全身麻酔の作用を減じるための装置及び方法
吸入麻酔を元に戻すための装置であり、その中を通過するガスから、1以上の麻酔薬を除去するためのフィルタを含むと共に、対象者によって吸い込まれるべきガス内のCO2レベルを上昇させるための部材をも含んでいる。当該CO2レベルを上昇させるための部材は、対象者のPaCO2レベルの著しい低下及び対象者の脳内を血液が流れる速度の低下をもたらすことなく、対象者の換気の増加を補助する。吸入麻酔作用を元に戻す方法は、対象者に多量のCO2を含むガスを吸入させ且つこのようなガスから麻酔薬を濾過しつつ、麻酔された対象者の換気速度を増大させるステップを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、概して、吸入全身麻酔の作用から元に戻らせるために、相互に結合された換気及び再呼吸する装置並びに任意的には監視装置の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全身麻酔は、外科処置が行われつつあるときに、対象者に管理投与されることが多い。典型的には、全身麻酔を受けている対象者は、呼吸回路を介して呼吸器に“据え付け”られる。対象者の呼吸、麻酔薬並びに恐らくは対象者の血液ガス及び血液の流れの監視を容易化するために、1以上のセンサーが呼吸回路に接続される。1以上の麻酔薬が、典型的には、呼吸回路を介して対象者に管理投与される。
【0003】
麻酔薬が患者に管理投与されている間に使用される呼吸回路の例としては、当該技術において“循環装置”と称される円形の呼吸回路及びここでは簡単のためにベイン(Bain)型装置と称されるMapleson又はBain型の呼吸回路がある。
【0004】
循環装置は、典型的には、大人の患者に対して使用される。循環装置の呼吸回路の呼気リム及び吸気リムは互いに連絡しており、ソーダ石灰の缶のような二酸化炭素除去装置がそれらの間に設けられている。呼気リム及び吸気リムは互いに連絡しているので、循環装置は、典型的には、ちょうど時間切れとなったCO2富化ガスが患者に再呼吸されるのを阻止するための一方向弁の1以上の組を含んでいる。
【0005】
ベイン型装置は、典型的には、比較的身体の小さい患者(例えば、子供)に使用される。ベイン型装置は、その中を吸気ガス及び呼気ガスの両方が流れる直線状のチューブを含んでいる。新鮮な気体は、典型的には、患者がそれらを再呼吸し得る前にちょうど時間切れとなったガスを除去するために患者との境界面に向けて導かれる。新鮮な気体の流れが患者の換気の流れよりも多い限り、再呼吸は殆ど又は全く起こらない。
【0006】
全身麻酔薬が対象者に管理投与されるときに、呼吸又は吸入麻酔薬は、典型的には、使用される麻酔薬のタイプに応じて約1%〜約6%の濃度まで希釈された低濃度で患者に供給される。対象者が全身麻酔薬を吸入するとき、この麻酔薬は、肺に運ばれ、肺において血流内に入り且つ血液によって種々の他の体組織へと運ばれる。ひとたび麻酔薬の濃度が対象者の身体の大きさ及び体重を含む種々の対象者特有のファクタに依存する脳内の十分なレベル又は閾値レベルに達すると、対象者は麻酔状態となる。対象者は、対象者の脳内の麻酔薬の濃度が閾値レベルより高い状態である限り、対象者は麻酔状態のままである。
【0007】
ひとたび全身麻酔が付与される処置典型的には外科手術が完了すると、出来るだけ速やかに全身麻酔作用から元に戻らせることが一般的に望ましい。全身麻酔作用からの覚醒は、外科チームが手術室を立ち退いて次の外科手術のために使える状態にし、恐らくは外科手術の費用を安くし、麻酔手が他の患者に専念することをも可能にし、使用されている典型的には高価な麻酔薬を節約して使う。更に、安全性の理由から、対象者が一般的な麻酔下にある時間を最短化するのが望ましい。麻酔から迅速に元に戻らせる他の利点は、外科手術に続いてすぐに大人の患者のためのより良い認知機能及び患者自身の気道をより迅速に保護することを可能にすることである。
【0008】
一般的な麻酔状態からの覚醒又は麻酔の中止は、脳内の麻酔薬のレベルが閾値レベル以下まで低下するか又は麻酔薬が対象者の脳から除去されることを必要とする。
気体状の麻酔薬を選択的に吸着するために活性炭及びその他の物質を使用することができることは長い間知られて来ている。従って、活性炭は、Psarosらに付与された米国特許第5,471,979号に記載されているように、麻酔薬が呼吸回路から逃げて手術室内へ入るのを防止するもののような吸着剤において便利な用途があることがわかっている。この点において、活性炭吸着剤は、典型的には、麻酔薬供給装置の排出の流れ内に配置される。これによって、手術室内への排出麻酔ガスの潜在的に有害な作用は避けられる。更に、ほとんどのハロゲン化炭素麻酔薬は大気汚染物質であると考えられるので、一般的な麻酔薬吸着剤である木炭又はその他の吸着剤は、ガス状麻酔薬が環境内へ放出される場合に惹き起こされるかも知れない汚染を防止する。
【0009】
Wastenskowら(以下、“Westenskow”と称する)に付与された米国特許第5,094,235号は、呼吸回路からのガス状麻酔薬の除去を促進するために活性炭を使用することを記載している。このような技術は、既に吐出された麻酔薬の再吸入を防止するために有用であるけれども、対象者の脳から麻酔薬が除去される速度を早めるためにより多くのことを行うことができた。
【0010】
典型的には、血液が脳内を流れる速度並びに対象者の呼吸速度及び呼吸体積は、種々のレベルの麻酔薬が対象者の脳から除去される速度を決定する主要なファクタである。血液は脳から肺へと麻酔薬を運び出すので、脳内の血液の流れの速度は一つの決定ファクタである。呼吸速度及び呼吸体積は、麻酔薬が血液から除去され且つ肺を介して身体から運び出される速度を増すので重要である。
【0011】
過呼吸は、対象者の呼吸体積及び/又は呼吸速度を増して、対象者の肺からの麻酔薬の除去を容易化するために使用されて来た。しかしながら、過呼吸は、典型的には、対象者の血液中の二酸化炭素(CO2)の低いレベルを生じる(PaCO2)。PaCO2のレベルが低下すると、脳は、肺自体に呼吸信号を送ることが少なくなり、人工呼吸器からの換気に依存したままでとなる(Paemerに付与された米国特許第5,320,093号(以下、“Raemer”と称する)を参照)。更に、過呼吸から生じる低いPaCO2レベルは、脳内を血液が流れる速度の対応する低下をもたらし、これは、実際には、血液が脳から麻酔薬を運び出す速度を減じる。
【0012】
対象者が既に吹き出されたCO2富化空気を“再呼吸”する再呼吸プロセスは、このような過呼吸中にPaCO2レベルの著しい低下を防止するために使用されている。しかしながら、このようなプロセスを行うために便宜的に使用されて来た装置は、患者が吸入された空気を再呼吸する前に吸入された空気から麻酔薬を濾過しない。結局、患者は既に吸入された麻酔薬をまた再呼吸し、これは、全身麻酔から元に戻らせるプロセスを実際上長引かせる。
【0013】
Paemerに記載されているコンピュータ化された装置は、過呼吸及び再呼吸によって生じる欠点を解決するように設計されている。Raemerの装置は、全身麻酔からの覚醒速度、従って、全身麻酔からの患者の回復の速度を速くするために元に戻されつつあるときに、外部供給源から、呼吸回路内へ従って対象者の肺内へCO2を吹き込む(すなわち、CO2が対象者によって再呼吸されない)。外部供給源からのCO2の注入に関するRaemerの教示は、対象者の脳による自発的な呼吸を出来る限り早期に再開するのを容易にするレベルまで対象者のPaCO2を増大させつつ対象者の脳内への麻酔薬の再導入を避けることに限定されている。Raemerにおいて教示されている技術及び装置は、対象者の呼吸速度又は呼吸体積を増すことを含まないので、これらは、対象者が麻酔から回復する速度を加速しない。
【0014】
従って、脳内の麻酔薬のレベルを元に戻らせて、麻酔作用を元に戻すのに必要な時間を最短にするために、血液が脳から麻酔薬を搬送する速度を増すと共に、肺が人体から麻酔薬を押し出す速度を増す方法及び装置の必要性がある。
【発明の開示】
【0015】
本発明は、対象者が全身麻酔から回復する速度すなわち麻酔作用から元に戻らせる速度を加速するための方法及び装置を含んでいる。これらの方法及び装置は、対象者の脳内を血液が流れる速度を維持し又は増し、対象者の呼吸速度及び呼吸体積を増し、対象者が既に吸入した麻酔薬を再度吸入するのを阻止する。
【0016】
本発明による方法は、高い割合のCO2を含んでいるガスを対象者に周期的に呼吸させつつ、対象者がガスを吸入する速度又は対象者によって吸い込まれるガスの体積を増加させることを含んでいる。これは、対象者が既に吸入したガスの少なくとも幾らかを再呼吸させることにより又はさもなければ対象者によって吸い込まれるべきであるガス内のCO2の量を増すことによって行うことができる。この再呼吸されたガスは、濾過されて、既に吸入された麻酔薬の幾らかを当該ガスから少なくとも部分的に除去する。吸入されたガスが再呼吸される前に吸入されたガスからほぼ全ての麻酔薬が除去されるのが現在のところ好ましい。
【0017】
本発明の教示を組み入れている装置は、対象者の血液内のCO2レベルを維持しつつ、迅速な(すなわち、通常以上の)速さで対象者による呼吸を促進し、それによって、血液が対象者の脳へ及び脳内を流れる速度を少なくとも維持する構造とされている。このような装置は、対象者によって呼気されたガスから麻酔薬を選択的に除去するフィルタを含むと共に、対象者によって吸入されたCO2のレベルを増すような構造とされている本明細書において“再呼吸要素”と称される対象者による部分的再呼吸を行うような構造とされた部品又は別の構成部品をも含んでいる。当該装置の呼吸又はその他のCO2レベルを上げる部品は、対象者の換気速度を増大させ、一方、対象者の血液内のCO2レベル(すなわち、PaCO2)は、通常の状態又は高い状態に維持される。再呼吸又はその他のCO2レベル上昇要素は更に、CO2の高レベル又は通常レベルを維持しつつ、大きな体積又は速度で患者が換気されるのを可能にする。
【0018】
本発明のこの他の特徴及び利点は、詳細な説明、添付図面及び特許請求の範囲を考慮することによって、当業者に明らかとなるであろう。
【好ましい実施形態の説明】
【0019】
図1を参照すると、本発明による麻酔からの覚醒装置10は、対象者とY型コネクタ60との間で呼吸回路50の一部分に沿って配置されており、フィルタ20と、再呼吸部材30とを含んでいる。吸気リム52と呼気リム54とは、Y型コネクタ従って呼吸回路50に結合することができる。顕著なことに、幾つかの呼吸回路の吸気リム及び呼気リムは同軸である。それにもかかわらず、このような呼吸回路の吸気ホースと呼気ホースとの間の結合は、やはり“Y型コネクタ”と称される。
【0020】
図示されているように、フィルタ20は、マスク又はマウスピースを介して呼吸するときに、挿管された患者のための気管内挿入管の近く又は対象者Iの口及び/又は鼻を覆うように配置されて、吸入された麻酔薬を、覚醒装置10の残りの部分内へ流れ込む前に除去する。吸入された麻酔薬が除去されずに前記覚醒装置10の残りの部分に流れ込むと、当該麻酔薬は、覚醒装置10の表面によって吸着され且つ対象者によって引き続いて吸い込まれるかも知れない。もちろん、フィルタ20を麻酔からの覚醒装置10の代替的な位置の配置することもまた、当該フィルタ20が対象者Iと呼吸構成部品30との間に配置される限り本発明の範囲内である。
【0021】
フィルタ20は、図示された例においては、フィルタ20の両側に設けられている対象者Iに関する基端ポート24と末端ポート26とを備えたハウジング22を含んでいても良い。更に、麻酔フィルタ部材28は、基端ポート24と末端ポート26との両方と連通した状態でハウジング22内に含まれている。
【0022】
基端ポート24及び末端ポート26は、両方とも、標準的な呼吸回路取り付け部品に結合できる構造とすることができる。例えば、基端ポート24と末端ポート26とは、標準的な15mm又は22mmの呼吸器取り付け部品に結合できる構造とすることができる。従って、ひとたび全身麻酔又はその他の吸入麻酔からの覚醒が望まして場合には、フィルタ20は、対象者Iの気道(すなわち、口又は鼻、気管及び肺)と既に連通している呼吸回路50に沿って配置することができる。
【0023】
麻酔フィルタ部材28は、1以上のタイプの麻酔薬を選択的に吸着するための公知の如何なるタイプのフィルタを含んでいても良い。本発明の範囲を限定する訳ではないが、例えば、麻酔フィルタ部材28は、活性炭若しくは活性炭素、フィルタ、結晶シリカのモレキュラーシーブ、液体ベースの吸着剤(例えば、Loughlinらに付与された米国特許第4,878,388号の教示に従って作動する)、コンデンサ型のフィルタ又は対象者Iによって吸入されたガスからの麻酔薬蒸気を捕獲し若しくはさもなければ除去する如何なるタイプの濾過機構を含んでいても良い。フィルタ部材28が、活性炭又は結晶シリカのような粒状物質を含んでいる場合には、当該粒状物質は、多孔質部材、スクリーン等に含まれていても良い。
