説明

全自動洗濯機の電源スイッチ取り付け構造

【課題】 全自動洗濯機の運転操作部の回路基板の検査効率の向上を図ることにある。
【解決手段】 電源スイッチ20を、アクチュエータの保持板6に取り付けことにより、電源スイッチ20がしっかりと押せて、検査が効率良く行える。さらに、その電源スイッチ20の取り付けをアクチュエータの保持板6に対して行うことにより、制御パネル4と回路基板7との間で考慮すべき設計公差は、1)操作パネル4とアクチュエータ5との間、2)アクチュエータの保持板6と電源スイッチ20との間の二つだけとなり、従来のように四段の公差を必要とした場合より設計が容易で、その組み立て結果も精度の高いものとなる。従って、検査効率の向上に止まらず、完成品としても、電源スイッチ20の押圧がスムーズな全自動洗濯機の操作部を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は全自動洗濯機の操作部に設けられる電源スイッチの取り付け構造に係り、詳しくは、その操作性向上のための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、一般的な全自動洗濯機の外観を示した模式図である。図中、符号1を付した部分が洗濯機本体(外箱)であり、その上面にトップカバー2と蓋3が設けられている。そして、トップカバー2の上面手前側が、ユーザーがスイッチ操作を行うための運転操作部であって、そこに操作パネル4が配置されている。
【0003】
この操作パネル4の下部、本体1の内部に、回路基板が配設されており、その回路基板には、操作パネル4上の各操作内容を指示した押圧部に対応する運転制御用のスイッチが搭載されており、回路基板に電気を供給するための電源スイッチが併設されている。
【0004】
ところで、そのような操作部において、従来、運転制御用のスイッチと電源スイッチは、それぞれ専用の取り付け部品を介して洗濯機本体に個別に取り付けられていた。従って、回路基板と電源スイッチとの取り付けに、それぞれ専用の取り付け部品を要し、さらに、別個の取り付け作業を要し、非常に非効率であるという問題があった。
【0005】
そこで、下記の公知文献(特許文献1)では、そのような問題点を解消すべく、回路基板を取り付ける回路基板取り付け部と、電源スイッチを取り付ける電源スイッチ取り付け部とを一体成形で形成し、その一体成形したものを洗濯機本体に、取り付けケースを介して取り付けるようにしている。
【0006】
このようにしたので、回路基板と電源スイッチとが一つの取り付けケースによって洗濯機本体に同時に取り付けることができるので、それらの本体への取り付ける際の部品点数の削減や作業の簡略化を図り、製造コストの低減につながっている。
【特許文献1】特開平8−164296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記公知文献に開示された電源スイッチの取り付け構造においては、以下のような問題がある。
【0008】
通常、回路基板の電気的検査は、回路基板をその収納ケースに収納する前の、回路基板の組み立て工程において行う。
【0009】
それは、回路基板を収納ケースに収納した後で電気検査を行うようにすれば、その時点で導通不良などの電気的欠陥が見つかった場合、その不良回路基板が取り付けられた収納ケースが無駄になる。また、収納ケースを再使用するにしても、その収納ケースから不良回路基板を取り外すのに手間がかかり、製造工程の大幅な効率低下を招くことになるからである。
【0010】
そこで、今述べたように、回路基板の電気的検査は、回路基板をその収納ケースに収納する前の、回路基板の組み立て工程において行うのであるが、上記公知文献に開示されている電源スイッチの取り付け構造にあっては、その回路基板の組み立ておよび検査工程の時点では、電源スイッチは回路基板には機械的に固定されておらず、回路基板をその収納ケースに収納した後、その収納ケースに取り付けるようになっている。
【0011】
従って、電気的検査を行う場合、電源スイッチは宙ぶらりんの状態で押しづらく、検査工程の作業効率の低下を招くことになっていた。
【0012】
