説明

全反射蛍光観察装置

【課題】発光ダイオード素子を光源に用いることで低消費電力かつ小型の全反射蛍光観察装置を提供する。
【解決手段】導光性を有する基板の第1の側部端面に、測定対象面で全反射するように光を導入する第1の光源部11、基板の第1の側部端面と対向する第2の側部端面に、測定対象面で全反射するように光を導入する第2の光源部12、そのように基板に導入された光によって発生されたエバネッセント光によって励起された基板上の蛍光標識の蛍光画像を取得する取得部13、取得された画像を蓄積する蓄積部14を備える。第1及び第2の光源部12は、発光ダイオード素子、それらから出射された光を平行光に収束させる第1の収束レンズ、その平行光を収束させる第2の収束レンズをそれぞれ有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード素子を用いた全反射蛍光観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源にメタルハライドランプやキセノンランプ等を用い、光ファイバーを介してその光源からの光を基板に照射することによってエバネッセント光を発生させ、蛍光観察を行う装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3769226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、メタルハライドランプ等は通常の水銀ランプと比較して省電力であるが、エバネッセント光を用いた蛍光観察を行う場合には350W程度の光源が用いられており、消費電力が大きかった。また、メタルハライドランプ等を光源に用いた場合には、前述のように、光ファイバーを介して光源からの光を基板に照射していた。それは、光源で発生した熱が、基板やその周辺の観測系に影響を与えないようにするためである。そのように、光ファイバーを用いて光源と測定装置とをつないだ場合には、装置が全体として大型化してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、消費電力が小さく、小型である全反射蛍光観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明による全反射蛍光観察装置は、導光性を有する基板の第1の側部端面に、測定対象面で全反射するように光を導入する第1の光源部と、基板の第1の側部端面と対向する第2の側部端面に、測定対象面で全反射するように光を導入する第2の光源部と、第1及び第2の光源部によって基板に導入された光によって発生されたエバネッセント光によって励起された基板上の蛍光標識の蛍光画像を取得する取得部と、取得部が取得した画像を蓄積する蓄積部と、を備え、第1及び第2の光源部は、発光ダイオード素子と、発光ダイオード素子から出射された光を平行光に収束させる第1の収束レンズと、平行光を収束させる第2の収束レンズと、をそれぞれ有する、ものである。
【0007】
このような構成により、発光ダイオード素子を光源に用いた全反射蛍光観察装置を実現することができる。発光ダイオード(LED)は、メタルハライドランプ等と比較して消費電力の小さいことが知られている。したがって、発光ダイオード素子を光源に用いることによって、消費電力の小さい全反射蛍光観察装置を実現することができる。また、発光ダイオード素子を用いることによって、光ファイバーを介さないで基板に光を導入することもでき、そのようにすることで装置を小型化することが可能となる。
【0008】
また、本発明による全反射蛍光観察装置では、第1及び第2の光源部は、第1の収束レンズによって収束された平行光を均一な光束にする拡散板をそれぞれさらに有し、第2の収束レンズは、拡散板によって均一にされた光束を収束させてもよい。
このような構成により、拡散板を用いて均一な光束として光量のばらつきを防止することにより、収束性を改善することができ、エバネッセント光を適切に発生させることができるようになる。なお、その拡散板を第1及び第2の収束レンズの間に設けることにより、拡散板を発光ダイオード素子と第1の収束レンズとの間に設けた場合などと比較して、広い面積で拡散させることができるため、容易に光束を均一にでき、その結果として、拡散板による光量の減衰を低減させることも可能である。
【0009】
また、本発明による全反射蛍光観察装置では、第1及び第2の光源部が有する発光ダイオード素子が外側となるように、基板及び取得部を少なくとも外光から遮蔽する筐体と、筐体内を冷却する筐体内冷却部と、第1及び第2の光源部が有する発光ダイオード素子を筐体の外側からそれぞれ冷却する第1及び第2の筐体外冷却部と、をさらに備えてもよい。
このような構成により、筐体内冷却部によって筐体内を冷却することができる。また、筐体外冷却部によって、第1及び第2の光源部を冷却することができ、その第1及び第2の光源部から筐体内部に流入する熱の量を低減させることができる。その結果、筐体内が高温になることを回避することができる。
【0010】
また、本発明による全反射蛍光観察装置では、基板は複数の反応槽に仕切られたものであり、取得部は、蛍光画像を撮影するものであり、かつ、一の反応槽に対応する基板の領域を撮影可能な画角を有してもよい。
このような構成により、走査撮影を行わずに反応槽の撮影を行うことができるようになる。したがって、撮影時間を短くすることができると共に、蛇行走査等を行うためのXYステージ等が必要なくなり、装置を小型化することができる。
【0011】
また、本発明による全反射蛍光観察装置では、基板を着脱可能に保持する、全反射蛍光観察装置に着脱可能なカートリッジをさらに備え、基板は、長手方向に並んだ複数の反応槽を有しており、かつ、長手方向に第1及び第2側部端面を有しており、カートリッジは、第1及び第2の側部端面に光を導入可能に基板が載置される載置部と、第1及び第2の側部端面に光を導入可能に、載置部に載置された基板を覆うカバー部と、を備えてもよい。
このような構成により、基板をカートリッジに装着して扱うことができ、基板の第1及び第2の側部端面や撮影を行う面が汚損されることを防止できる。
【0012】
また、本発明による全反射蛍光観察装置では、カバー部は、基板の長手方向を軸として開閉されてもよい。
このような構成により、カートリッジに基板を載置する作業時に、基板の長手直交方向(短手方向)の対向する側面を指等で保持することができ、より正確な載置の処理を行うことができるようになる。
【0013】
また、本発明による全反射蛍光観察装置では、第1及び第2の光源部は、当該第1及び第2の光源部の出射光の光量を測定する光量センサをそれぞれ有し、第1及び第2の光源部が有する光量センサが測定した光量を用いて、第1及び第2の光源部の出射光の光量が均等になるように、第1及び第2の光源部が有する発光ダイオード素子の出力をそれぞれ制御する光量調整部をさらに備えてもよい。
