説明

共押出しされた、多層電池セパレーター

電池セパレーターには、押出し加工可能なポリマーから製造された少なくとも2層を有し、そして、<0.80ミクロン(μm)の標準偏差で定義される均一な厚み、または>60グラムの剥離強さで定義される層間接着力を有する、共押出しされたミクロポーラス膜が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される電池セパレーターは、共押出しされた、多層電池セパレーターである。このセパレーターの一つの実施態様は、リチウムイオン電池において使用することができる。
【背景技術】
【0002】
多層電池セパレーターはたとえば以下の特許に開示されている:(特許文献1);(特許文献2);(特許文献3);(特許文献4);(特許文献5);(特許文献6);(特許文献7);(特許文献8);(特許文献9)。
【0003】
前述の文献のいくつかには、共押出しプロセスによって多層セパレーターを製造してもよいとの記載があるが、商業的な実施においては、商業ベースで共押出しプロセスを実施するのは困難であった。具体的には、従来の共押出しの試みで得られる製品は、均質性の点で不安があり、そのために、そのプロセスによって製造される製品の商業化が妨げられてきた。それらの問題点は、狭いオリフィスダイの中に少なくとも2種の異種のポリマーを同時に押出し加工することに伴う複雑さに起因していると考えられる。そのために、共押出しされた、多層電池セパレーターを製造するためのこれまでの試みでは、均質な製品が得られなかった。そのような事情で、共押出しされた多層電池セパレーターは、市場で入手できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4650730号明細書
【特許文献2】米国特許第5240655号明細書
【特許文献3】米国特許第5281491号明細書
【特許文献4】米国特許第5691047号明細書
【特許文献5】米国特許第5691077号明細書
【特許文献6】米国特許第5952120号明細書
【特許文献7】米国特許第6080507号明細書
【特許文献8】米国特許第6878226号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第20020136945号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、均質な物理的性質を有する、共押出しされた多層電池セパレーターに対する必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電池セパレーターには、押出し加工可能なポリマーから製造された少なくとも2層を有し、そして、<0.80ミクロン(μm)の標準偏差で定義される均一な厚み、または>60グラムの剥離強さで定義される層間接着力を有する、共押出しされたミクロポーラス膜が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の電池セパレーターは、二次リチウムイオン電池(たとえば、携帯電話、ラップトップコンピューター、および軽量の電荷蓄積デバイスを必要とするその他のデバイスにおいて使用されるもの)において使用することに関連させて記述されるであろう。しかしながら、本発明がそれに限定される訳ではなく、本発明の電池セパレーターはその他の電池系(たとえば、いくつかの例を挙げれば、NiMH電池、NiCd電池、アルカリ電池、一次リチウム電池など)において使用してよいことは理解されるべきである。
【0008】
一般的に言って、リチウムイオン電池において使用される電池セパレーターは、典型的に以下の物理的性質を有するミクロポーラス膜である:厚み、5ミル(125μm)未満、または2ミル(50μm)未満、または1ミル(25μm)未満、実用上の下限は約1/3ミル(8μm)である;貫入強さ(puncture strength)、400グラムより大、または550グラムより大;平均孔径、0.005〜10.000μm、または0.01〜5.00μm、または0.05〜2.00μm;ガーレー値(ASTM−D726(B))、5〜100秒、または10〜60秒。
【0009】
本発明の電池セパレーターは、共押出しされた、多層電池セパレーターである。「共押出しされた(co-extruded)」とは、複数のポリマーが押出しダイの中に同時に送り込まれて、ダイから成形品の形(本明細書においては一般的に平面構造である)で押し出されるプロセスに関連し、その成形品は、分離された少なくとも二つの層を有し、その分離された層の界面で、その分離された層の界面を形成する異種のポリマーの混合によって、相互に結合されている。その押出しダイは、フラットシート(またはスロット)ダイであっても、あるいはインフレーション(または環状)ダイであってもよい。共押出しプロセスについては、以下においてさらに詳しく説明する。「多層」とは、セパレーターが少なくとも2層を有することに関連する。「多層」とはさらに、3、4、5、6、7、またはそれ以上の層を有する構造であることにも関連する。それぞれの層は、その押出しダイの中にフィードされる個別のポリマー流れによって形成される。それらの層は、異なった厚みを有していてよい。そのフィード流れの少なくとも二つが異種のポリマーである場合が、大部分である。「異種のポリマー」とは、異種の化学的特性を有するポリマー(たとえば、PEとPP、あるいはPEとPEのコポリマーは、異種の化学的特性を有するポリマーである);および/または同一の化学的特性であるが異種の性質(たとえば、異なった性質(たとえば、密度、分子量、分子量分布、レオロジー、添加剤(組成および/または含有率)を有する2種のPEなど)を有するポリマーに関連する。しかしながら、それらのポリマーが同一であっても、異なっていてもよい。
