説明

共役系化合物、並びにこれを用いた有機薄膜及び有機薄膜素子

【課題】電子輸送性の優れた有機n型半導体として利用可能な新規共役系化合物を提供する。
【解決手段】式(I)及び/又は式(II)で表される基を有する共役系化合物。




Arは3価の芳香族炭化水素基又は3価の複素環基を示し、A、R1、R2、A’は水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示す。Ar’は炭素数6以上の2価の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の2価の複素環基を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役系化合物、並びにこれを用いた有機薄膜及び有機薄膜素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機トランジスタ、有機太陽電池、光センサ等の有機薄膜素子の材料として、有機n型半導体である共役系化合物が種々開発されている。その具体例としては、オリゴチオフェンの末端にフルオロアルキル基を導入した化合物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2003/010778号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した化合物は、電子輸送性が十分な有機n型半導体として利用可能なものではない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、電子輸送性の優れた有機n型半導体として利用可能な新規共役系化合物を提供することにある。本発明の目的はまた、この新規共役系化合物を含む有機薄膜、及びこの有機薄膜を備える有機薄膜素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、下記一般式(I)で表される基及び/又は下記一般式(II)で表される基を有する共役系化合物を提供する。
【0007】
【化1】

【0008】
【化2】

【0009】
式中、Arは置換基を有していてもよい3価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい3価の複素環基を示す。Aは水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、複数存在するAはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1個のAは電子吸引性の基である。Ar’は置換基を有していてもよい炭素数6以上の2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4以上の2価の複素環基を示し、R及びRは、同一又は異なり、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示す。A’は水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、複数存在するA’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1個のA’は電子吸引性の基である。
【0010】
このような骨格を備えた共役系化合物は、分子同士のパッキング性に優れており、またフッ素原子及び少なくとも一つの電子吸引性基を組み合わせて含む構造(−C(=CA’’)−C(F)< (ここでA’’は上記A又はA’を示す)で表される構造)が導入されていることにより、十分に低いLUMOを示すことができる。そのため、上記共役系化合物は、電子輸送性に優れたn型半導体として十分に好適なものとなる。また、このような化合物は、化学的に安定で、溶剤への溶解性にも優れているため、薄膜化が容易であり、この共役系化合物を用いて有機薄膜を形成させることで、性能の優れた有機薄膜素子が製造可能となる。
【0011】
上記共役系化合物としては、LUMOを一層低下させることができる観点から、下記一般式(III)で表される基を有する共役系化合物が好ましく、2以上有する共役系化合物がより好ましい。
【0012】
【化3】

【0013】
式中、Aは水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、複数存在するAはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1個のAは電子吸引性の基である。Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基を示す。Zは、下記式(i)〜(ix)で表される基のいずれかを示し、これらの基におけるR、R、R及びRは、同一又は異なり、水素原子又は1価の基を示し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。
【0014】
【化4】

【0015】
このような共役系化合物としては、下記一般式(IV)で表される共役系化合物が好適である。このような共役系化合物は、合成が容易であり、LUMOが十分に低く、電子輸送性に優れる。そのため、有機n型半導体として好適に使用できる。
【0016】
【化5】

【0017】
式中、X及びXは、同一又は異なり、上記式(III)で表される基であり、XとXとは同一であっても異なっていてもよい。Ar、Ar及びArは、同一又は異なり、置換基を有していてもよい炭素数6以上の2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4以上の2価の複素環基を示し、m、n及びpは、同一又は異なり、0〜6の整数を示す。ただし、m+n+pは1以上の整数である。
【0018】
上記共役系化合物は、上記Ar、Ar及びArのうちの少なくとも1個が、置換基を有してもよいチエニレン基であることが好ましい。また、上記共役系化合物において、上記Zは、上記式(ii)で表される基であることが好ましい。さらに、上記Aは、シアノ基であることが好ましい。これらにより、一層優れた電子輸送性が得られるようになる。
【0019】
また、共役系化合物としては、LUMOを一層低下させることができるので、下記一般式(V)で表される基を有する共役系化合物が好ましく、一般式(V)で表される基を2以上有する共役系化合物がより好ましい。
【0020】
【化6】

【0021】
式中、R及びRは、同一又は異なり、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示す。A’は水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、複数存在するA’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1個のA’は電子吸引性の基である。R10は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基を示す。Zは、下記式(xi)〜(xix)で表される基のいずれかを示し、これらの基におけるR13、R14、R15及びR16は、同一又は異なり、水素原子又は1価の基を示し、R13とR14とは互いに結合して環を形成していてもよい。
【0022】
【化7】

【0023】
このような共役系化合物としては、下記一般式(VI)で表される共役系化合物が好適である。このような共役系化合物は、合成が容易であり、LUMOが十分に低く、電子輸送性に優れる。そのため、有機n型半導体として好適に使用できる。
【0024】
【化8】

【0025】
式中、X及びXは、同一又は異なり、上記式(V)で表される基である。Ar、Ar及びArは、同一又は異なり、置換基を有していてもよい炭素数6以上の2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4以上の2価の複素環基を示し、q、r及びsは、同一又は異なり、0〜6の整数を示す。ただし、q+r+sは1以上の整数である。
【0026】
上記共役系化合物は、上記Ar、Ar及びArのうちの少なくとも1個が、置換基を有してもよいチエニレン基であることが好ましい。また、上記共役系化合物において、上記Zは、上記式(xi)又は(xii)で表される基であることが好ましい。さらに、上記A’は、シアノ基であることが好ましい。これらにより、一層優れた電子輸送性が得られるようになる。
【0027】
本発明は、上述の共役系化合物を含む有機薄膜を提供する。本発明は、更に、上記有機薄膜を備える有機薄膜素子、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池及び光センサを提供する。
【0028】
このような有機薄膜、有機薄膜素子、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池及び光センサは、上述のように十分に低いLUMOを有し、優れた電荷輸送性を示す本発明の共役系化合物を用いて形成されているため、優れた性能を得ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、電子輸送性の優れた有機n型半導体として利用可能な新規共役系化合物を提供することができる。また、この新規共役系化合物を含む有機薄膜、及びこの有機薄膜を備える有機薄膜素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図2】第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図3】第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図4】第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図5】第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図6】第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図7】第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図8】実施形態に係る太陽電池の模式断面図である。
【図9】第1実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図10】第2実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図11】第3実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0032】
本発明の共役系化合物は、下記一般式(I)で表される基及び/又は(II)で表される基を有するものである。ここで、本発明における共役系化合物とは、化合物の主骨格において、単結合と、不飽和結合、孤立電子対、ラジカル又は非結合性軌道とが交互に連なる構造を含み、π軌道又は非結合性軌道の相互作用による電子の非局在化が主骨格の一部又は全域に起こっているものをいう。共役系化合物の中でもπ軌道の相互作用によるπ共役系化合物が好ましい。
【0033】
【化9】

