説明

共重合ポリエステルウレタン樹脂、樹脂フィルム印刷用アンカーコート剤組成物、印刷用コートフィルム及び印刷用粘着シート

【課題】紫外線硬化型印刷インクなどの基材への密着性を改善し得ると共に、基材裏面とのブロッキングが低いアンカーコート層を与える共重合ポリエステルウレタン樹脂、及びそれを用いたアンカーコート層を有する印刷用コートフィルムを提供する。
【解決手段】特定のポリエステルジオール(a)、特定のポリアルキレンエーテルグリコール(b)、所望により用いられる特定の脂肪族多価アルコール(c)、及びジイソシアナート化合物(d)の重付加反応により得られる構造からなり、上記各成分を特定の割合で含む数平均分子量10,000〜100,000の共重合ポリエステルウレタン樹脂、並びに基材フィルムの片面の最外層に、印刷用アンカーコート層が設けられている印刷用コートフィルムであって、該印刷用アンカーコート層が上記共重合ポリエステルウレタン樹脂の架橋体によって構成されている印刷用コートフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合ポリエステルウレタン樹脂、樹脂フィルム印刷用アンカーコート剤組成物、印刷用コートフィルム及び印刷用粘着シートに関する。さらに詳しくは、本発明は、印刷インクとの親和性が高く、アンカーコート剤として基材上に塗布することで、印刷インクの基材への密着性を改善し得る共重合ポリエステルウレタン樹脂、それを含む樹脂フィルム印刷用アンカーコート剤組成物、及び該組成物を用いて得られたアンカーコート層を有し、印刷インクの基材への密着性に優れる印刷用コートフィルムと印刷用粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の印刷に用いられる印刷用コートフィルムに、フィルム基材としてプラスチックフィルムが使用されてきている。一般的に、印刷用コートフィルムの基材がプラスチックフィルムである場合には、インキとの密着性を良好にするため、印刷用コートフィルムにおいては、基材フィルムの表面にインキ受容層が設けられている。近年、印刷業界においては、フレキソ印刷の需要が増えてきている。また、フレキソ印刷のインキはUV(紫外線硬化型)インキが主流である。ところが、フレキソ印刷では通常のオフセット印刷等に比べてインキの盛り量が多いため、インキの硬化収縮により印刷用フィルム等に与える影響が大きく、UVインキを用いてフレキソ印刷を施すとインキの硬化収縮によりインキの脱落が生じるという問題があった。したがって、UVインキを用いてフレキソ印刷を行う場合にもUVインキの収縮に追従でき、かつUVインキとの密着性に優れた印刷用フィルム及び印刷用粘着シートが求められていた。
また、UVインキに特化したものではなく、酸化重合型インキとの密着性及び印刷性に優れると共に、熱転写印字にも優れ、さらには印刷前の状態において耐ブロッキング適性も有するものが一つのコート層として処理されているものが求められている。
【0003】
紫外線硬化タイプ及び酸化重合タイプ等の、銘柄の異なるインキの密着性及び印刷性に優れ、さらに印刷加工を伴うラベル用に有用な、ポリエステル系積層フィルムに関し、ポリエステル系樹脂からなる基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも片面に設けられた表面層とを有するポリエステル系積層フィルムであって、該表面層が、グリコールを構成成分として含有する共重合ポリエステル樹脂(A)と、重亜硫酸塩をブロック剤とするブロック型イソシアネート基を含有する樹脂(B)とを主成分とする樹脂組成物から構成されているポリエステル系積層フィルムが開示されている(特許文献1参照)。
酸化重合型インキ、紫外線硬化型インキの印刷物においてインキの密着性を有し、しかも印刷物の耐スクラッチ性を有する熱可塑性樹脂フィルムとして、JIS K 5600−5−4に準拠する鉛筆硬度がHB以上である硬化型樹脂及び、オレフィン系樹脂を含み、さらに、熱可塑性樹脂フィルム外表面にオレフィン系樹脂由来の突起を含む塗布層を少なくとも片面に有する熱可塑性樹脂フィルムが開示されている(特許文献2参照)。
【0004】
さらに耐ブロッキング性、インキ密着性に優れたインキ用アンカーコート剤として、トルエン不溶分率60〜99質量%であることを特徴とする共重合ラテックス組成物からなるインキ用アンカーコート剤であり、上記共重合体としては、ガラス転移温度が−90〜10℃の範囲にある共重合体(イ)からなるコア層及びガラス転移温度が50〜180℃の範囲にある共重合体(ロ)からなるシェル層を有するものが開示されている(特許文献3参照)。
また、基材フィルムに、破断点伸度が150%以上の弾性体層を設けたことを特徴とする印刷用フィルムが提案されている(特許文献4参照)。
このように、種々の印刷用シートが開示されているが、一つのコート層で耐ブロッキング性を有し、紫外線硬化タイプや酸化重合タイプ等の銘柄の異なるインキの密着及印刷性に優れ、さらに熱転写印字性にも優れる印刷用シートは見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3200929号公報
【特許文献2】特開2005−89736号公報
【特許文献3】特開2007−100034号公報
【特許文献4】特開2002−264265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下になされたもので、紫外線硬化タイプや酸化重合タイプ等の銘柄の異なる印刷インクの基材への密着性を改善すると共に、基材裏面とのブロッキングが低く塗布フィルムの取り扱いの容易なアンカーコート剤として有用な共重合ポリエステルウレタン樹脂、それを含む樹脂フィルム印刷用アンカーコート剤組成物、及び該組成物を用いて得られたアンカーコート層を有し、印刷インクの基材への密着性に優れる印刷用コートフィルムと印刷用粘着シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造と分子量を有する共重合ポリエステルウレタン樹脂により、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)全酸成分を100モル%としたとき芳香族ジカルボン酸成分を80モル%以上含有し、全グリコール成分を100モル%としたとき一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される脂肪族グリコール成分を40モル%以上含有し、数平均分子量1500以上3000以下であるポリエステルジオール(a)、
一般式(1):
【化1】

(但し、R1は炭素数1又は2のアルキル基である)
一般式(2):
【化2】

(但し、R2は炭素数1又は2のアルキル基、R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である)
炭素数2〜4の脂肪族グリコールの脱水縮合により得られる構造からなり、数平均分子量が1000以上3000以下であるポリアルキレンエーテルグリコール(b)、
炭素数4〜6の脂肪族多価アルコール(c)、及び
ジイソシアナート化合物(d)、
の重付加反応により得られる構造からなり、かつ
前記(a)成分100質量部に対し、前記(b)成分40〜80質量部、前記(c)成分0〜8質量部、前記(d)成分20〜50質量部を含有し、数平均分子量が10,000〜100,000であることを特徴とする共重合ポリエステルウレタン樹脂、