【0010】
本発明の電池セパレーターにおいて使用できるポリマーは、押出し加工可能なものである。そのようなポリマーは典型的には、熱可塑性ポリマーと呼ばれている。熱可塑性ポリマーの例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:ポリオレフィン、ポリアセタール(またはポリオキシメチレン)、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、およびポリビニリデン。ポリオレフィンとしては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:ポリエチレン(たとえば、LDPE、LLDPE、HDPE、UHDPEを含む)、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンタン、それらのコポリマー、およびそれらのブレンド物。ポリアミド(ナイロン)としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:ポリアミド6、ポリアミド66、ナイロン10,10、ポリフタルアミド(PPA)、それらのコポリマー、およびそれらのブレンド物。ポリエステルとしては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:ポリエステルテレファルタレート、ポリブチルテレファルタレート、それらのコポリマー、およびそれらのブレンド物。ポリスルフィドとしては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:ポリフェニルスルフィド、それらのコポリマー、およびそれらのブレンド物。ポリビニルアルコールとしては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:エチレン−ビニルアルコール、それらのコポリマー、およびそれらのブレンド物。ポリビニルエステルとしては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、それらのコポリマー、およびそれらのブレンド物。ポリビニリデンとしては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:フッ素化ポリビニリデン(たとえば、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン)、それらのコポリマー、およびそれらのブレンド物。
【0011】
それらのポリマーには各種の物質を添加してよい。それらの物質を添加することにより、個々の層またはセパレーター全体の性能または性質を変化させたり、向上させたりする。そのような物質としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0012】
ポリマーの溶融温度を低下させるための物質を添加してもよい。典型的には、多層セパレーターには、所定の温度でその細孔を閉じて、電池の電極の間でのイオンの流れを阻止するように設計された層が含まれている。この機能は一般的に「シャットダウン(shutdown)」と呼ばれている。一つの実施態様においては、3層セパレーターが、中間にシャットダウン層を有している。その層のシャットダウン温度を低下させるためには、それらが混合されるポリマーよりも低い溶融温度を有する物質を、そのポリマーに添加すればよい。そのような物質としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:125℃よりも低い溶融温度を有する物質たとえば、ポリオレフィンまたはポリオレフィンオリゴマー。そのような物質としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリブテンワックス、およびそれらのブレンド物)。それらの物質は、ポリマーの5〜50重量%の割合でポリマー中に担持させるのがよい。一つの実施態様においては、140℃よりも低いシャットダウン温度を得ることができる。また別な実施態様においては、130℃よりも低いシャットダウン温度を得ることができる。
【0013】
膜の溶融完全性(melt integrity)を改良するための物質を添加してもよい。「溶融完全性」という用語は、高温における物理的寸法の減少または劣化を制限して、電極を物理的に分離させた状態に維持する、膜の性能に関連する。そのような物質としては、鉱物質充填剤が挙げられる。鉱物質充填剤としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:タルク、カオリン、合成シリカ、珪藻土、マイカ、ナノクレー、窒化ホウ素、二酸化ケイ素、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなど、およびそれらのブレンド物。そのような物質にはさらに、たとえば微細繊維(これに限定される訳ではない)が含まれてもよい。微細繊維としては、ガラス繊維および細断ポリマー繊維が挙げられる。担持割合は、その層のポリマーの1〜60重量%の範囲である。そのような物質としては、高融点または高粘度の有機物質、たとえば、PTFEおよびUHMWPEなどもまた挙げられる。そのような物質としてはさらに、架橋剤またはカップリング剤もまた挙げられる。
