説明

共役ジエン重合用の触媒系、重合方法および得られる官能化ポリマー

【課題】重合用の、さらに詳細には、極性官能基を鎖末端に担持する共役ジエンポリマーの製造用の新規な触媒系を提供する。
【解決手段】本発明は、希土類金属の金属塩と、アルキル剤としての、周期律表の第II族または第XIII族に属する金属をベースとし、共役ジエンの重合工程中に極性官能基をジエンエラストマーに転移させることのできる有機金属化合物をベースとする触媒系に関する。この新規な触媒系は、鎖末端官能化エラストマーの合成工程数を減じること、有利には100%に近いまたは等しい最適の官能化度を確保しながら可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類元素をベースとする新規な触媒系、この触媒系の製造方法、この触媒系を使用することからなる官能化共役ジエンポリマーの製造方法、並びにそのようなポリマーに関する。また、本発明は、周期表の第II族に属する二価金属をベースとし、希土類元素をベースとする触媒系中の共触媒として使用する新規な有機金属化合物、およびこの新規な有機金属化合物の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
燃料の節減および環境保護の必要性が優先事項となっていることから、良好な機械的性質とできる限り低いヒステリシスを有する混合物を製造して、これらの混合物を、例えば、下地層、側壁またはトレッドのようなタイヤ組織中に組込む種々の半製品の製造において使用することのできるゴム組成物の形で使用し得、さらに、ますます低下した転がり抵抗性を有するタイヤを得ることが望ましい。そのような目的を達成するには、ジエンポリマーおよびコポリマーの構造を官能化剤、カップリング剤または星型枝分れ剤によって重合の終了時に変性して、上記エラストマー中に、ゴム組成物において使用する充填剤(または複数の充填剤)に対する相互作用機能を導入することが提案されている。
【0003】
これら解決策の大多数は、先ずは、そのように変性したポリマーとカーボンブラック間の良好な相互作用を得る目的でもって、カーボンブラックに対して活性である官能化ポリマーの使用に集中していた。
最近になって、シリカに対して活性である変性エラストマーが、そのように変性したポリマーとシリカ間の良好な相互作用を取得する目的でもって開発されてきている。
【0004】
上記ジエンエラストマーが、特に本出願人等の特許文献EP 1 355 960 A1号またはEP 1 509 557 B1号に記載されているような希土類元素をベースとする触媒系の存在下でのモノマーの重合によって得られる場合、官能化ジエンエラストマーにおいて想定する用途に適する官能基を担持する薬剤による官能化を想定することは可能である。
この官能化工程において使用し得る官能化剤としては、アルカリ金属の有機化合物をベースとする触媒の存在下でのアニオン重合から得られるジエンエラストマーを官能化するのに従来技術において使用される官能化剤を想定することができる。
【0005】
カーボンブラックとの相互作用に関連するこの従来技術の例としては、例えば、特許文献US‐B‐4,550,142号に記載されているような4,4'‐ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンまたはスズのハロゲン化誘導体のような薬剤によるジエンエラストマーの鎖末端変性、或いはカーボンブラックに対して活性である官能基を有するポリマー鎖に沿ったグラフト化を挙げることができる。
【0006】
シリカとの相互作用に関連するこの従来技術の例としては、例えば、米国特許US‐A‐5,066,21号を挙げることができ、この米国特許は、少なくとも1個の加水分解されていないアルコキシ残基を有するアルコキシシランよって官能化されたジエンポリマーを含むゴム組成物を記載している。本出願人等の名義の特許文献 EP 0 692 492 A1号およびEP 0 692 493 A1号においては、エポキシ化アルコキシシランのような官能化剤を使用しての、アルコキシシラン基によるジエンエラストマーの官能化が記載されている。文献EP 0 778 311 A1号は、鎖末端におけるシラノール官能基を或いは環状ポリシロキサンとリビングポリマーとの重合終了時の反応によって得られるシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを担持するジエンポリマーを開示している。
【0007】
希土類元素をベースとする触媒系を使用しての官能化ポリマーの合成方法は、使用する官能剤の選択に応じて、多様な構造の鎖末端の化学官能基を有するジエンエラストマーをもたらすという利点を有する。
しかしながら、1つの欠点は、上記合成法は、そのようなポリマーの工業規模での製造中に、例えば、多数の反応器の使用、従って、複雑な実施法に関連する高コストをもたらすことである。
もう1つの欠点は官能化剤の純度の制御であり、この制御は、場合に応じて、成長中のポリマー鎖の末端での失活または停止反応、即ち、官能化されていないエラストマー鎖の高いまたは低い割合の原因をもたらす。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上記の欠点を、限られた数の反応工程を使用することによって、また、最適割合の官能化鎖を生じさせることによって克服することを画策する。
研究中に、本発明者等は、周期律表の第II族に属する二価の金属または周期律表の第XIII族に属する三価の金属をベースとする有機金属化合物を共触媒として含む希土類金属塩をベースとする新規な触媒系を発見した;この触媒系は、鎖末端官能化ジエンエラストマーの合成における工程数を、最適の、即ち、100%に近いまたは等しい官能化を確保しながら制限することを可能にする。
【0009】
この触媒系の重合における、さらに詳細には、官能化ジエンエラストマーの製造における使用は、後続の官能化剤との反応工程を省くことを可能にする。そのようにして得られた官能化ジエンエラストマーは、100%までの高レベルの官能化を有し、補強用充填剤を含みタイヤ用途を意図するゴム組成物において有利に使用し得る。
【0010】
従って、本発明の第1の主題は、希土類金属塩と、周期表の第II族または第XIII族に属する金属をベースとする有機金属化合物とをベースとする触媒系である。
本発明のもう1つの主題は、希土類金属塩をベースとする上記触媒系の製造方法である。
また、本発明の主題は、少なくとも1種の共役ジエンモノマーの、希土類金属塩をベースとする上記触媒系の存在下での重合による官能化ジエンエラストマーの製造方法でもある。
【0011】
本発明のもう1つの主題は、少なくとも1種の共役ジエンモノマーの、希土類金属塩をベースとする上記触媒系の存在下での重合によって得ることのできる官能化ジエンエラストマーである。
また、本発明の主題は、希土類金属塩をベースとする上記触媒系中で共触媒として使用することのできる新規な化合物の群でもある。
また、本発明の主題は、これらの新規な化合物の製造方法でもある。
【0012】
勿論、上記触媒系の構成成分を明確にするのに使用する“ベースとする”なる表現は、これらの構成成分の混合物および/またはこれらの構成成分間の反応生成物を意味するものと理解されたい。さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、aよりも大きいからbよりも小さいまでの範囲にある値の領域を示し(即ち、限界値aとbを除く)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、aからbまでの範囲にある値の領域を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを含む)。さらに、“官能化ポリマー”なる表現は、官能基を鎖末端に担持するポリマーを意味するものと理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
従って、本発明の第1の主題は、希土類金属塩と、周期表の第II族または第XIII族に属する金属をベースとする有機金属化合物とをベースとする触媒系であり、後者の化合物は、下記の式(I)に相応する:
【化1】