【0034】
【化10】

【0035】
ここで、Arは置換基を有していてもよい3価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい3価の複素環基を示し、Aは水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示す。複数存在するAはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1個のAは電子吸引性の基を示す。Ar’は置換基を有していてもよい炭素数6以上の2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4以上の2価の複素環基を示し、R及びRは、同一又は異なり、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、A’は水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示す。複数存在するA’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1個のA’は電子吸引性の基を示す。
【0036】
共役系化合物としては、上記一般式(I)で表される基を有する化合物、上記一般式(II)で表される基を有する化合物、上記一般式(I)で表される基及び上記一般式(II)で表される基を有する化合物が挙げられる。これらの共役系化合物において、分子中に一般式(I)や(II)で表される基を複数有している場合は、同じ式で表される基同士は、同一でも異なっていてもよいが、合成の容易さの観点からは同一であることがより好ましい。
【0037】
上記一般式(1)において、Aは水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、複数存在するAはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1個のAは電子吸引性の基である。LUMOをより低くできるので、少なくとも2個のAが電子吸引性の基であることが好ましく、すべてのAが電子吸引性の基であることがより好ましい。電子吸引性の基としては、シアノ基、ニトロ基、アルデヒド基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、水酸基及びハロゲン原子が例示され、シアノ基、ニトロ基及びハロゲン原子が好ましく、シアノ基がより好ましい。上記一般式(I)で表される基としては、すべてのAがシアノ基であるものが特に好ましい。
【0038】
Aにおける1価の基としては、直鎖状又は分岐状の低分子鎖からなる基、炭素数3〜60の1価の環状基(単環でも縮合環でも、炭素環でも複素環でも、飽和でも不飽和でもよく、置換基を有していてもよい)、飽和又は不飽和炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシスルホニル基(但し、そのアルコキシ基における水素原子はハロゲン原子で置換されてもよい。)、アルキルスルホニル基(但し、そのアルキル基における水素原子はハロゲン原子で置換されてもよい。)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルカノイル基及びアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0039】
飽和炭化水素基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が挙げられ、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が好ましい。アルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、3−メチルブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロドデシル基が挙げられる。アルキル基をその構造中に含む基(例えば、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基)についても同様である。
【0040】
不飽和炭化水素基としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、プロパルギル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基及び2−ブテニル基が挙げられる。
【0041】
アルカノイル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基及びイソバレリル基等が挙げられる。アルカノイル基をその構造中に含む基(例えば、アルカノイルオキシ基、アルカノイルアミノ基)についても同様である。また、炭素数1のアルカノイル基とはホルミル基を指すものとし、アルカノイル基をその構造中に含む基についても同様である。
【0042】
上記一般式(I)において、Arは3価の芳香族炭化水素基又は3価の複素環基(これらの基は置換基を有していてもよい)を示す。
【0043】
ここで、3価の芳香族炭化水素基とは、ベンゼン環又は縮合環から水素原子3個を除いた残りの原子団をいう。3価の芳香族炭化水素基の炭素数は、6〜60であることが好ましく、6〜20であることがより好ましい。縮合環としては、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、フルオレンが挙げられる。3価の芳香族炭化水素基としては、これらの中でもベンゼン環から水素原子3個を除いた残りの原子団が特に好ましい。なお、芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。ここで、3価の芳香族炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。置換基としては、ハロゲン原子、飽和又は不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0044】
また、3価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子3個を除いた残りの原子団をいう。3価の複素環基の炭素数は、4〜60であることが好ましく、4〜20であることがより好ましい。3価の複素環基としては、チオフェン環、チエノチオフェン環、フラン環、ピロール環及びピリジン環から水素原子3個を除いた残りの原子団が例示される。特にチオフェン環、チエノチオフェン環から水素原子3個を除いた残りの原子団は、特徴的な電気的性質を示し、従来にない新たな電気的特性の発現も期待できる。なお、3価の複素環基としては、3価の芳香族複素環基が好ましい。3価の複素環基は置換基を有していてもよく、3価の複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。置換基としては、ハロゲン原子、飽和又は不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0045】
ここで、複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素、ケイ素等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。
【0046】
一方、上記一般式(II)において、A’は水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、複数存在するA’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1個のA’は電子吸引性である。LUMOをより低くできるので、2個のA’がいずれも電子吸引性の基であることが好ましい。電子吸引性の基としては、上述したAにおける電子吸引性基と同様の基が例示され、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子が好ましく、シアノ基がより好ましい。上記一般式(II)で表される基としては、2個のA’がいずれもシアノ基であるものが特に好ましい。
【0047】
上記一般式(II)において、Ar’は置換基を有していてもよい炭素数6以上の2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4以上の2価の複素環基を示す。
【0048】
ここで、2価の芳香族炭化水素基とは、ベンゼン環又は縮合環から水素原子2個を除いた残りの原子団をいう。2価の芳香族炭化水素基の炭素数は、6〜60であることが好ましく、6〜20であることがより好ましい。縮合環としては、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、フルオレンが挙げられる。これらの中でもベンゼン環から水素原子2個を除いた残りの原子団が特に好ましい。なお、芳香族炭化水素基上に置換基を有していてもよい。ここで、2価の芳香族炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。なお、置換基としては、ハロゲン原子、飽和又は不飽和の炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0049】
また、2価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいう。2価の複素環基の炭素数は、4〜60であることが好ましく、4〜20であることがより好ましい。2価の複素環基としては、チオフェン環、チエノチオフェン環、フラン環、ピロール環及びピリジン環から水素原子2個を除いた残りの原子団が例示される。特にチオフェン環、チエノチオフェン環から水素原子2個を除いた残りの原子団は、特徴的な電気的性質を示し、従来にない新たな電気的特性の発現も期待できる。なお、2価の複素環基としては、2価の芳香族複素環基が好ましい。2価の複素環基は置換基を有していてもよく、2価の複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。置換基としては、ハロゲン原子、飽和又は不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0050】
上記一般式(II)において、A’は水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R及びRは、同一又は異なり、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示す。これらにおける1価の基としては、上記一般式(I)のAにおいて例示した1価の基と同様のものが例示できる。
【0051】
特に、R及びRとしては、LUMOをより低くできるので、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基が好ましく、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のフルオロアルキル基がより好ましい。また、R及びRの少なくとも一方がフッ素原子であることが好ましい。
【0052】
上記一般式(I)で表される基としては、共役系化合物のLUMOを一層低くできるので、下記一般式(III)で表される基が好ましい。
【0053】
【化11】

【0054】
上記一般式(III)中、Aは上記一般式(I)におけるAと同義であり、複数存在するAはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1個のAは電子吸引性の基である。Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基を示し、Zは、下記式(i)〜(ix)で表される基のいずれかを示し、R、R、R及びRは、同一又は異なり、水素原子又は1価の基を示し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。Zとしては、下記式(ii)で表される基が好ましい。
【0055】
【化12】

【0056】
一方、上記一般式(II)で表される基としては、共役系化合物のLUMOを一層低くできるので、下記一般式(V)で表される基が好ましい。
【0057】
【化13】

【0058】
上記一般式(V)中、A’、R及びRは上記一般式(II)におけるA’、R及びRと同義であり、複数存在するA’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1個のA’は電子吸引性の基である。R10は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基を示し、Zは、下記式(xi)〜(xix)で表される基のいずれかを示し、R13、R14、R15及びR16は、同一又は異なり、水素原子又は1価の基を示し、R13とR14とは互いに結合して環を形成していてもよい。Zとしては、下記式(xi)又は(xii)で表される基が好ましく、下記式(xii)で表される基がより好ましい。
【0059】
【化14】

【0060】
及びR10におけるアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が挙げられ、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が好ましい。上記アルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、3−メチルブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロドデシル基が挙げられる。アルコキシ基としては、上記アルキル基をその構造中に含む炭素数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基としては、上記アルキル基をその構造中に含む炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基が挙げられ、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を含むものが好ましい。R10におけるフルオロアルキル基としては、上記アルキル基の水素原子を一部又は全部をフッ素原子に置き換えた基が挙げられ、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のフルオロアルキル基が好ましい。フルオロアルコキシ基としては、上記フルオロアルキル基をその構造中に含む炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基が挙げられ、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のフルオロアルキル基を含むものが好ましい。
【0061】
また、R、R、R、R、R13、R14、R15及びR16における1価の基としては、直鎖状又は分岐状の低分子鎖、炭素数3〜60の1価の環状基(単環でも縮合環でも、炭素環でも複素環でも、飽和でも不飽和でもよく、置換基を有していてもよい)、飽和又は不飽和の炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ハロゲン原子を置換基として有するアルキル基、アルコキシスルホニル基(但し、そのアルコキシ基における水素原子はハロゲン原子で置換されてもよい。)、アルキルスルホニル基(但し、そのアルキル基における水素原子はハロゲン原子で置換されてもよい。)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルカノイル基及びアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0062】
アルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が挙げられ、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、3−メチルブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロドデシル基が挙げられる。アルキル基をその構造中に含む基(例えば、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基)についても同様である。
【0063】
不飽和炭化水素基としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、プロパルギル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基及び2−ブテニル基が挙げられる。
【0064】
アルカノイル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基及びイソバレリル基等が挙げられる。アルカノイル基をその構造中に含む基(例えば、アルカノイルオキシ基、アルカノイルアミノ基)についても同様である。また、炭素数1のアルカノイル基とはホルミル基を指すものとし、アルカノイル基をその構造中に含む基についても同様である。
【0065】
上記共役系化合物は、上記一般式(I)及び/又は上記一般式(II)で表される基を有するものであり、LUMOをより低くでき、これにより電子輸送性を高める観点から、上記一般式(I)で表される基を2以上有するもの、上記一般式(II)で表される基を2以上有するもの、上記一般式(I)で表される基と上記一般式(II)で表される基を有するもの、が好適である。
【0066】
特に、上記共役系化合物は、LUMOをより低くできる観点から、上記一般式(I)で表される基として上記一般式(III)で表される基を有するものが好ましく、上記一般式(III)で表される基を2以上有するものがより好ましい。また、上記一般式(II)で表される基で表される基として上記一般式(V)で表される基を有するものが好ましく、上記一般式(V)で表される基を2以上有するものがより好ましい。
【0067】
上記一般式(III)で表される基を2以上有する共役系化合物としては、有機n型半導体としての電子輸送性に一層優れるので、下記一般式(IV)で表される共役系化合物が好ましい。
【0068】
【化15】

【0069】
上記一般式(IV)中、X及びXは、同一又は異なり、上記式(III)で表される基である。Ar、Ar及びArは、同一又は異なり、置換基を有していてもよい炭素数6以上の2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4以上の2価の複素環基を示し、m、n及びpは、同一又は異なり、0〜6の整数を示す。ただし、m+n+pは1以上の整数である。
【0070】
また、上記一般式(V)で表される基を2以上有する共役系化合物としては、有機n型半導体としての電子輸送性に一層優れるので、下記一般式(VI)で表される共役系化合物が好ましい。
【0071】
【化16】

