説明

共重合ポリエステルの製造方法及びこれによって得られた共重合ポリエステル

【課題】
優れた接着性を有し、耐熱性および風合いの良好な繊維製品を与えるホットメルト型バインダー繊維用として好適なポリエステルの製造方法及びポリエステルを提供する。
【解決手段】
テレフタル酸とエチレングリコールからなるエステル化物に対し、1,4−ブタンジオールを投入し、解重合反応を行った後、重縮合触媒を投入し、重縮合反応を行うポリエステルの製造方法において、解重合反応の前に、塩基性アンモニウム化合物を添加し、反応中に発生するテトラヒドロフランが、ポリエステルに対し、1質量%以下であることを特徴とするポリエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バインダー繊維用として好適な物性を保持した共重合ポリエステルの製造方法、及びこれによって得られた共重合ポリエステルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリエステル系樹脂において、バインダー繊維や接着剤等の用途向けに低融点ポリエステルの需要が高まっている。このような用途では、一般に共重合ポリエステルが採用されているため明確な結晶融点を示さないものが多く、軟化点以上の温度域(一般的には、100〜170℃)で熱処理を施すことで該ポリエステル樹脂を溶融させ、被接着体に熱接着させる手法がとられている。
【0003】
しかしながら、該バインダー繊維が、産業資材用途など、ガラス転移点以上の高温雰囲気下で使用される製品用途に使用される場合、バインダー繊維の軟化に伴い接着強度が低下するため、製品の強度低下等につながることとなる。
【0004】
これに対しては、結晶融点を有する共重合ポリエステルを用いた耐熱性バインダー繊維が提案されており、一般的な緊張熱処理を施すことで寸法安定性の良好なバインダー繊維を得ることができるとされている。
【0005】
例えば、特許文献1では、酸成分が芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ラクトンからなり、グリコール成分が1,4−ブタンジオールとエチレングリコールからなり、融点が150〜200℃の範囲であるポリエステルが提案されている。しかしながら、グリコール成分に1,4−ブタンジオールを用いた場合、酸の存在下で1,4−ブタンジオールが脱水環化を起こし、これがテトラヒドロフランとなって反応系外へ留出するため、ポリエステル化と競合して、該ポリエステルの高分子化を阻害する反応が進むという新たな問題が生じるものであった。
【0006】

【特許文献1】特開平9−12693号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、1,4−ブタンジオールをグリコール成分に用いた際の問題点を解消し、
耐熱性が良好で、バインダー繊維とした際に、高温での接着強度の低下が少ない共重合ポリエステルの製造方法およびこれによって得られた共重合ポリエステルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するため鋭意検討した結果、1,4−ブタンジオールを共重合させたポリエステルの製造にあたって、塩基性アンモニウム化合物の共存下で行うことでテトラヒドロフランの発生を抑制できることを見出したことに基づくものであり、以下の構成を要旨とする。
(1).テレフタル酸、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールが共重合されてなるポリエステルの製造方法において、塩基性アンモニウム化合物をポリエステルの酸成分1モルに対し1×10−4〜10×10−4モル添加して行うことを特徴とする共重合ポリエステルの製造方法。
(2).前記ポリエステルの製造方法において、テレフタル酸とエチレングリコールからなるエステル化物に対し1,4−ブタンジオールを投入し塩基性アンモニウム化合物の共存下で行う解重合反応工程を含んでなり、重縮合反応工程終了までの全工程を通したテトラヒドロフランの総留出量が、得られたポリエステルに対し1質量%以下に制御されていることを特徴とする(1)記載の共重合ポリエステルの製造方法。
(3).(1)又は(2)記載の方法で製造されたポリエステルであって、全ジオール成分の20モル%〜90モル%が1,4−ブタンジオールからなり、末端カルボキシル基の含有量が20eq/10g以下、融点が150℃〜210℃であることを特徴とする共重合ポリエステル。
【発明の効果】
【0009】