【0014】
膜の強さまたは靱性を改良するための物質を添加してもよい。そのような物質としてはエラストマーが挙げられる。エラストマーとしては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:エチレン−プロピレン(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)、スチレン−ブタジエン(SBR)、スチレンイソプレン(SIR)、エチリデンノルボルネン(ENB)、エポキシ、およびポリウレタン、ならびにそれらのブレンド物。そのような物質にはさらに、たとえば微細繊維(これに限定される訳ではない)が含まれてもよい。微細繊維としては、ガラス繊維および細断ポリマー繊維が挙げられる。担持割合は、その層のポリマーの2〜30重量%の範囲である。そのような物質にはさらに、架橋剤もしくはカップリング剤、または高粘度もしくは高融点物質が含まれていてもよい。
【0015】
膜の帯電防止性を改良するための物質を添加してもよい。そのような物質としてはたとえば、帯電防止剤が挙げられる。帯電防止剤としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:グリセロールモノステアレート、エトキシル化アミン、ポリエーテル(たとえば、Pelestat 300、Sanyo Chemical Industrial(日本)から市販)。担持割合は、その層のポリマーの0.001〜10重量%の範囲である。
【0016】
セパレーターの表面濡れ性を改良するための物質を添加してもよい。そのような物質としてはたとえば、濡れ剤が挙げられる。濡れ剤としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:エトキシル化アルコール、一級高分子量カルボン酸、グリコール(たとえば、ポリプロピレングリコールおよびポリエチレングリコール)、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸グリシジルを用いて官能化されたポリオレフィン。担持割合は、その層のポリマーの0.01〜10重量%の範囲である。
【0017】
セパレーターの表面摩擦性能を改良するための物質を添加してもよい。そのような物質としては潤滑剤が挙げられる。潤滑剤としては、たとえば、フルオロポリマー(たとえば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、低分子量フルオロポリマー)、スリップ剤(たとえば、オレアミド、ステアルアミド、エルクアミド、Kemamide(登録商標)、ステアリン酸カルシウム、シリコーンが挙げられる。担持割合は、その層のポリマーの0.001〜10重量%の範囲である。
【0018】
ポリマーの加工性を改良するための物質を添加してもよい。そのような物質としては、たとえば、フルオロポリマー、窒化ホウ素、ポリオレフィンワックスが挙げられる。担持割合は、その層のポリマーの100ppm〜10重量%の範囲である。
【0019】
膜の難燃性を改良するための物質を添加してもよい。そのような物質としては、たとえば、臭素化難燃剤、リン酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、アルミナ三水化物、およびリン酸エステルが挙げられる。
【0020】
ポリマーの核形成を促進する物質を添加してもよい。そのような物質としては成核剤が挙げられる。成核剤としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:安息香酸ナトリウム、ジベンジリデンソルビトール(DBS)およびその化学的誘導体。担持比率は慣用される比率である。
【0021】
層を着色するための物質を添加してもよい。そのような物質は慣用されている。
【0022】
本発明の電池セパレーターの製造においては、ポリマーを共押出しして、多層で、非多孔質な前駆体を成形し、次いでその前駆体を加工して、ミクロポアを形成させる。ミクロポアは「ウェット」プロセスで形成させても、あるいは「ドライ」プロセスで形成させてもよい。ウェットプロセス(溶媒抽出、転相、加熱誘導相分離(TIPS)、またはゲル抽出などとも呼ばれる)は一般的に次の工程を含む:前駆体を成形するより前に除去可能な物質を添加し、次いでその物質を、たとえば抽出プロセスによって、除去して細孔を形成させる。ドライプロセス(Celgard プロセスとも呼ばれる)は一般的に次の工程を含む:前駆体(細孔形成のための除去可能物質は一切含まない)を押出す工程、その前駆体をアニーリングする工程、その前駆体を延伸させてミクロポアを形成させる工程。本発明については、そのドライプロセスに関連させて以後説明する。
