全身性エリテマトーデスを治療するペプチドおよび全身性エリテマトーデスの治療方法
被験哺乳類に対し、有効量の少なくとも1つのラミニンペプチド、アナログ、またはそれらの誘導体の経口投与を含む、全身性エリテマトーデスを治療するための方法を開示する。1つの典型的な実施形態では、ラミニンペプチドは、R38(SEQ.ID.NO.1)と5200(SEQ.ID.NO.10)、5104(SEQ.ID.NO.15)、5105(SEQ.ID.NO.16)、5106(SEQ.ID.NO.17)、5107(SEQ.ID.NO.18)、5108(SEQ.ID.NO.19)、5109(SEQ.ID.NO.20)、5110(SEQ.ID.NO.21)など主張されるR38アナログとその誘導体からなる群から選択される。本発明のラミニンペプチドは、既知の化学合成法またはバイオ技術を用いて作製できる。本発明は、全身性エリテマトーデス患者における本疾患の診断および病理的活動性の経過を追跡調査するのに有用な測定法も提供する。さらに、本発明は、被験者の血漿からループス抗体を限外濾過法を用いて除去することと、血漿を被験者へ戻すこととを含む、被験者の全身性エリテマトーデスを治療する方法に関する。さらなる態様では、本発明は患者の血漿中の抗R38抗体量を低減する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全身性エリテマトーデスを治療および検出するためのペプチドR38および関連アナログなど、ラミニンペプチドおよびラミニン誘導体の使用に関する。本発明は、全身性エリテマトーデスの治療法も提供する。本発明は、患者の血漿中抗R38抗体量を低減させる方法もさらに提供する。
【背景技術】
【0002】
全身性エリテマトーデス(SLE)は、多臓器に関連する自己免疫疾患である。自己免疫性炎症過程に腎臓が関与することで生じるループス糸球体腎炎が、SLEの罹患および死亡の主因である(非特許文献1)。
【0003】
血清学上のSLEの特徴は、血清中に種々の自己抗体が生じることであり、なかでも最も顕著にみられるのは抗DNA自己抗体である(非特許文献2)。種々の炎症性および自己免疫性の疾患で生じる抗DNA抗体価は低いが、主にSLEでは高値であり、SLEの実際の診断は抗体価の高い抗DNA抗体と低補体価を組み合わせて行う(非特許文献3)。
【0004】
ループス患者由来腎の染色またはマウス由来ループスの染色により、免疫グロブリンと糸球体基底膜(GBM)の結合が示されている(非特許文献4)。ループス患者の腎臓および硫酸化グリコサミノグリカンと交差反応を示したMRL/lpr/lrマウスから抗DNA抗体が溶出されることも示されたが、血清中の抗DNA抗体はこの交差反応を示さなかった(非特許文献5)。これらの結果は、細胞外基質(ECM)が、腎炎原性自己抗体の標的であるループスの病因に関与していることを示唆している。
【0005】
Termmat R.M.らは、ラミニンとヘパリンのように、ECMの成分がマウスのモノクローナル抗体抗DNA抗体と交差反応を示すことを開示している(非特許文献6)。特許文献1は、活性ループスを有する患者の尿に抗ECM抗体が存在することを開示している。さらに、これらの抗体とECMの200 kDaのラミニン成分との交差反応と、これらの抗ECM/ラミニン抗体の尿中検出に基づくSLE検査についても開示している。
【0006】
R38は、マウスのラミニン∝鎖のC末端領域から単離したペプチド配列である(非特許文献7では残基2890ないし2910、非特許文献8では残基2851ないし2871)。R38の位置は、第4および第5ループの球状領域の接合部である(上の非特許文献7のペプチドGD−2であり、
KEGYKVRLDLNITLEFRTTSK (SEQ.ID.NO.1)
のアミノ酸配列からなる)。
【0007】
現在のSLE療法は、過剰反応する免疫系を抑制するコルチコステロイドに限定されている。この療法は特異的ではなく、避けられない副作用自体が致死性であると考えられる。さらに、免疫抑制療法は複雑で、臨床症状、血清学的血液検査、および腎臓生検を組み合わせた結果で開始が決まる。したがって、SLEに特異性が高く、免疫抑制剤の副作用がない療法および疾患の活動性を評価する特異性の高い、侵襲性の低い測定法が必要である。実際に、最近のレビュー(非特許文献9)によると、血液検査はSLEの確定診断に有用であるが、「疾患の活動性をモニタリングするにはあまり有用ではない」とされている。
【0008】
上述のいずれの参考文献も、ペプチドR38またはそのアナログの投与を用いたSLEの治療法について開示していない。さらに、上述のいずれの参考文献も、SLEの診断検査またはSLEの活動性のモニタリングにおけるR38のペプチドの使用について開示していない。上述のすべての特許および参考文献の内容を参照により本明細書に組み込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第670,495号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Alarcon−Segovia D. in:Primer on the Rheumatic Diseases. Ed.Schumascher,H.R. Arthritis Foundation, Atlanta, Georgia (1988) pp.96−100
【非特許文献2】Naparstek Y.,et al.,Ann.Rev. Immunol. (1993), 11,79−104
【非特許文献3】Wallace,D.J.et al.in:Dubois‘ Lupus Erythematosus, Lea and Febiger, Philadelphia,(1993)
【非特許文献4】Naparstek, Y.,et al.,Arthritis Rheum.(1990),33,1554−1559
【非特許文献5】J. Autoimmun.(1990),3,531−545
【非特許文献6】Skubitz et al.,J.Cell. Biol.(1991),115,1137−1148
【非特許文献7】Sasaki, M. et al., J. Biol. Chem.(1998), 263, 16, 536−16,544
【非特許文献8】The Lancet (1995),310,1257−1261
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明の目的は、ラミニンペプチドの投与を含む全身性エリテマトーデスの治療法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、被験者の血漿から抗R38(およびその誘導体)抗体を除去し、被験者の血漿へ戻す限外濾過法を含むSLE治療法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、R38’およびペプチドR38のその他の新規のアナログと誘導体を開示することであり、これらの投与法はSLEの治療法を含む。
【0014】
本発明の別の目的は、ペプチドR38、R38’、およびその他の構造的に関連のあるアナログとそれらの誘導体を用いたSLEの診断法を提供することである。
【0015】
本発明は、SLE治療に使用されるペプチドR38、ペプチドR38’、R38のその他の新規アナログおよび誘導体を含む医薬組成物または薬剤的に許容可能なその塩類とも関連している。
【0016】
本明細書で使用される用語「ペプチドR38」は、ペプチドR38それ自体と、完全ペプチドの活性を保持するそのアナログ、誘導体、断片にも使用する。「アナログ」という用語は、例えば個々または複数のアミノ酸残基の相同置換により生じるペプチド変異体を含むことを意図している。「誘導体」という用語は、R38の生物学的活性を同様に保有するR38それ自体またはそのアナログに可能な軽微な化学変化に使用し、「断片」という用語は短いR38分子に使用する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】C72マウスの抗DNA抗体とラミニンペプチドとの直接結合を示す。
【図2】R38、5200、DNA、DNase、およびヘパリンによるC72とR38アナログ5200(本明細書では時にR38’と記載する)との結合の阻害を示す。
【図3】ヒトループスモノクローナル抗DNA抗体(DIL6およびB3)とラミニンペプチドおよびその誘導体との結合を示す。
【図4】ヒトループスモノクローナル抗DNA抗体(DIL6およびB3)とラミニンペプチドおよびその誘導体との結合を示す。
【図5】ループス患者3例におけるループスの活動性スコアと尿中抗R38抗体量との相関を示す。
【図6】ループス患者3例におけるループスの活動性スコアと尿中抗R38抗体量との相関を示す。
【図7】ループス患者3例におけるループスの活動性スコアと尿中抗R38抗体量との相関を示す。
【図8】ループスマウスの生存期間延長に対する5200(R38’)の効果を示す。
【図9】ループスマウスの生存期間延長に対するR38(本明細書では5100と記載することもある)投与の効果を示す。
【図10】DNAおよびR38アナログによるC72とR38との結合の阻害を示す。
【図11】血清中の抗体濃度とOD値の関係を示すグラフ。
【図12】ある患者の投与前および投与後の血清中の抗R38抗体量の変化を示すグラフ。
【図13】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図14】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図15】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図16】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図17】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図18】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図19】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図20】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図21】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図22】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図23】本発明の免疫吸着カラムの使用を示す本発明の実施形態の模式図。矢印「A」はカラムの方向を示す。
【図24】本発明の吸着カラム図。
【図25】C72抗R38抗体の本発明の吸着カラムへの結合を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施例で使用されるなど、本明細書および請求項で使用されるとおり、特に具体的に記載していない限り、表記していなくてもすべての数値の前に「約」があると考える。また、本明細書に記載の数値の範囲は、そのすべての下位の範囲を含む。
【0019】
本用途は、「治験薬概要書」2006年7月25日付第001版に添付されている付録のすべての材料を参照することにより本明細書に明示的に組み込まれる。したがって、本発明は、全身性エリテマトーデス(SLE)を治療するためのラミニンペプチドの使用に関するものである。
【0020】
本発明は、マウスのラミニン∝鎖のC末端領域由来のペプチドであるR38を、病原性のループス抗体を用いて確認する観察結果を基礎としているため、ループス抗体との結合を競合することでSLEを治療できる可能性があると考えられる。
【0021】
さらに、本発明は全身性エリテマトーデス治療におけるラミニン由来の2種類以上のペプチドの混合物の使用に関する。好適な実施形態では、少なくとも1つのペプチドはR38またはそのアナログである。
【0022】
本発明は、被験者の血漿からループス抗体(抗R38およびその誘導体)を除去し、被験者の血漿へ戻す限外濾過法を用いて、SLEを有する被験者を治療する方法も提供する。1つの実施形態では、少なくとも1種類のペプチドがカラムに吸着するカラムクロマトグラフィーを用いて抗体を除去する。さらなる実施形態では、2種類以上のペプチドがカラムに吸着する。別の実施形態では、ペプチドはSEQ.ID.NO.1ないし22からなる群から選択される。さらなる実施形態では、ペプチドはSEQ.ID.NO.1を有する。別の実施形態では、ペプチドはSEQ.ID.NO.10を有する。1つの実施形態では、カラムはNHS-activated SepharoseTM高性能カラムである。
