説明

共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルム

【課題】 例えば、表示部材、成形用加飾部材等として用いられたときのクリア感に優れ、かつ金属塗膜を設けても外観に優れ、さらに、キズがつきにくく、作業性、生産性にも優れた有用なポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸フィルムであり、少なくとも一方の表層に、平均粒径0.7〜2.4μmのスチレン・ジビニルベンゼン共重合体架橋粒子を含有することを特徴とする共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部材および成形部材に好適なポリエステルフィルムに関し、詳しくは、クリア感に優れ、かつ金属塗膜を設けても外観に優れ、またキズがつきにくく、作業性、生産性に優れた有用なポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートに代表される二軸延伸ポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れた特性を有し、また、コストパフォーマンスにも優れるため、各種用途に使用されている。
【0003】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、最近では、光学用途、特に、タッチパネル式表示装置の透明導電性フィルムのベースフィルムや、液晶表示装置に用いられるプリズムシート用のベースフィルム等として広く用いられているが、ポリエステルフィルムは一般的に傷が付きやすいため、外観や光学特性が損なわれやすいという欠点がある。
【0004】
特に、最近需要の増えているタッチパネル機能付きの携帯情報端末や携帯電話、携帯ゲーム機においては、表示部を至近距離で見ることから、表示部ベース材として、傷や異物等の光学欠点の少ないフィルムが求められている。また、TVや動画再生等の高機能化が進むにつれ、表示部材ベースフィルムとしての透明性および鮮明性に対する要求も厳しくなっている。
【0005】
表示部材のベースフィルムの透明性および鮮明性を改良するには、フィルム中に滑剤粒子を添加しないこと、あるいは含有する滑剤粒子を減らすことで達成できるが、滑剤粒子を減らしすぎると製膜時や加工時の巻き作業性の低下やフィルム表面への傷入りが多くなり、外観特性を損ない問題となる。
【0006】
また、二軸延伸ポリエステルフィルムは、成形同時加飾用途、特に携帯電話や電化製品の表示部材、ノート型パソコン等の筐体、建材、自動車部品のベースフィルムにも広く用いられている(特許文献1、2)が、フィルム表層に滑剤粒子が添加されている場合、加飾に用いる蒸着転写箔等にも粒子起因の凹凸やザラつきが反映され、美観や意匠性を損ねる恐れがある。
【0007】
成形同時加飾用のベースフィルムに含有される滑剤粒子起因の蒸着箔の凹凸およびザラつきも、フィルム中に滑剤粒子を添加しないこと、あるいは含有する滑剤粒子を減らすことで達成できるが、滑剤粒子を減らしすぎると、やはり製膜時や加工時の巻き作業性の低下やフィルム表面への傷入りが多くなり、外観特性が悪くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−005999号公報
【特許文献1】特開2001−322392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、例えば、表示部材、成形用加飾部材等として用いられたときのクリア感に優れ、かつ金属塗膜を設けても外観に優れ、さらに、キズがつきにくく、作業性、生産性にも優れた有用なポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、特定構成のポリエステルフィルムによれば上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸フィルムであり、少なくとも一方の表層に、平均粒径0.7〜2.4μmのスチレン・ジビニルベンゼン共重合体架橋粒子を含有することを特徴とする共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、表示部材、成形用加飾部材等として用いられたときのクリア感に優れ、かつ金属塗膜を設けても外観に優れる二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することができる。また、キズがつきにくく、作業性、生産性に優れた有用なポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で言うポリエステルフィルムとは、押出口金から溶融押出される、いわゆる押出法により押出した溶融ポリエステルシートを冷却した後、必要に応じ、延伸、熱処理を施したフィルムである。
【0014】
本発明のフィルムを構成するポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものである。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。また、用いるポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であればよい。 このような共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびオキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)等から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。一方のグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。
