説明

全稈投入型コンバインの脱穀装置

【課題】稈長の長い脱粒穀稈などの排稈口からの排出を円滑に行えるようにする。
【解決手段】扱室20を形成する前壁体及び後壁体56のそれぞれに扱胴21の中心軸を回転可能に支持する軸支部材59を備えて、扱胴21を、扱胴21の後端が後壁体56に近接するように前壁体と後壁体56とにわたって前後向きに架設し、扱室20の後下部に排稈口23を形成し、少なくとも後壁体56の全壁面領域のうちの扱胴21に突設した複数の扱歯46が上昇移動する際に扱歯46の先端が描く上昇回転軌跡Kaの外側で扱胴21の回転中心P2よりも下側に位置する領域Aaを後向きに張り出させる張出領域Aに設定して、後壁体56に張出領域Aを後向きに張り出させた無底の後向き張出部56Aを形成し、かつ、少なくとも全壁面領域のうちの軸支部材59を配備する領域Acが張出領域Aよりも前側に位置して扱胴21の後端に近接するように後壁体56を形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱室を形成する前壁体及び後壁体のそれぞれに扱胴の中心軸を回転可能に支持する軸支部材を備えて、前記扱胴を、前記扱胴の後端が前記後壁体に近接するように前記前壁体と前記後壁体とにわたって前後向きに架設し、前記扱室の後下部に脱穀処理後の刈取穀稈の前記扱室からの排出を可能にする排稈口を形成した全稈投入型コンバインの脱粒穀稈排出構造に関する。
【背景技術】
【0002】
全稈投入型のコンバインにおいては、扱胴の後端を後壁体に近接させることにより、扱胴と後壁体との間に脱穀処理後の刈取穀稈(以下、脱粒穀稈と称する)が入り込むことを効果的に抑制し、これにより、脱粒穀稈が扱胴の後端と後壁体との間に入り込んで扱胴の中心軸に巻き付く不都合の発生を防止するようにしている。
【0003】
そして、このような全稈投入型のコンバインにおいて、従来では、後壁体の壁面領域の全体を平坦面に形成して、後壁体の全体が前後方向で扱胴の後端に近接するように構成していた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−167686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の構成では、稈長の長い作物を収穫する場合に、扱胴の回転に伴って排稈口の上方まで移動して排稈口に向けて流下する脱粒穀稈などが上昇移動する扱歯に引っ掛かってしまうと、その脱粒穀稈などが遠心力や重力で扱歯から遠心方向に離脱しても、扱胴の後端に近接する後壁体によって脱粒穀稈などの扱歯の移動領域から後方への移動が制限されているために、扱歯の移動領域から外れることができずに再び扱歯に引っ掛かって連れ回るといった現象が生じ易くなる。そのため、脱粒穀稈などが排稈口の上方の領域で滞留して排稈口からの脱粒穀稈などの排出に悪影響を及ぼす不都合を招き易くなっていた。
【0006】
本発明の目的は、稈長の長い作物を収穫する場合においても排稈口からの脱粒穀稈などの排出を円滑に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の課題解決手段では、扱室を形成する前壁体及び後壁体のそれぞれに扱胴の中心軸を回転可能に支持する軸支部材を備えて、前記扱胴を、前記扱胴の後端が前記後壁体に近接するように前記前壁体と前記後壁体とにわたって前後向きに架設し、前記扱室の後下部に脱穀処理後の刈取穀稈の前記扱室からの排出を可能にする排稈口を形成した全稈投入型コンバインの脱粒穀稈排出構造において、
少なくとも前記後壁体の全壁面領域のうちの前記扱胴に突設した複数の扱歯が上昇移動する際に前記扱歯の先端が描く上昇回転軌跡の外側で前記扱胴の回転中心よりも下側に位置する領域を後向きに張り出させる張出領域に設定して、前記後壁体に前記張出領域を後向きに張り出させた無底の後向き張出部を形成し、
かつ、少なくとも前記全壁面領域のうちの前記軸支部材を配備する領域が前記張出領域よりも前側に位置して前記扱胴の後端に近接するように前記後壁体を形成してある。
【0008】
この課題解決手段によると、扱胴の回転に伴って排稈口の上方まで移動して排稈口に向けて流下する脱粒穀稈などが上昇移動する扱歯に引っ掛かったとしても、その脱粒穀稈などが遠心力や重力で扱歯から遠心方向に離脱すると、脱穀処理方向の下手側に移動する後続の脱粒穀稈などにより、扱歯の移動領域から後方(脱穀処理方向下手側)に大きく外れる後向き張出部の内部に押し出されて、上昇移動する扱歯の影響を受けることなく排稈口に向けて流下する。
【0009】
その結果、稈長の長い作物を収穫する場合においても排稈口からの脱粒穀稈などの排出を円滑に行うことができる。
【0010】
又、少なくとも後壁体の全壁面領域のうちの軸支部材を配備する領域が張出領域よりも前側に位置して扱胴の後端に近接することにより、脱粒穀稈が扱胴の後端と後壁体との間に入り込んで扱胴の中心軸に巻き付くことを防止することができる。
【0011】
