説明

全反射試料照明装置及び照明方法

【課題】 特別なスライドガラスを用いることになく任意のスライドガラスに対して対応可能かつ交換可能で、観察位置を任意に自由に変更可能で、散乱光の発生が少なく高SN比の観察が可能で、試料の操作が容易な全反射試料照明装置と方法。
【解決手段】 入射プリズム3と放射プリズム4との上に滴下した屈折率整合液25を介して共通の平面内で移動可能にスライドガラス21を支持し、放射プリズム4を入射プリズム3に対してレーザ光10進行方向に位置調節可能に支持し、入射プリズム3のスライドガラスの支持面33と放射プリズム4のスライドガラスの支持面41とが同一高さで同一面になるように設定し、レーザ光10が入射プリズム3を経てスライドガラス21内に入って多重全反射により導波され、放射プリズム4の支持面41からその中に入り、放射プリズム4から外部へ放射されるようにした全反射試料照明方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全反射試料照明装置及び照明方法に関し、特に、細胞生物分野、電気化学分野、マイクロ・ナノスケール熱流体工学分野等におけるナノスケール光学計測技術、広視野観察が可能な全反射蛍光(Total Internal Reflection Fluorescence :TIRF)顕微鏡等における全反射試料照明装置及び照明方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
TIRF顕微鏡法は、ナノスケールの局所励起を可能とする高SN比の観察手法である。細胞生物分野において細胞膜活性や単分子事象の観察(非特許文献1)に広く用いられる一方、電気化学分野でもコロイド粒子の電気的特性(非特許文献2)やブラウン運動(Kihm, K. D. et al., Exp. in Fluids, 37, pp.811-824, (2004))の実験的解明に大きく貢献してきた。この手法の最大の特徴は、蛍光観察の際に、励起光源として、屈折率の異なる2物質界面での光の全反射に伴い発生するエバネッセント波を用いる点にある。図3にそのエバネッセント波の発生の様子を示すが、屈折率n1 の物質1と屈折率n2 の物質2の界面に、屈折率の大きい物質2側から臨界角以上で光が入射するとその界面で光は全反射されるが、界面から屈折率の小さい物質1側に指数関数的に減衰するエバネッセント波が発生する。エバネッセント波は全反射界面から数十〜数百nm程度の領域に僅かに染み出す光であるため、TIRF顕微鏡法においては、蛍光染色した試料とスライドガラスの界面でエバネッセント波を発生させることで、試料の極一部に限定した高SN比の蛍光観察が可能となる。
【0003】
現在、市販化されて一般に多く用いられているのは、主に図4(a)に示すような対物レンズ式TIRF顕微鏡である。すなわち、倒立型にして対物レンズをスライドガラスの下方に油浸オイルを介して位置させ、その対物レンズを経てエバネッセント波発生用のレーザ光をスライドガラス下方から斜めに入射させ、スライドガラス上の試料が載置された界面近傍にエバネッセント波を発生させるものである。この配置では、対物レンズ上方の空間が自由に扱えるため操作性と利便性に優れており、また、非常に明るい蛍光画像を得ることができる。しかし、高開口数油浸対物レンズを用いるという原理上の制約により、倍率が60倍以上の高倍率観察に制限されてしまう。
【0004】
一方、プリズムを介してレーザを入射する図4(b)に示すようなプリズム式TIRF顕微鏡も広く用いられている。この場合は、試料を2枚のスライドガラス間に挟み、上方のスライドガラス上にプリズムを載せて、そのプリズムを経てエバネッセント波発生用のレーザ光を上方のスライドガラスの上方に斜めに入射させ、そのスライドガラスの試料と接する界面近傍にエバネッセント波を発生させるものである。この配置では、レーザ光を効率的に入射できることから高SN比の観察が可能であり、倍率の制約がないため低倍率観察も容易である。しかしながら、対物レンズ上方の空間が塞がれてしまい、試料の操作性や標本の自由度が著しく乏しい。
【0005】
上述したように、現状では、例えば実験の過程で様々な試薬を混入して細胞が示す反応を複数の個体で同時に比較するといったニーズをTIRF顕微鏡が満たしているとは言い難い。試料の操作性と標本の自由度に優れ、他の光学観察手法との併用が容易でかつ低倍率観察を可能とするTIRF顕微鏡システムの開発が期待されている。
【0006】
