説明

六方晶フェライト粒子粉末の製造法、及び六方晶フェライト粒子粉末、並びに磁気記録媒体

【課題】 本発明は、六方晶フェライト粒子粉末に関するものであり、平均板面径が20.5nmを超えて30nm以下である六方晶フェライト粒子粉末を工業的な生産性に優れた水熱合成法によって得るものである。
【解決手段】 Ba、Sr及びCaより選ばれた少なくとも1種の金属イオンを含む金属塩と鉄化合物、並びに、2価乃至5価の金属元素から選ばれる1種又は2種以上の金属塩を混合した懸濁液を、アルカリ水溶液に添加した後、オートクレーブを用いて反応し、得られた六方晶フェライト粒子の前駆体を濾別・乾燥し、次いで、融剤の存在下で焼成した後、融剤を除去することによって得られる六方晶フェライト粒子粉末の製造法において、前記懸濁液をアルカリ水溶液に添加する際に、20分以上かけて徐添加することによって、平均板面径が20.5nmを超えて30nm以下である六方晶フェライト粒子粉末を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、六方晶フェライト粒子粉末に関するものであり、詳しくは、工業的な生産性に優れた水熱合成法による平均板面径が20.5nmを超えて30nm以下である六方晶フェライト粒子粉末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気記録技術は、従来、オーディオ用、ビデオ用、コンピューター用等をはじめとしてさまざまな分野で幅広く用いられている。近年、機器の小型軽量化、記録の長時間化及び記録容量の増大等が求められており、記録媒体に対しては、記録密度のより一層の向上が望まれている。
【0003】
従来の磁気記録媒体に対してより高密度記録を行うためには、高いC/N比が必要であり、ノイズ(N)が低く、再生出力(C)が高いことが求められている。近年では、これまで用いられていた誘導型磁気ヘッドに替わり、磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)や巨大磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)等の高感度ヘッドが開発されており、これらは誘導型磁気ヘッドに比べて再生出力が得られやすいことから、高いC/N比を得るためには、出力を上げるよりもノイズを低減する方が重要となってきている。
【0004】
磁気記録媒体のノイズは、粒子性ノイズと磁気記録媒体の表面性に起因して発生する表面性ノイズに大別される。粒子性ノイズの場合、粒子サイズの影響が大きく、微粒子であるほどノイズ低減に有利であることから、磁気記録媒体に用いる磁性粒子粉末の粒子サイズはできるだけ小さいことが必要となるが、磁性粒子粉末は微細化することによって粒子体積が小さくなるため、磁化の熱的安定性を表す磁気異方性エネルギーと熱エネルギーとの比(KuV/kT)(Ku:磁気異方性定数、V:粒子体積、k:ボルツマン定数、T:絶対温度)が小さくなり、熱揺らぎの影響を受けやすくなる。
【0005】
一般に、微粒子、且つ、高保磁力値を有する磁性粒子粉末としては、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末及び六方晶フェライト粒子粉末等が知られており、六方晶フェライト粒子粉末は針状の金属磁性粒子粉末に比べ短波長領域で高い出力が得られるという特徴があり、再生にMRヘッドやGMRヘッドを用いた高密度記録の磁気記録媒体用磁性粉末として非常に有望である。
【0006】
水熱合成法による六方晶フェライト粒子粉末としては、所望のフェライト組成のアルカリ性懸濁液を100℃以上で液相加熱し、洗浄・乾燥した後900℃前後で熱処理し、粉砕して六方晶フェライト粒子粉末を得る方法(特許文献1)、所望のフェライト組成のアルカリ性懸濁液を50〜150℃の温度範囲で液相加熱し、得られた共沈物を水洗・乾燥した後680〜900℃で熱処理し、粉砕して六方晶フェライト粒子粉末を得る方法(特許文献2)、所望のフェライト組成のアルカリ性懸濁液を、100℃を超える温度でオートクレーブを用いて加熱し、洗浄・乾燥して六方晶フェライト粒子粉末を得る方法(特許文献3)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−9723号公報
【特許文献2】特開平7−172839号公報
【特許文献3】特開平2−120236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水熱合成法による平均板面径が20.5nmを超えて30nm以下である微細な六方晶フェライト粒子粉末は未だ得られていない。
【0009】
即ち、前出特許文献1には、水熱合成法によって得られた板状複合フェライト微粒子粉末が記載されているが、六方晶フェライト粒子粉末を構成する金属塩からなる懸濁液をアルカリ水溶液に徐添加することは考慮されておらず、また、従来の水熱合成法では平均粒子径が30nm以下で保磁力(Hc)が95.5kA/m以上の磁気特性を有する六方晶フェライト粒子粉末を得ることは困難であった。
【0010】