本発明の第2の課題解決手段では、上記第1の課題解決手段において、
前記後壁体に、前記扱胴の後端に外嵌して前記中心軸への刈取穀稈の巻き付きを防止する円盤状の巻付防止部材を備え、
前記張出領域を、前記全壁面領域のうちの前記巻付防止部材よりも前記扱歯が上昇移動する側の横外側で前記軸支部材の上端から下側に位置する領域に設定してある。
【0012】
この課題解決手段によると、上昇移動する扱歯の間をすり抜けた脱粒穀稈なども、脱穀処理方向の下手側に移動する後続の脱粒穀稈などにより、扱歯の移動領域から後方(脱穀処理方向下手側)に大きく外れる後向き張出部の内部に押し出されて、上昇移動する扱歯の影響を受けることなく排稈口に向けて流下する。
【0013】
その結果、稈長の長い作物を収穫する場合における排稈口からの脱粒穀稈などの排出をより円滑に行うことができる。
【0014】
本発明の第3の課題解決手段では、上記第1又は2の課題解決手段において、
前記後向き張出部を、前記張出領域を含む前後方向視矩形状に形成してある。
【0015】
この課題解決手段によると、例えば上昇移動する扱歯の先端が描く上昇回転軌跡に沿って後向き張出部を部分的に湾曲させる場合に比較して後向き張出部を張出領域よりも広い空間を確保しながら簡単に形成することができる。
【0016】
つまり、構成の簡素化を図りながら、稈長の長い作物を収穫する場合においても排稈口からの脱粒穀稈などの排出を円滑に行うことができる。
【0017】
本発明の第4の課題解決手段では、上記第1の課題解決手段において、
前記後壁体を、その下縁が前記扱歯の先端が描く回転軌跡の下端よりも上方に位置するように形成し、
前記張出領域を、前記全壁面領域のうちの前記後壁体の前記下縁と前記上昇回転軌跡との交点よりも横外側に位置する領域に設定してある。
【0018】
この課題解決手段によると、後壁体の下縁と上昇移動する扱歯の先端が描く上昇回転軌跡との交点よりも横外側に位置する領域において遠心力や重力で扱歯から遠心方向に離脱した脱粒穀稈などや上昇移動する扱歯の間をすり抜けた脱粒穀稈などが、脱穀処理方向の下手側に移動する後続の脱粒穀稈などにより、扱歯の移動領域から後方(脱穀処理方向下手側)に大きく外れる後向き張出部の内部に押し出されて、上昇移動する扱歯の影響を受けることなく排稈口に向けて流下する。
【0019】
つまり、稈長の長い作物を収穫する場合においても排稈口からより多くの脱粒穀稈などを円滑に排出することができる。
【0020】
本発明の第5の課題解決手段では、上記第1の課題解決手段において、
前記張出領域を、前記全壁面領域のうちの前記扱歯の先端が描く回転軌跡の外側に位置する領域に設定してある。
【0021】
この課題解決手段によると、扱歯の先端が描く回転軌跡の外側に位置する領域において遠心力や重力で扱歯から遠心方向に離脱した脱粒穀稈などが、脱穀処理方向の下手側に移動する後続の脱粒穀稈などにより、扱歯の移動領域から後方(脱穀処理方向下手側)に大きく外れる後向き張出部の内部に押し出されて、上昇移動する扱歯の影響を受けることなく排稈口に向けて流下する。
【0022】
その結果、稈長の長い作物を収穫する場合においても排稈口からより多くの脱粒穀稈などを円滑に排出することができる。
【0023】
本発明の第6の課題解決手段では、上記第1の課題解決手段において、
前記後壁体に、前記扱胴の後端に外嵌して前記中心軸への刈取穀稈の巻き付きを防止する円盤状の巻付防止部材を備え、
前記張出領域を、前記全壁面領域のうちの前記巻付防止部材よりも外側に位置する領域に設定してある。
【0024】
この課題解決手段によると、巻付防止部材よりも外側に位置する領域において遠心力や重力で扱歯から遠心方向に離脱した脱粒穀稈などや上昇移動する扱歯の間をすり抜けた脱粒穀稈などが、脱穀処理方向の下手側に移動する後続の脱粒穀稈などにより、扱歯の移動領域から後方(脱穀処理方向下手側)に大きく外れる後向き張出部の内部に押し出されて、上昇移動する扱歯の影響を受けることなく排稈口に向けて流下する。
【0025】
その結果、稈長の長い作物を収穫する場合においても排稈口からより多くの脱粒穀稈などを円滑に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】全稈投入型コンバインの全体左側面図である。
【図2】全稈投入型コンバインの全体平面図である。
【図3】脱穀装置の縦断左側面図である。
【図4】脱穀装置の縦断背面図である。
【図5】脱穀装置の一部縦断背面図である。
【図6】脱穀部の後部の縦断右側面図である。
【図7】脱穀部の後部の横断平面図である。
【図8】別実施形態〔6〕での張出領域を示す脱穀装置の一部縦断背面図である。
【図9】別実施形態〔7〕での張出領域を示す脱穀装置の一部縦断背面図である。
【図10】別実施形態〔8〕での張出領域を示す脱穀装置の一部縦断背面図である。
【図11】別実施形態〔9〕での張出領域を示す脱穀装置の一部縦断背面図である。
【図12】別実施形態〔10〕での張出領域を示す脱穀装置の一部縦断背面図である。
