひら側で保持した前記ICカードを前記非接触ICカードリーダ・ライタの読取書込部に接近させたとき、前記保持する手の指先の位置が前記指先静脈入力装置の指先読取部の位置となるように前記読取書込部と前記指先読取部を配置するようにしたものである。
また、本発明の請求項4に係る入退室管理システムは、請求項1〜3のいずれかに係る入退室管理システムにおいて、前記付加情報は前記電気錠扉から入室する室内における前記固有情報に対応するセキュリティ権限情報であるようにしたものである。
また、本発明の請求項5に係る入退室管理システムは、請求項1〜4のいずれかに係る入退室管理システムにおいて、前記登録されている生体情報は前記ICカードに登録されている生体情報であるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1に係る入退室管理システムによれば、 生体情報読取手段により利用者を特定するための生体情報が利用者から読み取られ、 生体情報記憶手段により前記読み取った生体情報が記憶され、 前記生体情報記憶手段による生体情報の記憶が行われた後において、ICカード読取手段によりICカードの固有情報がICカードから読み取られ、 ICカード認証手段により前記読み取った固有情報から正当性を有するICカードであるか否かが認証され、 前記ICカード認証手段による認証が行われた後において、生体認証手段により前記固有情報に対応して登録されている生体情報と前記生体情報記憶手段が記憶する生体情報とが照合され、正当性を有する利用者であるか否かが認証され、 前記生体認証手段による認証が行われた後において、生体情報消去手段により前記生体情報記憶手段が記憶する前記生体情報が消去され、 入室するときに前記生体認証手段によって正当性を有する利用者であると認証されたときには、付加情報記録手段により前記ICカードに対して付加情報の記録が行われ、 退室するときに前記生体認証手段によって正当性を有する利用者であると認証されたときには、付加情報消去手段により前記ICカードに記録されている付加情報の消去が行われ、 前記付加情報記録手段による付加情報の記録または前記付加情報消去手段による付加情報の消去が行われた後には、開錠出力手段により電気錠扉を開錠する出力が行われる。したがって、ICカード認証と生体認証による認証後にICカードに情報の書き込み(記録/消去)行う態様の入退室管理システムにおいて、利用者がICカードをICカードリーダ・ライタに1回だけ接近させるだけで済む入退室管理システムが提供される。
また、本発明の請求項2に係る入退室管理システムによれば、請求項1に係る入退室管理システムにおいて、前記生体情報記憶手段により前記読み取った生体情報が暗号化されて記憶され、前記生体認証手段により前記生体情報記憶手段が記憶する生体情報が復号化されて前記照合が行われるとともに、前記照合の後に復号化した生体情報が消去される。したがって、前記生体情報記憶手段が記憶する生体情報のセキュリティを極めて高くすることができる。
また、本発明の請求項3に係る入退室管理システムによれば、請求項1または2に係る入退室管理システムにおいて、前記生体情報読取手段と前記生体情報記憶手段の部分は指先情報入力装置によって実現され、前記ICカード読取手段と前記付加情報記録手段と前記付加情報消去手段の部分は非接触ICカードリーダ・ライタによって実現され、手のひら側で保持した前記ICカードを前記非接触ICカードリーダ・ライタの読取書込部に接近させたとき、前記保持する手の指先の位置が前記指先情報入力装置の指先読取部の位置となるように前記読取書込部と前記指先読取部が配置される。すなわち、入退室管理システムは入室時または退室時におけるICカード認証と生体認証を含むすべての処理を実質的に同時に行うことができる。したがって、利用者は入退室における処理を1回の操作で済ませることができる。
また、本発明の請求項4に係る入退室管理システムによれば、請求項1〜3のいずれかに係る入退室管理システムにおいて、前記付加情報は前記電気錠扉から入室する室内における前記固有情報に対応するセキュリティ権限情報であるようにしたものである。したがって、入室時における室内等の状況に応じた利用者のセキュリティ権限、たとえば機器、媒体、フォルダー等のアクセス権限を設定することができる。
