説明

共通キャリアタンパク質を有する混合型髄膜炎菌結合体

【課題】複数の髄膜炎菌血清群由来の結合体化莢膜糖を含有するが、キャリア誘導性エピトープ抑制の危険を回避するワクチンを提供する。
【解決手段】本発明は、髄膜炎菌によって引き起こされる疾患に対して患者を免疫するための組成物を提供し、この組成物は、以下のうちの少なくとも2つを含有する:(a)血清群A髄膜炎菌の莢膜糖とキャリアタンパク質との結合体;(b)血清群C髄膜炎菌の莢膜糖とキャリアタンパク質との結合体;(c)血清群W135髄膜炎菌の莢膜糖とキャリアタンパク質との結合体;(d)血清群Y髄膜炎菌の莢膜糖とキャリアタンパク質との結合体。この組成物は、上記結合体(a)〜(d)のうちの少なくとも2つが同じキャリアタンパク質(「共通キャリア」)を使用し、そしてこの組成物が、上記共通キャリアを非結合体化形態で含有し、非結合体化共通キャリアの濃度が10μg未満である、という特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において引用される全ての文献は、その全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、Neisseria meningitidisに対するワクチンに関する。詳細には、本発明は、複数の髄膜炎菌血清群に由来する結合体化莢膜糖に基づくワクチンに関する。
【背景技術】
【0003】
生体の莢膜多糖に基づいて、N.meningitidisの12種の血清群が同定されている(A、B、C、H、I、K、L、29E、W135、X、Yおよび Z)。血清群Aは、サハラ以南のアフリカにおける伝染病に最も多く関連する病原である。血清群BおよびCは、米国およびほとんどの先進国における大部分の症例の原因である。血清群W135およびYは、米国および先進国の残りの症例の原因である。
【0004】
血清群A+C由来の莢膜多糖の二価ワクチンは、Mencevax ACTM製品として利用可能である。血清群A+C+Y+W135由来の糖の4価混合物は、Mencevax ACWYTMおよびMenomuneTM製品として利用可能である(非特許文献1〜3)[参考文献1〜3]。これらのワクチンは、青年および成人に有効であるが、弱い免疫応答および短い防御持続時間しか誘導しない。なぜなら、非結合体化多糖は、追加免疫され得ない弱い免疫応答を誘導するT細胞非依存性抗原であるからである。
【0005】
この莢膜糖の弱い免疫に対処するため、糖がキャリアタンパク質に結合された結合体化ワクチンが開発された。血清群Cに対する結合体化ワクチンは、ヒトへの使用が承認されており、そしてこのワクチンとしては、MenjugateTM(非特許文献4)[参考文献4]、MeningitecTMおよびNeisVac−CTMが挙げられる。血清群A+C由来の結合体の混合物がまた試験され(非特許文献5〜6)[参考文献5〜6]、そして血清群A+C+W135+Y由来の結合体の混合物が報告されている(特許文献1〜2、非特許文献7〜8)[参考文献7〜10]。
上記混合された結合体化ワクチンは、混合された糖ワクチンに類似しているが、いくつかの重要な違いが存在する。特に、結合体混合物中におけるキャリアタンパク質の含有は、特に、キャリア誘導性エピトープ抑制(または、一般的に知られているように、「キャリア抑制」)に関して、新たな危険性を提示する。キャリア誘導性エピトープ抑制とは、すなわち、キャリアタンパク質による動物の免疫が、その動物が、そのキャリアタンパク質上に提示される抗原エピトープに対する免疫応答を後に誘発することを防げる現象である(非特許文献9)[参考文献11]。この問題は、同じキャリアタンパク質を有する複数の結合体が同時に投与される場合に特に懸念される(非特許文献10)[参考文献12]。
キャリア抑制は、一価髄膜炎菌結合体について調べられており(非特許文献11)[参考文献13]、混合型髄膜炎菌結合体に関するいくつかの研究が存在する。例えば、非特許文献12[参考文献14]は、Bordetella pertussisの線毛(fimbriae)が多価結合体化ワクチンにおけるキャリア抑制を回避するためにキャリアとして使用されるべきであることを示唆し、そして特許文献3[参考文献15]は、キャリア抑制がワクチンにおいて1つより多くの型のキャリアタンパク質(H.influenzaeプロテインDおよび/または破傷風トキソイド(Tt)が好ましい)を使用することによって対処されるはずであることを示唆する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第02/058737号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/007985号パンフレット
【特許文献3】国際公開第02/00249号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Baklaicら、「Infect.Immun.」、1983年、第42巻、p.599−604
【非特許文献2】Armandら、「J.Biol.Stand.」、1982年、第10巻、p.335−339
【非特許文献3】Cadozら、「Vaccine」、1985年、第3巻、p.340−342
【非特許文献4】Jones、「Curr Opin Investig Drugs」、2001年、第2巻、p.47−49
【非特許文献5】Costantinoら、「Vaccine」、1992年、第10巻、p.691−8
【非特許文献6】Liebermanら、「JAMA」、1996年、第275巻、p.1499−503
【非特許文献7】Rennelsら、「Pediatr Infect Dis J」、2002年、第21巻、p.978−979
【非特許文献8】Campbellら、「J Infect Dis」、2002年、第186巻、p.1848−1851
【非特許文献9】Herzenbergら、「Nature」、1980年、第285巻、p.664−667
【非特許文献10】Daganら、「Infect Immun」、1998年、第66巻、p.2093−2098
【非特許文献11】Burrageら、「Infect Immun」、2002年、第70巻、p.4946−4954
【非特許文献12】Reddinら、「FEMS Immunol Med Microbiol」、2001年、第31巻、p.153−162
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
複数の髄膜炎菌血清群由来の結合体化莢膜糖を含有するが、キャリア誘導性エピトープ抑制の危険を回避する、さらなるワクチンを提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の開示)
キャリア抑制を回避するための上記特許文献3において示唆されるアプローチ(すなわち、1つより多くの型の異なるキャリアタンパク質の使用)に対して、本発明は、複数の結合体に対して同じ型のキャリアタンパク質(「共通キャリア」)を使用する。このことは、商業的規模でのワクチンの製造を簡略化する。しかし、共通キャリアを選択することビよって、キャリア抑制の可能性は増加する。ワクチンは、一般的に、別個の濃縮されたバルクに調製された個々の結合体を混合することによって調製される。そして各バルクは、通常、結合体化反応からの残りの量の非結合体化キャリアタンパク質を含む。非結合体化キャリアは、キャリア抑制を生じ得、そして各濃縮されたバルクがχ量の非結合体化キャリアを含む場合、4価混合物は、4χ量の非結合体化キャリアを含む。キャリア抑制が、特定の閾値のキャリアが存在する場合のみ(例えば、非結合体化キャリアのレベルが、関連するB細胞および/もしくはT細胞を飽和するに十分高い場合のみ、または非結合体化キャリアのレベルが、関連するTサプレッサ細胞を刺激するに十分高い場合のみ)に見られる場合、たとえ、各個別の結合体のレベルが閾値より低く、単独で投与された場合には抑制を引き起こし得ないとしても、4χ量レベルの抑制が生じ得る。
【0010】
したがって、多価ワクチンのための共通キャリアの選択は、一価ワクチンと比較した場合、または異なるキャリアタンパク質を使用する結合体と比較した場合、キャリア抑制の危険性を顕著に増加させる。この危険性の増加を補償するため。本発明は、ワクチン中の非結合体化キャリアタンパク質の量を制御する。キャリア抑制の可能性は、髄膜炎菌の糖に対して使用されるキャリアタンパク質の性質に注目することによって、非特許文献11〜12および特許文献3において対処されるが、本発明は、代わりに、使用されるキャリアタンパク質の量、より詳細には、非結合体化形態で存在する量に注目する。ワクチン中の非結合体化キャリアタンパク質の量を最小限にすることによって、共通キャリアが使用される場合であっても、キャリア抑制は回避され得る。
【0011】
結合体化ワクチン中に非結合体化キャリアタンパク質を含有することは、以前に考慮されている[16]が、この以前の研究における非結合体化キャリアタンパク質(破傷風トキソイド)の濃度は、約10Lf/用量であった。0.5mlの用量では、換算係数1Lf=3μgを使用すると[12]、これらのワクチンは、約60μg/mlの非結合体化キャリアタンパク質を含有した。引用文献16は、キャリア抑制の回避に関心を払わなかった。
【0012】
したがって、本発明は、Neisseria meningitidisによって引き起こされる疾患に対して患者を免疫するための組成物を提供する。この組成物は、以下のうちの少なくとも2つを含有する:(a)(i)血清群AのN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体;(b)(i)血清群CのN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体;(c)(i)血清群W135のN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体;(d)(i)血清群YのN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体。この組成物は、(1)上記結合体(a)、(b)、(c)および(d)のうちの少なくとも2つは、同じキャリアタンパク質(「共通キャリア」)を使用し、そして(2)この組成物は、上記共通キャリアを非結合体化形態で含有し、ここで、この非結合体化共通キャリアの濃度は、10μg/ml未満である、という特徴を有する。
【0013】
本発明はまた、Neisseria meningitidisによって引き起こされる疾患に対して患者を免疫するための組成物を調製するためのプロセスを提供する。このプロセスは、以下の工程を包含する:
(1)以下のうちの少なくとも2つ:(a)(i)血清群AのN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体;(b)(i)血清群CのN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体;(c)(i)血清群W135のN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体;(d)(i)血清群YのN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体、を調製する工程であって、上記結合体(a)、(b)、(c)および(d)のうちの少なくとも2つは、同じキャリアタンパク質(「共通キャリア」)を使用する、工程;ならびに
(2)(1)において調製された少なくとも2つの結合体を混合して、上記共通キャリアを非結合体化形態で含有する組成物を得る工程であって、ここで、この非結合体化共通キャリアの濃度が10μg/ml未満である、工程。
【0014】