また、前出特許文献2には、共沈−焼成法または水熱合成法によって得られた六方晶フェライト粒子粉末が記載されているが、六方晶フェライト粒子粉末を構成する金属塩からなる懸濁液をアルカリ水溶液に徐添加することは考慮されておらず、そのため、実施例で得られている六方晶フェライト粒子粉末は平均粒子径が一番小さいもので53nmであり、高密度記録用磁気記録媒体に用いるには粒子サイズが大きすぎると共に、保磁力(Hc)が95.5kA/m以上のものは得られていない。
【0011】
また、前出特許文献3には、水熱合成法によって得られた板状複合フェライト微粒子粉末が記載されているが、六方晶フェライト粒子粉末を構成する金属塩からなる懸濁液をアルカリ水溶液に徐添加することは考慮されておらず、そのため、実施例で得られている六方晶フェライト粒子粉末は平均粒子径が一番小さいもので50nmであり、高密度記録用磁気記録媒体に用いるには粒子サイズが大きすぎると共に、保磁力(Hc)が95.5kA/m以上のものは得られていない。
【0012】
そこで、本発明は、平均板面径が20.5nmを超えて30nm以下である六方晶フェライト粒子粉末を水熱合成法によって得ることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0014】
即ち、本発明は、バリウム、ストロンチウム、及びカルシウムより選ばれた少なくとも1種の金属イオンを含む金属塩と鉄化合物、並びに、2価乃至5価の金属元素から選ばれる1種又は2種以上の金属塩を混合した懸濁液を、アルカリ水溶液に添加した後、オートクレーブを用いて100〜300℃の温度範囲で反応し、得られた六方晶フェライト粒子の前駆体を濾別・乾燥し、次いで、融剤の存在下で600〜800℃の温度で焼成した後、融剤を除去することによって得られる六方晶フェライト粒子粉末の製造法において、前記懸濁液をアルカリ水溶液に添加する際に、20分以上かけて徐添加することを特徴とする平均板面径が20.5を超えて30nm以下である六方晶フェライト粒子粉末の製造法である(本発明1)。
【0015】
また、本発明は、保磁力(Hc)が95.5kA/m(1200Oe)以上であることを特徴とする本発明1の方法によって得られる六方晶フェライト粒子粉末である(本発明2)。
【0016】
また、本発明は、六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径(L)(nm)とBET比表面積値(SSA)(m/g)が下記式(1)の関係にあることを特徴とする本発明2の六方晶フェライト粒子粉末である(本発明3)。
−1.0×L(nm)+120 ≧ SSA(m/g) ≧ −1.0×L(nm)+90 ・・・ (1)
【0017】
また、本発明は、非磁性支持体上の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層からなる磁気記録媒体において、前記磁性粒子粉末として本発明2又は本発明3のいずれかに記載の六方晶フェライト粒子粉末を用いることを特徴とする磁気記録媒体である(本発明4)。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る水熱合成法による六方晶フェライト粒子粉末の製造法は、平均板面径が20.5nmを超えて30nm以下の微細な六方晶フェライト粒子粉末を工業的に有利に提供できるので、高密度磁気記録媒体の磁性粒子粉末の製造法として好適である。
【0019】
本発明に係る製造法によって得られた六方晶フェライト粒子粉末は、平均板面径が20.5nmを超えて30nm以下であると共に、平均板面径(L)とBET比表面積値(SSA)が特定の範囲にあることから分散性に優れているため、高密度磁気記録媒体の磁性粒子粉末として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の構成をより詳しく説明すれば、次の通りである。
【0021】
先ず、本発明に係る六方晶フェライト粒子粉末の製造法について述べる。
【0022】
本発明に係る六方晶フェライト粒子粉末は、バリウム、ストロンチウム、及びカルシウムより選ばれた少なくとも1種の金属イオンを含む金属塩と鉄化合物、並びに、2価乃至5価の金属元素から選ばれる1種又は2種以上の金属塩を混合した懸濁液を、アルカリ水溶液に添加した後、オートクレーブを用いて100〜300℃の温度範囲で水熱反応を行い、得られた六方晶フェライト粒子の前駆体を濾別・乾燥し、次いで、融剤の存在下で600〜800℃の温度で焼成した後、融剤を除去することによって得られる六方晶フェライト粒子粉末の製造法において、前記懸濁液をアルカリ水溶液に添加する際に、20分以上かけて徐添加することによって得ることができる。
【0023】
また、本発明に係る六方晶フェライト粒子粉末のより好ましい製造法としては、上記製造法に加え、オートクレーブを用いて100〜300℃の温度範囲で反応後のスラリーを、スラリーに含まれる六方晶フェライト粒子の前駆体の体積挙動粒子径(D50)が30μm以下となるまで分散処理したものを焼成に用いることである。
【0024】
