説明

共重合体、ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】加工性の悪化を招くことなく、省燃費性能、グリップ性能、耐摩耗性能をバランス良く得られるゴム組成物、空気入りタイヤを供することができる共重合体を提供する。
【解決手段】共役ジエン化合物と極性基含有ビニル化合物とを共重合して得られる共重合体であって、前記極性基含有ビニル化合物は、重合性不飽和結合と極性基とを有し、かつ該重合性不飽和結合を形成するいずれかの炭素原子と該極性基が結合する炭素原子とが少なくとも1個の炭素原子を介して結合する化合物であり、前記共役ジエン化合物の二重結合部分のシス含量は、80モル%以上であり、少なくとも分子量5.0×10〜2.0×10と、2.0×10〜2.0×10とにピークトップを有するマルチモーダルな分子量分布を有する共重合体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体、それを含むゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤに要求される性能として、省燃費性能、グリップ性能、耐摩耗性能などがある。省燃費性能とグリップ性能をバランスよく向上させることができることから、充填剤としてシリカが広く使用されている。さらに、シリカをゴム組成物に配合する効果を増大させるために、ゴム分子にシリカと親和性の高い変性基を導入し、さらなる省燃費性能の向上が図られている。シリカと親和性の高い変性基が導入された変性ゴムは、ラジカル重合法や、Liなどを用いたアニオン重合法などにより合成されている。例えば、特許文献1では、ゴム分子をアミノ基とアルコキシ基とを含有する有機ケイ素化合物で変性することによりシリカとの親和性を高める試みがなされているが、充分な効果が得られない。また、変性を行うことにより、ゴム組成物の粘度が上昇し、加工性の悪化を招き、かえってシリカの分散性が悪化する場合もある。
【0003】
また、耐摩耗性能に優れることから高シス1,4−ポリブタジエンゴムが使用されている。しかし、省燃費性能の向上、グリップ性能の向上については、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−344955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記課題を解決し、加工性の悪化を招くことなく、省燃費性能、グリップ性能、耐摩耗性能をバランス良く得られるゴム組成物、空気入りタイヤを供することができる共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、高シス含量による優れた耐摩耗性能、主鎖や末端への変性による優れた省燃費性能、及びグリップ性能をバランス良く得ることを鋭意検討した結果、共役ジエン化合物と極性基含有ビニル化合物との共重合を行って得られるポリマーを用いることで、耐摩耗性能とシリカの分散性が従来より向上し、上記の性能がバランス良く得られることを見出した。また、マルチモーダルな分子量分布を有することによって、加工性の悪化を招くことなく、これらの性能のバランスが更に改善されることも見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、共役ジエン化合物と極性基含有ビニル化合物とを共重合して得られる共重合体であって、上記極性基含有ビニル化合物は、重合性不飽和結合と極性基とを有し、かつ該重合性不飽和結合を形成するいずれかの炭素原子と該極性基が結合する炭素原子とが少なくとも1個の炭素原子を介して結合する化合物であり、上記共役ジエン化合物の二重結合部分のシス含量は、80モル%以上であり、少なくとも分子量5.0×10〜2.0×10と、2.0×10〜2.0×10とにピークトップを有するマルチモーダルな分子量分布を有する共重合体に関する。
【0008】
上記共重合体において、上記極性基は、水酸基、−NR、又は−Si(OR)(R)3−kで表される基であることが好ましい。
(但し、Rは、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。kは、1、2又は3の整数を表す。)
【0009】
上記共重合体において、上記極性基含有ビニル化合物は、下記一般式(I);
【化1】

(式(I)中、Rは、水素、ビニル基又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Rは、水素又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Rは、水素、又は炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族炭化水素基を表す。Xは、水酸基、−NR、又は前記−Si(OR)(R)3−kで表される基を表す。nは、1〜10の整数を表す。前記R、R、R、該Rが結合する炭素原子、該Rが結合する炭素原子は、それぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。)
であることが好ましい。
【0010】
上記共重合体は、重量平均分子量が5.0×10〜2.0×10の共重合体と、重量平均分子量が2.0×10〜2.0×10の共重合体とを混合して得られるものが好ましい。
【0011】
上記共重合体は、触媒として遷移金属含有化合物を使用し、上記共役ジエン化合物と上記極性基含有ビニル化合物とを共重合して得られる活性末端を有する共重合体に、更に上記極性基含有ビニル化合物を該活性末端に反応させて得られるものが好ましい。
【0012】
上記共重合体は、上記極性基含有ビニル化合物の含有量が0.05〜40質量%であることが好ましい。また、上記共役ジエン化合物が1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンであることが好ましい。
【0013】
上記共重合体において、上記共重合体中に含まれる上記共役ジエン化合物100モル%中の1,3−ブタジエンの含有量が95モル%以上であることが好ましい。
【0014】
共重合を行う前に、上記極性基含有ビニル化合物と下記一般式(II);
M(R (II)
(式(II)中、Mは、アルミニウム、ホウ素、ケイ素又はチタンを表す。Rは、炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族炭化水素基、炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族アルコキシ基、又はハロゲン類を表し、同一であっても異なっていてもよい。mは、3又は4の整数を表す。)
で表される化合物とを反応させ、次いで、得られた反応生成物と上記共役ジエン化合物とを共重合することにより得られるものが好ましい。また、上記共重合体は、触媒としてランタニド、Ti、Co又はNi含有化合物、助触媒としてAl又はB含有化合物を使用して共重合することにより得られるものが好ましい。
【0015】
本発明は、ジエン系ゴム成分と、上記共重合体と、シリカとを含むゴム組成物に関する。ここで、上記ゴム組成物は、上記シリカの含有量が全ゴム成分100質量部に対して5〜150質量部であり、かつ上記共重合体の含有量が全ゴム成分100質量%中、5〜90質量%であることが好ましい。
