説明

共重合ポリエステルカーボネートエラストマーおよびその製造方法

【課題】従来のポリエーテルエステル型エラストマーやランダム共重合体が形成されているポリエステルカーボネート型エラストマーよりも結晶性に優れ、耐熱性、耐湿熱性を合わせ持つブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(I)で表されるブチレンナフタレートの繰り返し単位と特定の脂肪族カーボネートの繰り返し単位から構成される共重合ポリエステルカーボネートであって、ブチレンナフタレートの繰り返し単位成分と脂肪族カーボネートの繰り返し単位成分の合計重量に対して、脂肪族カーボネートの繰り返し単位成分が10〜60重量%含有されてなり、固有粘度が1.00〜1.50dL/g、融点が230℃以上であることを特徴とする共重合ポリエステルカーボネート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合ポリエステルカーボネートに関し、耐熱性、耐熱老化性、耐湿熱性、低温特性等に優れたブロック共重合ポリエステルカーボネートであって、好ましくは主にパッキン、チューブをはじめとする成形品に好適に用いることができるブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルエラストマーとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)をはじめとした結晶性のポリエステルをハードセグメントとし、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)などのポリオキシアルキレンをソフトセグメントとしたポリエステルエラストマーが公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、ソフトセグメントにポリオキシアルキレン類を用いたポリエーテルエステル型エラストマーは低温特性に優れるものの、耐加水分解性、耐熱老化性に劣ることが知られている。そこで、これら課題を解決することを目的に、ソフトセグメント成分としてポリカーボネートジオール(PCDL)を用いたポリエステルポリカーボネート型エラストマーが提案されている(例えば、特許文献2、3参照。)。
【0004】
上記のようにランダム共重合体が形成されると、ポリエステルカーボネート型エラストマーの結晶性低下、さらには融点降下に繋がるので、パッキンやチューブなど高温下で使用する場合に耐熱性不足の問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−017657号公報
【特許文献2】特公平07−039480号公報
【特許文献3】特開2001−240663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のポリエーテルエステル型エラストマーやランダム共重合体が形成されているポリエステルカーボネート型エラストマーよりも結晶性に優れ、耐熱性、耐湿熱性を合わせ持つブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、上記の課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。即ち、本発明は下記式(I)で表されるブチレンナフタレートの繰り返し単位と下記式(II)で表される脂肪族カーボネートの繰り返し単位から構成される共重合ポリエステルカーボネートであって、ブチレンナフタレートの繰り返し単位成分と脂肪族カーボネートの繰り返し単位成分の合計重量に対して、脂肪族カーボネートの繰り返し単位成分が10〜60重量%含有されてなり、固有粘度が1.00〜1.50dL/g、融点が230℃以上であることを特徴とする共重合ポリエステルカーボネートであり、好ましくはエラストマーとしての性能を有する共重合ポリエステルカーボネートである。
【0008】
【化1】

【化2】

nは1〜60の数を表す。
【発明の効果】
【0009】
本発明のブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーを用いることにより結晶性が向上することから、成形性が向上し成形品の摺動性も維持できるとともに、パッキンやチューブなど、耐熱性や耐湿熱性が要求される部材にも好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における共重合ポリエステルカーボネートは下記式(I)で表されるブチレンナフタレートの繰り返し単位と下記式(II)で表される脂肪族カーボネートの繰り返し単位から構成される共重合ポリエステルカーボネートであって、ブチレンナフタレートの繰り返し単位成分と脂肪族カーボネートの繰り返し単位成分の合計重量に対して、脂肪族カーボネートの繰り返し単位成分が10〜60重量%含有されてなり、固有粘度が1.00〜1.50dL/g、融点が230℃以上であることを特徴とする共重合ポリエステルカーボネートである。
【0011】
【化3】

【化4】

nは1〜60の数を表す。
【0012】