本発明における鉄化合物としては、塩化物、臭化物、沃化物等のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、有機酸塩及び錯塩等の水溶性の鉄塩から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。水への溶解性及び経済性を考慮すれば、塩化第二鉄及び硝酸第二鉄が好ましい。
【0025】
本発明におけるバリウム、ストロンチウム、及びカルシウムより選ばれた少なくとも1種の金属イオンを含む金属塩としては、水溶性の塩化物、臭化物、沃化物等のハロゲン化物又は硝酸塩を用いることができる。水への溶解性及び経済性を考慮すれば、塩化物が好ましい。
【0026】
本発明における2価乃至5価の金属元素(置換元素)から選ばれる1種又は2種以上の金属塩としては、水溶性の塩化物、臭化物、沃化物等のハロゲン化物又は硝酸塩を用いることができる。2価乃至5価の金属元素としては、具体的にはCo、Ni、Zn、Mn、Mg、Ti、Sn、Zr、Cu、Mo、La、Ce、V、Si、Sc、Sb、Y、Rh、Pd、Nd、Nb、B、P、Ge、Al、Ru、Pr、Bi、W、Re等を用いることができる。
【0027】
本発明におけるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ水溶液を用いることができ、好ましくは、水酸化ナトリウムである。
【0028】
アルカリ水溶液の濃度は、六方晶系フェライト粒子を構成する金属塩(鉄塩及び金属塩)の総量に対して、2.5〜10倍であることが好ましく、より好ましくは4〜8倍である。アルカリ水溶液の濃度が高くなるに従って、得られる六方晶フェライト粒子粉末は微粒子化する傾向にあるが、10倍程度でその効果は飽和するため、それ以上の添加は工業的に不利となる。
【0029】
本発明において、前記バリウム、ストロンチウム、及びカルシウムより選ばれた少なくとも1種の金属イオンを含む金属塩と鉄化合物、並びに、2価乃至5価の金属元素から選ばれる1種又は2種以上の金属塩を混合した懸濁液を、前記アルカリ水溶液に添加する際に、20分以上かけて徐添加することが重要であり、徐添加することで微細な六方晶フェライト粒子粉末を得ることが可能となる。懸濁液をアルカリ水溶液中に一度に添加した場合には、粗大粒子が生成しやすくなるため、微細な六方晶フェライト粒子粉末を得ることが困難となる。また、混在する粗大粒子に起因して粉体SFDが大きくなるため、良好な磁気特性を得ることが困難となる。
【0030】
懸濁液をアルカリ水溶液に20分以上かけて徐添加した後、オートクレーブを用いて100〜300℃の温度範囲で反応し、六方晶フェライト粒子の前駆体を含むスラリーを得る。反応温度は110〜280℃が好ましく、より好ましくは120〜250℃である。また、反応時間は30分〜24時間が好ましく、より好ましくは1時間〜20時間である。
【0031】
得られた六方晶フェライト粒子の前駆体を含むスラリーは、反応により生成した塩及び未反応のアルカリを常法に従って水洗し、塩酸、硝酸及び酢酸等の酸を用いてpH値を10未満に調整する。
【0032】
なお、焼成に用いる六方晶フェライト粒子の前駆体は、六方晶フェライト粒子の前駆体を含むスラリー中の六方晶フェライト粒子の前駆体の体積挙動粒子径(D50)が30μm以下となるまであらかじめ分散させておくことが好ましく、より好ましくは20μm以下である。分散処理は、pH値を調整する前後のどちらでもよいが、pH値調整後がより好ましい。六方晶フェライト粒子の前駆体を含むスラリーの分散方法としては、例えばビーズミル等を用いることができる。スラリー中の六方晶フェライト粒子の前駆体の体積挙動粒子径(D50)を30μm以下とし、あらかじめ粒子同士の凝集をほぐしておくことにより、その後の焼成工程においても粒子間の焼結が抑制されるため、微細な六方晶フェライト粒子粉末を得ることができる。
【0033】
次いで、pH値が調整された六方晶フェライト粒子の前駆体を含むスラリーに融剤を添加して攪拌・混合した後、融剤を添加した六方晶フェライト粒子の前駆体を含むスラリーの乾燥・粉砕を常法に従って行う。融剤としては、塩化ナトリウム及び塩化バリウム等の塩化物を用いることが好ましく、好ましくは塩化ナトリウムである。また、乾燥温度は100〜200℃が好ましく、より好ましくは120〜180℃である。
【0034】
得られた六方晶フェライト粒子の前駆体の焼成は、600〜800℃の温度範囲で行う。焼成温度が600℃未満の場合には、良好な磁気特性を有する六方晶フェライト粒子粉末を得ることが困難となる。焼成温度が800℃を超える場合には、粒子が粗大化する傾向にあるため好ましくない。好ましい焼成温度は650〜750℃である。また、焼成時間は30分〜6時間が好ましく、より好ましくは1時間〜5時間である。
【0035】
得られた結晶化物は、湿式粉砕により粉砕後、該粉砕された結晶化物を含むスラリーを、塩酸、酢酸及び硝酸等の酸を用いて酸洗する。湿式粉砕には、ボール型混練機、ブレード型混練機、ホイール型混練機、ロール型混練機を用いることができ、振動ミル、回転ミル、サンドグラインダ等のボール型混練機及びラインミル、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウターミキサー等のブレード型混練機がより効果的に使用できる。
【0036】
