説明

共重合ポリエステル樹脂およびそれを用いた接着剤

【課題】長期の高温高湿環境下での接着性が特に良好な共重合ポリエステル樹脂であり、従来より低温条件下でのラミネート加工が可能な接着剤を提供する。
【解決手段】カルボン酸成分とグリコール成分とから構成される共重合ポリエステル樹脂であって、
(i)カルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸の共重合量が60モル%以上であり、
(ii)グリコール成分のうち、分子量が200〜1800のポリオキシアルキレングリコールの共重合量が30モル%を超え70モル%以下であり、
(iii)繰り返し単位の平均分子量が400以上であり、
(iv)ガラス転移温度が−10℃以下
である共重合ポリエステル樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期の高温高湿、低温環境下においても接着性が良好な共重合ポリエステル樹脂およびそれを用いた接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は、その構成成分であるカルボン酸およびグリコールの種類を変更して共重合ポリエステルとすることで、種々の特徴を付与させることが可能であり、接着剤、コーティング剤、インキバインダー、塗料等に広く使用されている。
【0003】
例えば、電気・電子分野のような湿熱耐久性が要求される分野における接着剤として、特定のポリアルキレングリコールを1〜30モル%含有し、ガラス転移温度が30℃以下の共重合ポリエステル樹脂が提案されている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1記載の共重合ポリエステルを、太陽電池モジュールの部材積層用の接着剤として使用する場合、屋外で高温や風雨にさらされたり、長期間の使用において接着性が低下するという問題があった。また、このような電気・電子部材では、耐熱性を優先するあまり、積層時の加工温度を十分に高くしないと接着しないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−200041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、長期の高温高湿環境下での接着性が特に良好な共重合ポリエステル樹脂であり、従来より低温条件下でのラミネート加工が可能な接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)カルボン酸成分とグリコール成分とから構成される共重合ポリエステル樹脂であって、
(i)カルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸の共重合量が60モル%以上であり、
(ii)グリコール成分のうち、分子量が200〜1800のポリオキシアルキレングリコールの共重合量が30モル%を越え、70モル%以下であり、
(iii)繰り返し単位の平均分子量が400以上であり、
(iv)ガラス転移温度が−10℃以下
である共重合ポリエステル樹脂。
(2)プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールSのプロピレンオキサイド付加物および一般式(1)で示されるトリシクロデカンジメタノールからなる群より選ばれた少なくとも1種類のグリコールを、全グリコール成分のうち30モル%以上共重合した(1)記載の共重合ポリエステル樹脂。
【化1】

(3)(1)または(2)記載の共重合ポリエステル樹脂、ポリイソシアネート化合物および有機溶剤から構成されるラミネート接着剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長期の高温高湿環境下での接着性が優れた共重合ポリエステル樹脂を提供することができる。この共重合ポリエステルを用いた接着剤は、従来は100℃を超えるよう高温を必要としたラミネート接着条件をより低温としても実用的な接着強度が発現し、しかも長期の湿熱耐久性が高く、例えば、屋外で使用される太陽電池モジュール用接着剤としても好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明に使用する共重合ポリエステル樹脂について説明する。本発明に使用する共重合ポリエステル樹脂は、カルボン酸成分とグリコール成分を主成分として構成される。
【0009】
カルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸が、全カルボン酸成分中において、60モル%以上共重合されることが必要であり、80モル%以上共重合されることが好ましい。これらのモノマーの共重合量が60モル%未満であると、接着性、とりわけPETフィルムに対する接着性が低下するので好ましくない。芳香族カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウム−スルホイソフタル酸が挙げられる。中でも、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
【0010】
カルボン酸成分を構成する他のジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ドコサン二酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、パーヒドロナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸、シクロブテンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が挙げられる。これらは無水物や誘導体であってもよい。
