説明

全有機体炭素測定装置

【課題】新たなパージガス流路を設けることなく、流路内を洗浄し、更に乾燥させることができるようにする。
【解決手段】酸添加流路38からシリンジ24へ純水を吸入しドレイン流路から排出することにより酸添加流路38を洗浄し、その後ガス配管30からのキャリアガスをシリンジ24により酸添加流路38へ供給して酸添加流路38を乾燥させる。同様にして、サンプル水採水流路38も洗浄と乾燥を行う。TOC測定流路46は洗浄水流路42からシリンジ24へ吸入した洗浄水により洗浄し、その後をガス配管30からのキャリアガスをシリンジ24によりTOC測定流路46に供給することにより、TOC測定流路46から有機物酸化分解部10のサンプル水が流れる流路の洗浄と乾燥を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主として、純水や超純水と呼ばれる不純物の少ない水の有機性汚染を評価する全有機体炭素(TOC)測定装置に関するものである。分析対象となるサンプルは、製薬用水、半導体製造用行程水、冷却水、ボイラー水、水道水等である。
【背景技術】
【0002】
全有機体炭素定装置には、高温の炉で有機物を燃焼酸化する燃焼式酸化法と、紫外光を用いた有機物酸化分解部で有機物を酸化する湿式酸化法がある。純水や超純水を測定対象とする高感度測定には後者の湿式酸化法が一般的に用いられる。本発明も後者の湿式酸化法による全有機体炭素定装置を対象にする。
【0003】
湿式酸化法における全有機体炭素の測定方法として、有機物酸化分解部の後段に、二酸化炭素を透過させるガス透過膜を用いた二酸化炭素分離部を設け、サンプル水中の二酸化炭素を脱イオン水からなる測定水に移動させ、測定水の導電率を計測する方法が知られている(特許文献1参照。)。
【0004】
さらに、マイクロ加工技術を用いて、デバイスを集積化することでサンプルや試薬消費量の低減と配管からの溶出や透過の低減を両立する全有機体炭素測定装置が提案されている(特許文献2、3参照。)。その全有機体炭素測定装置は、供給されたサンプル水中の有機物を紫外線照射により酸化して二酸化炭素に変換する有機物酸化分解部、有機物酸化分解部を経たサンプル水中の二酸化炭素をガス透過膜を介して脱イオン水からなる測定水中に移動させる二酸化炭素分離部、及び二酸化炭素分離部を経由した測定水の導電率を測定して二酸化炭素濃度を求める検出部を備えており、そのうちの少なくとも二酸化炭素分離部ではチップ内に形成された微小な流路をサンプル水が流れる。
【0005】
ガス透過膜を介してサンプル水中の二酸化炭素を測定水に移動させるためには、サンプル水中の二酸化炭素をガス状態にするためにサンプル水は酸性に保たれる。そのため、通常、サンプル水には炭素成分を含まない無機酸を添加し、サンプル水のpHを例えば2程度の強い酸性に保っている。そのような酸としてはリン酸や硫酸が用いられる。
【0006】
またサンプル水に最初から溶け込んでいる無機体炭素(IC)を除去してTOC濃度を測定することも行われている。そのために、有機物酸化分解部に供給するサンプル水に酸を添加し、炭素成分を含まないキャリアガスで抜気することにより無機体炭素成分を除去した後、サンプル水を有機物酸化分解部に供給するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5132094号
【特許文献2】特開2006−300633号公報
【特許文献3】国際公開WO2008/047405
【特許文献4】特開平10−90134号公報
【特許文献5】特開2000−187027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなTOC測定装置は、ある一定の期間の測定後、長期間、例えば1ヶ月程度にわたって使用しないで保管されることがある。その際、サンプル水を採水する流路や、TOC測定装置でサンプル水が流れる流路がサンプルで濡れた状態になっていると、サンプル水に添加された酸、特にリン酸の場合には流路に残ったリン酸の粘度が高まり、流路が詰まる原因になる。またサンプル水が残っているとサンプル水中の有機成分が腐敗することにより有機物が増殖し、その後に測定を開始したときにTOC測定値の誤差の原因となる。