酸洗後のスラリーに水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を添加してpHを5に調整した後、常法に従って水洗・乾燥・粉砕を行い、本発明に係る六方晶フェライト粒子粉末を得る。
【0037】
本発明に係る六方晶フェライト粒子粉末は、六方晶フェライト粒子粉末の表面がアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれた1種又は2種以上の化合物(以下、「アルミニウムの水酸化物等」という。)によって被覆されていることが好ましい。
【0038】
アルミニウムの水酸化物等により被覆された六方晶フェライト粒子粉末は、六方晶フェライト粒子粉末を分散して得られる水懸濁液に、アルミニウム化合物、ケイ素化合物又は当該両化合物を添加して混合攪拌することにより、又は、必要により、混合攪拌後にpH値を調整することにより、前記六方晶フェライト粒子粉末の粒子表面を、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる一種又は二種以上の表面被覆物で被覆し、次いで、濾別、水洗、乾燥、粉砕することにより得ることができる。
【0039】
アルミニウム化合物としては、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩や、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリ塩等が使用できる。
【0040】
ケイ素化合物としては、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等が使用できる。
【0041】
次いで、本発明に係る六方晶フェライト粒子粉末について述べる。
【0042】
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末は、前述の水熱合成法によって得られたものであり、平均板面径が20.5nmを超えて30nm以下であることを特徴とする。
【0043】
本発明に係る六方晶フェライト粒子粉末は、Ba、Sr及びCaから選ばれる1種又は2種以上の元素を含有するマグネトプランバイト型(M型)フェライト微粒子粉末又はW型フェライト微粒子粉末、あるいはそれらの原子の一部が他の元素で置換された六方晶フェライト粒子粉末である。置換元素としては、具体的にはCo、Ni、Zn、Mn、Mg、Ti、Sn、Zr、Cu、Mo、La、Ce、V、Si、Sc、Sb、Y、Rh、Pd、Nd、Nb、B、P、Ge、Al、Ru、Pr、Bi、W、Re、等の元素を1種又は2種以上を用いることができる。
【0044】
本発明に係る六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径は20.5nmを超えて30nm以下であり、好ましくは20.5nmを超えて28nm、より好ましくは20.5nmを超えて26nmである。六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径が30nmを超える場合には、粒子サイズが大きいため、粒子性ノイズを低減することが難しく、高いC/N比を有する磁気記録媒体を得ることが困難となる。また、平均板面径が20.5nm以下である場合には、磁性粒子粉末の微細化に伴う熱揺らぎの影響が大きくなるため好ましくない。
【0045】
本発明に係る六方晶フェライト粒子粉末の板状比(平均板面径と平均厚みの比)(以下、「板状比」という。)は1.5〜10.0が好ましく、より好ましくは1.75〜8.0、更により好ましくは2.0〜6.0である。板状比が10を超える場合には、粒子間のスタッキングが多くなり、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性が低下すると共に、粘度が増加する場合があるため好ましくない。
【0046】
本発明に係る六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径(L)(nm)とBET比表面積値(SSA)(m/g)との関係は下記式(1)で表される。
−1.0×L(nm)+120 ≧ SSA(m/g) ≧ −1.0×L(nm)+90 ・・・ (1)
【0047】
平均板面径(L)とBET比表面積値(SSA)との関係が上記式(1)の範囲にある場合、これを用いて磁気記録媒体を作製する際、磁性塗料中における分散性が向上するため、表面性に優れた磁気記録媒体を得ることができる。平均板面径(L)とBET比表面積値(SSA)との関係が上記式(1)の上限値を超える場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性が低下する。
【0048】
本発明に係る六方晶フェライト粒子粉末の磁気特性は、保磁力(Hc)が95.5〜397.9kA/mが好ましく、より好ましくは119.4〜318.3kA/mであり、飽和磁化値が40〜70Am/kgが好ましく、より好ましくは45〜70Am/kgである。また、粉体SFDは1.5以下であることが好ましく、より好ましくは1.4以下である。
【0049】
