説明

入退管理制御装置、及び入退管理システム

【課題】入退管理システムのコントローラ等に係わり、(1)電源断対策としてUPS等の手段を設けることなくシステム情報(通知情報)の保全、(2)当該保全のために要するコスト等の削減、を実現できる技術を提供する。
【解決手段】入退管理システムのコントローラ1は、UPS等の手段を備えず、通知プロセス200(通知制御部)は、通常運用時に、制御プロセス100からの通知情報を不揮発性メモリ(202)に格納し、当該データを不揮発性メモリ(202)を用いたキュー(201)内の領域(204)へ移動する処理を行う第1の処理部(203)と、キュー(201)内の領域に格納された通知情報を取得して通知先装置へ送信して格納させる処理を行う第2の処理部(208)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入退管理システムの技術に関し、特に、システム情報(通知情報)の記憶の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
入退管理システムの構成例では、部屋の出入口等に設置されるカードリーダ(認証装置)等のデバイスと、それらデバイスを制御するコントローラ(入退管理制御装置)と、コントローラに対して接続され管理者が参照可能なシステム処理装置(SPU)と、を有し、入退管理・制御を行っている。
【0003】
データ処理装置における一時的な情報は、何らかの手段で記憶・保持しないかぎり電源断により消失してしまうため、電源回復後に復帰することができないデータ処理装置も多く、意図しない突発的な停電などの電源断の発生によって情報が失われる可能性がある。
【0004】
特に入退管理システムのコントローラにおいても、電源断の発生によって、システム情報(通知情報)が失われる可能性がある。
【0005】
上記電源断の対策の手段として、一般的に、UPS(Uninterruptible Power Supply)(無停電電源装置)やバッテリバックアップ、等の公知技術がある。
【0006】
上記データ処理装置及び電源断対策などに関する先行技術例としては、特開昭58−169218号公報(特許文献1)、特開2008−262350号公報(特許文献2)などがある。
【0007】
特許文献1では、電源断が発生したとき処理中のプログラムの処理状態を記憶し、電源復旧時に当該プログラムを継続実行する(いわゆる電源断が発生してもバッテリ等によりそのプログラム処理を継続できる)装置において、電源断を検出する手段と、電源断時のプログラム処理状態を記憶する複数のスタック区域と、スタック区域に記憶された処理プログラムが電源断時に動作する電源断プログラムであるか否かを識別する手段を設け、電源断した状態時に複数のスタック区域に順次プログラム処理状態を記憶するともに、電源復旧時には、その逆に順次プログラム処理状態を読み出して、当該プログラムが電源断プログラムでなくなるまで、プログラムの読み出しをするようにした、電源断復旧の方式について記載されている。
【0008】
特許文献2では、電源断直後に発生する電気的な信号をキーとして、数百マイクロ秒の間に一時メモリの情報を不揮発メモリに保存し、電源復旧時には、不揮発メモリから情報を読み出して、電源断前の状態を復旧させる、情報記憶、復旧の方式について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭58−169218号公報
【特許文献2】特開2008−262350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1,2のような電源断対策・復旧方式の公知技術を、入退管理システムのコントローラに対して適用した場合、以下のような問題がある。
【0011】
特許文献1の技術によれば、停電時にも情報を記憶できるものの、UPSやバッテリバックアップ等の手段のように、メイン電源とは別にサブ電源を設ける必要がある。これにより、装置(コントローラ)の規模やコストが拡大する問題がある。
【0012】
特許文献2の技術によれば、UPSやバッテリバックアップ等の手段は必要無いが、電源断検出後の数百マイクロ秒の間に一時メモリのデータを退避する必要がある。そのため、記憶されるデータが大量(例えば入退管理システムにおける数万件の通知情報データ)のような場合には、対応が困難になるという問題がある。
【0013】
従来、入退管理システムのコントローラ等において、UPS等の手段を設けない構成の場合は、電源断対策として、システム情報(通知情報)の保全(特に長期の保存)が難しく、また、UPS等の手段を設ける構成の場合は、コストや規模や管理の負担などが大きくなってしまうという問題がある。
【0014】
入退管理システムのコントローラ等において、入退管理・制御に係わるシステム情報(通知情報)の保全を図りたい。例えば、突発的な電源断が発生してから電源が回復した場合、予め保存しておいた情報(例えば入退の履歴情報)があれば、管理者が参照・確認することができ有用である。