ブチレンナフタレートの繰り返し単位成分と脂肪族カーボネートの繰り返し単位成分の合計重量に対して、脂肪族カーボネートの繰り返し単位成分が10〜60重量%含有してなる。この数値範囲外の場合には共重合ポリエステルカーボネートの結晶性が不足したりし、同時に共重合ポリエステルカーボネートの耐加水分解性、耐熱性が低下することとなり、好ましくない。ブチレンナフタレートの繰り返し単位成分はポリブチレンナフタレートを構成する。ポリブチレンナフタレートはナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を主とする芳香族ジカルボン酸成分とブタンジオール等の脂肪族のジヒドロキシ化合物を主とするグリコール成分とから構成されたポリエステルからなっている。一方、脂肪族カーボネートの繰り返し単位成分は脂肪族ポリカーボネートを構成する。脂肪族ポリカーボネートは数平均分子量が20000〜40000の脂肪族ポリカーボネートの両末端にジオールが結合されてなるポリカーボネート樹脂型ジオールであることが好ましい。これらの種類・配合量の調整により共重合芳香族ポリエステルカーボネートエラストマーとして機能する場合がある。また双方の成分のランダム共重合体へ向かう炭酸エステル交換反応および/またはエステル交換反応が抑制されている場合には、ブロック共重合ポリエステルカーボネートとして機能する場合がある。
【0013】
本発明におけるブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーを構成するポリエステルはポリブチレンナフタレートからなり、それを構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、主として2,6−ナフタレンジカルボン酸又は2,7−ナフタレンジカルボン酸を挙げることができる。中でも全芳香族ジカルボン酸成分中70モル%以上、好ましくは80モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸で構成される。他の芳香族ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸(カルボキシル基の位置が4,4’−に限定されず、カルボキシル基の位置が異なる各構造異性体を含む)、ジフェニルエーテルジカルボン酸(同前)、ジフェノキシエタンジカルボン酸(同前)、ジフェニルスルホンジカルボン酸(同前)、ジフェニルケトンジカルボン酸(同前)、フランジカルボン酸(同前)等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸(カルボキシル基の位置が異なる各構造異性体を含む)、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上の組み合わせを用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。本発明の難燃性ポリエチレンテレフタレートの特性を損なわない範囲とは、全酸成分に対して30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。
【0014】
本発明における共重合ポリエステルカーボネートエラストマーのポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸等の低級アルキルエステルより選ばれる一種若しくは二種以上の組み合わせを用いることが好ましい。その低級アルキルエステルとしてはジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、ジブチルエステル等の一種若しくは二種以上の組み合わせを用いることが好ましく、より好ましくはジメチルエステルである。より好ましくは2,6−ナフタレンジカルボン酸の低級アルキルエステルを挙げることができる。より具体的には2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジエチルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジフェニルエステルである。芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体は全酸成分のエステル形成性誘導体の70モル%以上、好ましくは80モル%以上であることが好ましい。
【0015】
その他の酸成分のエステル形成性誘導体としては、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸の低級アルキルエステル、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸等の脂肪族ジカルボン酸の低級アルキルエステルより選ばれる一種若しくは二種以上を用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。これらの酸のエステル形成性誘導体成分は、全酸成分のエステル形成性誘導体の30モル%未満、好ましくは20モル%未満である。
【0016】
本発明における共重合ポリエステルカーボネートのポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸に対して少量のトリメリット酸のような三官能性以上のカルボン酸成分を用いてもよく、無水トリメリット酸のような酸無水物を少量用いてもよい。また、乳酸、グリコール酸のようなヒドロキシカルボン酸又はそのアルキルエステル等を少量用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。
【0017】