本発明の共重合ポリエステル製造方法では、テレフタル酸、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールが共重合されてなるポリエステルを製造するにあたって、所定量の塩基性アンモニウム化合物との共存下でポリエステルの製造を行うため、カルボキシル末端基が当該塩基性アンモニウム化合物で中和されることにより、酸触媒としての機能が薄らぎ、テトラヒドロフランの発生が抑制されるという効果が発現する。
【0010】
また、本発明の製造方法において、塩基性アンモニウム化合物の共存下で、テレフタル酸とエチレングリコールからなるエステル化物に対し、1,4−ブタンジオールを投入し解重合反応を行う工程を含むことで、1,4−ブタンジオールのエステル化やポリエステルへの導入を効率的に行うことができる。その結果、本発明の共重合ポリエステルの製造過程で発生するテトラヒドロフランの総留出量を該ポリエステルに対し1質量%以下に制御することができる。
【0011】
これにより、原料成分である1,4−ブタンジオールのロスが低減でき、また、得られた共重合ポリエステルにおいてカルボキシル末端基量を低くコントロールすることができる。その結果、本発明の製造方法で得られた共重合ポリエステルは、優れた接着性を有し、耐熱性および風合いの良好な繊維製品を与えるホットメルト型バインダー繊維用として好適なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の共重合ポリエステルの製造方法(以降、本発明の製造方法と略記することがある。)としては、テレフタル酸、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールが共重合されることが必要である。
【0013】
本発明の製造方法における酸成分としては、テレフタル酸を主成分とするものであり、全酸成分に対して90モル%以上の含有量であることが好ましい。テレフタル酸の含有量が90モル%未満の場合、本発明のポリエステルの主たる用途であるホットメルト型バインダー繊維として用いるにあたっては、得られるポリエステルの結晶性や耐熱性の低下の程度が大き過ぎるため好ましくない。
【0014】
また、本発明の製造方法において、得られるポリエステルの特性を損なわない範囲で他の酸成分を含有させることができ、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4‘−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0015】
本発明の製造方法におけるジオール成分としては、ブタンジオール(BD)及びエチレングリコール(EG)の含有量の総和が全ジオール成分量に対し主体となすものであり、全ジオール成分に対して80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。当該含有量の総和が、全ジオール成分に対して80モル%未満の場合、得られるポリエステルの結晶性が低下すると共に融点が低いものとなり、ホットメルト型バインダー繊維として使用するに際しては、耐熱性が十分ではない傾向となるため好ましくない。
【0016】
一方、本発明の製造方法において、得られるポリエステルの特性を損なわない範囲では他のジオール成分を含有させることができ、例えば、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、ビスフェノールA又はビスフェノールSのエチレンオキシド付加体などが挙げられる。
【0017】
本発明の製造方法において、酸成分とジオール成分との仕込み比率としては、通常のポリエステルの重合に際して選択される仕込み比率の範囲であるが、本発明においては、ジオール成分/カルボン酸成分(仕込みモル比率)=1.6〜2.5であることが好ましい。これにより、得られるポリエステルにおいて、末端カルボキシル基の含有量を20eq/10gという好ましい範囲に制御することができることとなる。
【0018】
本発明の製造方法としては、塩基性アンモニウム化合物をポリエステルの酸成分1モルに対し1×10−4〜10×10−4モル添加して行うことが必要であり、好ましくは、3×10−4〜7×10−4モルである。ここで、行うとは、ポリエステルの製造にあたって採られるエステル化反応工程またはエステル交換反応工程、解重合反応工程、重縮合反応工程等を経ながらポリエステルの製造を行うことをさすものである。本発明の製造方法においては、エステル化反応工程またはエステル交換反応工程、解重合反応工程のいずれかの段階に先立って、原料成分の反応槽への投入と同じくして当該塩基性アンモニウム化合物を添加(投入)することが好ましい。
【0019】
本発明の製造方法において、塩基性アンモニウム化合物の添加量が、ポリエステルの酸成分1モルに対し1×10−4モル未満の場合、カルボキシル基に対する中和剤としての効果が小さく、カルボキシル末端の酸触媒としての機能が働くことにより、1,4−ブタンジオールの環化反応が起こりやすく、その結果、テトラヒドロフランが多量に発生する。加えて、原料の仕込み段階で想定していた酸成分とジオール成分とのモルバランスが崩れるため、得られたポリエステルにおいてカルボキシル末端基量が多くなり、得られるポリエステルの耐熱性や耐加水分解性が低いものとなる。