【0072】
上記一般式(VI)中、X及びXは、同一又は異なり、上記式(V)で表される基である。Ar、Ar及びArは、同一又は異なり、置換基を有していてもよい炭素数6以上の2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4以上の2価の複素環基を示し、q、r及びsは、同一又は異なり、0〜6の整数を示す。ただし、q+r+sは1以上の整数である。
【0073】
Ar、Ar、Ar、Ar、Ar及びArにおける炭素数6以上の2価の芳香族炭化水素基及び炭素数4以上の2価の複素環基としては、上記Ar’として例示した基と同様の基を挙げることができ、チエニレン基が好ましい。
【0074】
上記共役系化合物は、有機n型半導体としての電子輸送性が高いことが期待される。この効果を高めるためには、一般式(I)又は(II)で表される基以外のπ共役した構造の平面性を高め、π−πスタック構造をとりやすくすることが好ましい。そのような観点から、一般式(IV)におけるAr、Ar及びAr、並びに(VI)におけるAr、Ar及びArは、縮合環又はチオフェン環を含む構造であることが好ましい。チオフェン骨格を含む構造は、π−πスタック構造の面間隔が小さくすることができるため、特に好ましい。また、有機溶剤に対する溶解度の向上、π共役平面性の保持の観点から、Ar、Ar及びArのうち少なくとも1個が置換基を有していることが好ましく、Ar、Ar及びArのうち少なくとも1個が置換基を有していることが好ましい。
【0075】
上記式(IV)又は(VI)で表される化合物としては、下記一般式(1)〜(21)で表される化合物を挙げることができる。
【0076】
【化17】

【0077】
【化18】

【0078】
【化19】

【0079】
【化20】

【0080】
【化21】

【0081】
【化22】

【0082】
【化23】

【0083】
【化24】

【0084】
【化25】

【0085】
【化26】

【0086】
【化27】

【0087】
【化28】

【0088】
【化29】

【0089】
【化30】

【0090】
【化31】

【0091】
【化32】

【0092】
【化33】

【0093】
【化34】

【0094】
【化35】

【0095】
【化36】

【0096】
【化37】

【0097】
【化38】

【0098】
【化39】

【0099】
【化40】

【0100】
【化41】

【0101】
【化42】

【0102】
【化43】

【0103】
【化44】

【0104】
【化45】

【0105】
【化46】

【0106】
ここで、上記式(1)、(2)、(3)、(3’)、(4)、(5)、(6)、(6’)、(6’’)、(7)、(7’)、(7’’)、(7’’’)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、(17)、(18)、(19)、(20)、(20’)、(20’’)、(20’’’)、(21)中のRは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。また、R、R’及びR’’は、同一又は異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基を示す。なお、分子中に複数存在するR、R、R’及びR’’は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。中でも、R、R及びR’は、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、R’’は、フッ素原子又は炭素数1〜20のフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0107】
共役系化合物は、電気化学測定(サイクリックボルタンメトリー)法によって測定されるフェロセンを基準とした還元電位が−2.0V〜+0.5Vであるものが好ましく、−1.8V〜+0.2Vであることがより好ましい。還元電位が上述の数値範囲であることで、共役系化合物は電子注入に優れ、電子輸送性に優れるn型半導体として十分に好適なものとなる。還元電位は、例えば、以下に述べる方法によって測定することができる。
【0108】
還元電位の測定においては、支持電解質として、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを0.1mol/L程度含有する有機溶剤を準備し、これに測定対象材料を0.1〜2mM程度溶解させる。こうして得られた溶液から、乾燥窒素バブリング、減圧脱気、超音波照射などの手法により、酸素を除去する。その後、作用電極として白金電極やグラッシーカーボン電極を用い、対電極として白金電極を用い、掃引速度100mV/secにて電気的中性状態から電解還元する。そして、電解還元時に検出される最初のピーク値の電位を、フェロセン等の基準物質の酸化還元電位と比較することにより、測定対象材料の酸化(又は還元)電位を得る。こうして得られた酸化(又は還元)電位を、更にフェロセンを基準として換算した値を、還元電位とする。
【0109】
次に、上述した共役系化合物の好適な製造方法について説明する。共役系化合物は、例えば、下記一般式(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)及び(XIII)(以下、「(VII)〜(XIII)」と略記する場合がある)で表される化合物を原料として、これらを反応させることにより製造することができる。より具体的には、下記一般式(VII)〜(X)で表される化合物を、下記一般式(XI)〜(XIII)で表される化合物と反応させることにより、製造することが好ましい。この場合、上記一般式(VII)〜(X)で表される化合物におけるWが、上記一般式(XI)〜(XIII)で表される化合物におけるW及びWと反応して結合が生じ、これによって共役系化合物が生成する。
【0110】
【化47】

【0111】
【化48】

【0112】
【化49】

【0113】
【化50】

【0114】
【化51】

【0115】
式(VII)〜(XIII)中、A、A’、Ar、Ar’、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Z、Z、R、R10、R、R、m、n、p、q、r及びsは上記と同義である。ArXXは、Ar〜Arのいずれかを表す。W及びWは、同一又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基(−B(OH))、ホルミル基、トリアルキルスタニル基又はビニル基を示す。
【0116】
一般式(VII)〜(XIII)で表される化合物の合成上及び反応のし易さの観点から、W及びWは、同一又は異なり、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基又はトリアルキルスタニル基であることが好ましい。
【0117】
ホウ酸エステル残基としては、下記式で示される基が挙げられる。
【0118】
【化52】

【0119】
上述した原料を用いて共役系化合物を製造するための方法としては、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、Ni(0)触媒を用いる方法、FeCl等の酸化剤を用いる方法、アニオンの酸化反応を用いる方法、酢酸パラジウムと有機塩基を用いる方法、原料化合物等のα無置換体又はハロゲン体からリチオ体を調製して酸化カップリングする方法、電気化学的な酸化反応を用いる方法及び適当な脱離基を有する中間体化合物の分解による方法を挙げることができる。反応収率向上の観点からは、これらの方法を用いるときにマイクロウェーブを照射してもよい。
【0120】
これらのうち、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、Ni(0)触媒を用いる方法、アニオンの酸化反応を用いる方法、酢酸パラジウムと有機塩基を用いる方法が、構造制御がし易く、また、原料の入手し易さ及び反応操作の簡便さから好ましい。
【0121】
Suzukiカップリング反応の場合は、触媒として、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート類を用い、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウム等の無機塩基、トリエチルアミン等の有機塩基、フッ化セシウム等の無機塩をモノマーに対して当量以上、好ましくは1〜10当量加えて反応させる。また、無機塩を水溶液として、2相系で反応させてもよい。この反応に用いる溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランが例示される。反応温度は、使用する溶媒にもよるが50〜160℃が好ましい。溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。反応時間は1〜200時間である。なお、Suzukiカップリング反応については、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.),第95巻,2457頁(1995年)に記載された方法を適用できる。
【0122】
Ni(0)触媒を用いる反応の場合、Ni(0)触媒として、ゼロ価ニッケル錯体を使う方法と、ニッケル塩を還元剤の存在下で反応させ、系内でゼロ価ニッケルを生成させる方法とがある。ゼロ価ニッケル錯体としては、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルが例示される。中でも、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)が、汎用性に優れ、安価であるという観点で好ましい。
【0123】
また、上記反応には、中性配位子を添加することが、収率向上の観点から好ましい。ここで、中性配位子とは、アニオンやカチオンを有していない配位子であり、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、メチレンビスオキサゾリン、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の含窒素配位子;トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェノキシホスフィン等の第三ホスフィン配位子が例示される。この中でも、汎用性、安価の点で含窒素配位子が好ましく、2,2’−ビピリジルが高反応性、高収率の点で好ましい。特に、共役系化合物の収率向上の点から、Ni(0)触媒を用いる反応において、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)を含む系に、中性配位子として2,2’−ビピリジルを加えることが好ましい。一方、系内でゼロ価ニッケルを生成させる方法においては、ニッケル塩として塩化ニッケル、酢酸ニッケルを用いることができる。還元剤としては、亜鉛、水素化ナトリウム、ヒドラジン及びその誘導体、リチウムアルミニウムハイドライドが挙げられる。また、添加物として、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウム等を併用してもよい。
【0124】
Stille反応の場合は、触媒として、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート類を用い、有機スズ化合物をモノマーとして反応させる。この反応に用いる溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランを挙げることができる。反応温度は、使用する溶媒によるが、50〜160℃が好ましい。溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。反応時間は1〜200時間であると好ましい。
【0125】
アニオンの酸化反応を用いる方法の場合は、原料化合物等のハロゲン置換体又は原料化合物等そのものをモノマーとして、n−ブチルリチウムと反応させてリチオ体を調製し、臭化銅(II)、塩化銅(II)、アセチルアセトナト鉄(III)等の酸化剤で処理する。この反応に用いる溶媒としては、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンが例示される。反応温度は、使用する溶媒にもよるが、50〜160℃が好ましい。溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。反応時間は5分〜200時間である。
【0126】
酢酸パラジウムと有機塩基を用いる方法の場合は、ハロゲン置換体をモノマーとして酢酸パラジウム(II)及びジイソプロピルアミン、トリエチルアミンなどの有機塩基を加えて反応させる。この反応に用いる溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランが例示される。反応温度は、使用する溶媒にもよるが、50〜160℃が好ましい。溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。反応時間は5分〜200時間である。
【0127】
また、上記共役系化合物は、例えば、下記一般式(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVII)、(XVIII)、(XIX)、(XX)、(XXI)(以下、「(XIV)〜(XXI)」と略記する場合がある)で表される化合物と、上記一般式(XI)〜(XIII)で表される化合物とを原料として反応させることにより合成中間体を得た後、当該合成中間体をさらに反応させることにより製造することもできる。
【0128】
【化53】

