共結晶体およびそれを含む医薬組成物
本発明は、VX−950、ならびに4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノサリチル酸、フェニルアラニン、スレオニン、酒石酸、アジピン酸、スクシニックアセテート(succinic acetate)、プロリン、メチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、およびd−ビオチンからなる群から選択される共結晶形成体をそれぞれ含む、組成物および共結晶体に関する。また、該組成物および共結晶体の製造方法および使用も、本発明の範囲内である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本発明は、2007年2月27日出願の、米国特許出願第60/903,587号(その内容は、参照によりその全体を本明細書中に包含される)に優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
C型肝炎ウイルス(“HCV”)による感染は、切実なヒトの医学的問題である。HCVは、非A非B型肝炎のほとんどの症例の原因因子として認識されており、全世界で、概算で3%のヒト血清陽性率である[A. Alberti et al., “Natural History of Hepatitis C,” J. Hepatology, 31., (Suppl. 1), pp. 17−24 (1999)]。米国だけでも400万名近くが感染している可能性がある[M.J. Alter et al., “The Epidemiology of Viral Hepatitis in the United States”, Gastroenterol. Clin. North Am., 23, pp. 437−455 (1994); M. J. Alter “Hepatitis C Virus Infection in the United States,” J. Hepatology, 31., (Suppl. 1), pp. 88−91 (1999)]。
【0003】
HCVに最初に暴露されると、感染個体の約20%のみが急性臨床的肝炎を発症し、その他は、自然に感染を解消すると考えられる。しかしながら、症例の約70%において、該ウイルスは、数十年にわたって続く慢性感染を確立する[S. Iwarson, “The Natural Course of Chronic Hepatitis,” FEMS Microbiology Reviews, 14, pp. 201−204 (1994); D. Lavanchy, “Global Surveillance and Control of Hepatitis C,” J. Viral Hepatitis, 6, pp. 35−47 (1999)]。これは、通常、肝炎の再発および漸進的悪化をもたらし、しばしば、肝硬変および肝細胞癌のようなより重度の疾患状態に至る[M.C. Kew, “Hepatitis C and Hepatocellular Carcinoma”, FEMS Microbiology Reviews, 14, pp. 211−220 (1994); I. Saito et al., “Hepatitis C Virus Infection is Associated with the Development of Hepatocellular Carcinoma,” Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, pp. 6547−6549 (1990)]。残念なことに、慢性HCVの進行を遅らせるのに広く有効な処置は存在しない。
【0004】
HCVゲノムは、3010−3033アミノ酸のポリタンパク質をコードする[Q.L. Choo, et al., “Genetic Organization and Diversity of the Hepatitis C Virus.” Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88, pp. 2451−2455 (1991); N. Kato et al., “Molecular Cloning of the Human Hepatitis C Virus Genome From Japanese Patiants with Non−A, Non−B Hepatitis,” Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, pp. 9524−9528 (1990); A. Takamizawa et al., “Structure and Organization of the Hepatitis C Virus Genome Isolated From Human Carriers,” J. Virol., 65, pp. 1105−1113 (1991)]。HCV非構造(NS)タンパク質は、ウイルス複製に必須の触媒機構を提供すると考えられている。NSタンパク質は、ポリタンパク質のタンパク質分解的切断によって得られる[R. Bartenschlager et al., “Nonstructural Protein 3 of the Hepatitis C Virus Encodes a Serine−Type Proteinase Required for Cleavage at the NS3/4 and NS4/5 Junctions,” J. Virol., 67, pp. 3835−3844 (1993); A. Grakoui et al., “Characterization of the Hepatitis C Virus −Encoded Serine Proteinase: Determination of Proteinase−Dependent Polyprotein Cleavage Sites,” J. Virol., 67, pp. 2832−2843 (1993); A. Grakoui et al., “Expression and Identification of Hepatitis C Virus Polyprotein Cleavage Products,” J. Virol., 67, pp. 1385−1395 (1993); L. Tomei et al., “NS3 is a serine protease required for processing of Hepatitis C Virus polyprotein”, J. Virol., 67, pp. 4017−4026 (1993)]。
【0005】
HCV NSタンパク質3(NS3)は、ウイルス複製および感染性に必須である[Kolykhalov, J. Virology, Volume 74, pp. 2046−2051 2000 “Mutations at the HCV NS3 Serine Protease Catalytic Triad abolish infectivity of HCV RNA in Chimpanzees]。黄熱病ウイルスNS3プロテアーゼにおける変異は、ウイルス感染性を減少することが知られている[Chambers, T.J. et al., “Evidence that the N−terminal Domain of Nonstructural Protein NS3 From yellow Fever Virus is a Serine Protease” Responsible for Site−Specific Cleavages in the Viral Polyprotein”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, pp. 8898−8902 (1990)]。NS3の最初の181アミノ酸(ウイルスポリタンパク質の残基1027−1207)は、HCVポリタンパク質の4つ全ての下流部位をプロセシングするNS3のセリンプロテアーゼドメインを含むことが示されている[C. Lin et al., “Hepatitis C Virus NS3 Serine Proteinase: Trans−Cleavage Requirements and Processing Kinetics”, J. Virol., 68, pp. 8147−8157 (1994)]。
【0006】
HCV NS3セリンプロテアーゼおよびそれと関係する補因子NS4Aは、全てのウイルス酵素プロセシングを補助し、故に、ウイルス複製に必須であると見なされる。このプロセシングは、ウイルス酵素プロセシングにも関与する、ヒト免疫不全ウイルスアスパルチルプロテアーゼにより行われるのと同様のようである。ウイルスのタンパク質プロセシングを阻害するHIVプロテアーゼ阻害剤は、ヒトにおける強力な抗ウイルス剤であり、ウイルス生活環のこの段階を中断することは、結果として治療的有効剤であることを示す。結果として、HCV NS3セリンプロテアーゼはまた、創薬の魅力的な標的でもある。
【0007】
最近まで、HCV疾患の確立された治療は、インターフェロン処置のみであった。しかしながら、インターフェロンは、重大な副作用を有し[M. A. Wlaker et al., “Hepatitis C Virus: An Overview of Current Approaches and Progress,” DDT, 4, pp. 518−29 (1999);D. Moradpour et al., “Current and Evolving Therapies for Hepatitis C,” Eur. J. Gastroenterol. Hepatol., 11, pp. 1199−1202 (1999);H. L. A. Janssen et al. “Suicide Associated with Alfa−Interferon Therapy for Chronic Viral Hepatitis,” J. Hepatol., 21, pp. 241−243 (1994);P.F. Renault et al., “Side Effects of Alpha Interferon,” Seminars in Liver Disease, 9, pp. 273−277. (1989)]、症例のごく一部(〜25%)だけで長期寛解をもたらす[O. Weiland, “Interferon Therapy in Chronic Hepatitis C Virus Infection”, FEMS Microbiol. Rev., 14, pp. 279−288 (1994)]。PEG化型インターフェロン(PEG−イントロン(登録商標)およびPEGASYS(登録商標))ならびにリバビリンとインターフェロン(REBETROL(登録商標))の併用療法の最近の導入は、寛解率のごく限られた改善および副作用の一部分のみの減少という結果となっている。さらに、有効な抗HCVワクチンの見込みは、不明確なままである。
【0008】
従って、より有効な抗HCV治療が必要である。そのような阻害剤は、プロテアーゼ阻害剤、特にセリンプロテアーゼ阻害剤、より具体的にはHCV NS3セリンプロテアーゼ阻害剤として治療可能性を有し得る。特に、そのような化合物は、抗ウイルス剤、特に抗HCV剤として有用であり得る。
【0009】
下記に示す構造を有するHCV阻害剤であるVX−950は、そのような必要とされる化合物である。VX−950は、PCT公開番号WO02/18369に記載され、それは、その全内容を参照により本明細書に包含させる。
【化1】
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
概して、本発明は、HCV阻害剤であるVX−950ならびに特定の共結晶形成体を含む組成物に関する。共結晶形成体は、共結晶体、包接化合物、または他の結晶性固体形態の形成を介して固体薬剤の結晶形を変える、薬理学的に不活性な賦形剤である。それは、本明細書で用いる“共形態形成体(co−former)”の意味の範囲内である。ある特定の条件下で、VX−950ならびに共結晶形成体は一体となって、結晶組成物、すなわち共結晶体を形成し得る。その遊離形と比較すると、特定のVX−950共結晶体は、アモルファス(amorphous)VX−950分散体よりも改善された溶解性、高水溶性および高い固体状態の物理的安定性を有するために有利である。該特定のVX−950共結晶体は、減少した質量の投与形態を提供し、故に、VX−950共結晶体がアモルファス形態と比較してより高いバルク密度も示すため、丸剤の負荷がより少ない。さらに、VX−950共結晶体は、スプレー乾燥、溶融押出、凍結乾燥または沈殿を必要とするアモルファス形態と比較して製造上の利点を提供する。
【0011】
一局面において、本発明により供される組成物は、VX−950ならびに共結晶形成体としての化合物をそれぞれ含む。一態様において、VX−950ならびに共結晶形成体(すなわち、4−ヒドロキシ安息香酸)は一体となって、組成物中で結晶形態である(すなわち、共結晶体を形成している)。ある態様において、VX−950と4−ヒドロキシ安息香酸のモル比は、約5:1ないし約1:5の範囲内(例えば、約1:1)である。ある態様において、該共結晶体は、それぞれ約+/−0.3° 2θの標準偏差で、約17.61、18.07、18.87、19.68、および20.75の4つのX線粉末回折ピークのうち少なくとも2つを有する。ある態様において、該共結晶体は、約+/−5℃の標準偏差で、そのDSCサーモグラムは約191.19℃にてピークを有する。他の態様において、該共結晶体は、それぞれ約+/−0.3° 2θの標準偏差で、約17.6、18.0、18.9、19.7、および20.8の4つのX線粉末回折ピークのうち少なくとも2つを有する。さらに他の態様において、該共結晶体は、約+/−5℃の標準偏差で、約191℃でそのDSCサーモグラムのピークを有する。
【0012】
別の局面において、本発明は、VX−950;4−アミノサリチル酸および4−ヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される共結晶形成体;ならびに、アセトニトリル、酢酸エチル、エタノール、アセトン、ジクロロメタン、およびメチルtert−ブチルエーテルからなる群から選択される溶媒、を含む組成物を提供する。ある態様において、VX−950、共結晶形成体、および溶媒は一体となって、結晶形態であり得る(すなわち、共結晶体を形成する)。溶媒の存在により、該共結晶体は溶媒和物であり得る。いくつかの他の態様において、該溶媒はアセトニトリルである。いくつかの他の態様において、該共結晶形成体は、4−アミノサリチル酸である。ある態様において、VX−950と4−アミノサリチル酸のモル比は、約5:1ないし約1:5の範囲内(例えば、約1:1)である。ある態様において、VX−950とアセトニトリルのモル比は、約1:0.05ないし約1:1の範囲内(例えば、約1:0.34)である。ある態様において、該共結晶体は、それぞれ約+/−0.3° 2θの標準偏差で、約7.711、8.631、9.723、および9.959° 2θでの4つのX線粉末回折ピークのうち少なくとも2つを有する。ある態様において、該共結晶体は、約+/−5℃の標準偏差で、約184.71℃でそのDSCサーモグラムのDSCピークを有する。他の態様において、該共結晶体は、それぞれ約+/−0.3° 2θの標準偏差で、約7.7、8.6、9.7、および10.0° 2θでの4つのX線粉末回折ピークのうち少なくとも2つを有する。さらに他の態様において、該共結晶体は、約+/−5℃の標準偏差で、約185℃でのそのDSCサーモグラムのDSCピークを有する。
【0013】
さらにいくつかのさらなる態様において、該共結晶形成体は、4−ヒドロキシ安息香酸である。いくつかのさらなる態様において、VX−950と4−ヒドロキシ安息香酸のモル比は、約5:1ないし約1:5の範囲内(例えば、約1:1)である。いくつかのさらなる態様において、溶媒はアセトニトリルである。そしてさらに、いくつかのさらなる態様において、VX−950とアセトニトリルのモル比は、約1:0.05ないし約1:0.5の範囲内(例えば、約1:0.14)である。いくつかのさらなる態様において、該共結晶体は、それぞれ約+/−0.3° 2θの標準偏差で、約7.684、8.599、9.605、9.938° 2θでの4つのX線粉末回折ピークのうち少なくとも2つを有する。ある態様において、該共結晶体は、約+/−5℃の標準偏差で、約190.78℃でそのDSCサーモグラムのDSCピークを有する。いくつかのさらなる態様において、該共結晶体は、それぞれ約+/−0.3° 2θの標準偏差で、約7.7、8.6、9.6、9.9° 2θでの4つのX線粉末回折ピークのうち少なくとも2つを有する。ある態様において、該共結晶体は、約+/−5℃の標準偏差で、約191℃でそのDSCサーモグラムのDSCピークを有する。
【0014】
別の局面において、本発明は、VX−950、ならびにフェニルアラニン、スレオニン、酒石酸およびアジピン酸からなる群から選択される共結晶形成体を含む組成物を提供する。ある態様において、VX−950および該共結晶形成体は一体となって、結晶形態をとる(すなわち、共結晶体を形成する)。ある態様において、VX−950と該共結晶形成体のモル比は、約5:1ないし約1:5の範囲内(例えば、約1:1)である。
【0015】
別の局面において、本発明は、VX−950、ならびにスクシニックアセテート(succinic acetate)およびプロリンからなる群から選択される共形態形成体を含む組成物を提供する。ある態様において、VX−950および該共形態形成体は一体となって、(例えば、結晶形態をとり、故に共結晶体を形成することにより)共形態(co-form)を形成する。本明細書で用いる用語“共形態”は、一定の化学量論割合で医薬有効成分および1個以上の不活性成分(本明細書で用いる“共形態形成体”のような)を含む単相の結晶物質を意味する。用語“共形態”は、本明細書で用いる“共結晶体”を包含する。ある態様において、VX−950と該共形態形成体のモル比は、約5:1ないし約1:5の範囲内(例えば、約1:1)である。
【0016】