【0020】
一方、塩基性アンモニウム化合物の添加量が、ポリエステルの酸成分1モルに対し10×10−4モルを超える場合、過剰な塩基性アンモニウム化合物により重合触媒の活性が抑制されることとなり、ポリエステルの重合において、目標の重合度まで到達できないという問題が発生する。
【0021】
本発明における塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモエウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどの水酸化テトラアルキルアンモニウム化合物 、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムアセテート、テトラプロピルアンモニウムアセテートなどのテトラアルキルアンモニウムアセテート化合物、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライドなどの塩化物、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム化合物 などの四級アンモニウム塩が挙げられる。この中では特に、水酸化テトラアルキルアンモニウム化合物が好適に用いられる。
【0022】
また、本発明の製造方法としては、テレフタル酸とエチレングリコールからなるエステル化物に対し1,4−ブタンジオールを投入し、塩基性アンモニウム化合物の共存下で行う解重合反応工程を含んでなることが好ましい。これにより、共存する塩基性アンモニウム化合物により反応溶融液中のカルボキシル基が中和され、1,4−ブタンジオールの環化が大幅に抑制されると共に、1,4−ブタンジオールのエステル化ならびにポリエステル中への導入が効果的に起こることとなる。その結果、本発明の製造方法においては、重縮合反応工程の終了までの全工程を通して、テトラヒドロフランの総流出量が、該ポリエステルに対し1質量%以下に制御されることとなる。
【0023】
通常、1,4−ブタンジオールを含んでなるポリエステルの製造において、テトラヒドロフランの総流出量が、ポリエステルに対し1質量%を超える場合、原料成分である1,4−ブタンジオールのロスが大きくなると共にカルボキシル末端基が多くなるため、得られたポリエステルは耐熱性や耐加水分解性が低いものとなり、好ましくないものとなる。これに対し、本発明の製造方法では、テレフタル酸とエチレングリコールからなるエステル化物を1,4−ブタンジオールで解重合を行う際に、反応系内に塩基性アンモニウム化合物を所定量共存させていることにより、従来の手法では問題となっているテトラヒドロフランの大幅な発生を抑制することができることとなり、その結果、テトラヒドロフランの総流出量を1質量%以下という好ましい範囲に制御することが可能となる。
【0024】
本発明の製造方法で得られるポリエステルとしては、BDの含有量が全ジオール成分に対し20モル%〜90モル%であることが好ましく、30モル%〜80モル%であることが、さらに好ましい。BDの含有量が20モル%未満の場合、融点が後述の好ましい範囲を超えて高くなるため好ましくない。また、該含有量が80モル%を超えても、好ましい融点の範囲を超えるため、好ましくない。
【0025】
本発明の製造方法で得られるポリエステルの末端カルボキシル基の含有量は、20eq/10g以下であることが好ましく、さらに好ましくは17eq/10g以下である。本発明の製造方法では、塩基性アンモニウム化合物を添加することにより、末端ブタンジオールの環化反応を抑制し、その結果、末端カルボキシル基の増加を抑える。ポリエステルの末端カルボキシル基の含有量は、20eq/10g以上の場合、ポリエステルの熱安定性や耐加水分解性が悪いため好ましくない。末端カルボキシル基の含有量の下限は特にないが、通常、溶融重合で得られるポリエステルの末端カルボキシル基の含有量は、10eq/10g以上となる。
【0026】
本発明の製造方法で得られるポリエステルの融点としては、150〜210℃であることが好ましく、さらに好ましくは170℃〜200℃の範囲である。ポリエステルの融点が150℃未満の場合、熱安定性が悪いため好ましくない。一方、本発明のポリエステルの融点が210℃を超えると、不織布とした場合の加工温度を高くする必要があり、汎用機台では使用できないため、好ましくない。
【0027】
