説明

共重合ポリカーボネート樹脂およびその製造方法

【課題】高い生物起源物質含有率を持ち、成形加工性と耐吸水性に優れ、かつ耐熱性と熱安定性のいずれも良好な共重合ポリカーボネート樹脂を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるカーボネート構成単位、およびテルペン系ジメチロール由来のカーボネート構成単位を含んでなる共重合ポリカーボネート樹脂であって、ASTM D6866 05に準拠して測定された生物起源物質含有率が80%〜100%であり、式(1)で表されるカーボネート構成単位が全カーボネート構成単位中、50〜98重量%を占める共重合ポリカーボネート樹脂。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合ポリカーボネートに関する。さらに詳しくは生物起源物質から誘導される繰り返し単位を含有し、熱安定性、耐熱性、成形加工性、耐吸水性に優れた共重合ポリカーボネートであり、各種成形材料やポリマーアロイ材料の素材として有用な共重合ポリカーボネート樹脂とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートは、芳香族もしくは脂肪族ジオキシ化合物を炭酸エステルにより連結させたポリマーであり、その中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)より得られるポリカーボネート(以下「PC−A」と称することがある)は、透明性、耐熱性、耐衝撃性に優れ、多くの分野に用いられている。
【0003】
一般的にポリカーボネートは石油資源からの原料を用いて製造されるが、石油資源の枯渇が懸念されており、植物などの生物起源物質からの原料を用いたポリカーボネートが求められている。そこで、糖質から製造可能なエーテルジオールを用いたポリカーボネートが検討されている。
【0004】
例えば、下記式(a)
【化1】

で表されるエーテルジオールは、生物起源物質、例えば、糖類、でんぷんなどから容易に作られる。このエーテルジオールには3種の立体異性体があることが知られている。具体的には下記式(b)
【化2】

に示す、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール(本明細書では以下「イソソルビド」と呼称する)、下記式(c)
【化3】

に示す、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール(本明細書では以下「イソマンニド」と呼称する)、下記式(d)
【化4】

に示す、1,4:3,6−ジアンヒドロ−L−イジトール(本明細書では以下「イソイディッド」と呼称する)である。
【0005】
イソソルビド、イソマンニド、イソイディッドは、それぞれD−グルコース、D−マンノース、L−イドースから得られる。例えばイソソルビドの場合、D−グルコースを水添した後、酸触媒を用いて脱水することにより得ることができる。
【0006】
これまで式(a)で表されるエーテルジオールの中でも、特に、イソソルビドをポリカーボネートに組み込むことが検討されてきた。特許文献1には、イソソルビドを含有するホモポリカーボネートが開示されている。このホモポリカーボネートは、比粘度が高く、またイソソルビド骨格の剛直な構造のため、溶融粘度が非常に高くなり、成形加工が困難であるという欠点がある。
【0007】
ホモポリカーボネートの欠点を改良するため種々のビスヒドロキシ化合物との共重合が提案されている。特許文献2には、イソソルビドと芳香族ビスフェノールとの共重合ポリカーボネートが提案されている。芳香族ビスフェノールを共重合に用いると熱安定性は向上するが、溶融粘度は改善されず、成形加工性が充分でない。また芳香族ビスフェノールは石油由来であるという問題を抱えている。
【0008】
特許文献3〜6には、イソソルビドと脂肪族ジオールとの共重合ポリカーボネートが提案されている。脂肪族ジオールを共重合に用いると溶融粘度は低くなり成形加工性は向上する。しかしながら、脂肪族ジオールについても石油由来であるものが多く、分子量の低いジオール成分は沸点が低いため、減圧下高温にて溶融重合する際に、未反応脂肪族ジオールが反応系から留去してしまい得られるポリマーの組成比が仕込み比に対してずれてしまうといった問題が生じる。更に熱安定性についてもこういった低沸点の脂肪族ジオールと共重合することで、充分でなくなる場合がある。また、イソソルビド含有ポリカーボネートは、酸素原子を多く含み、PC−Aなどのエーテル部分を持たないジオールから得られるポリカーボネートに比べて極性が高い。そのため、イソソルビド含有ポリカーボネートはPC−Aに比べて吸水性が高く、吸水による成形品の寸法安定性の低下および湿熱時における耐熱性低下を引き起こし易いという欠点を有する。
【0009】
このような生物起源物質からの原料を用いたポリカーボネートの工業用途への展開を考えた場合、用途に応じて熱安定剤、可塑剤、難燃剤、衝撃吸収剤、強化剤など、各種添加剤を添加する必要があるが、これらの添加剤は石油由来のものがほとんどである。そのために樹脂組成物とした時点で生物起源物質の含有率は低下してしまうために、樹脂そのものの生物起源物質の含有率は可能な限り高くしておく必要がある。
【0010】
植物などの生物起源物質から得られるビスヒドロキシ化合物は、上記式(a)で表されるエーテルジオール以外には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどの直鎖脂肪族ジオールが挙げられる。これらの直鎖脂肪族ジオールと上記式(a)で表されるエーテルジオールとの共重合については、特許文献4で報告されているが、先に示したようにこれらの直鎖脂肪族ジオールは沸点が低いために、重合性、熱安定性に問題がある。
【0011】
一方、特許文献7において報告されているテルペン系ジメチロール化合物は、生物起源物質由来の脂環式ジオールであり、低沸点の直鎖脂肪族ジオールに比べて、重合性、熱安定性ともに向上する可能性があるが、上記式(5)で表されるエーテルジオールとの共重合については、報告例がない。
【0012】
以上のように、上記式(a)からなるポリカーボネートは、高い生物起源物質含有率を維持しつつ熱安定性および成形加工性をさらに改良する余地がある。また上記式(a)からなるポリカーボネートは、耐吸水性を改良する余地がある。
【0013】
【特許文献1】特開昭56−055425号公報
【特許文献2】特開昭56−110723号公報
【特許文献3】特開2003−292603号公報
【特許文献4】国際公開第2004/111106号パンフレット
【特許文献5】特開2006−232897号公報
【特許文献6】特開2008−024919号公報
【特許文献7】特開2007−332123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記問題点を解決し、高い生物起源物質含有率を持ち、成形加工性と耐吸水性に優れ、かつ耐熱性と熱安定性のいずれも良好な共重合ポリカーボネート樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記目的を達成すべく、鋭意検討を行った結果、下記式(1)
【化5】