【図13】別実施形態〔11〕での張出領域を示す脱穀装置の一部縦断背面図である。
【図14】別実施形態〔12〕での張出領域を示す脱穀装置の一部縦断背面図である。
【図15】別実施形態〔13〕での張出領域を示す脱穀装置の一部縦断背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る全稈投入型コンバインの脱粒穀稈排出構造を実施するための形態の一例を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1及び図2に示すように、全稈投入型コンバインは、角パイプ材などの複数の鋼材を連結して車体フレーム1を構成し、車体フレーム1における前部の右側領域に搭乗運転部2を形成してある。車体フレーム1の下部には左右一対のクローラ式走行装置3を装備してある。車体フレーム1における左側の前端部には、作業走行時に車体の前方に位置する水稲や麦などの作物の穀稈を刈り取って搬送する刈取搬送部4を、左右向きの第1軸心P1を支点にした昇降揺動が可能となるように連結してある。車体フレーム1の左半部には、刈取搬送部4が搬送する刈り取り後の穀稈(以下、刈取穀稈と称する)を受け入れて脱穀処理を施し、この脱穀処理で得た処理物に選別処理を施す脱穀装置5を搭載してある。車体フレーム1の右後部には、揚送スクリュー6により脱穀装置5から搬出した単粒化穀粒を貯留して籾袋への詰め込みを可能にする袋詰装置7を搭載してある。
【0029】
搭乗運転部2は、その前端部位に立設したフロントパネル8に操縦レバー9などを備えている。搭乗運転部2の左端部位に立設したサイドパネル10に主変速レバー11や副変速レバー12などを備えている。搭乗運転部2の後側部位に運転座席13を配備してある。操縦レバー9は、左右方向に揺動操作すると車体操向用の操作具として機能し、前後方向に揺動操作すると刈取搬送部昇降用の操作具として機能する。
【0030】
左右のクローラ式走行装置3は、操縦レバー9の左右方向への揺動操作に基づいて、それらが等速作動する直進状態と差動する旋回状態とに切り換わるように構成してある。
【0031】
刈取搬送部4は、車体の走行に伴って、その前部の左右両端に配備したデバイダ14により未刈り穀稈を収穫対象の穀稈と収穫対象外の穀稈とに梳き分ける。又、刈取搬送部4の前部上方に配備した回転リール15により収穫対象穀稈の穂先側を後方に向けて掻き込み、刈取搬送部4の底部に装備したバリカン型の切断装置16により収穫対象穀稈の株元側を切断して、収穫対象の穀稈を刈り取る。そして、切断機構16の後方に配備したオーガ17によって刈り取り後の穀稈(以下、刈取穀稈と称する)を左右方向の所定箇所に寄せ集めて後方に送り出し、その所定箇所から脱穀装置5にわたるように架設した掻き上げ搬送式のフィーダ18によって刈取穀稈を脱穀装置5に供給する。
【0032】
刈取搬送部4の昇降揺動は、車体フレーム1とフィーダ18とにわたって架設した油圧式の昇降シリンダ19の伸縮作動で行う。昇降シリンダ19は、操縦レバー9の前後方向への揺動操作に基づいて伸縮作動するように構成してある。つまり、操縦レバー9を前後方向に揺動操作して昇降シリンダ19を伸縮作動させることにより、未刈り穀稈に対する切断機構16の高さ位置を変更する刈り高さ調節などを行うことができる。
【0033】
図1〜7に示すように、脱穀装置5には、フィーダ18が供給する刈取穀稈に脱穀処理を施す脱穀部5A、脱穀処理で得た選別対象の処理物に選別処理を施す選別部5B、及び、選別処理で得た回収対象の処理物を回収する回収部5Cを備えてある。
【0034】
脱穀部5Aは、脱穀装置5の上部に形成した扱室20にバータイプの扱胴21を前後向きの第2軸心P2を支点にして背面視左回りに回転するように配備して構成してある。扱室20の前下部には、フィーダ18が掻き上げ搬送した刈取穀稈の扱室20への供給を可能にする供給口22を形成してある。扱室20の後下部には、脱穀処理後の刈取穀稈(以下、脱粒穀稈と称する)の扱室20からの排出を可能にする排稈口23を形成してある。扱室20は、扱胴21を支持する前支持板24と後支持板25、扱胴21の上部を上方から覆う上部カバー26、及び、扱胴21を下方から覆う前後方向視U字状の受網27などによって区画形成してある。
【0035】
選別部5Bは、後端部に備えた偏心カム式の駆動機構28が作動することで前後方向に選別揺動する揺動選別機構29を受網27の下方に配備してある。又、左右向きの第3軸心P3を支点にして左側面視左回りに回転することで選別風を発生させる唐箕30を揺動選別機構29の前下方に配備してある。揺動選別機構29は、選別揺動しながら受網27から漏下した処理物を受け止めることで、受け止めた処理物を選別対象の処理物として篩い選別する。唐箕30は、その回転で発生させた選別風を受網27から漏下した処理物や揺動選別機構29を漏下する処理物に供給することで、それらの処理物を選別対象の処理物として風力選別する。
【0036】