このプロセスは、非結合体化共通キャリアの量を測定する1以上の工程を包含し得る。このような測定は、混合の前の個々の結合体において実施され得、そして/または混合後の混ぜ合わされた結合体において実施され得る。個々の結合体は、このような測定の結果に基づいて、混合に関して排除され得るか、または選択され得、そして最終組成物は、同様に、このような測定の結果に基づいて、医師への販売に関して排除され得るか、または選択され得る。
【0015】
本発明はまた、Neisseria meningitidisによって引き起こされる疾患に対して患者を免疫するための組成物を調製するためのプロセスを提供する。このプロセスは、以下の工程を包含する:
(a)A、C、W135およびYからなる群より、n種の異なる髄膜炎菌血清群を選択し(ここで、nの値は、2、3もしくは4である);(b)このn種の選択された血清群の各々に対して、以下:(i)その血清群由来の莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体を調製する工程であって、ここで、上記n種の結合体の各々は、同じキャリアタンパク質(「共通キャリア」)を使用する、工程;ならびに(c)工程(b)において調製された上記n種の結合体を混合して、非結合体化形態の上記共通キャリアを含む組成物を得る工程であって、ここで、この非結合体化された共通キャリアの濃度は、10μg/ml未満である、工程。好ましくは、nの値は4であり、これによって本発明は、Neisseria meningitidisによって引き起こされる疾患に対して患者を免疫するための組成物を調製するためのプロセスを提供する。このプロセスは、以下の工程を包含する:(a)髄膜炎菌血清群A、C、W135およびYの各々について、(i)これらの血清群由来の莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体を調製する工程であって、上記4種の結合体の各々は、同じキャリアタンパク質を使用する、工程;ならびに(b)これらの結合体を混合して、非結合体化形態の共通キャリアを含有する組成物を得る工程であって、この非結合体化共通キャリアの濃度は、10μg/ml未満である、工程。
【0016】
上記のように、このプロセスは、工程(b)における混合の前および/または後に、非結合体化共通キャリアの量を測定する1以上の工程を包含し得る。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
Neisseria meningitidisによって引き起こされる疾患に対して患者を免疫するための組成物であって、該組成物は、以下:
(a)(i)血清群AのN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体;
(b)(i)血清群CのN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体;
(c)(i)血清群W135のN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体;
(d)(i)血清群YのN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体、
のうちの少なくとも2つを含有し、
以下:(1)該結合体(a)、(b)、(c)および(d)のうちの少なくとも2つは、同じキャリアタンパク質(「共通キャリア」)を使用し、そして、(2)該組成物は、該共通キャリアを非結合体化形態で含有し、ここで、該非結合体化共通キャリアの濃度は、10μg/ml未満である、
という特徴を有する、組成物。
(項目2)
血清群AおよびCの両方に由来する結合体を含有する、項目1に記載の組成物。
(項目3)
血清群A、C、W135およびYの全てに由来する結合体を含有する、項目1または2に記載の組成物。
(項目4)
前記髄膜炎菌結合体の各々が、ジフテリアトキソイド;破傷風トキソイド;CRM197;およびH.influenzae由来のプロテインDから選択される共通キャリアに結合体化されている、項目1〜3のいずれかに記載の組成物。
(項目5)
前記共通キャリアが、ジフテリアトキソイドである、項目4に記載の組成物。
(項目6)
前記共通キャリアが、H.influenzaeのプロテインDである、項目4に記載の組成物。
(項目7)
前記各血清群の糖の質量が、2μgと10μgとの間である、項目1〜6のいずれかに記載の組成物。
(項目8)
前記各血清群の糖の質量が、互いの±10%以内である、項目1〜7のいずれかに記載の組成物。
(項目9)
前記非結合体化共通キャリアの濃度が、2μg/ml未満である、項目1〜8のいずれかに記載の組成物。
(項目10)
前記組成物中の共通キャリアの全体での濃度が、100μg/ml未満である、項目1〜9のいずれかに記載の組成物。
(項目11)
筋肉内注射のために処方されている、項目1〜10のいずれかに記載の組成物。
(項目12)
水酸化アルミニウムアジュバントおよび/またはリン酸アルミニウムアジュバントをさらに含有する、項目1〜11のいずれかに記載の組成物。
(項目13)
前記組成物が、水銀物質を全く含まない、項目1〜12のいずれかに記載の組成物。
(項目14)
項目1〜13のいずれかに記載の組成物であって、以下のさらなる抗原:
(i)B型Haemophilus influenzae由来の結合体化された莢膜糖;
(ii)Streptococcus pneumoniae由来の結合体化された莢膜糖;
(iii)N.meningitidis 血清群B由来のタンパク質抗原;
(iv)ジフテリア抗原;
(v)破傷風抗原;
(vi)細胞性百日咳抗原もしくは全細胞百日咳抗原;
(vii)1種以上の無細胞百日咳抗原;
(viii)B型肝炎ウイルス由来の抗原;
(ix)1種以上のポリオウイルス抗原;
(x)A型肝炎ウイルス由来の抗原
のうちの1つ以上をさらに含有する、組成物。
(項目15)
水性形態である、項目1〜14のいずれかに記載の組成物。
(項目16)
凍結乾燥形態である、項目1〜15のいずれかに記載の組成物。
(項目17)
糖アルコールまたはショ糖を含有する、項目1〜16のいずれかに記載の組成物。
(項目18)
項目1〜17のいずれかに記載の組成物を含有する、バイアル。
(項目19)
項目1〜18のいずれかに記載の組成物を含有する、シリンジ。
(項目20)
項目1〜15のいずれか1項に記載の組成物を調製するためのキットであって、該キットは、少なくとも1種の凍結乾燥形態の髄膜炎菌結合体と少なくとも1種の水性形態の髄膜炎菌結合体とを備える、キット。
(項目21)
項目1〜15のいずれか1項に記載の組成物を調製するためのキットであって、該キットは、(i)項目15に記載の凍結乾燥組成物;および(ii)水性物質、を備え、該キットの構成要素(ii)は、水性組成物を提供するために、該構成要素(i)を再構成するためのものである、キット。
(項目22)
キットであって、以下:項目1〜17のいずれか1項に記載の組成物;および(ii)項目14に規定される抗原(i)〜(x)の1つ以上を含有する組成物、を備える、キット。
(項目23)
Neisseria meningitidisによって引き起こされる疾患に対して患者を免疫するための組成物を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、以下の工程:
(1)以下のうちの少なくとも2つ:
(a)(i)血清群AのN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体;
(b)(i)血清群CのN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体;
(c)(i)血清群W135のN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体;
(d)(i)血清群YのN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体、
を調製する工程であって、
該結合体(a)、(b)、(c)および(d)のうちの少なくとも2つは、同じキャリアタンパク質(「共通キャリア」)を使用する、工程;ならびに
(2)(1)において調製された少なくとも2つの結合体を混合して、該共通キャリアを非結合体化形態で含有する組成物を得る工程であって、ここで、該非結合体化共通キャリアの濃度が10μg/ml未満である、工程、
を包含する、プロセス。
(項目24)
Neisseria meningitidisによって引き起こされる疾患に対して患者を免疫するための組成物を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、以下の工程:
(1)A、C、W135およびYからなる群より、n種の異なる髄膜炎菌血清群を選択し、そして該n種の選択された血清群の各々に対して、以下:(i)該血清群由来の莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体を調製する工程であって、ここで、nの値は、2、3もしくは4であり、該n種の結合体の各々は、同じキャリアタンパク質(「共通キャリア」)を使用する、工程;ならびに
(2)工程(1)において調製された該n種の結合体を混合して、非結合体化形態の該共通キャリアを含む組成物を得る工程であって、ここで、該非結合体化された共通キャリアの濃度は、10μg/ml未満である、工程
を包含するプロセス。
(項目25)
前記nの値が2または4である、項目24に記載のプロセス。
(項目26)
前記非結合体化共通キャリアの量を測定する1以上の工程をさらに包含する、項目23〜25のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目27)
前記結合体を混合する工程の前に測定する工程を包含し、および/または該結合体を混合する工程の後に測定する工程を包含する、項目26に記載のプロセス。
(項目28)
ワクチン製造および/またはヒト投与のための組成物の適合性を評価するためのプロセスであって、以下:
項目23〜27のいずれか1項の(1)および(2)を実行する工程を包含し、そして
(3)該組成物中の非結合体化共通キャリアの濃度を測定する工程と、(4−i)該非結合体化キャリアの濃度が<10μg/mlである場合、該組成物をワクチン製造および/もしくはヒトへの投与について許容する工程;または(4−ii)該非結合体化キャリアの濃度が≧10μg/mlである場合、該組成物を排除する工程のいずれかとを、さらに包含する、プロセス。
【0017】
(結合体)
結合体化は、糖の免疫原性を増強するために使用される。なぜなら、結合体化は、糖をT細胞非依存性抗原からT細胞依存性抗原へと変換して免疫学的記憶をプライミングさせるからである。結合体化は、小児用ワクチンにとって特に有用であり(例えば、参考文献17)、そして公知の技術である(例えば、参考文献18〜27)。
【0018】
本発明の組成物は、以下の髄膜炎菌結合体のうちの少なくとも2つ(すなわち、2、3、または4)を含む:(a)(i)血清群AのN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体;(b)(i)血清群CのN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体;(c)(i)血清群W135のN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体;(d)(i)血清群YのN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体。
【0019】