【0009】
一般に、サンプル水中の微量成分の分析装置では、分析終了後に洗浄水で流路を洗浄することは通常行われている(特許文献4参照)。その場合、流路の洗浄は次のサンプルを測定する際のコンタミネーションを防ぐのが目的であり、洗浄水で洗浄するだけで、乾燥まではしない。それは、コンタミネーションを防ぐためには洗浄だけで十分である上、乾燥をしようとすれば乾燥のためにパージガスを流すための流路が別途必要になるためである。
【0010】
しかしながら、洗浄水による洗浄のみでは流路内は濡れた状態であり、その状態で長期間にわたって使用しないで保管されると、やはり流路内に残留する微量の有機物が増殖する可能性がある。
【0011】
別の分析装置としては分析終了後にサンプルを採取する流路にサンプル採取時とは逆方向に不活性ガスを流すことにより、流路を乾燥させるようにしたものもある(特許文献5参照)。しかしながら、そのような分析装置の不活性ガスは分析の目的では使用されるものではないため、この流路乾燥のためのパージガスを供給するために、分析では必要でないパージガス流路を別途設けなければならず、それだけ分析装置のコスト高を招く。
【0012】
そこで、本発明は特にTOC分析装置において、新たなパージガス流路を設けることなく、分析終了後に長期間にわたって使用しないで保管する際に、流路内を洗浄し、更に乾燥させることによって流路内に酸や有機物が残留することを防ぐことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のTOC測定装置は、供給されたサンプル水中のTOC濃度を測定するTOC測定部、TOC測定部へサンプル水を供給する試料導入部、及びTOC測定部と試料導入部の動作を制御する制御装置を備えている。
【0014】
TOC測定部は、供給されたサンプル水中の有機物を紫外線照射により酸化して二酸化炭素に変換する有機物酸化分解部、前記有機物酸化分解部を経たサンプル水中の二酸化炭素をガス透過膜を介して脱イオン水からなる測定水中に移動させる二酸化炭素分離部、及び前記二酸化炭素分離部を経由した測定水の導電率を測定して二酸化炭素濃度を求める検出部を備えており、少なくとも前記二酸化炭素分離部のサンプル水が流れる流路がチップ内に形成された微小流路となっている。
【0015】
試料導入部は、共通ポートを複数のポートのそれぞれに切り換えて接続することのできる流路切換えバルブ、前記流路切換えバルブの共通ポートに接続されたシリンジ、並びに前記複数のポートのそれぞれに接続されサンプル水を供給するサンプル水採水流路、炭素を含まない無機酸を供給する酸添加流路、洗浄水を供給する洗浄水流路、前記有機物酸化分解部につながるTOC測定流路及びドレインに開放されるドレイン流路を備えている。前記シリンジはシリンダとその内部を摺動するピストンからなり、前記シリンダは先端部が前記共通ポートに接続されており、基端部にはピストンがシリンダの基端部側に後退した状態でシリンダ内に炭素成分を含まないキャリアガスを供給するガス配管が接続されている。
【0016】
制御装置は、前記TOC測定部による導電率測定動作を制御する測定部制御部、前記流路切換えバルブの動作を制御するバルブ制御部、前記シリンジの動作を制御するシリンジ制御部、前記バルブ制御部及びシリンジ制御部を介して前記試料導入部の動作を制御する試料導入制御部、酸添加流路とサンプル水採水流路がそれぞれ純水を吸引するように設定された状態で保管のための洗浄を指示する保管洗浄ボタン、並びに前記保管洗浄ボタンから保管洗浄が指示されると前記バルブ制御部及びシリンジ制御部を介して以下の(A)、(B)及び(C)の洗浄及び乾燥の処理工程を行う保管洗浄手段を備えている。
【0017】
(A)前記酸添加流路から前記シリンジへ純水を吸入し前記ドレイン流路から排出することにより前記酸添加流路を洗浄し、その後前記ガス配管からのキャリアガスを前記シリンジにより前記酸添加流路へ供給して前記酸添加流路を乾燥させる操作。
【0018】
(B)前記サンプル水採水流路から前記シリンジへ純水を吸入し前記ドレイン流路から排出することにより前記サンプル水採水流路を洗浄し、その後前記ガス配管からのキャリアガスを前記シリンジにより前記サンプル水採水流路へ供給して前記サンプル水採水流路を乾燥させる操作。