回収部5Cは、揺動選別機構29の選別方向上手側の下方に1番回収部31を形成してある。又、揺動選別機構29の選別方向下手側の下方に2番回収部32を形成してある。1番回収部31は、側面視底窄まり形状に形成してあり、揺動選別機構29の選別方向上手側から漏下した単粒化穀粒を1番物として底部に流下案内する。1番回収部31の底部には、1番物搬出用の1番スクリュー33を左右向きに配備してあり、この1番スクリュー33により、1番回収部31の底部に流下した1番物を、1番スクリュー33の右端部に連通接続した揚送スクリュー6に搬送する。2番回収部32は、側面視底窄まり形状に形成してあり、揺動選別機構29の選別方向下手側から漏下した枝梗付き穀粒などを2番物として底部に流下案内する。2番回収部32の底部には、2番物搬出用の2番スクリュー34を左右向きに配備してあり、この2番スクリュー34により、2番回収部32の底部に流下した2番物を、2番スクリュー34の右端部に連通接続した2番還元機構35に搬送する。
【0037】
2番還元機構35は、2番スクリュー34が搬送した2番物に再び脱穀処理を施す再処理部(図示せず)を備え、この再処理部による脱穀処理後の2番物を揚送して揺動選別機構29に還元する。
【0038】
図3〜7に示すように、扱胴21は、その中心軸36を前支持板24と後支持板25とにわたって中心軸36の軸心である第2軸心P2を中心にして回転するように架設し、この中心軸36に掻込部37と扱き処理部38とを第2軸心P2を中心にして一体回転するように備えて構成してある。
【0039】
掻込部37は、円錐台状に形成した胴部分39を備え、この胴部分39の外周面に2枚の螺旋歯40を溶接してある。これにより、掻込部37は、前後向きの第2軸心P2を支点にして背面視左回りに回転することにより、フィーダ18が搬送した刈取穀稈の全体を、2枚の螺旋歯40により供給口22から扱室20の内部に掻き入れて扱き処理部38と受網27との間の扱き処理空間S1に供給するように構成してある。胴部分39における短径側の端部には、円盤状の前壁部材41を中心が一致するように溶接してある。
【0040】
扱き処理部38は、円盤状に形成した第1中壁部材42と第2中壁部材43と後壁部材44とを備えている。これらの壁部材42〜44は、第2軸心P2を中心にして前後方向に設定間隔をあけて並べた状態で中心軸36に溶接してある。これらの壁部材42〜44の外周部には、複数(例えば6本)の扱歯支持部材45を、中心軸36に沿う前後向きの姿勢で、かつ、中心軸36からの距離が等距離になる状態で、扱胴21の周方向に一定間隔をあけて並ぶように連結してある。各扱歯支持部材45には、複数の扱歯46を、扱歯支持部材45から扱胴21の外方に向けて突出する姿勢で、前後方向に設定間隔をあけて並ぶように配備してある。扱歯支持部材45には、丸棒鋼材、角棒鋼材、角パイプ鋼材、アングル材、又はチャンネル材などの棒状部材を採用することができる。各扱歯46には、丸棒鋼材、角棒鋼材、丸パイプ材、又は角パイプ材などの棒状部材を採用することができる。
【0041】
つまり、扱き処理部38は、受網27との間の扱き処理空間S1に連通する内部空間S2を備えた籠状で、かつ、外方に向けて突出する複数の扱歯46を扱き処理部38の周方向と前後方向とに設定間隔をあけて整列した状態で配備するように構成してある。
【0042】
これにより、扱き処理部38は、前後向きの第2軸心P2を支点にして背面視左回りに回転することにより、受網27との間の扱き処理空間S1に位置する刈取穀稈に扱歯支持部材45及び扱歯46の打撃や扱歯46の梳き込みなどによる脱穀処理を施し、この脱穀処理で得た処理物の内部空間S2への入り込みを許容し、扱き処理空間S1の処理物と内部空間S2の処理物とを攪拌しながら、これらの処理物に扱歯支持部材45及び扱歯46の打撃や扱歯46の梳き込みなどによる脱穀処理を施すようになる。
【0043】
そして、内部空間S2を備えることにより、大量の刈取穀稈を扱室20に供給した場合であっても、その内部空間S2を脱穀処理用の処理空間に使用できることから、処理空間での処理物の滞留や処理空間の飽和を回避することができる。これにより、処理物の滞留や処理空間の飽和に起因して十分な脱穀処理が行われないまま処理物が受網27から漏下する、あるいは、脱穀処理に要する負荷が増大して扱胴21に対する伝動系が損傷する、などの不都合の発生を未然に回避することができる。
【0044】
又、複数の扱歯46だけでなく6本の扱歯支持部材45までもが、扱室内の処理物に作用する扱き処理部材として機能することから、脱穀性能や脱穀効率の向上を図ることができる。
【0045】
第1中壁部材42は、扱き処理部38の前端に位置するように中心軸36に溶接してあり、第1中壁部材42の外周部に、各扱歯支持部材45の一端部とともに掻込部37の後端をボルト連結してある。第2中壁部材43は、扱き処理部38の前後中間部に位置するように中心軸36に溶接してあり、第2中壁部材43の外周部に各扱歯支持部材45の前後中間部をボルト連結してある。後壁部材44は、扱き処理部38の後端に位置するように中心軸36に溶接してあり、第2中壁部材43の外周部に各扱歯支持部材45の他端部をボルト連結してある。