これらの結合体のうち、少なくとも2つ(すなわち、2、3、または4)が、共通のキャリアタンパク質を使用する。これは、単一の結合体分子が1つより多くの血清群由来の糖を含むことを意味しない(参考文献28および29を参照のこと)。むしろ、単一の結合体分子は、単一の血清群の糖を保有するが、同じ型のキャリアタンパク質が、各々の異なる血清群に対して使用される。単一の結合体分子内に1つより多くの型の糖(例えば、異なる長さのフラグメント)が存在し得るが、これらは、単一の血清群に由来する。共通キャリアを使用する例として、タンパク質のサンプルは、4つに分割され得、4分割の各々は、単一の血清群に由来する莢膜糖フラグメントを使用する結合体を調製するために使用され、そしてこれらの結合体は、混合されて、共通キャリアを含む4価結合体を生成し得る。
【0020】
莢膜糖は、髄膜炎菌の血清群A、C、W135およびYから選択され、その結果、組成物はこれら4種の血清群のうちの2種、3種または4種全て由来の糖を含む。特定の組成物は、血清群AおよびC;血清群AおよびW135;血清群AおよびY;血清群CおよびW135;血清群CおよびY;血清群W135およびY;血清群AおよびCおよびW135;血清群AおよびCおよびY;血清群AおよびW135およびY;血清群CおよびW135およびY;血清群AおよびCおよびW135およびY由来の糖を含む。少なくとも血清群Cを含む組成物(例えば、AおよびC)が好ましく、全4種の血清群由来の糖を含む組成物が最も好ましい。
【0021】
これら4種の血清群の各々の莢膜糖は、良く特徴付けられている。血清群A髄膜炎菌の莢膜糖は、C3位とC4位とに部分的なO−アセチル化を有する、(a1(R)6)連結型N−アセチル−D−マンノサミン−1−リン酸のホモポリマーである。このアセチル基は、加水分解を防止するブロック基(blocking group)により置換され得[30]、そして、このような修飾糖は、依然として本発明の意味の範囲内の血清群A糖である。血清群Cの莢膜糖は、(a2→9)連結型シアル酸(N−アセチルノイラミン酸または「NeuNAc」)のホモポリマーである。大半の血清群C株は、シアル酸残基のC−7および/またはC−8においてO−アセチル基を有するが、臨床単離物のうちの約15%は、これらのO−アセチル基を欠いている[31、32]。糖の構造は、→9)−Neu p NAc 7/8 OAc−(a2→のように記載される。血清群W135糖は、シアル酸−ガラクトース二糖単位のポリマーである。血清群C糖と同様に、これは種々のO−アセチル化を有するが、それはシアル酸の7位と9位におけるものである[33]。この構造は、→4)−D−Neup5Ac(7/9OAc)−a−(2→6)−D−Gal−a−(1→のように記載される。血清群Y糖は、二糖の反復単位がガラクトースの代わりにグルコースを含むことを除いて、血清群W135糖に類似する。血清群W135と同様に、これは、シアル酸の7位と9位における種々のO−アセチル化を有する[33]。血清群Yの構造は、→4)−D−Neup5Ac(7/9OAc)−a−(2→6)−D−Glc−a−(1→のように記載される。
【0022】
本発明にしたがって使用される糖は、先に記載されるように(例えば、天然の莢膜糖に見られるのと同じO−アセチル化パターンにより)O−アセチル化され得るか、またはこれらは、糖の環の1つ以上の位置において、部分的にか、もしくは完全に脱O−アセチル化され得るか、またはこれらは、天然の莢膜糖と比較して、過剰にO−アセチル化され得る。
【0023】
本発明にしたがって使用される糖は、好ましくは細菌において見られる天然の莢膜糖よりも短い。したがって、糖は、好ましくは、連結前ではなく精製後に生じる脱重合により、脱重合される。脱重合は、糖の鎖長を短くする。好ましい脱重合方法は、過酸化水素の使用を含む[7]。過酸化水素は、糖に添加され(例えば、1%の最終H2O2濃度を与える)、次に、この混合物が、所望の鎖長の短縮が達成されるまで、インキュベートされる(例えば、約55℃で)。別の脱重合方法は、酸加水分解を含み[8]、本発明の結合体における、好ましく脱重合化された糖は、以下の範囲の平均重合度を有する:A=10−20;C=12−22;W135=15−25;Y=15−25。他の脱重合方法は、当業者にとって公知である。本発明にしたがう使用のための結合体を調製するのに使用される糖は、脱重合方法のいずれかにより入手可能であり得る。脱重合は、免疫抗原性のための至適鎖長を提供するために、および/または、糖の物理的管理可能性のために鎖長を短くするために、使用され得る。
【0024】
結合体における使用のための代表的なキャリアタンパク質は、通常トキソイド形態(例えば、不活性化化学薬品(例えば、ホルマリンまたはホルムアルデヒド)による処理によって取得される)にある、細菌毒素(例えば、ジフテリア毒素[例えば、参考文献34の第13章;参考文献35〜38を参照のこと](または、そのCRM197変異体[39〜42])および破傷風毒素)である。他の適切なキャリアタンパク質としては、N.meningitidis外膜タンパク質[43]、合成ペプチド[44、45]、熱ショックタンパク質[46、47]、百日咳タンパク質[48、49]、サイトカイン[50]、リンホカイン[50]、ホルモン[50]、増殖因子[50]、種々の病原体由来の抗原からの複数のヒトCD4+T細胞エピトープを含む人工タンパク質[51]、H.influenzae由来のプロテインD[52〜54]、ニューモリシン(pneumolysin)[55]、肺炎球菌表面タンパク質PspA[56]、鉄取り込みタンパク質(iron−uptake protein)[57]、C.difficile由来の毒素Aまたは毒素B[58]などが挙げられる。
【0025】
共通キャリアとしての使用のための、4種の特に好ましいキャリアタンパク質は、ジフテリアトキソイド(Dt)、破傷風トキソイド(Tt)、CRM197およびH.influenzae由来のプロテインDである。これらのタンパク質は、小児ワクチンにおける使用において、現在主要なキャリアであり、例えば、他のワクチンより早い投与か、それと同時の投与か、またはそれより遅い投与から、最もキャリア抑制の危険にあるキャリアであるので、好ましい。DtおよびプロテインDは、現在の小児ワクチンにおいて、CRM197およびTtよりも少ない頻度で使用される(例えば、GSK由来のHib結合体はキャリアとしてTtを使用する、HibTITERTM製品はCRM197を使用する、PrevenarTMにおける肺炎球菌結合体はCRM197を使用する、MenjugateTM製品およびMeningitecTM製品はCRM197を使用する、ならびにNeisVac−CTMはTtを使用する)ので、これらのタンパク質は最も好ましい共通キャリアである。したがって、キャリア抑制の危険をさらに最小限にするために、DtおよびH.influenzaeプロテインDが、共通キャリアとして使用される。
【0026】
結合体は、好ましくは、実質的に1:1:1:1の比率(糖の質量として測定される)を与えるように混合される(例えば、各々の血清群の糖の質量は、互いに±10%の範囲内である)。組成物中の、血清群あたりの髄膜炎菌抗原の代表的な量は、1μgと20μgとの間(例えば、血清群あたり2μgと10μgとの間、または約4μg)である。1:1:1:1の比率に対する代替的な方法として、2倍の血清群A用量が使用され得る(2:1:1:1)。
【0027】
1:15(すなわち、タンパク質過剰)と15:1(すなわち、糖過剰)との間(好ましくは、1:5と5:1との間)の糖:タンパク質比(w/w)を有する結合体が好ましい。過剰のキャリアタンパク質が好ましい。特にキャリアがDtの場合、約1:12または約1:3の糖:タンパク質比を有する結合体が好ましい。
【0028】
任意の適切な結合体化反応が、必要に応じて任意の適切なリンカーを用いて、使用され得る。
【0029】
糖は、代表的に、結合体化より先に活性化されるか、または官能化させる。活性化は、例えば、シアン化試薬[59、60など]を含み得る。他の適切な技術は、活性エステル、カルボジイミド、ヒドラジド、ノルボラン(norborane)、p−ニトロ安息香酸、N−ヒドロキシスクシニミド、S−NHS、EDC、TSTU(参考文献24の序論もまた参照のこと)を使用する。
【0030】
リンカー基を介する連結は、任意の公知の手順(例えば、参考文献61および参考文献62に記載される手順)を使用して作製され得る。連結の1つの型は、多糖の還元的アミノ化を伴い、生じるアミノ基とアジピン酸リンカー基の一端とを連結し、次いで、アジピン酸リンカー基の他の末端にタンパク質を連結する[22、63、64]。他のリンカーとしては、B−プロピオンアミド[65]、ニトロフェニル−エチルアミン[66]、ハロアシルハロゲン化物[67]、グリコシド連結[68]、6−アミノカプロン酸[69]、ADH[70]、C4〜C12部分[71]などが挙げられる。リンカーを使用することに対する代替的な方法として、直接連結が使用され得る。タンパク質への直接連結は、例えば、参考文献72および参考文献73に記載されるように、タンパク質との還元的アミノ化の前に、多糖の酸化を含み得る。
【0031】
好ましい結合体化プロセスは、以下を包含する:糖へのアミノ基の導入(例えば、−NH2による末端(=O基)の置換によって)、それに続くアジピン酸ジエステル(例えば、アジピン酸N−ヒドロキシスクシニミドジエステル)による誘導体化およびキャリアタンパク質(例えば、CRM197)との反応。この結合体化方法のさらなる詳細は、参考文献8に見出され得る。この方法によって入手可能な結合体は、本発明にしたがう使用のために好ましい結合体である。
【0032】
別の好ましい結合体化プロセスにおいて、糖は、アジピン酸ジヒドラジドと反応させられる。血清群Aに対して、カルボジイミド(EDAC)もまた、この段階において添加され得る。反応時間後、シアノホウ化水素ナトリウムが添加される。次いで、誘導体化された糖が、例えば、限外濾過によって調製され得る。それから、誘導体化された糖が、キャリアタンパク質(例えば、ジフテリアトキソイド)と混合され、そしてカルボジイミドが添加される。反応時間後、結合体が回収され得る。この結合方法のさらなる詳細は、参考文献8に見出され得る。この方法により入手可能な結合体は、本発明にしたがう使用のために好ましい結合体(例えば、ジフテリアトキソイドキャリアとアジピン酸リンカーとを含む結合体)である。
【0033】
別の好ましい結合体化プロセスにおいて、糖は、シアン化試薬により誘導体化され[60]、続いて、リンカーを使用する必要なく、タンパク質(直接か、またはキャリアへのチオール求核基またはヒドラジド求核基の導入後)に連結される。適切なシアン化試薬としては、テトラフルオロホウ酸1−シアノ−4−(ジメチルアミノ)−ピリジニウム(「CDAP」)、p−ニトロフェニルシアン酸塩およびテトラフルオロホウ酸N−シアノトリエチルアンモニウム(「CTEA」)が挙げられる。特にH.influenzaeプロテインDが共通キャリアである場合、CDAPが好ましい。直接連結が好ましい。
【0034】
結合体は、好ましくは、個別に調製され、それから混合される。混合後、混合結合体の濃度は、例えば、無菌かつ発熱物質を含まないリン酸緩衝化生理食塩水により調整され得る。
【0035】
共通キャリアに加えて、他のキャリアタンパク質を含む結合体が、本発明の組成物中に存在し得る。しかしながら、一般的に、組成物中の全ての髄膜炎菌結合体が同一の共通キャリアを使用することが好ましい。
【0036】
本発明の組成物において、各々の結合体に基づくキャリア(結合体化キャリア、および非結合体化キャリア)の量は、好ましくは、各々の結合体に基づいて、100μg/ml以下(例えば、<30μg/ml)のキャリアタンパク質である。好ましい組成物は、500μg/ml未満(例えば、400μg/ml未満、300μg/ml未満、200μg/ml未満、100μg/ml未満、50μg/ml未満など)の共通キャリアの総濃度(組み合わせた髄膜炎菌結合体のみに対してか、または好ましくは組成物全体に対してのいずれか)を含む。
【0037】
(非結合体化共通キャリアタンパク質)
本発明の組成物は、非結合体化形態での共通キャリアを含むが、非結合体化共通キャリアは10μg/ml未満で存在する。
【0038】