【0024】
麻酔薬フィルタ部材28は基端ポート24及び末端ポート26の両方と連通しているので、当該フィルタ部材は、対象者Iによって吸い込まれるガスからだけでなく対象者Iによって吐き出されるガスから麻酔薬を除去するであろう。
【0025】
任意的には、フィルタ20はまた、3M FILTRETE(登録商標)濾過媒体又はその他の静電的ポリプロピレン系繊維ベースの濾過媒体のような当該技術において公知のタイプの抗菌性フィルタ部材29をも含んでいても良い。麻酔薬フィルタ部材28と同様に、抗菌性フィルタ部材29は、(例えば、フィルタ20の基端ポート24と末端ポート26とによって)呼吸回路50と連通している。従って、抗菌性フィルタ部材29は、対象者Iによって吸い込まれるか吐き出されるガスのほぼ全てを受け取り、これらのガスからバクテリア、ウィルス又はその他の病原菌を除去するように配置することができる。もちろん、フィルタ20と別個の抗菌性フィルタを含んでいる麻酔からの覚醒装置もまた本発明の範囲内に含まれる。
【0026】
もう一つ別の選択肢として、本発明の教示を組み入れている装置は、ガスがフィルタ20内を流れる方向を選択的に制限する構造とすることができる。これは、吐き出されたガスをフィルタ20の中を通るように導くことによって、麻酔フィルタ部材28の対象者側(すなわち、麻酔薬フィルタ28における、フィルタ20の基端ポート24に最も近接して配置されている側)での麻酔薬の高い濃度をもたらすので、望ましい。麻酔薬フィルタ部材28の対象者側での高い麻酔薬濃度は、次いで、対象者Iによって吸い込まれるガス内への麻酔薬の再導入をももたらすかも知れない。
【0027】
図1Aに示されている選択的な流量制限器100の例示的な実施形態は、迂回導管101と、少なくとも2つの一方向弁102及び103(例えば、公知の構造のフラップ弁)とを含んでいる。迂回導管101は、フィルタ20と平行に配置されている。弁102は、迂回導管101の端部又は当該迂回導管101に沿って配置されており且つ対象者Iが吐き出したときに開き、吸い込んだときに閉じるように配向されている。弁103は、フィルタ20に隣接して配置されており、対象者Iが吐き出したときに閉じ、吸い込んだときに開くように配向されている。図示されているように、弁103は、フィルタ20の末端ポート26に隣接して配置されているが、フィルタ20と対象者Iとの間に配置されても良い。もちろん、同じ機能を果たす選択的な流量制限器の他の形態もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0028】
弁102と103とは、強調して、フィルタ20内のガスの流れを制御するように作動する。対象者Iが吐き出すと、正圧によって弁103が閉じ、弁102が開く。弁103の閉止によって、フィルタ20に隣接した位置での制限がもたらされ、これは、吐き出されたガスの大部分をフィルタ20を迂回させて迂回導管101内へと通過させ、麻酔薬フィルタ部材28の(対象者Iに対して)基端側に麻酔薬が集まるのを防止する。これと逆に、対象者Iが吸い込むと、負圧によって弁102が引き込まれて閉じ、これによって、吸い込まれたガスが迂回導管101内を通過するのが阻止される。その代わりに、吸い込まれたガスは、フィルタ20内を通らなければならず、フィルタ20において、ガス内の麻酔薬が、対象者Iがガスを吸い込む前に、麻酔薬フィルタ部材28によって除去される。機械的な換気中においては、吸い込まれたガスは装置内を通って患者内へ付勢され、従って、弁102上には負圧が存在しない。そうでない場合には、吸気中に弁102を閉じ且つ弁103を開く圧力差が存在する。
【0029】
図1Bは、本発明による麻酔からの覚醒装置内に任意に含まれても良く且つ呼吸回路50に沿って配置され且つ本明細書においては“切換部材”とも称される迂回切換部材105を図示している。迂回切換部材105は、第一の作動位置に配置されると、ガスがフィルタ20内を流れるのを許容し且つ任意的には麻酔からの覚醒が望ましいときに再呼吸部材30(図1)内へ流れるのを許容する。例えば、手術中又は麻酔薬の引き込み後であるが対象者が機械的に換気されている間のように、麻酔からの覚醒又は麻酔からの覚醒装置の使用が望ましくないときには、切換部材105は、第二の作動位置に配置することができ、この第二の作動位置においては、呼吸ガスはフィルタ20を迂回し且つ任意的に再呼吸部材30を迂回する。
【0030】
再び図1を参照すると、フィルタ20及び再呼吸部材30は、相互に直接連通している。以下において更に詳細に示されるように、再呼吸部材30は、実際には、フィルタ20とは別ではなくフィルタ20の一部分であっても良い。
【0031】
再呼吸部材30は、対象者Iの血液(すなわち、PaCO2)内のCO2の特別なレベルを維持する体積又はある量のデッドスペースを提供する構造とされている。図示されている例においては、再呼吸部材30は、対象者Iによって再呼吸されるはずである既に吸入されたガスを含むためのデッドスペースの量を増すために拡張し又は減らすために圧縮することができる拡張可能なチューブ部分32を含んでいる導管31を含んでいる。もちろん、Orrらに付与された米国特許第6,227,196号に記載されているもの(気管ガス注入装置を除く)のうちの一つのような他のタイプの再呼吸装置又はその他のあらゆる公知のタイプの部分的再呼吸装置を、再呼吸部材30として麻酔からの覚醒装置10内で使用することができる。
【0032】
呼吸流量センサー又はそのためのガスサンプリングポート40aのような別の部材又は当該技術において知られているカプノメーター若しくはガスサンプリングポート40bを、本明細書による麻酔からの覚醒装置10に沿ったあらゆる位置(例えば、対象者Iに近接した位置、フィルタ20と再呼吸部材30との間の位置、Y型コネクタに近接した位置等)に含むことも本発明の範囲に含まれる。例えば、ガスサンプリングポート40a,40bが使用されているときには、これらは、呼吸回路50の端部又は長さ方向に沿って配置される構造とされた嵌め合い部材又はこれらと連通している吸気リム52若しくは呼気リム54のような(例えば、約50ml/分乃至約250ml/分の速度でのガスサンプリングを補助するための)一般的な構造であっても良い。
【0033】
図2乃至8Bを参照すると、本発明の教示を組み入れている麻酔からの覚醒装置の特別な例が示されている。
図2に示されている麻酔からの覚醒装置の実施形態10’は、フィルタ20とY型コネクタ60との間の2つの位置34’及び35’において呼吸回路50と連通している呼吸導管31’の一部分を含んでいる再呼吸部材30’を含んでいる。再呼吸導管31’は、当該技術において公知の方法によって、(例えば、ひだ等によって)、体積が調節可能である部分32’を含んでいても良い。導管31’内への及び当該導管からのガスの流れを制御するために、呼吸回路50又は再呼吸導管31’に沿って、1以上の弁36’、流量制限器37’又はこれらの組み合わせを配置しても良い。
【0034】
図3に示されている麻酔からの覚醒装置のもう一つ別の実施形態10”は、呼吸回路50とではなくフィルタ20”と直に連通している再呼吸部材30”を含んでいる。図示されているように、再呼吸部材30”は、ループ状の導管31”としても良い。導管31”の一端又は両端38”及び39”は、対象者Iの位置に対して麻酔薬フィルタ部材28の末端側の位置(図1)(例えば、麻酔薬フィルタ部材28と末端ポート26との間)に設けられたフィルタ20”と連通して、ガスが導管31”と連通する前及び/又は後に濾過されるようにすることができる。再呼吸部材30’(図2)と同様に、再呼吸部材30”は体積調節可能な部分32”を含んでいても良い。
【0035】
図4は、麻酔からの覚醒装置のもう一つ別の実施形態10”’を示しており、当該実施形態においては、フィルタ20”’は、対象者Iが息を吐き出すときに、少なくとも幾らかの二酸化炭素富化ガスが集められるデッドスペース体積30”’を提供するような構造とされている。図示されているように、デッドスペース体積30”’は、麻酔薬フィルタ部材28の末端側に配置されていて、その中に集まった吐き出されたガスがその中を流れるときに濾過され、その後、そこから引き出されるとき(例えば、対象者I(図1)が引き続いて吸い込むとき)に濾過されるようになされている。
【0036】
本発明による教示を組み入れている麻酔からの覚醒装置の更に別の実施形態10””が図5に示されている。麻酔からの覚醒装置10””は、図4に示され且つ図4に関して説明された麻酔からの覚醒装置10”’と良く似ている。麻酔からの覚醒装置10””と麻酔からの覚醒装置10”’との主要な差異は、フィルタ20””の本体22””によって少なくとも部分的に規定されているフィルタ20””のデッドスペースの体積30””が、例えば、本体20””が占める空間の量を、(例えば、図示されている摺動運動によって又は別の方法は当業者によって容易に明らかとなるであろう)広げるか又は狭くすることによって調節可能である。
【0037】
図6乃至6Bは、呼吸回路50に沿って配置されるような構造とされている麻酔からの覚醒装置110’を示している。麻酔からの覚醒装置110’の切換部材105’は、図1B
に関して上記されているように、呼吸回路50に沿って配置されていて、ガスが麻酔からの覚醒装置110’内へ選択的に導かれるか又は麻酔からの覚醒装置110’を選択的に迂回するようになされている。麻酔からの覚醒装置110’のハウジング111’は、基端の穴112’と末端の穴114’とを含むと共にフィルタ120’と再呼吸部材130’とを含んでいる。再呼吸部材130’は、二酸化炭素ガスを保持するのに十分な長さのコンパクトで幾分螺旋状の経路を含んでいるものとして示されている。
【0038】
切換部材105’は、図6乃至6Bに示されているタイプの回転可能な弁を含んでいても良く、これは、ガスが流れる方向を制御する羽根106’を含んでいる。代替的に、切換部材105’は、摺動切換部材、膜又は如何なる他の適当な切換機構又は弁機構を含んでいても良い。
【0039】
切換部材105’が図6に示されている第一の位置にあるときに、ガスは、呼吸回路50を介して直接流れ且つ実質的に妨害されず、従って、麻酔からの覚醒装置110’を迂回する。切換部材105’が図6A及び6Bに示されている第二の位置にあるときに、これは、呼吸回路50内のガスの流れを制限して、呼吸ガスが麻酔からの覚醒装置110’内へ流れ且つその中を通過するようにさせる。
【0040】
更に、ガスが麻酔からの覚醒装置110’内を流れる方向を制御するために、迂回導管101’及び一対の一方向弁102’,103’又はその他の選択的な流量制限器100’が、ハウジング111’内に配置されても良い。図示された例においては、迂回導管101’と一方向弁102’,103’とは、吐き出されたガスがフィルタ120’内へ流れ込むのを阻止し且つ吸い込まれたガスをフィルタ120’内に流れさせる構造で、フィルタ120’の基端側に配置されている。
【0041】
図6Aに示されているように、対象者が矢印によって示されているように息を吐き出すと、一方向弁103’が開いて、吐き出されたガスが迂回導管101’内を流れるようにさせ、従って、吐き出されたガスがフィルタ120’内へ流れ込むのを阻止する。吐き出されたガスは、迂回導管101’を介して再呼吸部材130’内へ入る。吐き出されたガスの体積は再呼吸部材130’の体積を超えるので、余分な吐き出されたガスが、再呼吸部材130’及び末端の穴114’を介して麻酔からの覚醒装置110’のハウジング111’から流れ出す。
【0042】
図6Bに示されているように、対象者が息を吸い込むと、一方向弁103’は閉止位置へ引き込まれる。負圧によってガスが引き込まれ、呼吸回路50の末端部分から末端の穴114’を介してハウジング111’内へ及び再呼吸部材内へ且つ再呼吸部材に沿って及びフィルタ120’内を通り、ハウジング111’の基端の穴112’を介して呼吸回路50内へ戻る。
【0043】
図7に示されている麻酔からの覚醒装置の更に別の実施形態110”は、マスク115”を含んでいる。マスク115”は、対象者Iの口又は鼻と調和する構造とされている。麻酔からの覚醒装置110”は、マスク115”に加えて、基端穴112”及び末端穴114”を備えたハウジング111”をも含んでいる。ハウジング111”は、再呼吸部材130”と共にフィルタ120”をも含んでいる。
【0044】
基端の穴112”は、マスク115”と連通し、従って、(例えば、対象者Iの口及び鼻のうちの一方又は両方を介して)従って対象者Iの気道と連通している。末端の穴114”は、図示されているように、対象者の周囲環境と連通する構造とされていても良い。
