説明

全血免疫測定装置及び全血免疫測定方法

【課題】ランニングコストや被験者の負担を抑えながらも、簡便な操作で全血中のHgb濃度及びCRP濃度等の測定対象物質濃度を迅速かつ正確に測定できる全血免疫測定装置を提供する。
【解決手段】全血試料に溶血試薬を供給する溶血試薬供給手段40と、溶血試薬が加えられた全血試料である第1試料に光を照射する第1光源70と、透過光の第1光強度を検出する第1光検出手段80と、第1光強度に基づいて全血中のHgb濃度を算出するHgb算出部51と、第1試料に免疫試薬を供給する免疫試薬供給手段40と、免疫試薬が加えられた第1試料である第2試料に光を照射する第2光源20と、透過光の第2光強度を検出する第2光検出手段30と、測定対象物質と免疫試薬中の免疫成分とが免疫反応する過程での第2光強度、Hgb濃度に基づいて、測定対象物質濃度を算出する測定対象物質算出部50とを具備するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全血試料を用いて、全血中のヘモグロビン濃度と、例えば血漿成分中のC−反応性蛋白(C−reactive protein、以下CRPともいう)濃度等の測定対象物質濃度とを測定する全血免疫測定装置及び全血免疫測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の全血免疫測定装置には、特許文献1に示すように、ヘモグロビン濃度を測定するためのHgbセル(WBCセルに相当する)、及びCRP濃度を測定するためのCRPセルそれぞれに、全血試料と溶血試薬を含む各測定に必要な試薬とを供給して、各測定用の試料を生成し、前記各試料に光を照射して、各セルを透過した光の光強度から各濃度を算出するものがある。なお、本出願において、溶血とは赤血球の細胞膜が破壊される現象を指す。また、全血試料とは全血のみであってもよいし、全血及び抗凝固剤等を含むものであってもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−101798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各測定用の試料をそれぞれ別途生成するようにしているので、試料等の供給回数が多くなり、しかも供給のたびに供給に用いるノズルを洗浄するようにしているので、測定時間の短縮が難しく、手間もかかってしまう。
【0005】
さらに、測定精度を担保するためには、各測定用の試料をそれぞれ一定量以上用意する必要がある。そのため、試薬の使用量を減らしてランニングコストを低減したり、血液の採取量を減らして血液を採取される被験者の負担を軽減したりすることが難しいという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題を解決すべく図ったものであり、ランニングコストや被験者の負担を抑えながらも、簡便な操作で、全血中のヘモグロビン濃度及びCRP濃度等の測定対象物質濃度を迅速かつ正確に測定できる全血免疫測定装置を提供することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る全血免疫測定装置は、全血試料に溶血試薬を供給する溶血試薬供給手段と、前記溶血試薬が加えられた全血試料である第1試料に光を照射する第1光源と、前記第1光源から射出されて前記第1試料を透過した光を受光し、その強度である第1光強度を検出する第1光検出手段と、前記第1光検出手段で検出された第1光強度に基づいて、前記全血中のヘモグロビン濃度を算出するHgb算出部と、前記第1試料に免疫試薬を供給する免疫試薬供給手段と、前記免疫試薬が加えられた第1試料である第2試料に光を照射する第2光源と、前記第2光源から射出されて前記第2試料を透過した光を受光し、その強度である第2光強度を検出する第2光検出手段と、前記免疫試薬供給手段によって免疫試薬が加えられ、前記第1試料中の測定対象物質と前記免疫試薬中の免疫成分とが免疫反応する過程での前記第2光強度と、前記Hgb算出部で算出された前記ヘモグロビン濃度とに基づいて、測定対象物質濃度を算出する測定対象物質算出部とを具備することを特徴とするものである。