【0011】
グリコール成分としては、分子量が200〜1800のポリオキシアルキレングリコールが、全グリコール成分中において、30モル%を越え、70モル%以下で共重合されることが必要である。共重合量が30モル%以下では、共重合ポリエステル樹脂の長期の湿熱耐久性が不足するので好ましくない。一方、共重合量が70モル%を超えると、共重合ポリエステル樹脂を溶剤に溶解した後の溶液安定性が低下するので好ましくない。本発明において、長期の湿熱耐久性とは、例えば85℃×85%RHの雰囲気下で2000時間を超えるような長い時間での湿熱耐久性を示す。
【0012】
ポリオキシアルキレングリコールは、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0013】
ポリオキシアルキレングリコールの分子量は、200〜1800が必要で、500〜1800が好ましい。ポリオキシアルキレングリコールの分子量が200未満であると、十分な湿熱耐久性が得られないので好ましくない。一方、分子量が1800を超えると、共重合ポリエステル樹脂を溶剤に溶解した後の溶液安定性が低下するので好ましくない。
【0014】
ポリオキシアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリヘキシレングリコール、ポリノナンジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタン)ジオール等が挙げられる。
【0015】
グリコール成分として、プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールSのプロピレンオキサイド付加物、および一般式(1)で示されるトリシクロデカンジメタノールから選ばれた少なくとも1種類のグリコールが、全グリコール成分中において30モル%以上共重合されることが好ましく、50モル%以上共重合されることがより好ましい。これらのモノマーを共重合することで共重合ポリエステル樹脂の熱間接着性が向上する。なお、一般式(1)で示されるトリシクロデカンジメタノールとしては、3(4),8(9)−ビス(ヒドロキシメチル)−トリシクロ(5.2.1.02.6)デカン(OXEA社製TCDアルコール)等が挙げられる。
【0016】
【化2】

【0017】
グリコール成分として、プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび一般式(1)で示されるトリシクロデカンジメタノールから選ばれた少なくとも1種類のグリコールを共重合した場合、さらに耐候性が向上する。
【0018】
グリコール成分を構成する他のグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,17−ヘプタデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,19−ノナデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、スピログリコール、1,4−フェニレングリコール、1,4−フェニレングリコールのエチレンオキサイド付加物、1,4−フェニレングリコールのプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールSのプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0019】
また、共重合ポリエステル樹脂には、必要に応じて、ヒドロキシカルボン酸を共重合してもよい。ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、4−(β−ヒドロキシ)エトキシ安息香酸、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸を共重合する場合、全カルボン酸成分中におけるヒドロキシカルボン酸の共重合量は20モル%以下とすることが好ましい。
【0020】
また、共重合ポリエステル樹脂には、少量であれば、モノカルボン酸、モノアルコール、3官能以上のカルボン酸、3官能以上のアルコールを共重合してもよい。
【0021】
モノカルボン酸としては、安息香酸、フェニル酢酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられ、モノアルコールとしては、セチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。モノカルボン酸、モノアルコールを共重合する場合、それぞれの共重合量は、全カルボン酸成分、全アルコール成分中において、0.2〜20モル%とすることが好ましい。
【0022】
3官能以上のカルボン酸としては、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等が挙げられ、3官能以上のアルコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、α−メチルグルコース、マニトール、ソルビトールが挙げられる。3官能以上のカルボン酸、3官能以上のアルコールを共重合する場合、それぞれの共重合量は、全カルボン酸成分、全アルコール成分中において、0.2〜20モル%とすることが好ましい。
【0023】
本発明の共重合ポリエステル樹脂の繰り返し単位の平均分子量(以下、MAVEと略称する。)は400以上とすることが必要で、440以上とすることがより好ましい。MAVEが400未満であると、共重合ポリエステル樹脂の長期の湿熱耐久性が低下するので好ましくない。
【0024】
