説明

共振器、導波管フィルタ

【課題】熱による共振周波数の変化を従来よりも抑制する共振器を提供する。
【解決手段】周壁に他の導波管が結合可能な結合孔19が設けられた円筒形の導波管10と、導波管10の両底面にそれぞれ設けられる固定板11、12と、一方の固定板12に接続される調整板17と、他方の固定板11から所定の距離を開けて設けられており、導波管10の軸方向に可動になっている可動板13と、を備えた共振器1である。環境温度が変化すると、導波管10の直径Dが変動するとともに可動板13と調整板17との間隔である共振軸長Lが変動する。導波管10の直径Dの変動による共振周波数の変化と共振軸長Lの変動による共振周波数の変化とが相殺し合うように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波帯、ミリ波帯の帯域通過フィルタに用いることができる中空導波管を用いた共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
中空導波管は、金属を材料として構成されることが一般的である。導波管は、例えばアルミニウムや銅を所定の寸法に加工し、半田付けや蝋付け等で筒状に形成することにより構成される。筒状の導波管内部は、動作周波数のスキンデプスδの5倍程度の銀メッキが施される。銀メッキにより導波管の主要な電気特性の一つである挿入損失を低減する。
【0003】
図15は、円形導波管71を用いた共振器7の外観図である。この共振器7は、円形導波管71、円形導波管71の両底面に取り付けられる固定板72、73、及び円形導波管71の筒部に接続される入力用の方形導波管74、及び出力用の方形導波管75を備えている。円形導波管71は、固定板72、73により両底面が閉じられることで、TE01モードの共振器となる。各方形導波管74、75の基本モードはTE10である。
円形導波管71は、周壁に入力用の結合孔76及び出力用の結合孔77が設けられている。入力用の方形導波管74を伝播してきたTE10モードの一部は、入力用の結合孔76で円形導波管71のTE01モードに変換される。入力用の結合孔76は、結合度K1を有している。円形導波管71のTE01モードは、出力用の結合孔77で出力用の方形導波管75のTE10モードに変換される。出力用の結合孔77は、結合度K2を有している。結合度K1とK2はほぼ同等の値である。
【0004】
図16は、TE01モードの円形導波管71の軸方向から見た電界分布及び磁界分布を表す図である。図17は、TE011モードの円形導波管71内部の電界分布及び磁界分布を表す図である。図16及び図17において、電界分布は実線で表され、磁界分布は点線で表される。図18は共振器7の等価回路図である。
【0005】
図19は、共振器を円形導波管78の軸方向に切断した断面図である。この共振器は、共振周波数を可変にするために、軸方向に移動可能な可動板79を有している。可動板79にはシャフト80が接続されており、シャフト80が軸方向に移動するようになっている。この共振器は、図15の共振器7と同様に、結合孔83が設けられた円形導波管78と、円形導波管78の端部に取り付けられる固定板81、82を備えている。固定板81には、シャフト80が貫通する孔が設けられている。シャフト80は、固定板81にナット84により支持される。共振器の固定板82と可動板79との間の距離である共振軸長Lは、TE01モードの共振定在波の半波長の整数倍である。共振軸長Lの長さにより、共振モードが決まる。共振軸長LがTE01モードの半波長に相当する場合、共振次数は「1」で共振モードがTE011となる。
【0006】
共振器は、単独、或いは複数接続して使用される。共振器を複数接続して使用する場合、より選択性の高い帯域通過フィルタを実現することができる。例えば、3GHz帯において通過帯域2MHzを確保しながら、10MHz離調点で20dBの減衰量が要求される「超狭帯域スプリアス抑圧フィルタ」を、共振器を5個縦続接続することで実現することができる。
【0007】
共振器では、共振周波数の温度特性を考慮しなければならない。即ち、環境温度の変化に対して、共振周波数の変化を一定の範囲内に抑える必要がある。環境温度による共振周波数の変化は、共振器に使用する材料の線膨張係数に依存することが知られている。
