説明

公営競技における移動体の時間計測システム及び移動体の位置判定システム

【課題】本発明は競馬,競輪等の公営競技における移動体の時間計測システム及び位置判定システムに関し,コース地中に線路を埋設したり,移動体に無線受信機構を設けることなく移動体の時間計測と位置判定を正確に行うことを目的とする。
【解決手段】移動体に電波信号を発信する電波発信機を設け,移動体が通過する電波発信機からの電波信号を受信する発信電波読取機の対を移動体が走行するトラックのコースの一定距離毎にトラックの両側に配置する。2つの発信電波読取機により電波信号を検出すると,その位置と識別情報を情報の処理を行う処理装置に伝送する伝送網を備え,処理装置は,伝送されてきた識別情報を取得して対向する2つの発信電波読取機の信号が受信されると,その時の時間,位置及び識別情報を含むタイムスタンプを発生し,電波強度に基づいて移動体が最適な位置におけるタイムスタンプを記憶手段に記憶するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,競馬,競輪,競艇等の公営競技における選手が乗る競争馬,自転車,ボート等の移動体の試走タイム,調教タイム等を計測する移動体の時間計測システム及び移動体の位置判定システムに関する。
【0002】
公営競技では,レース本番を行う前にレースに出走する選手を含む自転車,競争馬,ボート等の移動体の試走タイムや調教タイムを新聞や専門紙,インターネット等で公開している。これらのタイムは,選手が自分自身または自分で調整したエンジン等の調整具合,または調教師が調教馬の調子を判断するための指標とする他に,ファンが競技結果を予想する上で重要な役割を担っている。
【0003】
従来ではこれらのタイムは手動で計測されている。また,一部ではタイム計測がシステム化され自動計測が可能となっているが,天候不順時では計測不可が発生したり,計測精度が低下するという問題があり,またコースを横切った上空や地中に線路を埋め込まなければならない等の大規模な設備を設けなければならないため,その改善が望まれている。
【背景技術】
【0004】
図9はラップタイム計測の従来例1の技術を示す(特許文献1の図2参照)。図中,Hは競争馬,81は調教コースの走行トラック,82は後述するように82aと82bとで構成する引金信号発生手段,83は信号受信手段であり,82と83は調教コースの一定間隔(200m)の計測地点M1 〜Mn 毎及びゴール地点Gに設けられている。引金信号発生手段82は信号発振器82aと引金信号送信用のループアンテナ82bとで構成され,ループアンテナ82bは走路トラックの両側に立設したポスト82cの先端部から地中に埋設するようにしてループ状に架設されている。83は信号受信手段,83aは走行トラック81の左右に置かれた受信アンテナ,83bは計測処理部,84は競争馬Hに取り付けられ,引金信号発生手段82からの信号を受信することにより固有番号を発信する固有番号発信器である。
【0005】
競争馬Hが各計測位置を通過する時に,信号発振器82aからの引金信号がループアンテナ82bから送信されると,競争馬Hに取り付けられた固有番号発信器84の無線受信機構でこれを受信し,その受信信号により駆動されて固有番号信号を送信する。この固有番号は受信アンテナ83aで検出し,信号受信手段83で受信されて,計測処理部83bで固有番号,計測位置の識別番号及び受信時間の測定データを記録し,各計測点のラップの計測を行う。
【0006】
図9の技術の他に,走行路の所望の地点で通過する移動体の固体識別と通過時間計測を行う移動体計測システムとして,調教馬等の移動体に小型無線装置を取り付け,競走路上の各計測時点の両側にサインポストを設け,そこに管理無線装置と接続された空中線を設け,位相が同一で周波数が異なる無線信号をそれぞれ定められた時間毎に間欠的に(無線信号の送信期間と停止期間とで構成)に繰り返し送信され,移動体の小型無線装置で空中線からの無線信号を受信すると,その後の停止期間中に移動体のIDを送信し,これを空中線から受信して管理無線装置で検出して記録することで,移動体の通過位置と時間を計測できる(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−160167号公報
