説明

全芳香族ポリアミド繊維構造物

【課題】色相に優れ、耐光性が良好であり、しかも難燃性、防炎性が良く高い安全性を有する全芳香族ポリアミド繊維構造物を提供する。
【解決手段】メタ系全芳香族ポリアミド繊維とパラ系全芳香族ポリアミド繊維とで構成されており、メタ系全芳香族ポリアミド繊維:パラ系全芳香族ポリアミド繊維との混合比率が重量を基準として97〜30:3〜70であり、該メタ系全芳香族ポリアミド繊維が原料着色され、該パラ系全芳香族ポリアミド繊維が座屈部(キンクバンド)を有しかつ染色されている全芳香族ポリアミド繊維構造物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全芳香族ポリアミド繊維からなる繊維構造物に関するものであり、さらに詳細には発色性が極めて良好であり、優れた防火・防護性能を有し、かつ耐光性に優れた全芳香族ポリアミド繊維構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
全芳香族ポリアミド(以下アラミドと略記)繊維にはコーネックス、ノーメックスに代表されるメタ系アラミド繊維とテクノーラ、ケブラー、トワロンに代表されるパラ系アラミド繊維とがある。
【0003】
これらのアラミド繊維は、ナイロン6、ナイロン66などの従来から広く使用されている脂肪族ポリアミド繊維と比較して、剛直な分子構造と高い結晶性のために耐熱性、耐炎性(難燃性)などの熱的性質、並びに耐薬品性、強力な耐放射線性、電気特性などの安全性に優れた性質を有している。従って耐炎性(難燃性)や耐熱性を必要とする防護服などの衣料用やバッグフィルターなどの産業資材用、カーテンなどのインテリア用として広く使用されている。
【0004】
しかしながら、アラミド繊維は分子鎖が剛直且つ高結晶性であるため、反面では後加工染色し難いという欠点をもたらしている。このような欠点を解消しようとして、従来よりアラミド繊維の染色法について数多くの提案(例えば、特許文献1及び2など)がなされているが、いずれも満足な結果は得られていない。
【0005】
特に定量均一に混合するパラ系アラミド繊維は従来染色することが非常に難しく、パラ系アラミド繊維を含む繊維構造物を染色すると、混合されたパラ系アラミド繊維のみ染色されずイラツキが目立ち、品位よく仕上がることが難しいという問題を有している。また、耐光性の面でも更なる改善が望まれている。
【特許文献1】特公昭44−11168号公報
【特許文献2】特公昭52−43930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、色相に優れ、耐光性が良好であり、しかも難燃性、防炎性が良く高い安全性を有する全芳香族ポリアミド繊維構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、座屈部(キンクバンド)を有するパラ系アラミド繊維は極めて発色性に優れており、しかもこれと原料着色したメタ系アラミド繊維と特定の割合で混合した繊維からならなる織編物などの繊維構造物は、いらつきが無く色相に優れ、さらに耐光性の点でも改善されていることを見出した。
【0008】
かくして本発明によれば、メタ系アラミド繊維とパラ系アラミド繊維とで構成された繊維構造物であって、メタ系アラミド繊維:パラ系アラミド繊維との混合比率が重量を基準として97〜30:3〜70であり、該メタ系アラミド繊維が原料着色されており、該パラ系アラミド繊維が座屈部(キンクバンド)を有しかつ染色されていることを特徴とする全芳香族ポリアミド繊維構造物が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、色相に優れ、耐光性が良好であり、難燃性、防炎性に優れ高い安全性を有する全芳香族ポリアミド繊維構造物を提供することができる。よって、上記繊維構造物を防護服や作業服、あるいはインテリア資材として使用し、安全機能性のみならず、視感的および取扱い性においても優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の繊維構造物は、メタ系アラミド繊維とパラ系アラミド繊維とで構成された繊維構造物である。
【0011】