【0023】
本発明は、尿中の抗体のラミニンのR38成分との結合能を検出することを含む、SLE患者の疾患の活動性をモニタリングする方法にも関する。この結合は、種々の検査パラメータを組み合わせることで評価される疾患の活動性と直接相関する。
【0024】
R38と結合する抗体量の増加は、SLEの活動期へ近づいていることを示し、抗体量の減少は寛解に近づいていることを示すと考えられる。したがって、本法は、ラミニンに特異的な抗体量の変化を検出する測定法を提供し、本症が活動期に入る前に治療を開始できるようにする。
【0025】
本法は、尿を用いて実施可能であり、静脈穿刺が不要である、患者自身が使用できる簡易測定法も提供する。これは診断測定法、つまりSLEの活動性を評価するルーチンの測定法として使用可能であり、疾患増悪の早期発見およびループス腎炎に対する早期治療的介入を可能にする。
【0026】
特許文献1に記載の方法を用いて、R38またはアナログ、断片または誘導体をそのような測定に使用できる。したがって、ペプチドR38を固相に結合させ、患者の尿を用いてインキュベートできる。患者にSLE罹患が疑われる場合、SLEに罹患している場合、または本症の活動期に近づいている場合に、尿中のR38結合抗体量が増加する。
【0027】
R38結合抗体は、当業者には既知の方法を用いて検出できる。そのような検出法の例は、ELISAおよびその変形形態、化学発光等である。検出の実際の方法は、本測定の成功にとって重要ではない。次に、観察されたR38結合抗体量を対照群で観察された数値と比較する。対照群は健康被験者または内部標準等の役割を果たす患者(観察された数値を同一患者の早期の数値と比較する等)からなる。このような方法で、患者の疾患の状態の特徴をまとめ、さらなる活動期または寛解状態の指標として使用する。薬剤的に許容可能なR38ペプチドの塩類は、ペプチド分子のカルボキシ基の塩およびアミノ基の酸付加塩の両方を含む。カルボキシ基の塩は当業者には既知の方法で生成されており、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、第二鉄、または亜鉛等の無機塩と、トリエタノールアミン、アルギニンまたはリシン、ピペリジン、プロカイン等のアミンにより生成される塩等の有機塩基を有する塩とを含む。酸付加塩は、塩酸およびスルホンサン等の鉱酸を有する塩と、酢酸およびシュウ酸等の有機酸の塩とを含む。
【0028】
医薬組成物は、唯一のペプチドまたは高分子キャリアあるいはポリマーと結合させた重合体あるいは複合体であるペプチドR38等のラミニンペプチドを含む。本組成物は、薬剤的に許容可能な賦形剤を任意選択的に含む。代替の実施形態では、本組成物はペプチドR38のみを含む。
【0029】
投与経路は、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、関節内、鼻腔内、くも膜下内、皮内、経皮、または吸入などがある。
【0030】
SLEを治療する際のペプチドR38または誘導体の有効量は、1回約1μg/kg〜100 mg/kg(体重)と考えられる。これは当業者には容易に計算できる。投与量は、レシピエントの年齢、性別、健康状態、体重、併用療法の種類(あれば)、および投与頻度によって異なる。
【0031】
さらなる実施形態では、本発明は患者の血漿中の抗R38抗体量を低減させる方法、すなわち1)患者の血漿を除去し、その血漿をSEQ.ID.No.1のアミノ酸配列を有するペプチドを含む親和性吸着カラムに通すステップと、2)その血漿を患者の体内へ戻すステップとを含む方法を提供する。患者の血漿中の抗R38抗体量は、投与前より約60%以上低く、投与前より約80%以上低い症例もあれば、投与前より90%以上低い症例もあり、血漿中抗38抗体量が投与前より約95%以上または99%も低くなる症例もある。本発明の方法では、カラムに通した血漿すべてを患者に戻すため、血漿置換は不要である。
【0032】
本発明のこれらの実施形態の長所は、
・ループス専用の第一治療法が得られる。ループス自己抗体と結合する特異的な抗原を標的とする。
・高効率の方法である。血漿からループスを引き起こす抗原のみを除去し、その他すべての重要な血漿成分を保持する。
・使用されているその他すべての既存の治療法(例;免疫抑制薬、非特異的な血漿アフェレーシス、全血漿交換)と比べて副作用が少ない。
・吸着カラムの操作が単純かつ容易である。
・治療の効率および効果が高いため費用対効果が高く、重症患者にかかる医療コスト全体が削減される。
【0033】
実施例13および図12で示されるとおり、OD(光学密度405nm)を用いて測定したところ、患者の投与前の血漿中抗R38(VRT101)抗体量は約0.8であり、投与直後は約0.6であった。投与約2週間後の抗R38抗体もさらに低下し、OD測定値は約0.2であった。図11(OD値と血清中VRT101濃度の関係)に記載の情報から、OD値の約70%の低下(0.6から0.2)は、血漿中抗体濃度の97%低下に相当する。
【0034】
抗R38抗体量は約1〜5週間低下し続け、投与直後の濃度を下回り、7〜8週間かけて投与前の濃度に緩徐に戻った。したがって、さらなる実施形態では、本発明はSEQ.ID.NO.1のアミノ酸配列を有するペプチドを含む親和性のある吸着カラムを用いて患者の血漿を限外濾過的に治療することにより、血漿中の抗R38抗体量を低減させる方法を提供し、このとき抗体量は約1〜5週間にわたり低く、投与直後の濃度を下回り、その後投与前の濃度まで徐々に上昇する。投与直後から投与2週間後までの抗体量の変化の割合は80%を超え、90%を超える症例もあり、95%または97%を超える症例もある。さらに、抗体量が投与前の濃度に戻るのに少なくとも3週間、4週間、症例によっては5または6週間かかることもある。
【0035】
さらなる態様では、本発明は本発明の限外濾過療法に使用する抗原特異的な免疫吸着カラムを提供する。カラムは1)SEQ.ID.NO.1のアミノ酸配列を有するリガンドペプチドまたはその変異体あるいは誘導体と、2)リガンドペプチドが共有結合する基質を含むカラムとを備える。1つの実施形態では、本発明の免疫吸着カラムはLupusorbTMカラムである。
【0036】
LupusorbTMカラムはリガンドペプチドであるR38が共有結合してDV2吸着装置タイプの使い捨て医療用デバイスを形成するSepharoseTMビーズマトリックスを含むプラスチックケーシングを備え、血漿アフェレーシス施行時にヒト血漿中の抗R38抗体を可逆的に結合させる。
【0037】
LupusorbTMカラムは、標準的な血漿アフェレーシス施行時に使用するようにデザインされている。LupusorbTMカラムの上側出口と下側出口は、対応する血漿アフェレーシス装置の入口または出口ラインに適合する標準的なコネクタである。血液除去、血漿からの血球分離、これらの血球の体内循環への返還からなる通常の血漿アフェレーシスでは、新鮮血漿または代用物で希釈する。本法を用いて血流から抗体を取り除き、それにより抗体が標的を攻撃できないようにする。
【0038】
本発明は、ループス自己抗体に特異的な初めての血漿アフェレーシスを提供する。本法では、ループス患者の血漿をVRT101(R38)免疫吸着カラムに通す(図24)。本発明の方法では、患者の血漿を患者に戻すため、新鮮血漿および血漿代替物を用いて希釈する必要はない。
【0039】
病原性のループス自己抗体をカラムに結合させることで除去し、残りの血漿成分を患者に再度輸血するため、重要な血漿成分が失われることはない。R38はCNBr活性化セファロースと共有結合させ、52ml吸着装置タイプの使い捨て医療用デバイスを形成するセファロースビーズマトリックスを含むプラスチックケーシングを備えるLupusorbTMカラムを形成し、血漿アフェレーシス施行時にヒト血漿中の各病原体を可逆的に結合させる。
【0040】
ケーシングは規定のポリカーボネートから作られ、PTFEおよびPET膜を含む。ケーシング材料に必ず必要であったのは、
・VIクラスのプラスチックについてUSPの要件を満たす、
・意図した使用に対してEN ISO 10993の要件を満たす、
・エチレンオキシドによる減菌に適する、
・再生時に使用されるpH値に抵抗性を示すなどである。
カラムのケーシングは上部、中央部、底部の3種類の部品からなる(図25)。3種類とも最終的には接着剤を用いない方法で結合される。
ケーシングのサイズ仕様
【0041】
上部は中央の雌ルアーコネクタに取り付けられ、対応するルアーキャップ(外側の切り取りラベルおよび内側にある殺菌バリアとして疎水性の膜で密閉された換気穴を有する円形部)で密閉され、単一膜層(PET、11μm)が上部の内径を完全に被覆する。
【0042】
中央の雌ルアーコネクタには、アフェレーシス時に血漿輸送(流入ライン)に使用される雄ルアーロックを有する吸着材用のチューブシステムのための安定した特徴的な取り付け具が必要である。このような標準的なコネクタの形状により、接続失敗、血漿喪失、および汚染のリスクは低くなる。使用時まで蓋で密閉する。
【0043】
治療および再生時に基質の圧増大とその後エアポケットが生じるのを避けるため、ケーシングは蓋に円形に配列される穴から自己換気する。吸着材を充填した後、ラベルでこれらの穴を密閉し、生理食塩水の蒸発およびその後のセファロース懸濁液の劣化を防ぐ。治療時および貯蔵時も吸着材含有物が汚染されるのを防ぐため、換気穴を内側から疎水性殺菌バリアで密閉する。吸着材の全内径上の膜層は、貯蔵、輸送、および取り扱い時にセファロースが吸着材の流入コネクタへ入るのを阻止できる。さらに、入ってくる血漿がセファロース表面に分布するのも助ける。
【0044】
中央部は吸着材の実際の容積を補填する、雌ルアーコネクタを有する側部の単一のポリカーボネート製シリンダーであり、製造時にセファロースが充填される。コネクタは対応する蓋で密閉される。流出チューブはこのコネクタには適合していないため、セファロースが戻りラインに入って患者の体内に入る危険はない。
【0045】
底部には中央の雄ルアーコネクタおよびPET膜層(孔サイズ11μm)が取り付けられている。
【0046】
標準的な中央の雄ルアーコネクタはチューブセットの流出ライン上で対応する部品のみ取り付けられるように規定されており、流入ラインと流出ラインの組み合わせの不適合性を防止する。このコネクタも使用時まで蓋で密閉される。
【0047】
11 μmの膜の孔サイズは十分小さいため、選択したアガロースゲル基質のビーズを保持することが可能である。このアガロースゲルはSepharoseTM等で、サイズの分布は45ないし165μmである。さらに、第2の独立した安全システムとして、流出コネクタと流出チューブの間に孔サイズが5μmの減菌粒子フィルタを使用する必要がある。
【0048】
クロマトグラフィの基質は、十分量のペプチドまたは抗体の結合に適するアガロースを基剤とするビーズ形成アガロースゲル基質と規定される。このペプチドまたは抗体は物理的・化学的安定性が高く、吸着率は低く、血漿流速は医学的に安全かつ技術的に実現可能な流速に基づいている。
【0049】
1つの実施形態では、Lupusorb吸着材として市販のSepharoseTM4FFを選択した。この4FF SepharoseTMは減菌仕様であり、生物汚染度が低く、ヒト血漿や再生溶液のpHの範囲に耐え得ることが可能である。リガンド結合に使用される化学物質に耐性があり、結合に適する部位を提供する。吸着はごくわずかで、流速はヒト血漿分離に適しており、ビーズは保持可能なサイズで品質保持期間が長い。
【0050】
4FF SepharoseTMは、活性化、リガンドの結合、および阻害後のアフィニティー・クロマトグラフィーのベース基質として用いられる仕様になっている。SepharoseTM 4FFは架橋アガロース(4%)を含む球形のビーズを含み、ビーズのサイズは95%超が45ないし165μmの範囲(平均90μm)となるように規定されている。このセファロースで得られる流速は血漿アフェレーシスにとって技術的に実現可能かつ医学的に安全である流速と一致している(部位によらず、15ないし25 ml/分)。ビーズはpHの範囲を2ないし12、圧は最高2.0バールという特徴を維持している。
【0051】
4FF SepharoseTMは、広範囲の物質(吸着材の製造および使用時に使用される有機溶媒および水溶液など)に対し高い化学的安定性を示している。また、セファロース上に荷電基がないため、実質的に分解物(アガロース由来の炭水化物)の漏出がなく、非特異的な結合もない。