そこで、本発明は、上記全自動洗濯機の運転操作部において、回路基板の組立工程で行われる電気的検査が効率よく行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、電源スイッチを、前記アクチュエータの保持板に取り付けるようにしたのである。従って、収納ケースに収納する前の電気的検査において、電源スイッチがしっかりと押せる。すなわち、検査が効率良く行える。ここで、電源スイッチの取り付けをアクチュエータの保持板に対して行ったのは以下のような理由による。
【0014】
近年では、コストダウンを目的として、回路基板に搭載するスイッチは小型のものが使用されるのが一般的であるが、小型ゆえ、そのままでは、その押圧面(上面)と操作パネルとの間に空間が生じるので、それを穴埋めするために、そのスイッチの押圧面と操作パネルとの間にアクチュエータを介在させる必要がある。
【0015】
その際、上記公知文献に開示された発明のように、電源スイッチを回路基板の収納ケースに固定している場合には、この操作部の設計にあたって、以下のような公差を考慮する必要がある。
【0016】
すなわち、1)操作パネルとアクチュエータとの間の公差、2)リフレクタと回路基板との間の公差、および3)回路基板と回路基板の収納ケースとの間の三つの公差と、それらに加えて、4)回路基板収納ケースに対する電源スイッチの取り付け公差の計四つの公差である。
【0017】
従って、それらの公差を考慮した設計がうまく行かないと、公差の累積によって、電源スイッチがスムーズに押圧できないか、もしくは、全く押圧できなくなる、といった不具合が生じていた。
【0018】
しかしながら、本発明のように、電源スイッチの取り付けをアクチュエータの保持板に対して行うようにすると、制御パネルと回路基板との間で考慮すべき設計公差は、1)操作パネルとアクチュエータとの間、2)アクチュエータの保持板と電源スイッチとの間の二つだけとなり、それら二つの公差を考慮するだけの設計でよい。
【0019】
そうすると、従来のように四段の公差を必要とした場合より設計が容易で、その組み立て結果も精度の高いものとなる。
【0020】
従って、先述したように、回路基板の検査工程において、電源スイッチを何らかのものに固定してその押圧をスムーズにして検査効率の向上を図るといったことに止まらず、その取り付け対象をアクチュエータ保持部材にすることにより、電源スイッチの取り付けが、それを、回路基板の収納ケースに対して行っていた従来に比べて、累積公差の少ない、簡易かつ正確な設計ができる。
【0021】
その際、その電源スイッチの上記アクチュエータの保持板への取り付け構造として、そのアクチュエータの保持板の下面に、対向する一対の可尭性の帯体を垂下し、その対の帯体の下端に、互いに相手の帯に向かう向きの爪を設けておき、電源スイッチをその対の帯の間で挟持するとともに、その下端の爪で落下を阻止するようにした構成とすれば、電源スイッチの取り付け、取り外しが容易であり、組み立て工程での作業効率が高くなると同時に、完成品となった後も、電源スイッチが故障した時、その取替えが容易であるという利点がある。
【0022】
また、その際、電源スイッチを下支えする構造を設けるようにすれば、電源スイッチを安定して押圧することができ、その電源スイッチを下支えする構造を上記アクチュエータ保持板や上記回路基板の収納ケースに一体化した構成とすれば、その下支え構造形成のために、新たな部品を作製する必要がない。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記のように構成したので、回路基板をその収納ケースに収納する前の回路基板組み立て工程において電源スイッチを安定した状態で押圧することができ、効率的な検査を行うことができる。
【0024】
加えて、その電源スイッチの取り付けをアクチュエータの保持板に対して行うようにしたので、制御パネルと回路基板との間で考慮すべき設計公差は、1)操作パネルとアクチュエータとの間、2)アクチュエータの保持板と電源スイッチとの間の二つだけでよくなり、通常のような取り付け方で四段の公差を必要とした場合より設計が容易で、その組み立て精度も高いものとなる。
【0025】
