説明

全有機炭素含有量を測定する装置の較正方法

【課題】比抵抗を測定することによって水溶液の全有機炭素含有量(TOC)を測定する装置の較正方法の先行技術の欠点を改善する。
【解決手段】基準TOC分析装置の存在下で次のステップ、すなわち
(a)前記装置および前記分析装置により、超純水に対して実施された測定によって較正点を生成するステップと、
(b)複数の較正点を生成するステップであり、溶液の比抵抗の測定値に対応する各較正点が、前記装置および前記分析装置によって測定された値の間の相関関係を確立するために、前記装置および前記分析装置によって光酸化性化合物の所与の含有量を有するステップと、
(c)先のステップで実施された測定に基づいて、少なくとも1つのアルゴリズムによって前記装置を較正するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、水溶液、特に超純水の全有機炭素(TOC)含有量を測定するための少なくとも1つの装置の較正に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、低い検出レベル(すなわち、数十ppbまたはさらに数百ppb)の水溶液中の全有機炭素(TOC)含有量の測定は、特定の測定装置によって実施される。この装置では一般に、手順の第1のステップは、通常、(例えば185nmの)UV放射線源の存在下で、TOC含有量を測定することが望まれる水溶液を酸化させることであり、それにより、有機化合物のCOへの転化がもたらされる。また、この第1のステップは、光触媒作用によってまたは他のオゾン発生方法によっても実施され得る。これに、概して温度測定値と組み合わせて通常は比抵抗(または導電率)を測定することによりCO分子を検出する第2のステップが続く。第1のステップの完全酸化は、アルゴリズムの複雑なセットの実行と組み合わせて、電極によって測られる導電率測定値が変更することによって検出される。プロセッサ(または中央演算処理装置(CPU))は、検出器のセットを制御し、適切な計算を実行する。この結果、酸化の終わりに測定された比抵抗値に応じてTOC含有量の測定値を得ることができる。
【0003】
これらの測定装置は、一般的には年に一回の頻度で定期的に較正(すなわち、標準化)されなければばらない。現時点での技術水準では、比抵抗の較正は、通常2つの測定、すなわち超純水の存在下でゼロのTOC当量値に対して18.2MΩ.cmの比抵抗を設定する一方の測定と、COで飽和状態になった水の存在下で200ppbのTOC当量値に対して1MΩ.cmの比抵抗を設定する他方の測定によって実施される。この結果、直線性のある較正曲線をプロットすることができる。通常、200ppbのメタノールの溶液の存在下で、基準TOC分析装置についての比較により、この較正方法がチェックされるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この較正方法によって提起される問題は、一方では較正曲線の直線性が仮定され、他方ではTOC含有量を0ppbから200ppbまでの範囲に制限することであり、これは、高い信頼度もなしに500ppbまで推定される。しかしながら、特に製薬工業における規格では、500ppbの値までの、できるだけ信頼できるTOC含有量の測定値を課している。現時点での技術水準による推定は、200ppbから500ppbまでのTOC値について、受け入れられるのに十分に信頼性があるとは限らない。
【0005】
そのうえ、実際に、市場で入手できる較正溶液は18.2MΩ.cmよりも小さい比抵抗を有する水の溶液を含まないということから、問題が発生する。同様に、易光酸化性有機化合物(easily photo−oxidizable)が低濃度である、アルコールなどの前記易光酸化性有機化合物の溶液は、空気中のCOによって容易に汚染され、その結果、この溶液についての任意のTOC含有量の信頼性を著しく低下させている。
【0006】
結局、COガスを処理し、かつ純水中のCOガスの溶解を管理する必要性から、この較正方法は現場での使用に適合されなくなっている。実際に、この方法を使用するには手際の良さが求められ、装置が比較的かさばる。結果として、この方法は、実施するのに複雑であり、使用に柔軟性を欠くことが分かり得る。
【0007】
本特許出願は、先行技術の欠点を改善し、特に先行技術の欠点を有さない較正方法を実施することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これを目的として、本発明は、水溶液が含有する炭素をCOに酸化させた後、所与の温度で前記溶液の比抵抗を測定することによって、水溶液、特に超純水の全有機炭素(TOC)含有量を測定するための少なくとも1つの装置を較正する方法であって、基準TOC分析装置の存在下で少なくとも次の一連のステップ:
(a)測定装置およびTOC分析装置を用いて超純水の比抵抗を測定することによって較正点を生成するステップであり、比抵抗が、ゼロのTOC当量値に対して18.2MΩ.cmに等しい設定された値を有するステップと、
(b)複数の較正点を生成するステップであり、超純水中の光酸化性化合物の溶液の比抵抗の測定値に対応する各較正点が、概ね0ppbから500ppbまでの光酸化性化合物の所与の含有量を有し、光酸化性化合物の前記溶液が酸化されており、比抵抗の測定が、測定装置によっておよびTOC分析装置によって実施され、これらの較正点により、TOC測定装置によって測定された比抵抗値とTOC分析装置によって測定された比抵抗値との間の相関関係を確立することができるステップと、
(c)先のステップで実施された測定に基づいて、少なくとも1つのアルゴリズムによってTOC測定装置を較正のために補正するステップとを含む方法に関する。
【0009】
この方法は、現場で使用され得ることが有利である。
【0010】
光酸化性溶液は、一般に、完全に酸化されなければならない。
【0011】
他方で、複数の点に基づいて構成された較正曲線を用いると、特に0ppbから200ppbまでの範囲で、しかしまた200ppbから500ppbまでの範囲でも較正方法の品質をかなり改善することができる。
【0012】
有利には、本発明によれば、0ppbから1000ppbまで、好ましくは0ppbから500ppbまで、より好ましくは2ppbから500ppbまで、さらにより好ましくは3ppbから500ppbまでのTOC含有量について較正を実施することができる。例えば、0ppbから200ppbまでの値について較正を実施することができる。有利には、この結果、全く特に200ppbから500ppbまでの範囲において、しかしまた2ppbから500ppbまで、またはさらに3ppbから500ppbまでの範囲において、本発明の方法により較正された測定装置によってTOC含有量の測定の信頼性を高めることができる。
【0013】
本発明によれば、超純水とは、25℃で10−7mol/Lの濃度において(水の自己プロトリシスにより)平衡状態でHO分子、ならびにHおよびOHのみを本質的に含む水を意味している。このような水は、通常、電子工業や製薬工業で使用される。
【0014】
本発明による方法は、ステップ(c)に続くステップ(d)を含み、前記ステップ(d)は、概ね0ppbから500ppbまでの範囲に含まれる所与のTOC含有量を有する有機化合物の水溶液の存在下で、測定装置によって測定されたTOC含有量をチェックするステップであることが好ましい。
【0015】
ステップ(b)の化合物は、当業者に知られているように、ステップ(b)を実施する条件の下では光酸化性である。このことはまた、「易光酸化性」としても説明され得る。本発明の実施形態では、ステップ(b)の化合物は、アルコールおよびスクロースから選択され、好ましくは、前記化合物はメタノールまたはエタノールであり、さらにより好ましくは、前記化合物はメタノールである。
【0016】
本発明の方法によれば、少なくとも2つの異なるTOC測定装置の同時較正が実施され得る。この場合、第2の装置は、通常、第1の装置を通過する流体循環ループのバイパスに対して第1の装置と平行に配置される。同様な手順が、任意の他の追加装置についても使用される。
【0017】
本発明の変形例によれば、ステップ(c)は、TOC分析装置による比抵抗値とTOC測定装置によって測定された比抵抗値との間の比較を各所与のTOC値について実行する少なくとも1つのアルゴリズムの使用を含み、次いで、TOC分析装置によって与えられる基準比抵抗値に応じてTOC測定装置の比抵抗値を復元する少なくとも1つのアルゴリズムの使用を含む。
【0018】
酸化は、少なくとも1つのUV放射線源を用いて引き起こされることが好ましく、UV放射線源は、120nmから400nmまでの範囲内で、例えば185nmにおいて動作する。しかし、酸化はまた、他の酸化技術、すなわちオゾン、燃焼等によっても行われ得る。
【0019】
本発明によれば、ステップ(b)中に、5から35まで、好ましくは15から25まで、さらにより好ましくは18から22までの範囲内の、いくつかの較正点が生成されることが好ましい。
【0020】
本発明によれば、任意の溶液が循環されることができ、その溶液の比抵抗は、同じ流体循環ループにおいて測定装置内およびTOC分析装置内で測定される。通常、このループは、装置の両方を通して交互にまたは順次に、好ましくは順次に通過する。本発明によれば、前記ループには、イオン交換樹脂および/または活性炭などの少なくとも1つの脱イオン手段、または汚染除去手段さえ備えられることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、先に説明されたような方法を実施する較正装置にも関する。この装置は、通常、少なくとも1つの流体循環ループと、少なくとも1つの基準TOC分析装置と、少なくとも1つのプロセッサとを備えるようなものであり、このプロセッサは、TOC分析装置による比抵抗値とTOC測定装置によって測定された比抵抗値との間の比較を各所与のTOC値について実行する少なくとも1つのアルゴリズムと、TOC分析装置によって与えられる基準比抵抗値に応じてTOC測定装置による比抵抗値を復元する少なくとも1つのアルゴリズムとを含んでいる。
