説明

共振周波数予測方法

【課題】比較的容易に予測対象部の共振周波数を予測することができる共振周波数予測方法を得る。
【解決手段】第一ステップでは、フロントウインドシールドガラス16の固有振動を、フロントウインドシールドガラス16が両端部で弾性固定される2自由度振動系に近似させる。第二ステップでは、2自由度振動系の振動質量M及び慣性モーメントIを、フロントウインドシールドガラス16の質量、カウル部12の質量、及びフロントヘッダー部30Aの質量に基づいて算出する。第三ステップでは、カウル部12側の剛性K及びフロントヘッダー部30A側の剛性Kを重回帰分析によって算出する。第四ステップでは、第二ステップでの算出結果、第三ステップでの算出結果、及び、支持間距離L、に基づいて、2自由度振動系の理論式によってフロントウインドシールドガラス16の共振周波数fを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振周波数予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウインドシールドガラス等の共振は、車両のNV性能(ノイズバイブレーション性能)と密接に関係している(例えば、特許文献1参照)。一方、設計図に基づいてCAE解析をしたウインドシールドガラス等の共振周波数が目標値から大きく乖離していると、設計変更等に多くの工数がかかる場合がある。このため、設計検討段階のウインドシールドガラス等の共振周波数の予測が重要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−104438公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、ウインドシールドガラスの1次共振周波数は、その面形状や質量、支持部であるカウル構造やヘッダー構造等の様々な設計諸元や意匠が影響しており、設計検討段階での共振周波数の予測が困難であった。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、比較的容易に予測対象部の共振周波数を予測することができる共振周波数予測方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の共振周波数予測方法は、端部が取り付けられた車体部品を予測対象部とすると共に、前記予測対象部の固有振動を、前記予測対象部が前記端部で弾性固定される自由振動系の物理モデルに近似させ、前記物理モデルにおける前記予測対象部の質量成分を設計諸元に基づいて算出し、前記物理モデルにおける前記予測対象部の剛性成分を設計諸元に基づいて重回帰分析によって算出し、前記物理モデルと、前記質量成分と、前記剛性成分と、に基づいて前記予測対象部の共振周波数を算出する。
【0007】
請求項1に記載する本発明の共振周波数予測方法によれば、端部が取り付けられた車体部品を予測対象部としており、まず、予測対象部の固有振動を、予測対象部が端部で弾性固定される自由振動系の物理モデルに近似させる。次に、物理モデルにおける予測対象部の質量成分を設計諸元に基づいて算出し、物理モデルにおける予測対象部の剛性成分を設計諸元に基づいて重回帰分析によって算出する。最後に、物理モデルと、質量成分と、剛性成分と、に基づいて予測対象部の共振周波数を算出する。以上により、予測対象部の共振周波数が設計諸元によって算出される。
【0008】
請求項2に記載する本発明の共振周波数予測方法は、請求項1記載の構成において、一端部が第一支持部に取り付けられかつ他端部が前記第一支持部に対して車両幅方向に直交する方向に離れて配置された第二支持部に取り付けられる前記予測対象部の固有振動を、前記予測対象部が前記一端部及び前記他端部で弾性固定される2自由度振動系の物理モデルに近似させ、前記質量成分を、前記予測対象部の質量を含む設計諸元に基づいて2自由度振動系の質量成分として算出し、前記剛性成分を、前記第一支持部と前記予測対象部との結合部の車両幅方向中央部を車両上方側から押圧した場合における当該押圧に対する剛性、及び前記第二支持部と前記予測対象部との結合部の車両幅方向中央部を車両上方側から押圧した場合における当該押圧に対する剛性を含む変数に基づいて重回帰分析によって2自由度振動系の剛性成分として算出し、前記2自由度振動系の物理モデルと、前記2自由度振動系の質量成分と、前記2自由度振動系の剛性成分と、に基づいて、前記予測対象部の共振周波数を算出する。
【0009】
請求項2に記載する本発明の共振周波数予測方法によれば、まず、一端部が第一支持部に取り付けられかつ他端部が前記第一支持部に対して車両幅方向に直交する方向に離れて配置された第二支持部に取り付けられる予測対象部の固有振動を、予測対象部が一端部及び他端部で弾性固定される2自由度振動系の物理モデルに近似させる。次に、質量成分を、予測対象部の質量を含む設計諸元に基づいて2自由度振動系の質量成分として算出する。また、剛性成分を、第一支持部と予測対象部との結合部の車両幅方向中央部を車両上方側から押圧した場合における当該押圧に対する剛性、及び第二支持部と予測対象部との結合部の車両幅方向中央部を車両上方側から押圧した場合における当該押圧に対する剛性を含む変数に基づいて重回帰分析によって2自由度振動系の剛性成分として算出する。最後に、2自由度振動系の物理モデルと、2自由度振動系の質量成分と、2自由度振動系の剛性成分と、に基づいて、予測対象部の共振周波数を算出する。
【0010】
請求項3に記載する本発明の共振周波数予測方法は、請求項2記載の構成において、前記一端部が前記第一支持部に取り付けられかつ前記他端部が前記第二支持部に取り付けられることで前記第一支持部と前記第二支持部とに架け渡されると共に車体の開口部を閉止する前記予測対象部の固有振動を、前記予測対象部が前記一端部及び前記他端部で弾性固定される2自由度振動系に近似させる第一ステップと、前記2自由度振動系の振動質量M及び慣性モーメントIを、前記予測対象部の質量、前記第一支持部の質量、及び前記第二支持部の質量に基づいて算出する第二ステップと、前記第一支持部の剛性及び前記予測対象部の剛性を含む変数を第一の説明変数として重回帰分析によって第一の目的変数となる前記第一支持部側の剛性Kを算出すると共に、前記第二支持部の剛性及び前記予測対象部の剛性を含む変数を第二の説明変数として重回帰分析によって第二の目的変数となる前記第二支持部側の剛性Kを算出する第三ステップと、前記第二ステップで算出された前記振動質量M及び前記慣性モーメントI、前記第三ステップで算出された前記第一支持部側の剛性K及び前記第二支持部側の剛性K、並びに、前記第一支持部及び前記第二支持部による前記予測対象部の支持間距離L、に基づいて、2自由度振動系の以下の理論式(1)、(2)、すなわち、MIω−(K+K)(ML+I)ω+4K=0 ・・・(1)、f=ω/2π ・・・(2)によって前記予測対象部の共振周波数を算出する第四ステップと、を有する。
【0011】
請求項3に記載する本発明の共振周波数予測方法によれば、第一ステップでは、一端部が第一支持部に取り付けられかつ他端部が第二支持部に取り付けられることで第一支持部と第二支持部とに架け渡されると共に車体の開口部を閉止する予測対象部の固有振動を、予測対象部が一端部及び他端部で弾性固定される2自由度振動系に近似させる。第二ステップでは、2自由度振動系の振動質量M及び慣性モーメントIを、予測対象部の質量、第一支持部の質量、及び第二支持部の質量に基づいて算出する。第三ステップでは、第一支持部の剛性及び予測対象部の剛性を含む変数を第一の説明変数として重回帰分析によって第一の目的変数となる第一支持部側の剛性Kを算出すると共に、第二支持部の剛性及び予測対象部の剛性を含む変数を第二の説明変数として重回帰分析によって第二の目的変数となる第二支持部側の剛性Kを算出する。第四ステップでは、第二ステップで算出された振動質量M及び慣性モーメントI、第三ステップで算出された第一支持部側の剛性K及び第二支持部側の剛性K、並びに、第一支持部及び第二支持部による予測対象部の支持間距離L、に基づいて、2自由度振動系の以下の理論式(1)、(2)、すなわち、MIω−(K+K)(ML+I)ω+4K=0 ・・・(1)、f=ω/2π ・・・(2)によって予測対象部の共振周波数を算出する。