【0046】
各扱歯支持部材45は、その前後方向を扱胴21の前後方向と一致させた通常姿勢と、その前後方向を扱胴21の前後方向と逆にした反転姿勢とに向き変更可能に構成してある。そして、隣り合う扱歯支持部材45の前後向きが逆になるように、第1及び第2中壁部材42,43並びに後壁部材44にボルト連結してある。
【0047】
各扱歯46は、隣り合う扱歯支持部材45の前後向きを逆にした場合に、隣り合う扱歯支持部材45の扱歯46と前後方向に半ピッチ分だけ位置ずれした状態で位置するように配置設定してある。
【0048】
図3に示すように、扱室20の前下部には、供給口22に供給された刈取穀稈を受け止めて、掻込部37による刈取穀稈の扱き処理空間S1への掻き入れ供給を補助する補助板47を配備してある。
【0049】
図3〜7に示すように、受網27は、格子状に形成したコンケーブ受網であり、扱胴21との間の扱き処理空間S1に供給された刈取穀稈を受け止めて扱胴21の回転による脱穀処理を補助し、この脱穀処理で得た単粒化穀粒や枝梗付き穀粒、あるいは、脱穀処理で発生した稈屑などを下方の揺動選別機構29に向けて漏下させる一方で、脱粒穀稈などの揺動選別機構29への漏下を防止する。
【0050】
上部カバー26は、左右中央側ほど上方に位置するように湾曲する湾曲部48Aを備えた天板48の前端に前壁板49を溶接し、天板48の後端に後壁板50を溶接して構成してある。そして、天板48の左端部48Bを、角パイプ材などの複数の鋼材を連結して構成した脱穀装置5の固定フレーム51に複数のヒンジ52を介して連結することにより、前後向きの第4軸心P4を支点にした開閉操作が可能となるように構成してある。天板48の右端部48Cには、固定フレーム51に螺合することで上部カバー26を閉じ姿勢で固定する複数の固定具53を備えている。湾曲部48Aの内部には、扱胴21が前後向きの第2軸心P2を支点にして背面視左回りに回転するのに伴って、扱室20の上部に移動した処理物や脱粒穀稈を脱穀処理方向下手側に案内する複数の送塵弁54を、前後方向に設定間隔をあけて並ぶように配備してある。
【0051】
前支持板24は、閉じ操作した上部カバー26の前壁板49を受け止めるように固定フレーム51の前端上部に溶接してある。後支持板25は、閉じ操作した上部カバー26の後壁板50を受け止めるように固定フレーム51の後端上部に溶接してある。そして、前支持板24と上部カバー26の前壁板49により前壁体55を構成し、後支持板25と上部カバー26の後壁板50により後壁体56を構成してある。
【0052】
前支持板24の左右中央部には、扱胴21の中心軸36の上方からの差し込みを可能にする凹部(図示せず)を、その上端から中央部にわたって切り欠き形成してある。前支持板24の中央部には、中心軸36を回転可能に支持する軸支部材57と、扱胴21の前壁部材41に外嵌して刈取穀稈の中心軸36への巻き付きを防止する円盤状の巻付防止部材58とを共締め連結してある。
【0053】
後支持板25の左右中央部には、扱胴21の中心軸36の上方からの差し込みを可能にする凹部25Aを、その上端から中央部にわたって切り欠き形成してある。後支持板25の中央部には、中心軸36を回転可能に支持する軸支部材59と、扱胴21の後壁部材44に外嵌して脱粒穀稈の中心軸36への巻き付きを防止する円盤状の巻付防止部材60とを共締め連結してある。
【0054】
前側の軸支部材57は、その内部に中心軸36を支持するベアリング(図示せず)や中心軸36への伝動用のベベルギア(図示せず)などを備えた伝動ケースである。後側の軸支部材59は、その内部に備えたベアリング(図示せず)を介して中心軸36を支持するベアリングホルダである。
【0055】
扱胴21は、その前端に備えた前壁部材41が前壁体55に近接して前側の巻付防止部材60に内嵌し、又、その後端に備えた後壁部材44が後壁体56に近接して後側の巻付防止部材60に内嵌するように、前壁体55と後壁体56とにわたって架設した状態で扱室20に配備してある。
【0056】
供給口22は、扱室20の前下部における受網27の前端部を支持する第1支持壁部材61と前壁体55との間に扱胴21の掻込部37が臨むように形成してある。排稈口23は、扱室20の後下部における受網27の後端部を支持する第2支持壁部材62と後壁体56との間に扱胴21における扱き処理部38の後端部分が臨むように形成してある。
【0057】
図1〜3及び図5〜7に示すように、脱穀装置5の後端下部には、板金製の排稈カバー63を排稈口23を後方から覆うように配備してある。排稈カバー63は、固定フレーム51に連結する左右の側板64に、天板部65Aを備えるように屈曲形成した蓋板65を溶接して、排稈口23から流出した脱粒穀稈などを、篩い選別及び風力選別により揺動選別機構29の後方に搬出した稈屑などとともに下方に案内し、下部に形成した排出口66から外部に排出するように形成してある。