【0052】
架橋が高度なため、4FF SepharoseTMは高圧減菌で容易に減菌可能であり、出荷規格の一環として極めて低い生物汚染度から開始される。さらに、セファロースは20%エタノールに溶解した状態で供給され、微生物汚染はさらに低減される。このような条件下でのSepharoseTMの品質保持期間は5年である。
【実施例】
【0053】
(ペプチド)
【0054】
マウスラミニン∝鎖のC末端由来のペプチドR26、R28、R30、R31、R35、R37、およびR38(本明細書では「5100」および「TV
5100」とも呼ぶ)およびマウスラミニン∝鎖のN末端由来のペプチドR18を用いて試験を行った。ペプチドは17ないし22 merの合成ペプチドであり、F‐moc法で調製される(Carpino、L.A. & Han、G.Y.(1972),J.Org.Chem,27、3404)。これらのペプチドは、バイオテクノロジー分野の当業者に既知の方法でも製造できた。例えば、DNA、RNA、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、mRNA、総RNA、hnRNA、合成RNAの群から選択される核酸を用いて、任意のペプチドを生体細胞培養で生産し、採取できる。ペプチドの配列を表1に示す。表1:ラミニン由来ペプチド
(*)残基名は上のSkubitzに従う
【0055】
本実施例で対照として使用するその他のラミニンペプチドは、AS31(残基YIGSRを含む)、AC15、F9(その他のラミニンペプチド)、ラミニン∝鎖の球形部の第4ループのペプチドR27などである。
【0056】
厳密にはR38由来の断片またはアナログであるその他のペプチドを作製し、下の表2に示す。表2に開示しているペプチド5200および5101ないし5111は、上の表1のペプチドと同じ方法で作製した。表2のペプチドは、ヒトR38(5300)、R38の断片、5300由来の断片5111、またはR38のアナログを含み、当業者に既知の技術に従って、1つまたは複数の点置換を行った。これらのペプチドを作製し、特にペプチドR38の実効電荷を変えることで生じる抗DNA抗体の結合作用に対する効果について検討した。
表2:マウスR38ペプチドの合成ペプチドアナログ
a.a.=アミノ酸
(モノクローナル抗体)
【0057】
C72マウス抗DNA抗体は(NZBxNZW)F1ループスマウス由来であり、Eilat D. et al J.Immunol.(1991)147 361−368に記載されたハイブリドーマ技術を用いて得られた。モノクローナル抗DNA抗体DIL6およびB3はループス患者由来であり、M.R. et al J. Clin Invest.(1994)93 1787−1799およびEhrenstein M.R. et al Kidney Inter.(1995)48 705−711に記載されたハイブリドーマ技術を用いて得られた。
【0058】
以下の説明はラミニンおよび本明細書で開示されるペプチドに特異的な抗体の使用を意図していることを理解する必要がある。ラミニンおよびR38とそのアナログならびに誘導体に特異的なペプチドを製造する方法は、当業者には既知である。これに関して本文に既定の参照文(“Antibodies, A Laboratory Manual,” Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Publishing 1988)を含め、参照しながらその内容を本明細書に組み込む。本参照文は、ラミニンペプチドに対するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体等、単一特異性の抗体を得るため使用される方法を開示する。
(抗ペプチド(直接結合)ELISA)
【0059】
ウェルをペプチド10μg/mlで被覆し、PBS(pH7.4)溶解1%BSA(ウシ血清アルブミン)でブロックし、適切に希釈した血漿またはモノクローナル抗体を用いて反応させ、アルカリホスファターゼと結合させた抗ヒトまたは抗マウス免疫グロブリン酵素を用いてインキュベートした。基質(Sigma 100ホスファターゼ基質タブレット)を添加し、Organon Teknika Microwell System分光器を波長405nmで用いて着色することでこれを検出した。
(競合的阻害試験)
【0060】
競合的阻害試験において、種々の濃度の阻害物質(例えばペプチド、DNA、ヘパリン)またはDNaseを用いて45分間室温でインキュベートし、前述のとおり残存する結合物をELISAにより評価した。阻害率(%)の計算は以下の通り。
O.D.結合(阻害物質なし)−O.D.結合物(阻害物質あり)x100/O.D.結合物(阻害物質なし)=阻害率(%)
【実施例1】
【0061】
ラミニンペプチドとSLE抗体の結合
A:ラミニン∝鎖のC末端ペプチドとマウスSLE抗体との結合。
上述の通り、C72マウス抗DNA抗体とラミニンペプチドの相互作用を、ELISAを用いて解析した。C72条件培地を種々の希釈を用いてPBSで希釈した。結果を図1に要約し、C72抗DNA抗体がラミニン∝鎖のペプチドR28およびR18とではなく、5200、R37、およびR30などのペプチドと結合することを示す。対照マウス抗体である抗HEL Hy5はペプチド5200と結合しなかった(データなし)。
【0062】
B:DNAおよびヘパリンによるC72と5200との結合阻害の阻害
C72と5200の結合について、5200、R38、R18、ヘパリン、DNA、およびDNaseを用いたインキュベーションの前と後に試験を行った。結果を図2に要約し、本発明のペプチドであるR38または5200によるC72と5200との結合阻害がDNAおよびヘパリンにより阻害されることを示す。阻害率は、阻害剤を用いてインキュベーションした後のO.D.の低下率である。
【実施例2】
【0063】
ポリクローナルマウス抗体とペプチド5200との結合
直接結合ELISA法によりMRL/lpr/lpr尿中抗体とペプチド5200の相互作用を解析したところ、特異的な結合が認められた。そのため、少なくともマウス5匹(MRL/lpr/lprまたは対照マウス(例;BALB/c))の蓄尿を、上述の通りR38’(5200)、R18、またはDNAで被覆したウェルに添加し、結合した5200についてELISAを用いて試験した。
【0064】
マウス尿中免疫グロブリンと5200との結合
各群は蓄尿からなる。
U.D.‐未検出
(*)405 nmでのO.D.
【実施例3】
【0065】
ヒトモノクローナルループス抗体とペプチド5200との結合
ヒトモノクローナル抗DNA抗体DIL6およびB3はループス患者由来であり、ハイブリドーマ法を用いて得られた。図3および4に示されるとおり、これらの抗体は試験対象のその他のラミニンペプチドではなく、ペプチド5200と結合することが確認された。図3および4では、ペプチドは上または以下を意味する。AS30はR27、AS19はR35、AS35はR26、AS17はR28、AS6はR18。
【実施例4】
【0066】
マウスSLEの臨床経過に対するR38(5100)およびR38’の効果
ペプチドR38がSLEの経過に影響を及ぼすかどうか調べるため、MRL/lpr/lprマウスの疾患に対する効果について試験を行った。PBS 0.1 ml中に溶解した5200 60μg(R38’単独または各30μgでペプチドと混合)を週齢6週の雌MRL/lpr/lprマウスに週1回、16週間腹腔内投与し、マウスの生存率(図8)および腎組織を評価した。
【0067】
PBS 0.1 ml中に溶解した5100(R38)または5300(ヒトR38)50μgを週齢6週の雌MRL/lpr/lprマウスに週3回腹腔内投与し、マウスの生存率(図9)および腎組織を評価した。対照マウスには、リン酸緩衝液0.1 mlを投与した。試験群および対照群にはマウス12ないし15匹を含めた。
【0068】
5100、5200、または5300を投与したMRL/lpr/lprマウスの生存率をPBS投与マウスと比較した。図8および9に示されるとおり、5100または5200を投与したマウスの生存率は対照マウスより有意に高かった。図8および9では、x軸に示した時間(日数)はマウスの週齢である。5ヵ月後に各群2匹を屠殺し、光学顕微鏡を用いて腎臓を評価した。対照マウスの腎臓には半月体および硬化を有する重度のびまん性の増殖性糸球体腎炎が認められ、5100または5200投与マウスでは軽度の増殖性変化が認められたものの半月体および硬化は認められなかった。
【実施例5】
【0069】
抗R38抗体と疾患の活動性の相関性の分析
活動正および非活動性の腎疾患の有無によらず、ループス患者由来の尿を繰り返し採取し、ELISAにより抗R38抗体の有無について試験を行った。疾患の活性度についても承認された臨床パラメータおよび血清学的パラメータ(Lockshin M.D. et al. Am. J. Med(1984)77 893−898)を用いて評価し、抗R38抗体量との相関性を比較した。上述のとおり、ELISAにより抗R38抗体について、SLE患者37例の尿検体103件を用いて試験を行った。非腎疾患患者由来の検体が23件、腎疾患患者由来の検体が80件であった。さらにSLEと無関係の腎疾患患者由来の検体12も試験対象とした。
【0070】
以下の結果が得られた。
*p<0.01¥01
【0071】
19種類の臨床パラメータおよび検査パラメータ(上のLockshin M.D.et al.)を含む活動性スコアによると、腎疾患患者の検体の陽性度は通常活動している疾患と相関していた。これらのパラメータには、脱毛症、発疹、発熱、漿膜炎、関節痛/関節炎、粘膜潰瘍、神経性事象、倦怠感、眼底の変化、結節、脾臓などの臨床基準の有無または状態の評価ならびにESR(赤血球沈降速度)、抗DNA抗体、補体(U/ml)、クレアチニン、ヘモグロビン(g/dl)、PLT血小板(/mm2)または検尿などの血液検査を含めた。これらのパラメータの評価は、上のLockshinの記載どおりに測定する。得られた全割合は、評価したパラメータのみを反映している。
【0072】
尿検体を1回以上試験した患者もあり、臨床活動性と抗R38結合量の間に良好な相関が認められた。異なる3例のループス患者由来の代表的な3つの例を図5、6、および7に示す。この場合、x軸は病院訪問回数を、y軸は観察された結合(OD 405nm)または蒸気の活動性スコアの割合を示す。これらの図からわかるとおり、ペプチドR38を用いた測定法により、疾患の活動性について信頼性の高いモニタリング法が得られた。
【実施例6】
【0073】
抗5200R(38’)抗体と疾患の活動性の相関性の分析 さらに実験において、ループス患者由来の尿検体178件(活動性および非活動性状態の腎疾患のある検体24件、ない検体22件)を採取し、上述のとおりELISAにより抗5200抗体の有無について試験を行った。以下の結果が得られた。
*p<0.001
【実施例7】
【0074】
抗5100(R38)抗体と疾患の活動性の相関性の分析
ループス患者21例由来の尿検体45件(活動性および非活動性状態の腎疾患のある検体若干とない検体若干)を採取し、上述のとおり直接ELISAにより抗5100抗体の有無について試験を行った。
【0075】
以下の結果が得られた。
*p<0.03
【実施例8】
【0076】
抗5200(R38’)抗体と疾患の活動性の相関性の分析
ループス患者21例(活動性および非活動性状態の腎疾患のある検体とない検体)由来の尿検体52件を採取し、上述のとおりELISAにより抗5200抗体の有無について試験を行った。
【0077】
以下の結果が得られた。
【実施例9】
【0078】
抗5108、5101、5109、および5110抗体と疾患の活動性の相関性の分析
実施例7および8のループス患者の一部から尿検体24件(活動性および非活動性状態の腎疾患のある検体2件、ない検体22件)を採取し、上述のとおりELISAにより抗5108との結合について試験を行った。
【0079】
以下の結果が得られた。
【0080】
ペプチド5101、5109、および5110との結合でも同様の結果が確認された。
【実施例10】
【0081】
C72およびB3のR38およびペプチドアナログとの直接結合
本明細書で記載した方法に従い、本発明のペプチドのC72マウス抗DNA抗体およびB3ヒト抗DNA抗体との直接結合能について試験を行った。直接結合試験の結果を表3で報告する。
表3:C72およびB3のR38およびアナログペプチドとの直接結合
*NT:未試験
+:1時間後の直接結合ELISA試験のO.D.