(2)上記(1)項に記載の共重合ポリエステルウレタン樹脂を含有することを特徴とする樹脂フィルム印刷用アンカーコート剤組成物、
(3)さらに、共重合ポリエステルウレタン樹脂100質量部に対して、架橋剤を0.1〜30質量部の割合で含む、上記(2)項に記載の樹脂フィルム印刷用アンカーコート剤組成物、
(4)基材フィルムの片面の最外層に、印刷用アンカーコート層が設けられている印刷用コートフィルムであって、該印刷用アンカーコート層が上記(1)項に記載の共重合ポリエステルウレタン樹脂の架橋体によって構成されていることを特徴とする印刷用コートフィルム、
(5)印刷用アンカーコート層の表層から、該アンカーコート層厚の1/2の深さ(X)におけるナノインデンテーション試験により測定される硬度Aが、上記と同様にして測定される基材フィルムの表層から深さ(X)における硬度Bよりも低く、かつ硬度Aと硬度Bとの差が0.2GPa以下である、上記(4)項に記載の印刷用コートフィルム、
(6)印刷用アンカーコート層の厚さが40〜1000nmである上記(4)又は(5)項に記載の印刷用コートフィルム、及び
(7)上記(4)〜(6)項のいずれかに記載の印刷用コートフィルムにおける基材フィルムの印刷用アンカーコート層が形成されている面の反対面に、粘着剤層が形成されていることを特徴とする印刷用粘着シート、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の共重合ポリエステルウレタン樹脂は印刷インクとの親和性が高く、本発明の共重合ポリエステルウレタン樹脂をアンカーコート剤として基材上に塗布することで印刷インクの基材への密着性を改善させることが可能となる。また同時に本共重合ポリエステルウレタン樹脂でアンカーコート処理したフィルムを重ね合わせた際、コート層表面とフィルム裏面のブロッキング現象を効果的に抑制することも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明の共重合ポリエステルウレタン樹脂について説明する。
[共重合ポリエステルウレタン樹脂]
本発明の共重合ポリエステルウレタン樹脂は、以下に示すポリエステルジオール(a)、ポリアルキレンエーテルグリコール(b)、脂肪族多価アルコール(c)、及びジイソシアナート化合物(d)の重付加反応により得られる構造を有する。
【0010】
(ポリエステルジオール(a))
本発明の共重合ポリエステルウレタン樹脂におけるポリエステルジオール(a)は、全酸成分を100モル%としたとき芳香族ジカルボン酸成分を80モル%以上含有し、全グリコール成分を100モル%としたとき一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される脂肪族グリコール成分を40モル%以上含有し、数平均分子量1500以上3000以下である。
一般式(1):
【化3】

(但し、R1は炭素数1又は2のアルキル基である)
一般式(2):
【化4】

(但し、R2は炭素数1又は2のアルキル基、R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である)
上記ポリエステルジオール(a)は、全酸成分の80モル%以上が芳香族二塩基酸であることでウレタン結合により共重合される後述のポリアルキレンエーテルグリコール成分(b)との相溶性が適度に悪くなり、(a)、(b)両成分に由来するセグメントがおのおの凝集してミクロ相分離構造を形成することで本発明の効果が発揮される。すなわち基材上に形成されたアンカーコート層中で、共重合ポリエステルウレタン樹脂中の(a)、(b)両成分に由来するセグメントが適度に非相溶状態で存在することにより本共重合ポリエステルウレタン樹脂でアンカーコート処理を施したフィルム又はシートを重ね合わせた際の耐ブロッキング特性と印刷インク密着性が同時に効果的に改善される。
上記(a)成分中の全酸成分中の芳香族二塩基酸の共重合比率は80モル%以上である。80モル%未満では(b)成分に由来するセグメントとの相溶性が良くなり、(a)と、(b)両成分に由来するセグメントがミクロ相分離構造を形成せず、このため得られる共重合ポリエステルウレタン樹脂中の(b)成分に由来するセグメントの凝集構造の効果である印刷インクとの親和性が発現せず、印刷インク密着性が損なわれてしまう傾向にあり、さらに(a)成分に由来するセグメントの凝集構造の効果である耐ブロッキング性能も損なわれてしまう傾向にある。
【0011】
上記(a)成分中の全グリコール成分を100モル%としたとき一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される脂肪族グリコール成分を40モル%以上含有していることで汎用溶剤への溶解性が向上し、本発明の共重合ポリエステルウレタン樹脂を汎用有機溶剤中で重合し易くなる。さらに(a)成分の数平均分子量は1500以上3000以下であり、数平均分子量が1500未満では(b)成分に由来するセグメントとの相溶性が良くなり、(a)、(b)両成分に由来するセグメントのミクロ相分離が生じず、このため得られる共重合ポリエステルウレタン樹脂中の(b)成分に由来するセグメントの凝集構造の効果である印刷インクとの親和性が発現せず、印刷インク密着性が損なわれてしまう傾向にあり、さらに(a)成分に由来するセグメントの凝集構造の効果である耐ブロッキング性能も損なわれてしまう傾向にある。一方、数平均分子量が3000を超えると(b)成分に由来するセグメントとの非相溶性が高まり過ぎ、共重合ポリエステルウレタン樹脂の重合過程で(a)成分を高濃度で含有する樹脂と、(b)成分を高濃度で含有する樹脂の2相に相分離し、均一な樹脂を得ることが困難になる傾向にある。なお、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0012】
上記(a)成分を構成する酸成分としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸等の芳香族二塩基酸及びこれらのエステル誘導体を挙げることができるが、(b)成分との非相溶性を発現させるためにはテレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムがより好ましい。またこれら芳香族二塩基酸と組み合わせ、全酸性分中の20モル%未満で使用される芳香族二塩基酸以外の二塩基酸としてはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族二塩基酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式二塩基酸を挙げることができる。上記(a)成分において二塩基酸と組み合わせて使用されるグリコール成分としては、全グリコール成分中に40モル%以上共重合される、一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される脂肪族グリコール成分の例としては、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロピレングリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。これらの内、汎用溶剤に対する溶解性をより効果的に高めるという観点からネオペンチルグリコールが好ましい。またこれら脂肪族グリコールと共に共重合されるその他グリコール成分としてはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の直鎖脂肪族グリコール成分が好適に用いられる。これらの内、エチレングリコールを用いると重合反応がより進みやすく好ましい。