本発明における共重合ポリカーボネートエラストマーのポリエステルはポリブチレンナフタレートからなり、それを構成するグリコール成分としては、1,4−ブタンジオール又はテトラメチレングリコールを挙げることができる。中でもグリコール成分中70モル%以上、好ましくは80モル%が1,4−ブタンジオールで構成される。他のグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(オキシ)エチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリメチレングリコール等のアルキレングリコールの一種若しくは二種以上の組み合わせを用いることが好ましい。さらに少量のグリセリンのような多価アルコール成分を用いてもよい。また少量のエポキシ化合物を用いてもよい。これらのグリコール成分は、全グリコール成分に対して30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。
【0018】
かかるグリコール成分の芳香族ポリエステル製造工程における使用量は、前記芳香族ジカルボン酸若しくは芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体に対して1.1モル倍以上1.4モル倍以下であることが通常採用される。グリコール成分の使用量が1.1モル倍に満たない場合にはエステル化あるいはエステル交換反応が十分に進行せず好ましくないことがある。また、1.4モル倍以上を超える場合にも、理由は定かではないが反応速度が遅くなり、過剰のグリコール成分からのテトラヒドロフランの副生量が大となり好ましくないことがある。
【0019】
本発明における共重合ポリエステルカーボネートエラストマーはさらに脂肪族カーボネートの繰り返し単位を有している。好ましくは脂肪族ポリカーボネートを共重合されてなっている。好ましくは、脂肪族ポリカーボネート樹脂が共重合されていることである。その脂肪族ポリカーボネートは数平均分子量が20000〜40000であることが好ましく、具体的には例えば、ジフェニルカーボネートと1,6−ヘキサメチレンジオールなどのジオールとの脱フェノール反応により製造することできる。本発明において使用される脂肪族ポリカーボネートの数平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)の測定において、10000〜50000の範囲が好ましく、20000〜40000が特に好ましい。数平均分子量が10000未満では、得られる本発明のブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーの分子量が十分でないために機械的強度、成形性が悪くなる傾向があり、しかも耐熱性向上効果も少なくなりがちである。また、50000を超えるとポリブチレンナフタレートとの反応性が低くなり、十分な機能が得られない傾向にある。
【0020】
また脂肪族ポリカーボネートを構成するグリコールの繰り返し単位に炭素数2〜8個のグリコール成分が含まれていることが好ましい。このようなグリコール成分とカーボネート結合を有する脂肪族ポリカーボネートを用いる事で、本発明のブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーとして機能しやすくなり、また驚くべきことに成形品からの揮発成分が少なくすることができるとの効果を発現することができる。
【0021】
また、脂肪族ポリエステルジオールの含有量はポリエステルと脂肪族ポリカーボネートの合計質量、すなわち本発明のブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマー100質量部に対して、10〜60質量部配合することが必要である。すなわち、共重合ポリエステルカーボネート中、脂肪族ポリカーボネートを10〜60重量%配合してなることが好ましい。10重量部より少ないと本発明の効果である成形品からの揮発成分が少なくするという効果が発揮できず、60質量部を超えるとブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマー自体の強度等の力学物性が低下するので好ましくない。この数値範囲に共重合する事で、結晶性、耐加水分解性、耐熱性のバランスが取れ、得られるブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーはパッキンやチューブとして好適に用いることができる。
【0022】
本発明における共重合ポリエステルカーボネートエラストマーにおいて重合触媒成分として用いられる化合物としてはポリエステル製造用触媒として用いられる化合物、特にポリブチレンナフタレートやポリブチレンテレフタレートで通常用いられる化合物が好ましく採用される。中でもチタン化合物が好ましくもちいられる。そのチタン化合物としては、テトラアルキルチタネートが好ましく、具体的にはテトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネートなどが挙げられ、これらの混合チタネートとして用いても良い。これらのチタン化合物のうち、特にテトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートが好ましく、最も好ましいのはテトラ−n−ブチルチタネートである。
【0023】
チタン化合物の添加量は生成したブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマー中のチタン原子含有量として、200ppm以下であることが好ましく、より好ましくは10〜150ppm、さらに好ましくは50〜100ppmである。ブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマー中のチタン原子含有量が200ppmを超える場合は、本発明のブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーの色調及び熱安定性が低下するために好ましくないことがある。またチタン原子含有量として少ない場合には、ポリエステル製造時の触媒化合物としてチタンを用いるのに充分な触媒活性を発揮できない場合がある。そのような場合には他の金属化合物を触媒として用いることになるが、熱安定性、色相、耐加水分解性などに問題を生じる場合がある。