過去の研究では、図5(a)に示すように、入射プリズムと放射プリズムをスライドガラス下面に接着して、入射プリズムからスライドガラス内にレーザ光を導入してスライドガラス内で多重全反射させ、その多重全反射の際にスライドガラス上面近傍にエバネッセント波を発生させて試料を励起し、多重全反射で導波されたレーザ光を放射プリズムを経て外へ出す方式が非特許文献3で提案され、また、図5(b)に示すように、スライドガラスの端を加工して傾斜端面としてこの傾斜端面からスライドガラス内にレーザ光を導入してスライドガラス内で多重全反射させ、その多重全反射の際にスライドガラス上面近傍にエバネッセント波を発生させて試料を励起し、多重全反射で導波されたレーザ光を傾斜端面に対向す端面から外へ出す方式が非特許文献4で提案されている。これらの方式は、標本上方の空間が自由であり低倍率観察も容易であるが、スライドガラス厚が制限されていて薄いため(前者は0.17mm、後者は0.2mm)、多重全反射回数が多くなり、全反射による散乱光の発生、導波光の減衰、試料の蛍光退色が起きやすく、SN比が低下するという問題がある。さらに、レーザ光の入射位置と放射位置が固定されており、レーザ光の光路調整が難しく、また、試料観察位置の変更には、対物レンズの移動が必要であり、標本操作が容易でない。さらに、標本毎にプリズムをスライドガラスに接着したり、スライドガラスに加工を施す必要があることから、手間がかかり、汎用性も低い。
【非特許文献1】Axelrod, D., Traffic, Vol.2, pp.764-774, (2001)
【非特許文献2】Prieve, D. C. and Frej, N. A., Langmuir, 6, pp.396-403, (1990)
【非特許文献3】Conibear, P. B. and Bagshaw, C. R., Journal of Microscopy, Vol. 200, Pt 3, pp.218-229, (2000)
【非特許文献4】Teruel, M. N. and Meyer, T., Science, Vol. 295, pp.1910-1912, (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は従来技術のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、特別なスライドガラスを用いることになく任意のスライドガラスに対して対応可能かつ交換可能であり、スライドガラス上の観察位置を任意に自由に変更可能で、散乱光の発生が少なく高SN比の観察が可能で、しかも、試料の操作が容易な全反射試料照明装置及び照明方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の全反射試料照明装置は、スライドガラス内での多重全反射により導波されるレーザ光によって少なくとも前記スライドガラスの上面にエバネッセント波を発生させ、前記スライドガラスの上面に位置する試料をそのエバネッセント波で照明する全反射試料照明装置において、
前記スライドガラスを滴下した屈折率整合液を介してその面内で移動可能に支持する入射プリズムと放射プリズムとを備え、
前記入射プリズムはレーザ光源に対して固定され、前記放射プリズムは前記入射プリズムに対して前記レーザ光進行方向に位置調節可能に配置されており、
前記入射プリズムの前記スライドガラスの支持面と、前記放射プリズムの前記スライドガラスの支持面とは、前記放射プリズムの調節位置に係わらずに同一高さで同一面になるように配置され、
前記レーザ光は、前記入射プリズムを経て前記支持面から出てその上に滴下されている前記屈折率整合液を介してその上に支持されている前記スライドガラス内に入って多重全反射により導波され、前記放射プリズムの前記支持面の上に滴下されている前記屈折率整合液を介して前記放射プリズムの前記支持面から前記放射プリズム内に入り、前記放射プリズムから外部へ放射されることを特徴とするものである。
【0009】
この場合に、前記入射プリズムと前記放射プリズムとの上に支持されている前記スライドガラスを把持して、前記スライドガラスをその面に沿った2次元方向に位置調節する位置調節機構を備えていることが望ましい。
【0010】
また、本発明の全反射試料照明方法は、スライドガラス内での多重全反射により導波されるレーザ光によって少なくとも前記スライドガラスの上面にエバネッセント波を発生させ、前記スライドガラスの上面に位置する試料をそのエバネッセント波で照明する全反射試料照明方法において、
入射プリズムと放射プリズムとの上に滴下した屈折率整合液を介して共通の平面内で移動可能に前記スライドガラスを支持し、
前記放射プリズムを前記入射プリズムに対して前記レーザ光進行方向に位置調節可能に支持し、
前記入射プリズムの前記スライドガラスの支持面と、前記放射プリズムの前記スライドガラスの支持面とが、前記放射プリズムの調節位置に係わらずに同一高さで同一面になるように設定し、