本発明の製造方法で得られるポリエステルにおいては、極限粘度が0.5以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.6以上である。極限粘度が0.5未満のものでは、各種の物理的、機械的、化学的特性が劣るため好ましくない。一方、極限粘度が高すぎても溶融粘度が高くなるため、押出が困難になったり、また溶融粘度を下げるべく成形温度を上げねばならず、実用上1.5以下であることが好ましい。
【0028】
また、本発明の製造方法としては、目的を損なわない範囲内で、リン酸エステル化合物やヒンダードフェノール化合物のような安定剤、コバルト化合物、蛍光増白剤、染料のような色調改良剤、可塑剤、顔料、制電剤、難燃剤などの各種添加剤についても本発明を損なわない範囲で使用することができ、粉体またはジオールスラリー等の形態で、ポリエステルを製造する際の任意の段階で添加すればよい。
【0029】
本発明の製造方法について、解重合反応工程を含んだ場合を例として、その概略を以下に記載する。
まず、テレフタル酸とエチレングリコールからなるエステル化物を得る方法としては、通常の方法によるものであり、例えば、テレフタル酸とグリコール成分とをエステル化反応またはエステル交換反応させるが、反応条件としては、常圧〜微加圧下、温度 200〜270 ℃、好ましくは、230〜250℃で副生する水を系外に除去しつつ、0.5〜10時間、好ましくは、4〜6時間反応を行う。
【0030】
次に、1,4−ブタンジオール及び所定量の塩基性アンモニウム化合物を投入し、解重合反応を行うが、常圧下、反応温度は、150〜250℃、好ましくは、170〜220℃で、0.5〜2時間、好ましくは、0.5〜1時間反応を行う。
【0031】
解重合反応の後、重縮合反応を行うが、重縮合反応は通常0.01〜10hPa程度の減圧下、220〜280℃の温度域で、所定の極限粘度のものが得られるまで行われる。また、重縮合反応は、触媒存在下で行われ、触媒としては従来一般に用いられているアンチモン、ゲルマニウム、スズ、チタン、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マンガンおよびコバルト等の金属化合物のほか、スルホサリチル酸、0−スルホ安息香酸無水物等の有機スルホン酸化合物が用いられる。触媒の添加量としては、ポリエステルの繰り返し単位1molに対し、通常0.1×10−4〜50×10−4mol、最適には1×10−4〜10×10−4molが適当である。
【0032】
本発明における重縮合反応において、ポリエステルが所定の極限粘度に到達したら、ストランド状に払い出して、冷却カットすることによりチップ化する。
また、本発明の製造方法で得られたポリエステルは、通常の手法により溶融紡糸することでバインダー繊維とすることができる。さらに、当該バインダー繊維からは、他の繊維と任意の比率で混綿した後、熱処理を施すなど、通常の手法により不織布を得ることができる。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、これに限定されるものではない。なお、特性値等の測定、評価方法は、次の通りである。
(a)極限粘度[η]
フェノールと四塩化エタンとの等重量混合物を溶媒として、試料濃度0.5質量%、温度20℃の条件下で常法に基づき測定した。
(b)ポリマー組成
ポリエステルを重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比 1/20 の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA−400型NMR装置にて 1H-NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(c)末端カルボキシル基の含有量
ポリエステル0.1gをベンジルアルコール10mlに溶解し、この溶液にクロロホルム10mlを加えた後、1/10規定の水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定して求めた。
(d)融点(Tm)
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計Diamond DSCを用いて、窒素気流中、温度範囲−20℃〜250℃、昇温(降温)速度20℃/minで測定した。
(e)反応中に発生したテトラヒドロフラン量
反応中に溜出した溜出液を、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比 1/20 の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA−400型NMR装置にて 1H-NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピークの積分強度から溜出液中のテトラヒドロフランの含有量を求めた。ここから求められるテトラヒドロフラン量と、得られたポリマー量から、ポリマーに対するテトラヒドロフラン量を算出した。