このような構成により、基板の第1の側部端面から導入される光量と、基板の第2の側部端面から導入される光量とを均等にすることができる。その結果、蛍光を発生させるための光を均等にすることができ、蛍光画像の誤判定を防止することができうる。
【発明の効果】
【0014】
本発明による全反射蛍光観察装置によれば、発光ダイオード素子を光源に用いることによって、消費電力の少ない小型の装置を実現することができうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1による全反射蛍光観察装置の構成を示す断面図
【図2】同実施の形態による全反射蛍光観察装置の構成を示す断面図
【図3】同実施の形態における基板及びカートリッジの構成を示す斜視図
【図4】同実施の形態における第1の光源部の構成を示す断面図
【図5】同実施の形態における基板への光の導入について説明するための図
【図6】同実施の形態における第1の光源部の他の構成を示す断面図
【図7】同実施の形態における蛍光パターンの画像の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による全反射蛍光観察装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
【0017】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による全反射蛍光観察装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による全反射蛍光観察装置は、発光ダイオード素子を光源に用いることによって、消費電力の少ない小型の装置を実現したものである。
【0018】
図1、図2は、本実施の形態による全反射蛍光観察装置100の内部構成を示す断面図である。なお、図1の断面と、図2の断面とは直交している。図3は、基板1と、カートリッジ2との構成を示す斜視図である。図4は、第1の光源部11の構成を示す断面図である。
図1、図2において、本実施の形態による全反射蛍光観察装置100は、第1の光源部11と、第2の光源部12と、取得部13と、蓄積部14と、上面板15と、本体フレーム16と、下部フレーム17と、ヒートシンク18と、筐体内冷却部19と、第1の筐体外冷却部21と、第2の筐体外冷却部22と、基板1を着脱可能に保持するカートリッジ2の搬送機構と、蛍光画像を取得するための光学系とを主に備える。
【0019】
図3(a)で示されるように、基板1は、板状の部材であり、透明部材1aと、複数の反応槽1cに応じた開口を有するゴム板1bとから構成される。透明部材1aは、導光性を有するものであり、例えば、ガラス、石英、透明な樹脂(プラスチック)、または、その他の透明な板状の部材である。本実施の形態では、基板1の長手方向の側部端面である第1の側部端面1d、及び第2の側部端面1eのそれぞれから光が導入されることによって、エバネッセント光を発生させる。なお、厳密に言えば、第1の側部端面1d、第2の側部端面1eは、透明部材1aのそれぞれ対向する側部端面である。また、基板1の上面に、基板1に関する情報を有する情報格納部1fが存在してもよい。その情報格納部1fは、例えば、1次元バーコードや2次元バーコード、数字、文字列、記号等のように視覚的に認識可能なものであってもよく、あるいは、RFIDや磁気テープ等のように視覚的に認識不可能なものであってもよい。本実施の形態では、その情報格納部1fが2次元バーコードである場合について説明する。また、その情報格納部1fが有する情報は、例えば、基板1の識別情報であってもよく、基板1の反応槽1cに固定されている試料を特定する情報であってもよく、基板1の反応槽1cに投入された被検試料に関する情報(例えば、被験者の識別子等)であってもよい。なお、基板1に情報格納部1fが存在しなくてもよい。また、本実施の形態では、複数の反応槽1cがゴム板1bによって仕切られている場合について説明するが、複数の反応槽1cは、その他の方法によって形成されてもよい。例えば、反応槽1cに対応する領域以外の透明部材1aの表面に撥水加工を行うことによって、反応槽1cを形成してもよい。なお、本実施の形態では、複数の反応槽1cが基板1の長手方向に並んでいる場合について説明するが、そうでなくてもよい。反応槽1cは1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、その反応槽1cの形状は問わない。
【0020】
図3(b)で示されるように、カートリッジ2は、載置部2aと、カバー部2bとを備える。そのカートリッジ2は、全反射蛍光観察装置100に着脱可能なものである。基板1がカートリッジ2に装着される場合に、基板1は載置部2aに載置される。その載置部2aに基板1が載置された場合に、基板1がずれないように固定されることが好適である。図3(b)では、4つの爪部2fによって、載置された基板1が固定される。また、カバー部2bは、載置部2aに載置された基板1を覆うものであり、基板1の長手方向(カートリッジ2の長手方向)を軸として開閉されるようになっている。なお、図3(b)で示されるように、通常、その長手方向の軸は、載置部2aの長手直交方向の一方の端に設けられる。カバー部2bは、透明であってもよく、あるいは、不透明であってもよい。基板1で発生したエバネッセント光によって励起された蛍光の観察を容易にする観点からは、カバー部2bは、光を通さない遮光性のものであることが好適である。但し、情報格納部1fが視覚的に認識するものである場合(例えば、2次元バーコードの場合)には、その情報格納部1fの領域のみ、外部から観察可能なようになっていてもよい。例えば、その情報格納部1fに対応するカバー部2bの領域のみ透明であってもよく、あるいは、その情報格納部1fに対応するカバー部2bの領域に開口が設けられていてもよい。また、図3(c)で示されるように、基板1の複数の反応槽1cに対応する載置部2aの領域に開口2cが設けられている。この開口2cを介して、エバネッセント光によって励起された蛍光標識の画像を取得することができる。また、載置部2aの長手方向の両端には、凹部2d,2eが設けられている。この凹部2d,2eによって、基板1を載置部2aに載置したり、基板1を載置部2aから取ったりする作業を容易に行うことができるようになる。凹部2d,2eの位置では、基板1の端部が載置部2aよりも外側に存在することになるからである。すなわち、作業者は、凹部2d,2eの位置において、基板1を指等で長手方向の両端から把持して載置部2aに載置したり、そこから取ったりすることを容易に行うことができる。なお、光を導入する端面である第1及び第2の側部端面1d,1eを汚損してはならないため、その第1及び第2の側部端面1d,1eで基板1を把持することは好適でない。一方、カバー部2bの開閉の軸を基板1の長手方向とすることにより、基板1の長手直交方向の側部端面で基板1を把持して基板1をカートリッジ2に着脱することが容易となり、作業者の利便性が向上される。このカートリッジ2は、全反射蛍光観察装置100に着脱可能なものである。したがって、全反射蛍光観察装置100は、カートリッジ2を構成要素として有していると考えてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。