【0008】
環境温度による共振周波数の変化を規格内に収めるために、従来は、共振器の材料に、線膨張係数ができるだけ小さいものを選ぶことで対処している。例えばニッケルと鉄との合金である「インバー」は、線膨張係数が約1.2×10−6/Kで、この種の共振器の材料としてよく用いられる。インバーのブロック材により形成した導波管を用いて「超狭帯域スプリアス抑圧フィルタ」を製作すると、共振周波数の温度変化が鉄(線膨張係数が約12×10−6/K)を使ったときに比べて10分の1になり、65℃で−140KHz、−15℃で+140KHzと温度変化の許容値を満たすものになる。特許文献1には、インバーを用いた導波管による共振器が開示されている。
【特許文献1】特開2000−49505号公報
【0009】
図20は、円形導波管を用いた従来の共振器の共振周波数の温度特性を表す図である。図20の横軸は環境温度(℃)であり、縦軸は共振周波数の変化量である。特性A、B、Cは共振器を構成する材料の線膨張係数がαA、αB、αCの場合のそれぞれの特性であり、いずれも負の傾きを有している。この図では、温度変化量は、特性A<特性B<特性Cであり、材料の線膨張係数はαA<αB<αCである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
インバーのブロック材のような線膨張係数が低い金属材は、非常に高価であり、入手するのが困難である。また、このような金属材は硬度が高いために加工に手間がかかる。
【0011】
本発明は、上記の問題に鑑み、従来とは異なる方式により、熱による共振周波数の変化を従来よりも抑制する共振器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決する本発明の共振器は、周壁に他の導波管が結合可能な結合孔が設けられた筒状の導波管と、前記導波管内に、前記導波管の軸方向に共振周波数に応じた間隔で設けられる2つの端板と、を備えており、環境温度が変化すると、前記導波管の大きさが前記軸に垂直な方向に変動するとともに前記端板の間隔が変動して、前記導波管の大きさの変動による前記共振周波数の変化と前記端板の間隔の変動による前記共振周波数の変化とが相殺し合うように構成されている。
【0013】
本発明の共振器は、導波管の変動に伴う共振周波数の変化と端板間の間隔の変動に伴う共振周波数の変化が逆になる、つまり一方が共振周波数の増加に作用し、他方が共振周波数の減少に作用するので、環境温度の変化による共振周波数の変化を従来よりも抑制することができる。
例えば、少なくとも一方の前記端板の材料の線膨張係数は、前記導波管の材料の線膨張係数よりも大きい場合には、環境温度の増加に伴って導波管が軸に垂直な方向に大きくなり端板間が狭くなる。共振周波数は、導波管が大きくなるのに伴って増加し、端板間が狭くなるのに伴って減少する。そのために、共振周波数の変化が従来よりも小さくなる。環境温度が減少する場合には、逆に作用する。
【0014】
本発明の共振器は、前記端板の少なくとも一方を、前記軸方向に可動にしてもよい。このような構成では、端板の間隔を変えることで、環境温度の変化に関わらず共振周波数を変化させることが可能になる。
例えば、前記導波管の両底面にそれぞれ固定板が設けられる場合に、可動な前記端板に前記軸方向に可動なシャフトが設けられ、可動な前記共振器側に設けられた前記固定板には前記シャフトが貫通する孔が設けられて、前記シャフトが前記導波管の外側から操作可能になる。シャフトの操作により端板が可動になり、端板の間隔を変えることができる。
なお、この場合、前記端板及び前記シャフトの材料の線膨張係数を、前記導波管の材料の線膨張係数よりも大きくしてもよい。
【0015】
本発明の共振器は、前記導波管の両底面にそれぞれ固定板が設けられる場合に、可動な前記端板と前記固定板との間に電波吸収体、或いは乾燥剤を設けてもよい。電波吸収体が設けられる場合には、固定板と端板の間に漏れこむ電波を吸収でき、この電波に起因する高次モード干渉を抑圧できる。乾燥剤が設けられる場合には、導波管内の湿気(水蒸気)が除去される。水蒸気により共振周波数が変化することもあるため、乾燥剤を用いることで、共振周波数の変化を抑制することができる。