式 (I)

(式中、
Mは、周期表の第II族または第XIII族に属する金属であり;
R1、R2、R3、R4は、互いに同一または異なるものであって、水素原子または線状もしくは枝分れのアルキル置換基または置換もしくは非置換のアリール置換基であり、必要に応じて一緒に結合させて(その場合、RiをRi+1に結合させる)、5個または6個の原子からなる少なくとも1個の環または少なくとも1個の芳香環を形成し;
Aは、C、HまたはSi原子をベースとするアルキル基であり;
Xは、 (CH2)mにヘテロ原子によって結合した化学官能基であり;
Lは、ルイス塩基であり;
xは、0、1、2、3または4に等しい整数であり;
nおよびmは、互いに独立して、各々、nとmが共に0に等しくないことを条件として、0以上の整数であり;
zは、Mが第II族に属する場合は2に等しく、Mが第XIII族に属する場合は3に等しく;
yは、1〜zの範囲のゼロでない整数である)。
【0014】
この式(I)において、Mは、好ましくは、マグネシウムまたはアルミニウムである。
R1、R2、R3またはR4がアルキル置換基を示す場合、これらのR1、R2、R3またはR4は、好ましくはC1〜C12、さらにより好ましくはC1〜C6アルキル置換基である。
R1、R2、R3またはR4がアリール置換基を示す場合、これらのR1、R2、R3またはR4は、好ましくはC6〜C12、より好ましくはC6〜C10アリール置換基である。
R1、R2、R3またはR4が一緒に結合して5個または6個の炭素原子を含有する1個以上の環を形成する場合、得られる単位は、好ましくは2〜4個の共役芳香環、より好ましくは2〜3個の芳香環からなる。
好ましくは、R1、R2、R3およびR4は、水素原子である。
【0015】
この式(I)において、Aは、さらに詳細には、1〜8個の炭素原子、好ましくは2〜8個の炭素原子を含む基である。好ましくは、Aは、エチル、n‐ブチル、i‐ブチル、n‐ヘキシル、n‐オクチル、‐CH2‐Si(CH3)3または‐CH‐[Si(CH3)3]2基である。
この式(I)において、Xは、好ましくは、‐ORおよび‐NRR'基から選ばれ、R、R'は、互いに同一または異なるものである線状もしくは枝分れのアルキルまたは置換もしくは非置換の芳香族置換基を示す。
【0016】
RまたはR'がアルキル置換基を示す場合、これらのRまたはR'は、好ましくはC1〜C6、さらにより好ましくはC1〜C4アルキル置換基である。
RまたはR'がアリール置換基を示す場合、これらのRまたはR'は、好ましくはC6〜C12、さらにより好ましくはC5〜C6アリール置換基である。
好ましくは、RおよびR'は、メチル、エチル、イソプロピル、n‐ブチル、イソブチルまたはtert‐ブチル基である。
【0017】
式(I)において、nは、0以上の、好ましくは1以上で3よりも小さい、特に1に等しい整数であり;mは、0以上の、好ましくは0以上で3よりも小さい、より好ましくは0または1に等しい整数であり、mは、さらに好ましくは、1に等しい。
式(I)において、yは、1〜zの範囲のゼロでない整数であり、yは、好ましくは、2または3に等しい。
式(I)において、Lは、ルイス塩基である。本発明によれば、ルイス塩基は、特に、アミンまたはエーテルから選ばれる。好ましくは、ルイス塩基は、ピリジンまたはテトラヒドロフラン(THF)である。
【0018】
さらにまた、式(I)に相応する本発明に従う化合物は、同様な組成のアルミニウム塩の凝集物の形でもあり得る。
式(I)を有する有機金属化合物の、さらにまた、その製造方法の説明は、科学文献において、特に、Marcel Schreuder Groetheijt et al., Journal of Organometallic Chemistry, 1997, 1‐5, 527 またはPeter R. Markies et al., Journal of Organometallic Chemistry, 1991, 289‐312, 402において見出し得る。
【0019】
これらの式(I)の化合物は、本発明に従う希土類金属をベースとする触媒系中のアルキル化剤として作用する。
本発明に従う好ましい化合物は、周期律表の第II族からの元素をベースとする式(I)の化合物である。Mがマグネシウムであり、yが2に等しい式(I)の化合物が、特に好ましい。これらのうちでは、例えば、ジ(オルソ‐N,N‐アルキルアミノアルキルベンジル)マグネシウムおよびビス(オルソ‐メトキシベンジル)マグネシウムを上げることができる。
【0020】
本発明に従う触媒系のもう1つの構成要素は、希土類期金属の塩である。“希土類金属”なる表現は、本発明によれば、ランタニド系の任意の元素、或いはイットリウムまたはスカンジウムを意味するものと理解されたい。好ましくは、希土類元素は、イットリウム、ネオジム、ガドリニウムまたはサマリウムの各元素、より好ましくはネオジムまたはガドリニウムから選ばれる。
上記希土類金属塩は、本発明によれば、式Ln(A')3(B)nによって示し得、式中、Lnは、希土類元素であり;A'は、ハライド、カルボキシレート、オルガノホスフェート、アルコラート、アミド、アルキルまたはホウ化水素から選ばれ;Bは、希土類金属に錯化した1個以上の溶媒分子であり;nは、0と3の間の整数である。
【0021】
Bの定義において、“錯化溶媒”なる表現は、特に、エーテル、アミン、ホスフェートおよびチオエーテルを意味するものと理解されたい。例えば、アミンとしては、トリアルキルアミン群、ピリジンまたはピペラジンのような芳香族アミンおよびその誘導体を挙げることができる。ホスフェートとしては、例えば、トリ‐n‐ブチルホスフェートを挙げることができる。チオエーテルとしては、ジメチルスルフィドのようなジアルキルスルフィドの群を挙げることができる。エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、1,2‐ジエトキシエタン、1,2‐ジ‐n‐プロポキシエタン、1,2‐ジ‐n‐ブトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、テトラヒドロピランを挙げることができる。特に、Bは、エーテル、好ましくはテトラヒドロフラン(THF)である。
【0022】
A'がハライドである場合、A'は、好ましくは、クロリドである。その場合、Bは、好ましくは、THF分子であり、nは2に等しい。
A'がカルボキシレートである場合、A'は、直鎖中に6〜16個の炭素原子を有する直鎖または枝分れの脂肪族カルボン酸のエステル、および6個と12個の間の炭素原子を有する置換または非置換の芳香族カルボン酸のエステルから選ばれる。例えば、線状または枝分れのネオデカノエート(バーサチック酸エステル(versatate))、オクタノエートまたはヘキサノエート、或いは置換または非置換のナフテネートを挙げることができる。カルボキシレートの群のうちでは、A'は、好ましくは、2‐エチルヘキサン酸、ナフテン酸またはネオデカン酸の希土類塩である。