【0015】
以上を鑑み、本発明の主な目的は、入退管理システムのコントローラ等に係わり、(1)電源断対策としてUPS等の手段を設けることなくシステム情報(通知情報)の保全(特に長期・大量データの保全)を実現できる技術、(2)当該保全のために要するコスト等の削減(特に長期・大量データの保全の場合でも低コスト)を実現できる技術、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のうち代表的な形態は、入退管理システムのコントローラ(入退管理制御装置)等であって、以下に示す構成を有することを特徴とする。コントローラは、通知先装置などと接続される。
【0017】
本形態の入退管理システムのコントローラでは、通常運用時にコントローラから通知先装置へ通知情報データを随時・経時的に送信して通知先装置内に格納させる処理を行う構成、及び、通知情報データの格納のためにコントローラに備える不揮発性記憶装置及びその処理等を工夫した構成を有する。
【0018】
上記構成として、本コントローラは通知制御部を有する。通知制御部は通常運用の制御プロセスに伴う通知プロセスを実現する。通知制御部(通知プロセス)は、第1の不揮発性記憶手段、第1の処理部、第2の不揮発性記憶手段を用いて構成されるキュー、及び、第2の処理部、を有する。キューは、通常時の流れの入口部と出口部の領域と、保留時の流れの保留部(保留キュー)の領域と、を有する。
【0019】
コントローラと通知先装置との通信状態が良くない場合は、適宜、保留部(保留キュー)を用いて通知情報データが記憶される。
【0020】
第1の処理部は、コントローラの通常運用の制御プロセスからの通知情報データが第1の不揮発性記憶手段に格納されると、第1の不揮発性記憶手段内の通知情報データを第2の不揮発性記憶手段のキュー内(入口部または保留部)に移動する処理を行う。
【0021】
第2の処理部は、キュー内(出口部または保留部)の通知情報データを取得(移動)して通知先装置へ送信する処理を行う。
【0022】
第1の形態では、キューの入口部と出口部、及び保留部は、第1の種類の不揮発性記憶装置により構成される。
【0023】
第2の形態では、キューの入口部と出口部は、第1の種類の不揮発性記憶装置により構成され、保留部は、第2の種類の不揮発性記憶装置により構成される。
【0024】
第1の種類の不揮発性記憶装置と第2の種類の不揮発性記憶装置との相対的な関係において、第1の種類の不揮発性記憶装置は、高信頼性・高速であり、第2の種類の不揮発性記憶装置は、大容量・安価である。
【発明の効果】
【0025】
本発明のうち代表的な形態によれば、入退管理システムのコントローラ等に係わり、(1)電源断対策としてUPS等の手段を設けることなくシステム情報(通知情報)の保全(特に長期・大量データの保全)を実現できる。(2)当該保全のために要するコスト等の削減(特に長期・大量データの保全の場合でも低コスト)を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態の入退管理システムの全体の構成を示す図である。
【図2】本実施の形態のコントローラの第1処理のフローを示す図である。
【図3】本実施の形態のコントローラの第2処理のフローを示す図である。
【図4】本実施の形態のコントローラの不揮発性メモリ(MRAM)のメモリマップを示す図である。
【図5】本実施の形態のコントローラのセンダキュー等の構成及び対応するメモリ構成(実施の形態1,2)を示す図である。
【図6】本実施の形態のコントローラとSPUのハードウェア・ソフトウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0028】
<概要等>
本入退管理システム(図1等)では、コントローラ1は、電源断対策としてのUPS等の手段を備えず、通知プロセス200を有し、特に、MRAM(207)を用いて構成されるセンダキュー201、及びセンダキュー201を用いたイベントレシーバ203とセンダ208の処理(第1処理、第2処理)を有する。通常運用時(正常な電源供給状態)は、制御プロセス100が稼働し、そして本通知プロセス200により、随時・経時的に、コントローラ1から外部のSPU2(通知先)へシステム情報(通知情報)が送信され、SPU2のDB5内に格納される。
【0029】
コントローラ1は、UPS等を備えないため、停電などの電源断時には稼働を一時停止するが、コントローラ1の不揮発性メモリには通知情報データが保持され、また通常運用時に予め外部のSPU2へ通知情報が保全されている。電源断からの電源回復後には、上記通常運用時に予め外部のSPU2へ保全されている通知情報が存在するため、例えば管理者により通知情報(例えば入退の履歴情報)を参照・確認することができ有用である。
【0030】