従って、前記した回路基板の組立工程における電源スイッチの安定した操作だけでなく、回路基板に対する電源スイッチの取り付けが精度高く行われるので、完成品としても、電源スイッチの押圧がスムーズな全自動洗濯機の操作部を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。図1は、第1の実施形態の全自動洗濯機の操作部の構成要素を分解して示したものである。図1(a)は操作部の操作パネルを省いた状態の平面図、(b)は(a)の線A―Aに沿う断面を、操作パネル4を装着した状態で示し、(c)は(a)の右側面図の一部を示したものである。
【0027】
図1(b)に示すように、本実施形態では、操作パネル4の直下に、アクチュエータ5を擁したアクチュエータ保持板6が配設されており、さらに、このアクチュエータ保持板6の直下に回路基板7が配設され、その回路基板7が回路基板収納ケース8の中に収納されている。
【0028】
回路基板7は、樹脂で形成されたアクチュエータ保持板6の下面から一体化して垂下された(樹脂の)帯状の保持部材9で幅方向に挟持されるとともに、保持部材9の下端の係止爪9aの部分に係止されて取り付けられており、回路基板7の表面には、それがその保持部材9に取り付けられた状態で、アクチュエータ保持板6の各アクチュエータ5に対応する位置に運転制御用のスイッチ10が取り付けられている。
【0029】
また、アクチュエータ保持板6の図の右端の回路基板収納ケース8から突出した部分には、その突出部の下面から図の左右方向に対向する一対の(樹脂の)帯状の保持部材11が垂下されており、その下端には係止爪11aが設けられている。この対の保持部材11の対向距離は電源スイッチ20(マイクロスイッチ)の厚みにほぼ等しい(僅かに大きい)寸法を成しており、電源スイッチ20はその厚み方向でこの対の保持部材11に狭持され、その下端の係止爪11aに係止されて取り付けられている。
【0030】
以上、説明したように、本実施形態では、電源スイッチをアクチュエータの保持板に取り付けたので、収納ケースに収納する前の電気的検査において、電源スイッチがしっかりと押すことができる。
【0031】
それとともに、この電源スイッチの取り付けをアクチュエータの保持板に対して行ったのは、先述したように、そのことによって、制御パネル4と回路基板7との間で考慮すべき設計公差は、1)操作パネルとアクチュエータとの間、2)アクチュエータの保持板と電源スイッチとの間の二つだけでよく、従来のように四段の公差を必要とした場合より設計が容易で、その組み立て結果も精度の高いものとなる。
【0032】
従って、回路基板に対する電源スイッチの取り付けにズレが生じて、電源スイッチの押圧がスムーズでなくなる、あるいは押すことすらできなくなる、といった事態の発生を格段に少なくすることができる。
【0033】
(第2の実施形態)
図2は本発明の第2の実施形態を示したものである。第2の実施形態は、第1の実施形態に対し、電源スイッチ20の取り付け構造について、さらにそれを下支えする構造を加えたものである。
【0034】
図2(a)は図1(b)から操作パネル4を除外して描いたものであるが、それ以外に図1(b)と異なるのは、電源スイッチ20の取り付け部である。図2(b)は、(a)の側面の一部であり、図2(c)は、図2(a)から電源スイッチ20と回路基板7と、回路基板収納ケース8を取り除いた状態を示したものである。(d)は(c)の側面の一部を示したものである。
【0035】
この図2においては、図1(b)におけるスイッチ取り付け用の保持部材11に加えて、さらに電源スイッチ20を下支えする支持部材12が設けられている。この支持部材12は電源スイッチ20を直接保持している先述の対の保持部材11の対向面に平行な面内にコ字の帯状の部材が垂下された形で配設されており、電源スイッチ20は、保持部材11で直接に保持された上で、そのコ字の内部によっても下支えされるようになっている。従って、電源スイッチ20を押圧した際、この下支え用の支持部材12によって、その押圧作用が安定し、保持部材11からの落下のおそれも小さくなっている。
【0036】
第2の実施形態は、このような構成にしたので、電源スイッチ20を安定して押圧することができる。そして、そのことを、アクチュエータ保持板6に一体化した構成としたので、その下支え構造形成のために、新たな部品を作製する必要がない。