したがって、例えば、結合体化条件、結合体化後の精製、結合体化後の保存条件(温度、pH、湿度などのような要因の制御により、本発明にしたがって、非結合体化共通キャリアの量が、確実に10μg/ml未満に保持され、そして代表的により低く(例えば、9μg/ml未満、8μg/ml未満、7 μg/ml未満、6μg/ml未満、5μg/ml未満、4μg/ml未満、3μg/ml未満、2μg/ml未満、1μg/ml未満、0.5μg/ml未満などに)保持され得ることを確実にすることが可能である。
【0039】
しかしながら、実施上の理由のため、キャリア抑制の問題を引き起こすことなく、わずかなアジュバント効果を提供するために、低レベルの非結合体化共通キャリアを含むことが有利である。それゆえ、本発明の組成物中の非結合体化共通キャリアの濃度は、好ましくは、≧a μg/mlであるが、<b μg/mlである。ここでb>aであり、(i)aは、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4および5からなる群から選択され、そして(ii)bは、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10からなる群から選択される。
【0040】
本発明の組成物中の非結合体化キャリアは、2つの起源を有する。第一に、これは、混合される個々の結合体に由来し得る。個々の結合体は、結合体化反応由来の未反応の残留キャリアを含み得、そして結合された物質の崩壊により放出されたキャリアを含み得る。第二に、これは、混合後(例えば、組成物の保存後)の結合体の崩壊に由来し得る。非結合体化キャリアは、通常、製造中の個別の工程としての意図的に添加されない。それゆえ、組成物中の非結合体化共通キャリアの濃度は、やがて増加し得る。好ましい組成物は、全ての髄膜炎菌結合体が混合されて6時間後に測定される場合に、<10μg/mlの非結合体化共通キャリアを含むものである。他の好ましい組成物は、最初の結合体混合の時点から、少なくとも1ヶ月間(例えば、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、またはそれより長く)にわたって、<10μg/mlの非結合体化共通キャリアを有するものである。
【0041】
本発明のプロセスにおいて、混合される結合体は非結合体化共通キャリアを含み得、そして混合後に存在する非結合体化キャリアは、構成要素の結合体からもたらされる。本発明の組成物が、平均で、総量でx μgの髄膜炎菌結合体由来の非結合体化共通キャリアとn個の異なる髄膜炎菌結合体を含むとすると、各々の結合体は、x/n μgの非結合体化共通キャリアを与える。本発明の好ましいプロセスにおいて、組成物が、髄膜炎菌結合体に由来する、総量でx μgの非結合体化共通キャリアを含むとすると、n個の個々の髄膜炎菌結合体の各々の量は、x/nの±15%(例えば、±10%、±7.5%または±5%)以内の非結合体化共通キャリアの量を提供するように選択される。濃度条件において、個々の結合体の各々は、好ましくは2μg/ml未満の非結合体化キャリアを与える。
【0042】
組成物中の非結合体化共通キャリアは溶液中に存在し得るか、沈殿物として存在し得るか、または存在し得る任意のアジュバントに吸収され得る。
【0043】
非結合体化キャリアのレベルは、標準的かつ公知の方法(例えば、Hib結合体ワクチン中の非結合体化キャリアを評価するために、以前に使用された方法)を使用して測定され得る。
【0044】
したがって、全キャリア(または結合体化キャリア)に対する非結合体化キャリアのレベルを比較するために、一般的に、それが個別にアッセイされ得るように、結合体化キャリアから非結合体化キャリアを分離する必要がある。結合体化キャリアは、非結合体化キャリアよりも大きいので、それゆえ、このことを達成する1つの方法は、大きさにより分離すること(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動など)である。代表的なキャリア(単量体形態での)のおおよそのMWは、CRM197=58kDa、Dt=63kDa、Tt=150kDa、プロテインD=42kDaである。
【0045】
非結合体化キャリアのレベルを測定する1つの方法は、非結合体化キャリアのレベルが既知量のキャリアを含む1つ以上の標準と比較されることを伴う、電気泳動分離工程を包含する。タンパク質定量化(例えば、銀染色のような染色による)後、標準に対する量が決定され得る。第三の分析もまた、並行して実行され得、ここで非結合体化キャリアのサンプルが標準と混合され、この混合物もまた先の2つのバンドと比較される。
【0046】
非結合体化キャリアタンパク質を測定するための他の方法は、特に共通キャリアがジフテリアトキソイドである場合、キャピラリー電気泳動[74](例えば、遊離溶液中の)またはミセル動電クロマトグラフィー(micellar electrokinetic chromatography)[75]を含み得る。結合体とキャリアとの分解能は、分析中のホウ酸塩濃度の増大により改善され得る。
【0047】
非結合体化キャリアレベルを測定するためのアッセイは、本発明のプロセスの間の種々の段階において実行され得る。例えば、これらは、1つ以上の個々の結合体が混合されるより前に、その1つ以上の個々の結合体に対して実行され得る、および/またはこれらは、混合後に実行され得る。本発明は、上記のように、組成物が10μg/ml未満の非結合体化共通髄膜炎菌キャリアを含むことを必要とし、そしてこのレベルは、混合後に、このアッセイを実行することにより確認され得る。しかしながら、混合後にアッセイすることに対する代替的な方法として、混合前に、このアッセイが、個々の結合体に対して実行され得、次に、個々の結果が、最終レベルを算出(任意の希釈を考慮して、など)するために使用される(ただし、非結合体化キャリアの増加を引き起こさないことが公知である条件が混合において使用される)。
【0048】
測定アッセイおよび非結合体化キャリアタンパク質の最大許容量(例えば、上記のように10μg/ml)により、当業者は、任意の特定の組成物が本発明の範囲内にあるか否かをチェックし得る。さらに、非結合体化キャリアタンパク質のレベルが最大許容量より上か、または下かに基づいて、当業者は、(a)混合前の個々の結合体および/または(b)混合後の組み合わせた結合体を、許容し得るか、または拒絶し得る。したがって、本発明は、組成物を調製するためのプロセスを提供し、このプロセスは、上記に規定される混合工程を包含する。このプロセスはさらに以下の工程を包含する:組成物中の非結合体化共通キャリアの濃度を測定する工程;そして(i)非結合体化キャリアの濃度が<10μg/mlである場合、さらなるワクチン製造および/もしくはヒトへの投与のためにこの組成物を許容する工程、または(ii)非結合体化キャリアの濃度が≧10μg/mlである場合、この組成物を拒絶する工程のいずれかの工程。
【0049】
少量のみの共通キャリアを含むことと同様に、本発明の好ましい組成物は、同様に、少量のみの非結合体化髄膜炎菌の莢膜糖を含む。したがって、組成物は、好ましくは、2μg/ml(糖として測定される)以下(例えば、<1.5μg/ml、<1μg/ml、<0.5μg/mlなど)の非結合体化糖を含む。
【0050】
(組成物)
髄膜炎菌結合体と非結合体化キャリアタンパク質とを含むことと同様に、本発明の組成物は、代表的に薬学的に受容可能なキャリアを含む。このようなキャリアとしては、それ自体は、組成物を受容する個体に有害な抗体の産生を誘導しない、任意のキャリアが挙げられる。適切なキャリアは、代表的に、大型で、ゆっくり代謝される高分子(例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合体のアミノ酸、アミノ酸コポリマー、ショ糖、トレハロース、ラクトースおよび脂質凝集物(例えば、油滴またはリポソーム))である。このようなキャリアは、当業者にとって周知である。ワクチンはまた、希釈剤(例えば、水、生理食塩水、グリセロールなど)も含み得る。さらに、補助的な物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化物質など)が存在し得る。無菌かつ発熱物質を含まないリン酸緩衝化生理食塩水は、代表的なキャリアである。薬学的に受容可能なキャリアおよび賦形剤の徹底的な議論は、参考文献76において得られる。
【0051】
本発明にしたがって使用される組成物は、特に複数用量様式で包装される場合に、抗菌剤を含み得る。
【0052】
本発明にしたがって使用される組成物は、界面活性剤(例えば、Tween80のようなTween(ポリソルベート))を含み得る。界面活性剤は、一般的に低いレベル(例えば、<0.01%)で存在する。
【0053】
本発明にしたがって使用される組成物は、張度を与えるために、ナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)を含み得る。10±2mg/mlのNaClの濃度が代表的である。
【0054】
本発明にしたがって使用される組成物は、一般的に緩衝剤(例えば、リン酸緩衝剤)を含む。
【0055】
細菌感染は身体の種々の領域に罹患し得るので、組成物は種々の形態で調製され得る。例えば、組成物は、液体の溶液または懸濁物のいずれかとして、注射可能物質として調製され得る。注射前の、液体ビヒクル中の溶液または懸濁物のために適切な固体形態もまた、調製され得る(例えば、凍結乾燥組成物)。組成物は、局所投与のために(例えば、軟膏、クリームまたは粉末として)調製され得る。組成物は、経口投与のために(例えば、錠剤もしくはカプセル、またはシロップ(必要に応じて、風味をつけられる)として)調製される。組成物は、肺投与のために(例えば、微細な粉末またはスプレーを使用する吸入器として)調製され得る。組成物は、坐剤またはペッサリーとして調製され得る。組成物は、鼻腔内投与、耳投与または眼投与のために(例えば、スプレー、ドロップ、ゲルまたは粉末として)調製され得る[例えば、参考文献77および参考文献78]。しかしながら、一般的に、髄膜炎菌結合体は、筋内注射のために処方される。
【0056】
本発明にしたがって使用される組成物は、ワクチンアジュバントを含んでも、含まなくてもよい。本発明の組成物中に使用され得るアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
(A.無機質含有組成物)
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適切な無機質含有組成物としては、無機塩(例えば、アルミニウム塩およびカルシウム塩)が挙げられる。本発明は、無機塩(例えば、水酸化物(例えば、オキシヒドロキシド)、ホスフェート(例えば、ヒドロキシホスフェート、オルトホスフェート)、スルフェートなど)[例えば、参考文献79の第8章および第9章を参照のこと]、または異なる無機化合物の混合物を含み、上記組成物は、任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶、非晶質など)をとる。上記無機質含有組成物はまた、金属塩の粒子として処方され得る[80]。
【0058】
リン酸アルミニウムが特に好ましく、代表的なアジュバントは、1mlあたり約0.6mgのAl3+を含む、0.84と0.92との間のPO4/Alモル比を有する非晶質アルミニウムヒドロキシホスフェートである。低用量のリン酸アルミニウムにより吸着(例えば、1用量あたり1結合体につき50μgと100μgとの間のAl3+)が、使用され得る。
【0059】
結合体は、存在する任意のアルミニウム塩に吸着されてもよいし、吸着されなくてもよい(または部分的に吸着されてもよい)。組成物が複数の細菌種由来の結合体を含む場合、全ての結合体が吸着される必要はない。
【0060】
(B.油エマルジョン)