【0129】
【化54】

【0130】
【化55】

【0131】
【化56】

【0132】
【化57】

【0133】
【化58】

【0134】
【化59】

【0135】
【化60】

【0136】
上記一般式(XIV)〜(XXI)中、W、Ar、Ar’、Ar、Ar、Ar、Z、Z、R、R10、R、R、m、n及びpは上記と同義である。また、上記一般式(XIV)〜(XXI)で表される化合物と上記一般式(XI)〜(XIII)で表される化合物との反応は、上記一般式(VII)〜(X)で表される化合物と上記一般式(XI)〜(XIII)で表される化合物との反応と同様にして行うことができる。
【0137】
このような合成中間体を得る方法では、例えば、上記一般式(XX)で表される化合物と、上記一般式(XII)で表される化合物とを反応させることにより、下記一般式(XXII)で表される化合物を中間体として製造する。この反応後、中間体におけるアルキレンジオキシ基をカルボキシル基に変換し、さらに当該カルボキシル基を公知の方法で「=CA(Aは上記と同義)」で表される基に変換すれば、上記一般式(IV)で表される共役系化合物が製造できる。
【0138】
【化61】

【0139】
上記一般式(XXII)中、Z、R、Ar、Ar、Ar、m、n及びpは上記と同義である。
【0140】
なお、共役系化合物を有機薄膜素子用の材料として用いる場合、その純度が素子特性に影響を与えるため、昇華精製、再結晶等の方法で純化処理をすることが好ましい。
【0141】
次に、本発明の有機薄膜について説明する。本実施形態の有機薄膜は、上記共役系化合物を含むものである。
【0142】
有機薄膜は、上記共役系化合物の1種類を単独で含むものであってもよく、また上記共役系化合物の2種類以上を含むものであってもよい。また、有機薄膜の電子輸送性又はホール輸送性を高めるため、上記共役系化合物以外に電子輸送性又はホール輸送性を有した低分子化合物又は高分子化合物(電子輸送性材料、ホール輸送性材料)を混合して用いることもできる。
【0143】
ホール輸送性材料としては、公知のものが使用でき、例えば、ピラゾリン、アリールアミン、スチルベン、トリアリールジアミン、オリゴチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアリーレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0144】
電子輸送性材料としては、公知のものが使用でき、例えば、オキサジアゾール、アントラキノジメタン、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、テトラシアノアンスラキノジメタン、フルオレノン、ジフェニルジシアノエチレン、ジフェノキノン、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体、ポリキノリン、ポリキノキサリン、ポリフルオレン、C60等のフラーレン類、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0145】
また、有機薄膜は、有機薄膜中で吸収した光により電荷を発生させるために、電荷発生材料を含んでいてもよい。電荷発生材料としては、公知のものが使用でき、例えば、アゾ化合物、ジアゾ化合物、無金属フタロシアニン化合物、金属フタロシアニン化合物、ペリレン化合物、多環キノン系化合物、スクアリリウム化合物、アズレニウム化合物、チアピリリウム化合物及びC60等のフラーレン類が挙げられる。
【0146】
さらに、有機薄膜は、種々の機能を発現させるために必要な材料を含んでいてもよい。このような材料としては、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するためのため増感剤、安定性を増すための安定化剤、UV光を吸収するためのUV吸収剤が挙げられる。
【0147】
また、有機薄膜は、機械的特性を高めるため、上記化合物以外の高分子材料を高分子バインダーとして含んでいてもよい。高分子バインダーとしては、電子輸送性又はホール輸送性を極度に阻害せず、可視光に対する吸収が強くないものが好ましい。
【0148】
このような高分子バインダーとして、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0149】
有機薄膜の製造には、上記共役系化合物、必要に応じて混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、高分子バインダー及び溶媒を含む溶液からの成膜による方法を用いることができる。また、共役系化合物が昇華性を有する場合は、真空蒸着法により薄膜に形成することもできる。
【0150】
溶媒は、共役系化合物及び混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、高分子バインダーを溶解させるものであればよい。
【0151】
上記溶媒として、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒を用いることができる。共役系化合物は、化合物の構造や分子量にもよるが、これらの溶媒に通常0.1質量%以上溶解させることができる。
【0152】
成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法及びキャピラリーコート法等の塗布法を用いることができる。中でも、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法及びキャピラリーコート法が好ましい。
【0153】
有機薄膜の膜厚は、1nm〜100μmであることが好ましく、2nm〜1000nmであることがより好ましく、5nm〜500nmであることがさらに好ましく、20nm〜200nmであることが特に好ましい。
【0154】
有機薄膜を製造する工程には、共役系化合物を配向させる工程が含まれていてもよい。この工程により共役系化合物を配向させた有機薄膜は、主鎖分子又は側鎖分子が一方向に並ぶので、電子移動度又はホール移動度が向上する。
【0155】
共役系化合物を配向させる方法としては、液晶の配向手法として知られている方法を用いることができる。中でもラビング法、光配向法、シェアリング法(ずり応力印加法)や引き上げ塗布法が配向手法として簡便かつ有用で利用しやすく、ラビング法、シェアリング法が好ましい。
【0156】
有機薄膜は、電子輸送性又はホール輸送性を有することから、電極から注入された電子又はホール、あるいは光吸収により発生した電荷を輸送制御することにより、有機薄膜トランジスタ、有機光電変換素子(有機太陽電池、光センサ等)等の有機薄膜素子に用いることができる。本発明の有機薄膜をこれらの有機薄膜素子に用いる場合は、配向処理により配向させて用いることがより電子輸送性又はホール輸送性が向上するため好ましい。
【0157】
次に、上述した有機薄膜の有機薄膜トランジスタへの応用について説明する。有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり上述した共役系化合物を含む有機半導体層(有機薄膜として備えることが好ましく、以下同様である。)、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を備えた構造であればよく、電界効果型、静電誘導型が例示される。
【0158】
電界効果型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり共役系化合物を含む有機半導体層、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、有機半導体層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。特に、ソース電極及びドレイン電極が、共役系化合物を含む有機半導体層に接して設けられており、さらに有機半導体層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。
【0159】
静電誘導型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり共役系化合物を含有する有機半導体層、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、該ゲート電極が有機半導体層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層中に設けられたゲート電極が、共役系化合物を含有する有機半導体層に接して設けられていることが好ましい。ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、かつゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし形電極が挙げられる。
【0160】
図1は、第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図1に示す有機薄膜トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0161】
図2は、第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図2に示す有機薄膜トランジスタ110は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された有機半導体層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って有機半導体層2上に形成されたドレイン電極6と、有機半導体層2及びドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0162】
図3は、第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図3に示す有機薄膜トランジスタ120は、基板1と、基板1上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うようにして有機半導体層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下部に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下部に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0163】
図4は、第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図4に示す有機薄膜トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うように絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、を備えるものである。
【0164】
図5は、第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図5に示す有機薄膜トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を一部覆うようにして絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0165】
図6は、第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図6に示す有機薄膜トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された有機半導体層2と、有機半導体層2の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、有機半導体層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0166】
図7は、第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(静電誘導型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図7に示す有機薄膜トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された有機半導体層層2と、有機半導体層層2上に所定の間隔を持って複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして有機半導体層2上に形成された有機半導体層2a(有機半導体層2aを構成する材料は、有機半導体層2と同一でも異なっていてもよい)と、有機半導体層2a上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0167】
第1〜第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタにおいては、有機半導体層2及び/又は有機半導体層2aは、上述した好適な共役系化合物を含有しており、ソース電極5とドレイン電極6の間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより有機半導体層2及び/又は有機半導体層2aにおける電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0168】
このような電界効果型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば、特開平5−110069号公報記載の方法により製造することができる。また、静電誘導型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば、特開2004−006476号公報記載の方法により製造することができる。
【0169】
基板1の材質としては有機薄膜トランジスタとしての特性を阻害しなければよい。基板1としては、ガラス基板、フレキシブルなフィルム基板及びプラスチック基板を用いることができる。
【0170】
有機半導体層2を形成する際には、有機溶媒に可溶性の共役系化合物を用いることが製造上有利であり好ましいが、上記で説明した共役系化合物は優れた溶解性を有していることから、上述した有機薄膜の製造方法により、有機半導体層2となる有機薄膜を良好に形成することができる。
【0171】
有機半導体層2に接した絶縁層3としては、電気の絶縁性が高い材料で有ればよく、公知のものを用いることができる。例えば、SiOx、SiNx、Ta25、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス及びフォトレジストが挙げられる。低電圧化の観点から、絶縁層3は、誘電率の高い材料であることが好ましい。
【0172】
絶縁層3の上に有機半導体層2を形成する場合は、絶縁層3と有機半導体層2の界面特性を改善するため、シランカップリング剤等の表面処理剤で絶縁層3の表面を処理して表面改質した後に有機半導体層2を形成することも可能である。表面処理剤としては、長鎖アルキルクロロシラン類、長鎖アルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン化合物が挙げられる。表面処理剤で処理する前に、絶縁層表面をオゾンUV、O2プラズマで処理しておくことも可能である。
【0173】
また、有機薄膜トランジスタを作製後、素子を保護するために有機薄膜トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機薄膜トランジスタが、大気から遮断され、有機薄膜トランジスタの特性の低下を抑えることができる。また、保護膜により有機薄膜トランジスタの上に駆動する表示デバイスを形成する工程における外部からの影響を低減することができる。
【0174】
保護膜を形成する方法としては、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂又は無機のSiONx膜でカバーする方法が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため、有機薄膜トランジスタを作製後、保護膜を形成するまでの工程を大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中)行うことが好ましい。
【0175】
次に、本発明の有機薄膜の光電変換素子への応用について説明する。光電変換素子の代表的なものとしては、太陽電池や光センサがある。図8は、実施形態に係る太陽電池の模式断面図である。図8に示す太陽電池200は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された共役系化合物を含有する有機薄膜からなる有機半導体層2と、有機半導体層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0176】
太陽電池200においては、第1の電極7a及び第2の電極7bの一方に透明又は半透明の電極を用いる。電極材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属及びそれらの半透明膜、透明導電膜を用いることができる。高い開放電圧を得るためには、それぞれの電極として、仕事関数の差が大きくなるように選ばれることが好ましい。有機半導体層2中には光感度を高めるために電荷発生剤、増感剤等を添加して用いることができる。基材1としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0177】
図9は、第1実施形態に係る光センサの模式断面図である。図9に示す光センサ300は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された共役系化合物を含有する有機薄膜からなる有機半導体層2と、有機半導体層2上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0178】
図10は、第2実施形態に係る光センサの模式断面図である。図10に示す光センサ310は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された共役系化合物を含有する有機薄膜からなる有機半導体層2と、有機半導体層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0179】
図11は、第3実施形態に係る光センサの模式断面図である。図11に示す光センサ320は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された共役系化合物を含有する有機薄膜からなる有機半導体層2と、有機半導体層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0180】
第1〜第3実施形態に係る光センサにおいては、第1の電極7a及び第2の電極7bの一方に透明又は半透明の電極を用いる。電荷発生層8は光を吸収して電荷を発生する層である。電極材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属及びそれらの半透明膜、透明導電膜を用いることができる。有機半導体層2中には光感度を高めるためにキャリア発生剤、増感剤等を添加して用いることができる。また基材1としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【実施例】
【0181】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0182】
[測定条件]
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、JEOL(日本電子株式会社)製の商品名「JMN−270」(H測定時270MHz)、又は同社製の商品名「JMNLA−600」(19F測定時600MHz)を用いて測定した。ケミカルシフトは百万分率(ppm)で表している。内部標準0ppmには、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで示しており、略号s、d、t、q、m及びbrは、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)及び広幅線(broad)を表す。
【0183】
質量分析(MS)は、株式会社島津製作所製の商品名「GCMS−QP5050A」を用い、電子イオン化(EI)法、直接試料導入(DI)法により測定した。カラムクロマトグラフィー分離におけるシリカゲルは、関東化学株式会社製の商品名「シリカゲル 60N」(40〜50μm)を用いた。全ての化学物質は、試薬級であり、和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、ナカライテスク株式会社、シグマアルドリッチジャパン株式会社、又はダイキン化成品株式会社より購入した。
【0184】
サイクリックボルタンメトリー(CV)は、測定装置としてビー・エー・エス株式会社(BAS社)製の商品名「CV−50W」を使用し、作用電極としてBAS社製Pt電極、対電極としてPt線、参照電極としてAg線を用いて測定した。この測定時の掃引速度は100mV/sec、走査電位領域は−2.0V〜1.6Vであった。還元電位、酸化電位は、共役系化合物を1×10−3mol/L、支持電解質としてテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(TBAPF6)0.1mol/Lをモノフルオロベンゼン溶媒に完全に溶解させ測定した。
【0185】
マイクロウェーブ照射下での反応は、Biotage社製InitiatorTM Ver.2.5を用い、出力400W、2,45GHzで行った。
【0186】
(原料化合物の合成)
下記のスキーム1に従って、式(23a)で表される化合物Aを出発原料に用いて、式(23b)で表される化合物B及び式(24)で表される化合物Cを経て、共役系化合物の原料化合物である、式(25)で表される化合物D及び式(26b)で表される化合物Eを合成した。以下に詳細について説明する。
【0187】
【化62】