および、テルペン系ジメチロール由来のカーボネート構成単位を含んでなる共重合ポリカーボネートが高い生物起源物質含有率を持ち、成形加工性と耐吸水性に優れ、かつ耐熱性と熱安定性のいずれも良好であることを見出し、本発明に至った。
【0016】
すなわち、本発明によれば、
1.下記式(1)で表されるカーボネート構成単位、およびテルペン系ジメチロール由来のカーボネート構成単位を含んでなる共重合ポリカーボネート樹脂であって、ASTM D6866 05に準拠して測定された生物起源物質含有率が80%〜100%であり、式(1)で表されるカーボネート構成単位が全カーボネート構成単位中、50〜98重量%を占める共重合ポリカーボネート樹脂、
【化6】

2.厚さ1mmの成型板における23℃水中での、飽和吸水率が5%以下である前項1記載の共重合ポリカーボネート樹脂、
3.樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃における比粘度が0.20〜0.60であり、かつガラス転移温度が100〜170℃である前項1記載の共重合ポリカーボネート樹脂、
4.OH価が5×10g/ton以下である前項1記載の共重合ポリカーボネート樹脂、
5.上記式(1)で表されるカーボネート構成単位がイソソルビド(1,4;3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール)由来のカーボネート構成単位である前項1記載の共重合ポリカーボネート樹脂、
6.テルペン系ジメチロール化合物がアロオシメン、ミルセン、オシメン、α−ファルネセン、β−ファルネセンからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物から誘導されるジメチロール化合物であることを特徴とする請求項1記載の共重合ポリカーボネート樹脂、
7.前項1記載の共重合ポリカーボネート重合鎖末端に下記式(2)または(3)
【化7】

【化8】

(上記式(2)、(3)において、Rは炭素原子数4〜30のアルキル基、炭素原子数7〜30のアラルキル基、炭素原子数4〜30のパーフルオロアルキル基、または下記式(4)
【化9】

(上記式(4)中、R、R、R、R及びRは夫々独立して炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基及び炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、bは0〜3の整数、cは4〜100の整数である)であり、Xは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミノ結合及びアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を表わし、aは1〜5の整数である。)
で表される末端基がポリマー主鎖構造に対して0.3〜9.0重量%含まれていることを特徴とする末端変性共重合ポリカーボネート樹脂、
8.末端基が炭素原子数8〜22の脂肪族アルコールである前項7記載の末端変性共重合ポリカーボネート樹脂、
9.末端基が植物由来である炭素原子数14〜22の直鎖脂肪族アルコールである前項7記載の末端変性共重合ポリカーボネート樹脂、
10.重合触媒の存在下、下記式(a)
【化10】