【0016】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、特定の極性基含有ビニル化合物を共役ジエン化合物とともに共重合して得られ、特定の分子量範囲にピークトップを有するマルチモーダルな分子量分布を有する共重合体であるため、該共重合体を用いたゴム組成物、空気入りタイヤにおいて、加工性の悪化を招くことなく、省燃費性能、グリップ性能、耐摩耗性能のすべての性能をバランス良く得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<共重合体>
本発明の共重合体は、共役ジエン化合物と極性基含有ビニル化合物とを共重合して得られるものである。また、上記極性基含有ビニル化合物は、重合性不飽和結合と極性基とを有し、かつ該重合性不飽和結合を形成するいずれかの炭素原子と該極性基が結合する炭素原子とが少なくとも1個の炭素原子を介して結合する化合物である。つまり、極性基含有ビニル化合物が下記式(I)の場合は、二重結合(重合性不飽和結合)とX(極性基)とを有し、かつ二重結合を形成する2つの炭素原子のうちのRとCが結合する炭素原子とXが結合する炭素原子とが「−(C(R−」におけるn個のC(少なくとも1個の炭素原子)を介して結合している。更に、共重合体において、上記共役ジエン化合物の二重結合部分のシス含量は、80モル%以上である。
【0019】
上記極性基含有ビニル化合物における重合性不飽和結合、極性基は、それぞれ1個でもよく、2個以上であってもよい。
【0020】
重合性不飽和結合としては特に限定されないが、重合性二重結合が好適である。極性基としては特に限定されず、例えば、−NR(Rは、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。例えば、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基)、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルフィド基、スルホニル基、チオカルボニル基、−Si(OR)(R)3−kで表される基(Rは、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。kは、1、2又は3の整数を表す。)等が挙げられるが、なかでも、水酸基(−OH)、−NR、−Si(OR)(R)3−kで表される基(トリアルコキシシリル基など)が好ましい。この場合、加工性、省燃費性能、グリップ性能、耐摩耗性能のすべての性能がバランス良く得られる。
【0021】
−NR、−Si(OR)(R)3−kで表される基において、R(炭素数1〜8の炭化水素基)としては特に限定されず、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基などのアルキル基などが挙げられる。−Si(OR)(R)3−kで表される基の具体例としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基などが挙げられる。
【0022】
上記極性基含有ビニル化合物としては、例えば、下記一般式(I)で表される化合物が好ましく、なかでも、下記一般式(I−1)及び/又は(I−2)で表される化合物を好適に使用できる。この場合、加工性、省燃費性能、グリップ性能、耐摩耗性能のすべての性能がバランス良く得られる。
【化2】

(式(I)中、Rは、水素、ビニル基又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Rは、水素又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Rは、水素、又は炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族炭化水素基を表す。Xは、水酸基、−NR、又は前記−Si(OR)(R)3−kで表される基を表す。nは、1〜10の整数を表す。前記R、R、R、該Rが結合する炭素原子、該Rが結合する炭素原子は、それぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【0023】
【化3】

(式(I−1)、(I−2)中、R、R、R、X、nは、前記と同様である。)
なお、式(I−1)、(I−2)においても、式(I)と同様、環構造を形成してもよい。
【0024】
式(I)で表される極性基含有ビニル化合物において、共重合の容易さの点から、Rは水素、ビニル基又は炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基が好ましく、Rは水素又は炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基が好ましい。良好な省燃費性能、グリップ性能、耐摩耗性能が得られることから、Rは水素、炭素数1〜4の脂肪族若しくは脂環族炭化水素基が好ましい。R、Rの脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基が挙げられる。Rの脂肪族炭化水素基としては、R、Rで挙げた脂肪族炭化水素基の他に、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。またRの脂環族炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。なお、Rは、置換基を有していてもよい。
【0025】
共重合の容易さの点から、nは2〜10が好ましく、4〜10がより好ましい。nが10を超えると、コストが高くなる傾向がある。なお、nが2以上の整数である場合、式(I)の化合物は、−(C(R)−で表されるユニットを2個以上有しているが、同一ユニット内のR、異なるユニットのRは、それぞれが同一の基であっても、異なる基であってもよい。
【0026】
式(I)で表される極性基含有ビニル化合物としては、例えば、3−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチリデン−ヘキサン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、2−メチル−5−へキセン−1−オール、4−メチリデンヘキサン−2−オール、4−ペンテン−1−オール、4−メチル−4−ペンテン−1−オール、4−メチリデンへキサン−1−オール、5−メチル−5−へキセン−1−オール、5−メチリデンヘプタン−1−オール、5−ヘキセン−4−メチル−1−オール、4,5−ジメチル−5−ヘキセン−1−オール、4−メチル−5−メチリデンヘプタン−1−オール、3,4−ジメチル−5−へキセン−1−オール、3,4,5−トリメチル−5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジメチル−5−メチリデンへプタン−1−オール、2−エチル−5−メチル−5−ヘキセン−1−オール、3−ヒドロキシ−6−メチル−7−オクテン、6−へプテン−1−オール、6−メチル−6−ヘプテン−1−オール、6−メチリデンオクタン−1−オール、7−オクテン−1−オール、7−メチル−7−オクテン−1−オール、7−メチリデンノナン−1−オール、8−ノネン−1−オール、8−メチル−8−ノネン−1−オール、8−メチリデンデカン−1−オール、9−デセン−1−オール、9−メチル−9−デセン−1−オール、9−メチリデンウンデカン−1−オール、10−ウンデセン−1−オール、10−メチル−10−ウンデセン−1−オール、10−メチリデンドデカン−1−オール、7,9,10−トリメチル−10−ウンデセン−1−オール、2−シクロへキシル−5−ヘキセン−1−オール、3−シクロヘキシル−6−へプテン−2−オール、4−ヘキセン−1−オール、5−ヘプテン−1−オール、6−オクテン−1−オール、7−ノネン−1−オール、8−デセン−1−オール、4−メチル−5−ヘプテン−2−オール、5−メチル−6−オクテン−2−オール、6−メチル−7−ノネン−2−オール、3−メチル−4−へキセン−1−オール、4−メチル−5−へプテン−1−オール、5−メチル−6−オクテン−1−オール、6−メチル−7−ノネン−1−オール、7−メチル−8−デセン−1−オール、3−メチル−4−ヘプテン−1−オール、4−メチル−5−オクテン−1−オール、5−メチル−6−ノネン−1−オール、4−ヘプテン−1−オール、5−オクテン−1−オール、6−ノネン−1−オール、5,6−ジメチル−5−ヘプテン−1−オール、(Z)−5−メチル−5−ヘプテン−1−オール、(E)−7−メチル−7−ノネン−2−オールなどが挙げられる。