‡:2時間後の直接結合ELISA試験のO.D.
【実施例11】
【0082】
ペプチドアナログによるC72とR38との結合の競合的阻害
競合的阻害試験では、C72抗DNA抗体との結合について、各ペプチドがR38(5100)とどのように競合するのかを比較した。本明細書で記載した方法に従って実施した試験結果を下の表4に開示し、図10を参照しながらさらに説明する。
表4:C72のR38との結合阻害
*ELISA試験においてC72抗DNA抗体のペプチド5100(R38)への結合が50%阻害される競合阻害物質の濃度。
*NI*阻害されず
【実施例12】
【0083】
本実施例は、被験者の血液から病原性ループス抗体である抗R38(TV‐5100)(およびその誘導体)を限外濾過法を用いて除去するためのカラムの使用を示す。
【0084】
カラムの作製
ペプチドR38を結合緩衝液5 ml中1 mg/mlの濃度で結合緩衝液(0.2M NaHCO3、0.5M NaCl、pH8.3)に溶解した。N‐ヒドロキシスクシニミド(NHS)-activated SepharoseTM高性能カラム(ファーマシア社、17‐0717‐01)5 mlを使用する。カラム中のイソプロパノールを冷たい(4℃)HCl 1 mM 30 mlでカラムから洗い出し、次にシリンジ(2.5 ml/分)を用いてペプチド溶液5 mlをカラムに注入した。カラムを密閉し、室温で30分間直立させた。次に緩衝液A(0.5 Mエタノールアミン、0.5 M NaCl、pH8.3)30 mlおよび緩衝液B(0.5M酢酸、0.5M NaCl、pH4)でカラムを連続3回洗浄し、次にpHが中性の緩衝液(0.05 M Na2HPO4および0.1% NaN3)で洗浄した。
【0085】
抗R38(TV‐5100)抗体の親和性吸着 PBS(リン酸緩衝生理食塩水)15 ml後、溶出緩衝液(0.1 M塩酸グリシン)15 ml、次にPBS 50 mlでカラムを洗浄した。C72抗体または患者の血漿検体を0.45ミクロンフィルタで濾過した。適合したシリンジを用いて、2.5 ml/分の速度で検体をカラムに入れた。次にPBS 5mlでカラムを洗浄し、流液形を再度カラムに入れた。検体(原形および流液形)とR38の結合について、抗R38ELISAにより試験を行った。
【0086】
即時例では、マウスC72とSLE患者の血漿をR38カラムに入れた。原形検体およびカラムの流液形において、ELISAにより抗R38結合を評価した。
【0087】
表5に示されるとおり、カラムに対する親和性吸着により、マウスモノクローナルC72の抗R38活性の99%が、ヒトSLE患者の血漿中の抗体の30ないし60%が除去された。したがって、SLE患者の血漿の親和性吸着によりSLEを処理し、患者の静脈内に血漿を戻した。
表5:親和性吸着
【実施例13】
【0088】
全身性エリテマトーデス(SLEまたはループス)患者を対象とするLupusorbTM免疫吸着カラムを用いた第I/II相試験
ルーチンの血漿アフェレーシス時に、SLE患者10例に対しLupusorbTM免疫吸着カラムを単回実施して処理した。LupusorbTM免疫吸着カラムは、R38(VRT101)ペプチドを含む親和性吸着カラムである。本試験組入れ前の患者スクリーニングは、血漿アフェレーシス予定日の3ヵ月前から5日前までである。血漿アフェレーシス実施日に患者を本試験に組み入れ、LupusorbTMカラムを用いて1.5ないし2.25時間にわたって処理する。次にLupusorbTMカラム処置後8週間にわたってフォローアップを行う。
【0089】
最初の患者に処理を行い、2ヵ月間のフォローアップ期間を完了した。有害事象は報告されず、本処置の忍容性は良好であった。予備的有効性に関して、図12は施行前、施行後、フォローアップ期間中の患者のVRT101抗体量の変化を示す。図12に示されるとおり、抗VRT(R38)抗体量はLupusorbTM血漿アフェレーシス後に減少し、5週間以上経過して元の抗体量に戻った。
【0090】
同じ方法に従って得られた追加の患者情報を図13ないし22に示す。013および027の患者では、抗VRT101抗体量に対する効果は認められなかった。残りの患者はいずれもフォローアップ来院2または3からフォローアップ来院4または5まででわかるように抗VRT(R38)抗体量が正常値まで減少した。ただし、VRT101値が減少したものの正常値を上回った003の患者を除く。患者10例に有意なリバウンド効果は認められなかった。LupusorbTMの処置と関連のある重篤な有害事象は報告されなかった。
【実施例14】
【0091】
SLE患者の血漿中抗VRT(R38)抗体量の評価
【0092】
ループス患者(LM)の血漿10mlをカラムに入れた。PBS(少なくとも5カラム容量)でカラムをすすぎ、HCL 10m/M(pH3.0)に溶解した0.05M NaClで溶出し、画分1 mlを採取した。画分ピーク(ELISAにより抗VRT101結合を用いて同定)は7ないし9で、免疫拡散法(RID)またはELISAによりIgG含量について試験を行った。元の血漿中免疫グロブリン量は164 mg(1640 mg/dLの濃度より)であり、ピーク画分は200μg(RIDにより濃度は6.9 mg/dL未満)となった。
【0093】
これらの結果は、特異的抗体の量が免疫グロブリン含量中でごくわずかである、つまり免疫グロブリン全体の約0.12%であることを示している。
【実施例15】
【0094】
Lupusorbカラムの容量
小規模な実験において、C72抗体を用いたLupusorbカラムの飽和により、Lupusorbカラムの結合能について以下のとおり試験を行った。:免疫グロブリン約12μg/mlを含有するC72の上清350 mlを5 ml Lupusorbカラムに入れた。流液形の画分を採取し、ELISAによりVRT101結合について試験を行った。
【0095】
最初の画分は60 ml、以降の画分は各30mlとした。図26からわかるとおり、最初の画分とVRT101との結合はごくわずかである。カラムのC72抗体除去能は上清(IgG 1.8mg)150ml後に飽和状態となり、カラムが樹脂処理した免疫グロブリン/ml少なくとも360μgと結合し得ることを示している。
【実施例16】
【0096】
血漿アフェレーシスを実施し、血漿容量および流速などの技術パラメータを規定するLupusorbの性能を測るため、ヒツジ3匹を用いて、1ヵ月に2ないし3回血漿アフェレーシス実験を実施した。ヒツジに麻酔をかけ、挿管し、血漿3リットルをアフェレーシスした。流速は16ないし20 ml/分に設定した。
【0097】
血漿はカラムを問題なく持続的かつ均一に通過した。挿管時の麻酔が原因で2回目実施後にヒツジ1匹が死亡した。残りのヒツジはアフェレーシスに対し即時または遅延性の反応を示さず、血液学的および生化学的血液パラメータは元の結果から有意な変化を示さなかった。
【0098】
前記の記述および実施例は単なる例示であることと、多くの変更形態および変形形態は下で主張されるとおり、本発明の目的と精神から逸脱することなく1人の当業者によってなされたものであることを理解すべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、全身性エリテマトーデスを治療および検出するためのペプチドR38および関連アナログなど、ラミニンペプチドおよびラミニン誘導体の使用に関する。本発明は、全身性エリテマトーデスの治療法も提供する。本発明は、患者の血漿中抗R38抗体量を低減させる方法もさらに提供する。
【背景技術】
【0002】
全身性エリテマトーデス(SLE)は、多臓器に関連する自己免疫疾患である。自己免疫性炎症過程に腎臓が関与することで生じるループス糸球体腎炎が、SLEの罹患および死亡の主因である(非特許文献1)。
【0003】
血清学上のSLEの特徴は、血清中に種々の自己抗体が生じることであり、なかでも最も顕著にみられるのは抗DNA自己抗体である(非特許文献2)。種々の炎症性および自己免疫性の疾患で生じる抗DNA抗体価は低いが、主にSLEでは高値であり、SLEの実際の診断は抗体価の高い抗DNA抗体と低補体価を組み合わせて行う(非特許文献3)。
【0004】
ループス患者由来腎の染色またはマウス由来ループスの染色により、免疫グロブリンと糸球体基底膜(GBM)の結合が示されている(非特許文献4)。ループス患者の腎臓および硫酸化グリコサミノグリカンと交差反応を示したMRL/lpr/lrマウスから抗DNA抗体が溶出されることも示されたが、血清中の抗DNA抗体はこの交差反応を示さなかった(非特許文献5)。これらの結果は、細胞外基質(ECM)が、腎炎原性自己抗体の標的であるループスの病因に関与していることを示唆している。
【0005】
Termmat R.M.らは、ラミニンとヘパリンのように、ECMの成分がマウスのモノクローナル抗体抗DNA抗体と交差反応を示すことを開示している(非特許文献6)。特許文献1は、活性ループスを有する患者の尿に抗ECM抗体が存在することを開示している。さらに、これらの抗体とECMの200 kDaのラミニン成分との交差反応と、これらの抗ECM/ラミニン抗体の尿中検出に基づくSLE検査についても開示している。
【0006】
R38は、マウスのラミニン∝鎖のC末端領域から単離したペプチド配列である(非特許文献7では残基2890ないし2910、非特許文献8では残基2851ないし2871)。R38の位置は、第4および第5ループの球状領域の接合部である(上の非特許文献7のペプチドGD−2であり、
KEGYKVRLDLNITLEFRTTSK (SEQ.ID.NO.1)
のアミノ酸配列からなる)。
【0007】
現在のSLE療法は、過剰反応する免疫系を抑制するコルチコステロイドに限定されている。この療法は特異的ではなく、避けられない副作用自体が致死性であると考えられる。さらに、免疫抑制療法は複雑で、臨床症状、血清学的血液検査、および腎臓生検を組み合わせた結果で開始が決まる。したがって、SLEに特異性が高く、免疫抑制剤の副作用がない療法および疾患の活動性を評価する特異性の高い、侵襲性の低い測定法が必要である。実際に、最近のレビュー(非特許文献9)によると、血液検査はSLEの確定診断に有用であるが、「疾患の活動性をモニタリングするにはあまり有用ではない」とされている。
【0008】
上述のいずれの参考文献も、ペプチドR38またはそのアナログの投与を用いたSLEの治療法について開示していない。さらに、上述のいずれの参考文献も、SLEの診断検査またはSLEの活動性のモニタリングにおけるR38のペプチドの使用について開示していない。上述のすべての特許および参考文献の内容を参照により本明細書に組み込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第670,495号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Alarcon−Segovia D. in:Primer on the Rheumatic Diseases. Ed.Schumascher,H.R. Arthritis Foundation, Atlanta, Georgia (1988) pp.96−100
【非特許文献2】Naparstek Y.,et al.,Ann.Rev. Immunol. (1993), 11,79−104
【非特許文献3】Wallace,D.J.et al.in:Dubois‘ Lupus Erythematosus, Lea and Febiger, Philadelphia,(1993)
【非特許文献4】Naparstek, Y.,et al.,Arthritis Rheum.(1990),33,1554−1559
【非特許文献5】J. Autoimmun.(1990),3,531−545
【非特許文献6】Skubitz et al.,J.Cell. Biol.(1991),115,1137−1148
【非特許文献7】Sasaki, M. et al., J. Biol. Chem.(1998), 263, 16, 536−16,544
【非特許文献8】The Lancet (1995),310,1257−1261
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明の目的は、ラミニンペプチドの投与を含む全身性エリテマトーデスの治療法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、被験者の血漿から抗R38(およびその誘導体)抗体を除去し、被験者の血漿へ戻す限外濾過法を含むSLE治療法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、R38’およびペプチドR38のその他の新規のアナログと誘導体を開示することであり、これらの投与法はSLEの治療法を含む。