別の局面において、本発明は、VX−950ならびにメチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、d−ビオチンおよび酒石酸からなる群から選択される共形態形成体を含む組成物を提供する。ある態様において、VX−950および該共形態形成体は一体となって、(例えば、結晶形態をとり、故に共結晶体を形成することにより)共形態を形成する。ある態様において、VX−950と該共形態形成体のモル比は、約5:1ないし約1:40の範囲内である。
【0017】
これらの組成物は、とりわけ、HCVにより関連付けられるか、またはHCVと関係する疾患の処置において適用され得る。そのため、VX−950および上記の共結晶形成体を、適当なモル比でそれぞれ含む医薬組成物もまた、本発明の範囲内である。該医薬組成物は、所望により、溶媒和物を形成するために溶媒(例えば、アセトニトリル、酢酸エチル、エタノール、またはアセトン)を含んでいてよい。さらに、該医薬組成物は、希釈剤、溶媒、賦形剤、担体、または可溶化剤をさらに含み得る。
【0018】
さらに、上記の共結晶体の製造方法もまた、本発明の範囲内である。該方法は、(a)VX−950を提供する工程、(b)4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノサリチル酸(所望により、溶媒和物を形成するために、溶媒、例えばアセトニトリル中)、フェニルアラニン、スレオニン、酒石酸、アジピン酸、スクシニックアセテート、プロリン、メチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、およびd−ビオチンからなる群から選択される共結晶形成体を提供する工程、(c)固相中で共結晶体を形成するために、結晶化条件下で、溶液中、VX−950と該共結晶形成体を粉砕するか、加熱するか、共に昇華させるか、共に融解するか、または接触させる工程、および(d)所望により、工程(c)により形成した共結晶体を単離する工程、を含み得る。
【0019】
さらに、上記の共結晶体の興味のある化学的または物理的特性を調節する方法は、本発明の範囲内である。該方法は、(a)VX−950、ならびに4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノサリチル酸、フェニルアラニン、スレオニン、酒石酸、アジピン酸、スクシニックアセテート、プロリン、メチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、およびd−ビオチンからなる群から選択される共結晶形成体についての興味のある化学的または物理的特性を測定する工程、(b)興味のある化学的または物理的特性の望ましい調節をもたらし得る、VX−950および共結晶形成体のモル分率を決定する工程、および(c)工程(b)で決定したモル分率で該共結晶体を製造する工程、を含み得る。
【0020】
本発明の組成物および共結晶体は、HCVにより関連付けられるか、またはHCVと関係する疾患の処置のために使用され得る。故に、治療的有効量の本発明の共結晶体または本発明の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、かかる疾患の処置方法もまた、本発明の範囲内である。
【0021】
本発明の組成物および共結晶体はまた、VX−950と同じか、または異なり得る有効成分、ならびに4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノサリチル酸、フェニルアラニン、スレオニン、酒石酸、アジピン酸、スクシニックアセテート、プロリン、メチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、およびd−ビオチンからなる群と同じか、または異なり得る共結晶形成体を含む、さらなる共結晶体の製造のための種晶として用いられ得る。例えば、少量の本発明の共結晶体は、所望の有効成分および該共結晶形成体を含む溶液中に入れられ、該混合物を、さらなる共結晶体が存在する共結晶体によって形成され、成長し得るように静置する。
【0022】
さらに、本発明の組成物および共結晶体は、研究ツールとして用いられ得る。例えば、それらは、異なる形態の、および異なる条件下での、VX−950の薬理学的特性(例えば、バイオアベイラビリティ、代謝、および効果)を研究するため、または良好な送達および吸収のための種々のVX−950製剤を開発するために用いられ得る。
【0023】
発明の詳細な説明
共結晶体の製造方法および特性化方法は、文献に詳しく記載される。例えば、Trask et al., Chem. Commun., 2004, 890−891;および、O. Almarsson and M.J. Zaworotko, Chem. Commun., 2004, 1889−1896を参照のこと。これらの方法は一般的に、本発明の共結晶体を製造および特性化するためにも適する。
【0024】
さらに、以下の特定の方法が、共結晶体、特に本発明の共結晶体を製造するのに適する共結晶形成体を同定するために用いられ得る。
【0025】
VX−950のための可能性のある共結晶形成体の最初の同定またはスクリーニングは、96ウェルプレート中、数ミリグラムスケールで行われ得る。XRPD結果と公知の結晶性VX−950の回折パターンとの目視比較は、新規の結晶形態および/または結晶中への共結晶形成体の取り込みを示し得る変化した結晶格子寸法についてのスクリーニングに用いられ得る。VX−950を含む共結晶体を形成するための可能性のある候補物質として、シュウ酸、4−アミノサリチル酸、およびサリチル酸などが、この最初のスクリーニングにより同定されている。
【0026】
最初のスクリーニングの結果は、VX−950のためのさらなる共結晶形成体を同定するためにモデル研究に用いられ得る。例えば、より良好な物理的および化学的特性のために、4−アミノサリチル酸を、分子モデリングによりVX−950のための他の可能性のある共結晶形成体の同定におけるリード分子として用いることができる。具体的には、4−ASAのモデルは、Quantaソフトウェアパッケージ(Accelrys Inc., San Diego, CA)を用いて確立され、単結晶X線回折により得られるVX−950の単一分子構造と複合体を形成し得る。4−ASA分子は、2個の分子間に最大数の水素結合を形成するためにVX−950の周りの異なる位置に人為的に配置され得る。VX−950分子が固定されるとき、4−ASA分子の配位置は、エネルギー的に最小化される。Quantaにおいて利用され得る承認された基本Newton−Raphson法は、初期設定および距離依存的絶縁体(distance−dependent dielectric)を用いてエネルギー的に最小化するために用いられ得る。AutoNomソフトウェア(MDL Information Systems, GmbH)は、構造のデータベースを作成するために、FDAのEAFUS(Everything Added to Food, US)およびGRAS(Generally Regarded As Safe)リストの化合物名をSMILES形式の2D構造に変換するために用いられ得る。その後、該データベースは、4−ASAで明らかにされたファーマコフォアに合う新規の共結晶形成体の探索に用いられ得る。許容されるファーマコフォアは、VX−950および4−ASAのそれと同様に局所エネルギーの最小値を有する。
【0027】
DSCはまた、共結晶形成体をスクリーニングするためにも用いられ得る。DSCによるスクリーニングにおいて、DSC中に固相間相互作用(すなわち、共晶融液の形成)の証拠が示されたVX−950と共結晶形成体の物理的混合物は、恐らく共結晶体を形成する可能性が高い。VX−950と共結晶形成体との相互作用を検出するために、成分を1:1モル比で混合し、室温から、例えば10℃の上昇で300℃までのDSC温度勾配(temperature ramp)法を行い得る。純粋成分の吸熱とは温度が異なる新規の熱事象(すなわち、吸熱)を示す混合物が選択される。該新規の温度遷移が、元の成分のうち1個の温度遷移に加えて観察されるとき、VX−950と共結晶形成体とのモル比は、該新規の温度遷移のみを得るために調整され得る。観察された遷移温度は、二元混合物の相図を作製するために組成物の関数としてプロットされ得る。故に、DSCにおける新規の温度遷移を生じるVX−950と共結晶形成体の組合せはスケールアップされて、上記の通りより大量に(例えば、数グラム)製造され得る。
【0028】
新規の温度遷移を有するVX−950および共結晶形成体の混合物は、例えば、ボールミル粉砕法、溶媒蒸発法、溶媒の存在下または非存在下での融解法、スラリー変換、混合、昇華、またはモデリングを用いることにより、大量に(すなわち、スケールアップして)製造され得る。これらの方法のいくつかを以下に詳細に記載する。こうして製造される生成物は、XRPD、TGAおよびDSCのような公知の方法により分析または特徴付けられ得て、そして水性媒体中のそれらの溶解性およびそれらの安定性はまた、当技術分野で公知の方法により測定され得る。
【0029】
ボールミル粉砕法:等モル量のVX−950および共結晶形成体を、適当な溶媒と混合する。次いで、該混合物を、ボールミル装置、例えば、Retsch MM200(GlenMills Inc., Clifton, NJ)を用いて、15Hzの周波数で3時間、粉砕する。次いで、該混合物を、該ミル装置の焼結コランダム製の区画に入れる。粉砕後、該物質をねじ口シンチレーションバイアル(蓋を閉めていない)に入れ、室温にて、真空下で乾燥させる。XRPDおよびDSC分析を、得られる混合物を特徴付けるために行い得る。
【0030】
反応ブロック中での融解法:等モル量のVX−950および共結晶形成体を、溶媒の存在下または非存在下にて混合する。次いで、該混合物を、反応ブロック、例えば、Radleys Discovery Technologies (Essex, UK)のModel RR98072中に入れ、蓋を閉めて、そして新しい温度遷移のDSCにより同定された温度まで加熱する。次いで、該混合物を、遷移温度でしばらく維持し、その後、該反応ブロックを開き、得られる混合物を環境条件まで冷却する。
【0031】
溶媒蒸発:VX−950および可能性のある共結晶形成体を、個別に、揮発性溶媒(例えば、ジクロロメタンまたはメチル tert−ブチルエーテル)または溶媒混合物(例えば、50:50のトルエン:アセトニトリル)中に溶解する。溶解は、透明溶液が得られるまで撹拌および超音波処理することにより補助され得る。次いで、該VX−950溶液を、ねじ口シンチレーションバイアル中、所望のモル比で共結晶形成体溶液と混合する。該バイアルを、典型的には数日間、蓋をせずに減圧下に置き、溶媒を蒸発させて乾燥させる。固体(結晶)物質が得られ、分析される。
【0032】
上記の通り、本発明の共結晶体は、固体または結晶物質を特徴付けるために、当技術分野で公知の方法により分析され得る。特性化方法の例は、熱重量分析(TGA)、示差走査熱量測定(DSC)、X線粉末回折(XRPD)、溶解度分析、動的蒸気吸着、赤外線排ガス分析、および懸濁液安定化を含む。TGAは、共結晶体サンプル中に残る溶媒の存在を調べるため、および各共結晶体サンプルの分解が起こる温度を同定するために用いることができる。DSCは、温度の関数として共結晶体サンプルにおいて起こる熱転移を探索するため、および各共結晶体サンプルの融点を決定するために用いることができる。XRPDは、共結晶体の構造特性化のために用いることができる。溶解度分析は、各共結晶体サンプルの物理的状態における変化を示すために行われ得る。そして、懸濁液安定性分析を、溶媒中の共結晶体サンプルの化学的安定性を決定するために用いることができる。かかる方法のいくつかが、詳細に記載されている。
【0033】
X線粉末回折(XRPD):XRPDは、物質の元々のパターンを記録し、該パターンの経時変化を観測することにより、その物理的形態を特徴付けるために用いられ得る。XRPDパターンを、密封チューブ源およびHi−Star 領域検出器を備えるBruker D8 Discover 回折計(Bruker AXS, Madison, WI, USA)を、室温にて、反射モードで用いることにより得ることができる。銅標的X線チューブ(Siemens)を、40kVおよび35mAで操作することができる。Brukerにより提供されるグラファイトモノクロメータおよび0.5mmコリメーターを、平行な単色ビーム(CuKa、λ=1.5418Å)を製造するために用い得る。サンプルと検出器の間の距離は、約30cmであり得る。該サンプルを、Si zero−background 薄板(The Gem Dugout, State College, PA)上に置き、その後、それをXYZ板上の中央に置いてよい。データを、Windows NT, version 4.1.16 用のGADDSソフトウェア(Bruker AXS, Madison, WI, USA)を用いて得ることができる。2個のフレームを、2つの異なる2θ角度:8°および26° 2θで、フレーム当たり120秒の露光時間で記録し得る。該サンプルは、露光中、XおよびY方向の両方に1mmの振幅で振動する。その後、データを0.02o 2θの刻み幅の3oないし41o 2θの範囲で統合し、1つの連続したパターンにまとめ得る。Corundum plate (NIST standard 1976)を装置の調整に用い得る。
【0034】
示差走査熱量測定(DSC):DSCは、温度の関数としてサンプルにおいて生じる温度遷移を検出し、結晶物質の融点を決定するために用いられ得る。それを、例えば、インジウムで較正したMDSC Q100示差走査熱量計(TA Instruments, New Castle, DE)を用いて行う。サンプルを、サンプルサイズが、例えば約2mgで、1つのピンホールで圧着するアルミニウムパン中に調製することができる。各泳動を、最初に25℃に平衡化し、次いで10℃/分の勾配で300℃まで平衡化する。VX−950は融解により分解し、分解の開始は、約240℃である。データを、Thermal Advantage Q SeriesTMソフトウェアにより集め、Universal Analysisソフトウェア(TA Instruments, New Castle, DE)により分析することができる。
【0035】
熱重量分析(TGA):TGAは、サンプル中の残余溶媒の存在を調べるため、およびサンプルの分解が起こる温度を同定するために用いられ得る。例えば、モデルQ500 Thermogravimetric Analyzer(TA Instruments, New Castle, DE)を、TGA測定に用いることができる。サンプルを約3−8mgの範囲で計量し、例えば300℃の最終温度まで約10℃/分の速度で加熱する。データを、例えばThermal Advantage Q SeriesTMソフトウェアにより集め、Universal Analysisソフトウェア(TA Instruments, New Castle, DE)により分析することができる。
【0036】
フーリエ変換赤外(FT−IR)分光分析:FT−IRは、異なるモル比でのVX−950と共結晶形成体の混合物中の水素結合を調べるために用いられ得る。赤外透過スペクトルを、例えば、4000ないし625cm−1のNexus 670分光計(Thermo Electron Corp.; Madison, WI)を用いて、KBrペレットから入手可能である。
【0037】
溶解度測定:溶解度は、VX−950等価物と表され得る。それは、物質の物理的状態の変化を考慮し、VX−950溶解度を増大させる目的のために進展を観測するために測定され得る。具体的には、該物質のアリコートを10mg/mLの溶解度を標的として水性媒体中に入れ得る。設定時間点において、上清のアリコートを回収し、0.45ミクロンフィルター(例えば、Millex; Millipore, Billerica, MA)を通してろ過し、HPLC(例えば、Agilent 1100; Palo Alto, CA)を用いて分析する。該サンプルを、270nmの設定、およびXTerra(登録商標)フェニルカラム150mm×4.6mm、3.5μm粒子サイズ(P/N 186001144)(Waters, Milford, MA, USA)上、1mL/分の流速の設定の検出器でアイソクラクチック(isocratically)に流す。移動層は、リン酸カリウム緩衝液(10mM、pH=7.0):メタノールを60:40(v/v)比で含む。VX−950の濃度を、既知濃度の標準を用いて作成した検量曲線を用いてクロマトグラフィーピーク面積を比較することにより決定することができる。
【0038】
ホットステージ顕微鏡:顕微鏡イメージを、例えば偏光フィルム、SLMPlan 50x infinity corrected objective(像までの距離が無限遠に設計された対物レンズ)、C−5050デジタルカメラ、および可変温度コントローラーを含むInstecのホットステージを備えるOlympus BX51コンフォーカル顕微鏡で得ることができる。実験方法は、サンプルが数分間平衡化される、異なる温度段階間の直線的加熱勾配を含む。デジタル画像は、生じた如何なる遷移をも得るために該勾配中、手動で収集される。
【0039】
有効量の本発明の共結晶体または組成物(それぞれ、VX−950ならびに共結晶形成体(例えば、4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノサリチル酸(アセトニトリルを含む)、フェニルアラニン、スレオニン、アジピン酸、スクシニックアセテート、プロリン、メチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、d−ビオチン、または酒石酸)を含む。)を、HCVが原因であるかまたはHCVと関係する疾患を処置するために用い得る。有効量は、処置する対象、例えば患者に、治療的効果を与えるのに必要な量である。有効量のVX−950および該共結晶形成体の共結晶体は、約0.1mg/kgないし約150mg/kg(例えば、約1mg/kgないし約60mg/kg)である。有効用量はまた、当業者に理解される通り、投与経路、用いる賦形剤、ならびに他の治療剤および/または治療の使用を含む他の治療的処置との併用の可能性によって変わり得る。