【0023】
A'をオルガノホスフェートから選択する場合、Aとしては、一般式(R'O)(R"O)PO(OH)のリン酸ジエステルがあり、式中、R'およびR"は、同一または異なるものであって、アルキル、アリールまたはアルキルアリール基を示す。これらのリン酸ジエステルのうちでは、R'およびR"は、同一または異なるものであって、好ましくは、n‐ブチル、イソブチル、ペンチル、アミル、イソペンチル、2,2‐ジメチルヘキシル、1‐エチルヘキシル、2‐エチルヘキシル、トリルまたはノナフェノキシル(nonaphenoxyl)基である。オルガノホスフェートの群のうちでは、この塩は、さらにより好ましくは、希土類ビス(2‐エチルヘキシル)ホスフェートである。
【0024】
A'をアルコラートから選択する場合、脂肪族または環状炭化水素、特に、直鎖中に1〜10個の炭素原子特に4〜8個の炭素原子を有する線状または枝分れの脂肪族炭化水素に由来するアルコールまたはポリオールのアルコラートがある。例えば、ネオペンタノラートを挙げることができる。
A'をアミドの群から選択する場合、A'としては、特に、ジアルキルアミド、N,N‐ビス(ジアルキルシリル)アミドおよびN,N‐ビス(トリアルキルシリル)アミドがあり、これらのアルキル基は、1〜10個の炭素原子を有する。
【0025】
A'をジアルキルアミドから選択する場合、Bは、好ましくは、THFであり、nは、好ましくは、1に等しい。その場合、A'は、好ましくは、ジイソプロピルアミドおよびジメチルアミドである。
A'をN,N‐ビス(トリアルキルシリル)アミドから選択する場合、nは、好ましくは、0に等しい。その場合、A'は、好ましくは、式‐N[Si(CH3)3]のN,N‐ビス(トリメチルシリル)アミドである。
【0026】
A'をN,N‐ビス(ジアルキルシリル)アミドから選択する場合、Bは、好ましくは、THFであり、nは、好ましくは、2または3に等しい。その場合、A'は、好ましくは式 N[SiH(CH3)2]のN,N‐ビス(ジメチルシリル)アミドである。
A'をアルキルの群から選択する場合、A'は、好ましくは、(トリメチルシリル)メチルまたはビス(トリメチルシリル)メチルのような(トリアルキルシリル)アルキルである。
A'をホウ化水素から選択する場合、A'は、好ましくは、テトラヒドロボレートであり、Bは、好ましくは、THFであり、nは、好ましくは、2または3に等しい。
【0027】
本発明の1つの好ましい局面によれば、上記希土類金属塩は、希土類オルガノホスフェート、アミド、アルキルまたはボロヒドリドから選ばれる。さらに詳細には、上記希土類金属塩は、希土類トリス[ジ(2‐エチルヘキシル)ホスフェート]、希土類トリ[N,N‐ビス(トリメチルシリル)アミド]または希土類トリス(ボロヒドリド)から選ばれる。
本発明の1つの局面によれば、上記希土類金属塩は、希土類金属の混合物の塩或いは1種以上の希土類金属の数種の塩の混合物であり得る。
【0028】
本発明の1つの実施態様によれば、上記触媒系は、その場合、アルキル化剤としておよび/またはハロゲン供与体として作用するアルキルアルミニウムまたはアルキルアルミニウムハライドタイプの少なくとも1種のさらなる化合物を含み得る。これらの化合物のうちでは、下記を挙げることができる:
・アルキル基がC2〜C8アルキル基であるトリアルキルアルミニウム、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムまたはトリオクチルアルミニウム;
・アルキル基がC2〜C4アルキル基であるジアルキルアルミニウムヒドリド、例えば、ジイソブチルアルミニウムヒドリド;
・アルキル基がC2〜C4アルキル基であり且つハロゲンが塩素または臭素であるアルキルアルミニウムハライド、例えば、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、エチルアルミニウムジクロリドまたはエチルアルミニウムセスキクロリド。
【0029】
上記さらなる化合物を式(I)の有機金属化合物を含みその金属がマグネシウムである場合の触媒系と組合せる場合、アルキルアルミニウムタイプのこの剤は、好ましくは、ジイソブチルアルミニウムヒドリドまたはトリイソブチルアルミニウムヒドリドからなることに留意されたい。
上記さらなる化合物を式(II)の有機金属化合物を含む触媒系と組合せる場合、このアルキル化剤は、好ましくは、アルキルアルミニウムとアルキルアルミニウムハライド、例えば、ジイソブチルアルミニウムヒドリドまたはトリイソブチルアルミニウムヒドリドとジエチルアルミニウムクロリドからなる混合物であることに留意されたい。
【0030】
本発明のもう1つの実施態様によれば、本発明に従う触媒系は、予備調製用共役ジエンも含み得る。本発明に従う触媒系を予備調製するのに使用し得る予備調製用共役ジエンとしては、2‐メチル‐1,3‐ブタジエン(またはイソプレン);例えば、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2,3‐ジエチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐エチル‐1,3‐ブタジエンまたは2‐メチル‐3‐イソプロピル‐1,3‐ブタジエンのような2,3‐ジ(Cl〜C5アルキル)‐1,3‐ブタジエン;フェニル‐1,3‐ブタジエン;1,3‐ペンタジエン;2,4‐ヘキサジエン;或いは4個と8個の間の炭素原子数を有する任意の他の共役ジエンを挙げることができ、好ましくは、1,3‐ブタジエンを使用する。
本発明のもう1つの実施態様は、これら2つの実施態様の組合せからなる。
【0031】
好ましくは、本発明に従う触媒系においては、(式(I)の有機金属化合物/希土類金属)のモル比は、1.5〜20(限界値含む)、より好ましくは2〜12の範囲の値を有し得る。
好ましくは、本発明に従う触媒系が上述したようなアルキルアルミニウムタイプのさらなる化合物を含む場合、(アルキル化剤/希土類金属)のモル比は、2〜20(限界値含む)、より好ましくは2〜6の範囲の値を有し得る。
また、好ましくは、本発明に従う触媒系が上述したようなハロゲン供与体タイプのさらなる化合物を含む場合、本発明に従う触媒系においては、(ハロゲン/希土類金属)のモル比は、満足し得る触媒活性を観察するためには2〜3.5、より好ましくは2.6〜3の範囲の値を有し得る。
【0032】
また、好ましくは、本発明に従う触媒系が予備調製用共役ジエンを含む場合、(予備調製用共役ジエン/希土類金属)のモル比は、より良好な触媒活性および低下した分子量分布を観察するためには10〜70、より好ましくは30〜70の範囲の値を有し得る。