【0019】
(C)前記洗浄水流路から前記シリンジへ洗浄水を吸入し前記TOC測定流路から前記有機物酸化分解部のサンプル水が流れる流路に供給することにより前記有機物酸化分解部のサンプル水が流れる流路を洗浄し、その後前記ガス配管からのキャリアガスを前記シリンジにより前記有機物酸化分解部のサンプル水が流れる流路へ供給して前記有機物酸化分解部のサンプル水が流れる流路を乾燥させる操作。
【0020】
保管洗浄とは長期間の保管のための洗浄を行うことを意味する。
【0021】
前記酸添加流路から供給される炭素を含まない無機酸の一例はリン酸である。リン酸溶液は乾燥すると粘度が高くなるので、微細な流路の詰りの原因となりやすいので、本発明を適用する意義が特に大きい。他の酸としては硫酸を挙げることができる。
【0022】
前記工程(A)、(B)及び(C)のうち、最初に工程(A)が処理される。それに続いて処理される工程は(B)と(C)のいずれでもよい。すなわち、工程処理の順は、(A)→(B)→(C)又は(A)→(C)→(B)である。
【0023】
工程(C)では、有機物酸化分解部のサンプル水が流れる流路を洗浄水で洗浄する際にその流路に紫外線を照射するようにしてもよい。これにより、流路に有機物が残っていても紫外線により分解され、有機物のない状態を作ることができる。
【0024】
また、工程(C)では、有機物酸化分解部のサンプル水が流れる流路を洗浄した後、洗浄水流路の洗浄水容器側の先端を開放し、有機物酸化分解部のサンプル水が流れる流路の乾燥とともに洗浄水流路の乾燥も行うようにしてもよい。これにより、洗浄水流路も乾燥状態にすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明では分析終了後、長期間にわたって使用しないことが分かっている場合は、保管洗浄手段を起動することによって酸添加流路とサンプル水採水流路及びTOC測定流路から酸化分解部内のサンプル水が流れる流路を純水で洗浄することにより、流路に付着した酸や有機物を除去し、その後キャリアガスによって乾燥状態とするので、長期間保管しても流路が詰まったり、有機物が増殖したりすることがない。特に酸化分解部内でサンプル水が流れる流路はチップ内に形成された微細な流路であるので、ここが詰まったりする虞がなくなる。しかも乾燥のために流すキャリアガスを供給するガス配管は、このTOC測定装置で測定時に使用するために試料導入部にもともと備えられているものであるので、乾燥用のキャリアガス配管を別途設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】一実施例を示す概略図である。
【図2】同実施例の構成を示すブロック図である。
【図3】同実施例における制御装置を示すブロック図である。
【図4】同実施例における洗浄動作の全体を示すフローチャートである。
【図5】同実施例におけるリン酸添加流路の洗浄動作を示すフローチャートである。
【図6】同実施例におけるサンプル水採水流路の洗浄動作を示すフローチャートである。
【図7】同実施例におけるTOC測定流路の洗浄動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1はTOC測定装置の一実施例の全体を概略的に表わしたものである。TOC測定部2に試料導入部4であるオートサンプラが接続されており、サンプル水が自動的に採取されてTOC測定部2に供給される。TOC測定部2と試料導入部4の動作を制御するために制御装置6としてパーソナルコンピュータが接続されている。制御装置6はパーソナルコンピュータに限らず、このTOC測定装置に専用のマイクロプロセッサであってもよい。
【0028】
TOC測定部2と試料導入部4の詳細な構成を図2に示す。TOC測定部2は、有機物酸化分解部10、二酸化炭素分離部14及び検出部16を備えている。
【0029】
有機物酸化分解部10は、試料導入部4からTOC測定流路46を介して供給されたサンプル水中の有機物を水銀ランプなどの紫外線ランプ12からの紫外線照射により酸化して二酸化炭素に変換するものである。