【0013】
(ポリアルキレンエーテルグリコール(b))
本発明の共重合ポリエステルウレタン樹脂におけるポリアルキレンエーテルグリコール(b)は、炭素数2〜4の脂肪族グリコールの脱水縮合により得られる構造からなり、数平均分子量が1000以上3000以下である。
上記(b)成分の具体的な例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルジオール類が挙げられる。これらの内、(a)成分に由来するセグメントとの適度な非相溶性を発現させるためにはポリプロピレングリコールがより好ましい。また(b)成分の数平均分子量は1000〜3000であり、この数平均分子量が1000未満では(a)成分に由来するセグメントとの相溶性が良くなり(a)、(b)両成分に由来するセグメントのミクロ相分離が生じず、このため得られる共重合ポリエステルウレタン樹脂中の(b)成分に由来するセグメントの凝集構造の効果である印刷インクとの親和性が発現せず、印刷インク密着性が損なわれてしまう傾向にあり、さらに(a)成分に由来するセグメントの凝集構造の効果である耐ブロッキング性能も発揮されない傾向にある。一方、数平均分子量が3000を超えると(a)成分との非相溶性が高まり過ぎ、共重合ポリエステルウレタン樹脂の重合過程で(a)成分を高濃度で含有する樹脂と(b)成分を高濃度で含有する樹脂の2相に相分離が生じ、均一な樹脂を得ることが困難になる傾向にある。
【0014】
上記(a)成分と(b)成分の共重合比率は前記(a)成分100質量部に対し、前記(b)成分40〜80質量部である。(b)成分が40質量部未満では(b)成分に由来するセグメントの凝集構造の効果である印刷インクとの親和性が十分に発現されないことから、印刷インク密着性が損なわれる。一方、(b)成分が80質量部を超えると共重合ポリエステルウレタン樹脂全体のガラス転移温度が低くなり、耐ブロッキング特性が損なわれる。
【0015】
(脂肪族多価アルコール(c))
本発明の共重合ポリエステルウレタン樹脂における脂肪族多価アルコール(c)は、炭素数4〜6であって、該共重合ポリエステルウレタン樹脂に鎖延長剤として用いられる。この(c)成分の具体例としては、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の直鎖脂肪族グリコール類や、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロピレングリコール等の分岐を有するグリコール類が挙げられる。また、架橋剤との反応性を向上させる目的で3官能以上の多価アルコールを用いても良く、例えばトリメチロールプロパン、グリセリン等のトリオール、ペンタエリスリトール等のテトラオールを挙げることができる。これら多価アルコール化合物の内、得られる共重合ポリエステルウレタン樹脂の溶解性を向上させる意味からは分岐を有するグリコール類が好ましく、最も好ましくはネオペンチルグリコールである。
【0016】
これら炭素数4〜6の脂肪族多価アルコール(c)成分を共重合することにより、共重合ポリエステルウレタン樹脂中のウレタン結合基濃度を調整し共重合ポリエステルウレタン樹脂のガラス転移温度等の物性を制御することができ、(a)成分100質量部に対し8質量部以下の範囲で共重合することができ、6質量部以下であることがさらに好ましい。8質量部を超えると、後述のジイソシアナート化合物(d)成分と特定構造のオリゴマーを生成し易くなり、場合により生成したオリゴマーがポリウレタン溶液中に沈殿し、好ましくない。(c)成分は必須成分ではないが、使用する場合は、その使用量が過少であると効果を発揮しないので、(a)成分100質量部に対し0.2質量部以上であることが好ましく、0.6質量部以上がより好ましく、1.6質量部以上がさらに好ましい。
【0017】
(ジイソシアナート化合物(d))
本発明の共重合ポリエステルウレタン樹脂に用いられるジイソシアナート化合物(d)成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のいずれのジイソシアナート化合物でもよく、ジフェニルメタンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、1,6−ヘキサンジイソシアナート等が挙げられるが、反応性の良さからジフェニルメタンジイソシアナートが好ましい。これらジイソシアナート化合物の共重合量は本発明の共重合ポリエステルウレタン樹脂中、20〜50質量部である。20質量部未満では共重合ポリエステルウレタン樹脂特有の強靱性が発現せず、また50質量部を超えると生成する共重合ポリエステルウレタン樹脂の汎用溶剤に対する溶解性が低下する。
【0018】
(共重合ポリエステルウレタン樹脂の性状)
本発明の共重合ポリエステルウレタン樹脂の数平均分子量は10,000〜100,000である必要がある。数平均分子量がこれよりも低いと印刷インクの密着性が不十分となり、数平均分子量がこれよりも高いとポリウレタン樹脂溶液の粘度が高くなり、取り扱い作業性が悪くなる。
【0019】
本発明の共重合ポリエステルウレタン樹脂の動的粘弾性率測定における損失正接tanδが最大になるときの温度は40℃以上であることが好ましく、より好ましくは50〜75℃である。tanδが40℃よりも低いと耐ブロッキング特性が不十分となり、75℃を超えると印刷密着性が低下する傾向がある。
【0020】
(共重合ポリエステルウレタン樹脂の重合)
本発明の共重合ポリエステルウレタン樹脂は、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤中あるいはトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素系溶剤と上記ケトン系溶剤との混合溶剤中で、上記(a)成分、(b)成分、(c)成分と(d)成分との重付加反応により、重合されることが好ましい。重合触媒としては、例えば、ジブチル錫ラウレート等の有機錫錯体やトリエチレンジアミン等のアミン系触媒を用いることができる。
【0021】
次に、本発明の樹脂フィルム印刷用アンカーコート剤組成物について説明する。
[樹脂フィルム印刷用アンカーコート剤組成物]
本発明の樹脂フィルム印刷用アンカーコート剤組成物(以下、単にアンカーコート剤組成物と称することがある。)は、前述した共重合ポリエステルウレタン樹脂を含有することを特徴とし、架橋剤が含まれていることが好ましい。
当該アンカーコート剤組成物が架橋剤を含有する場合、該架橋剤として、共重合ポリエステルウレタン樹脂が有する官能基との反応性を有する架橋剤を用いることができる。この場合、共重合ポリエステルウレタン樹脂のポリマー鎖同士が結合して樹脂フィルム印刷用アンカーコート剤組成物の凝集力が向上し、基材との密着性を向上させることができる。
【0022】
(架橋剤)
