説明

共重合ポリエステル樹脂ペレットとその製造方法

【課題】 粘着性が高いガラス転移点が40℃以下の貧結晶性共重合ポリエステル樹脂ペレットのブロッキングを効果的に防止し、かつ、長期にわたってブロッキングすることなく安全に保存することができ、さらには、汎用溶剤に溶解しても溶液安定性が良好な共重合ポリエステル樹脂ペレットとその製造方法を提供する。
【解決手段】 ガラス転移点が40℃以下の貧結晶性共重合ポリエステル樹脂が、平均粒子径が35μm以下、ガラス転移点が40℃以上、かつ汎用溶剤に溶解可能な有機化合物粉末で被覆されている共重合ポリエステル樹脂ペレット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期保存することができるガラス転移点(以下、Tgと略称することがある。)が40℃以下の共重合ポリエステル樹脂とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Tgの低い共重合ポリエステル樹脂は粘着性が高く、この樹脂をハンドリング性の改善のためペレタイザー等を用いてチップ状にペレット化しようとすると、カッター刃に粘着し、生産性を著しく損ねてしまう。また、切断できた場合でも、ペレット同士の融着(以下、ブロッキングと略称する。)を防止するためには、低温で保管することが不可避となる。このように、Tgの低い共重合ポリエステル樹脂をペレット化し、さらに長期間保存することは極めて困難であった。
【0003】
このため、工業的な生産においては、例えば特許文献1に記載されているように、Tgの低い共重合ポリエステル樹脂は、ペレット化することを避け、シート状に払い出し、ポリエチレンフィルム等の離型フィルムを捲いてブロッキングを抑えることが通常の方法として用いられている。しかしながら、シート状の製品では、使用時に、ポリエチレンフィルムを剥がさなければならず、余計な手間がかかり経済的でないばかりか、引火性の高い溶剤に溶解して使用する場合、剥がす際の静電気の発生により、前記溶剤に引火するなどの可能性があって、安全上大きな問題になっている。
【0004】
本発明者は、上記問題を解決する方法として、特許文献2、3に記載されるように、ペレット化した共重合ポリエステルに、ブロッキング防止効果のある水性分散体を付与し、乾燥することでブロッキング防止をすることを提案した。しかしながら、これらの方法では、水性分散体を乾燥する際、ペレット表面の粉末が凝集し、ブロッキング防止効果が不完全になる場合があるばかりか、溶剤に溶解して使用する場合、使用する粉末によっては、粉末が沈澱し、溶液安定性が非常に悪いものがあった。
【特許文献1】特開2004−300285号公報
【特許文献2】特開2007−070539号公報
【特許文献3】特開2007−070540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決し、粘着性が高いガラス転移点が40℃以下の貧結晶性共重合ポリエステル樹脂ペレットのブロッキングを効果的に防止し、かつ、長期にわたってブロッキングすることなく、さらには、汎用溶剤に溶解しても溶液安定性が良好な共重合ポリエステル樹脂ペレットとその製造方法を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、水中カッタを用いてペレット化し、このペレットを汎用溶剤に溶解可能な平均粒子径が35μm以下の有機化合物粉末を添着、被覆することで、ペレット化時のブロッキングが防止され、さらにその後の保存時においても長期にわたってブロッキングが効果的に防止され、汎用溶剤に溶解しても安定であることを見出し本発明に到達した。すなわち、本発明は、次の構成を要旨とするものである。
(2)該有機化合物粉末が、ガラス転移点が40℃以上の共重合ポリエステル樹脂であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂ペレット。
(3)ガラス転移点が40℃以下の貧結晶性共重合ポリエステル樹脂を、水中カッタを用いてペレット化を行い、平均粒子径30μm以下の有機化合物粉末をペレット周囲に添着させ、ペレットを有機化合物粉末で被覆することを特徴とする共重合ポリエステル樹脂ペレットの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の共重合ポリエステル樹脂ペレットは、粘着性が高いTgが40℃以下の貧結晶性共重合ポリエステル樹脂にもかかわらず、ペレット同士のブロッキングが効果的に防止され、ペレット化した状態で長期保存が可能で、さらには、汎用溶剤に溶解可能なため、産業上の利用価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明が対象とする貧結晶性の共重合ポリエステル樹脂とは、通常、Tgが40℃以下の共重合ポリエステルである。貧結晶性共重合ポリエステルとは、240℃で溶融した後、急冷し、1日室温で放置して、昇温速度10℃/分で示差走査熱量測定を行い、2ndスキャンにおいて融点ピークがないものをいう。
