説明

共振回路、フィルタ回路および発振回路

【課題】共振周波数を可変としつつも所望の特性を得ることができる。
【解決手段】本発明の一態様としての共振回路は、基板と、帯状電極と、前記帯状電極の両端において前記帯状電極を基板面から所定の高さに支持する複数の支持部材と、前記帯状電極の一部を押さえる複数の押さえ部と、各前記押さえ部を前記帯状電極の長さ方向にそれぞれ異なる移動範囲で移動させる移動機構と、第1の一端から受ける入力信号を第1の他端に伝送する、前記第1の他端は前記帯状電極の長さ方向における一方の側面のうち前記移動範囲同士の間の部分に近接する入力線路と、第2の一端から受ける出力信号を第2の他端に伝送する、前記第2の一端は前記帯状電極の前記一方の側面と反対側における他方の側面のうち前記移動範囲同士の間の部分に近接する出力線路と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線を用いる通信機内に用いられる共振回路、およびこの共振回路を用いた、フィルタ回路および発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共振回路は振動する波長の半分もしくは1/4の長さが必要であり、各種方式が “RF MEMSとその応用”( 小西、大和田著、ケイラボ出版、ISBN4-89808-064-2)などに報告されている。MEMS (MicroElectroMechanical System)共振器を用いると周波数可変機能をもつ共振回路が小さく作れることが期待されている(特開2001-119257公報、S. Roundy, et al,”Toward self-tuning adaptive vibration based micro-generators”, SPIE vol. 5649, 2005)。MEMS共振器を共振回路に応用するためにはMEMS共振器を電気信号が通る時の結合度(共振素子と入出力線路との結合度)が重要となる。しかし、従来におけるMEMS共振器を適用した共振回路では共振回路の周波数(共振周波数)を可変にすると、結合度が変わってしまい、所望の特性が得られない問題点があった。このため従来の共振回路では、実際の所望帯域への自由な可変機能を提供できない問題点があった。
【特許文献1】特開2001-119257公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、共振周波数を可変としつつも所望の特性を得ることのできる共振回路、フィルタ回路および発振回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様としての共振回路は、基板と、帯状電極と、前記帯状電極の両端において前記帯状電極を基板面から所定の高さに支持する複数の支持部材と、前記帯状電極の一部を押さえる複数の押さえ部と、各前記押さえ部を前記帯状電極の長さ方向にそれぞれ異なる移動範囲で移動させる移動機構と、第1の一端から受ける入力信号を第1の他端に伝送する、前記第1の他端は前記帯状電極の長さ方向における一方の側面のうち前記移動範囲同士の間の部分に近接する入力線路と、第2の一端から受ける出力信号を第2の他端に伝送する、前記第2の一端は前記帯状電極の前記一方の側面と反対側における他方の側面のうち前記移動範囲同士の間の部分に近接する出力線路と、を備え、前記帯状電極は、前記入力信号に含まれる、前記複数の押さえ部間における帯状電極部分の長さに応じた共振周波数の信号で共振して、前記共振周波数をもつ信号を前記出力信号として前記出力線路の一端に与える。
【0005】
本発明の一態様としての共振回路は、基板と、帯状電極と、前記帯状電極の両端において前記帯状電極を基板面から所定の高さに支持する複数の支持部材と、第1の一端から受ける入力信号を第1の他端に伝送する、前記第1の他端は前記帯状電極の長さ方向における一方の側面に近接する入力線路と、第2の一端から受ける出力信号を第2の他端に伝送する、前記第2の一端は前記帯状電極の前記一方の側面と反対側における他方の側面に近接する出力線路と、外部制御信号に応答して前記複数の支持部材間における帯状電極部分の略中央を押さえて、前記帯状電極の共振を阻止する共振阻止機構と、を備え、前記帯状電極は、前記共振阻止機構によって押さえられていない状態では、前記入力信号に含まれる、前記帯状電極部分の長さに応じた共振周波数の信号によって共振し、前記共振周波数をもつ信号を前記出力信号として前記第2の一端に与える。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、共振周波数を可変としつつも所望の特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0008】