【0012】
このように、予測対象部の固有振動を2自由度振動系に近似させると共に、重回帰分析によって算出する範囲を狭くして予測対象部の固有振動数を算出することで、比較的容易に予測対象部の共振周波数が予測される。
【0013】
請求項4に記載する本発明の共振周波数予測方法は、請求項3記載の構成において、前記予測対象部は、フロントウインドウを閉止して車両上方へ向けて車両後方側に傾斜して配置されるフロントウインドシールドガラスとされ、前記第一支持部は、前記フロントウインドシールドガラスの前下端部が第一の接着剤で固定されて車両幅方向を長手方向として配置されるカウル部とされ、前記第二支持部は、前記フロントウインドシールドガラスの後上端部が第二の接着剤で固定されてルーフ部の前端部で車両幅方向を長手方向として配置されるフロントヘッダー部とされており、前記第三ステップでは、前記第一の説明変数として、前記第一の接着剤の剛性を更に含み、前記第二の説明変数として、前記第二の接着剤の剛性を更に含んでいる。
【0014】
請求項4に記載する本発明の共振周波数予測方法によれば、予測対象部は、フロントウインドウを閉止して車両上方へ向けて車両後方側に傾斜して配置されるフロントウインドシールドガラスとなっており、第一支持部は、フロントウインドシールドガラスの前下端部が第一の接着剤で固定されて車両幅方向を長手方向として配置されるカウル部となっており、第二支持部は、フロントウインドシールドガラスの後上端部が第二の接着剤で固定されてルーフ部の前端部で車両幅方向を長手方向として配置されるフロントヘッダー部となっている。そして、第三ステップでは、第一の説明変数として、第一の接着剤の剛性を更に含み、第二の説明変数として、第二の接着剤の剛性を更に含んでいる。これにより、フロントウインドウを閉止するフロントウインドシールドガラスの共振周波数が精度良くかつ比較的容易に予測される。
【0015】
請求項5に記載する本発明の共振周波数予測方法は、請求項1記載の構成において、一端部が第一支持部に取り付けられかつ他端部が第二支持部に取り付けられる前記予測対象部の固有振動を、前記予測対象部が前記一端部及び前記他端部で弾性固定される3自由度振動系の物理モデルに近似させ、前記質量成分を、前記予測対象部の質量を含む設計諸元に基づいて3自由度振動系の質量成分として算出し、前記剛性成分を、前記第一支持部の車両上下方向の振動と車両前後方向の振動とに対する剛性、及び前記第二支持部の車両上下方向の振動と車両前後方向の振動とに対する剛性を含む変数に基づいて重回帰分析によって3自由度振動系の剛性成分として算出し、前記3自由度振動系の物理モデルと、前記3自由度振動系の質量成分と、前記3自由度振動系の剛性成分と、に基づいて、前記予測対象部の共振周波数を算出する。
【0016】
請求項5に記載する本発明の共振周波数予測方法によれば、まず、一端部が第一支持部に取り付けられかつ他端部が第二支持部に取り付けられる予測対象部の固有振動を、予測対象部が一端部及び他端部で弾性固定される3自由度振動系の物理モデルに近似させる。次に、質量成分を、予測対象部の質量を含む設計諸元に基づいて3自由度振動系の質量成分として算出する。また、剛性成分を、第一支持部の車両上下方向の振動と車両前後方向の振動とに対する剛性、及び第二支持部の車両上下方向の振動と車両前後方向の振動とに対する剛性を含む変数に基づいて重回帰分析によって3自由度振動系の剛性成分として算出する。最後に、3自由度振動系の物理モデルと、3自由度振動系の質量成分と、3自由度振動系の剛性成分と、に基づいて、予測対象部の共振周波数を算出する。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る共振周波数予測方法によれば、比較的容易に予測対象部の共振周波数を予測することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る共振周波数予測方法で共振周波数が予測されるフロントウインドシールドガラス及びその周囲部を示す概略斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿って切断した状態を模式的に示す拡大断面図である。二点鎖線は振動による変形時の形状である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る共振周波数予測方法で適用する物理モデルを示す模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る共振周波数予測方法の予測システムフローを示すフロー図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る共振周波数予測方法において場合分けされるカウル部構造の代表例を示す模式的な側断面図である。図5(A)は第1の代表例を示し、図5(B)は第2の代表例を示す。
【図6】カウル部側の剛性Kとフロントヘッダー部側の剛性Kの比とフロントウインドシールドガラスの共振周波数の関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る共振周波数予測方法で共振周波数が予測されるラゲージドア及びその周囲部を示す概略斜視図である。
【図8】図7の8−8線に沿って切断した状態を模式的に示す拡大断面図である。図8(A)の二点鎖線は上下共振時の形状である。図8(B)の二点鎖線は前後共振時の形状である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る共振周波数予測方法で適用する物理モデルを示す模式図である。図9(A)は基本となる物理モデルであり、図9(B)は図9(A)をさらに具体化した物理モデルである。
【図10】本発明の第2の実施形態におけるラゲージドアを示す図である。図10(A)はラゲージドアの正面図(車両背面視の図)、図10(B)はラゲージドアの側面図、図10(C)はラゲージドアの底面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態におけるロアバック部を示す図である。図11(A)はロアバック部を車両幅方向中央部で切断した状態を示す側断面図、図11(B)はロアバック部を車両前方側から見た状態で示す図である。
【図12】本発明の第2の実施形態におけるロアバックリテーナを含むロアバック部の一部を車両前方側から見た状態で示す図である。
【図13】本発明の第2の実施形態におけるラゲージドアのロック部を示す図である。図13(A)はロック部の一部を示す斜視図である。図13(B)はロック部の模式的な側断面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態におけるラゲージドアのロック部に設けられたパッチにおいて場合分けされる二つの代表例を示す正面図である。図14(A)はパッチの第1の代表例を示し、図14(B)はパッチの第2の代表例を示す。
【図15】本発明の第2の実施形態におけるヒンジアームが取り付けられたラゲージドアを示す平面図である。