【0045】
基端の穴112”及び末端の穴114”との間の流路に沿って配置されている再呼吸部材130”は、対象者Iによって吐き出される比較的二酸化炭素が富化されたガスの少なくとも一部分を保持する構造とされている。再呼吸部材130”は、如何なる構造であってもよいが、同心状に配置され且つ直列に接続された複数の通路130a”,130b”,130c”等を含むものとして図示されている。再呼吸部材130”は、フィルタ120”の末端と連通しており、フィルタ120”は、次いで、ハウジング111”の基端の穴112”従ってマスク115”と連通している。
【0046】
麻酔からの覚醒装置110”は、任意的には、迂回導管101”のような選択的な流量制限器100”と、フィルタ120”を通る呼吸ガスの流れを制御するように配列又は配置されている一対の一方向弁102”及び103”とを含んでいても良い。例えば、対象者が息を吐き出すと、弁102”は閉止位置へと付勢されて吐き出されたガスがフィルタ120”へ入るのが阻止される。更に、弁103”は、開放位置へと付勢されて吐き出されたガスが迂回導管101”内を流れ且つ再呼吸部材130”内へと直接流れさせる。再呼吸部材130”は固定されているので、吐き出された余分なガスは、末端の穴114”を介してハウジング111”を出て行くことができる。対象者Iが息を吸い込むと、弁103”は閉止位置へと付勢される一方で、弁102”は開放位置へと付勢される。この結果、ガスは、呼吸部材130”からフィルタ120”を介して引き込まれた後に、基端の穴112”を介してハウジング111”を出て対象者Iの気道内へ入る。
【0047】
図8A及び8Bに示されているもう一つ別の方法として、本発明の麻酔からの覚醒装置10””’は、回路内に選択的な大きさのデッドスペースを提供するために、吸気リム52””’と呼気リム54””’との間に配置された1以上の迂回ライン56””’を含んでいても良い。この実施形態においては、吸気リム52””’と呼気リム54””’とは、デッドスペースの一部として機能する。吸い込まれた或いは吐き出されたガスの流れを選択的に導くために、二方向迂回弁58””’が各迂回ライン56””’に沿って配置されている。
【0048】
通常の又は基準ラインでの呼吸中においては、図8Aに示されているように、二方向迂回弁58””’は閉止位置にあり、陰線が付された領域によって表されている呼気ガスは、呼気リム54””’内へ入るであろう。
【0049】
呼吸を補助するためには、二方向迂回弁58””’は図8Bに示されているように開かれ、吐き出されたガスが、吸気リム52””’の一部分、呼気リム54””’のほぼ全て及び迂回ライン56””’(これらは全てデッドスペースとして機能する)を満たすのを可能にする。
【0050】
デッドスペースは、吸気リム52””’、呼気リム54””’及び迂回ライン56””’のうちの1以上の全て又は一部分のための拡張可能な導管を使用することによって、調整可能に拡張できるようにしても良い。
【0051】
図9及び10を参照すると、種々の麻酔薬供給装置と組み合わされた本発明の麻酔からの覚醒装置10の使用方法が示されている。
図9には、循環装置70が示されている。循環装置70は、(例えば、円又はループ状の)連結された吸気リム52’と呼気リム54’とを含んでいる。吸気リム52’と呼気リム54’とは、Y型コネクタ60に結合されており、Y型コネクタ60は、次いで、呼吸回路50’に結合されている。呼吸回路50’は、公知の方法(例えば、挿管、マスク、鼻カニューレ等により)対象者I(図1)と適合する構造とされている。循環装置70はまた、少なくとも2つの一方向弁72及び74をも含んでおり、これらの一方向弁は、各々、Y型コネクタ60の両側で、吸気リム52’と呼気リム54’とを横切って配置されている。一方向弁72及び74は、循環装置70内を通るガスの流れを単一の方向に制限して、呼気ガスが吸気リム52’内へ直接流れ込むのを防止し、対象者Iが呼気リム54’から直接ガスを吸い込むのを阻止する。
【0052】
循環装置70の吸気リム52’は、麻酔薬供給装置300への結合を補助するポートのような少なくとも1つのガス入口75、機械的換気又は循環装置70の外部環境(例えば、手術室、病院内の病室等)から空気が流れ込むのを許容する呼吸バッグを含んでいる。公知のタイプの呼気逃がし弁のような呼気部材76は、循環装置70の呼気リム54’に沿って配置されている。
【0053】
図示されているように、呼気リム54’と吸気リム52’とは、石灰ソーダ缶のような二酸化炭素除去部材77によって、Y型コネクタ60及び対象者Iに対して末端側である位置で結合されている。一方向弁72は呼気ガスが吸気リム52’内へ入るのを阻止するので、吐き出されたガスは、呼気リム54’に沿って配置された迂回弁78の配置に応じて、恐らくは、このようなガス内に存在する二酸化炭素の量を減じる二酸化炭素除去部材77内へと導かれる。
【0054】
更に、循環装置70は、麻酔からの覚醒装置を含んでいる。本発明の教示を組み入れている如何なる麻酔からの覚醒装置も簡素化のために循環装置70内に含まれても良いけれども、循環装置70は、麻酔からの覚醒装置10を含むものとして記載されている。図示されているように、麻酔からの覚醒装置10は、迂回弁78によって、循環装置70の呼気リム54’と選択的に連通し且つ二酸化炭素除去部材77に平行に配置されている。循環装置70内に存在するかも知れないデッドスペースの体積は、呼気部材76が吐き出されたガスを呼気リム54’内に留まらせるか否かに及び迂回弁78が吐き出されたガスが二酸化炭素除去部材77を迂回させるように配置されているか否かに依存する。更に、機械的な換気がガス入口75に結合されているときには、循環装置70内のデッドスペースの体積は、吸気リム52’に対する麻酔からの覚醒装置10の結合部80へのガス入口75の近さに依存する。
【0055】
呼気部材76が迂回弁78の配置に応じて少なくとも部分的に閉じられている場合には、対象者Iによって吐き出され且つ呼気リム54’内を流れるガスの少なくとも幾らかは、二酸化炭素除去部材77から麻酔からの覚醒装置10内へと迂回させても良い。迂回弁78が2以上の位置に調整可能である場合には、吐き出されたガスは、麻酔からの覚醒装置10と二酸化炭素除去部材77との両方へ導くことができる。従って、麻酔からの覚醒装置10及び二酸化炭素除去部材77内へ導かれる呼気ガスの量を注意深く調整して、対象者Iによって再呼吸される二酸化炭素の量に対する制御を提供することが可能である。更に、迂回弁78が、既に吐き出されたガスが麻酔からの覚醒装置10内を流れるように配置されている場合には、麻酔からの覚醒装置10内を通過するガス内に留まっている二酸化炭素の量は比較的多く、一方、このようなガス内に存在する麻酔薬の量はフィルタ20によって減じられるであろう。
【0056】
次に、対象者Iが吸気するか吸気させられると、吸い込まれたガスの少なくとも一部分(すなわち、呼吸回路50’及び麻酔からの覚醒装置10内に留まっているガス)は、既に吐き出された二酸化炭素富化ガスであろう。
【0057】
循環装置70自体は、対象者Iが既に吐き出された二酸化炭素富化ガスを再呼吸器するようにされるデッドスペースとして機能するので、循環装置70内で使用されている麻酔からの覚醒装置10は、再呼吸部材30のような付加的なデッドスペースを欠いているかも知れない。
【0058】
図10を参照すると、本発明の教示を組み入れているベインの装置90が示されている。ベインの装置90は、直線呼吸回路50”と、呼吸回路50”の一端51”に配置されている患者への接合部92と、呼吸回路50”の長さ方向に沿って配置され且つ公知のタイプの麻酔薬供給装置300、機械的な換気装置、呼吸バッグ又はベインの装置90の外部環境と連通する構造とされている新鮮なガスの入口94とを含んでいる。更に、ベインの装置90は、呼吸回路50”と連通している麻酔からの覚醒装置10を含んでいる。麻酔からの覚醒装置10は、吐き出されたガスから除去される麻酔薬の量を最適化するために、従って、麻酔薬の影響から覚醒されつつあるときに対象者Iによって再呼吸される麻酔薬の量を最少化するために、患者との接合部92に近接して配置されるのが好ましい。
【0059】
図2乃至10は、対象者が麻酔から覚醒しつつあるときに再呼吸するかも知れないデッドスペース体積を提供するのに有用である種々の装置を示しているけれども、対象者を麻酔作用から覚醒させる目的で機械的な呼吸回路内に二酸化炭素の再呼吸を含む他の如何なる方法、装置又はシステムもまた本発明の範囲に含まれる。
【0060】
図11を参照すると、再呼吸部材ではなく二酸化炭素注入部材130を含んでいる麻酔からの覚醒装置110が示されている。図示されているように、二酸化炭素注入部材130は呼吸導管150と連通している。麻酔からの覚醒装置110のフィルタ120もまた、対象者Iに近接して呼吸導管150に沿って配置されて(図1)、対象者Iによって吐き出されるガス内の麻酔薬の量を減らし、従って、呼吸導管150から引き込まれ且つ対象者Iによって再呼吸されるガス内にとどまったままの麻酔薬の量を最少化する。
【0061】
図1を再度参照すると(図11に関して示され且つ説明されている麻酔からの覚醒装置110も類似した方法で使用することができるけれども)、麻酔からの覚醒装置10は、呼吸回路又は麻酔薬供給回路(例えば、図9及び10に示されているもの)と連通状態に配置することによって使用することができる。現在のところ、フィルタ20は対象者Iに近接して配置し、再呼吸部材30はY型コネクタ60に近接して配置するのが好ましい。麻酔からの回復システム110(図11)の場合には、フィルタ120に対する二酸化炭素注入部材130の位置は関係がない。
【0062】
デッドスペース(例えば、再呼吸部材30内の体積の形態のデッドスペース)は、再呼吸を補助するために、所望体積のデッドスペースを提供するために麻酔手が調整することができる。例えば、デッドスペースの体積が少なくとも部分的に襞が付けられたチューブ内に配置されているときに、デッドスペースの体積は、襞が付けられたチューブの長さを伸ばすか又は縮めることによって調整することができる。もう一つ別の例として、固定体積のデッドスペースが存在するときに、又は体積調整可能なデッドスペースの場合においてさえ、デッドスペース内の二酸化炭素の量は、二酸化炭素が除去された再循環ガスを含んでいる“新鮮な”ガスの流れを調整することによって調整することができる。“新鮮な”ガスの流れが対象者Iの換気の流れよりも少ない場合には、デッドスペース内のガスの再呼吸が起こるかも知れない。
【0063】
ひとたび麻酔からの覚醒装置10が呼吸回路又は麻酔薬供給装置と連通状態に配置されると、対象者Iによって吐き出されたガスは、フィルタ20内へ流れ且つその中を通り、フィルタ20は、この吐き出されたガスから少なくとも幾らかの麻酔薬を除去する。濾過された吐き出されたガスの体積の少なくとも一部分は、デッドスペース(例えば、再呼吸部材30)内へ入り且つその中に少なくとも一時的にとどまる。更に、対象者Iによって吐き出されるガス内の麻酔薬のレベルを低下させることによって、フィルタ20は、対象者Iが息を吐き出すときに、環境内(例えば、手術室、回復室、外気等)へ逃げる麻酔薬のレベルを効率良く低下させることができる。
【0064】
対象者Iが息を吸い込むと、吸い込まれたガスの少なくとも一部分がデッドスペース(例えば、再呼吸部材30)から引き込まれ、如何なる他のガスも、空気から又は換気装置と連通している吸気ガスの発生源から引き出される。吸い込まれるガスは呼吸回路50を介して引き込まれるので、これらのガスはフィルタ20内を通過し、当該フィルタ20内に残っている麻酔薬の少なくとも幾らかがそこから除去される。特に、殆どの麻酔システムにおいては、極めて高濃度の酸素(>90%)が使用される。従って、対象者Iは、同じガスを多数回呼吸し且つ依然として十分に酸素を送り込まれる。
【0065】
現在のところ、吸い込まれた麻酔薬の作用から覚醒させるのに部分的な再呼吸プロセス(すなわち、患者によって吸い込まれたガスの一部分のみが予め吐き出され、一方、ガスの他の部分は“新鮮”である)が使用されるのが好ましい。これは、対象者Iが覚醒中に幾分かの酸素を必要とするからである。もちろん、全再呼吸プロセスの使用もまた本発明の範囲に含まれる。再呼吸がなされる方法は、対象者Iに十分な酸素を提供しつつ、所望の作用を提供するために変更し又は制御することができる。
【0066】