【0022】
このような装置は、通常、例えばポリマービーズおよび/または活性炭を有する、少なくとも1つのイオン交換樹脂カートリッジを備え、それにより、脱イオン水溶液および/または汚染除去水溶液が循環されるようになっている。
【0023】
較正アルゴリズムの演算
本発明による装置のプロセッサは、通常3つのモジュール、すなわちA、BおよびCを備えている。
【0024】
基準分析装置および較正されるべき測定装置からの測定されたTOCデータを受信するモジュールAは、TOC含有量から比抵抗への変換を実行する。これらのデータは、生の比抵抗値、またはTOC値であることができる。TOCデータは、まず、等価比抵抗に変換される。基準TOC値および比抵抗値は、異なる基準装置によって与えられ得る。本方法は、いかなる技術(UVによるまたは化学径路による有機物の酸化方法、および比抵抗によるまたは光径路による検出方法など)が基準TOCユニットを測定するのに用いられるにせよ動作することに留意すべきである。したがって、実際には、基準比抵抗の測定は、TOC分析装置(商標がHach UltraまたはGE Sievers)に組み込まれた比抵抗セルよりも一層正確な測定値を一般に与える比抵抗計(商標がThornton Mettler Toledo、など)によって実施され得る。
【0025】
モジュールAは、異なる化学種(CO、H、OH、HCO、CO2−など)の水中での化学平衡に基づいている。これらの平衡は、当業者によく知られている。2つの仮説:
先ずは、水は、有機分子および超純水のみを含み、化学元素C、HおよびOからなること、
試料は、試験下の装置によって分析中に完全に酸化されること、がある。
【0026】
これらの仮説によれば、完全に酸化された試料の導電率が炭酸イオンの濃度に関連付けされ、そこから有機分子の初期濃度が推定される。
【0027】
モジュールBは、モジュールAによって計算された比抵抗データ、ならびに基準分析装置および較正されるべき測定装置からの比抵抗データを受信する。モジュールBは、比抵抗点の選択またはフィルタリングを実行し、すなわち両方の装置によって与えられる比抵抗データをフィルタリングする。フィルタリングは、測定された比抵抗範囲に応じて実行される。ノイズ(アウトライアなど)が多過ぎる点もまた、フィルタリングされる。このモジュールにより、下記のモジュールCでモデル化された多項式からのいかなる逸脱も回避しながら、例えば最小二乗法によって、全作動範囲にわたって一様なモデリングに関連付けされた誤差を計算することができる。
【0028】
モジュールCは、例えば最小二乗法による多項式モデリングに関する。多項式は、通常、少なくとも2次であり、典型的には4次である。したがって、これは、較正されるべき測定装置によって測定された値とTOC分析装置によって測定された値との間の相関関係を確立する。その後、モジュールCは、モジュールBによって与えられる較正比抵抗表から較正係数を提供する。
【0029】
本発明は、次の図を読み取ると一層よく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による較正装置を概略的に表す図である。
【図2】本発明による較正方法を実施するための図1の装置による、時間t(秒について)に応じてTOC含有量(ppb)の測定値を概略的に表す図である。
【図3】本発明による較正方法の実施によって得られた較正曲線を概略的に表す図である。
【図4】本発明による較正方法のこの第1の実施をチェックするための図1の装置による、時間t(時間:分について)に応じてTOC含有量(ppb)の測定値を概略的に表す図である。
【図5】時間t(秒について)に応じてのTOC含有量(ppb)の測定値、したがって本発明による較正方法の第2の実施によって得られた較正曲線を概略的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明による較正装置10を概略的に表している。
【0032】
この装置10は、全有機炭素(TOC)含有量を測定するための較正されるべき装置1、ならびに基準TOC分析装置2を備えている。
【0033】
管11が、装置1を通過する。管19が、分析装置2を通過する。管11および19は、管9によって供給され、この管9はそれ自体、管8によって供給される。管11および19は、管12に開口し、この管12はそれ自体、管8に開口する。管8および9の接続点と管12および8の接続点との間に配置されるバイパス管23が、逆止弁である部品7に供給する。