【図16】本発明の第2の実施形態におけるヒンジアームの形状を示す図である。図16(A)はヒンジアームの軸心を車両側面視で示し、図16(B)はヒンジアームの断面形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る共振周波数予測方法について図1〜図6を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示し、矢印Wは車両幅方向を示している。
【0020】
(予測対象の構成)
図1には、本発明の第1の実施形態に係る共振周波数予測方法で共振周波数が予測されるフロントウインドシールドガラス16及びその周囲部が概略斜視図にて示されている。また、図2には、図1の2−2線に沿って切断した状態の模式的な拡大断面図が実線で示され、振動時の変形状態が二点鎖線で示されている。最初にこれらについて説明する。
【0021】
図1に示されるように、車体SにおけるエンジンルームEの後部上端には、車室Rとの境界部に第一支持部(下端支持部)としてのカウル部12が配設されている。このカウル部12と、左右一対のフロントピラー14と、ルーフ部30の第二支持部としてのフロントヘッダー部30Aとに囲まれて、車両前上方側に向いて開口した開口部としてのフロントウインドウ10が形成されている。フロントウインドウ10は、予測対象部としてのフロントウインドシールドガラス16によって閉止されている。換言すれば、フロントヘッダー部30Aは、カウル部12に対して車両幅方向に直交する方向(より詳細には車両後上方側)に離れて配置されている。
【0022】
フロントウインドシールドガラス16は、一端部としての前下端部16Aがカウル部12に第一の接着剤としてのウレタンシーラント28(図2参照)で固定されると共に、他端部としての後上端部16Bがフロントヘッダー部30Aに第二の接着剤としてのウレタンシーラント36(図2参照)で固定されている。換言すれば、フロントウインドシールドガラス16は、カウル部12とフロントヘッダー部30Aとに架け渡されて車体Sに取り付けられており、車両上方へ向けて車両後方側に傾斜して配置されている。また、フロントウインドシールドガラス16の左右端は、それぞれフロントピラー14に支持又は固着されている。
【0023】
カウル部12は、車両幅方向を長手方向として配置された長尺状のカウルインナ18を備えており、カウルインナ18の下端はダッシュパネル20(図2参照)の上端に固着されている。また、カウル部12の縦断面図を一部拡大して示す図5(A)に示されるように、カウルインナ18の上端には、カウルアウタ22が固着されており、このカウルアウタ22の前端上面にフロントウインドシールドガラス16の前下端部16Aがウレタンシーラント28で固定されている。カウルアウタ22は、後フランジ22Aがカウルインナ18の上フランジ18Aにスポット溶接により接合されることで、上記の通りカウルインナ18上に固定されている。
【0024】
カウルインナ18の下端部は前方に延設されてカウルアウタ22の前部と対向する下フランジ18Bとされている。これにより、カウル部12は、カウルアウタ22及びカウルインナ18によって側断面視で車両前方側に開口する略コ字状に形成されている。また、図2に示されるように、下フランジ18Bには、車両前方側に延びるカウルフロント24が固着されており、カウルインナ18及びカウルフロント24によって車両上方側に開口するカウルボックス(エアボックス)Cを形成している。カウルボックスCは、図示しないカウルルーバ、エンジンフードの後端部によって上方側から覆われて閉止されるようになっている。
【0025】
図1に示されるように、カウル部12の車両幅方向中央部には、ブレース26(広義には「補強部材」として把握される要素である。)が設けられている。図5(A)に示されるように、ブレース26は、カウルインナ18の下端近傍とカウルアウタ22の前端とを架け渡してこれらに固着されている。ブレース26は、上下方向の中間部26Cが車両上方へ向けて車両前方側に傾斜して配置されており、上端部26Aが車両後上方側に屈曲されると共に、下端部26Bが車両下方側に屈曲されている。そして、上端部26Aはカウルアウタ22の前端部にスポット溶接により接合され、下端部26Bはカウルインナ18の下端部側の前面にスポット溶接により接合されている。
【0026】
以上により、カウル部12は、ブレース26の設置部位で閉断面構造を形成し、他の部分では車両前方側に開口する開断面(図5(A)でブレース26を外した形状の断面)を形成している。ブレース26は、フロントウインドシールドガラス16の振動等の微小入力に対しては補強部材として作用し、上方側からカウル部12に衝突体が衝突する場合等の大入力に対しては補強効果が小さい構成とされている。
【0027】
なお、上述したカウル部12の構造は、車種によって大きく異なる。例えば、上述したカウル部12の構造に代えて、図5(B)に示される第一支持部としてのカウル部40の構造が適用される場合がある。図5(B)に示されるように、カウル部40は、カウルインナ18の上下方向の中間部に車両前方側へ凸となるように屈曲部42が形成されている点が特徴である。屈曲部42は、車両幅方向に沿った稜線を備えている。なお、図5(B)において、図5(A)に示されるカウル部12の構造と実質的にほぼ同様の構成部には同一符号を付して説明を省略する。
【0028】
一方、図2に示されるルーフ部30の前端部に設けられたフロントヘッダー部30Aは、ルーフパネル32の前端部と車両幅方向を長手方向とする長尺状のルーフフロントクロスメンバ34とで構成されている。ルーフフロントクロスメンバ34は、ルーフパネル32の前端部の下面側に配置され、車両側面視の断面形状が車両上方側に開口する略ハット状とされており、ルーフパネル32の前端部の下面に結合されることにより、閉断面構造を形成するようになっている。ルーフパネル32の前端フランジ部は、ルーフパネル32の一般部32Aに対して車両下方側に一段下がって形成されてルーフフロントクロスメンバ34の前端フランジ部34Aが結合されると共に、その上面側にはフロントウインドシールドガラス16の後上端部16Bがウレタンシーラント36で固定されている。
【0029】
また、図1に示されるように、ルーフフロントクロスメンバ34の長手方向の両端部はルーフサイドレール38の前端部にスポット溶接により結合されている。ルーフサイドレール38は、ルーフ部30における車両幅方向の両サイドでルーフパネル32の下面側に設けられ、略車両前後方向を長手方向として配置されている。
【0030】
(共振周波数予測方法)
次に、本実施形態に係る共振周波数予測方法について説明する。
【0031】
まず、第一ステップでは、フロントウインドウ10を閉止するフロントウインドシールドガラス16の固有振動(1次共振の固有モード)を、フロントウインドシールドガラス16が前下端部16A及び後上端部16Bで弾性固定(弾性的に固定)される2自由度振動系(広義には自由振動系)に近似させる。図3には、この2自由度振動系の物理モデル(すなわち、フロントウインドシールドガラス16の1次共振の近似物理モデル)が模式図にて示されている。
【0032】
図3においては、架け渡された部分50がフロントウインドシールドガラス16、Kがカウル部12側の剛性、Kがフロントヘッダー部30A側の剛性をそれぞれ想定したモデルになっている。また、2自由度振動系の振動質量をM、慣性モーメントをIでそれぞれ示している。
【0033】