本発明に係る六方晶フェライト粒子粉末は、必要により、六方晶フェライト粒子粉末の粒子表面を、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれた1種又は2種以上の化合物(以下、「アルミニウムの水酸化物等」という。)で被覆しておいてもよい。アルミニウムの水酸化物等で被覆処理を行うことにより、磁性塗料中に分散させた場合に、結合剤樹脂とのなじみがよく、所望の分散度がより得られ易い。
【0050】
次に、本発明に係る磁気記録媒体について述べる。
【0051】
本発明に係る磁気記録媒体は、本発明に係る六方晶フェライト粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層が非磁性支持体上に形成されてなる。また、必要に応じて、非磁性支持体と磁気記録層との間に非磁性下地層を形成してもよく、更に、非磁性支持体の一方の面に形成される磁気記録層に対し、非磁性支持体の他方の面にバックコート層を形成させてもよい。殊に、コンピューター記録用のバックアップテープの場合には、巻き乱れの防止や走行耐久性向上の点から、非磁性下地層やバックコート層を設けることが好ましい。
【0052】
本発明における非磁性支持体としては、現在、磁気記録媒体に汎用されているポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド、ポリスルフォン、セルローストリアセテート、ポリベンゾオキサゾール等の合成樹脂フィルム、アルミニウム、ステンレス等金属の箔や板及び各種の紙を使用することができる。
【0053】
結合剤樹脂としては、磁気記録媒体の製造にあたって汎用されている熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化型樹脂等を単独又は組み合わせて用いることができる。
【0054】
本発明の磁気記録媒体において、非磁性支持体と磁気記録層との間に非磁性下地層を形成する場合、非磁性下地層中には非磁性粒子粉末と結合剤が含まれている。
【0055】
非磁性下地層に用いられる非磁性粒子粉末としては、アルミナ、ヘマタイト、ゲータイト、酸化チタン、シリカ、酸化クロム、酸化セリウム、酸化亜鉛、チッ化珪素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭酸カルシウム及び硫酸バリウム等を、単独又は組合せて用いることができる。好ましくはヘマタイト、ゲータイト、酸化チタンであり、より好ましくはヘマタイトである。
【0056】
前記非磁性粒子粉末の粒子形状は、針状、紡錘状、米粒状、球状、粒状、多面体状、フレーク状、鱗片状及び板状等のいずれの形状であってもよい。粒子サイズは、好ましくは0.005〜0.30μmであり、より好ましくは0.010〜0.25μmである。また、必要により、粒子表面をアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれた1種又は2種以上の化合物で被覆してもよく、化合物で被覆しない場合に比べ、非磁性塗料中での分散性を改善することができる。
【0057】
結合剤樹脂としては、前記磁気記録層を作製するために用いた結合剤樹脂を使用することができる。
【0058】
本発明の磁気記録媒体において、非磁性支持体の一方の面に形成される磁気記録層に対し、非磁性支持体の他方の面にバックコート層を形成する場合、バックコート層中には、結合剤樹脂と共に、バックコート層の表面電気抵抗値及び強度向上を目的として、帯電防止剤及び無機粒子粉末を含有させることが好ましい。
【0059】
無機粉末としては、アルミナ、ヘマタイト、ゲータイト、酸化チタン、シリカ、酸化クロム、酸化セリウム、酸化亜鉛、チッ化珪素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭酸カルシウム及び硫酸バリウム等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。粒子サイズは、好ましくは0.005〜1.0μmであり、より好ましくは0.010〜0.5μmである。
【0060】
帯電防止剤としては、カーボンブラック、グラファイト、酸化スズ、酸化チタン−酸化スズ−酸化アンチモン等の導電性粉末及び界面活性剤等を用いることができる。帯電防止の他に、摩擦係数低減、磁気記録媒体の強度向上といった効果が期待できることから、帯電防止剤としては、カーボンブラックを用いることが好ましい。
【0061】
結合剤樹脂としては、前記磁気記録層、及び非磁性下地層を作製するために用いた結合剤樹脂を使用することができる。
【0062】
本発明における磁気記録層、非磁性下地層及びバックコート層中には、必要に応じて、磁気記録媒体の製造に通常用いられている潤滑剤、研磨剤、分散剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
【0063】
本発明に係る磁気記録媒体は、保磁力(Hc)が95.5〜358.1kA/m、好ましくは51.7〜318.3kA/m、保磁力分布SFD(Switching Field Distribution)が、0.70以下、好ましくは0.67以下、より好ましくは0.65以下である。
【0064】
次に、本発明における磁気記録媒体の製造法について述べる。