なお、本発明におけるMAVEとは、共重合ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分(残基)の分子量をその構成比に応じて加重平均した値と、共重合ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分(残基)の分子量をその構成比に応じて加重平均した値との和をいう。MAVEの具体的な求め方を下記に例示する。
【0025】
[繰り返し単位の平均分子量(MAVE)の求め方:例]
共重合ポリエステル樹脂のアルコール成分がネオペンチルグリコール50モル%、エチレングリコール50モル%であり、カルボン酸成分がテレフタル酸50モル%、イソフタル酸30モル%、アジピン酸20モル%であったとする。このとき、各成分の分子量としては、アジピン酸残基が114、ネオペンチルグリコール残基が102、エチレングリコール残基が60であり、テレフタル酸残基が132、イソフタル酸残基が132であることから、この共重合ポリエステル樹脂の繰り返し単位の平均分子量(MAVE)の値は、下記の式に示す計算によって求められ、209.4となる。
AVE=(132×0.50+132×0.30+114×0.20)
+(102×0.50+60×0.50)=209.4
【0026】
共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度は−10℃以下であることが必要で、−20〜−70℃であることが好ましく、−30〜−70℃であることがさらに好ましい。ガラス転移温度が−10℃を超えると低温条件下でのラミネート接着性が低下するので好ましくない。一方、ガラス転移温度が−70℃未満となると、ポリエステル樹脂の取り扱いが困難になるので好ましくない。
【0027】
共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、共重合するモノマーを適宜選択することにより、上記範囲に制御することができる。
【0028】
共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量としては、2,000〜30,000であることが好ましく、2,000〜25,000であることがより好ましく、2,000〜20,000であることがさらに好ましい。数平均分子量が2,000未満であると、熱間接着性が低下する場合がある。一方、数平均分子量が30,000を超えると、低温条件下でのラミネート接着性が低下して好ましくない。
【0029】
共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量を制御する方法としては、重合時のポリエステル溶融物を所定の粘度で重合を終了する方法、高分子量の共重合ポリエステル樹脂を製造したのち解重合剤を添加して分子量を制御する方法、モノアルコールやモノカルボン酸を添加する方法等が挙げられる。
【0030】
本発明においては、共重合ポリエステル樹脂のMAVEを400以上とし、かつ数平均分子量を、2,000〜30,000とすることが好ましい。高分子量の共重合ポリエステル樹脂を製造したのち解重合剤を添加して数平均分子量を制御する方法を用いることが、MAVEが400以上でありながらも数平均分子量を2,000〜30,000とすることが容易であり最も好ましい。このような共重合ポリエステル樹脂は、湿熱耐久性と低温条件下でのラミネート接着性をバランスよく向上させることができる。
【0031】
解重合剤を用いて共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量を制御するためには、3官能以上の多官能成分を用いて解重合を行うことが好ましい。3官能以上の多官能成分としては、3官能以上のカルボン酸、アルコールのいずれであってもよく、3官能以上のカルボン酸としてはトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等が挙げられ、3官能以上のアルコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、α−メチルグルコース、マニトール、ソルビトールが挙げられる。中でも共重合ポリエステル樹脂のゲル化を抑制し効率よく解重合を行うことができる点で、3官能であるトリメリット酸、トリメチロールプロパンを用いることがより好ましい。これら3官能のカルボン酸、アルコールを用いる場合は、全カルボン酸成分、全アルコール成分中において、10モル%以上で用いることが好ましく、共重合ポリエステル樹脂のゲル化を抑制する点で、20モル%以下で用いることがより好ましい。
【0032】
共重合ポリエステル樹脂の酸価は36eq/t以下であることが好ましく、18eq/t以下であることがより好ましい。共重合ポリエステル樹脂の酸価をこの範囲とすることで、湿熱耐久性を更に向上させることができる。
【0033】
共重合ポリエステル樹脂の酸価を制御する方法としては、共重合ポリエステル樹脂の分子量を目標以上に重合反応を進めておき多官能カルボン酸を適宜添加して解重合する方法、仕込みのカルボン酸とグリコールのモル比を調整する方法、共重合ポリエステル樹脂を熱分解する方法等が挙げられる。中でも、共重合ポリエステル樹脂の分子量を目標以上に重合反応を進めておき多官能カルボン酸を適宜添加して解重合する方法が好ましい。
【0034】
共重合ポリエステル樹脂の水酸基価は50eq/t以上であることが好ましく、70eq/t以上であることがより好ましい。共重合ポリエステル樹脂の酸価をこの範囲とすることで、ポリイソシアネート化合物との反応性を高めることができる。
【0035】
