説明

八核ニッケル・クラスターをベースにしたオリゴマー化用触媒

【化1】


本発明によれば、それぞれ4個のニッケル原子を含む二つのシートからつくられ、
(a)一般式(I)の第1の成分、および(b)一般式(II)の錯体をベースにした第2の成分の反応生成物であるNi8クラスターであって、ここで該第1の成分においてはベンゼン環は3位および/または4位および/または5位および/または6位において置換基を有することができ、RおよびR’は同一または相異なり、置換基をもったまたはもたないフェニル、或いは置換基をもったまたはもたないシクロアルキル、または置換基をもったまたはもたない炭素数1〜20のアルキルから選ばれることができ、Qは陽イオンであり、また第2の成分においては、R”はハロゲンまたはアセテートから選ばれ、2個の矢印は2個の空位の部位が存在することを示しているNi8クラスターをベースにしていることを特徴とする触媒成分が提供される。また本発明によれば、オレフィンのオリゴマー化を行なうための触媒系および方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオレフィンのオリゴマー化に極めて活性をもったニッケルをベースにした触媒系に関する.
【背景技術】
【0002】
分子錯体中のニッケルはオレフィンのオリゴマー化または重合に有用な触媒系をつくるのに使用されてきた。
【0003】
例えば非特許文献1にはニッケルおよびフォスフィノカルボキシレート配位子の分子錯体を使用する分岐したポリエチレンの製造法が記載されていれる。
【0004】
非特許文献2には、エチレンのオリゴマー化に適した中性および陽イオン性の新規なメタリル・ニッケル錯体の合成が記載されている。
【0005】
さらに一般的には、ニッケルをベースにした錯体の製造法がいくつかの従来の文献に論じられている。
【0006】
非特許文献3には、[Ni(PCMe(PMe)(CO)12]の合成法およびその構造および結合に関する解析が記載されている。
【0007】
非特許文献4には、基本的な構造単位として完全に結合した金属の立方体構造を示す新規金属クラスター系Ni(CO)(μ−PCの合成法および構造解析が記載されている。
【0008】
非特許文献5には、ニッケルおよびコバルトのケージ(籠形構造)を含む多核化合物が記載されている。最大24個の金属中心をもつケージが示されている。
【0009】
これらすべての研究は断片的であり、従ってニッケルをベースにしたオリゴマー化用触媒系の効率および活性を改善することが必要である。
【非特許文献1】Z.J.A.Komon,X.Bu,G.C.Bazan,J.Am.Chem.Soc,2000,12379。
【非特許文献2】M.C.Bonnet,F.Dahan,A.Ecke,W.Keim,R.P.Schulz,I.Tkatchenko,J.Chem.Soc.Chem.Comm.,1994,615。
【非特許文献3】D.F.Rieck,A.D.Rae,L.F.Dahl,Chem.Comm.,1993,585。
【非特許文献4】L.D.Lower,L.F.Dahl,J.AM.Chem.Soc,1976,5046。
【非特許文献5】R.E.P.Winpenny,J.Chem.Soc.Dalton Trans.,2002,1。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては、数種のα−オレフィンのオリゴマー化に非常な活性をもつNi8クラスターをベースにした触媒系が開示される。
【0011】
さらに本発明においては、α−オレフィンの共重合に必要な共重合単量体をその場で製
造するためのNi8クラスターをベースにした触媒系の使用が開示される。
【0012】
従って本発明によれば、それぞれ4個のニッケル原子を含む二つのシートからつくられ、
(a)一般式
【0013】
【化1】