【0040】
本発明の共結晶体または医薬組成物は、化合物VX−950の送達を可能にする何らかの方法、例えば経口、静脈内または非経腸投与により、それを必要とする対象(例えば、細胞、組織、または患者(動物またはヒトを含む))に投与され得る。例えば、それらを、丸剤、錠剤、カプセル、エアロゾル、坐剤、摂取もしくは注入のためまたは点眼もしくは点耳のための液体製剤、栄養補助食品、ならびに局所用製剤により投与可能である。
【0041】
医薬組成物は、水、リンゲル溶液、等張生理食塩水、5%グルコース、および等張塩化ナトリウム溶液のような、希釈剤、溶媒、賦形剤および担体を含み得る。他の態様において、医薬組成物は、シクロデキストリンのような可溶化剤をさらに含み得る。別の態様において、医薬組成物は、シクロデキストリンのような可溶化剤をさらに含み得る。適当な希釈剤、溶媒、賦形剤、担体、および可溶化剤のさらなる例は、例えば,U.S. Pharmacopeia 23/National Formulary 18, Rockville, MD, U.S. Pharmacopeia Convention, Inc., (1995); Ansel HC, Popovich NG, Allen Jr LV. Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Baltimore MD, Williams &Wilkins, (1995); Gennaro AR., Remingtons: The Science and Practice of Pharmacy, Easton PA, Mack Publishing Co., (1995); Wade A, Weller PJ. Handbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd Ed, Washington DC, American Pharmaceutical Association, (1994); Baner GS, Rhodes CT. Modern Pharmaceutics, 3rd Ed., New York, Marcel Dekker, Inc., (1995); Ranade VV, Hollinger MA. Drug Delivery Systems. Boca Raton, CRC Press, (1996)に見出され得る。
【0042】
医薬組成物はまた、等張生理食塩水、5%グルコースまたは他の公知の薬学的に許容される賦形剤(複数可)中、共結晶体の水溶液を含み得る。シクロデキストリンのような可溶化剤、または当業者に公知の他の可溶化剤を、治療用化合物VX−950の送達のための薬学的賦形剤として利用することができる。投与経路に関して、共結晶体または医薬組成物を、経口、経鼻、経皮、皮内、膣内、耳内、眼内、口腔内、直腸内、経粘膜、または吸入により、または静脈内投与により投与できる。組成物を、バルーンカテーテルにより静脈内に送達することができる。組成物を、動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長動物、ウマ、イヌ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ハムスター、スナネズミ(gerbil)、フェレット、トカゲ、は虫類または鳥類のような哺乳動物)に投与することができる。
【0043】
本発明の共結晶体または医薬組成物はまた、移植可能デバイスを用いるような移植(例えば、外科的移植)により送達することができる。移植可能デバイスの例には、ステント、送達ポンプ、脈管フィルター、および移植可能な放出制御組成物が含まれるが、これらに限定されない。何れかの移植可能デバイスは、本発明の共結晶体または医薬組成物中の有効成分として化合物VX−950を送達するために用いることができる。ただし、1)該デバイス、化合物VX−950および該化合物を含む何らかの医薬組成物が生体適合性であること、および2)該デバイスが、有効量の化合物を送達または放出し、処置した患者に治療的効果を与え得ること、を条件とする。
【0044】
ステント、送達ポンプ(例えば、浸透圧ミニポンプ)、および他の移植可能デバイスによる治療剤の送達は、当技術分野で知られている。例えば、“Recent Developments in Coated Stents” by Hofma et al., published in Current Interventional Cardiology Reports, 2001, 3: 28−36を参照のこと。その全内容、そこに引用される文献は、本明細書中に包含させる。移植可能デバイス、例えばステントの他の記載は、米国特許第6,569,195号および同第6,322,847号、ならびにPCT国際公開WO04/0044405、WO04/0018228、WO03/0229390、WO03/0228346、WO03/0225450、WO03/0216699およびWO03/0204168に見出すことができ、それぞれの全内容(ならびに、そこに引用される他の文献)を本明細書中に包含させる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体の形成の経過を決定するために用いられる代表的なHPLCクロマトグラフを示す。
【図2】図2は、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体の1H−NMRスペクトルを示す。
【図3】図3は、アセトニトリル溶媒和物としての、VX−950および4−アミノサリチル酸の共結晶体のXRPDを示す。
【図4】図4は、アセトニトリル溶媒和物としての、VX−950および4−アミノサリチル酸の共結晶体のDSCスペクトルを示す。
【図5】図5は、アセトニトリル溶媒和物としての、VX−950および4−アミノサリチル酸の共結晶体のTGAスペクトルを示す。
【図6】図6は、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体のTGAスペクトルを示す。
【図7】図7は、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体のDSCスペクトルを示す。
【図8】図8は、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体のXRDパターンを示す。
【図9】図9は、アセトニトリル溶媒和物としての、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体のXRDパターンを示す
【図10】図10は、アセトニトリル溶媒和物としての、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体のDSCスペクトルを示す。
【図11】図11は、アセトニトリル溶媒和物としての、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体のTGAスペクトルを示す。
【図12】図12は、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体のFTIRスペクトルを示す。
【実施例】
【0046】
以下の記載は、本発明の共結晶体の製造方法および特性化方法の例であり、それは説明のみを意味し、いかなる場合も限定するものではない。
【0047】
実施例1.ボールミル法による製造
VX−950および等モル量の共結晶形成体(例えば、4−ヒドロキシ安息香酸)を、溶媒(例えば、メチルエチルケトンまたは酢酸エチル)と混合し得る。次いで、該成分をWig−L−Bug装置、例えば、Retsch MM200(GlenMills Inc, Clifton, NJ)を周波数15Hzで用いて10分間ミル粉砕し得る。ミル処理後、バッチを、例えば真空オーブン中75℃にて2時間乾燥させ、本発明の共結晶体を得る。
【0048】
実施例2.融解法による製造
VX−950および等モル量の共結晶形成体(例えば、4−ヒドロキシ安息香酸)を、溶媒の有無にて、例えば5分間のボルテックスにより混合し得る。次いで、該混合物を蓋を閉めた反応ブロック(例えば、Radley Discovery TechnologiesからのRR 98072)中に入れ、吸熱反応のため加熱した。混合物を吸熱温度で30分間放置し、その後、得られた混合物を蓋を開けて周囲条件下で冷却し、溶媒を用いたとき、それを除去して、本発明の共結晶体を得る。
【0049】
実施例3.溶媒蒸発法による製造
4−ヒドロキシ安息香酸:160mgのVX−950および80mgの4−ヒドロキシ安息香酸(Sigma Chemicals Co., St. Louis, MO, USA)を、50mLの酢酸エチル中、両方とも溶解し、透明溶液が得られるまで加熱した。該溶液を口の開いたビーカー中に入れ、溶媒を、室温にて約12時間、減圧下で蒸発させた。結晶物質がビーカー内に観察され、それを回収し、180mgのVX−950と4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体を得た。
【0050】
アセトニトリルを含む4−ヒドロキシ安息香酸:160mgのVX−950および80mgの4−ヒドロキシ安息香酸(Sigma Chemicals Co., St. Louis, MO, USA)を、50mLのアセトニトリル中、両方とも溶解し、透明溶液が得られるまで加熱した。該溶液を口の開いたビーカー中に入れ、溶媒を、室温にて約12時間、減圧下で蒸発させた。結晶物質がビーカー内に観察され、それを回収し、190mgのアセトニトリル溶媒和物としてのVX−950と4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体を得た。
【0051】
アセトニトリルを含む4−アミノサリチル酸:180mgのVX−950および80mgの4−アミノサリチル酸(Sigma Chemicals Co., St. Louis, MO, USA)を、50mLのアセトニトリル中、両方とも溶解し、透明溶液が得られるまで加熱した。該溶液を口の開いたビーカー中に入れ、溶媒を、室温にて約12時間、減圧下で蒸発させた。結晶物質がビーカー内に観察され、それを回収し、200mgのアセトニトリル溶媒和物としてのVX−950と4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体を得た。
【0052】
実施例4.結晶化による製造
VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体をまた、初めに、3容量のジクロロメタン中に1モルのVX−950を溶解することにより製造した。その後、VX−950溶液に、撹拌しながら、1.4モル当量の4−ヒドロキシ安息香酸を含む5容量のメチル三級−ブチルエーテル(MTBE)溶液を添加した。こうして得られた混合物を、結晶化を始める前に約1ないし3時間放置した。結晶化処理を5ないし6時間行い、固体物質を観察した。固体物質を濾過し、新鮮な母液(すなわち、5:3容量比でのMTBEおよびジクロロメタンの混合物)で洗浄した。次いで、該物質を、窒素流(sweep)の存在下または非存在下、15ないし75℃にて、6時間ないし3日間、真空オーブン中で乾燥させ、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体を得た。
【0053】
あるいは、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体を、以下の条件下で製造した。窒素雰囲気下、VX−950(1.00当量)を、第一反応器に添加し、次いでジクロロメタン(3容量)を同じ反応器に添加した。この第一反応器のバッチの温度を、20−25℃に調整し、VX−950を、ジクロロメタンへの溶解について観察した。4−ヒドロキシ安息香酸(1.30当量)を第二反応器に添加し、次いでメチル tert−ブチルエーテル(5容量)を添加した。この第二反応器のバッチの温度もまた、20−25℃に調整し、4−ヒドロキシ安息香酸を、メチル tert−ブチルエーテルへの溶解について観察した。次いで、4−ヒドロキシ安息香酸のメチル tert−ブチルエーテル溶液を、第二反応器から、第一反応容器中のVX−950のジクロロメタン溶液に90ないし120分かけて移し、その間の第一反応器のバッチ温度を20−25℃に維持した。こうして得られた溶液を、20−25℃にて撹拌し、それを回収し、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体を形成反応が完了するまで2時間毎にHPLCで分析した。図Aは、まだ溶液中の、4−ヒドロキシ安息香酸およびVX−950の、それらの残りの濃度または量に換算されたピークを示す代表的HPLCスペクトルを示す。反応の完了により、得られるスラリーを濾過し、濾過ケーキを、2容量のジクロロメタンおよびメチル tert−ブチルエーテル(3:5比で)の混合物で洗浄した。洗浄を、2容量のジクロロメタンおよびメチル tert−ブチルエーテル(3:5比で)の混合物を用いて繰り返した。こうして得られたVX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体を、窒素流の存在下または非存在下、15ないし75℃にて、6時間ないし3日間、減圧下で乾燥させた。
【0054】
実施例5.単結晶回折
単結晶回折を、母液から採取され、ガラス繊維上に取り付けられた単一結晶を用いて、Cu Kα放射を用いるBruker APEX II CCD 回折計で100Kにて行った。該結晶を窒素流システム中で100Kまで冷却し、振動写真(oscillation photo)を、ω軸を中心に4φ角度で撮った。データを、APEXソフトウェアで索引を付し、統合し、そしてスケーリングした。構造は、SHELX−TLパッケージを用いて解析および細分化された。
【0055】
アセトニトリル溶媒和物としてのVX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体は、空間群P2121211を有する斜方晶セルを示した。該ユニットセル寸法は、a=9.4143Å、b=11.9529Å、c=39.474Å、α=90°、β=90°、γ=90°であった。セル寸法は、+/−0.1Åの偏差であり得る。R因子は、R1=0.0273、wR2=0.0688であった。データは、共結晶体が、1個のVX−950、1個の4−ヒドロキシ安息香酸、および0.143のアセトニトリルを非対称ユニットで含むことを示す。
【0056】
アセトニトリル溶媒和物としてのVX−950および4−アミノサリチル酸の共結晶体は、空間群P2121211を有する斜方晶セルを示した。該ユニットセル寸法は、a=9.3889Å、b=12.2292Å、c=39.7436Å、α=90°、β=90°、γ=90°であった。セル寸法は、+/−0.1Åの偏差であり得る。R因子は、R1=0.0574、wR2=0.1445であった。データは、共結晶体が、1個のVX−950、1個の4−アミノサリチル酸、および0.337のアセトニトリルを非対称ユニットで含むことを示す。
【0057】
実施例6.熱重量分析(TGA)
各サンプルのTGAを、Model Q500 Thermogravimetric Analyzer (TA Instruments, New Castle, DE, USA)を、下記の構成要素:QAdv.exe version 2.2 build 248.0; RhDII.dII version 2.2 build 248.0; RhBase.dII version 2.2 build 248.0; RhComm.dII version 2.2 build 248.0; TaLicense.dII version 2.2 build 248.0;および、TGA.dII version 2.2 build 248.0と共に、そのThermal Advantage Q Series(商標)コントロールソフトウェア、Version 2.2.0.248, Thermal Advantage Release 4.2.1 (TA Instruments−Water LLC)を用いて行った。加えて、用いた分析ソフトウェアは、Windows 2000/XP, version 4.1 D build 4.1.0.16のUniversal Analysis 2000ソフトウェア(TA Instruments)であった。
【0058】
全ての実験に関して、TGAを行うための基本的方法には、サンプルの1つのアリコート(約3−8mg)を、白金サンプルパン(Pan:Part No. 952018.906, TA Instruments)に移すことが含まれる。該パンをローディング板上に置き、その後、コントロールソフトウェアを用いてQ500 Thermogravimetric Analyzer中に自動的にローディングした。サーモグラムを、ある温度範囲(一般的に、室温ないし400℃)で、90L/分のサンプルパージ流速および10L/分のバランスパージ流速で乾燥窒素(圧縮窒素、4.8等級(BOC Gases, Murray Hill, NJ, USA))下、10℃/分にて、サンプルを個々に加熱することにより得た。温度遷移(例えば、重量変化)を観察し、説明書と共に供される分析ソフトウェアを用いて分析した。
【0059】
図5によると、アセトニトリル溶媒和物としてのVX−950および4−アミノサリチル酸(モル比1)の共結晶体のTGAスペクトルは、220℃までに約10.4%の重量減少を示した。
【0060】
図6によると、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸(モル比1)の共結晶体のTGAスペクトルは、約160℃からの連続的重量減少を示した。
【0061】
図11によると、VX−950およびアセトニトリル溶媒和物としての4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体のTGAスペクトルは、約140℃からの連続的重量減少を示した。
【0062】
実施例7.示差走査熱量測定(DSC)
