説明

共有結合コーティングを有するシリコーンハイドロゲルレンズ

本発明は、レンズに共有結合しており、良好な親水性、無傷性及び耐久性を備えた親水性コーティングを表面に有するシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを製造するための費用効率的な方法を提供する。本発明は、また、コンタクトレンズに共有結合するプライムコーティング及びプライムコーティングに共有結合するトップコーティングからなる親水性コーティングを有するシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ上へ親水性ポリマーのコーティングを適用して、親水性及び潤滑性を向上させるための費用効率的及び時間効率的方法に関する。さらに、本発明は、良好な無傷性及び耐久性を備えた親水性コーティングを有するシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、高い酸素透過度及び快適性からソフトシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの人気が高まっている。しかしながら、シリコーンハイドロゲル材料は、典型的には、疎水性(非湿潤性)である表面又はその表面の少なくともいくつかの領域を有する。疎水性の表面又は表面領域が、眼の環境から脂質又はタンパク質を取り込み、眼に付着する可能性がある。従って、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、一般的に、表面修飾を必要とする。
【0003】
比較的疎水性のコンタクトレンズ材料の親水性を改変するための公知のアプローチは、プラズマ処理を利用するものであり、例えば、Focus NIGHT & DAY(商標)及びO2OPTIX(商標)(CIBA VISION)ならびにPUREVISION(商標)(Bausch & Lomb)などの市販のレンズである。プラズマコーティングの利点は、その耐久性、比較的高い親水性(又は良好な湿潤性)ならびに脂質及びタンパク質の沈着及び吸着を起こし難いことである。しかし、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズのプラズマ処理は、製造されたコンタクトレンズをプラズマ処理の前に乾燥させる必要があり、そして、プラズマ処理装置に比較的高い設備投資が必要なため、費用効率的とはいえない。
【0004】
シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの表面の親水性を改変するための別のアプローチは、米国特許第6,367,929、6,822,016、7,052,131及び7,249,848号に提案されているように、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを製造するために、レンズ調製物へ湿潤剤(親水性ポリマー)を組み込むことである。この方法は、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズのキャスト成形後に、レンズの表面親水性を改変するための後続のプロセスが要求されなくてもよい。しかしながら、湿潤剤は、レンズ調製物のシリコーン成分と適合することができず、その不適合により得られるレンズは不透明になる可能性がある。さらに、このような表面処理は、脂質沈着及び吸着を起こし易い可能性がある。また、このような表面処理では、連続装用のための耐久性表面を提供することができない。
【0005】
比較的疎水性のコンタクトレンズ材料の親水性を改変するためのさらなるアプローチは、一層ずつ(LbL)ポリイオン性物質を重ねる技術である(例えば、米国特許第US 6,451,871、US 6,717,929、US 6,793,973、US 6,884,457、US 6,896,926、US 6,926,965、US 6,940,580及びUS 7,297,725号ならびに米国特許出願公報第US 2007/0229758A1、US 2008/0174035A1及びUS 2008/0152800A1号を参照)。この技術は、シリコーンハイドロゲル材料を湿潤性にするための費用効率的プロセスを提供することができる。しかしながら、このようなLbLコーティングは、プラズマコーティングよりも耐久性が低く、市販のいくつかのレンズケア溶液中の保存料と適合できないという理由から、連続装用には適さない可能性がある。
【0006】
比較的疎水性のコンタクトレンズ材料の親水性を改変するためのさらに別のアプローチは、親水性ポリマーを様々な機構に従ってコンタクトレンズに結合させることである(例えば、US 6,099,122、US 6,436,481、US 6,440,571、US 6,447,920、US 6,465,056、US 6,521,352、US 6,586,038、US 6,623,747、US 6,730,366、US 6,734,321、US 6,835,410、US 6,878,399及びUS 6,923,978号を参照)。例えば、U.S. 6,436,481号には、アズラクトン、アミン、ヒドロキシル、カルボン酸などの反応性基を有するプライムコーティングを形成するためのプラズマ誘導グラフト重合の使用が開示されている。親水性ポリマー又は材料からなる二次コーティングは、表面の親水性及び湿潤性を向上させるためにプライムコーティングに結合させる。シリコーンハイドロゲル材料を湿潤性にするためにこれらの技術を使用することができるが、これらは、典型的に、ポリマー親水性コーティングを得るために、比較的長期間及び/又は困難な多工程を必要とするため、大量生産環境の実施には費用効率的及び/又は時間効率的ではない可能性がある。
【0007】
別の例においては、US 6,440,571号には、生体適合性又は親水性を増加させるために、親水性ポリマー上の反応性官能基間の反応を用いて(官能基が医療デバイスの表面又は表面近くの反応性官能基に相補的である)、デバイスを親水性ポリマーでコーティングすることにより、医療デバイス(コンタクトレンズを含む)の表面を改変するための方法が開示されている。US 6,4400,571号には、実際の例は提示しないが、コンタクトレンズの表面又は表面近くの官能基が、アズラクトン含有ビニルモノマーなどのレンズ調製物を共重合させて導入されるアズラクトン基であることができることが開示されている。しかしながら、それには、レンズ調製物及びその後に得られるレンズ中に存在するアズラクトン含有ビニルモノマーの量が、得られるレンズに二重の効果、アズラクトン基の開環加水分解の際のコンタクトレンズの膨張度合及び親水性ポリマーコーティングを共有結合させる際の効率に影響することが開示及び認識されていない。レンズ調製物中に存在するアズラクトン含有ビニルモノマーの量が高いほど、レンズの膨張を大きくし、レンズの表面をより湿潤性にする(レンズ表面への親水性ポリマーのコーティングの共有結合の効率が高いため)。対照的に、レンズ調製物中に存在するアズラクトン含有ビニルモノマーの量が低いほど、レンズの膨張を小さくし、レンズの表面の湿潤性を低下させる(レンズ表面への親水性ポリマーのコーティングの共有結合の効率が低いため)。同様に、US 6,440,571号に開示される方法は、大きなレンズ膨張を引き起こすことない湿潤性表面を有するシリコーンハイドロゲルを提供することができないため、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの表面湿潤性の改変に有用ではない可能性がある。
【0008】
上記を考慮すると、湿潤性及び耐久性のコーティング(表面)を有するシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを費用効率的及び時間効率的に製造する方法が求められている。
【0009】
発明の概要
本発明は、一態様においては、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ上へ親水性コーティングを適用する方法を提供し、本発明の方法は、(a)少なくとも1つのシリコーン含有ビニルモノマー又はマクロマーと、アズラクトン含有ビニルモノマー又はマクロマーとを含む重合性(又はレンズ形成)組成物を、成形型中で重合させて、これにより、コンタクトレンズのポリマーマトリクス上に共有結合したアズラクトン部分を有するシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを形成すること(ここで、アズラクトン含有ビニルモノマー又はマクロマーは、レンズ調製物中に、約0.5%〜約5.0重量%の量で存在する);(b)コンタクトレンズを、ペンダント第一級もしくは第二級アミノ基又はチオール基を有するアンカー親水性ポリマーの溶液と、コンタクトレンズ上にプライムコーティング(prime coating)を形成するために十分な時間接触させること(ここで、プライムコーティングは、コンタクトレンズの表面又は表面近くの1つのアズラクトン部分とアンカー親水性ポリマーの1つのペンダント第一級もしくは第二級アミノ基又はチオール基との間でそれぞれ形成される1つ以上の共有結合を介して、コンタクトレンズの表面に共有結合したアンカー親水性ポリマーの層を含む);(c)プライムコーティングの上部にトップコーティングを適用して、プライムコーティングに対して表面の親水性及び/又は耐久性が増加した親水性コーティングを形成すること(ここで、トップコーティングは、カルボン酸含有親水性ポリマーの少なくとも1つの層及び/又はアゼチジニウム含有ポリマーの少なくとも1つの層を含み、カルボン酸含有親水性ポリマーの層は、プライムコーティングを表面に有するコンタクトレンズをカルボン酸含有親水性ポリマーの溶液と接触させることにより形成され、アゼチジニウム含有ポリマーの層は、表面にプライムコーティング、及び場合によりカルボン酸含有親水性ポリマーの層を有するコンタクトレンズを、アゼチジニウム含有ポリマーの溶液と接触させることにより形成され、カルボン酸含有親水性ポリマーの層及び/又はアゼチジニウム含有ポリマーの層は、アンカー親水性ポリマーの層に化学的及び/又は物理的に結合する)を含む。
【0010】
別の態様においては、本発明は、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを提供する。本発明のコンタクトレンズは、核シリコーンハイドロゲル材料及び親水性コーティングを含み、核シリコーンハイドロゲル材料は、核シリコーンハイドロゲル材料を製造するためのレンズ形成材料に含有されるアズラクトン含有ビニルモノマー又はマクロマーから直接誘導されるアズラクトン部分を含み、親水性コーティングは、プライムコーティング及びトップコーティングを含み、プライムコーティングは、第一級もしくは第二級基又はチオール基を有するアンカー親水性ポリマーの層であり、そして、コンタクトレンズの表面又は表面近くの1つのアズラクトン部分と1つの第一級もしくは第二級アミノ基又はチオール基との間でそれぞれ形成される共有結合を介して、核シリコーンハイドロゲル材料に直接共有結合しており、トップコーティングは、カルボン酸含有親水性ポリマーの少なくとも1つの層及び/又はアゼチジニウム含有ポリマーの少なくとも1つの層を含み、カルボン酸含有親水性ポリマーの層及び/又はアゼチジニウム含有ポリマーの層は、アンカー親水性ポリマーの層に化学的及び/又は物理的に結合しているシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズであって、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズが、少なくとも40barrerの酸素透過度、約100度以下の水接触角を特徴とする表面湿潤性及びデジタル摩擦試験に耐えることを特徴とする良好なコーティング耐久性を有する。
【0011】
これらの及び他の本発明の態様は、本発明の好ましい実施態様の下記説明から明らかとなるであろう。詳細な説明は、単に本発明を説明するためのものであり、添付の特許請求の範囲及びその等価物により定義される本発明の範囲を限定するものではない。当業者に明らかであるように、本発明の多くの変形及び改変は、本開示の新しい概念の精神及び範囲から逸脱することなく影響を受けうる。
【0012】
発明の実施態様の詳細な説明
ここで、本発明の実施態様について詳細に説明する。当業者であれば、本発明において、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、様々な改変及び変更を実施することができることが明らかであろう。例えば、一実施態様の一部として例示又は記載される特徴を別の実施態様に使用して、なおさらなる実施態様を与えることができる。従って、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内となるように、本発明がこのような改変及び変形を包含することが意図される。本発明の他の目的、特徴及び態様が、以下の詳細な説明において開示されるか、又はそこから明らかである。当業者であれば、本発明の考察が、単に典型的な実施態様を記載するものであり、本発明のより広範な態様を限定するものではないことが理解されるであろう。
【0013】
特に規定しない限り、本明細書において使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同一の意味を有する。一般的に、本明細書において使用される命名法及び実験手順は、当技術分野においてよく知られており、一般的に用いられている。当技術分野及び様々な一般参考文献において提供されるものと同様に、従来の方法がこれらの手順で使用される。用語が単数形で提供される場合、本発明者等はその用語の複数形も考慮する。本明細書において使用される命名法及び下記の実験手順は、当技術分野においてよく知られており、一般的に用いられている。
【0014】
「コンタクトレンズ」は、装着者の目の表面又は内部に配置することができる構造物を指す。コンタクトレンズは、使用者の視力を矯正、改善又は変更することができるが、そうである必要はない。コンタクトレンズは、当技術分野で知られている又は今後開発される任意の適切な材料からなることができ、そして、ソフトレンズ、ハードレンズ又はハイブリッドレンズであることができる。「シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ」は、シリコーンハイドロゲル材料を含むコンタクトレンズを指す。
【0015】
「シリコーンハイドロゲル」は、完全に水和した場合に少なくとも10重量%の水を吸収することができ、少なくとも1つのシリコーン含有ビニルモノマー又は少なくとも1つのシリコーン含有マクロマー又は少なくとも1つの架橋性シリコーン含有プレポリマーを含む重合性組成物を共重合することにより得られるシリコーン含有ポリマー材料を指す。
【0016】
本明細書において使用される「ビニルモノマー」は、エチレン性不飽和基を有し、化学線又は熱で重合することが可能な低分子量化合物を指す。低分子量は、典型的には、700ダルトン未満の平均分子量を意味する。
【0017】
用語「オレフィン性不飽和基」又は「エチレン性不飽和基」は、本明細書において広い意味で使用され、少なくとも1つの>C=C<基を含有する任意の基を包含することを意図する。典型的なエチレン性不飽和基には、
【化1】