【0065】
前記非磁性下地層、磁気記録層、及びバックコート層の形成にあたって用いる溶剤としては、磁気記録媒体に汎用されているアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びテトラヒドロフラン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール及びイソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル及び酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル及びジオキサン等のグリコールエーテル類及びその混合物等を使用することができる。
【0066】
非磁性下地層、磁気記録層、バックコート層は、各層を構成する成分及び溶剤を一般に使用される混練機及び分散機により混練・分散処理を行い、各塗料を作製する。該各塗料を用いて、非磁性支持体上の一面に非磁性下地層、磁気記録層の順に塗布、乾燥後、カレンダー処理を行う。その際の塗布方法としては、磁性層と非磁性層をほぼ同時に塗布するWet on Wet法でも、非磁性下地層を塗布・乾燥後、その上に磁気記録層を塗布するWet on Dry法のどちらでもよい。また、必要により、バックコート層を設ける場合には、非磁性下地層及び磁気記録層とは反対面の非磁性支持体上にバックコート層用塗料を塗布、乾燥後、カレンダー処理を行い、磁気記録媒体を得る。
【0067】
<作用>
本発明において重要な点は、バリウム、ストロンチウム、及びカルシウムより選ばれた少なくとも1種の金属イオンを含む金属塩と鉄化合物、並びに、2価乃至5価の金属元素から選ばれる1種又は2種以上の金属塩を混合した懸濁液を、アルカリ水溶液に添加した後、オートクレーブを用いて100〜300℃の温度範囲で反応し、得られた六方晶フェライト粒子の前駆体を濾別・乾燥し、次いで、融剤の存在下で600〜800℃の温度で焼成した後、融剤を除去することによって得られる六方晶フェライト粒子粉末の製造法において、前記懸濁液をアルカリ水溶液に添加する際に、20分以上かけて徐添加することにより、平均板面径が20.5nmを超えて30nm以下である六方晶フェライト粒子粉末を得ることができるという事実である。
【0068】
本発明に係る六方晶フェライト粒子粉末の製造法によって、平均板面径が20.5nmを超えて30nm以下である微細な六方晶フェライト粒子粉末を得ることができた理由として、本発明者は次のように考えている。懸濁液をアルカリ水溶液中に一度に添加した場合には粗大粒子が生成しやすくなるが、20分以上かけて徐添加することにより、得られる六方晶フェライト粒子の前駆体は微細な粒子となり、これをプリカーサーとして用いることにより、微細な六方晶フェライト粒子粉末を得ることができたものと考えている。
【実施例】
【0069】
以下に、本発明における実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0070】
六方晶フェライト粒子粉末及び磁気記録媒体用磁性微粒子粉末の平均板面径及び平均厚さは、透過型電子顕微鏡を用いて粒子の写真を撮影し、該写真を用いて粒子360個以上について板面径、厚さをそれぞれ測定し、その平均値で粒子の平均板面径及び平均厚さを示した。なお、粒子の選定基準としては、粒子同士が重なっており、境界がはっきりしていないものは測定を行わないものとした。
【0071】
板状比は、平均板面径と平均厚さとの比で示した。
【0072】
比表面積は、「モノソーブMS−11」(カンタクロム株式会社製)を用いて、BET法により測定した値で示した。
【0073】
六方晶フェライト粒子粉末に含有される各種元素の含有量は、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0074】
スラリー中に含まれる六方晶フェライト粒子の前駆体の体積基準平均粒子径(D50)は、「レーザー回折式粒度分布測定装置 model HELOS LA/KA」(SYMPATEC社製)の湿式分散ユニットを用いて測定した。
【0075】
六方晶フェライト粒子粉末及び磁気テープの磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM SSM−5−15」(東英工業株式会社製)を用いて外部磁場1193.7kA/mの条件で測定した。また、粉体SFD及び磁気テープのSFDは、印加磁場が0〜397.9kA/mの範囲ではスイープ速度を79.6(kA/m)/分とし、397.9〜1,193.7kA/mの範囲ではスイープ速度を397.9(kA/m)/分として測定した。
【0076】
磁気テープの塗膜表面の光沢度は、「グロスメーター UGV−5D」(スガ試験機株式会社製)を用いて入射角45°で測定した値であり、標準板光沢を86.3%とした時の値を%で示したものである。
【0077】
表面粗度Raは、「ZYGO NewView600S」(ZYGO株式会社製)を用いて塗膜の中心線平均粗さを測定した。
【0078】
磁気記録媒体を構成する非磁性支持体及び磁気記録層の各層の厚みは、デジタル電子マイクロメーターK351C(安立電気株式会社製)を用いて測定した。
