説明

入退室管理装置

【課題】1つの送信アンテナで利用者の入室と退室とを判別することができる入退室管理装置を提供する。
【解決手段】管理領域と外部とを区画する壁に形成された出入口近傍で壁よりも管理領域側及び外部側の一方に設けられ、送信アンテナと受信アンテナとを有したリーダと、電界強度センサを有し、送信アンテナが送信した電波を受信し、当該電波の電界強度を電界強度センサで検出し、当該電界強度の検出値に対応した電波を送信する識別体と、識別体が送信した電波を受信アンテナが受信した際に、当該電波から算出した電界強度の検出値の時間的な変化に基づいて、管理領域に対する識別体の入室と退室とを判別するコントローラと、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入退室管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
入退室管理装置のリーダとして、2つの送信アンテナを備えたものが提案されている。当該入退室管理装置によれば、どの送信アンテナから送信されたコマンドに対応して識別体が応答したのかを特定することで、識別体を携帯した利用者の入室と退室とを判別する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−227315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、当該入退室管理装置においては、2つの送信アンテナが必要となるだけでなく、これらの送信アンテナを切り替える回路が必要となる。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、1つの送信アンテナで利用者の入室と退室とを判別することができる入退室管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る入退室管理装置は、管理領域と外部とを区画する壁に形成された出入口近傍で前記壁よりも前記管理領域側及び前記外部側の一方に設けられ、送信アンテナと受信アンテナとを有したリーダと、電界強度センサを有し、前記送信アンテナが送信した電波を受信し、当該電波の電界強度を前記電界強度センサで検出し、当該電界強度の検出値に対応した電波を送信する識別体と、前記識別体が送信した電波を前記受信アンテナが受信した際に、当該電波から算出した電界強度の検出値の時間的な変化に基づいて、前記管理領域に対する前記識別体の入室と退室とを判別するコントローラと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、1つの送信アンテナで利用者の入室と退室とを判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1における入退室管理装置の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1における入退室管理装置のリーダの送信アンテナが送信するLF電波の特性を説明するための図である。
【図3】この発明の実施の形態1における入退室管理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における入退室管理装置の構成図である。
【0011】
図1において、1は建築物内の通路である。通路1は、建築物内の各管理領域につながるように形成される。2は居室である。居室2は、建築物内の管理領域として、壁3を介して通路1等の外部と区画される。壁3は、LF電波を透過する材料で形成される。
【0012】
壁3の一部には、出入口4が形成される。出入口4は、通路1と居室2とを貫通するように形成される。出入口4には、扉5が設けられる。扉5は、LF電波を透過する材料で形成される。扉5は、出入口4を開閉するように設けられる。
【0013】
出入口4の上方では、壁3よりも居室2側に、リーダ6が設けられる。リーダ6は、送信アンテナ6a、受信アンテナ6bを有する。送信アンテナ6aは、LF電波を所定距離まで放射状に送信する機能を備える。受信アンテナ6bは、RF電波を受信する機能を備える。
【0014】
7はタグ(識別体)である。タグ7は、LF電波を受信する機能を備える。タグ7は、RF電波を送信する機能を備える。タグ7は、記憶部7a、電界強度センサ7bを内蔵する。記憶部7aは、タグ7を携帯する利用者の個人情報データを記憶する機能を備える。電界強度センサ7bは、3次元方向(X、Y、Zの3方向)のLF電波の電界強度を検出する機能を備える。
【0015】
リーダ6には、コントローラ8が接続される。例えば、コントローラ8は、リーダ6の近傍に設けられる。コントローラ8は、記憶部8aを内蔵する。記憶部8aは、居室2への入室が許可された利用者の個人情報データを個人情報データベースとして記憶する機能を備える。コントローラ8には、扉5の電気錠5aが接続される。電気錠5aは、扉5の鍵を開閉する機能を備える。
【0016】
次に、図2を用いて、送信アンテナ6aが送信するLF電波の特性を説明する。
図2はこの発明の実施の形態1における入退室管理装置のリーダの送信アンテナが送信するLF電波の特性を説明する。図2の横軸は送信アンテナ6aからの距離である。図2の縦軸は、送信アンテナ6aにより生成された磁束密度である。
【0017】
図2において、LF(内)は、居室2側の磁束密度である。LF(外)は、通路1側の磁束密度である。送信アンテナ6aよりも居室2側においては、当該LF電波の伝播方向に物体が存在しない。これに対し、リーダ6よりも通路1側においては、当該LF電波の伝播方向に壁3や扉5が存在する。
【0018】
このため、送信アンテナ6aよりも居室2側においては、当該LF電波による磁束密度は、リーダ6から離れるにつれてなだらかに減少する。これに対し、リーダ6よりも通路1側においては、当該LF電波による磁束密度は、壁3や扉5の影響により、リーダ6から離れるにつれて急激に減少する。
【0019】
すなわち、送信アンテナ6aよりも居室2側においては、当該LF電波による電界強度は、リーダ6から離れるにつれてなだらかに減少する。これに対し、リーダ6よりも通路1側においては、当該LF電波による電界強度は、リーダ6から離れるにつれて急激に減少する。
【0020】
次に、図3を用いて、入退室管理装置の動作を説明する。