DSC分析を、MDSC Q100 Differential Scanning Calorimeter (TA Instruments)を、下記の構成要素:QAdv.exe version 2.2 build 248.0; RhDII.dII version 2.2 build 248.0; RhBase.dII version 2.2 build 248.0; RhComm.dII version 2.2 build 248.0; TaLicense.dII version 2.2 build 248.0;および、DSC.dII version 2.2 build 248.0と共に、そのThermal Advantage Q Series(商標)コントロールソフトウェア, version 2.2.0.248, Thermal Advantage Release 4.2.1を用いて行った。さらに、用いた分析ソフトウェアは、Windows 2000/XP、version 4.1 D build 4.1.0.16用のUniversal Analysis 2000 ソフトウェア(TA Instruments)であった。装置をインジウムで較正した。
【0063】
全てのDSC分析に関して、サンプルのアリコート(約2mg)を、アルミニウムサンプルパン(Pan:Part No. 900786.901;および、Lid: Part No. 900779.901, TA Instruments)中に量り取った。該サンプルパンを、1つのピンホールで圧着することにより密閉し、30℃で平衡化し、その後、自動サンプル機を備えるQ100 Differential Scanning Calorimeter中にローディングした。サーモグラムを、ある温度範囲(一般的に、室温ないし400℃)で、60L/分のサンプルパージ流速および40L/分のバランスパージ流速で乾燥窒素(圧縮窒素、4.8等級(BOC Gases, Murray Hill, NJ, USA))下、50℃/分の速度で、各サンプルを個々に加熱することにより得た。サンプルを含むパンと同様に調製した空のアルミニウムパンを、基準として用いた。温度遷移を観察し、説明書と共に供される分析ソフトウェアを用いて分析した。
【0064】
図4によると、DSCサーモグラムは、アセトニトリル溶媒和物としてのVX−950および4−アミノサリチル酸(モル比1:1)の共結晶体の約184.71℃での融解を示す。
【0065】
図7によると、DSCサーモグラムは、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸(モル比1:1)の共結晶体の約191.19℃での融解を示す。
【0066】
図10によると、DSCサーモグラムは、アセトニトリル溶媒和物としてのVX−950および4−ヒドロキシ安息香酸(モル比1:1)の共結晶体の約190.78℃での融解を示す。
【0067】
実施例8.X線粉末回折(XRPD)
XRPDパターンを、密閉チューブ源およびHi−Star 領域検出器を備えるBruker D8 Discover 回折計(Bruker AXS, Madison, WI, USA)を、室温にて、反射モードで用いることにより得た。銅標的X線チューブ(Siemens)を40kVおよび35mAで操作した。Brukerにより供されるグラファイトモノクロメーターおよび0.5mmコリメーターを、平行な単色ビーム(CuKa、λ=1.5418Å)を製造するために用いた。サンプルと検出器の間の距離は、約30cmであった。サンプルを、Si zero−background 薄板(The Gem Dugout, State College, PA)上に置き、その後、それをXYZ板上の中央に置いた。データを、Windows NT, version 4.1.16 用のGADDSソフトウェア(Bruker AXS, Madison, WI, USA)を用いて得た。2個のフレームを、フレーム当たり120秒の露光時間で、2個の異なる2θ角:8°および26°にて記録した。サンプルは、露光中、XおよびY方向の両方に1mmの振幅で振動した。その後、データを0.02°の刻み幅の3°ないし41° 2θの範囲で統合し、1つの連続したパターンにまとめた。Corundum plate (NIST standard 1976)を装置の調整に用いた。
【0068】
図3に示す通り、アセトニトリル溶媒和物としてのVX−950および4−アミノサリチル酸(モル比1:1)の共結晶体のXRPDパターンは、約7.711、8.631、8.949、9.723、9.959、11.564、11.968、12.984、13.354、13.717、14.615、14.910、16.342、17.235、17.584、18.004、19.040、19.274、19.631、20.173、20.715、21.406、22.013、23.018、24.245、24.855、26.552、28.445、30.020、32.768、および34.392° 2θでのピークを示した。
【0069】
図8に示す通り、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸(モル比1:1)の共結晶体のXRPDパターンは、それぞれ、0.74、0.93、1.00、0.96、0.67、0.77、0.79、および0.65の相対強度で、約17.33、17.61、18.07、18.87、19.34、19.68、20.75、および26.76° 2θでのピークを示した。
【0070】
図9に示す通り、アセトニトリル溶媒和物としてのVX−950および4−ヒドロキシ安息香酸(モル比1:1)の共結晶体のXRPDパターンは、約7.684、8.599、9.605、9.938、11.502、11.895、12.892、13.317、14.864、16.282、17.199、17.581、18.051、18.868、19.252、19.616、20.074、20.712、21.435、23.090、24.417、26.752、および28.643° 2θでのピークを示した。
【0071】
実施例9.溶解度分析
本発明の共結晶体のアリコートをチューブ中に入れ、その後水性媒体を添加した。設定時間点において、上清のアリコートを回収し、0.45PTFEミクロンフィルター(Millex, LCR, Millipore)を通してろ過し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析(Agilent 1100; Palo Alto, CA, USA)を行った。該系は、25℃設定の自動サンプル器を備えていた。サンプル操作に関して、該共結晶体のアリコートをv/v比1:1でアセトニトリルを用いて希釈し得る。該サンプルを270nm設定の検出器でアイソクラクチック(isocratically)に流した。カラムは、XTerra(登録商標)フェニルカラム150mm×4.6mm、3.5μm粒子サイズ(P/N 186001144)(Waters, Milford, MA, USA)であった。移動層は、リン酸カリウム緩衝液(10mM、pH=7.0):メタノールの60:40(v/v)比であった。泳動を流速1mL/分で行い、15分以内に完了し得る。
【0072】
水溶解性データを、水を含む共結晶体を振とうベッド上で24時間平衡化し、次いで飽和溶液を遠心および分離することにより、周囲条件で決定した。擬似胃液および腸液(摂食時および絶食時の両方)中の溶解度を、連続して撹拌下、24時間、該擬似体液に共結晶体を添加することにより、室温にて決定した。選択した時間点にて、サンプルを濾過し、濾液をHPLCによりアッセイした。
【0073】
VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸(モル比1:1)の共結晶体の溶解度は、以下の通りである:水中に0.0148mg/mL、擬似胃液(摂食時)中に0.109mg/ml、擬似胃液(絶食時)中に0.145mg/mL、擬似腸液(摂食時)中に0.0227mg/mL、および擬似腸液(絶食時)中に0.133mg/mL。
【0074】
実施例10.懸濁液安定性
水性媒体中に懸濁した本発明の共結晶体の物理的安定性を評価した。具体的には、該共結晶体粉末を、例えば(1)非緩衝の脱イオン水、および(2)HPMCの1%(w/w)溶液(低粘性度)中、25℃にて、約6mg/mlの名目濃度でスラリーにした。次いで、スラリーを、磁性撹拌棒およびプレートを用いて混合した。固体サンプルを、例えば1、2、6および24時間の間隔でろ過により単離した。
【0075】
他の態様
本発明は、その詳細な説明と関連して記載されているが、上記の記載が説明を目的としており、本発明の範囲を限定せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲により定義されることが、理解されるべきである。他の局面、利点および修飾は、添付の特許請求の範囲内である。
【技術分野】
【0001】
相互参照
本発明は、2007年2月27日出願の、米国特許出願第60/903,587号(その内容は、参照によりその全体を本明細書中に包含される)に優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
C型肝炎ウイルス(“HCV”)による感染は、切実なヒトの医学的問題である。HCVは、非A非B型肝炎のほとんどの症例の原因因子として認識されており、全世界で、概算で3%のヒト血清陽性率である[A. Alberti et al., “Natural History of Hepatitis C,” J. Hepatology, 31., (Suppl. 1), pp. 17−24 (1999)]。米国だけでも400万名近くが感染している可能性がある[M.J. Alter et al., “The Epidemiology of Viral Hepatitis in the United States”, Gastroenterol. Clin. North Am., 23, pp. 437−455 (1994); M. J. Alter “Hepatitis C Virus Infection in the United States,” J. Hepatology, 31., (Suppl. 1), pp. 88−91 (1999)]。
【0003】
HCVに最初に暴露されると、感染個体の約20%のみが急性臨床的肝炎を発症し、その他は、自然に感染を解消すると考えられる。しかしながら、症例の約70%において、該ウイルスは、数十年にわたって続く慢性感染を確立する[S. Iwarson, “The Natural Course of Chronic Hepatitis,” FEMS Microbiology Reviews, 14, pp. 201−204 (1994); D. Lavanchy, “Global Surveillance and Control of Hepatitis C,” J. Viral Hepatitis, 6, pp. 35−47 (1999)]。これは、通常、肝炎の再発および漸進的悪化をもたらし、しばしば、肝硬変および肝細胞癌のようなより重度の疾患状態に至る[M.C. Kew, “Hepatitis C and Hepatocellular Carcinoma”, FEMS Microbiology Reviews, 14, pp. 211−220 (1994); I. Saito et al., “Hepatitis C Virus Infection is Associated with the Development of Hepatocellular Carcinoma,” Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, pp. 6547−6549 (1990)]。残念なことに、慢性HCVの進行を遅らせるのに広く有効な処置は存在しない。
【0004】
HCVゲノムは、3010−3033アミノ酸のポリタンパク質をコードする[Q.L. Choo, et al., “Genetic Organization and Diversity of the Hepatitis C Virus.” Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88, pp. 2451−2455 (1991); N. Kato et al., “Molecular Cloning of the Human Hepatitis C Virus Genome From Japanese Patiants with Non−A, Non−B Hepatitis,” Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, pp. 9524−9528 (1990); A. Takamizawa et al., “Structure and Organization of the Hepatitis C Virus Genome Isolated From Human Carriers,” J. Virol., 65, pp. 1105−1113 (1991)]。HCV非構造(NS)タンパク質は、ウイルス複製に必須の触媒機構を提供すると考えられている。NSタンパク質は、ポリタンパク質のタンパク質分解的切断によって得られる[R. Bartenschlager et al., “Nonstructural Protein 3 of the Hepatitis C Virus Encodes a Serine−Type Proteinase Required for Cleavage at the NS3/4 and NS4/5 Junctions,” J. Virol., 67, pp. 3835−3844 (1993); A. Grakoui et al., “Characterization of the Hepatitis C Virus −Encoded Serine Proteinase: Determination of Proteinase−Dependent Polyprotein Cleavage Sites,” J. Virol., 67, pp. 2832−2843 (1993); A. Grakoui et al., “Expression and Identification of Hepatitis C Virus Polyprotein Cleavage Products,” J. Virol., 67, pp. 1385−1395 (1993); L. Tomei et al., “NS3 is a serine protease required for processing of Hepatitis C Virus polyprotein”, J. Virol., 67, pp. 4017−4026 (1993)]。
【0005】
HCV NSタンパク質3(NS3)は、ウイルス複製および感染性に必須である[Kolykhalov, J. Virology, Volume 74, pp. 2046−2051 2000 “Mutations at the HCV NS3 Serine Protease Catalytic Triad abolish infectivity of HCV RNA in Chimpanzees]。黄熱病ウイルスNS3プロテアーゼにおける変異は、ウイルス感染性を減少することが知られている[Chambers, T.J. et al., “Evidence that the N−terminal Domain of Nonstructural Protein NS3 From yellow Fever Virus is a Serine Protease” Responsible for Site−Specific Cleavages in the Viral Polyprotein”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, pp. 8898−8902 (1990)]。NS3の最初の181アミノ酸(ウイルスポリタンパク質の残基1027−1207)は、HCVポリタンパク質の4つ全ての下流部位をプロセシングするNS3のセリンプロテアーゼドメインを含むことが示されている[C. Lin et al., “Hepatitis C Virus NS3 Serine Proteinase: Trans−Cleavage Requirements and Processing Kinetics”, J. Virol., 68, pp. 8147−8157 (1994)]。
【0006】
HCV NS3セリンプロテアーゼおよびそれと関係する補因子NS4Aは、全てのウイルス酵素プロセシングを補助し、故に、ウイルス複製に必須であると見なされる。このプロセシングは、ウイルス酵素プロセシングにも関与する、ヒト免疫不全ウイルスアスパルチルプロテアーゼにより行われるのと同様のようである。ウイルスのタンパク質プロセシングを阻害するHIVプロテアーゼ阻害剤は、ヒトにおける強力な抗ウイルス剤であり、ウイルス生活環のこの段階を中断することは、結果として治療的有効剤であることを示す。結果として、HCV NS3セリンプロテアーゼはまた、創薬の魅力的な標的でもある。
【0007】
最近まで、HCV疾患の確立された治療は、インターフェロン処置のみであった。しかしながら、インターフェロンは、重大な副作用を有し[M. A. Wlaker et al., “Hepatitis C Virus: An Overview of Current Approaches and Progress,” DDT, 4, pp. 518−29 (1999);D. Moradpour et al., “Current and Evolving Therapies for Hepatitis C,” Eur. J. Gastroenterol. Hepatol., 11, pp. 1199−1202 (1999);H. L. A. Janssen et al. “Suicide Associated with Alfa−Interferon Therapy for Chronic Viral Hepatitis,” J. Hepatol., 21, pp. 241−243 (1994);P.F. Renault et al., “Side Effects of Alpha Interferon,” Seminars in Liver Disease, 9, pp. 273−277. (1989)]、症例のごく一部(〜25%)だけで長期寛解をもたらす[O. Weiland, “Interferon Therapy in Chronic Hepatitis C Virus Infection”, FEMS Microbiol. Rev., 14, pp. 279−288 (1994)]。PEG化型インターフェロン(PEG−イントロン(登録商標)およびPEGASYS(登録商標))ならびにリバビリンとインターフェロン(REBETROL(登録商標))の併用療法の最近の導入は、寛解率のごく限られた改善および副作用の一部分のみの減少という結果となっている。さらに、有効な抗HCVワクチンの見込みは、不明確なままである。