スチレニル又は他のC=C含有基が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
用語「(メタ)アクリルアミド」は、メタクリルアミド及び/又はアクリルアミドを指す。
【0019】
用語「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及び/又はアクリレートを指す。
【0020】
本明細書において使用される「化学線による」は、重合性組成物又は材料の硬化又は重合に関して、硬化(例えば、架橋及び/又は重合)が、例えば、UV照射、電離放射線(例えば、ガンマ線又はX線照射)、マイクロ波照射などの化学線照射により行われることを意味する。熱硬化又は化学線硬化の方法は、当業者によく知られている。
【0021】
本明細書において使用される「親水性ビニルモノマー」は、ホモポリマーとして、典型的には、水溶性であるか、又は少なくとも10重量%の水を吸収することができるポリマーを生じるビニルモノマーを指す。
【0022】
本明細書において使用される「疎水性ビニルモノマー」は、ホモポリマーとして、典型的には、非水溶性であり、10重量%未満の水を吸収することができるポリマーを生じるビニルモノマーを指す。
【0023】
「マクロマー」又は「プレポリマー」は、さらなる重合及び/又は架橋反応を受けることが可能な官能基を含有する、中分子量及び高分子量の化合物又はポリマーを指す。中分子量及び高分子量は、典型的には、700ダルトン超の平均分子量を意味する。好ましくは、マクロマーは、エチレン性不飽和基を含有し、化学線又は熱で重合することができる。
【0024】
「ポリマー」は、1つ以上のモノマー又はマクロマーを重合/架橋することにより形成される材料を意味する。
【0025】
「開始剤」は、フリーラジカル反応を開始する化学物質を表すことを意図し、光開始剤であっても、熱開始剤であってもよい。
【0026】
「光開始剤」は、光を使用してラジカル架橋及び/又は重合反応を開始する化学物質を指す。
【0027】
「熱開始剤」は、熱エネルギーを使用してラジカル架橋及び/又は重合反応を開始する化学物質を指す。
【0028】
「化学線の空間的制限」は、光線の形態のエネルギー放射を、例えば、マスク、スクリーン又はその組み合わせにより方向付けて、周辺境界が明確に規定された領域に空間制限的に衝突させる作用又はプロセスを指す。UV照射の空間的制限は、米国特許第6,800,225号(図1〜11)ならびに第6,627,124号(図1〜9)、第7,384,590号(図1〜6)及び第7,387,759号(図1〜6)(これらの全ては、参照によりその全体が組み込まれる)で図示されるように、放射線(例えば、UV)透過性領域、放射線透過性領域に囲まれた放射線(例えば、UV)不透過性領域、並びに放射線不透過性及び放射線透過性領域間の境界線である投射輪郭を有するマスク又はスクリーンを使用することにより得られる。マスク又はスクリーンは、マスク又はスクリーンの投射輪郭により規定される断面プロフィールを有する、放射線(例えば、UV照射)ビームの空間的投影を可能にする。放射線(例えば、UV/可視光線)の投影されたビームは、成形型の第一の成形面から第二の成形面までの投影されたビーム経路に位置するレンズ形成材料上への放射線(例えば、UV/可視光線)衝突を制限する。得られるコンタクトレンズは、第一の成形面により規定される前面、第二の成形面により規定される反対の後面、及び投影されたUVビームの断面プロフィール(即ち、放射線の空間的制限)により規定されるレンズエッジを含む。架橋に使用される放射線は、放射エネルギー、特に、UV/可視光線、ガンマ線、電子線又は熱放射であり、放射エネルギーは、好ましくは、良好な制限を達成し、また一方でエネルギーの効率的使用を達成するために、実質的に平行光線の形態である。
【0029】
従来のキャスト成形プロセスにおいて、成形型の第一及び第二成形面は、互いに押し付けられて、得られるコンタクトレンズのエッジを規定する円周接触線を形成する。成形面を密接に接触させることにより、成形面の光学的品質に損害を与える可能性があるため、成形型は再利用することはできない。対照的に、Lightstream Technology(商標)においては、得られるコンタクトレンズのエッジは、成形型の成形面の接触により規定されない代わりに放射線の空間的制限により規定される。成形型の成形面を全く接触させることなく、成形型を繰り返し使用して、再現性の高い高品質なコンタクトレンズを製造することができる。
【0030】
「可視着色」は、レンズに関して、使用者が、レンズの保存、消毒又は洗浄容器内の透明な溶液中でレンズを容易に見つけることができるようにするための、レンズの染色(又は着色)を意味する。染料及び/又は顔料をレンズの可視着色に使用することができることは、当技術分野においてよく知られている。
【0031】
本明細書において使用される用語「流体」は、材料が液体のように流動することができることを指す。
【0032】
「水接触角」は、少なくとも3個のコンタクトレンズの測定値の平均をとることにより得られる水接触角を指す(Sessile Drop法により測定される)。
【0033】
「UV吸収剤」は、200〜400nmの範囲でUV照射を吸収又は遮断することができる紫外線吸収(「UV吸収」)部分を含む化合物を指す。
【0034】
本明細書において使用される「デジタル摩擦試験に耐える」又は「耐久性試験に耐える」は、コンタクトレンズのコーティングに関して、実施例1に記載の手順に従ってレンズをデジタル摩擦した後のデジタル摩擦したレンズの水接触角が、依然として、約100度以下、好ましくは、約90度以下、より好ましくは、約80度以下、最も好ましくは、約70度以下であることを意味する。
【0035】
材料固有の「酸素透過度」Dkは、酸素が材料を透過する割合である。本発明によれば、用語「酸素透過度(Dk)」は、材料又はコンタクトレンズに関して、見掛けの酸素透過度を意味し、これは、実施例で記載の電量分析法に従って測定される面積の平均厚が90又は100ミクロンの試料(膜又はレンズ)を用いて測定される。酸素透過度は、従来よりbarrer単位で表され、「barrer」は、[(cm3酸素)(mm)/(cm)(秒)(mmHg)]×10−10として定義される。
【0036】
レンズ又は材料の「酸素伝達率」Dk/tは、酸素が、測定される面積の平均厚がt[mm単位]の特定のレンズ又は材料を透過する割合である。酸素伝達率は、従来より、barrer/mm単位で表され、「barrer/mm」は、[(cm3酸素)/(cm)(秒)(mmHg)]×10−9として定義される。
【0037】
レンズを透過する「イオン透過度」は、イオノフラックス拡散係数と相関する。イオノフラックス拡散係数D([mm2/分]単位)は、以下のように、Fickの法則を適用することにより求められる:
D=−n’/(A×dc/dx)
式中、n’=イオン輸送率[mol/分];A=レンズの曝露領域[mm2];dc=濃度差[mol/L];dx=レンズ厚[mm]
【0038】
本発明は、一般的に、耐久性の親水性コーティングを有するシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを製造するための費用効率的及び時間効率的方法に関する。本発明のコンタクトレンズ上への耐久性の親水性コーティングは、コンタクトレンズの表面又は表面近くの1つのアズラクトン部分とアンカー親水性ポリマーの1つの第一又は第二基との間でそれぞれ形成される1つ以上の共有結合を介して、コンタクトレンズの表面に共有結合したアンカー親水性ポリマーの層;カルボン酸含有親水性ポリマーの少なくとも1つの層及び/又はアゼチジニウム含有ポリマーの少なくとも1つの層を含む「多層構造」を有する。ここで、カルボン酸含有親水性ポリマーの層及び/又はアゼチジニウム含有ポリマーの層は、アンカー親水性ポリマーの層に化学的及び/又は物理的に結合する。
【0039】
用語「層構造」は、本明細書において、広い意味で用いられ、コーティング材料を一層ずつ連続適用することにより形成されるコーティング構造を包含することを意図する。コーティング材料の層がコーティングで互いに結びつくことができることを理解すべきである。
【0040】
本明細書において、親水性ポリマーの層を共有結合するために、アズラクトン基をコンタクトレンズにおけるアンカー部位として使用することができるが、レンズにこれらが存在すると、レンズをオートクレーブする過程でアズラクトンが開環加水分解されるために、望まない副作用、レンズの膨張を生じることが見出される。このような副作用を最小限にするために、レンズにおけるアズラクトン基の量を最小限にする必要がある。しかしながら、レンズにおけるアズラクトン基の量を最小限にすることは、得られるコンタクトレンズの表面又は表面近くの親水性ポリマーと接触可能なアズラクトン基の数を大きく減少させることになり、これにより、得られるコーティングは好ましくない親水性及び/又は好ましくない耐久性を有するであろう。本発明は、アズラクトン基を介してレンズ表面に共有結合したプライムコーティングとプライムコーティングに結合したトップコーティングを組み合わせることによりこの問題を解決する。
【0041】
本発明は、生じるレンズ膨張をわずかにするのに十分に低いが、レンズの表面又は表面近くに十分なアンカー部位を提供するのに十分に高い量のアズラクトン含有ビニルモノマーを使用することにより、そして、ペンダント第一級もしくは第二級アミノ基を有する直鎖又は(好ましくは)分岐鎖状の親水性ポリマーを使用することにより、耐久性の親水性コーティングを形成するために必要なプライムコーティングを形成することができること、そして、親水性ポリマーの1つ以上の層をプライムコーティング上へ連続的に結合させることにより、トップコーティングを形成することができる予期しない発見に一部基づいている。
【0042】
本発明は、以下の利点を提供することができる。第一に、全プロセスが湿式化学に基づいており、そのため、コンタクトレンズを乾燥する必要がない。第二に、例えば、コンタクトレンズを、連続したコーティング溶液浴で、それぞれ約5分未満の時間で連続して浸漬することにより、コーティングプロセスを達成することができる。このようなプロセスは、完全自動の大量生産環境で容易に実施することができる。第三に、本発明の方法に従って得られるコーティングは、耐久性及び親水性である。第四に、本発明の方法に従って得られるコーティングは、レンズケア溶液で広く使用される抗菌剤であるポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を最小限取り込むか、又は全く取り込まない。ビグアニドの濃度がより高いと、角膜炎症及び他の眼組織の炎症を引き起こす可能性がある。コンタクトレンズのコーティングがPHMBを最小取り込むか、又は全く取り込まないことが望まれる。
【0043】
本発明は、一態様においては、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ上へ親水性コーティングを適用する方法を提供し、本発明の方法は、(a)少なくとも1つのシリコーン含有ビニルモノマー又はマクロマーと、アズラクトン含有ビニルモノマー又はマクロマーとを含む重合性(又はレンズ形成)組成物を、成形型中で重合させて、これにより、コンタクトレンズのポリマーマトリクス上に共有結合したアズラクトン部分を有するシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを形成すること(ここで、アズラクトン含有ビニルモノマー又はマクロマーは、レンズ調製物中に、約0.5%〜約5.0重量%の量で存在する);(b)コンタクトレンズを、ペンダント第一級もしくは第二級アミノ基又はチオール基を有するアンカー親水性ポリマーの溶液と、コンタクトレンズ上にプライムコーティングを形成するために十分な時間接触させること(ここで、プライムコーティングは、コンタクトレンズの表面又は表面近くの1つのアズラクトン部分とアンカー親水性ポリマーの1つのペンダント第一級もしくは第二級アミノ基又はチオール基との間でそれぞれ形成される1つ以上の共有結合を介して、コンタクトレンズの表面に共有結合したアンカー親水性ポリマーの層を含む);(c)プライムコーティングの上部にトップコーティングを適用して、プライムコーティングに対して表面の親水性及び/又は耐久性が増加した親水性コーティングを形成すること(ここで、トップコーティングは、カルボン酸含有親水性ポリマーの少なくとも1つの層及び/又はアゼチジニウム含有ポリマーの少なくとも1つの層を含み、カルボン酸含有親水性ポリマーの層は、プライムコーティングを表面に有するコンタクトレンズをカルボン酸含有親水性ポリマーの溶液と接触させることにより形成され、アゼチジニウム含有ポリマーの層は、表面にプライムコーティングを、場合によりカルボン酸含有親水性ポリマーの層を有するコンタクトレンズを、アゼチジニウム含有ポリマーの溶液と接触させることにより形成され、カルボン酸含有親水性ポリマーの層及び/又はアゼチジニウム含有ポリマーの層は、アンカー親水性ポリマーの層に化学的及び/又は物理的に結合する)を含む。
【0044】
任意の適切なシリコーン含有ビニルモノマー又はマクロマーを本発明において使用することができる。好ましいシリコーン含有ビニルモノマーの例には、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]−(メタ)アクリルアミド、N−[トリス(ジメチルプロピルシロキシ)−シリルプロピル]−(メタ)アクリルアミド、N−[トリス(ジメチルフェニルシロキシ)シリルプロピル](メタ)アクリルアミド、N−[トリス(ジメチルエチルシロキシ)シリルプロピル](メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシ−3−(3−(ビス(トリメチルシリルオキシ)メチルシリル)プロピルオキシ)プロピル)−2−メチルアクリルアミド;N−(2−ヒドロキシ−3−(3−(ビス(トリメチルシリルオキシ)メチルシリル)プロピルオキシ)プロピル)アクリルアミド;N,N−ビス[2−ヒドロキシ−3−(3−(ビス(トリメチルシリルオキシ)メチルシリル)プロピルオキシ)プロピル]−2−メチルアクリルアミド;N,N−ビス[2−ヒドロキシ−3−(3−(ビス(トリメチルシリルオキシ)メチルシリル)プロピルオキシ)プロピル]アクリルアミド;N−(2−ヒドロキシ−3−(3−(トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル)プロピルオキシ)プロピル)−2−メチルアクリルアミド;N−(2−ヒドロキシ−3−(3−(トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル)プロピルオキシ)プロピル)アクリルアミド;N,N−ビス[2−ヒドロキシ−3−(3−(トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル)プロピルオキシ)プロピル]−2−メチルアクリルアミド;N,N−ビス[2−ヒドロキシ−3−(3−(トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル)プロピルオキシ)プロピル]アクリルアミド;N−[2−ヒドロキシ−3−(3−(t−ブチルジメチルシリル)プロピルオキシ)プロピル]−2−メチルアクリルアミド;N−[2−ヒドロキシ−3−(3−(t−ブチルジメチルシリル)プロピルオキシ)プロピル]アクリルアミド;N,N−ビス[2−ヒドロキシ−3−(3−(t−ブチルジメチルシリル)プロピルオキシ)プロピル]−2−メチルアクリルアミド;N,N−ビス[2−ヒドロキシ−3−(3−(t−ブチルジメチルシリル)プロピルオキシ)プロピル]アクリルアミド;3−メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン、トリス(トリメチルシリルオキシ)シリルプロピルメタクリレート(TRIS)、(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン)、(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3−メタクリルオキシ−2−(2−ヒドロキシエトキシ)−プロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、N−2−メタクリルオキシエチル−O−(メチル−ビス−トリメチルシロキシ−3−プロピル)シリルカルバメート、3−(トリメチルシリル)プロピルビニルカルボネート、3−(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル−トリス(トリメチルシロキシ)シラン、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルボネート、t−ブチルジメチル−シロキシエチルビニルカルボネート;トリメチルシリルエチルビニルカルボネート、及びトリメチルシリルメチルビニルカルボネートが含まれるが、これらに限定されない。式(1)で表される最も好ましいシロキサン含有(メタ)アクリルアミドモノマーは、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]アクリルアミド、TRIS、N−[2−ヒドロキシ−3−(3−(t−ブチルジメチルシリル)プロピルオキシ)プロピル]アクリルアミドである。
【0045】
好ましいシリコーン含有ビニルモノマー又はマクロマーの種類は、ポリシロキサン含有ビニルモノマー又はマクロマーである。「ポリシロキサン含有ビニルモノマー又はマクロマー」は、少なくとも1つのエチレン性不飽和基及び下記式:
【化2】