もう1つの好ましい特徴によれば、本発明に従う触媒系は、0.002モル/l以上の、好ましくは0,010モル/l〜0.1モル/lの範囲の、さらに有利には0.015〜0.06モル/lの範囲の希土類金属濃度を有する。
【0033】
本発明のもう1つの主題は、上述した触媒系の製造方法である。
上記触媒系を特に何らかの使用前に予備調製する本発明に従う上記方法の第1の好ましい実施態様によれば、予備調製用共役ジエンを含む各種触媒成分を、不活性炭化水素系溶媒中で、0分と30分の間の時間、必要に応じて周囲温度よりも高い、一般的には10℃と80℃の間の温度で接触させ、その後、触媒成分を上記予備調製用共役ジエンの存在下にエージングする。
不活性炭水化物系溶媒としては、例えば、トルエンのような芳香族溶媒、或いはペンタン、n‐ペンタン、イソペンタン、ヘキサン混合物、n‐ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン混合物またはn‐ヘプタンのような脂肪族または脂環式溶媒を挙げることができる。
【0034】
本発明に従う上記方法の第2実施態様によれば、上記触媒系は、有利には、不活性炭化水素系溶媒中に式(I)の化合物と任意成分としての上記アルキル化剤および/またはハロゲン化剤導入することより、プレミックスを10℃〜80℃の範囲の温度で0〜30分に亘って調製し、次いで、上記希土類金属塩をこのプレミックスに添加することによって調製する。
本発明に従う上記方法の第3実施態様によれば、上記触媒系は、特に現場調製する、即ち、触媒構成成分、溶媒、希土類金属塩、式(I)の化合物、重合すべきモノマーおよび任意成分としての上記アルキル化剤および/またはハロゲン化剤の全てを、反応器に、任意の順序で重合直前に導入する。
【0035】
本発明のもう1つの主題は、少なくとも1種の共役ジエンモノマーの希土類(1種以上)の金属塩をベースとする上記触媒系存在下での重合による官能化ジエンエラストマーの製造方法である。
本発明の1つの特徴によれば、上記重合反応は、好ましくは0〜100℃の範囲の温度において、ペンタン、n‐ペンタン、イソペンタン、ヘキサン混合物、n‐ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン混合物またはn‐ヘプタンのような不活性炭化水素系重合溶媒中または塊状にて実施し得る。
【0036】
溶媒中で実施する本発明の上記方法の1つの有利な特徴によれば、重合反応前の溶媒/モノマー(1種以上)の質量比は、有利には1〜10、好ましくは4〜7の範囲の値を有する。該重合方法は、連続方法またはバッチ方式方法によって実施し得る。
本発明の上記方法のもう1つの有利な特徴によれば、上記触媒系は、反応媒中に、重合すべきモノマーの100g当り5μモルと5000μモルの間、好ましくは重合すべきモノマーの100g当り50μモルと500μモルの間の濃度で存在する。
【0037】
本発明に従う上記方法によって製造し得るジエンエラストマーとしては、4〜12個の炭素原子を有する少なくとも1種の共役ジエンモノマーの、必要に応じてのビニル芳香族化合物とのホモ重合または共重合によって得られる任意のホモポリマーまたはコポリマーを挙げることができる。
適切な共役ジエンモノマー(1種以上)は、特に、1,3‐ブタジエン;イソプレン;例えば、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2,3‐ジエチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐エチル‐1,3‐ブタジエンおよび2‐メチル‐3‐イソプロピル‐1,3‐ブタジエンのような2,3‐ジ(C1〜C5アルキル)‐1,3‐ブタジエン;アリール‐1,3‐ブタジエン、1,3‐ペンタジエンおよび2,4‐ヘキサジエンである。
適切なビニル芳香族化合物は、例えば、スチレン;オルソ‐、メタ‐、パラ‐メチルスチレン;市販“ビニルトルエン”混合物;パラ‐tert‐ブチルスチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼンおよびビニルナフタレンである。
【0038】
上記コポリマーは、99質量%と20質量%の間の量のジエン単位と、1質量%と80質量%の間の量のビニル芳香族単位とを含有し得る。上記エラストマーは、使用する重合条件、特に、変性剤および/またはランダム化剤の存在または不存在および使用する変性剤および/またはランダム化剤の量に依存する任意のミクロ構造を有し得る。上記エラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列または微細序列エラストマーであり得、また、上記エラストマーは、カップリング剤および/または星型枝分れ化剤によってカップリングおよび/または星型枝分れ化させ得る。
特に好ましくは、上記エラストマーは、ポリブタジエン(BR)および合成ポリイソプレン(IR)からなる高不飽和ジエンエラストマーの群から選ばれる。
【0039】
本発明に従う方法において使用する上記触媒系は、式(I)の有機金属化合物に由来する極性芳香族官能基によって鎖末端で官能化したジエンエラストマーを得ることを、官能化剤とのさらなる反応工程を含ませる必要なしで可能にすることに注目されたい。さらにまた、上記ジエンエラストマーの官能化度は高い。この官能化度は、75%〜100%、好ましくは90%〜100%の範囲の、実質的には100%にさえ等しい値に達し得る。
【0040】
本発明に従う方法において使用する上記触媒系は、有利なことに、1〜3の範囲の値を有する多分散性指数を有する共役ジエンポリマー、例えば、ポリブタジエンを得ることを可能にすることに注目されたい。さらに詳細には、本発明に従う方法において使用する上記触媒系は、有利なことに、1〜2.5の範囲の値を有する多分散性指数、好ましくは1〜1.5の範囲の値を有する多分散性指数(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)法によって測定、下記の付記2参照)および75%からまたは90%さえから100%までの範囲の、実質的には100%にさえ等しい値に達し得る高い官能化度の双方を有するブタジエンホモポリマーを得ることを可能にする。
【0041】
また、少なくとも1種の共役ジエンの本発明に従う触媒系の存在下の重合によって得られた官能化ジエンエラストマーも、本発明の主題である。これらのうち、本発明の主題は、さらに詳細には、極性芳香族官能基を鎖末端において担持する官能化ジエンエラストマーである。
【0042】
これらのエラストマーは、これらのエラストマーが、少なくとも1つの鎖末端において、下記の式(II)によって示し得る式(I)の有機金属化合物に由来する極性官能基を有することに特徴を有する:
【化2】