架橋剤としては、例えば、イソシアナート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、反応性フェノール樹脂等が挙げられる。
【0023】
イソシアナート系化合物としては、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート;ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアナート、ビシクロヘプタントリイソシアナート、シクロペンチレンジイソシアナート、シクロヘキシレンジイソシアナート、メチルシクロヘキシレンジイソシアナート、水添キシリレンジイソシアナートなどの脂環式イソシアナート化合物;ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、リジンジイソシアナートなどの脂肪族イソシアナート;等が挙げられる。
また、これらの化合物の、ビウレット体、イソシアヌレート体;や、これらの化合物と、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の非芳香族性低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体;などの変性体も用いることができる。
【0024】
エポキシ系化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、N,N−ジグリシジルアミノシクロヘキサン、ジグリシジルシクロヘキサンジカルボキシレート、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0025】
アジリジン系化合物としては、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボキシアミノ)ジフェニルメタン、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス[1−(2−メチル)アジリジニル]ホスフィンオキシド、ヘキサ[1−(2−メチル)アジリジニル]トリホスファトリアジン、トリメチロールプロパン−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパントリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート、N,N'−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシレート)等が挙げられる。
【0026】
金属キレート化合物としては、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズのもの等があるが、性能の点からアルミニウムキレート化合物が好ましい。
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノ−N−ラウロイル−β−アラネートモノラウリルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(イソブチルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(2−エチルヘキシルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(ドデシルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(オレイルアセトアセテート)キレート等が挙げられる。
【0027】
また、その他の金属キレート化合物としては、例えば、チタニウムテトラプロピオネート、チタニウムテトラ−n−ブチレート、チタニウムテトラ−2−エチルヘキサノエート、ジルコニウム−sec−ブチレート、ジルコニウムジエトキシ−tert−ブチレート、トリエタノールアミンチタニウムジプロピオネート、チタニウムラクテートのアンモニウム塩、テトラオクチレングリコールチタネート等が挙げられる。
【0028】
架橋剤の配合量は、共重合ポリエステルウレタン樹脂100質量部(固形分)に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、特に0.25〜25質量部であることが好ましい。0.1質量部未満であると基材に対して良好な密着性が得られず、30質量部を超えるとアンカーコート層の表面硬度が高くなり、印刷適正が低下するおそれがある。
【0029】
(アンカーコート剤組成物の調製)
本発明のアンカーコート剤組成物は、前述した共重合ポリエステルウレタン樹脂と、所望により用いられる前記架橋剤及びその他添加剤、例えば、紫外線吸収剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、粘着付与剤、顔料、染料、カップリング剤などと、溶媒とを混合・撹拌する公知の方法により調製することができる。
【0030】
溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸ホスホロアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ε−カプロラクタム等のラクタム類;γ−ラクトン、δ−ラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、樹脂フィルム印刷用アンカーコート剤組成物の固形分濃度が10〜50質量%となる量が好ましい。
【0031】
次に本発明の印刷用コートフィルムについて説明する。
[印刷用コートフィルム]
本発明の印刷用コートフィルムは、基材フィルムの片面の最外層に、印刷用アンカーコート層が設けられている印刷用コートフィルムであって、該印刷用アンカーコート層が、前述した共重合ポリエステルウレタン樹脂の架橋体によって構成されていることを特徴とする。本発明の印刷用コートフィルムとしては、枚葉状物のほか、長尺のロール状物のいずれであってもよい。
【0032】
(基材フィルム)
基材フィルムの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ポリm−フェニレンイソフタルアミド、ポリp−フェニレンテレフタルアミドなどのアミド系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系樹脂、アセタール系樹脂、カーボネート系樹脂、ブタジエン系樹脂、エステルウレタン系樹脂、アクリロニトリル‐スチレン共重合樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(MBS樹脂)、エチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂(EMMA樹脂)、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)及びこれら樹脂の混合物又は積層物からなるフィルム等が挙げられる。この中でも、粘着層を設けて粘着ラベルとして使用する場合には、フィルムの柔軟性等の点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンフィルムが好ましい。
【0033】