【0015】
ポリエステルフィルムに配合する粒子としては、一般的に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、カオリン、酸化チタン等の無機粒子やアクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、有機シリコーン等の有機粒子が挙げられるが、透明性が求められる用途としては、ポリエステルと親和性の高いスチレン系有機粒子が好適である。
【0016】
本発明で使用するスチレン・ジビニルベンゼン共重合体粒子は、例えば、分子中に唯一個の脂肪族不飽和結合を有する化合物(A)と、架橋剤として分子中に2個以上の脂肪族不飽和結合を有する化合物(B)との共重合体である。化合物(A)の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらのメチルエステル、エチルエステル等の低級アルキルエステル、またはグリシジルエステル、無水マレイン酸およびそのアルキル誘導体、ビニルグリシジルエーテル、酢酸ビニル、スチレン誘導体等を挙げることができる。また、化合物(B)としてはジビニルベンゼンあるいはジビニルスルホン等を挙げることができる。化合物(A)および(B)は、各々一種類以上用いるが、これらの系に更にエチレンやスチレンを加えて共重合させてもよい。また、窒素原子を有する化合物を共重合させてもよい。窒素原子を有する化合物はポリエステルに着色、特に黄色味をもたらす傾向があるが、着色が問題とならない用途には使用しうる。
【0017】
化合物(A)と化合物(B)とを共重合させるための重合開始剤としては、周知の化学的ラジカル開始剤、例えばt−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等を用いるか、紫外線照射法が簡便であるが、単に加熱によって重合を開始させてもよい。 本発明のフィルムの表層において使用するスチレン・ジビニルベンゼン共重合体粒子の平均粒径は、0.7μm〜2.4μmの範囲である。平均粒径が0.7μm未満の粒子を用いた場合には、十分な易滑性の付与ができないため、フィルム製造工程で傷入りが多くなり、また、巻き特性が劣る。一方、平均粒径が2.4μmを超える場合には、延伸によるボイドの形成が大きくなり、また、粒状感が大きくなり、透明性が損なわれる。なお、本発明における平均粒径とは、後述のとおり、等価球形分布における積算体積分率50%の粒径(d50)を意味する。
【0018】
透明性を維持するためにはできるだけ粒子の添加量を少なくすることが好ましい。ただし、粒子の含有量が極端に少ない場合は、透明性は高くなるがフィルム表面を適度な粗面にすることができず、フィルム製造工程においてキズが発生しやすかったり、巻き特性が劣ったりする傾向がある。また、粒子の含有量が極度に多い場合には、フィルム表面の粗面化の度合いが大きくなりすぎて透明性が損なわれる。
【0019】
本発明においては、前記したスチレン・ジビニルベンゼン共重合体粒子を3層以上の積層フィルムの少なくとも表裏どちらか1層に添加する。もちろん、表裏両層に粒子を配合することもできる。かかる積層フィルムとした場合の粒子の配合量は、表層を構成するポリエステルに対し、好ましくは20重量%未満、さらに好ましくは5〜8重量%の範囲である。
【0020】
本発明で得られるポリエステルには、本発明の要旨を損なわない範囲で、耐候剤、耐光
剤、帯電防止剤、潤滑剤、遮光剤、抗酸化剤、蛍光増白剤、熱安定剤、および染料、顔料などの着色剤などを配合してもよい。
【0021】
本発明において、後述する測定法におけるフィルムヘーズは低い方が好ましいが、フィルムの表面粗度とキズの発生とのバランスを考慮すると2.0%以下であることが好ましい。フィルムヘーズは、その値が高くなるほどフィルムの透明感は低下する。本発明において、ヘーズをこの範囲にするためには、粒子にスチレン・ジビニルベンゼン共重合体を採用し、平均粒径および粒子添加量を調節することで達成できる。
【0022】
本発明において、後述する測定法におけるフィルムの算術平均粗さ(Ra)は大きい方が好ましいが、Raは粒子添加量と相関があるため、粒子添加量を大きくすると透明性が低下する。そこで、透明性を維持できる適度の表面粗さは15.0nm以下、好ましくは5.0〜8.0nmである。Raが4.4nm以下の場合、キズ発生が大きくなり、生産性が低下する。
【0023】
本発明において、ポリエステルに粒子を配合する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し重縮合反応を進めてもよい。またベント付き混練押出を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0024】
なお、本発明で用いるポリエステルは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素等不活性気流中に必要に応じてさらに固相重合を施してもよい。得られるポリエステルの固有粘度は0.40dL/g以上であることが好ましく、0.40〜0.90dL/gであることがさらに好ましい。