【特許文献2】特開2000−137063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記図9に示す技術によれば,引金信号送信用のループアンテナを走路トラックの上空に張ると共に地中に埋め込んで,信号発振器を設けてループアンテナから送信する必要があり,トラックの地中に設備を埋設する工事を含めてコストがかかるという問題がある。また,上記の特許文献2の技術では,送信信号を間欠的に出力すると移動体の小型無線装置でこれを受信すると,送信を停止している期間中に移動体のIDを送信するもので,移動体の小型無線装置における受信と送信の制御を行う必要がある点で複雑な制御が必要である点で問題がある。
【0008】
また,陸上競技の走者がコースを走る競技において走者の時間計測や位置判定(順位を含む)を自動的に簡単且つ高精度で実現することが困難である。
【0009】
本発明はコース地中に線路を埋設することなく,また移動体に無線受信機構を備える必要をなくして簡易な構成により正確な位置検出とタイム計測を可能にする公営競技における移動体の時間計測システム及び移動体の位置判定システムを提供することを目的とする。また,公営競技の馬や自転車等の移動体だけでなく,陸上競技の競走競技の走者の時間及び位置の判定を行うための時間計測システム及び位置判定システムを提供することも他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
図1は本発明のシステム構成を示す図である。図中,1は競馬の馬,競輪の自転車,競艇のボート等の移動体,10は移動体1に取り付けられて移動体の識別情報を含む無線信号を発信する微小,軽量の電波発信機,2a(2a−1,2a−2,…2a−nを含む:但し,図1ではn=6の例を示す)及び2b(2b−1,2b−2,…2b−nを含む:但し,図1ではn=6の例を示す)はトラック(走行路)の一周の一定区間毎に,トラックの両側に対抗して配置された無線信号の発信電波読取機であり,2aはトラック(柵)の内側,2bはトラックの外側に配置され,それぞれアンテナを備えている。3は各発信電波読取機や無線機30(後述する)及び処理装置4(後述する)を相互に接続して信号を伝送する伝送網(ネットワーク),30は無線機,4は処理装置,4aは移動体計測判定手段,4bはタイム計測手段,4cは周回順位計算手段,4dは情報表示制御手段,4eは記憶手段,5は表示または印字を行う出力装置である。なお,電波発信機10は,例えば,内蔵した電源により送信を行うアクティブ型のRFID(Radio Frequency IDentification) で使用されるICチップやタグを利用することができる。
【0011】
移動体1に識別情報を含む無線信号を発信する電波発信機10を取り付けて出発点から出走すると,トラック上の発信電波読取機が配置された位置を移動体1が横切ると,その両側の対向する位置に設けられた発信電波読取機2a,2bにおいてその移動体1の電波発信機10から発信する無線信号を受信する。この時,当該位置に対向して設けられた2つの発信電波読取機2a,2bは電波発信機10から発生する電波を受信し,2つの発信電波読取機2a,2bで受信した時の電波強度及び移動体の識別情報の信号は,直接伝送網3を介するか,伝送網3に直接接続できない発信電波読取機2a,2bから無線機30で無線信号に変換し,その無線信号を伝送網3と接続した無線機30で受信し,処理装置4に供給する。
【0012】
処理装置4において,移動体計測判定手段4aは識別情報を検出した発信電波読取機2a,2bを判別することで移動体1の位置を検出すると共にその時の時間情報及び電波強度信号を識別して記憶手段4eに識別情報,位置情報及びタイム等を記憶する。また,タイム計測手段4bは,移動体計測判定手段4aにより求めた各移動体1について得られた位置情報及び時間情報から各移動体1によるトラックの周回に要する時間,または一定区間を走るのに要する時間(ラップタイム)を計算して結果を記憶手段4eに記憶する。また,周回順位計算手段4cは記憶手段4eに格納された各移動体1の周回時間を求め,複数の移動体1の周回時間を比較して識別番号別に順位を判別して,結果を記憶手段4eに記憶する。また,情報表示制御手段4dは,記憶手段4eに記憶した各移動体1の識別情報の周回時間またはラップタイム(周回時間,区間毎の時間)を処理することで各時間や順位等の各情報を発生して出力装置5に出力する。
【0013】
陸上競技の場合には,移動体1である走者が衣服に電波発信機10を取り付けて,コース上に発信電波読取機2a,2bを設けることにより上記した競馬の場合と同様の原理により時間計測や位置判定(順位判定を含む)を行うことができる。