前記レーザ光が、前記入射プリズムを経て前記支持面から出てその上に滴下されている前記屈折率整合液を介してその上に支持されている前記スライドガラス内に入って多重全反射により導波され、前記放射プリズムの前記支持面の上に滴下されている前記屈折率整合液を介して前記放射プリズムの前記支持面から前記放射プリズム内に入り、前記放射プリズムから外部へ放射されるようにしたことを特徴とする方法である。
【0011】
この場合に、前記入射プリズムと前記放射プリズムとの上に支持されている前記スライドガラスをその面に沿った2次元方向に位置調節することが望ましい。
【0012】
本発明は、以上のような全反射試料照明装置を用いている顕微鏡、計測装置を含むものであり、さらに、以上のような全反射試料照明方法を用いている顕微鏡法、計測方法を含むものである。
【発明の効果】
【0013】
以上の本発明によると、特別なスライドガラスを用いることになく任意のスライドガラスに対して対応可能かつ交換可能であり、スライドガラス上の観察位置を任意に自由に変更可能で、散乱光の発生が少なく高SN比の観察が可能で、しかも、試料の操作が容易な全反射試料照明装置及び照明方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の全反射試料照明装置とその装置に用いる照明方法を実施例に基づいて説明する。図1は、本発明の全反射試料照明装置の1実施例の垂直断面図であり、図2はその平面図である。この全反射試料照明装置は、試料載置台1を備えており、その中心に開口2が設けらており、開口2に面して試料載置台1には入射プリズム3が固定されている。また、開口2を挟んで入射プリズム3に面して放射プリズム4が入射プリズム3との間隔を調節可能に移動台5に取り付けられている。この移動台5は位置調節ネジ6により試料載置台1に対して入射プリズム3方向に移動調節可能に構成されている。そして、入射プリズム3の透過面33と放射プリズム4の透過面41とは、移動台5の位置に係わらずに同一高さで同一面になるように、入射プリズム3と放射プリズム4の形状と移動台5の移動機構が構成されている。
【0015】
そして、入射プリズム3の透過面33と放射プリズム4の透過面41との上に、試料Sを支持するスライドガラス、この例ではスライドガラスチェンバー20が透過面33と透過面41上に滴下した油浸オイル25を介して自由に載せられる。
【0016】
ここで、入射プリズム3は、レーザ11からのエバネッセント波発生用のレーザ光10を入射させるための透過面31と、入射したレーザ光10を反射する反射面32と、反射面32で反射されたレーザ光10を射出する透過面33とを有する反射プリズム形状のものであり、放射プリズム4は、スライドガラスチェンバー20の底面のスライドガラス21中を多重全反射により導波されたレーザ光10をスライドガラス21の外へ導く透過面41と、透過面41から入射したレーザ光10を外へ放射する透過面42とを有する透過プリズム形状のものである。
【0017】
また、試料載置台1の上面には、X−Yステージ50を介してスライドガラス把持機構55が設けられており、この例では、パッド56を介してスライドガラス把持機構55がその挟む方向に働く弾性によりスライドガラスチェンバー20を支持しており、X−Yステージ50のX方向位置調節ネジ51によりスライドガラスチェンバー20をレーザ光10の入射方向に平行なX方向に移動調節可能としており、また、X−Yステージ50のY方向位置調節ネジ52によりスライドガラスチェンバー20をレーザ光10の入射方向と直角なY方向に移動調節可能としている。
【0018】
このような構成であるので、入射プリズム3の透過面33と放射プリズム4の透過面41の上に油浸オイル25を介して載せるスライドガラスチェンバー20あるいはスライドガラス21を別の種類又は規格のものに交換しても、エバネッセント波発生用のレーザ光10の入射位置は何ら調節する必要がない。したがって、その光源であるレーザ11の位置も調節する必要がない。ただし、スライドガラス21の厚みが異なることにより、スライドガラス21の下面での反射位置が変化するので、位置調節ネジ6を調節して移動台5をX方向に移動させることで、放射プリズム4の位置を最適にして散乱光が発生しないようにすることができる。
【0019】
そして、X−Yステージ50のX方向位置調節ネジ51とY方向位置調節ネジ52を調節してスライドガラス把持機構55を入射プリズム3の透過面33と放射プリズム4の透過面41とが形成するX−Y平面内で任意に調節してスライドガラスチェンバー20の面内位置を任意に調節することにより、試料載置台1中心の開口2に面している顕微鏡対物レンズ61の光軸に対して直交方向の観察位置を調節することができる。
【0020】
