説明

共有結合した酸を有するアシマドリンの誘導体

【課題】共有結合した酸を有するN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドの誘導体の提供。
【解決手段】上記誘導体、およびこれらの塩、溶媒和物およびプロドラッグ、医薬としてのこれらの誘導体、これらの誘導体の医薬の製造への使用、これらの誘導体の医薬組成物の製造への使用、該医薬組成物の製造のための方法、この方法により得られる医薬組成物、ならびに、該医薬組成物の投与を含む、疾患の処置のための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共有結合した酸を有するN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドの誘導体、医薬としてのこれらの誘導体、医薬組成物の製造のためのこれらの誘導体の使用、該医薬組成物の製造方法、この方法により得た医薬組成物、および該医薬組成物の投与を含む疾患の処置のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド、そして特に塩酸塩(EMD61753)は、例えばアシマドリンの名称で知られており、EP-A-0 569 802(US 5,532,226)、EP-A-0 752 246(US 5,776,972およびUS 5,977,161)、DE-A-198 49 650、EP-A-0 761 650(US 6,060,504)およびEP-A-1 073 634(US 6,344,566)にすでに記載されている。この化合物の塩酸塩は医薬の有効成分として利用することができ、様々な適応症において多くの有益な特性を発揮する。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、より良好な溶解性、より良好な吸収、より高い安定性、より低い吸湿性および/または改善された薬物動態学的特性を有する、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドの新規で安定な誘導体を見出すことを目的とした。
驚くべきことに、既知の投与形態に比べて、特にN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド塩酸塩に比べて、多数の適応症のための医薬有効成分として有利な特性を示す、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドの新規な誘導体を今回見出した。本発明による誘導体の有利な特性は、好ましくは、改善された溶解挙動、改変された、特に改善された薬物動態学的挙動、改変された耐容性プロファイル、および/または改変された半減期、好ましくは延長された半減期を包含する。
【0004】
驚くべきことに、本発明による誘導体は、腸肝循環と強く相互作用する。したがって、本発明による誘導体は、腸肝循環との相互作用により開裂し、誘導体化し、および/もしくはさらに代謝されるか、または遊離のN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドから形成され得る。さらにまた、本発明による誘導体は、本発明による他の誘導体に、腸肝循環との相互作用により転化され得る。本発明による誘導体の少なくともいくつかの有利な特性は、本発明による誘導体と、腸肝循環との相互作用により生じるものと推測される。
【0005】
本発明は、したがって、少なくとも1つの共有結合した酸を有するN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドの誘導体に関する。この発明は、同様に、少なくとも1つの共有結合した酸を有するN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドの誘導体の塩、溶媒和物およびプロドラッグに関する。本発明に関して、共有結合した酸とは、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドの誘導体が、少なくとも1つの酸または酸に由来する基を含み、これが、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドに、イオン相互作用、特に塩形成によっては結合していないことを意味する。本発明による誘導体は、好ましくは、エステル化またはエーテル化により、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドに結合している少なくとも1つの酸、または酸に由来する基を含む。
【0006】
酸または酸に由来する基は、好ましくは、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドに、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドの3−ヒドロキシピロリジン基を介して結合している。
したがって、酸または酸に由来する基がN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドに、3−ヒドロキシピロリジンとのエステル化またエーテル化により共有結合している本発明による誘導体が特に好ましい。N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドは、ピロリジン基の第3位にフリーの水酸基を有しており、したがってアルコールである。本発明による誘導体は、したがって、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドのエステルまたはエステルであり、そして極めて特に好ましくは、以下に列挙する酸または酸に由来する基の1つのを有するN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドのエステルまたはエーテルである。
【0007】
本発明に関して、酸は、例えば、無機酸、好ましくは、ハロゲン、硫黄、窒素およびリンの酸素酸などの無機酸素酸、特に好ましくは、塩酸、亜硫酸、硫酸、スルファミン酸、亜硝酸、硝酸、リン酸、好ましくはオルトリン酸、および有機酸、好ましくは脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族または複素環式の、一塩基性または多塩基性のカルボン酸、スルホン酸または硫酸、特に好ましくは、メタンもしくはエタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンモノおよびジスルホン酸、およびラウリルスルホン酸、極めて特に好ましくは、一塩基性もしくは多塩基性カルボン酸、および一塩基性もしくは多塩基性ヒドロキシカルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ピバリン酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸およびイソニコチン酸などである。
【0008】
酸は、好ましくは生理学的に耐容される酸、特に上記の酸の生理的に耐容される酸から選択される。
酸は、特に好ましくはカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、および無機酸素酸から、極めて特に好ましくはヒドロキシカルボン酸および無機酸素酸から選択される。
カルボン酸は、好ましくは一塩基性もしくは多塩基性カルボン酸、好ましくは一塩基性もしくは多塩基性カルボン酸であって、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するもの、例えば、モノカルボン酸であるギ酸、酢酸、プロピオン酸、ジエチル酢酸、ピバリン酸、ニコチン酸およびイソニコチン酸、およびジカルボン酸である、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸およびマレイン酸などから選択される。カルボン酸は、好ましくは酢酸である。
【0009】
ヒドロキシカルボン酸は、好ましくは、乳酸などのモノヒドロキシモノカルボン酸、リンゴ酸およびクエン酸などのモノヒドロキシジカルボン酸もしくはポリカルボン酸、および、糖酸などのポリヒドロキシモノカルボン酸、特にアスコルビン酸、グルクロン酸およびガラクツロン酸から選択される。
無機酸素酸は、好ましくは、硫酸、オルトリン酸および硝酸から選択され、好ましくは硫酸およびオルトリン酸であり、そして特に硫酸である。
特に好ましいのは、少なくとも1個のフリーの酸性基、すなわち、塩形成が可能であるか、または塩の形態である酸性官能基を含む、本発明による誘導体である。
【0010】
本発明の好ましい態様は、したがって、酸が二塩基性カルボン酸、一塩基性ヒドロキシカルボン酸、および少なくとも二塩基性の無機酸素酸から、特に、上記に好ましいものとして言及した二塩基性カルボン酸、一塩基性ヒドロキシカルボン酸、および少なくとも二塩基性の無機酸素酸から選択される本発明による誘導体に関する。
本発明の特に好ましい態様は、一塩基性ヒドロキシカルボン酸が糖酸から選択され、そして特にグルクロン酸である、本発明による誘導体に関する。
【0011】
本発明のさらなる特に好ましい態様は、二塩基性無機酸素酸が硫酸である、本発明による誘導体に関する。
本発明の特に好ましい態様は、酸がグルクロン酸および硫酸から選択される、本発明による誘導体に関する。
本発明による誘導体は、好ましくは、上記のモノカルボン酸の、アルコール成分としてのN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドとのエステル、上記の無機酸素酸の、アルコール成分としてのN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドとのエステル、および、上記のヒドロキシカルボン酸の、第2のアルコール成分としてのN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドとのエステルから選択される。
【0012】
本発明による多塩基性酸エステルの場合、モノエステルが一般的に好ましい。本発明によるポリヒドロキシカルボン酸エーテルの場合、モノエーテルが一般的に好ましい。一般的に、本発明によるN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド誘導体と、ヒドロキシカルボン酸とは、本質的に、ヒドロキシカルボン酸の混合されたエステルおよびエーテルの形態でも、いくつかのN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドが、ヒドロキシカルボン酸とエーテルの形態で結合し、いくつかのN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドがヒドロキシカルボン酸とエステルの形態で結合している、2種の誘導体の混合物の形態でもない。
【0013】
特に好ましい本発明による誘導体は、したがって、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも70重量%、極めて特に好ましくは少なくとも80重量%もしくは少なくとも90重量%、最大100重量%であるが、多くの場合では、100重量%未満、例えば、60〜90重量%、70〜95重量%、80〜99.9重量%、または90〜100重量%の単一の、確定した(defined)化合物を含むものであって、好ましくは、アルコール成分としての1分子もしくは1単位のみのN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドと、1分子もしくは1単位の酸、好ましくは上記の酸のうちの1種とを、共有結合した形態で含むものである。
【0014】
本発明による好ましい誘導体の例は、式I
【化1】

【0015】
式中、Rは、
a)1〜12個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアシル基、好ましくは、1〜12個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルカノイル基、特に好ましくは、ホルミル、アセチル、プロピオニル、イソプロピオニル、ブチリル、イソブチリルおよびピバロイル、特にアセチル、
b)1個のヒロドキシル基および/または1個または2個以上のカルボキシル基を含む、1〜12個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアシル基、そして特に好ましくは、
【0016】
【化2】

から選択されるもの、
【0017】
c)ポリヒドロキシモノカルボン酸から、水酸基の除去により得られるアルキル基、好ましくはアスコルビン酸、グルクロン酸およびガラクツロン酸から得られるもの、特に好ましくは、
【0018】
【化3】

【0019】
極めて特に好ましくは、
【化4】

そして、特に、
【化5】

および/またはこれらの開鎖形態、
【0020】
および、
d)硫酸から水酸基の除去によって得られるスルホン酸基、オルトリン酸から水酸基の除去によって得られるホスホン酸基、および硝酸から水酸基の除去によって得られるニトロ基、特に
【化6】