【0014】
また,複数の移動体1の電波発信機10から発生する識別情報が固有のものであるから,トラック上を走る複数の移動体1について同時に処理して識別して検出することで位置及び順位を識別することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により移動体の試走タイムや調教タイムを自動計測することが可能となり,従来より精度の高い計測を行うことが可能となる。また,同時に移動体の位置情報を計測できるので,周回順位の計測を自動化して,自動出力することが可能となる。また,そのためにコースの側に電波発信機を設け,コースの上や地中に電波発信のためのループアンテナを埋設する必要がなくなり,導入時やその後の管理負担が軽減される。また,電波発信機として無線のタグ技術を用いることで安価なシステムを実現できる。
【0016】
また,複数の人間により行ってきた競馬や競輪の時間計測や位置判定(順位判定)が自動化でき,反則の判定(審議)も自動化でき,判定時間の短縮化を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明による移動体の時間計測及び位置判定を行う原理を図2〜図5を用いて説明する。図2は発信電波読取機の計測可能範囲の説明図であり,図中,2は発信電波読取機であり,10は電波発信機である。発信電波読取機2は電波発信機10から発生する電波を受信して情報を読取るが,検出できる電波の強度は電波発信機10との距離に反比例し,検出可能な範囲は距離に比例して広がり,図2では発信電波読取機に対して電波発信機10が距離Xに位置する時,発信電波計測範囲R(x)は,計測電波の強度F(X)により決まる。そして,距離Yの時,発信電波計測範囲R(y)は,計測電波の強度F(Y)により決まり,F(Y)=F(X)×α,R(y)=R(x)×α(但し,αは比例定数)の関係が成立する。これにより,計測可能範囲は計測電波強度の変化で決まる。
【0018】
図3は発信電波読取機による移動体の位置特定の説明図である。図中,2は発信電波読取機,200A,200Bは一つの発信電波読取機2に取り付けられた2つのアンテナ,10は移動体に取り付けた電波発信機である。発信電波読取機2の2本のアンテナ200A,200Bは電波発信機10が発信した情報をそれぞれで受信し,その時の受信時刻は次のようになる。但し,IDは電波発信機の識別情報である。
【0019】
アンテナ200Aでの受信タイム=Ta(ID) (1)
アンテナ200Bでの受信タイム=Tb(ID) (2)
また,2本の受信アンテナの電波取得時間の差異(ΔT)は次の通りである。
【0020】
ΔT=|Ta(ID)−Tb(ID)| (3)
発信電波読取機は,上記(1) 〜(3) と,自身に搭載された位置特定機能(設置位置に応じた情報が予め設定されている)により,電波発信機(移動体)と自身の距離を計測することができる。本発明では対向する2つの発信電波読取機2a,2bでそれぞれが移動体との距離を各発信電波読取機において計測する。これにより,複数の移動体1がトラック内に近接して移動していても,それぞれの位置を識別することが可能となる。
【0021】
図4は電波発信機の発信電波計測タイミングの説明図であり,図中,1,2a,2b,の各符号は上記図1の同一符号と同じである。
【0022】
電波発信機10(図4では図示省略)を搭載した移動体1の発信電波を計測する条件は次の通りである。すなわち,発信電波読取機2aの計測範囲R(a)内であり,且つ,発信電波読取機2bの計測範囲R(b)内である。
【0023】
発信電波読取機直近(移動体が発信電波読取機の直ぐそばに接近した時)の電波強度(移動体の電波発信機から受信した電波強度)をFmax ,コース反対側の発信電波読取機直近の電波強度をFmin とすると,コース間の最大電波強度(これを絶対電波強度と呼ぶ)は次の式(4) で表される。
【0024】
最大電波強度 |F|=|Fmax −Fmin | (4)
移動体位置を計測電波強度により表記すると次の式(5) で表される。
【0025】
移動体位置P=(Fa,Fb) (5)
但し,Fa,Fbは発信電波読取機2a,2bのそれぞれにより移動体1の電波発信機10で発生した電波の受信電波強度を表す。
【0026】