【0008】
このようなものであれば、測定対象物質の測定に用いる第2試料の前段階の生成物である第1試料を用いて、ヘモグロビン濃度を測定するようにしているので、試薬等の供給回数及び供給に用いるノズルの洗浄回数を減らすことができ、測定時間を短縮できるとともに、手間を軽減することができる。また、ヘモグロビン測定用の試料と、測定対象物質測定用の試料とを別々に一定量以上確保しなくとも良いので、測定精度を担保しながらも、試薬の使用量を減らしてランニングコストを低減できる。また、血液の採取量を減らして血液を採取される被験者の負担を軽減することも可能である。
【0009】
また、従来装置では、採血した全血試料を収容した採血容器を前記従来装置にセットしてから、前記全血試料を複数のセルそれぞれに供給するまで、前記採血容器を取り外すことができないので、その間オペレータが待機しなければならないという問題がある。これに対し、このようなものであれば、前記採血容器から全血試料を1回採取するだけで、前記採血容器を除去することができ、待機時間を格段に減らすことができる。
【0010】
Hgb測定と、測定対象物質の測定とで、適切なセル長が異なる場合には、第1セルと、該第1セルとは別に設けた第2セルと、前記第1セル及び第2セル間での試料の移送を行う移送手段とをさらに具備し、前記第1光源が、前記移送手段によって前記第1セルから前記第2セルに移送された第1試料に光を照射するものであり、前記免疫試薬供給手段が、前記移送手段によって前記第2セルから第1セルに戻された第1試料に免疫試薬を供給するものであり、前記第2光源が、前記第1セルに収容されている前記第2試料に光を照射するものが望ましい。
【0011】
また、先行する測定に適した試料の希釈倍率が、後続の測定に適した試料の希釈倍率よりも大きい場合、試料を使いまわすことができないので、先行する測定であるHgb測定ステップにおいて、試料を可及的に希釈せず濃い状態のまま用いることが望ましい。試料が濃い状態であっても、精度良く濃度を測定するためには、吸光度の観点から考えて、セル長を短くすることが考えられる。しかしながら、単にセル長を短くしただけではセル内に気泡が残留しやすくなってしまうという問題がある。この問題を解決するためには、例えば、前記第1光源からの光の光軸方向からみた状態において、前記第2セルの内部に形成された内部流路が、試料を導入する導入口及び試料を導出する導出口から、中央部に向かうにつれ滑らかかつ徐々に太くなる形状をなすものが望ましい。
【0012】
より効果的に気泡を排出するためには、前記第2セルの前記内部流路の中央部における、試料の流れ方向及び前記第1光源からの光の光軸方向それぞれに直交する方向である直交方向の幅が、前記導入口及び導出口における、前記直交方向の幅の1.2〜2.0倍であるものが望ましい。
また、本発明の全血免疫測定装置において免疫測定を行う際に、精度よくその濃度を測定することができる対象の一例としては、前記測定対象物質がC−反応性蛋白質である場合が挙げられる。
【0013】
この全血免疫測定装置に用いられる全血免疫測定方法もまた、本発明の1つである。すなわち、本発明に係る全血免疫測定方法は、全血試料に溶血試薬を加えて、第1試料を生成する第1試料生成ステップと、前記第1試料に光を照射し、当該第1試料を透過した光の強度である第1光強度を測定する第1光強度測定ステップと、前記第1光強度に基づいて、前記全血中のヘモグロビン濃度を算出するHgb算出ステップと、前記第1試料に免疫試薬を加え、当該第1試料中の測定対象物質と前記免疫試薬中の免疫成分とを免疫反応させる免疫反応生起ステップと、前記免疫試薬が加えられた第1試料である第2試料に光を照射し、前記測定対象物質及び前記免疫成分が免疫反応する過程での、当該第2試料を透過した光の強度である第2光強度を測定する第2光強度測定ステップと、前記第2光強度及び前記ヘモグロビン濃度に基づいて、測定対象物質濃度を算出する測定物質算出ステップとを具備する方法である。
【発明の効果】
【0014】
従って、本発明によれば、ランニングコストや被験者の負担を抑えながらも、簡便な操作で、全血中のヘモグロビン濃度及び測定対象物質濃度を迅速かつ正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態における全血免疫測定装置の模式的機器構成図。