【0021】
なお、基板1が載置部2aに載置された状態で、また、カバー部2bが載置部2aに載置された基板1を覆った状態で、第1及び第2の側部端面1d,1eに光を導入可能であることが必要である。したがって、載置部2a及びカバー部2bは、複数の反応槽1cに対応する第1及び第2の側部端面1d,1eに導入される光の障害とならない形状であることが好適である。すなわち、カバー部2bが閉じられた状態で、載置部2a及びカバー部2bに第1及び第2の光源部11,12からの光を通過可能な空間が設けられていることが好適である。その空間は、例えば、開口であってもよく、凹部であってもよく、載置部2aとカバー部2bとの間の空隙であってもよい。
【0022】
また、基板1の各反応槽1cには、所定の間隔で、所定の面積を有する試料がマトリクス状に固定されている。その試料は、例えば、抗原、抗体、レクチン等の糖鎖結合性たんぱく質、DNAやRNA等のポリヌクレオチド、または、その他の被検試料と結合するものであってもよい。その反応槽1cに入れられる被検試料は、直接的にまたは間接的に蛍光標識されたものである。その蛍光標識で用いられる蛍光色素は、例えば、Cy3,Cy3.5,Cy5等であってもよく、あるいは、その他の蛍光色素であってもよい。被検試料は、例えば、細胞や生体組織等から抽出されたものである。被検試料と、基板1に固定された試料とが相補的関係の場合には結合し、非相補的関係の場合には結合しない。そのようにして、基板1に固定された試料に対して特異的に結合する分子の有無を検出することができる。また、エバネッセント光は、透明部材1aの表面の半波長から1波長程度の範囲にのみ存在するため、そのエバネッセント光によって励起される蛍光標識は、基板1に固定された試料と結合した被検試料の蛍光標識のみとなり、それ以外のブラウン運動している蛍光標識、すなわち、結合しなかった蛍光標識は励起されない。したがって、どの試料の位置に、エバネッセント光によって励起された蛍光標識が存在するのかを観測することによって、被検試料に含まれているものを知ることができる。なお、位置のみでなく、蛍光の程度も観測してもよい。また、このようなエバネッセント光を用いた蛍光観察の方法はすでに公知であり(例えば、上記特許文献等)、その詳細な説明を省略する。また、その蛍光観察を行う前に、反応槽1cを洗浄してもよく、あるいは、洗浄しなくてもよい。例えば、基板1に固定された試料が糖鎖またはレクチンであり、被検試料がその試料に結合能を持つ分子である場合には、両者の結合は弱いため、洗浄処理によって解離反応が進行しまう。したがって、そのような場合には、洗浄を行うことなく蛍光観察を行うことが好適である。
【0023】
図1において、本体フレーム16の上側の開口は、上面板15によって閉じられている。また、本体フレーム16に設けられた円形の開口を介して、第1及び第2の光源部11,12の光の出射側が本体フレーム16内部に挿入された状態で、第1及び第2の光源部11,12が固定されている。なお、第1及び第2の光源部11,12と、本体フレーム16の円形の開口との隙間から外光が入ることを防止するため、その隙間にリング状シールド16a,16bが設けられている。下部フレーム17は、取得部13を囲む円筒状のフレームである。その下部フレーム17は、本体フレーム16の下部に固定されている。下部フレーム17の下側の開口は、ヒートシンク18によって閉じられている。また、上面板15、本体フレーム16、下部フレーム17、ヒートシンク18によって、全反射蛍光観察装置100の筐体が構成されている。そして、その筐体によって、第1及び第2の光源部11,12が有する後述する発光ダイオード素子51が外側となるように、基板1と取得部13とが少なくとも外光から遮蔽されている。したがって、上面板15、本体フレーム16、下部フレーム17、ヒートシンク18は、それぞれ遮光性の物質で構成されていることが好適である。エバネッセント光によって励起される蛍光は、通常、弱いものであるため、このように外光を遮蔽することによって、適切な蛍光画像の取得を行うことができるようになる。また、図2で示されるように、本体フレーム16の一面には開口16cが設けられている。その開口16cの外側には、筐体内冷却部19が設けられており、その筐体内冷却部19によって、筐体の内部が冷却される。本実施の形態では、その筐体内冷却部19が冷却ファンである場合について説明する。
【0024】
次に、カートリッジ2の搬送機構について説明する。図1、図2において、その搬送機構は、保持部31と、ナット部材32と、モータ33と、継ぎ手34と、送りネジ35と、ステージ支持部36と、ステージ37とを備える。
【0025】
保持部31は、上面板15に固定されている。その保持部13は、送りネジ35の長さ方向に延びる一対のレール31aを有する。そして、その一対のレール31aにナット部材32の一対のガイド32aが係合することにより、保持部13は、ナット部材32を送りネジ35の長さ方向に摺動可能に保持する。ナット部材32は、送りネジ35と螺合するナットを内部に有しており、送りネジ35の回転に応じて、図2の右側あるいは左側の方向に移動される。モータ33の回転軸と、送りネジ35とは、継ぎ手34を介して接続されている。したがって、モータ33の回転に応じて、送りネジ35が回転し、ナット部材32が図2の左右方向に移動する。ナット部材32にはステージ支持部36が固定されている。ステージ支持部36は、カートリッジ2が載置されるステージ37の一端でステージ37を支持する。したがって、ナット部材32の移動に応じて、ステージ37が移動されることになる。なお、ステージ37にカートリッジ2が載置された場合における、カートリッジ2に装着されている基板1の複数の反応槽1cに対応するステージ37の領域に開口37aが設けられている。その開口37aを介して、取得部13は反応槽1cの蛍光画像を取得することができる。
【0026】
