入退室管理装置
【課題】共連れで入退室した利用者の欠損した入退室情報を、この利用者を共連れしたと推定される別の利用者の入退室情報で補完することにより、管理区域における利用者の入退室の履歴の信頼性を向上させ、管理区域のセキュリティの低下を十分に抑えた入退室管理装置を提供する。
【解決手段】入退室管理装置1は、欠損していると判定した利用者の入退室情報について、統計的に処理した利用者の在室時間情報、および移動時間情報に基づいて、欠損している入退室情報にかかる入退室日時を推定する。入退室管理装置1は、ここで推定した入退室日時に基づいて入退室履歴DB24が記憶している入退室情報の中から、欠損していると判定した利用者の入退室情報を補完する補完用入退室情報を抽出する。そして、入退室管理装置1は、ここで抽出した補完用入退室情報で、欠損している利用者の入退室情報を補完する。
【解決手段】入退室管理装置1は、欠損していると判定した利用者の入退室情報について、統計的に処理した利用者の在室時間情報、および移動時間情報に基づいて、欠損している入退室情報にかかる入退室日時を推定する。入退室管理装置1は、ここで推定した入退室日時に基づいて入退室履歴DB24が記憶している入退室情報の中から、欠損していると判定した利用者の入退室情報を補完する補完用入退室情報を抽出する。そして、入退室管理装置1は、ここで抽出した補完用入退室情報で、欠損している利用者の入退室情報を補完する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管理区域における利用者の入退室を管理する入退室管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管理区域における利用者の入退室を管理する入退室管理システムがあった。管理区域とは、入退室できる人を制限した区域であり、例えば、建物全体や、建物内の部屋単位で設定される。一般的な入退室管理システムは、管理区域の出入口に設けられた扉に電子錠を取り付けている。また、入退室管理システムは、利用者に対して発行している、磁気カード、ICカード、非接触ICカード、RFタグ等の媒体が記憶する識別情報(利用者ID)を読み取る読取装置や、利用者の指紋、掌紋、虹彩、顔等の生体情報を読み取る読取装置等を、管理区域の扉を挟んだ両側、すなわち管理区域内側および管理区域外側、に配置している。入退室管理システムは、読取装置が読み取った認証情報(上述した利用者IDや生体情報等)を用いて、管理区域における利用者の入退室を許可するかどうか(入退室が許可されている利用者であるかどうか)を判定し、この判定結果に応じて電子錠の施錠、解錠を制御する。さらに、入退室管理システムは、管理区域における利用者の入退室の履歴を入退室管理装置に記憶する。
【0003】
入退室管理システムは、管理区域に入退室することが許可された利用者とともに、別の利用者が入退室する、所謂共連れ、が発生すると、共連れで入退室した利用者の入退室情報が履歴として入退室管理装置に残らない。すなわち、管理区域における利用者の入退室情報に欠損が生じることになる。その結果、管理区域における利用者の入退室を入退室管理装置で正確に管理することができず、管理区域のセキュリティを低下させてしまう。
【0004】
この対策として、欠損している利用者の入退室情報を補完することが特許文献1〜3等で提案されている。特許文献1は、パーソナルコンピュータ(PC)のサーバへのログインや、ログアウトにかかる情報を用いて、欠損している入退室情報を補完する構成である。また、特許文献2は、アクセスが無く一定時間経過すると、現在のフロア(管理区域)から、予め設定されているフロアへ共連れで戻っていると推定し、入退室情報を補完する構成である。特許文献3は、利用者の入退室情報から、把握した当該利用者の行動パターンに基づいて、欠損している入退室情報を補完する構成である。
【特許文献1】特開2002−208050号公報
【特許文献2】特開2003− 44891号公報
【特許文献3】特開2006− 65572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、共連れで入退室した利用者の入退室情報は、当該利用者を共連れした別の利用者の入退室情報で補完すべきである。これに対して、特許文献1〜3では、上述したように、補完すべき入退室情報を新たに生成している。すなわち、利用者の欠損している入退室情報を、実際には、管理区域に入退室した利用者が存在しない入退室情報で補完している。このため、管理区域における利用者の入退室の履歴が不適性なものになりやすく、管理区域のセキュリティの低下が十分に抑えられない。
【0006】
この発明の目的は、共連れで入退室した利用者の欠損した入退室情報を、この利用者を共連れしたと推定される別の利用者の入退室情報で補完することにより、管理区域における利用者の入退室の履歴の信頼性を向上させ、管理区域のセキュリティの低下を十分に抑えた入退室管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の入退室管理装置は、上記課題を解決し、その目的を達成するために、以下のように構成している。
【0008】
入退室管理装置は、入退室履歴記憶手段が管理区域における利用者の入退室にかかる入退室情報を蓄積的に記憶する。入退室情報には、利用者、その利用者が入退室した管理区域、入退室の種別、入退室日時等を対応づけた情報である。在室時間情報記憶手段が、管理区域毎に、利用者の在室時間を統計的に処理した在室時間情報を記憶している。また、移動時間情報記憶手段が、2つの管理区域間における、利用者の移動時間を統計的に処理した移動時間情報を記憶している。
【0009】
欠損判定手段が、利用者毎に、前記入退室履歴記憶手段が記憶している入退室情報が欠損しているかどうかを判定する。例えば、ある利用者の入退室情報を時系列に並べたときに、第1の管理区域に入室したことを示す入退室情報と、第2の管理区域に入室したことを示す入退室情報とが時間的に連続している場合に、この間に、第1の管理区域から退室したことを示す入退室情報が欠損していると判定する。また、第1の管理区域から退室したことを示す入退室情報と、第2の管理区域から退室したことを示す入退室情報とが時間的に連続している場合に、この間に、第2の管理区域に入室したことを示す入退室情報が欠損していると判定する。さらに、第1の管理区域に入室したことを示す入退室情報と、第2の管理区域から退室したことを示す入退室情報とが時間的に連続している場合に、この間に、第1の管理区域から退室したことを示す入退室情報、および、第2の管理区域に入室したことを示す入退室情報が欠損していると判定する。
【0010】
前記欠損判定手段が欠損していると判定した利用者の入退室情報について、推定手段が、前記在室時間情報、および前記移動時間情報に基づいて、欠損している入退室情報にかかる入退室日時を推定する。補完用入退室情報抽出手段が、前記推定手段が推定した入退室日時に基づいて前記入退室履歴記憶手段が記憶している入退室情報の中から、欠損していると判定した利用者の入退室情報を補完する補完用入退室情報を抽出する。そして、補完手段が、前記欠損判定手段が欠損していると判定した利用者の入退室情報を、前記補完用入退室情報抽出手段が抽出した補完用入退室情報で補完する。このように、共連れで入退室した利用者の欠損した入退室情報が、この利用者を共連れしたと推定される別の利用者の入退室情報で補完される。また、前記在室時間情報、および前記移動時間情報は、上述したように統計的に処理した情報であるから、推定手段における入退室日時の推定精度を確保することができる。これにともない、補完用入退室情報抽出手段において、共連れで入退室した利用者に対して、この利用者を共連れしたと推定される別の利用者の入退室情報を精度よく抽出することができる。したがって、管理区域における利用者の入退室にかかる履歴の信頼性の向上が図れ、管理区域のセキュリティの低下が十分に抑えられる。
【0011】
また、前記補完用入退室情報抽出手段は、
a:前記推定手段が推定した入退室日時に最も近い時間に入退室した利用者の入退室情報を補完用入退室情報として抽出する構成としてもよいし、
b:前記推定手段が推定した入退室日時を中心とする所定時間幅の時間帯で、前記開閉体が開状態であった時間が最大である入退室情報を前記補完用入退室情報として抽出する構成としてもよい。
【0012】
また、補完手段は、前記補完用入退室情報抽出手段が抽出した入退室情報とともに、この入退室情報で補完するかどうかを問い合わせ、この問い合わせに対する応答に応じて、欠損している入退室情報を補完する構成としてもよい。また、このように構成する場合には、前記補完用入退室情報抽出手段で、複数の入退室情報を抽出し、これらを補完候補として提示する構成としてもよい。
【0013】