で表されるエーテルジオール、テルペン系ジメチロール化合物、炭酸ジエステルおよび該エーテルジオールに対して0〜15重量%の下記式(5)または(6)
【化11】

【化12】

(上記式(5)、(6)において、Rは炭素原子数4〜30のアルキル基、炭素原子数7〜30のアラルキル基、炭素原子数4〜30のパーフルオロアルキル基、または上記式(4)であり、Xは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミノ結合及びアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を表わし、aは1〜5の整数である。)で表されるヒドロキシ化合物を常圧で加熱反応させ、次いで減圧下、180℃〜280℃の温度で加熱しながら溶融重縮合させることを特徴とする前項1記載の共重合ポリカーボネート樹脂の製造方法、および
11.前項1記載の共重合ポリカーボネート樹脂から形成された成形品、
が提供される。
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、上記式(1)のカーボネート構成単位およびテルペン系ジメチロール由来のカーボネート構成単位よりなる共重合ポリカーボネート樹脂であり、ASTM D6866 05に準拠して測定された生物起源物質含有率が80%〜100%であり、83%〜100%がより好ましい。
【0018】
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、上記式(1)で表されるカーボネート構成単位が全カーボネート構成単位中、50〜98重量%が好ましく、60〜95重量%がより好ましく、更により好ましくは70〜95重量%である。上記式(1)のカーボネート構成単位が98重量%を超えると、テルペン系ジメチロール由来カーボネート構成単位の添加による耐吸水性、成形加工性の改善効果が不充分となり、50重量%より低くなると、樹脂そのものの耐熱性が低下してしまい好ましくない。
【0019】
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、OH価が好ましくは5×10g/ton以下であり、より好ましくは4×10g/ton以下であり、さらに好ましくは3×10g/ton以下である。OH価が5×10g/tonよりも大きくなると、ポリカーボネート樹脂の耐吸水性が悪化するだけでなく、熱安定性が低下してしまい好ましくない。OH価は、試料を塩化メチレンに溶解し、触媒存在下、過剰のフェニルイソシアナートを加え反応させた後に、余剰分のフェニルイソシアナートをジイソブチルアミンを用いて滴定を行う方法により測定した。
【0020】
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、厚さ1mmの成型板における23℃水中での、飽和吸水率が5%以下が好ましく、4.8%以下がより好ましい。吸水率が上記範囲であると、耐湿熱性、低寸法変化率という点で好ましい。
【0021】
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃における比粘度が0.20〜0.60であることが好ましく、より好ましくは0.22〜0.50であり、更により好ましくは0.22〜0.45である。比粘度が0.20より低くなると得られた成形品に充分な機械強度を持たせることが困難となる。また比粘度が0.60より高くなると溶融流動性が高くなりすぎて、成形に必要な融解温度が分解温度より高くなってしまい好ましくない。
【0022】
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、そのガラス転移温度(Tg)が好ましくは100〜170℃であり、より好ましくは110〜160℃である。Tgが100℃未満だと耐熱性に劣り、170℃を超えると成形時の溶融流動性に劣る。
【0023】
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、上記式(a)で表されるエーテルジオール、テルペン系ジメチロール、および炭酸ジエステルとから溶融重合法により製造することができる。
【0024】
エーテルジオールとしては、具体的には上記式(b)、(c)および(d)で表されるイソソルビド、イソマンニド、イソイディッドなどが挙げられる。これら糖質由来のエーテルジオールは、自然界のバイオマスからも得られる物質で、再生可能資源と呼ばれるものの1つである。イソソルビドは、でんぷんから得られるD−グルコースに水添した後、脱水を受けさせることにより得られる。その他のエーテルジオールについても、出発物質を除いて同様の反応により得られる。特に、カーボネート構成単位がイソソルビド(1,4;3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール)由来のカーボネート構成単位を含んでなるポリカーボネート樹脂が好ましい。イソソルビドはでんぷんなどから簡単に作ることができるエーテルジオールであり資源として豊富に入手することができる上、イソマンニドやイソイディッドと比べても製造の容易さ、性質、用途の幅広さの全てにおいて優れている。
【0025】
テルペン系ジメチロール化合物は、特許文献7にあるようにアロオシメン、ミルセン、オシメン、α−ファルネセン、β−ファルネセンから選ばれた少なくとも一種の天然由来化合物と不飽和ジカルボン酸、その無水物、不飽和カルボン酸ジアルキルエステルから選ばれた少なくとも一種の化合物を反応させ、つづいて還元反応を行うことにより得ることができる。上記天然由来化合物は、単独または2種以上を併用して使用してもよい。好ましくは、コスト面等から、アロオシメン、ミルセンである。また上記不飽和ジカルボン酸、その無水物、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルについては、通常、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸ジアルキルエステルなどを用いることができる。不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルのアルキル成分としては、特に制限はなく、例えば、ジメチル、ジエチル、ジプロピル、ジブチルなどが挙げられる。これらの中で、好ましくは、コスト面等から、フマル酸である。また、これら不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルは、単独または2 種以上を併用して使用してもよい。