これらの中では、入手の容易性、共重合の容易性又は性能改善などから、3−メチル−3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−へキセン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、9−デセン−1−オール、10−ウンデセン−1−オール、4−ヘキセン−1−オール、4−へプテン−1−オール、5−オクテン−1−オールが好ましい。
【0027】
また、以上で列挙した水酸基含有ビニル化合物の水酸基を−NHに置換した化合物も挙げられ、例えば、1−アミノ−3−ブテン、1−アミノ−3−メチル−3−ブテン、1−アミノ−(3−メチリデン)ヘキサン、2−アミノ−4−ヘキセン、2−アミノ−4−メチル−4−へキセン、2−アミノ−(4−メチリデン)ヘキサン、1−アミノ−4−ペンテン、1−アミノ−4−メチル−4−ペンテン−1−オール、1−アミノ−(4−メチリデン)へキサン、1−アミノ−5−メチル−5−へキセン、1−アミノ−(5−メチリデン)ヘプタン、1−アミノ−4−メチル−5−ヘキセン、1−アミノ−4,5−ジメチル−5−ヘキセン、1−アミノ−4−メチル−(5−メチリデン)ヘプタン、1−アミノ−3,4−ジメチル−5−へキセン、1−アミノ−3,4,5−トリメチル−5−ヘキセン、1−アミノ−3,4−ジメチル−(5−メチリデン)へプタン、1−アミノ−2−エチル−5−メチル−5−ヘキセン、3−アミノ−6−メチル−7−オクテン、1−アミノ−6−へプテン、1−アミノ−6−メチル−6−ヘプテン、1−アミノ−(6−メチリデン)オクタン、1−アミノ−7−オクテン、1−アミノ−7−メチル−7−オクテン、1−アミノ−(7−メチリデン)ノナン、1−アミノ−8−ノネン、1−アミノ−8−メチル−8−ノネン、1−アミノ−(8−メチリデン)デカン、1−アミノ−9−デセン、1−アミノ−9−メチル−9−デセン、1−アミノ−(9−メチリデン)ウンデカン、1−アミノ−10−ウンデセン、1−アミノ−10−メチル−10−ウンデセン、1−アミノ−10−メチリデンドデカン、1−アミノ−7,9,10−トリメチル−10−ウンデセン、1−アミノ−2−シクロへキシル−5−ヘキセン、2−アミノ−3−シクロヘキシル−6−へプテン、1−アミノ−4−ヘキセン、1−アミノ−5−ヘプテン、1−アミノ−6−オクテン、1−アミノ−7−ノネン、1−アミノ−8−デセン、1−アミノ−4−メチル−5−ヘプテン、2−アミノ−5−メチル−6−オクテン、2−アミノ−6−メチル−7−ノネン、1−アミノ−3−メチル−4−へキセン、1−アミノ−4−メチル−5−へプテン、1−アミノ−5−メチル−6−オクテン、1−アミノ−6−メチル−7−ノネン、1−アミノ−7−メチル−8−デセン、1−アミノ−3−メチル−4−ヘプテン、1−アミノ−4−メチル−5−オクテン、1−アミノ−5−メチル−6−ノネン、1−アミノ−4−ヘプテン、1−アミノ−5−オクテン、1−アミノ−6−ノネンなどが挙げられる。
【0028】
更に、上記で列挙した水酸基含有ビニル化合物の水酸基を−NHCHに置換した化合物(1−(N−メチルアミノ)−3−ブテン、1−(N−メチルアミノ)−3−メチル−3−ブテンなど)、−N(CHに置換した化合物(1−(N,N−ジメチルアミノ)−3−ブテン、1−(N,N−ジメチルアミノ)−3−メチル−3−ブテンなど)も挙げられる。
【0029】
また、上記で列挙した水酸基含有ビニル化合物の水酸基を上記−Si(OR)(R)3−kで表される基に置換した化合物も挙げられ、例えば、1−トリエトキシシリル−3−ブテン、1−トリエトキシシリル−3−メチル−3−ブテン、1−トリエトキシシリル−(3−メチリデン)ヘキサン、2−トリエトキシシリル−4−ヘキセン、2−トリエトキシシリル−4−メチル−4−へキセン、2−トリエトキシシリル−(4−メチリデン)ヘキサン、1−トリエトキシシリル−4−ペンテン、1−トリエトキシシリル−4−メチル−4−ペンテン−1−オール、1−トリエトキシシリル−(4−メチリデン)へキサン、1−トリエトキシシリル−5−メチル−5−へキセン、1−トリエトキシシリル−(5−メチリデン)ヘプタン、1−トリエトキシシリル−4−メチル−5−ヘキセン、1−トリエトキシシリル−4,5−ジメチル−5−ヘキセン、1−トリエトキシシリル−4−メチル−(5−メチリデン)ヘプタン、1−トリエトキシシリル−3,4−ジメチル−5−へキセン、1−トリエトキシシリル−3,4,5−トリメチル−5−ヘキセン、1−トリエトキシシリル−3,4−ジメチル−(5−メチリデン)へプタン、1−トリエトキシシリル−2−エチル−5−メチル−5−ヘキセン、3−トリエトキシシリル−6−メチル−7−オクテン、1−トリエトキシシリル−6−へプテン、1−トリエトキシシリル−6−メチル−6−ヘプテン、1−トリエトキシシリル−(6−メチリデン)オクタン、1−トリエトキシシリル−7−オクテン、1−トリエトキシシリル−7−メチル−7−オクテン、1−トリエトキシシリル−(7−メチリデン)ノナン、1−トリエトキシシリル−8−ノネン、1−トリエトキシシリル−8−メチル−8−ノネン、1−トリエトキシシリル−(8−メチリデン)デカン、1−トリエトキシシリル−9−デセン、1−トリエトキシシリル−9−メチル−9−デセン、1−トリエトキシシリル−(9−メチリデン)ウンデカン、1−トリエトキシシリル−10−ウンデセン、1−トリエトキシシリル−10−メチル−10−ウンデセン、1−トリエトキシシリル−10−メチリデンドデカン、1−トリエトキシシリル−7,9,10−トリメチル−10−ウンデセン、1−トリエトキシシリル−2−シクロへキシル−5−ヘキセン、2−トリエトキシシリル−3−シクロヘキシル−6−へプテン、1−トリエトキシシリル−4−ヘキセン、1−トリエトキシシリル−5−ヘプテン、1−トリエトキシシリル−6−オクテン、1−トリエトキシシリル−7−ノネン、1−トリエトキシシリル−8−デセン、1−トリエトキシシリル−4−メチル−5−ヘプテン、2−トリエトキシシリル−5−メチル−6−オクテン、2−トリエトキシシリル−6−メチル−7−ノネン、1−トリエトキシシリル−3−メチル−4−へキセン、1−トリエトキシシリル−4−メチル−5−へプテン、1−トリエトキシシリル−5−メチル−6−オクテン、1−トリエトキシシリル−6−メチル−7−ノネン、1−トリエトキシシリル−7−メチル−8−デセン、1−トリエトキシシリル−3−メチル−4−ヘプテン、1−トリエトキシシリル−4−メチル−5−オクテン、1−トリエトキシシリル−5−メチル−6−ノネン、1−トリエトキシシリル−4−ヘプテン、1−トリエトキシシリル−5−オクテン、1−トリエトキシシリル−6−ノネンなどが挙げられる。更に、上記で列挙したアルコキシシリル化合物のトリエトキシシリル基を、ジエトキシメチルシシリル基に置換した化合物(1−(ジエトキシメチルシリル)−3−ブテン、1−(ジエトキシメチルシリル)−(3−メチリデン)ヘキサンなど)、エトキシジメチルシリル基に置換した化合物(1−(エトキシジメチルシリル)−3−メチル−3−ブテン、2−(エトキシジメチルシリル)−4−ヘキセンなど)、メトキシジメチルシリル基に置換した化合物(2−メトキシジメチルシリル−4−メチル−4−へキセン、1−メトキシジメチルシリル−4−ペンテンなど)なども挙げられる。