もちろん、二酸化炭素又は酸素を測定するガスセンサー及びモニター210(例えば、公知のタイプの麻酔ガスモニター)を対象者Iの換気ガスを監視するために使用しても良い。呼吸流量センサー及びモニター212はまた、対象者Iの換気の流れを監視するために使用しても良い。ガス濃度は、当該技術において知られているガスセンサー及びモニター210並びに流量センサー及びモニター212と連通している処理装置220(例えば、コンピュータ処理装置又はコントローラ、論理回路の比較的小さなグループ等)によって測定することができる。二酸化炭素又は酸素のレベル(例えば、血液ガス成分、呼吸割合等)が不所望なレベルに達すると、デッドスペースの体積(例えば、再呼吸部材30)又は再呼吸されたガスの体積を、他の吸い込まれたガス内の酸素又は二酸化炭素の濃度又は上記の組み合わせに対して調整がなされても良い。このような調整は、例えば、もちろん適当なプログラムの制御下で作動し且つ麻酔からの覚醒装置10の1以上の換気装置及び弁(例えば、迂回弁78(図9))と連通している処理装置220によって自動的になされても良い。別の方法として、デッドスペースの調整は、例えば、処理装置又は手動によって付与される指示に従って半自動的に行うことができる。
【0067】
フィルタ20と、本発明の麻酔からの覚醒装置において(例えば、再呼吸部材30又は二酸化炭素注入部材130によって)対象者Iによって吸入される二酸化炭素の量を増すための部材とを組み合わせることにより、高いPaCO2レベルに維持しつつ対象者Iの換気量を増すことができる。換気の増量は、麻酔薬が血液から除去される速度、従って、対象者Iによって吐き出される麻酔薬の除去される速度を改良するので、高いPaCO2レベルは、血液流量レベル、従って、脳から麻酔薬が除去される速度を維持するか又は増大させる。
【0068】
ここに提供された説明の多くは、全身麻酔からの覚醒に焦点を合わせているけれども、本発明の装置及び方法は、吸入された麻酔薬が全身麻酔作用を有しているか否かに拘わらず、あらゆるタイプの吸入された麻酔薬の作用から覚醒させるのに有用である。
【0069】
上記の説明は、多くの特定事項を含んでいるけれども、これらは、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではなく、単に、現在のところ好ましい実施形態の幾つかの例示を提供するものと考えられるべきものである。同様に、本発明の範囲から逸脱しない本発明の他の実施形態を案出することもできる。種々の実施形態による特徴は、組み合わせて採用しても良い。従って、本発明の範囲は、上記の説明によってではなく、むしろ、特許請求の範囲及びそれらの等価物によってのみ示され且つ制限されるものである。ここに記載された特許請求の範囲の意味及び範囲に含まれる全ての付加、削除及び改造が本願によって包含されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図面においては、特に指示しない限り、付加的な数字が前に付されるか又はプライム符号若しくはその他の記号が続けられている同様の符号は、同じ又は類似の特性を有し得る類似した要素を表している。
【図1】図1は、本発明による麻酔からの覚醒装置の例を示しており、当該装置は、呼吸回路の少なくとも一部分と、麻酔から回復しつつある対象者によって吸入された二酸化炭素の濃度を高めるための部材と、呼吸回路に沿って配置された麻酔薬フィルタ及びY型コネクタとを含んでいる。
【図1A】図1Aは、図1に示されている麻酔からの覚醒装置の変形例を示している。
【図1B】図1Bは、図1に示されている麻酔からの覚醒装置の変形例を示している。
【図2】図2は、図1に示されている麻酔からの覚醒装置の例示的な実施形態を示しており、当該実施形態は、同じく呼吸回路に沿って配置されている麻酔薬フィルタとY型フィルタとの間の呼吸回路に沿って配置された再呼吸チューブを含んでいる。
【図3】図3は、図1の麻酔からの覚醒装置の別の例示的な実施形態の断面図であり、再呼吸チューブが麻酔薬フィルタハウジングから出て当該ハウジング内へと戻るように延びている。
【図4】図4は、本発明の麻酔からの覚醒装置の別の実施形態の断面図であり、当該装置においては、麻酔薬フィルタが、再呼吸を起こさせるような構造とされた付加的なデッドスペース体積を含んでいる。
【図5】図5は、本発明の教示を組み入れている麻酔からの覚醒装置の更に別の実施形態の断面図であり、当該装置においては、麻酔薬フィルタが、再呼吸を起こさせるための体積を調節することができるデッドスペースを含んでいる。
【図6】図6は、換気ガスの濾過を選択的に制御するための切換要素又は弁を含んでいる麻酔からの覚醒装置の別の例示的な実施形態の断面図である。
【図6A】図6Aは、換気ガスの濾過を選択的に制御するための切換要素又は弁を含んでいる麻酔からの覚醒装置の別の例示的な実施形態の断面図である。
【図6B】図6Bは、換気ガスの濾過を選択的に制御するための切換要素又は弁を含んでいる麻酔からの覚醒装置の別の例示的な実施形態の断面図である。
【図7】図7は、マスクを含んでいる麻酔からの覚醒装置の別の例示的な実施形態の断面図である。
【図8A】図8Aは、本発明の麻酔からの覚醒装置の更に別の実施形態の概略図であり、当該装置においては、1以上の導管及び弁が、Y型コネクタから枝分かれしている吸気リムと呼気リムとの間に配置されている。
【図8B】図8Bは、本発明の麻酔からの覚醒装置の更に別の実施形態の概略図であり、当該装置においては、1以上の導管及び弁が、Y型コネクタから枝分かれしている吸気リムと呼気リムとの間に配置されている。
【図9】図9は、一般的な循環装置に沿った本発明による麻酔からの覚醒装置の使用方法を示している図である。
【図10】図10は、一般的なベインの装置を備えた本発明による麻酔からの覚醒装置の使用方法を示している図である。
【図11】図11は、対象者によって吸入される二酸化炭素の濃度を高める部材が二酸化炭素注入装置を含んでいる図1に示されているタイプの麻酔からの覚醒装置の更に別の実施形態の図面である。
【発明の分野】
【0001】
本発明は、概して、吸入全身麻酔の作用から元に戻らせるために、相互に結合された換気及び再呼吸する装置並びに任意的には監視装置の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全身麻酔は、外科処置が行われつつあるときに、対象者に管理投与されることが多い。典型的には、全身麻酔を受けている対象者は、呼吸回路を介して呼吸器に“据え付け”られる。対象者の呼吸、麻酔薬並びに恐らくは対象者の血液ガス及び血液の流れの監視を容易化するために、1以上のセンサーが呼吸回路に接続される。1以上の麻酔薬が、典型的には、呼吸回路を介して対象者に管理投与される。
【0003】
麻酔薬が患者に管理投与されている間に使用される呼吸回路の例としては、当該技術において“循環装置”と称される円形の呼吸回路及びここでは簡単のためにベイン(Bain)型装置と称されるMapleson又はBain型の呼吸回路がある。
【0004】
循環装置は、典型的には、大人の患者に対して使用される。循環装置の呼吸回路の呼気リム及び吸気リムは互いに連絡しており、ソーダ石灰の缶のような二酸化炭素除去装置がそれらの間に設けられている。呼気リム及び吸気リムは互いに連絡しているので、循環装置は、典型的には、ちょうど時間切れとなったCO2富化ガスが患者に再呼吸されるのを阻止するための一方向弁の1以上の組を含んでいる。
【0005】
ベイン型装置は、典型的には、比較的身体の小さい患者(例えば、子供)に使用される。ベイン型装置は、その中を吸気ガス及び呼気ガスの両方が流れる直線状のチューブを含んでいる。新鮮な気体は、典型的には、患者がそれらを再呼吸し得る前にちょうど時間切れとなったガスを除去するために患者との境界面に向けて導かれる。新鮮な気体の流れが患者の換気の流れよりも多い限り、再呼吸は殆ど又は全く起こらない。
【0006】
全身麻酔薬が対象者に管理投与されるときに、呼吸又は吸入麻酔薬は、典型的には、使用される麻酔薬のタイプに応じて約1%〜約6%の濃度まで希釈された低濃度で患者に供給される。対象者が全身麻酔薬を吸入するとき、この麻酔薬は、肺に運ばれ、肺において血流内に入り且つ血液によって種々の他の体組織へと運ばれる。ひとたび麻酔薬の濃度が対象者の身体の大きさ及び体重を含む種々の対象者特有のファクタに依存する脳内の十分なレベル又は閾値レベルに達すると、対象者は麻酔状態となる。対象者は、対象者の脳内の麻酔薬の濃度が閾値レベルより高い状態である限り、対象者は麻酔状態のままである。
【0007】
ひとたび全身麻酔が付与される処置典型的には外科手術が完了すると、出来るだけ速やかに全身麻酔作用から元に戻らせることが一般的に望ましい。全身麻酔作用からの覚醒は、外科チームが手術室を立ち退いて次の外科手術のために使える状態にし、恐らくは外科手術の費用を安くし、麻酔手が他の患者に専念することをも可能にし、使用されている典型的には高価な麻酔薬を節約して使う。更に、安全性の理由から、対象者が一般的な麻酔下にある時間を最短化するのが望ましい。麻酔から迅速に元に戻らせる他の利点は、外科手術に続いてすぐに大人の患者のためのより良い認知機能及び患者自身の気道をより迅速に保護することを可能にすることである。
【0008】
一般的な麻酔状態からの覚醒又は麻酔の中止は、脳内の麻酔薬のレベルが閾値レベル以下まで低下するか又は麻酔薬が対象者の脳から除去されることを必要とする。
気体状の麻酔薬を選択的に吸着するために活性炭及びその他の物質を使用することができることは長い間知られて来ている。従って、活性炭は、Psarosらに付与された米国特許第5,471,979号に記載されているように、麻酔薬が呼吸回路から逃げて手術室内へ入るのを防止するもののような吸着剤において便利な用途があることがわかっている。この点において、活性炭吸着剤は、典型的には、麻酔薬供給装置の排出の流れ内に配置される。これによって、手術室内への排出麻酔ガスの潜在的に有害な作用は避けられる。更に、ほとんどのハロゲン化炭素麻酔薬は大気汚染物質であると考えられるので、一般的な麻酔薬吸着剤である木炭又はその他の吸着剤は、ガス状麻酔薬が環境内へ放出される場合に惹き起こされるかも知れない汚染を防止する。
【0009】
Wastenskowら(以下、“Westenskow”と称する)に付与された米国特許第5,094,235号は、呼吸回路からのガス状麻酔薬の除去を促進するために活性炭を使用することを記載している。このような技術は、既に吐出された麻酔薬の再吸入を防止するために有用であるけれども、対象者の脳から麻酔薬が除去される速度を早めるためにより多くのことを行うことができた。
【0010】
典型的には、血液が脳内を流れる速度並びに対象者の呼吸速度及び呼吸体積は、種々のレベルの麻酔薬が対象者の脳から除去される速度を決定する主要なファクタである。血液は脳から肺へと麻酔薬を運び出すので、脳内の血液の流れの速度は一つの決定ファクタである。呼吸速度及び呼吸体積は、麻酔薬が血液から除去され且つ肺を介して身体から運び出される速度を増すので重要である。
【0011】
過呼吸は、対象者の呼吸体積及び/又は呼吸速度を増して、対象者の肺からの麻酔薬の除去を容易化するために使用されて来た。しかしながら、過呼吸は、典型的には、対象者の血液中の二酸化炭素(CO2)の低いレベルを生じる(PaCO2)。PaCO2のレベルが低下すると、脳は、肺自体に呼吸信号を送ることが少なくなり、人工呼吸器からの換気に依存したままでとなる(Paemerに付与された米国特許第5,320,093号(以下、“Raemer”と称する)を参照)。更に、過呼吸から生じる低いPaCO2レベルは、脳内を血液が流れる速度の対応する低下をもたらし、これは、実際には、血液が脳から麻酔薬を運び出す速度を減じる。
【0012】
対象者が既に吹き出されたCO2富化空気を“再呼吸”する再呼吸プロセスは、このような過呼吸中にPaCO2レベルの著しい低下を防止するために使用されている。しかしながら、このようなプロセスを行うために便宜的に使用されて来た装置は、患者が吸入された空気を再呼吸する前に吸入された空気から麻酔薬を濾過しない。結局、患者は既に吸入された麻酔薬をまた再呼吸し、これは、全身麻酔から元に戻らせるプロセスを実際上長引かせる。
【0013】
Paemerに記載されているコンピュータ化された装置は、過呼吸及び再呼吸によって生じる欠点を解決するように設計されている。Raemerの装置は、全身麻酔からの覚醒速度、従って、全身麻酔からの患者の回復の速度を速くするために元に戻されつつあるときに、外部供給源から、呼吸回路内へ従って対象者の肺内へCO2を吹き込む(すなわち、CO2が対象者によって再呼吸されない)。外部供給源からのCO2の注入に関するRaemerの教示は、対象者の脳による自発的な呼吸を出来る限り早期に再開するのを容易にするレベルまで対象者のPaCO2を増大させつつ対象者の脳内への麻酔薬の再導入を避けることに限定されている。Raemerにおいて教示されている技術及び装置は、対象者の呼吸速度又は呼吸体積を増すことを含まないので、これらは、対象者が麻酔から回復する速度を加速しない。
【0014】