【0026】
炭酸ジエステルとしては、水素原子が置換されていてもよい炭素数6〜12のアリール基またはアラルキル基、もしくは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m―クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでも反応性、コスト面からジフェニルカーボネートが好ましい。
【0027】
炭酸ジエステルはエーテルジオールに対してモル比で1.05〜0.98となるように混合することが好ましく、より好ましくは1.03〜0.98であり、さらに好ましくは1.01〜0.99である。炭酸ジエステルのモル比が1.05より多くなると、炭酸エステル残基が末端封止として働いてしまい充分な重合度が得られなくなってしまい好ましくない。また炭酸ジエステルのモル比が0.98より少ない場合、重合が進行しないばかりでなく、未反応のエーテルジオールやヒドロキシ化合物が残存する。
【0028】
溶融重合法は、重合触媒の存在下、ジオール成分と炭酸ジエステルとを混合し、エステル交換反応によって生成するアルコールまたはフェノールを高温減圧下にて留出させることによって行う。
【0029】
反応温度は、ジオール成分の分解を抑え、着色が少なく高粘度の樹脂を得るために、できるだけ低温の条件を用いることが好ましいが、重合反応を適切に進める為には重合温度は180℃〜280℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは180℃〜260℃の範囲である。
【0030】
また、反応初期にはジオール成分と炭酸ジエステルとを常圧で加熱し、予備反応させた後、徐々に減圧にして反応後期には系を1.3×10−3〜1.3×10−5MPa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる方法が好ましい。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0031】
重合触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、二価フェノールのナトリウム塩、二価フェノールのカリウム塩等のアルカリ金属化合物が挙げられる。また水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物が挙げられる。
【0032】
またテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物が挙げられる。
【0033】
またアルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類、亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アンチモン化合物類マンガン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0034】
重合触媒として、含窒素塩基性化合物、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を使用することが好ましい。なかでも、含窒素塩基性化合物とアルカリ金属化合物とを併用して使用することが好ましい。
これらの重合触媒の使用量は、それぞれ炭酸ジエステル1モルに対し、好ましくは1×10−9〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−8〜5×10−4当量の範囲で選ばれる。
【0035】
反応系は、原料、反応混合物、反応生成物に対し不活性な窒素などのガスの雰囲気に保つことが好ましい。窒素以外の不活性ガスとしては、アルゴンなどを挙げることができる。さらに、必要に応じて酸化防止剤等の添加剤を加えてもよい。
【0036】
本発明の共重合ポリカーボネートには、触媒失活剤を添加することもできる。触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤を用いることができる。なかでもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。さらにドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。またスルホン酸のエステルとしてベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が好ましく用いられる。なかでもドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましく使用される。これらの触媒失活剤の使用量は、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた重合触媒1モル当たり、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは0.5〜10モル、さらに好ましくは0.8〜5モルの割合である。
【0037】
本発明の共重合ポリカーボネートの末端構造は、必然的に、水酸基または重合の際に用いる炭酸ジエステル残基となりうるが、耐吸水性、成型加工性をより向上させるために、下記式(2)または(3)で表される末端基を導入しても良い。
【0038】
【化13】