【0058】
図3〜7に示すように、後支持板25は、その下縁25aが後側の巻付防止部材60の下端よりも上方に位置するように形成してある。後支持板25の右下部分には、前後方向視で矩形状の凹部25Bを後支持板25の右端及び下端から内部に向けて切り欠き形成し、この凹部25Bを後方から覆う板金製のカバー部材67を溶接してある。カバー部材67は、凹部25Bに対向する矩形状の蓋板部67A、及び、蓋板部67Aから前方に延出する天板部67Bと左右の側板部67C、67Dとを有するように屈曲形成してある。これにより、後壁体56の右下部位に前後方向視矩形状で後向きに張り出す無底の後向き張出部56Aを備えてある。
【0059】
凹部25B及びカバー部材67は、凹部25Bの左端縁25b及びカバー部材67の左側板部67Cの位置が、後支持板25の下縁25aと後側の巻付防止部材60の外周縁60aとが交差する2つの交点Pa,Pbのうちの右側(扱歯46が上昇移動する側)の交点Pbの位置と前後方向視で略一致するように、言い換えると、凹部25Bの左端縁25b及びカバー部材67の左側板部67Cが巻付防止部材60の右端よりも扱胴21の回転中心(第2軸心P2)側に位置するように設定して、カバー部材67の左端部に、巻付防止部材60の右端から扱胴21の回転中心側(左側)に入り込む空間を有するように形成してある。又、凹部25Bの上端縁25c及びカバー部材67の天板部67Bの位置が、軸支部材59の上端59aの位置と前後方向視で略一致するように設定してある。
【0060】
つまり、少なくとも後壁体56の全壁面領域のうちの扱歯46が上昇移動する際に扱歯46の先端が描く上昇回転軌跡Kaの外側で扱胴21の回転中心(第2軸心)P2よりも下側に位置する領域の一例である扱歯46の先端が描く上昇回転軌跡Kaの外側で扱胴21の回転中心P2から下側に位置する第1領域Aaを含み、かつ、後壁体56の全壁面領域のうちの巻付防止部材60よりも右外側(扱歯46が上昇移動する側の横外側)で軸支部材59の上端59aの近くから下側に位置する第2領域Abの略全域を含む前後方向視で上昇回転軌跡Kaと巻付防止部材60の外周縁60aとを跨ぐ矩形状の領域(凹部25Bを形成した領域)を、後向きに張り出す張出領域Aに設定して無底の後向き張出部56Aに形成することにより、扱胴21の後端から後方に離間させて、第2支持壁部材62と後壁体56との間に形成する排出空間S3のうちの前後方向視で張出領域Aに対向する空間部分S3aを後方に拡張させてある。
【0061】
又、後壁体56の全壁面領域のうち、張出領域Aを除く他の領域(軸支部材59を配備する第3領域Acを含む領域)を平坦面に形成して扱胴21の後端に近接させて、後壁体56に備えた巻付防止部材60を扱胴21の後端に外嵌させるようにしてある。
【0062】
後向き張出部56Aは、排稈カバー63の前上端部に形成した凹部63Aを介して排稈カバー63と連通するように、後向き張出部56Aの下端を排稈カバー63の前上端部に接続してある。又、後支持板25の下端部には、排稈カバー63の凹部63Aにおいて後向き張出部56Aと連通しない領域を塞ぐように延出する延出部25C〜25Eを形成してある。
【0063】
以上の構成から、扱胴21の前後向きの第2軸心P2を支点にした背面視左回りの回転に伴って排出空間S3まで移動した脱粒穀稈や稈屑などが、上昇移動する扱歯46に引っ掛かって連れ回るようになったとしても、遠心力や重力で扱歯46から遠心方向に離脱すると、脱穀処理方向の下手側に移動する後続の脱粒穀稈や稈屑などにより、扱歯46の移動領域から後方(脱穀処理方向下手側)に大きく外れる後向き張出部56Aの内部に押し出されて、後向き張出部56Aの内部から排稈カバー63の内部に流下し、排稈カバー63の下部に形成した排出口66から外部に流出するようになる。
【0064】
又、後向き張出部56Aに天板部67Bを備えたことで、後向き張出部56Aの内部において扱歯46の移動領域から後方(脱穀処理方向下手側)に大きく外れることができずに扱歯21と連れ回ろうとする脱粒穀稈や稈屑などが発生しても、後向き張出部56Aの天板部67Bが、それらの脱粒穀稈や稈屑などを受け止めて扱歯21との連れ回りを阻止するようになることから、扱歯21と連れ回ろうとする脱粒穀稈や稈屑などの下方への流下を促すことができる。
【0065】
つまり、例えば後壁体56の壁面領域の全体を平坦面に形成して後壁体56の全体を前後方向で扱胴21の後端に近接させるようにすると、稈長の長い作物を収穫する場合においては、上昇移動する扱歯46に引っ掛かって連れ回る脱粒穀稈や稈屑などが遠心力や重力などで扱歯46から遠心方向に離脱しても、脱粒穀稈や稈屑などの扱歯46の移動領域から後方への移動が後壁体56により制限されていることから、扱歯46から遠心方向に離脱した脱粒穀稈や稈屑などが扱歯46の移動領域から外れることができずに再び扱歯46に引っ掛かって連れ回るといった現象が生じ易くなり、これにより、脱粒穀稈や稈屑などが排出空間S3に滞留する不都合を招き易くなっていたのであるが、前述した実施形態では、排出空間S3のうちの張出領域Aに対向する空間部分S3aを後方に拡張して、上昇移動する扱歯46に脱粒穀稈や稈屑などが引っ掛かって連れ回る現象を生じ難くしていることから、排出空間S3における脱粒穀稈や稈屑などの滞留を防止することができ、脱粒穀稈や稈屑などの外部への排出を促進させることができる。