【0030】
二酸化炭素分離部14は、有機物酸化分解部10を経たサンプル水中の二酸化炭素をガス透過膜を介して脱イオン水からなる測定水中に移動させるものである。
【0031】
二酸化炭素分離部14のサンプル水が流れる流路はチップ内に形成された微小流路となっている。有機物酸化分解部10、二酸化炭素分離部14及び検出部16が一体化されてチップ化されたものである場合には、有機物酸化分解部10でサンプル水が流れる流路もチップ内に形成された微小流路となる。TOC測定部2においては、サンプル水が流れる流路で微小流路となっている場合は、その流路にリン酸が残留したままで長期間放置すると、リン酸の粘度が高まって流路を閉塞する虞が高まる。
【0032】
検出部16は二酸化炭素分離部14を経由した測定水の導電率を測定して二酸化炭素濃度を求めるものである。検出部16では二酸化炭素分離部14からガス透過膜を介して移動する二酸化炭素を吸収させ、測定水としてその導電率を検出するため測定水として使用する脱イオン水を供給する循環流路17が設けられている。循環流路17は簡略化して示しているが、イオン交換樹脂を備えており、検出部16で導電率が検出された測定水はイオン交換樹脂により再生されて再び測定水として利用される。
【0033】
TOC測定部2の具体的な構造は特許文献2又は3に記載されたものを使用することもできる。
【0034】
試料導入部4は、共通ポート22を複数のポートのそれぞれに切り換えて接続することのできる流路切換えバルブ20を備えている。流路切換えバルブ20として8ポートバルブを使用する。この実施例では8ポート全てを使用するわけではないので、ここでは6ポートバルブを使用することもできる。流路切換えバルブの共通ポート22にはシリンジ24が接続されている。複数のポートのうちのポートaにはサンプル容器36につながるサンプル水採水流路34が接続され、サンプル水採水流路34からシリンジ24にサンプル水を吸引することができる。サンプル水採水流路34はまた、半導体製造プロセスなどのラインの水を直接吸入するようにして、このTOC測定装置をオンライン測定に用いることもできる。サンプル水に炭素を含まない無機酸としてリン酸を添加するために、ポートbにはリン酸カートリッジ40につながる酸添加流路38が接続され、リン酸カートリッジ40から酸添加流路38を経てシリンジ24にリン酸が吸引される。ポートcには洗浄水として純水又は脱イオン水が収容されたカートリッジ又はボトル44につながる洗浄水流路42が接続され、洗浄水容器44からシリンジ24に洗浄水が吸引される。ポートdには有機物酸化分解部10につながって有機物酸化分解部10にサンプル水を供給するTOC測定流路46が接続されている。ポートeにはドレインに開放されるドレイン流路48が接続されている。
【0035】
シリンジ24はシリンダ26とその内部を摺動するピストン28からなり、シリンダ26は先端部が共通ポートeに接続されており、基端部にはピストン28がシリンダ26の基端部側に後退した状態でシリンダ26内に炭素成分を含まないキャリアガスを供給するキャリアガス供給流路30が接続されている。キャリアガス供給流路30からはキャリアガスとしてボンベ32に収容された二酸化炭素を除去した高純度エアーが供給される。このキャリアガスは、TOC測定の際に無機体炭素(IC)を除去するためのスパージガスとして使用されるものであり、TOC測定装置では本来の分析目的のために備えられているものである。この発明ではそのキャリアガスを流路のパージのために利用する。
【0036】
制御装置6は、図3に示されるように、TOC測定部2による導電率測定動作を制御する測定部制御部50と、流路切換えバルブ20の動作を制御するバルブ制御部52と、シリンジ24の動作を制御するシリンジ制御部54と、バルブ制御部52及びシリンジ制御部54を介して試料導入部4の動作を制御する試料導入制御部56と、酸添加流路38とサンプル水採水流路34がそれぞれ純水を吸引するように設定された状態で保管のための洗浄を指示する保管洗浄ボタン60と、保管洗浄ボタン60から保管洗浄が指示されるとバルブ制御部52及びシリンジ制御部54を介して洗浄及び乾燥の処理工程を行う保管洗浄手段58を備えている。保管洗浄ボタン60はキーボード又はディスプレイの画面上に表示されたボタンであり、保管洗浄手段58を起動させるものである。