【0008】
従って、より有効な抗HCV治療が必要である。そのような阻害剤は、プロテアーゼ阻害剤、特にセリンプロテアーゼ阻害剤、より具体的にはHCV NS3セリンプロテアーゼ阻害剤として治療可能性を有し得る。特に、そのような化合物は、抗ウイルス剤、特に抗HCV剤として有用であり得る。
【0009】
下記に示す構造を有するHCV阻害剤であるVX−950は、そのような必要とされる化合物である。VX−950は、PCT公開番号WO02/18369に記載され、それは、その全内容を参照により本明細書に包含させる。
【化1】
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
概して、本発明は、HCV阻害剤であるVX−950ならびに特定の共結晶形成体を含む組成物に関する。共結晶形成体は、共結晶体、包接化合物、または他の結晶性固体形態の形成を介して固体薬剤の結晶形を変える、薬理学的に不活性な賦形剤である。それは、本明細書で用いる“共形態形成体(co−former)”の意味の範囲内である。ある特定の条件下で、VX−950ならびに共結晶形成体は一体となって、結晶組成物、すなわち共結晶体を形成し得る。その遊離形と比較すると、特定のVX−950共結晶体は、アモルファス(amorphous)VX−950分散体よりも改善された溶解性、高水溶性および高い固体状態の物理的安定性を有するために有利である。該特定のVX−950共結晶体は、減少した質量の投与形態を提供し、故に、VX−950共結晶体がアモルファス形態と比較してより高いバルク密度も示すため、丸剤の負荷がより少ない。さらに、VX−950共結晶体は、スプレー乾燥、溶融押出、凍結乾燥または沈殿を必要とするアモルファス形態と比較して製造上の利点を提供する。
【0011】
一局面において、本発明により供される組成物は、VX−950ならびに共結晶形成体としての化合物をそれぞれ含む。一態様において、VX−950ならびに共結晶形成体(すなわち、4−ヒドロキシ安息香酸)は一体となって、組成物中で結晶形態である(すなわち、共結晶体を形成している)。ある態様において、VX−950と4−ヒドロキシ安息香酸のモル比は、約5:1ないし約1:5の範囲内(例えば、約1:1)である。ある態様において、該共結晶体は、それぞれ約+/−0.3° 2θの標準偏差で、約17.61、18.07、18.87、19.68、および20.75の4つのX線粉末回折ピークのうち少なくとも2つを有する。ある態様において、該共結晶体は、約+/−5℃の標準偏差で、そのDSCサーモグラムは約191.19℃にてピークを有する。他の態様において、該共結晶体は、それぞれ約+/−0.3° 2θの標準偏差で、約17.6、18.0、18.9、19.7、および20.8の4つのX線粉末回折ピークのうち少なくとも2つを有する。さらに他の態様において、該共結晶体は、約+/−5℃の標準偏差で、約191℃でそのDSCサーモグラムのピークを有する。
【0012】
別の局面において、本発明は、VX−950;4−アミノサリチル酸および4−ヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される共結晶形成体;ならびに、アセトニトリル、酢酸エチル、エタノール、アセトン、ジクロロメタン、およびメチルtert−ブチルエーテルからなる群から選択される溶媒、を含む組成物を提供する。ある態様において、VX−950、共結晶形成体、および溶媒は一体となって、結晶形態であり得る(すなわち、共結晶体を形成する)。溶媒の存在により、該共結晶体は溶媒和物であり得る。いくつかの他の態様において、該溶媒はアセトニトリルである。いくつかの他の態様において、該共結晶形成体は、4−アミノサリチル酸である。ある態様において、VX−950と4−アミノサリチル酸のモル比は、約5:1ないし約1:5の範囲内(例えば、約1:1)である。ある態様において、VX−950とアセトニトリルのモル比は、約1:0.05ないし約1:1の範囲内(例えば、約1:0.34)である。ある態様において、該共結晶体は、それぞれ約+/−0.3° 2θの標準偏差で、約7.711、8.631、9.723、および9.959° 2θでの4つのX線粉末回折ピークのうち少なくとも2つを有する。ある態様において、該共結晶体は、約+/−5℃の標準偏差で、約184.71℃でそのDSCサーモグラムのDSCピークを有する。他の態様において、該共結晶体は、それぞれ約+/−0.3° 2θの標準偏差で、約7.7、8.6、9.7、および10.0° 2θでの4つのX線粉末回折ピークのうち少なくとも2つを有する。さらに他の態様において、該共結晶体は、約+/−5℃の標準偏差で、約185℃でのそのDSCサーモグラムのDSCピークを有する。
【0013】
さらにいくつかのさらなる態様において、該共結晶形成体は、4−ヒドロキシ安息香酸である。いくつかのさらなる態様において、VX−950と4−ヒドロキシ安息香酸のモル比は、約5:1ないし約1:5の範囲内(例えば、約1:1)である。いくつかのさらなる態様において、溶媒はアセトニトリルである。そしてさらに、いくつかのさらなる態様において、VX−950とアセトニトリルのモル比は、約1:0.05ないし約1:0.5の範囲内(例えば、約1:0.14)である。いくつかのさらなる態様において、該共結晶体は、それぞれ約+/−0.3° 2θの標準偏差で、約7.684、8.599、9.605、9.938° 2θでの4つのX線粉末回折ピークのうち少なくとも2つを有する。ある態様において、該共結晶体は、約+/−5℃の標準偏差で、約190.78℃でそのDSCサーモグラムのDSCピークを有する。いくつかのさらなる態様において、該共結晶体は、それぞれ約+/−0.3° 2θの標準偏差で、約7.7、8.6、9.6、9.9° 2θでの4つのX線粉末回折ピークのうち少なくとも2つを有する。ある態様において、該共結晶体は、約+/−5℃の標準偏差で、約191℃でそのDSCサーモグラムのDSCピークを有する。
【0014】
別の局面において、本発明は、VX−950、ならびにフェニルアラニン、スレオニン、酒石酸およびアジピン酸からなる群から選択される共結晶形成体を含む組成物を提供する。ある態様において、VX−950および該共結晶形成体は一体となって、結晶形態をとる(すなわち、共結晶体を形成する)。ある態様において、VX−950と該共結晶形成体のモル比は、約5:1ないし約1:5の範囲内(例えば、約1:1)である。
【0015】
別の局面において、本発明は、VX−950、ならびにスクシニックアセテート(succinic acetate)およびプロリンからなる群から選択される共形態形成体を含む組成物を提供する。ある態様において、VX−950および該共形態形成体は一体となって、(例えば、結晶形態をとり、故に共結晶体を形成することにより)共形態(co-form)を形成する。本明細書で用いる用語“共形態”は、一定の化学量論割合で医薬有効成分および1個以上の不活性成分(本明細書で用いる“共形態形成体”のような)を含む単相の結晶物質を意味する。用語“共形態”は、本明細書で用いる“共結晶体”を包含する。ある態様において、VX−950と該共形態形成体のモル比は、約5:1ないし約1:5の範囲内(例えば、約1:1)である。
【0016】
別の局面において、本発明は、VX−950ならびにメチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、d−ビオチンおよび酒石酸からなる群から選択される共形態形成体を含む組成物を提供する。ある態様において、VX−950および該共形態形成体は一体となって、(例えば、結晶形態をとり、故に共結晶体を形成することにより)共形態を形成する。ある態様において、VX−950と該共形態形成体のモル比は、約5:1ないし約1:40の範囲内である。
【0017】
これらの組成物は、とりわけ、HCVにより関連付けられるか、またはHCVと関係する疾患の処置において適用され得る。そのため、VX−950および上記の共結晶形成体を、適当なモル比でそれぞれ含む医薬組成物もまた、本発明の範囲内である。該医薬組成物は、所望により、溶媒和物を形成するために溶媒(例えば、アセトニトリル、酢酸エチル、エタノール、またはアセトン)を含んでいてよい。さらに、該医薬組成物は、希釈剤、溶媒、賦形剤、担体、または可溶化剤をさらに含み得る。
【0018】
さらに、上記の共結晶体の製造方法もまた、本発明の範囲内である。該方法は、(a)VX−950を提供する工程、(b)4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノサリチル酸(所望により、溶媒和物を形成するために、溶媒、例えばアセトニトリル中)、フェニルアラニン、スレオニン、酒石酸、アジピン酸、スクシニックアセテート、プロリン、メチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、およびd−ビオチンからなる群から選択される共結晶形成体を提供する工程、(c)固相中で共結晶体を形成するために、結晶化条件下で、溶液中、VX−950と該共結晶形成体を粉砕するか、加熱するか、共に昇華させるか、共に融解するか、または接触させる工程、および(d)所望により、工程(c)により形成した共結晶体を単離する工程、を含み得る。
【0019】
さらに、上記の共結晶体の興味のある化学的または物理的特性を調節する方法は、本発明の範囲内である。該方法は、(a)VX−950、ならびに4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノサリチル酸、フェニルアラニン、スレオニン、酒石酸、アジピン酸、スクシニックアセテート、プロリン、メチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、およびd−ビオチンからなる群から選択される共結晶形成体についての興味のある化学的または物理的特性を測定する工程、(b)興味のある化学的または物理的特性の望ましい調節をもたらし得る、VX−950および共結晶形成体のモル分率を決定する工程、および(c)工程(b)で決定したモル分率で該共結晶体を製造する工程、を含み得る。
【0020】
本発明の組成物および共結晶体は、HCVにより関連付けられるか、またはHCVと関係する疾患の処置のために使用され得る。故に、治療的有効量の本発明の共結晶体または本発明の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、かかる疾患の処置方法もまた、本発明の範囲内である。
【0021】
本発明の組成物および共結晶体はまた、VX−950と同じか、または異なり得る有効成分、ならびに4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノサリチル酸、フェニルアラニン、スレオニン、酒石酸、アジピン酸、スクシニックアセテート、プロリン、メチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、およびd−ビオチンからなる群と同じか、または異なり得る共結晶形成体を含む、さらなる共結晶体の製造のための種晶として用いられ得る。例えば、少量の本発明の共結晶体は、所望の有効成分および該共結晶形成体を含む溶液中に入れられ、該混合物を、さらなる共結晶体が存在する共結晶体によって形成され、成長し得るように静置する。
【0022】
さらに、本発明の組成物および共結晶体は、研究ツールとして用いられ得る。例えば、それらは、異なる形態の、および異なる条件下での、VX−950の薬理学的特性(例えば、バイオアベイラビリティ、代謝、および効果)を研究するため、または良好な送達および吸収のための種々のVX−950製剤を開発するために用いられ得る。
【0023】
発明の詳細な説明
共結晶体の製造方法および特性化方法は、文献に詳しく記載される。例えば、Trask et al., Chem. Commun., 2004, 890−891;および、O. Almarsson and M.J. Zaworotko, Chem. Commun., 2004, 1889−1896を参照のこと。これらの方法は一般的に、本発明の共結晶体を製造および特性化するためにも適する。
【0024】
さらに、以下の特定の方法が、共結晶体、特に本発明の共結晶体を製造するのに適する共結晶形成体を同定するために用いられ得る。
【0025】
VX−950のための可能性のある共結晶形成体の最初の同定またはスクリーニングは、96ウェルプレート中、数ミリグラムスケールで行われ得る。XRPD結果と公知の結晶性VX−950の回折パターンとの目視比較は、新規の結晶形態および/または結晶中への共結晶形成体の取り込みを示し得る変化した結晶格子寸法についてのスクリーニングに用いられ得る。VX−950を含む共結晶体を形成するための可能性のある候補物質として、シュウ酸、4−アミノサリチル酸、およびサリチル酸などが、この最初のスクリーニングにより同定されている。
【0026】
最初のスクリーニングの結果は、VX−950のためのさらなる共結晶形成体を同定するためにモデル研究に用いられ得る。例えば、より良好な物理的および化学的特性のために、4−アミノサリチル酸を、分子モデリングによりVX−950のための他の可能性のある共結晶形成体の同定におけるリード分子として用いることができる。具体的には、4−ASAのモデルは、Quantaソフトウェアパッケージ(Accelrys Inc., San Diego, CA)を用いて確立され、単結晶X線回折により得られるVX−950の単一分子構造と複合体を形成し得る。4−ASA分子は、2個の分子間に最大数の水素結合を形成するためにVX−950の周りの異なる位置に人為的に配置され得る。VX−950分子が固定されるとき、4−ASA分子の配位置は、エネルギー的に最小化される。Quantaにおいて利用され得る承認された基本Newton−Raphson法は、初期設定および距離依存的絶縁体(distance−dependent dielectric)を用いてエネルギー的に最小化するために用いられ得る。AutoNomソフトウェア(MDL Information Systems, GmbH)は、構造のデータベースを作成するために、FDAのEAFUS(Everything Added to Food, US)およびGRAS(Generally Regarded As Safe)リストの化合物名をSMILES形式の2D構造に変換するために用いられ得る。その後、該データベースは、4−ASAで明らかにされたファーマコフォアに合う新規の共結晶形成体の探索に用いられ得る。許容されるファーマコフォアは、VX−950および4−ASAのそれと同様に局所エネルギーの最小値を有する。
【0027】
DSCはまた、共結晶形成体をスクリーニングするためにも用いられ得る。DSCによるスクリーニングにおいて、DSC中に固相間相互作用(すなわち、共晶融液の形成)の証拠が示されたVX−950と共結晶形成体の物理的混合物は、恐らく共結晶体を形成する可能性が高い。VX−950と共結晶形成体との相互作用を検出するために、成分を1:1モル比で混合し、室温から、例えば10℃の上昇で300℃までのDSC温度勾配(temperature ramp)法を行い得る。純粋成分の吸熱とは温度が異なる新規の熱事象(すなわち、吸熱)を示す混合物が選択される。該新規の温度遷移が、元の成分のうち1個の温度遷移に加えて観察されるとき、VX−950と共結晶形成体とのモル比は、該新規の温度遷移のみを得るために調整され得る。観察された遷移温度は、二元混合物の相図を作製するために組成物の関数としてプロットされ得る。故に、DSCにおける新規の温度遷移を生じるVX−950と共結晶形成体の組合せはスケールアップされて、上記の通りより大量に(例えば、数グラム)製造され得る。
【0028】
新規の温度遷移を有するVX−950および共結晶形成体の混合物は、例えば、ボールミル粉砕法、溶媒蒸発法、溶媒の存在下または非存在下での融解法、スラリー変換、混合、昇華、またはモデリングを用いることにより、大量に(すなわち、スケールアップして)製造され得る。これらの方法のいくつかを以下に詳細に記載する。こうして製造される生成物は、XRPD、TGAおよびDSCのような公知の方法により分析または特徴付けられ得て、そして水性媒体中のそれらの溶解性およびそれらの安定性はまた、当技術分野で公知の方法により測定され得る。
【0029】
ボールミル粉砕法:等モル量のVX−950および共結晶形成体を、適当な溶媒と混合する。次いで、該混合物を、ボールミル装置、例えば、Retsch MM200(GlenMills Inc., Clifton, NJ)を用いて、15Hzの周波数で3時間、粉砕する。次いで、該混合物を、該ミル装置の焼結コランダム製の区画に入れる。粉砕後、該物質をねじ口シンチレーションバイアル(蓋を閉めていない)に入れ、室温にて、真空下で乾燥させる。XRPDおよびDSC分析を、得られる混合物を特徴付けるために行い得る。
【0030】
反応ブロック中での融解法:等モル量のVX−950および共結晶形成体を、溶媒の存在下または非存在下にて混合する。次いで、該混合物を、反応ブロック、例えば、Radleys Discovery Technologies (Essex, UK)のModel RR98072中に入れ、蓋を閉めて、そして新しい温度遷移のDSCにより同定された温度まで加熱する。次いで、該混合物を、遷移温度でしばらく維持し、その後、該反応ブロックを開き、得られる混合物を環境条件まで冷却する。