第二ステップでは、この2自由度振動系の振動質量M及び慣性モーメントIを、フロントウインドシールドガラス16の質量、カウル部12の質量、及びフロントヘッダー部30Aの質量に基づいて算出する。すなわち、第二ステップでは、物理モデルにおける予測対象部の2自由度振動系の質量成分を設計諸元に基づいて算出する。第二ステップは、図4のフロー図では符号52が付された右側のフローで示されている。
【0034】
また、第三ステップでは、カウル部12の剛性及びフロントウインドシールドガラス16の剛性を含む変数を第一の説明変数として重回帰分析によって第一の目的変数となるカウル部12側の剛性Kを算出すると共に、フロントヘッダー部30Aの剛性及びフロントウインドシールドガラス16の剛性を含む変数を第二の説明変数として重回帰分析によって第二の目的変数となるフロントヘッダー部30A側の剛性Kを算出する。すなわち、第三ステップでは、物理モデルにおける予測対象部の2自由度振動系の剛性成分を設計諸元に基づいて重回帰分析によって算出する。第三ステップは、図4のフロー図では符号54が付された左側のフローで示されている。なお、第二ステップと第三ステップの順序は逆であってもよい。
【0035】
ここで、フロントヘッダー部30A側の剛性Kの算出、及びカウル部12側の剛性Kの算出について、具体的に説明する。なお、フロントヘッダー部30A側の剛性Kは、図1に示されるフロントヘッダー部30Aとフロントウインドシールドガラス16との結合部の車両幅方向中央部を上方側から押圧した場合における当該押圧に対する剛性(剛性値)である。また、カウル部12側の剛性Kは、カウル部12とフロントウインドシールドガラス16との結合部の車両幅方向中央部を上方側から押圧した場合における当該押圧に対する剛性(剛性値)である。
【0036】
まず、フロントヘッダー部30A側の剛性Kは、フロントウインドシールドガラス16の単体の剛性Kg、フロントヘッダー部30Aの単独の剛性Kh、及びフロントウインドシールドガラス16とフロントヘッダー部30Aとを接着しているウレタンシーラント36(図2参照)の剛性Kaがそれぞれ寄与をしている。なお、フロントウインドシールドガラス16の単体の剛性Kgとは、フロントウインドシールドガラス16の単体における上端部の車両幅方向中央部を上方側から押圧した場合における当該押圧に対する剛性(剛性値)である。また、フロントヘッダー部30Aの単独の剛性Khとは、フロントヘッダー部30Aの単独の前端部(フロントウインドシールドガラス16と結合される部位)の車両幅方向中央部を上方側から押圧した場合における当該押圧に対する剛性(剛性値)である。また、ウレタンシーラント36(図2参照)の剛性Kaとは、ウレタンシーラント36を上方側から押圧した場合における当該押圧に対する剛性(剛性値)である。
【0037】
上記より、フロントヘッダー部30A側の剛性Kは、関数式:K=f(Kg,Kh,Kaで表せる。しかしながら、これらの構成要素の物理的な関係は車種によって異なり、例えば、これらの構成要素が直列バネの関係にあるのか並列バネの関係にあるのか又はそれらの複合的な関係にあるのかは分からないので、フロントヘッダー部30A側の剛性Kは理論式では求められない。このため、本実施形態では、フロントヘッダー部30A側の剛性Kを目的変数とし、フロントウインドシールドガラス16の単体の剛性Kg、フロントヘッダー部30Aの単独の剛性Kh、及びウレタンシーラント36(図2参照)の剛性Kaを説明変数として、重回帰分析を行い、回帰式によりフロントヘッダー部30A側の剛性Kが求められる。すなわち、フロントヘッダー部30A側の剛性Kが統計的な手法を用いて予測される。
【0038】
ところで、フロントウインドシールドガラス16の単体の剛性Kgは、その形状、板厚、及び材質により決定される。そこで、本実施形態では、フロントウインドシールドガラス16の単体の剛性Kgを目的変数としてフロントウインドシールドガラス16の単体の関連する諸元を説明変数として重回帰分析を行い、回帰式によりフロントウインドシールドガラス16の単体の剛性Kgを求めた。なお、その際の説明変数としては、フロントウインドシールドガラス16の上端の車両幅方向長さ、フロントウインドシールドガラス16の下端の車両幅方向長さ、フロントウインドシールドガラス16の車両幅方向中央部での縦方向長さ、フロントウインドシールドガラス16の上端の車両幅方向中央部での側面視ラウンド量、フロントウインドシールドガラス16の下端の車両幅方向中央部での側面視ラウンド量、フロントウインドシールドガラス16の縦方向中央部で車両幅方向中央部での側面視膨出量(所謂ダブリ量)、フロントウインドシールドガラス16のガラス板厚、及びフロントウインドシールドガラス16のガラスヤング率を用いた。
【0039】
また、フロントヘッダー部30Aの単独の剛性Khは、フロントヘッダー部30Aを高さ方向及び長手方向にラウンド形状をもった梁とみなし、梁剛性の算出に必要な特性から、関連する諸元を説明変数として選択し、重回帰分析を行って回帰式により求めた。なお、その際の説明変数としては、フロントヘッダー部30Aの断面2次モーメント、フロントヘッダー部30Aの高さ方向のラウンド量、フロントヘッダー部30Aの長手方向のラウンド量、及びフロントヘッダー部30A(ルーフフロントクロスメンバ34)のルーフサイドレール38との打点位置を用いた。
【0040】
一方、カウル部12側の剛性Kは、フロントウインドシールドガラス16の単体の剛性Kg、カウル部12の単体の剛性Kc、フロントウインドシールドガラス16とカウル部12とを接着しているウレタンシーラント28(図2参照)の剛性Ka、及びブレース26の単体の剛性Kbがそれぞれ寄与をしている。なお、フロントウインドシールドガラス16の単体の剛性Kgとは、フロントウインドシールドガラス16の単体における下端部の車両幅方向中央部を上方側から押圧した場合における当該押圧に対する剛性(剛性値)である。また、カウル部12の単体の剛性Kcとは、カウル部12の単体における上端部(フロントウインドシールドガラス16と結合される部位)の車両幅方向中央部を上方側から押圧した場合における当該押圧に対する剛性(剛性値)である。また、ウレタンシーラント28(図2参照)の剛性Kaとは、ウレタンシーラント28を上方側から押圧した場合における当該押圧に対する剛性(剛性値)である。さらに、ブレース26の単体の剛性Kbとは、ブレース26の単体の上端部(カウルアウタ22(図2参照)と結合される部位)を上方側から押圧した場合における当該押圧に対する剛性(剛性値)である。
【0041】
上記より、カウル部12側の剛性Kは、関数式:K=f(Kg,Kc,Ka,Kb)で表せる。しかしながら、これらの構成要素の物理的な関係は車種によって異なり、例えば、これらの構成要素が直列バネの関係にあるのか並列バネの関係にあるのか又はそれらの複合的な関係にあるのかは分からないので、カウル部12側の剛性Kも理論式では求められない。このため、本実施形態では、カウル部12側の剛性Kを目的変数とし、フロントウインドシールドガラス16の単体の剛性Kg、カウル部12の単体の剛性Kc、ウレタンシーラント28(図2参照)の剛性Ka、及びブレース26の単体の剛性Kbを説明変数として、重回帰分析を行い、回帰式によりカウル部12側の剛性Kが求められる。すなわち、カウル部12側の剛性Kが統計的な手法を用いて予測される。
【0042】
また、カウル部12の断面形状は、フロントヘッダー部30Aの断面形状と比較すると、設計の幅が広く、車種により多様な形状があり、振動時の断面変形も構造によって大きく異なる。このため、本実施形態では、振動時の断面変形分析に基づいて図5(A)及び図5(B)に示される二つのケースに場合分けを行った。すなわち、図5(B)に示されるように、カウルインナ18の上下方向の中間部に車両前方側へ凸となるように屈曲部42が形成されている場合には、図5(B)と同じグループとし、屈曲部が形成されていない場合は図5(A)と同じグループとして、回帰式を設定した。なお、説明変数としては、カウルアウタ板厚、カウルインナ板厚、スポット溶接の打点位置、及びブレースの位置を用いた。