【0037】
まず、図2の実施例のTOC測定装置で、TOC測定を行なう手順を説明する。バルブ20によりサンプル水採水流路34とシリンジ24を接続し、シリンジ24のピストン28を基端側に後退させることによりサンプル水の一定量をシリンジ24内に採取する。続いて、バルブ20をシリンジ24とリン酸添加流路38が接続されるように切り換え、ピストン28を更に後退させてリン酸をシリンジ24内に取り込む。リン酸の添加によりサンプル水のpHが2程度の強い酸性になるようにする。次に、バルブ20を切り換えてシリンジ24とドレイン流路48を接続する。この状態でピストン28がキャリアガス供給流路30とシリンジ24との接続位置よりも基端側にある場合はその状態で、もしピストン28がキャリアガス供給流路30とシリンジ24との接続位置よりも先端側にある場合はピストン28をキャリアガス供給流路30とシリンジ24との接続位置よりも基端側にくるように後退させる。その状態でボンベ32からキャリアガスをシリンジ24内に供給し、シリンジに採取されているサンプル水とリン酸との混合液を抜気することにより、サンプル水に初めから溶け込んでいた無機体炭素をドレインへ放出する。
【0038】
次にキャリアガスの供給を止め、バルブ20を切り換えてシリンジ24とTOC測定流路46を接続し、シリンジ24内のサンプル水の一定量をTOC測定部2へ供給する。TOC測定部2では紫外線ランプ12が点灯させられており、サンプル水が分解部10を通過する間に紫外線照射によりサンプル水中の有機物が分解されて二酸化炭素となる。サンプル水中の二酸化炭素はサンプル水にリン酸が添加されて酸性になっていることによりガス状態となっている。分解部10を経たサンプル水は分離部14へ導かれ、分離部14ではサンプル水が測定水である脱イオン水とガス透過膜を介して接しているので、ガス透過膜を通って測定水中へ移動する。分離部14から検出部16へ導かれた測定水は検出部16の導電率測定計によってその導電率が測定される。測定水は二酸化炭素が移動する前は脱イオン水の固有の導電率をもっており、それに二酸化炭素が移動してきたことにより導電率が上がり、その導電率の変化に基づいてサンプル水のTOC濃度が求められる。
【0039】
サンプル水のTOC濃度と検出部16で測定される導電率との関係は、予め標準試料を用いてこの装置で測定を行なって検量線を作成しておくことにより容易に求めることができる。
【0040】
通常の測定動作においても、1つのサンプルの測定が終了すると、洗浄水流路42からシリンジ24に洗浄水が取り込まれ、シリンジ24からTOC測定流路46へ洗浄水が押し出されることによってTOC測定流路46から分解部10内のサンプル水流路が洗浄される。
【0041】
次に、長期間使用しない場合の保管洗浄の動作を図4から図7に示す。
【0042】
保管洗浄に先立ち、サンプル水採水流路34の先端のサンプル容器36を取り除いて洗浄用の純水の容器に取り替え、酸添加流路38の先端のリン酸カートリッジ40も取り除いて洗浄用純水の容器と取り替える。その後、保管洗浄ボタン60から保管洗浄手段58を起動させる。保管洗浄手段58が起動すると、所定の順序に従って洗浄が実行される。
【0043】
図4は保管洗浄の全体の流れを示したものである。洗浄の順序としては、リン酸添加流路38を最初に洗浄する。これはリン酸添加流路38の汚れが最も大きいからである。その後サンプル水流路34とTOC測定流路46の洗浄を行うが、この順序はどちらを先に行ってもよい。図4では先にサンプル水流路34の洗浄を行い、その後TOC測定流路46を行うようになっている。
【0044】
図5はリン酸添加流路38の洗浄の工程を示したものである。バルブ20によりリン酸添加流路38とシリンジ24を接続し、リン酸添加流路38から純水をシリンジ24に採水する。次にバルブ20を切り換え、シリンジ24とドレイン流路48を接続してシリンジ24に採水した洗浄水をドレインへ排出する。このリン酸添加流路38を介して洗浄水を取り込み、ドレインへ排出する工程を複数回、例えば3〜5回繰り返す。