【0034】
逆止弁7により、水溶液は、管11および19中の溶液の流れの制限中にさえも管19を通して循環することができる。この逆止弁7は、通常、例えば0.5barと1barとの間(または、7psiと15psiとの間、すなわちSI単位で5・10Paと1・10Paとの間)で較正される。
【0035】
管8は、リザーバ6と共に閉ループを形成する。リザーバ6はそれ自体、シリンジとフラスコのいずれかである供給装置15によって供給される。この結果、管8の中で希釈される濃縮液を注入できることが有利である。この濃縮液は、極端な希釈溶液よりも外側の空気のCOによって汚染されにくい。
【0036】
リザーバ6から開始すると、管8は、ポンプ5を通過し、このポンプ5により、管8中に存在するいかなる流体も移動されるようになっており、ランプ3およびカートリッジ4は、イオン交換樹脂ビーズで充填され得る。ランプ3は、UV放射線を供給するUVランプであり、このUV放射線は、溶解COと共に回路中を循環する水溶液中に存在する炭素を完全に酸化することができる。
【0037】
ランプ3は、通常、185nmから254nmまでの範囲内で、例えば185nmにおいて作動する。
【0038】
カートリッジ4は、通常、アニオンビーズおよびカチオンビーズの2つのタイプの混床で充填されることができ、ビーズはポリマーであり、床は、随意に、有機化合物を捕捉することが意図される活性炭、例えば10体積%の活性炭をさらに含む。
【0039】
点線14は、測定装置1と分析装置2との間で有線または無線データ伝送が可能であることを表している。点線18は、分析装置2と携帯式コンピュータ型の装置13内に存在するプロセッサとの間で、有線または無線データ伝送が可能であることを表す。
【0040】
作動時には、管15によって供給される水溶液は、管8、9、11、19、23および12によって形成される流体循環ループに供給される。この供給は、ループ内の循環を調整するリザーバ6を介して、特に、ランプ3を用いると酸化によって形成し得るCOガスは別として、実質的にガスフリーでなければならない水溶液をループが含む場合に実行される。通常、前記溶液は、洗浄用溶液と所定のTOC含有量を有する水溶液のいずれかである。
【0041】
このように、この溶液は、2つの装置1および2のそれぞれの内部を循環する。温度および比抵抗の測定は、2つの装置1および2のそれぞれにおいて実施され得る。この測定は、0ppbから500ppbまで、またはさらに1000ppbまでの異なるTOC含有量を有する溶液について、何度も、例えば20回も繰り返される。
【0042】
装置13のプロセッサは、2つの装置1および2からのデータを受信し、測定装置1の較正を修正するようにこれらの装置にデータを再送する。較正の終わりに、装置13内に存在するプロセッサは、較正証明書を提供することができる。
【0043】
本発明によれば、装置10は、携帯式であり、現場で行われ得ることが有利である。
【0044】
実施例1
次の実施例は、図1に示されるような装置10を用いて実施され、これについては、UVランプは、17Wの電力の場合に185nmおよび254nmで作動した。カートリッジ4は、商標がMillipore Quantum IXという、約1Lの樹脂を含んでいた。水の流量は、20L/hから100L/hの間に含まれていた。基準装置は、商標がSievers 900RL(GE group)というTOC分析装置であった。注入された光酸化性化合物は、異なる濃度において高純度のメタノール(HPCLタイプ)であった。
【0045】
図2は、時間t(秒単位、s)に応じてTOC含有量(ppb単位)の測定値を概略的に表している。
【0046】
曲線21を形成する点21は、本発明の方法の第1の実施のステップ(a)および(b)による、測定装置1によって測定された較正点の組を表している。TOC含有量の1つの測定値が、1つの点に対応する。同様に、曲線22を形成する点22は、基準TOC分析装置によって測定された較正点の組を表す。
【0047】
それぞれ100ppb、400ppbまたは600ppbに等しいTOC含有量が、装置1によって測定されるとき、このようにして得られた曲線21と曲線22との間のy軸上の差異が、それぞれΔ100、Δ400またはΔ600である。Δ100の値は、Δ400の値よりもはるかに小さく、このΔ400の値はそれ自体、Δ600の値よりもはるかに小さい。このように、曲線21と22との間の所与のtにおける測定値の差異は、TOC含有量(ppb)が増加するにつれてより大きくなることが図2で理解され得る。
【0048】
特に200ppbより大きい、およびさらに500ppbよりも大きい、特に、高含有量TOC測定値に関して、曲線21と22との間の差異は、TOC含有量の信頼性のある測定値として受け入れられない。