【0079】
<実施例1−1:磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末の製造>
BaCl・2HO 0.08mol、FeCl・6HO 0.60mol、NiCl 0.018mol、TiCl 0.018molに純水を加えて溶解し、0.7Lの混合溶液を調製した。次いで、18.55mol/LのNaOH水溶液0.5Lを攪拌させながら前記混合溶液を20mL/min.の流量で35分間かけてNaOH水溶液中に添加した後、オートクレーブを用いて150℃で240分反応を行った。
【0080】
次に、得られた六方晶フェライト粒子の前駆体のスラリーを、純水を用いて十分に水洗し、六方晶フェライト粒子の前駆体を含む1Lのスラリーとした後、塩酸を用いてpH値を8.5に調整し、超音波ホモジナイザー(BRANSON株式会社製SonifierII model 450D)を用いて10分間攪拌し、分散処理を行った。なお、この時のスラリー中の六方晶フェライト粒子の前駆体の体積挙動粒子径(D50)は1.6μmであった。
【0081】
次いで、前記六方晶フェライト粒子の前駆体を含むスラリーに、フラックスとしてNaClを六方晶フェライト粒子の前駆体100重量部に対して30重量部添加し、ろ過・乾燥を行って、六方晶フェライト粒子の前駆体を得た。なお、乾燥温度は150℃で行った。
【0082】
得られた乾燥した六方晶フェライト粒子の前駆体を、空気中700℃の温度で120分焼成し、得られた焼成物に純水1Lを加えて分散スラリーとした。得られたスラリーを湿式粉砕した後、塩酸を用いてpH値を2に調製して60分保持することにより酸処理を行い、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH値を5に調整した後、水洗・ろ過・乾燥・粉砕して、実施例1−1の六方晶フェライト粒子粉末を得た。
【0083】
得られた六方晶フェライト粒子粉末は板状であり、平均板面径は22.7nm、平均厚みは6.7nm、板状比は3.4、BET比表面積値(実測値)は73.8m/g、保磁力(Hc)は188.3kA/m、飽和磁化(σs)は48.0Am/kg、粉体SFDは0.84であった。
【0084】
<実施例2−1:磁気記録媒体の製造>
非磁性下地層形成用の非磁性塗料組成
非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末 100.0重量部、
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂 11.8重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 11.8重量部、
シクロヘキサノン 78.3重量部、
メチルエチルケトン 195.8重量部、
トルエン 117.5重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 3.0重量部、
潤滑剤(ブチルステアレート) 1.0重量部。
【0085】
非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末と結合剤樹脂溶液(スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを固形分が72wt%となるよう混合し、自動乳鉢を用いて30分間混練して混練物を得た。
【0086】
次いで、上記非磁性塗料組成となるように、上記混練物と、追加の結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエン1.5mmφガラスビーズ95gと共に140mlのガラス瓶に添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行って非磁性塗料組成物を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した後、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、非磁性下地層用非磁性塗料を調整した。
【0087】
上記非磁性下地層用非磁性塗料を厚さ4.5μmの芳香族ポリアミドフィルム上に塗布し、次いで、乾燥させることにより非磁性下地層を形成した。
【0088】
磁気記録層形成用の磁性塗料組成
六方晶フェライト粒子粉末 100.0重量部、
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂 12.5重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 7.5重量部、
研磨剤(AKP−50) 5.0重量部、
カーボンブラック 2.0重量部、
潤滑剤(ミリスチン酸:ステアリン酸ブチル=1:2) 3.0重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 5.0重量部、
シクロヘキサノン 170.0重量部、
メチルエチルケトン 170.0重量部。
【0089】