図1は本発明に係る共振回路の第1の実施形態を示す平面図である。図2は、図1の共振回路のA-A線における断面図である。
【0009】
この共振回路は、半導体基板106、共振素子101、支持部材102(1)、102(2)、水平方向調整部103(1)、103(2)、入力線路104(1)、出力線路104(2)、移動機構100(1)、100(2)を備える。半導体基板106は基板の一例である。この共振回路は外部制御装置105に接続されている。以下この共振回路について詳細に説明する。
【0010】
半導体基板106上において、帯状電極である共振素子101が、その両端において、支持部材102(1)、102(2)によって、基板面から所定の高さHに支持されている。共振素子101は例えばアルミニウム、銅、またはポリシリコンなどの導電性材料により形成されている。支持部材102(1)、102(2)は、例えばポリシリコンなどの導電性材料、または絶縁性材料によって形成されている。共振素子101と基板面との間は中空になっている。支持部材102(1)、102(2)と、基板106とは電気的に分離されている。
【0011】
共振素子101上に水平方向調整部(押さえ部)103(1)、103(2)が設けられている。水平方向調整部103(1)、103(2)は例えばそれ自身の重みにより共振素子101の一部(接触部分)を基板面に垂直な方向に押さえる。共振素子101は、その強度に依存して、水平方向調整部103(1)、103(2)の重さによりたわむ場合もある。水平方向調整部103(1)、103(2)と共振素子101とは電気的に分離されている。水平方向調整部103(1)、103(2)は、例えば導電性部材と絶縁性部材との組み合わせにより構成される。水平方向調整部103(1)、103(2)の具体的な構成例は後述する。
【0012】
移動機構100(1)、100(2)は、外部制御装置105からの外部制御信号に応答して水平方向調整部103(1)、103(2)を共振素子101上で図1の矢印方向に移動させる。移動機構100(1)、100(2)は水平方向調整部103(1)、103(2)をそれぞれ異なる移動範囲K(1)、K(2)で移動させる。移動機構100(1)は駆動パッド100aおよび駆動パッド100bからなり、移動機構100(2)は駆動パッド100cおよび駆動パッド100dからなる。移動機構100(1)、100(2)の詳細は後述する。
【0013】
外部制御装置105は外部制御信号によって移動機構100(1)、100(2)を制御する。外部制御装置105は基板106の外に設けられても基板106上に設けられてもよいが、本実施の形態では外部制御装置105は基板106の外に設けられているとする。
【0014】
共振素子101を挟むようにして、入力線路104(1)および出力線路104(2)が共振素子101に近接して配置される。
【0015】
入力線路104(1)は一端において受ける入力信号を他端に伝送する。この他端は、共振素子101の長さ方向における一方の側面S1のうち、移動範囲K(1)、K(2)同士の間における部分に近接する。動作時、入力線路104(1)の他端は共振素子101と容量結合する。
【0016】
出力線路104(2)は、一端から受ける出力信号を他端に伝送する。出力線路104(2)の一端は、共振素子101における上記一方の側面S1と反対側の他方の側面S2のうち、移動範囲K(1)、K(2)同士の間における部分に近接する。動作時、出力線路104(2)の一端は共振素子101と容量結合する。
【0017】
入力線路104(1)および出力線路104(2)はアルミニウム等の導電性材料により形成され、例えば共振素子101と同一層に形成される。図では、入力線路104(1)の他端と、出力線路104(2)の一端とが対向している形態が示されるが、あくまでこれは一例であり、移動範囲K(1)、K(2)同士の間であれば、図示の位置に制限されない。
【0018】