移動体が発信電波読取機が検出できる電波範囲内に入った時点で移動体の検出タイムとすることは正確なデータと言えない。そのため,信頼性のある計測ポイントは,発信電波読取機2a,2bの間(両読取機を結ぶ線上)を移動体が通過する位置(時点)であり,その状態では次の関係が成立する。
【0027】
計測ポイントにおける移動体の位置情報P(x) は次の式(6) で表す。なお,この式(6) は最大電波強度(2つの発信電波読取機を結ぶ直線上の電波強度)である線に対して,移動体がどの程度離れた位置にあるかに応じて電波強度が減少した時の位置情報を表す。
【0028】
P(x) =(Fa(x)/|F|,Fb(x)/|F|) (6)
P(x) が発信電波読取機2a,2bの間に存在する条件は,次の式(7),(8) が成立することである。この中の式(7) は,上記式(4) の|F|と同じであり,2つの対向して設けた発信電波読取機から検出した電波強度を加算した値が|F|に等しい場合は,移動体が両発信電波読取機を結ぶ線上に位置(またはその位置に極めて近い位置)していることを表す。
【0029】
|F|=Fa(x)+Fb(x) (7)
Fa(x)≠0 Fb(x)≠0 (8)
すなわち,上記(6) 〜(8) を満たすタイミングで移動体の計測処理を実行すれば,信頼性の高い時間計測,周回順位計測を行うことができる。
【0030】
本発明は,上記図1に示すように公営競技のトラックのコースに沿って一定間隔をおいて発信電波読取機をトラックの両側に配置し,各発信電波読取機の読取(受信)信号は有線または無線により伝送網を介して処理装置(図1の4)に伝送されて処理が行われ,処理装置の実施例としてCPU及びメモリ(プログラムや一時データを格納)を含むプロセッサが使用され,そのプロセッサにキーボード,マウス等の入力装置や表示装置(図1の出力装置5に対応),各処理結果を格納する記憶装置(図1の記憶手段4eに対応),伝送網とのインタフェース等を接続したコンピュータ(計算機)として構成される。なお,図1の処理装置4は処理機能を備えた複数の手段4a〜4dを備えているが,各手段4a〜4dを個別に実行する複数の処理装置(またはコンピュータ)を設けてもよい。
【0031】
図5乃至図8は本発明による図1の処理装置における各手段を実現するフローチャートであり,発信電波読取機により移動体の電波発信機から発信される電波(識別情報)を受信して,それらの信号を各手段に対応するプログラムにより処理することで実現される。すなわち,図5は移動体計測判定のフローチャート,図6はタイム計測のフローチャート,図7は周回順位計算のフローチャート,図8は情報表示制御のフローチャートである。
【0032】
図5の移動体計測判定のフローチャートは上記図1の移動体計測判定手段4aを実現する処理であり,最初に発信電波読取機Sa(x)(Saはトラックの内側(埒内)に配置されていることを表し,xはトラック上に一定間隔で配置された発信電波読取機の番号を表し,1〜nの自然数であって,各番号が位置を表す)から移動体(Z)(Zは移動体の識別情報)の発信情報を取得し,同様にSa(x)に対向して配置された発信電波読取機Sb(x)(Sbはトラックの外側(埒外)に配置されていることを表す)から移動体(Z)の発信情報を取得する(図5のS1)。次にSa(x)が受信できて且つSb(x)が受信できたか判別し(図5のS2),受信できないと未計測と判定し(同S3),受信できた場合はタイムスタンプT(z)(x)を計測する(同S4)。なお,タイムスタンプのT(z) のTは時間,(z) は移動体識別情報,(x) は発信電波読取機の位置である計測位置を表す。
【0033】
次にSa(x)受信時の電波強度Fa(x)を取得すると共にSb(x)受信時の電波強度Fb(x)を取得し(図5のS5),判定要素FA=Fa(x)/|F|と判定要素FB=Fb(x)/|F|を求め(同S6),この時絶対電波強度|F|を予め保持した記憶装置から読込んで判定要素を求める。次に,FA+FB=|F|が成立するかを判定する(同S7)。このS7の判定は,移動体が2つの発信電波読取機Sa(x),Sb(x)を結ぶ直線上に存在(最適読取位置)であるかを判定(上記式(7) の判定) するものであり,この式が成立しない場合はステップS3に移行し,成立したと判定されると,位置情報P(z)(x) =(FA,FB)を周回順位計算手段(図1の4cに対応する後述する図7のフローチャート)へ送信し,タイムスタンプT(z)(x)=(FA,FB)をタイム計測手段(図1の4bに対応する後述する図6のフローチャート)へ送信し(同S8),これらの基礎的情報(位置情報とタイムスタンプ)を記憶装置(図1の記憶手段4eに対応)に格納して(図5のS9),終了する。