上記極性基含有ビニル化合物は単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0030】
本発明で使用できる共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらの中で、モノマーの入手容易性などの実用面の観点から1,3−ブタジエン、イソプレンを用いることが好ましい。共役ジエン化合物は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
本発明の共重合体は、上記式(I)で表される極性基含有ビニル化合物を、上記共役ジエン化合物と共重合させることにより製造できる。重合方法については特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、特に重合体の設計の自由度、加工性等の観点から溶液重合法が好ましい。
【0032】
溶液重合法を用いた場合には、溶媒中のモノマー濃度は、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。溶液中のモノマー濃度が3質量%未満では、得られる重合体の量が少なく、コストが高くなる傾向がある。また、溶媒中のモノマー濃度は20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。溶媒中のモノマー濃度が20質量%を超えると、溶液粘度が高くなりすぎて攪拌が困難となり、重合しにくくなる傾向がある。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。
【0033】
溶液重合法において、触媒の種類は特に規定しないが、ランタニド(Nd等)、Ti、Co、Ni含有化合物等の遷移金属含有化合物を触媒として使用できる。また、Al、B含有化合物を助触媒として使用できる。
【0034】
ランタニド含有化合物(Nd含有化合物など)としては、原子番号57〜71の元素を含むものであれば特に限定されず、例えば、カルボン酸塩、β−ジケトン錯体、アルコキサイド、リン酸塩又は亜リン酸塩、ハロゲン化物などが挙げられるが、取り扱いの容易性、タイヤ性能の改善の点から、カルボン酸塩、アルコキサイド、β−ジケトン錯体が好ましい。Ti含有化合物としては、例えば、シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換シクロペンタジエニル基又は置換インデニル基を1つを含み、かつハロゲン、アルコキシル基、アルキル基の中から選ばれる置換基を3つ有する化合物などが挙げられ、触媒性能やタイヤ性能の改善の点から、アルコキシシリル基を1つ有する化合物が好ましい。Co含有化合物としては、例えば、ハロゲン化物、カルボン酸塩、β−ジケトン錯体、有機塩基錯体、有機ホスフィン錯体などが挙げられる。Ni含有化合物としては、例えば、ハロゲン化物、カルボン酸塩、β−ジケトン錯体、有機塩基錯体などが挙げられるが、特に限定しない。
【0035】
助触媒として用いるAl含有化合物としては、例えば、有機アルミノキサン類、ハロゲン化有機アルミニウム化合物、有機アルミニウム化合物、水素化有機アルミニウム化合物などであれば特に限定されないが、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、プロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、オクチルアルミノキサン、へキシルアルミノキサン、クロロアルミノキサン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライドが好ましく、これらは混合物で用いても良い。また、B含有化合物としては、例えば、テトラフェニルボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート等のアニオン種を含む化合物が挙げられる。
【0036】
本発明の共重合体の調製では、上記極性基含有ビニル化合物の中でプロトン性を有する化合物を用いる場合は、重合反応の阻害を防ぐため、該化合物を予め不活性化させた後に共重合させることが好ましい。不活性化の方法は特に限定されないが、例えば、式(I)で表される極性基含有ビニル化合物と共役ジエン系化合物との共重合反応を行う前に予め、式(I)で表される極性基含有ビニル化合物と下記一般式(II);
M(R (II)
(式(II)中、Mは、アルミニウム、ホウ素、ケイ素又はチタンを表す。Rは、炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族炭化水素基、炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族アルコキシ基、又はハロゲン類を表し、同一であっても異なっていてもよい。mは、3又は4の整数を表す。)
で表される化合物とを反応させることが挙げられる。これにより、重合反応の阻害要因の1つである極性基含有ビニル化合物の水酸基等の極性基が不活性化され、該反応により得られた反応生成物と上記共役ジエン化合物とを共重合することで、目的とする共重合体を良好に製造できる。
【0037】
の炭素数は1〜6が好ましい。Rの脂肪族若しくは脂環族炭化水素基としては、例えば、上記Rと同様の基を挙げることができ、脂肪族若しくは脂環族アルコキシ基としては、該脂肪族若しくは脂環族炭化水素基に対応するアルコキシ基が挙げられる。また、Rのハロゲン類としては、塩素、臭素、フッ素等が挙げられる。
【0038】
上記一般式(II)で表される化合物としては、下記一般式(III)、(IV)で表される有機金属化合物を好適に使用できる。
【化4】

(式(III)、(IV)中、Rは、炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Rは、炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族炭化水素基、又は炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族アルコキシ基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Mは、ケイ素又はチタンを表す。)
、Rの炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族炭化水素基としては、例えば、上記Rと同様の基を挙げることができる。Rの炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族アルコキシ基としては、該脂肪族若しくは脂環族炭化水素基に対応するアルコキシ基が挙げられる。
【0039】
式(III)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリドなどが挙げられる。式(IV)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、エトキシトリエチルシラン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタンなどが挙げられる。
【0040】