本発明の共重合ポリエステル樹脂の製造方法としては、直接エステル化法、エステル交換法等の公知の製造方法が挙げられる。直接エステル化法としては、例えば、必要なモノマー原料を反応缶内に注入し、エステル化反応をおこなった後、重縮合反応をおこなう方法が挙げられる。エステル化反応では、窒素雰囲気下、160℃以上の温度で4時間以上、加熱溶融して反応させる。重縮合反応では、130Pa以下の減圧下で、220〜280℃の温度で所望の分子量に達するまで重縮合反応を進める。エステル化反応および重縮合反応の際には、触媒を用いてもよい。触媒としては、テトラブチルチタネート等のチタン化合物、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム等の金属の酢酸塩、三酸化アンチモン、ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズ等の有機スズ化合物等が挙げられる。触媒の使用量は、酸成分1モルに対し、0.1×10−4〜100×10−4モルとすることが好ましい。
【0036】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、ポリイソシアネート化合物および有機溶剤を含有
させて接着剤とすることができる。
【0037】
本発明で使用されるポリイソシアネート化合物には、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が含まれる。この中でも耐候性を求められる用途では、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートが好ましく、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートがより好ましい。また、単体で用いることもできるが、それらの混合物をであってもよい。これらはブロックイソシアネート化合物であってもよい。
【0038】
芳香族ポリイソシアネートとしては、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−トルイジンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート等のジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、4,4′−ジフェニルメタン−2,2′,5,5′−テトライソシアネート等の3価以上のイソシアネートが挙げられる。中でも、4,4′−ジフェニルジイソシアネート(MDI)、2,4または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)を好ましく用いることができる。
【0039】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)、またはその混合物、1,3−もしくは1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼンまたはその混合物等のジイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートメチルベンゼン等の3価以上のイソシアネートが挙げられる。
【0040】
脂環族ポリイソシアネートとしては、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート(IPDI))、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等のジイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアネートシクロヘキサン、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,6−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の3価以上のイソシアネートが挙げられる。中でも、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート(IPDI))を好ましく用いることができる。
【0041】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエートのジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアネートオクタン、1,6,11−トリイソシアネートウンデカン、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアネートヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアネート−5−イソシアネートメチルオクタン等の3価以上のイソシアネートが挙げられる。これらは、その誘導体であってもよい。ポリイソシアネートの誘導体としては、ダイマー、トリマー、ビュレット、アロファネート、カルボジイミド、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDIまたは、ポリメリックMDIとも云う。)クルードTDI、およびイソシアネート化合物と低分子量ポリオールとの付加体等が挙げられる。中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を好ましく用いることができる。
【0042】
共重合ポリエステル樹脂とポリイソシアネート化合物を有機溶剤に溶解する場合、その方法は特に限定されないが、共重合ポリエステル樹脂とポリイソシアネート化合物と有機溶剤を混合し、常温で攪拌しながら溶解する方法等が挙げられる。
【0043】
共重合ポリエステル樹脂とポリイソシアネート化合物と有機溶剤の配合比率は、(共重合ポリエステル樹脂+ポリイソシアネート化合物)/有機溶剤が5/95〜50/50(質量比)とすることが好ましく、10/90〜40/60とすることがより好ましい。(共重合ポリエステル樹脂+ポリイソシアネート化合物)の配合比率が、有機溶剤との合計量100質量%に対して、5質量%未満であると密着性が低下し好ましくない。一方、配合比率が、有機溶剤との合計量100質量%に対して、50質量%を超えると接着剤の粘度が高くなり好ましくない。