【0188】
<化合物Bの合成>
上記式(23a)で表される化合物Aを、文献(J.Chem.Soc.Perkin Trans 1.Organic and Bio−Organic Chemistry 1992,21,2985−2988)に記載の方法で合成した。次いで、300mLの三口フラスコに化合物A(1.00g,6.58mol)、フッ素化剤「SelectfluorTM(登録商標)」(5.60g,15.8mol)を入れ、THF(65mL)を加えて溶かした。そこへテトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド(TBAH)(10%メタノール溶液)(3.76g,14.5mol)を加え、0℃で12時間撹拌した。溶媒を減圧留去して、次に水を加え、水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1(容積比))で精製して、上記式(23b)で表される化合物B(0.934g,収率75%)を淡黄色固体として得た。
【0189】
得られた化合物Bの評価結果を以下に示す。
mp 156−158℃;TLC R=0.29(ヘキサン/酢酸エチル=2/1(容積比));H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.60(d,1H,J=4.8Hz),8.28(d,1H,J=4.8Hz);MS(EI)m/z=188(M
【0190】
<化合物Cの合成>
200mLの三口フラスコに化合物B(1.97g,10.48mmol)を入れ、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)(50mL)を加えて溶かし、さらに2−クロロエタノール(3.37g,41.91mmol)を加えた。そこへDMF(50mL)に溶かしたカリウムtert−ブトキシドを−60℃で滴下した。滴下終了後、室温で4時間撹拌し、水を加えて反応を停止した。次に、水層を酢酸エチルで抽出し、水で洗ってから有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ別し、減圧濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1(容積比))で精製して、上記式(24)で表される化合物C(1.58g、収率55%)を白色固体として得た。
【0191】
得られた化合物Cの評価結果を以下に示す。
mp 117−122℃;TLC R=0.34(ヘキサン/酢酸エチル=2/1(容積比));H−NMR(400MHz,CDCl)δ4.26(s,8H),7.02(d,1H,J=4.8Hz),7.51(d,1H,J=5.1Hz);MS(EI)m/z=276(M
【0192】
<化合物Dの合成>
50mLの三口フラスコに化合物C(500mg,1.81mmol)を入れ、THF(18mL)を加えて溶かした。そこへn−ブチルリチウム(1.58Mヘキサン溶液,2.29mL,3.62mmol)を−78℃で加えた。0.5時間撹拌した後、塩化トリブチルスズ(1.09mL,3.98mmol)を加え、徐々に室温まで昇温した。1時間後、水を加えて反応を停止した。水層を酢酸エチルで抽出し、水で洗ってから有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ別し、減圧濃縮した。得られた濃縮物をアルミナカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1(容積比))で精製し、上記式(25)で表される化合物D(1.02g、収率99%)を無色液体として得た。
【0193】
得られた化合物Dの評価結果を以下に示す。
TLC R=0.30(ヘキサン);H−NMR(400MHz,CDCl)δ0.89(t,9H,J=7.2Hz),1.08−1.13(m,6H),1.24−1.38(m,6H),1.49−1.60(m,6H),4.23−4.28(m,8H),7.03(s,1H);MS(EI)m/z=566(M
【0194】
<化合物Eの合成>
100mLの三口フラスコに化合物C(1.00g,3.62mmol)を入れ、THF(30mL)を加えて溶かした。そこへn−ブチルリチウム(1.58Mヘキサン溶液,2.75mL,4.34mmol)を−78℃で加えた。0.5時間撹拌した後、臭素(0.29mL,5.43mmol)を加え、徐々に室温まで昇温した。1時間後、水を加えて反応を停止した。水層を酢酸エチルで抽出し、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗い、水で洗ってから有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1(容積比))に通し、上記式(26a)で表される中間化合物の粗生成物を得た。
【0195】
得られた中間化合物を100mLナスフラスコに入れ、THF(30mL)に溶かした。そこに濃硫酸(30mL)を加え、室温で12時間撹拌した。反応混合物を氷に注ぎ、水で抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水の順で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ別し、減圧濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製して、上記式(26b)で表される化合物E(877mg、収率91% in 2steps)を茶色固体として得た。
【0196】
得られた化合物Eの評価結果を以下に示す。
TLC R=0.21(ヘキサン/酢酸エチル=3/1(容積比));H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.60(s,1H);MS(EI)m/z=266(M
【0197】
(共役系化合物の合成中間体の合成1)
共役系化合物の合成中間体である下記式(32)で表される化合物Hを、下記式(30)で表される化合物F及び下記式(31)で表される化合物Gを経て合成した。以下に詳細について説明する。
【0198】
<化合物Fの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、2,5−ジブロモチオフェン(48mg,0.199mmol)、5−トリブチル−3−ヘキシルチオフェン(200mg,0.437mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(11mg,0.0199mmol)を入れ、トルエン(2mL)を加えて溶かした。これを120℃で12時間撹拌した後、室温で放冷した。次に溶媒を減圧留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製して、下記式(30)で表される化合物F(48mg,収率58%)を黄色液体として得た。
【0199】
得られた化合物Fの評価結果を以下に示す。
TLC R=0.75(ヘキサン);HNMR(400MHz,CDCl)δ0.89(m,6H),1.22−1.44(m,12H),1.50−1.72(m,4H),2.58(t,4H,J=7.8Hz),6.80(s,2H),7.00(s,2H),7.03(s,2H);MS(EI)m/z=416(M).
【0200】
【化63】