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適切な油エマルジョン組成物としては、スクアレン−水エマルジョン(例えば、MF59)が挙げられる[参考文献79の第10章;参考文献81もまた参照のこと](5%スクアレン、0.5%Tween 80および0.5%Span 85、マイクロフルイダイザー(microfluidizer)を用いて、サブミクロン粒子に処方される)。完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA)もまた、使用され得る。
【0061】
(C.サポニン処方物[参考文献79の第22章])
サポニン処方物もまた、本発明におけるアジュバントとして使用される。サポニンは、広範な植物種の樹皮、葉、茎、根および花においてさえ見られる、ステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種の群である。Quillaia saponaria(モリナの木(Molina tree))の樹皮由来のサポニンは、アジュバントとして広範に研究されている。サポニンはまた、Smilax ornata(サルサパリラ(sarsaprilla))、Gypsophilla paniculata(ブライドベール(brides veil))およびSaponaria officianalis(サボンソウ根(soap root))から商業的に得られ得る。サポニンアジュバント処方物としては、精製された処方物(例えば、QS21)および液体処方物(例えば、ISCOM)が挙げられる。QS21は、StimulonTMとして市販される。
【0062】
サポニン組成物は、HPLCおよびRP−HPLCを用いて精製されている。これらの技術を用いて、特定の精製画分が同定され、これらの画分としては、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cが挙げられる。好ましくは、上記サポニンは、QS21である。QS21の生成方法は、参考文献82に開示されている。サポニン処方物はまた、ステロール(例えば、コレステロール)を含み得る[83]。
【0063】
サポニンとコレステロールとの組み合わせが、使用され得、免疫刺激複合体(immunostimulating complex)(ISCOM)と呼ばれる独特な粒子を形成し得る[参考文献79の第23章]。ISCOMとしてはまた、代表的に、リン脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリン)が挙げられる。任意の公知のサポニンが、ISCOMにおいて使用され得る。好ましくは、上記ISCOMは、QuilA、QHAおよびQHCのうちの1つ以上を含む。ISCOMは、参考文献83〜85にさらに記載されている。必要に応じて、上記ISCOMは、さらなる洗剤を含まなくてもよい[86]。
【0064】
サポニンベースのアジュバントの開発の概説は、参考文献87および88に見られ得る。
【0065】
(D.ビロソームおよびウイルス様粒子)
ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP)はまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。これらの構造は、一般的に、必要に応じてリン脂質と組み合わされるかまたはリン脂質とともに処方されたウイルス由来の1つ以上のタンパク質を含む。それらは、一般的に、非病原性、非複製性であり、そして、一般的に、あらゆる天然ウイルスゲノムを含まない。上記ウイルスタンパク質は、ウイルス全体から、組換え的に生成さ得るかまたは単離され得る。ビロソームまたはVLPにおける使用のために適切なこれらのウイルスタンパク質としては、インフルエンザウイルス由来のタンパク質(例えば、HAまたはNA)、B型肝炎ウイルス由来のタンパク質(例えば、コアタンパク質またはカプシドタンパク質)、E型肝炎ウイルス由来のタンパク質、麻疹ウイルス由来のタンパク質、シンドビスウイルス由来のタンパク質、ロタウイルス由来のタンパク質、口蹄疫ウイルス由来のタンパク質、レトロウイルス由来のタンパク質、ノーウォークウイルス由来のタンパク質、ヒトパピローマウイルス由来のタンパク質、HIV由来のタンパク質、RNAファージ由来のタンパク質、Qβファージ由来のタンパク質(例えば、コートタンパク質)、GAファージ由来のタンパク質、frファージ由来のタンパク質、AP205ファージ由来のタンパク質およびTy由来のタンパク質(例えば、レトロトランスポゾンTyタンパク質p1)が挙げられる。VLPは、参考文献89〜94においてさらに議論されている。ビロソームは、例えば、参考文献95においてさらに議論されている。
【0066】
(E.細菌誘導体または微生物誘導体)
本発明における使用のために適切なアジュバントは、細菌誘導体または微生物誘導体(例えば、腸内細菌リポ多糖類(LPS)の無毒性誘導体、リピドA誘導体、免疫刺激オリゴヌクレオチドならびにADPリボシル化トキシンおよびそれらの無毒性誘導体)を含む。
【0067】
LPSの無毒性誘導体としては、モノホスホリルリピドA(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)が挙げられる。3dMPLは、3脱O−アシル化モノホスホリルリピドAと、4つ、5つまたは6つのアシル化鎖との混合物である。3脱O−アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい「小粒子」形態は、参考文献96に開示されている。このような3dMPLの「小粒子」は、0.22μmメンブレンを通って滅菌濾過されるのに十分小さい[96]。他の無毒性LPS誘導体としては、モノホスホリルリピドA模倣物(例えば、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体(例えば、RC−529))が挙げられる[97、98]。
【0068】
リピドA誘導体としては、Escherichia coli由来のリピドA誘導体(例えば、OM−174)が挙げられる。OM−174は、例えば、参考文献99および100に記載されている。
【0069】
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適切な免疫刺激オリゴヌクレオチドとしては、CpGモチーフ(グアノシンへのホスフェート結合により連結された非メチル化シトシンを含むジヌクレオチド配列)を含むヌクレオチド配列が挙げられる。パリンドローム配列またはポリ(dG)配列を含む二本鎖RNAおよびオリゴヌクレオチドもまた、免疫刺激性であることが示されている。
【0070】
CpGは、ヌクレオチド改変体/アナログ(例えば、ホスホロチオエート改変体)を含み得、そして、二本鎖または一本鎖であり得る。参考文献101、102および103は、可能なアナログ置換(例えば、グアノシンの2’−デオキシ−7−デアザグアノシンによる置換)を開示している。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、参考文献104〜109において、さらに議論されている。
【0071】
上記CpG配列(例えば、GTCGTTモチーフまたはTTCGTTモチーフ)は、TLR9に関与し得る[110]。上記CpG配列(例えば、CpG−A ODN)は、Th1免疫応答誘導に対して特異的であり得るか、または、上記CpG配列(例えば、CpG−B ODN)は、B細胞応答誘導に対して、より特異的であり得る。CpG−A ODNおよびCpG−B ODNは、参考文献111〜113において議論されている。好ましくは、上記CpGは、CpG−A ODNである。
【0072】
好ましくは、上記CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端がレセプター認識のために利用可能であるように構築される。必要に応じて、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列が、それらの3’末端に結合され、「イムノマー(immunomer)」を形成し得る。例えば、参考文献110および114〜116を参照のこと。
【0073】
細菌ADP−リボシル化トキシンおよびその無毒性誘導体が、本発明におけるアジュバントとして使用され得る。好ましくは、上記タンパク質は、E.coli由来(E.coli熱不安定性エンテロトキシン「LT」)、コレラ由来(「CT」)または百日咳由来(「PT」)である。粘膜アジュバントとしての無毒化ADP−リボシル化トキシンの使用は、参考文献117に記載されており、そして、非経口的アジュバントとしての無毒化ADP−リボシル化トキシンの使用は、参考文献118に記載されている。上記トキシンまたはトキソイドは、好ましくは、AサブユニットおよびBサブユニットの両方を含むホロトキシン(holotoxin)の形態である。好ましくは、上記Aサブユニットは、無毒化変異を含み;好ましくは、上記Bサブユニットは、変異していない。好ましくは、上記アジュバントは、無毒化LT変異体(例えば、LT−K63、LT−R72およびLT−G192)である。アジュバントとしてのADP−リボシル化トキシンおよびその無毒性誘導体(特に、LT−K63およびLT−R72)の使用は、参考文献119〜126において見られ得る。アミノ酸置換についての多くの参考文献は、好ましくは、参考文献127に記載のADP−リボシル化トキシンのAサブユニットおよびBサブユニットのアラインメントに基づき、特に、本明細書中で、その全体が参考として援用される。
【0074】
(F.ヒト免疫調節因子)
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適切なヒト免疫刺激因子としては、サイトカイン(例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12[128]など)[129]、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子および腫瘍壊死因子)が挙げられる。
【0075】
(G.生体接着因子および粘膜接着因子)
生体接着因子および粘膜接着因子はまた、本発明におけるアジュバントとして使用され得る。適切な生体接着因子としては、エステル化ヒアルロン酸マイクロスフェア[130]または粘膜接着因子(例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリサッカリドおよびカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体)が挙げられる。キトサンおよびその誘導体はまた、本発明におけるアジュバントとして使用され得る[131]。
【0076】
(H.微粒子)
微粒子はまた、本発明におけるアジュバントとして使用され得る。生分解性かつ無毒性の物質(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)と、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)とから形成される微粒子(すなわち、直径約100nm〜約150μm、より好ましくは、直径約200nm〜約30μm、そして、最も好ましくは、直径約500nm〜約10μmの粒子)が、好ましく、必要に応じて、処理されて、(例えば、SDSにより)負に荷電した表面または(例えば、カチオン性界面活性剤(例えば、CTAB)により)正に荷電した表面を有する。
【0077】
(I.リポソーム(参考文献79の第13章および第14章))
アジュバントとしての使用のために適切なリポソーム処方物の例は、参考文献132〜134に記載されている。
【0078】
(J.ポリオキシエチレンエーテル処方物およびポリオキシエチレンエステル処方物)