【0024】
また、本発明におけるブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーには、例えば、オクタアルキルトリチタネートもしくはヘキサアルキルジチタネートなどのテトラアルキルチタネート以外のアルキルチタネート、酢酸チタンやシュウ酸チタンなどのチタンの弱酸塩、酸化チタンなどのチタン酸化物、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキサイドなどの有機スズ化合物、塩化カリウム、カリウムミョウバン、ギ酸カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸二水素カリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸カリウム、酪酸カリウム、シュウ酸二カリウム、シュウ酸水素カリウム、ステアリン酸カリウム、フタル酸カリウム、フタル酸水素カリウム、メタリン酸カリウム、リンゴ酸カリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、亜硝酸カリウム、安息香酸カリウム、酒石酸水素カリウム、重蓚酸カリウム、重フタル酸カリウム、重酒石酸カリウム、重硫酸カリウム、硝酸カリウム、酢酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸カリウムナトリウム、炭酸水素カリウム、乳酸カリウム、硫酸カリウム硫酸水素カリウム、塩化ナトリウム、ギ酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、シュウ酸二ナトリウム、シュウ酸水素ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸水素ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酒石酸水素ナトリウム、重シュウ酸ナトリウム、重フタル酸ナトリウム、重酒石酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、塩化リチウム、ギ酸リチウム、クエン酸三リチウム、クエン酸水素二リチウム、クエン酸二水素リチウム、グルコン酸リチウム、コハク酸リチウム、酪酸リチウム、シュウ酸二リチウム、シュウ酸水素リチウム、ステアリン酸リチウム、フタル酸リチウム、フタル酸水素リチウム、メタリン酸リチウム、リンゴ酸リチウム、リン酸三リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸二水素リチウム、亜硝酸リチウム、安息香酸リチウム、酒石酸水素リチウム、重シュウ酸リチウム、重フタル酸リチウム、重酒石酸リチウム、重硫酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、乳酸リチウム、硫酸リチウム、硫酸水素リチウムなどのアルカリ金属塩、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、コハク酸カルシウム、酪酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、ギ酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、酪酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩の1種もしくは2種以上をチタン化合物と組み合わせても良い。
【0025】
本発明のブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーを構成するポリエステル[ポリブチレンナフタレート]は、ナフタレンジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を主とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主とするグリコール成分、脂肪族ポリカーボネートを一括して仕込んだのちに、チタン化合物の存在下にてエステル化あるいはエステル交換反応工程と、それに続く重縮合反応工程とを経由して製造される。
【0026】
エステル化あるいはエステル交換反応終了の際に180℃以上220℃以下の範囲にある事が好ましい。当該反応が220℃を超える場合には反応速度は大きくなるが、テトラヒドロフランの副生が多くなり好ましくない。また、180℃未満では反応が進行しなくなる。エステル化あるいはエステル交換反応により得られた反応生成物は、当該反応生成物を共重合ポリエステルエラストマーの融点以上260℃以下の温度において0.4kPa(3Torr)以下の減圧下で重縮合させることが好ましい。重縮合反応温度が260℃を超える場合にはむしろ反応速度が低下して、着色も大となるので好ましくない。
【0027】
重縮合反応において、重合触媒として通常用いられている触媒を前記チタン化合物と併用することも可能であるが、前記チタン化合物をエステル化あるいはエステル交換反応及び重縮合反応の共通触媒として用いることが好ましい。他の触媒を併用するとブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーの着色が大となり、ひいてはブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーの色調も低下するので好ましくない。また、重縮合反応速度も前記チタン化合物を単独にて使用した場合と比較して大差が無く、併用効果が得られない。