コントローラ1内の通知プロセス200用のメモリとして、通知情報メモリ202(イベントレシーバキューを構成する)、センダキューメモリ207(センダキュー201を構成する)、保留メモリ206(保留キュー209)、を有する。いずれもFIFOのキューを構成する。特に実施の形態1の構成では、保留メモリ206は、他のメモリ部分と同じく、MRAMで構成される。特に実施の形態2の構成では、保留メモリ206は、他のメモリ部分と異なり、CFで構成される(図5)。
【0031】
通常、コントローラ1と通知先SPU2との通信状態が良い状況では、センダキュー201からセンダ208により随時速やかに通知情報データがSPU2へ送信され格納される。コントローラ1と通知先SPU2との通信状態が悪い状況では、センダ208からSPU2へ通知情報データを送信できないが、センダキュー201及び保留キュー209を用いて通知情報データが記憶・保留される。保留キュー209を用いることで比較的長期・大量データであっても保全される。コントローラ1と通知先SPU2との通信状態が良い状況になれば、上記記憶・保留しておいた通知情報データが速やかにSPU2へ送信され格納される。
【0032】
[システム構成]
図1において、本実施の形態の入退管理システムの全体の構成を示している。本入退管理システムでは、入退管理制御装置(コントローラ)1、システム処理装置(SPU)2、カードリーダ(認証装置)3、等がネットワーク4で接続される構成である。
【0033】
入退管理制御装置1は、本入退管理システムのコントローラである。コントローラ1には、カードリーダ3やセンサ等の各種のデバイスが接続される。また、コントローラ1は、例えばLAN等のネットワーク4を介して、通知先のSPU2と接続される。コントローラ1は、前述したUPS等の手段を備えない構成(仕様)であり、これにより低コスト等の効果を持つ。
【0034】
SPU2は、入退管理システムの管理者などが使用可能な装置であり、入退管理システムの制御プロセス100に関する設定などが可能である。SPU2は、コントローラ1から送信される通知情報を集約してデータベース(DB)5に格納する。管理者は、SPU2のDB5に格納された通知情報を参照することができる。例えばSPU2がサーバ装置で構成され、管理者は端末装置からネットワーク4を介してSPU2サーバへアクセスし、DB5の通知情報を取得し、当該情報を端末装置の画面に表示して確認することができる。
【0035】
コントローラ1は、制御プロセス100、通知プロセス200が稼働する構成である。制御プロセス100は、通常運用時の入退管理・制御に係わるプロセスである(公知技術)。制御プロセス100以外の部分が、本特徴的な通知制御部を構成する通知プロセス200である。この通知プロセス200は、通常運用時に制御プロセス100と共に稼働する。制御プロセス100及び通知プロセス200は、コントローラ1の後述(図6)のハードウェア・ソフトウェア構成におけるプログラム処理あるいは回路処理などにより実現される。またコントローラ1は通知先SPU2と通知情報の送信のための通信処理を行う。
【0036】
制御プロセス100は、システムマネージャ、デバイスコントローラ、コマンドサーバ、アンチパスバックコントローラ、拡張接点コントローラ、といった複数の各種のプロセスを含む。各プロセスは、それぞれ対応する種類のシステム情報(通知情報)を発信する。例えばデバイスコントローラは、カードリーダ3等のデバイスに対する制御・通信を行うプロセスであり、通知情報の例として、入退の履歴情報などを出力する。各プロセスの通知情報は、誤りを監視・修正するためにチェックサム等の情報が付与される。当該制御プロセス100からの通知情報データは通知情報メモリ202へ出力(書込)される(a1)。
【0037】
通知プロセス200は、センダキュー(通知情報センダキュー)201、通知情報メモリ202、イベントレシーバ203、センダ(通知情報センダ)208、等の要素により構成される。センダキュー201は、センダキューメモリ207、及び保留メモリ206を用いて構成される。センダキューメモリ207は、入口部(センダキューメモリ入口部)204と、出口部(センダキューメモリ出口部)205とを有する。また、保留メモリ206を用いて必要に応じて保留キュー209が構成される。
【0038】
通知プロセス200における主な処理として、イベントレシーバ203の処理(第1処理)と、センダ208の処理(第2処理)と、を有する。これら2つの処理は独立(非同期)で稼働する。これら2つの処理はコントローラ1に備える不揮発性メモリ(MRAM)(202,207)を用いながら行われる。
【0039】
通知情報メモリ202は、通常運用時に経時的に通知情報の記憶が可能なように、不揮発性メモリ、例えばMRAM、が用いられる。通知情報メモリ202への書き込みの主体は制御プロセス100である。
【0040】