[式中、R及びRは、独立して、一価のC−C10アルキル、一価のC−C10アミノアルキル、一価のC−C10ヒドロキシアルキル、C−C10エーテル、C−C10フルオロアルキル、C−C10フルオロエーテル又はC−C18アリールラジカル、−alk−(OCHCH−ORである(式中、alkは、C−Cアルキレン二価ラジカルであり、Rは、水素又はC−Cアルキルであり、そして、mは、1〜10の整数であり;nは、3以上の整数である)]で表される二価ラジカルを含有するビニルモノマー又はマクロマーを指す。このようなビニルモノマー又はマクロマーの例は、様々な分子量のモノメタクリル化又はモノアクリル化ポリジメチルシロキサン(例えば、モノ−3−メタクリルオキシプロピル末端、モノ−ブチル末端ポリジメチルシロキサン又はモノ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピル末端、モノ−ブチル末端ポリジメチルシロキサン);様々な分子量のジメタクリル化又はジアクリル化ポリジメチルシロキサン;ビニルカルボネート末端ポリジメチルシロキサン;ビニルカルバメート末端ポリジメチルシロキサン;様々な分子量のビニル末端ポリジメチルシロキサン;メタクリルアミド末端ポリジメチルシロキサン;アクリルアミド末端ポリジメチルシロキサン;アクリレート末端ポリジメチルシロキサン;メタクリレート末端ポリジメチルシロキサン;ビス−3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン;N,N,N’,N’−テトラキス(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−α,ω−ビス−3−アミノプロピルポリジメチルシロキサン;ポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマー;US 5,760,100号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載のマクロマーA、マクロマーB、マクロマーC及びマクロマーDからなる群より選択されるシロキサン含有マクロマー;グリシジルメタクリレートとアミノ官能基ポリジメチルシロキサンとの反応生成物;ヒドロキシル官能基化シロキサン含有ビニルモノマー又はマクロマー;米国特許第4,136,250、4,153,641、4,182,822、4,189,546、4,343,927、4,254,248、4,355,147、4,276,402、4,327,203、4,341,889、4,486,577、4,543,398、4,605,712、4,661,575、4,684,538、4,703,097、4,833,218、4,837,289、4,954,586、4,954,587、5,010,141、5,034,461、5,070,170、5,079,319、5039,761、5,346,946、5,358,995、5,387,632、5,416,132、5,451,617、5,486,579、5,962,548、5,981,675、6,039,913及び6,762,264号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示のポリシロキサン含有マクロマー;米国特許第4,259,467、4,260,725及び4,261,875号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示のポリシロキサン含有マクロマーである。ポリジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドからなるジ−及びトリブロックマクロマーも有用であろう。例えば、メタクリレートで末端キャップしたポリエチレンオキシド−ブロック−ポリジメチルシロキサン−ブロック−ポリエチレンオキシドを使用して、酸素透過度を向上させることもできる。適切な単官能基のヒドロキシル官能基化シロキサン含有ビニルモノマー/マクロマー及び適切な多官能基のヒドロキシル官能基化シロキサン含有ビニルモノマー/マクロマーが、Gelest, Inc, Morrisville, PAから市販されている。
【0046】
別の種類の好ましいシリコーン含有マクロマーは、親水性部分及び疎水性部分を含むシリコーン含有プレポリマーである。親水性部分及び疎水性部分を有する任意の適切なシリコーン含有プレポリマーを、本発明において使用することができる。このようなシリコーン含有プレポリマーの例には、所有者が同じ米国特許第6,039,913、7,091,283、7,268,189及び7,238,750、7,521,519号;所有者が同じ米国特許出願公報第US 2008-0015315 A1、US 2008-0143958 A1、US 2008-0143003 A1、US 2008-0234457 A1、US 2008-0231798 A1ならびに所有者が同じ米国特許出願第61/180,449及び61/180,453号に記載のものが含まれる。これらの全てが、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0047】
本発明によれば、アズラクトン含有ビニルモノマー又はマクロマーは、ビニルモノマー又はマクロマーが、下記式:
【化3】