従って、脳内の麻酔薬のレベルを元に戻らせて、麻酔作用を元に戻すのに必要な時間を最短にするために、血液が脳から麻酔薬を搬送する速度を増すと共に、肺が人体から麻酔薬を押し出す速度を増す方法及び装置の必要性がある。
【発明の開示】
【0015】
本発明は、対象者が全身麻酔から回復する速度すなわち麻酔作用から元に戻らせる速度を加速するための方法及び装置を含んでいる。これらの方法及び装置は、対象者の脳内を血液が流れる速度を維持し又は増し、対象者の呼吸速度及び呼吸体積を増し、対象者が既に吸入した麻酔薬を再度吸入するのを阻止する。
【0016】
本発明による方法は、高い割合のCO2を含んでいるガスを対象者に周期的に呼吸させつつ、対象者がガスを吸入する速度又は対象者によって吸い込まれるガスの体積を増加させることを含んでいる。これは、対象者が既に吸入したガスの少なくとも幾らかを再呼吸させることにより又はさもなければ対象者によって吸い込まれるべきであるガス内のCO2の量を増すことによって行うことができる。この再呼吸されたガスは、濾過されて、既に吸入された麻酔薬の幾らかを当該ガスから少なくとも部分的に除去する。吸入されたガスが再呼吸される前に吸入されたガスからほぼ全ての麻酔薬が除去されるのが現在のところ好ましい。
【0017】
本発明の教示を組み入れている装置は、対象者の血液内のCO2レベルを維持しつつ、迅速な(すなわち、通常以上の)速さで対象者による呼吸を促進し、それによって、血液が対象者の脳へ及び脳内を流れる速度を少なくとも維持する構造とされている。このような装置は、対象者によって呼気されたガスから麻酔薬を選択的に除去するフィルタを含むと共に、対象者によって吸入されたCO2のレベルを増すような構造とされている本明細書において“再呼吸要素”と称される対象者による部分的再呼吸を行うような構造とされた部品又は別の構成部品をも含んでいる。当該装置の呼吸又はその他のCO2レベルを上げる部品は、対象者の換気速度を増大させ、一方、対象者の血液内のCO2レベル(すなわち、PaCO2)は、通常の状態又は高い状態に維持される。再呼吸又はその他のCO2レベル上昇要素は更に、CO2の高レベル又は通常レベルを維持しつつ、大きな体積又は速度で患者が換気されるのを可能にする。
【0018】
本発明のこの他の特徴及び利点は、詳細な説明、添付図面及び特許請求の範囲を考慮することによって、当業者に明らかとなるであろう。
【好ましい実施形態の説明】
【0019】
図1を参照すると、本発明による麻酔からの覚醒装置10は、対象者とY型コネクタ60との間で呼吸回路50の一部分に沿って配置されており、フィルタ20と、再呼吸部材30とを含んでいる。吸気リム52と呼気リム54とは、Y型コネクタ従って呼吸回路50に結合することができる。顕著なことに、幾つかの呼吸回路の吸気リム及び呼気リムは同軸である。それにもかかわらず、このような呼吸回路の吸気ホースと呼気ホースとの間の結合は、やはり“Y型コネクタ”と称される。
【0020】
図示されているように、フィルタ20は、マスク又はマウスピースを介して呼吸するときに、挿管された患者のための気管内挿入管の近く又は対象者Iの口及び/又は鼻を覆うように配置されて、吸入された麻酔薬を、覚醒装置10の残りの部分内へ流れ込む前に除去する。吸入された麻酔薬が除去されずに前記覚醒装置10の残りの部分に流れ込むと、当該麻酔薬は、覚醒装置10の表面によって吸着され且つ対象者によって引き続いて吸い込まれるかも知れない。もちろん、フィルタ20を麻酔からの覚醒装置10の代替的な位置の配置することもまた、当該フィルタ20が対象者Iと呼吸構成部品30との間に配置される限り本発明の範囲内である。
【0021】
フィルタ20は、図示された例においては、フィルタ20の両側に設けられている対象者Iに関する基端ポート24と末端ポート26とを備えたハウジング22を含んでいても良い。更に、麻酔フィルタ部材28は、基端ポート24と末端ポート26との両方と連通した状態でハウジング22内に含まれている。
【0022】
基端ポート24及び末端ポート26は、両方とも、標準的な呼吸回路取り付け部品に結合できる構造とすることができる。例えば、基端ポート24と末端ポート26とは、標準的な15mm又は22mmの呼吸器取り付け部品に結合できる構造とすることができる。従って、ひとたび全身麻酔又はその他の吸入麻酔からの覚醒が望まして場合には、フィルタ20は、対象者Iの気道(すなわち、口又は鼻、気管及び肺)と既に連通している呼吸回路50に沿って配置することができる。
【0023】
麻酔フィルタ部材28は、1以上のタイプの麻酔薬を選択的に吸着するための公知の如何なるタイプのフィルタを含んでいても良い。本発明の範囲を限定する訳ではないが、例えば、麻酔フィルタ部材28は、活性炭若しくは活性炭素、フィルタ、結晶シリカのモレキュラーシーブ、液体ベースの吸着剤(例えば、Loughlinらに付与された米国特許第4,878,388号の教示に従って作動する)、コンデンサ型のフィルタ又は対象者Iによって吸入されたガスからの麻酔薬蒸気を捕獲し若しくはさもなければ除去する如何なるタイプの濾過機構を含んでいても良い。フィルタ部材28が、活性炭又は結晶シリカのような粒状物質を含んでいる場合には、当該粒状物質は、多孔質部材、スクリーン等に含まれていても良い。
【0024】
麻酔薬フィルタ部材28は基端ポート24及び末端ポート26の両方と連通しているので、当該フィルタ部材は、対象者Iによって吸い込まれるガスからだけでなく対象者Iによって吐き出されるガスから麻酔薬を除去するであろう。
【0025】
任意的には、フィルタ20はまた、3M FILTRETE(登録商標)濾過媒体又はその他の静電的ポリプロピレン系繊維ベースの濾過媒体のような当該技術において公知のタイプの抗菌性フィルタ部材29をも含んでいても良い。麻酔薬フィルタ部材28と同様に、抗菌性フィルタ部材29は、(例えば、フィルタ20の基端ポート24と末端ポート26とによって)呼吸回路50と連通している。従って、抗菌性フィルタ部材29は、対象者Iによって吸い込まれるか吐き出されるガスのほぼ全てを受け取り、これらのガスからバクテリア、ウィルス又はその他の病原菌を除去するように配置することができる。もちろん、フィルタ20と別個の抗菌性フィルタを含んでいる麻酔からの覚醒装置もまた本発明の範囲内に含まれる。
【0026】
もう一つ別の選択肢として、本発明の教示を組み入れている装置は、ガスがフィルタ20内を流れる方向を選択的に制限する構造とすることができる。これは、吐き出されたガスをフィルタ20の中を通るように導くことによって、麻酔フィルタ部材28の対象者側(すなわち、麻酔薬フィルタ28における、フィルタ20の基端ポート24に最も近接して配置されている側)での麻酔薬の高い濃度をもたらすので、望ましい。麻酔薬フィルタ部材28の対象者側での高い麻酔薬濃度は、次いで、対象者Iによって吸い込まれるガス内への麻酔薬の再導入をももたらすかも知れない。
【0027】
図1Aに示されている選択的な流量制限器100の例示的な実施形態は、迂回導管101と、少なくとも2つの一方向弁102及び103(例えば、公知の構造のフラップ弁)とを含んでいる。迂回導管101は、フィルタ20と平行に配置されている。弁102は、迂回導管101の端部又は当該迂回導管101に沿って配置されており且つ対象者Iが吐き出したときに開き、吸い込んだときに閉じるように配向されている。弁103は、フィルタ20に隣接して配置されており、対象者Iが吐き出したときに閉じ、吸い込んだときに開くように配向されている。図示されているように、弁103は、フィルタ20の末端ポート26に隣接して配置されているが、フィルタ20と対象者Iとの間に配置されても良い。もちろん、同じ機能を果たす選択的な流量制限器の他の形態もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0028】
弁102と103とは、強調して、フィルタ20内のガスの流れを制御するように作動する。対象者Iが吐き出すと、正圧によって弁103が閉じ、弁102が開く。弁103の閉止によって、フィルタ20に隣接した位置での制限がもたらされ、これは、吐き出されたガスの大部分をフィルタ20を迂回させて迂回導管101内へと通過させ、麻酔薬フィルタ部材28の(対象者Iに対して)基端側に麻酔薬が集まるのを防止する。これと逆に、対象者Iが吸い込むと、負圧によって弁102が引き込まれて閉じ、これによって、吸い込まれたガスが迂回導管101内を通過するのが阻止される。その代わりに、吸い込まれたガスは、フィルタ20内を通らなければならず、フィルタ20において、ガス内の麻酔薬が、対象者Iがガスを吸い込む前に、麻酔薬フィルタ部材28によって除去される。機械的な換気中においては、吸い込まれたガスは装置内を通って患者内へ付勢され、従って、弁102上には負圧が存在しない。そうでない場合には、吸気中に弁102を閉じ且つ弁103を開く圧力差が存在する。
【0029】
図1Bは、本発明による麻酔からの覚醒装置内に任意に含まれても良く且つ呼吸回路50に沿って配置され且つ本明細書においては“切換部材”とも称される迂回切換部材105を図示している。迂回切換部材105は、第一の作動位置に配置されると、ガスがフィルタ20内を流れるのを許容し且つ任意的には麻酔からの覚醒が望ましいときに再呼吸部材30(図1)内へ流れるのを許容する。例えば、手術中又は麻酔薬の引き込み後であるが対象者が機械的に換気されている間のように、麻酔からの覚醒又は麻酔からの覚醒装置の使用が望ましくないときには、切換部材105は、第二の作動位置に配置することができ、この第二の作動位置においては、呼吸ガスはフィルタ20を迂回し且つ任意的に再呼吸部材30を迂回する。
【0030】
再び図1を参照すると、フィルタ20及び再呼吸部材30は、相互に直接連通している。以下において更に詳細に示されるように、再呼吸部材30は、実際には、フィルタ20とは別ではなくフィルタ20の一部分であっても良い。
【0031】
再呼吸部材30は、対象者Iの血液(すなわち、PaCO2)内のCO2の特別なレベルを維持する体積又はある量のデッドスペースを提供する構造とされている。図示されている例においては、再呼吸部材30は、対象者Iによって再呼吸されるはずである既に吸入されたガスを含むためのデッドスペースの量を増すために拡張し又は減らすために圧縮することができる拡張可能なチューブ部分32を含んでいる導管31を含んでいる。もちろん、Orrらに付与された米国特許第6,227,196号に記載されているもの(気管ガス注入装置を除く)のうちの一つのような他のタイプの再呼吸装置又はその他のあらゆる公知のタイプの部分的再呼吸装置を、再呼吸部材30として麻酔からの覚醒装置10内で使用することができる。
【0032】
呼吸流量センサー又はそのためのガスサンプリングポート40aのような別の部材又は当該技術において知られているカプノメーター若しくはガスサンプリングポート40bを、本明細書による麻酔からの覚醒装置10に沿ったあらゆる位置(例えば、対象者Iに近接した位置、フィルタ20と再呼吸部材30との間の位置、Y型コネクタに近接した位置等)に含むことも本発明の範囲に含まれる。例えば、ガスサンプリングポート40a,40bが使用されているときには、これらは、呼吸回路50の端部又は長さ方向に沿って配置される構造とされた嵌め合い部材又はこれらと連通している吸気リム52若しくは呼気リム54のような(例えば、約50ml/分乃至約250ml/分の速度でのガスサンプリングを補助するための)一般的な構造であっても良い。
【0033】
図2乃至8Bを参照すると、本発明の教示を組み入れている麻酔からの覚醒装置の特別な例が示されている。
図2に示されている麻酔からの覚醒装置の実施形態10’は、フィルタ20とY型コネクタ60との間の2つの位置34’及び35’において呼吸回路50と連通している呼吸導管31’の一部分を含んでいる再呼吸部材30’を含んでいる。再呼吸導管31’は、当該技術において公知の方法によって、(例えば、ひだ等によって)、体積が調節可能である部分32’を含んでいても良い。導管31’内への及び当該導管からのガスの流れを制御するために、呼吸回路50又は再呼吸導管31’に沿って、1以上の弁36’、流量制限器37’又はこれらの組み合わせを配置しても良い。
【0034】
図3に示されている麻酔からの覚醒装置のもう一つ別の実施形態10”は、呼吸回路50とではなくフィルタ20”と直に連通している再呼吸部材30”を含んでいる。図示されているように、再呼吸部材30”は、ループ状の導管31”としても良い。導管31”の一端又は両端38”及び39”は、対象者Iの位置に対して麻酔薬フィルタ部材28の末端側の位置(図1)(例えば、麻酔薬フィルタ部材28と末端ポート26との間)に設けられたフィルタ20”と連通して、ガスが導管31”と連通する前及び/又は後に濾過されるようにすることができる。再呼吸部材30’(図2)と同様に、再呼吸部材30”は体積調節可能な部分32”を含んでいても良い。