【0010】
共重合ポリエステル樹脂の分子量は、特に限定されるものではないが、通常2000以上、好ましくは6000以上である。分子量が2000よりも小さいと粘着性がより高くなり、効果的にブロッキング防止ができなくなる場合があるので好ましくない。
【0011】
共重合ポリエステル樹脂は、主としてジカルボン酸成分とグリコール成分の等モル量から構成され、必要に応じてヒドロキシカルボン酸成分などが共重合されたものである。
【0012】
上記のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4’−ジカルボキシビフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、アイコサン二酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸などを例示できる。これらは無水物であってもよい。
【0013】
また、グリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどの脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールC、ビスフェノールZ、ビスフェノールAP、4,4′−ビフェノールのエチレンオキサイド付加体又はプロピレンオキサイド付加体、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0014】
本発明における共重合ポリエステル樹脂には、適度な柔軟性、接着性の向上、ガラス転移温度の調整などの目的に応じて、ヒドロキシカルボン酸を共重合させることができる。ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、乳酸、オキシラン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、10−ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。
【0015】
また、少量であれば、3官能以上のカルボン酸成分やアルコール成分を共重合成分として添加してもよい。3官能以上のカルボン酸成分としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水べンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸などの芳香族カルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などの脂肪族カルボン酸が挙げられる。
【0016】
3官能以上のアルコール成分としては、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、α−メチルグルコース、マニトール、ソルビトールが挙げられる。
【0017】
これらは必ずしも1種類で用いる必要はなく、樹脂に付与したい特性に応じて複数種以上混合して用いることが可能である。このとき、3官能以上のモノマーの割合としては、全カルボン酸成分又は全アルコール成分に対して0.2〜5モル%程度が適当である。0.2モル%未満では添加した効果が発現せず、5モル%を超える量を含有せしめた場合には、重合の際、ゲル化点を超えてゲル化が問題になる場合がある。
【0018】
また、ポリエステル樹脂には、モノカルボン酸、モノアルコールが共重合されていてもよい。モノカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸など、モノアルコールとしては、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノールなどが挙げられる。
【0019】
本発明における共重合ポリエステル樹脂は、前記のモノマーを組み合わせて、公知の方法により重縮合させることにより製造することができ、例えば、全モノマー成分及び/又はその低重合体を不活性雰囲気下で180〜250℃、2.5〜10時間程度反応させてエステル化反応を行い、引き続いて、130Pa以下の減圧下に220〜280℃の温度で所望の分子量に達するまで重縮合反応を進めて共重合ポリエステル樹脂を得る方法などを挙げることができる。
【0020】
エステル化反応および重縮合反応の際には、重合触媒を用いることができる。