また、本発明の請求項5に係る入退室管理システムによれば、請求項1〜4のいずれかに係る入退室管理システムにおいて、前記登録されている生体情報は前記ICカードに登録されている生体情報である。したがって、入退室管理システムにおいて生体情報を登録して管理する手間を省くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。本発明の入退室管理システムにおける構成の一例を図1に示す。図1において、10は生体情報読取部、20は生体認証部、21は生体情報記憶手段、22は暗号化手段、23は生体情報メモリ、24は生体認証手段、25は復号化手段、26は生体情報消去手段、30はICカードリーダ・ライタ、40はICカード認証部、41はICカード認証手段、50はデータ処理部、51は登録固有情報メモリ、52は登録生体情報メモリ、53は付加情報記録手段、54は付加情報消去手段、55は開錠出力手段、60は電気錠扉、100はICカード、101は固有情報、102は登録生体情報、103は付加情報、104はセキュリティ権限情報、105は入室情報、106はログオン情報である。
生体情報読取部10は利用者の生体情報(身体的特徴)を読み取る部分である。本人認証のためによく利用される生体情報としては、指先の指紋、瞳の中の虹彩、目の網膜の毛細血管、手の甲や指の静脈、音声、筆跡、顔、等が周知である。生体情報読取部10の方式は読み取る生体情報によって異なる。たとえば、生体情報が虹彩であれば、虹彩パターンの濃度値のヒストグラムを用いる認証方式が行われる。また、生体情報が静脈であれば、近赤外光を透過させて得られる静脈パターンを用いる認証方式が行われる。本発明においては周知の生体情報読取部10を利用することができ限定はされない。特に、指先の静脈パターンを用いる認証方式は、詳細を後述する本発明の構成においてICカード認証と生体認証を含むすべての処理を実質的に同時に行うことができることから好適である(図2参照)。
【0009】
生体認証部20は、図1に示す一例において、生体情報記憶手段21、暗号化手段22、生体情報メモリ23、生体認証手段24、復号化手段25、生体情報消去手段26によって構成される。
生体情報記憶録手段21は生体情報読取部10が読み取った生体情報を暗号化手段22によって暗号化した上で生体情報メモリ23に記憶する手段である。
生体認証手段24は生体情報メモリ23が記憶している生体情報を復号化手段25によって復号化した上で登録生体情報と照合し、生体情報が一致するか否かによって利用者が正当性を有するか否かの認証を行う。登録生体情報はICカード10のメモリに登録された登録生体情報102、またはデータ処理部50の登録生体情報メモリに登録されている登録生体情報のいずれかを利用する。登録生体情報も暗号化して登録しておくことができ、その場合には生体認証手段24は復号化手段25によって登録生体情報を復号化した上で照合を行う。データ処理部50の登録生体情報メモリに登録されている登録生体情報は、一般的に、多数であるからICカード10のメモリに記憶されている固有情報(社員番号、等)101に対応する登録生体情報がデータ処理部50から生体認証手段24に読み込まれる。
生体認証手段24による認証が行われた後において、生体情報消去手段26は生体情報記憶手段21が記憶する生体情報を消去する。また、生体情報消去手段26はレジスター等の一時的に記憶されている生体情報および登録生体情報についても消去する。
【0010】
ICカードリーダ・ライタ30はICカード10のリーダライタである。当然ながら、本発明の入退室管理システムにおいて入室管理を行うときにはICカードリーダ・ライタ30は電気錠扉60の室外側の近くに設置され、退室管理を行うときにはICカードリーダ・ライタ30は電気錠扉60の室内側の近くに設置される。ICカードリーダ・ライタ30はICカード10のメモリに記憶されている固有情報101、登録生体情報102を読み取るとともに、付加情報103をメモリに書き込む。付加情報103としては、図1に示す一例において、セキュリティ権限情報104、入室情報、ログオン履歴が含まれている。
ICカード認証部40はICカード認証手段41を有する。ICカード認証手段41はICカード10のメモリに記憶されている固有情報101とデータ処理部50の登録固有情報メモリ51に登録されている固有情報とに基づいてICカード10が正当性を有するか否かの認証を行う。たとえば、固有情報が社員番号であるときには、ICカード10のメモリに記憶されている社員番号が登録固有情報メモリ51に登録されているか否かによってICカード10が正当性を有するか否かを認証する。