なお、以上のような本発明の共振器の前記2つの端板の対向する面に、導体板を設けてもよい。
【0016】
本発明の他の共振器は、周壁に他の導波管が結合可能な結合孔が設けられた円筒形の導波管と、前記導波管の両底面にそれぞれ設けられる固定板と、一方の固定板に接続される調整板と、他方の固定板から所定の距離を開けて設けられており、前記導波管の軸方向に可動になっている可動板と、を備えており、環境温度が変化すると、前記導波管の直径が変動するとともに前記可動板と前記調整板との間隔が変動して、前記導波管の直径の変動による前記共振周波数の変化と前記可動板と前記調整板との間隔の変動による前記共振周波数の変化とが相殺し合うように構成されている。
この共振器は、例えば、前記導波管が所定の金属で形成され、前記調整板及び前記可動板の少なくとも一方がプラスチックで形成される。
【0017】
以上のような共振器を複数接続して導波管フィルタを構成することができる。例えば、前記導波管の前記結合孔を介して結合することで、共振器を複数接続する。
【発明の効果】
【0018】
以上のような本発明の共振器によれば、温度の変化による導波管の変動に伴う共振周波数の変化と端板間の間隔の変動に伴う共振周波数の変化が逆になるために、熱による共振周波数の変化を従来よりも抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の共振器の実施形態を図面を参照して説明する。
【0020】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の共振器1の断面図である。
この共振器1は、TE01nモードの円形導波管10の両底面が固定板11、12により閉じられた構成であり、円形導波管10内部に円形導波管10の軸方向に移動可能な可動板13が設けられている。可動板13には円形導波管10の軸方向に移動可能なシャフト14が接続されている。固定板11には孔が設けられており、シャフト14は、この孔を貫通して固定板11にナット15により支持される。円形導波管10には、周壁に結合孔19が設けられている。結合孔19には、図15のように、方形導波管等の他の導波管(図示省略)が接続される。
【0021】
可動板13の固定板12側には、導体板16が設けられる。固定板12には、調整板17が接合されており、調整板17の可動板13側には、導体板18が設けられる。導体板16、18の厚さは、それぞれ例えば約50μmである。可動板13及び調整板17は、本発明の端板に相当する。
【0022】
ナット15を回転させることで、シャフト14が円形導波管10の軸方向に移動する。シャフト14の移動により、可動板13が円形導波管10の軸方向に移動する。可動板13の移動に伴い、調整板17に設けられる導体板18と可動板13に設けられる導体板16との間の距離である共振軸長Lが変動する。共振軸長Lの長さにより、共振モードが決まる。共振軸長LがTE01モードの半波長分に相当する場合、共振次数は「1」で共振モードがTE011となる。
【0023】
可動板13は、円形導波管10よりも線膨張係数が大きい材料で形成されている。この実施形態では、円形導波管10が鉄(線膨張率12×10−6/K)、固定板11、12が真鍮(線膨張率19×10−6/K)、シャフト14が鉄(線膨張率12×10−6/K)で形成され、可動板13がポリエチレン(線膨張率4×10−5/K)などのプラスチックで形成されている。ほとんどのプラスチックは、線膨張係数が10−5オーダであるために、円形導波管10の材料となる金属よりも線膨張係数が大きい。なお、シャフト14及び調整板17が可動板13と同じ材料で形成されていてもよい。
【0024】
TE01nモードの円形導波管10を用いた共振器1の共振周波数f0は、一般に下記の式(1)で表される。
f0=c{(X/π)+(nD/2L)1/2 /D …(1)
D:円形導波管10の直径、L:共振軸長、n:共振次数(TE011共振モードの場合は「1」)、X:TE01共振モードの場合「3.832」である。