[式中、pは、0又は1であり;R及びRは、独立して、1〜14個の炭素原子を有するアルキル基、3〜14個の炭素原子を有するシクロアルキル基、5〜12個の環原子を有するアリール基、6〜26個の炭素及び0〜3個の硫黄、窒素及び/又は酸素原子を有するアレニル基であるか、あるいは、R及びRは、これらが結合する炭素と一緒になって、4〜12個の環原子を含有する炭素環を形成することができる]
で表される一価ラジカルである少なくとも1つのアズラクトン部分(又は基)を含むことを意味する。
【0048】
任意の適切なアズラクトン含有ビニルモノマーを、本発明において使用することができる。アズラクトン含有ビニルモノマーの例には、2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4−メチル−4−エチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−ブチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ジブチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−ドデシル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ジフェニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ペンタメチレン−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−テトラメチレン−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ジエチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4−メチル−4−ノニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−フェニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−ベンジル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ペンタメチレン−1,3−オキサゾリン−5−オン、及び2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−6−オンが含まれる。好ましいアズラクトン含有ビニルモノマーには、2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン(VDMO)及び2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン(IPDMO)が含まれる。
【0049】
本発明によれば、アズラクトン含有ビニルモノマー又はマクロマーは、レンズ調製物(即ち、重合性組成物)あたり、約0.5%〜約5.0重量%、好ましくは、約0.55%〜約3.5重量%、より好ましくは、約0.6%〜約2.5重量%、さらにより好ましくは、約0.8%〜約1.8重量%、最も好ましくは、約1.0%〜約1.5重量%の量で存在する。
【0050】
重合性組成物は、また、親水性ビニルモノマーを含むことができる。ほとんどの親水性ビニルモノマーを本発明において使用することができる。適切な親水性ビニルモノマーは、ヒドロキシル置換低級アルキル(C−C)アクリレート及びメタクリレート、ヒドロキシル置換低級アルキルビニルエーテル、C−Cアルキルアクリルアミド、C−Cアルキルメタクリルアミド、ジ−(C−Cアルキル)アクリルアミド、ジ−(C−Cアルキル)メタクリルアミド、N−ビニルピロール、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、2−ビニル−4,4’−ジアルキルオキサゾリン−5−オン、2−及び4−ビニルピリジン、合計3〜6個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和カルボン酸、アミノ(低級アルキル)−(ここで、用語「アミノ」は、第4級アンモニウムも含む)、モノ(低級アルキルアミノ)(低級アルキル)及びジ(低級アルキルアミノ)(低級アルキル)アクリレート及びメタクリレート、アリルアルコール、N−ビニルアルキルアミド、N−ビニル−N−アルキルアミドなどであるが、これらに限定されない。
【0051】
好ましい親水性ビニルモノマーの例は、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMA)、2−アクリルアミドグリコール酸、3−アクリロイルアミノ−1−プロパノール、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−アクリルアミド、N−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−n−プロピル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−n−プロピル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−イソプロピル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−イソプロピル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−n−ブチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−tert−ブチル−3−メチレン−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートトリメチルアンモニウム塩酸塩、アミノプロピルメタクリレート塩酸塩、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、グリセロールメタクリレート(GMA)、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)、アリルアルコール、ビニルピリジン、1500までの重量平均分子量を有するC−C−アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メタクリル酸、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、アリルアルコール、N−ビニルカプロラクタム及びその混合物である。
【0052】
シリコーンハイドロゲルレンズを製造するための重合性組成物は、また、疎水性モノマーを含むことができる。特定量の疎水性ビニルモノマーを重合性液体組成物に含有させることにより、得られるポリマーの機械的性質(例えば、弾性係数)を向上させることができる。ほとんどの疎水性ビニルモノマーを使用することができる。好ましい疎水性ビニルモノマーの例には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、スチレン、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、1−ブテン、ブタジエン、メタクリロニトリル、ビニルトルエン、ビニルエチルエーテル、ペルフルオロへキシルエチル−チオ−カルボニル−アミノエチル−メタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロ−イソプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレートが含まれる。
【0053】
シリコーンハイドロゲルレンズを製造するための重合性組成物は、また、1つ以上の架橋剤(即ち、2つ以上のアクリル基又は3つ以上のチオールもしくはエン含有基を有し、700ダルトン未満の分子量を有する化合物)を含むことができる。好ましい架橋剤の例には、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ビニルメタクリレート、エチレンジアミンジメチルアクリルアミド、エチレンジアミンジアクリルアミド、グリセロールジメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、アリルメタクリレート、アリルメタクリレート、1,3−ビス(メタクリルアミドプロピル)−1,1,3,3−テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスメタクリルアミド,1,3−ビス(N−メタクリルアミドプロピル)−1,1,3,3−テトラキス−(トリメチルシロキシ)ジシロキサン、1,3−ビス(メタクリルアミドブチル)−1,1,3,3−テトラキス(トリメチルシロキシ)−ジシロキサン、1,3−ビス(アクリルアミドプロピル)−1,1,3,3−テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサン、1,3−ビス(メタクリルオキシエチルウレイドプロピル)−1,1,3,3−テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサン、及びその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。好ましい架橋剤は、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、トリ(エチレングリコール)ジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジ(エチレングリコール)ジアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、トリアリルイソシアヌレート、又はトリアリルシアヌレートである。使用される架橋剤の量は、全ポリマーに対する重量含有量で表され、好ましくは、約0.05%〜約4%の範囲、より好ましくは、約0.1%〜約2%の範囲である。
【0054】
シリコーンハイドロゲルレンズを製造するための重合性組成物が、また、例えば、重合開始剤(例えば、光開始剤又は熱開始剤)、可視着色剤(例えば、染料、顔料、又はその混合物)、重合性UV吸収剤、重合性潜在性UV吸収剤、抗菌剤(例えば、好ましくは、銀ナノ粒子)、生物活性剤、浸出性潤滑剤などの当業者に知られている様々な成分を含むことができることを理解すべきである。
【0055】
好ましい実施態様においては、重合性組成物は、重合性UV吸収剤又は重合性潜在性UV吸収剤を含む。モノマー混合物中に重合性UV吸収剤又は重合性潜在性UV吸収剤を有することで、UV吸収能を有するシリコーンハイドロゲルレンズを得ることができる。このようなレンズは、角膜の紫外線(「UV」)照射による損傷をある程度保護することができる。
【0056】
任意の適切な重合性UV吸収剤を、本発明において使用することができる。好ましくは、重合性UV吸収剤は、ベンゾトリアゾール部分又はベンゾフェノン部分を含む。好ましい重合性UV吸収剤の例には、2−(2−ヒドロキシ−5−ビニルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−アクリリルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルアミドメチル−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルアミドフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルアミドフェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシプロピル−3’−t−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシエチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシプロピルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−アクリルオキシアルコキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリルオキシアルコキシベンゾフェノン、アリル−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリルオキシベンゾフェノンが含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
重合性潜在性UV吸収剤は、当業者に知られている任意の方法に従って、上述の重合性UV吸収剤から調製することができる。例えば、ベンゾトリアゾール部分又はベンゾフェノン部分を、保護した不安定な基と反応させて、UV吸収部分を潜在性UV吸収部分に変換することができる。
【0058】
ベンゾトリアゾール型のUV吸収剤の場合、ベンゾトリアゾール部分におけるフェノール部分のヒドロキシルラジカルを、保護不安定基で置き換えて、その吸収剤を本質的に非UV吸収性にすることができる(即ち、吸収剤が280〜400nmの範囲で強く吸収しないように、保護基が化合物の吸収特性を本質的に変化させる)。保護不安定な基の例には、アセチルラジカル、アセチルアルキルシラン、アルキルエーテル、及びアルキルエステルが含まれるが、これらに限定されない。これらの保護基は、レンズを硬化した後に、任意の公知の方法に従ってヒドロキシルラジカルに変換し戻すことができ、レンズをUV吸収性にすることができる。例えば、保護不安定基の除去は、硬化したレンズを飽和重炭酸溶液中に浸漬させて、加熱することにより実施することができる。
【0059】
同様に、ベンゾフェノン部分のフェノールラジカルの少なくとも1つのヒドロキシルラジカルを、前述の保護不安定な基の1つで置き換えて、潜在性UV吸収部分を生成することができる。潜在性UV吸収部分は、保護不安定基を除去することにより、UV吸収部分に変換することができる。
【0060】
重合性UV吸収剤又は重合性潜在性UV吸収剤は、一般的に、重合性組成物の硬化から得られ、必要であれば、処理して潜在性UV吸収部分に変換されるコンタクトレンズが、レンズに影響を与える約280nm〜約370nmの範囲でUV光の少なくとも約80%を吸収するようになる十分量で重合性組成物中に存在する。当業者であれば、重合性組成物に使用される特定量のUV吸収剤が、UV吸収剤の分子量及び約280〜約370nmの範囲におけるその吸光係数に依存することが理解されるであろう。本発明によれば、重合性組成物は、約0.2%〜約5.0重量%、好ましくは、約0.5%〜約2.5重量%のUV吸収剤を含む。
【0061】
光開始剤は、光を使用してフリーラジカル重合及び/又は架橋を開始することができる。適切な光開始剤は、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトンならびにDarocur及びIrgacur型、好ましくはDarocur 1173(登録商標)及びDarocur 2959(登録商標)である。ベンゾイルホスフィン開始剤の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−プロピルフェニルホスフィンオキシド;及びビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−ブチルフェニルホスフィンオキシドが含まれる。例えば、マクロマーに含有させるか、又は特別なモノマーとして使用することができる反応性光開始剤もまた適切である。反応性光開始剤の例は、EP 632 329(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるものである。次に、重合を、化学線、例えば、光、特に、適切な波長のUV光により引き起こすことができる。必要であれば、適切な光増感剤を添加して、スペクトル条件を適宜制御することができる。
【0062】
重合性組成物が重合性UV吸収剤を含むとろこでは、ベンゾイルホスフィンオキシド光開始剤が、本発明において、光開始剤として好ましく使用される。好ましいベンゾイルホスフィンオキシド光開始剤には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−プロピルフェニルホスフィンオキシド;及びビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−ブチルフェニルホスフィンオキシドが含まれるが、これらに限定されない。ベンゾイルホスフィンオキシド開始剤以外の任意の光開始剤を本発明において使用することができることを理解されい。
【0063】
好ましい顔料の例には、医療デバイスで許容され、FDAで承認される任意の着色剤、例えば、D&C青6号、D&C緑6号、D&C紫2号、カルバゾールバイオレット、特定の銅錯体、特定の酸化クロム、様々な酸化鉄、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、二酸化チタンなどが含まれる。本発明で使用することができる着色剤のリストは、Marmiom DM Handbook of U.S. Colorantsを参照されたい。顔料のより好ましい実施態様には、青色では、フタロシアニンブルー(ピグメントブルー15:3、C.I.74160)、コバルトブルー(ピグメントブルー36、C.I.77343)、Toner cyan BG(Clariant)、Permajet blue B2G(Clariant);緑色では、フタロシアニングリーン(ピグメントグリーン7、C.I.74260)及び三二酸化クロム;黄色、赤色、褐色及び黒色では、様々な酸化鉄;PR122、PY154、紫色では、カルバゾールバイオレット;黒色では、Monolith black C-K(CIBA Specialty Chemicals)が含まれるが、これらに限定されない(C.I.は、カラーインデックス番号である)。
【0064】
ポリマーマトリクス中に含有させる生物活性剤は、眼の病気を予防し、眼の病気の症状を軽減することができる任意の化合物である。生物活性剤は、薬物、アミノ酸(例えば、タウリン、グリシンなど)、ポリペプチド、タンパク質、酢酸、又はその組み合わせであることができる。本明細書において有用な薬物の例には、レバミピド、ケトチフェン、オラプチジン、クロモグリコラート、シクロスポリン、ネドクロミル、レボカバスチン、ロドキサミド、ケトチフェン、又はその薬学的に許容しうる塩もしくはエステルが含まれるが、これらに限定されない。生物活性剤の他の例には、2−ピロリドン−5−カルボン酸(PCA)、α−ヒドロキシル酸(例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、マンデル酸及びクエン酸ならびにその塩など)、リノール酸及びγ−リノール酸ならびにビタミン類(例えば、B5、A、B6など)が含まれる。
【0065】
浸出性潤滑剤の例には、ムチン様材料(例えば、ポリグリコール酸)及び非架橋性親水性ポリマー(即ち、エチレン性不飽和基を有さない)が含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
エチレン性不飽和基を全く有さない任意の親水性ポリマー又はコポリマーを、浸出性潤滑剤として使用することができる。非架橋性親水性ポリマーの好ましい例には、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリイミド、ポリラクトン、ビニルラクタムのホモポリマー、1つ以上の親水性ビニルコモノマーの存在下又は非存在下での少なくとも1つのビニルラクタムのコポリマー、アクリルアミド又はメタクリルアミドのホモポリマー、アクリルアミド又はメタクリルアミドと1つ以上の親水性ビニルモノマーのコポリマー、ポリエチレンオキシド(即ち、ポリエチレングリコール(PEG))、ポリオキシエチレン誘導体、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリ−2−エチルオキサゾリン、ヘパリン多糖類、多糖類及びその混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
非架橋性親水性ポリマーの平均分子量Mは、好ましくは、5,000〜500,000、より好ましくは、10,000〜300,000、さらにより好ましくは、20,000〜100,000である。
【0068】
本発明によれば、重合性組成物は、約20℃〜約85℃の温度で溶液又は溶融物であることができる。好ましくは、重合性組成物は、全ての所望の成分を適切な溶媒又は適切な溶媒の混合物に溶かした溶液である。
【0069】
重合性組成物は、所望の成分の全てを、当業者に知られている任意の適切な溶媒(使用する溶媒が、アズラクトン含有ビニルモノマー又はマクロマーのアズラクトン部分と有意に反応しない限り)に溶解させて調製することができる。好ましい溶媒の例には、テトラヒドロフラン、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸i−プロピル、塩化メチレン、2−ブタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、メントール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール及びエクソノルボルネオール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、3−メチル−2−ブタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、2−ノナノール、2−デカノール、3−オクタノール、ノルボルネオール、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、2−メチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチル−2−ヘキサノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、1−クロロ−2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−2−ヘプタノール、2−メチル−2−オクタノール、2−2−メチル−2−ノナノール、2−メチル−2−デカノール、3−メチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−メチル−4−ヘプタノール、3−メチル−3−オクタノール、4−メチル−4−オクタノール、3−メチル−3−ノナノール、4−メチル−4−ノナノール、3−メチル−3−オクタノール、3−エチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−エチル−4−ヘプタノール、4−プロピル−4−ヘプタノール、4−イソプロピル−4−ヘプタノール、2,4−ジメチル−2−ペンタノール、1−メチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブテン、4−ヒドロキシ−4−メチル−1−シクロペンタノール、2−フェニル−2−プロパノール、2−メトキシ−2−メチル−2−プロパノール、2,3,4−トリメチル−3−ペンタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、2−フェニル−2−ブタノール、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール及び3−エチル−3−ペンタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メチル−2−プロパノール、t−アミルアルコール、イソプロパノール、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルプロピオンアミド、N−メチルピロリジノン、ならびにその混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
コンタクトレンズを製造するためのレンズ成形型は、当業者によく知られており、例えば、キャスト成形又はスピンキャスティングにおいて使用される。例えば、成形型(キャスト成形の場合)は、一般的に、少なくとも2つの成形型部位(又は部分)又は成形型半部、即ち、第一及び第二の成形型半部を含む。第一の成形型半部は、第一の成形(又は光学)面を規定し、第二の成形型半部は、第二の成形(又は光学)面を規定する。第一及び第二の成形型半部は、第一の成形面と第二の成形面の間にレンズ形成キャビティが形成されるように互いを合わせるように構成される。成形用型半部の成形面は、成形用型のキャビティ形成表面であり、レンズ形成材料と直接接触している。
【0071】
コンタクトレンズをキャスト成形するための成形型部位を製造する方法は、一般的に、当業者によく知られている。本発明のプロセスは、任意の特定の成形型形成方法に限定されない。実際に、成形型を形成する任意の方法を、本発明において使用することができる。第一及び第二の成形型半部は、射出成形又は旋盤加工などの様々な技術により形成することができる。成形型半部を形成するための適切なプロセスの例は、米国特許第4,444,711号(Schad);第4,460,534号(Boehm等);第5,843,346号(Morrill);及び第5,894,002号(Boneberger等)に開示されており、これらは、また、参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
実質的には、当技術分野で知られている成形用型を製造するための全ての材料を使用して、コンタクトレンズを作製するための成形用型を製造することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PMMA、Topas(登録商標)COCグレード8007−S10(エチレンとノルボルネンの透明な非晶質コポリマー、Ticona GmbH of Frankfurt, Germany and Summit, New Jersey製)などのポリマー材料を使用することができる。石英ガラス及びサファイアなどのUV光透過性の他の材料を使用してもよい。
【0073】
好ましい実施態様においては、再利用可能な成形型が使用され、シリコーンハイドロゲルレンズ形成組成物を空間的に制限した化学線下で化学線により硬化させて、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを形成する。好ましい再利用可能な成形型の例は、参照によりその全体が組み込まれる、米国特許出願第08/274,942号(1994年7月14日出願)、第10/732,566号(2003年、10月10日出願)、第10/721,913号(2003年11月25日出願)及び米国特許第6,627,124号に開示されるものである。再利用可能な成形型は、石英、ガラス、サファイア、CaF、環状オレフィンコポリマー(例えば、Topas(登録商標)COCグレード8007−S10(エチレンとノルボルネンの透明な非晶質コポリマー)(Ticona GmbH of Frankfurt, Germany and Summit, New Jersey製)、Zeonex(登録商標)及びZeonor(登録商標)(Zeon Chemicals LP, Louisville, KY製))、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、DuPont製のポリオキシメチレン(Delrin)、G.E. Plastics製のUltem(登録商標)(ポリエーテルイミド)、PrimoSpire(登録商標)などからなることができる。
【0074】
本発明によれば、プライムコーティングは、内部及び/又は表面にアズラクトン基を有する成形したシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを、ペンダント第一級もしくは第二級アミノ基又はチオール基を有するアンカー親水性ポリマーの溶液と接触させることにより形成される。コンタクトレンズとアンカー親水性ポリマーの溶液との接触は、コーティング溶液に浸漬するか、又はコーティング溶液でスプレーすることにより行うことができる。ある接触プロセスでは、アンカー親水性ポリマーの溶液浴中にコンタクトレンズを単独で一定期間浸漬させるか、あるいは、連続したアンカー親水性ポリマーの溶液浴に、各浴より短い時間帯でコンタクトレンズを連続して浸漬させることを包含する。別の接触プロセスは、アンカー親水性ポリマーの溶液を単独でスプレーすることを包含する。しかしながら、当業者は、スプレー及び浸漬工程の様々な組み合わせを包含する多くの変形型を設計することができる。
【0075】
コンタクトレンズとアンカー親水性ポリマーの溶液との接触時間は、最大約10分、好ましくは、約5〜約360秒、より好ましくは、約5〜約250秒、さらにより好ましくは、約5〜200秒間続けてもよい。
【0076】
本発明によれば、アンカー親水性ポリマーは、ペンダント第一級及び/又は第二級アミノ基を有する直鎖又は分岐鎖ポリマー又はコポリマーであることができる。好ましくは、アンカー親水性ポリマーは、ペンダント第一級アミノ基又はチオール基(−SH)を有する。第一級アミノ基のアズラクトン基との反応性は、第二級アミノ基よりも高いものとする。ヒドロキシル基を含むペンダント求核性基を有する親水性ポリマーは、また、表面及び/又は内部にアズラクトン基を有するシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ上にプライムコーティングを形成するために、本発明において使用することができることを理解すべきである。しかしながら、ヒドロキシル基とアズラクトン基との反応速度は遅い場合があり、触媒を使用してもよい。
【0077】
ペンダント第一級及び/又は第二級アミノ基を有する任意の親水性ポリマーを、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ上にプライムコーティングを形成するためのアンカー親水性ポリマーとして使用することができる。このような親水性ポリマーの例には、アミノ−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミド又はアミノ−C−Cアルキル(メタ)アクリレートのホモポリマー、アミノ−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミド又はアミノ−C−Cアルキル(メタ)アクリレートと1つ以上の親水性ビニルモノマーとのコポリマー(例えば、上述の任意の親水性ビニルモノマー)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)ホモ又はコポリマー、ポリビニルアミンホモ又はコポリマー、ペンダント第一級及び/又は第二級アミノ基を有するポリビニルアルコールが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明のプライムコーティングを形成するための親水性ポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)ホモ又はコポリマー、ポリビニルアミンホモ又はコポリマー、ペンダント第一級又は第二級アミノ基を有するポリビニルアルコールである。
【0078】
ペンダント第一級及び/又は第二級アミノ基を有する好ましいポリビニルアルコールは、式I:
【化4】