【0028】
更に本発明の共重合ポリエステルカーボネートにおいては、固有粘度を1.00〜1.50dL/gに、融点を230℃以上とすることが必要である。これらの数値範囲の共重合ポリエステルカーボネートとすることによって、後述する耐湿熱性、耐熱性、IV保持率、硬度等の物性がバランスよく付与する事ができる。そのためには脂肪族ポリカーボネート部分の平均分子量を高い状態で維持するような製造方法を採用することが好ましく採用することができる。具体的には、ポリブチレンナフタレート成分と脂肪族ポリカーボネート成分を比較的短時間で反応させることなどが挙げられる。
【0029】
本発明のブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーを構成する芳香族共重合ポリエステルの末端カルボキシル基濃度は40eq/T(40当量/10g)以下であり、好ましくは35eq/T(35当量/10g)である。末端カルボキシル基濃度が40eq/Tを超える場合には熱安定性や加水分解性が低下し、ひいてはブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーの熱安定性や加水分解性も低下するので好ましくない。本発明の共重合ポリエステルカーボネートにおいては表面D硬度が30〜50、IV保持率が80%以上であることが好ましい。好ましくは表面硬度は35〜45、IV保持率は85%以上である。上述したように、1.00〜1.50dL/gの高い固有粘度と230℃以上の融点を有することで、これらの物性を同時に達成することができる。
【0030】
本発明の共重合ポリエステルカーボネートエラストマーは、次の方法で製造することができる。すなわち、固相重合反応で生成したポリブチレンナフタレートと溶融重合で生成した脂肪族ポリカーボネートを横型の二軸反応機に、好ましくはベントつき横型の二軸反応機にポリブチレンナフタレート及び脂肪族ポリカーボネートを供給し、混練押出により製造しても良いし、重縮合が終了する以前の任意の段階で脂肪族ポリカーボネートを添加し、製造しても良い。横型の二軸反応機としては、市販されているエクストルーダーなどを好ましく使用することができる。好ましくはブロック共重合ポリエステルカーボネートとなるような反応条件を選択することである。
【0031】
本発明の共重合ポリエステルカーボネートエラストマーは上述のように成形性に優れているので、各種成形方法に用いて、ブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーを材料とする成形体を製造することは、非常に好ましい様態である。すなわち、本発明のブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマー成形体の製造方法は、ブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーを材料とする成形体を製造する方法であって、本発明のブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーを用いて押出成形、射出成形、ブロー成形、発泡成形及び紡糸成形から選ばれる少なくとも1種の成形を行うことによりブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマー成形体を得ることができる。またその中で押出成形は薄膜ダイから押出しによるフィルム製膜であっても良い。
【0032】
本発明のブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーを用いて得られる有用な成形品としては、例えば、射出成形による中空成形体、射出成形体等が挙げられる。その具体例としては、電気・電子部品、自動車用部品、機構部品等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。各記載中、「部」は質量部、「%」は質量%を示す。また、諸物性の測定は以下の方法により実施した。
【0034】
1)固有粘度(IV)測定
常法に従って、溶媒であるオルトクロロフェノール中、35℃で測定した。
【0035】
2)チタン原子含有量測定
ブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマー組成物中のチタン原子量は理学電機社製蛍光X線測定機ZSXを用いて定量した。
【0036】
3)末端カルボキシル基濃度測定(CV値)
ブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーをベンジルアルコールに溶解して、0.1N−NaOHにて滴定した値であり、1×10g当たりのカルボキシル基当量である。
【0037】
4)表面D硬度
ブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーのD硬度は、テクロック社製デュロメータGS−720Hを用いて測定した。また測定操作については、日本工業規格JIS K−7215のタイプDデュロメータの操作方法に準じて行った。
【0038】
5)融点測定
25℃で24時間減圧乾燥したブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーを示差走査型熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分で昇温し、融解による吸熱のピーク温度をサンプルの融点とした。測定試料はアルミニウム製パン(TA Instruments社製)に約10mg計量し、窒素雰囲気下で測定した。