【図2】同実施形態における全血免疫測定装置の第2セルの正面図及び斜視図。
【図3】同実施形態における全血免疫測定装置の動作手順を示すフローチャート。
【図4】同実施形態における全血免疫測定装置の動作手順を示すフローチャート。
【図5】同実施形態における全血免疫測定装置を用いて測定したヘモグロビン濃度を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態に係る全血免疫測定装置100について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る全血免疫測定装置100は、例えば人血や動物血等の全血である全血試料を用いて、全血中のヘモグロビン濃度及び血漿成分中の測定対象物質であるCRP濃度とを測定するものである。具体的にこの全血免疫測定装置100は、図1に示すように、大きくは、測定機構110及びその測定機構110に係る演算処理を行う演算機構120からなる。
【0017】
前記測定機構110は、試料を収容する第1セル10と、前記第1セル10に収容された試料に光を照射する第2光源20と、前記第2光源20から射出されて試料を透過した光を受光し、その強度である第2光強度を検出する第2光検出手段30と、前記第1セル10に試薬を供給する試薬供給手段40(請求項における溶血試薬供給手段及び免疫試薬供給手段に相当する)とを具備している。
【0018】
各部を詳述する。前記第1セル10は、内部に試料を収容する内部空間が形成された有底管形状をなす。前記第2光源20からの光の光軸方向からみた状態において、概略U字形状乃至V字形状をなし、底部の中央部には試料を排出する排出口(図示しない)が設けられている。また、内部空間における光が入射する入射窓及び光が射出する射出窓は、互いに平行に向かい合っている。この第1セル10には、前記全血試料を収容する採血容器(図示しない)から、全血試料採取ノズル(図示しない)によって、予め定められた所定量の全血試料が供給される。
【0019】
第2光源20は、前記第1セル10に臨んで配置されており、配置ピーク波長が600nm以上である光を射出するLEDであり、ここではピーク波長は660nmである。
【0020】
第2光検出手段30は、前記第1セル10を挟んで、前記第2光源20に対向して配置されており、ここではフォトダイオードである。
【0021】
前記試薬供給手段40は、溶血試薬と緩衝試薬と免疫試薬とを収容する試薬容器41と、前記各試薬を前記第1セル10に供給する試薬供給ノズル42と、該試薬供給ノズル42を所定量の前記各試薬が通過するように、弁体の開度を調整する前記電磁弁(図示しない)とを具備する。前記試薬供給手段40は、前記第1セル10に収容された前記全血試料に、溶血試薬(例えば溶血性サポニン類溶液)を加えて第1試料を生成する。また、試薬供給手段40は、該第1試料に、緩衝試薬を加えて、pHを調整するとともに、前記第1試料を予め定められた希釈倍率にまで希釈し、さらに、免疫試薬(例えばCRP−X2(デンカ生研))を加えて第2試料を生成する。この免疫試薬には、前記第1試料中のCRPと免疫反応を起こして凝集する免疫成分(ここでは抗CRP抗体感応性のラテックス)を含む。
【0022】
演算機構120は、汎用又は専用のコンピュータであり、メモリに所定のプログラムを格納し、当該プログラムに従ってCPUやその周辺機器を協働動作させることによって、請求項の測定対象物質算出部に相当するCRP算出部50としての機能を発揮する。CRP算出部50は、前記試薬供給手段40によって免疫試薬が加えられ、CRPと前記免疫試薬中の免疫成分とが免疫反応して凝集する過程での前記第2光強度の時間変化量、及び後述するヘモグロビン濃度に基づいて、血漿成分中のCRP濃度を算出する。
【0023】
さらに、本実施形態では、前記測定機構110が、前記第1セル10とは別に設けた第2セル60と、前記第2セル60に収容された試料に光を照射する第1光源70と、前記第1光源70から射出されて試料を透過した光を受光し、その強度である第1光強度を検出する第1光検出手段80と、前記第1セル10及び第2セル60間での試料の移送を行う移送手段90とを具備している。