[式中、
は、水素、C−Cアルキル基又はシクロアルキル基であり;
は、最大12個の炭素原子、好ましくは、最大8個の炭素原子を有するアルキレンであり、直鎖又は分岐鎖であってもよく;そして
は、式N(R’)X(式中、R’は、水素又はC−Cアルキルラジカルであり、Xは、カウンターイオン、例えば、HSO、F、Cl、Br、I、CHCOO、OH、BF、又はHPOである)で表される第一級又は第二級アミノ基である]
のユニットで表されるポリ(ビニルアルコール)の誘導体であり、且つ、ポリ(ビニルアルコール)中のヒドロキシル基あたり、該ユニットを約0.5%〜約80%有するポリヒドロキシルポリマーである。
【0079】
適切なRの例には、オクチレン、へキシレン、ペンチレン、ブチレン、プロピレン、エチレン、メチレン、2−プロピレン、2−ブチレン及び3−ペンチレンが含まれる。Rは、好ましくは、メチレン又はブチレンである。好ましいラジカルRは、−NH、−NH−CH、−NH(C)、又はその組み合わせである。
【0080】
式Iのユニットを含むこのようなポリヒドロキシルポリマーは、米国特許第5,583,163及び6,303,687号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示の方法と同様の公知の方法で調製することができる。例示するように、このようなポリヒドロキシルポリマーは、ポリビニルアルコールをアセタール(例えば、アミノブチルアルデヒド−ジエチルアセタールなど)と反応させることにより調製することができる。
【0081】
本発明のプライムコーティングを形成するためのアンカー親水性ポリマーの分子量Mは、少なくとも約10,000ダルトン、好ましくは、少なくとも約50,000ダルトン、より好ましくは、少なくとも約100,000ダルトン、さらにより好ましくは、約500,000〜5,000,000ダルトンである。
【0082】
本発明によれば、プライムコーティングを形成するためのアンカー親水性ポリマーの溶液との接触の前に、内部及び/又は表面にアズラクトン基を有するシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを、当業者に公知のように、抽出溶媒を用いて抽出して、未重合成分を成形したレンズから取り除くことができる。あるいは、プライムコーティングをシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ上に形成した後に、抽出工程を実施することができる。
【0083】
アンカー親水性ポリマーの溶液は、アンカー親水性ポリマーを、水、水と水に混和性の有機溶媒の混合物、有機溶媒又は1つ以上の有機溶媒の混合物に溶解させて調製することができる。好ましくは、アンカー親水性ポリマーは、水と1つ以上の有機溶媒の混合物、有機溶媒又は1つ以上の有機溶媒の混合物に溶解させる。少なくとも1つの有機溶媒を含有する溶媒系が、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを浸漬することができると考えられるが、その理由としては、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ中により多くのアズラクトン基があると、アンカー親水性ポリマーのペンダントアミノ基により接触し易くなり、そして、プライムコーティングが、コンタクトレンズの表面により強く結合することができるためである。メタノール、エタノール及び上述の他のものを含む任意の有機溶媒を、アンカー親水性ポリマーの溶液の調製で使用することができる。
【0084】
シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを製造するための重合性組成物が、約0.5%〜約5.0重量%、特に、約0.6%〜約2.5重量%のアズラクトン含有ビニルモノマー又はマクロマーを含む場合では、得られるコンタクトレンズの表面又は表面近くのアズラクトン基の量は、耐久性及び/又は親水性コーティングを形成するためには十分ではない。このような欠陥は、プライムコーティングと比較し表面の親水性が増加した親水性コーティングを形成するために、プライムコーティングを表面に有するコンタクトレンズを1つ以上の異なるコーティング材料の溶液と接触させることにより、プライムコーティングの上部にトップコーティングを適用して解決することができる。本明細書において使用されるように、プライムコーティングに対して表面の親水性が増加することは、プライムコーティングと該プライムコーティング上部のトップコーティングを有するコンタクトレンズが、プライムコーティングを有するがトップコーティングのないコンタクトレンズと比較して、より小さい水接触角を有することを意味する。
【0085】
一実施態様においては、トップコーティングは、カルボン酸含有親水性ポリマーの少なくとも1つの層を含み、プライムコーティングを表面に有するコンタクトレンズをカルボン酸含有親水性ポリマーの溶液に接触させることにより形成することができる。カルボン酸含有親水性ポリマーは、第二の親水性ポリマーのカルボン酸基とアンカー親水性ポリマーのアミノ基間の静電相互作用及び/又は水素結合を介して、アンカー親水性ポリマーの層に結合することができる。
【0086】
好ましくは、カルボン酸含有親水性ポリマーはアルデヒド基をさらに含む。カルボン酸含有親水性ポリマーがアルデヒド基を有する場合、静電相互作用及び水素結合の他にアルデヒド基とアンカー親水性ポリマーのアミノ基間で形成される共有結合を介してアンカー親水性ポリマーに強く結合することができ、これにより、親水性コーティングがデジタル摩擦試験に耐えることを特徴とする良好な耐久性を有する。
【0087】
適切なカルボン酸含有親水性ポリマーの例には、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸アルデヒド(即ち、アルデヒド基を有するヒアルロン酸)(HAA)、直鎖ポリアクリル酸(PAA)、分岐鎖ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸(PMA)、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸コポリマー、マレイン酸又はフマル酸コポリマーが含まれるが、これらに限定されない。この文脈において、分岐鎖ポリアクリル酸は、適切な(小)量の二−又は多ビニル化合物の存在下でアクリル酸を重合させることにより得ることができるポリアクリル酸を意味するものと理解されたい。分岐鎖ポリアクリル酸の例には、Goodrich Corp製のCarbophil(登録商標)又はCarbopol(登録商標)型が含まれる。(メタ)アクリル酸のコポリマーの例には、アクリル酸又はメタクリル酸と、例えば、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド又はN−ビニルピロリドンを含むビニルモノマーとの共重合生成物が含まれる。
【0088】
最も好ましくは、カルボン酸含有親水性ポリマーは、カルボキシメチルセルロース又はヒアルロン酸アルデヒド又はその組み合わせである。
【0089】
別の実施態様においては、トップコーティングは、アゼチジニウム含有ポリマーの少なくとも1つの層を含み、プライムコーティングを表面に有するコンタクトレンズをアゼチジニウム含有ポリマーの溶液と接触させることにより形成することができる。
【0090】
本願で使用されるアゼチジニウム含有ポリマーは、式:
【化5】


で表されるアゼチジニウム基を含むポリカチオン性ポリマーである。アゼチジニウムイオンは、スキームIに示されるように、アンカー親水性ポリマーのアミノ基と反応して、共有結合を形成することができる。
【0091】
【化6】

【0092】
さらなる実施態様においては、トップコーティングは、カルボン酸含有親水性ポリマーの少なくとも1つの層及びアゼチジニウム含有ポリマーの少なくとも1つの層を含む。このようなトップコーティングは、プライムコーティングを表面に有するコンタクトレンズを、任意の順序で、カルボン酸含有親水性ポリマーの溶液とアゼチジニウム含有ポリマーの溶液と連続して接触させることにより形成することができるが、最初にカルボン酸含有親水性ポリマーの溶液と、そして、アゼチジニウム含有ポリマーの溶液と接触させることを包含するプロセスが好ましい。コーティング材料の層がコーティングにおいて互いに結びつくことができるので、トップコーティングをプライムコーティングに化学結合させるために、アゼチジニウム含有ポリマーのアゼチジニウムイオンが、スキームIに示される反応により、カルボン酸基及びアミノ基と共有結合を形成することができることが考えられる。
【0093】
好ましい実施態様においては、トップコーティングは、少なくとも2つの二重層を含み、それぞれが、カルボン酸含有親水性ポリマーの1つの層とアゼチジニウム含有ポリマーの少なくとも1つの層からなる。
【0094】
トップコーティングがプライムコーティングに共有結合しているため、本発明の親水性コーティングは、デジタル摩擦試験に耐えることを特徴とする良好な耐久性を有する。さらに、アゼチジニウム含有ポリマーのアゼチジニウムイオンによるコーティングにおいて、負電荷基のカルボン酸が消費されるため、本発明の親水性コーティングは、レンズケア溶液からPHMBを取り込む傾向が低い。
【0095】
本発明によれば、カルボン酸含有親水性ポリマー又はアゼチジニウム含有ポリマーの溶液は、好ましくは、水溶液である。
【0096】
アゼチジニウム含有ポリマーは、ポリアミンポリマー又は第一級もしくは第二級アミノ基を含有するポリマーのエピクロルヒドリン官能基化から調製することができる。例えば、アミノアルキル(メタ)アクリレートのホモポリマー又はコポリマー、モノ−アルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド又はモノ−アルキル(メタ)アクリルアミドをエピクロルヒドリンと反応させて、、アゼチジニウム含有ポリマーを形成することができる。ポリアミンポリマーのアゼチジニウム官能基化の反応条件は、EP1465931(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に教示される。好ましいアゼチジニウム含有ポリマーは、ポリアミノアミド−エピクロルヒドリン(PAE)(又はポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリンもしくはポリアミド−エピクロルヒドリン)、例えば、Hercules製のKymene(登録商標)樹脂である。
【0097】
好ましい実施態様においては、トップコーティングは、ポリカチオン性ポリマーの1つ以上の層をさらに含む。ポリカチオン性ポリマーの例には、ポリアリルアミン(PAH)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミン、ポリ(ビニルベンジル−トリ−C−C−アルキルアンモニウム塩)、ポリ(ビニルピリジニウム塩)、ポリクォート(polyquat)が含まれるが、これらに限定されない。前述のポリマーは、特に規定されなければ、いずれの場合も、遊離アミン、その適切な塩ならびに任意の第四級形態を含む。
【0098】
一般的に、コンタクトレンズを、コーティング材料、例えば、アンカー親水性ポリマー、カルボン酸含有親水性ポリマー、アゼチジニウム含有ポリマー又はポリカチオン性ポリマーの溶液と接触させる工程は、約10℃〜約125℃、好ましくは、約20℃〜約80℃、より好ましくは、約25℃〜約60℃の温度で実施することができる。
【0099】
好ましい実施態様においては、カルボン酸含有親水性ポリマー又はアゼチジニウム含有ポリマーの最終層を、レンズパッケージ中で、コンタクトレンズ上に適用して、これを、密封して、約115℃〜125℃の温度で約15分間〜約90分間オートクレーブする。
【0100】
別の態様においては、本発明は、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを提供する。本発明のコンタクトレンズは、核シリコーンハイドロゲル材料及び親水性コーティングを含み、核シリコーンハイドロゲル材料は、核シリコーンハイドロゲル材料を製造するためのレンズ形成材料に含有されるアズラクトン含有ビニルモノマー又はマクロマーから直接誘導されるアズラクトン部分を含み、親水性コーティングは、プライムコーティング及びトップコーティングを含み、プライムコーティングは、第一級もしくは第二級基又はチオール基を有するアンカー親水性ポリマーの層であり、そして、コンタクトレンズの表面又は表面近くの1つのアズラクトン部分と1つの第一級もしくは第二級アミノ基又はチオール基との間でそれぞれ形成される共有結合を介して、核シリコーンハイドロゲル材料に直接共有結合しており、トップコーティングは、カルボン酸含有親水性ポリマーの少なくとも1つの層及び/又はアゼチジニウム含有ポリマーの少なくとも1つの層を含み、カルボン酸含有親水性ポリマーの層及び/又はアゼチジニウム含有ポリマーの層は、アンカー親水性ポリマーの層に化学的及び/又は物理的に結合し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも40barrerの酸素透過度、約100度以下の水接触角を特徴とする表面湿潤性及びデジタル摩擦試験に耐えることを特徴とする良好なコーティング耐久性を有する。
【0101】
本発明のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、約100度以下、好ましくは、約90度以下、より好ましくは、約80度以下、さらにより好ましくは、約70度以下、最も好ましくは、約60度以下の平均水接触角を有することを特徴とする湿潤性の表面を有する。
【0102】
本発明のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、好ましくは、少なくとも約40barrer、より好ましくは、少なくとも約50barrer、さらにより好ましくは、少なくとも約60barrerの酸素透過度を有する。本発明によれば、酸素透過度は、実施例に記載の手順による、見掛けの(約100ミクロン厚を有する試料を用いて試験する場合に直接測定される)酸素透過度である。本発明のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、約30〜約200ミクロン、より好ましくは、約40〜約150ミクロン、さらにより好ましくは、約50〜約120ミクロン、最も好ましくは、約60〜約110ミクロンの中心厚を有する。
【0103】
本発明のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、さらに、約1.5MPa以下、好ましくは、約1.2MPa以下、より好ましくは、約1.0MPa以下、さらにより好ましくは、約0.3MPa〜約1.0MPaの弾性係数を有する。
【0104】
本発明のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、さらに、好ましくは、少なくとも約1.5×10−6mm2/分、より好ましくは、少なくとも約2.6×10−6mm2/分、さらにより好ましくは、少なくとも約6.4×10−6mm2/分のイオノフラックス拡散係数Dを有する。
【0105】
本発明のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、完全に水和したときに、さらに、好ましくは、約18%〜約70重量%、より好ましくは、約20%〜約60重量%の水分含有量を有する。シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの水分含有量は、US 5,849,811号に開示のBulk技術に従って測定することができる。
【0106】
コーティング材料、重合性組成物、プライムコーティング及びトップコーティングの上記の様々な実施態様ならびに好ましい実施態様を、本発明のこの態様において使用することができる。
【0107】
先の開示により、当業者は本発明を実施することができるであろう。読者が特定の実施態様及びその利点をより理解できるようにするため、以下の実施例を参照することを提案する。
【実施例】
【0108】
実施例1
酸素透過度の測定
レンズの酸素透過度及びレンズ材料の酸素伝達率は、米国特許第5,760,100号及びWinterton等の論文(The Cornea: Transactions of the World Congress on the Cornea 111, H.D. Cavanagh Ed., Raven Press: New York 1988, pp273-280)に記載の技術と類似の技術に従って決定され、これら両方は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。湿潤セル中(即ち、ガス流を相対湿度約100%に維持した)、34℃で、Dk1000装置(Applied Design and Development Co., Norcross, GAから入手可能)又は類似の分析装置を用いて酸素フラックス(J)を測定する。既知の酸素%(例えば、21%)を有する気流を、約10〜20cm3/分の速度でレンズの一方に通し、レンズの反対側に窒素流を約10〜20cm3/分の速度で通す。測定の前に、既定の試験温度で少なくとも30分間(但し、45分以下)、試料を試験媒体(即ち、生理食塩水又は蒸留水)で平衡化する。オーバーレイヤーとして使用される任意の試験媒体を、測定の前に、既定の試験温度で少なくとも30分間(但し、45分以下)平衡化する。撹拌モーターの速度を、ステッピングモーターコントローラーの表示設定400±15に対応する1200±50rpmに設定する。周囲系の大気圧P測定を測定する。試験で曝露される領域のレンズ厚(t)を、Mitotoya micrometer VL-50又は類似の装置を用いて約10箇所測定することにより決定し、測定値の平均をとる。窒素流の酸素濃度(即ち、レンズを通って拡散する酸素)を、DK1000装置を用いて測定する。レンズ材料の見掛けの酸素透過度Dkappを下記式から決定する:
Dkapp=Jt/(P酸素
[式中、J=酸素フラックス[Oμl/cm2−分]
酸素=(P測定−P蒸気)=(気流中のO%)[mmHg]=気流中の酸素の分圧
測定=大気圧(mmHg)
蒸気=34℃で0mmHg(乾燥セル中)(mmHg)
蒸気=34℃で40mmHg(湿潤セル中)(mmHg)
t=曝露試験領域のレンズの平均厚(mm)
Dkappは、barrer単位で表される]
材料の酸素伝達率(Dk/t)は、酸素透過度(Dkapp)をレンズの平均厚(t)で割って算出することができる。
【0109】
イオン透過度の測定
レンズのイオン透過度は、米国特許第5,760,100号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の手順に従って測定される。以下の実施例において示されるイオン透過度の値は、標準材料であるレンズ材料Alsaconに対する相対イオノフラックス拡散係数(D/Dref)である。Alsaconは、イオノフラックス拡散係数0.314×10−3mm2/分を有する。
【0110】
水接触角の測定
コンタクトレンズ上の水接触角は、コンタクトレンズの表面の親水性(又は湿潤性)の一般的な測定である。特に、水接触角が小さいことは、表面がより親水性であることに相当する。コンタクトレンズの平均接触角(Sessile Drop)は、Boston, MassachusettsにあるAST, Inc.製のVCA 2500 XE接触角測定装置を使用して測定される。この装置は、接触角又は固定(静的)接触角の前進又は後進を測定することができる。測定は、完全に水和したコンタクトレンズで、下記のようにブロット乾燥の後直ちに実施される。弱く結合したパッケージング添加剤をレンズ表面から取り除くために、コンタクトレンズをバイアルから取り出して、〜200mlの新しいDI水で3回洗浄する。次に、レンズを清潔で糸くずのない布(Alpha Wipe TX1009)上に置き、軽くたたいてよく表面の水を取り除き、接触角測定台に載せ、乾燥空気を送風して風乾して、最後に、製造業者により提供されるソフトウェアを用いて液滴接触角を自動測定する。接触角の測定に使用するDI水は抵抗率>18MΩcmを有し、使用する液滴容量は2μlである。典型的には、未コートのシリコーンハイドロゲルレンズ(オートクレーブ後)は、ほぼ120度の液滴接触角を有する。コンタクトレンズを接触させる前に、ピンセットと台をイソプロパノールで十分に洗浄し、DI水でリンスする。
【0111】
水崩壊(Water Break-up)時間(WBUT)試験
また、レンズ(オートクレーブ後)の湿潤性を、レンズ表面で水膜が崩壊し始めるのに必要な時間を測定することにより評価する。簡単には、弱く結合したパッケージング添加物をレンズ表面から取り除くために、レンズをバイアルから取り出して、〜200mlの新しいDI水で3回洗浄する。レンズを溶液から取り出し、強い光源にかざす。水膜が崩壊(脱湿潤)し、下層のレンズ材料が曝されるのに必要な時間が目で確認される。未コーティングレンズは、典型的には、DI水を除去するとすぐさま崩壊し、これをWBUT0秒間とする。WBUT≧5秒間を示すレンズは、湿潤性であると考えられ、眼に適切な湿潤性(涙液膜を維持する能力)を示すと期待される。
【0112】
コーティング耐久性試験
コーティングの耐久性(コーティング効果喪失に対する耐久能力)は、試料を手動で2分間摩擦することにより評価される。ニトリルグローブを着けて、片方の手のひらにあるレンズをもう片方の人差し指で摩擦する。水接触角は、上述の手順を用いて、耐久性試験の前後にレンズ上で実施する。良好なコーティング耐久性を示すレンズは、摩擦の後、接触角がわずかに増加し、また、極めて良好な湿潤性(WBUT≧5秒)を維持する。
【0113】
PHMB(ポリヘキサメチレンビグアニド)の取り込み測定
5つのレンズをパッケージから取り出し、ふき取り、125mlのポリプロピレンナルゲンボトルに入れる。次に、100mlのAquify MPS溶液を添加し、ボトルに蓋をし、溶液中、室温(25±2℃)で7日間レンズを回転させる。溶液のPHMB HClを分析する。室温で、ポリプロピレン容器中100mlのAquify MPS溶液を含有する、レンズなしの対照溶液に関しても、PHMB HCl濃度を分析した。試験レンズのPHMBの取り込みを対照溶液に対するPHMB HCl濃度の減少に基づいて決定する。
【0114】
実施例2
末端メタクリレート基を有する鎖伸長ポリジメチルシロキサンビニルマクロマー(CE−PDMSマクロマー)の調製
第一の工程において、脱水メチルエチルケトン(MEK)150g中、ジブチルチンジラウレート(DBTDL)0.063gの存在下で、α,ω−ビス(2−ヒドロキシエトキシプロピル)−ポリジメチルシロキサン49.85gとイソホロンジイソシアネート(IPDI)11.1gを反応させて、α,ω−ビス(2−ヒドロキシエトキシプロピル)−ポリジメチルシロキサン(Mn=2000、Shin-Etsu、KF-6001a)を、イソホロンジイソシアネートでキャッピングする。反応物を、40℃で4.5時間維持して、IPDI−PDMS−IPDIを生成する。第二の工程において、α,ω−ビス(2−ヒドロキシエトキシプロピル)−ポリジメチルシロキサン(Mn=3000、Shin-Etsu、KF-6002)164.8gと脱水MEK50gの混合物を、追加のDBTDL0.063gを添加したIPDI−PDMS−IPDI溶液に滴下する。反応容器を、40℃で4.5時間保持して、HO−PDMS−IPDI−PDMS−IPDI−PDMS−OHを生成する。次に、減圧下でMEKを除去する。第三の工程において、イソシアナトエチルメタクリレート(IEM)7.77g及び追加のDBTDL0.063gを添加して、末端ヒドロキシル基を、第三の工程で、メタクリロイルオキシエチル基でキャッピングして、IEM−PDMS−IPDI−PDMS−IPDI−PDMS−IEMを生成する。
【0115】
末端メタクリレート基を有するCE−PDMSマクロマーの代替調製
240.43gのKF-6001を、撹拌器、温度計、クライオスタット、滴下漏斗及び窒素/真空吸気アダプターを備えた1Lの反応容器に添加した後、高真空下(2×10−2mBar)で乾燥させる。次に、乾燥窒素雰囲気下で、蒸留MEK320gを反応容器に添加し、混合物を十分に撹拌する。DBTDL0.235gを反応容器に添加する。反応容器を45℃に温めた後、適度に撹拌しながら、IPDI45.86gを添加漏斗で10分間かけて反応容器に添加する。反応物を60℃で2時間維持する。次に、蒸留MEK452gに溶解させた630gのKF-6002を添加し、均一な溶液が得られるまで撹拌する。DBTDL0.235gを添加し、反応容器を、乾燥窒素ブランケット下、55℃で一晩維持する。翌日、MEKをフラッシュ蒸留により除去する。反応容器を冷却した後、IEM22.7g、その後、DBTDL0.235gを反応容器に加える。3時間後、追加のIEM3.3gを添加し、反応を一晩進行させる。翌日、反応混合物を18℃に冷却して、CE−PDMSマクロマーを得る。
【0116】
実施例3
レンズ調製物の調製
実施例2で調製したCE−PDMSマクロマー及び表1に列挙する他の成分を酢酸エチルに溶解させて、3種類のレンズ調製物を調製する。注記:下記の全ての成分を最初に添加し、溶解させる。VDMAを調製物に添加し、〜1時間回転させ、直ちに成型する。
【0117】
【表1】