【0037】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第2の実施形態で例示した電源スイッチ20の下支え構造の他の例を示したものであり、図3はその第3の実施形態を示したものである。
【0038】
図3(a)は、図2ではその下支え構造として、アクチュエータ保持板6の下面にコ字の帯状の保持部材12を設けていたのに代えて、回路基板収納ケース8に突設部8aを設けて、その部分で電源スイッチ20を下支えするようにしたものを示している。また、図3(b)は、その下支え用の突設部8aが設けられた回路基板収納ケース8を単独で取り出して示したものである。
【0039】
この第3の実施形態においても、電源スイッチ20を下支えする構造によって、電源スイッチ20を安定して押圧することができ、その下支えする構造を回路基板収納ケース8に一体化した構成としたので、その下支え構造形成のために、新たな部品を作製する必要がない、という利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明は一般の全自動洗濯機に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】は、(a)に第1の実施形態の操作部から操作パネルを除いた状態を平面図で示し、(b)に(a)の線A―Aによる断面を示し、(c)に(a)の側面図の一部を示したものである。
【図2】は、第2の実施形態を示すものであり、(a)に第1の実施形態の平面図の線A―Aによる断面に対応する部分を示し、(b)に(a)の側面図の一部を示し、(c)に(a)から回路基板とその収納ケースを取り除いて、アクチュエータ保持板のみを示し、(d)に(c)の側面の一部を示したものである。
【図3】は、(a)に第3の実施形態の操作部から操作パネルを除いた状態の断面図を示し、(b)に回路基板の収納ケースだけを取り出して断面で示したものである。
【図4】は、一般的な全自動洗濯機の外観を示す簡略摸式図である。
【符号の説明】
【0042】
4 操作パネル
5 アクチュエータ
6 アクチュエータ保持板
7 回路基板
8 回路基板収納ケース
8a (回路基板収納ケースの)突設部
9、11 保持部材
9a、11a 係止爪
10 運転制御用スイッチ
12 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転制御用の複数のスイッチが搭載された回路基板の収納ケース内の、その回路基板の上方に、各スイッチに対応するアクチュエータを擁したアクチュエータの保持板と、そのアクチュエータの保持板の上方に、アクチュエータを押圧するための操作パネルとを備え、電源スイッチが回路基板に電気的に接続される全自動洗濯機の運転操作部において、
前記電源スイッチを、前記アクチュエータの保持板に取り付けたことを特徴とする全自動洗濯機の電源スイッチ取り付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電源スイッチ取り付け構造において、
電源スイッチの上記アクチュエータの保持板への取り付け構造として、そのアクチュエータの保持板の下面に、対向する一対の可尭性の帯体を垂下し、その対の帯体の下端に、互いに相手の帯に向かう向きの爪を設けておき、電源スイッチをその対の帯の間で挟持するとともに、その下端の爪で落下を阻止するようにしたことを特徴とする全自動洗濯機の電源スイッチ取り付け構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電源スイッチ取り付け構造において、電源スイッチを下支えする構造を設けたことを特徴とする全自動洗濯機の電源スイッチ取り付け構造。
【請求項4】
請求項3に記載の電源スイッチ取り付け構造において、電源スイッチを下支えする構造を上記アクチュエータ保持板に併設したことを特徴とする全自動洗濯機の電源スイッチ取り付け構造。
【請求項5】
請求項3に記載の電源スイッチ取り付け構造において、電源スイッチを下支えする構造を上記回路基板の収納ケースに併設したことを特徴とする全自動洗濯機の電源スイッチ取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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