図3はこの発明の実施の形態1における入退室管理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【0021】
タグ7を携帯した利用者が出入口4に近づくと、タグ7は、送信アンテナ6aが送信したLF電波の伝播範囲内に入る。このとき、タグ7は、送信アンテナ6aが送信したLF電波を受信する。この際、電界強度センサ7bは、タグ7が受信したLF電波の電界強度を検出する。その後、ステップS1に進み、タグ7は、記憶部7aの個人情報データと電界強度センサ7bの検出値とを対応付けたデータを含むRF電波を送信する。
【0022】
その後、ステップS2に進み、リーダ6の受信アンテナ6bは、タグ7が送信したRF電波を受信する。その後、リーダ6は、受信したRF電波から読み取った個人情報データと電界強度センサ7bの検出値に対応したデータをコントローラ8へ送信する。
【0023】
その後、ステップS3に進み、コントローラ8の記憶部8aは、リーダ6から受信した個人情報データと電界強度センサ7bのデータとを記憶する。その後、ステップS4に進み、コントローラ8は、リーダ6からの個人情報データを個人情報データベースと照合する。
【0024】
リーダ6からの個人情報データが個人情報データベースに登録済みの個人情報データと一致しない場合は、ステップS1に戻る。これに対し、リーダ6からの個人情報データが個人情報データベースに登録済みの個人データと一致した場合は、ステップS5に進む。ステップS5では、コントローラ8は、当該個人情報データに対し、前回と今回の電界強度センサ7bの検出値の差分(増加量)を算出する。
【0025】
当該差分のデータが所定値未満の場合は、コントローラ8は、タグ7が退室すると判定する。これに対し、当該差分のデータが所定値以上の場合は、コントローラ8は、タグ7が入室すると判定する。
【0026】
このとき、扉5を制御してはいけない場合は、ステップS1に戻る。これに対し、扉5を制御してもよい場合は、ステップS6に進む。ステップS6では、コントローラ8は、電気錠5aに対し、開錠信号等を送信し、電気錠5aの開閉を制御する。当該制御後、ステップS1に戻る。
【0027】
これらの一連の動作は、所定時間間隔で繰り返される。すなわち、コントローラ8は、所定時間間隔前後の電界強度の検出値の差分に基づいて、管理領域に対する利用者の入室と退室とを判別する。
【0028】
以上で説明した実施の形態1によれば、コントローラ8は、LF電波の電界強度の検出値の時間的変化に基づいて、管理領域に対するタグ7の入室と退室とを判別する。このため、1つの送信アンテナ6aでタグ7を携帯する利用者の動態管理を行うことができる。すなわち、1つの送信アンテナ6aを用いたハンズフリーの入退室管理装置で利用者の入室と退室とを判別することができる。その結果、入退室管理装置を安価かつ運用容易にすることができる。
【0029】
具体的には、コントローラ8は、所定時間間隔前後の電界強度の検出値の差分に基づいて、管理領域に対するタグ7の入室と退室とを判別する。このため、簡易な演算により、利用者の入室と退室とを判別することができる。なお、入室と退室とを判別する際の閾値として用いる所定値は、利用者の歩行速度等を考慮して設定すればよい。
【0030】
この際、各管理領域のリーダ6毎の電界強度の特性をキャリブレーションしておけば、利用者の入室と退室とをより正確に判別することができる。
【0031】
なお、壁3よりも通路1側にリーダ6を設けてもよい。この場合、電界強度センサ7bの検出値の差分が所定値未満であれば、タグ7が入室すると判定すればよい。これに対し、当該差分が所定値以上の場合であれば、タグ7が退室すると判定すればよい。この場合でも、1つの送信アンテナ6aでタグ7を携帯する利用者の動態管理を行うことができる。
【0032】
また、電界強度センサ7bの検出値が所定の第1閾値を超えてから所定の第2閾値に到達するまでにかかる時間の長短をタイマー等で計測して、管理領域に対するタグ7の入室と退室とを判別してもよい。この場合も、1つの送信アンテナ6aで利用者の入室と退室とを判別することができる。
【0033】
また、ICカードを識別体として、利用者の入室と退室とを判別してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 通路
2 居室
3 壁
4 出入口
5 扉
5a 電気錠
6 リーダ
6a 送信アンテナ
6b 受信アンテナ
7 タグ
7a 記憶部
7b 電界強度センサ
8 コントローラ
8a 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理領域と外部とを区画する壁に形成された出入口近傍で前記壁よりも前記管理領域側及び前記外部側の一方に設けられ、送信アンテナと受信アンテナとを有したリーダと、
電界強度センサを有し、前記送信アンテナが送信した電波を受信し、当該電波の電界強度を前記電界強度センサで検出し、当該電界強度の検出値に対応した電波を送信する識別体と、
前記識別体が送信した電波を前記受信アンテナが受信した際に、当該電波から算出した電界強度の検出値の時間的な変化に基づいて、前記管理領域に対する前記識別体の入室と退室とを判別するコントローラと、
を備えたことを特徴とする入退室管理装置。
【請求項2】
前記電界強度センサは、前記送信アンテナが送信した電波の電界強度を所定時間間隔で検出し、
前記コントローラは、前記所定時間間隔前後の電界強度の検出値の差分に基づいて、前記管理領域に対する前記識別体の入室と退室とを判別することを特徴とする請求項1記載の入退室管理装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記電界強度の検出値が所定の第1閾値を超えてから所定の第2閾値に到達するまでにかかる時間に基づいて、前記管理領域に対する前記識別体の入室と退室とを判別することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の入退室管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−104165(P2013−104165A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246311(P2011−246311)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】