本発明における使用のために適切なアジュバントとしては、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステルが挙げられる[135]。このような処方物としては、オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤[136]および少なくとも1つのさらなる非イオン性界面活性剤(例えば、オクトキシノール)と組み合わせたポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤またはポリオキシエチレンアルキルエステル界面活性剤[137]が、さらに挙げられる。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群より選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(laureth 9)、ポリオキシエチレン−9−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテルおよびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0079】
(K.ポリホスファゼン(PCPP))
PCPP処方物は、例えば、参考文献138および139に記載されている。
【0080】
(L.ムラミルペプチド)
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適切なムラミルペプチドの例としては、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)およびN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’,2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)が挙げられる。
【0081】
(M.イミダゾキノロン化合物)
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適切なイミダゾキノロン化合物の例としては、参考文献140および141にさらに記載される、Imiquamodおよびその相同体(例えば、「Resiquimod 3M」)が挙げられる。
【0082】
本発明はまた、上に定義される1つ以上のアジュバントの局面の組み合わせを含み得る。例えば、以下のアジュバント組成物が、本発明において使用され得る:(1)サポニンおよび水中油エマルジョン[142];(2)サポニン(例えば、QS21)+無毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)[143];(3)サポニン(例えば、QS21)+無毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて、+ステロール)[144];(5)3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油エマルジョンとの組み合わせ[145];(6)マイクロフルイダイズされてサブミクロンエマルジョンにされるか、またはボルテックスされてより大きい粒子サイズのエマルジョンを生じるかのいずれかの、10% スクアレン、0.4% Tween 80TM、5% プルロニックブロック(pluronic−block)ポリマーL121およびthr−MDPを含有するSAF;(7)2% スクアレン、0.2% Tween 80、ならびにモノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)からなる群由来の1つ以上の細菌細胞壁構成要素を含むRibiTMアジュバント系(RAS)(Ribi Immunochem)(好ましくは、MPL+CWS(DetoxTM));ならびに(8)1つ以上の無機塩(例えば、アルミニウム塩)+LPSの無毒性誘導体(例えば、3dMPL)。
【0083】
免疫刺激因子として作用する他の物質は、参考文献79の第7章に開示されている。
【0084】
吸着を有するか、または有さない水酸化アルミニウムアジュバントまたはリン酸アルミニウムアジュバントの使用が、特に好ましい[例えば、参考文献7の実施例7および8;参考文献8の実施例J]。アルミニウム塩アジュバントを含まない組成物もまた、使用され得る[参考文献15]。リン酸カルシウムは、別の好ましいアジュバントである。結合体は、別々にアジュバントと(必要に応じて、アジュバントに吸着されて)混合され得、次いで、この結合体は一緒に混合され得るか、またはこの結合体は一緒に混合され得、次いでアジュバントと混合される。
【0085】
本発明に従って使用される組成物のpHは、好ましくは6と8との間であり、好ましくは約7である。安定なpHは、緩衝液の使用によって維持され得る。組成物が、水酸化アルミニウム塩を含む場合、ヒスチジン緩衝液を使用することが好ましい[146]。組成物は、滅菌されてもよく、そして/または発熱物質を含まなくてもよい。組成物は、ヒトに対して等張であってもよい。
【0086】
組成物は、防腐剤(例えば、チオメルサール、2−フェノキシエタノール)を含んでもよいか、または防腐剤を含まなくてもよい。本発明の好ましい組成物は、あらゆる水銀物質を含まない(例えば、それらはチオメルサールを含まない)。
【0087】
組成物は、バイアル中に存在してもよいか、またはそれらは、あらかじめ充填されたシリンジ中に存在してもよい。このシリンジは、針を備えて供給されても、または針を備えずに供給されてもよい。シリンジは、上記組成物の単回用量を含むが、バイアルは、単回用量または複数回用量を含んでもよい。注射用組成物は、通常、溶液または懸濁液である。あるいは、それらは、注射前に、液体ビヒクルにおける溶液または懸濁液のために、(例えば、凍結乾燥された)固形で存在し得る。
【0088】
組成物は、単位用量形態または複数回用量形態でパッケージされ得る。複数回用量形態について、バイアルは、あらかじめ充填されたシリンジであることが好ましい。有効な投薬量体積は、慣習的に確立され得るが、注射用の組成物の代表的なヒトの用量は、0.5mlの体積である。
【0089】
組成物は、免疫学的に有効な量の髄膜炎菌性結合体、および必要な場合、任意の他の組成物を含む。「免疫学的に有効な量」によってとは、単回用量または一連の一部としてのいずれかにおける個体への投与の量が、患者における防御用の抗髄膜炎菌性免疫応答を誘発することを意味する。この量は、処置されるべき個体の健康状態および身体的状態、年齢、処置されるべき個体の分類学群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、個体の免疫系が抗体を合成する能力、所望される防御の程度、ワクチンの処方、処置する医師による医学的状態の評価、および他の関連因子に依存して変化する。この量は、慣例的な試行を通して決定され得る比較的広範な範囲にわたり、そして、用量あたりの各々の髄膜炎菌抗原の代表的な量は、血清群あたり1μgと20μgとの間(例えば、血清群あたり2μgと10μgとの間、または血清群あたり3μgと8μgとの間)である(糖について測定される)。血清群あたり約4μgの用量(すなわち、四価の混合物において16μgの総量)、または血清群あたり約5μgの用量(すなわち、四価の混合物において20μgの総量)が、好ましい。
【0090】
(凍結乾燥)
ワクチンは、代表的に、注射、特に筋肉内注射によって投与される。本発明の組成物は、一般に、水溶液または懸濁液として使用時に提示される。本発明のいくつかの実施形態において、上記組成物は、パッケージング段階から投与段階まで水溶性の形態(「完全な液体」ワクチン)である。しかしながら、他の実施形態において、上記組成物の1つ以上の成分は、凍結乾燥された形態でパッケージされ得、そして実際の投与のためのワクチンは、必要な場合、再構成され得る。従って、本発明の組成物は、パッケージ段階で調製されてもよいか、または使用前に即時に調製されてもよい。髄膜炎菌性結合体の凍結乾燥は、当該分野において公知である(例えば、MenjugateTM製品は、凍結乾燥された形態で存在するが、NeisVac−CTMおよびMeningitecTMは、完全な液体ワクチンである)。
【0091】
従って、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、凍結乾燥された形態である。個々の髄膜炎菌性結合体は、混合する前に凍結乾燥され得るか、または水溶性形態で混合され、次いで凍結乾燥され得る。
【0092】
本発明はまた、本発明の組成物を調製するためのキットを提供し、このキットは、凍結乾燥された形態で少なくとも1つの髄膜炎菌性結合体および水溶性形態で少なくとも1つの髄膜炎菌性結合体を含む。このキットは、2つのバイアル(水溶性物質を含むものと凍結乾燥された物質を含むもの)を含み得るか、またはこのキットは、1つのあらかじめ充填されたシリンジおよび1つのバイアル(例えば、シリンジの内容物は、注射前にバイアルの内容物を再形成するために使用される)を含み得る。次いで、血清群A結合体を含む組成物に関して、血清群Aサッカリドは、凍結乾燥され得るが、他の血清群由来の結合体は、液体形態で存在し得る。
【0093】
本発明はまた、本発明の水溶性組成物を調製するためのキットを提供し、このキットは、(i)凍結乾燥された本発明の組成物、および(ii)水溶性物質を含み、ここで、成分(ii)は、上記水溶性組成物を提供するために、成分(i)を再形成するためである。成分(ii)は、好ましくは、上記のように、滅菌され、非発熱性などである。
【0094】
従って、本発明は、完全に凍結乾燥された形態、完全に水溶性の形態、および水溶性処方物を与えるための、再形成のために準備された形態の組成物を包含する。
【0095】
凍結乾燥の間、結合体を安定させるために、上記組成物中に、例えば、1mg/mlと30mg/mlとの間(例えば、約25mg/ml)で、糖アルコール(例えば、マンニトール)または二糖類(例えば、スクロースまたはトレハロース)を含むことが好ましい。スクロースの存在下での凍結乾燥が好ましい。従って、本発明の組成物は、糖アルコールまたは二糖類を含み、特にそれらは、凍結乾燥された形態または凍結乾燥された物質から再形成された形態のいずれかである。
【0096】
組成物が、凍結乾燥形態である(または凍結乾燥された成分を含む)場合、凍結乾燥された物質の用量は、好ましくは、アルミニウムアジュバントを含まない。アルミニウムアジュバントを含む最終的な水溶性組成物が所望される場合、代わりに、このアジュバントは、凍結乾燥された物質(MenjugateTMを参照のこと)を再形成するために使用される物質中に存在するべきである。
【0097】
(患者)
本発明の組成物は、髄膜炎菌性疾患に対して(例えば、髄膜炎、より好ましくは細菌性髄膜炎、および最も好ましくは髄膜炎菌性髄膜炎に対して)患者を予防するためのものである。
【0098】
免疫化される患者は、代表的に、ヒトである。ヒトは、一般的に、少なくとも1ヶ月齢、例えば、少なくとも2ヶ月齢、少なくとも4ヶ月齢、少なくとも6ヶ月齢、少なくとも2歳、少なくとも5歳、少なくとも11歳、少なくとも17歳、少なくとも40歳、少なくとも55歳などである。患者の好ましい集合は、2歳〜55歳の年齢群であり、そして患者の別の好ましい集合は、11歳〜55歳の年齢群である。患者のさらに好ましい集合は、11歳未満、例えば、2歳〜11歳である。患者のさらに好ましい集合は、2歳未満、例えば、1歳未満である。本発明の組成物は、特に、すでに以前の免疫化において共通キャリアタンパク質を受容した免疫化している患者に有用である。
【0099】