動作時、共振素子101は、入力線路104(1)の他端からの入力信号に含まれる共振周波数の信号によって共振し(機械振動を起こし)、この共振周波数をもつ信号を出力線路104(2)の一端に与える。共振素子101の共振周波数は、水平方向調整部103(1)、103(2)の間に挟まれた共振素子部分の長さ(共振素子長)によって決まる。したがって、水平方向調整部103(1)、103(2)の位置を移動機構100(1)、100(2)を用いて変えることによって共振周波数を所望の値に設定可能である。また、水平方向調整部103(1)、103(2)の位置を変えることによって、共振素子101と、入力線路104(1)および出力線路104(2)との結合度も所望の値に設定可能である。以下これらについてさらに詳しく述べる。
【0019】
図3および図4にはそれぞれ共振回路を平面から見た状態が示される。ただし、2つの水平方向調整部103(1)、103(2)は図3と図4とでそれぞれ別々の位置にある。また、図面の見やすさのため、他の要素の図示は省略している。図3および図4において、共振素子101のハッチングが施された部分(共振部分)K1、K2は、2つの水平方向調整部103(1)、103(2)(図1参照)によって挟まれた部分である。L1、L2は、共振部分K1、K2の長さであり、各々の共振素子長に相当する。L1はL2より長いため、図3の共振回路は、図4の共振回路よりも共振周波数が小さい。このように2つの水平方向調整部103(1)、103(2)の位置を変えることで共振周波数を任意の値に設定できる。
【0020】
図5は、共振素子101の共振部分(図3、図4のK1、K2)からみた入出力線路104(1)、104(2)の位置と、結合度との関係を示すグラフである。結合度は、(共振素子101から出力線路104(2)へ出力電力)/(入力線路104(1)から共振素子101への入力電力)として表される。位置Cは、共振部分の中央を示し、結合度Mは、共振部分からみて入出力線路104(1)、104(2)が位置Cに位置しているときの結合度である。グラフから理解されるように、共振長の中心で励振した場合がもっとも結合が強く(結合度が高く)、中心から離れた位置で励振するほど結合度が弱くなる。図3では、共振長の中央に入出力線路104(1)、104(2)が位置するため最も高い結合度が得られる。一方、図4では、共振長の中央から変位した位置に入出力線路104(1)、104(2)が位置するために図3よりも弱い結合度が得られる。このように、2つの水平方向調整部103(1)、103(2)の位置を変えることで、結合度を任意の値に設定することが可能となる。
【0021】
以上のように、2つの水平方向調整部103(1)、103(2)の位置を変えることで、共振周波数と結合度とを同時に調整することが可能となる。以上に説明した共振回路はトランジスタなどと組み合わせて他の回路への応用が可能である。この共振回路は、IC(Integrated Circuit:集積回路)1つで無線機を構成する場合などシステム・オン・チップ(SOP)/システム・イン・チップ(SIP)を実現する上で有効な技術となる。
【0022】
図6は、図1の移動機構の詳細を説明する図である。ただし、図6に示す各要素のスケールは図1と異なっている。また、図6に示す移動機構の構成はあくまで一例であり本発明はこの構成に限定されない。図6に示す水平方向調整部103は、図1における水平方向調整部103(1)または水平方向調整部103(2)を示し、また図6における移動機構100は、図1における移動機構100(1)または移動機構100(2)を示すとする。
【0023】
移動機構100は、駆動パッド401a、401bを含む。駆動パッド401aは図1の移動機構100aまたは100cに相当し、駆動バッド401bは図1の移動機構100bまたは100dに相当する。外部制御装置105は、電圧源402a、402bと、電圧源402a、402bを制御する制御部406とを含む。電圧源402aは駆動パッド401aと水平方向調整部103とに接続され、電圧源402bは駆動パッド401bと水平方向調整部103に接続されている。駆動パッド401a、401bは、水平方向調整部103の両側において、水平方向調整部103と同一の層または異なる層に配置される。制御部406は、電圧源402a、402bのいずれか一方から駆動パッドと水平方向調整部103との間に電圧を発生させるように電圧源402a、402bを制御する。いずれの電圧源から電圧を発生せるかに応じて水平方向調整部103の移動方向が決まる。また、制御部406は、電圧源に発生させる電圧値を制御し、この電圧値を変えることで水平方向調整部103の移動量を変えることができる。
【0024】
図7は、図6の水平方向調整部103が初期位置(電圧源402a、402bのいずれからも電圧が印加されていないときの位置)にあるときの、B−B線における断面図である。
【0025】