さらに、前記欠損判定手段は、入退室履歴記憶手段が入退室情報を記憶するときに、この入退室情報にかかる利用者について、入退室情報が欠損しているかどうかを判定するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、共連れで入退室した利用者の欠損した入退室情報を、この利用者を共連れした別の利用者の入退室情報で補完する精度を確保することができる。したがって、管理区域における利用者の入退室にかかる履歴の信頼性の向上が図れ、管理区域のセキュリティの低下が十分に抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は、入退室管理システムの構成を示す概略図である。この入退室管理システムは、複数の管理区域における利用者の入退室をセンタに設置した入退室管理装置1で管理するシステムである。図1では、管理区域を3つだけ示している。図2は、管理区域の出入口付近を示す概略図である。管理区域の扉10には、扉10の開閉を制限する電子錠11および扉10の開閉状態を検知するセンサ12が取り付けられている。図2では、扉10が開された状態を破線で示している。開閉装置2が、電子錠10の施錠/解錠を制御する。センサ12は、扉10の開閉状態が検知できればよく、扉10が閉しているときに押圧され、扉10が開しているときに押圧されないように配置したマイクロスイッチで構成してもよいし、扉10が閉しているときに発光部と受光部とが対向し、扉10が開しているときに発光部と受光部とが対向しないように配置した光電センサで構成してもよいし、他の種類のセンサを用いてもよい。読取装置3は、管理区域の扉10挟んだ両側、すなわち管理区域の外側および内側、に配置している。読取装置3は、利用者に発行しているRFタグ15との無線通信により、当該RFタグ15が記憶している識別情報を利用者IDとして読み取る。また、読取装置3は、開閉装置2に接続されており、読み取った利用者ID、および自装置を識別する装置IDを含む読取通知を開閉装置2に送信する。読取装置3は、この読取通知に含まれている装置IDにより、利用者IDを読み取った読取装置3が、管理区域の外側、または内側のどちらに配置されているのかの判断が行える。すなわち、管理区域に入室する利用者の利用者IDを読み取ったのか、管理区域から退室する利用者の利用者IDを読み取ったのかが判断できる。開閉装置2は、入退室管理装置1に接続されている。
【0017】
開閉装置2は、読取装置3から上述した読取通知を受信すると、入退室管理装置1に認証要求を行う。この認証要求には、利用者ID、管理区域を識別する管理区域番号、入退室の種別等が含まれている。開閉装置2は、管理区域番号を本体に記憶している。この管理区域番号は、開閉装置2を識別する装置IDであってもよい。入退室管理装置1は、開閉装置2からの認証要求を受信すると、この認証要求に含まれている利用者IDで識別される利用者について、管理区域番号で識別される管理区域への入退室を許可するかどうかを判定し、判定結果を開閉装置2に返信する。また、入退室管理装置1は、今回の認証要求に対する入退室情報を記憶する。この入退室情報には、利用者ID、管理区域、入退室の種別、入退室日時、判定結果等が含まれている。
【0018】
開閉装置2は、入退室管理装置1からの判定結果に基づいて、電子錠11の施錠/解除を制御する。開閉装置2は、通常電子錠11を施錠しており、入退室管理装置1から入退室を許可する旨の判定結果を受信したときに、電子錠11を解錠する。また、開閉装置2は、電子錠11を解錠すると、扉10の開閉時間の計測を行う。具体的には、電子錠11の解錠後、センサ12の出力により扉10が開したことを検知してから、扉10が閉したことを検知するまでの時間を計測する。また、開閉装置2は、扉10が閉したことを検知すると、電子錠11を施錠する。開閉装置2は、計測した扉開時間を入退室管理装置1に通知する。入退室管理装置1は、今回受信した扉開時間を、先に記憶した該当する入退室情報に追加する。
【0019】
なお、管理区域の出入口は、1つであってもよいし、複数であってもよい。出入口が複数ある場合には、出入口毎に、扉10、電子錠11、センサ12、開閉装置2、および2つの読取装置3を設ければよい。
【0020】
図3は、入退室管理装置の主要部の構成を示すブロック図である。入退室管理装置1は、制御部21と、通信部22と、認証条件データベース23(以下、認証条件DB23と言う。)と、入退室履歴データベース24(以下、入退室履歴DB24と言う。)と、行動パターンデータベース25(以下、行動パターンDB25と言う。)と、共連れ知識データベース26(以下、共連れ知識DB26と言う。)と、入出力部27と、を備えている。制御部21は、本体各部の動作を制御する。通信部22は、開閉装置2との通信を制御する。
【0021】
認証条件DB23は、利用者ID毎に、利用者名と、管理区域毎の入退室の許可/不許可を対応づけた認証条件(図4参照)を記憶している。図4では、利用者IDが「00100100」であるAさんと、利用者IDが「00100101」であるBさんと、についての認証条件を示している。Aさんは管理区域A、および管理区域Bについては入退室が許可されている。一方、Bさんは、管理区域Aについては入退室が許可されているが、管理区域Bについては入退室が許可されていない。また、図示していないが、Aさん、およびBさんには、他の管理区域についても入退室の許可/不許可が登録されている。
【0022】
入退室履歴DB24は、入退室日時、管理区域、利用者名、入退室の種別、許可/不許可の種別、および扉10の開時間を対応づけた入退室情報を蓄積的に記憶する(図5参照)。入退室日時は、実際に利用者が管理区域に入退室した時刻ではなく、上述した認証要求を開閉装置2から受信した時刻であるが、実際に利用者が管理区域に入退室した時刻と殆ど相違しない。ここでは、入退室履歴DB24が、管理区域への入退室を許可しなかった、不許可にかかる入退室情報も記憶する例を示しているが、この不許可にかかる入退室情報については、入退室履歴DB24に記憶しない構成としてもよい。図5では、Aさんが管理区域Aを退室してから、管理区域Bを退室するまでの間に、管理区域Bに入室したことを示す入退室情報がない場合を例示している。この場合には、後述するように、Aさんが管理区域Bに共連れで入室していると判定される。
【0023】
行動パターンDB25は、管理区域毎に、利用者の在室時間の分布を示す在室時間情報と、2つの管理区域間毎に、利用者の移動時間の分布を示す移動時間情報を記憶している。この行動DB25が、この発明で言う在室時間情報記憶手段、および移動時間情報記憶手段に相当する。
【0024】
まず、在室時間情報について説明する。この在室時間情報は、時間経過にともなう利用者の在室割合を示す在室割合関数であり、管理区域毎に行動パターンDB25に記憶している。在室割合関数は、対象となる管理区域における利用者の在室時間を統計的に処理したものである。具体的にいうと、ある管理区域について、在室時間を5分間隔で区切り、この区切った在室時間毎に利用者の人数をカウントする。この管理区域における各利用者の在室時間は、入退室履歴DB24に記憶している入退室情報から取得できる。また、この管理区域における入退室が複数回である利用者については、入退室毎に1人の利用者としてカウントすればよい。これにより、図6(A)に示す、在室時間と、利用者の人数と、の関係(棒グラフ)が得られる。この在室時間と、利用者の人数と、の関係を正規化し、時間経過にともなう利用者の在室割合を示す関数(図6(B)に示すグラフの関数)を算出し、これを在室割合関数として行動パターンDB25に記憶している。
【0025】
また、移動時間情報は、2つの管理区域間の移動について、統計的に処理した時間経過にともなう移動中の利用者の割合を示す移動時間割合関数である。この移動時間割合関数は、2つの管理区域の組合せ毎に、且つその移動方向別に行動パターンDB25に記憶している。例えば、管理区域A、管理区域Bの組合せについて、管理区域Aから管理区域Bへの移動時間割合関数と、管理区域Bから管理区域Aへの移動時間割合関数を記憶している。この移動時間割合関数も上述した在室割合関数と同様に、対象となる2つの管理区域と、その移動方向について利用者の人数を区切った移動時間毎にカウントすることで、得られた移動時間と利用者の人数との関係(図7(A))を正規化して算出した、関数(移動時間割合関数)である(図7(B))。
【0026】
共連れ知識DB26には、共連れで入退室したと判定する判定条件と、その判定条件で共連れで入退室したと判定された利用者に対して補完すべき入退室情報(欠損している入退室情報)の内容(欠損項目)と、を対応づけて記憶している(図8参照)。欠損項目は、管理区域と、その管理区域についての入退室の種別と、を示すものである。例えば、ある利用者について、管理区域X入室、管理区域X入室が時間的に連続している利用者であれば、欠損項目として管理区域X退室が設定されている。
【0027】
なお、図8において管理区域X、Yは、特定の管理区域を示しているのではなく、任意の管理区域を示している。
【0028】
また、図8に示す詳細条件は、管理区域が設けられている場所の環境によって、補完すべき入退室情報が通常と異なる場合の条件を示している。例えば、通常であれば管理区域Xを入室、管理区域Y入室が時間的に連続している利用者であれば、この間に、補完すべき入退室情報は管理区域X退室である。しかし、特定の管理区域Pと、管理区域Rと、の間に管理区域Qが存在し、管理区域Pから管理区域Rへ移動するときに、管理区域Qを通らなければならない環境であれば、補完すべき入退室情報には管理区域P退室だけでなく、管理区域Q入室、および管理区域Q退室も含まれる。入退室管理装置1は、判定条件により、入退室情報に欠損が生じているかどうかを判断し、欠損が生じている場合には、設定されている詳細条件に基づいて、欠損項目を判断する。
【0029】
入出力部27には、オペレータが操作するパーソナルコンピュータ等の端末が接続される。
【0030】