イベントレシーバ203は、通知情報メモリ202から通知情報データの読み出し(a2)を行うが、その際、上記監視のためのチェックサム等による読み出しにて通知情報データの正常性を確認し、確認できた場合は、センダキュー201内の入口部204に、当該通知情報を記憶する(a3)。これにより、当該通知情報データは通知情報メモリ202から入口部204へ移動される(A)。なお基本的にデータの移動処理(コピー及び削除処理)とし、メモリ内に空き領域を確保するようにする。また各移動(A,B,C)の際には上記のようにチェックサム等によるデータ正常性の確認を行う。
【0041】
通常時、イベントレシーバ203から書き込まれる通知情報は、センダキュー201内の入口部204に格納される(a3)。一方、センダ208は、センダキュー201の更新(通知情報データの発生)を監視しており、入口部204への通知情報データの格納がある場合は、入口部204から出口部205へ当該データを移動する(a4)(B)。
【0042】
センダキュー201の入口部204及び出口部205は、通常運用時に経時的に通知情報データの記憶が可能なように、不揮発性メモリ、例えばMRAM、が用いられる。
【0043】
センダ208は、出口部205から通知情報データの読み出し(チェックサム確認を含む)を行う(a5)。そして、当該通知情報データを参照して、通知先のSPU2へ当該データを送信する処理を行う(a6)。当該通知情報データの送信の成功(OK)を確認した後、出口部205内の当該通知情報データを削除する。これによりセンダキュー201の出口部205からSPU2内のDB5へ当該通知情報が移動する(C)。
【0044】
センダ208は、上記通知情報データの送信が失敗(NG)の場合は、上記出口部205内の当該通知情報データを削除せずに保持し、後で再送処理する。
【0045】
コントローラ1のセンダ208とSPU2との間における通知情報データの送信のための通信においては、ネットワーク4等に対応した所定のプロトコル、例えばTCP/IP、で行われる。この通信に関し、センダ208は、通知先SPU2との通信における通信状態を監視・判定する処理機能を有する。センダ208は、SPU2との通信状態(通信可(OK)/通信不可(NG))をみながら、センダキュー201(出口部205)からの通知情報データの取得(a5)と、当該通知情報データのSPU2への送信(a6)とを適切に制御する。
【0046】
ここで、制御プロセス100から通知情報メモリ202への通知情報データの格納の処理(a1)と、イベントレシーバ203の第1処理による通知情報メモリ202からセンダキュー201内(入口部204)への通知情報データの移動の処理(A)と、センダ208の第2処理によるセンダキュー201内(入口部204、出口部205)からの通知情報データの移動・取得及びSPU2への送信の処理(B,C)と、の各処理は独立して行われている。
【0047】
コントローラ1のセンダ208とSPU2との間の通信で、通信状態が良い場合(「OK」「通信可」)、制御プロセス100から発生してくる通知情報がキューに滞留せずに、随時速やかにSPU2へ送信して格納させることができる。しかしながら、センダ208とSPU2との間の通信で、ネットワーク4の障害やSPU2側の都合などの何らかの要因により、通信状態が悪い場合(「NG」「通信不可」)、制御プロセス100から発生してくる通知情報を効率的にSPU2へ送信することはできず、コントローラ1内(キュー)に通知情報が滞留することになる。
【0048】
そこで本実施の形態では、上記通信NG時の通知情報の滞留にも適切に対処可能な仕組みとして、センダキュー201における保留メモリ206及びその保留キュー209を用いた処理などを有する構成である。これにより、通信状態が良くなるまでの間、通知情報データを保留キュー209に保留(記憶)させる。
【0049】
通信OK時には、通常のセンダキュー201の入口部204−出口部205の流れで(保留キュー209を用いずに)通知情報データを移動・送信する。一方、通信NG時には、通常のセンダキュー201の入口部204−出口部205の流れの途中に保留キュー209を用いて、当該通知情報データを保留させる。そして、上記通信NGが通信OKの状態になると、自動的に保留キュー209から通知情報データが取り出されてSPU2へ送信される。
【0050】
例えばイベントレシーバ203は、センダキュー201の入口部204に通知情報データを格納する余裕が無い場合は、保留キュー209を作成して当該保留キュー209へ当該通知情報データを格納(移動)する(a7)。通知情報データの発生量に応じて適宜、保留メモリ206に保留キュー209が追加作成・確保される。保留キュー209は例えば入口部204の処理キューのデータイメージのファイルである。
【0051】
上記通知情報データの保留は、NG状態が長期になるほど大容量を必要とするが(例えば数万件を超える場合も想定される)、このために保留メモリ206としてMRAMではなくCFを用いる構成(実施の形態2)とすることにより、通知情報データの長期(大量)の保全を低コストで実現できる。
【0052】