この基材フィルムは無延伸のものであってもよいし、一軸延伸処理又は二軸延伸処理したものであってもよく、その厚さとしては特に制限はなく、使用目的に応じて適宜選定すればよいが、通常は5〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲である。
また、この基材フィルムは、透明なものであっても、所望により着色又は蒸着されていてもよく、また紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤などを含んでいてもよい。さらに、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。
【0034】
(印刷用コートフィルムの製造)
本発明の印刷用コートフィルムを製造するには、基材フィルムに対して前述した樹脂フィルム印刷用アンカーコート剤組成物、好ましくは架橋剤を含有する組成物を塗布した後、熱風等で乾燥させればよい。
上記印刷アンカーコート剤組成物の塗布は、常法によって行えばよく、例えば、バーコート法、ナイフコート法、マイヤーバー法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法によって行えばよい。印刷アンカーコート剤組成物を塗布したのち、塗膜を50〜120℃程度で乾燥させることが好ましい。
印刷アンカーコート層の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、40〜1000nmの範囲内であることが好ましい。この厚さが40nm未満では印刷性が低下し、一方1000nmを越えると耐ブロッキング性が低下する。好ましい厚さは50〜500nmである。
【0035】
(印刷用コートフィルムの性状)
このようにして得られた本発明の印刷用コートフィルムにおいては、印刷用アンカーコート層の表層から、該アンカーコート層厚の1/2の深さ(X)におけるナノインデンテーション試験により測定される硬度Aが、上記と同様にして測定される基材フィルムの表層から深さ(X)における硬度Bよりも低く、かつ硬度Bと硬度Aとの差が0.2GPa以下であることが好ましい。
上記硬度Bと硬度Aとの差が0.2GPaより大きいと耐ブロッキング性が低下する場合がある。また、印刷性の観点から、該差の下限は0.01GPa程度である。該差のより好ましい範囲は0.02〜0.2GPaである。なお、上記のナノインデンテーション試験による硬度測定試験は下記の方法で行う。
<硬度測定試験>
基材フィルム又は、印刷用コートフィルムを23℃、50%RH条件下で1週間調湿後、10mm×10mmサイズに裁断したサンプルを、アルミニウム製の台座に接着したガラス板上に、2液系のエポキシ接着剤で、アンカーコート層を有する面の反対面又は基材フィルムを固定し、ナノインデンター[MTS社製、機種名「Nano Indenter SA2」]により、アンカーコート層又は基材フィルムの硬度を測定した。
【0036】
次に、本発明の印刷用粘着シートについて説明する。
[印刷用粘着シート]
本発明の印刷用粘着シートは、前述した印刷用コートフィルムにおける基材フィルムの印刷用アンカーコート層が形成されている面の反対側に、粘着剤層が形成されていることを特徴とする。
【0037】
(粘着剤層)
本発明の印刷用粘着シートに設けられる粘着剤層を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の公知の粘着剤を使用することができる。粘着剤層は、基材フィルムの印刷アンカーコート層を有する面とは反対側の面に直接粘着剤層用塗布液を塗布することにより設けてもよいし、剥離シートの剥離処理が施された面に粘着剤層を形成して、この粘着剤層を基材フィルムの印刷アンカーコート層を形成した面とは反対側の面に積層させることにより、剥離シート付き粘着剤層を形成してもよい。粘着剤層を形成する方法は、特に限定されることがなく通常の方法を使用することができ、例えば、グラビアロール方式、ロールナイフ方式等により形成することができる。本発明において粘着剤層の厚さは特に限定されるものではないが、通常、5〜100μmの範囲内であり、特に10〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0038】
通常は粘着剤層面には、使用に供するまでの間、粘着剤層を保護するために剥離シートを仮貼着しておく。剥離シートとしては公知のものが使用可能であり、例えば、シリコーン系、ポリエチレン系等の剥離剤で剥離処理した剥離紙や剥離フィルム等を用いることができる。
【0039】
本発明の印刷用コートフィルム及び印刷用粘着シートは、通常のインキを用いたスクリーン印刷やオフセット印刷、紫外線硬化型(UV)を使用したフレキソ印刷やシール印刷など、どのような印刷方式の印刷用フィルムとして適用可能であるが、特にUVインキを使用したフレキソ印刷方式において顕著な効果が得られる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0041】
なお、本明細書中で採用した測定、評価方法は次の通りである。
(1)数平均分子量
ウォーターズ社製「ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)150C」を用い、テトラヒドロフランをキャリアー溶剤として流速1ml/分で測定した。カラムとして昭和電工(株)製「Shodex KF−802」、「KF−804」、「KF−806」を3本連結しカラム温度は30℃に設定した。検出器にはRI検出器を用いた。分子量標準サンプルとしてはポリスチレン標準物質を用いた。
【0042】
(2)酸価
樹脂0.2gを20mlのクロロホルムに溶解後、0.1N−NaOHエタノール溶液でフェノールフタレインを指示薬として測定し、測定値を樹脂固形分1000kg中の当量で示した。
【0043】
(3)ガラス転移温度
動的粘弾性測定装置、[アイティ−計測制御社製、「DVA−220」]を用い、得られたtanδの温度依存性曲線のピーク温度をガラス転移温度とした。測定サンプルは以下の様に調製し、下記測定条件で測定した。
共重合ポリエステルポリウレタン樹脂溶液を離型フィルム(OPP)に乾燥厚みが20μm厚になるように塗布し、120℃の熱風乾燥機で1時間乾燥させ、4mm×40mmの短冊状の測定サンプル片を切り取った。得られた測定用サンプル片を上記動的粘弾性測定装置を用い、周波数:10Hz、昇温速度:4℃/分、周波数:10Hzでtanδ値の温度依存性データを測定した。
【0044】
(4)樹脂組成
クロロホルム−dに樹脂を溶解し、ヴァリアン社製核磁気共鳴分析計(NMR)「ジェミニ−200」を用い、H−NMRにより樹脂組成比を求めた。
【0045】
(5)硬度測定
明細書本文に記載のナノインデンテーション試験により、基材フィルム及び印刷用アンカーコート層の硬度を測定した。
【0046】
(6)耐ブロッキング性
印刷用コートフィルムを23℃、50%RH環境下で1週間放置後、印刷用コートフィルムの印刷用アンカーコート層面と未コート面とを各5枚重ね合わせたのち、ガラス板にて挟んだ。次に、60℃、95%RH環境下又は、70℃、30%RH環境下に80g/cm2の荷重を加えて7日間放置した。その後23℃、50%RH環境下に24時間放置した後、重ね合わせたフィルムを剥がし、未コート面との耐ブロッキング性を、下記判定基準で求めた。
○:未コート面との接着が全くない。