【化14】

【0039】
上記式(2)、(3)において、Rは炭素原子数4〜30のアルキル基、炭素原子数7〜30のアラルキル基、炭素原子数4〜30のパーフルオロアルキル基、または下記式(4)
【化15】

で表される基である。
【0040】
のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは4〜22、より好ましくは8〜22である。アルキル基として、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0041】
のアラルキル基の炭素原子数は、好ましくは8〜20、より好ましくは10〜20である。アラルキル基として、ベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、2−フェニルプロパン−2−イル基、ジフェニルメチル基等が挙げられる。
【0042】
のパーフルオロアルキル基の炭素原子数は好ましくは2〜20である。パーフルオロアルキル基として4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロヘプチル基、4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−トリデカフルオロノニル基、4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ヘプタデカフルオロウンデシル基などが挙げられる。
【0043】
式(4)中、R、R、R、RおよびRは夫々独立して、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表す。
【0044】
式(4)中の炭素原子数1〜10のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基等が挙げられる。炭素原子数6〜20のシクロアルキル基として、シクロへキシル基、シクロオクチル基、シクロへキシル基、シクロデシル基等が挙げられる。炭素原子数2〜10のアルケニル基として、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基等が挙げられる。炭素原子数6〜10のアリール基として、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。炭素原子数7〜20のアラルキル基として、ベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、2−フェニルプロパン−2−イル基、ジフェニルメチル基等が挙げられる。
【0045】
式(4)中、R、R、R、RおよびRは、夫々独立して炭素原子数1〜10のアルキル基および炭素原子数6〜10のアリール基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基であることが好ましい。特に夫々独立してメチル基およびフェニル基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基であることが好ましい。
【0046】
bは0〜3の整数、好ましくは1〜3の整数、より好ましくは2〜3の整数である。cは4〜100の整数、より好ましくは4〜50の整数、さらに好ましくは8〜50の整数である。
【0047】
式(3)のXは、単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミノ結合およびアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を表わす。Xは、好ましくは単結合、エーテル結合およびエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも一種の結合である。なかでも単結合、エステル結合が好ましい。
aは1〜5の整数、より好ましくは1〜3の整数、さらに好ましくは1である。
【0048】
上記式(2)または(3)で表される末端基は、生物起源物質由来であることが好ましい。生物起源物質として、炭素数14以上の長鎖アルキルアルコール、例えばセタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが挙げられる。
【0049】
式(2)または(3)で表される末端基の含有量は、ポリマー主鎖に対して0.3〜9重量%、好ましくは0.3〜7.5重量%、より好ましくは0.5〜6重量%である。式(2)または(3)で表される末端基が上記範囲内にある場合、末端変性による効果(耐吸水性、成型加工性)が好適に発現する。
【0050】
このような末端基の本発明の共重合ポリカーボネートへの導入は、重合時に下記式(5)または(6)
【化16】

【化17】

で表されるヒドロキシ化合物を加えることによって達成される。
【0051】
上記式(5)または(6)で表されるヒドロキシ化合物において、R、X、a、R、R、R、R、R、b、cは、式(2)および(3)と同じである。ヒドロキシ化合物は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。2種類以上使用する場合は、式(5)または(6)で表されるヒドロキシ化合物とそれ以外のヒドロキシ化合物とを組み合わせて使用してもよい。
【0052】
ヒドロキシ化合物の量は、エーテルジオールおよびテルペン系ジメチロールの合計量に対して、好ましくは0.3〜15重量%、より好ましくは0.3〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。ヒドロキシ化合物が0.3重量%より少なくなると、末端変性の効果が得られない。ヒドロキシ化合物が15重量%より多くなると、末端停止剤の量が多すぎて、成形加工に充分な重合度を持つ末端変性共重合ポリカーボネートが得られない。ヒドロキシ化合物を添加する時期は、反応初期、反応後期いずれでも良い。
【0053】
また、本発明で得られる共重合ポリカーボネート樹脂の特性を損なわない範囲で、他の脂肪族ジオール類または芳香族ビスフェノール類との共重合としても良い。かかる他の脂肪族ジオール類または芳香族ビスフェノール類の共重合割合は好ましくは5〜0モル%、より好ましくは2〜0モル%である。
【0054】
脂肪族ジオールとしては、炭素数2〜20の脂肪族ジオールが好ましく、炭素数3〜15の脂肪族ジオールがより好ましい。具体的には1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの直鎖状ジオール類や、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式アルキレン類などが挙げられ、中でも1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、およびシクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0055】
芳香族ビスフェノールとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称塔rスフェノールA煤j、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン等が挙げられる。
【0056】
また、他のジオール残基を含むこともでき、例えばジメタノールベンゼン、ジエタノールベンゼンなどの芳香族ジオールなどを挙げることができる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂には、用途に応じて各種の機能付与剤を添加してもよく、例えば熱安定剤、安定化助剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、衝撃吸収剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などである。
【0057】
また、本発明のポリカーボネート樹脂には、用途に応じて各種の有機および無機のフィラー、繊維などを複合化して用いることもできる。フィラーとしては例えばカーボン、タルク、マイカ、ワラストナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイトなどを上げることができる。また、繊維としては例えばケナフなどの天然繊維のほか、各種の合成繊維、ガラス繊維、石英繊維、炭素繊維などが挙げられる。
どが見られる。
【発明の効果】
【0058】
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂組成物は、生物起源物質から誘導される部分を含有し、優れた熱安定性、耐熱性、成形加工性、耐吸水性を有することから、光学用シート、光学用ディスク、情報ディスク、光学レンズ、プリズム等の光学用部品、各種機械部品、建築材料、自動車部品、各種の樹脂トレー、食器類をはじめとする様々な用途に幅広く用いることができ、その奏する産業上の効果は格別である。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。但し、本発明はこれら実施例に何ら制限されるものではない。なお実施例中の部は重量部であり、%は重量%である。なお、評価は下記の方法によった。
【0060】
(1)生物起源物質含有率(植物由来度)
ASTM D6866 05に準拠し、放射性炭素濃度(percent modern carbon;C14)による生物起源物質含有率試験から、生物起源物質含有率を測定した。
【0061】
(2)OH価
特開2003−43027号公報を参考にした。すなわちペレットを塩化メチレンに溶解し、ジブチルジラウリル錫の存在下、過剰量のフェニルイソシアネートを加え反応させた後に、余剰分のフェニルイソシアナート量は、ジブチルアミンを用いた滴定によって定量した。OH価は、前記滴定結果から反応したフェニルイソシアナート量を求め、算出した。
【0062】
(3)飽和吸水率
予め100℃で24時間乾燥した60×60×1(単位:mm)の成形板を23℃の水中に浸し、定期的に取り出してその重量を測定し、吸水率を下記式(1)から計算した。
【数1】