本発明の組成物を受容する前、または受容すると同時に、患者は、1つ以上のさらなるワクチンで免疫化され得る。投与されていてもよいか、または投与され得る他のワクチンとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ジフテリア抗原(例えば、ジフテリアトキソイド);破傷風抗原(例えば、破傷風トキソイド);百日咳抗原(例えば、全細胞/細胞性の百日咳ワクチン(「Pw」)、または好ましくは、無細胞性の百日咳ワクチン(「Pa」));Haemophilus influenzaeB型莢膜糖(代表的には結合体化されている);B型肝炎表面抗原(HBsAg);ポリオウイルス(例えば、不活性化ポリオウイルスワクチン(IPV)または経口ポリオウイルスワクチン(OPV));Streptococcus pneumoniae莢膜糖(代表的には多価および結合体化されている);インフルエンザウイルス;BCG;A型肝炎ウイルス抗原;麻疹ウイルス;流行性耳下腺炎ウイルス;風疹ウイルス;水痘ウイルス;など。これらのさらなるワクチンのいくつかのさらなる詳細は、以下に示される。
【0100】
本発明の組成物を投与した結果、好ましくは、各々の投与された血清群に関して、患者は、血清殺菌性抗体(SBA)応答を惹起させ、(上記組成物を受容する前にあらかじめ免疫化された患者と比較して)SBA力価の増加が、少なくとも4倍、および好ましくは少なくとも8倍になる。このSBA試験は、髄膜炎菌防御に対して標準的な相関関係がある。髄膜炎菌ワクチンについての血清学的な相関関係のさらなる詳細は、参考文献147で得られる。
【0101】
(本発明に従って使用される組成物のさらなる抗原性成分)
本発明の組成物は、髄膜炎菌性疾患に対して免疫化している患者のために使用され得、他のワクチン接種成分とは別に使用され得る。しかしながら、さらに本発明の組成物は、他のワクチン成分との結合において使用され得る。これらの他の成分は、本発明の組成物とは別に投与され得るが実質的に同時に投与され得るか、または本発明の組成物は、組み合わせたワクチンの一部としてこれらのさらなる成分を含み得る。
【0102】
従って、髄膜炎菌性結合体抗原に加えて、本発明の組成物は、必要に応じて、1つ以上の以下のさらなる抗原を含み得る:
1.H.influenzaeB型(「Hib」)由来の結合体化莢膜糖[例えば、参考文献34の第14章]。この結合体についてのキャリアタンパク質は、CRM197、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドまたはN.meningitidisの外膜複合体であり得る。この結合体の糖部分は、多糖(例えば、完全長のリン酸ポリリボシルリビトール(PRP))であり得るが、莢膜多糖を脱重合して、オリゴ糖(例えば、分子量約1〜約5kDa)を形成することが好ましい。好ましいHib結合体は、アジピン酸リンカーによってCRM197に共有結合されたオリゴ糖を含む[148、149]。患者へのHib抗原の投与は好ましくは0.15μg/mlより大きい、より好ましくは、1μg/mlより大きい濃度の抗PRP抗体を生じる。組成物が、Hib糖抗原を含む場合、好ましくは、用量はまた、水酸化アルミニウムアジュバントを含まない。上記組成物が、リン酸アルミニウムアジュバントを含む場合、Hib抗原は、このアジュバントに吸着されてもよい[150]か、または吸着されなくてもよい[15]。吸着の防止は、抗原/アジュバントを混合している間の正確なpH、ゼロ電荷の適切な点を有するアジュバント、および組成物中の種々の異なる抗原を混合する適切な順序を選択することによって達成され得る[151]。
【0103】
2.S.pneumoniae由来の結合体化莢膜糖[例えば、参考文献34の第23章;参考文献152〜154]。S.pneumoniaeの2種以上の血清群由来の糖を含むことが好ましい。例えば、23種の異なる血清群由来の多糖類の混合物が、5種と11種との間の異なる血清群由来の多糖類との結合体化ワクチンとして、広範に使用される[155]。例えば、PrevNarTM[156]は、還元的アミノ化によってCRM197に個々に結合体化される各々の糖類を有し、0.5ml用量あたり2μgの各々の糖(4μgの血清群6B)を有し、そしてリン酸アルミニウムアジュバントに吸着される結合体を有する7種の血清群(4、6B、9V、14、18C、19F、および23F)由来の抗原を含む。肺炎球菌結合体が、本発明で使用するための組成物中に含まれる場合、この組成物は、好ましくは、少なくとも血清群6B、14、19Fおよび23Fを含む。
【0104】
3.Neisseria meningitidis血清群B由来のタンパク質抗原[例えば、参考文献157]。
【0105】
4.ジフテリア抗原(例えば、ジフテリアトキソイド)[例えば、参考文献34の第13章]。
【0106】
5.破傷風抗原(例えば、破傷風トキソイド)[例えば、参考文献34の第27章]。
【0107】
6.細胞性百日咳抗原または全細胞百日咳(「Pw」)抗原[例えば、参考文献34の第21章]。
【0108】
7.1つ以上の無細胞百日咳(「Pa」)抗原[例えば、参考文献34の第21章]。Pa成分は、一般に、1種、2種または3種の以下の十分に特徴付けられたB.pertussis抗原を含む:(1)百日咳トキソイド(「PT」)(化学的手段または部位特異的突然変異誘発のいずれかによって無毒化される(例えば、「9K/129G」変異体)[158];(2)線維状赤血球凝集素(「FHA」);(3)ペルタクチン(別名「69キロダルトン外膜タンパク質」)。Pa成分はまた、凝集原2および/または凝集原3を含み得る。
【0109】
8.B型肝炎ウイルス由来の抗原(例えば、表面抗原(「HBsAG」)および/またはコア抗原(表面抗原は、好ましくは、リン酸アルミニウム上に吸着される[160]))[例えば、参考文献159および164;参考文献34の第16章]。
【0110】
9.1種以上のポリオウイルス抗原(例えば、IPV.Mahoney株、MEF−1株およびSaukett株の封入体が、一般的である)[例えば、161、162;参考文献34の第24章]。
【0111】
10.A型肝炎ウイルス由来の抗原(例えば、不活性化ウイルス)[例えば、163、164;参考文献34の第15章]。
【0112】
上記組成物は、1種以上(すなわち、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、または10種)のこれらのさらなる抗原を含み得る。
【0113】
他の実施形態において、上記組成物は、1種以上のこれらのさらなる抗原を、特に含まなくてもよい。
【0114】
存在する場合、これらのさらなる抗原は、アルミニウム塩に吸着されても、吸着されなくてもよい。
【0115】
ジフテリア抗原が混合物中に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原を含むこともまた、好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原を含むこともまた、好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原を含むこともまた、好ましい。
【0116】
混合物中の抗原は、代表的に、各々少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。一般に、任意の所定の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を誘発するのに十分である。個々の糖抗原の防御効果は、それらを組み合わせることによって、取り除かれないことが好ましいが、実際の免疫原性(例えば、ELISA力価)は、減少され得る。
【0117】
髄膜炎菌性結合体が、一連の用量において投与される場合、その用量のどれも、これらの余分の抗原を含まなくてもよいか、その用量のうちのいくつかまたは全ては、これらの余分の抗原を含んでもよい。
【0118】
これらの10種のさらなる成分の1つ以上を含む組成物の代替として、本発明は、以下を含むキットを提供する:(i)水性形態または凍結乾燥された形態のいずれかの本発明の組成物;および(ii)1つ以上のこれらの10種のさらなる成分を含む組成物。
【0119】
成分(i)が凍結乾燥される場合、成分(ii)は、好ましくは、水性形態であり、(i)を再構成するために使用され得る。
【0120】
従って、本発明の組成物は、それら自身の使用のために販売され得るか、他のワクチン物質と併せて使用するために販売され得るか、またはワクチン接種キットの一部として販売され得る。
【0121】
(医療処置)
本発明は、患者を処置するための方法を提供し、この方法は、免疫学的に有効な量の本発明の組成物を患者に投与する工程を包含する。この患者は、その患者自身、疾患の危険性があってもよいか、または妊婦(「先天性免疫」)であってもよいかのいずれかである。
【0122】
本発明はまた、医薬として(例えば、免疫原性組成物またはワクチンとして)使用するための本発明の組成物を提供する。
【0123】
本発明はまた、Neisseria meningitidisによって引き起こされる疾患に対して患者を免疫するための医薬の製造において、以下:(a)(i)血清群AのN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体;(b)(i)血清群CのN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体;(c)(i)血清群W135のN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体;(d)(i)血清群YのN.meningitidisの莢膜糖と(ii)キャリアタンパク質との結合体、のうちの少なくとも2つの使用を提供し、(1)上記結合体(a)、(b)、(c)および(d)のうちの少なくとも2つは、同じキャリアタンパク質(「共通キャリア」)を使用し、そして(2)上記医薬は、10μg/ml未満の濃度で非結合体化の共通キャリアを含むことを特徴とする。
【0124】
ワクチンが、予防的な使用のためである場合、上記患者は、好ましくは、小児(例えば、幼児または乳児)であり;ワクチンが、治療上の使用のためである場合、上記患者は、好ましくは、成人である。小児のために意図されるワクチンはまた、成人に投与され得る(例えば、安全性、投薬量、免疫原性などを評価するため)。
【0125】
治療上の処置の効果を試験する1つの方法は、本発明の組成物の投与後に髄膜炎菌感染症をモニタリングする工程を包含する。予防的な処置の効果を試験する1つの方法は、投与後に投与されたポリペプチドに対する免疫応答をモニタリングする工程を包含する。本発明の組成物の免疫原性は、被験体にそれらを投与することによって決定され得、そして髄膜炎菌性ワクチンについての血清学的な相関関係は、参考文献147で得られる。
【0126】
組成物は、一般に、患者に直接投与される。直接送達は、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、または組織の間隙空間)、または直腸投与、経口投与、膣投与、局所投与、経皮投与、鼻腔内投与、眼投与、耳投与、肺投与、あるいは他の粘膜投与によって達成され得る。筋肉内(例えば、大腿部または上腕への)投与が、好ましい。注射は、針を介してもよい(例えば、皮下注射)が、針を有さない注射が代替として使用され得る。代表的な筋肉内用量は、0.5mlである。
【0127】
複数の血清群由来の髄膜炎菌性結合体が、単一の組成物内の混合物において投与される。この組成物は、単回用量として投与され得るか、または複数回用量スケジュールにおいて2回以上投与され得る。複数回用量は、初回免疫スケジュールおよび/または追加免疫スケジュールにおいて使用され得る。初回投与スケジュールの後に、髄膜炎菌性結合体の追加投与スケジュールが続き得る。初回投与の間の適切なタイミング(例えば、4〜16週の間)、および初回投与と追加投与との間の適切なタイミングは、慣習的に決定され得る。
【0128】
本発明は、全身性免疫および/または粘膜免疫を誘発するために使用され得る。
【0129】
(本発明の特定の組成物)
本発明の好ましい実施形態は、以下を包含する:
1.各々についてCRM197キャリアを有する血清群C、W135およびY由来の髄膜炎菌結合体を含む水性組成物。糖は、アジピン酸リンカーを用いてこのキャリアに結合される。非結合体化CRM197の濃度は、5μg/mlより小さい。各結合体の濃度(糖として測定される)は、約10μg/mlである。上記組成物は、リン酸アルミニウムアジュバントを含み、調製の間、このアジュバントと吸着する段階はない。上記組成物は、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム(緩衝作用のために一塩基および二塩基)および少量のポリソルベート80を含む。上記組成物は、筋肉内注射のためであるか、または凍結乾燥された血清群A結合体を再構成するために使用され得る。
【0130】
2.上記実施形態1の組成物を有する凍結乾燥された血清群A結合体の再構成から生じる水性組成物。血清群A結合体はまた、CRM197キャリアを有する。再構成の後、血清群A結合体は、(希釈因子に依存して)約10μg/mlまたは約20μg/mlで存在し得る。再構成の後、非結合体化CRM197の濃度は、5μg/mlより小さいままである。
【0131】
3.両方がH.influenzaeプロテインDキャリアを有し、CDAP化学を用いてこのキャリアに結合される糖を有する血清群AおよびC由来の髄膜炎菌結合体を含む水性組成物。非結合体化プロテインDの濃度は、10μg/mlより小さい。上記組成物はまた、破傷風トキソイドキャリアタンパク質に結合体化Hib糖を有するH.influenzae b型結合体を含む(例えば、参考文献 の実施例1を参照のこと)。3つの結合体の各々の濃度(糖として測定される)は、約10μg/mlである。上記組成物は、アルミニウム塩アジュバントを含まない。上記組成物は、スクロースを含む。上記組成物のpHは、6と6.5との間(例えば、約6.1)である。上記組成物は、凍結乾燥のためである。
【0132】
4.両方についてH.influenzaeプロテインDキャリアを有し、CDAP化学を用いてこのキャリアに結合される糖を有する血清群AおよびC由来の髄膜炎菌結合体を含む凍結乾燥された組成物。結合されていないプロテインDの濃度は、10μg/mlより小さい。上記組成物はまた、破傷風トキソイドキャリアタンパク質に結合体化されているHib糖を有するH.influenzae b型結合体を含む。上記組成物は、アルミニウム塩アジュバントを含まない。上記組成物は、スクロースを含む。上記組成物は、他のワクチン成分、特に非髄膜炎菌ワクチン成分とともに再構成した。
【0133】
5.ジフテリア抗原、破傷風抗原および百日咳抗原を含むワクチン組成物を含み、必要に応じてHBsAgをさらに含む、上記実施形態4の組成物の再構成から生じる水性組成物。上記再構成したワクチンは、水酸化アルミニウムアジュバントおよび/またはリン酸アルミニウムアジュバントを含む。
【0134】
6.各々についてジフテリアトキソイドキャリアを有する血清群A、C、W135およびY由来の髄膜炎菌結合体を含む水性組成物。糖は、アジピン酸リンカーを用いてこのキャリアに結合され得る。非結合体化Dtの濃度は、5μg/mlより小さい。各結合体の濃度(糖として測定される)は、約8μg/mlである。上記組成物は、アルミニウム塩を含まない。上記組成物は、筋肉内注射のためである。
【0135】
(一般論)
用語「含む(comprising)」とは、「含む(including)」および「なる(consisting)」を包含する(例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、Xのみからなり得るか、またはさらなる何かを含み(include)得る(例えば、X+Y))。
【0136】
数値xに関する用語「約(about)」とは、例えば、x±10%を意味する。
【0137】
単語「実質的に(substantially)」は、「完全に(completely)」を除外しない(例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、完全にYを含まないものであり得る)。必要な場合、単語「実質的に」は、本発明の定義から除外され得る。
【0138】
共通キャリアの濃度は、「μg/ml」(1ミリリットルあたりのマイクログラム)の単位で上記に与えられるが、代替および対応する定義の設定において、これらのμg/ml濃度は、単位「Lf/ml」(凝集単位または「凝集の限界」[165])で測定される濃度と置き換えられ得、これは、破傷風トキソイドおよびジフテリアトキソイドを定量化するための機能単位である。この代替の定義の設定において、数値は、3で割られ(すなわち、3μg/mlが1Lf/mlになる)、必要な場合、最も近い整数に切り上げられる(すなわち、10μg/mlは、4Lf/mlになる)。ここで、この代替は、純粋に便宜上の目的のために与えられ、キャリア濃度が、μg/mlで与えられる場合、本発明に対して何らかの影響が及ぼされるべきではない。
【0139】
(本発明を実施するための様式)
(非結合体化キャリアタンパク質の存在下での抗血清群C応答の低下)
NeisVac−CTMは、水酸化アルミニウムアジュバントを有し、そしてタンパク質:糖が約2:1の重量比を有する破傷風トキソイドキャリアに結合体化される血清群C(OAc−)莢膜糖を含む。参考文献13に記載されるように、このワクチンを、単独または(非結合体化)破傷風トキソイドと(非結合体化)ジフテリアトキソイドとの同時投与のいずれかで、3歳〜6歳または13歳〜18歳の子供に投与した。特定のIgG GMCを、OAc+ELISA、OAc−ELISA、および高アビディティELISAによって測定し、rSBA GMTもまた、測定した(C11株に対して)[13]。患者の2つの群の結果は、以下の通りであり、Tt/Dtワクチンを同じ時期に受容しなかった患者の結果と比較した:
【表A】

【0140】
免疫応答に対する非結合体化Ttの効果は、これらの結果から明らかである。次いで、2つ以上の髄膜炎菌結合体を含むワクチンにおいてこの効果を回避するために、本発明に従って、非結合体化キャリアのレベルを閾値レベル未満に維持する。
【0141】
(組み合わされた髄膜炎菌結合体)
血清型A+C、C+W+Y、またはA+C+W+Yについての髄膜炎菌結合体の混合物は、参考文献7、8および15に記載されるように調製され得る。これらのワクチンは、糖に共有結合されるキャリアタンパク質としてCRM197、H.influenzaeプロテインDまたはジフテリアトキソイド(Dt)のいずれかを有する。本質的に、参考文献8の方法を用いて製造された結合体に関して、以下を実施した。
【0142】
血清群Aについて、精製された乾燥多糖を加水分解して、10〜11の平均重合度(avDP)を得た。長い多糖を取り除くために、30kDa限外濾過を使用した。次いで、Qセファロースクロマトグラフィーを、短い糖フラグメントを取り除くために使用した。糖を還元的アミノ化に供し、続いて、3kDa限外濾過により、低い分子量の不純物を取り除いた。アミノ化された糖を濃縮し、次いで、アジピン酸のビスN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを用いて活性化させた。この物質は、結合体調製のために適切である。この活性化されたエステルを、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中に45mg/mlにてキャリアを有する、13:1の過剰な糖のモル濃度において、精製されたCRM197キャリアとともに混合する。結合体化は、電磁攪拌機を用いて、8時間と24時間との間、室温で行われる。この反応を、NH4Cl(0.1Mの最終濃度)を添加することによって停止させ、次いで、この溶液を、10mMのリン酸ナトリウム(pH7.2)を用いて希釈する。これらの条件は、効果的な結合体化を確実にし、残った未反応のキャリアタンパク質のレベルを最小にする。本発明に従って、あらゆる残っている未反応の物質は、念入りに取り除かれ、上記の希釈の2時間以内にさらなる工程が実施される。10mMのリン酸ナトリウム(pH7.2)を用いて、4時間まで、30kDaカセットを用いる限外濾過が実施される。
【0143】
血清群Cについて、以下を除いて本質的に同じプロセスを使用した:最初の(nitial)加水分解を行って、7と16との間のavDPを得;結合体反応を、室温で14〜22時間、行い;疎水性相互作用クロマトグラフィー(Phenyl Sepharose高速フローカラム;1Mの硫酸アンモニウム、10mMのリン酸緩衝液(pH7.2);硫酸アンモニウムを含まない緩衝液を添加することによる溶出)を使用して、結合体を精製するさらなる工程を、結合と限外濾過の工程との間に挿入し;そして限外濾過は10kDaのカットオフを使用した。
【0144】
血清群W135およびYについて、以下を除いて本質的に血清群Aについてと同様のプロセスを使用した:最初の加水分解により20のavDPを得た;12:1の過剰なモル濃度の糖。
【0145】
これらのプロセスによって、1μg未満の非結合体化キャリアレベル(50μgの総CRM197含有量に対して測定される)が、各々の結合体について慣習的に達成され得る。
【0146】
4種のバルク結合体が、本発明の組成物を得るために組み合わされ得る。
【0147】
臨床的試験V59P2において、12〜16ヶ月齢の620人の被験体によって、5種のこれらの混合された結合体の処方物の試験が、フィンランドおよびドイツで実施された。各血清群の糖についての用量を、0.5mlの用量あたりの糖の質量(μg)として表し、混合および希釈後は以下の通りであった:
【表B】

【0148】
上記ワクチンは、リン酸アルミニウムアジュバントを含んだ[8]。非結合体化CRM197は、上記ワクチンにおいて2μg/ml未満で存在した。
【0149】
被験体はゼロ時に注射を受け、次いで、被験体の25%は、4週間後、ワクチンの第2回目の投与を受けた。
【0150】
患者の血清を、ワクチン投与の1ヶ月後、回収し、ヒト補体を用いて各血清群由来のN.meningitidisに対するSBAアッセイにおいて試験した。ゼロ時の血清と比較して、SBA力価の増加が評価された(基準は、1:4より大きい、および1:8より大きい)。抗カプセル力価(GMT)もまた、各血清群について測定した。結果を、以下の表1に示す。
【0151】
このように、三価および四価のワクチンは両方、幼児において免疫原性であった。上記結合体は、結合体あたり2.5μg程度の低い糖の用量で免疫原性である。この免疫応答は、追加免疫可能であり、第2回目の投与の後に大きくSBA力価が増加する。キャリア抑制の証拠は、この試験において見られなかった。
【0152】
本発明は、例示の目的のみで上記に記載されており、本発明の範囲および精神内にとどまりつつ、改変がなされ得ることが、理解されるべきである。
【0153】
【表1】

(参考文献(これらの内容は、本明細書中に参考として援用される))
【0154】
【数1】

【0155】
【数2】

【0156】
【数3】

【0157】
【数4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2012−214498(P2012−214498A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−171122(P2012−171122)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【分割の表示】特願2007−510159(P2007−510159)の分割
【原出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【出願人】(592243793)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス エスアールエル (107)
【Fターム(参考)】