【0049】
図3は、図2の曲線21および22から取り出された点16に基づき、本発明による較正方法の第1の実施によって得られた較正曲線17を概略的に表している。この曲線は、較正されるべき測定装置1による比抵抗ρDISPに対して、基準TOC分析装置2による基準比抵抗測定値ρREFを与える。
【0050】
直線20に関しては、実際の値に対応するこの較正曲線の非線形性が理解され得る。
【0051】
したがって、本発明の方法による較正は、直線性のこの欠如を正しく考慮に入れているという点で特に有利である。
【0052】
図4は、図1の同じ装置10による、時間t(時分単位、すなわちh:m)に応じてTOC含有量(ppb単位)を概略的に表している。
【0053】
この結果、本発明による較正方法をチェックすることができる。
【0054】
すなわち、曲線32は、基準分析装置2によって得られた曲線であり、曲線31は、測定装置1によって得られた曲線である。2つの測定値の曲線はほとんど同一であることが留意されたい。
【0055】
実施例2
本発明の方法の実施についての第2の実施例は、図1に表されるような装置10を用いて実施され、この場合、UVランプは、17Wの電力の場合に185nmおよび254nmで作動した。カートリッジ4は、商標がMillipore Quantum IXという、約1Lの樹脂を含んでいた。水の流量は、20L/hから100L/hの間に含まれていた。基準装置は、商標がSievers 900RL(GEグループ)というTOC分析装置であった。注入された光酸化性化合物は、異なる濃度において、高純度のメタノール(HPCLタイプ)であった。
【0056】
下の表1は、第1の一連の較正測定によって、それぞれ較正されるべき装置についておよび基準分析装置について得られた測定値を与えている。
【表1】

【0057】
較正範囲は、標準的な現存のTOC溶液とは完全に無関係に選択されることが有利である。
【0058】
所与のTOC範囲における要求精度によれば、ある一定の点を表1から取り除くことができる。米国薬局方規格643は、約500ppbのTOC分析装置に対して特定の精度を要求している。本発明による較正方法の場合、各状況で高低のTOC値について規格に最も精度よく適合するために、点は、約500ppbでかつ非常に低いTOC値(<10ppb)において選択され得る。
【0059】
TOC値および関連する温度は、25℃について補正された比抵抗表(下の表2を参照されたい)を作成するように処理される。
【表2】

【0060】
このことは義務的ではないが、超純水の比抵抗(18.2Mohm.cm)などの抽出された比抵抗値を、表2に含めることもできる。18.2Mohm.cmの点の較正は、0ppbの理論値と同等である。
【0061】
次いで、表2のデータは、多項式較正に対応するために処理される。新しい較正係数を検証するために、チェックが実行される(表3を参照されたい)。
【表3】

【0062】
相対偏差または絶対偏差が、異なるTOC範囲に従って規定される。すべてのこれらの基準が所与の較正装置によって承認されると、較正データおよび検証データを備えるTOC証明書が、印刷され、較正されるべき装置の所有者に提供される。
【0063】
図5は、実施例2に従って本発明による較正方法のこの第2の実施を用いた、時間t(秒について)に応じてのTOC含有量(ppb)の測定値、したがって基準TOC分析装置の値についての第1の曲線41、および較正されるべき装置についての第2の曲線40の概略図を示している。これらの曲線の第1の部分は、約6000sから約11000sの間に含まれる値tについての実際の較正に対応し、これらの曲線の第2の部分は、14000sから18000sの間に含まれる値tについての検証に対応している。
【0064】
したがって、本発明による較正方法により、0ppbから500ppbまで、またはさらに0ppbから1000ppbまでのTOC含有量ついて高精度な較正に対する要求に確実に対応することができる。
【0065】
このように、2つの先の実施例により示された本発明による較正方法は、信頼性、測定された値の範囲の幅、簡単性および使い易さに関して、水溶液の全有機炭素(TOC)含有量を測定するための装置の較正に明確な利点を有する。
【符号の説明】
【0066】
1 測定装置
2 基準TOC分析装置
3 ランプ
4 カートリッジ
5 ポンプ
6 リザーバ
7 逆止弁
8、9、11、12、19 管
10 較正装置
13 携帯式コンピュータ型の装置
14、18 点線
15 管、供給装置
16 点
17 較正曲線
20 直線
21、22 曲線、点
23 バイパス管
31、32、40、41 曲線