およびその塩および溶媒和物、
から選択される、
で表される化合物である。
【0021】
c)およびd)にて再現した基Rにおいては、フリーの結合またはフリーの原子価は、好ましくは、明確性のために、式IにおけるRが、酸素原子に結合している箇所を表す。c)にて再現した基Rにおいては、実線のくさびは、好ましくは紙面に対して上方に向いた結合を表す。c)にて再現した基Rにおいては、斜線のくさびは、好ましくは紙面に対して下方に向いた結合を表す。
【0022】
本発明による特に好ましい誘導体は、式Ia
【化7】

で表される化合物(6−((1S)−1−{[(2,2−ジフェニルエタノイル)メチルアミノ]フェニルエチル}−(3S)−ピロリジン−3−イルオキシ)−D−グルクロン酸)
【0023】
および、式Ib
【化8】

で表される化合物(モノ−((1S)−1−{[(2,2−ジフェニルエタノイル)メチルアミノ]フェニルエチル}−(3S)−ピロリジン−3−イル)サルフェート)
ならびに、これらの塩および溶媒和物から選択される。
【0024】
さらにまた、式(Ic)
【化9】

で表される化合物(N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−アセトキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド)
ならびにこれらの塩および溶媒和物が好ましい。
【0025】
本発明はまた、本発明による化合物の医薬的に耐容される誘導体、特に、本発明による化合物、特に式Iおよびその従属式で表される化合物のプロドラッグおよびプロドラッグ誘導体、塩および溶媒和物に関する。
本発明はまた、本発明による化合物の光学活性形態(立体異性体)、好ましくは鏡像異性体、ラセミ体およびジアステレオマー、および水和物および溶媒和物に関する。本発明による化合物の溶媒和物なる用語は、不活性な溶媒分子の本発明による化合物上への、これらの相互の引力により形成される付加物を意味するものとする。溶媒和物は、例えば、一水和物または二水和物またはアルコラートである。
【0026】
本発明による化合物のプロドラッグなる用語は、追加の基により修飾された、または追加の基を含む、本発明による誘導体を意味するものとする。追加の基、例えば、アルキルもしくはアシル基、糖類またはオリゴペプチドにより修飾され、そして生体内で迅速に分解して本発明による活性な化合物を与える、式Iで表される化合物が好ましい。これらはまた、本発明による化合物の生分解性ポリマー誘導体、例えば、Int. J. Pharm. 115, 61〜67(1995)に記載されているようなものを包含する。このタイプのプロドラッグ誘導体の例は、少なくとも1個のフリーの酸性基を含む本発明による誘導体のアルキルエステル、および少なくとも1個の水酸基を含む本発明による誘導体のエステルである。
【0027】
本発明はまた、本発明による式Iで表される化合物の混合物、例えば、2種のジアステレオマーの、例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:100または1:1000の比率での混合物に関する。これらは、特に好ましくは、立体異性体の混合物である。
医薬的に耐容される誘導体については、本発明による誘導体、特に本発明による式Iで表される誘導体の塩および溶媒和物、そして特にこれらの生理学的に耐容される塩および溶媒和物が好ましい。
【0028】
本発明による誘導体、および、特に式Iで表される化合物は、酸または塩基の作用により塩に転化することができる。したがって、本発明による誘導体、特に本発明による塩基性の誘導体は、酸により、例えば、エタノールなどの不活性な溶媒における等量の塩基と酸との反応と、その後の蒸発により、関連する酸付加塩に転化することができる。この反応のための好適な酸は、特に生理学的に許容し得る塩を与えるものである。したがって、無機酸、例えば硫酸、硝酸、塩酸もしくは臭化水素酸などのハロゲン化水素酸、オルトリン酸などのリン酸、スルファミン酸、さらには、有機酸、特に脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族もしくは複素環式の、一塩基性もしくは多塩基性のカルボン酸、スルホン酸または硫酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ピバリン酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、メタンもしくはエタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンモノおよびジスルホン酸およびラウリルスルホン酸を用いることが可能である。生理学的に許容し得ない酸、例えばピクリン酸塩を本発明による誘導体の単離および/または精製に用いることができる。
【0029】
酸付加塩の形成に用いる酸は、本発明による誘導体に共有結合している酸と同一であってもまたは異なっていてもよいが、酸付加塩の形成に用いた酸は、塩(酸付加塩)に共有結合せず、代わりにイオン相互作用により会合する。しかしながら、本発明による誘導体に共有結合している酸は、好ましくは酸付加塩の形成に用いられる酸とは異なる。本発明による誘導体が塩の形態、そして特に生理学的に耐容される塩の形態である場合には、これは一般的に酸付加塩、そして特に、生理学的に耐容される酸付加塩である。
【0030】
本発明による誘導体に共有結合している酸が、1個または2個以上のフリーの酸性基を含む場合、本発明による誘導体は、酸もしくは塩基の付加がなくとも、内部塩形成(internal salt formation)による、いわゆる内部塩(internal salt)のような塩の形態であってもよい。本発明による誘導体に共有結合している酸が生理学的に耐容される酸であり、そして1個または2個以上のフリーの酸性基を含む場合、本発明による誘導体は、酸もしくは塩基の付加がなくとも、内部塩形成による生理学的に耐容される塩の形態であってもよい。
【0031】
あるいは、本発明による誘導体、特に本発明による酸性の誘導体は、塩基により、例えば、エタノールなどの不活性な溶媒における等量の本発明による誘導体と塩基との反応と、その後の蒸発により、塩基付加塩に転化することができる。この反応のための好適な塩基は、特に生理学的に許容し得る塩を与えるものである。好適な塩基は当業者に知られている。例えば、本発明による誘導体は、対応する金属塩、特にアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、または対応するアンモニウム塩に、アミン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ土類金属炭酸塩、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウムなどの塩基により転化することができる。生理学的に許容し得る有機塩基、例えばエタノールアミンなどを用いることもまた可能である。
【0032】
本発明は、好ましくは、単離された、および/または本質的に純粋な形態の本発明による誘導体に関する。本質的に純粋とは、好ましくは、本発明による誘導体が、60重量%よりも高い、好ましくは80重量%よりも高い、特に好ましくは90重量%よりも高い、そして特に95重量%よりも高い、例えば、97重量%よりも高い、99重量%よりも高い、99.9重量%よりも高い、99.99重量%よりも高い純度にあるか、または100重量%までの純度を有することを意味する。本発明による誘導体の混合物においては、純度のデータは、好ましくは、それぞれの誘導体、そして特に主要な構成要素としての本発明による誘導体に関するものである。これに関して、主要な構成要素とは、混合物中に最大の比率で存在する本発明による誘導体を意味し、ここで、混合物中の主要な構成要素の比率は、本発明による誘導体の全重量に基づいて、好ましくは少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも30重量%、特に好ましくは少なくとも60重量%、そして特に少なくとも80重量%であるが、100重量%未満である。
【0033】
本発明による誘導体および/またはその塩および溶媒和物は、多数の有用な薬学的特性を奏する。したがって、これらは、好ましくは、鎮痛、神経保護、抗炎症、抗喘息、利尿、抗けいれんおよび/または鎮咳作用を示し、痛覚過敏症、特に炎症誘導性の痛覚過敏症に拮抗し、疼痛、脳浮腫の症状、中枢神経系の供給不良の症状、および特に低酸素症に対して保護し、その処置に好適であり、そして、虚血後の二次的損傷に対して保護し、その処置および改善に好適である。これらは、例えば、EP-A-0 569 802に記載されており、その開示内容は参照により本明細書に明示的に組み込む。したがって、本発明による化合物が、マウスまたはラットにおける「ライジング試験」(方法は、Siegmund et al., Proc. Soc. Exp. Biol. 95,(1957), 729〜731参照)にて作用することが、実験により示された。鎮痛作用自体は、さらにまたマウスまたはラットでの「テイルフリック試験」(方法は、d’Amour and Smith, J. Pharmacol. Exp. Ther. 72,(1941), 74〜79参照)において、さらにまた、「ホットプレート試験」(Schmauss and Yaksh, J. Pharmacol. Exp. Ther. 228,(1984), 1〜12およびそこに引用されている文献参照)において証明することができる。特に強い作用は、ラットにおけるカラギーナン誘導性痛覚過敏症モデルにおいて観察することができる(Bartoszyk and Wild, Neuroscience Letters 101(1989) 95参照)。同時に、化合物は、身体的依存を示さないか、身体的依存へのわずかな傾向を示すにすぎない。さらに、慣用の方法で行われた対応する実験において、顕著な抗炎症、利尿、抗けいれんおよび神経保護作用が証明された。本発明による誘導体は、カッパ受容体への結合挙動に関して高い親和性を示す。
【0034】
本発明の特別な側面は、本発明による誘導体の、機能性胃腸症(以下では機能性胃および/もしくは腸症、または、略して機能性胃/腸症とも称する)の予防および/または処置のための有効性に関する。機能性胃腸症の群は、GUT: Rome II: A Multinational consensus Document on Functional Gastrointestinal Disorders, Supplement II, Vol 45, 1999に詳細に記載されると共に分類されており、その開示内容を、明示的に本明細書中に参照により組み込む。
機能性胃腸症は、好ましくは、機能性胃十二指腸疾患、このうち好ましくは機能性悪心そして特に好ましくは消化不良、特に潰瘍に関連しない消化不良;機能性腸疾患、このうち好ましくは機能性腹痛、好ましくは機能性放屁もしくは皷腸、特に好ましくは機能性宿便、便秘もしくは便閉、同様に特に好ましくは機能性下痢、そして特に過敏性腸症、過敏性大腸症もしくはIBS(過敏性腸症候群);および慢性運動障害から選択される。
【0035】
本発明による誘導体の、該適応症もしくは臨床像における有効性は、従来技術から既知の標準的な方法、またはこれに類似の方法を用いて決定することができる。適応症、およびこれらの適応症における有効性の決定のための方法は、例えば、N. J. Talley, V. Stanghellini, R. C. Heading, K. L. Koch, J. R. Malagelada, G. N. J. Tytgat; Gut 1999; 45(Suppl 2): II37〜II42; W. G. Thompson, G. F. Longstreth, D. A. Drossman, K. W. Heaton, E. J. Irvine, S. A. Mueller-Lissner; Gut 1999; 45(Suppl 2): II43〜II47; S. J. O. Veldhuyzen van Zanten, N. J. Talley, P. Bytzer, K. B. Klein, P. J. Whorwell, A. R. Zinsmeister; Gut 1999; 45(Suppl 2): II69〜II77; M. Dapoigny, M. Homerin, B. Scherrer, B. Fraitag; Gut(34, Suppl. 3, S30, 1993); J.-L. Abitbol, B. Scherrer, C. de Meynard, G. Meric, B. Fraitag, Gut(39, Suppl. 3, A229〜A230, 1996);およびN. J. Talley, S. V. Van Zanten, L. R. Saez, G. Dukes, T. Perschy, M. Heath, C. Kleoudis, A. W. Mangel; Alimentary Pharmacology and Therapeutics 15: 4, 525〜537に記載されており、その開示内容の全てを参照により組み込む。