【0025】
共振器1の物理寸法は、温度変化ΔTによって、式(2)、(3)で表される。Dtは、温度変化後の円形導波管10の直径、Ltは温度変化後の共振軸長である。α1は、円形導波管10の線膨張係数、α2(α1<α2)は、可動板13及び調整板17の線膨張係数、L2は、可動板13及び調整板17の軸方向の長さである。
Dt=D+α1・ΔT・D …(2)
Lt=L+α1・ΔT・L−α2・ΔT・L2 …(3)
【0026】
円形導波管10の直径Dは、温度上昇によりα1・ΔT・Dだけ大きくなる(D<Dt)。円形導波管10の直径Dの増大は、共振周波数がより低い周波数になるように作用する。また、温度が低下する場合には、円形導波管10の直径Dは小さくなり、共振周波数がより高い周波数になるように作用する。
共振軸長Lは、α1<α2であるために、α1・L<α2・L2のときに、温度上昇により小さくなる(L>Lt)。共振軸長Lが小さくなるために、共振周波数がより高い周波数になるように作用する。また、共振軸長は温度低下により大きくなり、共振周波数がより低い周波数になるように作用する。
このように、温度変化に伴う円形導波管10の直径Dによる共振周波数の変化と、共振軸長Lによる共振周波数の変化は、相殺し合う方向で作用する。そのために、共振器1の温度変化による共振周波数の変化が補償される。
【0027】
例えば3GHz帯の円形導波管を用いた共振器1において、導波管10及びシャフト14が同じ線膨張係数を持つ同一材質の場合、直径Dの温度変化に対する共振周波数の変化は図2で表され、共振軸長Lの温度変化に対する共振周波数の変化は図3で表される。図2に示すように直径Dは負の温度係数を持ち、図3に示すように共振軸長Lは正の温度係数を持つ。
【0028】
図4は、直径D及び共振軸長Lの温度変化に対する共振周波数を合成して、共振周波数の温度補償を説明するための図である。図4では、円形導波管10の直径Dの温度変化による周波数の変化を特性Dで表し、共振軸長Lの温度変化による周波数の変化を特性Lで表している。共振器1の共振周波数の温度変化は特性Fで表されており、特性Dと特性Lを合わせたものとなっている。このように、共振器1の環境温度による共振周波数の変化は、従来よりも小さいものとなる。
【0029】
以上のように、共振器1を線膨張係数が異なる複数の部材を組み合わせて構成することで、共振器1の温度変化による共振周波数の変化を補償することができる。
この実施形態では、可動板13及び調整板17を他の共振器1を構成する部材とは異なるものとしたが、更に多くの種類の材料を用いて共振器1を構成するようにしてもよい。いずれにしても、図4に示すように、共振軸長Lによる共振周波数の変化が特性L、もしくは特性Dの傾きよりも傾斜の小さい特性で表されるものであればよい。
【0030】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態の共振器2の断面図である。
共振器2の第1実施形態の共振器1と同じ構成要素には、同じ符号を付けてある。同じ構成要素の説明は省略する。共振器2は、共振器1の調整板17に換えて第2可動板21を有する点が大きく異なる。
【0031】
第2可動板21の可動板16側には、導体板22が設けられる。また、第2可動板21の導体板22が設けられる面の反対の面には、円形導波管20の軸方向に移動可能な第2シャフト24が接続されている。固定板23には孔が設けられており、第2シャフト24は、この孔を貫通して固定板23に第2ナット25により支持される。第2ナット25を回転させることで第2シャフト24が円形導波管10の軸方向に移動する。第2シャフト24の移動により第2可動板21が移動する。
【0032】
共振器2の共振軸長も、共振器1の共振軸長と同様の温度変化特性を有する。そのため、共振器1と同様の原理による温度補償効果を得ることができる。また、共振器2では、結合孔19の結合度を可変にすることができる。結合孔19の結合度は、共振軸長Lの長さが同じ場合でも、可動板16及び第2可動板21の位置により変化する。例えば、結合孔19が、可動板16及び第2可動板21の中央に位置する場合と、中央よりいずれかにずれている場合とでは結合度が変化する。そのために、円形導波管20に接合される方形導波管の特性に合わせて、結合度を調整することができる。