本発明で使用するメタ系アラミドとは、主骨格を構成する芳香環がアミド結合によりメタ型に結合されてなるものであり、ポリマーの全繰返し単位の85モル%以上がメタフェニレンイソフタルアミド単位であるものを対象とし、特にポリメタフェニレンイソフタルアミドホモポリマーが好ましい。全繰返し単位の15モル%未満、好ましくは5モル%以下で共重合し得る第3成分としては、ジアミン成分として、例えばパラフェニレンジアミン、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、パラキシリレンジアミン、ビフェニレンジアミン、3,3'−ジクロルベンジジン、3,3'−ジメチルベンジジン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミンが、また酸成分として、例えばテレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。また、これらの芳香族ジアミン及び芳香族ジカルボン酸は、その芳香族環の水素原子の一部がハロゲン原子やメチル基等のアルキル基によって置換されていてもよい。
【0012】
なお、ポリマーの全末端の20%以上が、アニリン等の一価のジアミンもしくは一価のカルボン酸成分で封鎖されている場合には、特に高温下に長時間保持しても繊維の強力低下が小さくなるので好ましい。
【0013】
このようなメタ系アラミドは、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジハライドとを、例えば従来公知の界面重合させる方法により製造することができる。ポリマーの重合度としては、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒として0℃で測定した固有粘度(IV)が0.8〜3.0、特に1.0〜2.0の範囲にあるものが好ましい。
【0014】
本発明においては上記のメタ系アラミド繊維が原料着色されている必要がある。原料着色に用いる顔料としては、有機性および無機性顔料など、染料としては、油溶性染料であるソルベント染料などがそれぞれ挙げられるが、耐熱性の点から前者の顔料を用いることが好ましい。なお、染料および/または顔料の含有量は、メタ系アラミド繊維の重量を基準として、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0015】
本発明においては、パラ系アラミド繊維が次に述べるものであること、また、繊維構造物が上記の原料着色されたメタ系アラミド繊維とかかるパラ系アラミド繊維とで構成されていることが肝要である。
【0016】
すなわち、本発明で使用するパラ系アラミド繊維は、座屈部(キンクバンド)を有している必要があり、これにより著しく染色性が改善され、原料着色されたメタ系アラミド繊維の色相に匹敵する、優れた色相を実現できる。また、これを原料着色されたメタ系アラミド繊維を組み合わせてイラツキも生じず、繊維構造物として色覚的に品位が向上した繊維構造体とすることができる。
【0017】
上記の座屈部(キンクバンド)はパラ系ポリアミド繊維に物理的手段により形成されていることが好ましい。この際、物理的手段とは、押し込み式捲縮などの捲縮の他、強打(叩く)、表面摩擦(しごく)、撚糸及び仮撚など、物理的手段によって座屈部(キンクバンド)を形成(付与)できるものが含まれる。
【0018】
本発明において、パラ系アラミド繊維はポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)からなる繊維をいう。ここで、PPTAとは、テレフタル酸とパラフェニレンジアミンを重縮合して得られる重合体であるが、少量のジカルボン酸およびジアミンを共重合したものも使用でき、共重合体の分子量は通常20,000〜25,000が好ましい。
【0019】
またパラ系アラミド繊維は、上記PPTAを濃硫酸に溶解し、その粘調な溶液を紡糸口金から押し出し、空気中または水中に紡出することによりフィラメント上にした後、水酸化ナトリウム水溶液で中和し、最終的には120〜500℃の乾燥・熱処理をして得られる。乾燥・熱処理前のパラ系アラミド繊維は結晶サイズ(110面)が50Å未満であり、乾燥・熱処理後では50Å以上となるものがよい。
【0020】
さらに、パラ系アラミド繊維は、420℃で1分間熱処理した際の強力劣化率が10%以上のパラ系アラミド繊維も、分子構造が適度なゆるみを有しており、座屈部(キンクバンド)が形成され易いので染料の浸透が起こり、染色が可能となる。但し、該強力劣化率が40%を超える場合は、難燃、防炎性が劣り、繊維構造物のLOIが27.0未満に低下することがある。
【0021】
パラ系アラミド繊維の400℃の乾熱収縮率は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下であり、これに火炎暴露の火傷損傷の低減化が図れ、繊維構造物のLOIを容易に27.0以上とすることができる。
【0022】
本発明においては、上記の原料着色されたメタ系アラミド繊維97〜30重量%と、座屈部(キンクバンド)を有するパラ系アラミド繊維3〜70重量%とを用いて、長繊維糸条、紡績糸条、織編物あるいは不織布などの繊維構造物とする。
【0023】