六方晶フェライト粒子粉末と研磨剤、カーボンブラック、結合剤樹脂溶液(スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを固形分が76wt%となるよう混合し、自動乳鉢を用いて40分間混練して混練物を得た。
【0090】
次いで、上記磁性塗料組成となるように、上記混練物と、追加の結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエン1.5mmφガラスビーズ95gと共に140mlガラス瓶に添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行って非磁性塗料組成物を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した後、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、磁気記録層用磁性塗料を調整した。
【0091】
上記磁気記録層用塗料を、乾燥後の厚さが1.5μmになるよう前記非磁性下地層の上に塗布した後、磁場中において配向・乾燥した。その後、60℃で24時間硬化反応を行い、12.7mm幅にスリットして磁気記録媒体を得た。
【0092】
得られた磁気記録媒体は、保磁力Hcが197.9kA/m、Br/Bmが0.81、保磁力分布SFDが0.56、光沢度が177%、表面粗度Raが10.1nmであった。
【0093】
前記実施例1−1及び実施例2−1に従って六方晶フェライト粒子粉末及び磁気記録媒体を作製した。各製造条件及び得られた六方晶フェライト粒子粉末及び磁気記録媒体の諸特性を示す。
【0094】
実施例1−2〜1−3及び比較例1−1:
六方晶フェライト粒子の前駆体の生成反応及び前駆体の焼成における条件を種々変更することにより、六方晶フェライト粒子粉末を得た。
【0095】
このときの製造条件を表1に、得られた六方晶フェライト粒子粉末の諸特性を表2に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
<磁気記録媒体の製造>
実施例2−2〜2−3及び比較例2−1:
六方晶フェライト粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、前記実施例2−1の磁気記録媒体の作製方法に従って磁気テープを製造した。
【0099】
得られた磁気テープの諸特性を表3に示す。
【0100】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係る水熱合成法による六方晶フェライト粒子粉末の製造法は、平均板面径が20.5nmを超えて30nm以下の微細な六方晶フェライト粒子粉末を工業的に有利に提供できるので、高密度磁気記録媒体の磁性粒子粉末の製造法として好適である。
【0102】
本発明に係る製造法によって得られた六方晶フェライト粒子粉末は、平均板面径が20.5nmを超えて30nm以下であると共に、平均板面径(L)とBET比表面積値(SSA)が特定の範囲にあることから分散性に優れているため、高密度磁気記録媒体の磁性粒子粉末として好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリウム、ストロンチウム、及びカルシウムより選ばれた少なくとも1種の金属イオンを含む金属塩と鉄化合物、並びに、2価乃至5価の金属元素から選ばれる1種又は2種以上の金属塩を混合した懸濁液を、アルカリ水溶液に添加した後、オートクレーブを用いて100〜300℃の温度範囲で反応し、得られた六方晶フェライト粒子の前駆体を濾別・乾燥し、次いで、融剤の存在下で600〜800℃の温度で焼成した後、融剤を除去することによって得られる六方晶フェライト粒子粉末の製造法において、前記懸濁液をアルカリ水溶液に添加する際に、20分以上かけて徐添加することを特徴とする平均板面径が20.5を超えて30nm以下である六方晶フェライト粒子粉末の製造法。
【請求項2】
保磁力(Hc)が95.5kA/m(1,200Oe)以上であることを特徴とする請求項1記載の方法によって得られる六方晶フェライト粒子粉末。
【請求項3】
六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径(L)(nm)とBET比表面積値(SSA)(m/g)が下記式(1)の関係にあることを特徴とする請求項2に記載の六方晶フェライト粒子粉末。
−1.0×L(nm)+120 ≧ SSA(m/g) ≧ −1.0×L(nm)+90 ・・・ (1)
【請求項4】
非磁性支持体上の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層からなる磁気記録媒体において、前記磁性粒子粉末として請求項3又は請求項4のいずれかに記載の六方晶フェライト粒子粉末を用いることを特徴とする磁気記録媒体。

【公開番号】特開2011−148657(P2011−148657A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11338(P2010−11338)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】