【0024】
前記第2セル60は、図2に示すように、内部に試料が流れる内部流路61が形成されたフローセルタイプのセルである。前記内部流路61は、前記第1光源70からの光の光軸方向Lからみた状態において、試料を導入する導入口62及び試料を導出する導出口63から、中央部に向かうにつれ滑らかかつ徐々に太くなる形状をなす紡錘形状をなすものである。前記内部流路61の中央部における、試料の流れ方向F及び前記第1光源70からの光の光軸方向Lそれぞれに直交する方向である直交方向の幅(ここでは1.5mm)は、前記導入口62及び導出口63における、前記直交方向の幅の1.2〜2.0倍であり、ここでは1.5倍に設定してある。
【0025】
また、内部流路61における光が入射する入射窓及び光が射出する射出窓は、互いに平行に向かい合っており、前記窓間の光軸方向Lの距離であるセル長は、1cm未満であり、ここでは1mmに設定してある。
【0026】
第1光源70は、図1に示すように、前記第2セル60に臨んで配置されており、配置ピーク波長が500〜550nmである光を射出するLEDであり、ここではピーク波長は510nmである。
【0027】
第1光検出手段80は、前記第2セル60を挟んで、前記第1光源70に対向して配置されており、ここではフォトダイオードである。
【0028】
移送手段90は、移送管91及びポンプ92を具備しており、移送管91の一端が、前記第2セル60の導入口62に接続される一方、前記ポンプ92に取り付けられた管の一端が、前記第2セル60の導出口63に接続してある。移送管91の他端を前記第1セル10に収容された試料に浸した状態で、ポンプ92内を減圧すると、移送管91を介して、第1セル10から第2セル60に試料が移送される。第2セル60から第1セル10に試料を戻すには、ポンプ92内を加圧する。
【0029】
また、前記演算機構120は、Hgb算出部51及びHct換算部52としての機能を有する。Hgb算出部51は、前記第1光検出手段80で検出された第1光強度に基づいて、前記全血中のヘモグロビン濃度を算出する。Hct換算部52は、前記Hgb算出部51で全血中のヘモグロビン濃度を、予め定められた換算式を用いてヘマトクリット値に換算するものである。
【0030】
次に、前記演算機構120の各部の詳細な説明を兼ねて、この全血免疫測定装置100の動作手順について図3及び図4を参照しながら説明する。
【0031】
まず、前記全血試料採取ノズルの先端に前記採血容器中の全血試料が浸かるように、前記採血容器を近づけた状態で、測定開始スイッチを入れると(ステップS1)、前記全血試料供給ノズルが、前記全血試料を前記第1セル10に全血試料を供給する(ステップS2)。次に、試薬供給手段40が、第1セルに収容された前記全血試料に溶血試薬を加えて、第1試料を生成する(ステップS3)。続いて、試薬供給手段40が、前記第1試料に緩衝試薬を加える(ステップS4)。
【0032】
さらに、移送手段90が、前記第1セル10に収容された緩衝試薬が加えられた前記第1試料を、第2セル60に導入する(ステップS5)。前記第1光源70が、前記第2セル60に収容された、溶血試薬が加えられた全血試料である第1試料に光を照射し(ステップS6)、前記第1光検出手段80が、前記第1試料を透過した光の強度である第1光強度を測定する(ステップS7)。Hgb算出部51は前記第1光強度に基づいて、全血中のヘモグロビン濃度を算出する(ステップS8)。
【0033】
移送手段90は、第2セル60に収容された前記第1試料を第1セル10に戻す(ステップS9)。前記試薬供給手段40が、前記第1試料に免疫試薬を加える(ステップS10)。このとき、前記免疫試薬が加えられた前記第1試料中のCRPと前記免疫試薬中の免疫成分とが免疫反応して、凝集反応が進行している。この凝集反応の過程において、第2光源20が、第1セル10に収容された、前記免疫試薬が加えられた第1試料である第2試料に光を照射し(ステップS11)、第2光検出手段30が、該第2試料を透過した光の強度である第2光強度を所定時間毎に測定する(ステップS12)。