【0036】
本発明はまた、したがって、本発明による誘導体の、機能性胃腸症の診断、予防および/または処置のための使用に関する。
本発明はまた、したがって、本発明による誘導体の、機能性胃腸症の診断、予防および/または処置のための医薬の製造への使用に関する。
【0037】
類似の活性範囲を有する他の化合物と比べ、本発明による誘導体は、特に、炎症性腸疾患の処置のため、および、炎症性腸疾患の処置のための医薬製剤への使用のために特に好適である。なぜなら、鎮痛および抗炎症作用の外に、これらは、該疾患により生じた腸の運動系の障害を正常化するのに好適だからである。特にこれらは、炎症性腸疾患による腸閉塞のリスクがある場合、またはこれがすでに起こっている場合に、腸運動を再開するのに好適である。この作用はまた、術後のイレウスおよびこれに伴う疼痛の処置に用いることができる。炎症性腸疾患は、頻繁に、結腸痛、消化障害および最悪の場合、腸閉塞をもたらす。特に最後のものは、しばしば、強い収縮刺激の結果としての疝痛用の疼痛、便および腸内ガスの貯留、嘔吐、そして症状が長引いた場合には、脱水、腹部抵抗、そして最後にはショックを伴う。本発明による誘導体は、上記疾患または症状の処置および改善に有利に用いることができる。特に、これらは、例えば、その開示内容を明示的に本明細書に参照により組み込むEP-A-0 752 246に記載のとおり、炎症性腸疾患に伴う疼痛を改善し、そして、炎症性腸疾患により起こる恐れのある、もしくはこれにより起こった腸閉塞の急性症例においては、検出し得る副作用を生じることなく腸の運動系を再正常化もしくは再開することができる。
【0038】
本発明による誘導体の、炎症性腸疾患の処置および/または予防のための使用、および特に、本発明による誘導体の、炎症性腸疾患の処置および/または予防のための医薬の製造への使用は、したがって、本発明の好ましい側面である。
本発明はまた、本発明による誘導体の、ニューロパシー、これに関連する臨床像および症状、ならびにこれに関係する疾患の、診断、予防および/または処置のための医薬の製造への使用に関する。
ニューロパシー、または末梢性ニューロパシーは、末梢神経の疾患、通常は神経損傷に関する一般的に知られた用語である。
【0039】
末梢神経系は、脊髄から体の全ての部分に広がる神経からなる。体の1つの部分にのみ生じる神経損傷はモノニューロパシーとして知られ、多数の領域における神経損傷は、ポリニューロパシーとして知られる。神経根炎は、神経根に関するニューロパシーを意味する。疾患が体の両側に対称に生じる場合、この状態は対称性ニューロパシーと呼ばれる。末梢性ニューロパシーは、糖尿病、ビタミン欠乏、HIV、癌、ウイルス性疾患、アルコール依存症の結果として、または薬剤の副作用として生じ得る。したがって、これはまた、例えば糖尿病性ニューロパシー、食物誘導性ニューロパシーまたはアルコール誘導性ニューロパシーなどと、原因によって分類することができる。原因が決定できない場合、この状態は特発性ニューロパシーと呼ばれる。末梢性ニューロパシーは広く起こっており、しばしば患者の健康の一般状態に極めて有害な効果を有し、障害をもたらすことも少なくない。病因論、臨床像、発生度、および/または他の疾患との相互作用は、文献、例えば、Boulton, Diabetes Metab 1998; 24(Suppl 3): 55〜65; IIIa, Eur Neurol 1999; 41(Suppl 1): 3 7; Lagueny, Rev Prat 2000; 50: 731〜735; Peltier and Russell, Curr Opin Neurol 2002; 15: 633〜638; Simpson, J Neurovirol 2002; 8(Suppl 2): 33〜41; Sweeney, Clin J Oncol Nurs 2002; 6: 163〜166;およびWulff and Simpson, Semin Neurol 1999; 19: 157〜164に詳細に議論されている。該刊行物およびそこに引用された参考文献の開示内容は、明示的に本明細書に参照によって組み込む。
【0040】
最も広く起こっている糖尿病の合併症はニューロパシーである。糖尿病患者の60%までが、糖尿病の結果としてニューロパシーを発症すると推定されている。ニューロパシーは、広範な症状、なかでも、しびれもしくは刺痛、極めて不快なピリピリ感、連続した電気ショックを受けている感触、および種々の種類および重篤度の疼痛を典型的に伴う。これらの症状は単独でまたは組み合わせて生じ得る。
【0041】
糖尿病性ニューロパシーの症状、そして特にこれに伴う疼痛は、通常足および足首、そしてそれほどではないにせよ、膝上の足および腕に関係する。不適切な血糖値の設定は、定期的に神経損傷をもたらし、これが今度は、十分な確度で糖尿病性ニューロパシーの臨床像の発生をもたらす。糖尿病性ニューロパシーの引き金は知られており、すなわち真性糖尿病であり、血糖値の不適切な設定と、関連する高血糖とに関連していると推測される。血糖値が高い程、そしてそれが正常値を超えている時間が長い程、一般的に疾患はより重篤となる。上昇した血糖値がどのように神経損傷をもたらすかについての正確な機序は、依然研究を要する。他の因子、例えば、神経成長因子の異常または心血管疾患(虚血、低酸素症)の影響などが、糖尿病性ニューロパシーの発症に寄与する重要な因子として同様に仮定されている(例えば、Jude and Boulton, Diabetes Reviews 1999; 7: 395〜410; Dworkin, Clin J Pain 2002; 18: 343〜349; Simmons and Feldman, Curr Opin Neurol 2002; 15: 595〜603; Barbano et al., Curr Pain Headache Rep 2003; 7: 169〜177; Spruce et al., Diabet Med 2003; 20: 88〜98参照)。
【0042】
驚くべきことに、本発明による誘導体が、ニューロパシー、関連する臨床像および症状、および関係する疾患の、診断、予防および/または処置に成功裏に用いることができることが見出された。
さらに、本発明による誘導体は、好ましくは、本明細書に記載のとおり、神経再生を加速し、したがって、特に好ましくは、本明細書に記載された病的状態もしくは疾患の治癒、例えば、ニューロパシーの部分的もしくは完全な治癒を加速または誘導する。さらに、本発明による誘導体は、好ましくは、本明細書に記載のとおり、従来技術の医薬よりも少ない副作用を示す。
【0043】
本発明は、したがって、同様に、好ましくは、本発明による誘導体の、ニューロパシー、これに関連する臨床像および症状、および関係する疾患の診断、予防および/または処置のための医薬の製造への使用に関する。
本発明に関して、ニューロパシーは、好ましくは、糖尿病誘導性ニューロパシー、食物誘導性ニューロパシー、ビタミン欠乏誘導性ニューロパシー、HIV誘導性ニューロパシー、癌誘導性ニューロパシー、ウイルス誘導性ニューロパシー、アルコール依存誘導性ニューロパシーおよび医薬誘導性ニューロパシー、特に好ましくは、糖尿病誘導性ニューロパシー、食物誘導性ニューロパシーおよびアルコール依存誘導性ニューロパシーから選択され、そして特に糖尿病誘導性ニューロパシーである。
【0044】
本発明による誘導体はさらに、他の病因のニューロパシー、および関係する疾患、臨床像または適応症、例えば、ヘルペス感染後の神経痛、化学療法誘導性ニューロパシー、外陰膣炎、および/または紅斑性狼瘡などにおいて高い有効性を示す。本発明による誘導体の該疾患の予防および/または処置における活性または有効性は、従来技術から知られる方法により、またはこれらと同様にして、例えば、Backonja and Glanzman, Clin Ther 2003; 25: 81〜104; Bates and Timmins, Int J STD AIDS 2002; 13: 210〜212; Carrazana and Mikoshiba, J Pain Symptom Manage 2003; 25(5 Suppl): S31〜35; Harel et al., Pediatr Neurol 2002; 27: 53〜56; Jensen, Eur J Pain 2002; 6(Suppl A): 61〜68; LaSpina et al. Eur J Neurol 2001; 8: 71〜75; Lersch et al., Clin Colorectal Cancer 2002; 2: 54〜58;および/またはMellegers et al., Clin J Pain 2001; 17: 284〜295に記載されたようにして、またはこれらと同様にして証明することができる。該刊行物およびそこに引用された参考文献の開示内容は、明示的に参照により組み込む。
【0045】
本発明による誘導体の活性または有効性は、従来技術から知られた処置もしくは方法により、またはこれらと同様にして決定することができる。好適な方法は、実験的な非臨床的方法、例えば、in vitroアッセイ、in vivoアッセイ、細胞アッセイおよび動物モデルなど、および臨床的方法または臨床研究を包含するが、これらに限定されない。好適な方法は、例えば、Field et al., Pain 1999; 80: 391〜398; Miki et al., Eur J Pharmacol 2001; 430: 229〜234; Wallin et al., Eur J Pain 2002; 6: 261〜272; Backonja, Epilepsia 1999; 40(suppl 6): S57〜59; Gorson et al., J Neurol Neurosurg Psychiatry 1999; 66: 251〜252; Dallocchio et al., J Pain Symptom Manage 2000; 20: 280〜285; Hemstreet and Lapointe, Clin Ther 2001; 23: 520〜531; Brooks-Rock, Nurse Pract 2001; 26: 59〜61; Backonja and Glanzman, Clin Ther 2003; 25: 81〜104; Kaul et al., Arch Int Pharmacodyn Ther 1978; 234: 139〜44;およびCalcutt et al., Anesthesiology 2000; 93: 1271〜1278に記載されている。該刊行物およびそこに引用された参考文献の開示内容は、明示的に参照により組み込む。
【0046】
例えば、ラットにおけるストレプトゾトシン誘導性糖尿病は、1型糖尿病(インスリン依存性糖尿病)および/または後遺症および関連症状、特に本明細書に記載の後遺症および関連症状の研究のための好適な動物モデルとみなされている(例えば、Kaul et al., Arch Int Pharmacodyn Ther 1978; 234: 139〜44; Calcutt et al., Anesthesiology 2000; 93:1271〜1278参照)。このモデルにおいては、ラットにおけるストレプトゾシン誘導性糖尿病でも、熱的な痛覚鈍麻から、他の感覚刺激に対する過剰な行動応答までの感覚障害をもたらす。栄養不良は、糖尿病の最中に感覚神経障害を増大させ得る。
【0047】
ニューロパシー、関連する臨床像および症状、および関係する疾患の診断、予防および/または処置、そして特に、本発明による誘導体の、ニューロパシー、関連する臨床像および症状、および関係する疾患の診断、予防および/または処置のための医薬の製造への使用に関しては、同じ出願人による2003年10月30日の欧州特許出願、およびその2次的な国際および欧州出願が参照でき、その開示内容の全体を参照により組み込む。
【0048】
本発明による誘導体はさらに、疼痛および疼痛への過敏症、特に背部不快感(back complaints)、火傷、日焼けおよびリウマチ疾患において起こるもの、ならびにそこで生じる炎症反応の処置および/または予防に好適である。特に、これらの適応症における疼痛および疼痛過敏反応以外の炎症過程もまた、本発明による誘導体を含む好適な医薬製剤の投与により影響され得る。最も重篤な火傷において生じる反射性イレウス(reflex ileus)もまた、予防または処置することができる。本発明は、同様に、本発明による誘導体の、上記疾患および/または症状の処置および/または予防のための医薬の製造への使用に関する。