【0035】
図4は、麻酔からの覚醒装置のもう一つ別の実施形態10”’を示しており、当該実施形態においては、フィルタ20”’は、対象者Iが息を吐き出すときに、少なくとも幾らかの二酸化炭素富化ガスが集められるデッドスペース体積30”’を提供するような構造とされている。図示されているように、デッドスペース体積30”’は、麻酔薬フィルタ部材28の末端側に配置されていて、その中に集まった吐き出されたガスがその中を流れるときに濾過され、その後、そこから引き出されるとき(例えば、対象者I(図1)が引き続いて吸い込むとき)に濾過されるようになされている。
【0036】
本発明による教示を組み入れている麻酔からの覚醒装置の更に別の実施形態10””が図5に示されている。麻酔からの覚醒装置10””は、図4に示され且つ図4に関して説明された麻酔からの覚醒装置10”’と良く似ている。麻酔からの覚醒装置10””と麻酔からの覚醒装置10”’との主要な差異は、フィルタ20””の本体22””によって少なくとも部分的に規定されているフィルタ20””のデッドスペースの体積30””が、例えば、本体20””が占める空間の量を、(例えば、図示されている摺動運動によって又は別の方法は当業者によって容易に明らかとなるであろう)広げるか又は狭くすることによって調節可能である。
【0037】
図6乃至6Bは、呼吸回路50に沿って配置されるような構造とされている麻酔からの覚醒装置110’を示している。麻酔からの覚醒装置110’の切換部材105’は、図1B
に関して上記されているように、呼吸回路50に沿って配置されていて、ガスが麻酔からの覚醒装置110’内へ選択的に導かれるか又は麻酔からの覚醒装置110’を選択的に迂回するようになされている。麻酔からの覚醒装置110’のハウジング111’は、基端の穴112’と末端の穴114’とを含むと共にフィルタ120’と再呼吸部材130’とを含んでいる。再呼吸部材130’は、二酸化炭素ガスを保持するのに十分な長さのコンパクトで幾分螺旋状の経路を含んでいるものとして示されている。
【0038】
切換部材105’は、図6乃至6Bに示されているタイプの回転可能な弁を含んでいても良く、これは、ガスが流れる方向を制御する羽根106’を含んでいる。代替的に、切換部材105’は、摺動切換部材、膜又は如何なる他の適当な切換機構又は弁機構を含んでいても良い。
【0039】
切換部材105’が図6に示されている第一の位置にあるときに、ガスは、呼吸回路50を介して直接流れ且つ実質的に妨害されず、従って、麻酔からの覚醒装置110’を迂回する。切換部材105’が図6A及び6Bに示されている第二の位置にあるときに、これは、呼吸回路50内のガスの流れを制限して、呼吸ガスが麻酔からの覚醒装置110’内へ流れ且つその中を通過するようにさせる。
【0040】
更に、ガスが麻酔からの覚醒装置110’内を流れる方向を制御するために、迂回導管101’及び一対の一方向弁102’,103’又はその他の選択的な流量制限器100’が、ハウジング111’内に配置されても良い。図示された例においては、迂回導管101’と一方向弁102’,103’とは、吐き出されたガスがフィルタ120’内へ流れ込むのを阻止し且つ吸い込まれたガスをフィルタ120’内に流れさせる構造で、フィルタ120’の基端側に配置されている。
【0041】
図6Aに示されているように、対象者が矢印によって示されているように息を吐き出すと、一方向弁103’が開いて、吐き出されたガスが迂回導管101’内を流れるようにさせ、従って、吐き出されたガスがフィルタ120’内へ流れ込むのを阻止する。吐き出されたガスは、迂回導管101’を介して再呼吸部材130’内へ入る。吐き出されたガスの体積は再呼吸部材130’の体積を超えるので、余分な吐き出されたガスが、再呼吸部材130’及び末端の穴114’を介して麻酔からの覚醒装置110’のハウジング111’から流れ出す。
【0042】
図6Bに示されているように、対象者が息を吸い込むと、一方向弁103’は閉止位置へ引き込まれる。負圧によってガスが引き込まれ、呼吸回路50の末端部分から末端の穴114’を介してハウジング111’内へ及び再呼吸部材内へ且つ再呼吸部材に沿って及びフィルタ120’内を通り、ハウジング111’の基端の穴112’を介して呼吸回路50内へ戻る。
【0043】
図7に示されている麻酔からの覚醒装置の更に別の実施形態110”は、マスク115”を含んでいる。マスク115”は、対象者Iの口又は鼻と調和する構造とされている。麻酔からの覚醒装置110”は、マスク115”に加えて、基端穴112”及び末端穴114”を備えたハウジング111”をも含んでいる。ハウジング111”は、再呼吸部材130”と共にフィルタ120”をも含んでいる。
【0044】
基端の穴112”は、マスク115”と連通し、従って、(例えば、対象者Iの口及び鼻のうちの一方又は両方を介して)従って対象者Iの気道と連通している。末端の穴114”は、図示されているように、対象者の周囲環境と連通する構造とされていても良い。
【0045】
基端の穴112”及び末端の穴114”との間の流路に沿って配置されている再呼吸部材130”は、対象者Iによって吐き出される比較的二酸化炭素が富化されたガスの少なくとも一部分を保持する構造とされている。再呼吸部材130”は、如何なる構造であってもよいが、同心状に配置され且つ直列に接続された複数の通路130a”,130b”,130c”等を含むものとして図示されている。再呼吸部材130”は、フィルタ120”の末端と連通しており、フィルタ120”は、次いで、ハウジング111”の基端の穴112”従ってマスク115”と連通している。
【0046】
麻酔からの覚醒装置110”は、任意的には、迂回導管101”のような選択的な流量制限器100”と、フィルタ120”を通る呼吸ガスの流れを制御するように配列又は配置されている一対の一方向弁102”及び103”とを含んでいても良い。例えば、対象者が息を吐き出すと、弁102”は閉止位置へと付勢されて吐き出されたガスがフィルタ120”へ入るのが阻止される。更に、弁103”は、開放位置へと付勢されて吐き出されたガスが迂回導管101”内を流れ且つ再呼吸部材130”内へと直接流れさせる。再呼吸部材130”は固定されているので、吐き出された余分なガスは、末端の穴114”を介してハウジング111”を出て行くことができる。対象者Iが息を吸い込むと、弁103”は閉止位置へと付勢される一方で、弁102”は開放位置へと付勢される。この結果、ガスは、呼吸部材130”からフィルタ120”を介して引き込まれた後に、基端の穴112”を介してハウジング111”を出て対象者Iの気道内へ入る。
【0047】
図8A及び8Bに示されているもう一つ別の方法として、本発明の麻酔からの覚醒装置10””’は、回路内に選択的な大きさのデッドスペースを提供するために、吸気リム52””’と呼気リム54””’との間に配置された1以上の迂回ライン56””’を含んでいても良い。この実施形態においては、吸気リム52””’と呼気リム54””’とは、デッドスペースの一部として機能する。吸い込まれた或いは吐き出されたガスの流れを選択的に導くために、二方向迂回弁58””’が各迂回ライン56””’に沿って配置されている。
【0048】
通常の又は基準ラインでの呼吸中においては、図8Aに示されているように、二方向迂回弁58””’は閉止位置にあり、陰線が付された領域によって表されている呼気ガスは、呼気リム54””’内へ入るであろう。
【0049】
呼吸を補助するためには、二方向迂回弁58””’は図8Bに示されているように開かれ、吐き出されたガスが、吸気リム52””’の一部分、呼気リム54””’のほぼ全て及び迂回ライン56””’(これらは全てデッドスペースとして機能する)を満たすのを可能にする。
【0050】
デッドスペースは、吸気リム52””’、呼気リム54””’及び迂回ライン56””’のうちの1以上の全て又は一部分のための拡張可能な導管を使用することによって、調整可能に拡張できるようにしても良い。
【0051】
図9及び10を参照すると、種々の麻酔薬供給装置と組み合わされた本発明の麻酔からの覚醒装置10の使用方法が示されている。
図9には、循環装置70が示されている。循環装置70は、(例えば、円又はループ状の)連結された吸気リム52’と呼気リム54’とを含んでいる。吸気リム52’と呼気リム54’とは、Y型コネクタ60に結合されており、Y型コネクタ60は、次いで、呼吸回路50’に結合されている。呼吸回路50’は、公知の方法(例えば、挿管、マスク、鼻カニューレ等により)対象者I(図1)と適合する構造とされている。循環装置70はまた、少なくとも2つの一方向弁72及び74をも含んでおり、これらの一方向弁は、各々、Y型コネクタ60の両側で、吸気リム52’と呼気リム54’とを横切って配置されている。一方向弁72及び74は、循環装置70内を通るガスの流れを単一の方向に制限して、呼気ガスが吸気リム52’内へ直接流れ込むのを防止し、対象者Iが呼気リム54’から直接ガスを吸い込むのを阻止する。
【0052】
循環装置70の吸気リム52’は、麻酔薬供給装置300への結合を補助するポートのような少なくとも1つのガス入口75、機械的換気又は循環装置70の外部環境(例えば、手術室、病院内の病室等)から空気が流れ込むのを許容する呼吸バッグを含んでいる。公知のタイプの呼気逃がし弁のような呼気部材76は、循環装置70の呼気リム54’に沿って配置されている。
【0053】
図示されているように、呼気リム54’と吸気リム52’とは、石灰ソーダ缶のような二酸化炭素除去部材77によって、Y型コネクタ60及び対象者Iに対して末端側である位置で結合されている。一方向弁72は呼気ガスが吸気リム52’内へ入るのを阻止するので、吐き出されたガスは、呼気リム54’に沿って配置された迂回弁78の配置に応じて、恐らくは、このようなガス内に存在する二酸化炭素の量を減じる二酸化炭素除去部材77内へと導かれる。
【0054】
更に、循環装置70は、麻酔からの覚醒装置を含んでいる。本発明の教示を組み入れている如何なる麻酔からの覚醒装置も簡素化のために循環装置70内に含まれても良いけれども、循環装置70は、麻酔からの覚醒装置10を含むものとして記載されている。図示されているように、麻酔からの覚醒装置10は、迂回弁78によって、循環装置70の呼気リム54’と選択的に連通し且つ二酸化炭素除去部材77に平行に配置されている。循環装置70内に存在するかも知れないデッドスペースの体積は、呼気部材76が吐き出されたガスを呼気リム54’内に留まらせるか否かに及び迂回弁78が吐き出されたガスが二酸化炭素除去部材77を迂回させるように配置されているか否かに依存する。更に、機械的な換気がガス入口75に結合されているときには、循環装置70内のデッドスペースの体積は、吸気リム52’に対する麻酔からの覚醒装置10の結合部80へのガス入口75の近さに依存する。
【0055】
呼気部材76が迂回弁78の配置に応じて少なくとも部分的に閉じられている場合には、対象者Iによって吐き出され且つ呼気リム54’内を流れるガスの少なくとも幾らかは、二酸化炭素除去部材77から麻酔からの覚醒装置10内へと迂回させても良い。迂回弁78が2以上の位置に調整可能である場合には、吐き出されたガスは、麻酔からの覚醒装置10と二酸化炭素除去部材77との両方へ導くことができる。従って、麻酔からの覚醒装置10及び二酸化炭素除去部材77内へ導かれる呼気ガスの量を注意深く調整して、対象者Iによって再呼吸される二酸化炭素の量に対する制御を提供することが可能である。更に、迂回弁78が、既に吐き出されたガスが麻酔からの覚醒装置10内を流れるように配置されている場合には、麻酔からの覚醒装置10内を通過するガス内に留まっている二酸化炭素の量は比較的多く、一方、このようなガス内に存在する麻酔薬の量はフィルタ20によって減じられるであろう。
【0056】
次に、対象者Iが吸気するか吸気させられると、吸い込まれたガスの少なくとも一部分(すなわち、呼吸回路50’及び麻酔からの覚醒装置10内に留まっているガス)は、既に吐き出された二酸化炭素富化ガスであろう。
【0057】
循環装置70自体は、対象者Iが既に吐き出された二酸化炭素富化ガスを再呼吸器するようにされるデッドスペースとして機能するので、循環装置70内で使用されている麻酔からの覚醒装置10は、再呼吸部材30のような付加的なデッドスペースを欠いているかも知れない。
【0058】
図10を参照すると、本発明の教示を組み入れているベインの装置90が示されている。ベインの装置90は、直線呼吸回路50”と、呼吸回路50”の一端51”に配置されている患者への接合部92と、呼吸回路50”の長さ方向に沿って配置され且つ公知のタイプの麻酔薬供給装置300、機械的な換気装置、呼吸バッグ又はベインの装置90の外部環境と連通する構造とされている新鮮なガスの入口94とを含んでいる。更に、ベインの装置90は、呼吸回路50”と連通している麻酔からの覚醒装置10を含んでいる。麻酔からの覚醒装置10は、吐き出されたガスから除去される麻酔薬の量を最適化するために、従って、麻酔薬の影響から覚醒されつつあるときに対象者Iによって再呼吸される麻酔薬の量を最少化するために、患者との接合部92に近接して配置されるのが好ましい。