【0014】
の第1の成分、および
(b)一般式
【0015】
【化2】

【0016】
但し式中Lは独立なまたはキレート配位子Lであり、容易に置き換ることができる(例えばエチレングリコールジメチルエーテル)ものとする、
の配位子をもつ錯体をベースにした第2の成分の反応生成物であるNi8クラスターであって、
ここで該第1の成分においてはベンゼン環は3位および/または4位および/または5位および/または6位において置換基を有することができ、RおよびR’は同一または相異なり、置換基をもったまたはもたないフェニル、或いは置換基をもったまたはもたないシクロアルキル、または置換基をもったまたはもたない炭素数1〜20のアルキルから選ばれることができ、Qは陽イオンであり、また第2の成分においては、R”はハロゲンまたはアセテートから選ばれ、2個の矢印は2個の空位の部位が存在することを示しているNi8クラスターをベースにしていることを特徴とする触媒成分が開示される。
【0017】
ベンゼン環上の置換基は誘起的な求引効果または供与効果のいずれかをもっていることができる。
【0018】
誘起的な求引効果または供与効果をもっている置換基は、水素またはアルコキシ、或いはNO、またはCN、またはCOR、または炭素数1〜20のアルキル、またはハロゲンまたはCX、但しXはハロゲン、好ましくはフッ素、または3位および4位、または4位および5位、または5位および6位の間における融合環から選ぶことができる。
【0019】
RおよびR’は好ましくは同じであり、さらに好ましくは置換基をもたないか置換基をもったフェニルである。フェニルに置換基が存在する場合、それはベンゼン環に対して上記に記載されたと同じリストから選ぶことができる。
【0020】
Ni8クラスターの立体効果は、ベンゼン環上の3位および6位における置換基、および2位および6位における置換基、および随時フェニル上の3位および5位における置換基によって決定される。
【0021】
この立体効果に対してベンゼン環およびフェニル上の好適な置換基(存在するなら)はt−ブチル、プロピル、またはメチルから選ぶことができる。最も好適な置換基はt−ブチルである。
【0022】
ベンゼン環の代わりにC1およびC2の間においてオレフィン系−CR=CR−を使用することができる。
【0023】
R”は好ましくはCl、Br、IまたはCHCOO−から選ばれる。さらに好ましくはBrから選ばれる。R”は最終的なNi8クラスターの中に残り、このNi8錯体を構成するそれぞれ4個のニッケル原子を含む二つのシートの間で確実に相互作用を行なわせる。従ってその性質はNi8クラスターの最終的な構造に影響を及ぼし、従ってオリゴマー化用の触媒としての活性に影響を及ぼす。
【0024】
また本発明によれば、
(a)一般式
【0025】
【化3】