上記極性基含有ビニル化合物と上記一般式(II)で表される化合物との反応に使用する容器は特に限定されないが、少なくとも窒素ガスやアルゴンなどの不活性ガス中で行うことが好ましい。
【0041】
前記触媒を重合開始剤として用い、共重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば、脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、式(I)及び式(II)の反応生成物と、共役ジエン化合物とを、前記ランタニド、Ti、Co、Ni含有化合物を触媒、前記Al、B含有化合物を助触媒として用いて共重合することにより、目的の重合体を得ることができる。
【0042】
前記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましく、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
本発明においては、共重合反応後に必要に応じて、シリカとの親和性を少しでも高める目的で公知の末端変性剤を用いて変性を加えることができる。変性とは、前記共重合体の活性な末端部位と前記変性剤が反応して末端変性されることである。末端変性すると、シリカ上にある水酸基などの特性基との親和性が向上するため、シリカの分散性が良くなり、省燃費性能、グリップ性能、耐摩耗性能等が向上する傾向がある。
【0044】
変性剤としては特に限定されず、例えば、ケイ素化合物では、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールなどが挙げられる。
【0045】
本発明においては、この反応後に、必要に応じて、公知の老化防止剤や重合反応を停止する目的でアルコールなどを加えることができる。重合反応後にアルコールを加えることで、上記極性基含有ビニル化合物の水酸基などの極性基に結合していた式(II)で表される化合物が脱離し極性基が生成するため、シリカとの親和性がより高まる。
【0046】
本発明の共重合体における極性基含有ビニル化合物の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。また、該含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。0.05質量%未満では、耐摩耗性能、省燃費性能、グリップ性能の改善効果が得られにくく、一方、40質量%を超えると反応時間が増加し、高コストになってしまう傾向がある。
なお、本発明において、極性基含有ビニル化合物の含有量は、後述の実施例の方法により測定される。
【0047】
本発明の共重合体は、該共重合体における上記共役ジエン化合物の二重結合部分のシス含量(共重合体における共役ジエン化合物ユニット中の二重結合のシス含量)が80モル%以上であり、好ましくは90モル%以上である。80モル%未満であると、柔軟性や耐摩耗性能が悪くなる傾向がある。
なお、本発明において、シス成分量(シス含量)は、後述の実施例の測定方法により得られる値である。
【0048】
本発明の共重合体中に含まれる共役ジエン化合物100モル%中の1,3−ブタジエンの含有量は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは100モル%である。90モル%未満であると、充分な耐摩耗性能が得られないおそれがある。
【0049】
本発明の共重合体は、マルチモーダルな分子量分布を有する。本発明において、マルチモーダルな分子量分布とは、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定により得られる分子量分布曲線において、極大のピーク(ピークトップ)が複数存在することを意味する。このピークは、2以上存在すればよく、好ましいピークの数は2〜4である。モノモーダルな分子量分布の場合には、加工性と、耐摩耗性能、省燃費性能、グリップ性能とのバランスがよくないが、マルチモーダルな分子量分布の場合には、加工性と、耐摩耗性能、省燃費性能、グリップ性能とがバランスよく得られる。なお、本発明において、GPC測定により得られる分子量分布曲線は、後述の実施例の方法により測定される。また、本発明におけるピークは、その一部が他のピークと重なっていてもよい。また、本発明におけるピークの高さは、特に限定されない。
【0050】
本発明の共重合体は、分子量分布において、少なくとも、以下の低分子量側成分と、高分子量側成分とを有する。
【0051】
低分子量側成分のピークトップ分子量(低分子量側成分のピークトップに相当する標準ポリスチレン換算の分子量)は、5000以上、好ましくは10000以上、より好ましくは50000以上である。5000未満であると、加工性、省燃費性、耐摩耗性が低下するおそれがある。また、該ピークトップ分子量は、200000以下、好ましくは180000以下、より好ましくは150000以下である。200000を超えると、加工性が低下するおそれがある。
【0052】
高分子量側成分のピークトップ分子量(高分子量側成分のピークトップに相当する標準ポリスチレン換算の分子量)は、200000以上、好ましくは300000以上、より好ましくは400000以上である。200000未満であると、省燃費性、耐摩耗性が低下するおそれがある。また、該ピークトップ分子量は、2000000以下、好ましくは1000000以下、より好ましくは800000以下である。2000000を超えると、フィラーの分散が困難となり、耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0053】
マルチモーダルな分子量分布を有する本発明の共重合体の製造方法としては、特に限定されず、例えば、分子量分布が異なる複数の共重合体を混合することにより、本発明の共重合体が得られる。具体的には、少なくとも2種類の重量平均分子量の共重合体(混合後に低分子量側成分となる共重合体、混合後に高分子量側成分となる共重合体)を混合して得ることが好ましい。分子量分布が異なる共重合体については、上述の溶液重合法により共重合体の製造を行う際に、触媒の種類や量、モノマーの量等を変えることにより、任意の分子量分布の共重合体が得られる。当業者であれば、任意の分子量分布の共重合体を得るための条件の設定を容易に行うことができる。
【0054】
混合後に低分子量側成分となる共重合体の重量平均分子量は、好ましくは5.0×10以上、より好ましくは10000以上である。該重量平均分子量は、好ましくは2.0×10以下、より好ましくは100000以下である。重量平均分子量が上記範囲内の場合には、加工性とグリップ性能がバランスよく得られる傾向がある。
【0055】
混合後に高分子量側成分となる共重合体の重量平均分子量は、好ましくは2.0×10以上、より好ましくは400000以上である。該重量平均分子量は、好ましくは2.0×10以下、より好ましくは1000000以下である。重量平均分子量が上記範囲内の場合には、耐摩耗性能と省燃費性能がバランスよく得られる傾向がある。
なお、本発明において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、後述の実施例の方法により測定される。
【0056】
マルチモーダルな分子量分布を有する本発明の共重合体の製造方法としては、上記方法以外にも、例えば、特開2004−262958号公報に記載の方法により製造できる。
【0057】