×:未コート面とアンカーコート層面が接着し、両者を手で剥がすことが不可能であるか、あるいは両者を手で剥がすことが可能であるが、剥がした後のアンカーコート層表面に変化が見られる。
【0047】
(7)UVフレキソ印刷密着性
印刷用コートフィルムの印刷用アンカーコート層面に、UVインキ[T&K TOKA(株)製、商品名「HT−2」]を用いて、フレキソ印刷機[マーカンディー社製、商品名「MA−2200」]にて下記条件で印刷を施し、UV照射(メタルハライドランプ3kW)を行い、印刷画像を得た。フレキソ印刷機のアニロックスローラーのセルは亀甲型#200で、セル容量は16cm3/cm2である。
次に、JIS K 5600−5−6に準拠し、印刷層に1mm角の碁盤目を10×10マス形成し、セロハンテープ[ニチバン社製「CT24」]を貼着し、該テープを剥がした際、100マスの内、剥離したマス目の数を調べ、下記判定基準で求めた。
○:0マス以上10マス未満の剥離
×:10マス以上の剥離
【0048】
(8)UVシール印刷密着性
印刷用コートフィルムの印刷用アンカーコート層面に、UVインキ[T&K TOKA(株)製、商品名「BEST CURE UV161」]を用いて、印刷機[明製作所製、商品名「RIテスター」]にて印刷を施し、UV照射(高圧水銀ランプ)を行い、画像を得た。
次に、JIS K 5600−5−6に準拠し、印刷層に1mm角の碁盤目を10×10マス形成し、セロハンテープ[ニチバン社製「CT24」]を貼着し、該テープを剥がした際、100マスの内、剥離したマス目の数を調べ、下記判定基準で求めた。
○:0マス以上10マス未満の剥離
×:10マス以上の剥離
【0049】
(9)酸化重合型印刷密着性
印刷用コートフィルムの印刷用アンカーコート層面に、酸化重合インキ[東洋インキ社製、商品名「TSP202」]を用いて、印刷機[明製作所社製、商品名「RIテスター」]にて印刷を施し画像を得た。
上記印刷を行った後、23℃、50%RH環境下に24時間放置後、JIS K 5600−5−6に準拠し、印刷層に1mm角の碁盤目を10×10マス形成し、セロハンテープ[ニチバン社製「CT24」]を貼着し、該テープを剥がした際、100マスの内、剥離したマス目の数を調べ、下記判定基準で求めた。
○:0マス以上10マス未満の剥離
×:10マス以上の剥離
【0050】
(10)熱転写印字性
印刷用コートフィルムの印刷用アンカーコート層面に、レジン系インキリボン[ソニーケミカル&インフォメーションデバイス社製、商品名「TR4070」]を、熱転写プリンタ[ゼブラ社製、機種名「Zebra140XiIII」]で速度3インチ/sec(7.6cm/sec)にて印字を行った。インキリボンの転写性を下記の基準で評価した。
○:問題なくインキリボンの転写が可能
×:インキリボンの転写が不可能
【0051】
以下、実施例中の表に示した化合物の略号はそれぞれ以下の化合物を示す。
T:テレフタル酸ジメチル
I:イソフタル酸ジメチル
5SIPA:5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム
SA:セバシン酸
1,2−PG:1,2−プロピレングリコール
EG:エチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
MDI:ジフェニルメタンジイソシアナート
TMP:トリメチロールプロパン
PPG1200:三洋化成工業製「ニューポールPP−1200」(ポリプロピレングリコール、数平均分子量:1200)
PTMG1000:三菱化学製「ポリテトラメチレングリコール」(数平均分子量:1000)
ODX688:DIC製「ポリライトOD−X−688」(脂肪族系ポリエステルジオール、数平均分子量:2000)
OPP:東レ社製「ポリプロピレンフィルム」(商品名「トレファンBO#50−2562」、厚み50μm)
PET:東レ社製「ポリエチレンテレフタレートフィルム」(商品名「ルミラーPET50 T−60」、厚み50μm)
【0052】
以下に本発明の実施例、比較例に使用したポリエステル樹脂の合成例、比較合成例を示す。なお以下、特記しないかぎり、部は質量部を示す。
【0053】
合成例−1
ポリエステルジオールA1の合成
温度計、撹拌翼、リービッヒ冷却管を具備した2Lの4つ口フラスコにテレフタル酸ジメチル194部、イソフタル酸ジメチル194部、エチレングリコール161部、ネオペンチルグリコール146部及び触媒としてテトラブチルチタネート(TBT)を0.2部仕込み190℃〜230℃で3時間エステル交換反応を進行させた。次いで250℃に昇温後、減圧下に20分間重合し、(a)成分であるポリエステルジオールA1を得た。得られたポリエステルジオールA1の組成、分子量、酸価を表1に示した。
【0054】
実施例1
共重合ポリエステルウレタン樹脂U−1の重合
温度計、撹拌翼、コンデンサーを具備した1Lの4つ口フラスコに(a)成分として、合成例−1で得られたポリエステルジオールA1を100部、メチルエチルケトンを45部、及びトルエンを55部仕込み、70℃で均一に溶解させた。次いで(d)成分として、ジフェニルメタンジイソシアナート32部を添加し、70℃のまま1時間反応させ、メチルエチルケトン及びトルエン各々50部で希釈した。(b)成分として、三洋化成工業製「ニューポールPP−1200」(ポリプロピレングリコール、数平均分子量:1200)を67部添加し、70℃で30分間経過後、ジブチル錫ラウレート0.02部を添加し、70℃でさらに2時間反応させた。次いでメチルエチルケトン及びトルエン各々76部で希釈し、(c)成分として、ネオペンチルグリコール3部を投入してさらに2時間反応させた後、メチルエチルケトン及びトルエン各々60部で希釈し、反応を終了した(固形分濃度30質量%)。得られた共重合ポリエステルウレタン樹脂(U−1)の樹脂組成、分子量、ガラス転移温度を表2にまとめた。
【0055】
合成例−2
ポリエステルジオールA2の合成
温度計、撹拌翼、リービッヒ冷却管を具備した2Lの4つ口フラスコにテレフタル酸ジメチル380部、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム11.8部、1,2−プロピレングリコール274部、ネオペンチルグリコール42部、及び触媒としてテトラブチルチタネート(TBT)を0.2部仕込み190℃〜230℃で3時間エステル交換反応を進行させた。次いで250℃に昇温後、減圧下に20分間重合し、(a)成分であるポリエステルジオールA2を得た。得られたポリエステルジオールA2の組成、分子量、酸価を表1に示した。
【0056】
実施例2
共重合ポリエステルウレタン樹脂U−2の重合
温度計、撹拌翼、コンデンサーを具備した1Lの4つ口フラスコに(a)成分として、合成例−2で得られたポリエステルジオールA2を100部、メチルエチルケトンを45部、及びトルエンを55部仕込み、70℃で均一に溶解させた。次いで(d)成分として、ジフェニルメタンジイソシアナート32部を添加し、70℃のまま1時間反応させ、メチルエチルケトン及びトルエン各々50部で希釈した。(b)成分として、三洋化成工業製「ニューポールPP−1200」(ポリプロピレングリコール、数平均分子量:1200)を67部添加し、70℃で30分経過後、ジブチル錫ラウレート0.02部を添加し、70℃でさらに2時間反応させた。次いでメチルエチルケトン及びトルエン各々76部で希釈し、(c)成分として、ネオペンチルグリコール3部を投入してさらに2時間反応させた後、メチルエチルケトン及びトルエン各々60部で希釈し、反応を終了した(固形分濃度30質量%)。得られた共重合ポリエステルウレタン樹脂(U−2)の樹脂組成、分子量、ガラス転移温度を表2にまとめた。