センダ208は、通信状態が良い場合(OK)、保留キュー209に記憶されている通知情報データがある場合は、順にセンダキュー201の出口部205へ移動させ(a8)、そして出口部205からSPU2へ当該通知情報データを送信する。
【0053】
通信状態の監視や判定に関しては各種公知技術を適用してもよい。本実施の形態では、所定のプロトコル(TCP/IP等)に基づき、コントローラ1のセンダ208が通知情報データ送信に対するSPU2からの応答をみて通信状態を判断する。例えばセンダ208がSPU2へ通知情報データ(例えば1件ないし所定件数の単位)を送信し、SPU2から当該データの正常受領などを示す応答が返ってきた場合は、通信可状態(OK)と判断し、次の通知情報データ単位を送信可能とする。また、上記正常受領などを示す応答が返ってこない場合は、当該通知情報データの送信は失敗で、通信不可状態(NG)と判断する。そして当該通知情報データはセンダキュー201に保持したままとし、後で再送を図ることになる。
【0054】
[コントローラ処理]
図2,図3を用いて、コントローラ1の処理フロー例を説明する。図2は、主にイベントレシーバ203による処理であり、図3は、主にセンダ208による処理である。図2と図3の処理アルゴリズムは対応関係である。Sは処理ステップを表す。以下、1つ(1件)の通知情報データの単位のFIFOの処理の流れで説明するが、複数の通知情報についても同様に処理すればよい。また複数の通知情報を1つの単位にまとめて同様に処理してもよい。
【0055】
[第1処理]
(S101) 通知プロセス200は、制御プロセス100(複数の各々のプロセス)からの通知情報データを受信する。
【0056】
(S102) 通知プロセス200は、受信した通知情報データを、通知情報メモリ202に格納する。
【0057】
本実施の形態では、上記S101,S102では、制御プロセス100(複数の各々のプロセス)が通知情報メモリ202に通知情報データを格納する。そして、これを契機として、イベントレシーバ203は、S103以下のように、当該通知情報メモリ202に格納された通知情報データを処理する構成である。
【0058】
(S103) イベントレシーバ203は、センダキュー201の入口部204に格納されている通知情報データ量が、所定値(X)以上であるか否かを判断する。X未満の場合(N)はS104へ遷移し、X以上の場合(Y)はS106へ遷移する。
【0059】
(S104) イベントレシーバ203は、通知情報メモリ202の通知情報データを入口部204へコピーする。
【0060】
(S105) イベントレシーバ203は、上記通知情報メモリ202の通知情報データを削除し、終了(最初から同様に繰返し)する。
【0061】
(S106) イベントレシーバ203は、保留メモリ206を用いて、通知情報データの保留(記憶)のための保留キュー209を作成する。なお本処理例では、当該通知情報データ量(例えば入口部204の領域の所定値(X)のサイズ毎)に応じて、保留キュー209をファイル単位で1つずつ追加する。
【0062】
(S107) イベントレシーバ203は、上記入口部204の領域の通知情報データを保留キュー209へ移動し、移動により空いた入口部204の領域へ通知情報メモリ202の通知情報データをコピーする。
【0063】
(S108) イベントレシーバ203は、上記通知情報メモリ202の通知情報データを削除し、終了する。
【0064】
図2では、FIFOの処理例として、入口部204の通知情報データを保留キュー209へ移動(保存)し、これにより空いた入口部204の領域に次の通知情報データを格納するという流れである。
【0065】
[第2処理]
(S201) センダ208は、通知先のSPU2との通信が可能(OK)か否(NG)か等、通信状態を判断する。通信可(OK)の場合(Y)はS202へ遷移し、通信不可(NG)の場合(N)は終了(最初から同様に繰返し)する。
【0066】
(S202) センダ208は、センダキュー201の出口部205に通知情報データが有るか否かを判断する。有る場合(Y)はS209へ遷移し、無い場合(N)はS203へ遷移する。
【0067】
(S203) センダ208は、保留キュー209が有るかどうかを判断する。有る場合(Y)はS207へ遷移し、無い場合(N)はS204へ遷移する。
【0068】
(S204) センダ208は、入口部204に通知情報データが有るかどうかを判断する。有る場合(Y)はS205へ遷移し、無い場合(N)は終了する。
【0069】
(S205) センダ208は、入口部204の通知情報データを出口部205へコピーする。
【0070】
(S206) センダ208は、上記入口部204の通知情報データを削除し、S209へ遷移する。
【0071】
(S207) センダ208は、保留キュー209の通知情報データを出口部205へコピーする。なお先に作成された保留キュー209(ファイル)からの順である。
【0072】