本発明の共重合体100質量%中の低分子量側成分の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。5質量%未満であると、加工性が低下するおそれがある。上記低分子量側成分の含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。50質量%を超えると、加工性、省燃費性、耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0058】
本発明の共重合体100質量%中の高分子量側成分の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。50質量%未満であると、省燃費性、耐摩耗性が低下するおそれがある。上記高分子量側成分の含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。95質量%を超えると、加工性が低下するおそれがある。
【0059】
<ゴム組成物>
本発明は、ジエン系ゴム成分と、上記共重合体と、シリカとを含む。前述の製法等により、ブタジエン等の共役ジエン系化合物と極性基含有ビニル化合物との共重合体を調製し、それにより調製された主鎖部に極性基を有する高シス含量ジエン系ゴムをゴム組成物に使用すると、耐摩耗性能及びシリカの分散性を従来に比べて向上させることができ、その結果、加工性の悪化を招くことなく、省燃費性能、グリップ性能、耐摩耗性能のすべての性能をバランス良く得ることができる。よって、これらの性能に優れた空気入りタイヤが好適に得られる。
【0060】
本発明で使用するジエン系ゴム成分は、特に限定されないが、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)などが挙げられる。なかでも、グリップ性能、及び耐摩耗性能がバランスよく得られることから、NR、BR、SBRが好ましい。これらのゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0061】
上述の共重合体の含有量は、全ゴム成分(上記ジエン系ゴム成分、共重合体を含むゴム成分の全量)100質量%中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。5質量%未満であると、耐摩耗性能と省燃費性能の改善効果が得られにくくなる傾向がある。上限は特に限定されないが、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が特に好ましい。80質量%を超えると、破壊強度が悪化する傾向がある。
【0062】
本発明で使用するシリカは、チッ素吸着比表面積(NSA)が好ましくは50m/g以上、より好ましくは80m/g以上である。また、該NSAは、好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/gである。チッ素吸着比表面積が50m/g未満のシリカでは補強効果が小さく耐摩耗性能が低下する傾向があり、300m/gを超えるシリカでは分散性が悪く、ヒステリシスロスが増大し省燃費性能が低下する傾向がある。
なお、シリカのチッ素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0063】
シリカの配合量は、全ゴム成分100質量部に対して、5〜150質量部が好ましく、下限は10質量部がより好ましく、15質量部がさらに好ましい。上限は100質量部がより好ましい。シリカの配合量が5質量部未満であると省燃費性能、グリップ性能が十分でない傾向があり、一方、シリカの配合量が150質量部を超えると、加工性が悪化する傾向がある。シリカは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
本発明では、シリカとともにシランカップリング剤を併用しても良い。シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾ−ルテトラスルフィドなどがあげられる。なかでも、補強性改善効果などの点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド及び3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドが好ましい。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
シランカップリング剤の配合量は、前記シリカ100質量部に対して1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。1質量部未満では、未加硫ゴム組成物の粘度が高く加工性が悪くなる傾向がある。また、該配合量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。20質量部を超えると、その配合量ほどのシランカップリング剤の配合効果が得られず、コストが高くなる傾向がある。
【0066】
本発明では、補強材としてカーボンブラックを含有することが好ましい。カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、80〜280m/gが好ましく、下限は100m/g、上限は250m/gであることがより好ましい。カーボンブラックのNSAが80m/g未満では十分なウェットグリップ性能が得られず、また耐摩耗性能が低下する傾向がある。一方、280m/gを超えると、分散性に劣り、耐摩耗性能が低下する傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
【0067】
カーボンブラックの含有量は、全ゴム成分100質量部に対して5〜150質量部が好ましく、下限は10質量部、上限は100質量部がより好ましい。カーボンブラックの含有量が5質量部未満では、耐摩耗性能が低下する傾向がある。一方、150質量部を超えると、加工性が悪化する傾向がある。カーボンブラックは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
本発明のゴム組成物には、その他の補強剤、加硫剤、加硫促進剤、各種オイル、老化防止剤、軟化剤、可塑剤などのタイヤ用又は一般のゴム組成物用に配合される各種配合剤及び添加剤を配合できる。また、これらの配合剤、添加剤の含有量も一般的な量とすることができる。
【0069】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫(架橋)する方法等により製造できる。
【0070】
<空気入りタイヤ>
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。すなわち、必要に応じて前記各種薬品を配合したゴム組成物を未加硫の段階でタイヤの各部材(トレッド等)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを得る。このようにして得られた本発明の空気入りタイヤは、加工性の悪化を招くことなく、省燃費性能、グリップ性能、耐摩耗性能を両立させることができる。
【実施例】
【0071】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下に、モノマー溶液(1)の合成、重合体(1)〜(8)の合成、触媒溶液の合成で用いた各種薬品について説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
シクロヘキサン:関東化学(株)製の無水シクロヘキサン
イソプロパノール:関東化学(株)製のイソプロパノール
9−デセン−1−オール:関東化学(株)製の9−デセン−1−オール