【0034】
(f)不織布
(f−1)製造方法
共重合ポリエステルとポリエチレンテレフタレートのチップを同心芯鞘型複合溶融紡糸装置に供給し、吐出孔数225の紡糸口金により、紡糸温度270℃、吐出量227g/分、複合重量比1/1で、前者が鞘となるように溶融紡糸し、冷却後、700m/分の速度で巻取り複合未延伸糸を得た。この未延伸糸を10万dtexのトウに集束し、延伸温度62℃、延伸倍率3.2で延伸し、押し込み式クリンパーで捲縮を与えた後、長さ51mmに切断して、繊度4dtexのバインダー繊維を得た。このバインダー繊維30重量%と長さ51mm、繊度2dtexのポリエチレンテレフタレート繊維70重量%を混綿し、カードに通して50g/mの目付のウェブとし、180℃の回転乾燥機で2分間熱処理し、不織布を得た。
(f−2)不織布強力
不織布を幅25mm、長さ100mmの試料となし、オリエンティック社製低速伸長型引張試験機UTM−4−100型を用い、引張速度100mm/分で測定した。加熱下の強力は、試料設置部を所定の雰囲気温度の炉中に90秒間放置した後測定した。2000g以上を合格とした。
【0035】
(実施例1)
PETオリゴマーの存在するエステル化反応缶に、TPAとEG(モル比1/1.6) のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、エステル化反応率95%のPETオリゴマーを連続的に得た。
【0036】
このPETオリゴマー50kgを重縮合反応缶に移送し、塩基性アンモニウム化合物として水酸化テトラエチルアンモニウムをテレフタル酸1モルに対して5×10−4モル(18.4g)、BD13.5kgを投入し、温度180〜200℃、常圧下で1時間攪拌した。ついで、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートをテレフタル酸1モルに対して4×10−4モル(34g)重縮合反応缶に投入した後、反応器内の圧力を徐々に減じ、70分後に1.2hPa以下にした。この条件下で撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出し、チップ化した。
【0037】
(実施例2〜比較例2)
BDの添加量、水酸化テトラエチルアミンの添加量を変更したこと以外は実施例1と同様にして実施した。
実施例1〜5および比較例1〜2で得られた結果については、表1に示した。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例1〜5により得られたポリエステルについては、各種特性が良好であったが、比較例では、以下の問題があった。
比較例1では、水酸化テトラエチルアンモニウムの添加量が少なかったため、末端カルボキシル基の含有量が多く、テトラヒドロフラン量の発生量も多かった。
比較例2では、水酸化テトラエチルアンモニウムの添加量が多かったため、重合触媒の活性が抑制され、目標重合度まで到達できず、不織布強力や熱安定性も悪かった。












【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールが共重合されてなるポリエステルの製造方法において、塩基性アンモニウム化合物をポリエステルの酸成分1モルに対し1×10−4〜10×10−4モル添加して行うことを特徴とする共重合ポリエステルの製造方法。
【請求項2】
前記ポリエステルの製造方法において、テレフタル酸とエチレングリコールからなるエステル化物に対し1,4−ブタンジオールを投入し塩基性アンモニウム化合物の共存下で行う解重合反応工程を含んでなり、重縮合反応工程終了までの全工程を通したテトラヒドロフランの総留出量が、得られたポリエステルに対し1質量%以下に制御されていることを特徴とする請求項1記載の共重合ポリエステルの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法で製造されたポリエステルであって、全ジオール成分の20モル%〜90モル%が1,4−ブタンジオールからなり、末端カルボキシル基の含有量が20eq/10g以下、融点が150℃〜210℃であることを特徴とする共重合ポリエステル。







【公開番号】特開2009−51940(P2009−51940A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219715(P2007−219715)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000228073)日本エステル株式会社 (273)
【Fターム(参考)】