【0118】
レンズの調製
ポリプロピレンレンズ成形型の雌型部位に、上記で調製したレンズ形成材料約75μlを充填して、成形型をポリプロピレンレンズ成形型の雄型部位(ベースカーブ成形型)で閉じる。最高光強度約3.61mW/cm2及び最低光強度約3.54mW/cm2のフィリップスライト(40ワット、F405)を備える両面UV硬化ボックス中で、閉じた成形型を約5分間硬化させて、コンタクトレンズを得る。
【0119】
コーティング溶液の調製
PEI(ポリエチレンイミン、Mw50,000〜100,000)コーティング溶液は、1−プロパノール(1−PrOH)80mlに30%ストック水溶液20gを添加して調製する。CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、Mw250,000)、Kymene(polycup 8210、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂)及びHAA(アルデヒド基を生成するためにカスタムに開環したヒアルロン酸(kwl-080415-001))のコーティング溶液は、適切な濃度のポリマーをDI水に添加し、10mM酢酸(緩衝剤)を添加し、そして、1N NaOH溶液を使用して最終pHを5に調整して調製する。0.1%Kymene(polycup 8210、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂)コーティング溶液は、製造業者から供給されるKymene溶液(〜21wt%溶液として発送される)0.1gをDI水100mlに添加し、10mM酢酸(緩衝剤)を添加し、そして、1N NaOH溶液を使用して最終pHを5に調整して調製する。
【0120】
レンズのコーティング
下記の3つのプロセスを、コンタクトレンズ上へのコーティングの適用に使用する。注記:全ての浸漬工程は室温で実施する。
【0121】
コーティングI. 上記で調製したコンタクトレンズを:(1)PEIコーティング溶液に3分間浸漬;(2)DI水に55秒間浸漬;(3)EtOAcで5分間抽出;(4)DI水に3分間浸漬;(5)リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH?)又は0.1重量%HAAを含むPBSを含有するバイアルにパッケージング;そして、(6)約121℃で30分間オートクレーブする。
【0122】
コーティングII. 上記で調製したコンタクトレンズを:(1)PEIコーティング溶液に3分間浸漬;(2)DI水に55秒間浸漬;(3)EtOAcで5分間抽出;(4)DI水に3分間浸漬;(5)0.1%CMCコーティング溶液(pH5)に55秒間浸漬;(6)DI水に30秒間浸漬;(7)0.1%Kymeneコーティング溶液(pH5)に55秒間浸漬;(8)DI水に30秒間浸漬;(9)0.1%CMCコーティング溶液(pH5)に55秒間浸漬;(10)DI水に30秒間浸漬;(11)0.1%Kymeneコーティング溶液(pH5)に55秒間浸漬;(12)リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH?)又は0.1重量%HAAを含むPBSを含有するバイアルにパッケージング;そして、(12)約121℃で30分間オートクレーブする。
【0123】
コーティングIII. 上記で調製したコンタクトレンズを:(1)PEIコーティング溶液に3分間浸漬;(2)DI水に55秒間浸漬;(3)EtOAcで5分間抽出;(4)DI水に3分間浸漬;(5)0.1%HAAコーティング溶液(pH5)に55秒間浸漬;(6)DI水に30秒間浸漬;(7)0.1%Kymeneコーティング溶液(pH5)に55秒間浸漬;(8)DI水に30秒間浸漬;(9)0.1%HAAコーティング溶液(pH5)に55秒間浸漬;(10)DI水に30秒間浸漬;(11)0.1%Kymeneコーティング溶液(pH5)に55秒間浸漬;(12)リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH?)又は0.1重量%HAAを含むPBSを含有するバイアルにパッケージング;そして、(12)約121℃で30分間オートクレーブする。
【0124】
コーティングレンズの直径、水接触角(WCA)、湿潤性を測定して、表2に報告する。
【表2】

【0125】
実施例4
レンズの調製
レンズ調製物を以下の組成を有するように調製する:実施例2で調製したCE−PDMSマクロマー(30.9%)、Tris−Am(23.8%)、DMA(18%)、DC1173(1.0%)、VDMA(2.5%)、メチレンビスアクリルアミド(MBA、0.4%)及びtert−アミルアルコール(23.2%)。対照レンズ調製物(即ち、VDMAなし)は、上記調製物にVDMAを添加せずに調製する。コンタクトレンズは、実施例3に記載の手順に従って調製する。
【0126】
コーティング溶液の調製
コーティング溶液は、実施例3に記載の手順に従って調製する。本実施例において、分子量2000kDaのPEI溶液(Lupasol SK、〜25wt%、BASF製)は、1−PrOHを約20重量%濃度を有するようにPEIストック溶液に添加して調製する(実施例3で調製したPEI溶液と区別するために20%Lupasol SK溶液とする)。0.1%Lupasol SK水溶液は、製造業者から供給されるLupasol SK溶液0.1gをDI水100mlに添加し、10mM酢酸(緩衝剤)を添加し、そして、1N NaOH溶液を使用して最終pHを5に調整して調製する。
【0127】
レンズのコーティング
下記の3つのプロセスを、コンタクトレンズ上へのコーティングの適用に使用する。
【0128】
コーティングI. 上記で調製したコンタクトレンズを:(1)メチルエチルケトン(MEK)で5分間抽出;(2)DI水に55秒間浸漬;(3)PEI溶液(20重量%、1−PrOH中)に3分間浸漬;(4)DI水に3分間浸漬;(5)0.1%HAA水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(6)DI水に30秒間浸漬;(7)0.1%Kymene水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(8)DI水に30秒間浸漬;(9)0.1%HAA水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(10)DI水に30秒間浸漬;(11)0.1%Kymene水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(12)リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)又は0.1重量%HAAを含むPBSを含有するバイアルにパッケージング;そして、(12)約121℃で30分間オートクレーブする。
【0129】
コーティングII. 上記で調製したコンタクトレンズを:(1)Lupasol SK溶液(20重量%、1−PrOH中)に3分間浸漬;(2)DI水に55秒間浸漬;(3)MEKで5分間抽出;(4)DI水に3分間浸漬;(5)0.1%HAA水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(6)DI水に30秒間浸漬;(7)0.1%Kymene水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(8)DI水に30秒間浸漬;(9)0.1%HAA水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(10)DI水に30秒間浸漬;(11)0.1%Kymene水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(12)0.1重量%HAAを含むPBSを含有するバイアルにパッケージング;そして、(12)約121℃で30分間オートクレーブする。
【0130】
コーティングIII. 上記で調製したコンタクトレンズを:(1)PEI溶液(20重量%、1−PrOH中)に3分間浸漬;(2)DI水に55秒間浸漬;(3)EtOAcで5分間抽出;(4)DI水に3分間浸漬;(5)0.1%HAA水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(6)DI水に30秒間浸漬;(7)0.1%Lupasol SK水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(8)DI水に30秒間浸漬;(9)0.1%HAA水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(10)DI水に30秒間浸漬;(11)0.1%Lupasol SK水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(12)0.1重量%HAAを含むPBSを含有するバイアルにパッケージング;そして、(12)約121℃で30分間オートクレーブする。
【0131】
コーティングレンズの直径、水接触角(WCA)、湿潤性を測定して、表3に報告する。
【0132】
【表3】