【0034】
CRP算出部50は、前記各第2光強度に基づいて、前記第2光強度の時間変化量を算出し、前記時間変化量から全血中のCRP濃度を算出する(ステップS13)。一方、Hct換算部52は、Hgb算出部51で算出した前記ヘモグロビン濃度を、予め定められた換算式を用いてヘマトクリット値に換算する(ステップ14)。続いて、CRP算出部50が、前記全血中のCRP濃度およびヘマトクリット値に基づいて、前記血漿成分中のCRP濃度を算出し(ステップS15)、プリンタのような出力手段(図示しない)に出力する(ステップS16)。
【0035】
本実施形態に係る全血免疫測定装置100によって測定したヘモグロビン濃度と、従来装置によって測定したヘモグロビン濃度との相関性を示すグラフを図5に示す。このグラフから、各濃度は十分高い相関性を有していることが分かり、本実施形態に係るヘモグロビン濃度の測定方法は十分に精度が高いことが分かる。
【0036】
本実施形態によれば、CRP測定に用いる第2試料の前段階の生成物である第1試料を用いて、ヘモグロビン濃度を測定するようにしているので、試薬等の供給回数及び供給に用いるノズルの洗浄回数を減らすことができ、測定時間を短縮できるとともに、手間を軽減することができる。また、ヘモグロビン測定用の試料と、CRP測定用の試料とを別々に一定量以上確保しなくとも良いので、測定精度を担保しながらも、試薬の使用量を減らしてランニングコストを低減できる。また、血液の採取量を減らして血液を採取される被験者の負担を軽減することも可能である。
【0037】
また、全血試料を第1セル10に供給する際には、前記全血採取ノズルに前記採血容器中の全血試料を短時間接触させるだけでよいので、前記採血容器を保持しておくホルダ等を省略することができる。
【0038】
また、全血試料を用いた測定では、血漿成分中のCRP濃度を算出するために、ヘマトクリット値を用いる必要がある。従来、ヘマトクリット値は、電気抵抗法により算出されているため、電極等を用いる必要があり、製造コストがかかってしまう。これに対し、本発明の発明者らの鋭意検討により、前記ヘモグロビン濃度からヘマトクリット値を精度良く換算できることを見出した。この換算を本実施形態の全血免疫測定装置で用いているため、電極等を省略でき、製造コストを抑えることができる。
【0039】
なお、本発明はこれらの実施形態に限られるものではない。例えば、ヘモグロビン濃度からヘマトクリット値を算出し、ヘマトクリット値及び全血中のCRP濃度に基づいて、血漿成分中のCRP濃度を算出するようにしたが、ヘマトクリット値を算出するという工程を経ずに、ヘモグロビン濃度及び全血中のCRP濃度に基づいて、血漿成分中のCRP濃度を算出するようにしてもよい。また、ヘモグロビン濃度を算出せず、第1光強度及び第2光強度から血漿成分中のCRP濃度を算出するようにしてもよい。さらに前記実施形態では測定対象物質の一例としてCRPの測定例を挙げたが、免疫測定により測定されるものであればその他の物質であっても構わない。例えば、測定対象物質としては、テオフィリン、コレステロール、ヘモグロビンA1C、リウマチ因子、抗ストレプトリジンO(ASO)、血中薬物、溶連菌等を含むものである。本発明の全血免疫測定装置によれば、これらの濃度についても1つの全血試料から血漿成分中又は血球成分中の測定対象物質濃度を算出することができる。
【0040】
第1セル及び第2セルとは別に第3セルを設け、前記移送手段が、前記第3セルから、第2セルに試料を移送させ、また、第2セルから第1セルに試料を移送させるものとしてもよい。
【0041】
さらに、試薬供給手段についていえば、1つの試薬供給ノズルによって、各試薬を第1セルに供給するようにしてもよいし、各試薬に対応する複数の試薬供給ノズルを設けて、各試薬を供給するようにしてもよい。また、溶血試薬供給手段と、緩衝試薬供給手段と、免疫試薬供給手段は一体で設けられるものとしたが、それぞれ別体で設けてもよい。
【0042】
また、第1光源及び第2光源はLEDとしたが、前記各光源のいずれか一方または両方が、Xeランプのような連続スペクトル光を射出する光源と、所定の波長範囲の光だけを透過させ、その他の波長範囲の光を遮光する光学フィルタとを具備する光源装置であってもよい。その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0043】