【0059】
図2乃至10は、対象者が麻酔から覚醒しつつあるときに再呼吸するかも知れないデッドスペース体積を提供するのに有用である種々の装置を示しているけれども、対象者を麻酔作用から覚醒させる目的で機械的な呼吸回路内に二酸化炭素の再呼吸を含む他の如何なる方法、装置又はシステムもまた本発明の範囲に含まれる。
【0060】
図11を参照すると、再呼吸部材ではなく二酸化炭素注入部材130を含んでいる麻酔からの覚醒装置110が示されている。図示されているように、二酸化炭素注入部材130は呼吸導管150と連通している。麻酔からの覚醒装置110のフィルタ120もまた、対象者Iに近接して呼吸導管150に沿って配置されて(図1)、対象者Iによって吐き出されるガス内の麻酔薬の量を減らし、従って、呼吸導管150から引き込まれ且つ対象者Iによって再呼吸されるガス内にとどまったままの麻酔薬の量を最少化する。
【0061】
図1を再度参照すると(図11に関して示され且つ説明されている麻酔からの覚醒装置110も類似した方法で使用することができるけれども)、麻酔からの覚醒装置10は、呼吸回路又は麻酔薬供給回路(例えば、図9及び10に示されているもの)と連通状態に配置することによって使用することができる。現在のところ、フィルタ20は対象者Iに近接して配置し、再呼吸部材30はY型コネクタ60に近接して配置するのが好ましい。麻酔からの回復システム110(図11)の場合には、フィルタ120に対する二酸化炭素注入部材130の位置は関係がない。
【0062】
デッドスペース(例えば、再呼吸部材30内の体積の形態のデッドスペース)は、再呼吸を補助するために、所望体積のデッドスペースを提供するために麻酔手が調整することができる。例えば、デッドスペースの体積が少なくとも部分的に襞が付けられたチューブ内に配置されているときに、デッドスペースの体積は、襞が付けられたチューブの長さを伸ばすか又は縮めることによって調整することができる。もう一つ別の例として、固定体積のデッドスペースが存在するときに、又は体積調整可能なデッドスペースの場合においてさえ、デッドスペース内の二酸化炭素の量は、二酸化炭素が除去された再循環ガスを含んでいる“新鮮な”ガスの流れを調整することによって調整することができる。“新鮮な”ガスの流れが対象者Iの換気の流れよりも少ない場合には、デッドスペース内のガスの再呼吸が起こるかも知れない。
【0063】
ひとたび麻酔からの覚醒装置10が呼吸回路又は麻酔薬供給装置と連通状態に配置されると、対象者Iによって吐き出されたガスは、フィルタ20内へ流れ且つその中を通り、フィルタ20は、この吐き出されたガスから少なくとも幾らかの麻酔薬を除去する。濾過された吐き出されたガスの体積の少なくとも一部分は、デッドスペース(例えば、再呼吸部材30)内へ入り且つその中に少なくとも一時的にとどまる。更に、対象者Iによって吐き出されるガス内の麻酔薬のレベルを低下させることによって、フィルタ20は、対象者Iが息を吐き出すときに、環境内(例えば、手術室、回復室、外気等)へ逃げる麻酔薬のレベルを効率良く低下させることができる。
【0064】
対象者Iが息を吸い込むと、吸い込まれたガスの少なくとも一部分がデッドスペース(例えば、再呼吸部材30)から引き込まれ、如何なる他のガスも、空気から又は換気装置と連通している吸気ガスの発生源から引き出される。吸い込まれるガスは呼吸回路50を介して引き込まれるので、これらのガスはフィルタ20内を通過し、当該フィルタ20内に残っている麻酔薬の少なくとも幾らかがそこから除去される。特に、殆どの麻酔システムにおいては、極めて高濃度の酸素(>90%)が使用される。従って、対象者Iは、同じガスを多数回呼吸し且つ依然として十分に酸素を送り込まれる。
【0065】
現在のところ、吸い込まれた麻酔薬の作用から覚醒させるのに部分的な再呼吸プロセス(すなわち、患者によって吸い込まれたガスの一部分のみが予め吐き出され、一方、ガスの他の部分は“新鮮”である)が使用されるのが好ましい。これは、対象者Iが覚醒中に幾分かの酸素を必要とするからである。もちろん、全再呼吸プロセスの使用もまた本発明の範囲に含まれる。再呼吸がなされる方法は、対象者Iに十分な酸素を提供しつつ、所望の作用を提供するために変更し又は制御することができる。
【0066】
もちろん、二酸化炭素又は酸素を測定するガスセンサー及びモニター210(例えば、公知のタイプの麻酔ガスモニター)を対象者Iの換気ガスを監視するために使用しても良い。呼吸流量センサー及びモニター212はまた、対象者Iの換気の流れを監視するために使用しても良い。ガス濃度は、当該技術において知られているガスセンサー及びモニター210並びに流量センサー及びモニター212と連通している処理装置220(例えば、コンピュータ処理装置又はコントローラ、論理回路の比較的小さなグループ等)によって測定することができる。二酸化炭素又は酸素のレベル(例えば、血液ガス成分、呼吸割合等)が不所望なレベルに達すると、デッドスペースの体積(例えば、再呼吸部材30)又は再呼吸されたガスの体積を、他の吸い込まれたガス内の酸素又は二酸化炭素の濃度又は上記の組み合わせに対して調整がなされても良い。このような調整は、例えば、もちろん適当なプログラムの制御下で作動し且つ麻酔からの覚醒装置10の1以上の換気装置及び弁(例えば、迂回弁78(図9))と連通している処理装置220によって自動的になされても良い。別の方法として、デッドスペースの調整は、例えば、処理装置又は手動によって付与される指示に従って半自動的に行うことができる。
【0067】
フィルタ20と、本発明の麻酔からの覚醒装置において(例えば、再呼吸部材30又は二酸化炭素注入部材130によって)対象者Iによって吸入される二酸化炭素の量を増すための部材とを組み合わせることにより、高いPaCO2レベルに維持しつつ対象者Iの換気量を増すことができる。換気の増量は、麻酔薬が血液から除去される速度、従って、対象者Iによって吐き出される麻酔薬の除去される速度を改良するので、高いPaCO2レベルは、血液流量レベル、従って、脳から麻酔薬が除去される速度を維持するか又は増大させる。
【0068】
ここに提供された説明の多くは、全身麻酔からの覚醒に焦点を合わせているけれども、本発明の装置及び方法は、吸入された麻酔薬が全身麻酔作用を有しているか否かに拘わらず、あらゆるタイプの吸入された麻酔薬の作用から覚醒させるのに有用である。
【0069】
上記の説明は、多くの特定事項を含んでいるけれども、これらは、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではなく、単に、現在のところ好ましい実施形態の幾つかの例示を提供するものと考えられるべきものである。同様に、本発明の範囲から逸脱しない本発明の他の実施形態を案出することもできる。種々の実施形態による特徴は、組み合わせて採用しても良い。従って、本発明の範囲は、上記の説明によってではなく、むしろ、特許請求の範囲及びそれらの等価物によってのみ示され且つ制限されるものである。ここに記載された特許請求の範囲の意味及び範囲に含まれる全ての付加、削除及び改造が本願によって包含されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図面においては、特に指示しない限り、付加的な数字が前に付されるか又はプライム符号若しくはその他の記号が続けられている同様の符号は、同じ又は類似の特性を有し得る類似した要素を表している。
【図1】図1は、本発明による麻酔からの覚醒装置の例を示しており、当該装置は、呼吸回路の少なくとも一部分と、麻酔から回復しつつある対象者によって吸入された二酸化炭素の濃度を高めるための部材と、呼吸回路に沿って配置された麻酔薬フィルタ及びY型コネクタとを含んでいる。
【図1A】図1Aは、図1に示されている麻酔からの覚醒装置の変形例を示している。
【図1B】図1Bは、図1に示されている麻酔からの覚醒装置の変形例を示している。
【図2】図2は、図1に示されている麻酔からの覚醒装置の例示的な実施形態を示しており、当該実施形態は、同じく呼吸回路に沿って配置されている麻酔薬フィルタとY型フィルタとの間の呼吸回路に沿って配置された再呼吸チューブを含んでいる。
【図3】図3は、図1の麻酔からの覚醒装置の別の例示的な実施形態の断面図であり、再呼吸チューブが麻酔薬フィルタハウジングから出て当該ハウジング内へと戻るように延びている。
【図4】図4は、本発明の麻酔からの覚醒装置の別の実施形態の断面図であり、当該装置においては、麻酔薬フィルタが、再呼吸を起こさせるような構造とされた付加的なデッドスペース体積を含んでいる。
【図5】図5は、本発明の教示を組み入れている麻酔からの覚醒装置の更に別の実施形態の断面図であり、当該装置においては、麻酔薬フィルタが、再呼吸を起こさせるための体積を調節することができるデッドスペースを含んでいる。
【図6】図6は、換気ガスの濾過を選択的に制御するための切換要素又は弁を含んでいる麻酔からの覚醒装置の別の例示的な実施形態の断面図である。
【図6A】図6Aは、換気ガスの濾過を選択的に制御するための切換要素又は弁を含んでいる麻酔からの覚醒装置の別の例示的な実施形態の断面図である。
【図6B】図6Bは、換気ガスの濾過を選択的に制御するための切換要素又は弁を含んでいる麻酔からの覚醒装置の別の例示的な実施形態の断面図である。
【図7】図7は、マスクを含んでいる麻酔からの覚醒装置の別の例示的な実施形態の断面図である。
【図8A】図8Aは、本発明の麻酔からの覚醒装置の更に別の実施形態の概略図であり、当該装置においては、1以上の導管及び弁が、Y型コネクタから枝分かれしている吸気リムと呼気リムとの間に配置されている。
【図8B】図8Bは、本発明の麻酔からの覚醒装置の更に別の実施形態の概略図であり、当該装置においては、1以上の導管及び弁が、Y型コネクタから枝分かれしている吸気リムと呼気リムとの間に配置されている。
【図9】図9は、一般的な循環装置に沿った本発明による麻酔からの覚醒装置の使用方法を示している図である。
【図10】図10は、一般的なベインの装置を備えた本発明による麻酔からの覚醒装置の使用方法を示している図である。
【図11】図11は、対象者によって吸入される二酸化炭素の濃度を高める部材が二酸化炭素注入装置を含んでいる図1に示されているタイプの麻酔からの覚醒装置の更に別の実施形態の図面である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入麻酔からの対象者の覚醒を補助する方法であり、
対象者が息を吐いている間は麻酔薬を除去するためのフィルタを迂回させるステップと、麻酔薬が対象者によって吸気される前に前記フィルタを介してガスを引き込むステップと、を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であり、
前記引き込みステップが、周囲濃度以上の濃度の二酸化炭素を含む吸気ガスを前記フィルタを介して引き込むことを含んでいる方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であり、
前記迂回ステップが少なくとも1つの弁によって行われる方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であり、
前記引き込みステップが少なくとも1つの弁によって行われる方法。
【請求項5】
対象者を換気する方法であり、
呼吸回路の長さに沿って配置された切換要素と、当該切換要素を介して呼吸回路と選択的に連通する麻酔からの覚醒装置と、を含む装置によって、対象者の気道と呼吸器との間の連通を確保するステップと、
麻酔作用からの覚醒を促進することが望ましいときに、前記切換要素によって、呼気ガスを前記麻酔からの覚醒装置を介して導くようにするステップと、
麻酔作用からの覚醒が促進されることが望ましくないときに、前記切換要素によって、呼気ガスが前記麻酔からの覚醒装置の中を流れるのを阻止させるステップと、
を含む方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であり、
対象者の気道と呼吸器との間の連通を確保する前記方法が、前記気道と、少なくとも対象者によって吸い込まれるべきガスから麻酔薬を除去するためのフィルタを含んでいる麻酔からの覚醒装置と、の間の連通を確保するステップを含んでいる方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であり、