【0014】
本発明の別の目的は、ペプチドR38、R38’、およびその他の構造的に関連のあるアナログとそれらの誘導体を用いたSLEの診断法を提供することである。
【0015】
本発明は、SLE治療に使用されるペプチドR38、ペプチドR38’、R38のその他の新規アナログおよび誘導体を含む医薬組成物または薬剤的に許容可能なその塩類とも関連している。
【0016】
本明細書で使用される用語「ペプチドR38」は、ペプチドR38それ自体と、完全ペプチドの活性を保持するそのアナログ、誘導体、断片にも使用する。「アナログ」という用語は、例えば個々または複数のアミノ酸残基の相同置換により生じるペプチド変異体を含むことを意図している。「誘導体」という用語は、R38の生物学的活性を同様に保有するR38それ自体またはそのアナログに可能な軽微な化学変化に使用し、「断片」という用語は短いR38分子に使用する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】C72マウスの抗DNA抗体とラミニンペプチドとの直接結合を示す。
【図2】R38、5200、DNA、DNase、およびヘパリンによるC72とR38アナログ5200(本明細書では時にR38’と記載する)との結合の阻害を示す。
【図3】ヒトループスモノクローナル抗DNA抗体(DIL6およびB3)とラミニンペプチドおよびその誘導体との結合を示す。
【図4】ヒトループスモノクローナル抗DNA抗体(DIL6およびB3)とラミニンペプチドおよびその誘導体との結合を示す。
【図5】ループス患者3例におけるループスの活動性スコアと尿中抗R38抗体量との相関を示す。
【図6】ループス患者3例におけるループスの活動性スコアと尿中抗R38抗体量との相関を示す。
【図7】ループス患者3例におけるループスの活動性スコアと尿中抗R38抗体量との相関を示す。
【図8】ループスマウスの生存期間延長に対する5200(R38’)の効果を示す。
【図9】ループスマウスの生存期間延長に対するR38(本明細書では5100と記載することもある)投与の効果を示す。
【図10】DNAおよびR38アナログによるC72とR38との結合の阻害を示す。
【図11】血清中の抗体濃度とOD値の関係を示すグラフ。
【図12】ある患者の投与前および投与後の血清中の抗R38抗体量の変化を示すグラフ。
【図13】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図14】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図15】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図16】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図17】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図18】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図19】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図20】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図21】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図22】本発明の方法およびデバイスを用いた投与前および投与後の血清中の抗R38抗体に関する患者の個別データを示すグラフ。
【図23】本発明の免疫吸着カラムの使用を示す本発明の実施形態の模式図。矢印「A」はカラムの方向を示す。
【図24】本発明の吸着カラム図。
【図25】C72抗R38抗体の本発明の吸着カラムへの結合を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施例で使用されるなど、本明細書および請求項で使用されるとおり、特に具体的に記載していない限り、表記していなくてもすべての数値の前に「約」があると考える。また、本明細書に記載の数値の範囲は、そのすべての下位の範囲を含む。
【0019】
本用途は、「治験薬概要書」2006年7月25日付第001版に添付されている付録のすべての材料を参照することにより本明細書に明示的に組み込まれる。したがって、本発明は、全身性エリテマトーデス(SLE)を治療するためのラミニンペプチドの使用に関するものである。
【0020】
本発明は、マウスのラミニン∝鎖のC末端領域由来のペプチドであるR38を、病原性のループス抗体を用いて確認する観察結果を基礎としているため、ループス抗体との結合を競合することでSLEを治療できる可能性があると考えられる。
【0021】
さらに、本発明は全身性エリテマトーデス治療におけるラミニン由来の2種類以上のペプチドの混合物の使用に関する。好適な実施形態では、少なくとも1つのペプチドはR38またはそのアナログである。
【0022】
本発明は、被験者の血漿からループス抗体(抗R38およびその誘導体)を除去し、被験者の血漿へ戻す限外濾過法を用いて、SLEを有する被験者を治療する方法も提供する。1つの実施形態では、少なくとも1種類のペプチドがカラムに吸着するカラムクロマトグラフィーを用いて抗体を除去する。さらなる実施形態では、2種類以上のペプチドがカラムに吸着する。別の実施形態では、ペプチドはSEQ.ID.NO.1ないし22からなる群から選択される。さらなる実施形態では、ペプチドはSEQ.ID.NO.1を有する。別の実施形態では、ペプチドはSEQ.ID.NO.10を有する。1つの実施形態では、カラムはNHS-activated SepharoseTM高性能カラムである。
【0023】
本発明は、尿中の抗体のラミニンのR38成分との結合能を検出することを含む、SLE患者の疾患の活動性をモニタリングする方法にも関する。この結合は、種々の検査パラメータを組み合わせることで評価される疾患の活動性と直接相関する。
【0024】
R38と結合する抗体量の増加は、SLEの活動期へ近づいていることを示し、抗体量の減少は寛解に近づいていることを示すと考えられる。したがって、本法は、ラミニンに特異的な抗体量の変化を検出する測定法を提供し、本症が活動期に入る前に治療を開始できるようにする。
【0025】
本法は、尿を用いて実施可能であり、静脈穿刺が不要である、患者自身が使用できる簡易測定法も提供する。これは診断測定法、つまりSLEの活動性を評価するルーチンの測定法として使用可能であり、疾患増悪の早期発見およびループス腎炎に対する早期治療的介入を可能にする。
【0026】
特許文献1に記載の方法を用いて、R38またはアナログ、断片または誘導体をそのような測定に使用できる。したがって、ペプチドR38を固相に結合させ、患者の尿を用いてインキュベートできる。患者にSLE罹患が疑われる場合、SLEに罹患している場合、または本症の活動期に近づいている場合に、尿中のR38結合抗体量が増加する。
【0027】
R38結合抗体は、当業者には既知の方法を用いて検出できる。そのような検出法の例は、ELISAおよびその変形形態、化学発光等である。検出の実際の方法は、本測定の成功にとって重要ではない。次に、観察されたR38結合抗体量を対照群で観察された数値と比較する。対照群は健康被験者または内部標準等の役割を果たす患者(観察された数値を同一患者の早期の数値と比較する等)からなる。このような方法で、患者の疾患の状態の特徴をまとめ、さらなる活動期または寛解状態の指標として使用する。薬剤的に許容可能なR38ペプチドの塩類は、ペプチド分子のカルボキシ基の塩およびアミノ基の酸付加塩の両方を含む。カルボキシ基の塩は当業者には既知の方法で生成されており、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、第二鉄、または亜鉛等の無機塩と、トリエタノールアミン、アルギニンまたはリシン、ピペリジン、プロカイン等のアミンにより生成される塩等の有機塩基を有する塩とを含む。酸付加塩は、塩酸およびスルホンサン等の鉱酸を有する塩と、酢酸およびシュウ酸等の有機酸の塩とを含む。
【0028】
医薬組成物は、唯一のペプチドまたは高分子キャリアあるいはポリマーと結合させた重合体あるいは複合体であるペプチドR38等のラミニンペプチドを含む。本組成物は、薬剤的に許容可能な賦形剤を任意選択的に含む。代替の実施形態では、本組成物はペプチドR38のみを含む。
【0029】
投与経路は、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、関節内、鼻腔内、くも膜下内、皮内、経皮、または吸入などがある。
【0030】
SLEを治療する際のペプチドR38または誘導体の有効量は、1回約1μg/kg〜100 mg/kg(体重)と考えられる。これは当業者には容易に計算できる。投与量は、レシピエントの年齢、性別、健康状態、体重、併用療法の種類(あれば)、および投与頻度によって異なる。
【0031】
さらなる実施形態では、本発明は患者の血漿中の抗R38抗体量を低減させる方法、すなわち1)患者の血漿を除去し、その血漿をSEQ.ID.No.1のアミノ酸配列を有するペプチドを含む親和性吸着カラムに通すステップと、2)その血漿を患者の体内へ戻すステップとを含む方法を提供する。患者の血漿中の抗R38抗体量は、投与前より約60%以上低く、投与前より約80%以上低い症例もあれば、投与前より90%以上低い症例もあり、血漿中抗38抗体量が投与前より約95%以上または99%も低くなる症例もある。本発明の方法では、カラムに通した血漿すべてを患者に戻すため、血漿置換は不要である。
【0032】
本発明のこれらの実施形態の長所は、
・ループス専用の第一治療法が得られる。ループス自己抗体と結合する特異的な抗原を標的とする。
・高効率の方法である。血漿からループスを引き起こす抗原のみを除去し、その他すべての重要な血漿成分を保持する。
・使用されているその他すべての既存の治療法(例;免疫抑制薬、非特異的な血漿アフェレーシス、全血漿交換)と比べて副作用が少ない。
・吸着カラムの操作が単純かつ容易である。
・治療の効率および効果が高いため費用対効果が高く、重症患者にかかる医療コスト全体が削減される。
【0033】
実施例13および図12で示されるとおり、OD(光学密度405nm)を用いて測定したところ、患者の投与前の血漿中抗R38(VRT101)抗体量は約0.8であり、投与直後は約0.6であった。投与約2週間後の抗R38抗体もさらに低下し、OD測定値は約0.2であった。図11(OD値と血清中VRT101濃度の関係)に記載の情報から、OD値の約70%の低下(0.6から0.2)は、血漿中抗体濃度の97%低下に相当する。
【0034】
抗R38抗体量は約1〜5週間低下し続け、投与直後の濃度を下回り、7〜8週間かけて投与前の濃度に緩徐に戻った。したがって、さらなる実施形態では、本発明はSEQ.ID.NO.1のアミノ酸配列を有するペプチドを含む親和性のある吸着カラムを用いて患者の血漿を限外濾過的に治療することにより、血漿中の抗R38抗体量を低減させる方法を提供し、このとき抗体量は約1〜5週間にわたり低く、投与直後の濃度を下回り、その後投与前の濃度まで徐々に上昇する。投与直後から投与2週間後までの抗体量の変化の割合は80%を超え、90%を超える症例もあり、95%または97%を超える症例もある。さらに、抗体量が投与前の濃度に戻るのに少なくとも3週間、4週間、症例によっては5または6週間かかることもある。
【0035】
さらなる態様では、本発明は本発明の限外濾過療法に使用する抗原特異的な免疫吸着カラムを提供する。カラムは1)SEQ.ID.NO.1のアミノ酸配列を有するリガンドペプチドまたはその変異体あるいは誘導体と、2)リガンドペプチドが共有結合する基質を含むカラムとを備える。1つの実施形態では、本発明の免疫吸着カラムはLupusorbTMカラムである。
【0036】
LupusorbTMカラムはリガンドペプチドであるR38が共有結合してDV2吸着装置タイプの使い捨て医療用デバイスを形成するSepharoseTMビーズマトリックスを含むプラスチックケーシングを備え、血漿アフェレーシス施行時にヒト血漿中の抗R38抗体を可逆的に結合させる。