【0057】
実施例3
共重合ポリエステルウレタン樹脂U−3の重合
温度計、撹拌翼、コンデンサーを具備した1Lの4つ口フラスコに(a)成分として、合成例−1で得られたポリエステルジオールA1を100部、メチルエチルケトンを50部、及びトルエンを50部仕込み、70℃で均一に溶解させた。次いで(d)成分として、ジフェニルメタンジイソシアナート29部を添加し、70℃のまま1時間反応させ、メチルエチルケトン及びトルエン各々50部で希釈した。(b)成分として、三洋化成工業製「ニューポールPP−1200」(ポリプロピレングリコール、数平均分子量:1200)を45部添加し、70℃で30分間経過後、ジブチル錫ラウレート0.02部を添加し、70℃でさらに2時間反応させた。次いでメチルエチルケトン及びトルエン各々33部で希釈し、(c)成分として、ネオペンチルグリコール3部を投入してさらに2時間反応させた後、メチルエチルケトン及びトルエン各々74部で希釈し、反応を終了した(固形分濃度30質量%)。得られた共重合ポリエステルウレタン樹脂(U−3)の樹脂組成、分子量、ガラス転移温度を表2にまとめた。
【0058】
実施例4
共重合ポリエステルウレタン樹脂U−4の重合
温度計、撹拌翼、コンデンサーを具備した1Lの4つ口フラスコに(a)成分として、合成例−1で得られたポリエステルジオールA1を100部、メチルエチルケトンを50部、及びトルエンを50部仕込み、70℃で均一に溶解させた。次いで(d)成分として、ジフェニルメタンジイソシアナート38部を添加し、70℃のまま1時間反応させ、メチルエチルケトン及びトルエン各々50部で希釈した。(b)成分として、三菱化学製「PTMG1000」(ポリテトラメチレングリコール、数平均分子量:1000)を75部添加し、70℃で30分間経過後、ジブチル錫ラウレート0.03部を添加し、70℃でさらに2時間反応させた。次いでメチルエチルケトン及びトルエン各々62部で希釈し、(c)成分として、ネオペンチルグリコール3部を投入してさらに2時間反応させた後、メチルエチルケトン及びトルエン各々90部で希釈し、反応を終了した(固形分濃度30質量%)。得られた共重合ポリエステルウレタン樹脂(U−3)の樹脂組成、分子量、ガラス転移温度を表2にまとめた。
【0059】
実施例5
共重合ポリエステルウレタン樹脂U−5の重合
温度計、撹拌翼、コンデンサーを具備した1Lの4つ口フラスコに(a)成分として、合成例−1で得られたポリエステルジオールA1を100部、メチルエチルケトンを50部、及びトルエンを50部仕込み、70℃で均一に溶解させた。次いで(d)成分として、ジフェニルメタンジイソシアナート35部を添加し、70℃のまま1時間反応させ、メチルエチルケトン及びトルエン各々50部で希釈した。(b)成分として、三洋化成工業製「ニューポールPP−1200」(ポリプロピレングリコール、数平均分子量:1200)を60部添加し、70℃で30分経過後、ジブチル錫ラウレート0.01部を添加し、70℃でさらに2時間反応させた。ネオペンチルグリコール0.3部を投入してさらに30分間反応させた後、メチルエチルケトン及びトルエン各々50部で希釈し、(c)成分として、トリメチロールプロパンを5部添加した。70℃で30分経過後、ジブチル錫ラウレート0.02部を添加し、70℃でさらに2時間反応させた。次いでメチルエチルケトン及びトルエン各々83部で希釈し反応を終了した(固形分濃度30質量%)。得られた共重合ポリエステルウレタン樹脂(U−5)の樹脂組成、分子量、ガラス転移温度を表2にまとめた。
【0060】
比較例1
共重合ポリエステルウレタン樹脂U−6の重合
温度計、撹拌翼、コンデンサーを具備した2Lの4つ口フラスコに(a)成分として、合成例−1で得られたポリエステルジオールA1を100部、DIC製「ポリライトOD−X−688」(脂肪族系ポリエステルジオール、数平均分子量:2000)150部、(c)成分としてネオペンチルグリコール10部、メチルエチルケトンを200部、及びトルエンを200部仕込み、70℃で均一に溶解させた。次いで(d)成分として、ジフェニルメタンジイソシアナート55部を添加し、70℃のまま1時間反応させ、ブチル錫ラウレート0.05部を添加し、70℃でさらに3時間反応させた。次いでメチルエチルケトン及びトルエン各々168部で希釈し反応を終了した(固形分濃度30質量%)。得られた共重合ポリエステルウレタン樹脂(U−6)の樹脂組成、分子量、ガラス転移温度を表2にまとめた。
【0061】
比較例2
共重合ポリエステルウレタン樹脂U−7の重合
温度計、撹拌翼、コンデンサーを具備した1Lの4つ口フラスコに(a)成分として、合成例−2で得られたポリエステルジオールA2を100部、メチルエチルケトンを50部、及びトルエンを50部仕込み、70℃で均一に溶解させた。次いで(d)成分として、ジフェニルメタンジイソシアナート27部を添加し、70℃のまま1時間反応させ、メチルエチルケトン及びトルエン各々50部で希釈した。(b)成分として、三洋化成工業製「ニューポールPP−1200」(ポリプロピレングリコール、数平均分子量:1200)を30部添加し、70℃で30分経過後、ジブチル錫ラウレート0.01部を添加し、70℃でさらに2時間反応させた。次いでメチルエチルケトン及びトルエン各々20部で希釈し、(c)成分として、ネオペンチルグリコール3部を投入してさらに2時間反応させた後、メチルエチルケトン及びトルエン各々67部で希釈し、反応を終了した(固形分濃度30質量%)。得られた共重合ポリエステルウレタン樹脂(U−7)の樹脂組成、分子量、ガラス転移温度を表2にまとめた。
【0062】
比較例3
共重合ポリエステルウレタン樹脂U−8の重合
温度計、撹拌翼、コンデンサーを具備した1Lの4つ口フラスコに(a)成分として、合成例−1で得られたポリエステルジオールA1を100部、メチルエチルケトンを50部、及びトルエンを50部仕込み、70℃で均一に溶解させた。次いで(d)成分として、ジフェニルメタンジイソシアナート42部を添加し、70℃のまま1時間反応させ、メチルエチルケトン及びトルエン各々50部で希釈した。(b)成分として、三菱化学製「PTMG1000」(ポリテトラメチレングリコール、数平均分子量:1000)を90部添加し、70℃で30分経過後、ジブチル錫ラウレート0.01部を添加し、70℃でさらに2時間反応させた。次いでメチルエチルケトン及びトルエン各々76部で希釈し、(c)成分として、ネオペンチルグリコール3部を投入してさらに2時間反応させた後、メチルエチルケトン及びトルエン各々98部で希釈し、反応を終了した(固形分濃度30質量%)。得られた共重合ポリエステルウレタン樹脂(U−8)の樹脂組成、分子量、ガラス転移温度を表2にまとめた。
【0063】
合成例−3
ポリエステルジオールA3の合成
温度計、撹拌翼、リービッヒ冷却管を具備した2Lの4つ口フラスコにテレフタル酸ジメチル262部、イソフタル酸ジメチル262部、ネオペンチルグリコール187部、エチレングリコール261部及び触媒としてテトラブチルチタネート(TBT)を0.3部仕込み190℃〜230℃で3時間エステル交換反応を進行させた。次いで反応系を180℃に冷却し、セバシン酸60.6部を添加した。反応温度を約1時間で250℃に昇温後、減圧下に20分間重合し、(a)成分であるポリエステルジオールA3を得た。得られたポリエステルジオールA3の組成、分子量、酸価を表1に示した。