【0025】
本発明のフィルムの全層厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常4〜300μm、好ましくは25〜188μmの範囲である。
【0026】
次に本発明のフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、以下の例示に特に限定されるものではない。まず、本発明で使用するポリエステルの製造方法の好ましい例について説明する。ここではポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートを用いた例を示すが、使用するポリエステルにより製造条件は異なる。常法に従って、テレフタル酸とエチレングリコールからエステル化し、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールをエステル交換反応を行い、その生成物を重合槽に移送し、減圧しながら温度を上昇させ、最終的に真空下で280℃に加熱して重合反応を進め、ポリエチレンテレフタレート得る。
【0027】
次に例えば上記のようにして得、公知の手法により乾燥したポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーを口金から押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。 延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145で2〜5倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で3〜6倍延伸を行い、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。さらに、前記の未延伸シートを面積倍率が10〜40倍になるように同時二軸延伸を行うことも可能である。
【0028】
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆるインラインコーティングを施すこともできる。それは以下に限定するものではないが、例えば、1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前に、帯電防止性、滑り性、接着性等の改良、2次加工性改良、耐候性および表面硬度の向上等の目的で、水溶液、水系エマルジョン、水系スラリー等によるコーティング処理を施すことができる。また、フィルム製造後にオフラインコートで各種のコートを行ってもよい。このようなコートは片面、両面のいずれでもよい。コーティングの材料としてはオフラインコーティングの場合は水系、溶媒系のいずれでもよいが、環境面を考慮してインラインコーティングの場合は水系が好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
(1)ポリエステルチップの極限粘度の測定
ポリエステルチップを1g精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mLに溶解させ、30℃で測定した。
【0031】
(2)平均粒径(d50)
粒子の粒径は、島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置(SA−CP3型)を用いて測定し、等価球形分布における積算体積分率50%の粒径(d50)を平均粒径とした。
【0032】
(3)ヘーズの測定
フィルムのヘーズは、JIS-K7136に準じてスガ試験機製のヘーズメーター(HZ−2)を用いて測定した。
【0033】
(4)3波長蛍光灯下での透過粒状感観察
フィルムに3波長蛍光灯光を透過させてフィルムの粒状感を目視観察した。フィルムの粒状感は下記基準で評価した。
<判定基準>
(粒状感小) ○>△>× (粒状感大)
○:フィルムの表面に粒子起因の凹凸がほとんど確認されず、滑らかに見える
△:粒子起因の凹凸が少し確認されるが、ほぼ滑らかに見える
×:粒子起因の凹凸がはっきり確認され、ざらついて見える
なお、上記判定基準中、△以上のものが実使用上問題なく使用できるレベルである。
【0034】
(5)算術平均粗さ(Ra)の測定
Raは、小坂研究所社製表面粗さ測定機(SE3500型)を用いて、JIS−B0601−1994に準じて測定した。なお測定長は2.5mmとした。
【0035】
(6)耐傷性評価
ロール状フィルムの表面のキズの個数を数え、キズのつきにくさを3段階で評価した。評価はロールサンプルをA4サイズに切り出して行った。
<判定基準>
(キズがつきにくい) ○>△>× (キズがつきやすい)
○:キズ発生頻度が3本以下
△:キズ発生頻度が5本以下
×:キズ発生頻度が5本以上
なお、上記判定基準中、△以上が実使用上問題なく使用できるレベルである。
【0036】
(7)金属蒸着を施したフィルムの粒状感観察
フィルムを約12cm四方に切断して(株)ULVAC社製真空蒸着機にセットし、フィルム表層にアルミニウムを蒸着した後、3波長蛍光灯光を反射させてフィルムの粒状感を目視観察した。アルミニウム蒸着厚さは500Åである。
<判定基準>
(金属蒸着時に粒状感小) ○>△>× (金属蒸着時に粒状感大)