【0066】
又、後壁体56の位置を後方側に変更する場合のように、後壁体56の位置変更とともに扱胴21の全長を長くする、あるいは、中心軸36への脱粒穀稈の巻き付きを防止するために後側の巻付防止部材60の前後長さを長くするといった大掛かりな改良を不要にできることから、脱穀装置5の大型化や重量化などを防止することができる。
【0067】
〔別実施形態〕
【0068】
〔1〕全稈投入型のコンバインとしては、袋詰装置7に代えて、穀粒タンクと穀粒タンクからの穀粒の排出を可能にするスクリュー式の穀粒排出装置とを備えるように構成したものであってもよい。又、排稈口23から流下した脱粒穀稈を細断する細断装置(チョッパ)を備えるものであってもよい。
【0069】
〔2〕扱胴21としては、円筒状に形成した胴体部材の外周に螺旋歯や扱歯などを装備して構成したドラムタイプのものであってもよい。又、排稈口23に臨む扱胴21の後端部に配備する扱歯46が、その突出端側ほど扱胴回転方向下手側に位置する後退角を有するように構成して、扱胴21の後端部に配備する扱歯46からの脱粒穀稈などの離脱を促進させるようにしたものであってもよい。更に、前後向きの第2軸心P2を支点にして背面視右回りに回転するように構成したものであってもよい。
【0070】
〔3〕本願発明における、少なくとも後壁体56の全壁面領域のうちの扱歯46が上昇移動する際に扱歯46の先端が描く上昇回転軌跡Kaの外側で扱胴21の回転中心P2よりも下側に位置する領域とは、上記の実施形態で例示した、後壁体56の全壁面領域のうちの扱歯46の先端が描く上昇回転軌跡Kaの外側で扱胴21の回転中心P2から下側に位置する第1領域Aa、に限定されるものではなく、例えば、後壁体56の全壁面領域のうちの扱歯46の先端が描く上昇回転軌跡Kaの外側で軸支部材59の下端から下側又は下端よりも下側に位置する領域であってもよい。又、後壁体56の全壁面領域のうちの扱歯46の先端が描く上昇回転軌跡Kaから上昇回転軌跡側に位置する後壁体56の左右一側端(上記の実施形態では右端)に至るまでの間で軸支部材59の下端から下側に位置する領域であってもよい。
【0071】
〔4〕後壁体56の全壁面領域のうちの扱歯46の先端が描く上昇回転軌跡Kaから上昇回転軌跡側に位置する後壁体56の左右一側端(上記の実施形態では右端)に至るまでの間で軸支部材59の下端から下側に位置する領域を含む、例えば、後壁体56の全壁面領域のうちの上昇回転軌跡側に位置する巻付防止部材60の横側端(上記の実施形態では右側端)から上昇回転軌跡側に位置する後壁体56の左右一側端(上記の実施形態では右端)に至るまでの間で軸支部材59の下端から下側に位置する領域(前後方向視で上昇回転軌跡Kaを跨ぐ領域)を張出領域Aに設定して、この領域を後向きに張り出させた無底の後向き張出部56Aを後壁体56に形成するようにしてもよい。
【0072】
〔5〕後向き張出部56Aを、その扱胴21の回転中心P2から離れる側の左右一側端(上記の実施形態では右側端)が扱歯46の先端が描く上昇回転軌跡Kaと上昇回転軌跡側に位置する後壁体56の左右一側端(上記の実施形態では右側端)との間に位置して、前後方向視で上昇回転軌跡Kaを跨ぐ又は上昇回転軌跡Kaと巻付防止部材60の外周縁60aとを跨ぐ矩形状に形成したものであってもよい。
【0073】
〔6〕図8に示すように、後壁体56の全壁面領域のうちの扱歯46が上昇移動する際に扱歯46の先端が描く上昇回転軌跡Kaの外側で扱胴21の回転中心P2から下側に位置する第1領域Aaのみを張出領域Aに設定して、この第1領域Aaのみを後向きに張り出させた無底の後向き張出部56Aを後壁体56に形成するようにしてもよい。
【0074】
〔7〕図9に示すように、後壁体56の全壁面領域のうちの巻付防止部材60よりも右外側(扱歯46が上昇移動する側の横外側)で軸支部材59の上端59aの近く(上端59aより少し下側又は上端59aより少し上側)から下側に位置する第2領域Ab(少なくとも前述した第1領域Aaを含む領域)を張出領域Aに設定して、この第2領域Abのみを後向きに張り出させた無底の後向き張出部56Aを後壁体56に形成するようにしてもよい。
【0075】
〔8〕図10に示すように、後壁体56の全壁面領域のうちの巻付防止部材60よりも右外側(扱歯46が上昇移動する側の横外側)で軸支部材59の上端59aから下側に位置する第4領域Ad(少なくとも前述した第1領域Aaを含む領域)を張出領域Aに設定して、この第4領域Adのみを後向きに張り出させた無底の後向き張出部56Aを後壁体56に形成するようにしてもよい。