【0201】
<化合物Gの合成>
加熱乾燥した30mLの二口フラスコに化合物F(100mg,0.240mmol)及びテトラメチルエチレンジアミン(58mg,0.504mmol)を入れ、ジエチルエーテル(3mL)を加えて溶かした。そこにn−ブチルリチウム(1.58Mヘキサン溶液,0.319mL,0.504mmol)を0℃でゆっくり加えた。2時間撹拌した後、塩化トリブチルスズ(0.221ml,0.814mmol)を−78℃でゆっくり加え、徐々に室温まで昇温した。水を加えて反応を停止させ、水層をジエチルエーテルを用いて抽出し、有機層を飽和硫酸銅水溶液で洗ってから硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去して、得られた粗生成物をアルミナカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製して、下記式(31)で表される化合物G(165mg,収率69%)を黄色液体として得た。
【0202】
得られた化合物Gの評価結果を以下に示す。
TLC R=1.0(ヘキサン);HNMR(400MHz,CDCl)δ0.84−0.96(m,24H),1.05−1.20(m,12H),1.25−1.45(m,24H),1.50−1.70(m,16H),2.51(t,4H,J=8.0Hz),7.02(s,2H),7.14(s,2H).
【0203】
【化64】

【0204】
<化合物Hの合成>
化合物F(50mg,0.050mmol)、化合物E(29mg,0.11mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(6mg,0.0050mmol)を試験管に入れ、トルエン(1mL)を加えて溶かした。これを120℃で12時間撹拌した後、室温で放冷した。溶媒を減圧留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl)に通してからGPC(CHCl)で精製し、下記式(32)で表される化合物H(16mg,収率49%)を赤色固体として得た。
【0205】
得られた化合物Hの評価結果を以下に示す。
TLC R=0.48(ヘキサン/酢酸エチル=3/1(容積比));HNMR(400MHz,CDCl)δ0.92(t,6H,J=7.1Hz),1.29−1.50(m,12H),1.69−1.75(m,4H),2.84(t,4H,J=7.8Hz),7.14(s,2H),7.23(s,2H),7.48(s,2H);MS(EI)m/z=788(M).
【0206】
【化65】

【0207】
(実施例1)
<共役系化合物Iの合成>
化合物H(6mg,0.0127mmol)、マロノニトリル(15mg,0.227 mmol)、酢酸アンモニウム(2mg,0.0254 mmol)の無水エタノール(1mL)溶液を20mLのナスフラスコにて80℃で30分間還流した。室温まで放冷した後、水を加え、濃塩酸で溶液を酸性化した。発生した固体を、吸引ろ過し、水で洗浄した。得られた固体をGPC(CHCl)で精製し、下記式(33)で表される共役系化合物Iを得た(3mg,収率25%)。
【0208】
得られた共役系化合物Iの評価結果を以下に示す。また、得られた共役系化合物Iについて、CV測定を行ったところ、−0.76Vに可逆な還元波が観測され、LUMOレベルが低くなり優れた電子輸送性を有することが確認できた。
TLC R=0.55(CHCl);H NMR(400MHz,CDCl)δ0.88−0.90(m,6H),1.29−1.50(m,12H),1.69−1.79(m,4H),2.85(t,4H,J=8.1Hz),7.20(s,2H),7.24−7,28(m,2H),7.78(s,2H);MS(MALDI TOF)m/z980(M).
【0209】
【化66】

【0210】
(共役系化合物の合成中間体の合成2)
下記式(34)で表される化合物Jを経て、共役系化合物の合成中間体である下記式(35)で表される化合物Kを合成した。以下に詳細について説明する。
【0211】
<化合物Jの合成>
20mLの三口フラスコに5,5’−ジブロモ−4,4’−ジヘキシル−2,2’−ビチオフェン(492mg,1.00mmol)を入れ、THF(10mL)に溶かした。そこにn−ブチルリチウム(1.58Mヘキサン溶液,1.39mL,2.20mmol)を−78℃で加えた。1時間撹拌した後、塩化トリブチルスズ(0.543ml,2.00mmol)を加え、徐々に室温まで昇温した。2時間後、水と微量の塩酸を加えて反応を停止した。水層をジエチルエーテルで抽出し、水で洗ってから有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去した後、得られた液体をGPC(CHCl)で精製することにより、下記式(34)で表される化合物J(630mg,収率69%)を黄色液体として得た。
【0212】
得られた化合物Jの評価結果を以下に示す。
TLC R=1.0(ヘキサン);H NMR(400MHz,CDCl) δ0.84−0.94(m,24H),1.02−1.20(m,12H),1.26−1.39(m,24H),1.46−1.61(m,16H),2.51(t,4H,8.0Hz),7.13(s,2H); MS(EI)m/z 912(M).
【0213】
【化67】

【0214】
<化合物Kの合成>
化合物J(50mg,0.055mmol)と化合物E(32mg,0.12mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(6mg,0.005mmol)を蓋付き試験管に入れ、トルエン(1mL)に溶かした。これを120℃で12時間撹拌した後、室温で放冷した。次に溶媒を減圧留去し、粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィー(CHCl)に通してからGPC(CHCl)で精製し、下記式(35)で表される化合物K(19mg,収率49%)を橙色固体として得た。化合物Kの酸化電位は0.48V、還元電位は−1.87Vであった。更に吸収スペクトルのピーク波長は472nmであった。
【0215】
得られた化合物Kの評価結果を以下に示す。
TLC R=0.43(ヘキサン/酢酸エチル=5/1(容積比));H NMR(400MHz,CDCl) δ0.88−0.96(m,6H),1.28−1.49(m,12H),1.65−1.76(m,4H),2.85(t,4H,J=7.9Hz),7.19(s,2H),7.51(s,2H); MS(EI)m/z 706(M).
【0216】
【化68】

【0217】
(実施例2)
<共役系化合物Lの合成>
化合物K(30mg,0.0425mmol)、マロノニトリル(17mg,0.255mmol)、酢酸アンモニウム(7mg,0.0850mmol)の無水エタノール(1mL)溶液を20mLのナスフラスコにて80℃で30分間還流した。室温まで放冷した後、水を加え、濃塩酸で溶液を酸性化した。発生した固体を、吸引ろ過し、水で洗浄した。得られた固体をGPC(CHCl)で精製し、下記式(36)で表される共役系化合物Lを得た(11mg,収率29%)。
【0218】
得られた共役系化合物Lの評価結果を以下に示す。また、得られた共役系化合物Lについて、CV測定を行ったところ、−0.67Vに可逆な還元波が観測され、LUMOレベルが低くなり優れた電子輸送性を有することが確認できた。
TLC R=0.69(CHCl
H NMR (400MHz,CDCl) δ0.80−0.96(m,6H),1.25−1.44(m,12H),1.65−1.80(m,4H),2.88(t,4H,J=8.0Hz),6.80(s,2H),7.21−7.28(m,2H),7.87(s,2H)
MS (MALDI TOF) m/z 898 (M).
【0219】
【化69】