水平方向調整部103は金属部材407と金属部材407の一端(先端)下部に設けられた絶縁素子403とを有する。水平方向調整部103の他端はアンカーと呼ばれる支持部材404によって支持される。水平方向調整部103の先端における絶縁素子403は共振素子101を上から押さえている。水平方向調整部の他の構成例を図8に示す。水平方向調整部113は、絶縁体部分121と、短い金属の電極122とから構成される。紙面に向かって垂直な方向における、絶縁部分121の長さWiと電極122の長さWmとはWi≦Wmの関係があるとする。
【0026】
ところで、以上までに説明した共振回路において、大きな共振周波数の変更を可能とするためには入出力線路104(1)、104(2)の近傍にまで水平方向調整部103(1)、103(2)を移動可変でなければならない。しかし、入出力線路104(1)、104(2)と水平方向調整部103(1)、103(2)とはそれぞれ同じ長さ方向をもつため、お互いの距離が近づきすぎると大きな容量結合が発生してしまう可能性がある。両者の容量結合が大きくなると、入力線路104(1)から出力線路104(2)に通過する信号の一部が他に漏れ出すため通過損失が大きくなり、また他に流れた信号が別な回路に悪影響を及ぼす可能性がある。そこで、この対策として、図9に示すように、水平方向調整部111(1)、111(2)において、共振素子101と接触する部分以外を共振素子101と反対側に折り曲げて、入出力線路104(1)、104(2)から離れるようにする。このようにすることで、入出力線路104(1)、104(2)と水平方向調整部111(1)、111(2)との容量結合を小さく抑えることが可能となる。なお図9において図面の見やすさのため他の要素の図示は省略している。
【0027】
また、共振回路において所望の共振周波数を確実に得るための方法として、図10に示すように共振素子101の下方において半導体基板106上に突起部107aを設けてもよい。各突起部107aは、各々の頂点が所定の間隔になるように配置されている。この構成では、水平方向調整部103(1)、103(2)を突起部107の真上に移動させる。図示しないが、本例では、共振素子101は、水平方向調整部103(1)、103(2)の重さによりたわむ。水平方向調整部103(1)、103(2)により上から押さえられた共振素子101の部分は、下からは突起部107aにより支えられ、この結果共振素子101は強く押さえられ、所望の共振周波数を確実に得ることができる。なお、水平方向調整部103(1)、103(2)に挟まれる共振素子101の部分も、突起部107aに接するが、この部分の押さえの力は弱いため、得られる共振周波数は影響を受けにくく、問題は生じない。図10では突起部107aを均等な間隔で配置したが、図11に示すように、所望の固定の共振周波数に合わせて、突起部107bを不均等な間隔で配置してもよい。また、図10および図11では、突起部107aおよび突起部107bの先端が尖っているが、必ずしも尖っている必要はない。平坦でも丸みを帯びた形状でも同様の効果を得ることができる。
【0028】
図12は、本発明に係る共振回路の第2の実施形態を示す平面図である。図13は、図12の共振回路のC−C線における断面図である。図1および図2と同等部分には同一の符号を付してある。この共振回路は、図1と異なり、水平方向調整部及び移動機構は備えず、代わりに、垂直方向調整部108を備えている。この共振回路の共振周波数は支持部材102(1)、102(2)に挟まれた共振素子101の部分の長さによって決まる。
【0029】
図12に示すように、支持部材102(1)、102(2)に挟まれた共振素子101の部分の略中央上には垂直方向調整部108が設けられる。垂直方向調整部108の下面には突起部108aが設けられている。図13に示すとおり、垂直方向調整部108は、後述する変位機構によって、基板面に垂直な方向に移動可能に構成される。垂直方向調整部108と変位機構との組み合わせは共振阻止機構に相当する。変位機構によって垂直方向調整部108を基板面へ向けて変位させると、支持部材102(1)、102(2)に挟まれた共振素子101部分の中央が突起部分108aによって押され、これにより入出力線路104からの静電力による働きが止められる。これにより共振素子101が、上記共振周波数で共振しない状態を作ることが可能となる。つまり入力線路104(1)から出力線路104(2)へ上記共振周波数の信号が通過しなくなるため、スイッチのオフ状態と同じ状態を作ることが可能となる。