【0034】
移動体計測判定処理により移動体の位置や時間等の基礎的情報を得ることにより,後述するタイム計測や周回順位判定等を実現することができる。また,移動体に取り付ける電波発信機として安価なアクティブ型の無線タグを使用すれば,移動体のタイム計測や周回順位計測を低コストで実現することができる。
【0035】
図6のタイム計測のフローチャートは上記図1のタイム計測手段4bを実現する処理であり,移動体1の区間タイムやレースにおける消化タイムの計測を行う処理である。初めに,上記図5の処理により処理装置(図1の4)の記憶装置(図1の4eに対応)に記憶されたタイムスタンプの情報(移動体の位置及び識別情報)を識別して,レース中であるか(スタート位置を通ったか)を判別する(図6のS1)。この判別で,レース中でない(スタートしてない)ことが分かると,スタート待機の状態になり(図6のS2),スタートが検出されると,スタートタイムスタンプを記憶し(同S3),ステップS1に戻る。ステップS1でレース中と判別された場合,各選手(馬や自転車等の移動体)の各位置で検出したタイムスタンプを記憶装置から取得し(図6のS4),各選手(馬や自転車等)のタイムの計算を行って,記憶装置に格納する(同S5)。続いて,レースが終了したか判別し(図6のS6),レースが終了してないとステップS1に戻り,レースが終了した場合は各選手(馬や自転車等)毎にレースのタイム計測結果を記憶装置に格納する(同S7)。
【0036】
このように各移動体の計測結果を記憶装置に格納することで,各移動体のタイム情報のリアルタイム利用以外にも,利用することが可能になる。移動体の区間タイムやレースにおける消化タイムをリアルタイムに利用することが可能になる。
【0037】
図7の周回順位計算のフローチャートは上記図1の周回順位計算手段4cを実現する処理であり,移動体1のレース周回中の位置情報を計測し,順位を算出する処理を行う。
【0038】
最初に記憶装置に格納された各移動体のタイムスタンプ情報を用いてレース中か判別し(図7のS1),レース中でない場合は位置配列を初期化し(同S2),選手(馬等の移動体)を初期位置に配置して(同S3),ステップS1に戻る。ステップS1でレース中であると判別されると,各選手(移動体)の位置情報や基本情報を取得し(図7のS4),各選手(移動体)の位置解析を行う(同S5)。この解析結果と,競技コース数値化データが格納された位置配列データとのマッチング処理を実施することにより,移動体が実際の競技コースのどの位置に存在するかを算出することができ,移動体の正式な位置情報として記憶装置に格納する(図7のS6)。この後,レースが終了したか判別し(図7のS7),終了しないとステップS1に戻り,終了した場合は各選手(移動体)毎に位置情報(順位情報を含む)を記憶装置に格納する(同S8)。
【0039】
これにより,移動体のレース周回中の位置情報をリアルタイムに計測し,データとして格納できるので,公営競技の新たなファンサービスを提供することが可能となる。
【0040】
図8は情報表示制御のフローチャートであり,上記図1の情報表示制御手段4dを実現する処理である。
【0041】
最初にレース中か判別し(図8のS1),レース中であれば,各選手(移動体)の位置情報を記憶装置(上記図7の周回順位計算の処理により位置情報を格納)から取得する(図8のS2)。次に各選手(移動体)のタイムスタンプを記憶装置(上記図6のタイム計測のフローチャートにより格納済)から取得する(同S3)。続いて,予め記憶装置に格納された映像情報(トラックのコースを表す映像やイラスト,馬や自転車等を表す画像等を格納)等の映像情報を用いて表示装置へ出力するための変換処理を行う(図8のS4)。変換処理した結果を表示装置に出力し(図8のS5),レース終了か判別し,終了しないとステップS1に戻り,レース終了により処理が終了する。
【0042】
このように,レース中の移動体の位置,区間タイムやレースタイム及び順位等を表示装置に表示することで,移動体同士の相互の関係や位置が表示装置を見ることにより把握できる。
【0043】