【0044】
共重合ポリエステル樹脂とポリイソシアネート化合物の配合比率(NCO/OH比)は、ポリイソシアネート化合物の末端基量が、共重合ポリエステル樹脂の水酸基価に対して、0.8〜2.0倍当量とすることが好ましく、1.2〜1.7倍当量とすることがより好ましい。配合比率が0.8倍当量未満であると十分に硬化せず、密着性が低下するため好ましくない。一方、配合比率が2.0倍当量を超えると硬化物の耐薬品性(特に耐アルコール性)が低下するため好ましくない。
【0045】
前記ポリエステル樹脂とポリイソシアネート化合物とを配合して、塗膜を形成する際、必要に応じて架橋触媒を用いることができる。架橋触媒としては、N−メチルイミダゾール、1,4−ジアジン、ジアザビシクロ〔2.2.2〕−オクタン(DABCO)等の第3級アミン触媒、スタナスオクトエートやジブチル錫ジラウレート(DBTDL)等の錫系触媒が好ましい。架橋触媒を用いる場合、その配合量は、ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.1〜2質量部が好ましい。
【0046】
有機溶剤としては、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ソルベッソ等の芳香族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸ノルマルブチル等のエステル系溶剤、セロソルブアセテート、メトキシアセテート等のアセテート系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
本発明の接着剤には、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の樹脂、硬化剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、顔料、粘着付与剤、充填剤、帯電防止剤、発泡剤等を含有させてもよい。
【0048】
他の樹脂としては、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂変性オレフィン樹脂、セルロース誘導体、ナイロン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコン樹脂、オレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0049】
硬化剤としては、フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、多官能エポキシ化合物、多官能アジリジン化合物等が挙げられる。
【0050】
熱安定剤としては、リン酸、リン酸エステル等が挙げられる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、チオエーテル化合物等が挙げられる。
滑材としては、タルクやシリカ、ワックス等が挙げられる。顔料としては、酸化チタン等が挙げられる。粘着付与剤としては、タッキファイヤー等が挙げられる。
【0051】
本発明の接着剤は、公知のコーティング方法で基材に塗布し、乾燥工程に付されて接着剤層を形成し、さらに、塗膜側に別の基材を張り合わせ、加熱加圧することで積層体とすることができる。
【0052】
基材に接着剤を塗布する方法としては、特に限定されないが、コーターを用いてコーティングする方法等が挙げられる。コーターとしては、バーコーター、コンマコーター、ダイコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、フローコーター等が挙げられる。コーティングする際に、塗布量を調整することで、接着剤層の厚みを任意に制御することができる。乾燥後の接着剤層の厚みとしては、0.1〜20μmが好ましい。乾燥工程での温度は、70〜150℃が好ましい。加熱加圧工程の温度は120〜190℃が好ましく、圧力は0.05〜0.4MPaが好ましい。
【0053】
基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム等の樹脂フィルムや、アルミニウム、銅等の金属箔、無機ガラスが挙げられる。
【0054】
積層体は、フレキシブルフラットケーブル、フラットワイヤーハーネス、光学パネル、電磁波シールド被覆材、電線被覆剤、電線水密材、建材、内装用接着剤等として用いることができる。特に、太陽電池モジュール用接着剤のように高温高湿環境下で長期に使用する耐久消費財の接着剤として好適に使用できる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、各種物性測定は以下の方法によりおこなった。
【0056】
(1)共重合ポリエステル樹脂の共重合組成
高分解能核磁気共鳴装置(日本電子社製JNM−LA400)を用いて、H−NMR分析することにより、それぞれの共重合成分のピーク強度から樹脂組成を求めた。(周波数:400MHz、溶媒:重水素化トリフルオロ酢酸、温度:25℃)
【0057】
(2)ポリオキシアルキレングリコールの数平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件でポリスチレン換算の数平均分子量を測定した。
送液ユニット:島津製作所社製LC−10ADvp
示差屈折率検出器:島津製作所社製RID−6A
カラム:Shodex社製KF−803 1本、Shodex社製KF−804 2本を直列に接続して使用
溶媒:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