なお、飽和吸水率は上記成形板の吸水による重量増加が無くなった時点での吸水率とした。
【0063】
(4)比粘度(ηsp
ペレットを塩化メチレンに溶解、濃度を0.7g/dLとして、温度20℃にて、オストワルド粘度計(装置名:RIGO AUTO VISCOSIMETER TYPE VMR−0525・PC)を使用して測定した。なお、比粘度ηspは下記式から求めた。
ηsp=t/t−1
t :試料溶液のフロータイム
:溶媒のみのフロータイム
【0064】
(5)ガラス転移温度(Tg)
ペレットを用いてTA Instruments社製 DSC (型式 DSC2910)により測定した。
【0065】
(6)成形加工性
ペレットを日本製鋼所(株)製 JSWJ−75EIIIを用いて射出成形を行い、厚み2mmの成形板の形状を目視にて評価した(金型温度:70〜90℃、成形温度:220〜250℃)。
成形加工性
○;濁り、割れ、ヒケ、分解によるシルバーなどが見られない。
×;濁り、割れ、ヒケ、分解によるシルバーなどが見られる。
【0066】
(7)末端変性基含有率
JEOL製JNM−AL400を用いてペレットの重クロロホルム溶液中におけるH−NMRを測定し、主鎖骨格中に含まれるエーテルジオール由来の特定プロトンおよび末端ヒドロキシ化合物由来の特定プロトンとの積分比から末端変性基含有率を求めた。なお末端変性基含有率(重量%)は下記式から求めた。
【0067】
【数2】

Rt:H−NMRの積分比から求めた末端ヒドロキシ化合物のエーテルジオールに対する割合(エーテルジオールを1としたときの値)
Mt:末端ヒドロキシ化合物構成単位の分子量
Re:H−NMRの積分比から求めた主鎖中におけるエーテルジオールの組成比
Me:エーテルジオール構成単位の分子量
【0068】
<製造例1:テルペン系ジメチロール(A−1)の製造>
冷却管、温度計、撹拌棒を備えた500mLの三つ口フラスコに、ヤスハラケミカル(株)製アロオシメン74重量部(純度92%、0.5モル)およびフマル酸58重量部(0.5モル)を仕込み、撹拌しながら昇温して、150〜160℃で12時間反応した。反応後、アセトンから再結晶することにより、フマル化アロオシメン83重量部(アロオシメン基準で収率62%、純度94%)を得た。続いて、電磁撹拌装置を備えた内容500mLのオートクレーブに、上記で得られたフマル化アロオシメン72重量部(0.27モル)、2−プロパノール140重量部、および粉末状の5%パラジウムカーボン触媒0.7重量部を仕込んだ。次いで、これを密閉し、雰囲気を窒素ガスで置換した後、水素ガス15kg/cmの圧力をかけながら導入した。そして、撹拌を開始すると、内温が27℃から32℃へ上昇した。吸収された水素を補うことで圧力を15〜20kg/cmに保ちながら4時間反応させた。その後、得られた懸濁液をブフナーロートで吸引ろ過を行い、触媒をろ別した。その後、ろ液を減圧濃縮することにより、水添フマル化アロオシメン72重量部(収率95%、純度92%)を得た。次に、冷却管、温度計、撹拌棒、滴下ロートを備えた2L四つ口フラスコに、窒素気流下、脱水テトラヒドロフランを500mL入れ、水素化リチウムアルミニウム26重量部(0.68モル)を加えた。混合液を、65℃で30分間環流させた後、加熱をやめ、ここに上記のようにして得られた水添フマル化アロオシメン61重量部(0.22モル)を脱水テトラヒドロフラン300mLに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。混合液を65℃で12時間環流させた後、0℃付近に冷却し、水を26mL、4規定水酸化ナトリウム水溶液を26mL、水80mLを順次加えた。灰色の部分がなくなるまで撹拌し、酢酸エチルを加え、油層と水層に分離した。油層を減圧蒸留にて溶媒を除去し、粗生成物50重量部を得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記式(7)で代表されるジメチロール化合物の粘稠液体30重量部(収率56%、純度96%)を得た。
【0069】
【化18】