【0033】
<第3実施形態>
図6は、本発明の第3実施形態の共振器3の断面図である。
共振器3の第1実施形態の共振器1と同じ構成要素には、同じ符号を付けてある。同じ構成要素の説明は省略する。共振器3では、共振器1の可動板13が断面T字型の可動板32になり、調整板17も断面T字型の調整板34になる。可動板32は、金属板31を介してシャフト14に接続される。可動板32は周囲に導体板33が設けられる。導体板33と円形導波管10の側面、及び導体板33と金属板31とで形成されるL字部分は、チョーク構造になっている。L字部分の長さは、共振周波数の半波長と同じ長さである。導体板33の最も調整板34側の端部と円形導波管10の側面との間は等価的に短絡となる。
【0034】
<第4実施形態>
図7は、本発明の第4実施形態の共振器4の断面図である。
共振器4の第1実施形態の共振器1と同じ構成要素には、同じ符号を付けてある。同じ構成要素の説明は省略する。共振器4は、共振器1の可動板13と固定板11との間に電波吸収体41を設けた構成である。
共振器4も、共振器1と同様の原理による温度補償効果を得ることができる。
【0035】
電波吸収体41は、可動板13から固定板11側に漏れる電波を減衰させる。そのために、漏れこんだ電波の高次モード成分が基本モードの共振特性に干渉することを抑制することができる。
【0036】
<第5実施形態>
図8は、本発明の第5実施形態の共振器5の断面図である。
共振器5の第1実施形態の共振器1と同じ構成要素には、同じ符号を付けてある。同じ構成要素の説明は省略する。共振器5は、共振器1の可動板13と固定板11の間に乾燥剤51を設けた構成である。
共振器5も、共振器1と同様の原理による温度補償効果を得ることができる。
【0037】
上記の式(1)においてc=1/(εμ)−1/2とした場合、共振周波数は式(4)で表される。
f0=1/(εμ)1/2・{(X/π)+(nD/2L)1/2 /D …(4)
式(4)によると、誘電率が変化した場合に共振周波数も変化する。誘電率は真空の誘電率(定数)と比誘電率の積で表される。
【0038】
温度変動に伴い水蒸気圧が変化することによって、比誘電率も変化する。比誘電率が変化すると、式(4)により、共振周波数の変化が起こる。
【0039】
<第6実施形態>
図9は、本発明の第6実施形態の共振器6の断面図である。
共振器6の第1実施形態の共振器1と同じ構成要素には、同じ符号を付けてある。同じ構成要素の説明は省略する。共振器6は、可動板61及び調整板64の内部にそれぞれ電熱器62、65を備えたことで、共振器1と異なる。電熱器62、65は、外部の制御装置63、66により、円形導波管10内部の温度が外部の温度とほぼ同じになるように制御される。電熱器62、65により、共振器6に入力されるマイクロ波を大電力で間欠的に動作させた場合でも、可動板61及び調整板64の熱応答時間の遅れを補償することができる。
共振器6も、共振器1と同様の原理による温度補償効果を得ることができる。
【0040】
<第7実施形態>
図10は、本発明の第7実施形態の共振器1’の断面図である。
共振器1’の第1実施形態の共振器1と同じ構成要素には、同じ符号を付けてある。同じ構成要素の説明は省略する。共振器1’は、共振器1から調整板17及び導体板16、18を除いた構成である。しかし、共振器1’は、共振器1とは異なる材料により、固定板11’、12’が形成されている。固定板11’、12’に用いられる材料の線膨張係数は、円形導波管10に用いられる材料の線膨張係数よりも大きい。例えば、固定板11’、12’と可動板13とは同じ材料で形成される。
共振器1’も、共振器1と同様の原理による温度補償効果を得ることができる。
【0041】
<第8実施形態>
図11は、本発明の第8実施形態の共振器2’の断面図である。