【0039】
6)脂肪族ポリカーボネート
本発明の実施例で用いたポリカーボネートはジエチルカーボネートと1,6−ヘキサメチレンジオールとの脱アルコール反応により製造されるが、今回は品質の安定している市販ポリカーボネート(旭化成ケミカルズ「Duranol」T6002)をジフェニルカーボネートであらかじめ分子量アップしたものを使用した。脂肪族ポリカーボネートとして用いたときの数平均分子量は20000〜40000であった。
【0040】
7)IV保持率測定
プレッシャークッカーにて170℃×5時間処理後のIVを測定し、その保持率を下記式により算出した。
IV保持率(%)=(170℃×5時間処理後のIV)/(170℃×5時間処理前のIV)×100
【0041】
8)耐湿熱性評価
本発明のブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーと脂肪族ポリカーボネートを含有しないポリエステル(帝人化成株式会社製エラストマーTRQ−EL70)等とを所定の条件で真空乾燥した後、プレッシャークッカーにて170℃で5時間処理し、処理後の固有粘度保持率を算出した。このとき、固有粘度保持率が80%以上のものには耐湿熱性良好と判断し○を、80%に満たない共重合ポリエステルカーボネートを耐湿熱性不良と判断し×とした。
【0042】
9)耐熱性評価
本発明で得られたエラストマーの融点測定を行い、融点が230℃以上であるものを耐熱性良好と判断し○を、融点が230℃未満であるものを耐熱性不良と判断し×とした。
【0043】
[実施例1]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル315.0部、1,4−ブタンジオール200.0部にテトラ−n−ブチルチタネート0.062部をエステル交換反応槽に入れ、反応槽が210℃となるように昇温しながら150分間エステル交換反応を行った。ついで得られた反応生成物を重縮合反応槽に移して重縮合反応を開始した。
重縮合反応は常圧から0.133kPa(1Torr)まで75分かけて徐々に減圧し、同時に所定の反応温度260℃まで昇温し、以降は所定の重合温度、1Torrの状態を維持して110分間重縮合反応を行った。110分が経過した時点で重縮合反応を終了してポリブチレンナフタレートをストランド状に抜き出し、水冷しながらUSGカッターを用いてチップ状に切断した。次に得られたポリブチレンナフタレート(PBN)を213℃、0.133kPa(1Torr)以下の条件にて8時間固相重合を行い、白色ペレットを得た。
【0044】
次に、分子量は40000の脂肪族ポリカーボネート(脂肪族PC)300部とジフェニルカーボネート3部を重合反応槽に入れ200℃、0.133kPa(1Torr)で2時間重合した。反応終了後、内容物をストランド状に抜き出し水冷しながらファンカッターを用いてチップ状に切断した。
上記のようにして得られたポリブチレンナフタレート(PBN)70部、脂肪族ポリカーボネート(脂肪族PC)30部を横型の二軸反応機に入れ反応温度245〜260℃、130Pa下で5〜10分間反応させ、ストランド状に抜き出し水冷しながらチップカッターを用いてチップ状に切断した。得られたブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーの固有粘度、チタン原子含有量、末端カルボキシル基濃度(CV値)、表面D硬度、IV保持率、耐湿熱性評価を行って、その結果を表1に示した。なお、m/nの値は70/30であった(以下、すべての実施例、比較例においてこの値は同じであった。)。
【0045】
[実施例2]
分子量を30000の脂肪族ポリカーボネートを用いることに変更した以外は、実施例1と同様にしてブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーを得た。得られたブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーの固有粘度、チタン含有量、末端カルボキシル基濃度、表面D硬度、IV保持率、耐湿熱性の評価を行って、その結果を表1に示した。
【0046】
[実施例3]
分子量を20000の脂肪族ポリカーボネートを用いることに変更した以外は、実施例1と同様にしてブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーを得た。得られたブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーの固有粘度、チタン含有量、末端カルボキシル基濃度、表面D硬度、IV保持率、耐湿熱性の評価を行って、その結果を表1に示した。
【0047】
[比較例1]
分子量を2000の脂肪族ポリカーボネートを用いることに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルカーボネートエラストマーを得た。得られたエラストマーの固有粘度、チタン含有量、末端カルボキシル基濃度、表面D硬度、IV保持率、耐湿熱性の評価を行って、その結果を表1に示した。
【0048】
[比較例2]
分子量を1000の脂肪族ポリカーボネート樹脂を用いることに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルカーボネートエラストマーを得た。得られたエラストマーの固有粘度、チタン含有量、末端カルボキシル基濃度、表面D硬度、IV保持率、耐湿熱性の評価を行って、その結果を表1に示した。
【0049】
[比較例3]