【0043】
さらに、図4に示されるように、第四ステップ(符号56参照)では、第二ステップで算出された振動質量M及び慣性モーメントI、第三ステップで算出されたカウル部12側の剛性K及びフロントヘッダー部30A側の剛性K、並びに、カウル部12及びフロントヘッダー部30Aによるフロントウインドシールドガラス16の支持間距離L、に基づいて、2自由度振動系の以下の理論式(1)、(2)
MIω−(K+K)(ML+I)ω+4K=0 ・・・(1)
f=ω/2π ・・・(2)
によってフロントウインドシールドガラス16の共振周波数fを算出する。なお、ωはフロントウインドシールドガラス16の角固有振動数である。
【0044】
以上について補足説明すると、本実施形態の共振周波数予測方法以外の方法として、例えば、フロントウインドシールドガラスの1次共振周波数を目的変数とし、設計諸元を説明変数として、重回帰分析手法を用いて回帰予測式を導出することも理屈上は考え得るが、以下の要因により回帰予測式の導出は困難である。まず、フロントウインドシールドガラスの1次共振に寄与する設計諸元、意匠諸元は30程度と多い。また、予測精度を確保するためには、設計の幅を考慮すれば、各因子で5水準程度採ることが必要であると考えられ、300ケース程度の詳細なデータが必要になる。そして、一因子の形状等を変えると関係する部位の因子の形状等も変えることになるので、あらゆるケースを想定してモデル化するのは困難である。
【0045】
これに対して、本実施形態では、予測精度向上のために、共振周波数は、2自由度振動系の物理的な理論式で求めることとし、理論式中の変数のうち、剛性項を重回帰分析による回帰式を用いて予測し、質量項を部品単位(構成部単位)の質量から算出するので、重回帰分析によって算出する範囲を狭くすることができる。これにより、比較的容易にフロントウインドシールドガラス16の共振周波数が予測される。
【0046】
なお、前述のように、カウル部12側の構造は車種により多様であるため、カウル部12側の剛性Kを重回帰分析により精度良く予測することは容易ではない。一方、カウル部12側の剛性Kの寄与を調べるために、カウル部12側の剛性Kとフロントヘッダー部30A側の剛性Kの比と共振周波数の関係を検討したところ、図6に示されるように、K/Kの値が1.4より大きい領域ではカウル部12側の剛性Kの寄与が低いこと(共振周波数(縦軸)の値があまり変わらないこと)が分かった。よって、本実施形態に係る共振周波数予測方法は、(K/K)>1.4の範囲を適用範囲とすることが好ましい。なお、図6のグラフは、3車種について試験を行ったものであり、フロントヘッダー部30A側の剛性Kの値を一定にしてカウル部12側の剛性Kを変えることによって、横軸のK/Kの値を変化させた結果を示している。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る共振周波数予測方法によれば、比較的容易にフロントウインドウ10を閉止するフロントウインドシールドガラス16の共振周波数を予測することができる。
【0048】
ちなみに、本実施形態に係る共振周波数予測方法の精度を確認するために、既存の9車種(ボデーサイズが偏らないように選択したもの)の車両詳細モデルを用いて、本実施形態に係る共振周波数予測方法による予測結果と、設計図に基づくCAE詳細検討結果との比較を行ったところ、9車種のすべてにおいて目標とする2Hz以内の精度で予測することができた。
【0049】
(第1実施形態の変形例)
なお、上記実施形態では、図1に示されるフロントウインドウ10を閉止するフロントウインドシールドガラス16の1次共振周波数を予測しているが、共振周波数予測方法は、2自由度振動系に近似可能な車両の他の部位(例えば、リヤウインドウを閉止するリヤガラス等)の共振周波数の予測に適用してもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、図2に示されるように、予測対象部としてのフロントウインドシールドガラス16は、カウル部12にウレタンシーラント28で固定されると共にフロントヘッダー部30Aにウレタンシーラント36で固定されているが、予測対象部の一端部は、ウレタンシーラント28以外の接着剤や溶着、締結等のような他の固定手段で第一支持部に固定されていてもよく、予測対象部の他端部は、ウレタンシーラント36以外の接着剤や溶着、締結等のような他の固定手段で第二支持部に固定されていてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、カウル部12の車両幅方向中央部にはブレース26が設けられているが、ブレース26が設けられていないカウル部が第一支持部とされてもよいし、ブレースが複数設けられたカウル部が第一支持部とされてもよい。
【0052】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る共振周波数予測方法について図7〜図16を用いて説明する。
【0053】
(予測対象の構成)
図7には、本発明の第2の実施形態に係る共振周波数予測方法で共振周波数が予測される予測対象部としてのラゲージドア60及びその周囲部が概略斜視図にて示されている。また、図8には、図7の8−8線に沿って切断した状態の模式的な拡大断面図が実線で示され、図8(A)には上下共振時の変形状態、図8(B)には前後共振時の変形状態がそれぞれ二点鎖線で示されている。最初にこれらについて説明する。
【0054】
図7に示されるように、車両後部には、ラゲージルーム62を開閉可能に覆うラゲージドア60(広義には「開閉体」として把握される要素である。)が配設されている。ラゲージドア60は、車両側面視で略L字形状とされており、ドア外板を構成するドアアウタパネル60Aと、ドア内板を構成するドアインナパネル60B(図8(B)参照)と、を備えている。ラゲージドア60における車両幅方向の両サイドには、上端前部にヒンジアーム64(ラゲージドアヒンジ)が取り付けられている。ラゲージドア60はヒンジアーム64を介して車両側に取り付けられている。
【0055】
ヒンジアーム64は、断面が略矩形状とされる角パイプ(図16(B)参照)を略フック形状に曲げて形成されている。ヒンジアーム64の一端側(車両前方側)は、第一支持部としてのアッパバックパネル66にヒンジブラケット68を介して回転可能に支持されている。すなわち、ヒンジアーム64の一端側(図7の左側の先端側)には、貫通孔が車両幅方向(矢印W方向)に貫通して形成されており、この貫通孔に車両幅方向(矢印W方向)に延在する軸65が挿入され、これによって、ヒンジアーム64が軸65回りに回転移動可能に支持されている。なお、ヒンジアーム64の一端側の貫通孔の形成部位は、図16(A)において符号64Yとして示される。
【0056】
図7に示されるように、ヒンジアーム64の他端側(車両後方側)には、略車両後方側に延設されたドア取付部64Iが形成されている。このドア取付部64Iは、前後二点の取付点64X(図15参照)でラゲージドア60側にボルト締結されている。また、図15に示されるように、ラゲージドア60のドアインナパネル60Bには、ヒンジアーム64のドア取付部64Iの配置位置にパッチ58が接合されている。なお、図7に示されるヒンジアーム64に略U字形状に曲げられた湾曲部が形成されることで、ヒンジアーム64の回転移動時にヒンジアーム64がアッパバックパネル66と干渉しないようになっている。