式(II)

(式中、
・Pは、ジエンエラストマーを示し;
・R1、R2、R3、R4、n、mおよびX は、式(I)において上記で定義したとおりである)。
【0043】
本発明の1つの好ましい局面によれば、75%〜100%のエラストマー鎖が鎖末端において官能化され、さらにより好ましくは、90%〜100%の或いは実質的に100%でさえのエラストマー鎖が官能化される。
本発明に従う官能化ジエンエラストマーは、強化ゴム組成物において有利に使用することができ、この組成物において、これらの官能化エラストマーは、充填剤に対する相互作用を促進させることによってヒステリシス特性を改良する。官能基は、使用する補強用充填剤のタイプに応じて慎重に選択し得る。そのようなゴム組成物は、その場合、転がり抵抗性を低下させる目的でもって、自動車用のタイヤとしての用途に特に適している。
【0044】
また、そのような強化ゴム組成物も本発明の主題である。これらのゴム組成物は、少なくとも1種の共役ジエンエラストマーの本発明に従う触媒系の存在下での重合によって得られた少なくとも1種の官能化ジエンエラストマーを含む。このエラストマーは、必要に応じて、タイヤ用のゴム組成物において一般的に使用され、天然ゴム、必要に応じてカップリングしたおよび/または星型枝分れ化したおよび/または部分的にもしくは完全に官能化した合成ジエンエラストマー、合成ジエンエラストマー以外の合成エラストマー或いはエラストマー以外のポリマーさえから選ばれる少なくとも1種以上のエラストマーとのブレンドとして使用し得る。
【0045】
ゴム組成物中に存在する補強用充填剤は、シリカのような無機充填剤、カーボンブラックのような有機充填剤、またはこれら充填剤の混合物から選択する。
また、これらの組成物は、特に自動車用のタイヤを意図するゴム組成物において通常存在する各種添加剤も含み得る。例えば、ゴム/充填剤接着剤、非補強用充填剤、各種加工助剤または他の安定剤、可塑剤、顔料、酸化防止剤、疲労防止剤、オゾン劣化防止ワックス、接着促進剤、補強用樹脂または可塑化用樹脂、イオウおよび/または過酸化物および/またはビスマレイミドのいずれをベースとする架橋系、一酸化亜鉛とステアリン酸を含む架橋活性化剤、グアニジン誘導体、増量剤オイル、1種以上のシリカ被覆剤が挙げられる。
【0046】
また、本発明の上述した特徴および他の特徴は、下記の付記と関連して、例示としてまた非限定的に示す下記の本発明の幾つかの典型的な実施態様の説明を読取ることでより一層良好に理解し得るであろう。
【実施例】
【0047】
有機金属合成は、全て、シュレンク法またはグローブボックスのいずれかを使用して、不活性アルゴン雰囲気下に実施した。これらの合成中に使用した溶媒は、全て、通常の方法(ナトリウムまたは分子篩上での蒸留)に従い乾燥させ、不活性雰囲気下に保った。例えば、ペンタンとTHFは、ナトリウム/ベンゾフェノン上で新たに蒸留した。反応物は、全てSigma‐Aldrich社、Acros Organics社、Strem社およびFluka社から入手した。
【0048】
合成
ランタニド塩の合成
Nd(BH4)3(THF)3を、文献:S. Cendrowski‐Guillaume, M. Nierlich, M. Lance, M. Ephritikhine, Organometallics, 1998, 17, 786に記載された手順に従って調製した。
【0049】
トルエン誘導体のカリウム塩の合成
オルソ‐ジメチルアミノベンジルカリウム[K‐CH2C6H4‐o‐NMe2)3]の合成
【化3】