【0031】
溶媒蒸発:VX−950および可能性のある共結晶形成体を、個別に、揮発性溶媒(例えば、ジクロロメタンまたはメチル tert−ブチルエーテル)または溶媒混合物(例えば、50:50のトルエン:アセトニトリル)中に溶解する。溶解は、透明溶液が得られるまで撹拌および超音波処理することにより補助され得る。次いで、該VX−950溶液を、ねじ口シンチレーションバイアル中、所望のモル比で共結晶形成体溶液と混合する。該バイアルを、典型的には数日間、蓋をせずに減圧下に置き、溶媒を蒸発させて乾燥させる。固体(結晶)物質が得られ、分析される。
【0032】
上記の通り、本発明の共結晶体は、固体または結晶物質を特徴付けるために、当技術分野で公知の方法により分析され得る。特性化方法の例は、熱重量分析(TGA)、示差走査熱量測定(DSC)、X線粉末回折(XRPD)、溶解度分析、動的蒸気吸着、赤外線排ガス分析、および懸濁液安定化を含む。TGAは、共結晶体サンプル中に残る溶媒の存在を調べるため、および各共結晶体サンプルの分解が起こる温度を同定するために用いることができる。DSCは、温度の関数として共結晶体サンプルにおいて起こる熱転移を探索するため、および各共結晶体サンプルの融点を決定するために用いることができる。XRPDは、共結晶体の構造特性化のために用いることができる。溶解度分析は、各共結晶体サンプルの物理的状態における変化を示すために行われ得る。そして、懸濁液安定性分析を、溶媒中の共結晶体サンプルの化学的安定性を決定するために用いることができる。かかる方法のいくつかが、詳細に記載されている。
【0033】
X線粉末回折(XRPD):XRPDは、物質の元々のパターンを記録し、該パターンの経時変化を観測することにより、その物理的形態を特徴付けるために用いられ得る。XRPDパターンを、密封チューブ源およびHi−Star 領域検出器を備えるBruker D8 Discover 回折計(Bruker AXS, Madison, WI, USA)を、室温にて、反射モードで用いることにより得ることができる。銅標的X線チューブ(Siemens)を、40kVおよび35mAで操作することができる。Brukerにより提供されるグラファイトモノクロメータおよび0.5mmコリメーターを、平行な単色ビーム(CuKa、λ=1.5418Å)を製造するために用い得る。サンプルと検出器の間の距離は、約30cmであり得る。該サンプルを、Si zero−background 薄板(The Gem Dugout, State College, PA)上に置き、その後、それをXYZ板上の中央に置いてよい。データを、Windows NT, version 4.1.16 用のGADDSソフトウェア(Bruker AXS, Madison, WI, USA)を用いて得ることができる。2個のフレームを、2つの異なる2θ角度:8°および26° 2θで、フレーム当たり120秒の露光時間で記録し得る。該サンプルは、露光中、XおよびY方向の両方に1mmの振幅で振動する。その後、データを0.02o 2θの刻み幅の3oないし41o 2θの範囲で統合し、1つの連続したパターンにまとめ得る。Corundum plate (NIST standard 1976)を装置の調整に用い得る。
【0034】
示差走査熱量測定(DSC):DSCは、温度の関数としてサンプルにおいて生じる温度遷移を検出し、結晶物質の融点を決定するために用いられ得る。それを、例えば、インジウムで較正したMDSC Q100示差走査熱量計(TA Instruments, New Castle, DE)を用いて行う。サンプルを、サンプルサイズが、例えば約2mgで、1つのピンホールで圧着するアルミニウムパン中に調製することができる。各泳動を、最初に25℃に平衡化し、次いで10℃/分の勾配で300℃まで平衡化する。VX−950は融解により分解し、分解の開始は、約240℃である。データを、Thermal Advantage Q SeriesTMソフトウェアにより集め、Universal Analysisソフトウェア(TA Instruments, New Castle, DE)により分析することができる。
【0035】
熱重量分析(TGA):TGAは、サンプル中の残余溶媒の存在を調べるため、およびサンプルの分解が起こる温度を同定するために用いられ得る。例えば、モデルQ500 Thermogravimetric Analyzer(TA Instruments, New Castle, DE)を、TGA測定に用いることができる。サンプルを約3−8mgの範囲で計量し、例えば300℃の最終温度まで約10℃/分の速度で加熱する。データを、例えばThermal Advantage Q SeriesTMソフトウェアにより集め、Universal Analysisソフトウェア(TA Instruments, New Castle, DE)により分析することができる。
【0036】
フーリエ変換赤外(FT−IR)分光分析:FT−IRは、異なるモル比でのVX−950と共結晶形成体の混合物中の水素結合を調べるために用いられ得る。赤外透過スペクトルを、例えば、4000ないし625cm−1のNexus 670分光計(Thermo Electron Corp.; Madison, WI)を用いて、KBrペレットから入手可能である。
【0037】
溶解度測定:溶解度は、VX−950等価物と表され得る。それは、物質の物理的状態の変化を考慮し、VX−950溶解度を増大させる目的のために進展を観測するために測定され得る。具体的には、該物質のアリコートを10mg/mLの溶解度を標的として水性媒体中に入れ得る。設定時間点において、上清のアリコートを回収し、0.45ミクロンフィルター(例えば、Millex; Millipore, Billerica, MA)を通してろ過し、HPLC(例えば、Agilent 1100; Palo Alto, CA)を用いて分析する。該サンプルを、270nmの設定、およびXTerra(登録商標)フェニルカラム150mm×4.6mm、3.5μm粒子サイズ(P/N 186001144)(Waters, Milford, MA, USA)上、1mL/分の流速の設定の検出器でアイソクラクチック(isocratically)に流す。移動層は、リン酸カリウム緩衝液(10mM、pH=7.0):メタノールを60:40(v/v)比で含む。VX−950の濃度を、既知濃度の標準を用いて作成した検量曲線を用いてクロマトグラフィーピーク面積を比較することにより決定することができる。
【0038】
ホットステージ顕微鏡:顕微鏡イメージを、例えば偏光フィルム、SLMPlan 50x infinity corrected objective(像までの距離が無限遠に設計された対物レンズ)、C−5050デジタルカメラ、および可変温度コントローラーを含むInstecのホットステージを備えるOlympus BX51コンフォーカル顕微鏡で得ることができる。実験方法は、サンプルが数分間平衡化される、異なる温度段階間の直線的加熱勾配を含む。デジタル画像は、生じた如何なる遷移をも得るために該勾配中、手動で収集される。
【0039】
有効量の本発明の共結晶体または組成物(それぞれ、VX−950ならびに共結晶形成体(例えば、4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノサリチル酸(アセトニトリルを含む)、フェニルアラニン、スレオニン、アジピン酸、スクシニックアセテート、プロリン、メチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、d−ビオチン、または酒石酸)を含む。)を、HCVが原因であるかまたはHCVと関係する疾患を処置するために用い得る。有効量は、処置する対象、例えば患者に、治療的効果を与えるのに必要な量である。有効量のVX−950および該共結晶形成体の共結晶体は、約0.1mg/kgないし約150mg/kg(例えば、約1mg/kgないし約60mg/kg)である。有効用量はまた、当業者に理解される通り、投与経路、用いる賦形剤、ならびに他の治療剤および/または治療の使用を含む他の治療的処置との併用の可能性によって変わり得る。
【0040】
本発明の共結晶体または医薬組成物は、化合物VX−950の送達を可能にする何らかの方法、例えば経口、静脈内または非経腸投与により、それを必要とする対象(例えば、細胞、組織、または患者(動物またはヒトを含む))に投与され得る。例えば、それらを、丸剤、錠剤、カプセル、エアロゾル、坐剤、摂取もしくは注入のためまたは点眼もしくは点耳のための液体製剤、栄養補助食品、ならびに局所用製剤により投与可能である。
【0041】
医薬組成物は、水、リンゲル溶液、等張生理食塩水、5%グルコース、および等張塩化ナトリウム溶液のような、希釈剤、溶媒、賦形剤および担体を含み得る。他の態様において、医薬組成物は、シクロデキストリンのような可溶化剤をさらに含み得る。別の態様において、医薬組成物は、シクロデキストリンのような可溶化剤をさらに含み得る。適当な希釈剤、溶媒、賦形剤、担体、および可溶化剤のさらなる例は、例えば,U.S. Pharmacopeia 23/National Formulary 18, Rockville, MD, U.S. Pharmacopeia Convention, Inc., (1995); Ansel HC, Popovich NG, Allen Jr LV. Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Baltimore MD, Williams &Wilkins, (1995); Gennaro AR., Remingtons: The Science and Practice of Pharmacy, Easton PA, Mack Publishing Co., (1995); Wade A, Weller PJ. Handbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd Ed, Washington DC, American Pharmaceutical Association, (1994); Baner GS, Rhodes CT. Modern Pharmaceutics, 3rd Ed., New York, Marcel Dekker, Inc., (1995); Ranade VV, Hollinger MA. Drug Delivery Systems. Boca Raton, CRC Press, (1996)に見出され得る。
【0042】
医薬組成物はまた、等張生理食塩水、5%グルコースまたは他の公知の薬学的に許容される賦形剤(複数可)中、共結晶体の水溶液を含み得る。シクロデキストリンのような可溶化剤、または当業者に公知の他の可溶化剤を、治療用化合物VX−950の送達のための薬学的賦形剤として利用することができる。投与経路に関して、共結晶体または医薬組成物を、経口、経鼻、経皮、皮内、膣内、耳内、眼内、口腔内、直腸内、経粘膜、または吸入により、または静脈内投与により投与できる。組成物を、バルーンカテーテルにより静脈内に送達することができる。組成物を、動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長動物、ウマ、イヌ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ハムスター、スナネズミ(gerbil)、フェレット、トカゲ、は虫類または鳥類のような哺乳動物)に投与することができる。
【0043】
本発明の共結晶体または医薬組成物はまた、移植可能デバイスを用いるような移植(例えば、外科的移植)により送達することができる。移植可能デバイスの例には、ステント、送達ポンプ、脈管フィルター、および移植可能な放出制御組成物が含まれるが、これらに限定されない。何れかの移植可能デバイスは、本発明の共結晶体または医薬組成物中の有効成分として化合物VX−950を送達するために用いることができる。ただし、1)該デバイス、化合物VX−950および該化合物を含む何らかの医薬組成物が生体適合性であること、および2)該デバイスが、有効量の化合物を送達または放出し、処置した患者に治療的効果を与え得ること、を条件とする。
【0044】
ステント、送達ポンプ(例えば、浸透圧ミニポンプ)、および他の移植可能デバイスによる治療剤の送達は、当技術分野で知られている。例えば、“Recent Developments in Coated Stents” by Hofma et al., published in Current Interventional Cardiology Reports, 2001, 3: 28−36を参照のこと。その全内容、そこに引用される文献は、本明細書中に包含させる。移植可能デバイス、例えばステントの他の記載は、米国特許第6,569,195号および同第6,322,847号、ならびにPCT国際公開WO04/0044405、WO04/0018228、WO03/0229390、WO03/0228346、WO03/0225450、WO03/0216699およびWO03/0204168に見出すことができ、それぞれの全内容(ならびに、そこに引用される他の文献)を本明細書中に包含させる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体の形成の経過を決定するために用いられる代表的なHPLCクロマトグラフを示す。
【図2】図2は、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体の1H−NMRスペクトルを示す。
【図3】図3は、アセトニトリル溶媒和物としての、VX−950および4−アミノサリチル酸の共結晶体のXRPDを示す。
【図4】図4は、アセトニトリル溶媒和物としての、VX−950および4−アミノサリチル酸の共結晶体のDSCスペクトルを示す。
【図5】図5は、アセトニトリル溶媒和物としての、VX−950および4−アミノサリチル酸の共結晶体のTGAスペクトルを示す。
【図6】図6は、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体のTGAスペクトルを示す。
【図7】図7は、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体のDSCスペクトルを示す。
【図8】図8は、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体のXRDパターンを示す。
【図9】図9は、アセトニトリル溶媒和物としての、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体のXRDパターンを示す
【図10】図10は、アセトニトリル溶媒和物としての、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体のDSCスペクトルを示す。
【図11】図11は、アセトニトリル溶媒和物としての、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体のTGAスペクトルを示す。
【図12】図12は、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体のFTIRスペクトルを示す。
【実施例】
【0046】
以下の記載は、本発明の共結晶体の製造方法および特性化方法の例であり、それは説明のみを意味し、いかなる場合も限定するものではない。
【0047】
実施例1.ボールミル法による製造
VX−950および等モル量の共結晶形成体(例えば、4−ヒドロキシ安息香酸)を、溶媒(例えば、メチルエチルケトンまたは酢酸エチル)と混合し得る。次いで、該成分をWig−L−Bug装置、例えば、Retsch MM200(GlenMills Inc, Clifton, NJ)を周波数15Hzで用いて10分間ミル粉砕し得る。ミル処理後、バッチを、例えば真空オーブン中75℃にて2時間乾燥させ、本発明の共結晶体を得る。
【0048】
実施例2.融解法による製造
VX−950および等モル量の共結晶形成体(例えば、4−ヒドロキシ安息香酸)を、溶媒の有無にて、例えば5分間のボルテックスにより混合し得る。次いで、該混合物を蓋を閉めた反応ブロック(例えば、Radley Discovery TechnologiesからのRR 98072)中に入れ、吸熱反応のため加熱した。混合物を吸熱温度で30分間放置し、その後、得られた混合物を蓋を開けて周囲条件下で冷却し、溶媒を用いたとき、それを除去して、本発明の共結晶体を得る。
【0049】
実施例3.溶媒蒸発法による製造
4−ヒドロキシ安息香酸:160mgのVX−950および80mgの4−ヒドロキシ安息香酸(Sigma Chemicals Co., St. Louis, MO, USA)を、50mLの酢酸エチル中、両方とも溶解し、透明溶液が得られるまで加熱した。該溶液を口の開いたビーカー中に入れ、溶媒を、室温にて約12時間、減圧下で蒸発させた。結晶物質がビーカー内に観察され、それを回収し、180mgのVX−950と4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体を得た。
【0050】
アセトニトリルを含む4−ヒドロキシ安息香酸:160mgのVX−950および80mgの4−ヒドロキシ安息香酸(Sigma Chemicals Co., St. Louis, MO, USA)を、50mLのアセトニトリル中、両方とも溶解し、透明溶液が得られるまで加熱した。該溶液を口の開いたビーカー中に入れ、溶媒を、室温にて約12時間、減圧下で蒸発させた。結晶物質がビーカー内に観察され、それを回収し、190mgのアセトニトリル溶媒和物としてのVX−950と4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体を得た。
【0051】