【0023】
本発明の共押出しされた多層電池セパレーターで均質な寸法性を得る目的で、特定の剪断速度を有する押出しダイを使用した。1層あたり18〜100ポンド/hr(8.2〜45.4Kg/hr)の処理量の場合に、ダイの剪断速度が最小でも4/secでなければならないということが判った。一つの実施態様においては、1層あたり18〜100ポンド/hr(8.2〜45.4Kg/hr)の処理量の場合で、その剪断速度が≧8/secであった。その他のパラメーターはすべて、通常公知の値である。
【実施例】
【0024】
ここまでの発明について、以下の実施例でさらに説明する。表1には、本発明の上述の説明に従って製造された11種のサンプルを示している。表2には、セパレーターの溶融完全性を改良するための各種の物質の使用を、そのような物質を含まないセパレーターに対比させて示している。表3には、セパレーターの各種の性質を改良するための、その他の前述の物質の使用を示している。それらの表の中の情報を得るために使用した試験手順を以下に説明する。
【0025】
試験手順
ガーレー:
ガーレーは2種の方法により測定した。日本工業規格ガーレー(JISガーレー)として定義された第一の方法においては、ガーレーは、OHKEN透気度試験機を使用して測定する。JISガーレーは、4.8インチH2Oの一定圧の場合に、1平方インチのフィルムで100ccの空気を通過させるのに必要な時間(単位、秒)と定義される。第二の方法においては、ガーレーはASTM D−726の手順に従って測定され、4.8インチH2Oの一定圧の場合に、1平方インチのフィルムで10ccの空気を通過させるのに必要な時間(単位、秒)と定義される。
【0026】
引張性質:
MDおよびTD引張強さは、ASTM−882の手順に従い、Instron Model 4201を使用して測定する。
【0027】
貫入強さ:
貫入強さは、ASTM D3763に基づいて、Instron Model 4442を使用して測定する。貫入強さの単位はニュートンである。その測定は、延伸させた製品の幅方向に実施し、平均された貫入エネルギー(貫入強さ)を、試験サンプルに貫入させるのに必要な力と定義する。
【0028】
剥離強さまたは接着性:
層内接着性は、Chatillon TCD−200 Peel Force Testerを使用して試験する。
【0029】
収縮:
収縮は、改訂ASTM D−2732−96手順を使用して、90℃で60分かけて測定する。
【0030】
厚み:
膜の厚みの値は、ASTM D374に従い、Emveco Microgage 210-A精密マイクロメーターを使用して測定する。厚みの値は、マイクロメートル(μm)の単位で報告する。サンプルの横方向に測定した、マイクロメーターの独立した20個の読みの平均をとる。
【0031】
多孔度:
ミクロポーラスフィルムの多孔度は、ASTM D2873試験法に従って測定する。
【0032】
高温溶融完全性:
高温溶融完全性は、熱機械分析(TMA)を使用して測定する。TMA圧縮プローブを使用して、一定荷重125gで、温度を25℃から300℃まで、5℃/minの速度でスキャンして、圧縮下のセパレーターの厚みの変化を測定する。250℃で保持されている厚みのパーセントを、高温溶融完全性と定義する。
【0033】
濡れ性:
典型的なリチウムイオン電解液の1滴を膜のサンプルの上に置く。不透明からほぼ透明までの、サンプルの外観の変化を記録する。濡れ可能なセパレーターの場合には、不透明領域がなく、ほぼ均一な半透明な外観となる筈である。濡れ不可能なサンプルでは、不透明な状態のままである。
【0034】
ER(電気抵抗):
電気抵抗の単位は、オーム−cm2である。セパレーターの抵抗は、仕上がり物質からセパレーターの小片を切り出してから、それらを二つのブロッキング電極の間に置くことによって特性解析する。そのセパレーターを、容積で3:7のEC/EMC溶媒中に1.0MのLiPF6塩を用いた電池の電解液を用いて完全に飽和させる。セパレーターの抵抗値R(Ω)を、4プローブACインピーダンス法により測定する。電極/セパレーター界面での測定誤差を抑制するためには、より多くのセパレーター層を加えることによる多重測定をする必要がある。多重層測定に基づいて、次いで、電気(イオン)抵抗、すなわち電解液を用いて飽和されたセパレーターのRs(Ω)を次式により計算する。
s=ρsl/A (1)
ここで、ρsはセパレーターのイオン抵抗率(単位、Ω−cm)であり、Aは電極面積(単位、cm2)、lは、セパレーター膜の厚み(単位、cm)である。ρs/Aの比率は、多重セパレーター層(Δδ)に対するセパレーター抵抗値(ΔR)の変化率について計算した勾配であって、次式で与えられる。
勾配=ρs/A=ΔR/Δδ (2)
米国特許出願第11/400,465号明細書(出願日、2006年4月7日)の「イオン性抵抗値に関する試験手順も参照されたい(この出願を、参考として引用し本明細書に組み入れる)。
【0035】
ピン除去(Pin Removal):