(S208) センダ208は、上記保留キュー209の通知情報データを削除し、S209へ遷移する。なお当該削除により1つの保留キュー209(ファイル)内の全データが無くなる場合は当該保留キュー209(ファイル)自体が削除される(ファイルを1つずつ減少する)。
【0073】
(S209) センダ208は、センダキュー201の出口部205の通知情報データを、ネットワーク4を介して通知先のSPU2へ送信処理する。
【0074】
(S210) センダ208は、上記通知情報データの送信処理の結果が成功(OK)か否(NG)かをSPU2からの応答などに基づき判断する。上記結果がNGの場合(N)は、前述のように、当該通知情報データの再送処理を行う(S209へ戻る)。※
(S211) センダ208は、上記結果がOKの場合(Y)、上記出口部205の通知情報データを削除し、終了(最初から繰返し)する。
【0075】
図3では、FIFOの処理例として、出口部205、保留キュー209、入口部204、の優先順で通知情報データの有無をみて当該データを移動・送信するという流れである。
【0076】
[メモリマップ]
図4は、本コントローラ1に備える単一のMRAMのメモリマップを示す。A0等はアドレスを示す。401は、イベントレシーバキュー領域である(図5の501に対応)。通知情報メモリ202はイベントレシーバキュー(イベントレシーバ203の処理に係わるキュー)を構成する。402はセンダキュー入口部領域である(図5の502に対応)。403はセンダキュー出口部領域である(図5の503に対応)。なおこれら領域には通知情報データだけでなくチェックサム等を含むヘッダ情報等を格納してもよい。
【0077】
[システム情報(通知情報)]
本実施の形態において記憶・保全の対象とする「システム情報(通知情報)」とは、制御プロセス100による、入退の履歴情報や、各デバイス(カードリーダ3等)の状態の管理・制御情報などを含む、入退管理システムに応じた所定の形式の情報である。例えば本入退管理システムでは、ユーザがカードリーダ3にカードをかざして認証を成功してドア等を通過すると、1件以上(例えば数件程度)の通知情報データが発生する。
【0078】
[センダキュー及びメモリ構成]
図5等を用いて、本システムにおける特徴的なキュー及びメモリ構成などについて説明する。なお図1〜図4に示した構成に対応している。センダキュー201(保留キュー209を含む)はキュー構造なので、データ(通知情報)はFIFOで処理される。
【0079】
本実施の形態(実施の形態1,2)では、コントローラ1に備える不揮発性メモリ(NVM)の例として、MRAM(Magnetroresistive RAM)(磁気抵抗メモリ)を採用する。また実施の形態2では、MRAMと併せて、CF(Compact Flash)を採用する。図5の通常用第1NVM=MRAMであり、保留用第2NVM=MRAMまたはCFである。
【0080】
またコントローラ1の通知プロセス200として、イベントレシーバ203の処理(第1処理)、センダ208の処理(第2処理)、のそれぞれで、送信すべき通知情報を一時的に記憶するための不揮発性記憶装置またはそのメモリ領域を用いるが、通知情報メモリ202として、MRAMの第1領域(401,501)を用い、センダキュー201(204,205)として、同MRAMの第2領域(402,502)・第3領域(403,503)を用いる。501のMRAM通知情報メモリ領域は、401に対応した領域である。502のMRAM入口部領域は、402に対応した領域である。503のMRAM出口部領域は、403に対応した領域である。
【0081】
本実施の形態では、通知情報メモリ202と、センダキュー201とで、一体的な1つのMRAMで構成している。尚これらは別の不揮発性記憶装置で分けて構成することも可能である。
【0082】
通常用第1NVMと保留用第2NVMとにおける特性等の相対的な関係として、通常用第1NVMは、高信頼性、高速などの利点を有し、保留用第2NVMは、大容量、安価などの利点を有する。コスト面では、MRAMは比較的高価、CFは比較的安価(廉価)である。容量面では、CFは大容量であり、多数使用しても安価である。MRAMは容量に応じてコスト高となる。また、MRAMは、書き換え回数の制限が無く耐久性が高く通知情報データが保全される(高信頼性)、また読み書きアクセスが高速である。
【0083】
よって、本実施の形態(実施の形態1,2)では、通知情報メモリ202及びセンダキュー201の入口部204と出口部205でMRAMを使用する。キューへの通知情報データの書き込みと読み出しのアクセスの短縮ができ、高効率となる。
【0084】
実施の形態1では、センダキュー201の構成に関して、MRAMのみの構成とする。保留メモリ206(保留用第2NVM)自体を無しとする。また例えばMRAM領域による保留メモリ206を設ける形態としてもよいが、その場合は、比較的小さい容量とする。実施の形態1は、保留用のCF及びその処理機能などを備える必要が無いので、シンプルな構成である。コントローラ1とSPU2との通信状態が良好に保たれる環境などでは有用である。