ここでは支持部材102(1)、102(2)に挟まれた共振素子101の中央を押さえるとしたが完全に中央でなくても略中央であれば上記効果を得ることができる。なお、突起部108aは必須ではなく、突起部108aがない場合でも本発明は有効である(後述する図14参照)。ただし、この場合、共振素子101を押す力が、設計によっては弱くなることもある。しかし、弱結合で共振する場合の停止状態を作る場合には、共振を止めるのに十分な力となることから、プロセス簡略化のためには有効な方法となる。また、図13では突起部108aの先端が尖っているが、必ずしも尖っている必要はない。また、本実施形態では、垂直方向調整部108が共振素子101を押した状態において、垂直方向調整部108が入出力線路104(1)、104(2)に触れないように入出力線路104(1)、104(2)を配置しているとする。ただし垂直方向調整部108が入出力線路104(1)、104(2)に触れたとしても、上記共振周波数での共振は止められるためこの場合も本発明は有効である。
【0030】
図14は、変位機構および垂直方向調整部の具体例を説明する断面図である。ただし、ここでは、図示の簡単のため、図12および図13と異なる構成をもつ共振回路の断面を示している。ただし図12および図13の場合も同様または類似の構成で変位機構および垂直方向調整部を構成可能である。
【0031】
図14に示すように、垂直方向調整部108は絶縁体部分405aと、金属電極405bと、金属電極405bの先端下部に設けられた絶縁素子405cとを有する。金属電極405bの下方に設けられた駆動パッド401は変位機構に相当する。絶縁体部分405aと、金属電極405bと、金属電極405bと、駆動パッド401との組み合わせは共振阻止機構に相当する。駆動パッド401と金属電極405bとの間に外部制御装置105から電圧源(図示せず)を介して電圧を印加可能である。駆動パッド401と金属電極405bとの間に電圧を印加することで垂直方向調整部108の先端を図中矢印方向に移動できる。すなわち、垂直方向調整部108は、その一端がアンカーと呼ばれる支持部材404に支持され、その一端を支点に他端(先端)が変位する。先端が変位して共振素子101に接触すると、これが共振素子101の機械振動の抵抗となり、共振しない状態が実現される。つまり、共振阻止機構は、外部制御装置からの外部制御信号に応答して、支持部材に挟まれた共振素子101の部分の中央または略中央を押さえて、共振しない状態を実現する。
【0032】
図15は、図12および図13に示した共振回路に、図9の移動機構(図示せず)および水平方向調整部を設けた共振回路を示す平面図である。図16は図15のD−D線における断面図である。ただし、図13と異なり、共振素子101の下方において、基板106上に、突起部107を設けている。突起部107は、突起部108aに対応する位置に設けられる。突起部108aにより共振素子101を上から押し、下からは突起部107により共振素子101を支えることで共振素子101を強く押さえることができる。図15および図16の構成によれば、共振周波数の調整と、結合度0(共振しない状態)を含む結合度の調整とを同時に行うことができる。ここで、突起部108aは、図16を参照して、理想的には水平方向調整部111(1)、111(2)間における共振素子101部分の中央を押すが、本例のように支持部材102(1)、102(2)間における共振素子101部分の略中央(固定位置)を押すこととしても、実際上は問題のない程度に共振しない状態を得ることができる。
【0033】
図17は本発明に係るフィルタ回路の第1の具体例を示すものである。
【0034】
このフィルタ回路は、簡単には図1に示した共振回路を2つと、MIM(Metal-Insulator-Metal)キャパシタとを含んでいる。より詳しくは、第1の共振回路と第2の共振回路とがMIMキャパシタ109を介して接続されている。第1の共振回路は、入力線路104(1)、水平方向調整部103(1)−X、103(2)−X、共振素子101−X、および図面の簡単のため図示しない移動機構等の他の要素を含む。第2の共振回路は、水平方向調整部103(1)−Y、103(2)−Y、共振素子101−Y、出力線路104(2)、および図面の簡単のため図示しない移動機構等の他の要素を含む。MIMキャパシタ109における2個所の金属部分(M)は、第1の共振回路の出力線路(図面に向かって左側の金属部分M)、第2の共振回路の入力線路(図面に向かって右側の金属部分M)にも相当する。MIMキャパシタはインピーダンス回路の一例である。つまり、インピーダンス回路の一端が第1の共振回路における出力線路の他端に接続され、インピーダンス回路の他端が第2の共振回路における入力線路の一端に接続されている。