【0070】
<製造例2:テルペン系ジメチロール(A−2)の製造>
冷却管、温度計、撹拌棒を備えた500mL三つ口フラスコに、ヤスハラケミカル(株)製ミルセン90重量部(純度76%、0.5モル)およびフマル酸58重量部(0.5モル)を仕込み、撹拌しながら昇温して、150〜160℃で12時間反応した。反応後、アセトンから再結晶することにより、フマル化ミルセン84重量部(ミルセン基準で収率65% 、純度98%)を得た。続いて、電磁撹拌装置を備えた内容500mLのオートクレーブに、上記で得られたフマル化ミルセン72重量部(0.28モル)、2−プロパノール140重量部、および粉末状の5%パラジウムカーボン触媒0 .7重量部を仕込んだ。次いで、これを密閉し、雰囲気を窒素ガスで置換した後、水素ガス15kg/cmの圧力をかけながら導入した。そして、撹拌を開始すると、内温が27℃から32℃へ上昇した。吸収された水素を補うことで圧力を15〜20kg/cmに保ちながら4時間反応させた。その後、得られた懸濁液をブフナーロートで吸引ろ過を行い、触媒をろ別した。その後、ろ液を減圧濃縮することにより、水添フマル化ミルセン71重量部(収率94%、純度95%)を得た。次に、冷却管、温度計、撹拌棒、滴下ロートを備えた2L四つ口フラスコに、窒素気流下、脱水テトラヒドロフランを500mL入れ、水素化リチウムアルミニウム26重量部(0.68モル)を加えた。混合液を、65℃で30分間環流させた後、加熱をやめ、ここに上記のようにして得られた水添フマル化ミルセン60重量部(0.22モル)を脱水テトラヒドロフラン300mLに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。混合液を65℃で12時間環流させた後、0℃付近に冷却し、水を26mL、4規定水酸化ナトリウム水溶液を26mL、水80mLを順次加えた。灰色の部分がなくなるまで撹拌し、酢酸エチルを加え、油層と水層に分離した。油層を減圧蒸留にて溶媒を除去し、粗生成物47重量部を得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記式(8)で表されるジメチロール化合物の白色結晶20重量部(収率40%、純度99%)を得た。
【0071】
【化19】

【0072】
[実施例1]
イソソルビド884重量部(6.05モル)と製造例1で製造したテルペン系ジメチロール(A−1)992重量部(4.95モル)およびジフェニルカーボネート2380重量部(11.11モル)とを反応器に入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを0.30重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して3×10−4モル)、および水酸化ナトリウムを1.3×10−3重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して3×10−6モル)仕込んで窒素雰囲気下、常圧で180℃に加熱し溶融させた。撹拌下、反応槽内を30分かけて徐々に減圧し、生成するフェノールを留去しながら13.3×10−3MPaまで減圧した。この状態で20分反応させた後に200℃に昇温した後、20分かけて徐々に減圧し、フェノールを留去しながら4.0×10−3MPaで20分間反応させ、さらに、220℃に昇温し30分間、250℃に昇温し30分間反応させた。次いで、徐々に減圧し、2.67×10−3MPaで10分間、1.33×10−3MPaで10分間反応を続行し、さらに減圧し、4.00×10−5MPaに到達したら、徐々に250℃まで昇温し、最終的に250℃、6.66×10−5MPaで1時間反応せしめた。その結果、比粘度が0.37のポリマーが得られた。このポリマーの評価結果については表1に示した。
【0073】
[実施例2]
イソソルビド1286重量部(8.8モル)と製造例2で製造したテルペン系ジメチロール(A−2)502重量部(2.2モル)およびジフェニルカーボネート2404重量部(11.22モル)とを反応器に入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを0.31重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して3×10−4モル)、および水酸化ナトリウムを1.4×10−3重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して3×10−6モル)とした以外は実施例1と同様に重合させてポリマーを得た。得られたポリマーの評価結果については表1に示した。
【0074】
[実施例3]
イソソルビド1125重量部(7.7モル)と製造例1で製造したテルペン系ジメチロール(A−1)661重量部(3.3モル)とステアリルアルコール60重量部(0.22モル)およびジフェニルカーボネート2404重量部(11.22モル)とを反応器に入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを0.31重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して3×10−4モル)、および水酸化ナトリウムを1.4×10−3重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して3×10−6モル)とした以外は実施例1と同様に重合させてポリマーを得た。得られたポリマーの評価結果については表1に示した。
【0075】
[実施例4]
イソソルビド1527重量部(10.45モル)と製造例2で製造したテルペン系ジメチロール(A−2)126重量部(0.55モル)とステアリルアルコール89重量部(0.33モル)およびジフェニルカーボネート2427重量部(11.33モル)とを反応器に入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを0.31重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して3×10−4モル)、および水酸化ナトリウムを1.4×10−3重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して3×10−6モル)とした以外は実施例1と同様に重合させてポリマーを得た。得られたポリマーの評価結果については表1に示した。
【0076】
[比較例1]
イソソルビド1608重量部(11モル)とジフェニルカーボネート2333重量部(10.89モル)とを反応器に入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを0.30重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して3×10−4モル)、および水酸化ナトリウムを1.4×10−3重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して3×10−6モル)とした以外は実施例1と同様に重合させてポリマーを得た。得られたポリマーの評価結果については表1に示した。
【0077】
[比較例2]
イソソルビド643重量部(4.4モル)と製造例2で製造したテルペン系ジメチロール(A−2)1507重量部(6.6モル)、およびジフェニルカーボネート2262重量部(10.56モル)とを反応器に入れ、重合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを0.30重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して3×10−4モル)、および水酸化ナトリウムを1.3×10−3重量部(ジフェニルカーボネート成分1モルに対して3×10−6モル)とした以外は実施例1と同様に重合させてポリマーを得た。得られたポリマーの評価結果については表1に示した。
【0078】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるカーボネート構成単位、およびテルペン系ジメチロール由来のカーボネート構成単位を含んでなる共重合ポリカーボネート樹脂であって、ASTM D6866 05に準拠して測定された生物起源物質含有率が80%〜100%であり、式(1)で表されるカーボネート構成単位が全カーボネート構成単位中、50〜98重量%を占める共重合ポリカーボネート樹脂。
【化1】