【0049】
さらにまた、本発明による誘導体がアレルギー、特に日光アレルギーの処置において有利な作用を示すことが見出された。なぜなら、本発明による誘導体の影響により、アレルギー性皮膚反応が迅速に消退し、これに伴う痒みが迅速に低減するからである。神経皮膚炎および特に掻痒(痒み)において、陽性の結果が同等に観察された。特に、皮膚の痒みが、これらの疾患において、本発明による誘導体の作用のもとで低減し、そしてこれらの疾患により生じるか、または刺激される炎症性皮膚反応が有利に影響される。本発明は、同様に、本発明による誘導体の、上記疾患および/または症状の処置および/または予防のための医薬の製造への使用に関する。したがって、本発明による誘導体の神経皮膚炎、痒み、そして特に掻痒の予防および/もしくは処置のための使用、ならびに、特に、神経皮膚炎、痒み、そして特に掻痒の予防および/もしくは処置のための医薬の製造への使用が特に好ましい。これに関しても、EP-A-0 752 246の開示内容を、明示的に本明細書に参照により組み込む。
【0050】
本発明による誘導体はさらに、術後の疼痛および疼痛過敏反応、ならびに腹部手術の後に頻繁に発生するイレウスの処置に好適である。本発明は、同様に、本発明による誘導体の、上記疾患および/または症状のための処置および/または予防のための使用、および/または医薬の製造への使用に関する。
【0051】
本発明による誘導体は、さらにまた、胃腸管の非炎症性疾患、好ましくは非炎症性腸疾患の処置および/または予防、ならびに特に過敏性腸症候群(IBS)の処置および/または予防に用いることができ、かつ有効である。なぜなら、これらは、この疾患に関連する疼痛を改善すると同時に、疾患を治癒することができるからである。ここで有利なことは、本発明による誘導体が正常な腸蠕動には影響しないが、過敏性腸症候群の治癒に寄与することである。同様の活性範囲を有する他の化合物に比べ、本発明による誘導体、そして特に式Iで表される誘導体は、過敏性腸症候群の処置のための医薬製剤における使用に特に好適である。なぜなら、これらは、鎮痛および抗炎症作用の外に、当該疾患により生じた腸運動系の障害を正常化するのに好適だからである。これに関しては、DE 198 49 650が参照され、その全開示内容を本明細書に参照により組み込む。これらの適応症における本発明による誘導体の有効性は、従来技術から知られた方法、例えばDelgado-Aros et al., Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol. 284: G558〜G566, 2003における方法により、またはこれらと同様にして証明することができる。
【0052】
本発明による誘導体の、胃腸管の非炎症性疾患、好ましくは非炎症性腸疾患、そして特に好ましくは過敏性腸症候群の処置および/または予防のための使用は、したがって、本発明の好ましい側面である。本発明による誘導体の、胃腸管の非炎症性疾患、好ましくは非炎症性腸疾患、そして特に好ましくは過敏性腸症候群の処置および/または予防のための医薬の製造への使用は、したがって、本発明の特に好ましい側面である。
【0053】
さらに、本発明による誘導体は、患者に投与した場合に、以下の有利な特性の少なくとも1つを示す。
・本発明による誘導体は、胃腸管の緊張の調節剤として有効である。特に、これらは、胃腸管の緊張の弛緩または活性化を行うのに好適である。一般的に、本発明による誘導体の調節作用は、用量依存的である。
・本発明による誘導体は、飽満感および/またはいわゆる食後症状、例えば、腸内ガス発生の量および/または重篤度、満腹感、悪心および/または食物摂取後の疼痛に影響を与えるために好適である。
・本発明による誘導体の飽満感および/または食後症状への効果は、好ましくは用量依存的である。一般的に、低用量は、症状の低減をもたらし、一方より高い用量は、症状の増大をもたらし得る。
・本発明による誘導体は、胃腸管、そして特に結腸の容積、特に摂取容積、および/または耐性、例えば、機械的刺激に対する耐性に影響を与えることができる。例えば、低用量から中用量の投与により、容積は、本発明による誘導体の投与がない状態に比べ、有意に増大し得る。
【0054】
・一般的に、本発明による誘導体の投与は、胃腸管の機能的パラメータ、例えば、胃腸管の通過時間、胃内容排出、腸内容排出および結腸内容排出などに対して有害な効果を示さないか、またはわずかにしか示さない。この効果は、好ましくは用量依存的ではないか、またはわずかにしか用量依存的ではない。本発明による誘導体の投与は、したがって、胃腸管の天然の機能にわずかな影響を示すにすぎず、そしてしたがって、不所望な副作用への傾向は低い。
・本発明による誘導体のより高い用量での投与は、好ましくは、満腹感に関する症状の増大/強化をもたらす。例えば、患者は、より少ない食物しか摂っていないにもかかわらず早期に胃膨満感を有し、したがって、より少なく食す。本発明による誘導体はしたがって、肥満患者における満腹感の欠如の修正のため、そしてしたがって、肥満症の処置のために用いることができる。
・本発明による誘導体は、さらにまた、摂食障害および/または消化障害、特に心因性の摂食障害および/または心因性の消化障害の処置および/または予防に用いることができ、かつこれらに有効である。なぜなら、これらは、胃腸管の緊張に有利に影響し、またはこれを調節するのに好適だからである。
【0055】
本発明による誘導体は、したがって、摂食および消化障害、特に心因性摂食および消化障害、例えば、病的に変化した食欲、特に、例えば、妊娠中、癌の症例において、感染性疾患、例えばインフルエンザもしくはHIVの症例において、術後の副作用として、異化、悪液質、無食欲、特に拒食症、食欲不振、ジスポンデローシス(dysponderosis)、ポリアミン肥満(adipositas polyamine)、肥満症、胃不全麻痺、特に神経性胃不全麻痺、糖尿病性胃不全麻痺、筋原性胃不全麻痺または薬物誘導性胃不全麻痺、胃アトニー、胃麻痺もしくは腸不全麻痺(enteroparesis)、特に胃腸手術後のもの、および胃腸管の狭窄、特に幽門の狭窄の結果として起こる食欲の欠如または減退した食欲の処置および/または予防に好適である。
【0056】
本発明による誘導体は、さらにまた、食欲抑制剤として、単独での、もしくは他の食欲抑制剤、好ましくは1種または2種以上の副交感神経作動薬と組み合わせての投与に好適である。好適なさらなる食欲抑制剤または副交感神経作動薬は、当業者に知られている。好適な食欲抑制剤または副交感神経作動薬は、特に、フェニルプロパノールアミン、カチン、シブトラミン、アンフェプラモン、エフェドリンおよびノルシュードエフェドリンである。これに関しては、EP 0 201 1047.4が参照され、その全開示内容を、本明細書に参照により組み込む。
本発明は、したがって、本発明による誘導体の、本発明による誘導体とは異なる食欲抑制剤と一緒に投与するための医薬製剤の製造への使用に関する。本発明は、したがってまた、本発明による誘導体の、少なくとも1種のさらなる食欲抑制剤を含む合剤の製造への使用に関する。
【0057】
本発明による誘導体の胃腸管への有利な効果の用量依存性は、慣用の方法、例えばEP 02011047.4に記載されているものにより、またはこれらと同様にして、容易に決定することができる。本発明に関して、比較的低用量(アシマドリンとして計算して、体重1kgあたりの有効成分のmgで表示)とは、好ましくは1日あたり0.001〜0.5mg/kgの範囲、特に好ましくは1日あたり0.01〜1.0mg/kg、そして特に1日あたり0.1〜2.0mg/kg、例えば、1日あたり約0.3mg/kg、1日あたり約0.75mg/kg、または1日あたり約1.0mg/kgであり、一方、本発明に関して、比較的高用量とは、一般的に、1日あたり2.0mg/kgを超え、そして、好ましくは、1日あたり2.25〜5mg/kgの範囲、そして特に1日あたり2.5〜10mg/kgの範囲、例えば、1日あたり約3mg/kg、1日あたり約5mg/kg、または1日あたり約8mg/kgである。
【0058】
さらに、本発明による誘導体が、眼痛の処置、特に眼痛の局所処置のために、眼痛の起源とは無関係に有利に用いることができることが示されている。本発明による誘導体は、術後の眼痛、例えば、レーザーによる手術の後、そして特にいわゆるPRK手術の後に起こり得るものの局所処置に特に有利に用いることができる。PRKは、ここでは、レーザー屈折矯正角膜切除術を意味する。
さらにまた、本発明による誘導体が、耳痛の処置、特に耳痛の局所もしくは経鼻処置に、耳痛の起源とは無関係に有利に用いることができることが示されている。本発明による誘導体は、耳痛の処置、例えば耳炎、感染症、炎症、特に中耳の炎症、浮腫、事故外傷、手術において、および、術後に生じ得るものの処置に特に有利に用いることができる。
【0059】
本発明による誘導体は、好ましくは、消化不良、特に潰瘍と関連しない消化不良(非潰瘍性消化不良またはNUD)の処置および/または予防に有利に用いることができる。
本発明による誘導体は、さらにまた、好ましくは、ニューロパシー、特に糖尿病性ニューロパシーの処置および/または予防に有利に用いることができる。
本発明に関して、疾患または適応症は、したがって、好ましくは、疼痛、疼痛の症状、耳痛、眼痛、炎症、イレウス、炎症性腸疾患、過敏性腸症候分、過敏性膀胱症候群、消化不良、ニューロパシー、肥満、過食症、肥満症、悪液質、無食欲、食欲不振、ジスポンデローシス、胃不全麻痺および胃腸管の狭窄から選択される。
【0060】
本発明は、したがって、本発明による誘導体および/またはその塩もしくは溶媒和物の、疾患、特に本明細書で言及した疾患または適応症の1または2以上の予防および/または処置への使用に関する。
本発明は、したがって、好ましくは、本発明による誘導体および/またはその塩もしくは溶媒和物の、疾患、特に本明細書に言及された疾患または適応症の1または2以上の予防および/または治癒のための医薬の製造への使用に関する。
【0061】
さらに、本発明による誘導体の場合においては、上記のとおりのこれらの有利に改変された特性プロファイルにもかかわらず、これらは血液脳関門を超えることができないようであり、したがって、依存症の可能性が無く、特に有利であることが示された。さらに、特許請求された適応症のための有利な作用の使用を何らかの形で制限し得る効果は、これまで見出されていない。このことは、本発明による誘導体が一般的に比較的高い、好ましくは一層大幅に増大した極性および/または親水性を有しているところ、これは一般的には血液脳関門を超える能力を大いに増大させるのであるから、特に驚くべきことである。
【0062】
本発明は、したがって、本発明による誘導体の、上記疾患の処置および/または予防のための医薬の製造への使用に関する。
本発明は、したがってまた、少なくとも1種の本発明による誘導体および/またはその溶媒和物もしくは塩を含む医薬製剤に関する。本発明による医薬製剤は、好ましくは、医薬製剤の総重量に基づいて、少なくとも0.001重量%、特に好ましくは、少なくとも0.01重量%、極めて特に好ましくは、少なくとも0.1重量%、そして特に少なくとも1.0重量%の、少なくとも1種の本発明による誘導体および/またはその溶媒和物もしくは塩を含む。一般的に、本発明による医薬製剤は、多くとも100重量%、そして好ましくは、多くとも98重量%、または多くとも95重量%の本発明による誘導体を含む。一般的に、本発明による医薬製剤は、少なくとも5重量%、例えば、少なくとも15重量%、または、少なくとも30重量%の、本発明による誘導体およびこれらの塩および溶媒和物とは異なるさらなる成分を含み、これは好ましくはさらなる有効成分、および有効成分以外の、一般的に医薬製剤中に存在する慣用の構成要素から選択される。有効成分以外の、このタイプのさらなる成分の例は、本明細書中に記載されている。本発明による誘導体ならびにこれらの塩および溶媒和物とは異なる、このタイプのさらなる有効成分の例は、本明細書中に記載されている。
【0063】
本発明による誘導体は、好ましくは、すべてまたは部分的に、慣用の化学合成法、生命工学的方法、または遺伝子工学的方法により製造される。本発明による誘導体の製造においては、少なくともN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドと、共有結合する酸との共有結合は、好ましくは慣用の化学合成法により行う。好適な慣用の化学合成法は以下に記載されている。
【0064】
本発明は、さらにまた、
a)式II
【化10】