【0050】
13.4gのオルソ‐ジメチルアミノトルエン(またはN,N‐ジメチル‐o‐トルイジン) (M=135g.モル-1;99ミリモル)を、40mlのヘキサンと20mlのジエチルエーテルの混合物中に希釈する。周囲温度で、窒素下に、撹拌しながら、40mlのブチルリチウム溶液(ヘキサン中2.5M)を添加する。3時間後、1当量のtBuOKを、アルゴン下に、小分けして添加する。溶液を加熱すると、黄色沈降物が生じる。撹拌を1夜維持する。溶液を濾過し、黄色沈降物をヘキサン混合物(3×40ml)で3回洗浄する。真空下に乾燥させた後、固形物をミリングし、再び真空下に1夜乾燥させる。14.9gのオルソ‐ジメチルアミノベンジルカリウムの黄色粉末を得る(収率 = 80%)。1H NMR (THF‐d8、22℃):δ = 2.03および2.57 (2×1H、s、KCH2‐、2.67 (s、6H、‐NMe2)、5.11 (t、1H、JH‐H=7Hz、芳香族CH)、6.04 (d、1H、JH‐H=7Hz、芳香族CH)、6.16 (t、1H、JH‐H=7Hz、芳香族CH)、6.26 (t、1H、JH‐H=7Hz、芳香族CH)。
【0051】
オルソ‐メトキシベンジルカリウムの合成
【化4】

【0052】
オルソ‐ジメチルアミノベンジルカリウムの合成において使用した手順と同様な手順を、12.4mlの2‐メチルアニソール(100ミリモル)と41mlのBuLi (2.5M)でもって使用した。13.5gのオルソ‐メトキシベンジルカリウムの黄色粉末を得る(収率 = 84%)。1H NMR (THF‐d8、22℃):δ = 1.97;2.20 (2×1H、s、KCH2‐)、3.61 (s、3H、‐OMe)、4.8 (m、1H、芳香族CH)、5.87 (d、1H、芳香族CH)、5.99 (t、1H、芳香族CH)、6.00 (t、1H、芳香族CH)。
【0053】
マグネシウムをベースとする官能化共触媒の合成
ビス(オルソ‐N,N‐ジメチルアミノベンジル)マグネシウムの合成
【化5】

【0054】
アルゴン下に、0.20gのMgCl2 (2.1ミリモル)と0.70gのオルソ‐N,N‐ジメチルアミノベンジルカリウム(4.0ミリモル)を、シュレンクフラスコに導入する。およそ25mlのTHFを真空下に−78℃で再凝縮させる。混合物を、周囲温度で30分間撹拌し、次いで、静的真空下に50℃で5時間還流加熱する。その後、不溶性MgCl2結晶が消失する。50℃で1夜後に、混合物を遠心分離する;KClの白灰色遠心分離ペレットを除去し、橙色溶液を1〜2mlに濃縮し、その後、およそ0.5mlの石油エーテルを添加する。無色結晶が赤色溶液中に生じる。結晶の1個のXRD分析 (付記4)は、ビス(オルソ‐N,N‐ジメチルアミノベンジル)マグネシウム錯体(THF)の単量体構造を示している。M = 0.30g (収率=42%)。1H NMR (THF‐d8、22℃):δ=7.00 (d、2H、CH(6)、J(C‐H)=7Hz)、6.90 (d、2H、CH(3)、J(C‐H)=7Hz)、6.75 (t、2H、CH(4)、J(C‐H)=7Hz)、6.55 (t、2H、CH(5)、J(C‐H)=7Hz)、3.65 (t、4H、無重水素化THF)、2.65 (s、12H、C(8)およびC(9)、N(CH3)2)、1.80 (m、4H、無重水素化THF)、1.17 (s、4H、C(1)、Mg‐CH2‐)。13C NMR (THF‐d8):δ=152.8 (C(2))、148.4 (C(7))、128.9 (C(6))、125.9 (C(4))、118.9 (C(5))、118.4 (C(3))、45.7 (N(CH3)2)、19.0 (Mg‐CH2‐)。
【0055】
ビス(オルソ‐メトキシベンジル)マグネシウムの合成
【化6】

【0056】
ビス(オルソ‐N,N‐ジメチルアミノベンジル)マグネシウム(THF)において使用した手順と同様な手順を、0.50gのMgCl2 (5.3ミリモル)と0.84gのオルソ‐メトキシベンジルカリウム(5.2ミリモル)でもって使用した。0.35gのビス(オルソ‐メトキシベンジル)マグネシウム(THF)の粉末(収率 = 40%)を得た。生成物は、単結晶形では単離できなかった。
【0057】
重合
手順
前以って洗浄し、乾燥させ、キャップと気密・漏出防止シールを備え付けた“スタイニー”ボトルを、重合反応器として使用する。ブタジエン重合反応を、50℃と60℃の間の温度で不活性雰囲気(窒素)下に実施する。
各重合において、メチルシクロヘキサンを、上記ボトル中に重合溶媒として導入する。このメチルシクロヘキサンを窒素で10分間スパージングして揮発性不純物を除去する。
【0058】
5と7の間の“重合溶媒(メチルシクロヘキサン)/モノマー(ブタジエン)”質量比を使用する(以下、この質量比はS/Mと称する)。
上記ネオジム系プレカーサー、即ち、ネオジムトリス(ボロヒドリド)および上記官能性共触媒は、空気感受性化合物である。この理由によって、これらのプレカーサーと共触媒は、密閉ガラスアンプルによって導入し、その後、アンプルを重合反応の開始時に破壊する。
【0059】
ネオジムから製造した触媒塩基の量およびアルキル化剤の量は、μモルおよびμMcm (モノマー100グラム当たりのμモル)で表す。メタノール (1ml)またはアセチルアセトン(過剰に使用)を使用して重合反応を停止させる。N‐1,3‐ジメチルブチル‐N'‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン(6PPD)とAO2246を、得られた重合溶液の保護剤として使用する(エラストマー100g当り各々0.2gの質量で)。その後、ポリブタジエンを、そのようにして得られたポリマー溶液から、カルシウムタモレート(tamolate)の存在下での水蒸気ストリッピングおよび100℃のロール上での乾燥または真空下窒素微流による60℃のオーブン中での乾燥、或いは50℃で窒素掃気による部分真空液化のいずれかによって抽出する。
【0060】
対照試験
タイニーボトル内に、35mlのメチルシクロヘキサン溶媒、5.0gのブタジエン、180μモルのブチルオクチルマグネシウム、および20μモルのNd(BH4)3(THF)3を収容した1本の密閉ガラスアンプルを連続して導入する。
アンプルを、機械的撹拌の作用下に破壊し、その後、反応媒を60℃の温度に加熱する。20分後、重合反応をメタノールの添加によって停止させ、ポリマーを凝固させ、酸化防止処理し、その後、乾燥させる。そのようにして、5.0gのポリブタジエンを得る。このポリマーの特性決定値は、下記の表に示している。
【0061】
試験1
タイニーボトル内に、35mlのメチルシクロヘキサン溶媒、5.2gのブタジエン、および各々が21μモルのNd(BH4)3(THF)3と174μモルのビス(オルソ‐N,N‐ジメチルアミノベンジル)マグネシウムを収容した2本の密閉ガラスアンプルを連続して導入する。
アンプルを、機械的撹拌の作用下に破壊し、その後、反応媒を60℃の温度に加熱する。20分後、重合反応をメタノールの添加によって停止させ、ポリマーを凝固させ、酸化防止処理し、その後、乾燥させる。そのようにして、5.2gのポリブタジエンを得る。このポリマーの特性決定値は、下記の表に示している。
【0062】
試験2
タイニーボトル内に、70mlのメチルシクロヘキサン溶媒、7.8gのブタジエン、および各々が20μモルのNd(BH4)3(THF)3と181μモルのビス(オルソ‐N,N‐ジメチルアミノベンジル)マグネシウムを収容した2本の密閉ガラスアンプルを連続して導入する。
アンプルを、機械的撹拌の作用下に破壊し、その後、反応媒を55℃の温度に加熱する。7分後、重合反応をメタノールの添加によって停止させ、ポリマーを凝固させ、酸化防止処理し、その後、乾燥させる。そのようにして、7.8gのポリブタジエンを得る。このポリマーの特性決定値は、下記の表に示している。
【0063】
【表1】