アセトニトリルを含む4−アミノサリチル酸:180mgのVX−950および80mgの4−アミノサリチル酸(Sigma Chemicals Co., St. Louis, MO, USA)を、50mLのアセトニトリル中、両方とも溶解し、透明溶液が得られるまで加熱した。該溶液を口の開いたビーカー中に入れ、溶媒を、室温にて約12時間、減圧下で蒸発させた。結晶物質がビーカー内に観察され、それを回収し、200mgのアセトニトリル溶媒和物としてのVX−950と4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体を得た。
【0052】
実施例4.結晶化による製造
VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体をまた、初めに、3容量のジクロロメタン中に1モルのVX−950を溶解することにより製造した。その後、VX−950溶液に、撹拌しながら、1.4モル当量の4−ヒドロキシ安息香酸を含む5容量のメチル三級−ブチルエーテル(MTBE)溶液を添加した。こうして得られた混合物を、結晶化を始める前に約1ないし3時間放置した。結晶化処理を5ないし6時間行い、固体物質を観察した。固体物質を濾過し、新鮮な母液(すなわち、5:3容量比でのMTBEおよびジクロロメタンの混合物)で洗浄した。次いで、該物質を、窒素流(sweep)の存在下または非存在下、15ないし75℃にて、6時間ないし3日間、真空オーブン中で乾燥させ、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体を得た。
【0053】
あるいは、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体を、以下の条件下で製造した。窒素雰囲気下、VX−950(1.00当量)を、第一反応器に添加し、次いでジクロロメタン(3容量)を同じ反応器に添加した。この第一反応器のバッチの温度を、20−25℃に調整し、VX−950を、ジクロロメタンへの溶解について観察した。4−ヒドロキシ安息香酸(1.30当量)を第二反応器に添加し、次いでメチル tert−ブチルエーテル(5容量)を添加した。この第二反応器のバッチの温度もまた、20−25℃に調整し、4−ヒドロキシ安息香酸を、メチル tert−ブチルエーテルへの溶解について観察した。次いで、4−ヒドロキシ安息香酸のメチル tert−ブチルエーテル溶液を、第二反応器から、第一反応容器中のVX−950のジクロロメタン溶液に90ないし120分かけて移し、その間の第一反応器のバッチ温度を20−25℃に維持した。こうして得られた溶液を、20−25℃にて撹拌し、それを回収し、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体を形成反応が完了するまで2時間毎にHPLCで分析した。図Aは、まだ溶液中の、4−ヒドロキシ安息香酸およびVX−950の、それらの残りの濃度または量に換算されたピークを示す代表的HPLCスペクトルを示す。反応の完了により、得られるスラリーを濾過し、濾過ケーキを、2容量のジクロロメタンおよびメチル tert−ブチルエーテル(3:5比で)の混合物で洗浄した。洗浄を、2容量のジクロロメタンおよびメチル tert−ブチルエーテル(3:5比で)の混合物を用いて繰り返した。こうして得られたVX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体を、窒素流の存在下または非存在下、15ないし75℃にて、6時間ないし3日間、減圧下で乾燥させた。
【0054】
実施例5.単結晶回折
単結晶回折を、母液から採取され、ガラス繊維上に取り付けられた単一結晶を用いて、Cu Kα放射を用いるBruker APEX II CCD 回折計で100Kにて行った。該結晶を窒素流システム中で100Kまで冷却し、振動写真(oscillation photo)を、ω軸を中心に4φ角度で撮った。データを、APEXソフトウェアで索引を付し、統合し、そしてスケーリングした。構造は、SHELX−TLパッケージを用いて解析および細分化された。
【0055】
アセトニトリル溶媒和物としてのVX−950および4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体は、空間群P2121211を有する斜方晶セルを示した。該ユニットセル寸法は、a=9.4143Å、b=11.9529Å、c=39.474Å、α=90°、β=90°、γ=90°であった。セル寸法は、+/−0.1Åの偏差であり得る。R因子は、R1=0.0273、wR2=0.0688であった。データは、共結晶体が、1個のVX−950、1個の4−ヒドロキシ安息香酸、および0.143のアセトニトリルを非対称ユニットで含むことを示す。
【0056】
アセトニトリル溶媒和物としてのVX−950および4−アミノサリチル酸の共結晶体は、空間群P2121211を有する斜方晶セルを示した。該ユニットセル寸法は、a=9.3889Å、b=12.2292Å、c=39.7436Å、α=90°、β=90°、γ=90°であった。セル寸法は、+/−0.1Åの偏差であり得る。R因子は、R1=0.0574、wR2=0.1445であった。データは、共結晶体が、1個のVX−950、1個の4−アミノサリチル酸、および0.337のアセトニトリルを非対称ユニットで含むことを示す。
【0057】
実施例6.熱重量分析(TGA)
各サンプルのTGAを、Model Q500 Thermogravimetric Analyzer (TA Instruments, New Castle, DE, USA)を、下記の構成要素:QAdv.exe version 2.2 build 248.0; RhDII.dII version 2.2 build 248.0; RhBase.dII version 2.2 build 248.0; RhComm.dII version 2.2 build 248.0; TaLicense.dII version 2.2 build 248.0;および、TGA.dII version 2.2 build 248.0と共に、そのThermal Advantage Q Series(商標)コントロールソフトウェア、Version 2.2.0.248, Thermal Advantage Release 4.2.1 (TA Instruments−Water LLC)を用いて行った。加えて、用いた分析ソフトウェアは、Windows 2000/XP, version 4.1 D build 4.1.0.16のUniversal Analysis 2000ソフトウェア(TA Instruments)であった。
【0058】
全ての実験に関して、TGAを行うための基本的方法には、サンプルの1つのアリコート(約3−8mg)を、白金サンプルパン(Pan:Part No. 952018.906, TA Instruments)に移すことが含まれる。該パンをローディング板上に置き、その後、コントロールソフトウェアを用いてQ500 Thermogravimetric Analyzer中に自動的にローディングした。サーモグラムを、ある温度範囲(一般的に、室温ないし400℃)で、90L/分のサンプルパージ流速および10L/分のバランスパージ流速で乾燥窒素(圧縮窒素、4.8等級(BOC Gases, Murray Hill, NJ, USA))下、10℃/分にて、サンプルを個々に加熱することにより得た。温度遷移(例えば、重量変化)を観察し、説明書と共に供される分析ソフトウェアを用いて分析した。
【0059】
図5によると、アセトニトリル溶媒和物としてのVX−950および4−アミノサリチル酸(モル比1)の共結晶体のTGAスペクトルは、220℃までに約10.4%の重量減少を示した。
【0060】
図6によると、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸(モル比1)の共結晶体のTGAスペクトルは、約160℃からの連続的重量減少を示した。
【0061】
図11によると、VX−950およびアセトニトリル溶媒和物としての4−ヒドロキシ安息香酸の共結晶体のTGAスペクトルは、約140℃からの連続的重量減少を示した。
【0062】
実施例7.示差走査熱量測定(DSC)
DSC分析を、MDSC Q100 Differential Scanning Calorimeter (TA Instruments)を、下記の構成要素:QAdv.exe version 2.2 build 248.0; RhDII.dII version 2.2 build 248.0; RhBase.dII version 2.2 build 248.0; RhComm.dII version 2.2 build 248.0; TaLicense.dII version 2.2 build 248.0;および、DSC.dII version 2.2 build 248.0と共に、そのThermal Advantage Q Series(商標)コントロールソフトウェア, version 2.2.0.248, Thermal Advantage Release 4.2.1を用いて行った。さらに、用いた分析ソフトウェアは、Windows 2000/XP、version 4.1 D build 4.1.0.16用のUniversal Analysis 2000 ソフトウェア(TA Instruments)であった。装置をインジウムで較正した。
【0063】
全てのDSC分析に関して、サンプルのアリコート(約2mg)を、アルミニウムサンプルパン(Pan:Part No. 900786.901;および、Lid: Part No. 900779.901, TA Instruments)中に量り取った。該サンプルパンを、1つのピンホールで圧着することにより密閉し、30℃で平衡化し、その後、自動サンプル機を備えるQ100 Differential Scanning Calorimeter中にローディングした。サーモグラムを、ある温度範囲(一般的に、室温ないし400℃)で、60L/分のサンプルパージ流速および40L/分のバランスパージ流速で乾燥窒素(圧縮窒素、4.8等級(BOC Gases, Murray Hill, NJ, USA))下、50℃/分の速度で、各サンプルを個々に加熱することにより得た。サンプルを含むパンと同様に調製した空のアルミニウムパンを、基準として用いた。温度遷移を観察し、説明書と共に供される分析ソフトウェアを用いて分析した。
【0064】
図4によると、DSCサーモグラムは、アセトニトリル溶媒和物としてのVX−950および4−アミノサリチル酸(モル比1:1)の共結晶体の約184.71℃での融解を示す。
【0065】
図7によると、DSCサーモグラムは、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸(モル比1:1)の共結晶体の約191.19℃での融解を示す。
【0066】
図10によると、DSCサーモグラムは、アセトニトリル溶媒和物としてのVX−950および4−ヒドロキシ安息香酸(モル比1:1)の共結晶体の約190.78℃での融解を示す。
【0067】
実施例8.X線粉末回折(XRPD)
XRPDパターンを、密閉チューブ源およびHi−Star 領域検出器を備えるBruker D8 Discover 回折計(Bruker AXS, Madison, WI, USA)を、室温にて、反射モードで用いることにより得た。銅標的X線チューブ(Siemens)を40kVおよび35mAで操作した。Brukerにより供されるグラファイトモノクロメーターおよび0.5mmコリメーターを、平行な単色ビーム(CuKa、λ=1.5418Å)を製造するために用いた。サンプルと検出器の間の距離は、約30cmであった。サンプルを、Si zero−background 薄板(The Gem Dugout, State College, PA)上に置き、その後、それをXYZ板上の中央に置いた。データを、Windows NT, version 4.1.16 用のGADDSソフトウェア(Bruker AXS, Madison, WI, USA)を用いて得た。2個のフレームを、フレーム当たり120秒の露光時間で、2個の異なる2θ角:8°および26°にて記録した。サンプルは、露光中、XおよびY方向の両方に1mmの振幅で振動した。その後、データを0.02°の刻み幅の3°ないし41° 2θの範囲で統合し、1つの連続したパターンにまとめた。Corundum plate (NIST standard 1976)を装置の調整に用いた。
【0068】
図3に示す通り、アセトニトリル溶媒和物としてのVX−950および4−アミノサリチル酸(モル比1:1)の共結晶体のXRPDパターンは、約7.711、8.631、8.949、9.723、9.959、11.564、11.968、12.984、13.354、13.717、14.615、14.910、16.342、17.235、17.584、18.004、19.040、19.274、19.631、20.173、20.715、21.406、22.013、23.018、24.245、24.855、26.552、28.445、30.020、32.768、および34.392° 2θでのピークを示した。
【0069】
図8に示す通り、VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸(モル比1:1)の共結晶体のXRPDパターンは、それぞれ、0.74、0.93、1.00、0.96、0.67、0.77、0.79、および0.65の相対強度で、約17.33、17.61、18.07、18.87、19.34、19.68、20.75、および26.76° 2θでのピークを示した。
【0070】
図9に示す通り、アセトニトリル溶媒和物としてのVX−950および4−ヒドロキシ安息香酸(モル比1:1)の共結晶体のXRPDパターンは、約7.684、8.599、9.605、9.938、11.502、11.895、12.892、13.317、14.864、16.282、17.199、17.581、18.051、18.868、19.252、19.616、20.074、20.712、21.435、23.090、24.417、26.752、および28.643° 2θでのピークを示した。
【0071】
実施例9.溶解度分析
本発明の共結晶体のアリコートをチューブ中に入れ、その後水性媒体を添加した。設定時間点において、上清のアリコートを回収し、0.45PTFEミクロンフィルター(Millex, LCR, Millipore)を通してろ過し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析(Agilent 1100; Palo Alto, CA, USA)を行った。該系は、25℃設定の自動サンプル器を備えていた。サンプル操作に関して、該共結晶体のアリコートをv/v比1:1でアセトニトリルを用いて希釈し得る。該サンプルを270nm設定の検出器でアイソクラクチック(isocratically)に流した。カラムは、XTerra(登録商標)フェニルカラム150mm×4.6mm、3.5μm粒子サイズ(P/N 186001144)(Waters, Milford, MA, USA)であった。移動層は、リン酸カリウム緩衝液(10mM、pH=7.0):メタノールの60:40(v/v)比であった。泳動を流速1mL/分で行い、15分以内に完了し得る。
【0072】
水溶解性データを、水を含む共結晶体を振とうベッド上で24時間平衡化し、次いで飽和溶液を遠心および分離することにより、周囲条件で決定した。擬似胃液および腸液(摂食時および絶食時の両方)中の溶解度を、連続して撹拌下、24時間、該擬似体液に共結晶体を添加することにより、室温にて決定した。選択した時間点にて、サンプルを濾過し、濾液をHPLCによりアッセイした。
【0073】
VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸(モル比1:1)の共結晶体の溶解度は、以下の通りである:水中に0.0148mg/mL、擬似胃液(摂食時)中に0.109mg/ml、擬似胃液(絶食時)中に0.145mg/mL、擬似腸液(摂食時)中に0.0227mg/mL、および擬似腸液(絶食時)中に0.133mg/mL。
【0074】
実施例10.懸濁液安定性
水性媒体中に懸濁した本発明の共結晶体の物理的安定性を評価した。具体的には、該共結晶体粉末を、例えば(1)非緩衝の脱イオン水、および(2)HPMCの1%(w/w)溶液(低粘性度)中、25℃にて、約6mg/mlの名目濃度でスラリーにした。次いで、スラリーを、磁性撹拌棒およびプレートを用いて混合した。固体サンプルを、例えば1、2、6および24時間の間隔でろ過により単離した。
【0075】
他の態様
本発明は、その詳細な説明と関連して記載されているが、上記の記載が説明を目的としており、本発明の範囲を限定せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲により定義されることが、理解されるべきである。他の局面、利点および修飾は、添付の特許請求の範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸を含む、共結晶体。
【請求項2】
VX−950と4−ヒドロキシ安息香酸のモル比が、約5:1ないし約1:5の範囲内である、請求項1記載の共結晶体。
【請求項3】
VX−950と4−ヒドロキシ安息香酸のモル比が、約1:1である、請求項2記載の共結晶体。
【請求項4】
約17.61、18.07、18.87、19.68、および20.75° 2θでの4つのX線粉末回折ピーク(それぞれ約+/−0.3° 2θの標準偏差)のうち少なくとも2つを有する、請求項3記載の共結晶体。
【請求項5】
約191.19℃にてそのDSCサーモグラムのピークを有する(約+/−5℃の標準偏差)、請求項3記載の共結晶体。
【請求項6】
VX−950、4−アミノサリチル酸および4−ヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される共結晶形成体、ならびにアセトニトリル、酢酸エチル、エタノールおよびアセトンからなる群から選択される溶媒を含む、共結晶体。
【請求項7】
該溶媒がアセトニトリルである、請求項6記載の共結晶体。
【請求項8】
該共結晶形成体が4−アミノサリチル酸である、請求項7記載の共結晶体。
【請求項9】
VX−950と4−アミノサリチル酸のモル比が、約5:1ないし約1:5の範囲内である、請求項8記載の共結晶体。