【0026】
の第1の成分を用意し、
(b)一般式
【0027】
【化4】

【0028】
の錯体をベースにした第2の成分を用意し、
(c)溶媒を加え、
(d)4〜20時間撹拌を行ない、
(e)Ni8クラスターの粉末を回収する
段階を含んで成るそれぞれ4個のニッケル原子を含んだ二つのシートからつくられたNi8クラスターをベースにした触媒成分の製造法が提供される。
【0029】
溶媒はジクロロメタンであることが好ましい。
【0030】
また本発明によれば、Ni8クラスターおよび活性化剤をベースにした触媒系が提供される。
【0031】
さらに本発明によれば、
(a)Ni8クラスターおよび活性化剤をベースにした触媒系を反応器の中に注入し、
(b)随時使用される共触媒を注入し、
(c)反応器に単量体を供給し、
(d)これをオリゴマー化の条件下に保ち、
(e)オリゴマーを回収する
段階を含んで成るα−オレフィンのオリゴマー化を行なう方法が提供される。
【0032】
活性化剤は、アルモキサンまたはアルミニウムアルキル、或いは硼素をベースにした活性化剤から選ぶことができる。
【0033】
アルミニウムアルキルは、式AlRをもち、それぞれのRは同一または相異なり、ハロゲン化物または炭素数1〜12のアルコキシまたはアルキルから選ばれ、xは1〜3であるものが使用できる。特に適したアルミニウムアルキルは塩化ジアルキルアルミニウムであり、最も好適なものは塩化ジエチルアルミニウム(EtAlCl)である。
【0034】
アルモキサンはオリゴマー化工程中触媒成分を活性化するのに使用され、当業界に公知のいかなるアルモキサンも適している。
【0035】
好適なアルモキサンはオリゴマー性の直鎖および/または環式アルキルアルモキサンを含んで成り、
オリゴマーの直鎖アルモキサンは式R−(Al(R)−O)−AIR
で表され、
オリゴマーの環式アルモキサンは(−Al(R)−O−)で表されるものである。但しここでnは1〜40、好ましくは10〜20であり、mは3〜40、好ましくは3〜20、RはC〜Cのアルキル基、好ましくはメチルである。メチルアルモキサン(MAO)が好適に使用される。
【0036】
硼素をベースにした適切な活性化剤は硼酸トリフェニルカルベニウム、例えばEP−A−0,427,696号明細書記載のテトラキス−ペンタフルオロフェニル−ボラート−トリフェニルカルベニウム[C(Ph)B(C]を含むことができる。
【0037】
他の適当な硼素含有活性化剤はEP−A−0,277,004号明細書に記載されている。
【0038】
オリゴマー化反応の温度および圧力の条件には特に制限はない。
【0039】
オリゴマー化の温度は−25℃から最高120℃の範囲であることができ、好ましくは0〜50℃、最も好ましくはほぼ室温(約20℃)である。温度が高くなると、触媒系は失活する傾向がある。
【0040】
反応器中の圧力は0.5〜50バールの範囲で変えることができ、好ましくは1〜20バール、最も好ましくは5〜10バールである。
【0041】
本発明の触媒系を用いて得られたオリゴマーは、ガスクロマトグラフ法および/または核磁気共鳴法(NMR)によってその特性評価を行なった。
【0042】
さらに本発明によれば、オレフィンの共重合において、その場において共重合単量体を製造するための本発明の触媒系の使用が提供される。
【実施例】
【0043】
すべての反応は標準的なグローブ・ボックスおよびSchlenk法を用い、真空ライン中においてアルゴン雰囲気下において行なわれた。
【0044】
2−(ジフェニルフォスフィノ)−安息香酸ナトリウムの合成
2−(ジフェニルフォスフィノ)−安息香酸306mg(1ミリモル)を5mLの乾燥テトラヒドロフラン(THF)に溶解した。この溶液を−5℃に冷却し、5mLのTHF中に水素化ナトリウム24mg(1ミリモル)を含む懸濁液を滴下して加えた。この混合物を0℃で3時間撹拌した。デカンテーションを行なった後、このようにして得られた白色固体を濾過し、5mLのTHFおよび5mLのペンタンで2回洗滌し、295mg(0.89ミリモル:90%)の白色固体を得た。Bruckner社のDPX 200を用い81MHzで得た31P NMRスペクトルにおけるシフト値、31P{H}(81MHz、溶媒:DMSO−d、δ)は−7.5であった。