式中、
はHまたは金属イオンである
で表される化合物を、
【0065】
b)式III
−L III
式中、
は、好ましくはCl,Br、I、OH、SR、反応性にエステル化したOH基、イミダゾリド基、カルボン酸基、およびジアゾニウム基から選択される離脱基であり、Rはアルキル、アラルキルまたはアリールであり、Rは、式Iで表される化合物について本明細書中で定義したとおりであり、または、
が、1個または2個以上の官能基、好ましくは、水酸基およびカルボキシル基から選択される1個または2個以上の官能基を、基Lの他に含む場合は、完全にまたは部分的に保護基が提供されたRの誘導体である、
で表される化合物と反応させ、
【0066】
c)必要に応じて、反応a)およびb)の生成物が1個または2個以上の保護基を含む場合は、1個または2個以上の保護基をRから切断し、所望により式Iで表される化合物を単離し、
d)得られた式Iで表される化合物を、その塩の1つに、酸または塩基での処理によって転化し、所望により塩を単離する、
ことを特徴とする、本発明による誘導体およびこれらの生理学的に許容し得る塩の製造方法に関する。
【0067】
式IIで表される化合物において、Lは、好ましくはHまたは金属イオンである。好適な金属イオンは、特にアルカリ金属、アルカリ土類金属またはアルミニウムイオンである。好ましい金属イオンは、アルカリ金属イオン、特にLi、NaまたはKである。Lは、特に好ましくはHである。
式IIIで表される化合物において、Rは、好ましくは、
a)式Iで表される化合物について上記したとおりのアシル基
b)式Iで表される化合物について上記したとおりの、水酸基および/または1個または2個以上のカルボキシル基を含むアシル基
c)式Iで表される化合物について上記したとおりの、ポリヒドロキシモノカルボン酸に由来するアルキル基
d)式Iで表される化合物について上記したとおりの、スルホン酸基、ホスホン酸基およびニトロ基
から選択される。
【0068】
式IIIで表される化合物において、Lは好適な離脱基である。好適な離脱基は当業者に、例えば、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie(有機化学の方法), Thieme-Verlag, Stuttgartから知られている。ハロゲン化物F、Cl、BrおよびIならびに反応性にエステル化されたOH基以外の好適な離脱基の例は、特にイミダゾライド、例えば、用いる式IIIで表される化合物が混合された、または非対称性の、または対称性の酸無水物である場合に形成されるような、酸無水物に由来する酸アニオン、および、例えば、慣用の方法によるアミンのジアゾ化により得ることができるようなジアゾニウム基である。
【0069】
本発明に関して、反応性にエステル化されたOH基は、好ましくは、1〜6個の炭素原子を有するアルキルスルホニルオキシ基(好ましくはメチルスルホニルオキシ)、または6〜10個の炭素原子を有するアリールスルホニルオキシ基(好ましくはフェニルもしくはp−トルイルスルホニルオキシ)である。
多くの場合において、本発明による方法で有利に用いられる式IIIで表される化合物は、酸ハロゲン化物、好ましくは上記の酸に由来する酸ハロゲン化物である。上記の酸の好適な酸ハロゲン化物、およびその製造のための方法は、当業者に知られている。酸ハロゲン化物は、好ましくはクロロスルホン酸である。
【0070】
多くの場合において、本発明による方法で有利に用いられる式IIIで表される化合物は、酸無水物、好ましくは上記の酸に由来するか、または本明細書中で言及した本発明による誘導体の製造のための酸の少なくとも1種を含む酸無水物である。本発明による方法における本発明による誘導体の製造のための好適な酸無水物は、当業者に知られている。酸無水物は、好ましくは無水酢酸である。
【0071】
式IIIで表される化合物において、Lは、好ましくはCl,BrおよびSRから選択され、そして特にBrである。
式IIIで表される化合物において、Lは、好ましくはOHおよび/またはジアゾニウム基ではない。
がSRである式IIIで表される化合物において、Rは好ましくは1〜10個の炭素原子を有する分枝または非分枝アルキル基、例えば、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、特にエチル、6〜10個の炭素原子を有するアラルキル基、例えばベンジル、および6〜10個の炭素原子を有するアリール基、例えば、フェニル、p−ニトロフェニルおよびp−トリルから選択される。メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、フェニルおよびベンジルが特に好ましい。好ましい基SRは、S−C、S−CH(CH、S−CおよびS−CH−Cから選択される。
【0072】
本発明による方法は、好適な溶媒、好ましくは反応条件下で不活性な溶媒の非存在下または存在下、好ましくはその存在下で行うことができる。好適な溶媒は、当業者に知られている。好ましい溶媒、特に反応工程a)およびb)に関するものは、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサンおよびジクロロメタンなどの、極性の非プロトン性溶媒である。反応工程c)および/またはd)についての特に好適な溶媒は、それぞれの保護基の除去のために提案されている溶媒である。
本発明による方法のための反応時間は、一般的に数分から数日の間、好ましくは30分から48時間の間、そして特に1時間から24時間の間である。
本発明による方法のための反応温度は、一般的に−20℃から100℃の間、好ましくは−10℃から60℃の間、特に好ましくは0℃から40℃の間、例えばおよそ室温(25℃)である。
【0073】
本発明による方法は、本発明による方法の反応速度、選択性および/または収率に正の影響を与えるアジュバントの存在のもとで行ってもよい。このタイプの補助剤(assistant)の例は、少なくとも生成物および/または副産物の少なくとも1つをプロセスから除去する補助的な基剤(auxiliary base)、触媒および基質である。このタイプの好適な補助剤は、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie(有機化学の方法)から当業者に知られている。
【0074】
がハロゲンである、そして特に塩素または臭素である式IIIで表される化合物を用いる場合は、本発明による方法を行う時に、式IIで表される化合物と式IIIで表される化合物との本発明による反応の最中に遊離するハロゲン化物を、プロセスから、低溶解性の沈殿物の形態で除去する銀塩を添加するのが有利であり得る。好適な銀塩は当業者に知られており、例えば、硝酸銀、炭酸銀および過塩素酸銀である。銀塩は好ましくは過塩素酸銀である。
がSRである式IIIで表される化合物を用いる場合には、本発明による方法を行う時に、N−ハロスクシンイミド、特にN−ヨードスクシンイミド、および/またはハロカルボン酸、特にトリフルオロ酢酸を添加するのが有利であり得る。
【0075】
式IIIで表される化合物において基Rがさらなる官能基(基L以外に)、特にさらなる水酸基および/または酸性基を含む場合、多くのケースにおいて、上記のとおりの基Rの、いわゆる保護された誘導体、すなわち、1個または2個以上の保護基が提供された誘導体を、本発明による方法に用いることが有利である。ここで、さらなる官能基は、それぞれの官能基のための通常の保護基により有利に保護される。好適な保護基、およびこのタイプの保護された誘導体の製造方法は、当業者に知られている。水酸基は、ヒドロキシ保護基により、そして酸性基は好ましくは酸性保護基で保護される。
【0076】
用語「ヒドロキシ保護基」は、一般用語として知られ、そして、水酸基を化学反応から保護するのに好適であるが、所望の化学反応が分子の他所で行われた後で容易に除去可能な基に関する。このような基の典型的なものは、上記の非置換または置換アリール、アラルキルまたはアシル基、さらにまたアルキル基である。ヒドロキシ保護基の性質および大きさは、これらが一般的に、所望の化学反応または反応シーケンスの後で再度除去されるために重要ではない。1〜20個、特に1〜10個の炭素原子を有する基が好ましい。ヒドロキシ保護基の例は、とりわけ、ベンジル、p−ニトロベンゾイル、p−トルエンスルホニル、tert−ブチルおよびアセチルであり、ここでアセチル、ベンジルおよびtert−ブチル、そして中でもアセチルが特に好ましい。保護された水酸基は、したがって、一般的にエーテル基および/またはエステル基の形態である。
【0077】
用語「酸性保護基」は、同様に一般用語として知られ、そして、酸性基、好ましくはカルボン酸基もしくは無機酸素酸の酸性基、特に上記の酸の酸性基を化学反応から保護するのに好適であるが、所望の化学反応が分子の他所で行われた後で容易に除去可能な基に関する。このような基の典型的なものは、非置換の、または置換された、好ましくは非置換のアリール、アラルキルまたはアルキル基である。保護された酸性基は、したがって、好ましくは該酸性基のアリール、アラルキルもしくはアルキルエステル、特に好ましくはアラルキルもしくはアルキルエステルである。好ましい酸保護基は、メチル基、tert−ブチル基およびベンジル基、特に好ましくはメチル基である。エステルは、例えば、酢酸を用いて、またはNaOHもしくはKOHを水、水/THFもしくは水/ジオキサン中、0から100°の間の温度で用いて鹸化してもよい。
【0078】
保護された本発明による誘導体、そして特に保護された式Iで表される化合物の分離は、用いた保護基に依存して、酸、好ましくは強酸を用いるか、有利にTFAもしくは過塩素酸を用いて、しかしまた、塩酸もしくは硫酸などの他の強い無機酸、トリクロロ酢酸などの強い有機カルボン酸、ベンゼンもしくはp−トルエンスルホン酸などのスルホン酸、または塩基、好ましくは強塩基、例えば、アミン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ土類金属炭酸塩、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウムを用いて行われる。塩基は、好ましくは、水酸化ナトリウム、例えば、水酸化ナトリウム水溶液である。追加の不活性溶媒が存在することは可能だが、必ずしも必要とは限らない。好適な不活性溶媒は、好ましくは有機溶媒、例えば、酢酸などのカルボン酸、テトラヒドロフランもしくはジオキサンなどのエーテル、DMFなどのアミド、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、さらにまたメタノール、エタノールもしくはイソプロパノールなどのアルコール、および水である。また好適なのは、上記の溶媒の混合物である。TFAは、好ましくはさらなる溶媒の追加なしに過剰量で用い、そして過塩素酸は、好ましくは酢酸と70%過塩素酸との9:1の比での混合物の形態で用いる。切断のための反応温度は、有利には約0〜約50°、好ましくは15〜30°、例えば室温である。
【0079】
エステルおよび/またはエーテルは、例えば、酢酸を用いて、または特に水、水/THFもしくは水/ジオキサン中のNaOHもしくはKOHを、0〜100°、好ましくはおよそ室温(25℃)で用いて有利に鹸化することができる。
水素添加分解により除去し得る保護基(例えばベンジル)は、例えば、水素または水素放出化合物、例えばギ酸アンモニウムでの、触媒(有利には、炭素などの支持体上の、例えば、パラジウムなどの貴金属触媒)の存在下における処置により切断することができる。ここでの好適な溶媒は、水素添加に通常用いられているような溶媒、特に例えば、メタノールもしくはエタノールなどのアルコール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)もしくは1,4−ジオキサンなどのエーテル、またはDMFなどのアミドである。水素添加分解は、一般的に、約0〜100°の間の温度、および約1〜200バールの間の圧力で、好ましくは20〜30℃および1〜10バールで行われる。
【0080】
保護された式IIIで表される化合物、すなわち、1個または2個以上の保護基が提供された式IIIで表される化合物は、特に好ましくは、式IIIaまたはIIIb、
【化11】