エチルヘキサン酸ネオジム:和光純薬工業(株)製のエチルヘキサン酸ネオジム
トリイソブチルアルミニウム:東ソー・ファインケム(株)製のトリイソブチルアルミ/へキサン溶液
塩化ジエチルアルミニウム:東ソー・ファインケム(株)製の塩化ジエチルアルミニウム/へキサン溶液
水素化イソジブチルアルミニウム:東ソー・ファインケム(株)製の水素化イソジブチルアルミニウム/ヘキサン溶液
ブタジエン:高千穂化学工業(株)製の1,3−ブタジエン
PMAO(ポリメチルアルミノシロキサン):東ソー・ファインケム(株)製PMAO
2,6−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT):関東化学(株)製の2,6−tert−ブチル−p−クレゾール
【0072】
(分子量分布曲線、重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnの測定)
Mw、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製のHLC−8220GPC、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)を用い、標準ポリスチレンより換算した値である。また、分子量分布曲線は、同様の測定条件により得られる曲線である。
【0073】
(重合体中の極性基含有ビニル化合物量及びブタジエンユニット中のシス含量の測定)
重合体中の極性基含有ビニル化合物の量及びブタジエンユニット中の二重結合のシス含量は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズのNMR装置を用いて測定した。測定は、合成した重合体を1gずつ15mlのトルエンに溶解させ、それぞれ30mlのメタノール中にゆっくり注ぎ込んで精製後、乾燥させて精製したものについて行った。
【0074】
製造例1(モノマー溶液(1)の合成)
200ccガラス製容器を窒素置換し、シクロへキサン50mlと9−デセン−1−オールを150mmol入れ、攪拌した。更に室温下1M−トリイソブチルアルミ/へキサン溶液を170ml滴下し、滴下終了後室温で30分間攪拌した。得られた溶液は、遮光下窒素雰囲気を保ったまま冷蔵庫に保管した。
【0075】
製造例2(触媒溶液(1)の合成)
50mlガラス容器を窒素置換し、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(3.5mol/L)4ml、エチルヘキサン酸ネオジム/ヘキサン溶液(0.2mol/L)1ml、PMAO(Al:6.8質量%)を8ml加え攪拌を行った。5分後1M−水素化イソジブチルアルミニウム/ヘキサン溶液を5ml加え、さらに5分後、1M−塩化ジエチルアルミニウム/ヘキサン溶液を2ml加え、触媒溶液(1)を得た。
【0076】
製造例3(重合体(1)の合成)
3Lの耐圧ステンレス容器を窒素置換し、シクロヘキサンを1800ml、ブタジエンを75g、トリイソブチルアルミ/ヘキサン溶液を1ml入れ攪拌した。10分後、触媒溶液(1)を2ml添加し、40℃を保ったまま攪拌を行った。3時間後、0.01M−BHTイソプロパノール溶液を10ml滴下し、反応を終了させた。
反応溶液を、同容量のメタノール中に展開することで沈殿物を得た。沈殿物を1晩風乾後さらに2日間減圧乾燥を行い、重合体(1)約75gを得た。重合体(1)の重量平均分子量は3.5×10、Mw/Mn=2.5であった。
【0077】
製造例4(重合体(2)の合成)
3Lの耐圧ステンレス容器を窒素置換し、シクロヘキサンを1800ml、ブタジエンを75g、モノマー溶液(1)として9−デセン−1−オールを5.9mmol、トリイソブチルアルミ/ヘキサン溶液を1ml入れ攪拌した。10分後、触媒溶液(1)を2ml添加し、40℃を保ったまま攪拌を行った。3時間後、0.01M−BHTイソプロパノール溶液を10ml滴下し、反応を終了させた。
反応溶液を、同容量のメタノール中に展開することで沈殿物を得た。沈殿物を1晩風乾後さらに2日間減圧乾燥を行い、重合体(2)約75gを得た。重合体(2)の重量平均分子量は3.4×10、Mw/Mn=2.7であった。
【0078】
製造例5(重合体(3)の合成)
3Lの耐圧ステンレス容器を窒素置換し、シクロヘキサンを1800ml、ブタジエンを75g、モノマー溶液(1)として9−デセン−1−オールを5.9mmol、トリイソブチルアルミ/ヘキサン溶液を1ml入れ攪拌した。10分後、触媒溶液(1)を4ml添加し、40℃を保ったまま攪拌を行った。3時間後、0.01M−BHTイソプロパノール溶液を10ml滴下し、反応を終了させた。
反応溶液を、同容量のメタノール中に展開することで沈殿物を得た。沈殿物を1晩風乾後さらに2日間減圧乾燥を行い、重合体(3)約75gを得た。重合体(3)の重量平均分子量は1.5×10、Mw/Mn=3.1であった。
【0079】
製造例6(重合体(4)の合成)
3Lの耐圧ステンレス容器を窒素置換し、シクロヘキサンを1800ml、ブタジエンを75g、モノマー溶液(1)として9−デセン−1−オールを5.9mmol、トリイソブチルアルミ/ヘキサン溶液を1ml入れ攪拌した。10分後、触媒溶液(1)を1ml添加し、40℃を保ったまま攪拌を行った。3時間後、0.01M−BHTイソプロパノール溶液を10ml滴下し、反応を終了させた。
反応溶液を、同容量のメタノール中に展開することで沈殿物を得た。沈殿物を1晩風乾後さらに2日間減圧乾燥を行い、重合体(4)約75gを得た。重合体(4)の重量平均分子量は6.3×10、Mw/Mn=2.4であった。
【0080】
製造例7(重合体(5)の合成)
0.01M−BHTイソプロパノール溶液で反応を停止させた重合反応終了後の重合体(2)と重合体(3)を溶液の状態で表2の質量混合比(75:25)に従い、攪拌混合し、重合体(1)と同様の手法で乾燥させて重合体(5)を得た。分子量分布曲線の測定により、重合体(5)のピークトップ分子量(ピークトップに相当する標準ポリスチレン換算の分子量)は、1.8×10、3.4×10であった。
【0081】
製造例8(重合体(6)の合成)
0.01M−BHTイソプロパノール溶液で反応を停止させた重合反応終了後の重合体(2)と重合体(4)を溶液の状態で表2の質量混合比(50:50)に従い、攪拌混合し、重合体(1)と同様の手法で乾燥させて重合体(6)を得た。分子量分布曲線の測定により、重合体(6)のピークトップ分子量(ピークトップに相当する標準ポリスチレン換算の分子量)は、5.1×10であった。
【0082】
製造例9(重合体(7)の合成)
0.01M−BHTイソプロパノール溶液で反応を停止させた重合反応終了後の重合体(3)と重合体(4)を溶液の状態で表2の質量混合比(25:75)に従い、攪拌混合し、重合体(1)と同様の手法で乾燥させて重合体(7)を得た。分子量分布曲線の測定により、重合体(7)のピークトップ分子量(ピークトップに相当する標準ポリスチレン換算の分子量)は、1.7×10、6.2×10であった。
【0083】
製造例10(重合体(8)の合成)
0.01M−BHTイソプロパノール溶液で反応を停止させた重合反応終了後の重合体(2)と重合体(3)と重合体(4)を溶液の状態で表2の質量混合比(20:20:60)に従い、攪拌混合し、重合体(1)と同様の手法で乾燥させて重合体(8)を得た。分子量分布曲線の測定により、重合体(8)のピークトップ分子量(ピークトップに相当する標準ポリスチレン換算の分子量)は、1.9×10、5.8×10であった。
【0084】
重合体(1)〜(4)のそれぞれについてH−NMR測定を行った結果(極性基含有ビニル化合物量、シス含量)を表1に示した。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