【0133】
実施例5
レンズの調製
レンズ調製物を以下の組成を有するように調製する:実施例2で調製したCE−PDMSマクロマー(30.9%)、Tris−Am(23.8%)、DMA(18%)、DC1173(1.0%)、VDMA(2.5%)、メチレンビスアクリルアミド(MBA、0.4%)及びtert−アミルアルコール(23.2%)。コンタクトレンズは、実施例3に記載の手順に従って調製する。
【0134】
コーティング溶液の調製
コーティング溶液は、実施例3及び4に記載の手順に従って調製する。本実施例において、分子量700kDaを有するCMC(Acros Organics製、Product # AC332641000、置換度(DS)=0.9)は、0.1%CMC水溶液の調製で使用される。
【0135】
レンズのコーティング
下記の3つのプロセスを、コンタクトレンズ上へのコーティングの適用に使用する。
【0136】
コーティングI. 上記で調製したコンタクトレンズを:(1)Lupasol SK溶液(10重量%、1−PrOH中)に3分間浸漬;(2)DI水に55秒間浸漬;(3)MEKで5分間抽出;(4)DI水に3分間浸漬;(5)0.1%HAA水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(6)DI水に30秒間浸漬;(7)0.1%Kymene水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(8)DI水に30秒間浸漬;(9)0.1%HAA水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(10)DI水に30秒間浸漬;(11)0.1%Kymene水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(12)0.1重量%HAAを含むPBSを含有するバイアルにパッケージング;そして、(12)約121℃で30分間オートクレーブする。
【0137】
コーティングII. 上記で調製したコンタクトレンズを:(1)Lupasol SK溶液(20重量%、1−PrOH中)に3分間浸漬;(2)DI水に55秒間浸漬;(3)MEKで5分間抽出;(4)DI水に3分間浸漬;(5)0.1%CMC(700kDa)水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(6)DI水に30秒間浸漬;(7)0.1%Kymene水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(8)DI水に30秒間浸漬;(9)0.1%CMC(700kDa)水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(10)DI水に30秒間浸漬;(11)0.1%Kymene水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(12)0.1重量%HAAを含むPBSを含有するバイアルにパッケージング;そして、(12)約121℃で30分間オートクレーブする。
【0138】
コーティングIII. 上記で調製したコンタクトレンズを:(1)Lupasol SK溶液(20重量%、1−PrOH中)に3分間浸漬;(2)DI水に55秒間浸漬;(3)EtOAcで5分間抽出;(4)DI水に3分間浸漬;(5)0.1%CMC(700kDa)水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(6)DI水に30秒間浸漬;(7)0.1%Lupasol SK水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(8)DI水に30秒間浸漬;(9)0.1%CMC(700kDa)水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(10)DI水に30秒間浸漬;(11)0.1%Lupasol SK水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(12)0.1重量%HAAを含むPBSを含有するバイアルにパッケージング;そして、(12)約121℃で30分間オートクレーブする。
【0139】
コーティングIV. 上記で調製したコンタクトレンズを:(1)PEI溶液(20重量%、1−PrOH中)に3分間浸漬;(2)DI水に55秒間浸漬;(3)EtOAcで5分間抽出;(4)DI水に3分間浸漬;(5)0.01%HAA水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(6)DI水に30秒間浸漬;(7)0.1%Kymene水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(8)DI水に30秒間浸漬;(9)0.01%HAA水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(10)DI水に30秒間浸漬;(11)0.1%Kymene水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(12)0.1重量%HAAを含むPBSを含有するバイアルにパッケージング;そして、(12)約121℃で30分間オートクレーブする。
【0140】
コーティングレンズの直径、水接触角(WCA)、湿潤性及び耐久性を測定して、表4に報告する。
【表4】

【0141】
実施例6
レンズの調製
2つのレンズ調製物を、下記の表5に示す組成を有するように調製する。コンタクトレンズは、実施例3に記載の手順に従って調製する。
【表5】

【0142】
コーティング溶液の調製
コーティング溶液は、実施例3〜5に記載の手順に従って調製する。
【0143】
レンズのコーティング
下記の3つのプロセスを、コンタクトレンズ上へのコーティングの適用に使用する。
コーティングI. 上記で調製したコンタクトレンズを:(1)Lupasol SK溶液(20重量%、1−PrOH中)に3分間浸漬;(2)DI水に55秒間浸漬;(3)MEKで5分間抽出;(4)DI水に3分間浸漬;(5)0.1%CMC(700kDa)水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(6)DI水に30秒間浸漬;(7)0.1%Kymene水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(8)DI水に30秒間浸漬;(9)0.1%CMC(700kDa)水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(10)DI水に30秒間浸漬;(11)0.1%Kymene水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(12)0.1重量%HAAを含むPBSを含有するバイアルにパッケージング;そして、(12)約121℃で30分間オートクレーブする。
【0144】
コーティングII. 上記で調製したコンタクトレンズを:(1)Lupasol SK溶液(20重量%、1−PrOH中)に3分間浸漬;(2)DI水に55秒間浸漬;(3)MEKで5分間抽出;(4)DI水に3分間浸漬;(5)0.1%CMC(700kDa)水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(6)DI水に30秒間浸漬;(7)0.1%Kymene水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(8)DI水に30秒間浸漬;(9)0.1%CMC(700kDa)水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(10)DI水に30秒間浸漬;(11)0.1%Kymene水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(12)0.1重量%CMC(700kDa)を含むPBSを含有するバイアルにパッケージング;そして、(12)約121℃で30分間オートクレーブする。
【0145】
コーティングIII. 上記で調製したコンタクトレンズを:(1)Lupasol SK溶液(20重量%、1−PrOH中)に3分間浸漬;(2)DI水に55秒間浸漬;(3)MEKで5分間抽出;(4)DI水に3分間浸漬;(5)0.1%HAA水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(6)DI水に30秒間浸漬;(7)0.1%Kymene水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(8)DI水に30秒間浸漬;(9)0.1%HAA水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(10)DI水に30秒間浸漬;(11)0.1%Kymene水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(12)0.1重量%HAAを含むPBSを含有するバイアルにパッケージング;そして、(12)約121℃で30分間オートクレーブする。
【0146】
コーティングIV. 上記で調製したコンタクトレンズを:(1)Lupasol KS溶液(20重量%、1−PrOH中)に3分間浸漬;(2)DI水に55秒間浸漬;(3)MEKで5分間抽出;(4)DI水に3分間浸漬;(5)0.1%HAA水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(6)DI水に30秒間浸漬;(7)0.1%Kymene水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(8)DI水に30秒間浸漬;(9)0.1%HAA水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(10)DI水に30秒間浸漬;(11)0.1%Kymene水溶液(pH5)に55秒間浸漬;(12)0.1重量%CMC(700kDa)を含むPBSを含有するバイアルにパッケージング;そして、(12)約121℃で30分間オートクレーブする。
【0147】
コーティングレンズの直径、水接触角(WCA)、湿潤性及び耐久性を測定して、表6に報告する。
【表6】

【0148】
実施例7
レンズ調製物を以下の組成を有するように調製する:実施例2で調製したCE−PDMSマクロマー(31.5%)、Tris−Am(22.3%)、DMA(12.2%)、DC1173(1.0%)、VDMA(9.3%)及びEtOAc(23.7%)。コンタクトレンズは、実施例3に記載の手順に従って調製する。
【0149】
上記で成形したレンズを以下の順序の処理工程に付す:1−プロパノール中の5wt%PEI(ポリエチレンイミン、Mw50,000〜100,000)に3分間浸漬する;DI水に1分間浸漬する;EtOAcに5分間浸漬する;DI水に3分間浸漬する;PBS生理食塩水にパッケージングし、約121℃で約30分間オートクレーブする。オートクレーブ後の最終レンズは、顕微鏡により12.7×倍率で測定したところ、直径16.9mmであった。
【0150】
1.2%、2.5%及び5%VDMAを含有する調製物から調製したレンズの直径データは、それぞれ、実施例6(4_8_2)、実施例4及び実施例3(2−100−1)で得られる。異なる濃度(1.2%、2.5%、5%及び9.3%)のVDMAを含有する4種類のレンズ調製物から調製したレンズのレンズの直径データの分析から、レンズ調製物中のVDMA量とオートクレーブ後のレンズの最終膨張との間で良好な直線相関が得られる。レンズ直径(mm)=0.3183[VDMA wt%]+13.787(R=0.9867)
【0151】
実施例8
レンズ調製物を以下の組成を有するように調製する:実施例2で調製したCE−PDMSマクロマー(30.9%)、Tris−Am(24.3%)、DMA(18.5%)、DC1173(1.0%)、VDMA(1.3%)、MBA(0.2%)及びt−アミルアルコール(23.2%)。コンタクトレンズは、実施例3に記載の手順に従って調製する。
【0152】
上記で成形したレンズを以下の順序の処理工程に付す:水と1−プロパノールの混合物中の20wt%Lupasol SK溶液(2000kDa、PEI溶液)に3分間浸漬する;DI水に45秒間浸漬する;MEKに5分間浸漬する;DI水に2分間浸漬する;0.1%700kDaCMC溶液(pH5、緩衝剤として10mM酢酸)に45秒間浸漬する;DI水に45秒間浸漬する;0.1%Kymene 8210(pH5、緩衝剤として10mM酢酸)に45秒間浸漬する;DI水に45秒間浸漬する;0.1%700kDaCMC溶液(pH5、緩衝剤として10mM酢酸)に45秒間浸漬する;DI水に45秒間浸漬する;0.1%Kymene 8210(pH5、緩衝剤として10mM酢酸)に45秒間浸漬する;DI水に45秒間浸漬する;0.1%700kDaCMCを含有するPBS生理食塩水にパッケージングする;そして、約121℃で約30分間オートクレーブする。
【0153】
コーティングコンタクトレンズが、弾性係数約1.1MPa、破断伸び率約311%、Alsaconに対してイオン透過度1.6、見掛けのDk約112barrer(固有のDk約200barrer)、直径14.9mm(Optispecで測定)、15.8μg/レンズのPHMB取り込み(コーティングを行わない対照レンズが、約17.7μg/レンズのPHMB取り込みを有する)を有することが決定される。これは、レンズコーティングがわずかにPHMBを取り込むことを示している。
【0154】
コーティングコンタクトレンズの平均水接触角(Sessile Dropにより測定)は、65度である。RepleniSH(登録商標)による10回の模擬洗浄サイクル(デジタル摩擦を伴う)の後のコーティングレンズの水接触角は、約83度である。ReNu(登録商標)による10回の模擬洗浄サイクル(デジタル摩擦を伴う)の後のコーティングレンズの水接触角は、約68度である。
【0155】
コーティングレンズの細胞増殖抑制試験(CGI)は8%であり、これにより、コーティングレンズが非細胞毒性であると考えられる。コーティングレンズについてのパッケージング生理食塩水の改変USP Elution試験は、グレード0−0−0を示し、これは、パッケージング生理食塩水が非細胞毒性であることを示している。
【0156】
実施例9
レンズの調製
3種類の調製物を下記のように調製する。コンタクトレンズは、実施例3に記載の手順に従って調製する。
【表7】

【0157】
レンズのコーティング
上記で成形したレンズを以下の順序の処理工程に付す:MEKに5分間浸漬する;DI水に45秒間浸漬する;水と1−プロパノールの混合物中の20wt%Lupasol SK溶液(2000kDa、PEI溶液)に3分間浸漬する;DI水に2分間浸漬する;0.1%700kDaCMC溶液(pH5、緩衝剤として10mM酢酸)に56秒間浸漬する;DI水に30秒間浸漬する;0.1%Kymene 8210(pH5、緩衝剤として10mM酢酸)に56秒間浸漬する;DI水に30秒間浸漬する;0.1%700kDaCMC溶液(pH5、緩衝剤として10mM酢酸)に56秒間浸漬する;DI水に30秒間浸漬する;0.1%Kymene 8210(pH5、緩衝剤として10mM酢酸)に56秒間浸漬する;DI水に30秒間浸漬する;0.1%700kDaCMCを含有するPBS生理食塩水にパッケージングする;そして、約121℃で約30分間オートクレーブする。
【0158】
レンズ特性
限定的な摩擦及びリンス(レンズの質的取扱い性から)の後のレンズの水接触角(WCA)及び湿潤性(即ち、コーティングの耐久性の指標)を測定し、以下に報告する。
【表8】

【0159】
実施例10
レンズの調製
レンズ調製物を以下の組成を有するように調製する:実施例2で調製したCE−PDMSマクロマー(30.9%)、Tris−Am(25.3%)、DMA(17.5%)、DC1173(1.0%)、VDMA(1.3%)、MBA(0.2%)及びtert−アミルアルコール(23.8%)。コンタクトレンズは、実施例3に記載の手順に従って調製する。
【0160】
コーティング溶液の調製
CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、Mw700,000)及びKymene(polycup172、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂)のコーティング溶液は、適切な濃度のポリマーをDI水に添加し、10mM重炭酸ナトリウム(緩衝剤)を添加し、1N NaOH溶液を使用して最終pHを9に調整して調製される。
【0161】
レンズのコーティング
工程1.MEK、324秒間
工程2.DI水、56秒間
工程3.1−プロパノール中の20wt%Lupasol SK(PEI溶液)、180秒間
工程4.DI水、112秒間
工程5.0.01%CMC水溶液、56秒間
工程6.DI水、56秒間
工程7.0.01%Kymene水溶液、56秒間
工程8.DI水、56秒間
工程9.0.01%CMC水溶液、56秒間
工程10.DI水、56秒間
工程11.0.01%Kymene水溶液、56秒間
【0162】
対照I レンズは、VDMAを差し引いた上記のレンズ調製物から製造し、抽出/コーティング処理工程(即ち、工程1〜11)に付して、パッケージング/オートクレーブする。
【0163】
対照II レンズは、VDMAを差し引いた上記のレンズ調製物から製造し、抽出及び水和のみ(即ち、工程1〜2)に付して、パッケージング/オートクレーブする。
【0164】
試料1 レンズは、VDMAを差し引いた上記のレンズ調製物から製造し、抽出及び水和のみ(即ち、工程1〜2)に付して、パッケージング/オートクレーブする。
【0165】
試料2 レンズは、上記のレンズ調製物から製造し、抽出/コーティング処理工程1〜4に付して、パッケージング/オートクレーブする。
【0166】
試料3 レンズは、上記のレンズ調製物から製造し、抽出/コーティング処理工程1〜6に付して、パッケージング/オートクレーブする。
【0167】
試料4 レンズは、上記のレンズ調製物から製造し、抽出/コーティング処理工程1〜8に付して、パッケージング/オートクレーブする。
【0168】
試料5 レンズは、上記のレンズ調製物から製造し、抽出/コーティング処理工程1〜10に付して、パッケージング/オートクレーブする。
【0169】
試料6 レンズは、上記のレンズ調製物から製造し、抽出/コーティング処理工程1〜11に付して、パッケージング/オートクレーブする。
【0170】
試料7 レンズは、上記のレンズ調製物から製造し、抽出/コーティング処理工程1〜11に付して、0.1%CMC PBSパッケージング溶液にパッケージングして、オートクレーブする。
【0171】
試料8 レンズは、上記のレンズ調製物から製造し、工程5及び9を差し引いた(CMC曝露なし)、抽出/コーティング処理工程1〜11に付して、パッケージング/オートクレーブする。
【0172】
注記:明示しない限り、上記の全ての試料は、PBS(pH=7.4)でパッケージングした。
【0173】
レンズ特性
対照レンズの3種類の試料について、液滴接触角、視覚による湿潤性(質的)及び取扱い性(質的)を分析する。取扱い中に試料が互いにくっつく場合に、これらを「粘着性」と特徴づける。
【0174】
試料1〜6のレンズの3種類の試料の各々において、液滴接触角、視覚による湿潤性(質的)及び取扱い性(質的)をオートクレーブの前/後の両方で分析する。
【0175】
結果を表7に示す。
【表9】