【請求項10】
VX−950と4−アミノサリチル酸のモル比が、約1:1である、請求項9記載の共結晶体。
【請求項11】
VX−950とアセトニトリルのモル比が、約1:0.05ないし約1:1の範囲内である、請求項10記載の共結晶体。
【請求項12】
VX−950とアセトニトリルのモル比が、約1:0.34である、請求項11記載の共結晶体。
【請求項13】
約7.711、8.631、9.723、および9.959° 2θでの4つのX線粉末回折ピーク(それぞれ約+/−0.3° 2θの標準偏差)のうち少なくとも2つを有する、請求項12記載の共結晶体。
【請求項14】
約184.71℃にてそのDSCサーモグラムのピークを有する(約+/−5℃の標準偏差)、請求項12記載の共結晶体。
【請求項15】
該共結晶形成体が4−ヒドロキシ安息香酸である、請求項7記載の共結晶体。
【請求項16】
VX−950と4−ヒドロキシ安息香酸のモル比が、約5:1ないし約1:5の範囲内である、請求項15記載の共結晶体。
【請求項17】
VX−950と4−ヒドロキシ安息香酸のモル比が、約1:1である、請求項16記載の共結晶体。
【請求項18】
該溶媒がアセトニトリルである、請求項17記載の共結晶体。
【請求項19】
VX−950とアセトニトリルのモル比が、約1:0.05ないし約1:0.5である、請求項18記載の共結晶体。
【請求項20】
VX−950とアセトニトリルのモル比が、約1:0.14である、請求項19記載の共結晶体。
【請求項21】
約7.684、8.599、9.605、9.938° 2θでの4つのX線粉末回折ピーク(それぞれ約+/−0.3° 2θの標準偏差)のうち少なくとも2つを有する、請求項20記載の共結晶体。
【請求項22】
約190.78℃にてそのDSCサーモグラムのピークを有する(約+/−5℃の標準偏差)、請求項20記載の共結晶体。
【請求項23】
VX−950、ならびにフェニルアラニン、スレオニン、酒石酸およびアジピン酸からなる群から選択される共結晶形成体を含む、共結晶体。
【請求項24】
VX−950と該共結晶形成体のモル比が、約5:1ないし約1:5の範囲内である、請求項23記載の共結晶体。
【請求項25】
VX−950と該共結晶形成体のモル比が、約1:1である、請求項24記載の共結晶体。
【請求項26】
VX−950、ならびにスクシニックアセテート(succinic acetate)およびプロリンからなる群から選択される共形態形成体を含む、共形態。
【請求項27】
VX−950と該共形態形成体のモル比が、約5:1ないし約1:5の範囲内である、請求項26記載の共形態。
【請求項28】
VX−950と該共形態形成体のモル比が、約1:1である、請求項27記載の共形態。
【請求項29】
VX−950、ならびにメチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、d−ビオチン、および酒石酸からなる群から選択される共形態形成体を含む、共形態。
【請求項30】
VX−950と該共形態形成体のモル比が、約5:1ないし約1:40の範囲内である、請求項29記載の共形態。
【請求項31】
VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸を含む、医薬組成物。
【請求項32】
VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸が一体となって、結晶形態である、請求項31記載の医薬組成物。
【請求項33】
VX−950と4−ヒドロキシ安息香酸のモル比が、約5:1ないし約1:5の範囲内である、請求項32記載の医薬組成物。
【請求項34】
VX−950と4−ヒドロキシ安息香酸のモル比が、約1:1である、請求項33記載の医薬組成物。
【請求項35】
希釈剤、溶媒、賦形剤、担体、または可溶化剤をさらに含む、請求項31記載の医薬組成物。
【請求項36】
VX−950、4−アミノサリチル酸および4−ヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される共結晶形成体;ならびに、アセトニトリル、酢酸エチル、エタノール、アセトン、ジクロロメタン、およびメチルtert−ブチルエーテルからなる群から選択される溶媒を含む、医薬組成物。
【請求項37】
VX−950、該共結晶形成体、および該溶媒が一体となって、結晶形態である、請求項36記載の医薬組成物。
【請求項38】
該溶媒がアセトニトリルである、請求項37記載の医薬組成物。
【請求項39】
VX−950と共結晶形成体のモル比が、約5:1ないし約1:5の範囲内である、請求項38記載の医薬組成物。
【請求項40】
VX−950と共結晶形成体のモル比が、約1:1である、請求項39記載の医薬組成物。
【請求項41】
VX−950とアセトニトリルのモル比が、約1:0.01ないし約1:1の範囲内である、請求項40記載の医薬組成物。
【請求項42】
該共結晶形成体が、4−ヒドロキシ安息香酸であり、VX−950とアセトニトリルのモル比が、約1:0.14である、請求項41記載の医薬組成物。
【請求項43】
該共結晶形成体が、4−アミノサリチル酸であり、VX−950とアセトニトリルのモル比が、約1:0.34である、請求項41記載の医薬組成物。
【請求項44】
第二溶媒、希釈剤、賦形剤、担体、または可溶化剤をさらに含む、請求項36記載の医薬組成物。
【請求項45】
VX−950、ならびにフェニルアラニン、スレオニン、酒石酸、およびアジピン酸からなる群から選択される共結晶形成体を含む、医薬組成物。
【請求項46】
溶媒、希釈剤、賦形剤、担体、または可溶化剤をさらに含む、請求項45記載の医薬組成物。
【請求項47】
VX−950、ならびにスクシニックアセテートおよびプロリンからなる群から選択される共結晶形成体を含む、医薬組成物。
【請求項48】
溶媒、希釈剤、賦形剤、担体、または可溶化剤をさらに含む、請求項47記載の医薬組成物。
【請求項49】
VX−950、ならびにメチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、d−ビオチン、および酒石酸からなる群から選択される共結晶形成体を含む、医薬組成物。
【請求項50】
溶媒、希釈剤、賦形剤、担体、または可溶化剤をさらに含む、請求項49記載の医薬組成物。
【請求項51】
a.VX−950を提供する工程、
b.4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノサリチル酸、フェニルアラニン、スレオニン、酒石酸、アジピン酸、スクシニックアセテート、プロリン、メチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、およびd−ビオチンからなる群から選択される共結晶形成体を提供する工程、
c.固相中で共結晶体が形成するように、結晶条件下で、溶液中、VX−950と共結晶形成体を、粉砕するか、加熱するか、共に昇華させるか、共に融解させるか、または接触させる工程、そして
d.所望により、工程(c)で形成した共結晶体を単離する工程
を含む、請求項1−30のいずれか一項記載の共結晶体の製造方法。
【請求項52】
a.VX−950、ならびに4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノサリチル酸、フェニルアラニン、スレオニン、酒石酸、アジピン酸、スクシニックアセテート、プロリン、メチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、およびd−ビオチンからなる群から選択される共結晶形成体について、興味のある化学的または物理的特性を測定する工程、
b.興味のある化学的または物理的特性の望ましい調節をもたらし得る、VX−950および共結晶形成体のモル分率を決定する工程、そして
c.工程(b)で決定したモル分率を有する共結晶体を製造する工程
を含む、請求項1−30のいずれか一項記載の共結晶体の興味のある化学的または物理的特性を調節する方法。
【請求項1】
VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸を含む、共結晶体。
【請求項2】
VX−950と4−ヒドロキシ安息香酸のモル比が、約5:1ないし約1:5の範囲内である、請求項1記載の共結晶体。
【請求項3】
VX−950と4−ヒドロキシ安息香酸のモル比が、約1:1である、請求項2記載の共結晶体。
【請求項4】
約17.61、18.07、18.87、19.68、および20.75° 2θでの4つのX線粉末回折ピーク(それぞれ約+/−0.3° 2θの標準偏差)のうち少なくとも2つを有する、請求項3記載の共結晶体。
【請求項5】
約191.19℃にてそのDSCサーモグラムのピークを有する(約+/−5℃の標準偏差)、請求項3記載の共結晶体。
【請求項6】
VX−950、4−アミノサリチル酸および4−ヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される共結晶形成体、ならびにアセトニトリル、酢酸エチル、エタノールおよびアセトンからなる群から選択される溶媒を含む、共結晶体。
【請求項7】
該溶媒がアセトニトリルである、請求項6記載の共結晶体。
【請求項8】
該共結晶形成体が4−アミノサリチル酸である、請求項7記載の共結晶体。
【請求項9】
VX−950と4−アミノサリチル酸のモル比が、約5:1ないし約1:5の範囲内である、請求項8記載の共結晶体。
【請求項10】
VX−950と4−アミノサリチル酸のモル比が、約1:1である、請求項9記載の共結晶体。
【請求項11】
VX−950とアセトニトリルのモル比が、約1:0.05ないし約1:1の範囲内である、請求項10記載の共結晶体。
【請求項12】
VX−950とアセトニトリルのモル比が、約1:0.34である、請求項11記載の共結晶体。
【請求項13】
約7.711、8.631、9.723、および9.959° 2θでの4つのX線粉末回折ピーク(それぞれ約+/−0.3° 2θの標準偏差)のうち少なくとも2つを有する、請求項12記載の共結晶体。
【請求項14】
約184.71℃にてそのDSCサーモグラムのピークを有する(約+/−5℃の標準偏差)、請求項12記載の共結晶体。
【請求項15】
該共結晶形成体が4−ヒドロキシ安息香酸である、請求項7記載の共結晶体。
【請求項16】
VX−950と4−ヒドロキシ安息香酸のモル比が、約5:1ないし約1:5の範囲内である、請求項15記載の共結晶体。
【請求項17】
VX−950と4−ヒドロキシ安息香酸のモル比が、約1:1である、請求項16記載の共結晶体。
【請求項18】
該溶媒がアセトニトリルである、請求項17記載の共結晶体。
【請求項19】
VX−950とアセトニトリルのモル比が、約1:0.05ないし約1:0.5である、請求項18記載の共結晶体。
【請求項20】
VX−950とアセトニトリルのモル比が、約1:0.14である、請求項19記載の共結晶体。
【請求項21】
約7.684、8.599、9.605、9.938° 2θでの4つのX線粉末回折ピーク(それぞれ約+/−0.3° 2θの標準偏差)のうち少なくとも2つを有する、請求項20記載の共結晶体。
【請求項22】
約190.78℃にてそのDSCサーモグラムのピークを有する(約+/−5℃の標準偏差)、請求項20記載の共結晶体。
【請求項23】
VX−950、ならびにフェニルアラニン、スレオニン、酒石酸およびアジピン酸からなる群から選択される共結晶形成体を含む、共結晶体。
【請求項24】
VX−950と該共結晶形成体のモル比が、約5:1ないし約1:5の範囲内である、請求項23記載の共結晶体。
【請求項25】
VX−950と該共結晶形成体のモル比が、約1:1である、請求項24記載の共結晶体。
【請求項26】
VX−950、ならびにスクシニックアセテート(succinic acetate)およびプロリンからなる群から選択される共形態形成体を含む、共形態。
【請求項27】
VX−950と該共形態形成体のモル比が、約5:1ないし約1:5の範囲内である、請求項26記載の共形態。
【請求項28】
VX−950と該共形態形成体のモル比が、約1:1である、請求項27記載の共形態。
【請求項29】
VX−950、ならびにメチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、d−ビオチン、および酒石酸からなる群から選択される共形態形成体を含む、共形態。
【請求項30】
VX−950と該共形態形成体のモル比が、約5:1ないし約1:40の範囲内である、請求項29記載の共形態。
【請求項31】
VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸を含む、医薬組成物。
【請求項32】
VX−950および4−ヒドロキシ安息香酸が一体となって、結晶形態である、請求項31記載の医薬組成物。
【請求項33】
VX−950と4−ヒドロキシ安息香酸のモル比が、約5:1ないし約1:5の範囲内である、請求項32記載の医薬組成物。
【請求項34】
VX−950と4−ヒドロキシ安息香酸のモル比が、約1:1である、請求項33記載の医薬組成物。
【請求項35】
希釈剤、溶媒、賦形剤、担体、または可溶化剤をさらに含む、請求項31記載の医薬組成物。
【請求項36】
VX−950、4−アミノサリチル酸および4−ヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される共結晶形成体;ならびに、アセトニトリル、酢酸エチル、エタノール、アセトン、ジクロロメタン、およびメチルtert−ブチルエーテルからなる群から選択される溶媒を含む、医薬組成物。
【請求項37】
VX−950、該共結晶形成体、および該溶媒が一体となって、結晶形態である、請求項36記載の医薬組成物。
【請求項38】
該溶媒がアセトニトリルである、請求項37記載の医薬組成物。
【請求項39】
VX−950と共結晶形成体のモル比が、約5:1ないし約1:5の範囲内である、請求項38記載の医薬組成物。
【請求項40】
VX−950と共結晶形成体のモル比が、約1:1である、請求項39記載の医薬組成物。
【請求項41】
VX−950とアセトニトリルのモル比が、約1:0.01ないし約1:1の範囲内である、請求項40記載の医薬組成物。
【請求項42】
該共結晶形成体が、4−ヒドロキシ安息香酸であり、VX−950とアセトニトリルのモル比が、約1:0.14である、請求項41記載の医薬組成物。
【請求項43】
該共結晶形成体が、4−アミノサリチル酸であり、VX−950とアセトニトリルのモル比が、約1:0.34である、請求項41記載の医薬組成物。
【請求項44】
第二溶媒、希釈剤、賦形剤、担体、または可溶化剤をさらに含む、請求項36記載の医薬組成物。
【請求項45】
VX−950、ならびにフェニルアラニン、スレオニン、酒石酸、およびアジピン酸からなる群から選択される共結晶形成体を含む、医薬組成物。
【請求項46】
溶媒、希釈剤、賦形剤、担体、または可溶化剤をさらに含む、請求項45記載の医薬組成物。
【請求項47】
VX−950、ならびにスクシニックアセテートおよびプロリンからなる群から選択される共結晶形成体を含む、医薬組成物。
【請求項48】
溶媒、希釈剤、賦形剤、担体、または可溶化剤をさらに含む、請求項47記載の医薬組成物。
【請求項49】
VX−950、ならびにメチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、d−ビオチン、および酒石酸からなる群から選択される共結晶形成体を含む、医薬組成物。
【請求項50】
溶媒、希釈剤、賦形剤、担体、または可溶化剤をさらに含む、請求項49記載の医薬組成物。
【請求項51】
a.VX−950を提供する工程、
b.4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノサリチル酸、フェニルアラニン、スレオニン、酒石酸、アジピン酸、スクシニックアセテート、プロリン、メチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、およびd−ビオチンからなる群から選択される共結晶形成体を提供する工程、
c.固相中で共結晶体が形成するように、結晶条件下で、溶液中、VX−950と共結晶形成体を、粉砕するか、加熱するか、共に昇華させるか、共に融解させるか、または接触させる工程、そして
d.所望により、工程(c)で形成した共結晶体を単離する工程
を含む、請求項1−30のいずれか一項記載の共結晶体の製造方法。
【請求項52】
a.VX−950、ならびに4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノサリチル酸、フェニルアラニン、スレオニン、酒石酸、アジピン酸、スクシニックアセテート、プロリン、メチル4−ヒドロキシベンゾエート、アントラニル酸、およびd−ビオチンからなる群から選択される共結晶形成体について、興味のある化学的または物理的特性を測定する工程、
b.興味のある化学的または物理的特性の望ましい調節をもたらし得る、VX−950および共結晶形成体のモル分率を決定する工程、そして
c.工程(b)で決定したモル分率を有する共結晶体を製造する工程
を含む、請求項1−30のいずれか一項記載の共結晶体の興味のある化学的または物理的特性を調節する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−519330(P2010−519330A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551708(P2009−551708)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/002568
【国際公開番号】WO2008/106151
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/002568
【国際公開番号】WO2008/106151
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】
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