なお、上記繊維構造物としては、メタ系アラミドとパラ系アラミドとを原綿で混紡した紡績糸や、さらに該紡績糸を用いた織編物、メタ系アラミドとパラ系アラミドのフィラメント糸条を、混繊あるいは複合した糸条や、さらに該糸条を用いた織編物が含まれる。また、メタ系アラミドとパラ系アラミドとからなるフィラメント糸条や紡績糸条を交織、交編した織編物などが含まれる。
【0024】
上記のそれぞれのアラミド繊維の比率については、メタ系アラミド繊維の比率が97重量%を超える場合あるいはパラ系アラミド繊維の比率が3重量%未満の場合は、引裂き性能などの防護性能が劣る傾向にあり好ましくない。一方、メタ系アラミド繊維の比率が30重量%未満の場合あるいはパラ系アラミド繊維の比率が70重量%を超える場合は、耐光性が劣り、さらに強力保持率低下をまねく傾向にある。
【0025】
本発明の繊維構造物において、上記のパラ系アラミド繊維は染色されている必要があるが、染色は、原綿、フィラメント糸条、紡績糸、織編物、不織布など、いずれの状態で施されたものでもかまわない。ここでいう、フィラメント糸条、紡績糸、織編物、不織布は、パラ系アラミド繊維とパラ系アラミド繊維とを混綿、混繊、複合、交織、交編したものも含まれる。
【0026】
ただし、パラ系アラミド短繊維と、原料着色されたメタ系アラミド短繊維とを用いて紡績糸とするような場合は、これを織編物とした後で染色するよりは、パラ系アラミド短繊維の原綿を綿染めしてメタ系アラミド短繊維と混綿して紡績糸した方が染色や色あわせが容易であり、それに起因し色相に違いが起こり難くイラツキ発生を抑制できる点から好ましい。
【0027】
パラ系アラミド繊維の原綿、フィラメント糸条、紡績糸条、織編物などを染色処理する染色方法は、特殊な設備や特殊な方法を必要とせず、既存の合成繊維の染色設備を用いることができる。また染料としては、カチオン染料、分散染料、またさらにはカチオン/分散混合染料の何れも用いることができるが、緻密な構造に浸透しやすく、また染着性は一般的にイオン結合であり染色後の堅牢性や色相安定性がよいカチオン染料が望ましいが、耐熱性が劣る点も有しており、耐熱性に優れた分散染料でも構わない。
【0028】
染色温度は、115℃以上150℃以下が好ましく120℃以上がより好ましい。染色温度が115℃未満であると、染色性が不充分になる場合がある。また染色温度は高いほど染着性高まるものの、反面、染料の分解やアラミド繊維と他の素材を複合している場合には複合素材の劣化の問題も発生し始めるので、必ずしも高温にすればするほど良いわけではなく高くても140℃であることが好ましい。
【0029】
本発明者は、特に上記染色において、パラ系アラミド繊維に座屈部(キンクバンド)を設けることに加え、芳香族系助剤を用いて染色することが、それらの相乗効果によってさらに優れた発色性を発現する上で好ましいことを見出した。特に、本発明のように、原料着色したメタ系アラミド繊維との組み合わせて用いるような場合、繊維構造物の色相のイラツキを抑制し品位を向上させる上でより効果的であることがわかった。上記芳香族系助剤として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、アセトン、アセトフェノン、NMP、DMSO、DMF、エチレングリコール、アセトニトリルのうち少なくとも1種を用いることが好ましいが、染色環境に見合った(処理能力、作業環境など)環境負荷低減を考慮した芳香族系助剤を用いることが望ましい。
【0030】
本発明においては、メタ系アラミド繊維及びパラ系アラミド繊維には、染色性及び機能性を損なわない範囲において他の繊維を混合しても構わない。上記の他の繊維はとしては、上記アラミド繊維の機能特性を生かす上では難燃レーヨン、難燃加工綿、難燃ポリエステル、難燃ビニロン、ノポラックなどの難燃素材が好ましい。また快適性の点からは、難燃レーヨンなどのセルロース系を混合するとアラミド単独よりも高吸湿性となり、より快適な素材の提供ができる。
【0031】
上記のように他の繊維と混合して用いる際は、他の繊維素材と原綿で混紡してもよいし、紡績糸やフィラメント形状のものを交織あるいは交編しても構わない。
【0032】
さらに、本発明の繊維構造物は、本発明の目的を損なわない範囲内で、上記のアラミド繊維には、安定剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、触媒、着色剤、無機微粒子などを含んでいてもよい。
【0033】
本発明においては、繊維構造物の限界酸素指数LOI(Limiting oxygen index)が27.0以上であることが好ましく、かかるLOIは前述したメタ系アラミド繊維と、パラ系アラミド繊維の構成により達成できる。また、上記LOIとすることで、優れた防火・防護服性能を発揮する。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例で行った被染色物の評価は下記の方法に従って行った。