【0085】
実施の形態2では、センダキュー201の構成に関して、MRAM+CFの2種類の記憶装置の組み合わせの構成とする。センダキュー201の入口部204・出口部205の容量としては、MRAMを用いるので比較的小容量に抑える。保留メモリ206(保留キュー209)として、大容量、安価などの利点を活かしてCFを使用する。CFは複数使用してもよい。実施の形態2は、MRAMの利点とCFの利点とをバランスよく組み合わせた構成である。これにより、高信頼性と低コストなどを両立する。
【0086】
なおMRAMやCFに限らず、上記特性や関係を満たすような他の種類の記憶装置を適用可能なことは勿論である。例えばCFではなくHDD等を使用してもよい。
【0087】
なお図1(及び図2,図3)では、基本的な形態として、通知情報メモリ202から通知情報データを入口部204に一旦移動(a2,a3)し、保留の場合には入口部204から保留キュー209へ当該データを移動(a7)する流れを示している。また、保留データがある場合、保留キュー209から通知情報データを出口部205に一旦移動(a8)し、出口部205から取り出して送信(a5,a6)する流れを示している。一方、上記形態を基本として、図5に示すように、保留の場合、通知情報メモリ202(501)から入口部204(502)を介さずに直接保留キュー209へデータを移動する形態(出口部205側でも同様)としてもよい。ただし通知情報データのFIFOの順序などを考慮して処理する必要はある。
【0088】
[管理件数及びメモリ容量の設定]
前記S103に関して、所定値(X)は、例えば本システムのコントローラ1(通知プロセス200)に対して可変に設定可能な管理情報である。設定は、例えば通常運用の設定と同様に、管理者操作に基づきSPU2からコントローラ1に対して行うことができる。所定値(X)は、例えば通知情報の件数(またはそのデータ量換算)の単位で、最大件数(管理件数)として設定される。なお1件は1通知情報データであり、システムにもよるが例えば平均50バイト/1件程度である。保全可能としたい件数・データ量を考慮して、当該所定値(X)が設定される。またこれに併せてコントローラ1に備えるMRAMやCF等の各メモリの容量が設定される。例えば、最大件数として数万件といった大量(及び長期)の通知情報の保全を想定する場合、対応した値が設定される。
【0089】
通常の環境では、コントローラ1とSPU2との通信状態は良好に保たれるので、即ち保留は殆ど発生しないか、または発生したとしても少量であり、MRAM容量は比較的小さくてよい。
【0090】
[実装構成例]
図6は、コントローラ1とSPU2のハードウェア・ソフトウェアの実装構成例(実施の形態2の場合)を示す。コントローラ1は、プロセッサ401、メモリ402、記憶装置403、入力装置404、出力装置405、通信I/F装置406、MRAM&I/F部421、CF&I/F部422を有する。制御プログラム411は、制御プロセス100を実現する。通知制御プログラム412は、通知プロセス200を実現する。プロセッサ401がメモリ402にプログラム(411,412)をロードして実行することにより各プロセス(100,200)を実現する。MRAM&I/F部421は、MRAMとそれに対するデータ読み書きのインタフェース処理部を含む。CF&I/F部422は、CFとそれに対するデータ読み書きのインタフェース処理部を含む。
【0091】
SPU2は、プロセッサ501、メモリ502、記憶装置503、入力装置504、出力装置505、通信I/F装置506、を有する。プロセッサ501がメモリ502にプログラム(511)をロードして実行することにより、SPU2の制御処理(コントローラ1に対する設定やコントローラ1から受信する通知情報データをDB5へ格納する処理及び通知情報データを画面に表示する処理など)を実現する。
【0092】
[効果等]
以上説明したように、本実施の形態の入退管理システム(コントローラ1)により、(1)電源断対策としてUPS等の手段を設けることなくシステム情報(通知情報)の保全(特に長期・大量データの保全)を実現できる。(2)当該保全のために要するコスト等の削減(特に長期・大量データの保全の場合でも低コスト)を実現できる。
【0093】
本システムでは通常運用時にコントローラ1の内部の不揮発性メモリに経時的に通知情報データが記憶されると共に、外部のSPU2へ通知情報データが送信されDB5に集約的に格納され保全されている。よって、管理者は、SPU2のDB5の通知情報(例えば入退の履歴情報)を、随時、画面で参照・確認することができる。したがって、入退管理システムのシステム管理、継続運用などに関して有効である。
【0094】
コントローラ1からSPU2へ通知情報を送信して格納するにあたり、通信状態が悪い間も、コントローラ1内の不揮発性メモリに通知情報データを保持(保留)することができ、通信状態が改善すれば、上記保留しておいたデータの送信を開始でき、外部にデータを保全することができる。