図9は、開閉装置の主要部の構成を示すブロック図である。開閉装置2は、制御部31と、受信部32と、施錠/解錠部33と、開閉状態検知部34と、通信部35と、を備えている。制御部31は、本体各部の動作を制御する。受信部32は、読取装置3から送信されてきた利用者ID、および装置IDを含む読取通知を受信する。施錠/解錠部33は、接続されている電子錠11の状態を制御する。開閉状態検知部34は、接続されているセンサ12の出力に基づいて、扉10の開閉状態を検知する。通信部35は、入退室管理装置1との通信を制御する。
【0031】
図10は、読取装置の主要部の構成を示すブロック図である。読取装置3は、制御部41と、読取部42と、送信部43と、を備えている。制御部41は、本体各部の動作を制御する。読取部42は、利用者が所持するRFタグ15と無線通信を行い、当該RFタグ15が記憶する利用者IDを読み取る。送信部43は、読取部42でRFタグ15から読み取った利用者ID、および装置IDを含む読取通知を開閉装置2へ送信する。読取装置3は、装置IDを制御部41に設けられたメモリに記憶している。
【0032】
次に、この入退室管理システムにおける、各装置の動作について説明する。管理区域の扉10は、通常閉しており、電子錠11により施錠されている。図11は、読取装置の動作を示すフローチャートである。読取装置3は、管理区域への入退室を希望する利用者が所持するRFタグ15から利用者IDを読み取ると(s1)、読み取った利用者IDと、記憶している装置IDと、を含む読取通知を開閉装置2に送信する(s2)。管理区域への入退室を希望する利用者15は、所持しているRFタグ15を読取部42の読取エリア(無線通信エリア)に翳し、このRFタグ15が記憶する利用者IDを読取部42に読み取らせる。したがって、読取装置3は、管理区域への入退室を希望している利用者の利用者IDを開閉装置2に送信する。読取装置12は、このs1、s2にかかる処理を繰り返す。
【0033】
図12は、開閉装置の動作を示すフローチャートである。開閉装置2は、受信部32で読取装置3からの読取通知を受信するか、通信部35で後述する入退室管理装置1からの利用者の管理区域への入退室にかかる認証結果を受信するのを待っている(s11、s12)。開閉装置2は、受信部32で読取装置1から送信されてきた読取通知を受信すると、認証要求を入退室管理装置1に送信し(s13)、s11に戻る。この認証要求には、上述したように、利用者ID、管理区域番号、入退室の種別等が含まれている。
【0034】
図13は、入退室管理装置の動作を示すフローチャートである。入退室管理装置1は、通人部22で開閉装置2からの認証要求を受信するか、後述する開閉装置2からの扉開時間の通知を受信するのを待っている(s21、s22)。入退室管理装置1は、開閉装置1からの認証要求を受信すると、この認証要求に基づいて、当該管理区域への利用者の入退室を許可するかどうかを判定する(s23)。具体的には、今回受信した認証要求に含まれている利用者IDをキーにして認証条件DB23を検索し、この利用者が入退室を希望している管理区域(認証要求に含まれている管理区域番号で識別される管理区域)が、当該利用者に対して入退室が許可されている管理区域であるかどうかを判定する。入退室管理装置1は、この利用者に対して入退室が許可されている管理区域であれば、入退室を許可する旨の認証結果を開閉装置2に返信し、反対に入退室が許可されていない管理区域であれば、入退室を不許可とする旨の認証結果を開閉装置2に返信する(s24)。入退室管理装置1は、認証結果を開閉装置2に返信すると、今回認証要求が送信されてきた利用者についての入退室情報を作成し(s25)、これを入退室履歴DB24に記憶する(s26)。このとき、入退室履歴DB24に記憶される入退室情報には、入退室日時、管理区域、利用者ID、入退室の種別、および認証結果については含まれているが、扉10の開時間については空である。
【0035】
開閉装置2は、s12で入退室管理装置1から送信されてきた認証結果を受信すると、受信した認証結果が利用者の管理区域への入退室を許可するものであるか、不許可とするものであるかを判定する(s14)。開閉装置2は、認証結果が利用者の入退室を不許可とするものであれば、s11に戻る。このとき、管理区域の扉10付近にいる該当する利用者に対して、管理区域への入退室が許可されないことを通知してもよい。また、該当する利用者が管理区域からの退室を希望していた場合には、入退室が許可されていない管理区域に入室した利用者がいることを警備室等に連絡するようにしてもよい。
【0036】
一方、入退室管理装置1における認証結果が利用者の管理区域への入退室を許可するものであれば、開閉装置2は、施錠/解錠部33により電子錠11を解錠する(s15)。開閉装置2は、電子錠11を解錠すると、開閉状態検知34において、扉10の開時間の計測を開始する(s16)。利用者は、電子錠11が解錠された扉10を開して、管理区域に入室、または管理区域から退室する。開閉装置2は、利用者が入退室するときに扉10が開された時間をs16で計測する。すなわち、電子錠11の解錠後に、センサ12により扉10が開したことが検知され、その後当該扉10が閉したことが検知されるまでの時間を計測する。開閉装置2は、利用者の入退室が完了するのを待つ(s17)。開閉装置2は、扉10が一旦開され、その後閉されたことにより、利用者の入退室が完了したと判定する。開閉装置2は、利用者の入退室が完了すると、電子錠11を施錠する(s18)。また、開閉装置2は、今回計測した扉10の開時間(扉開時間)を入退室管理装置1に通知し(s19)、s11に戻る。
【0037】
入退室管理装置1は、s22で開閉装置2からの扉開時間の通知を受信すると、今回通知された扉開時間を、s26で入退室履歴DB24に記憶した該当する入退室情報に追加する(s27)。また、入退室管理装置1は、今回扉開時間を追加した利用者について、入退室情報が欠損しているかどうかを判定する(s28)。s28では、この利用者について、入退室履歴DB24から、今回扉開時間を追加した入退室情報と、前回記憶した入退室情報と、を抽出し、共連れ知識DB26に登録されている判定条件に基づいて、この間に共連れが生じているかどうかを判定する。また、共連れが生じていれば、詳細条件に基づいて、欠損している入退室情報の欠損項目を判断する。入退室管理装置1は、s28で共連れが生じていないと判定すると、すなわち入退室情報が欠損していないと判定すると、s21に戻り、上述した処理を繰り返す。反対に、共連れが生じていると判定すると、欠損している入退室情報を補完する補完処理を行い(s29)、s21に戻る。
【0038】
このs29にかかる補完処理について詳細に説明する。図14は、入退室管理装置における補完処理を示すフローチャートである。入退室管理装置1は、欠損している入退室情報の欠損項目に基づき、行動パターンDB25から、この処理で用いる在室割合関数、および移動時間割合関数を読み出す(s31)。例えば、管理区域A入室と、管理区域B入室との間で管理区域A退室にかかる入退室情報が欠損している場合には、管理区域Aの在室割合関数、および管理区域Aから管理区域Bへの移動時間割合関数を行動パターンDB25から読み出す。また、管理区域A退室と、管理区域B退室との間で管理区域B入室にかかる入退室情報が欠損している場合には、管理区域Bの在室割合関数、および管理区域Aから管理区域Bへの移動時間割合関数を行動パターンDB25から読み出す。さらに、管理区域P入室と、管理区域R入室との間で、管理区域P退室、管理区域Q入室、管理区域Q退室にかかる3つの入退室情報が欠損している場合には、管理区域Pの在室割合関数、管理区域Pから管理区域Qへの移動時間割合関数、管理区域Qの在室割合関数、および管理区域Qから管理区域Rへの移動時間割合関数を行動パターンDB25から読み出す。
【0039】
入退室管理装置1は、s31で読み出した在室割合関数、および移動時間割合関数に基づいて、欠損している利用者の入退室情報の入退室日時を推定する(s32)。例えば、管理区域A入室と、管理区域B入室との間で管理区域A退室にかかる入退室情報が欠損している場合には、図15に示すように、管理区域Aの入室日時を基準にして、管理区域Aの在室割合関数を配置するとともに、管理区域Bの入室日時を基準にして、管理区域Aから管理区域Bへの移動時間割合関数を配置し、図15中にハッチングで示す、これら2つの関数が重なった部分(以下、アンド領域と言う。)の重心を、欠損している管理区域Aからの退室にかかる入退室日時として推定する。管理区域Aの入室日時、および管理区域Bの入室日時は、入退室情報があるので、既知である。
【0040】
また、管理区域A退室と、管理区域B退室との間で管理区域B入室にかかる入退室情報が欠損している場合には、図16に示すように、管理区域Aの退室日時を基準にして、管理区域Aから管理区域Bへの移動時間割合関数を配置し、管理区域Bの退室日時を基準にして、管理区域Bの在室割合関数を配置したときのアンド領域の重心を、欠損している管理区域Bへの入室にかかる入退室日時として推定する。管理区域Aの退室日時、および管理区域Bの退室日時は、入退室情報があるので、既知である。
【0041】