【0037】
LupusorbTMカラムは、標準的な血漿アフェレーシス施行時に使用するようにデザインされている。LupusorbTMカラムの上側出口と下側出口は、対応する血漿アフェレーシス装置の入口または出口ラインに適合する標準的なコネクタである。血液除去、血漿からの血球分離、これらの血球の体内循環への返還からなる通常の血漿アフェレーシスでは、新鮮血漿または代用物で希釈する。本法を用いて血流から抗体を取り除き、それにより抗体が標的を攻撃できないようにする。
【0038】
本発明は、ループス自己抗体に特異的な初めての血漿アフェレーシスを提供する。本法では、ループス患者の血漿をVRT101(R38)免疫吸着カラムに通す(図24)。本発明の方法では、患者の血漿を患者に戻すため、新鮮血漿および血漿代替物を用いて希釈する必要はない。
【0039】
病原性のループス自己抗体をカラムに結合させることで除去し、残りの血漿成分を患者に再度輸血するため、重要な血漿成分が失われることはない。R38はCNBr活性化セファロースと共有結合させ、52ml吸着装置タイプの使い捨て医療用デバイスを形成するセファロースビーズマトリックスを含むプラスチックケーシングを備えるLupusorbTMカラムを形成し、血漿アフェレーシス施行時にヒト血漿中の各病原体を可逆的に結合させる。
【0040】
ケーシングは規定のポリカーボネートから作られ、PTFEおよびPET膜を含む。ケーシング材料に必ず必要であったのは、
・VIクラスのプラスチックについてUSPの要件を満たす、
・意図した使用に対してEN ISO 10993の要件を満たす、
・エチレンオキシドによる減菌に適する、
・再生時に使用されるpH値に抵抗性を示すなどである。
カラムのケーシングは上部、中央部、底部の3種類の部品からなる(図25)。3種類とも最終的には接着剤を用いない方法で結合される。
ケーシングのサイズ仕様
【0041】
上部は中央の雌ルアーコネクタに取り付けられ、対応するルアーキャップ(外側の切り取りラベルおよび内側にある殺菌バリアとして疎水性の膜で密閉された換気穴を有する円形部)で密閉され、単一膜層(PET、11μm)が上部の内径を完全に被覆する。
【0042】
中央の雌ルアーコネクタには、アフェレーシス時に血漿輸送(流入ライン)に使用される雄ルアーロックを有する吸着材用のチューブシステムのための安定した特徴的な取り付け具が必要である。このような標準的なコネクタの形状により、接続失敗、血漿喪失、および汚染のリスクは低くなる。使用時まで蓋で密閉する。
【0043】
治療および再生時に基質の圧増大とその後エアポケットが生じるのを避けるため、ケーシングは蓋に円形に配列される穴から自己換気する。吸着材を充填した後、ラベルでこれらの穴を密閉し、生理食塩水の蒸発およびその後のセファロース懸濁液の劣化を防ぐ。治療時および貯蔵時も吸着材含有物が汚染されるのを防ぐため、換気穴を内側から疎水性殺菌バリアで密閉する。吸着材の全内径上の膜層は、貯蔵、輸送、および取り扱い時にセファロースが吸着材の流入コネクタへ入るのを阻止できる。さらに、入ってくる血漿がセファロース表面に分布するのも助ける。
【0044】
中央部は吸着材の実際の容積を補填する、雌ルアーコネクタを有する側部の単一のポリカーボネート製シリンダーであり、製造時にセファロースが充填される。コネクタは対応する蓋で密閉される。流出チューブはこのコネクタには適合していないため、セファロースが戻りラインに入って患者の体内に入る危険はない。
【0045】
底部には中央の雄ルアーコネクタおよびPET膜層(孔サイズ11μm)が取り付けられている。
【0046】
標準的な中央の雄ルアーコネクタはチューブセットの流出ライン上で対応する部品のみ取り付けられるように規定されており、流入ラインと流出ラインの組み合わせの不適合性を防止する。このコネクタも使用時まで蓋で密閉される。
【0047】
11 μmの膜の孔サイズは十分小さいため、選択したアガロースゲル基質のビーズを保持することが可能である。このアガロースゲルはSepharoseTM等で、サイズの分布は45ないし165μmである。さらに、第2の独立した安全システムとして、流出コネクタと流出チューブの間に孔サイズが5μmの減菌粒子フィルタを使用する必要がある。
【0048】
クロマトグラフィの基質は、十分量のペプチドまたは抗体の結合に適するアガロースを基剤とするビーズ形成アガロースゲル基質と規定される。このペプチドまたは抗体は物理的・化学的安定性が高く、吸着率は低く、血漿流速は医学的に安全かつ技術的に実現可能な流速に基づいている。
【0049】
1つの実施形態では、Lupusorb吸着材として市販のSepharoseTM4FFを選択した。この4FF SepharoseTMは減菌仕様であり、生物汚染度が低く、ヒト血漿や再生溶液のpHの範囲に耐え得ることが可能である。リガンド結合に使用される化学物質に耐性があり、結合に適する部位を提供する。吸着はごくわずかで、流速はヒト血漿分離に適しており、ビーズは保持可能なサイズで品質保持期間が長い。
【0050】
4FF SepharoseTMは、活性化、リガンドの結合、および阻害後のアフィニティー・クロマトグラフィーのベース基質として用いられる仕様になっている。SepharoseTM 4FFは架橋アガロース(4%)を含む球形のビーズを含み、ビーズのサイズは95%超が45ないし165μmの範囲(平均90μm)となるように規定されている。このセファロースで得られる流速は血漿アフェレーシスにとって技術的に実現可能かつ医学的に安全である流速と一致している(部位によらず、15ないし25 ml/分)。ビーズはpHの範囲を2ないし12、圧は最高2.0バールという特徴を維持している。
【0051】
4FF SepharoseTMは、広範囲の物質(吸着材の製造および使用時に使用される有機溶媒および水溶液など)に対し高い化学的安定性を示している。また、セファロース上に荷電基がないため、実質的に分解物(アガロース由来の炭水化物)の漏出がなく、非特異的な結合もない。
【0052】
架橋が高度なため、4FF SepharoseTMは高圧減菌で容易に減菌可能であり、出荷規格の一環として極めて低い生物汚染度から開始される。さらに、セファロースは20%エタノールに溶解した状態で供給され、微生物汚染はさらに低減される。このような条件下でのSepharoseTMの品質保持期間は5年である。
【実施例】
【0053】
(ペプチド)
【0054】
マウスラミニン∝鎖のC末端由来のペプチドR26、R28、R30、R31、R35、R37、およびR38(本明細書では「5100」および「TV
5100」とも呼ぶ)およびマウスラミニン∝鎖のN末端由来のペプチドR18を用いて試験を行った。ペプチドは17ないし22 merの合成ペプチドであり、F‐moc法で調製される(Carpino、L.A. & Han、G.Y.(1972),J.Org.Chem,27、3404)。これらのペプチドは、バイオテクノロジー分野の当業者に既知の方法でも製造できた。例えば、DNA、RNA、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、mRNA、総RNA、hnRNA、合成RNAの群から選択される核酸を用いて、任意のペプチドを生体細胞培養で生産し、採取できる。ペプチドの配列を表1に示す。表1:ラミニン由来ペプチド
(*)残基名は上のSkubitzに従う
【0055】
本実施例で対照として使用するその他のラミニンペプチドは、AS31(残基YIGSRを含む)、AC15、F9(その他のラミニンペプチド)、ラミニン∝鎖の球形部の第4ループのペプチドR27などである。
【0056】
厳密にはR38由来の断片またはアナログであるその他のペプチドを作製し、下の表2に示す。表2に開示しているペプチド5200および5101ないし5111は、上の表1のペプチドと同じ方法で作製した。表2のペプチドは、ヒトR38(5300)、R38の断片、5300由来の断片5111、またはR38のアナログを含み、当業者に既知の技術に従って、1つまたは複数の点置換を行った。これらのペプチドを作製し、特にペプチドR38の実効電荷を変えることで生じる抗DNA抗体の結合作用に対する効果について検討した。
表2:マウスR38ペプチドの合成ペプチドアナログ
a.a.=アミノ酸
(モノクローナル抗体)
【0057】
C72マウス抗DNA抗体は(NZBxNZW)F1ループスマウス由来であり、Eilat D. et al J.Immunol.(1991)147 361−368に記載されたハイブリドーマ技術を用いて得られた。モノクローナル抗DNA抗体DIL6およびB3はループス患者由来であり、M.R. et al J. Clin Invest.(1994)93 1787−1799およびEhrenstein M.R. et al Kidney Inter.(1995)48 705−711に記載されたハイブリドーマ技術を用いて得られた。
【0058】
以下の説明はラミニンおよび本明細書で開示されるペプチドに特異的な抗体の使用を意図していることを理解する必要がある。ラミニンおよびR38とそのアナログならびに誘導体に特異的なペプチドを製造する方法は、当業者には既知である。これに関して本文に既定の参照文(“Antibodies, A Laboratory Manual,” Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Publishing 1988)を含め、参照しながらその内容を本明細書に組み込む。本参照文は、ラミニンペプチドに対するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体等、単一特異性の抗体を得るため使用される方法を開示する。
(抗ペプチド(直接結合)ELISA)
【0059】
ウェルをペプチド10μg/mlで被覆し、PBS(pH7.4)溶解1%BSA(ウシ血清アルブミン)でブロックし、適切に希釈した血漿またはモノクローナル抗体を用いて反応させ、アルカリホスファターゼと結合させた抗ヒトまたは抗マウス免疫グロブリン酵素を用いてインキュベートした。基質(Sigma 100ホスファターゼ基質タブレット)を添加し、Organon Teknika Microwell System分光器を波長405nmで用いて着色することでこれを検出した。
(競合的阻害試験)
【0060】
競合的阻害試験において、種々の濃度の阻害物質(例えばペプチド、DNA、ヘパリン)またはDNaseを用いて45分間室温でインキュベートし、前述のとおり残存する結合物をELISAにより評価した。阻害率(%)の計算は以下の通り。
O.D.結合(阻害物質なし)−O.D.結合物(阻害物質あり)x100/O.D.結合物(阻害物質なし)=阻害率(%)
【実施例1】
【0061】
ラミニンペプチドとSLE抗体の結合
A:ラミニン∝鎖のC末端ペプチドとマウスSLE抗体との結合。
上述の通り、C72マウス抗DNA抗体とラミニンペプチドの相互作用を、ELISAを用いて解析した。C72条件培地を種々の希釈を用いてPBSで希釈した。結果を図1に要約し、C72抗DNA抗体がラミニン∝鎖のペプチドR28およびR18とではなく、5200、R37、およびR30などのペプチドと結合することを示す。対照マウス抗体である抗HEL Hy5はペプチド5200と結合しなかった(データなし)。
【0062】
B:DNAおよびヘパリンによるC72と5200との結合阻害の阻害
C72と5200の結合について、5200、R38、R18、ヘパリン、DNA、およびDNaseを用いたインキュベーションの前と後に試験を行った。結果を図2に要約し、本発明のペプチドであるR38または5200によるC72と5200との結合阻害がDNAおよびヘパリンにより阻害されることを示す。阻害率は、阻害剤を用いてインキュベーションした後のO.D.の低下率である。
【実施例2】
【0063】
ポリクローナルマウス抗体とペプチド5200との結合
直接結合ELISA法によりMRL/lpr/lpr尿中抗体とペプチド5200の相互作用を解析したところ、特異的な結合が認められた。そのため、少なくともマウス5匹(MRL/lpr/lprまたは対照マウス(例;BALB/c))の蓄尿を、上述の通りR38’(5200)、R18、またはDNAで被覆したウェルに添加し、結合した5200についてELISAを用いて試験した。
【0064】
マウス尿中免疫グロブリンと5200との結合
各群は蓄尿からなる。
U.D.‐未検出
(*)405 nmでのO.D.