次に、取得部13及びその取得部13による蛍光画像の取得のための光学系について説明する。取得部13は、回路基板13a上に設けられている。回路基板13aは、ヒートシンク18に固定されている。その取得部13は、円筒部42の下側に設けられた開口42aと、円筒部42で保持されているフィルタ43及び結像レンズ44とを介して、基板1に導入された光によって発生されたエバネッセント光によって励起された基板1上の蛍光標識の蛍光画像を取得する。取得部13は、蛍光画像を撮影するイメージセンサであってもよく、ラインセンサであってもよく、あるいは、その他の蛍光画像を取得可能なデバイスであってもよい。取得部13がイメージセンサである場合に、そのイメージセンサは、例えば、CCDであってもよく、CMOSであってもよく、あるいは、その他のイメージセンサであってもよい。取得部13がラインセンサである場合には、そのラインセンサの長さ方向に直交する方向に基板1と取得部13とを相対的に移動させることによって、一の反応槽1cに対応する基板1の領域の画像(すなわち、蛍光画像)を取得するようにしてもよい。両者を相対的に移動させるとは、いずれか一方を移動させることであってもよく、あるいは、両方を移動させることであってもよい。また、その相対的な移動を、前述したカートリッジ2の搬送機構によって実現してもよい。取得部13がラインセンサである場合には、そのラインセンサが取得したラインごとのデータをつなげることによって、蛍光画像を取得することができる。この処理の詳細についてはすでに公知であり、その説明を省略する。本実施の形態では、取得部13がイメージセンサであり、蛍光画像を撮影する場合について主に説明する。蛍光画像は、例えば、基板1の各反応槽1cに固定された少なくとも1個の試料の位置の画像である。前述のように、その試料と被検試料とが結合した場合には、エバネッセント光によって被検試料の蛍光標識が励起され、その蛍光画像が撮影されることになる。なお、その蛍光画像は、マトリクス状に固定された試料に応じた蛍光パターンの画像であってもよい。本実施の形態では、蛍光画像が蛍光パターンの画像である場合について主に説明する。円筒部42の下側は下部フレーム17に固定されている。フィルタ43は、基板1で励起される蛍光の波長を効率よく通過させるものであることが好適である。そのフィルタ43によってノイズを除去できるようにするためである。また、結像レンズ44は、基板1の反応槽1cにおいて励起された蛍光パターンの画像を取得部13の位置で結像させる。また、円筒部42の上側の開口には、高さ可変円筒部41が接続されている。高さ可変円筒部41は、リング状の部材である上部環状部材41aと、その上部環状部材41aに接続されたジャバラ部41bと、ジャバラ部41bの下側及び円筒部42に接続されるリング状の部材である下部環状部材41cとを備える。ジャバラ部41bは、長さ方向(図中の上下方向)に伸び縮み可能なジャバラ状のものであり、例えば、合成ゴム等の弾性を有する物質で構成される。高さ可変円筒部41、及び円筒部42は、上下の開口以外から光が入らないように遮光性の物質で構成されていることが好適である。また、高さ可変円筒部41と円筒部42との接続、及び、円筒部42と下部フレーム17との接続において、外光の入りうる隙間のないことが好適である。また、上部環状部材41aは、ステージ37の直下に位置する。ステージ37は動きうるため、上部環状部材41aとステージ37との間には微小な隙間が生じうるが、その隙間が小さくなるように構成されることが好適である。なお、取得部13は、基板1の一の反応槽1cに対応する基板1の領域を撮影可能な画角(視野角)を有してもよい。すなわち、取得部13または基板1を2次元方向に移動させなくても、一の反応槽1cのすべての領域を撮影できるようになっていてもよい。その画角は、結像レンズ44によっても決定されるため、取得部13がそのような画角を有するように結像レンズ44の位置や焦点距離が決定されてもよい。
【0027】
取得部13が取得した画像は、蓄積部14によって記録媒体に蓄積される。この記録媒体は、例えば、半導体メモリや、光ディスク、磁気ディスク等であり、蓄積部14が有していてもよく、あるいは蓄積部14の外部に存在してもよい。また、この記録媒体は、画像を一時的に記憶するものであってもよく、そうでなくてもよい。また、その画像の形式は、どのようなものであってもよい。例えば、JPEGであってもよく、RAWデータであってもよい。なお、蓄積部14が蓄積した画像を出力する図示しない出力部を全反射蛍光観察装置100がさらに備えてもよい。その出力部による出力は、例えば、表示デバイス(例えば、CRTや液晶ディスプレイなど)への表示でもよく、所定の機器への通信回線を介した送信でもよく、プリンタによる印刷でもよく、記録媒体への蓄積でもよい。なお、その出力部は、出力を行うデバイスを含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、その出力部は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは、それらのデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0028】
次に、第1及び第2の光源部11,12について説明する。第1の光源部11は、導光性を有する基板1の第1の側部端面1dに光を導入する。その際に、測定対象面で全反射するように光を導入する。また、第2の光源部12は、導光性を有する基板1の第2の側部端面1eに光を導入する。その際にも、測定対象面で全反射するように光を導入する。測定対象面は、反応槽1cが存在する面であり、エバネッセント光が発生する面である。基板1に対して、第1及び第2の光源部11,12から光が全反射するように導入されることによって、基板1の表面(測定対象面)にエバネッセント光が発生し、反応槽1cに存在する蛍光標識が励起されることになる。なお、第1及び第2の光源部11,12は、同じ構造を有するため、ここでは、第1の光源部11についてのみ説明する。図4は、第1の光源部11の断面の拡大図である。第1の光源部11は、発光ダイオード素子51と、第1の収束レンズ52と、第2の収束レンズ53と、フィルタ54と、第1のレンズ保持部56と、第2のレンズ保持部57と、光量センサ61とを備える。
【0029】