式中、それぞれの基R’およびR’’は、互いに独立して、H、分枝および非分枝の1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、6〜10個の炭素原子を有するアラルキル基、および6〜10個の炭素原子を有するアリール基、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ベンジル、p−ニトロフェニルおよびp−トリル、特に好ましくはメチル、ベンジルおよびtert−ブチル、そして特にメチルから選択され、ただし、基R’およびR’’の少なくとも1つはHではない、
で表される化合物である。好ましくは、基R’およびR’’の複数、そして特に全ての基R’およびR’’はHではない。R’およびR’’がメチルである、式IIIbで表される化合物が極めて特に好ましい。
【0081】
保護された式IIIで表される化合物、すなわち、1個または2個以上の保護基が提供された式IIIで表される化合物は、したがって、特に好ましくは、式IIIc、
【化12】

式中、略号Acはアセチル基であり、Meはメチル基である、
で表される化合物である。
式IIIa、IIIbおよびIIIcにおいて、Lは好ましくはBrである。
【0082】
がSRまたはS−C(O)−Rである式IIIで表される化合物は、既知の方法で得ることができる。例えば、これらは、Arie L. Gutman et al., Synthesis 2000, 1241〜1246に記載の方法により、またはこれと同様にして製造することができる。
保護された式IIIで表される化合物、すなわち、1個または2個以上の保護基が提供された式IIIで表される化合物は、したがって、同様に好ましくは、式IIIdまたはIIIe、
【化13】