【実施例3】
【0065】
ヒトモノクローナルループス抗体とペプチド5200との結合
ヒトモノクローナル抗DNA抗体DIL6およびB3はループス患者由来であり、ハイブリドーマ法を用いて得られた。図3および4に示されるとおり、これらの抗体は試験対象のその他のラミニンペプチドではなく、ペプチド5200と結合することが確認された。図3および4では、ペプチドは上または以下を意味する。AS30はR27、AS19はR35、AS35はR26、AS17はR28、AS6はR18。
【実施例4】
【0066】
マウスSLEの臨床経過に対するR38(5100)およびR38’の効果
ペプチドR38がSLEの経過に影響を及ぼすかどうか調べるため、MRL/lpr/lprマウスの疾患に対する効果について試験を行った。PBS 0.1 ml中に溶解した5200 60μg(R38’単独または各30μgでペプチドと混合)を週齢6週の雌MRL/lpr/lprマウスに週1回、16週間腹腔内投与し、マウスの生存率(図8)および腎組織を評価した。
【0067】
PBS 0.1 ml中に溶解した5100(R38)または5300(ヒトR38)50μgを週齢6週の雌MRL/lpr/lprマウスに週3回腹腔内投与し、マウスの生存率(図9)および腎組織を評価した。対照マウスには、リン酸緩衝液0.1 mlを投与した。試験群および対照群にはマウス12ないし15匹を含めた。
【0068】
5100、5200、または5300を投与したMRL/lpr/lprマウスの生存率をPBS投与マウスと比較した。図8および9に示されるとおり、5100または5200を投与したマウスの生存率は対照マウスより有意に高かった。図8および9では、x軸に示した時間(日数)はマウスの週齢である。5ヵ月後に各群2匹を屠殺し、光学顕微鏡を用いて腎臓を評価した。対照マウスの腎臓には半月体および硬化を有する重度のびまん性の増殖性糸球体腎炎が認められ、5100または5200投与マウスでは軽度の増殖性変化が認められたものの半月体および硬化は認められなかった。
【実施例5】
【0069】
抗R38抗体と疾患の活動性の相関性の分析
活動正および非活動性の腎疾患の有無によらず、ループス患者由来の尿を繰り返し採取し、ELISAにより抗R38抗体の有無について試験を行った。疾患の活性度についても承認された臨床パラメータおよび血清学的パラメータ(Lockshin M.D. et al. Am. J. Med(1984)77 893−898)を用いて評価し、抗R38抗体量との相関性を比較した。上述のとおり、ELISAにより抗R38抗体について、SLE患者37例の尿検体103件を用いて試験を行った。非腎疾患患者由来の検体が23件、腎疾患患者由来の検体が80件であった。さらにSLEと無関係の腎疾患患者由来の検体12も試験対象とした。
【0070】
以下の結果が得られた。
*p<0.01¥01
【0071】
19種類の臨床パラメータおよび検査パラメータ(上のLockshin M.D.et al.)を含む活動性スコアによると、腎疾患患者の検体の陽性度は通常活動している疾患と相関していた。これらのパラメータには、脱毛症、発疹、発熱、漿膜炎、関節痛/関節炎、粘膜潰瘍、神経性事象、倦怠感、眼底の変化、結節、脾臓などの臨床基準の有無または状態の評価ならびにESR(赤血球沈降速度)、抗DNA抗体、補体(U/ml)、クレアチニン、ヘモグロビン(g/dl)、PLT血小板(/mm2)または検尿などの血液検査を含めた。これらのパラメータの評価は、上のLockshinの記載どおりに測定する。得られた全割合は、評価したパラメータのみを反映している。
【0072】
尿検体を1回以上試験した患者もあり、臨床活動性と抗R38結合量の間に良好な相関が認められた。異なる3例のループス患者由来の代表的な3つの例を図5、6、および7に示す。この場合、x軸は病院訪問回数を、y軸は観察された結合(OD 405nm)または蒸気の活動性スコアの割合を示す。これらの図からわかるとおり、ペプチドR38を用いた測定法により、疾患の活動性について信頼性の高いモニタリング法が得られた。
【実施例6】
【0073】
抗5200R(38’)抗体と疾患の活動性の相関性の分析 さらに実験において、ループス患者由来の尿検体178件(活動性および非活動性状態の腎疾患のある検体24件、ない検体22件)を採取し、上述のとおりELISAにより抗5200抗体の有無について試験を行った。以下の結果が得られた。
*p<0.001
【実施例7】
【0074】
抗5100(R38)抗体と疾患の活動性の相関性の分析
ループス患者21例由来の尿検体45件(活動性および非活動性状態の腎疾患のある検体若干とない検体若干)を採取し、上述のとおり直接ELISAにより抗5100抗体の有無について試験を行った。
【0075】
以下の結果が得られた。
*p<0.03
【実施例8】
【0076】
抗5200(R38’)抗体と疾患の活動性の相関性の分析
ループス患者21例(活動性および非活動性状態の腎疾患のある検体とない検体)由来の尿検体52件を採取し、上述のとおりELISAにより抗5200抗体の有無について試験を行った。
【0077】
以下の結果が得られた。
【実施例9】
【0078】
抗5108、5101、5109、および5110抗体と疾患の活動性の相関性の分析
実施例7および8のループス患者の一部から尿検体24件(活動性および非活動性状態の腎疾患のある検体2件、ない検体22件)を採取し、上述のとおりELISAにより抗5108との結合について試験を行った。
【0079】
以下の結果が得られた。
【0080】
ペプチド5101、5109、および5110との結合でも同様の結果が確認された。
【実施例10】
【0081】
C72およびB3のR38およびペプチドアナログとの直接結合
本明細書で記載した方法に従い、本発明のペプチドのC72マウス抗DNA抗体およびB3ヒト抗DNA抗体との直接結合能について試験を行った。直接結合試験の結果を表3で報告する。
表3:C72およびB3のR38およびアナログペプチドとの直接結合
*NT:未試験
+:1時間後の直接結合ELISA試験のO.D.
‡:2時間後の直接結合ELISA試験のO.D.
【実施例11】
【0082】
ペプチドアナログによるC72とR38との結合の競合的阻害
競合的阻害試験では、C72抗DNA抗体との結合について、各ペプチドがR38(5100)とどのように競合するのかを比較した。本明細書で記載した方法に従って実施した試験結果を下の表4に開示し、図10を参照しながらさらに説明する。
表4:C72のR38との結合阻害
*ELISA試験においてC72抗DNA抗体のペプチド5100(R38)への結合が50%阻害される競合阻害物質の濃度。
*NI*阻害されず
【実施例12】
【0083】
本実施例は、被験者の血液から病原性ループス抗体である抗R38(TV‐5100)(およびその誘導体)を限外濾過法を用いて除去するためのカラムの使用を示す。
【0084】
カラムの作製
ペプチドR38を結合緩衝液5 ml中1 mg/mlの濃度で結合緩衝液(0.2M NaHCO3、0.5M NaCl、pH8.3)に溶解した。N‐ヒドロキシスクシニミド(NHS)-activated SepharoseTM高性能カラム(ファーマシア社、17‐0717‐01)5 mlを使用する。カラム中のイソプロパノールを冷たい(4℃)HCl 1 mM 30 mlでカラムから洗い出し、次にシリンジ(2.5 ml/分)を用いてペプチド溶液5 mlをカラムに注入した。カラムを密閉し、室温で30分間直立させた。次に緩衝液A(0.5 Mエタノールアミン、0.5 M NaCl、pH8.3)30 mlおよび緩衝液B(0.5M酢酸、0.5M NaCl、pH4)でカラムを連続3回洗浄し、次にpHが中性の緩衝液(0.05 M Na2HPO4および0.1% NaN3)で洗浄した。
【0085】
抗R38(TV‐5100)抗体の親和性吸着 PBS(リン酸緩衝生理食塩水)15 ml後、溶出緩衝液(0.1 M塩酸グリシン)15 ml、次にPBS 50 mlでカラムを洗浄した。C72抗体または患者の血漿検体を0.45ミクロンフィルタで濾過した。適合したシリンジを用いて、2.5 ml/分の速度で検体をカラムに入れた。次にPBS 5mlでカラムを洗浄し、流液形を再度カラムに入れた。検体(原形および流液形)とR38の結合について、抗R38ELISAにより試験を行った。
【0086】
即時例では、マウスC72とSLE患者の血漿をR38カラムに入れた。原形検体およびカラムの流液形において、ELISAにより抗R38結合を評価した。
【0087】
表5に示されるとおり、カラムに対する親和性吸着により、マウスモノクローナルC72の抗R38活性の99%が、ヒトSLE患者の血漿中の抗体の30ないし60%が除去された。したがって、SLE患者の血漿の親和性吸着によりSLEを処理し、患者の静脈内に血漿を戻した。
表5:親和性吸着
【実施例13】
【0088】
全身性エリテマトーデス(SLEまたはループス)患者を対象とするLupusorbTM免疫吸着カラムを用いた第I/II相試験
ルーチンの血漿アフェレーシス時に、SLE患者10例に対しLupusorbTM免疫吸着カラムを単回実施して処理した。LupusorbTM免疫吸着カラムは、R38(VRT101)ペプチドを含む親和性吸着カラムである。本試験組入れ前の患者スクリーニングは、血漿アフェレーシス予定日の3ヵ月前から5日前までである。血漿アフェレーシス実施日に患者を本試験に組み入れ、LupusorbTMカラムを用いて1.5ないし2.25時間にわたって処理する。次にLupusorbTMカラム処置後8週間にわたってフォローアップを行う。
【0089】
最初の患者に処理を行い、2ヵ月間のフォローアップ期間を完了した。有害事象は報告されず、本処置の忍容性は良好であった。予備的有効性に関して、図12は施行前、施行後、フォローアップ期間中の患者のVRT101抗体量の変化を示す。図12に示されるとおり、抗VRT(R38)抗体量はLupusorbTM血漿アフェレーシス後に減少し、5週間以上経過して元の抗体量に戻った。
【0090】
同じ方法に従って得られた追加の患者情報を図13ないし22に示す。013および027の患者では、抗VRT101抗体量に対する効果は認められなかった。残りの患者はいずれもフォローアップ来院2または3からフォローアップ来院4または5まででわかるように抗VRT(R38)抗体量が正常値まで減少した。ただし、VRT101値が減少したものの正常値を上回った003の患者を除く。患者10例に有意なリバウンド効果は認められなかった。LupusorbTMの処置と関連のある重篤な有害事象は報告されなかった。
【実施例14】
【0091】
SLE患者の血漿中抗VRT(R38)抗体量の評価
【0092】
ループス患者(LM)の血漿10mlをカラムに入れた。PBS(少なくとも5カラム容量)でカラムをすすぎ、HCL 10m/M(pH3.0)に溶解した0.05M NaClで溶出し、画分1 mlを採取した。画分ピーク(ELISAにより抗VRT101結合を用いて同定)は7ないし9で、免疫拡散法(RID)またはELISAによりIgG含量について試験を行った。元の血漿中免疫グロブリン量は164 mg(1640 mg/dLの濃度より)であり、ピーク画分は200μg(RIDにより濃度は6.9 mg/dL未満)となった。
【0093】
これらの結果は、特異的抗体の量が免疫グロブリン含量中でごくわずかである、つまり免疫グロブリン全体の約0.12%であることを示している。
【実施例15】
【0094】
Lupusorbカラムの容量
小規模な実験において、C72抗体を用いたLupusorbカラムの飽和により、Lupusorbカラムの結合能について以下のとおり試験を行った。:免疫グロブリン約12μg/mlを含有するC72の上清350 mlを5 ml Lupusorbカラムに入れた。流液形の画分を採取し、ELISAによりVRT101結合について試験を行った。
【0095】