【0045】
次に、リン酸添加流路38に接続されている洗浄水用の容器を取り除き、リン酸添加流路38の先端を大気に開放する。シリンジ24とドレイン流路48を接続した状態でシリンジ24のピストン28をキャリアガス流路とシリンジ24との接続位置よりも基端側に後退させ、シリンジ24内にキャリアガスを取り込む。次に、バルブを切り換えてシリンジ24とリン酸添加流路38を接続し、シリンジ24内のキャリアガスをリン酸添加流路38に送り出し、リン酸添加流路38内を通気して乾燥させる。シリンジ24内にキャリアガスを取り込み、それをリン酸添加流路38へ通気する工程を複数回、例えば3〜5回繰り返す。これでリン酸添加流路38内が乾燥状態となるので、その後リン酸添加流路38の流路の先端をパラフィンフィルムで閉じて外気の進入を防ぐ。
【0046】
図6はサンプル水採水流路34の洗浄工程を示したものである。バルブ20によりサンプル水採水流路34とシリンジ24を接続し、サンプル水採水流路34から純水をシリンジ24に採水する。次にバルブ20を切り換え、シリンジ24とドレイン流路48を接続してシリンジ24に採水した洗浄水をドレインへ排出する。このサンプル水採水流路34を介して洗浄水を取り込み、ドレインへ排出する工程を複数回、例えば3〜5回繰り返す。
【0047】
次に、サンプル水採水流路34に接続されている洗浄水用の容器を取り除き、サンプル水採水流路34の先端を大気に開放する。シリンジ24とドレイン流路48を接続した状態でシリンジ24のピストン28をキャリアガス流路とシリンジ24との接続位置よりも基端側に後退させ、シリンジ24内にキャリアガスを取り込む。次に、バルブを切り換えてシリンジ24とサンプル水採水流路34を接続し、シリンジ24内のキャリアガスをサンプル水採水流路34に送り出し、サンプル水採水流路34内を通気して乾燥させる。シリンジ24内にキャリアガスを取り込み、それをサンプル水採水流路34へ通気する工程を複数回、例えば3〜5回繰り返す。これでサンプル水採水流路34内が乾燥状態となるので、その後サンプル水採水流路34の流路の先端をパラフィンフィルムで閉じて外気の進入を防ぐ。
【0048】
図7はTOC測定流路46から分解部10内のサンプル水が流れる流路の洗浄工程を示したものである。この洗浄工程では分解部10の紫外線ランプ12を点灯した状態で行う。バルブ20により洗浄水流路42とシリンジ24を接続して洗浄水をシリンジ24に採水する。バルブ20を切り換えてシリンジ24とTOC測定流路46を接続し、採取した洗浄水をTOC測定流路46から分解部10内のサンプル水が流れる流路へ流す。この工程を複数回、例えば3〜5回繰り返す。
【0049】
次に洗浄水容器44を洗浄水流路42から取り外し、洗浄水流路42とTOC測定流路46の通気による乾燥を行う。この方法も他の流路の乾燥と同様であり、シリンジ24にキャリアガスを取り込み、そのキャリアガスをTOC測定流路46から分解部10のサンプル水流路へ通気し、バルブ20を切り換えて洗浄水流路42へもキャリアガスを通気する。このキャリアガスによる洗浄水流路42とTOC測定流路46への通気を10回程度繰り返す。これによりTOC測定流路46から分解部10内のサンプル水流路と、洗浄水流路42が乾燥する。その後、分解部10のサンプル水流路の先端と、洗浄水流路42の先端をパラフィンフィルムで閉塞する。
【0050】
これで試料導入部4とTOC測定部2のサンプル水が流れる流路は全て洗浄され、かつ乾燥された状態となって外気が進入しないように先端が閉塞した状態となって長期間の保管に備える状態となる。
【符号の説明】
【0051】
2 TOC測定部
4 試料導入部
6 制御装置
10 有機物酸化分解部
14 二酸化炭素分離部
16 検出部
20 流路切換えバルブ
22 共通ポート
24 シリンジ
34 サンプル水採水流路
38 リン酸添加流路
42 洗浄水流路
46 TOC測定流路
48 ドレイン流路
50 測定部制御部
52 バルブ制御部
54 シリンジ制御部
56 試料導入制御部
58 保管洗浄手段
