説明

共重合体、該共重合体を含有する水性塗料組成物及び複層塗膜形成方法

【課題】本発明が解決すべき課題は、粘度の発現性が高く、かつせん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する共重合体を提供すること、特に、界面活性剤を含有する水性塗料中で、粘度を発現し、かつせん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する共重合体を提供することである。
【解決手段】本発明は、(m−1)炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)を5〜100質量%含有するモノマー成分(I)を重合することにより得られる1,000〜10,000の範囲内の数平均分子量を有する重合体鎖からなる基本骨格を有し、かつ重合性不飽和基を有するマクロモノマー及び(m−2)親水基を有する重合性不飽和モノマーを含有するモノマー成分(m)を共重合することにより得られる共重合体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体及び該共重合体よりなる粘性調整剤に関する。さらに詳しくは、塗料用添加剤、特に界面活性剤を含有する水性塗料組成物において粘度を発現し得る粘性調整剤として、好適に使用できる共重合体に関する。また、本発明は、該共重合体を含有する水性塗料組成物及び該水性塗料組成物を用いた複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の優れた外観が要求される被塗物に対する塗装は、形成される塗膜の外観や生産効率等の観点から、一般に、塗料を微粒化して塗装する方法が用いられる。このような塗装方法としては、具体的には、例えば、スプレー塗装、回転霧化塗装等が挙げられる。
【0003】
塗料を微粒化して塗装する場合、使用される塗料は、一般に、スプレー時、回転霧化時等の塗料微粒化時には、その粘度が低く、より小さな塗料粒子が形成されることが、平滑性に優れた塗膜が形成されるため、好ましい。また、一方で、塗料が被塗物に塗着した後は、塗料粘度が高いことが、上層に塗装される塗料との混層が起こりにくく、鮮映性に優れた塗膜が形成されるため、好ましい。また、上記塗料がアルミニウム顔料等の光輝性顔料を含有する場合、該塗料が被塗物に塗着した後の塗料粘度が高いと、塗料中の光輝性顔料が動きにくくなるため、光輝性に優れた塗膜を形成することができる。なお、光輝性に優れた塗膜とは、一般に、角度を変えて塗膜を観察した際に、観察の角度による明度の変化が顕著であり、さらに、光輝性顔料が塗膜中に比較的均一に存在して、メタリックムラがほとんど見られない塗膜をいう。また、上記のように、観察の角度による明度の変化が顕著であることは、一般に、フリップフロップ性が高いといわれる。
【0004】
上記のような理由から、前記塗料は、微粒化時のようにせん断速度が大きい時は粘度が低く、塗着時のようにせん断速度が小さい時は粘度が高い塗料であることが、優れた外観を有する塗膜を形成することができるため、好ましい。すなわち、せん断速度の増加と共に粘度が低下する塗料であることが好適である。
【0005】
このようにせん断速度の増加と共に粘度が低下する塗料を作製するための手段としては、塗料中に会合型増粘剤を配合する方法が挙げられる。該会合型増粘剤は、一般に、1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、該疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着したり、該疎水性部分同士が会合したりすることにより、網状構造を形成し、効果的に増粘作用を示す増粘剤である。
【0006】
上記会合型増粘剤は、通常、疎水性相互作用によって網状構造を形成し、粘度を発現する。一方で、該疎水性相互作用は、結合力が比較的弱いため、大きなせん断力が加わった場合、上記網状構造が崩れ、粘度が低下する。このため、上記会合型増粘剤を含有する塗料は、せん断速度の増加と共に粘度が低下する粘性特性を有する。
【0007】
ところで、最近は、有機溶剤の揮散による環境汚染を抑制する観点から、水性塗料の開発が進められている。
【0008】
上記水性塗料は、一般に、疎水性の樹脂成分を水中に分散させるため、界面活性剤を含有する場合がある。
【0009】
しかしながら、上記界面活性剤を含有する水性塗料において、前記会合型増粘剤を使用する場合、該会合型増粘剤による粘度が発現しにくくなり、形成される塗膜の鮮映性や光輝性が低下する場合があり、課題とされていた。具体的には、該水性塗料が被塗物に塗着した時の粘度が低いため、上層に塗装される塗料との間に混層が生じて、形成される塗膜の鮮映性が低下したり、該水性塗料が光輝性顔料を含有する場合に、塗料が塗着した後に塗料中の光輝性顔料が動き、該光輝性顔料の配向が不規則になって、フリップフロップ性が低下したり、メタリックムラが発生したりする場合があった。一方で、該水性塗料中の前記会合型増粘剤の含有量を増やすことにより、塗着した時の粘度を高くする場合は、せん断速度が大きい時の粘度も高くなり、塗料を微粒化した時の塗料粒子が大きくなるため、形成される塗膜の平滑性が劣る場合があった。
【0010】
例えば、特許文献1には、親水性ポリマーを疎水化修飾して得られる、及び/又は、疎水性ポリマーを親水化修飾して得られる、疎水性部分と親水性部分とを備える粘性制御剤は、水性分散体の粘度の濃度依存性を低減することができ、さらに、該粘性制御剤を用いた水性塗料は、塗装条件、特に温湿度条件の変動にかかわらず、安定したフロー性を発揮し、安定的に良好な仕上がりの塗膜が得られることが記載されている。しかしながら、該粘性制御剤は、粘度の発現が不十分な場合があった。特に、該粘性制御剤を、界面活性剤を含有する塗料中で使用した場合、十分な粘度が得られず、形成される塗膜の鮮映性及びフリップフロップ性が低下したり、メタリックムラが発生したりする場合があった。