最初の画分は60 ml、以降の画分は各30mlとした。図26からわかるとおり、最初の画分とVRT101との結合はごくわずかである。カラムのC72抗体除去能は上清(IgG 1.8mg)150ml後に飽和状態となり、カラムが樹脂処理した免疫グロブリン/ml少なくとも360μgと結合し得ることを示している。
【実施例16】
【0096】
血漿アフェレーシスを実施し、血漿容量および流速などの技術パラメータを規定するLupusorbの性能を測るため、ヒツジ3匹を用いて、1ヵ月に2ないし3回血漿アフェレーシス実験を実施した。ヒツジに麻酔をかけ、挿管し、血漿3リットルをアフェレーシスした。流速は16ないし20 ml/分に設定した。
【0097】
血漿はカラムを問題なく持続的かつ均一に通過した。挿管時の麻酔が原因で2回目実施後にヒツジ1匹が死亡した。残りのヒツジはアフェレーシスに対し即時または遅延性の反応を示さず、血液学的および生化学的血液パラメータは元の結果から有意な変化を示さなかった。
【0098】
前記の記述および実施例は単なる例示であることと、多くの変更形態および変形形態は下で主張されるとおり、本発明の目的と精神から逸脱することなく1人の当業者によってなされたものであることを理解すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の血漿からループス抗体を、限外濾過法を用いて除去することと、血漿を患者へ戻すこととを含み、さらなる血漿交換の必要性がない全身性エリテマトーデスを有する被験者の、治療法。
【請求項2】
少なくとも1種類のペプチドを吸着させたカラムにおいて、カラムクロマトグラフィーを用いてループス抗体を前記除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペプチドが、SEQ.ID.NO.1,SEQ.ID.NO.2,SEQ.ID.NO.3,SEQ.ID.NO.4,SEQ.ID.NO.5,SEQ.ID.NO.6,SEQ.ID.NO.7,SEQ.ID.NO.8,SEQ.ID.NO.9,SEQ.ID.NO.10,SEQ.ID.NO.11,SEQ.ID.NO.12,SEQ.ID.NO.13,SEQ.ID.NO.14,SEQ.ID.NO.15,SEQ.ID.NO.16,SEQ.ID.NO.17,SEQ.ID.NO.18,SEQ.ID.NO.19,SEQ.ID.NO.20,SEQ.ID.NO.21およびSEQ.ID.NO.22からなる前記群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
2種類以上のペプチドが前記カラムに吸着する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ペプチドが、SEQ.ID.NO.10,SEQ.ID.NO.19,SEQ.ID.NO20,SEQ.ID.NO.21からなる前記群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ペプチドがSEQ.ID.NO.1を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記ペプチドがSEQ.ID.NO.10を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記カラムがN‐ヒドロキシスクシニミド(NHS)−activated SepharoseTM高性能カラムである、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
1)前記患者の血漿を除去し、前記血漿をSEQ.ID.NO.1のアミノ酸配列を有するペプチドを含む親和性吸着カラムに通すステップと、
2)前記血漿を前記患者の身体へ戻すステップとを含み、患者の血漿中の抗R38抗体の血漿中濃度が前記患者の血漿中の抗R38抗体の処置前の約95%以上低減される、患者の抗R38抗体量を低減する、方法。
【請求項10】
前記血漿をSEQ.ID.NO.1のアミノ酸配列を有するペプチドを含む親和性吸着カラムを用いて前記患者の血漿を限外濾過法を用いて処理することにより患者の前記血漿中の抗R38抗体量を低減させ、これが
前記患者の血漿を除去し、前記血漿をSEQ.ID.NO.1のアミノ酸配列を有するペプチドを含む親和性吸着カラムに通すステップと、
前記血漿を前記患者の身体へ戻すステップとを含み、
約1ないし約5週間、前記抗R38抗体量を処置直後の量を下回るまで低減させる、方法。
【請求項11】
SEQ.ID.No.1のアミノ酸配列を有するペプチドまたはその変異体あるいは誘導体を含む、親和性吸着カラム。
【請求項12】
前記カラムがアガロースを基剤とするゲル濾過基質で充填される、請求項11に記載の吸着カラム。
【請求項13】
前記アガロースを基剤とするゲルの粒子サイズが約45ないし165 μmである、請求項12に記載の吸着カラム。
【請求項14】
前記アガロースゲルがN‐ヒドロキシスクシニミド(NHS)-activatedである、請求項12に記載の吸着カラム。
【請求項15】
SEQ.ID.NO.1,SEQ.ID.NO.2,SEQ.ID.NO.3,SEQ.ID.NO.4,SEQ.ID.NO.5,SEQ.ID.NO.6,SEQ.ID.NO.7,SEQ.ID.NO.8,SEQ.ID.NO.9,SEQ.ID.NO.10,SEQ.ID.NO.11,SEQ.ID.NO.12,SEQ.ID.NO.13,SEQ.ID.NO.14,SEQ.ID.NO.15,SEQ.ID.NO.16,SEQ.ID.NO.17,SEQ.ID.NO.18,SEQ.ID.NO.19,SEQ.ID.NO.20,SEQ.ID.NO.21およびSEQ.ID.NO.22からなる前記群から選択されるペプチドを含む、親和性吸着カラム。
【請求項16】
前記カラムに2種類以上のペプチドが吸着する、請求項15に記載の吸着カラム。
【請求項17】
前記ペプチドが、SEQ.ID.NO.10,SEQ.ID.NO.19,SEQ.ID.NO.20,SEQ.ID.NO.21からなる前記群から選択される、請求項15に記載の吸着カラム。
【請求項1】
被験者の血漿からループス抗体を、限外濾過法を用いて除去することと、血漿を患者へ戻すこととを含み、さらなる血漿交換の必要性がない全身性エリテマトーデスを有する被験者の、治療法。
【請求項2】
少なくとも1種類のペプチドを吸着させたカラムにおいて、カラムクロマトグラフィーを用いてループス抗体を前記除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペプチドが、SEQ.ID.NO.1,SEQ.ID.NO.2,SEQ.ID.NO.3,SEQ.ID.NO.4,SEQ.ID.NO.5,SEQ.ID.NO.6,SEQ.ID.NO.7,SEQ.ID.NO.8,SEQ.ID.NO.9,SEQ.ID.NO.10,SEQ.ID.NO.11,SEQ.ID.NO.12,SEQ.ID.NO.13,SEQ.ID.NO.14,SEQ.ID.NO.15,SEQ.ID.NO.16,SEQ.ID.NO.17,SEQ.ID.NO.18,SEQ.ID.NO.19,SEQ.ID.NO.20,SEQ.ID.NO.21およびSEQ.ID.NO.22からなる前記群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
2種類以上のペプチドが前記カラムに吸着する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ペプチドが、SEQ.ID.NO.10,SEQ.ID.NO.19,SEQ.ID.NO20,SEQ.ID.NO.21からなる前記群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ペプチドがSEQ.ID.NO.1を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記ペプチドがSEQ.ID.NO.10を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記カラムがN‐ヒドロキシスクシニミド(NHS)−activated SepharoseTM高性能カラムである、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
1)前記患者の血漿を除去し、前記血漿をSEQ.ID.NO.1のアミノ酸配列を有するペプチドを含む親和性吸着カラムに通すステップと、
2)前記血漿を前記患者の身体へ戻すステップとを含み、患者の血漿中の抗R38抗体の血漿中濃度が前記患者の血漿中の抗R38抗体の処置前の約95%以上低減される、患者の抗R38抗体量を低減する、方法。
【請求項10】
前記血漿をSEQ.ID.NO.1のアミノ酸配列を有するペプチドを含む親和性吸着カラムを用いて前記患者の血漿を限外濾過法を用いて処理することにより患者の前記血漿中の抗R38抗体量を低減させ、これが
前記患者の血漿を除去し、前記血漿をSEQ.ID.NO.1のアミノ酸配列を有するペプチドを含む親和性吸着カラムに通すステップと、
前記血漿を前記患者の身体へ戻すステップとを含み、
約1ないし約5週間、前記抗R38抗体量を処置直後の量を下回るまで低減させる、方法。
【請求項11】
SEQ.ID.No.1のアミノ酸配列を有するペプチドまたはその変異体あるいは誘導体を含む、親和性吸着カラム。
【請求項12】
前記カラムがアガロースを基剤とするゲル濾過基質で充填される、請求項11に記載の吸着カラム。
【請求項13】
前記アガロースを基剤とするゲルの粒子サイズが約45ないし165 μmである、請求項12に記載の吸着カラム。
【請求項14】
前記アガロースゲルがN‐ヒドロキシスクシニミド(NHS)-activatedである、請求項12に記載の吸着カラム。
【請求項15】
SEQ.ID.NO.1,SEQ.ID.NO.2,SEQ.ID.NO.3,SEQ.ID.NO.4,SEQ.ID.NO.5,SEQ.ID.NO.6,SEQ.ID.NO.7,SEQ.ID.NO.8,SEQ.ID.NO.9,SEQ.ID.NO.10,SEQ.ID.NO.11,SEQ.ID.NO.12,SEQ.ID.NO.13,SEQ.ID.NO.14,SEQ.ID.NO.15,SEQ.ID.NO.16,SEQ.ID.NO.17,SEQ.ID.NO.18,SEQ.ID.NO.19,SEQ.ID.NO.20,SEQ.ID.NO.21およびSEQ.ID.NO.22からなる前記群から選択されるペプチドを含む、親和性吸着カラム。
【請求項16】
前記カラムに2種類以上のペプチドが吸着する、請求項15に記載の吸着カラム。
【請求項17】
前記ペプチドが、SEQ.ID.NO.10,SEQ.ID.NO.19,SEQ.ID.NO.20,SEQ.ID.NO.21からなる前記群から選択される、請求項15に記載の吸着カラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公表番号】特表2010−530360(P2010−530360A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508967(P2010−508967)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000698
【国際公開番号】WO2008/142694
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509309477)ハダシット リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000698
【国際公開番号】WO2008/142694
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509309477)ハダシット リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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