(付記1) 競馬,競輪等の公営競技における時間計測システムにおいて,前記公営競技の馬や自転車等の移動体に識別情報を含む電波信号を発信する電波発信機を設け,前記移動体が通過する電波発信機からの電波信号を受信する発信電波読取機の対を,移動体が走行するトラックのコースの一定距離毎の複数の位置に,それぞれコースに対して直交するトラックの両側に対向して配置し,前記各位置の対をなす2つの発信電波読取機により前記移動体の電波発信機の電波信号を検出すると,検出した移動体のトラック上の位置と識別情報をそれぞれの位置から情報の処理を行う処理装置に伝送する伝送網を備え,前記処理装置は,前記移動体の位置及び識別情報を取得すると,対向する2つの発信電波読取機の信号が受信された場合にその時の時間,位置及び識別情報を含むタイムスタンプを発生し,前記2つの発信電波読取機からの電波強度に基づいて,移動体が最適な位置におけるタイムスタンプを記憶手段に記憶させる移動体計測判定手段,を備えることを特徴とする公営競技における移動体の時間計測システム。
【0044】
(付記2) 付記1において,前記移動体に取り付ける電波発信機は,前記移動体の識別情報を電波により予め定められた間隔で繰り返し送信するICタグとして構成することを特徴とする公営競技における移動体の時間計測システム。
【0045】
(付記3) 付記1において,前記移動体計測判定手段は,前記各位置に設けた対をなす2つの発信電波読取機により検出できる前記電波発信機から受信できる電波強度を合算した最大値を予め記憶手段に記憶し,各位置の2つの発信電波読取機から検出された電波強度の加算値が前記記憶手段に記憶された最大値とほぼ一致すると前記最適な位置と判定することを特徴とする公営競技における移動体の時間計測システム。
【0046】
(付記4) 付記1において,前記処理装置は,移動体がレース中でないと,スタート時の移動体の識別情報及び位置を含むタイムスタンプを取得し,レース中の状態になると,前記記憶装置に格納された前記移動体のタイムスタンプを取得し,前記移動体のタイム計算を実行して,各移動体毎に記憶装置に格納するタイム計測手段を備えることを特徴とする公営競技における移動体の時間計測システム。
【0047】
(付記5) 付記1において,前記処理装置は,移動体がレース中でないと,移動体を初期位置に配置して,レース中の状態になると,各移動体の位置情報を取得して位置解析をして各移動体の位置を算出して記憶装置に各移動体の位置配列を格納し,レース終了が検出されると,前記記憶装置に各移動体毎の位置情報を格納する周回順位計算手段を備えることを特徴とする公営競技における移動体の時間計測システム。
【0048】
(付記6) 付記1において,前記処理装置は,レース中である状態になると,前記記憶装置から各移動体の位置情報及び各移動体のタイムスタンプを取得し,予め記録されたトラック及び移動体を含む映像情報を取り込んで表示装置に出力する情報表示制御手段を備えることを特徴とする公営競技における移動体の時間計測システム。
【0049】
(付記7) 競馬,競輪等の公営競技における位置判定システムにおいて,前記公営競技の馬や自転車等の移動体に識別情報を含む電波信号を発信する電波発信機を設け,前記移動体が通過する電波発信機からの電波信号を受信する発信電波読取機の対を,移動体が走行するトラックのコースの一定距離毎の複数の位置に,それぞれコースに対して直交するトラックの両側に対向して配置し,前記各位置の対をなす2つの発信電波読取機により前記移動体の電波発信機の電波信号を検出すると,検出した移動体のトラック上の位置と識別情報をそれぞれの位置から情報の処理を行う処理装置に伝送する伝送網を備え,前記処理装置は,前記移動体の位置及び識別情報を取得すると,対向する2つの発信電波読取機の信号が受信された場合にその時の時間,位置及び識別情報を含むタイムスタンプを発生し,前記2つの発信電波読取機からの電波強度に基づいて,移動体が最適な位置におけるタイムスタンプを記憶手段に記憶させる移動体計測判定手段と,前記各移動体の位置情報を解析して,各移動体の位置を算出して各移動体の位置配列を記憶手段に格納する周回順位計算手段と,前記記憶手段に格納された各移動体の位置配列を表示する情報表示制御手段と,を備えることを特徴とする公営競技における移動体の位置判定システム。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のシステム構成を示す図である。
【図2】発信電波読取機の計測可能範囲の説明図である。
【図3】発信電波読取機による移動体位置特定の説明図である。
【図4】電波発信機の発信電波計測タイミングの説明図である。