【0058】
(3)共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件でポリスチレン換算の数平均分子量を測定した。
送液ユニット:島津製作所社製LC−10ADvp
紫外−可視分光光度計:島津製作所社製SPD−6AV、検出波長:254nm
カラム:Shodex社製KF−803 1本、Shodex社製KF−804 2本を直列に接続して使用
溶媒:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
【0059】
(4)共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度
JIS K−7121に準拠して、入力補償型示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製、商品名「ダイヤモンドDSC」)を用いて、ガラス転移温度を求めた。
【0060】
(5)共重合ポリエステル樹脂の酸価
JIS K−0070に準拠して、試料1gをジオキサン50mlに室温で溶解し、クレゾールレッドを指示薬として0.1Nの水酸化カリウムメタノール溶液で滴定した。その滴定した値を用いて共重合ポリエステル樹脂1トン中に含まれる当量数を計算し、酸価(eq/t)を求めた。
【0061】
(6)共重合ポリエステル樹脂の水酸基価
JIS K−0070に準拠して、試料3gをピリジン50mlに加熱還流溶解し、無水酢酸をアセチル化溶液、クレゾールレッド−チモールブルーを指示薬として0.5Nの水酸化カリウムメタノール溶液で滴定した。その滴定した値を用いて、共重合ポリエステル樹脂1トン中に含まれる当量数を計算し、水酸基価(eq/t)を求めた。
【0062】
(7)接着剤の溶液安定性
共重合ポリエステル樹脂およびポリイソシアネート化合物、架橋触媒を配合し、これを酢酸エチル、トルエン/メチルエチルケトン=5/5(質量比)の混合溶媒のいずれかに固形分40質量%となるように溶解し、透明なガラス瓶の中で48時間静置し、目視で均一性を確認し、以下の基準で評価した。実用上、「◎」と「○」が好ましい。
◎:増粘および層分離しておらず均一であった。
○:増粘が認められたが、層分離せず均一であった。
×:層分離または凝固していた。
【0063】
(8)ラミネート接着性
厚み38μmのポリエステルフィルム(ユニチカ社製エンブレット)を基材として、その片面に、バーコーターを用いて、前記接着剤を塗布後、100℃で1分間乾燥し、乾燥厚さ15μmの接着層を形成させた。さらに、その接着層側に厚み20μmのアルミニウムシートを温度70℃、速度6m/分の条件でニップロールによりラミネート接着し、積層体を作製した。その後、積層体を23℃×50%RHの雰囲気下で1日以上放置した後、15mm巾に切断し、引張強度試験機(島津製作所社製オートグラフAG100B)を用いて、23℃の恒温槽中で180度剥離試験をおこない剥離強度を測定した。接着性は、剥離強度を巾1cm当りに換算して以下の基準で評価した。実用上、「◎」と「○」と「□」が好ましい。さらには、「◎」と「○」であることがより好ましい。
◎:10N/cm以上
○:7N/cm以上10N/cm未満
□:5N/cm以上7N/cm未満
×:5N/cm未満
【0064】
(9)湿熱耐久性
上記(8)において作製した積層体を、85℃×85%RHの雰囲気下で1000時間、2000時間湿熱処理し、その後、23℃×50%RHの雰囲気下で1日以上放置した後、(9)と同様に剥離強度を測定した。接着性は、剥離強度を巾1cm当りに換算して以下の基準で評価した。実用上、「◎」と「○」が好ましい。
◎:7N/cm以上
○:3N/cm以上7N/cm未満
×:3N/cm未満
【0065】
(10)熱間接着性
(9)において作製した積層体を、23℃×50%RHの雰囲気下で1日以上放置した後、80℃の恒温槽中で(9)と同様に剥離強度を測定した。熱間接着性は、剥離強度を巾1cm当りに換算して以下の基準で評価した。実用上、「◎」「○」「□」が好ましい。
◎:7N/cm以上
○:5N/cm以上7N/cm未満
□:3N/cm以上5N/cm未満
×:3N/cm未満
【0066】
(11)積層体の耐候性
(8)において作製した積層体を、WS型促進暴露装置(スガ試験機社製サンシャインウェザーメーター)を用いて、63℃×100時間の条件で照射して促進耐候性試験をおこなった後、積層体の状態変化を目視で評価した。実用上、「◎」と「○」が好ましい。
◎:変化がなかった。
○:若干の黄変やくすみが認められた。
×:激しく黄変した。
【0067】
実施例と比較例で用いた共重合ポリエステル樹脂は、下記のようにして得られた。
【0068】
(共重合ポリエステル樹脂Aの製造)
テレフタル酸199kg、イソフタル酸133kg、エチレングリコール57kg、ネオペンチルグリコール96kg、ポリプロピレングリコール(分子量700、旭硝子社製EXCENOL720)616kg(テレフタル酸:イソフタル酸:エチレングリコール:ネオペンチルグリコール:ポリプロピレングリコール=60:40:46:46:44(モル比))を攪拌翼の付いた反応缶に投入し、100rpmの回転数で攪拌しながら、0.25MPaの制圧下240℃で5時間エステル化をおこなった。その後、重縮合缶へ移送して重合触媒としてテトラブチルチタネートモノマーを545g投入し(テレフタル酸1モルあたり8×10−4モル)、60分かけて1.3hPaになるまで徐々に減圧していき、1.3hPa、245℃で数平均分子量49000になるまで重縮合反応をおこなった。その後減圧を解除した後、トリメチロールプロパン38kg(テレフタル酸とイソフタル酸の合計1モル当たり0.14モル)を投入し、240℃で2時間解重合反応を行った後、ドラム缶に払い出し、数平均分子量3500のポリエステル樹脂Aを得た。