(1)染色性
マクベス カラーアイ(Macbeth COLOR-EYE)モデルCE−3100を用いて行った。
【0035】
布帛全体の染色性としては、見掛けの色の濃さK/S及び明度指数L*で表現したがK/Sは染色された試料の最大吸収波長における反射率(R)から下記に示すクーベルカムンク(Kubelka-Munk)の式により求められるものである。
K/S=(1−R)/2R
この値が大きい程、色は濃いことを示す。また、明度指数L*は、JIS Z 8701(2度視野XYZ系による色の表示方法)又はJIS Z 8728(10度視野XYZ系による色の表示方法)に規定する三刺激値のYを用いて、次式より求められるものである。
L*=116(Y/Y1/3−16
Y/Y>0.008856
Y:XYZにおける三刺激値の値
:完全拡散反射面の標準の光によるYの値
但し、Y/Yが0.008856以下の場合は、次式による。
L*=903.29(Y/Y
Y/Y≦0.008856
より、明度指数L*値を求めた。明度指数L*は数値が小さい程、濃染化されていることを示す。
【0036】
繊維構造物としての色相の判定は、目視にて以下の如く行った。
○:繊維構造物としての色相が極めて均一である
△:繊維構造物としての色相が均一である
×:繊維構造物としての色相が均一でない(イラツキが認められる)
(3)LOI
防炎性(難燃性)の指標である限界酸素指数LOIの評価は、JIS L K7201測定法に準拠して、LOI値を求めた。
(4)400℃乾熱収縮率
熱風乾燥機中で、400℃で5分間処理した時の収縮率を求めた。
(5)強力劣化率
420℃で1分間処理した際の、熱処理前後の強力S0、S1から次式により算出した。
強力劣化率(%)=(S0−S1)/S0×100
(6)耐光性
スガ試験機製のスタンダード紫外線ロングライフフェードメーターを使用し、ブラックパネル温度65℃で20時間紫外線を照射した後、ブルースケールを用いて判定した。
【0037】
[実施例1]
有色顔料(C.I.Pigment Blue 15)を5重量%含む固有粘度(IV)1.35dl/gのポリ−m−フェニレンイソフタルアミド30gをN−メチル−2−ピロリドン110gに溶解し、減圧脱法して紡糸ドープとした。このドープを85℃に加温し、口径0.07ミリ、孔数200の紡糸口金から凝固浴に湿式紡糸した。凝固浴の組成は、塩化カルシウムが40重量%、NMPが5重量%、残りの水は55重量%であり、該凝固浴の温度は85℃であった。この糸条を凝固浴中に約10cm走行させ6.2m/分の速度で引き出した。該糸条を水洗し、95℃の温水で3.3倍に延伸して120℃のロールで乾燥した後、300℃のスチーム熱板上で1.0倍延伸して440dtex/200フィラメントの延伸糸を得た。この延伸糸を100本集束して2万デニールのトウとし、捲縮を付与した後カットし、メタ系アラミド短繊維を得た。得られた短繊維の繊度、カット長、強度、伸度は、それぞれ1.9dtex、51mm、3.7cN/dtex、43%であった。
【0038】
一方、押し込み捲縮により座屈部(キンクバンド)を付与した後、カットしたPPTA短繊維(帝人テクノプロダクツ株式会社製 トワロンTW1072)に、下記染浴で常温から2℃/分の速度で昇温し、135℃で60分間染色処理(綿染色)した。得られたPPTA短繊維の繊度1.7dtex、カット長50mm、捲縮数15個/25mmであった。
・染料C.I.Basic Blue 54(Kayacryl Blue GSL-ED) 4%owf
・硝酸Na 25g/リットル
・酢酸 0.5cc/リットル
・ベンジルアルコール 50g/リットル
・浴比1:20
次いで、染色された短繊維を下記洗浄浴で80℃×20分間洗浄した。
・スコアロール#400(第一工業製薬製) 1g/リットル
洗浄後、十分水洗して乾燥した。
【0039】
前述したメタ系アラミド短繊維と上記の座屈部(キンクバンド)を有し綿染色されたPPTA短繊維とを97重量%と3重量%の割合となるように通常の方法で混紡、合撚し30/2紡績糸とし、次いで製織し、(30/2×30/2)/(55本/in×54本/in)の平織物を得た。次に該布帛をスコアロール400(花王製)で1g/リットル、80℃で20分間精錬した。水洗・乾燥後、190℃で1分間プレ・セットし、毛焼した。結果を表1に示す。
【0040】
[実施例2]
メタ系アラミド短繊維とPPTA短繊維との割合を70重量%と30重量%とした以外は、実施例1と同様にして平織物を得た。結果を表1に示す。
【0041】
[実施例3]