共振器2’の第2実施形態の共振器2と同じ構成要素には、同じ符号が付けてある。同じ構成要素の説明は省略する。共振器2’は、共振器2の導体板16、22を除いた構成である。しかし、共振器2’は、共振器2とは異なる材料により、固定板26、27が形成されている。固定板26、27に用いられる材料の線膨張係数は、円形導波管20に用いられる材料の線膨張係数よりも大きい。例えば、固定板26、27と可動板13とは同じ材料で形成される。
共振器2’も、共振器1と同様の原理による温度補償効果を得ることができる。
【0042】
<第9実施形態>
図12は、本発明の第9実施形態の共振器3’の断面図である。
共振器3’の第3実施形態の共振器3と同じ構成要素には、同じ符号が付けてある。同じ構成要素の説明は省略する。共振器3’は、共振器3の調整板34及び導体板33、35を除いた構成である。しかし、共振器3’は、共振器3とは異なる材料により、固定板36、37が形成されている。固定板36、37に用いられる材料の線膨張係数は、円形導波管10に用いられる材料の線膨張係数よりも大きい。例えば、固定板36、37と可動板32とは同じ材料で形成される。
共振器3’も、共振器1と同様の原理による温度補償効果を得ることができる。
【0043】
<第10実施形態>
図13は、本発明の第10実施形態の共振器4’の断面図である。
共振器4’の第4実施形態の共振器4と同じ構成要素には、同じ符号が付けてある。同じ構成要素の説明は省略する。共振器4’は、共振器4の導体板16、18及び調整板17を除いた構成である。しかし、共振器4’は、共振器4とは異なる材料により、固定板42、43が形成されている。固定板42、43に用いられる材料の線膨張係数は、円形導波管10に用いられる材料の線膨張係数よりも大きい。例えば、固定板42、43と可動板13とは同じ材料で形成される。
共振器4’も、共振器1と同様の原理による温度補償効果を得ることができる。また、第4実施形態の共振器4と同様に、電波吸収体41による効果も得られる。
【0044】
<第11実施形態>
図14は、本発明の第11実施形態の共振器5’の断面図である。
共振器5’の第5実施形態の共振器5と同じ構成要素には、同じ符号が付けてある。同じ構成要素の説明は省略する。共振器5’は、共振器4の導体板16、18及び調整板17を除いた構成である。しかし、共振器5’は、共振器5とは異なる材料により、固定板52、53が形成されている。固定板52、53に用いられる材料の線膨張係数は、円形導波管10に用いられる材料の線膨張係数よりも大きい。例えば、固定板52、53と可動板13とは同じ材料で形成される。
共振器5’も、共振器1と同様の原理による温度補償効果を得ることができる。また、第5実施形態の共振器5と同様に、乾燥剤51による効果も得られる。
【0045】
以上のような本実施形態1〜11の共振器は、導波管を結合孔19により複数接続することで導波管フィルタとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1実施形態の共振器の断面図である。
【図2】直径Dの温度変化に対する共振周波数の変化を表す図である。
【図3】共振軸長Lの温度変化に対する共振周波数の変化を表す図である。
【図4】共振周波数の温度補償を説明するための図である。
【図5】第2実施形態の共振器の断面図である。
【図6】第3実施形態の共振器の断面図である。
【図7】第4実施形態の共振器の断面図である。
【図8】第5実施形態の共振器の断面図である。
【図9】第6実施形態の共振器の断面図である。
【図10】第7実施形態の共振器の断面図である。
【図11】第8実施形態の共振器の断面図である。
【図12】第9実施形態の共振器の断面図である。
【図13】第10実施形態の共振器の断面図である。
【図14】第11実施形態の共振器の断面図である。
【図15】TE01nモードの円形導波管を用いた従来の共振器の外観図である。
【図16】TE01モードの円形導波管の軸方向から見た電界分布及び磁界分布を表す図である。
【図17】TE011モードの円形導波管内部の電界分布及び磁界分布を表す図である。
【図18】図15の共振器の等価回路図である。
【図19】従来の共振器を円形導波管の軸方向に平行な面で切断した断面図である。
【図20】従来の共振器の共振周波数の温度特性を表す図である。