前記切換要素によって、呼気ガスが前記麻酔からの覚醒装置の中を導くときに、呼気されたガスが前記フィルタ内を通過するのを阻止させるステップと、ガスが吸気される前に前記フィルタの中を通過するようにするステップと、を更に含む方法。
【請求項8】
対象者の吸入麻酔からの覚醒を補助するための装置であり、
対象者によって呼気されたガスから麻酔薬を少なくとも部分的に除去するためのフィルタと、
通常以上の量のCO2を含んでいるガスを対象者に吸気させるためにCO2レベルを上昇させる部材と、
呼気されたガスが前記フィルタを迂回するようにさせ且つ前記CO2レベルを上昇させる部材内へと流入させ、及び、吸気されたガスを前記CO2レベルを上昇させる部材から引き込み且つ前記フィルタの中を通過させるための選択的な制限器と、
を含んでいる装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置であり、
前記選択的制限器が、迂回導管と、一対の弁とを含み、当該一対の弁のうちの少なくとも1つが前記迂回導管の端部又は当該迂回導管の長さに沿って配置されている装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置であり、
前記少なくとも1つの弁が、当該装置が使用される対象者に最も近い前記迂回導管の端部に配置されている装置。
【請求項11】
請求項8に記載の装置であり、
前記迂回導管と連通しているマスクを更に含んでいる装置。
【請求項12】
対象者の吸入麻酔からの覚醒を補助するための装置であり、
対象者によって呼気されたガスから麻酔薬を少なくとも部分的に除去するためのフィルタと、
対象者に、通常以上の量のCO2を含んでいるガスを吸入させるためにCO2のレベルを上昇させる部材と、
前記フィルタ及び前記CO2のレベルを上昇させる部材と連通しているマスクと、
を含んでいる装置。
【請求項13】
呼吸装置であり、
呼吸回路と、
麻酔からの覚醒装置と、
前記呼吸回路の長さに沿って又は当該呼吸回路の端部に配置され、前記呼吸回路と前記麻酔からの覚醒装置との間の選択的な連通を補助するための切換要素と、
を含んでいる呼吸装置。
【請求項14】
請求項13に記載の呼吸装置であり、
前記切換要素が切換部材を含んでおり、
当該切換部材は、
呼吸ガスを前記呼吸回路に沿って実質的に妨げられない状態で流れさせるが、呼吸ガスの前記麻酔からの覚醒装置内への流れを制限する第一の位置と、
前記呼吸回路に沿った呼吸ガスの流れを制限し且つ呼吸ガスを前記麻酔からの覚醒装置内へ及び当該覚醒装置を通過するように導く第二の位置と、に配置されるような構造とされている、呼吸装置。
【請求項15】
請求項13に記載の呼吸装置であり、
前記麻酔からの覚醒装置が、
フィルタと、
当該フィルタに対して末端側に配置された通常以上のCO2を含んでいるガスを対象者に吸入させるために、CO2レベルを上昇させる部材と、を含んでいる呼吸装置。
【請求項16】
請求項15に記載の呼吸装置であり、
前記フィルタが、少なくとも対象者によって吸い込まれるべきガスから麻酔薬を除去するようになされている、呼吸装置。
【請求項17】
請求項15に記載の呼吸装置であり、
前記CO2レベルを上昇させる部材が、対象者によって呼気されたガスを受け取る構造とされた再呼吸部材を含んでいる呼吸装置。
【請求項18】
請求項15に記載の呼吸装置であり、
前記麻酔からの覚醒装置が選択的な制限器を更に含み、
当該制限器は、
呼気されたガスが前記フィルタを迂回し且つ前記CO2レベルを上昇させる部材内に入るようにさせ、且つ、吸入されるガスが、前記CO2レベルを上昇させる部材から前記フィルタの中を通って引き込まれるようにされている、呼吸装置。
【請求項19】
請求項18に記載の呼吸装置であり、
前記選択的な制限器が、迂回導管と一対の弁とを含んでおり、
当該一対の弁のうちの少なくとも1つが、前記迂回導管の端部か又は当該迂回導管の長さに沿って配置されている、呼吸装置。
【請求項20】
自発的に呼吸する対象者を麻酔状態から更に戻すための方法であり、
対象者の顔の少なくとも一部分を覆うように、当該対象者の気道と連通しているマスクを配置するステップと、
呼気されたガスのうちの少なくとも幾らかを前記マスクと連通している再呼吸部材内へと導くステップと、
対象者が吸い込むときに、ガスを、麻酔薬除去フィルタを介して前記再呼吸部材内へ且つ対象者の気道内へ引き込むステップと、を含む方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であり、
前記呼気されたガスが前記麻酔薬除去フィルタ内を通過するのを阻止するステップを更に含んでいる方法。
【請求項1】
吸入麻酔からの対象者の覚醒を補助する方法であり、
対象者が息を吐いている間は麻酔薬を除去するためのフィルタを迂回させるステップと、麻酔薬が対象者によって吸気される前に前記フィルタを介してガスを引き込むステップと、を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であり、
前記引き込みステップが、周囲濃度以上の濃度の二酸化炭素を含む吸気ガスを前記フィルタを介して引き込むことを含んでいる方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であり、
前記迂回ステップが少なくとも1つの弁によって行われる方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であり、
前記引き込みステップが少なくとも1つの弁によって行われる方法。
【請求項5】
対象者を換気する方法であり、
呼吸回路の長さに沿って配置された切換要素と、当該切換要素を介して呼吸回路と選択的に連通する麻酔からの覚醒装置と、を含む装置によって、対象者の気道と呼吸器との間の連通を確保するステップと、
麻酔作用からの覚醒を促進することが望ましいときに、前記切換要素によって、呼気ガスを前記麻酔からの覚醒装置を介して導くようにするステップと、
麻酔作用からの覚醒が促進されることが望ましくないときに、前記切換要素によって、呼気ガスが前記麻酔からの覚醒装置の中を流れるのを阻止させるステップと、
を含む方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であり、
対象者の気道と呼吸器との間の連通を確保する前記方法が、前記気道と、少なくとも対象者によって吸い込まれるべきガスから麻酔薬を除去するためのフィルタを含んでいる麻酔からの覚醒装置と、の間の連通を確保するステップを含んでいる方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であり、
前記切換要素によって、呼気ガスが前記麻酔からの覚醒装置の中を導くときに、呼気されたガスが前記フィルタ内を通過するのを阻止させるステップと、ガスが吸気される前に前記フィルタの中を通過するようにするステップと、を更に含む方法。
【請求項8】
対象者の吸入麻酔からの覚醒を補助するための装置であり、
対象者によって呼気されたガスから麻酔薬を少なくとも部分的に除去するためのフィルタと、
通常以上の量のCO2を含んでいるガスを対象者に吸気させるためにCO2レベルを上昇させる部材と、
呼気されたガスが前記フィルタを迂回するようにさせ且つ前記CO2レベルを上昇させる部材内へと流入させ、及び、吸気されたガスを前記CO2レベルを上昇させる部材から引き込み且つ前記フィルタの中を通過させるための選択的な制限器と、
を含んでいる装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置であり、
前記選択的制限器が、迂回導管と、一対の弁とを含み、当該一対の弁のうちの少なくとも1つが前記迂回導管の端部又は当該迂回導管の長さに沿って配置されている装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置であり、
前記少なくとも1つの弁が、当該装置が使用される対象者に最も近い前記迂回導管の端部に配置されている装置。
【請求項11】
請求項8に記載の装置であり、
前記迂回導管と連通しているマスクを更に含んでいる装置。
【請求項12】
対象者の吸入麻酔からの覚醒を補助するための装置であり、
対象者によって呼気されたガスから麻酔薬を少なくとも部分的に除去するためのフィルタと、
対象者に、通常以上の量のCO2を含んでいるガスを吸入させるためにCO2のレベルを上昇させる部材と、
前記フィルタ及び前記CO2のレベルを上昇させる部材と連通しているマスクと、
を含んでいる装置。
【請求項13】
呼吸装置であり、
呼吸回路と、
麻酔からの覚醒装置と、
前記呼吸回路の長さに沿って又は当該呼吸回路の端部に配置され、前記呼吸回路と前記麻酔からの覚醒装置との間の選択的な連通を補助するための切換要素と、
を含んでいる呼吸装置。
【請求項14】
請求項13に記載の呼吸装置であり、
前記切換要素が切換部材を含んでおり、
当該切換部材は、
呼吸ガスを前記呼吸回路に沿って実質的に妨げられない状態で流れさせるが、呼吸ガスの前記麻酔からの覚醒装置内への流れを制限する第一の位置と、
前記呼吸回路に沿った呼吸ガスの流れを制限し且つ呼吸ガスを前記麻酔からの覚醒装置内へ及び当該覚醒装置を通過するように導く第二の位置と、に配置されるような構造とされている、呼吸装置。
【請求項15】
請求項13に記載の呼吸装置であり、
前記麻酔からの覚醒装置が、
フィルタと、
当該フィルタに対して末端側に配置された通常以上のCO2を含んでいるガスを対象者に吸入させるために、CO2レベルを上昇させる部材と、を含んでいる呼吸装置。
【請求項16】
請求項15に記載の呼吸装置であり、
前記フィルタが、少なくとも対象者によって吸い込まれるべきガスから麻酔薬を除去するようになされている、呼吸装置。
【請求項17】
請求項15に記載の呼吸装置であり、
前記CO2レベルを上昇させる部材が、対象者によって呼気されたガスを受け取る構造とされた再呼吸部材を含んでいる呼吸装置。
【請求項18】
請求項15に記載の呼吸装置であり、
前記麻酔からの覚醒装置が選択的な制限器を更に含み、
当該制限器は、
呼気されたガスが前記フィルタを迂回し且つ前記CO2レベルを上昇させる部材内に入るようにさせ、且つ、吸入されるガスが、前記CO2レベルを上昇させる部材から前記フィルタの中を通って引き込まれるようにされている、呼吸装置。
【請求項19】
請求項18に記載の呼吸装置であり、
前記選択的な制限器が、迂回導管と一対の弁とを含んでおり、
当該一対の弁のうちの少なくとも1つが、前記迂回導管の端部か又は当該迂回導管の長さに沿って配置されている、呼吸装置。
【請求項20】
自発的に呼吸する対象者を麻酔状態から更に戻すための方法であり、
対象者の顔の少なくとも一部分を覆うように、当該対象者の気道と連通しているマスクを配置するステップと、
呼気されたガスのうちの少なくとも幾らかを前記マスクと連通している再呼吸部材内へと導くステップと、
対象者が吸い込むときに、ガスを、麻酔薬除去フィルタを介して前記再呼吸部材内へ且つ対象者の気道内へ引き込むステップと、を含む方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であり、
前記呼気されたガスが前記麻酔薬除去フィルタ内を通過するのを阻止するステップを更に含んでいる方法。
【図1】
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−539904(P2008−539904A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510302(P2008−510302)
【出願日】平成18年5月5日(2006.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/017640
【国際公開番号】WO2006/121980
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(507367046)アンケア・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド (1)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月5日(2006.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/017640
【国際公開番号】WO2006/121980
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(507367046)アンケア・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド (1)
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