60 保管洗浄ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給されたサンプル水中の有機物を紫外線照射により酸化して二酸化炭素に変換する有機物酸化分解部、前記有機物酸化分解部を経たサンプル水中の二酸化炭素をガス透過膜を介して脱イオン水からなる測定水中に移動させる二酸化炭素分離部、及び前記二酸化炭素分離部を経由した測定水の導電率を測定して二酸化炭素濃度を求める検出部を備え、少なくとも前記二酸化炭素分離部のサンプル水が流れる流路がチップ内に形成された微小流路となっている全有機体炭素測定部と、
共通ポートを複数のポートのそれぞれに切り換えて接続することのできる流路切換えバルブ、前記流路切換えバルブの共通ポートに接続されたシリンジ、並びに前記複数のポートのそれぞれに接続されサンプル水を供給するサンプル水採水流路、炭素を含まない無機酸を供給する酸添加流路、洗浄水を供給する洗浄水流路、前記有機物酸化分解部につながるTOC測定流路及びドレインに開放されるドレイン流路を備え、前記シリンジはシリンダとその内部を摺動するピストンからなり、前記シリンダは先端部が前記共通ポートに接続されており、基端部にはピストンがシリンダの基端部側に後退した状態でシリンダ内に炭素成分を含まないキャリアガスを供給するガス配管が接続されている試料導入部と、
前記全有機体炭素測定部による導電率測定動作を制御する測定部制御部、前記流路切換えバルブの動作を制御するバルブ制御部、前記シリンジの動作を制御するシリンジ制御部、前記バルブ制御部及びシリンジ制御部を介して前記試料導入部の動作を制御する試料導入制御部、酸添加流路とサンプル水採水流路がそれぞれ純水を吸引するように設定された状態で保管のための洗浄を指示する保管洗浄ボタン、並びに前記保管洗浄ボタンから保管洗浄が指示されると前記バルブ制御部及びシリンジ制御部を介して以下の(A)、(B)及び(C)の洗浄及び乾燥の処理工程を行う保管洗浄手段を備えた制御装置とを備えている全有機体炭素測定装置。
(A)前記酸添加流路から前記シリンジへ純水を吸入し前記ドレイン流路から排出することにより前記酸添加流路を洗浄し、その後前記ガス配管からのキャリアガスを前記シリンジにより前記酸添加流路へ供給して前記酸添加流路を乾燥させる操作。
(B)前記サンプル水採水流路から前記シリンジへ純水を吸入し前記ドレイン流路から排出することにより前記サンプル水採水流路を洗浄し、その後前記ガス配管からのキャリアガスを前記シリンジにより前記サンプル水採水流路へ供給して前記サンプル水採水流路を乾燥させる操作。
(C)前記洗浄水流路から前記シリンジへ洗浄水を吸入し前記TOC測定流路から前記有機物酸化分解部のサンプル水が流れる流路に供給することにより前記有機物酸化分解部のサンプル水が流れる流路を洗浄し、その後前記ガス配管からのキャリアガスを前記シリンジにより前記有機物酸化分解部のサンプル水が流れる流路へ供給して前記有機物酸化分解部のサンプル水が流れる流路を乾燥させる操作。
【請求項2】
前記酸添加流路から供給される炭素を含まない無機酸はリン酸である請求項1に記載の全有機体炭素測定装置。
【請求項3】
前記工程(A)、(B)及び(C)のうち、最初に工程(A)が処理され、それに続いて工程(B)又は(C)が処理され、最後に工程(B)又は(C)のうちの残った工程が処理される請求項2に記載の全有機体炭素測定装置。
【請求項4】
前記工程(C)は、前記有機物酸化分解部のサンプル水が流れる流路を洗浄水で洗浄する際に該流路に紫外線を照射する請求項1から3のいずれか一項に記載の全有機体炭素測定装置。
【請求項5】
前記工程(C)は、前記有機物酸化分解部のサンプル水が流れる流路を洗浄した後、洗浄水流路の洗浄水容器側の先端を開放し、前記有機物酸化分解部のサンプル水が流れる流路の乾燥とともに洗浄水流路の洗浄も行うようにした請求項1から4のいずれか一項に記載の全有機体炭素測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−52975(P2011−52975A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199432(P2009−199432)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】