【0045】
2−ジフェニルフォスフィノ−5−メチル−安息香酸ナトリウムまたは2−ジフェニルフォスフィノ−6−メトキシ−安息香酸ナトリウムの合成
段階1: 5−メチル−2−フルオロ安息香酸カリウムまたは6−メトキシ−2−フルオロ安息香酸カリウムの製造。
【0046】
Schlenk管の中でアルゴン雰囲気下において3ミリモルの5−メチル−2−フルオロ安息香酸または6−メトキシ−2−フルオロ安息香酸を3mLの脱ガスしたテトラヒドロフラン(THF)中に溶解し、この系を−15℃に冷却した。3.3ミリモルの水素化カリウム(KH)を含む他のSchlenk管の中に4mLのTHFを加えた。この酸性の溶液をKH懸濁液に注入し、Schlenk管を4mLのTHFで2回すすぐ。冷却した浴を回収し、この混合物を室温(約25℃)において3時間撹拌した。デカンテーションを行なった後、THFを濾過し、固体を5mLのペンタンですすいだ後、真空下において乾燥した。両方の生成物の収率は92%であった。H NMRでその特性評価を行なった。
【0047】
− 5−メチル−2−フルオロ安息香酸カリウム:H NMR(300MHz、アセトン−d)δ(ppm):6.82,6.85,7.26(3H,HAr);2.22(3H,s,CH)。
− 6−メトキシ−2−フルオロ安息香酸カリウム:H NMR(200MHz,DMSO)δ(ppm):6.54〜7.05(3H,HAr);3.69(3H,s,CH)。
【0048】
段階2: 2−ジフェニルフォスフィノ−5−メチル−安息香酸または2−ジフェニルフォスフィノ−6−メトキシ−安息香酸の製造
アルゴン雰囲気下において段階1で得られたいずれかの生成物3ミリモルを含むSchlenk管の中に10mLの脱ガスしたTHFを加え、この系を−78℃の温度に冷却した。3ミリモルのKPPhを滴下して加え、この混合物を室温で2〜12時間撹拌し、次いで還流下において12〜24時間撹拌した。THFを蒸発させ、15mLのエーテルを加えた。15mLの脱ガスした蒸留水で有機相を洗滌した。液相を10mLのエーテルで2回洗滌し、濾過し、0.5Mの塩酸で酸性にしてpHを3〜4にする。白色沈澱を濾過し、一晩真空下で乾燥した。
【0049】
2−ジフェニルフォスフィノ−5−メチル−安息香酸は82%の収率で得られ、次の特
性をもっていた: H NMR(200MHz,DMSO)δ(ppm):8.03(3H,m,HAr);7.36(11H,m,HAr);6.90(1H,m,HAr);2.44(3H,s,CH)。31P NMR(200MHz,DMSO)δ(ppm):−8.91。
【0050】
2−ジフェニルフォスフィノ−6−メトキシ−安息香酸は次の特性をもっていた: 31P NMR(200MHz,DMSO)δ(ppm):−6.79;−11.17。
【0051】
段階3: 2−ジフェニルフォスフィノ−5−メチル−安息香酸ナトリウムまたは2−ジフェニルフォスフィノ−6−メトキシ−安息香酸ナトリウムの製造
アルゴン雰囲気下で段階2で得られたいずれかの生成物0.3ミリモルを含むSchlenk管に、蒸溜して脱ガスしたばかりのTHF5mLを加え、この溶液を−10℃に冷却した。0.3ミリモルの水素化ナトリウムを一度に加え、この混合物を室温において3時間撹拌した。真空下においてTHFを蒸発させ、残留物を5mLの蒸溜したペンタンで2回洗滌した。白色固体の残留物を真空下で乾燥した。
【0052】
2−ジフェニルフォスフィノ−5−メチル−安息香酸ナトリウムは99%を越える収率で得られ、次の特性をもっていた: H NMR(200MHz,DMSO)δ(ppm):7.80〜6.60(13H,m,HAr);1.55(3H,s,CH)。31P NMR(200MHz,DMSO)δ(ppm):−6.52。
【0053】
2−ジフェニルフォスフィノ−6−メトキシ−安息香酸ナトリウムは生成物の混合物で、次の特性をもっていた: 31P NMR(200MHz,DMSO)δ(ppm):−4.59;−11.25。
【0054】
Ni8クラスターの合成