ピン除去試験は、電池巻上げプロセスを模したものである。ピン除去力とは、巻上げた後にジェリーロール(jelly roll)の中央からピンを引き抜くために必要な力(単位、グラム)である。電池巻上げ機を使用して、ピン(またはコアまたはマンドレル)の周りにセパレーターを巻上げた。そのピンは、0.16インチの直径と、滑らかな外部表面とを有する2片の円筒状のマンドレルである。それぞれの片は半円形の断面を有している。以下に述べるセパレーターをそのピンの上に巻取る。セパレーター上での最初の力(接線方向)が0.5kgfであり、次いでそのセパレーターを24秒間に10インチの速度で巻き上げる。巻上げの間、テンションローラーは、マンドレル上に巻き上げられつつあるセパレーターとかみ合わさっている。そのテンションローラーには、セパレーター供給とは反対側に位置する直径5/8インチのローラーと、(かみ合わせたときに)それに対して1バールの空気圧を加えている3/4インチ空気圧シリンダーと、そのローラーとシリンダーを相互接続している1/4インチのロッドとが含まれる。そのセパレーターは、二つの30mm(幅)×10インチの試験膜片からなる。5個のそれらのセパレーターについて試験し、結果を平均し、その平均値を報告する。それぞれの小片は、巻上げ機上のセパレーターのフィードロールの上に、1インチの重なりを保たせながら、つないでいく。セパレーターの自由末端から、すなわち、つなぎ合わせ末端から遠い方から、1/2インチおよび7インチのところにインキでマークを入れる。その1/2インチのマークを、ピンの遠い側(すなわち、テンションローラーに隣接する側)に揃え、セパレーターをピンの小片の間にかみ合わせ、かみ合わせたテンションローラーを用いて、巻上げを開始する。7インチのマークが、ジェリーロール(ピンの上に巻上げられたセパレーター)から約1/2インチとなったときに、セパレーターをそのマークのところで切断し、そのセパレーターの自由末端を、一片の粘着テープ(幅1インチ、重なり1/2インチ)を用いてジェリーロールに貼り付ける。ジェリーロール(すなわち、その上に巻上げたセパレーターを有するピン)を巻上げ機から取外す。受容可能なジェリーロールでは、しわもなく、また竹の子状態にもなっていない。そのジェリーロールを引張強さ試験機(すなわち、ロードセル(50ポンド×0.02ポンド;Chatillon DFGS 50)を組み入れたChatillon Model TCD 500-MS、Chatillon Inc.(Greensboro、NC)製)に取付ける。歪み速度が2.5インチ/minであり、そのロードセルからのデータを、100ポイント/secの速度で記録する。そのピーク力をピン除去力として報告する。米国特許第6,692,867号明細書もまた参照されたい(この特許を参考として引用し本明細書に組み入れる)。
【0036】
誘電破壊:
サンプルに電圧を印加して、その物質の誘電破壊が観察されるまで電圧を上げていく。誘電破壊は、ボルトの単位で表す。二つの電極の間にセパレーターを置いて、それらの電極の間に電圧を印加する。セパレーターの誘電破壊が観察されるまで、電圧を上昇していく。強いセパレーターは、高い破壊電圧を示す。均質性に欠けることがあると、破壊電圧が低くなる可能性がある。
【0037】
アクアポアサイズ(Aquapore Size):
孔径は、PMI(Porous Materials Inc.)から入手可能なAquaporeを用いて測定する。孔径は、ミクロン(μm)の単位で表す。
【0038】
混合物透過力(Mixed Penetration):
混合物透過力とは、セパレーターを通して短絡を起こさせるのに必要な力であって、キログラム重、kgfの単位で表される。混合物透過力は、混合透過が原因でセパレーターを通して短絡を起こさせるのに必要な力である。この試験においては、第一の金属板のベースを用いて開始し、この板の上にカソード材料のシートを置き、カソードの上にセパレーターを置き、そのセパレーターの上にアノード材料のシートを置く。次いで、3mmのボールチップを圧力計(force gauge)に取り付ける。そのボールチップを抵抗計によって第一の金属板に接続する。そのボールチップに圧力を加えて、それを圧力計に記録させる。力を加えることによって、セパレーターの両面にアノード混合物(anode mix)とカソード混合物(cathode mix)とができる。抵抗値が急激に低下したら、そのことは、混合透過のためにセパレーターを介して短絡が起きたことを示している。混合透過力から、セパレーターの強度、および混合透過に対する抵抗性が測定される。これは、実際の電池の挙動をより正確に模していることが見出された。この方法は、セパレーターの電池の中における挙動に関しては、貫入強さよりも良好な指標を与える。この試験は、電池の組立ての際の、セパレーターの短絡回路の作りやすさを示すのに使用される。米国特許出願第11/400,465号明細書(出願日2006年4月7日)も参照されたい(この出願を、参考として引用し本明細書に組み入れる)。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
本発明は、本発明の精神および本質的な属性から外れることなくその他の形態において実施することも可能であり、従って、本発明の範囲を示すものとしては、上述の明細書よりも、添付の請求項を参照するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セパレーターであって、
押出し加工可能なポリマーから製造された少なくとも2層を有し、標準偏差が0.80μm未満と定義される均一な厚みを有する、共押出しされた、ミクロポーラス膜を含む、