さらに、管理区域P入室と、管理区域R入室との間で、管理区域P退室、管理区域Q入室、管理区域Q退室にかかる3つの入退室情報が欠損している場合には、図17に示すように、管理区域Pの入室日時を基準にして、管理区域Pの在室割合関数を配置するとともに、管理区域Rの入室日時を基準にして、管理区域Qから管理区域Rへの移動時間割合関数を配置する。また、管理区域Qの入室日時を示す入室日時軸を、管理区域P入室から管理区域R入室までの間の適当な時間に設定し、この入室日時軸に対して管理区域Pから管理区域Qへの移動時間割合関数、および管理区域Qの在室割合関数を配置する。管理区域Pの入室日時、および管理区域Rの入室日時は、入退室情報があるので、既知である。そして、管理区域Qの入室日時を示す入室日時軸を、管理区域Pの在室割合関数と管理区域Pから管理区域Qへの移動時間割合関数とが重なるアンド領域の面積と、管理区域Qの在室割合関数と管理区域Qから管理区域Rへの移動時間割合関数とが重なるアンド領域の面積と、が等しくなる位置にずらす。このときに、管理区域Pの在室割合関数と管理区域Pから管理区域Qへの移動時間割合関数とが重なるアンド領域の重心を、欠損している管理区域Pからの退室にかかる入退室日時として推定するとともに、管理区域Pの在室割合関数と管理区域Pから管理区域Qへの移動時間割合関数とが重なるアンド領域の重心を、欠損している管理区域Qからの退室にかかる入退室日時として推定する。さらに、このときの管理区域Qの入室日時を示す入室日時軸の位置を、管理区域Qへの入室にかかる入退室日時として推定する。
【0042】
入退室管理装置1は、欠損している入退室情報毎に、入退室履歴DB24から、s32で推定した入退室日時に基づく補完用入退室情報を抽出する(s33)。s33では、入退室履歴DB24から、対応する管理区域の入退室情報であって、且つs32で推定した入退室日時に時間的に最も近い入退室情報を、補完用入退室情報として抽出する。入退室管理装置1は、s33で抽出した入退室情報に基づいて、今回欠損していると判定した入退室情報を作成し、これを入退室履歴DB24に記憶する(s34)。s34では、s33で抽出した補完用入退室情報の利用者IDを変更するとともに、必要に応じて入退室の種別を変更した入退室情報を作成する。
【0043】
このように、入退室管理装置1は、利用者の欠損している入退室情報の入退室日時を、対象となる管理区域における利用者の在室時間を統計的に処理した在室割合関数、および対象となる2つの管理区域間の移動について統計的に処理した時間経過にともなう移動中の利用者の割合を示す移動時間割合関数に基づいて推定する。このため、利用者の欠損している入退室情報の入退室日時の推定が、精度よく行える。また、推定した入退室日時に基づいて、入退室情報が欠損している利用者を共連れした入退室情報を補完用入退室情報とし、ここで抽出した補完用入退室情報で、欠損している入退室情報を補完するので、入退室履歴DB24に記憶されている、入退室情報の信頼性を向上させることができ、管理区域のセキュリティの低下が十分に抑えられる。
【0044】
また、上記実施形態では、s32でアンド領域の重心を、入退室日時として推定するとしが、在室割合関数と移動時間割合関数との交点を、入退室日時として推定するようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、s32で推定した入退室日時に時間的に最も近い入退室情報を、補完用入退室情報として抽出するとしたが、s32で推定した入退室日時を中心とする予め定めた時間幅、例えば10分、の間で、対応する管理区域の入退室情報であって、且つ扉開時間が最も長い入退室情報を、補完用入退室情報として抽出する構成としてもよい。
【0046】
また、s32で推定した入退室日時を中心とする予め定めた時間幅、例えば10分、の間で、対応する管理区域の入退室情報を全て抽出し、ここで抽出した入退室情報を補完用入退室情報の候補とし、どの補完用入退室情報で欠損している入退室情報を補完するかを問い合わせる構成としてもよい。例えば、入出力部27から、接続されている端末に対してこの問い合わせを行う構成とすればよい。この場合には、オペレータが該当する利用者に対して、電話や電子メール等で確認し、確認した内容に基づいて、欠損している入退室情報を補完する補完用入退室情報を入退室管理装置1に通知する入力を端末で行えばよい。入退室管理装置1は、上述の問い合わせに対する端末からの通知に基づいて、利用者の欠損している入退室情報を補完すればよい。また、入退室管理装置1が、上記問い合わせを、利用者の端末等に対して直接行う構成としてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、開閉装置2から扉時間の通知を受信する毎に、該当する利用者について、入退室情報が欠損しているかどうかを判定し、必要に応じて補完処理を行うとしたが、各利用者に対する入退室情報が欠損しているかどうかの判定、および入退室情報が欠損している場合の補完処理をバッチ処理で行う構成としてもよい。また、s26にかかる処理を行った後に、s28、およびs29にかかる処理を行うようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態の読取装置3は、利用者を識別することができる情報の読取が行える装置であればよく、磁気カードから利用者IDを読み取る装置であってもよいし、利用者の指紋、掌紋、虹彩、顔等の生体情報を読み取る装置であってもよいし、これら以外の装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この実施形態の入退室管理システムの構成を示す概略図である。
【図2】管理区域の出入口付近を示す概略図である。
【図3】入退室管理装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図4】認証条件データベースが記憶する認証条件を示す図である。
【図5】入退室履歴データベースが記憶する入退室情報を示す図である。
【図6】行動パターンデータベースが記憶する在室時間情報を示す図である。
【図7】行動パターンデータベースが記憶する移動時間情報を示す図である。
【図8】共連れ知識データベースが記憶する判定条件を示す図である。
【図9】開閉装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図10】読取装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図11】読取装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】開閉装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】入退室管理装置の動作を示すフローチャートである。
【図14】入退室管理装置における補完処理を示すフローチャートである。
【図15】入退室管理装置における補完処理を説明する図である
【図16】入退室管理装置における補完処理を説明する図である
【図17】入退室管理装置における補完処理を説明する図である
【符号の説明】
【0050】
1−入退室管理装置
2−開閉装置
3−読取装置
10−扉
11−電子錠
12−センサ
15−RFタグ
21−制御部
22−通信部
23−認証条件データベース(認証条件DB)
24−入退室履歴データベース(入退室履歴DB)
25−行動パターンデータベース(行動パターンDB)
26−共連れ知識データベース(共連れ知識DB)
【技術分野】
【0001】
この発明は、管理区域における利用者の入退室を管理する入退室管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管理区域における利用者の入退室を管理する入退室管理システムがあった。管理区域とは、入退室できる人を制限した区域であり、例えば、建物全体や、建物内の部屋単位で設定される。一般的な入退室管理システムは、管理区域の出入口に設けられた扉に電子錠を取り付けている。また、入退室管理システムは、利用者に対して発行している、磁気カード、ICカード、非接触ICカード、RFタグ等の媒体が記憶する識別情報(利用者ID)を読み取る読取装置や、利用者の指紋、掌紋、虹彩、顔等の生体情報を読み取る読取装置等を、管理区域の扉を挟んだ両側、すなわち管理区域内側および管理区域外側、に配置している。入退室管理システムは、読取装置が読み取った認証情報(上述した利用者IDや生体情報等)を用いて、管理区域における利用者の入退室を許可するかどうか(入退室が許可されている利用者であるかどうか)を判定し、この判定結果に応じて電子錠の施錠、解錠を制御する。さらに、入退室管理システムは、管理区域における利用者の入退室の履歴を入退室管理装置に記憶する。
【0003】
入退室管理システムは、管理区域に入退室することが許可された利用者とともに、別の利用者が入退室する、所謂共連れ、が発生すると、共連れで入退室した利用者の入退室情報が履歴として入退室管理装置に残らない。すなわち、管理区域における利用者の入退室情報に欠損が生じることになる。その結果、管理区域における利用者の入退室を入退室管理装置で正確に管理することができず、管理区域のセキュリティを低下させてしまう。
【0004】
この対策として、欠損している利用者の入退室情報を補完することが特許文献1〜3等で提案されている。特許文献1は、パーソナルコンピュータ(PC)のサーバへのログインや、ログアウトにかかる情報を用いて、欠損している入退室情報を補完する構成である。また、特許文献2は、アクセスが無く一定時間経過すると、現在のフロア(管理区域)から、予め設定されているフロアへ共連れで戻っていると推定し、入退室情報を補完する構成である。特許文献3は、利用者の入退室情報から、把握した当該利用者の行動パターンに基づいて、欠損している入退室情報を補完する構成である。