【0011】
データ処理部50は、図1に示す一例において、登録固有情報メモリ51、登録生体情報メモリ52、付加情報記録手段53、付加情報消去手段54、開錠出力手段55によって構成される。
登録固有情報メモリ51は登録した固有情報を記憶するメモリである。ICカード10のメモリに記憶されている固有情報101に相当する固有情報を登録固有情報メモリ51に登録しておく。その登録が行われた固有情報を参照することにより、ICカード認証手段41はそのICカード10が正当性を有すると認証する。すなわち、固有情報の登録を行うことにより、その登録されたICカード10を利用して入退室を行うことが可能となる。
登録生体情報メモリ52は登録生体情報を記憶するメモリである。ICカード10の正当性を有する所有者の生体情報をICカード10の固有情報と関連付けて登録しておく。その登録が行われた生体情報を固有情報に基づいて検索し生体情報読取部10が読み取った生体情報と比較することにより、生体認証手段24はその所有者(利用者)が正当性を有するか否かを認証する。すなわち、生体情報の登録を行うことにより、その登録された利用者は入退室を行うことが可能となる。なお、図1に示す一例においては、登録生体情報メモリ52だけでなく、ICカード10のメモリに登録生体情報102が記憶されているが、通常は、いずれか一方にだけ登録が行われていればよい。
【0012】
付加情報記録手段53はICカード10に対して付加情報の記録を行う。入室するときに生体認証手段24によって正当性を有する利用者であると認証されたときに、付加情報の記録が行われる。付加情報は入室した後における利用者の行動を管理するための情報である。付加情報は入室したことを示す入室情報のようにすべての利用者に共通する形式の情報と、セキュリティ権限のように利用者の固有情報に関連付けられた個別の情報とがある。
付加情報消去手段54はICカード10に記録された付加情報の消去を行う。退室するときに生体認証手段24によって正当性を有する利用者であると認証されたときに、付加情報の消去が行われる。
開錠出力手段55は電気錠扉を開錠する出力を行う。その出力は、付加情報記録手段53による付加情報の記録が行われた後、または付加情報消去手段54による付加情報の消去が行われた後において行われる。
電気錠扉60は開錠出力手段55の出力に基づいて開閉する電気錠の付いた扉である。入室または退室のときにおける利用者の通行が可能か否かはこの電気錠扉60の開閉が可能か否かによって決まる。
【0013】
ICカード10は、図1に示す一例において、そのメモリに固有情報101、登録生体情報102、付加情報103を記憶する。さらに、付加情報103はセキュリティ権限情報104、入室情報105、ログオン履歴106等から構成される。
固有情報101は、たとえば、社員番号、ID(identification)番号、等のICカードごとによって異なる個別の番号、あるいは本人認証に使用されるPIN(personal identification number)、相互認証等のため情報、暗号化復号化のための情報、等である。それらの一般的な使用方法については周知であるから説明を省略し、ここでは社員番号が固有情報である一例について説明する。
登録生体情報102はICカード10の正当性を有する所有者の生体情報をICカード10のメモリに登録(記憶)しておく。その登録が行われた生体情報を生体情報読取部10で読み取った生体情報と比較することにより、生体認証手段24はその所有者(利用者)が正当性を有するか否かを認証する。すなわち、生体情報の登録を行うことにより、その登録された利用者は入退室を行うことが可能となる。なお、図1に示す一例においては、ICカード10のメモリだけでなく、登録生体情報メモリ52に登録生体情報が記憶されているが、いずれか一方にだけ登録が行われていればよい。
【0014】
付加情報103は生体認証部20とICカード認証部40の両者によって正当性を有すると認証されたときにICカード10のメモリに記録が行われる情報である。
セキュリティ権限情報104は入室した室内における利用者の権限を規定するための情報である。たとえば、その入室した室内に設置されているコンピュータ等の機器を利用する権限の有無、アクセスを許可する範囲の設定、記録媒体への情報複写の制限、等に関する情報である。すなわち、利用する前に、利用する機器のカードリーダにICカード10を装着して利用者権限についての認証を得ることにより利用者の権限が規定される。