○:フィルムの表面に粒子起因の凹凸がほとんど確認されず、金属光沢がくっきり見える
△:粒子起因の凹凸が少し確認され、金属光沢がややくすんで見える
×:粒子起因の凹凸がはっきり確認され、金属光沢がくすんで見える
なお、上記判定基準中、○のみが実使用上問題なく使用できるレベルである。
【0037】
(8)総合評価
上記(3)〜(7)の評価結果を踏まえてフィルム性能を総合的に評価した。
【0038】
(ポリエステルチップの製造)
<ポリエステルチップ(A)の製造>
テレフタル酸ジメチル100重量%とエチレングリコール60重量%とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェートを添加した後、重縮合槽に移し、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.64dL/gに相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステルチップ(A)を得た。この、ポリエステルの極限粘度は0.64dL/gであった。
【0039】
<ポリエステルチップ(B)の製造>
ポリエステルチップ(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェートを添加後、スチレン-ジビニルベンゼン共重合架橋粒子のエチレングリコールスラリーを粒子のポリエステルに対する含有量が0.5重量%となるように添加した以外はポリエステルチップ(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステルチップ(B)を得た。スチレン-ジビニルベンゼン共重合架橋粒子の製法は以下のとおりである。メタクリル酸メチル100部、ジビニルベンゼン25部、エチルビニルベンゼン22部、過酸化ベンゾイル1部、トルエン100部の均一溶液を水700部に分散させ、次に窒素雰囲気下80℃で6時間攪拌しながら加熱しながら重合を行った。得られたエステル基を有する架橋高分子粒状体の平均粒径は約0.1mmであった。生成ポリマーを脱塩水で水洗し500部のトルエンで2回抽出し、少量の未反応モノマー線状ポリマーを除去した。次に、この架橋高分子粒状体をアトライターおよびサンドグラインダーで2時間ずつ粉砕することで粒径の異なる平均粒子径0.8、1.4、2.3、4.4μmのスチレン-ジビニルベンゼン共重合架橋粒子を得た。得られたポリエステルチップ(B)は極限粘度0.62dL/gであった。
【0040】
<ポリエステルチップ(C)の製造>
ポリエステルチップ(B)の製造方法において、添加粒子を、平均粒子径2.7μmのシリカ粒子に、ポリエステルに対する含有量を0.3重量%にした以外は、ポリエステルチップ(B)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステルチップ(C)を得た。得られたポリエステルチップ(C)は極限粘度0.61dL/gであった。
【0041】
<ポリエステルチップ(D)の製造>
ポリエステルチップ(B)の製造方法において、添加粒子を、平均粒子径0.3μmの酸化アルミニウム粒子に、ポリエステルに対する含有量を1.5重量%にした以外は、ポリエステルチップ(B)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステルチップ(D)を得た。得られたポリエステルチップ(D)は極限粘度0.61dL/gであった。
【0042】
(ポリエステルフィルムの製造)
上記ポリエステルチップ(A)と、ポリエステルチップ(B)、(C)あるいは(D)とを、下記表1または2に示す割合で混合した混合原料をA層の原料とし、ポリエステルチップ(A)を100重量%配合した原料をB層の原料として2台のベント式二軸押出機に各々供給し、280℃で溶融し、A層を最外層(表層)、B層を中間層とする2種3層(A/B/A)の層構成で共押出して、表面温度を30℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、85℃にて縦方向に3.4倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て123℃で4.0倍の横延伸を施した後、235℃で10秒間の熱処理を行い、全層厚さ100μm、A層厚み2.7μmのポリエステルフィルムを各々得た。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のフィルムは、例えば、表示部材、成形用加飾部材等として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸フィルムであり、少なくとも一方の表層に、平均粒径0.7〜2.4μmのスチレン・ジビニルベンゼン共重合体架橋粒子を含有することを特徴とする共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項2】
ヘーズが2.0%以下である請求項1に記載の共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2013−94965(P2013−94965A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236553(P2011−236553)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】