【特許文献1】特開2002−208050号公報
【特許文献2】特開2003− 44891号公報
【特許文献3】特開2006− 65572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、共連れで入退室した利用者の入退室情報は、当該利用者を共連れした別の利用者の入退室情報で補完すべきである。これに対して、特許文献1〜3では、上述したように、補完すべき入退室情報を新たに生成している。すなわち、利用者の欠損している入退室情報を、実際には、管理区域に入退室した利用者が存在しない入退室情報で補完している。このため、管理区域における利用者の入退室の履歴が不適性なものになりやすく、管理区域のセキュリティの低下が十分に抑えられない。
【0006】
この発明の目的は、共連れで入退室した利用者の欠損した入退室情報を、この利用者を共連れしたと推定される別の利用者の入退室情報で補完することにより、管理区域における利用者の入退室の履歴の信頼性を向上させ、管理区域のセキュリティの低下を十分に抑えた入退室管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の入退室管理装置は、上記課題を解決し、その目的を達成するために、以下のように構成している。
【0008】
入退室管理装置は、入退室履歴記憶手段が管理区域における利用者の入退室にかかる入退室情報を蓄積的に記憶する。入退室情報には、利用者、その利用者が入退室した管理区域、入退室の種別、入退室日時等を対応づけた情報である。在室時間情報記憶手段が、管理区域毎に、利用者の在室時間を統計的に処理した在室時間情報を記憶している。また、移動時間情報記憶手段が、2つの管理区域間における、利用者の移動時間を統計的に処理した移動時間情報を記憶している。
【0009】
欠損判定手段が、利用者毎に、前記入退室履歴記憶手段が記憶している入退室情報が欠損しているかどうかを判定する。例えば、ある利用者の入退室情報を時系列に並べたときに、第1の管理区域に入室したことを示す入退室情報と、第2の管理区域に入室したことを示す入退室情報とが時間的に連続している場合に、この間に、第1の管理区域から退室したことを示す入退室情報が欠損していると判定する。また、第1の管理区域から退室したことを示す入退室情報と、第2の管理区域から退室したことを示す入退室情報とが時間的に連続している場合に、この間に、第2の管理区域に入室したことを示す入退室情報が欠損していると判定する。さらに、第1の管理区域に入室したことを示す入退室情報と、第2の管理区域から退室したことを示す入退室情報とが時間的に連続している場合に、この間に、第1の管理区域から退室したことを示す入退室情報、および、第2の管理区域に入室したことを示す入退室情報が欠損していると判定する。
【0010】
前記欠損判定手段が欠損していると判定した利用者の入退室情報について、推定手段が、前記在室時間情報、および前記移動時間情報に基づいて、欠損している入退室情報にかかる入退室日時を推定する。補完用入退室情報抽出手段が、前記推定手段が推定した入退室日時に基づいて前記入退室履歴記憶手段が記憶している入退室情報の中から、欠損していると判定した利用者の入退室情報を補完する補完用入退室情報を抽出する。そして、補完手段が、前記欠損判定手段が欠損していると判定した利用者の入退室情報を、前記補完用入退室情報抽出手段が抽出した補完用入退室情報で補完する。このように、共連れで入退室した利用者の欠損した入退室情報が、この利用者を共連れしたと推定される別の利用者の入退室情報で補完される。また、前記在室時間情報、および前記移動時間情報は、上述したように統計的に処理した情報であるから、推定手段における入退室日時の推定精度を確保することができる。これにともない、補完用入退室情報抽出手段において、共連れで入退室した利用者に対して、この利用者を共連れしたと推定される別の利用者の入退室情報を精度よく抽出することができる。したがって、管理区域における利用者の入退室にかかる履歴の信頼性の向上が図れ、管理区域のセキュリティの低下が十分に抑えられる。
【0011】
また、前記補完用入退室情報抽出手段は、
a:前記推定手段が推定した入退室日時に最も近い時間に入退室した利用者の入退室情報を補完用入退室情報として抽出する構成としてもよいし、
b:前記推定手段が推定した入退室日時を中心とする所定時間幅の時間帯で、前記開閉体が開状態であった時間が最大である入退室情報を前記補完用入退室情報として抽出する構成としてもよい。
【0012】
また、補完手段は、前記補完用入退室情報抽出手段が抽出した入退室情報とともに、この入退室情報で補完するかどうかを問い合わせ、この問い合わせに対する応答に応じて、欠損している入退室情報を補完する構成としてもよい。また、このように構成する場合には、前記補完用入退室情報抽出手段で、複数の入退室情報を抽出し、これらを補完候補として提示する構成としてもよい。
【0013】
さらに、前記欠損判定手段は、入退室履歴記憶手段が入退室情報を記憶するときに、この入退室情報にかかる利用者について、入退室情報が欠損しているかどうかを判定するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、共連れで入退室した利用者の欠損した入退室情報を、この利用者を共連れした別の利用者の入退室情報で補完する精度を確保することができる。したがって、管理区域における利用者の入退室にかかる履歴の信頼性の向上が図れ、管理区域のセキュリティの低下が十分に抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は、入退室管理システムの構成を示す概略図である。この入退室管理システムは、複数の管理区域における利用者の入退室をセンタに設置した入退室管理装置1で管理するシステムである。図1では、管理区域を3つだけ示している。図2は、管理区域の出入口付近を示す概略図である。管理区域の扉10には、扉10の開閉を制限する電子錠11および扉10の開閉状態を検知するセンサ12が取り付けられている。図2では、扉10が開された状態を破線で示している。開閉装置2が、電子錠10の施錠/解錠を制御する。センサ12は、扉10の開閉状態が検知できればよく、扉10が閉しているときに押圧され、扉10が開しているときに押圧されないように配置したマイクロスイッチで構成してもよいし、扉10が閉しているときに発光部と受光部とが対向し、扉10が開しているときに発光部と受光部とが対向しないように配置した光電センサで構成してもよいし、他の種類のセンサを用いてもよい。読取装置3は、管理区域の扉10挟んだ両側、すなわち管理区域の外側および内側、に配置している。読取装置3は、利用者に発行しているRFタグ15との無線通信により、当該RFタグ15が記憶している識別情報を利用者IDとして読み取る。また、読取装置3は、開閉装置2に接続されており、読み取った利用者ID、および自装置を識別する装置IDを含む読取通知を開閉装置2に送信する。読取装置3は、この読取通知に含まれている装置IDにより、利用者IDを読み取った読取装置3が、管理区域の外側、または内側のどちらに配置されているのかの判断が行える。すなわち、管理区域に入室する利用者の利用者IDを読み取ったのか、管理区域から退室する利用者の利用者IDを読み取ったのかが判断できる。開閉装置2は、入退室管理装置1に接続されている。
【0017】
開閉装置2は、読取装置3から上述した読取通知を受信すると、入退室管理装置1に認証要求を行う。この認証要求には、利用者ID、管理区域を識別する管理区域番号、入退室の種別等が含まれている。開閉装置2は、管理区域番号を本体に記憶している。この管理区域番号は、開閉装置2を識別する装置IDであってもよい。入退室管理装置1は、開閉装置2からの認証要求を受信すると、この認証要求に含まれている利用者IDで識別される利用者について、管理区域番号で識別される管理区域への入退室を許可するかどうかを判定し、判定結果を開閉装置2に返信する。また、入退室管理装置1は、今回の認証要求に対する入退室情報を記憶する。この入退室情報には、利用者ID、管理区域、入退室の種別、入退室日時、判定結果等が含まれている。
【0018】
開閉装置2は、入退室管理装置1からの判定結果に基づいて、電子錠11の施錠/解除を制御する。開閉装置2は、通常電子錠11を施錠しており、入退室管理装置1から入退室を許可する旨の判定結果を受信したときに、電子錠11を解錠する。また、開閉装置2は、電子錠11を解錠すると、扉10の開閉時間の計測を行う。具体的には、電子錠11の解錠後、センサ12の出力により扉10が開したことを検知してから、扉10が閉したことを検知するまでの時間を計測する。また、開閉装置2は、扉10が閉したことを検知すると、電子錠11を施錠する。開閉装置2は、計測した扉開時間を入退室管理装置1に通知する。入退室管理装置1は、今回受信した扉開時間を、先に記憶した該当する入退室情報に追加する。
【0019】
なお、管理区域の出入口は、1つであってもよいし、複数であってもよい。出入口が複数ある場合には、出入口毎に、扉10、電子錠11、センサ12、開閉装置2、および2つの読取装置3を設ければよい。
【0020】