t 時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液が含有する炭素をCOに酸化させた後、所与の温度で前記溶液の比抵抗を測定することによって、水溶液、特に超純水の全有機炭素(TOC)含有量を測定するための少なくとも1つの装置を較正する方法であって、基準TOC分析装置の存在下で少なくとも次の一連のステップ、すなわち
(a)測定装置およびTOC分析装置を用いて超純水の比抵抗を測定することによって較正点を生成するステップであり、比抵抗が、ゼロのTOC当量値に対して18.2MΩ.cmに等しい設定された値を有するステップと、
(b)複数の較正点を生成するステップであり、超純水中の光酸化性化合物の溶液の比抵抗の測定値に対応する各較正点が、光酸化性化合物の所与の含有量を有し、光酸化性化合物の前記溶液が酸化されており、比抵抗の測定が、測定装置によっておよびTOC分析装置によって実施され、これらの較正点により、TOC測定装置によって測定された比抵抗値とTOC分析装置によって測定された比抵抗値との間の相関関係を確立することができるステップと、
(c)先のステップで実施された測定に基づいて、少なくとも1つのアルゴリズムによって較正のためにTOC測定装置を補正するステップとを含む、方法。
【請求項2】
ステップ(c)に続くステップ(d)を含み、前記ステップ(d)が、概ね0ppbから500ppbまでの範囲に含まれる所与のTOC含有量を有する有機化合物の水溶液の存在下で、測定装置によって測定されたTOC含有量をチェックするステップである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)の化合物が、アルコールおよびスクロースから選択され、好ましくは、前記化合物がメタノールまたはエタノールであり、さらにより好ましくは、前記化合物がメタノールである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも2つの異なるTOC測定装置の同時較正が実施される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(c)が、TOC分析装置による比抵抗値とTOC測定装置によって測定された比抵抗値との間の比較を各所与のTOC値について実行する少なくとも1つのアルゴリズムの使用を含み、次いで、TOC分析装置によって与えられる基準比抵抗値に応じてTOC測定装置の比抵抗値を復元する少なくとも1つのアルゴリズムの使用を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
酸化が、少なくとも1つのUV放射線源を用いて引き起こされ、UV放射線源が120nmから400nmまでの範囲内で動作する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
較正が、0ppbから1000ppbまで、好ましくは0ppbから500ppbまで、より好ましくは2ppbから500ppbまで、さらにより好ましくは3ppbから500ppbまでのTOC含有量について実施される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)中に、5から35まで、好ましくは15から25まで、さらにより好ましくは18から22までの範囲内に含まれる、いくつかの較正点が生成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
任意の溶液が循環され、その溶液の比抵抗が、同じ流体循環ループにおいて測定装置内およびTOC分析装置内で測定される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ループには、イオン交換樹脂および/または活性炭などの少なくとも1つの脱イオン手段、または汚染除去手段さえ備えられる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの流体循環ループと、少なくとも1つの基準TOC分析装置と、TOC分析装置による比抵抗値とTOC測定装置によって測定された比抵抗値との間の比較を各所与のTOC値について実行する少なくとも1つのアルゴリズム、およびTOC分析装置によって与えられる基準比抵抗値に応じてTOC測定装置による比抵抗値を復元する少なくとも1つのアルゴリズムを含む少なくとも1つのプロセッサとを備える、較正装置。
【請求項12】
イオン交換樹脂および/または活性炭の少なくとも1つのカートリッジを備える、請求項11に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−80991(P2011−80991A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−223979(P2010−223979)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】