メタ系アラミド短繊維とPPTA短繊維との割合を40重量%と60重量%とした以外は、実施例1と同様にして平織物を得た。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例4]
染色時に芳香族系助剤を供しなかった以外は実施例1と同様にして平織物を得た。結果を表1に示す。
【0043】
[比較例1]
パラ系アラミド繊維としてPPTA短繊維に代えて3,4'−オキシジフェニレンテレフタルアミドとの共重合体等のパラフェニレン基を主鎖中に組み込んだアラミド繊維(帝人テクノプロダクツ製テクノーラ)を使った以外は、実施例1と同様にして平織物を得た。結果を表1に示す。なお、上記パラ系アラミド繊維には捲縮付与後に捲縮部に屈曲が認められるものの、座屈部(キンクバンド)は確認できなかった。
【0044】
[比較例2]
パラ系アラミド繊維としてPPTA短繊維に代えて3,4'−オキシジフェニレンテレフタルアミドとの共重合体等のパラフェニレン基を主鎖中に組み込んだアラミド繊維(帝人テクノプロダクツ製テクノーラ)を使った以外は、実施例2と同様にして平織物を得た。結果を表1に示す。なお、上記パラ系アラミド繊維には捲縮付与後に捲縮部に屈曲が認められるものの、座屈部(キンクバンド)は確認できなかった。
【0045】
[比較例3]
パラ系アラミド繊維としてPPTA短繊維に代えて3,4'−オキシジフェニレンテレフタルアミドとの共重合体等のパラフェニレン基を主鎖中に組み込んだアラミド繊維(帝人テクノプロダクツ製テクノーラ)を使った以外は、実施例3と同様にして平織物を得た。結果を表1に示す。なお、上記パラ系アラミド繊維には捲縮付与後に捲縮部に屈曲が認められるものの、座屈部(キンクバンド)は確認できなかった。
【0046】
[比較例4]
メタ系アラミド短繊維とPPTA短繊維との割合を20重量%と80重量%とした以外は、実施例1と同様にして平織物を得た。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、色相に優れ、耐光性が良好であり、難燃性、防炎性に優れ高い安全性を有する全芳香族ポリアミド繊維構造物を提供することができる。よって、上記繊維構造物を防護服や作業服、あるいはインテリア資材として使用し、安全機能性のみならず、視感的および取扱い性においても優れた効果を奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタ系全芳香族ポリアミド繊維とパラ系全芳香族ポリアミド繊維とで構成された繊維構造物であって、メタ系全芳香族ポリアミド繊維:パラ系全芳香族ポリアミド繊維との混合比率が重量を基準として97〜30:3〜70であり、該メタ系全芳香族ポリアミド繊維が原料着色されており、該パラ系全芳香族ポリアミド繊維が座屈部(キンクバンド)を有しかつ染色されていることを特徴とする全芳香族ポリアミド繊維構造物。
【請求項2】
パラ系全芳香族ポリアミド繊維がカチオンまたは分散染料で染色されている請求項1記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物。
【請求項3】
パラ系全芳香族ポリアミド繊維が芳香族系助剤を用いて染色されている請求項1または2記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物。
【請求項4】
座屈部(キンクバンド部)が物理的手段により形成されたものである請求項1記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物。
【請求項5】
物理手段が押込み式捲縮付与手段である請求項4記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物。
【請求項6】
パラ系全芳香族ポリアミド繊維の420℃で1分間の熱処理による強力劣化率が10〜40%である請求項1記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物。
【請求項7】
パラ系全芳香族ポリアミド繊維の400℃乾熱収縮率が10%以下である請求項1記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物。
【請求項8】
繊維構造物の限界酸素指数(LOI)が27.0以上である請求項1記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物。

【公開番号】特開2007−16343(P2007−16343A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198490(P2005−198490)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】