入室情報105は入室したことを示す情報で、たとえば、入室した年月日時分秒の記録が行われる。入室時に記録した年月日時分秒と退室時の年月日時分秒とを比較して不合理な点(日付が替わっている等)があれば、退室するときに電気錠の解除が行われない。
ログオン履歴106は入室した室内におけるコンピュータ等の機器の利用状況に関するログである。たとえば、そのログによって利用者が利用した機器が正常停止してない状態と判定されれば、退室するときに電気錠の解除が行われない。
【0015】
本発明の入退室管理システムにおける生体情報読取部10とICカードリーダ・ライタ30の構成の一例を図2に示す。図2において、10は生体情報読取部、30はICカードリーダ・ライタ、100はICカード、200は手、201は指先である。
図2に示すように、利用者は手200のひらにおいてICカード10を保持しており、その保持した手200の指先201を伸ばしている。また、図2に示す一例においては、生体情報読取部10は指先201の静脈のパターンを読み取る指先静脈入力装置であって、その指先静脈入力装置とICカードリーダ・ライタ30は一体化した構成となっている。そして、利用者が手200のひらにおいて保持したICカード10をICカードリーダ・ライタ30(非接触ICカードリーダ・ライタ)の読取書込部に接近させたとき、その保持した手200の指先201が指先静脈入力装置の指先読取部の位置に自然と来るように指先静脈入力装置とICカードリーダ・ライタ30が配置されている。このように配置することによって、入退室管理システムにおける入室時または退室時におけるICカード認証と生体認証を含むすべての処理を実質的に同時に行うことが可能である。したがって、利用者は入退室における処理を1回の操作で済ませることができる。
【0016】
以上、構成について説明した。次に、本発明の入退室管理システムにおける動作について説明する。本発明の入退室管理システムにおける動作をフロー図として図3に示す。
まず、図3のステップS1(生体情報読取)において、利用者は電気錠扉60の近くに設置されている生体情報読取部10に対して利用者の生体情報を読み取らせる。生体情報読取部10は利用者を特定するための生体情報を利用者から読み取る。図2に示す構成の生体情報読取部10であれば、生体情報読取部10は指先静脈入力装置であるから、利用者の指先の静脈のパターンを読み取る。
次に、ステップS2(生体情報記憶)において、生体情報記憶手段21は生体情報読取部10が読み取った生体情報を生体情報メモリ23に記憶する。このとき、生体情報記憶手段21は生体情報読取部10が読み取った生体情報を暗号化手段22により暗号化した上で生体情報メモリ23に記憶することができる。生体情報を暗号化することにより個人情報である生体情報の漏洩に対するセキュリティが向上し好適である。
【0017】
次に、ステップS3(ICカード読取)において、ICカードリーダ・ライタ30はICカードの固有情報101、たとえば社員番号をICカード10から読み取る。
次に、ステップS4(ICカード認証)において、ICカード認証部40はデータ処理部50の登録固有情報メモリ51を検索し、ICカードリーダ・ライタ30が読み取った固有情報に対応する固有情報が、登録固有情報メモリ51に登録されているか否かを検索する。そして、登録されているときには、ICカード認証部40はICカード10が正当性を有するICカードであると認証する。その認証がなされたときにはステップS5に進む。
一方、登録固有情報メモリ51に登録されていないときには、ICカード認証部40はエラー(error)を出力し、その出力を受けてICカードリーダ・ライタ30の表示部(図示せず)にエラー表示が行われ、ステップS6(生体情報消去)を実行した上でステップS1に戻る(図示せず)。
【0018】