100mg(0.3ミリモル)の2−ジフェニルフォスフィノ−安息香酸ナトリウムおよび124mg(0.4ミリモル)のジブロモ−1,2−(ジメトキシ−エチレングリコールジメチルエーテル)ニッケル((DME)NiBr)をSchlenk管に導入した。15mLのジクロロメタンを加え、この懸濁液を一晩撹拌した。褐色の溶液は緑色に変わり、これをセライトの上で濾別した。真空下においてこの溶液を濃縮して約2mLにし、20mLのペンタンを加え、淡い緑色の粉末としてNi8クラスター1を得た(142mg;0.049ミリモル;97%)。
【0055】
全く同じ方法を繰り返し、2−ジフェニルフォスフィノ−5−メチル−安息香酸ナトリウム0.3ミリモルを用いて暗緑色の粉末としてNi8クラスター2が得られ、また2−ジフェニルフォスフィノ−6−メトキシ−安息香酸ナトリウム0.3ミリモルを用いて淡緑色の粉末としてNi8クラスター3が得られた。
【0056】
CRMPO(Rennes大学)のZabSpec TOF Micromass装置により高分解質量スペクトルを得た。結果は次の通りである:(高速原子衝撃法(FAB)、溶媒:mNAB):m/z=2830.3469(M)。C113841179Br81Br58Niに対する計算値は2830.3428である。
【0057】
X線による単結晶の構造決定に適したNi8クラスター1の単結晶は1.2−ジクロロエタン溶液の中にペンタンの蒸気を拡散させることによって得た。単位格子の定数、空間群の決定およびデータの集積は、グラファイトの単色化されたMo−Ka放射線を用いて自動化されたNONIUS Kappa CCD回折計を使用して行なった。格子パラメータはDenzo and Scalepackを使用し、10フレーム(psi回転:1フレーム当たり1°)を用いて得た。その構造はその中の水素原子を表示しないSIR
−97を用いて得た。異方性に対する精製(anisotropic refinement)を行なった後、Fourier Difference法を用いて多くの水素原子を見出だした。全体的な構造は全マトリックス最小二乗法(F二乗の値、Ni、Br、P、OおよびC原子に対する x,y,z,βij値,およびH原子を載せた場合のx、y、zを使用)によりSHELXL97を用いて精製(refine)した。いくつかの残留ピークがあったが、これは恐らくDMEによるものであることを注目されたい。原子の散乱因子はInternational Tables for X−ray Crystallographyから得た。
【0058】
エチレンの高圧オリゴマー化
オリゴマー化は、機械的撹拌機、熱電対および圧力ゲージを備えた190mLのステンレス鋼製コンピュータ制御式オートクレーブの中で行なった。典型的な反応工程では、55mLの乾燥したトルエンを反応器に導入した。窒素を満たしたグローブ・ボックスの中で3.75mg(1.3μモル)のNi8クラスター1を秤量し、(a)2.35mLのMAO(30重量%のAl、[AI]:[Ni]=2000)、或いは(b)3.5mLのEt2AICI(25重量%のAl、[AI]:[Ni]=1000)で活性化し、トルエンで希釈して最終容積を25mLにした。活性化した触媒溶液5mLを反応器の中に入れた。エチレンの圧力を所望の値に上昇させ、連続的に反応器に供給した。1時間後、反応を停止させ、HP 5890 Series IIの装置において、DB−Petroのキャピラリー・カラム(メチルシリコーン、長さ100m、内径0.25mm、フイルム厚さ0.5μm)を用い、35℃において15分間作動させ、次いで250℃の最終温度まで毎分5℃の割合で加熱し、ガスクロマトグラフ法により溶液の分析を行なった。種々の温度および圧力条件におけるオリゴマー化の結果を表1および図1に示す。
【0059】
大気圧におけるエチレンのオリゴマー化
上記の活性化した触媒溶液5mLを、−15℃に冷却したトルエン55mLを含むSchlenk管の中に入れる。エチレンでSchlenk管をパージし、内容物を磁気的に撹拌し、反応工程中エチレン下に保った。3時間後、6mL(5g)のオリゴマーを得た。これをガスクロマトグラフにより分析した。オリゴマー化の結果を表1に示す。
【0060】
表1