発光ダイオード素子51は、回路基板51a上に配置されている。その発光ダイオード素子51の個数は、1個であってもよく、あるいは2個以上であってもよい。発光ダイオード素子51の個数は、基板1において、十分なエバネッセント光を発生できるための光を確保できる程度の個数であることが好適である。例えば、第1及び第2の光源部11,12が、それぞれ単一の発光ダイオード素子51を有する場合には、その単一の発光ダイオード素子51は、十分なエバネッセント光を発生できるための光を確保できる程度の高輝度のものであることが好適である。発光ダイオード素子51の発光色は、白色であってもよく、あるいは、他の特定の色であってもよい。発光ダイオード素子51の発光色が特定のものである場合に、その色は、基板1上の蛍光標識を励起できる波長のものであることが好適である。なお、発光ダイオード素子51の発光色が白色である場合には、フィルタ54を交換するだけで種々の蛍光標識を励起することができる。したがって、発光ダイオード素子51の発光色は、白色であることが好適である。本実施の形態でも、発光ダイオード素子51の発光色が白色である場合について説明する。なお、回路基板51aは、放熱の観点から熱伝導性のよいものであることが好適であるが、そうでなくてもよい。
【0030】
第1の収束レンズ52は、発光ダイオード素子51から出射された光を平行光に収束させる。この平行光は、厳密な平行光であってもよく、あるいは、発光ダイオード素子51から出射された光と比較して平行光に近いものであってもよい。この第1の収束レンズ52は、図4で示されるように半球レンズであってもよく、あるいは、その他の収束レンズ(例えば、凸レンズ等)であってもよい。第1の収束レンズ52によって収束された平行光は、フィルタ54を通過する。フィルタ54は、基板1上の蛍光標識を励起させる波長を効率よく通過させ、その他の波長をカットするものであることが好適である。ノイズとなりうる波長の光を第1の光源部11から出射させないようにするためである。
【0031】
第2の収束レンズ53は、第1の収束レンズ52からの平行光がフィルタ54を通過した光束を収束させる。第2の収束レンズ53は、その光束を一点に収束させる。そのようにして一点に収束された光束が、基板1の表面(測定対象面)で全反射するように第1の側部端面1dから基板1に入射されることになる。
【0032】
第1の収束レンズ52は、第1のレンズ保持部56によって保持されている。第1のレンズ保持部56は、内側が円筒形状をしており、その円筒形状の発光ダイオード素子51側において、第1の収束レンズ52が固定されている。また、第2の収束レンズ53は、第2のレンズ保持部57で保持されている。第2のレンズ保持部57も、内側が円筒形状をしており、その円筒形状の発光ダイオード素子51と反対側において、第2の収束レンズ53が固定されている。なお、第2のレンズ保持部57の発光ダイオード素子51と反対側は、第2の収束レンズ53から出射した光束を覆う構成(円筒を斜めに切断したような構成)を有している。なお、その構成によって、第2の収束レンズ53からの出射光の基板1への導入が妨げられることはないものとする。また、その構成の側面に設けられた孔を介して、光量センサ61が、第2の収束レンズ53から出射される光束の光量、すなわち、第1の光源部11からの出射光の光量を測定するようにしている。なお、光量センサ61は、光量を測定するものであればどのようなものであってもよく、例えば、フォトダイオードであってもよく、フォトレジスタであってもよく、光電子増倍管であってもよく、その他の光量を測定可能なデバイスであってもよい。第1及び第2のレンズ保持部56,57は外光が入らないように接続されている。そして、第1及び第2のレンズ保持部56,57で挟まれる位置にフィルタ54が存在する。発光ダイオード素子51の回路基板51aの裏面側にはヒートシンク21aが固定されており、発光ダイオード素子51の発生した熱を放散させる。また、そのヒートシンク21aの発光ダイオード素子51と反対側に冷却ファン21bが固定されており、その冷却ファン21bによってヒートシンク21aが冷却される。このように、ヒートシンク21a及び冷却ファン21bを含む第1の筐体外冷却部21によって、第1の光源部11が冷却される。第1の光源部11の冷却は、厳密に言えば、第1の光源部11が有する発光ダイオード素子51の筐体の外側からの冷却である。このように冷却を行う結果、第1の光源部11によって筐体内が加熱されることを回避することができる。
【0033】
ここで、第1の光源部11から出射した光の基板1への導入について簡単に説明する。図5で示されるように、第1の光源部11から出射した光は、導光性を有する基板1の第1の側部端面1dに導入される。その光の入射角はθであり、その角度θは、基板1において光が測定対象面で全反射される角度であるものとする。図5において、測定対象面は、基板1の水平方向の面(上側及び下側)である。その角度θは、通常、45度程度の角度であるが、それに限定されるものではない。物質境界面で光が全反射されると、基板1、厳密には透明部材1aの表面にエバネッセント光が発生する。具体的には、基板1の透明部材1aに入射した光は全反射しながら他端側に向かって伝搬していく。そして、透明部材1aの表裏面においてエバネッセント光が発生し、その発生したエバネッセント光が透明部材1aの表面からしみ出す。そのエバネッセント光は透明部材1aの表面の半波長から1波長程度の範囲に存在する。したがって、その範囲に蛍光標識が存在する場合には励起された蛍光が観測されることになり、その範囲に蛍光標識が存在しない場合には蛍光が観測されないことになる。すなわち、基板1に固定された試料と被検試料とが結合反応した場合には、エバネッセント光によって結合反応に関わったプローブ分子の蛍光標識が励起されて、その蛍光画像を取得部13によって取得することができる。一方、試料と被検試料とが結合しなかった場合には、蛍光標識がエバネッセント光の範囲に存在しないことになり、蛍光画像が取得されないことになる。その結果、取得された画像の蛍光パターンを見ることによって、被検試料の性質を知ることができるようになる。なお、図5では、第1の側部端面1dからのみ光を導入している場合について示しているが、対向する第2の側部端面1eからも光を導入することは前述の通りである。また、基板1の透明部材1aの材質に応じて、導入する光が全反射する角度が異なることになる。したがって、第1及び第2の光源部11,12は、角度θを変更可能なように設けられていてもよい。また、図5で示されるように、カートリッジ2は、基板1に導入される光を適切に通過させることができる空間を有していることは前述の通りである。また、本実施の形態では、基板1の下方側から光を導入する場合について示しているが、基板1の上方側から光を導入してもよい。但し、その場合であっても、光が測定対象面で全反射するように導入するものとする。
【0034】