【0064】
比較例4
共重合ポリエステルウレタン樹脂U−9の重合
温度計、撹拌翼、コンデンサーを具備した1Lの4つ口フラスコに(a)成分として、ポリエステルジオールA3を100部、メチルエチルケトンを50部、及びトルエンを50部仕込み、70℃で均一に溶解させた。次いで(d)成分として、ジフェニルメタンジイソシアナート20部及びジブチル錫ラウレート0.01部を添加し、70℃のまま2時間反応させ、メチルエチルケトン及びトルエン各々50部で希釈した。次いで(c)成分として、ネオペンチルグリコール4部を投入してさらに2時間反応させた後、メチルエチルケトン及びトルエン各々45部で希釈し、反応を終了した(固形分濃度30質量%)。得られた共重合ポリエステルウレタン樹脂組成、分子量、ガラス転移温度を表2にまとめた。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
実施例6
基材フィルムとして厚さ50μmのコロナ処理が施されているポリプロピレンフィルム[東レ(株)社製、商品名「トレファンBO#50−2562」]のコロナ処理面に、合成例1で得られた共重合ポリエステルウレタン樹脂U−1 100質量部、イソシアナート系架橋剤[日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL、固形分濃度75質量%」]3質量部、トルエン145質量部及びシクロヘキサン15質量部からなる塗布液をグラビアロール方式により乾燥後の厚みが0.1μmとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥させて印刷用アンカーコート層を形成し、印刷用コートフィルムを作製した。
印刷用コートフィルムの性能評価を表4に示す。
【0068】
実施例7〜17ならびに比較例5〜11
基材フィルム、共重合ポリエステルウレタン樹脂及び架橋剤の組成、配合を表3に従って変更した以外は、実施例6と同様に印刷用コートフィルムを作製し、性能評価を実施した。その結果を表4及び表5に示す。また、基材にPETを用いた印刷用コートフィルム(実施例15〜17、比較例9)は、性能評価として、酸化重合型印刷密着性及び熱転写印字性も評価した。
【0069】
比較例10〜12
基材フィルムとして厚み50μmのポリプロピレンフィルム[東レ社製、商品名「トレファンBO#50−2562」]を用い、印刷用アンカーコート層を形成しなかった。フィルムの性能評価を表4に示す。
【0070】
比較例13
基材フィルムとして厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東レ社製、商品名「ルミラーPET50 T−60」]を用い、印刷用アンカーコート層を形成しなかった。フィルムの性能評価を表5に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
【表5】

【0074】
表4及び表5から分かるように、実施例6〜17の印刷用コートフィルムは、いずれも耐ブロッキング性、フレキソ印刷密着性及びシール印刷密着性の全てが良好である。これに対し、比較例5〜13の印刷用コートフィルム又は印刷用フィルムは、耐ブロッキング性、フレキソ印刷密着性及びシール印刷密着性のいずれか一つ以上が不良である。
さらに、実施例15〜17の印刷用コートフィルムは、酸化重合型印刷密着性及び熱転写印字性も良好である。一方、比較例9の印刷用コートフィルムは、酸化重合型印刷密着性及び熱転写印字性は良好であるが、比較例11の印刷用フィルムは、両方共不良である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の共重合ポリエステルウレタン樹脂は、印刷インクとの親和性が高く、アンカーコート剤として基材上に塗布することで印刷インクの基材への密着性を改善させることができる。
また、本発明の印刷用コートフィルムは、印刷インクの基材への密着性に優れると共に、耐ブロッキング性も良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全酸成分を100モル%としたとき芳香族ジカルボン酸成分を80モル%以上含有し、全グリコール成分を100モル%としたとき一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される脂肪族グリコール成分を40モル%以上含有し、数平均分子量1500以上3000以下であるポリエステルジオール(a)、
一般式(1):
【化1】

(但し、R1は炭素数1又は2のアルキル基である)
一般式(2):
【化2】

(但し、R2は炭素数1又は2のアルキル基、R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である)
炭素数2〜4の脂肪族グリコールの脱水縮合により得られる構造からなり、数平均分子量が1000以上3000以下であるポリアルキレンエーテルグリコール(b)、
炭素数4〜6の脂肪族多価アルコール(c)、及び
ジイソシアナート化合物(d)、
の重付加反応により得られる構造からなり、かつ
前記(a)成分100質量部に対し、前記(b)成分40〜80質量部、前記(c)成分0〜8質量部、前記(d)成分20〜50質量部を含有し、数平均分子量が10,000〜100,000であることを特徴とする共重合ポリエステルウレタン樹脂。
【請求項2】
請求項1に記載の共重合ポリエステルウレタン樹脂を含有することを特徴とする樹脂フィルム印刷用アンカーコート剤組成物。
【請求項3】
さらに、共重合ポリエステルウレタン樹脂100質量部に対して、架橋剤を0.1〜30質量部の割合で含む、請求項2に記載の樹脂フィルム印刷用アンカーコート剤組成物。
【請求項4】
基材フィルムの片面の最外層に、印刷用アンカーコート層が設けられている印刷用コートフィルムであって、該印刷用アンカーコート層が請求項1に記載の共重合ポリエステルウレタン樹脂の架橋体によって構成されていることを特徴とする印刷用コートフィルム。
【請求項5】
印刷用アンカーコート層の表層から、該アンカーコート層厚の1/2の深さ(X)におけるナノインデンテーション試験により測定される硬度Aが、上記と同様にして測定される基材フィルムの表層から深さ(X)における硬度Bよりも低く、かつ硬度Aと硬度Bとの差が0.2GPa以下である、請求項4に記載の印刷用コートフィルム。
【請求項6】
印刷用アンカーコート層の厚さが40〜1000nmである請求項4又は5に記載の印刷用コートフィルム。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかに記載の印刷用コートフィルムにおける基材フィルムの印刷用アンカーコート層が形成されている面の反対面に、粘着剤層が形成されていることを特徴とする印刷用粘着シート。

【公開番号】特開2011−21134(P2011−21134A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168614(P2009−168614)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】