【0069】
表1に、共重合ポリエステル樹脂の仕込み樹脂組成を示す。
【0070】
【表1】

【0071】
(共重合ポリエステル樹脂B〜Qの製造)
表1に示すように、カルボン酸成分、グリコール成分の組成を変更した以外は共重合ポリエステル樹脂Aと同様にして共重合ポリエステル樹脂B〜Qを重合した。
【0072】
表2に、共重合ポリエステル樹脂の最終樹脂組成と特性値を示す。
【0073】
【表2】

【0074】
実施例1
共重合ポリエステル樹脂A100質量部、イソホロンジイソシアネートをベースにイソシアヌレート環含有する脂環式ポリイソシアネート(EVONIK INDUSTRIES社製VESTANAT T1890、NCO%=17.3質量%)30.7質量部、架橋触媒ジブチル錫ジラウレート0.4質量部を酢酸エチル196質量部に溶解し、固形分40質量%の接着剤溶液を作製した。得られた接着剤溶液につき、溶液安定性、積層体のラミネート接着性、湿熱耐久性、耐候性の評価を行った。その結果を表3に示す。
なお、共重合ポリエステル樹脂とポリイソシアネート化合物の配合にあたって、ポリイソシアネート化合物の配合量は、以下の式を用い算出した。
ポリイソシアネート化合物の配合(質量部)=(共重合ポリエステル樹脂の水酸基価)×(共重合ポリエステル樹脂の質量)×10−6×(NCO/OH比)×(42×100/NCO%)
【0075】
【表3】

【0076】
実施例2〜18、比較例1〜7
共重合ポリエステル樹脂B〜Qを用いて、ポリイソシアネート化合物、溶剤の種類、配合比を変更した以外は実施例1と同様に接着剤溶液を作製した。得られた接着剤溶液につき、溶液安定性、積層体のラミネート接着性、湿熱耐久性、耐候性の評価を行った。その結果を表3、4に示す。
【0077】
【表4】

【0078】
実施例1〜18は、共重合ポリエステル樹脂の溶液安定性、積層体のラミネート接着性、湿熱耐久性、熱間接着性、耐候性がいずれも良好であった。
グリコール成分として、プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物、またはトリシクロデカンジメタノールを、グリコール成分に対して30モル%以上共重合した実施例2〜12、14〜18は、熱間接着性が特に良好であった。
さらに、グリコール成分として、プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、またはトリシクロデカンジメタノールを、グリコール成分に対して30モル%以上共重合した実施例2〜6、8〜12、14〜18は、耐候性も併せて特に良好であった。
【0079】
比較例1は、共重合ポリエステル樹脂を構成するポリオキシアルキレングリコール成分が、グリコール成分のうち70モル%を超えたために、溶液安定性が悪く、積層体を作成することができなかった。
【0080】
比較例2は、共重合ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸成分が60モル%未満であったために、ラミネート接着性が悪く、湿熱耐久性、熱間接着性、耐候性に劣っていた。
【0081】
比較例3は、共重合ポリエステル樹脂を構成するポリオキシアルキレングリコール成分がグリコール成分のうち30モル%未満であり、ガラス転移温度が−10℃を超えていたために、ラミネート接着性が悪く、湿熱耐久性、熱間接着性、耐候性に劣っていた。
【0082】
比較例4は、共重合ポリエステル樹脂を構成するポリオキシアルキレングリコール成分がグリコール成分のうち70モル%を越えたために、溶液安定性が悪く、積層体を作成することができなかった。
【0083】
比較例5は、共重合ポリエステル樹脂のMAVEが400未満であったため、2000時間湿熱処理時の湿熱耐久性が劣った。
【0084】
比較例6は、共重合ポリエステル樹脂を構成するポリオキシアルキレングリコール成分が、グリコール成分のうち30モル%以下であったため、2000時間湿熱処理時の湿熱耐久性が劣った。
【0085】
比較例7は、共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度が−10℃を超えていたためにラミネート接着性が悪く、湿熱耐久性、耐候性に劣っていた。






【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸成分とグリコール成分とから構成される共重合ポリエステル樹脂であって、
(i)カルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸の共重合量が60モル%以上であり、
(ii)グリコール成分のうち、分子量が200〜1800のポリオキシアルキレングリコールの共重合量が30モル%を超え70モル%以下であり、
(iii)繰り返し単位の平均分子量が400以上であり、
(iv)ガラス転移温度が−10℃以下
である共重合ポリエステル樹脂。
【請求項2】
プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールSのプロピレンオキサイド付加物および一般式(1)で示されるトリシクロデカンジメタノールからなる群より選ばれた少なくとも1種類のグリコールを、全グリコール成分のうち30モル%以上共重合した請求項1記載の共重合ポリエステル樹脂。
【化1】

【請求項3】
請求項1または2に記載の共重合ポリエステル樹脂、ポリイソシアネート化合物および有機溶剤を含有する接着剤。

【公開番号】特開2012−214558(P2012−214558A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79348(P2011−79348)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】