【符号の説明】
【0047】
1、2、3、4、5、6、7、1’、2’、3’、4’、5’ 共振器
10、20、71、78 円形導波管
11、12、23、11’、12’、26、27、36、37、42、43、52、53、72、73、81、82 固定板
13、32、61、79 可動板
14、80 シャフト
15、84 ナット
16、18、22、33、35 導体板
17、34、64 調整板
19、76、77、83 結合孔
21 第2可動板
24 第2シャフト
25 第2ナット
31 金属板
41 電波吸収体
51 乾燥剤
62、65 電熱器
63、66 制御装置
74、75 方形導波管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁に他の導波管が結合可能な結合孔が設けられた筒状の導波管と、
前記導波管内に、前記導波管の軸方向に共振周波数に応じた間隔で設けられる2つの端板と、を備えており、
環境温度が変化すると、前記導波管の大きさが前記軸に垂直な方向に変動するとともに前記端板の間隔が変動して、前記導波管の大きさの変動による前記共振周波数の変化と前記端板の間隔の変動による前記共振周波数の変化とが相殺し合うように構成されている、
共振器。
【請求項2】
少なくとも一方の前記端板の材料の線膨張係数は、前記導波管の材料の線膨張係数よりも大きい、
請求項1記載の共振器。
【請求項3】
前記端板の少なくとも一方は、前記軸方向に可動である、
請求項1記載の共振器。
【請求項4】
前記導波管の両底面にそれぞれ固定板が設けられており、
可動な前記端板に前記軸方向に可動なシャフトが設けられ、
可動な前記共振器側に設けられた前記固定板には前記シャフトが貫通する孔が設けられ、前記シャフトが前記導波管の外側から操作可能になっている、
請求項3記載の共振器。
【請求項5】
前記端板及び前記シャフトの材料の線膨張係数は、前記導波管の材料の線膨張係数よりも大きい、
請求項4記載の共振器。
【請求項6】
前記導波管の両底面にそれぞれ固定板が設けられており、
可動な前記端板と前記固定板との間に電波吸収体が設けられている、
請求項1又は2記載の共振器。
【請求項7】
前記導波管の両底面にそれぞれ固定板が設けられており、
可動な前記端板と前記固定板との間に乾燥剤が設けられている、
請求項1又は2記載の共振器。
【請求項8】
前記2つの端板の対向する面には、導体板が設けられる、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の共振器。
【請求項9】
周壁に他の導波管が結合可能な結合孔が設けられた円筒形の導波管と、
前記導波管の両底面にそれぞれ設けられる固定板と、
一方の固定板に接続される調整板と、
他方の固定板から所定の距離を開けて設けられており、前記導波管の軸方向に可動になっている可動板と、を備えており、
環境温度が変化すると、前記導波管の直径が変動するとともに前記可動板と前記調整板との間隔が変動して、前記導波管の直径の変動による前記共振周波数の変化と前記可動板と前記調整板との間隔の変動による前記共振周波数の変化とが相殺し合うように構成されている、
共振器。
【請求項10】
前記導波管は所定の金属で形成されており、
前記調整板及び前記可動板の少なくとも一方はプラスチックで形成されている、
請求項9記載の共振器。
【請求項11】
請求項1〜10記載の共振器を、前記導波管の前記結合孔を介して結合することで、複数接続して構成される、
導波管フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−267692(P2009−267692A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113868(P2008−113868)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者:島田理化工業株式会社 刊行物名:島田理化技法 No.19、2007年12月8日発行
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】