以上の実施例に基づいて説明した本発明の全反射試料照明装置とその装置に用いる照明方法は、スライドガラス21内でレーザ光10を多重全反射させる点では、図5(a)、(b)で示した従来の多重全反射の方式のものと共通しているが、スライドガラス21として通常の厚さ0.17〜0.2mmより厚いスライドガラスを用いることで、多重全反射の回数を最小限に抑えることができ、蛍光観察の際のSN比の低下を防ぐことができる。上記実施例では、スライドガラス21の試料Sが載っている上面での全反射回数は4回で、そのためエバネッセント波Evで照明される領域は、図2に示す飛び飛びの4か所となっている。
【0021】
また、放射プリズム4の位置を最適に調節して多重全反射後にスライドガラス21から出ていくレーザ光10に基づく散乱光を発生しないようにすることができる。
【0022】
そして、上からの試料の操作が容易で、他の光学観察手法との併用及び高SN比の低倍率観察が可能となる。標本容器には、上記実施例のような細胞培養用スライドガラスチェンバー20も使用可能であり、スライドガラスに加工も一切不要であることから、汎用性も高い。
【0023】
また、X−Yステージ50の位置調節機構を介してスライドガラス21上の観察位置を任意に自由に高速で変更可能であるので、スライドガラス21の面内に位置する多くの細胞等の試料を高速で切り換えて観察することが可能となる。
【0024】
細胞を用いた本発明の全反射試料照明装置及び照明方法の検証実験を行った。図1〜図2のように、蛍光顕微鏡に組み込んだ2つのプリズム(入射プリズム3、放射プリズム4) の透過面33、41に厚さが1mm程度のスライドガラス21を有する標本(市販のスライドガラスチェンバー20) を油浸オイル25により吸着させた。次に、入射プリズム3からレーザ光10を入射させてスライドガラス21内で多重全反射させ、ガラス21表面にエバネッセント波Evを発生させた。このとき放射プリズム4の位置を調節してレーザ光の放射光路を確保し、バックグラウンド光の強度を最小限に抑えている。入射プリズム3から数えて2〜4番目のエバネッセント波Evを用いることで、高いSN比が実現され、最終的には標本内のスライドガラス21表面に培養した複数の細胞や生体高分子の低倍率同時観察が可能であることが示された。
【0025】
以上において、入射プリズム3と放射プリズム4の形状は図1に示したような形状のものに限定されず種々の反射プリズム形状のものや透過プリズム形状のものが使用可能である。要は何れのプリズム3、4も、スライドガラス支持面と透過面33、41を兼ねる平面を有することであり、レーザ光10の入射方向、放射方向に応じて形状を決めればよい。
【0026】
また、スライドガラスチェンバー20あるいはスライドガラス21の把持機構及びそのX−Y移動調節機構も図2に示したような構成のものに限定されず種々の把持機構、移動調節機構を用いることが可能である。
【0027】
以上の本発明の全反射試料照明装置とその装置に用いる照明方法を用いると、複数の細胞や生体高分子に関連したナノスケールの事象を低倍率で同時に観察することが可能である。また、標本容器には市販されている細胞培養用のスライドガラスチェンバーを使用することができることから、汎用性は高い。
【0028】
また、前述したように、これまでもTIRF顕微鏡法は電気化学分野の現象解明に貢献してきた。本発明の全反射試料照明装置とその装置に用いる照明方法は低倍率での計測が可能であることから、コロイド粒子のブラウン運動や界面動電現象といった局所的な電気化学だけなく、粘性、拡散、対流といった流体的な要素が複雑に絡み合った現象の包括的な解明に絶大な効果を発揮すると考えられる。これはすなわち、マイクロ・ナノスケールの流動現象を取り扱うマイクロ・ナノスケール熱流体工学そのものに他ならない。よって、DNA分析や食品診断といった機能の集約化を目的とするマイクロ・ナノスケール流体デバイスの発展に大きく貢献すると考えられる。
【0029】
また、本発明の全反射試料照明装置及び照明方法は、前述したように、試料の操作性と標本の自由度に優れ、他の光学観察手法との併用が容易で、かつ、低倍率観察を可能とするTIRF顕微鏡システムを構成することができる。
【0030】
また、電気化学及びマイクロ熱流体工学分野においては、流路の壁近傍におけるイオンやコロイド粒子に関連した複雑なマイクロ・ナノスケール流動現象の実験的解明に大きく貢献すると考えられ、バイオMEMS技術の発展につながると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の全反射試料照明装置の1実施例の垂直断面図である。
【図2】図1の全反射試料照明装置の平面図である。
【図3】TIRF顕微鏡法におけるエバネッセント波の発生の様子を示す図である。