【0057】
ここで、ヒンジアーム64の形状を詳細に説明する。図16(A)には、ヒンジアーム64の軸心を車両側面視で見た状態の図が示されている。ヒンジアーム64は、車体に支持される一端側(図中の左側の先端側)において直線状に延在する第一直線部64Aから、第一曲部64B、第二直線部64C、第二曲部64D、第三直線部64E、第三曲部64F、第四直線部64G、及び第四曲部64Hを経て、ラゲージドア60(図7参照)に固定される直線状のドア取付部64Iに至る略フック形状とされている。
【0058】
第一直線部64Aは、直線状とされ、ラゲージドア60(図7参照)の閉止状態では、車両下方側へ向けて車両前方側に傾斜している。第一直線部64Aに連続する第一曲部64Bは、アッパバックパネル66(図7参照)の下方に設けられる車体側部材(図示省略)との干渉を避けるために、鈍角状に曲げられた曲部とされている。第一曲部64Bに連続する第二直線部64Cは、直線状とされ、ラゲージドア60(図7参照)の閉止状態では、略車両下方側(厳密には、車両下方側へ向けて車両前方側に若干傾斜した方向)へ延在している。第二直線部64Cに連続する第二曲部64Dは、円弧状に約90度曲げられた曲部とされている。
【0059】
第二曲部64Dに連続する第三直線部64Eは、直線状とされ、ラゲージドア60(図7参照)の閉止状態では、略車両後方側(厳密には、車両後方側へ向けて車両上方側に若干傾斜した方向)へ延在している。第三直線部64Eに連続する第三曲部64Fは、第二曲部64Dに比べて大きな曲率半径で略円弧状に曲げられた曲部とされている。第三曲部64Fに連続する第四直線部64Gは、直線状とされ、ラゲージドア60(図7参照)の閉止状態では、車両上方側へ向けて車両後方側に傾斜している。第四直線部64Gに連続する第四曲部64Hは、第三曲部64Fとは逆方向に鈍角状に曲げられた曲部とされている。さらに、第四曲部64Hに連続するドア取付部64Iは、直線状とされており、ラゲージドア60(図7参照)の閉止状態では、車両前後方向に延在している。
【0060】
図7に示されるように、ラゲージドア60の下端部における車両幅方向中央部には、ロックアッセンブル70(図中では簡略して図示)が取り付けられている。図13に示されるように、ロックアッセンブル70を構成するロックベース70Aは、パッチ72を介してドアインナパネル60Bに固定されると共にその先端部がドアインナパネル60B側から離間するように突出している。このロックベース70Aの先端部には、ドア閉止状態で略車両下方側に開口するストライカ挿入溝70A1が形成されている。また、ロックベース70Aにはフック70Bが回転移動可能に設けられている。フック70Bは、その先端部がストライカ挿入溝70A1側の係止位置に配置された状態では、ストライカ挿入溝70A1の底部とフック70Bの先端部との間にストライカ78(図7参照)を挟持(係止)可能となっている。そして、図7に示されるロックアッセンブル70とストライカ78とは、ラゲージドア60のロック部74を構成している。
【0061】
図7に示されるように、ストライカ78は、ラゲージルーム62の開口部寄りで車両後端側の車両幅方向中央部分に設けられて第二支持部としてのロアバック部76に取り付けられている。図11(A)には、ロアバック部76が車両幅方向中央部で切断された状態の側断面図が示され、図11(B)には、ロアバック部76を車両前方側から見た状態が示されている。図11に示されるように、ロアバック部76は、外板を構成するロアバックアウタパネル76Aと、内板を構成するロアバックインナパネル76Bと、を備えている。ロアバックアウタパネル76Aとロアバックインナパネル76Bとは、ロアバック部76の車両幅方向中央部を除く左右両側の部分では、閉断面を形成している。また、ストライカ78が取り付けられるロアバック部76の車両幅方向中央部には、ロアバックアウタパネル76Aとロアバックインナパネル76Bとの間に、ストライカ78の取付用とされたストライカリテーナ76C及びパッチ76Dが設けられている。ストライカリテーナ76Cは、ロアバック部76が車両前後方向に傾倒しようとするのを抑制する機能を有する。
【0062】
(共振周波数予測方法)
次に、本実施形態に係る共振周波数予測方法について説明する。なお、処理フローは基本的に第1の実施形態における処理フロー(図4参照)と同様のフローとなっている。また、図8では、図示していないが、ラゲージドア60の共振には、上下共振、前後共振の他にピッチング共振がある。そして、ラゲージドア60は、上下、前後、回転の3つの自由度を持っているため、上下及び前後の共振周波数を予測するためには、3自由度の物理モデルに対する共振予測が必要となる。
【0063】
前述の通り、図7に示されるラゲージドア60は、上端部(一端部)がヒンジアーム64及びヒンジブラケット68を介してアッパバックパネル66に取り付けられかつ下端部(他端部)がストライカ78等のロック部74を介してロアバック部76に取り付けられている。そして、本実施形態に係る共振周波数予測方法では、まず、ラゲージドア60の固有振動を、ラゲージドア60が上端部(一端部)及び下端部(他端部)で弾性固定(弾性的に固定)される3自由度振動系(広義には自由振動系)の物理モデルに近似させる。図9には、この3自由度振動系の物理モデル(すなわち、ラゲージドア60の共振の近似物理モデル)が模式図にて示されている。図9(A)は基本となる物理モデルであり、図9(B)は図9(A)をさらに具体化した物理モデルである。
【0064】
図9(A)においては、両端部を支持された部分80がラゲージドア60、Kがヒンジ側剛性、Kがロアバック側剛性をそれぞれ想定したモデルになっている。ラゲージドア60を想定して両端部を支持された部分80のうち、上側横辺の長さをLa、後側縦辺の長さをLbで示している。また、K及びKについて、末尾に「x」が付けられたものは車両前後方向の荷重に対する剛性、末尾に「z」が付けられたものは車両上下方向の荷重に対する剛性を想定している。また、3自由度振動系の振動質量をM、慣性モーメントをIでそれぞれ示している。なお、図中のGは(ASSY化された状態の)ラゲージドア60の重心、Lはヒンジ側支持点と重心Gとの距離、Lはロアバック側支持点と重心Gとの距離をそれぞれ示している。また、角度αは、ヒンジ側支持点と重心Gとを結ぶ直線と、上側横辺と、が成す角度を示し、角度βは、ロアバック側支持点と重心Gとを結ぶ直線と、後側縦辺と、が成す角度を示している。
【0065】
また、図9(B)においては、両端部を支持された逆L字形状部分80がラゲージドア60、kがアッパバックパネル66の取付部剛性、kがヒンジアーム64の単体剛性、kがラゲージドア60の取付部剛性、kがロック部74の局所剛性、kがロアバック部76の剛性をそれぞれ想定したモデルになっている。また、k〜kについて、末尾に「x」が付けられたものは車両前後方向の荷重に対する剛性、末尾に「z」が付けられたものは車両上下方向の荷重に対する剛性を想定している。さらに、3自由度振動系の振動質量をM、慣性モーメントをIでそれぞれ示している。
【0066】
なお、図9(B)では、便宜上、kx〜kx、kz〜kz、kx〜kx、及びkz〜kzが、それぞれ直列バネの関係にあるように繋がれているが、これらは並列バネの関係にある場合や直列バネと並列バネとの複合的な関係にある場合もあり得る。換言すれば、ここでは、便宜上、直列バネの関係にあるように示しているが、実際には各構成要素がどのような関係にあるのか分からないため、重回帰分析を行って、回帰式により、図9(A)のKx、Kz、Kx、Kzが求められる。
【0067】