また、第2の光源部12も、第1の光源部11と同様に、発光ダイオード素子51と、第1の収束レンズ52と、第2の収束レンズ53と、フィルタ54と、第1のレンズ保持部56と、第2のレンズ保持部57と、光量センサ61とを備えることは前述の通りである。それらの説明は省略する。また、第2の光源部12を冷却する第2の筐体外冷却部22も、第1の筐体外冷却部21と同様に、ヒートシンク22aと、冷却ファン22bとを備える。
【0035】
ここで、光量センサ61によって測定された光量を用いた第1及び第2の光源部11,12の制御について説明する。第1の光源部11が有する光量センサ61は、前述のように、第1の光源部11から出射される光の量を測定する。また、第2の光源部12が有する光量センサ61は、前述のように、第2の光源部12から出射される光の量を測定する。そして、図示しない光量調整部は、第1及び第2の光源部11,12の光量センサ61が測定した光量をそれぞれ受け取る。また、その光量調整部は、第1及び第2の光源部11,12から出射される光量が均等になるように、第1及び第2の光源部11,12の有する発光ダイオード素子51の出力をそれぞれ制御する。製品のばらつきにより、あるいは、温度上昇に応じた波長シフトや光量の低下により、発光ダイオード素子51の光量が第1及び第2の光源部11,12で等しくならないことがありうる。そして、第1及び第2の光源部11,12のうち、一方の光量のみが下がった場合には、蛍光パターンの適切な画像を取得することができないこともある。例えば、一方の光源部の光量が少ない場合には、その光量の少ない光源側の蛍光パターンの画像における蛍光の程度が少なくなりうる。その結果、本来であれば蛍光を発しているにもかかわらず、蛍光パターンの画像において、光量の少ない光源側の蛍光の程度が少ない、あるいは、蛍光が発生していないと判断されることによって、誤判定となる可能性がある。そのため、上述した光量調整部によって、第1及び第2の光源部11,12がそれぞれ有する光量センサ61の測定値が同じ程度になるように、第1及び第2の光源部11,12がそれぞれ有する発光ダイオード素子51の出力を調整することが好適である。
【0036】
なお、第1の光源部11において、図6で示されるように、発光ダイオード素子51の配設されている回路基板51aとヒートシンク21aとの間に、ペルチェ素子60をさらに設け、そのペルチェ素子60によって、発光ダイオード素子51で発生した熱を効率的に放熱するようにしてもよい。ペルチェ素子60は、発光ダイオード素子51側が吸熱面となり、ヒートシンク21a側が発熱面となるように設けられる。また、図6では、発光ダイオード素子51の裏面付近にのみペルチェ素子60が存在する場合について示しているが、そうでなくてもよい。回路基板51aの全面にわたってペルチェ素子60が存在してもよい。このように、ペルチェ素子60を用いて冷却を行ってもよいことは、第2の光源部12についても同様である。また、ペルチェ素子を他の箇所において用いてもよい。例えば、取得部13の回路基板13aと、ヒートシンク18との間にペルチェ素子を設けることによって取得部13付近の温度を下げてもよく、その他の筐体の表面等にペルチェ素子を設けることによって筐体内部の温度を下げてもよい。そのような場合であっても、温度を下げたい側(例えば、取得部13側や、筐体の内部側)が吸熱面となるように設けられることが好適である。
【0037】
また、図2において、全反射蛍光観察装置100は、ミラー46と、バーコードリーダ47とを備えている。このバーコードリーダ47は、ステージ37上のカートリッジ2が本体フレーム16内部に収容される際に、情報格納部1fである2次元バーコードを読み取る。なお、図1では、そのミラー46やバーコードリーダ47の構成を省略している。
【0038】
次に、本実施の形態による全反射蛍光観察装置100を用いた測定について説明する。まず、細胞や生体組織等から取得された被検試料を直接的にまたは間接的に蛍光標識し、基板1の各反応槽1cに入れる。その基板1において、異なる反応槽1cには異なる複数の試料が固定されているものとする。その後、作業者は、基板1の長手直交方向の対向する2辺を把持し、基板1をカートリッジ2の載置部2aに載置し、カバー部2bを閉じる。そして、作業者が全反射蛍光観察装置100を操作することによって、ステージ37を出す指示を入力する。すると、全反射蛍光観察装置100の図示しない制御部は、ステージ37を出す指示が受け付けられたと判断し、ステージ37が出る方向にモータ33を回転させる。そのモータ33の回転に応じて送りネジ35が回転され、ナット部材32が移動することに応じてステージ37が装置外部に出る。なお、その図示しない制御部は、ステージ37が外部に出た時点で、モータ33の回転を止める。作業者は、カートリッジ2をステージ37に載置し、ステージ37を収容する指示を入力する。すると、その制御部は、ステージ37を収容する指示が受け付けられたと判断し、ステージ37が収容される方向にモータ33を回転させる。そのモータ33の回転に応じてステージ37が装置内部に収容される。その収容処理中に、バーコードリーダ47は、情報格納部1fの2次元バーコードを読み取り、その読み取った情報を図示しない制御部に渡す。なお、その制御部は、ステージ37が収容され、1個目の反応槽1cの撮影を行うことができる位置でモータ33の回転を止める。
【0039】
その後、その制御部は、第1及び第2の光源部11,12に光を出射させ、その状態で取得部13に撮影を行わせる。なお、この撮影は通常、ある程度の期間の露光により行われる。エバネッセント光によって励起される蛍光は微弱なものだからである。なお、撮影が終わると、取得部13は、その画像のデータを蓄積部14に渡す。図7は、その画像の一例を示す図である。図7において、白い丸が各試料の位置に応じた蛍光である。この蛍光パターンを用いて、被検試料がどのような性質のものであるのかを知ることができる。なお、図7から分かるように、励起された蛍光標識が発する蛍光に複数の明るさの程度(レベル)が存在している。したがって、その明るさの程度も含めて、被検試料の性質を特定してもよい。蓄積部14は、受け取った画像を、図示しない制御部がバーコードリーダ47から受け取った情報と、反応槽1cの識別子とに対応付けて図示しない記録媒体に蓄積する。
【0040】