脂肪族ポリカーボネートの代わりに分子量2000のポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコール(PTMG)を使用した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルエラストマーを得た。得られたエラストマーの固有粘度、チタン含有量、末端カルボキシル基濃度、表面D硬度、IV保持率、耐湿熱性の評価を行って、その結果を表1に示した。
【0050】
【表1】

【0051】
[比較例4]
分子量1000のポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコール(PTMG)を使用した以外は比較例3と同様にしてポリエステルエラストマーを得た。得られたエラストマーの固有粘度、チタン含有量、末端カルボキシル基濃度、表面D硬度、IV保持率、耐湿熱性の評価を行って、その結果を表2に示した。
【0052】
[比較例5]
共重合ポリエステルエラストマーの生成量が100質量部となるように、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル27.1部、1,4−ブタンジオール14.0部、分子量2000のポリカーボネートジオール70.0部にテトラ−n−ブチルチタネート0.045部をエステル交換反応槽に入れ、反応槽が190℃となるように昇温しながら210分間エステル交換反応を行った。ついで得られた反応生成物を重縮合反応槽に移して重縮合反応を開始した。
重縮合反応は常圧から0.133kPa(1Torr)以下まで40分かけて徐々に減圧し、同時に所定の反応温度250℃まで昇温し、以降は所定の重合温度、1Torrの状態を維持して100分間重縮合反応を行った。100分が経過した時点で共重合ポリエステルエラストマーを少量採取して固有粘度を測定した。固有粘度は1.85dL/gであった。重縮合反応は常圧から0.133kPa(1Torr)以下まで40分かけて徐々に減圧し、同時に所定の反応温度250℃まで昇温し、以降は所定の重合温度、0.133kPa(1Torr)の状態を維持して100分間重縮合反応を行った。100分が経過した時点で共重合ポリエステルエラストマーを少量採取して固有粘度を測定した。固有粘度は1.85dL/gであった。得られたブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーの固有粘度、チタン含有量、末端カルボキシル基濃度、表面D硬度、IV保持率、耐湿熱性の評価を行って、その結果を表2に示した。
【0053】
[比較例6]
ポリカーボネートジオールの分子量を1000に変更した以外は、比較例5と同様にして共重合ポリエステルカーボネートエラストマーを得た。得られた共重合ポリエステルカーボネートエラストマーの固有粘度、チタン含有量、末端カルボキシル基濃度、表面D硬度、IV保持率、耐湿熱性の評価を行って、その結果を表2に示した。
【0054】
[比較例7]
ポリカーボネートジオールの代わりに分子量2000のポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールを使用した以外は、比較例5と同様にしてポリエステルエラストマーを得た。得られたポリエステルエラストマーの固有粘度、チタン含有量、末端カルボキシル基濃度、表面D硬度、IV保持率、耐湿熱性の評価を行って、その結果を表2に示した。
【0055】
[比較例8]
ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールの分子量を1000に変更した以外は、比較例5と同様にしてポリエステルエラストマーを得た。得られたエラストマーの固有粘度、チタン含有量、末端カルボキシル基濃度、表面D硬度、IV保持率、耐湿熱性の評価を行って、その結果を表2に示した。
【0056】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のブロック共重合ポリエステルカーボネートエラストマーを用いることにより結晶性を向上させることができる。故に、成形性が向上し成形品の摺動性も維持できるとともに、パッキンやチューブなど、耐熱性や耐湿熱性が要求される部材にも好適に用いることができ、産業上における意義は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるブチレンナフタレートの繰り返し単位と下記式(II)で表される脂肪族カーボネートの繰り返し単位から構成される共重合ポリエステルカーボネートであって、ブチレンナフタレートの繰り返し単位成分と脂肪族カーボネートの繰り返し単位成分の合計重量に対して、脂肪族カーボネートの繰り返し単位成分が10〜60重量%含有されてなり、固有粘度が1.00〜1.50dL/g、融点が230℃以上であることを特徴とする共重合ポリエステルカーボネート。
【化1】

【化2】

nは1〜60の数を表す。
【請求項2】
表面D硬度が30〜50、IV保持率が80%以上であることを特徴とする請求項1記載の共重合ポリエステルカーボネート。
【請求項3】
ポリブチレンナフタレートと脂肪族ポリカーボネートを2軸の横型反応機で混合し、反応させることを特徴とする請求項1〜2いずれかに記載の共重合ポリエステルカーボネートの製造方法。

【公開番号】特開2012−158652(P2012−158652A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18157(P2011−18157)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】