【0035】
2つの共振回路同士の結合度は、MIMキャパシタ109の容量値、第1の共振回路とMIMキャパシタ109との間の容量値、第2の共振回路とMIMキャパシタ109との間の容量値との合計である。このフィルタ回路によって、2つの共振回路の縮退が解けてフィルタ特性を実現することが可能となる。
【0036】
また、このフィルタ回路における結合度(共振素子101−Xと入力線路104(1)およびMIMキャパシタ109との結合度、2つの共振回路同士の結合度、共振素子101−Yと出力線路104(2)およびMIMキャパシタ109との結合度の少なくともいずれかの結合度)を変えることによってフィルタの帯域幅を調整できる。また、結合度0(所望の共振周波数で共振しない状態)を実現する垂直方向調整部をもつ共振器を用いてフィルタ回路を構成してもよく、この場合にはスイッチ回路を併せ持つフィルタ回路を実現することができる。
【0037】
図18は、本発明に係る共振回路を用いた発振回路の例を示す図である。
【0038】
この発振回路は、共振回路201と増幅回路202と負荷抵抗203とからなる。共振回路201は、共振素子101、入出力線路104(1)、104(2)、水平方向調整部103(1)、103(2)以外にも、移動機構等の他の要素も含むが、ここでは図面の簡単のため図示を省略している。負荷抵抗203は、負荷抵抗、インダクタ、キャパシタのうちの1つ以上の受動素子からなるインピーダンス回路の一例である。共振回路201における出力線路104(2)の他端に出力端子204と負荷抵抗203の一端とが並列に接続されている。負荷抵抗203の他端は増幅回路202の入力に接続されている。増幅回路202の出力は、共振回路201における入力線路104(1)の一端に接続されている。負荷抵抗203の値に比べて増幅器202の負性抵抗が大きくなる条件にすることで発振を起こすことが可能となる。また、共振回路の共振周波数を変えることによって、発振する周波数を変えることが可能となる。
【0039】
図19は、増幅回路202の一例を示す。増幅回路202は、入力端子301と、キャパシタ302と、バイアス端子303と、インダクタ304と、トランジスタ305と、バイアス端子306と、インダクタ307と、キャパシタ308と、出力端子309とを備える。入力端子301からの信号がキャパシタ302を介してトランジスタ305のベースに入力され、トランジスタ305により増幅された信号がキャパシタ308を介して出力端子309へ出力される。トランジスタ305のベースにはバイアス端子303からインダクタ304を介してバイアス電圧が与えられ、トランジスタ305のコレクタにはバイアス端子306からインダクタ307を介してバイアス電圧が与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の共振回路の一実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示した実施形態の断面図である。
【図3】本発明の共振回路の原理を示す構成図である。
【図4】図3に示した構成図から結合を可変した場合の構成図である。
【図5】入出力線路位置と共振素子上の位置との関係による結合変化の関係を表す図である。
【図6】移動機構の構成例を示す平面的である。
【図7】図6のB−B線における断面図である。
【図8】水平方向調整部の他の構成例を示す図である。
【図9】本発明の共振回路の一実施形態を示す構成図である。
【図10】本発明の共振回路の一実施形態を示す断面図である。
【図11】本発明の共振回路の一実施形態を示す断面図である。
【図12】本発明の共振回路の一実施形態を示す構成図である。
【図13】図12のC−C線における断面図である。
【図14】変位機構の具体例を示す断面図である。
【図15】本発明の共振回路の一実施形態を示す構成図である。
【図16】図15のD−D線における断面図である。
【図17】本発明の共振回路を用いたフィルタ回路の一実施形態を示す構成図である。
【図18】本発明の共振回路を用いた発振回路の一実施形態を示す構成図である。
【図19】増幅回路の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0041】
100(1)、100(2)…移動機構
101…共振素子(帯状電極)