1個目の反応槽1cの撮影が終了すると、図示しない制御部は、モータ33を回転させ、2個目の反応槽1cの撮影位置にステージ37を移動させる。その後、2個目の反応槽1cについても撮影が行われ、撮影画像が蓄積されることは前述の説明と同様である。そのように、各反応槽1cの撮影のためのステージ37の移動と、各反応槽1cの撮影、撮影画像の蓄積との処理が繰り返して実行され、すべての反応槽1cの撮影が終了すると、第1及び第2の光源部11,12が消灯される。なお、ステージ37の移動時には撮影を行わないため、その移動の期間も第1及び第2の光源部11,12を消灯してもよい。また、第1及び第2の光源部11,12が点灯されている期間は少なくとも、筐体内冷却部19、並びに、第1及び第2の筐体外冷却部21,22による冷却が行われているものとする。なお、その冷却は、第1及び第2の光源部11,12が消灯された後も、あらかじめ決められた時間、あるいは、筐体内部があらかじめ決められた温度以下となるまで継続されてもよい。筐体内冷却部19、並びに、第1及び第2の筐体外冷却部21,22による冷却が行われることによって、筐体内部が高温となる事態を回避することができる。なお、筐体内部が高温となった場合には、例えば、被検試料の生体分子(例えば、たんぱく質)が変性を起こし、基板1に固定された試料との結合特性が変化したり、消失したりすることがある。また、蛍光標識の蛍光量子効率(一個の光子が当たった際に出てくる蛍光の強度)は温度と反比例する。したがって、筐体内部が高温となった場合には、蛍光の高感度検出が難しくなる。具体的には、蛍光色素Cy3の場合には、40℃の蛍光量子効率は、20℃の蛍光量子効率の半分程度になる。したがって、筐体内部が高温となることを防止することによって、このような問題の発生を回避することができる。
【0041】
以上のように、本実施の形態による全反射蛍光観察装置100によれば、発光ダイオード素子51を光源に用いることによって、消費電力の少ないエバネッセント光を用いた蛍光観察を実現することができる。また、メタルハライドランプ等と比較して発光ダイオード素子51は発熱量が少ないため、光ファイバーを用いなくてもよいことになり、装置を小型化することが可能となる。また、筐体内冷却部19と、第1及び第2の筐体外冷却部21,22とを用いることによって、筐体内が高温になる事態を回避することができ、適切な蛍光観察を行うことができるようになる。また、取得部13が一の反応槽1cを撮影可能な画角を有することによって、撮影時間を短くすることができ、さらに、XYステージ等を備える必要がないため、装置を小型化することができる。また、基板1をカートリッジ2に装着して扱うことにより、基板1の第1及び第2の側部端面1d,1eが汚損されることを防止できる。また、カートリッジ2のカバー部2bの開閉軸を基板1の長手方向とすることによって、カートリッジ2に基板1を装着する作業時に、基板1の長手直交方向の対向する辺を把持することができるようになる。さらに、メタルハライドランプ等を用いた場合と比較して、安価に装置を構成することができる。また、ランプの交換の作業が不要となり、ランプの破損のリスクをなくすことができる。また、発光ダイオード素子51は、メタルハライドランプ等に比較して高温にならないため、要求される冷却の程度が低くなる。その結果、排熱や騒音が従来例よりも少なくなる。
【0042】
なお、本実施の形態では、第1及び第2の光源部11,12がそれぞれ、フィルタ54を有する場合について説明したが、そうでなくてもよい。第1及び第2の光源部11,12がそれぞれフィルタ54を有しない場合には、第2の収束レンズ53は、第1の収束レンズ52からの平行光を収束させるものであってもよい。
【0043】
また、本実施の形態において、第1及び第2の光源部11,12がそれぞれ、複数の発光ダイオード素子51を有する場合には、第1及び第2の光源部11,12はそれぞれ、フィルタ54と同じ位置に拡散板をさらに備えてもよい。その拡散板は、第1の収束レンズ52によって収束された平行光を均一な光束にするものである。その拡散板によって、複数の発光ダイオード素子51が発光した強弱のある光束が均一にされる。そして、第2の収束レンズ53は、その拡散板によって均一にされた光束を収束させる。拡散板によって均一な光束とされているため、第2の収束レンズ53は、その光束を一点に収束させることができる。なお、拡散板が存在しなかった場合には、第2の収束レンズ53による収束後の光束において、発光ダイオード素子51の個数と同数の強度の強い領域が発生し、一点に収束させることができなくなる。したがって、拡散板による拡散が必要になる。また、拡散板を光が通過することによって光が拡散されるため、拡散後の光束は拡散前の光束に比べて平行性が低下することになる。したがって、拡散板と第2の収束レンズ53との間の距離は短い方が好適である。拡散板と第2の収束レンズ53との間で失われる光量を低減させるためである。その理由から、フィルタ54と拡散板との順序も、フィルタ54の方が発光ダイオード素子51に近く、拡散板の方が第2の収束レンズ53に近いことが好適であるが、そうでなくてもよい(フィルタ54や拡散板の厚みが小さい場合には、両者の順番が異なったとしても影響は小さいと考えられるからである)。ここで、拡散板による光の拡散を、第1及び第2の収束レンズ52,53の間で行う理由について簡単に説明する。まず、第2の収束レンズ53による光束の収束後に拡散板による光の拡散を行うことは適切ではない。そのようにすると、所望の位置に光束を収束させることができなくなり、エバネッセント光が発生しなくなるからである。また、第1の収束レンズ52による光の収束前に拡散板による光の拡散を行うことも好適ではない。発光ダイオード素子51と、第1の収束レンズ52との間では、光束の径が小さい。また、小さい領域において均一な拡散を実現しようとすれば、それだけ大きな拡散が必要になり、その拡散で失われる光量が大きくなる。したがって、第1及び第2の収束レンズ52,53の間で拡散板による光の拡散を行うことが好適となる。このように、第1及び第2の光源部11,12が拡散板を有することによって、収束性を改善することができる。なお、複数の発光ダイオード素子51が回路基板51a上に配列される場合には、一列に配列されてもよい。そして、その列の長さ方向は、基板1に光が導入される際の第1及び第2の側部端面1d,1eの長さ方向と一致していることが好適である。基板1の長さ方向の幅を有する領域にエバネッセント光を発生させるためである。
【0044】
また、本実施の形態では、基板1をカートリッジ2に装着し、そのカートリッジ2を全反射蛍光観察装置100に装着することによって蛍光画像を撮影する場合について説明したが、そうでなくてもよい。基板1をそのまま全反射蛍光観察装置100に装着することによって蛍光画像を撮影するようにしてもよい。
【0045】