圧力 温度 活性化剤 活性 C4 ブテン−1 C6 C8+
バール ℃ T C2/触媒モル/時間 % % % %
7 20 Et2AlCl 21.0 94 86 5.2 0.8
7 20 MAO 49.8 67 33 30 3
7 50 MAO 15.9 67 50 28.5 4.5
20 50 MAO 13.2 68 66 30 2
40 100 MAO 12.0 79 64 17 4
1 -15 MAO 19.4 68 24 27 5
EtAlClを用いた場合、MAOに比べC4に対する高い選択率が得られた。
【0061】
表2に示すように、Ni8クラスター2および3を用いエチレンのオリゴマー化を繰り返した。
【0062】
表2

Ni8 圧力 温度 活性化剤 活性 C4 ブテン−1 C6 C8+クラスター バール ℃ T C2/触媒モル/時間 % % % %
1 7 20 MAO 49.8 67 33 30 3
2 7 20 MAO 51.9 63 20 30 7
3a 7 20 MAO 4.3 74 72 15 ll

a 配位子は約45%の純度で得られた。
【0063】
プロピレンのオリゴマー化
上記の活性化した触媒(1からの)溶液5mLを反応器の内部に入れた。プロピレンの圧力を所望の値に上昇させ、連続的に反応器に供給した。1時間後、反応を停止させ、エチレンの場合と同じ方法および装置を使用してガスクロマトグラフにより溶液を分析した。オリゴマー化は圧力3バール、温度20℃において行なった。1時間当たり触媒1モルに対して消費されるプロピレンの量により活性を測定した。この値は触媒1モル当たり毎時プロピレン19.4トンであり、0.26μモル(0.75mg)の触媒を使用して反応を開始し、1時間後に4mL(3.6g)のオリゴマーが得られた。オリゴマーの分布は、図2に示されているように、C6が77%、C9が21%、C12以上が2%であった。
【0064】
1−ヘキセンのオリゴマー化
窒素を満たしたグローブ・ボックスの中で3.5mg(1.2μモル)のNi8クラスター1を2.2mLのMAO(30重量%のAl,[Ni]:[AI]=2000)で活性化し、トルエンで希釈して最終容積を12mLにした。活性化した触媒溶液5mLをトルエン25mLおよび1−ヘキセン30mLを含むSchlenk管の中に入れた。この溶液を30℃において5時間撹拌した。メタノールおよび僅かに酸性にした水を用いてこの混合物の反応を停止させた。水性相を除去し、溶媒を蒸発させて1.1gのオリゴマーを得た。従って測定された活性は触媒1モル当たり毎時オリゴマー400kgであった。NMR、並びにエチレンおよびプロピレンの場合と同じ方法および装置を用いてガスクロマトグラフによりオリゴマーを分析した。但し、ガスクロマトグラフ法では4分間100℃で作動させた後、温度を毎分8℃の割合で最終温度250℃まで上昇させた。オリゴマーの分布はC12が95%、C18が5%であった。NMRの分析によりオレフィンの72%が直鎖であり、28%が1個の=CHの分岐をもっていることが示された。ガスクロマトグラフの結果を図3に示し、NMRの結果は図4で見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】エチレンのオリゴマーのガスクロマトグラフ。
【図2】プロピレンのオリゴマーのガスクロマトグラフ。
【図3】ヘキセンのオリゴマーのガスクロマトグラフ。
【図4】1−ヘキセンのオリゴマーのH NMR。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ4個のニッケル原子を含む二つのシートからつくられ、
(a)一般式
【化1】

の第1の成分、および
(b)一般式
【化2】

の錯体をベースにした第2の成分の反応生成物であるNi8クラスターであって、
ここで該第1の成分においてはベンゼン環は3位および/または4位および/または5位および/または6位において置換基を有することができ、RおよびR’は同一または相異なり、置換基をもったまたはもたないフェニル、或いは置換基をもったまたはもたないシクロアルキル、または置換基をもったまたはもたない炭素数1〜20のアルキルから選ばれることができ、Qは陽イオンであり、また第2の成分においては、R”はハロゲンまたはアセテートから選ばれ、2個の矢印は2個の空位の部位が存在することを示しているNi8クラスターをベースにしていることを特徴とする触媒成分。
【請求項2】
陽イオンがナトリウムであることを特徴とする請求項1記載の触媒成分。
【請求項3】
RおよびR’は同じであってフェニルであることを特徴とする請求項1または2記載の触媒成分。
【請求項4】
置換基はベンゼン環の3位および/または6位にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載された触媒成分。
【請求項5】
置換基が1個または2個のフェニルの上に存在する場合、該置換基は2位および/または6位、および/または3位および/または5位にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載された触媒成分。
【請求項6】
R”がBrであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載された触媒成分。
【請求項7】
(a)一般式
【化3】

の第1の成分を用意し、
(b)一般式
【化4】

の錯体をベースにした第2の成分を用意し、
(c)極性溶媒を加え、
(d)4〜20時間撹拌し、
(e)Ni8クラスターを回収する
段階を含んで成ることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載された触媒成分の製造法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載された触媒成分および活性化剤を含んで成ることを特徴とする触媒系。
【請求項9】
活性化剤はメチルアルモキサンまたは塩化ジエチルアルミニウムであることを特徴とする請求項8記載の触媒系。
【請求項10】
(a)請求項9または10記載の触媒系を反応器に導入し、
(b)単量体を反応器に供給し、
(c)オリゴマー化条件に保ち、
(d)オリゴマーを回収する
段階を含んで成ることを特徴とするオレフィンをオリゴマー化する方法。
【請求項11】
単量体はエチレン、プロピレンまたは1−ヘキセンであることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
オレフィンの共重合において、共重合単量体をその場でつくるための請求項8または9記載の触媒系を使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−520682(P2006−520682A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504520(P2006−504520)
【出願日】平成16年3月2日(2004.3.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002145
【国際公開番号】WO2004/078346
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【出願人】(505252333)サントル・ナシヨナル・ド・ラ・ルシエルシユ・シヤンテイフイク (24)
【Fターム(参考)】