図3は、入退室管理装置の主要部の構成を示すブロック図である。入退室管理装置1は、制御部21と、通信部22と、認証条件データベース23(以下、認証条件DB23と言う。)と、入退室履歴データベース24(以下、入退室履歴DB24と言う。)と、行動パターンデータベース25(以下、行動パターンDB25と言う。)と、共連れ知識データベース26(以下、共連れ知識DB26と言う。)と、入出力部27と、を備えている。制御部21は、本体各部の動作を制御する。通信部22は、開閉装置2との通信を制御する。
【0021】
認証条件DB23は、利用者ID毎に、利用者名と、管理区域毎の入退室の許可/不許可を対応づけた認証条件(図4参照)を記憶している。図4では、利用者IDが「00100100」であるAさんと、利用者IDが「00100101」であるBさんと、についての認証条件を示している。Aさんは管理区域A、および管理区域Bについては入退室が許可されている。一方、Bさんは、管理区域Aについては入退室が許可されているが、管理区域Bについては入退室が許可されていない。また、図示していないが、Aさん、およびBさんには、他の管理区域についても入退室の許可/不許可が登録されている。
【0022】
入退室履歴DB24は、入退室日時、管理区域、利用者名、入退室の種別、許可/不許可の種別、および扉10の開時間を対応づけた入退室情報を蓄積的に記憶する(図5参照)。入退室日時は、実際に利用者が管理区域に入退室した時刻ではなく、上述した認証要求を開閉装置2から受信した時刻であるが、実際に利用者が管理区域に入退室した時刻と殆ど相違しない。ここでは、入退室履歴DB24が、管理区域への入退室を許可しなかった、不許可にかかる入退室情報も記憶する例を示しているが、この不許可にかかる入退室情報については、入退室履歴DB24に記憶しない構成としてもよい。図5では、Aさんが管理区域Aを退室してから、管理区域Bを退室するまでの間に、管理区域Bに入室したことを示す入退室情報がない場合を例示している。この場合には、後述するように、Aさんが管理区域Bに共連れで入室していると判定される。
【0023】
行動パターンDB25は、管理区域毎に、利用者の在室時間の分布を示す在室時間情報と、2つの管理区域間毎に、利用者の移動時間の分布を示す移動時間情報を記憶している。この行動DB25が、この発明で言う在室時間情報記憶手段、および移動時間情報記憶手段に相当する。
【0024】
まず、在室時間情報について説明する。この在室時間情報は、時間経過にともなう利用者の在室割合を示す在室割合関数であり、管理区域毎に行動パターンDB25に記憶している。在室割合関数は、対象となる管理区域における利用者の在室時間を統計的に処理したものである。具体的にいうと、ある管理区域について、在室時間を5分間隔で区切り、この区切った在室時間毎に利用者の人数をカウントする。この管理区域における各利用者の在室時間は、入退室履歴DB24に記憶している入退室情報から取得できる。また、この管理区域における入退室が複数回である利用者については、入退室毎に1人の利用者としてカウントすればよい。これにより、図6(A)に示す、在室時間と、利用者の人数と、の関係(棒グラフ)が得られる。この在室時間と、利用者の人数と、の関係を正規化し、時間経過にともなう利用者の在室割合を示す関数(図6(B)に示すグラフの関数)を算出し、これを在室割合関数として行動パターンDB25に記憶している。
【0025】
また、移動時間情報は、2つの管理区域間の移動について、統計的に処理した時間経過にともなう移動中の利用者の割合を示す移動時間割合関数である。この移動時間割合関数は、2つの管理区域の組合せ毎に、且つその移動方向別に行動パターンDB25に記憶している。例えば、管理区域A、管理区域Bの組合せについて、管理区域Aから管理区域Bへの移動時間割合関数と、管理区域Bから管理区域Aへの移動時間割合関数を記憶している。この移動時間割合関数も上述した在室割合関数と同様に、対象となる2つの管理区域と、その移動方向について利用者の人数を区切った移動時間毎にカウントすることで、得られた移動時間と利用者の人数との関係(図7(A))を正規化して算出した、関数(移動時間割合関数)である(図7(B))。
【0026】
共連れ知識DB26には、共連れで入退室したと判定する判定条件と、その判定条件で共連れで入退室したと判定された利用者に対して補完すべき入退室情報(欠損している入退室情報)の内容(欠損項目)と、を対応づけて記憶している(図8参照)。欠損項目は、管理区域と、その管理区域についての入退室の種別と、を示すものである。例えば、ある利用者について、管理区域X入室、管理区域X入室が時間的に連続している利用者であれば、欠損項目として管理区域X退室が設定されている。
【0027】
なお、図8において管理区域X、Yは、特定の管理区域を示しているのではなく、任意の管理区域を示している。
【0028】
また、図8に示す詳細条件は、管理区域が設けられている場所の環境によって、補完すべき入退室情報が通常と異なる場合の条件を示している。例えば、通常であれば管理区域Xを入室、管理区域Y入室が時間的に連続している利用者であれば、この間に、補完すべき入退室情報は管理区域X退室である。しかし、特定の管理区域Pと、管理区域Rと、の間に管理区域Qが存在し、管理区域Pから管理区域Rへ移動するときに、管理区域Qを通らなければならない環境であれば、補完すべき入退室情報には管理区域P退室だけでなく、管理区域Q入室、および管理区域Q退室も含まれる。入退室管理装置1は、判定条件により、入退室情報に欠損が生じているかどうかを判断し、欠損が生じている場合には、設定されている詳細条件に基づいて、欠損項目を判断する。
【0029】
入出力部27には、オペレータが操作するパーソナルコンピュータ等の端末が接続される。
【0030】
図9は、開閉装置の主要部の構成を示すブロック図である。開閉装置2は、制御部31と、受信部32と、施錠/解錠部33と、開閉状態検知部34と、通信部35と、を備えている。制御部31は、本体各部の動作を制御する。受信部32は、読取装置3から送信されてきた利用者ID、および装置IDを含む読取通知を受信する。施錠/解錠部33は、接続されている電子錠11の状態を制御する。開閉状態検知部34は、接続されているセンサ12の出力に基づいて、扉10の開閉状態を検知する。通信部35は、入退室管理装置1との通信を制御する。
【0031】
図10は、読取装置の主要部の構成を示すブロック図である。読取装置3は、制御部41と、読取部42と、送信部43と、を備えている。制御部41は、本体各部の動作を制御する。読取部42は、利用者が所持するRFタグ15と無線通信を行い、当該RFタグ15が記憶する利用者IDを読み取る。送信部43は、読取部42でRFタグ15から読み取った利用者ID、および装置IDを含む読取通知を開閉装置2へ送信する。読取装置3は、装置IDを制御部41に設けられたメモリに記憶している。
【0032】
次に、この入退室管理システムにおける、各装置の動作について説明する。管理区域の扉10は、通常閉しており、電子錠11により施錠されている。図11は、読取装置の動作を示すフローチャートである。読取装置3は、管理区域への入退室を希望する利用者が所持するRFタグ15から利用者IDを読み取ると(s1)、読み取った利用者IDと、記憶している装置IDと、を含む読取通知を開閉装置2に送信する(s2)。管理区域への入退室を希望する利用者15は、所持しているRFタグ15を読取部42の読取エリア(無線通信エリア)に翳し、このRFタグ15が記憶する利用者IDを読取部42に読み取らせる。したがって、読取装置3は、管理区域への入退室を希望している利用者の利用者IDを開閉装置2に送信する。読取装置12は、このs1、s2にかかる処理を繰り返す。
【0033】
図12は、開閉装置の動作を示すフローチャートである。開閉装置2は、受信部32で読取装置3からの読取通知を受信するか、通信部35で後述する入退室管理装置1からの利用者の管理区域への入退室にかかる認証結果を受信するのを待っている(s11、s12)。開閉装置2は、受信部32で読取装置1から送信されてきた読取通知を受信すると、認証要求を入退室管理装置1に送信し(s13)、s11に戻る。この認証要求には、上述したように、利用者ID、管理区域番号、入退室の種別等が含まれている。
【0034】
図13は、入退室管理装置の動作を示すフローチャートである。入退室管理装置1は、通人部22で開閉装置2からの認証要求を受信するか、後述する開閉装置2からの扉開時間の通知を受信するのを待っている(s21、s22)。入退室管理装置1は、開閉装置1からの認証要求を受信すると、この認証要求に基づいて、当該管理区域への利用者の入退室を許可するかどうかを判定する(s23)。具体的には、今回受信した認証要求に含まれている利用者IDをキーにして認証条件DB23を検索し、この利用者が入退室を希望している管理区域(認証要求に含まれている管理区域番号で識別される管理区域)が、当該利用者に対して入退室が許可されている管理区域であるかどうかを判定する。入退室管理装置1は、この利用者に対して入退室が許可されている管理区域であれば、入退室を許可する旨の認証結果を開閉装置2に返信し、反対に入退室が許可されていない管理区域であれば、入退室を不許可とする旨の認証結果を開閉装置2に返信する(s24)。入退室管理装置1は、認証結果を開閉装置2に返信すると、今回認証要求が送信されてきた利用者についての入退室情報を作成し(s25)、これを入退室履歴DB24に記憶する(s26)。このとき、入退室履歴DB24に記憶される入退室情報には、入退室日時、管理区域、利用者ID、入退室の種別、および認証結果については含まれているが、扉10の開時間については空である。