【請求項2】
厚さ1mmの成型板における23℃水中での、飽和吸水率が5%以下である請求項1記載の共重合ポリカーボネート樹脂。
【請求項3】
樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃における比粘度が0.20〜0.60であり、かつガラス転移温度が100〜170℃である請求項1記載の共重合ポリカーボネート樹脂。
【請求項4】
OH価が5×10g/ton以下である請求項1記載の共重合ポリカーボネート樹脂。
【請求項5】
上記式(1)で表されるカーボネート構成単位がイソソルビド(1,4;3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール)由来のカーボネート構成単位である請求項1記載の共重合ポリカーボネート樹脂。
【請求項6】
テルペン系ジメチロール化合物がアロオシメン、ミルセン、オシメン、α−ファルネセン、β−ファルネセンからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物から誘導されるジメチロール化合物であることを特徴とする請求項1記載の共重合ポリカーボネート樹脂。
【請求項7】
請求項1記載の共重合ポリカーボネート重合鎖末端に下記式(2)または(3)
【化2】

【化3】

(上記式(2)、(3)において、Rは炭素原子数4〜30のアルキル基、炭素原子数7〜30のアラルキル基、炭素原子数4〜30のパーフルオロアルキル基、または下記式(4)
【化4】

(上記式(4)中、R、R、R、R及びRは夫々独立して炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基及び炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、bは0〜3の整数、cは4〜100の整数である)であり、Xは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミノ結合及びアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を表わし、aは1〜5の整数である。)
で表される末端基がポリマー主鎖構造に対して0.3〜9.0重量%含まれていることを特徴とする末端変性共重合ポリカーボネート樹脂。
【請求項8】
末端基が炭素原子数8〜22の脂肪族アルコールである請求項7記載の末端変性共重合ポリカーボネート樹脂。
【請求項9】
末端基が植物由来である炭素原子数14〜22の直鎖脂肪族アルコールである請求項7記載の末端変性共重合ポリカーボネート樹脂。
【請求項10】
重合触媒の存在下、下記式(a)
【化5】

で表されるエーテルジオール、テルペン系ジメチロール化合物、炭酸ジエステルおよび該エーテルジオールに対して0〜15重量%の下記式(5)または(6)
【化6】

【化7】

(上記式(5)、(6)において、Rは炭素原子数4〜30のアルキル基、炭素原子数7〜30のアラルキル基、炭素原子数4〜30のパーフルオロアルキル基、または上記式(4)であり、Xは単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミノ結合及びアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を表わし、aは1〜5の整数である。)で表されるヒドロキシ化合物を常圧で加熱反応させ、次いで減圧下、180℃〜280℃の温度で加熱しながら溶融重縮合させることを特徴とする請求項1記載の共重合ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項11】
請求項1記載の共重合ポリカーボネート樹脂から形成された成形品。

【公開番号】特開2009−215435(P2009−215435A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60792(P2008−60792)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】