a:BOMAG = ブチルオクチルマグネシウム;Mg(RN)2 = ビス(オルソ‐N,N‐ジメチルアミノベンジル)マグネシウム
b:MnおよびIpは、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定している (付記1)
c:ミクロ構造は、近赤外方法によって測定している (付記2)
d:ジメチルアミノベンジル基によって官能化した鎖の割合は、1Hおよび13C NMRによって測定している (付記3参照)
e:naは、“該当せず”を表す
【0064】
付記1
得られたポリブタジエンのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)法による分子量分布の測定
a) 測定原理
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、溶液中の高分子を、その大きさ(サイズ)に応じて、多孔質ゲルを充填したカラムによって分離することを可能にする。高分子は、その流体力学的容積に応じて分離し、最大容積物は最初に溶出する。
絶対法ではないものの、SECは、ポリマーの分子量分布を把握することを可能する。市販キャリブレーション製品から、種々の数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)を測定することができ、多分散性指数(Ip = Mw/Mn)はムーアー較正によって得る。
【0065】
b) ポリマー調製
分析前にポリマーサンプルの特段の処理はない。サンプルを、(テトラヒドロフラン+1容量%のジイソプロピルアミン+1容量%のトリエチルアミン+1容量%の蒸留水)中におよそ1g/lの濃度に単純に溶解する。その後、溶液を、注入前に、0.45μmの有孔度を有するフィルター上で濾過する。
【0066】
c) SEC分析
使用する装置はWaters Allianceクロマトグラフである。溶出溶媒は(テトラヒドロフラン+1容量%のジイソプロピルアミン+1容量%のトリエチルアミン)であり、流量は0.7 ml/分であり、系の温度は35℃であり、分析時間は90分である。商品名Styragel HMW7、Styragel HMW6EおよびStyragel HT6E (2本)を有する4本Watersカラムセットを直列で使用する。
ポリマーサンプル溶液の注入容量は100μlである。検出器はWaters 2410示差屈折計であり、クロマトグラフデータの処理ソフトウェアはWaters Empower systemである。
算出した平均分子量は、以下のミクロ構造を有するポリブタジエンについて描いた較正曲線と対比する:11質量%の1,2‐タイプ単位および48質量%のトランス‐1,4‐タイプ単位。
【0067】
付記2
調製したポリマーのミクロ構造の近赤外分光法(NIR)による測定
“近赤外”(NIR)として知られているアッセイ方法を使用する。この方法は“対照”エラストマーを使用する間接法であり、この“対照”エラストマーのミクロ構造を、13C NMR法によって測定する。エラストマー中のモノマーの分布とこのエラストマーのNIRスペクトルの形状との間に存在する定量的関係(ランベルト・ベールの法則(Beer‐Lambert law))を使用する。この方法を、下記の2つの段階で実施する:
【0068】
1) 較正
・“対照”エラストマーそれぞれのスペクトルを獲得する。
・ミクロ構造を所定のスペクトルと関連付ける数学的モデルを確立する;これには、スペクトルデータの要因分析に基づくPLS (部分最小二乗)回帰法を使用する。下記の2つの文献は、この“多変量”データ解析法の理論と実践に深く対処している:
(1)P. GELADIおよびB. R. KOWALSKI
“Partial Least Squares regression: a tutorial”,
Analytica Chimica Acta, vol. 185, 1‐17 (1986)。
(2)M. TENENHAUS
“La regression PLS‐Theorie et pratique” [PLS regression‐Theory and
Practice]
Paris, Editions Technip (1998)。
【0069】
2) 測定:
・サンプルのスペクトルを記録する。
・ミクロ構造を算出する。
【0070】
付記3
調製したポリマーのNMRによる特性決定。鎖末端に存在する官能基の同定と定量
各ポリマーを、BBI 1H‐X 5mmプローブを備えたBruker AV500分光計を使用して、1Hおよび13C NMRによって分析する。分析に使用する溶媒は、CS2とC6D12の混合物である。較正は、CS2のプロトン化不純物から出発して、7.12ppmの化学シフトでもって実施する。
【0071】
1Hおよび2D NMRスペクトルは、調製したポリブタジエンの鎖末端におけるジメチルアミノベンジル基の存在を裏付ける。各タイプのプロトンの化学シフトが起因しており、これらのシフトに関する情報を下記の図に示している:
【化7】