重合触媒としては、テトラブチルチタネ−トなどのチタン化合物、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウムなどの金属の酢酸塩、三酸化アンチモン、ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズなどの有機錫化合物を好適に用いることができる。その際の重合触媒使用量は、生成する樹脂質量に対し、0.5質量%以下で用いるのが好ましい。
【0021】
また、共重合ポリエステル樹脂に所望の酸価や水酸基価を付与する場合には、前記の重縮合反応に引き続き、多塩基酸成分や多価グリコール成分をさらに添加し、不活性雰囲気下、解重合を行えばよい。
【0022】
次に、本発明において、貧結晶性共重合ポリエステル樹脂ペレットを被覆する有機化合物粉末について説明する。
【0023】
本発明における有機化合物粉末は、平均粒子径が35μm以下、好ましくは0.1〜20μmでなければならない。平均粒子径が35μmよりも大きいと、粉末を添着してもペレット表面に付着しにくく、一部付着したとしても十分にブロッキング防止ができず長期保存することができなくなる場合があるので好ましくない。
【0024】
有機化合物粉末のTgは、40℃以上、好ましくは80℃以上である必要がある。Tgが40℃未満であると、ブロッキングを防止できずにペレット同士が融着するので好ましくない。
【0025】
有機化合物粉末の形状は、真球状であっても、楕円球状であってもかまわない。
【0026】
また、有機化合物粉末は、25℃においてシクロヘキサノン、2−ブタノン、トルエン、酢酸エチルの各溶媒に対する溶解度(25℃)が2質量%以上でなければならない。溶解度が2質量%以上でない場合は、有機化合物粉末を被覆した共重合ポリエステル樹脂ペレットが汎用溶剤に溶解しにくくなるので好ましくない。
【0027】
有機化合物粉末の樹脂の種類としては、共重合ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などが挙げられ、具体的には、共重合ポリエステル樹脂(ユニチカ社製エリーテル、東洋紡社製バイロンなど)を微粒子化したもの、積水化成品工業製MB−20、MB−4C、MB−8C、EMA−10、ガンツ化成製ガンツパールGM−0800S、GM−2000、GM−2800などがあげられる。中でも、共重合ポリエステル樹脂の微粒子化したものが、本発明の対象としている最終製品の共重合ポリエステル樹脂ペレットの品質に対する悪影響が少ないので好ましい。
【0028】
共重合ポリエステル樹脂を微粒子化する方法としては、共重合ポリエステル樹脂とポリエチレングリコールを適当な割合で混錬したのち、ポリエチレングリコールを除去する方法や、共重合ポリエステル樹脂エマルジョンをスプレードライ法で急速乾燥する方法で得ることができる。前者の方法では、共重合ポリエステル樹脂とポリエチレングリコールの混合比を変更することで、平均粒子径をコントロールすることができる。
【0029】
本発明において、共重合ポリエステル樹脂ペレットを被覆する有機化合物粉末は、必ずしも1種類の粉末だけで形成させる必要はなく、1種以上の有機化合物粉末の混用や、粒子径の異なる複数種の有機化合物粉末を混用して使用してもかまわない。
【0030】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、25℃において、シクロヘキサノン、2−ブタノン、トルエン、酢酸エチルの各溶媒に対する溶解度(25℃)が20質量%以上であることが好ましい。溶解度が20質量%以上でない場合には、塗料やコーティング剤として使用する際の作業性が低下する。溶解度の上限は特にないが、溶液の粘性が高くなりすぎないためには50質量%以下が好ましい。
【0031】
次に、本発明の共重合ポリエステル樹脂ペレットの製造方法について説明する。
【0032】
本発明の製造方法は、実質的に、(1)共重合ポリエステル樹脂を溶融する工程、(2)溶融した共重合ポリエステル樹脂をペレット化する工程、(3)ペレットを乾燥させながら、共重合ポリエステル樹脂の表面に直接有機化合物粉末を添着する工程、に分けられる。
【0033】
まず、(1)の共重合ポリエステル樹脂を溶融する工程について説明する。本発明では、任意の方法で溶融することができる。例えば、重合の完了したポリエステル樹脂を重合釜からギアポンプにて押出機に導き、ストランド状に押し出す方法が挙げられる。
【0034】
次に、(2)の溶融した共重合ポリエステル樹脂をペレット化する工程について説明する。
【0035】