電池セパレーター。
【請求項2】
前記標準偏差が、4〜125μmの厚み範囲についてである、請求項1に記載の電池セパレーター。
【請求項3】
前記標準偏差が、4〜50μmの厚み範囲についてである、請求項3に記載の電池セパレーター。
【請求項4】
一つの前記層の前記ポリマーが、前記他の層の前記ポリマーと同一であるか、または異なっている、請求項1に記載の電池セパレーター。
【請求項5】
一つの前記押出し加工可能なポリマーが熱可塑性ポリマーである、請求項1に記載の電池セパレーター。
【請求項6】
一つの前記押出し加工可能なポリマーが、ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリビニリデン、前述のもののコポリマー、およびそれらのブレンド物からなる群より選択される、請求項1に記載の電池セパレーター。
【請求項7】
一つの前記ポリマーが、それに添加される物質をさらに含む、請求項1に記載の電池セパレーター。
【請求項8】
前記物質が:前記ポリマーの溶融温度を低下させること;前記膜の溶融完全性を改良すること;前記膜の靱性の強度を改良すること;前記膜の帯電防止性を改良すること;前記セパレーターの表面濡れ性を改良すること;前記セパレーターの表面摩擦性能を改良すること;前記ポリマーの加工性を改良すること;前記膜の難燃性を改良すること;前記ポリマーの核形成を促進させること;前記膜の層を着色させること;およびそれらの組合せ、を目的として適応させる物質の群から選択される、請求項7に記載の電池セパレーター。
【請求項9】
電池セパレーターであって、
押出し加工可能なポリマーから製造された少なくとも2層を有し、60グラムを超える剥離強さとして定義される層間接着力を有する、共押出しされた、ミクロポーラス膜を含む、
電池セパレーター。
【請求項10】
一つの前記押出し加工可能なポリマーが熱可塑性ポリマーである、請求項9に記載の電池セパレーター。
【請求項11】
一つの前記層の前記ポリマーが、前記他の層の前記ポリマーと同一であるか、または異なっている、請求項9に記載の電池セパレーター。
【請求項12】
一つの前記押出し加工可能なポリマーが、ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリビニリデン、前述のもののコポリマー、およびそれらのブレンド物からなる群より選択される、請求項9に記載の電池セパレーター。
【請求項13】
一つの前記押出し加工可能なポリマーが、それに添加される物質をさらに含む、請求項9に記載の電池セパレーター。
【請求項14】
前記物質が:前記ポリマーの溶融温度を低下させること;前記膜の溶融完全性を改良すること;前記膜の靱性の強度を改良すること;前記膜の帯電防止性を改良すること;前記セパレーターの表面濡れ性を改良すること;前記セパレーターの表面摩擦性能を改良すること;前記ポリマーの加工性を改良すること;前記膜の難燃性を改良すること;前記ポリマーの核形成を促進させること;前記膜の層を着色させること;およびそれらの組合せ、を目的として適応させる物質の群から選択される、請求項13に記載の電池セパレーター。
【請求項15】
電池セパレーターであって、
ポリマーから製造された少なくとも2層を有する多層のミクロポーラス膜を含み、一つの前記ポリマーが、ポリメチルペンタン、ポリアセタール、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリスルフィド、ポリビニリデンからなる群より選択される、
電池セパレーター。
【請求項16】
一つの前記層の前記ポリマーが、前記他の層の前記ポリマーと同一であるか、または異なっている、請求項15に記載の電池セパレーター。
【請求項17】
前記膜が、ドライ延伸された膜である、請求項15に記載の電池セパレーター。
【請求項18】
ミクロポーラス多層膜を製造するための方法であって、
4sec-1の最小剪断速度を用いて押出しダイを通して、処理量を1層あたり18〜100ポンド/hr(8.2〜45.4Kg/hr)で、非多孔質の多層前駆体を共押出しする工程;および
前記非多孔質の多層前駆体を加工して、前記ミクロポーラス多層膜を得る工程、
を含む、方法。
【請求項19】
剪断速度が8/sec以上である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
加工に、
前記非多孔質多層前駆体をアニーリングする工程、および
前記アニーリングされた非多孔質多層前駆体を延伸させる工程、
をさらに含む、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2010−510627(P2010−510627A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537259(P2009−537259)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/082193
【国際公開番号】WO2008/063804
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(598064680)セルガード エルエルシー (17)
【Fターム(参考)】