【0176】
実施例11
レンズの調製
レンズ調製物を以下の組成を有するように調製する:実施例2で調製したCE−PDMSマクロマー(30.9%)、Tris−Am(25.3%)、DMA(17.5%)、DC1173(1.0%)、VDMA(1.3%)、MBA(0.2%)及びtert−アミルアルコール(23.8%)。コンタクトレンズは、実施例3に記載の手順に従って調製する。
【0177】
コーティング溶液の調製
CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、Mw700,000)及びKymene(polycup172、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂)のコーティング溶液は、適切な濃度のポリマーをDI水に添加し、10mMの適切な緩衝剤を添加し、1N NaOH又は1N HCl溶液を添加して最終pHに調整して調製される。pH=5のコーティング溶液を調製する場合は、酢酸を緩衝剤として使用し、pH=7の場合は、リン酸水素二ナトリウムを使用し、そして、pH=9の場合は、重炭酸ナトリウムを使用した。
【0178】
レンズのコーティング
工程1.MEK、324秒間
工程2.DI水、56秒間
工程3.1−プロパノール中の20wt%Lupasol SK(PEI溶液)、180秒間
工程4.DI水、112秒間
工程5.CMC水溶液、56秒間
工程6.DI水、56秒間
工程7.Kymene水溶液、56秒間
工程8.DI水、56秒間
工程9.CMC水溶液、56秒間
工程10.DI水、56秒間
工程11.Kymene水溶液、56秒間
【0179】
レンズ特性
結果を表8に示す。最初の二段は、コーティング水溶液のpHと使用するポリマー(Kymene及びCMC)の濃度を示している。例えば、試料71_53Bでは、工程5、7、9及び11のコーティング水溶液は、pH5で維持し、使用するポリマーの濃度は0.01wt%とした。結果は、コーティング条件がレンズコーティングの耐久性に影響することを明らかに実証している。
【表10】

【0180】
本発明の様々な実施態様を特定の用語、機器及び方法を用いて説明しているが、このような説明は、単に例示することが目的である。使用される語は、限定よりむしろ説明のための語である。当業者により、以下の特許請求の範囲で説明される本発明の精神及び範囲を逸脱することなく変更及び変形が行われてもよいことを理解されたい。さらに、好ましい実施態様を含む様々な実施態様の態様を、全体又は部分的に置き換えてもよく、あるいは、任意の方法で組み合わせて、そして/又は、一緒に用いることができることを理解すべきである。従って、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲は、本明細書に包含される好ましい形態の説明に限定すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性コーティングを表面に有するシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの製造方法であって、
(a)少なくとも1つのシリコーン含有ビニルモノマー又はマクロマーと、アズラクトン含有ビニルモノマー又はマクロマーとを含む重合性(又はレンズ形成)組成物を、成形型中で重合させて、これにより、コンタクトレンズのポリマーマトリクス上に共有結合したアズラクトン部分を有するシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを形成する工程(ここで、アズラクトン含有ビニルモノマー又はマクロマーは、重合性組成物中に、約0.5%〜約5.0重量%で存在する);
(b)コンタクトレンズを、ペンダント第一級又は第二級アミノ基を有するアンカー親水性ポリマーの溶液と、コンタクトレンズ上にプライムコーティングを形成するために十分な時間接触させる工程(ここで、プライムコーティングは、コンタクトレンズの表面又は表面近くの1つのアズラクトン部分とアンカー親水性ポリマーの1つのペンダント第一級又は第二級アミノ基間でそれぞれ形成される1つ以上の共有結合を介して、コンタクトレンズの表面に共有結合したアンカー親水性ポリマーの層を含む;
(c)プライムコーティングの上部にトップコーティングを適用して、プライムコーティングに対して表面の親水性及び/又は耐久性が増加した親水性コーティングを形成する工程(ここで、トップコーティングは、カルボン酸含有親水性ポリマーの少なくとも1つの層及び/又はアゼチジニウム含有ポリマーの少なくとも1つの層を含み、カルボン酸含有親水性ポリマーの層は、プライムコーティングを表面に有するコンタクトレンズをカルボン酸含有親水性ポリマーの溶液と接触させることにより形成され、アゼチジニウム含有ポリマーの層は、表面にプライムコーティング、及び場合によりカルボン酸含有親水性ポリマーの層を有するコンタクトレンズを、アゼチジニウム含有ポリマーの溶液と接触させることにより形成され、カルボン酸含有親水性ポリマーの層及び/又はアゼチジニウム含有ポリマーの層は、アンカー親水性ポリマーの層に化学的及び/又は物理的に結合する)
を含む、方法。
【請求項2】
アズラクトン含有ビニルモノマー又はマクロマーが、2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4−メチル−4−エチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−ブチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ジブチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−ドデシル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ジフェニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ペンタメチレン−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−テトラメチレン−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ジエチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4−メチル−4−ノニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−フェニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−ベンジル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ペンタメチレン−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−6−オン、及びその組み合わせを含むアズラクトン含有ビニルモノマーからなる群より選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アズラクトン含有ビニルモノマー又はマクロマーが、重合性組成物中に、約0.6%〜約2.5重量%の量で存在する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アンカー親水性ポリマーが、C−Cアミノアルキル(メタ)アクリルアミドのホモポリマー、C−Cアミノアルキル(メタ)アクリレートのホモポリマー、少なくとも1つの親水性ビニルモノマーを有するC−Cアミノアルキル(メタ)アクリルアミドのコポリマー、少なくとも1つの親水性ビニルモノマーを有するC−Cアミノアルキル(メタ)アクリレートのコポリマー、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン塩酸塩ホモポリマー、ポリアリルアミン塩酸塩コポリマー、ペンダント第一級及び/又は第二級アミノ基を有するポリビニルアルコール、及びその組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アンカー親水性ポリマーが、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン塩酸塩ホモポリマー、ポリアリルアミン塩酸塩コポリマー又はその混合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アンカー親水性ポリマーが、式I:
【化7】


[式中、Rは、水素、C−Cアルキル基又はシクロアルキル基であり;Rは、最大8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキレンであり;そして、Rは、式N(R’)X(式中、R’は、水素又はC−Cアルキルラジカルであり、Xは、HSO、F、Cl、Br、I、CHCOO、OH、BF、又はHPOからなる群より選択されるカウンターイオンである)で表される第一級又は第二級アミノ基である]
のユニットで表されるポリ(ビニルアルコール)の誘導体であり、且つ、ポリ(ビニルアルコール)中のヒドロキシル基数あたり、該ユニットを約0.5%〜約80%有するポリヒドロキシルポリマーである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
アンカー親水性ポリマーが、分子量約500,000〜5,000,000ダルトンを有する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
アンカー親水性ポリマーの溶液が、アンカー親水性ポリマーを、水と1つ以上の有機溶媒の混合物、有機溶媒又は1つ以上の有機溶媒の混合物に溶解させることにより調製される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
トップコーティングが、カルボン酸含有親水性ポリマーの少なくとも1つの層を含み、プライムコーティングを表面に有するコンタクトレンズを、カルボン酸含有親水性ポリマーの溶液に接触させることにより形成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
カルボン酸含有親水性ポリマーが、アルデヒド基をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
カルボン酸含有親水性ポリマーが、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸アルデヒド、直鎖ポリアクリル酸、分岐鎖ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、少なくとも1つの親水性ビニルモノマーを有する(メタ)アクリル酸のコポリマー、マレイン酸もしくはフマル酸コポリマー、又はその組み合わせである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
カルボン酸含有親水性ポリマーが、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸アルデヒド、又はその組み合わせである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
トップコーティングが、アゼチジニウム含有ポリマーの少なくとも1つの層を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
トップコーティングが、1つのカルボン酸含有親水性ポリマーの1層及びアゼチジニウム含有ポリマーの1層からなる少なくとも1つの二層を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
カルボン酸含有親水性ポリマー又はアゼチジニウム含有ポリマーの最終層を、レンズパッケージ中で、コンタクトレンズ上へ適用し、密封して、約115〜125℃の温度で約15分間〜約90分間オートクレーブする工程を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
核シリコーンハイドロゲル材料及び親水性コーティングを含み、核シリコーンハイドロゲル材料が、核シリコーンハイドロゲル材料を製造するためのレンズ形成材料に含有されるアズラクトン含有ビニルモノマー又はマクロマーから直接誘導されるアズラクトン部分を含み、親水性コーティングが、プライムコーティング及びプライムコーティングに共有結合するトップコーティングを含み、プライムコーティングが、第一級もしくは第二級基又はチオール基を有するアンカー親水性ポリマーの層であり、コンタクトレンズの表面又は表面近くの1つのアズラクトン部分とアンカー親水性ポリマーの1つの第一級もしくは第二級アミノ基又はチオール基との間でそれぞれ形成される共有結合を介して、核シリコーンハイドロゲル材料に直接共有結合しており、トップコーティングが、カルボン酸含有親水性ポリマーの少なくとも1つの層及び/又はアゼチジニウム含有ポリマーの少なくとも1つの層を含み、カルボン酸含有親水性ポリマーの層及び/又はアゼチジニウム含有ポリマーの層が、アンカー親水性ポリマーの層に化学的及び/又は物理的に結合しているシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズであって、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズが、少なくとも40barrerの酸素透過度、約100度以下の水接触角を特徴とする表面湿潤性及びデジタル摩擦試験に耐えることを特徴とする良好なコーティング耐久性を有する、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項17】
アンカー親水性ポリマーが、C−Cアミノアルキル(メタ)アクリルアミドのホモポリマー、C−Cアミノアルキル(メタ)アクリレートのホモポリマー、少なくとも1つの親水性ビニルモノマーを有するC−Cアミノアルキル(メタ)アクリルアミドのコポリマー、少なくとも1つの親水性ビニルモノマーを有するC−Cアミノアルキル(メタ)アクリレートのコポリマー、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン塩酸塩ホモポリマー、ポリアリルアミン塩酸塩コポリマー、ペンダント第一級及び/又は第二級アミノ基を有するポリビニルアルコール、及びその組み合わせからなる群より選択される、請求項16に記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
アンカー親水性ポリマーが、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン塩酸塩ホモポリマー、ポリアリルアミン塩酸塩コポリマー、又はその混合物である、請求項17に記載のコンタクトレンズ。
【請求項19】
アンカー親水性ポリマーが、式I:
【化8】


[式中、Rは、水素、C−Cアルキル基又はシクロアルキル基であり;Rは、最大8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキレンであり;そして、Rは、式N(R’)X(式中、R’は、水素又はC−Cアルキルラジカルであり、Xは、HSO、F、Cl、Br、I、CHCOO、OH、BF、又はHPOからなる群より選択されるカウンターイオンである)で表される第一級又は第二級アミノ基である]
のユニットで表されるポリ(ビニルアルコール)の誘導体であり、且つ、ポリ(ビニルアルコール)中のヒドロキシル基数あたり、該ユニットを約0.5%〜約80%有するポリヒドロキシルポリマーである、請求項17に記載のコンタクトレンズ。
【請求項20】
アンカー親水性ポリマーが、分子量約500,000〜5,000,000ダルトンを有する、請求項16に記載のコンタクトレンズ。
【請求項21】
トップコーティングが、カルボン酸含有親水性ポリマーの少なくとも1つの層を含み、プライムコーティングを表面に有するコンタクトレンズを、カルボン酸含有親水性ポリマーの溶液に接触させることにより形成される、請求項16〜20のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項22】
カルボン酸含有親水性ポリマーが、アルデヒド基をさらに含む、請求項21に記載のコンタクトレンズ。
【請求項23】
カルボン酸含有親水性ポリマーが、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸アルデヒド、直鎖ポリアクリル酸、分岐鎖ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、少なくとも1つの親水性ビニルモノマーを有する(メタ)アクリル酸のコポリマー、マレイン酸もしくはフマル酸コポリマー、又はその組み合わせである、請求項21に記載のコンタクトレンズ。
【請求項24】
カルボン酸含有親水性ポリマーが、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸アルデヒド、又はその組み合わせである、請求項21に記載のコンタクトレンズ。
【請求項25】
トップコーティングが、アゼチジニウム含有ポリマーの少なくとも1つの層をさらに含む、請求項21に記載のコンタクトレンズ。
【請求項26】
トップコーティングが、カルボン酸含有親水性ポリマーの1層及びアゼチジニウム含有ポリマーの1層からなる少なくとも1つの二層を含む、請求項25に記載のコンタクトレンズ。
【請求項27】
トップコーティングが、カルボン酸含有親水性ポリマー又はアゼチジニウム含有ポリマーの最も外側の最終層をさらに含み、最も外側の最終層が、カルボン酸含有親水性ポリマー又はアゼチジニウム含有ポリマーの溶液を含むレンズパッケージ中で形成され、密封して、約115℃〜125℃の温度で、約15分間〜約90分間オートクレーブされる、請求項21、25又は26に記載のコンタクトレンズ。

【公表番号】特表2013−513135(P2013−513135A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543176(P2012−543176)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/059022
【国際公開番号】WO2011/071791
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】