【0095】
従来技術例のシステムでは、例えばコントローラ内に通知情報をファイルとして蓄積している。一方、本実施の形態では、コントローラ1から外部のSPU2へ通知情報を送信してSPU2内のDB5に蓄積している。従来技術例のシステムは、UPS等を備えるコントローラ、UPS等を備えないコントローラ、等が存在するが、本実施の形態によれば、1つの方式のコントローラ1(UPS等を備えず通知プロセス200を備える)に統一することができる。
【0096】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、入退管理システムなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0098】
1…入退管理制御装置(コントローラ)、2…SPU(システム処理装置/通知先装置)、3…カードリーダ(認証装置)、4…ネットワーク、5…DB、100…制御プロセス、200…通知プロセス(通知制御部)、201…センダキュー(通知情報センダキュー)、202…通知情報メモリ、203…イベントレシーバ、204…入力部、205…出力部、206…保留メモリ、207…センダキューメモリ、208…センダ(通知情報センダ)、209…保留キュー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入退管理システムを構成する入退管理制御装置であって、
UPSまたはバッテリバックアップの手段を備えず、
通常運用時に制御プロセスからの通知情報を外部の通知先装置へ送信して格納させる制御処理を実行する通知制御部を有し、
前記通知制御部は、
前記通常運用時に、前記制御プロセスからの通知情報データを経時的に第1の不揮発性記憶手段に格納し、当該第1の不揮発性記憶手段に格納された通知情報データを、第2の不揮発性記憶手段を用いたFIFOにおける入口部と出口部とを有するキュー内の入口部へ移動する第1の処理を行う第1の処理部と、
前記通常運用時に、前記キュー内の入口部から出口部へ前記通知情報データを移動して、前記キュー内の出口部に格納された通知情報データを取得して前記通知先装置へ送信して当該通知先装置内に格納させる第2の処理を行う第2の処理部と、を有し、
前記キューを構成する不揮発性記憶手段として、高信頼性で高速な特性を持つ記憶装置を使用する構成により、高信頼性かつ高速で前記通知情報データの処理及び保持を行うこと、を特徴とする入退管理制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の入退管理制御装置において、
前記第1の処理部は、前記通知情報データを移動する際、前記キュー内の入口部の領域に格納されている通知情報データ量が所定値以上である場合、不揮発性記憶手段を用いた保留キューを作成して、当該保留キュー内の領域へ当該通知情報データを移動し、
前記第2の処理部は、前記保留キュー内の領域に格納された通知情報データが有る場合は当該通知情報データを前記キュー内の出口部の領域へ移動して取得して前記通知先装置へ送信して当該通知先装置内に格納させ、
前記キューを構成する不揮発性記憶手段として、前記保留キューを構成する不揮発性記憶手段よりも高信頼性で高速な特性を持つ第1の記憶装置を使用し、前記保留キューを構成する不揮発性記憶手段として、前記キューを構成する不揮発性記憶手段よりも大容量で安価な特性を持つ第2の記憶装置を使用する構成により、大容量かつ安価で前記通知情報データの処理及び保持を行い、
上記構成により、前記通知先装置との通信状態が良くない間は、前記キュー及び保留キューを用いながら前記通知情報データが保持され、前記通知先装置との通信状態が良い間は、前記キュー及び前記保留キューから前記通知情報データが前記通知先装置へ送信されること、を特徴とする入退管理制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の入退管理制御装置と、
前記入退管理制御装置とネットワークを介して接続され管理者が操作可能である通知先装置と、を有して構成される入退管理システムであり、
前記通常運用時に前記入退管理制御装置から送信される通知情報データが前記通知先装置内のデータベースに集約的に格納され、
前記通知先装置は、前記管理者の操作に基づき、前記データベースの通知情報データを画面に表示して参照可能とすること、を特徴とする入退管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−198837(P2012−198837A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63585(P2011−63585)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】