100・・・全血免疫測定装置
10・・・第1セル
20・・・第2光源
30・・・第2光検出手段
40・・・試薬供給手段(溶血試薬供給手段及び免疫試薬供給手段)
60・・・第2セル
70・・・第1光源
80・・・第1光検出手段
90・・・移送手段
L・・・第1光源からの光の光軸方向
F・・・流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全血試料に溶血試薬を供給する溶血試薬供給手段と、
前記溶血試薬が加えられた全血試料である第1試料に光を照射する第1光源と、
前記第1光源から射出されて前記第1試料を透過した光を受光し、その強度である第1光強度を検出する第1光検出手段と、
前記第1光検出手段で検出された第1光強度に基づいて、前記全血中のヘモグロビン濃度を算出するHgb算出部と、
前記第1試料に免疫試薬を供給する免疫試薬供給手段と、
前記免疫試薬が加えられた第1試料である第2試料に光を照射する第2光源と、
前記第2光源から射出されて前記第2試料を透過した光を受光し、その強度である第2光強度を検出する第2光検出手段と、
前記免疫試薬供給手段によって免疫試薬が加えられ、測定対象物質と前記免疫試薬中の免疫成分とが免疫反応する過程での前記第2光強度と、前記Hgb算出部で算出された前記ヘモグロビン濃度とに基づいて、測定対象物質濃度を算出する測定対象物質算出部とを具備することを特徴とする全血免疫測定装置。
【請求項2】
第1セルと、該第1セルとは別に設けた第2セルと、前記第1セル及び第2セル間での試料の移送を行う移送手段とをさらに具備し、
前記第1光源が、前記移送手段によって前記第1セルから前記第2セルに移送された第1試料に光を照射するものであり、
前記免疫試薬供給手段が、前記移送手段によって前記第2セルから第1セルに戻された第1試料に免疫試薬を供給するものであり、
前記第2光源が、前記第1セルに収容されている前記第2試料に光を照射するものである請求項1記載の全血免疫測定装置。
【請求項3】
前記第1光源からの光の光軸方向からみた状態において、前記第2セルの内部に形成された内部流路が、試料を導入する導入口及び試料を導出する導出口から、中央部に向かうにつれ滑らかかつ徐々に太くなる形状をなす請求項2記載の全血免疫測定装置。
【請求項4】
前記第2セルの前記内部流路の中央部における、試料の流れ方向及び前記第1光源からの光の光軸方向それぞれに直交する方向である直交方向の幅が、前記導入口及び導出口における、前記直交方向の幅の1.2〜2.0倍である請求項3記載の全血免疫測定装置。
【請求項5】
前記測定対象物質がC−反応性蛋白質である請求項1、2、3又は4記載の全血免疫測定装置。
【請求項6】
全血試料に溶血試薬を加えて、第1試料を生成する第1試料生成ステップと、
前記第1試料に光を照射し、当該第1試料を透過した光の強度である第1光強度を測定する第1光強度測定ステップと、
前記第1光強度に基づいて、前記全血中のヘモグロビン濃度を算出するHgb算出ステップと、
前記第1試料に免疫試薬を加え、当該第1試料中の測定対象物質と前記免疫試薬中の免疫成分とを免疫反応させる免疫反応生起ステップと、
前記免疫試薬が加えられた第1試料である第2試料に光を照射し、前記測定対象物質及び前記免疫成分が免疫反応する過程での、当該第2試料を透過した光の強度である第2光強度を測定する第2光強度測定ステップと、
前記第2光強度及び前記ヘモグロビン濃度に基づいて、測定対象物質濃度を算出する測定対象物質算出ステップとを具備することを特徴とする全血免疫測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−88299(P2012−88299A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189066(P2011−189066)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】