【0220】
(実施例3)
<有機薄膜トランジスタの作製及びトランジスタ特性の評価>
熱酸化膜(シリコン酸化膜)付の低抵抗シリコンウエハー(ゲート電極/絶縁層となる)を、エタノール、蒸留水、アセトンの順でそれぞれに浸漬し、超音波洗浄を行う。その後、このシリコンウエハーをUV−オゾン洗浄して、表面が親水性である基板を得る。この基板を、ヘキサメチルジシラザン:クロロホルムに室温で浸漬し、クロロホルムで超音波洗浄し、表面処理された基板を得る。
【0221】
次いで、実施例1で合成した共役系化合物Iをクロロホルムに溶解した塗布溶液を調製する。この溶液を表面処理した基板上にスピンコート法により成膜し、有機薄膜を形成する。この有機薄膜上に、メタルマスクを用いて真空蒸着により金電極(ソース電極、ドレイン電極)を形成し、有機薄膜トランジスタを作製する。
【0222】
得られた有機薄膜トランジスタを、半導体パラメータアナライザー(keithley社製、商品名「4200−SCS」)を用いて、ゲート電圧Vg、ソース−ドレイン間電圧Vsdを変化させ、有機トランジスタ特性を測定すると良好なn型半導体のId−Vg特性が得られる。このことから、共役系化合物Iは優れた電子輸送性を有することが分かる。
【0223】
(実施例4)
<共役系化合物Mの合成>
100mLナスフラスコに化合物E(1.00g,3.74mmol)、マロノニトリル(989mg,14.97mmol)、酢酸アンモニウム(288mg,3.74mmol)、トルエン(40mL)、酢酸(4mL)を加え、4時間還流させた。水洗し酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒を留去し、真空乾燥した。シリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=3/1(容積比))で精製を行い、下記式(37)で表される黄色固体の共役系化合物M(531mg,収率39%)を得た。
【0224】
得られた共役系化合物Mの評価結果を以下に示す。
TLC R=0.4 (ヘキサン/酢酸エチル=3/1(容積比))
H NMR(400MHz,CDCl):δ 7.96(s,1H)
GC−MS (DI):m/z=362(M
【0225】
【化70】

【0226】
<共役系化合物Nの合成>
5mLの試験管に共役系化合物M(121mg,0.33mmol)、化合物J(100mg,0.15mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd(dba))(3mg,0.003mmol)、tri−o−tolylphosphine(4mg,0.013mmol)、クロロベンゼン(3mL)を入れマイクロウェーブ照射下(180℃,5分)にて反応させた。シリカゲルカラム(クロロホルム)、GPCで精製を行い、下記式(38)で表される濃青紫色固体の共役系化合物N(113mg,収率83%)を得た。
【0227】
得られた共役系化合物Nの評価結果を以下に示す。また、得られた共役系化合物Nについて、CV測定を行ったところ、−0.67Vに可逆な還元波が観測され、LUMOレベルが低くなり優れた電子輸送性を有することが確認できた。更に、得られた共役系化合物Nの吸収スペクトルのピーク波長は591nmであった。
H NMR(400MHz,CDCl):δ 0.90(t,3H,J=6.9Hz),1.34(m,8H),1.47(m,4H),1.75(m,4H),2.88(t,4H,J=7.8Hz),7.26(s,2H),7.86(s,2H)
MALDI TOFMS:m/z=898
【0228】
【化71】

【0229】
(共役系化合物の合成中間体の合成3)
<化合物Pの合成>
100mL2口フラスコに、Macromolecules(2003),36(8),2705−2711を参考に合成した下記式(39)で表される化合物O(1.90g,5.49mmol)を入れ、該フラスコ内を窒素置換し、THF(55mL)加えた。−78℃に冷却した後、テトラメチルエチレンジアミン(2mL,13.72mmol)、n−BuLi(6.4mL,13.72mmol)を加え反応させた。1時間後、−78℃で塩化トリブチルスズ(3.7mL,13.37mmol)を加え室温まで昇温させた。1時間後、水を加えヘキサンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒を留去し、真空乾燥した。アルミナカラム(hexane)、GPCで精製を行い、下記式(40)で表される黄色液体の化合物P(2.70g,収率53%)を得た。得られた化合物Pの分析結果及び化学式は以下の通りである。
H NMR(400MHz,CDCl):δ 0.80(m),0.90(m),1.24(m),1.35(m),1.57(m),1.80(m),6.89(s,2H)
【0230】
【化72】

【0231】
【化73】

【0232】
(実施例5)
<共役系化合物Qの合成>
5mLの試験管に化合物M(130mg,0.36mmol)、化合物P(150mg,0.16mmol)、Pd(dba)(3mg,0.003mmol)、トリ−o−トリルホスフィン(4mg,0.013mmol)、クロロベンゼン(3mL)を入れ、マイクロウェーブ照射下(180℃,5分)にて反応させた。シリカゲルカラム(クロロホルム)、GPCで精製を行い、下記式(41)で表される濃青黒色固体の共役系化合物Q(132mg,収率90%)を得た。
【0233】
得られた共役系化合物Qの評価結果を以下に示す。また、得られた共役系化合物Qについて、CV測定を行ったところ、−0.65Vに可逆な還元波が観測され、LUMOレベルが低くなり優れた電子輸送性を有することが確認できた。更に、得られた共役系化合物Qの吸収スペクトルのピーク波長は682nmであった。
H NMR(400MHz,CDCl):δ 0.82(t,3H,J=6.9Hz),0.97(m),1.19(m),1.98(t,4H,J=7.8Hz),7.49(s,2H),7.82(s,2H)
MALDI TOFMS:m/z=910
【0234】
【化74】

【0235】
(共役系化合物の合成中間体の合成4)
<化合物Sの合成>
100mL 2口フラスコに下記式(42)で表される化合物R(549mg,1.00mmol)を入れ、該フラスコ内を窒素置換し、THF(15mL)加えた。−78℃に冷却した後、テトラメチルエチレンジアミン(0.3mL,2.00mmol)、n−BuLi(1.4mL,2.2mmol)を加え反応させた。1時間後、−78℃で塩化トリブチルスズ(0.6mL,2.20mmol)を加え室温まで昇温させた。1時間後、水を加えヘキサンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒を留去し、真空乾燥した。アルミナカラム(hexane)、GPCで精製を行い、下記式(43)で表される黄色液体の化合物S(920mg,収率95%)を得た。得られた化合物Sの分析結果及び化学式は以下の通りである。
H NMR(400MHz,CDCl):δ 0.81(m),0.89(m),1.09(m),1.35(m),1.58(m),1.93(m),7.38(s,1H),7.39(d,2H,7.2Hz),7.63(d,2H,7.2Hz)
【0236】
【化75】

【0237】
【化76】

【0238】
(実施例6)
<共役系化合物Tの合成>
5mLの試験管に化合物M(124mg,0.34mmol)、化合物S(150mg,0.15mmol)、Pd(dba)(3mg,0.003mmol)、トリ−o−トリルホスフィン(4mg,0.013mmol)、クロロベンゼン(3mL)を入れ、マイクロウェーブ照射下(180℃,5分)にて反応させた。シリカゲルカラム(クロロホルム)、GPCで精製を行い、下記式(44)で表される濃赤紫色固体の共役系化合物T(130mg,収率88%)を得た。
【0239】
得られた共役系化合物Tの評価結果を以下に示す。また、得られた共役系化合物Tについて、CV測定を行ったところ、−0.65Vに可逆な還元波が観測され、LUMOレベルが低くなり優れた電子輸送性を有することが確認できた。
H NMR(400MHz,CDCl):δ 0.58(m),0.78(t,6H,J=7.0Hz),1.13(m),2.15(t,4H,J=7.0Hz),7.69(s,2H),7.84(d,2H,J=7.97),7.93(d,2H,J=7.97),8.11(s,2H)
MALDI TOFMAS:m/z=954.
【0240】
【化77】

【0241】
(実施例7)
<共役系化合物Vの合成>
5mLの試験管に下記式(45)で表される化合物U、化合物K、Pd(dba)、トリ−o−トリルホスフィン、クロロベンゼンを入れ、マイクロウェーブ照射下(180℃,5分)にて反応させる。シリカゲルカラム(クロロホルム)、GPCで精製を行い、下記式(46)で表される共役系化合物Vを得る。
【0242】
【化78】

【0243】
【化79】

【0244】
(共役系化合物の合成中間体の合成5)
<化合物Xの合成>
20mLの試験管に化合物R(548mg,0.99mmol)及び下記式(47)で表される化合物W(820mg,2.19mmol)、Pd(PPh(115mg,0.01mmol)、トルエン(10mL)を入れマイクロウェーブ照射下(180℃,5分)にて反応させた。シリカゲルカラム(ヘキサン)にて精製を行い液体状の下記式(48)で表される化合物X(393mg,収率71%)を得た。得られた化合物Xの分析結果及び化学式は以下の通りである。
H NMR(400MHz,CDCl):δ0.79(t,6H,J=6.9Hz),1.05(m),1.37(m),1.69(m),2.01(m),7.11(m,2H),7.23(m,2H),7.38(m,2H),7.55(m,2H),7.60(m,2H),7.67(m,2H)
【0245】
【化80】