次に、ステップS5(生体認証)において、正当性を有するICカードであると認証したICカード10に登録生体情報102が登録されているときには、ICカードリーダ・ライタ30はその登録生体情報102を読み取り、生体認証部20に転送する。この登録生体情報102が暗号化されていないときには暗号化してから転送すると好適である。生体認証部20の生体認証手段24は、ICカードリーダ・ライタ30が読み取った登録生体情報102と、生体情報メモリ23が記憶する生体情報とを照合し、生体情報が一致するか否かによって利用者が正当性を有するか否かの認証を行う。勿論、生体情報メモリ23が記憶する生体情報、およびが登録生体情報102が暗号化されているときには、生体認証手段24はその生体情報を複合化手段25によって複合化した上で照合を行う。生体情報が一致するときには、生体認証手段24は利用者が正当性を有する利用者(ICカード10の所有者)であると認証する。その認証がなされたときにはステップS6に進む。
一方、生体情報が一致しないときには、生体認証部20はエラー(error)を出力し、その出力を受けて生体認証部20の表示部にエラー表示が行われ、ステップS6を実行した上でステップS1に戻る(図示せず)。
【0019】
一方、正当性を有するICカードであると認証したICカード10に登録生体情報102が登録されていないときには、データ処理部50はICカード10の固有情報、たとえば社員番号に関連付けられている生体情報が登録生体情報メモリ52に登録されているか否かを検索する。そして、登録されているときには、データ処理部はその生体情報を生体認証部20に転送する。この登録されている生体情報が暗号化されていないときには暗号化してから転送すると好適である。生体認証部20の生体認証手段24は、登録生体情報メモリ52に登録されている生体情報と、生体情報メモリ23が記憶する生体情報とを照合し、生体情報が一致するか否かによって利用者が正当性を有するか否かの認証を行う。勿論、生体情報メモリ23が記憶する生体情報、および登録されている生体情報が暗号化されているときには、生体認証手段24はその生体情報を複合化手段25によって複合化した上で照合を行う。生体情報が一致するときには、生体認証手段24は利用者が正当性を有する利用者(ICカード10の所有者)であると認証する。その認証がなされたときにはステップS6に進む。
一方、生体情報が一致しないときには、生体認証部20はエラー(error)を出力し、その出力を受けて生体認証部20の表示部にエラー表示が行われ、ステップS6を実行した上でステップS1に戻る(図示せず)。
【0020】
なお、正当性を有するICカードであると認証したICカード10に登録生体情報102が登録されているか否かを示す情報を、固有情報に含まれる情報としておくと判定が容易となり好適である。
一方、固有情報がICカード10と登録生体情報メモリ52のいずれにも登録されていないときには、生体認証部20はエラー(error)を出力し、その出力を受けて生体情報読取部10の表示部にエラー表示が行われ、ステップS6(生体情報消去)を実行した上でステップS1に戻る(図示せず)。
上述のステップS6(生体情報消去)においては、生体情報メモリ23に記憶されている生体情報、およびその他の一時記憶装置(レジスター等9に記憶されている生体情報の消去が行われる。
【0021】
次に、ステップS7(入室/退室)において、データ処理部50は入室のときのデータ処理を行っているか退出のときのデータ処理を行っているかの別を判定する。この判定は、生体情報読取部10またはICカードリーダ・ライタ30が室外に設置した入室用のものであるか室内に設置された退室用のもであるかによって決まる。
入室のときであれば、ステップS8(付加情報記録)において、データ処理部50の付加情報記録手段53は付加情報をICカード10のメモリに記録する。
退室のときであれば、ステップS9(付加情報消去)において、データ処理部50の付加情報消去手段54はICカード10のメモリに記録されている付加情報を消去する。
次にステップS10(開錠出力)において、データ処理部50の開錠出力手段55は開錠出力を行う。この開錠出力を入力すると電気錠扉60の電気錠が所定の時間の間だけ開の状態となって、電気錠扉60を開くことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の入退室管理システムにおける構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の入退室管理システムにおける生体情報読取部10とICカードリーダ・ライタ30の構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の入退室管理システムにおける動作を示すフロー図である。