式中、R’およびRは、上記に定義されたとおりである、
で表される化合物、そして特に式IIIdにおけるR’がベンジルであり、式IIIeにおけるR’がイソプロピルである化合物である。Rは、好ましくはエチルまたはフェニルである。
【0083】
式IIIdまたはIIIeで表される化合物は、例えば、式IIIaまたはIIIbで表される化合物から、そして特に式IIIcで表される化合物、特にLがハロゲンであるものから出発することにより得ることができ、ここで、第1の工程において、SRではない基Lが、SRである基Lに、例えば、置換により、そして特に求核置換により転化される。
本発明による方法は、ワンポット反応として行うことができる。すなわち、単離および/または精製工程を可能な限り省略し、そして、所望の最終生成物、すなわち、一般的に本発明による誘導体またはその保護された誘導体、好ましくは本発明による誘導体、そして特に式Iで表される化合物のみを、精製および/または単離する。あるいは、精製および/または単離工程は、それぞれの当該反応工程の後に行うことができる。上記の手順を組み合わせた形もまた考えられる。
好適な精製および単離工程は、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie(有機化学の方法)から当業者に知られている。
【0084】
上記本発明による方法の処理工程b)でのように、Rが完全にもしくは部分的に保護基を有する式IIIで表される化合物を用いるが、処理工程c)の選択肢を用い、そして、保護基Rが切断されないか、または完全には切断されない場合に、1個または2個以上の保護基を含む本発明による誘導体が得られる。あるいは、1個または2個以上の保護基を含む本発明による誘導体は、少なくとも1個のさらなる官能基、好ましくは、水酸基、塩形成が可能な酸性官能基、および塩の形態にある酸性官能基から選択されるものを含む本発明による誘導体における1個または2個以上の官能基に、保護基を提供することによっても得ることができる。上記のような、少なくとも1個の保護基または保護基を与えられた官能基を含む本発明による誘導体は、以下では保護された誘導体とみなす。
【0085】
この発明に関して、保護された誘導体とは、したがって、特に、共有結合した酸が、1個または2個以上のさらなる官能基、特に水酸基および/または酸性基を含み、該1個または2個以上のさらなる官能基が上記のように保護されている、すなわち、保護基が与えられている本発明による誘導体を意味するものとする。本発明に関して、さらなる官能基とは、本発明により共有結合した酸の官能基、そして特に水酸基および/または酸性基であって、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド基への共有結合に影響しないものである。
好ましい保護された誘導体の例は、さらなる官能基が、1個または2個以上の水酸基および/または1個または2個以上の酸性基の形態であり、ここで、水酸基の全てもしくはいくつかはアセタール化形態であり、および/または酸性基の全てもしくはいくつかはアルキルエステル、そして特にメチルエステルの形態にある。
【0086】
好ましい保護された誘導体、すなわち、1個または2個以上の保護基を与えられた誘導体は、式Iaa
【化14】

で表される化合物、および式Ibb
【化15】

で表される化合物、ならびにその塩および溶媒和物であり、式中、全てのRは、互いに独立して、HおよびR’COから選択され、そして基R’およびR’’は上記に定義したとおりであり、ただし、式Iaaで表される化合物、および式Ibbで表される化合物のそれぞれにおける基R、R’およびR’’の少なくとも1つはHではない。
【0087】
極めて特に好ましい保護された誘導体は、式Iaaで表される化合物ならびにその塩および溶媒和物である。
本発明に関して、保護された誘導体は、好ましくは、全ての基R、R’およびR’’がHではないものであり、または、R、R’およびR’’から選択される2個または3個以上の基が存在する場合には、基R、R’およびR’’の1個もしくは2個のみがHであるものであり、そして好ましくは基R、R’およびR’’の1個のみがHであるものである。
本発明による誘導体は、上記のとおり、生体、特に腸肝循環と強く相互作用する。実験によって、上記の保護された誘導体がまた、完全にもしくは部分的に、本発明による誘導体に改変されること、または、生理学的条件、例えば、上記の相互作用により後者に転化されることが可能であることが示された。したがって、保護された誘導体は、本発明による誘導体と同等の作用を有し、そしてしたがって、この発明の意味におけるプロドラッグとみなすことができる。本発明は、したがってまた、以下に記載するように、疾患の処置のため、そして特に医薬および/または医薬製剤の製造のための有効成分として用いることができる、保護された誘導体に関する。
【0088】
好ましいプロドラッグは、共有結合した酸が、二塩基性カルボン酸および一塩基性ヒドロキシカルボン酸から選択される保護された誘導体である。この意味における好ましい一塩基性ヒドロキシカルボン酸は、糖酸である。
特に好ましいプロドラッグは、共有結合した酸が糖酸から選択され、そして上記のような1個または2個以上のさらなる官能基が上記のような保護基を含む、本発明による誘導体である。特に好ましいプロドラッグは、水酸基の全てもしくはいくつかはアセタール化形態であり、および/または酸性基の全てもしくはいくつかはアルキルエステル、そして特にメチルエステルの形態にある、本発明による誘導体である。
【0089】
一般式Iで表される化合物およびその生理学的に許容し得る塩は、したがって、これらを、少なくとも1種の賦形剤もしくはアジュバント、そして所望により、1種または2種以上のさらなる有効成分と一緒に、好適な投薬形態に転化することにより、医薬製剤の製造に使用することができる。
本発明は、したがって、上記のような医薬組成物の製造のための方法、そして特に、少なくとも1種の本発明による誘導体と、賦形剤、アジュバントおよび本発明による誘導体とは異なる医薬有効成分から選択される少なくとも1種のさらなる化合物とが、1または2以上の機械的処理工程を用いて、患者への投与のための投薬形態として好適な医薬組成物に転化される、医薬製剤の製造のための方法に関する。好適な機械的処理工程は当業者に知られており、そしてとりわけ、混合処理、粉砕処理、溶解処理、篩い分け処理、均質化、乾燥、圧縮、打錠、被覆および/または糖被覆を包含する。
本発明は、したがってまた、この方法により得ることができる医薬組成物に関する。
【0090】
本発明に関して、好適な投薬形態は、好ましくは、少なくとも1種の本発明による誘導体および/またはこれらの塩もしくは溶媒和物を含む、錠剤、被覆錠剤、カプセル、シロップ、ジュース、ドロップ、座剤、プラスター、溶液、特に非経腸溶液、懸濁液、クリーム、軟膏、乳剤およびインプラントである。
本発明は、したがってまた、少なくとも1種の本発明による誘導体および/またはその塩、特に上記のような生理学的に許容し得る塩を含むことを特徴とする医薬製剤、そして特に、上記の1または2以上の疾患の処置および/または予防のための上記のような医薬製剤に関する。
【0091】
本発明はまた、少なくとも1種の本発明による誘導体および/またはこれら塩もしくは溶媒和物と、本発明による誘導体とは異なる、そして好ましくはN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドとも異なる少なくとも1種のさらなる有効成分とを含む医薬製剤に関する。
本発明はまた、少なくとも1種の本発明による誘導体および/またはこれらの塩もしくは溶媒和物と、少なくとも1種のさらなる有効成分、好ましくは食欲抑制剤として作用する有効成分とを含む医薬製剤に関する。
【0092】
この方法により得た製剤は、ヒト医学または獣医学における医薬として用いることができる。好適な担体物質は、経腸(例えば経口もしくは経直腸)または非経腸投与に好適であり、かつ、新規化合物と反応しない有機もしくは無機物質、例えば、水、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアセテートおよび他の脂肪酸グリセリド、ゼラチン、大豆レシチン、乳糖もしくはデンプンなどの炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはセルロースである。
経口投与に好適なのは、特に錠剤、被覆錠剤、カプセル、シロップ、ジュースまたはドロップである。特に興味深いのは、胃液耐性被覆またはカプセル殻を有するフィルムコート錠およびカプセルである。直腸投与に好適なのは座剤であり、非経口投与に好適なのは、溶液、好ましくはオイルベースの溶液または水性溶液、さらにまた懸濁液、乳剤またはインプラントである。
【0093】
本発明により特許請求されている有効成分はまた、凍結乾燥し、得られた凍結乾燥物を、例えば、注射製剤の調製に用いることができる。
言及された製剤は、滅菌し、および/または保存剤、安定剤および/もしくは湿潤剤などの助剤、乳化剤、浸透圧を改変する塩、緩衝物質、着色剤および/もしくは芳香物質を含むことができる。これらはまた、所望により、1個または2個以上のさらなる有効成分、例えば、1個または2個以上のビタミン、利尿剤または消炎剤を含むことができる。
【0094】
本発明による誘導体は、一般的に、商業的に入手できる、特許請求した適応症用の他の既知の製剤と同様に、好ましくは、約1mg〜70mgの間、特に投薬単位あたり5〜50mgの間の用量で投与する。1日用量は、好ましくは、体重の約0.02〜30mg/kgの間、特に0.2〜0.6mg/kgの間である。
しかしながら、各個別の患者の具体的な用量は、極めて広範な因子、例えば、使用する特定の化合物の有効性、年齢、体重、健康の一般状態、性別、食事、投与の時間と方法、排出速度、併用医薬、および治療を適用する特定の疾患の重篤度に依存する。経口投与が好ましい。
【0095】