【0035】
開閉装置2は、s12で入退室管理装置1から送信されてきた認証結果を受信すると、受信した認証結果が利用者の管理区域への入退室を許可するものであるか、不許可とするものであるかを判定する(s14)。開閉装置2は、認証結果が利用者の入退室を不許可とするものであれば、s11に戻る。このとき、管理区域の扉10付近にいる該当する利用者に対して、管理区域への入退室が許可されないことを通知してもよい。また、該当する利用者が管理区域からの退室を希望していた場合には、入退室が許可されていない管理区域に入室した利用者がいることを警備室等に連絡するようにしてもよい。
【0036】
一方、入退室管理装置1における認証結果が利用者の管理区域への入退室を許可するものであれば、開閉装置2は、施錠/解錠部33により電子錠11を解錠する(s15)。開閉装置2は、電子錠11を解錠すると、開閉状態検知34において、扉10の開時間の計測を開始する(s16)。利用者は、電子錠11が解錠された扉10を開して、管理区域に入室、または管理区域から退室する。開閉装置2は、利用者が入退室するときに扉10が開された時間をs16で計測する。すなわち、電子錠11の解錠後に、センサ12により扉10が開したことが検知され、その後当該扉10が閉したことが検知されるまでの時間を計測する。開閉装置2は、利用者の入退室が完了するのを待つ(s17)。開閉装置2は、扉10が一旦開され、その後閉されたことにより、利用者の入退室が完了したと判定する。開閉装置2は、利用者の入退室が完了すると、電子錠11を施錠する(s18)。また、開閉装置2は、今回計測した扉10の開時間(扉開時間)を入退室管理装置1に通知し(s19)、s11に戻る。
【0037】
入退室管理装置1は、s22で開閉装置2からの扉開時間の通知を受信すると、今回通知された扉開時間を、s26で入退室履歴DB24に記憶した該当する入退室情報に追加する(s27)。また、入退室管理装置1は、今回扉開時間を追加した利用者について、入退室情報が欠損しているかどうかを判定する(s28)。s28では、この利用者について、入退室履歴DB24から、今回扉開時間を追加した入退室情報と、前回記憶した入退室情報と、を抽出し、共連れ知識DB26に登録されている判定条件に基づいて、この間に共連れが生じているかどうかを判定する。また、共連れが生じていれば、詳細条件に基づいて、欠損している入退室情報の欠損項目を判断する。入退室管理装置1は、s28で共連れが生じていないと判定すると、すなわち入退室情報が欠損していないと判定すると、s21に戻り、上述した処理を繰り返す。反対に、共連れが生じていると判定すると、欠損している入退室情報を補完する補完処理を行い(s29)、s21に戻る。
【0038】
このs29にかかる補完処理について詳細に説明する。図14は、入退室管理装置における補完処理を示すフローチャートである。入退室管理装置1は、欠損している入退室情報の欠損項目に基づき、行動パターンDB25から、この処理で用いる在室割合関数、および移動時間割合関数を読み出す(s31)。例えば、管理区域A入室と、管理区域B入室との間で管理区域A退室にかかる入退室情報が欠損している場合には、管理区域Aの在室割合関数、および管理区域Aから管理区域Bへの移動時間割合関数を行動パターンDB25から読み出す。また、管理区域A退室と、管理区域B退室との間で管理区域B入室にかかる入退室情報が欠損している場合には、管理区域Bの在室割合関数、および管理区域Aから管理区域Bへの移動時間割合関数を行動パターンDB25から読み出す。さらに、管理区域P入室と、管理区域R入室との間で、管理区域P退室、管理区域Q入室、管理区域Q退室にかかる3つの入退室情報が欠損している場合には、管理区域Pの在室割合関数、管理区域Pから管理区域Qへの移動時間割合関数、管理区域Qの在室割合関数、および管理区域Qから管理区域Rへの移動時間割合関数を行動パターンDB25から読み出す。
【0039】
入退室管理装置1は、s31で読み出した在室割合関数、および移動時間割合関数に基づいて、欠損している利用者の入退室情報の入退室日時を推定する(s32)。例えば、管理区域A入室と、管理区域B入室との間で管理区域A退室にかかる入退室情報が欠損している場合には、図15に示すように、管理区域Aの入室日時を基準にして、管理区域Aの在室割合関数を配置するとともに、管理区域Bの入室日時を基準にして、管理区域Aから管理区域Bへの移動時間割合関数を配置し、図15中にハッチングで示す、これら2つの関数が重なった部分(以下、アンド領域と言う。)の重心を、欠損している管理区域Aからの退室にかかる入退室日時として推定する。管理区域Aの入室日時、および管理区域Bの入室日時は、入退室情報があるので、既知である。
【0040】
また、管理区域A退室と、管理区域B退室との間で管理区域B入室にかかる入退室情報が欠損している場合には、図16に示すように、管理区域Aの退室日時を基準にして、管理区域Aから管理区域Bへの移動時間割合関数を配置し、管理区域Bの退室日時を基準にして、管理区域Bの在室割合関数を配置したときのアンド領域の重心を、欠損している管理区域Bへの入室にかかる入退室日時として推定する。管理区域Aの退室日時、および管理区域Bの退室日時は、入退室情報があるので、既知である。
【0041】
さらに、管理区域P入室と、管理区域R入室との間で、管理区域P退室、管理区域Q入室、管理区域Q退室にかかる3つの入退室情報が欠損している場合には、図17に示すように、管理区域Pの入室日時を基準にして、管理区域Pの在室割合関数を配置するとともに、管理区域Rの入室日時を基準にして、管理区域Qから管理区域Rへの移動時間割合関数を配置する。また、管理区域Qの入室日時を示す入室日時軸を、管理区域P入室から管理区域R入室までの間の適当な時間に設定し、この入室日時軸に対して管理区域Pから管理区域Qへの移動時間割合関数、および管理区域Qの在室割合関数を配置する。管理区域Pの入室日時、および管理区域Rの入室日時は、入退室情報があるので、既知である。そして、管理区域Qの入室日時を示す入室日時軸を、管理区域Pの在室割合関数と管理区域Pから管理区域Qへの移動時間割合関数とが重なるアンド領域の面積と、管理区域Qの在室割合関数と管理区域Qから管理区域Rへの移動時間割合関数とが重なるアンド領域の面積と、が等しくなる位置にずらす。このときに、管理区域Pの在室割合関数と管理区域Pから管理区域Qへの移動時間割合関数とが重なるアンド領域の重心を、欠損している管理区域Pからの退室にかかる入退室日時として推定するとともに、管理区域Pの在室割合関数と管理区域Pから管理区域Qへの移動時間割合関数とが重なるアンド領域の重心を、欠損している管理区域Qからの退室にかかる入退室日時として推定する。さらに、このときの管理区域Qの入室日時を示す入室日時軸の位置を、管理区域Qへの入室にかかる入退室日時として推定する。
【0042】
入退室管理装置1は、欠損している入退室情報毎に、入退室履歴DB24から、s32で推定した入退室日時に基づく補完用入退室情報を抽出する(s33)。s33では、入退室履歴DB24から、対応する管理区域の入退室情報であって、且つs32で推定した入退室日時に時間的に最も近い入退室情報を、補完用入退室情報として抽出する。入退室管理装置1は、s33で抽出した入退室情報に基づいて、今回欠損していると判定した入退室情報を作成し、これを入退室履歴DB24に記憶する(s34)。s34では、s33で抽出した補完用入退室情報の利用者IDを変更するとともに、必要に応じて入退室の種別を変更した入退室情報を作成する。
【0043】
このように、入退室管理装置1は、利用者の欠損している入退室情報の入退室日時を、対象となる管理区域における利用者の在室時間を統計的に処理した在室割合関数、および対象となる2つの管理区域間の移動について統計的に処理した時間経過にともなう移動中の利用者の割合を示す移動時間割合関数に基づいて推定する。このため、利用者の欠損している入退室情報の入退室日時の推定が、精度よく行える。また、推定した入退室日時に基づいて、入退室情報が欠損している利用者を共連れした入退室情報を補完用入退室情報とし、ここで抽出した補完用入退室情報で、欠損している入退室情報を補完するので、入退室履歴DB24に記憶されている、入退室情報の信頼性を向上させることができ、管理区域のセキュリティの低下が十分に抑えられる。
【0044】
また、上記実施形態では、s32でアンド領域の重心を、入退室日時として推定するとしが、在室割合関数と移動時間割合関数との交点を、入退室日時として推定するようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、s32で推定した入退室日時に時間的に最も近い入退室情報を、補完用入退室情報として抽出するとしたが、s32で推定した入退室日時を中心とする予め定めた時間幅、例えば10分、の間で、対応する管理区域の入退室情報であって、且つ扉開時間が最も長い入退室情報を、補完用入退室情報として抽出する構成としてもよい。
【0046】