【図5】移動体計測判定のフローチャートを示す図である。
【図6】タイム計測のフローチャートを示す図である。
【図7】周回順位計算のフローチャートを示す図である。
【図8】情報表示制御のフローチャートを示す図である。
【図9】ラップタイム計測の従来例1の技術を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 移動体
10 電波発信機
2a(2a−1〜2a−n) 発信電波読取機
2b(2b−1〜2b−n) 発信電波読取機
3 伝送網(ネットワーク)
30 無線機
4 処理装置
4a 移動体計測判定手段
4b タイム計測手段
4c 周回順位計算手段
4d 情報表示制御手段
4e 記憶手段
5 出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
競馬,競輪等の公営競技における時間計測システムにおいて,
前記公営競技の馬や自転車等の移動体に識別情報を含む電波信号を発信する電波発信機を設け,
前記移動体が通過する電波発信機からの電波信号を受信する発信電波読取機の対を,移動体が走行するトラックのコースの一定距離毎の複数の位置に,それぞれコースに対して直交するトラックの両側に対向して配置し,
前記各位置の対をなす2つの発信電波読取機により前記移動体の電波発信機の電波信号を検出すると,検出した移動体のトラック上の位置と識別情報をそれぞれの位置から情報の処理を行う処理装置に伝送する伝送網を備え,
前記処理装置は,前記移動体の位置及び識別情報を取得すると,対向する2つの発信電波読取機の信号が受信された場合にその時の時間,位置及び識別情報を含むタイムスタンプを発生し,前記2つの発信電波読取機からの電波強度に基づいて,移動体が最適な位置におけるタイムスタンプを記憶手段に記憶させる移動体計測判定手段,を備えることを特徴とする公営競技における移動体の時間計測システム。
【請求項2】
請求項1において,
前記処理装置は,移動体がレース中でないと,スタート時の移動体の識別情報及び位置を含むタイムスタンプを取得し,レース中の状態になると,前記記憶手段に格納された前記移動体のタイムスタンプを取得し,前記移動体のタイム計算を実行して,各移動体毎に記憶手段に格納するタイム計測手段を備えることを特徴とする公営競技における移動体の時間計測システム。
【請求項3】
請求項1において,
前記処理装置は,レース中である状態になると,前記記憶手段から各移動体の位置情報及び各移動体のタイムスタンプを取得し,予め記録されたトラック及び移動体を含む映像情報を取り込んで表示装置に出力する情報表示制御手段を備えることを特徴とする公営競技における移動体の時間計測システム。
【請求項4】
競馬,競輪等の公営競技における位置判定システムにおいて,
前記公営競技の馬や自転車等の移動体に識別情報を含む電波信号を発信する電波発信機を設け,
前記移動体が通過する電波発信機からの電波信号を受信する発信電波読取機の対を,移動体が走行するトラックのコースの一定距離毎の複数の位置に,それぞれコースに対して直交するトラックの両側に対向して配置し,
前記各位置の対をなす2つの発信電波読取機により前記移動体の電波発信機の電波信号を検出すると,検出した移動体のトラック上の位置と識別情報をそれぞれの位置から情報の処理を行う処理装置に伝送する伝送網を備え,
前記処理装置は,前記移動体の位置及び識別情報を取得すると,対向する2つの発信電波読取機の信号が受信された場合にその時の時間,位置及び識別情報を含むタイムスタンプを発生し,前記2つの発信電波読取機からの電波強度に基づいて,移動体が最適な位置におけるタイムスタンプを記憶手段に記憶させる移動体計測判定手段と,
前記各移動体の位置情報を解析して,各移動体の位置を算出して各移動体の位置配列を記憶手段に格納する周回順位計算手段と,
前記記憶手段に格納された各移動体の位置配列を表示する情報表示制御手段と,
を備えることを特徴とする公営競技における移動体の位置判定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−259967(P2006−259967A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74452(P2005−74452)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】