6−(1−{[(2,2−ジフェニルエタノイル)メチルアミノ]フェニルエチル}ピロリジン−3−イルオキシ)−3,4,5−トリヒドロキシテトラヒドロピラン−2−カルボン酸(化合物Ia)の製造
a)2.0g(4.434mmol)のN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドと、1.76g(4.430mmol)のハロゲン化グリコシルAとの混合物を、最初に50mlのアセトニトリルに導入し、過剰の銀塩、例えば過塩素酸銀または炭酸銀を加え、そして、反応混合物を一晩室温で攪拌した。珪藻土によるろ過の後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をクロマトグラフィー(溶出液としてトルエン/メタノール=9:1→4:1を用いた、SI−60でのフラッシュクロマトグラフィー、R=0.54、トルエン/MeOH4:1)により精製し、190mgの化合物Bを得た。
【0096】
b)110mg(0.151mmol)の化合物Bを4mlの1,4−ジオキサンに溶解し、0.755mlの1N水酸化ナトリウム溶液を加え、そして、混合物を室温で攪拌した。HPLCによる反応のモニターにより、反応が約3時間の攪拌の後に完了したことが示された。次に、反応混合物を1N塩酸で中和し、乾燥するまで蒸発させた。得られた残渣は、RP−18での予備HPLCにより精製することができ、65mgの化合物(Ia)を得た(R=31.65分(Lichrospher1000、RP−18、5μm、勾配溶離(A:Bは1時間で99:1から1:99へ;A:HO+0.3%TFA(=トリフルオロ酢酸);B:CHCN/HO(80:20)+0.3%TFA)))。
【0097】
あるいは、合成は、工程a)からの反応生成物のクロマトグラフィー精製が省略されたワンポット反応で行うことができる。この場合、反応混合物は、反応が完了した時にろ過し、そして、溶媒を減圧下で除去する。所望により、得られた残渣を水に取り、ジクロロメタンまたは酢酸メチルで抽出した後、工程b)に記載のように水酸化ナトリウム溶液を加えてもよく、そして混合物は室温で攪拌する。得られた6−(1−{[(2,2−ジフェニルエタノイル)メチルアミノ]フェニルエチル}ピロリジン−3−イルオキシ)−3,4,5−トリヒドロキシテトラヒドロピラン−2−カルボン酸の粗生成物は、工程b)に記載のとおりに精製処理することができる。
【0098】
モノ−{1−[2−(ジフェニルアセチルメチルアミノ)−2−フェニルエチル]ピロリジン−3−イル}サルフェート(Ib)の製造
0.9グラム(2.0mmol)のN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドを、最初に10mlのジクロロメタンに導入し、そして、150μl(2.0mmol)のクロロスルホン酸を加えた。2日の反応時間の後、溶媒を蒸留除去し、得られた残渣をアセトンで複数回粉末化し、上清のアセトンをデカントで除去し、得られた結晶を減圧下ろ別し、風乾した。風乾により、268°の融点を有する化合物(Ib)の結晶性固体740mg(理論値の74.3%)を得た。
【0099】
N{2−[(3S)−3−アセトキシ−1−ピロリジニル]−(1S)−1−フェニルエチル}−2,2−ジフェニル−N−メチルアセトアミド(化合物Ic)の製造
30mlの無水酢酸と、15mlのトリエチルアミンとを、5.0グラム(11.0mmol)のN−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミド塩酸塩に加え、混合物を2時間スチームバスで加熱した。反応混合物を、次に、乾燥するまで蒸発させ、残渣をエーテルに取り、重炭酸塩溶液で洗浄した。次に有機相を乾燥させ、溶媒を蒸留除去する。得られた残渣をシリカゲルでの溶出液としてジエチルエーテル/メタノール(99:1)を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。得られたN{2−[(3S)−3−アセトキシ−1−ピロリジニル]−(1S)−1−フェニルエチル}−2,2−ジフェニル−N−メチルアセトアミドの粗生成物は、ジエチルエーテルに取り、エーテルHClの添加により沈殿させ、得られた結晶を減圧下でろ別し、結晶をエーテルで洗浄し、そして風乾することによりさらに精製することができる(R=0.6(シリカゲル6F254での、溶出液としてジクロロメタン/メタノール(8:2)を用いたTLC))。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの共有結合した酸を有する、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドの誘導体、ならびにその塩、溶媒和物およびプロドラッグ。
【請求項2】
酸が、N−メチル−N−[(1S)−1−フェニル−2−((3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)エチル]−2,2−ジフェニルアセトアミドの3−ヒドロキシピロリジン基を介して共有結合していることを特徴とする、請求項1に記載の誘導体。
【請求項3】
酸が、生理学的に耐容される酸から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の誘導体。
【請求項4】
酸が、カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、および無機酸素酸から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の誘導体。
【請求項5】
誘導体が、少なくとも1個の塩形成が可能な酸性基、または塩の形態の酸性基を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の誘導体。
【請求項6】
酸が、二塩基性カルボン酸、一塩基性ヒドロキシカルボン酸、および少なくとも二塩基性の無機酸素酸から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の誘導体。
【請求項7】
一塩基性ヒドロキシカルボン酸が糖酸から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の誘導体。
【請求項8】
糖酸がグルクロン酸であることを特徴とする、請求項7に記載の誘導体。
【請求項9】
二塩基性無機酸素酸が硫酸であることを特徴とする、請求項6に記載の誘導体。
【請求項10】
6−(1−{[(2,2−ジフェニルエタノイル)メチルアミノ]フェニルエチル}ピロリジン−3−イルオキシ)−3,4,5−トリヒドロキシテトラヒドロピラン−2−カルボン酸、モノ−{1−[2−(ジフェニルアセチルメチルアミノ)−2−フェニルエチル]ピロリジン−3−イル}サルフェートおよびN{2−[(3S)−3−アセトキシ−1−ピロリジニル]−(1S)−1−フェニルエチル}−2,2−ジフェニル−N−メチルアセトアミドから選択される、請求項1〜9のいずれかに記載の誘導体。
【請求項11】
医薬としての、請求項1〜10のいずれかに記載の誘導体、および/またはその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項12】
オピエート受容体アゴニストとしての、請求項1〜10のいずれかに記載の誘導体、および/またはその塩、もしくは溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項13】
疾患の予防および/または処置のためのオピエート受容体アゴニストとしての、請求項1〜10のいずれかに記載の誘導体、および/またはその塩、もしくは溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項14】
疾患が、機能性胃腸症、胃腸管の炎症性および非炎症性疾患、尿路の炎症性および非炎症性疾患、摂食および消化障害、および重篤な疼痛または疼痛の症状を伴う疾患から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の誘導体。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれかに記載の誘導体、および/またはその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの、疾患の予防および/または治癒のための医薬の製造への使用。
【請求項16】
疾患が、請求項14に記載の疾患から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の誘導体。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれかに記載の誘導体、および/またはその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの、疼痛、疼痛の症状、耳痛、眼痛、炎症、イレウス、機能性胃腸症、機能性腸症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、過敏性膀胱症候群、慢性運動障害、消化不良、ニューロパシー、肥満、過食症、肥満症、悪液質、無食欲、食欲不振、ジスポンデローシス、胃不全麻痺および胃腸管の狭窄の予防および/または処置のための医薬の製造への使用。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれかに記載の誘導体、および/またはその塩もしくは溶媒和物の、食欲抑制剤として作用する1または2以上の薬剤と組み合わせて用いるための医薬の製造への使用。
【請求項19】
請求項1〜10のいずれかに記載の少なくとも1種の誘導体と、請求項1〜10のいずれかに記載の誘導体とは異なる、賦形剤、アジュバントおよび医薬有効成分から選択される少なくとも1種のさらなる化合物とを、1または2以上の機械的処理工程を用いて、患者への投与のための投薬形態として好適な医薬組成物に転化することを特徴とする、医薬組成物の製造のための方法。
【請求項20】
請求項1〜10のいずれかに記載の少なくとも1種の誘導体を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項21】
少なくとも1種のさらなる医薬有効成分を含むことを特徴とする、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
さらなる有効成分が、フェニルプロパノールアミン、カチン、シブトラミン、アンフェプラモン、エフェドリンおよびノルシュードエフェドリンから選択されることを特徴とする、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
請求項1〜10のいずれかに記載の誘導体の製造のための方法であって、
a)式II
【化1】

式中、
はHまたは金属イオンである、
で表される化合物を、
b)式III
−L III
式中、
は離脱基であり、そして
は、1〜12個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アシル基、ポリヒドロキシモノカルボン酸から水酸基の除去により得られるアルキル基、スルホン酸基、ホスホン酸基およびニトロ基から選択されるか、または、Rが、基L以外に1個または2個以上の官能基を含む場合は、
で表される化合物と反応させ、
c)存在する全ての保護基を切断し、所望により式Iで表される化合物を単離し、
そして任意に、
d)得られた式Iで表される化合物を、酸または塩基での処理によりその塩の1つに転化し、そして、所望により、塩を単離する、
前記方法。

【公開番号】特開2011−157375(P2011−157375A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79933(P2011−79933)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【分割の表示】特願2004−559717(P2004−559717)の分割
【原出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【出願人】(507160919)ティオガ ファーマスーティカルズ,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】