【図4】従来のセキュリティシステムにおける入室時の動作を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0023】
10 生体情報読取部
20 生体認証部
21 生体情報記憶手段
22 暗号化手段
23 生体情報メモリ
24 生体認証手段
25 復号化手段
26 生体情報消去手段
30 ICカードリーダ・ライタ
40 ICカード認証部
41 ICカード認証手段
50 データ処理部
51 登録固有情報メモリ
52 登録生体情報メモリ
53 付加情報記録手段
54 付加情報消去手段
55 開錠出力手段
60 電気錠扉
100 ICカード
101 固有情報
102 登録生体情報
103 付加情報
104 セキュリティ権限情報
105 入室情報
106 ログオン情報
200 手
201 指先

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者を特定するための生体情報を利用者から読み取る生体情報読取手段と、
前記読み取った生体情報を記憶する生体情報記憶手段と、
前記生体情報記憶手段による生体情報の記憶が行われた後において、ICカードの固有情報をICカードから読み取るICカード読取手段と、
前記読み取った固有情報から正当性を有するICカードであるか否かを認証するICカード認証手段と、
前記ICカード認証手段による認証が行われた後において、前記固有情報に対応して登録されている生体情報と前記生体情報記憶手段が記憶する生体情報とを照合し、正当性を有する利用者であるか否かを認証する生体認証手段と、
前記生体認証手段による認証が行われた後において、前記生体情報記憶手段が記憶する前記生体情報を消去する生体情報消去手段と、
入室するときに前記生体認証手段によって正当性を有する利用者であると認証されたときは、前記ICカードに対して付加情報の記録を行う付加情報記録手段と、
退室するときに前記生体認証手段によって正当性を有する利用者であると認証されたときには、前記ICカードに記録されている付加情報の消去を行う付加情報消去手段と、
前記付加情報記録手段による付加情報の記録または前記付加情報消去手段による付加情報の消去が行われた後には、電気錠扉を開錠する出力を行う開錠出力手段と、
を備えることを特徴とする入退室管理システム。
【請求項2】
請求項1に係る入退室管理システムにおいて、前記生体情報記憶手段は前記読み取った生体情報を暗号化して記憶し、前記生体認証手段は前記生体情報記憶手段が記憶する生体情報を復号化して前記照合を行うとともに、前記照合の後に復号化した生体情報を消去することを特徴とする入退室管理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の入退室管理システムにおいて、前記生体情報読取手段と前記生体情報記憶手段の部分は指先静脈入力装置によって実現され、前記ICカード読取手段と前記付加情報記録手段と前記付加情報消去手段の部分は非接触ICカードリーダ・ライタによって実現され、手のひら側で保持した前記ICカードを前記非接触ICカードリーダ・ライタの読取書込部に接近させたとき、前記保持する手の指先の位置が前記指先静脈入力装置の指先読取部の位置となるように前記読取書込部と前記指先読取部を配置することを特徴とする入退室管理システム。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の入退室管理システムにおいて、前記付加情報は前記電気錠扉から入室する室内における前記固有情報に対応するセキュリティ権限情報であることを特徴とする入退室管理システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の入退室管理システムにおいて、前記登録されている生体情報は前記ICカードに登録されている生体情報であることを特徴とする入退室管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−235763(P2009−235763A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82413(P2008−82413)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】