【図4】市販の対物レンズ式TIRF顕微鏡とプリズム式TIRF顕微鏡におけるエバネッセント波発生原理を示す図である。
【図5】従来提案されているスライドガラス内で多重全反射させてエバネッセント波を発生させる方式を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
S…試料
1…試料載置台
2…開口
3…入射プリズム
4…放射プリズム
5…移動台
6…位置調節ネジ
10…エバネッセント波発生用のレーザ光
11…レーザ
20…スライドガラスチェンバー
21…スライドガラス
25…油浸オイル
31…入射プリズムの透過面
32…入射プリズムの反射面
33…入射プリズムの透過面
41…放射プリズムの透過面
42…放射プリズムの透過面
50…X−Yステージ
51…X方向位置調節ネジ
52…Y方向位置調節ネジ
55…スライドガラス把持機構
56…パッド
61…顕微鏡対物レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドガラス内での多重全反射により導波されるレーザ光によって少なくとも前記スライドガラスの上面にエバネッセント波を発生させ、前記スライドガラスの上面に位置する試料をそのエバネッセント波で照明する全反射試料照明装置において、
前記スライドガラスを滴下した屈折率整合液を介してその面内で移動可能に支持する入射プリズムと放射プリズムとを備え、
前記入射プリズムはレーザ光源に対して固定され、前記放射プリズムは前記入射プリズムに対して前記レーザ光進行方向に位置調節可能に配置されており、
前記入射プリズムの前記スライドガラスの支持面と、前記放射プリズムの前記スライドガラスの支持面とは、前記放射プリズムの調節位置に係わらずに同一高さで同一面になるように配置され、
前記レーザ光は、前記入射プリズムを経て前記支持面から出てその上に滴下されている前記屈折率整合液を介してその上に支持されている前記スライドガラス内に入って多重全反射により導波され、前記放射プリズムの前記支持面の上に滴下されている前記屈折率整合液を介して前記放射プリズムの前記支持面から前記放射プリズム内に入り、前記放射プリズムから外部へ放射されることを特徴とする全反射試料照明装置。
【請求項2】
前記入射プリズムと前記放射プリズムとの上に支持されている前記スライドガラスを把持して、前記スライドガラスをその面に沿った2次元方向に位置調節する位置調節機構を備えていることを特徴とする請求項1記載の全反射試料照明装置。
【請求項3】
スライドガラス内での多重全反射により導波されるレーザ光によって少なくとも前記スライドガラスの上面にエバネッセント波を発生させ、前記スライドガラスの上面に位置する試料をそのエバネッセント波で照明する全反射試料照明方法において、
入射プリズムと放射プリズムとの上に滴下した屈折率整合液を介して共通の平面内で移動可能に前記スライドガラスを支持し、
前記放射プリズムを前記入射プリズムに対して前記レーザ光進行方向に位置調節可能に支持し、
前記入射プリズムの前記スライドガラスの支持面と、前記放射プリズムの前記スライドガラスの支持面とが、前記放射プリズムの調節位置に係わらずに同一高さで同一面になるように設定し、
前記レーザ光が、前記入射プリズムを経て前記支持面から出てその上に滴下されている前記屈折率整合液を介してその上に支持されている前記スライドガラス内に入って多重全反射により導波され、前記放射プリズムの前記支持面の上に滴下されている前記屈折率整合液を介して前記放射プリズムの前記支持面から前記放射プリズム内に入り、前記放射プリズムから外部へ放射されるようにしたことを特徴とする全反射試料照明方法。
【請求項4】
前記入射プリズムと前記放射プリズムとの上に支持されている前記スライドガラスをその面に沿った2次元方向に位置調節することを特徴とする請求項3記載の全反射試料照明方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の全反射試料照明装置を用いていることを特徴する顕微鏡。
【請求項6】
請求項1又は2記載の全反射試料照明装置を用いていることを特徴する計測装置。
【請求項7】
請求項3又は4記載の全反射試料照明方法を用いていることを特徴する顕微鏡法。
【請求項8】
請求項3又は4記載の全反射試料照明方法を用いていることを特徴する計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−85915(P2007−85915A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275626(P2005−275626)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】