102…支持部材
103(1)、103(2)…水平方向調整部(押さえ部)
104(1)…入力線路
104(2)…出力線路
105…外部制御装置
106…半導体基板(基板)
107a、107b…突起部
108…垂直方向調整部
108a…突起部
109…MIMキャパシタ
121…絶縁体部分
122…短い金属の電極
201…共振回路
202…増幅器
203…負荷抵抗
204…出力端子
301…入力端子
302…キャパシタ
303…バイアス端子
304…インダクタ
305…トランジスタ
306…バイアス端子
307…インダクタ
308…コンデンサ
309…出力端子
401a、401b…駆動パッド
402a、402b…電圧源
403…絶縁素子
404…支持部材
405a…絶縁体部分
405b…金属電極
405c…絶縁素子
406…制御部
407…金属部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
帯状電極と、
前記帯状電極の両端において前記帯状電極を基板面から所定の高さに支持する複数の支持部材と、
前記帯状電極の一部を押さえる複数の押さえ部と、
各前記押さえ部を前記帯状電極の長さ方向にそれぞれ異なる移動範囲で移動させる移動機構と、
第1の一端から受ける入力信号を第1の他端に伝送する、前記第1の他端は前記帯状電極の長さ方向における一方の側面のうち前記移動範囲同士の間の部分に近接する入力線路と、
第2の一端から受ける出力信号を第2の他端に伝送する、前記第2の一端は前記帯状電極の前記一方の側面と反対側における他方の側面のうち前記移動範囲同士の間の部分に近接する出力線路と、を備え、
前記帯状電極は、前記入力信号に含まれる、前記複数の押さえ部間における帯状電極部分の長さに応じた共振周波数の信号で共振して、前記共振周波数をもつ信号を前記出力信号として前記出力線路の一端に与える、共振回路。
【請求項2】
前記帯状電極の真下に複数の突起部が前記帯状電極の長さ方向に沿って前記基板面に配置され、
前記移動機構は、前記押さえ部を前記突起部の真上に移動させることを特徴とする請求項1に記載の共振回路。
【請求項3】
外部制御信号に応答して前記複数の支持部材間における帯状電極部分の略中央を押さえて前記帯状電極の共振を阻止する共振阻止機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の共振回路。
【請求項4】
基板と、
帯状電極と、
前記帯状電極の両端において前記帯状電極を基板面から所定の高さに支持する複数の支持部材と、
第1の一端から受ける入力信号を第1の他端に伝送する、前記第1の他端は前記帯状電極の長さ方向における一方の側面に近接する入力線路と、
第2の一端から受ける出力信号を第2の他端に伝送する、前記第2の一端は前記帯状電極の前記一方の側面と反対側における他方の側面に近接する出力線路と、
外部制御信号に応答して前記複数の支持部材間における帯状電極部分の略中央を押さえて、前記帯状電極の共振を阻止する共振阻止機構と、を備え、
前記帯状電極は、前記共振阻止機構によって押さえられていない状態では、前記入力信号に含まれる、前記帯状電極部分の長さに応じた共振周波数の信号によって共振し、前記共振周波数をもつ信号を前記出力信号として前記第2の一端に与える、共振回路。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載された、第1および第2の前記共振回路と、
一端が前記第1の共振回路における前記出力線路の前記他端と接続され、他端が前記第2の共振回路における前記入力線路の前記一端と接続されたインピーダンス回路と、
を備えたフィルタ回路。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の共振回路と、
前記共振回路における前記出力線路の前記他端に接続された出力端子と、
前記出力線路の他端に一端が接続されたインピーダンス回路と、
前記インピーダンス回路の他端に一端が接続され、他端が前記共振回路における入力線路の一端に接続された増幅回路と、
を備えた発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−288321(P2007−288321A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110825(P2006−110825)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】