【0246】
【化81】

【0247】
<化合物Yの合成>
30mL2口フラスコに化合物X(393mg,0.71mmol)を入れ窒素置換をし、THF(7mL)加えた。−78℃に冷却した後、テトラメチルエチレンジアミン(0.3mL,2.00mmol)、n−BuLi(1.0mL,1.70mmol)を加え反応させた。1時間後、−78℃で塩化トリブチルスズ(0.5mL,1.70mmol)を加え室温まで昇温させた。1時間後、水を加えヘキサンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒を留去し、真空乾燥した。アルミナカラム(ヘキサン)、GPCで精製を行い、下記式(49)で表される黄色液体の化合物Y(762mg,収率95%)を得た。得られた化合物Yの分析結果及び化学式は以下の通りである。
H NMR(400MHz,CDCl):δ0.79(m,6H),0.92(m),1.14(m),1.40(m),1.61(m)1.99(m,4H),7.16(d,2H,J=2.7Hz),7.50(d,2H,J=2.7Hz),7.56(m,2H),7.63(m,4H)
【0248】
【化82】

【0249】
(実施例8)
<共役系化合物Zの合成>
5mLの試験管に化合物M(155mg,0.42mmol)、化合物Y(220mg,0.19mmol)、Pd(dba)(3mg,0.003mmol)、トリ−o−トリルホスフィン(4mg,0.013mmol)、クロロベンゼン(3mL)を入れマイクロウェーブ照射下(180℃,5分)にて反応させた。シリカゲルカラム(クロロホルム)、GPCで精製を行い、下記式(50)で表される黒緑色固体の共役系化合物Z(59mg,収率45%)を得た。
【0250】
得られた共役系化合物Zの評価結果を以下に示す。また、得られた共役系化合物Zについて、CV測定を行ったところ、−0.66Vに可逆な還元波が観測され、LUMOレベルが低くなり優れた電子輸送性を有することが確認できた。
H NMR(400MHz,CDCl):δ0.67(m),0.78(t,6H,J =6.9Hz ),1.13(m),2.09(m,4H),7.50(d,2H,J=4.1Hz),7.61(m,2H),7.65(d,2H,J=4.1Hz),7.69(m,2H),7.79(m,2H),7.83(s,2H)
【0251】
【化83】

【0252】
(比較例1及び2)
共役系化合物Iの合成中間体である化合物H(比較例1)、及び、共役系化合物Lの合成中間体である化合物K(比較例2)のCV測定を行ったところ、それぞれ−1.85V、−1.87Vに還元波が観測され、共役系化合物I及び共役系化合物LよりLUMOレベルが高く、電子輸送性は十分ではないことが確認できた。
【0253】
(実施例9)
<有機薄膜素子2の作製及びトランジスタ特性の評価>
ゲート電極となる高濃度にドープされたp型シリコン基板の表面に、絶縁層となるシリコン酸化膜を熱酸化により、300nm形成したものを準備した。この基板の上に、リフトオフ法によりチャネル幅38mm、チャネル長5μmの櫛形ソース電極及びドレイン電極を形成した。電極付き基板をアセトンで10分間、次いでイソプロピルアルコールで10分間超音波洗浄した後、オゾンUVを30分間照射し表面を洗浄した。洗浄した基板を、ヘキサメチルジシラザン(HMDS):クロロホルムに室温で浸漬した後、クロロホルムで超音波洗浄し、HMDSで表面処理された基板を得た。実施例4で合成した共役系化合物Nを用い、クロロホルムの1wt%溶液を調製し、塗布液とした。表面処理した基板上に共役系化合物Nの塗布液を滴下し、スピンコート法により共役系化合物Nの有機薄膜を成膜し、有機薄膜素子2を作製した。半導体パラメータアナライザー(keithley社製、商品名「4200−SCS」)を用いて、有機薄膜素子2に、真空中でゲート電圧Vgを0〜100V、ソース−ドレイン間電圧Vsdを0〜100Vの範囲で変化させ、有機トランジスタ特性を測定したところ、良好なn型半導体のId−Vg特性が得られた。このときの移動度は1.5×10−4cm/Vs、しきい値電圧25V、オン/オフ比10と良好であった。このことから、共役系化合物Nを用いた有機薄膜素子2は、n型有機トランジスタとして有効に機能することが確認され、また共役系化合物Nは電子輸送性に優れた有機n型半導体として利用可能であることが確認された。
【0254】
(実施例10)
<有機薄膜トランジスタ3の作製及びトランジスタ特性の評価>
実施例9と同様にして、共役系化合物Nの代わりに実施例5で合成した共役系化合物Qを用いて、化合物Qの有機薄膜を有した有機薄膜素子3を作成した。実施例9と同様にして、真空中で有機薄膜素子3の有機トランジスタ特性を測定したところ、良好なn型半導体のId−Vg特性が得られた。このときの移動度は7.5×10−5cm/Vs、しきい値電圧30V、オン/オフ比10と良好であった。このことから、共役系化合物Qを用いた有機薄膜素子2は、n型有機トランジスタとして有効に機能することが確認され、また共役系化合物Qは電子輸送性に優れた有機n型半導体として利用可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0255】
1…基板、2…有機半導体層、2a…有機半導体層、3…絶縁層、4…ゲート電極、5…ソース電極、6…ドレイン電極、7a…第1の電極、7b…第2の電極、8…電荷発生層、100…第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、110…第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、120…第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、130…第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、140…第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、150…第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、160…第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、200…実施形態に係る太陽電池、300…第1実施形態に係る光センサ、310…第2実施形態に係る光センサ、320…第3実施形態に係る光センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される基及び/又は下記一般式(II)で表される基を有する共役系化合物。
【化1】


【化2】


[式中、Arは置換基を有していてもよい3価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい3価の複素環基を示す。Aは水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、複数存在するAはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1個のAは電子吸引性の基である。Ar’は置換基を有していてもよい炭素数6以上の2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4以上の2価の複素環基を示し、R及びRは、同一又は異なり、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示す。A’は水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、複数存在するA’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1個のA’は電子吸引性の基である。]
【請求項2】
前記一般式(I)で表される基として、下記一般式(III)で表される基を有する、請求項1に記載の共役系化合物。
【化3】


[式中、Aは水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、複数存在するAはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1個のAは電子吸引性の基である。Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基を示す。Zは、下記式(i)〜(ix)で表される基のいずれかを示し、これらの基におけるR、R、R及びRは、同一又は異なり、水素原子又は1価の基を示し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。]
【化4】

【請求項3】
前記一般式(III)で表される基を2以上有する、請求項2に記載の共役系化合物。
【請求項4】
下記一般式(IV)で表される、請求項3に記載の共役系化合物。
【化5】


[式中、X及びXは、同一又は異なり、前記式(III)で表される基である。Ar、Ar及びArは、同一又は異なり、置換基を有していてもよい炭素数6以上の2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4以上の2価の複素環基を示し、m、n及びpは、同一又は異なり、0〜6の整数を示す。ただし、m+n+pは1以上の整数である。
【請求項5】
前記Ar、Ar及びArのうちの少なくとも1個が、置換基を有してもよいチエニレン基である、請求項4に記載の共役系化合物。
【請求項6】
前記Zが、前記式(ii)で表される基である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の共役系化合物。
【請求項7】
前記Aが、シアノ基である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の共役系化合物。
【請求項8】
前記一般式(II)で表される基として、下記一般式(V)で表される基を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の共役系化合物。
【化6】


[式中、R及びRは、同一又は異なり、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示す。A’は水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、複数存在するA’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1個のA’は電子吸引性の基である。R10は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基を示す。Zは、下記式(xi)〜(xix)で表される基のいずれかを示し、これらの基におけるR13、R14、R15及びR16は、同一又は異なり、水素原子又は1価の基を示し、R13とR14とは互いに結合して環を形成していてもよい。]
【化7】

【請求項9】
前記一般式(V)で表される基を2以上有する、請求項8に記載の共役系化合物。
【請求項10】
下記一般式(VI)で表される、請求項9に記載の共役系化合物。
【化8】


[式中、X及びXは、同一又は異なり、前記式(V)で表される基である。Ar、Ar及びArは、同一又は異なり、置換基を有していてもよい炭素数6以上の2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数4以上の2価の複素環基を示し、q、r及びsは、同一又は異なり、0〜6の整数を示す。ただし、q+r+sは1以上の整数である。]
【請求項11】
前記Ar、Ar及びArのうちの少なくとも1個が、置換基を有してもよいチエニレン基である、請求項10に記載の共役系化合物。
【請求項12】
前記Zが、前記式(xi)又は(xii)で表される基である、請求項8〜11のいずれか一項に記載の共役系化合物。
【請求項13】
前記A’が、シアノ基である、請求項8〜12のいずれか一項に記載の共役系化合物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の共役系化合物を含む、有機薄膜。
【請求項15】
請求項14に記載の有機薄膜を備える、有機薄膜素子。
【請求項16】
ソース電極及びドレイン電極と、これら電極の間の電流経路となる有機半導体層と、前記電流経路を通る電流量を制御するゲート電極と、を備える有機薄膜トランジスタであって、前記有機半導体層が請求項14に記載の有機薄膜を備える、有機薄膜トランジスタ。
【請求項17】
請求項14に記載の有機薄膜を備える、有機太陽電池。
【請求項18】
請求項14に記載の有機薄膜を備える、光センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−235598(P2010−235598A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53562(P2010−53562)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】