また、本実施の形態で説明した筐体内冷却部19や、第1及び第2の筐体外冷却部21,22は、冷却ファンであってもよく、ペルチェ素子を用いたものであってもよく、水冷方式を用いたものであってもよく、その他の熱交換機やヒートポンプ等を用いたものであってもよい。また、本実施の形態では、第1及び第2の筐体外冷却部21,22がヒートシンク21a,22aを備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。第1及び第2の筐体外冷却部21,22は、ヒートシンク21a,22aを備えないで、直接、冷却ファン21b,22bによって発光ダイオード素子51を冷却するようにしてもよい。また、本実施の形態では、本体フレーム16に開口16cが設けられており、その開口16cを介して筐体内の冷却が行われる場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、筐体表面に設けられた1以上のヒートシンクと、その1以上のヒートシンクを冷却する冷却ファンとによって筐体内冷却部19が構成されてもよい。開口16cのような、筐体の内部と外部とをつなぐ開口が存在しない場合には、筐体内部に外光が入らないようにすることができ、蛍光画像の撮影にとっては好適である。
【0046】
また、本実施の形態では、筐体の内外を冷却するための、筐体内冷却部19と、第1及び第2の筐体外冷却部21,22とを備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。いずれかの冷却部を備えなくてもよく、あるいは、すべての冷却部を備えなくてもよい。すべての冷却部を備えない場合であっても、例えば、連続して撮影を行わないことなどによって、筐体内部が高温にならないようにすることが好適である。
【0047】
また、本実施の形態では、上面板15や本体フレーム16、下部フレーム17、ヒートシンク18によって筐体が構成される場合について説明したが、そうでなくてもよい。筐体は、例えば、その他の構成部分から構成されるものであってもよく、あるいは、一体として構成されるものであってもよい。例えば、ヒートシンク18に代えて、他の板状部材等によって下部フレーム17の下側の開口が閉じられてもよい。
【0048】
また、本実施の形態では、カートリッジ2が、基板1の長手方向を軸として開閉される場合について説明したが、そうでなくてもよい。カートリッジ2は、基板1の短手方向を軸として開閉されるものであってもよい。
【0049】
また、本実施の形態では、基板1の長手方向の側部端面から、エバネッセント光を生成するための光を導入する場合について説明したが、そうでなくてもよい。基板1の長手直交方向(短手方向)の側部端面から、エバネッセント光を生成するための光を導入してもよいことは言うまでもない。
また、本実施の形態では、基板1の対向する2個の側部端面からそれぞれ光を導入することによってエバネッセント光を発生させる場合について説明したが、そうでなくてもよい。いずれか一方の端部側面から光を導入することによってエバネッセント光を発生させてもよい。
【0050】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0051】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。
【0052】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上より、本発明による全反射蛍光観察装置によれば、発光ダイオード素子を光源に用いることによって、消費電力の少ない小型の装置を実現できるという効果が得られ、エバネッセント光を用いた蛍光観察を行う装置として有用である。
【符号の説明】
【0054】
1 基板
1c 反応槽
1d 第1の側部端面
1e 第2の側部端面
2 カートリッジ
2a 載置部
2b カバー部
11 第1の光源部
12 第2の光源部
13 取得部
14 蓄積部
19 筐体内冷却部
21 第1の筐体外冷却部
22 第2の筐体外冷却部
51 発光ダイオード素子
52 第1の収束レンズ
53 第2の収束レンズ
60 ペルチェ素子
100 全反射蛍光観察装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光性を有する基板の第1の側部端面に、測定対象面で全反射するように光を導入する第1の光源部と、
前記基板の第1の側部端面と対向する第2の側部端面に、測定対象面で全反射するように光を導入する第2の光源部と、
前記第1及び第2の光源部によって前記基板に導入された光によって発生されたエバネッセント光によって励起された前記基板上の蛍光標識の蛍光画像を取得する取得部と、
前記取得部が取得した画像を蓄積する蓄積部と、を備え、
前記第1及び第2の光源部は、
発光ダイオード素子と、
前記発光ダイオード素子から出射された光を平行光に収束させる第1の収束レンズと、
前記平行光を収束させる第2の収束レンズと、をそれぞれ有する、全反射蛍光観察装置。
【請求項2】
当該第1及び第2の光源部は、前記第1の収束レンズによって収束された平行光を均一な光束にする拡散板をそれぞれさらに有し、
前記第2の収束レンズは、前記拡散板によって均一にされた光束を収束させる、請求項1記載の全反射蛍光観察装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の光源部が有する発光ダイオード素子が外側となるように、前記基板及び前記取得部を少なくとも外光から遮蔽する筐体と、
前記筐体内を冷却する筐体内冷却部と、
前記第1及び第2の光源部が有する発光ダイオード素子を前記筐体の外側からそれぞれ冷却する第1及び第2の筐体外冷却部と、をさらに備えた、請求項1または請求項2記載の全反射蛍光観察装置。
【請求項4】
前記基板は複数の反応槽に仕切られたものであり、
前記取得部は、蛍光画像を撮影するものであり、かつ、一の反応槽に対応する前記基板の領域を撮影可能な画角を有する、請求項1から請求項3のいずれか記載の全反射蛍光観察装置。
【請求項5】
前記基板を着脱可能に保持する、前記全反射蛍光観察装置に着脱可能なカートリッジをさらに備え、
前記基板は、長手方向に並んだ複数の反応槽を有しており、かつ、長手方向に前記第1及び第2側部端面を有しており、
前記カートリッジは、
前記第1及び第2の側部端面に光を導入可能に前記基板が載置される載置部と、
前記第1及び第2の側部端面に光を導入可能に、前記載置部に載置された前記基板を覆うカバー部と、を備える、請求項1から請求項4のいずれか記載の全反射蛍光観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−24795(P2013−24795A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161853(P2011−161853)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(390000594)株式会社レクザム (64)
【Fターム(参考)】