説明

全面マスク

【目的】 作業従事者あるいは現場における相手を暗がりの中やライトの影の中でも容易に見い出すことができるようにするとともに、光で照らした時は背景と明確に区別できるようにする。
【構成】 シリコンゴムに蓄光顔料を含有させたゴム質部からなる全面マスク本体1及び隔障体2に、面口部3、目ガラス4及び目枠5を組み付けたもので、太陽光に曝すと、全面マスク本体1及び隔障体2が紫外線を吸収して淡黄緑色の光を発し、暗い所では言うに及ばず、薄暗い所でも、作業従事者あるいは現場における相手を容易に見い出すことができる。又、目枠の表面及び面口部締め金の周囲に光反射塗料テープを貼着して、光が入射したとき際立った反射光を発するようにしたもので、識別が更に確実になる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、呼吸用保護具のうち、特に全面マスクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、酸欠環境、高濃度ガス、有害飛沫や皮膚刺激性粉じん発生場所等で防毒マスク、防じんマスク、送気マスクあるいは空気呼吸器のマスクとして使用される全面マスクの全面マスク本体及び隔障体は、一般に、天然ゴムにカーボンブラック等を顔料として混入させた材料を用いて成形している。
【0003】
ところで、近年、24時間操業下のプラント従業員、坑内,隧道内,タンク内等での作業員、火災とか事故発生時のレスキュー隊員、事故復旧作業従事者等は、2名1組で行動するようにして、安全を確保している。そこで、ヘルメット、肩、襷、腰ベルトに光を反射する塗料シートやプレートを付けた服装をして、両者が互いにその存在を識別できるようにしている。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、視野或いは時間が限定されている中、機敏な動作が要求され、且つ、場合によっては単独行動しなければならないこともある状況下においては、光を反射する塗料シートやプレートは光のない暗がりでは用を無さない。
【0005】
そこで、相手を見失なわないための何等かの手段が必要であるが、今のところこれといった有効な手段はなく、精々、大声を出し合うことしかないが、騒音下では余り効果はない上、全面マスクを外すことは作業従事者にとって非常に危険であるという問題があった。
【0006】
本考案は、このような問題に鑑みてなされたもので、特別な装置を必要とせずに、作業従事者あるいは現場における相手を暗がりの中やライトの影の中でも容易に見い出すことができるようにするとともに、光で照らした時は背景と明確に区別できる手段を有する全面マスクを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本考案は、全面マスク本体及び隔障体を、ゴム材料100に対して蓄光顔料を重量比で10〜20%含有するゴム質部で形成したものである。
【0008】
又、全面マスク本体及び隔障体の目枠の表面及び面口部締め金に反射塗料テープを貼り付けたものである。
【0009】
【作用】
本考案によれば、シリコンゴム100に対して蓄光顔料を10〜20%含むゴム質部で全面マスク本体及び隔障体を形成した全面マスクは、全面マスク本体が立体的に、しかも肉眼で最も明るく感じ且つ周囲との識別が明確な淡黄緑色で発光するので、暗い所では言うに及ばず、薄暗い所でも、作業従事者あるいは現場における相手を容易に見い出すことができる。
【0010】
又、数分間の励起で約4時間発光が得られる上、半永久的に繰返し使用ができるので、全面マスクの取扱いが非常に簡単である。
【0011】
更に、目枠の表面及び面口部締め金の周囲に光反射塗料テープを貼着することにより、光が入射したとき際立った反射光を発するので、識別が更に確実になる。
【0012】
【実施例】
以下、図面を参照しながら、実施例を詳細に説明する。
【0013】
図1は本考案の一実施例の全面マスクを示したもので、全面マスクは、シリコンゴムに蓄光顔料を含有させたゴム質部からなる全面マスク本体1及び隔障体2に、面口部3、目ガラス4及び目枠5を組み付けたものである。
【0014】
ところで、蓄光顔料のZnS:Cuは、太陽光に曝すと、紫外線を吸収して黄緑色の光を発する。励起光は明るい光源ほど有効で、350nm(ナノメータ)の波長で励起したとき、約3分で飽和に達して、約530nmをピークとしたスペクトルを発し、以後時間の経過とともに発光量は減衰していく。この530nmのスペクトルは人間の眼に最も明るく感ずる色であり、暗い所では言うに及ばず、薄暗い所でも他の光と明瞭に判別ができる。
【0015】
又、シリコンゴムは無色透明なため、蓄光顔料を混入して加硫成形しても透明さを保っており、励起のための吸光及び発光の機能を確実に発揮する。また、全面マスク本体1として立体成形した場合、面発光ではなく立体的な発光体となるため光の放射効率は良く、他の光との判別も確実となる。
【0016】
今、シリコンゴム100に対して、蓄光顔料としての硫化亜鉛(ZnS:Cu)を重量比でそれぞれ5,10,15,20,25%だけ混合した5種類のゴム質部を、加硫温度160℃、加硫時間20分で全面マスク本体1及び隔障体2を成形すると、ゴム質部はそれぞれ淡青色をした透明体となり、光を透過する。
【0017】
このようにして製造した全面マスクをそれぞれ太陽光に5分間曝して、暗室内で発光状態を観察すると、約4時間後まで視認できた。その結果を表1に示す。
これらを総合的に評価すると、蓄光塗料の量はシリコンゴム100に対して10〜20%程度含有したものが実用に適している。
【0018】
【表1】


【0019】
図2は本考案の他の実施例の全面マスクを示したもので、全面マスクは全面マスク本体1及び隔障体2を図1で説明した蓄光顔料を含有するゴム質部で形成し、且つ、目枠5の表面及び面口部締め金6の周囲に光反射塗料テープ7を貼ったものである。
【0020】
本考案による全面マスクは、太陽光のように明るい光で励起されると、暗い所でマスク本体が光を発するとともに、目枠5の表面及び面口部締め金6に貼った光反射塗料テープ7に懐中電燈等の光が当たると、際立った反射光を発する。
【0021】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案によれば、シリコンゴム100に対して蓄光顔料を10〜20%含むゴム質部で全面マスク本体及び隔障体を形成した全面マスクは、全面マスク本体が立体的に、しかも肉眼で最も明るく感じ且つ周囲との識別が明確な淡黄緑色で発光するので、暗い所では言うに及ばず、薄暗い所でも、作業従事者あるいは現場における相手を容易に見い出すことができるという効果を奏する。
【0022】
又、数分間の励起で約4時間発光が得られる上、半永久的に繰返し使用ができるので、全面マスクの取扱いが非常に簡単であるという効果を奏する。
【0023】
更に、目枠の表面及び面口部締め金の周囲に光反射塗料テープを貼着することにより、光が入射したとき際立った反射光を発するので、識別が更に確実になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】シリコンゴムに蓄光材料を含有させたゴム質部からなる本考案の全面マスクの斜視図である。
【図2】シリコンゴムに蓄光材料を含有させたゴム質部からなる全面マスク本体及び隔障体の目枠の表面及び面口部締め金の周囲に光反射塗料テープを貼着した本考案の全面マスクの斜視図である。
【符号の説明】
1…全面マスク本体、 2…隔障体、 3…面口部、 4…目ガラス、 5…目枠、 6…面口部締め金、 7…光反射塗料テープ。

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 全面マスク本体及び隔障体は、ゴム材料100に対して蓄光顔料を重量比で10〜20%含有するゴム質部で形成されていることを特徴とする全面マスク。
【請求項2】 全面マスク本体及び隔障体の目枠の表面及び面口部締め金に反射塗料テープを貼り付けたことを特徴とする請求項1記載の全面マスク。

【図1】
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【図2】
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