本発明において、溶融した粘着性を有する共重合ポリエステル樹脂は、任意の方法でペレット化することができる。ペレット化する方法としては、例えば、押出機よりストランド状に押出されたポリエステル樹脂を、水中カッタ装置を用いてペレット化する方法が挙げられる。水中カッタメーカとしては、Gala株式会社、BKG株式会社、田辺プラスチック株式会社、株式会社日本製鋼所などがある。具体的には、田辺プラスチック製V50−PASC21HS、Gala株式会社製Model7が挙げられる。
【0036】
樹脂の吐出速度や吐出量は、冷却速度と吐出量のバランスがとれれば特に限定されるものではない。
【0037】
次に、(3)のペレットを乾燥させながら、共重合ポリエステル樹脂の表面に直接有機化合物粉末を添着する工程について説明する。
【0038】
有機化合物粉末のペレットへの添着量は、樹脂に対して、通常、0.1〜10質量%、好ましくは1〜7質量%、最適には3〜5質量%が好ましい。添着量が0.1質量%よりも少ない場合は、耐ブロッキング性が十分に発現せず、10質量%よりも多く添着すると、本発明の対象としている最終製品の共重合ポリエステル樹脂ペレットの品質に影響を与える場合があるので好ましくない。
【0039】
有機化合物のペレットへの添着させる方法としては、ペレットを乾燥でき、さらに、ペレットをブロッキングさせずに、有機化合物粉末をペレットに添着させることができれば、特に限定されるものではない。ペレットを乾燥させたのち有機化合物粉末を添着させてもよく、また、乾燥しながら有機化合物粉末を添着させてもかまわない。たとえば、前者の方法であれば、スチールベルトに払いだし、自然乾燥や冷風によって乾燥し、有機化合物粉末をフィーダーを用いて添着させる方法などが挙げられる。また、後者の方法であれば、乾燥機としてGala製TWS−80を使用し、乾燥機の中に有機化合物粉末を添加し、樹脂表面に有機化合物粉末を添着する方法などが挙げられる。
【0040】
付与する有機化合物粉末の量と添着する有機化合物粉末の量は、貧結晶性共重合ポリエステルの形状や性質によって異なるので、付与する有機化合物粉末の量は、後述する有機化合物粉末の添着量の測定方法にしたがってペレットへの添着量を求めて、所望の添着量になるように調整すればよい。

【実施例】
【0041】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた原料と物性の評価方法は、次の通りである。
(1)共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量
数平均分子量は、GPC分析(島津製作所社製の送液ユニットLC−10ADvp型及び紫外−可視分光光度計SPD−6AV型を使用、検出波長:254nm、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めた。
(2)樹脂のガラス転移温度
樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製 DSC7型)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値をガラス転移温度とした。
(3)有機化合物粉末の平均粒子径
共重合ポリエステル樹脂0.1gを150gのメタノールに分散させた後、堀場製作所製LA−500を用いてレーザー回折散乱法にて測定した。
(4)有機化合物粉末のペレットへの添着量
あらかじめ、有機化合物粉末と貧結晶性共重合ポリエステル樹脂、および有機化合物粉末で被覆したペレットを、1H−NMRで分析(バリアン社製,300MHz)して、それぞれの積分値を比較して添着量を計算した。
(5)有機化合物粉末の溶解性評価
ガラス製容器に、有機化合物粉末2g、トルエン溶媒98gを入れ(濃度2質量%)、ペイントシェーカーを用いて25℃で6時間振動させ、溶解状態を観察した。さらに、25℃で1日放置し、溶解状態を観察した。同様に、シクロヘキサノン、2−ブタノン、酢酸エチル、トルエン/2−ブタノン=8/2(質量比1/1)に溶解し、溶解状態および1日後の溶解状態を観察した。いずれかの溶媒において、溶解し、1日放置後も溶解状態が維持されている場合を「○」、それ以外の場合を「×」とした。
(6)有機化合物粉末で被覆したペレットの耐ブロッキング性の評価
ペレット100gを、1600cm2あたり25kgの荷重をかけ、40℃の恒温槽に3日間放置した後、全くペレット同士が融着していなければ○、ペレット同士が融着しているものが10g以下であれば△、ペレット同士が融着しているものが10gよりも多ければ×と評価し、○を合格と判定した。
(7)有機化合物粉末で被覆したペレットの溶解性評価