次に、物理モデルにおけるラゲージドア60の質量成分を、ラゲージドア60の質量を含む設計諸元に基づいて3自由度振動系の質量成分として算出する。また、物理モデルにおけるラゲージドア60の剛性成分を、アッパバックパネル66の車両上下方向の振動と車両前後方向の振動とに対する剛性、及びロアバック部76の車両上下方向の振動と車両前後方向の振動とに対する剛性を含む変数に基づいて重回帰分析によって3自由度振動系の剛性成分として算出する。これらの算出について、以下具体的に説明する。
【0068】
まず、手順1として、図10に示されるラゲージドア60の寸法及び質量、並びにウェザーストリップの諸元から、振動質量M、慣性モーメントI、及びウェザー寄与分のばね剛性を算出する。なお、図10(A)はラゲージドア60の正面図(車両背面視の図)、図10(B)はラゲージドア60の側面図、図10(C)はラゲージドア60の底面図である。ラゲージドア60については、艤装込みの重量、スポイラー重量、ヒンジ取付点60Xの座標、ロック嵌合部60Yの座標、ドアアウタパネル60Aの上後端における角部60Zの座標が、入力項目とされて振動質量M及び慣性モーメントIが算出される。なお、各座標は、車両前後方向位置の座標及び車両上下方向位置の座標である。
【0069】
ウェザーストリップに関連しては、ドアインナパネル60Bの外周部側に配設されるウェザーストリップ(図示省略)については、100mm分での車両前後方向、車両幅方向及び車両上下方向のばね性(kgf/mm)と、ドア開口部に取り付けられたドアオープニングトリムの寸法が、入力項目とされてウェザー寄与分のばね剛性が算出される。ドアオープニングトリムの寸法は、車両背面視での上辺及び下辺の各寸法と、車両側面視での上端側の略車両前後方向の辺(逆L字形の上側横辺)及び後端側の略車両上下方向の辺(逆L字形の後側縦辺)における各寸法と、が対象になる。
【0070】
次に、手順2として、図11に示されるロアバック部76の設計諸元からロアバック部76の剛性k(図9(B)参照、より正確にはロアバック部76側の局所剛性)を算出する。ロアバック部76については、ロアバックインナパネル76Bの板厚、ロアバックアウタパネル76Aの板厚、ストライカリテーナ76Cの板厚、パッチ76Dの板厚、及びロアバック部76の断面2次モーメントが、前記剛性k(図9(B)参照)を算出するための入力項目とされる。なお、ロアバック部76の断面2次モーメントは、ロアバックアウタパネル76Aとロアバックインナパネル76Bとで閉断面が形成される一般断面でかつ貫通孔の形成されていない部位での値が採用される。また、前記の入力項目に加えて、ストライカリテーナ76Cについて、ロアバックインナパネル76Bの下端よりも下方側に延出されているか否か及びその延出量HLR(図12参照)、ストライカリテーナ76Cの断面2次モーメントも、前記剛性k(図9(B)参照)を算出するための入力項目とされる。
【0071】
次に、手順3として、図13に示されるラゲージドア60のロック部74の設計諸元からロック部74の局所剛性k(図9(B)参照)を算出する。ロック部74については、ドアインナパネル60Bの板厚、ロックベース70Aの板厚、パッチ72の板厚、ロック位置のオフセット量LOF、パッチ72に上方側への延出部が設けられているか否か及びその長さLP(図14参照)、ドアインナパネル60Bとドアアウタパネル60Aとの所定位置での打点の有無及び打点間距離LD(図14参照)が、前記剛性k(図9(B)参照)を算出するための入力項目とされる。なお、ロック位置のオフセット量LOFは、図13(B)に示されるように、ロックベース70Aのドアインナパネル60Bへの取付点70Xと、ロックベース70Aのストライカ挿入溝70A1(図13(A)参照)にストライカ78が噛み合う上端位置との距離(車両側面視でロックベース70Aの下端部が延出する方向の距離)である。
【0072】
また、パッチ72に上方側への延出部が設けられているか否かは、ロックアッセンブル70に対応してその取付領域の面剛性を確保する目的のみで配置される範囲内にあるか、その範囲を超えて上方側に延出するものであるかにより判断される。図14(A)の場合は「延出部なし」であり、図14(B)の場合は「延出部あり」である。また、延出部の長さは、図14(B)の長さ72Lである。さらに、ドアインナパネル60Bとドアアウタパネル60A(図13(B)参照)との打点の有無が判断される部位は、ロックアッセンブル70の上方側近傍でかつ曲げ変形が想定される範囲とされている。図中では、「打点有り」と判断される場合の打点位置を一例として符号61Xで示す。また、打点間距離は図14(A)の符号61Lで示される距離である。
【0073】
次に、手順4として、図15に示されるラゲージドア60の設計諸元からラゲージドア60の取付部剛性k(図9(B)参照)を算出する。ここでは、ドアアウタパネル60Aの板厚、パッチ58の板厚、及び、ドアインナパネル60Bとドアアウタパネル60Aとで構成された部位の断面2次モーメントが、前記剛性k(図9(B)参照)を算出するための入力項目とされる。
【0074】
次に、手順5として、図7に示されるヒンジアーム64及びアッパバックパネル66の設計諸元からヒンジアーム64の単体剛性k(図9(B)参照)及びアッパバックパネル66の取付部剛性k(図9(B)参照)を算出する。ここでは、図16(A)に示されるヒンジアーム64の寸法L1〜L4、R1、R2、及びヤング率、図16(B)に示されるヒンジアーム64の断面の寸法A1、A2、及び板厚、並びに、ヒンジアーム64をラゲージドア60の開き方向に付勢するためのトーションビーム(図示省略)の外径が、剛性k(図9(B)参照)を算出するための入力項目とされる。
【0075】
ここで、寸法L1〜L4について説明するが、説明中の方向は、ラゲージドア60(図7参照)が閉止された状態での方向とする。寸法L1は、ヒンジブラケット68(図7参照)との取付点(貫通孔形成位置64Y)とドア取付部64Iの前側の取付点64Xとの車両前後方向の距離である。寸法L2は、ドア取付部64Iの前側の取付点64Xとヒンジアーム64の最下端部位との車両上下方向の距離である。寸法L3は、ヒンジブラケット68(図7参照)との取付点(貫通孔形成位置64Y)とヒンジアーム64の最下端部位との車両上下方向の距離である。寸法L4は、ヒンジアーム64の最前端部位とヒンジアーム64の最下端部位との車両前後方向の距離である。
【0076】
また、寸法R1は、第二曲部64Dの長さであり、寸法R2は、第三曲部64Fの長さである。また、図16(B)に示される断面内の点線は、板厚中央線であり、寸法A1は、図中で左右一対の辺部の板厚中央線同士の距離であり、寸法A2は、図中で上下一対の辺部の板厚中央線同士の距離である。
【0077】
また、図7に示されるヒンジブラケット68のアッパバックパネル66側への取付形態を判断するためのフラグ、アッパバックパネル66の板厚、及びヒンジブラケット68の板厚が、アッパバックパネル66の取付部剛性k(図9(B)参照)を算出するための入力項目とされる。ヒンジブラケット68のアッパバックパネル66側への取付形態を判断するためのフラグは、具体的には、ヒンジブラケット68がアッパバックパネル66のみに溶接されている場合と、ヒンジブラケット68が車両前方側へ延設された延設部を備えてアッパバックパネル66及び車体骨格部材(より詳細にはアッパバックパネル66とシートバック(図示省略)との間に配設された閉断面の骨格部材)に溶接される場合と、を区別するためのフラグである。
【0078】