また、s32で推定した入退室日時を中心とする予め定めた時間幅、例えば10分、の間で、対応する管理区域の入退室情報を全て抽出し、ここで抽出した入退室情報を補完用入退室情報の候補とし、どの補完用入退室情報で欠損している入退室情報を補完するかを問い合わせる構成としてもよい。例えば、入出力部27から、接続されている端末に対してこの問い合わせを行う構成とすればよい。この場合には、オペレータが該当する利用者に対して、電話や電子メール等で確認し、確認した内容に基づいて、欠損している入退室情報を補完する補完用入退室情報を入退室管理装置1に通知する入力を端末で行えばよい。入退室管理装置1は、上述の問い合わせに対する端末からの通知に基づいて、利用者の欠損している入退室情報を補完すればよい。また、入退室管理装置1が、上記問い合わせを、利用者の端末等に対して直接行う構成としてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、開閉装置2から扉時間の通知を受信する毎に、該当する利用者について、入退室情報が欠損しているかどうかを判定し、必要に応じて補完処理を行うとしたが、各利用者に対する入退室情報が欠損しているかどうかの判定、および入退室情報が欠損している場合の補完処理をバッチ処理で行う構成としてもよい。また、s26にかかる処理を行った後に、s28、およびs29にかかる処理を行うようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態の読取装置3は、利用者を識別することができる情報の読取が行える装置であればよく、磁気カードから利用者IDを読み取る装置であってもよいし、利用者の指紋、掌紋、虹彩、顔等の生体情報を読み取る装置であってもよいし、これら以外の装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この実施形態の入退室管理システムの構成を示す概略図である。
【図2】管理区域の出入口付近を示す概略図である。
【図3】入退室管理装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図4】認証条件データベースが記憶する認証条件を示す図である。
【図5】入退室履歴データベースが記憶する入退室情報を示す図である。
【図6】行動パターンデータベースが記憶する在室時間情報を示す図である。
【図7】行動パターンデータベースが記憶する移動時間情報を示す図である。
【図8】共連れ知識データベースが記憶する判定条件を示す図である。
【図9】開閉装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図10】読取装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図11】読取装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】開閉装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】入退室管理装置の動作を示すフローチャートである。
【図14】入退室管理装置における補完処理を示すフローチャートである。
【図15】入退室管理装置における補完処理を説明する図である
【図16】入退室管理装置における補完処理を説明する図である
【図17】入退室管理装置における補完処理を説明する図である
【符号の説明】
【0050】
1−入退室管理装置
2−開閉装置
3−読取装置
10−扉
11−電子錠
12−センサ
15−RFタグ
21−制御部
22−通信部
23−認証条件データベース(認証条件DB)
24−入退室履歴データベース(入退室履歴DB)
25−行動パターンデータベース(行動パターンDB)
26−共連れ知識データベース(共連れ知識DB)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者と、その利用者が入退室した管理区域と、入退室の種別と、入退室日時とを対応づけた入退室情報を蓄積的に記憶する入退室履歴記憶手段と、
管理区域毎に、利用者の在室時間を統計的に処理した在室時間情報を記憶する在室時間情報記憶手段と、
2つの管理区域間における、利用者の移動時間を統計的に処理した移動時間情報を記憶する移動時間情報記憶手段と、
利用者毎に、前記入退室履歴記憶手段が記憶している入退室情報が欠損しているかどうかを判定する欠損判定手段と、
前記欠損判定手段が欠損していると判定した利用者の入退室情報について、前記在室時間情報記憶手段が記憶する該当する管理区域の在室時間情報、および、前記移動時間情報記憶手段が記憶する該当する2つの管理区域間の移動時間情報に基づいて、入退室日時を推定する推定手段と、
欠損していると判定した利用者の入退室情報を補完する補完用入退室情報を、前記推定手段が推定した入退室日時に基づいて前記入退室履歴記憶手段が記憶している入退室情報の中から抽出する補完用入退室情報抽出手段と、
前記欠損判定手段が欠損していると判定した利用者の入退室情報を、前記補完用入退室情報抽出手段が抽出した補完用入退室情報で補完する補完手段と、を備えた入退室管理装置。
【請求項2】
前記補完手段は、前記補完用入退室情報抽出手段が抽出した入退室情報とともに、この入退室情報で補完するかどうかを問い合わせ、この問い合わせに対する応答に応じて、欠損している入退室情報を補完する手段である、請求項1に記載の入退室管理装置。
【請求項3】
補完用入退室情報抽出手段は、前記入退室履歴記憶手段が記憶している入退室情報の中で、前記推定手段が推定した入退室日時に時間的に最も近い該当する管理区域の入退室情報を前記補完用入退室情報として抽出する手段である、請求項1または2に記載の入退室管理装置。
【請求項4】
前記入退室情報は、利用者が管理区域に入退室するのを制限する当該管理区域の扉が開状態であった時間も対応づけた情報であり、
前記補完用入退室情報抽出手段は、前記入退室履歴記憶手段が記憶している入退室情報の中から、前記推定手段が推定した入退室日時を中心とする所定時間幅の時間帯で、且つ前記扉が開状態であった時間が最大であった該当する管理区域の入退室情報を、前記補完用入退室情報として抽出する手段である、請求項1または2に記載の入退室管理装置。
【請求項5】
前記欠損判定手段は、入退室履歴記憶手段が入退室情報を記憶するときに、この入退室情報にかかる利用者について、入退室情報が欠損しているかどうかを判定する手段である、請求項1〜4のいずれかに記載の入退室管理装置。
【請求項1】
利用者と、その利用者が入退室した管理区域と、入退室の種別と、入退室日時とを対応づけた入退室情報を蓄積的に記憶する入退室履歴記憶手段と、
管理区域毎に、利用者の在室時間を統計的に処理した在室時間情報を記憶する在室時間情報記憶手段と、
2つの管理区域間における、利用者の移動時間を統計的に処理した移動時間情報を記憶する移動時間情報記憶手段と、
利用者毎に、前記入退室履歴記憶手段が記憶している入退室情報が欠損しているかどうかを判定する欠損判定手段と、
前記欠損判定手段が欠損していると判定した利用者の入退室情報について、前記在室時間情報記憶手段が記憶する該当する管理区域の在室時間情報、および、前記移動時間情報記憶手段が記憶する該当する2つの管理区域間の移動時間情報に基づいて、入退室日時を推定する推定手段と、
欠損していると判定した利用者の入退室情報を補完する補完用入退室情報を、前記推定手段が推定した入退室日時に基づいて前記入退室履歴記憶手段が記憶している入退室情報の中から抽出する補完用入退室情報抽出手段と、
前記欠損判定手段が欠損していると判定した利用者の入退室情報を、前記補完用入退室情報抽出手段が抽出した補完用入退室情報で補完する補完手段と、を備えた入退室管理装置。
【請求項2】
前記補完手段は、前記補完用入退室情報抽出手段が抽出した入退室情報とともに、この入退室情報で補完するかどうかを問い合わせ、この問い合わせに対する応答に応じて、欠損している入退室情報を補完する手段である、請求項1に記載の入退室管理装置。
【請求項3】
補完用入退室情報抽出手段は、前記入退室履歴記憶手段が記憶している入退室情報の中で、前記推定手段が推定した入退室日時に時間的に最も近い該当する管理区域の入退室情報を前記補完用入退室情報として抽出する手段である、請求項1または2に記載の入退室管理装置。
【請求項4】
前記入退室情報は、利用者が管理区域に入退室するのを制限する当該管理区域の扉が開状態であった時間も対応づけた情報であり、
前記補完用入退室情報抽出手段は、前記入退室履歴記憶手段が記憶している入退室情報の中から、前記推定手段が推定した入退室日時を中心とする所定時間幅の時間帯で、且つ前記扉が開状態であった時間が最大であった該当する管理区域の入退室情報を、前記補完用入退室情報として抽出する手段である、請求項1または2に記載の入退室管理装置。
【請求項5】
前記欠損判定手段は、入退室履歴記憶手段が入退室情報を記憶するときに、この入退室情報にかかる利用者について、入退室情報が欠損しているかどうかを判定する手段である、請求項1〜4のいずれかに記載の入退室管理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−225938(P2008−225938A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64383(P2007−64383)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]