ガラス製容器に、有機化合物粉末で被覆したペレット20g、トルエン溶媒80gを入れ(濃度20質量%)、ペイントシェーカーを用いて25℃で6時間振動させ、溶解状態を観察した。さらに、25℃で1日放置し、溶解状態を観察した。同様に、シクロヘキサノン、2−ブタノン、酢酸エチル、トルエン/2−ブタノン=8/2(質量比1/1)に溶解し、溶解状態および1日後の溶解状態を観察した。いずれかの溶媒において、溶解し、1日放置後も溶解状態が維持されている場合を「○」、それ以外の場合を「×」とした。
(共重合ポリエステル樹脂の製造)
(ポリエステル1)
テレフタル酸831g(50モル部)、イソフタル酸831g(50モル部)、ネオペンチルグリコール604g(58モル部)、エチレングリコール540g(87モル部)、ポリテトラメチレングリコール1000 500g(5モル部)からなる混合物を、攪拌しながら、オートクレーブ中で240℃で3時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、240℃を維持しながら、触媒としてテトラブチルチタネート2.0gを投入し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとし、重縮合反応を行った。4時間後、得られたものをポリエステル1とし、その組成と特性を表1に示す。
(ポリエステル2〜4)
使用するモノマーとそのモル比を表1のように変更し、実施例1と同様の操作を行って、表1に示す共重合ポリエステル樹脂を得た。
【0042】
【表1】

【0043】
(実施例1)
ポリエステル1を重合した後、直接、払出し弁を通じて、Gala株式会社製Model7水中カッタに押し流しペレット化した。循環水中で冷却したのち、あらかじめ微粒子化しておいたユニチカエリーテルUE−9800(平均粒子径17μm、ガラス転移点85℃、トルエンに2質量%で溶解可能)をペレットに対して5質量%に調整してGala製TWS−80に添加し、微粒子化したエリーテルを添着させたペレットを得た。
(実施例2〜5、比較例1〜4)
用いたポリエステル、有機化合物粉末の種類、ガラス転移点、平均粒子径、溶解性評価および乾燥機への添加量を表2のように変更した以外は、実施例1と同様にしてペレットを製造した。
【0044】
実施例1〜7で得られたペレットの耐ブロッキング性評価および溶解性評価の結果を併せて表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
実施例1〜5で得られたペレットは、いずれも耐ブロッキング評価および溶解性評価の評価が良好であり、長期保存することができるTg40℃以下の貧結晶性共重合ポリエステル樹脂のペレットであった。これに対して、比較例1、3で得られたペレットは、使用した有機化合物粉末の平均粒子径が35μmを超えていたので、ペレットに粉末が斑なく添着されず、このため耐ブロッキング性が悪いものであった。また、比較例2は、有機化合物粉末のTgが40℃以下のために、耐ブロッキング性が悪いものであった。また、比較例4は、有機化合物が架橋処理されたものであったために有機化合物粉末の溶解性評価が不良で、ペレットの溶解性評価も悪いものであった。
【0047】
このように、溶解可能な平均粒子径が35μm以下の有機化合物粉末を被覆することで、はじめて、汎用溶剤に溶解可能、かつ、長期保存性があるTgが40℃以下の貧結晶性共重合ポリエステル樹脂のペレットが得られた。












【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物粉末で被覆されたガラス転移点40℃以下の貧結晶性共重合ポリエステル樹脂ペレットであって、前記有機化合物粉末が、平均粒子径35μm以下であり、シクロヘキサノン、2−ブタノン、トルエン、酢酸エチルの各溶媒に対する溶解度(25℃)が2質量%以上であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂ペレット。
【請求項2】
有機化合物粉末が、ガラス転移点が40℃以上の共重合ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の共重合ポリエステル樹脂ペレット。
【請求項3】
ガラス転移点が40℃以下の貧結晶性共重合ポリエステル樹脂を、水中カッタを用いてペレット化を行い、平均粒子径35μm以下の有機化合物粉末をペレット周囲に添着させ、ペレットを有機化合物粉末で被覆することを特徴とする共重合ポリエステル樹脂ペレットの製造方法。










【公開番号】特開2008−248015(P2008−248015A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88981(P2007−88981)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】