【0076】
〔9〕図11に示すように、後壁体56の全壁面領域のうちの扱歯46が上昇移動する際に扱歯46の先端が描く上昇回転軌跡Kaの外側で軸支部材59の上端59aから下側に位置する第5領域Ae(少なくとも前述した第1領域Aaを含む領域)を張出領域Aに設定して、この張出領域Aのみを後向きに張り出させた無底の後向き張出部56Aを後壁体56に形成するようにしてもよい。
【0077】
〔10〕図12に示すように、後壁体56の全壁面領域のうちの巻付防止部材60よりも右外側(扱歯46が上昇移動する側の横外側)で扱胴21の回転中心P2から下側に位置する第6領域Af(少なくとも前述した第1領域Aaを含む領域)を張出領域Aに設定して、この張出領域Aのみを後向きに張り出させた無底の後向き張出部56Aを後壁体56に形成するようにしてもよい。
【0078】
〔11〕図13に示すように、後壁体56の全壁面領域のうちの後壁体56の下縁(後支持板25の下縁)25aと扱歯46の先端が描く回転軌跡Kのうちの上昇移動の際に描く上昇回転軌跡Kaとの交点Pcよりも右外側に位置する第7領域Ag(少なくとも前述した第1領域Aaを含む領域)を張出領域Aに設定して、この張出領域Aを後向きに張り出させた無底の後向き張出部56Aを後壁体56に形成するようにしてもよい。
【0079】
〔12〕図14に示すように、後壁体56の全壁面領域のうちの扱歯46の先端が描く回転軌跡Kの外側に位置する第8領域Ah(少なくとも前述した第1領域Aaを含む領域)を張出領域Aに設定して、この張出領域Aを後向きに張り出させた無底の後向き張出部56Aを後壁体56に形成するようにしてもよい。
【0080】
〔13〕図15に示すように、後壁体56の全壁面領域のうちの巻付防止部材60よりも外側に位置する第9領域Ai(少なくとも前述した第1領域Aaを含む領域)を張出領域Aに設定して、この張出領域Aを後向きに張り出させた無底の後向き張出部56Aを後壁体56に形成するようにしてもよい。
【0081】
〔14〕巻付防止部材60を扱胴21の後端に配備した後壁部材44に内嵌させて中心軸36への刈取穀稈の巻き付きを防止するように構成する場合には、後壁部材44よりも外側に位置する領域の全域又は一部を張出領域Aに設定して、この張出領域Aを後向きに張り出させた無底の後向き張出部56Aを後壁体56に形成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に係る全稈投入型コンバインの脱粒穀稈排出構造は、バータイプやドラムタイプなどの扱胴により脱穀処理を施した後の刈取穀稈を、扱室の後下部に形成した排稈口から排出するように構成した全稈投入型コンバインに適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
20 扱室
21 扱胴
23 排稈口
36 中心軸
46 扱歯
55 前壁体
56 後壁体
56A 後向き張出部
57 軸支部材
59 軸支部材
59a 上端
60 巻付防止部材
A 張出領域
Aa 領域(第1領域)
Ac 領域(第3領域)
Ad 領域(第4領域)
Ag 領域(第7領域)
Ah 領域(第8領域)
Ai 領域(第9領域)
K 回転軌跡
Ka 上昇回転軌跡
P2 回転中心
Pc 交点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室を形成する前壁体及び後壁体のそれぞれに扱胴の中心軸を回転可能に支持する軸支部材を備えて、前記扱胴を、前記扱胴の後端が前記後壁体に近接するように前記前壁体と前記後壁体とにわたって前後向きに架設し、前記扱室の後下部に脱穀処理後の刈取穀稈の前記扱室からの排出を可能にする排稈口を形成した全稈投入型コンバインの脱粒穀稈排出構造であって、
少なくとも前記後壁体の全壁面領域のうちの前記扱胴に突設した複数の扱歯が上昇移動する際に前記扱歯の先端が描く上昇回転軌跡の外側で前記扱胴の回転中心よりも下側に位置する領域を後向きに張り出させる張出領域に設定して、前記後壁体に前記張出領域を後向きに張り出させた無底の後向き張出部を形成し、
かつ、少なくとも前記全壁面領域のうちの前記軸支部材を配備する領域が前記張出領域よりも前側に位置して前記扱胴の後端に近接するように前記後壁体を形成してある全稈投入型コンバインの脱粒穀稈排出構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−74898(P2013−74898A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−279993(P2012−279993)
【出願日】平成24年12月21日(2012.12.21)
【分割の表示】特願2010−30265(P2010−30265)の分割
【原出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】