以上の手順1〜手順5によって、図9(B)に示されるkx〜kx、kz〜kz、kx〜kx、及びkz〜kzが算出される。そして、kx〜kxを説明変数としてKx(図9(A)参照)を目的変数とし、kz〜kzを説明変数としてKz(図9(A)参照)を目的変数とし、kx〜kxを説明変数としてKx(図9(A)参照)を目的変数とし、kz〜kzを説明変数としてKz(図9(A)参照)を目的変数とし、それぞれ重回帰分析によって各目的変数を算出する。
【0079】
最後に、図9(A)に示される3自由度振動系の物理モデルと、3自由度振動系の質量成分(M,I)と、3自由度振動系の剛性成分(Kx,Kz,Kx,Kz)と、に基づいて、ラゲージドア60の共振周波数を算出する。具体的には、3自由度振動系の以下の理論式(3)、(4)
bMIω−((ab+bc)MI−bgM)ω+(abcI+(fbd−(ab+bc)g+eb)M)ω−(abdf−abcg+ebc)=0 ・・・(3)
なお、式(3)で
a=Kx+K
b=KxLsinα−KxLcosβ
c=Kz+K
d=KzLcosα−KzLsinβ
e=−(KxLsinα−KxLcosβ)
f=−(KzLcosα−KzLsinβ)
g=−(KxLsinα+KzLcosα+KxLcosβ+KzLsinβ)
f=ω/2π ・・・(4)
によってラゲージドア60の共振周波数fを算出する。なお、ωはラゲージドア60の角固有振動数である。また、L及びLは、図9(A)に示される既述した距離であり、α及びβは、図9(A)に示される既述した角度である。
【0080】
以上説明したように、本実施形態に係る共振周波数予測方法によれば、比較的容易にラゲージドア60の共振周波数を予測することができる。
【0081】
[実施形態の補足説明]
なお、請求項2、請求項3、及び請求項5に記載の「第一支持部に取り付けられ」及び「第二支持部に取り付けられ」における「取り付けられ」の概念には、例えば、ラゲージドアの下端部及びバックドアの下端部のように、ドアが車体の後部側の開口部を閉止した状態で当該開口部の下縁部側にロックされて固定されているようなものも含まれる。
【0082】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【符号の説明】
【0083】
10 フロントウインドウ(開口部)
12 カウル部(第一支持部)
16 フロントウインドシールドガラス(予測対象部)
16A 前下端部(一端部)
16B 後上端部(他端部)
28 ウレタンシーラント(第一の接着剤)
30 ルーフ部
30A フロントヘッダー部(第二支持部)
36 ウレタンシーラント(第二の接着剤)
40 カウル部(第一支持部)
60 ラゲージドア(予測対象部)
66 アッパバックパネル(第一支持部)
76 ロアバック部(第二支持部)
S 車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部が取り付けられた車体部品を予測対象部とすると共に、前記予測対象部の固有振動を、前記予測対象部が前記端部で弾性固定される自由振動系の物理モデルに近似させ、
前記物理モデルにおける前記予測対象部の質量成分を設計諸元に基づいて算出し、
前記物理モデルにおける前記予測対象部の剛性成分を設計諸元に基づいて重回帰分析によって算出し、
前記物理モデルと、前記質量成分と、前記剛性成分と、に基づいて前記予測対象部の共振周波数を算出する共振周波数予測方法。
【請求項2】
一端部が第一支持部に取り付けられかつ他端部が前記第一支持部に対して車両幅方向に直交する方向に離れて配置された第二支持部に取り付けられる前記予測対象部の固有振動を、前記予測対象部が前記一端部及び前記他端部で弾性固定される2自由度振動系の物理モデルに近似させ、
前記質量成分を、前記予測対象部の質量を含む設計諸元に基づいて2自由度振動系の質量成分として算出し、
前記剛性成分を、前記第一支持部と前記予測対象部との結合部の車両幅方向中央部を車両上方側から押圧した場合における当該押圧に対する剛性、及び前記第二支持部と前記予測対象部との結合部の車両幅方向中央部を車両上方側から押圧した場合における当該押圧に対する剛性を含む変数に基づいて重回帰分析によって2自由度振動系の剛性成分として算出し、
前記2自由度振動系の物理モデルと、前記2自由度振動系の質量成分と、前記2自由度振動系の剛性成分と、に基づいて、前記予測対象部の共振周波数を算出する、請求項1記載の共振周波数予測方法。
【請求項3】
前記一端部が前記第一支持部に取り付けられかつ前記他端部が前記第二支持部に取り付けられることで前記第一支持部と前記第二支持部とに架け渡されると共に車体の開口部を閉止する前記予測対象部の固有振動を、前記予測対象部が前記一端部及び前記他端部で弾性固定される2自由度振動系に近似させる第一ステップと、
前記2自由度振動系の振動質量M及び慣性モーメントIを、前記予測対象部の質量、前記第一支持部の質量、及び前記第二支持部の質量に基づいて算出する第二ステップと、
前記第一支持部の剛性及び前記予測対象部の剛性を含む変数を第一の説明変数として重回帰分析によって第一の目的変数となる前記第一支持部側の剛性Kを算出すると共に、前記第二支持部の剛性及び前記予測対象部の剛性を含む変数を第二の説明変数として重回帰分析によって第二の目的変数となる前記第二支持部側の剛性Kを算出する第三ステップと、
前記第二ステップで算出された前記振動質量M及び前記慣性モーメントI、前記第三ステップで算出された前記第一支持部側の剛性K及び前記第二支持部側の剛性K、並びに、前記第一支持部及び前記第二支持部による前記予測対象部の支持間距離L、に基づいて、2自由度振動系の以下の理論式(1)、(2)
MIω−(K+K)(ML+I)ω+4K=0 ・・・(1)
f=ω/2π ・・・(2)
によって前記予測対象部の共振周波数を算出する第四ステップと、
を有する請求項2記載の共振周波数予測方法。
【請求項4】
前記予測対象部は、フロントウインドウを閉止して車両上方へ向けて車両後方側に傾斜して配置されるフロントウインドシールドガラスとされ、前記第一支持部は、前記フロントウインドシールドガラスの前下端部が第一の接着剤で固定されて車両幅方向を長手方向として配置されるカウル部とされ、前記第二支持部は、前記フロントウインドシールドガラスの後上端部が第二の接着剤で固定されてルーフ部の前端部で車両幅方向を長手方向として配置されるフロントヘッダー部とされており、
前記第三ステップでは、前記第一の説明変数として、前記第一の接着剤の剛性を更に含み、前記第二の説明変数として、前記第二の接着剤の剛性を更に含んでいる、請求項3記載の共振周波数予測方法。
【請求項5】
一端部が第一支持部に取り付けられかつ他端部が第二支持部に取り付けられる前記予測対象部の固有振動を、前記予測対象部が前記一端部及び前記他端部で弾性固定される3自由度振動系の物理モデルに近似させ、
前記質量成分を、前記予測対象部の質量を含む設計諸元に基づいて3自由度振動系の質量成分として算出し、
前記剛性成分を、前記第一支持部の車両上下方向の振動と車両前後方向の振動とに対する剛性、及び前記第二支持部の車両上下方向の振動と車両前後方向の振動とに対する剛性を含む変数に基づいて重回帰分析によって3自由度振動系の剛性成分として算出し、
前記3自由度振動系の物理モデルと、前記3自由度振動系の質量成分と、前記3自由度振動系の剛性成分と、に基づいて、前記予測対象部の共振周波数を算出する、請求項1記載の共振周波数予測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−12169(P2013−12169A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−271747(P2011−271747)
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】