実施例1〜3及び比較例1〜5
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
NR:天然ゴム(TSR 20)
重合体:上記製造例で調製
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(チッ素吸着比表面積(NSA):125m/g)
シリカ:テグッサ社製のウルトラシルVN3(チッ素吸着比表面積(N2SA):175m/g)
シランカップリング剤:テグッサ社製のSi75
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
オイル:出光興産(株)製のミネラルオイルPW−380
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0088】
表3に示す配合処方にしたがって、混練り配合し、各種未加硫ゴム組成物を得た。これらの配合物を170℃で20分間プレス加硫して加硫ゴム組成物を得て、これらについて以下に示す試験方法により加工性、省燃費性能、耐摩耗性能及びグリップ性能を評価した。
【0089】
(加工性)
JIS K6300に準じて、130℃で未加硫ゴム組成物のムーニー粘度を測定した。測定結果を、比較例1を100とした指数で示した。指数が大きいほど粘度が低く、加工が容易であることを示す。
【0090】
(省燃費性能・グリップ性能)
ティ・エス・インスツルメント(株)製の粘弾性測定試験機を用いて、温度50℃、周波数10Hz、振幅1%におけるtanδを比較例1を100とした指数で示した。指数が大きいほどtanδが低く、省燃費性能に優れる。
同様に、温度0℃、周波数1Hz、振幅0.1%における弾性率(G*)を比較例1を100とした指数で示した。指数が大きいほどG*が低く、グリップ性能が良好である。
【0091】
(LAT摩耗試験)
LAT試験機(Laboratory Abration and Skid Tester)を用い、荷重50N、速度20km/h、スリップアングル5°の条件にて、各加硫ゴム組成物の容積損失量を測定した。比較例1の容積損失量を100とした指数で示した。指数が大きいほど耐摩耗性能に優れている。
【0092】
【表3】

【0093】
表3に示すように、特定の分子量範囲にピークトップを有するマルチモーダルな分子量分布を有する重合体を含む実施例は、加工性、省燃費性能、グリップ性能、耐摩耗性能をバランス良く得られた。一方、マルチモーダルな分子量分布を有さない比較例1〜4及びマルチモーダルな分子量分布を有するものの特定の分子量範囲にピークトップを有さない比較例5は、加工性、省燃費性能、グリップ性能、耐摩耗性能をバランス良く得ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン化合物と極性基含有ビニル化合物とを共重合して得られる共重合体であって、
前記極性基含有ビニル化合物は、重合性不飽和結合と極性基とを有し、かつ該重合性不飽和結合を形成するいずれかの炭素原子と該極性基が結合する炭素原子とが少なくとも1個の炭素原子を介して結合する化合物であり、
前記共役ジエン化合物の二重結合部分のシス含量は、80モル%以上であり、
少なくとも分子量5.0×10〜2.0×10と、2.0×10〜2.0×10とにピークトップを有するマルチモーダルな分子量分布を有する共重合体。
【請求項2】
前記極性基は、水酸基、−NR、又は−Si(OR)(R)3−kで表される基である請求項1記載の共重合体。
(但し、Rは、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。kは、1、2又は3の整数を表す。)
【請求項3】
前記極性基含有ビニル化合物は、下記一般式(I);
【化1】

(式(I)中、Rは、水素、ビニル基又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Rは、水素又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Rは、水素、又は炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族炭化水素基を表す。Xは、水酸基、−NR、又は前記−Si(OR)(R)3−kで表される基を表す。nは、1〜10の整数を表す。前記R、R、R、該Rが結合する炭素原子、該Rが結合する炭素原子は、それぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。)
である請求項1又は2記載の共重合体。
【請求項4】
重量平均分子量が5.0×10〜2.0×10の共重合体と、重量平均分子量が2.0×10〜2.0×10の共重合体とを混合して得られる請求項1〜3のいずれかに記載の共重合体。
【請求項5】
触媒として遷移金属含有化合物を使用し、前記共役ジエン化合物と前記極性基含有ビニル化合物とを共重合して得られる活性末端を有する共重合体に、更に前記極性基含有ビニル化合物を該活性末端に反応させて得られる請求項1〜4のいずれかに記載の共重合体。
【請求項6】
前記極性基含有ビニル化合物の含有量が0.05〜40質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の共重合体。
【請求項7】
前記共役ジエン化合物が1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンである請求項1〜6のいずれかに記載の共重合体。
【請求項8】
前記共重合体中に含まれる前記共役ジエン化合物100モル%中の1,3−ブタジエンの含有量が95モル%以上である請求項1〜7のいずれかに記載の共重合体。
【請求項9】
共重合を行う前に、前記極性基含有ビニル化合物と下記一般式(II);
M(R (II)
(式(II)中、Mは、アルミニウム、ホウ素、ケイ素又はチタンを表す。Rは、炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族炭化水素基、炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族アルコキシ基、又はハロゲン類を表し、同一であっても異なっていてもよい。mは、3又は4の整数を表す。)
で表される化合物とを反応させ、次いで、得られた反応生成物と前記共役ジエン化合物とを共重合することにより得られる請求項1〜8のいずれかに記載の共重合体。
【請求項10】
触媒としてランタニド、Ti、Co又はNi含有化合物、助触媒としてAl又はB含有化合物を使用して共重合することにより得られる請求項1〜9のいずれかに記載の共重合体。
【請求項11】
ジエン系ゴム成分と、請求項1〜10のいずれかに記載の共重合体と、シリカとを含むゴム組成物。
【請求項12】
前記シリカの含有量が全ゴム成分100質量部に対して5〜150質量部であり、かつ前記共重合体の含有量が全ゴム成分100質量%中、5〜90質量%である請求項11記載のゴム組成物。
【請求項13】
請求項11又は12記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2011−38009(P2011−38009A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187443(P2009−187443)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】