【0072】
官能性鎖数の定量は、1個のプロトンについて集積(integrate)する6.80ppmにおける芳香族プロトンのシグナルから或いは8個のプロトンについて集積する2.7ppmと2.3ppm間の広いピーク(芳香環のアルファ位置における‐N(CH3)2基とCH2基)から実施する。これらの値を、ポリブタジエンのシス‐1,4‐単位、トランス‐1,4‐単位および1,2‐単位の特徴的シグナルの集積と関連付ける。上記2つの算出方法が、統計的に互いに同一である値をもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分をベースとする重合用の触媒系:
・少なくとも1種の希土類金属塩:および、
・下記の式(I)に相応し、周期表の第II族または第XIII族に属する金属をベースとする少なくとも1種の有機金属化合物:
【化1】

式 I

(式中、
Mは、周期表の第II族または第XIII族に属する金属であり;
R1、R2、R3、R4は、互いに同一または異なるものであって、水素原子または線状もしくは枝分れのアルキル置換基または置換もしくは非置換のアリール置換基であり、必要に応じて一緒に結合して5個または6個の原子からなる少なくとも1個の環または少なくとも1個の芳香環を形成し;
Aは、C、HまたはSi原子をベースとするアルキル基であり;
Xは、式(I)における(CH2)mおよび式(II)におけるC(R1)(R2)にヘテロ原子によって結合した化学官能基であり;
Lは、ルイス塩基であり;
xは、0、1、2、3または4に等しい整数であり;
nおよびmは、互いに独立して、各々、nとmが共に0に等しくないことを条件として、0以上の整数であり;
zは、Mが第II族に属する場合は2に等しく、Mが第XIII族に属する場合は3に等しく;
yは、1〜zの範囲のゼロでない整数である)。
【請求項2】
式(I)において、Xが、‐ORおよび‐NRR'から選ばれる基を示し;R、R'が、互いに同一または異なるものである線状もしくは枝分れのアルキルまたは置換もしくは非置換のアリール置換基を示す、請求項1記載の触媒系。
【請求項3】
式(I)において、yが、2または3に等しい、請求項1または2に記載の触媒系。
【請求項4】
前記有機金属化合物が、Mがマグネシウムを示す式(I)の化合物から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項記載の触媒系。
【請求項5】
前記有機金属化合物が、Mがアルミニウムを示す式(I)の化合物から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項記載の触媒系。
【請求項6】
式(I)において、Lが、ピリジンまたはTHFを示す、請求項1〜5のいずれか1項記載の触媒系。
【請求項7】
前記希土類金属塩が、式Ln(A')3(B)nに相応する、請求項1〜6のいずれか1項記載の触媒系:
(式中、
・Lnは、ランタニド類またはイットリウムまたはスカンジウムから選ばれ;
・A'は、ハライド、カルボキシレート、オルガノホスフェートまたはアルコラート、アミド、アルキルまたはホウ化水素から選ばれ;
・Bは、希土類金属に錯化した溶媒分子であり;そして、
・nは0と4の間の整数である)。
【請求項8】
前記触媒系が、トリアルキルアルミニウムおよびジアルキルアルミニウムヒドリドおよびアルキルアルミニウムハライドのようなアルキルアルミニウムから選ばれる少なくとも1種の薬剤を含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の触媒系。
【請求項9】
前記触媒系が、予備調製共役ジエンを含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の触媒系。
【請求項10】
(式(I)の有機金属化合物(I)/希土類金属)のモル比が、1.5〜20の範囲にある値を有する、請求項1〜9のいずれか1項記載の触媒系。
【請求項11】
(アルキルアルミニウム/希土類金属)のモル比が、2〜3の範囲にある値を有する、請求項8〜10のいずれか1項記載の触媒系。
【請求項12】
(予備調製共役ジエン/希土類金属)のモル比が、10〜70の範囲である値を有する、請求項9〜11のいずれか1項記載の触媒系。
【請求項13】
前記触媒系を、不活性炭化水素系溶媒中で前記希土類金属塩および式(I)の有機金属化合物、さらにまた、必要に応じての上記アルキルアルミニウム剤を直接予備混合することによって得る、請求項1〜12のいずれか1項記載の触媒系の製造方法。
【請求項14】
前記触媒系を、不活性炭化水素系溶媒中での前記希土類金属塩および式(I)の有機金属化合物、さらにまた、必要に応じての前記アルキルアルミニウム剤の現場反応によって得る、請求項1〜12のいずれか1項記載の触媒系の製造方法。
【請求項15】
前記触媒系を、不活性炭化水素系溶媒中で前記希土類金属塩および式(I)の有機金属化合物、さらにまた、必要に応じての前記アルキルアルミニウム剤を予備調製共役ジエンの存在下に予備混合することによって得る、請求項9〜12のいずれか1項記載の触媒系の製造方法。
【請求項16】
触媒系と重合すべき少なくとも1種の共役ジエンモノマーとの連続またはバッチ方式の反応を含み、前記触媒系が請求項1〜12において定義したとおりであることを特徴とする、鎖末端官能化ジエンエラストマーの製造方法。
【請求項17】
極性官能基を少なくとも1つの鎖末端に含み、下記の式(II)によって示される、官能化ジエンエラストマー:
【化2】

式 II

(式中、
・Pは、ジエンエラストマーを示し;
・R1、R2、R3、R4、R、n、mおよびXは、請求項1において定義したとおりである)。
【請求項18】
前記官能化ジエンエラストマーが、75〜100%の官能化鎖を有する鎖末端官能化エラストマーである、請求項17記載の官能化ジエンエラストマー。
【請求項19】
前記官能化ジエンエラストマーが、1〜2.5の範囲にある値を有する多分散性指数を有する鎖末端官能化ポリブタジエンである、請求項17または18に記載の官能化ジエンエラストマー。
【請求項20】
請求項17〜19において定義したとおりである極性官能基によって鎖末端官能化されている少なくとも1種のジエンエラストマーと、補強用充填剤とを含むゴム組成物。
【請求項21】
前記補強用充填剤が、カーボンブラックである、請求項20記載のゴム組成物。

【公表番号】特表2012−528906(P2012−528906A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513505(P2012−513505)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003306
【国際公開番号】WO2010/139449
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【出願人】(506316557)センター ナショナル ド ラ ルシェルシュ サイエンティフィーク (14)
【出願人】(511293995)
【Fターム(参考)】