【0011】
また、特許文献2には、少なくとも2個のアミノ基を分子の末端に有するポリエチレングリコール化合物に、アミノ基1個当たりアルケニルこはく酸無水物ないしアルキルこはく酸無水物が1分子付加した会合型増粘剤が、該会合型増粘剤の添加量の変動により粘度が大きく変動することがなく、溶液調整の作業性を向上させ、製品の品質管理を容易にするため、ラテックスや水性塗料の増粘剤として優れていることが記載されている。しかしながら、該会合型増粘剤は、粘度の発現が不十分な場合があった。特に、該会合型増粘剤を、界面活性剤を含有する塗料中で使用した場合、十分な粘度が得られず、形成される塗膜の鮮映性及びフリップフロップ性が低下したり、メタリックムラが発生したりする場合があった。
【0012】
また、特許文献3には、特定の構造を有するエマルション樹脂(A)、特定の粘性調整剤(B)及び疎水性溶媒(C)を含有する水性塗料組成物が、メタリックムラが少なく、フリップフロップ性及び平滑性に優れた塗膜を形成し得ることが記載されている。しかしながら、該水性塗料組成物を用いた場合においても、形成される塗膜の鮮映性及び光輝性が不十分だったり、耐水性が不十分だったりする場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−1662号公報
【特許文献2】特開平9−272796号公報
【特許文献3】WO2007/126134号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、粘度の発現性が高く、かつせん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する共重合体を提供すること、特に、界面活性剤を含有する水性塗料中においても、粘度を発現し、かつせん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する共重合体を提供することである。また、本発明の他の目的は、上記共重合体を含有し、優れた鮮映性を有する塗膜を形成できる塗料を提供することである。また、上記共重合体及び光輝性顔料を含有し、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた光輝性を有する塗膜を形成できる塗料を提供することである。また、上記塗料を使用した塗膜形成方法及び該塗料が塗装された物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、今回、主鎖及び側鎖を有するグラフトポリマー構造を有し、該主鎖が親水基を有する重合性不飽和モノマーを含有するモノマー成分を重合することにより得られ、かつ該側鎖が、特定の重合性不飽和モノマーを含有するモノマー成分を重合することにより得られる比較的高分子量の重合体を含む共重合体が、粘度の発現性が高く、かつせん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有することを見出した。特に、該共重合体は、界面活性剤を含有する水性塗料中においても、粘度を発現し、かつせん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する。
【0016】
すなわち、本発明は、以下の共重合体及び該共重合体よりなる粘性調整剤、該共重合体を含有する水性塗料、該水性塗料を使用した塗膜形成方法ならびに該水性塗料が塗装された物品を提供するものである。
【0017】
項1.(m−1)炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)を5〜100質量%含有するモノマー成分(I)を重合することにより得られる1,000〜10,000の範囲内の数平均分子量を有する重合体鎖からなる基本骨格を有し、かつ重合性不飽和基を有するマクロモノマー及び
(m−2)親水基を有する重合性不飽和モノマー
を含有するモノマー成分(m)を共重合することにより得られる共重合体。
【0018】
項2.(m−2)成分が、N−置換(メタ)アクリルアミド、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー及びN−ビニル−2−ピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種のノニオン性の親水基を有する重合性不飽和モノマーであり、かつ該(m−1)及び(m−2)成分の含有割合が、モノマー成分(m)の合計質量を基準にして、(m−1)成分が1〜29質量%の範囲内であり、かつ(m−2)成分が20〜99質量%の範囲内である、項1に記載の共重合体。
【0019】
項3.モノマー成分(I)が、少なくともその一部として、水酸基含有重合性不飽和モノマーを、モノマー成分(I)の合計質量を基準として、5〜60質量%含有する項1又は2に記載の共重合体。
【0020】
項4.(m−2)成分が、アクリル酸及びメタクリル酸より選ばれる少なくとも1種の親水基を有する重合性不飽和モノマーであり、かつ該(m−1)及び(m−2)成分の含有割合が、モノマー成分(m)の合計質量を基準にして、(m−1)成分が1〜40質量%の範囲内であり、かつ(m−2)成分の合計質量が5〜75質量%の範囲内である、項1又は3に記載の共重合体。
【0021】
項5.項1〜4のいずれか一項に記載の共重合体及び被膜形成性樹脂(A)を含有する水性塗料組成物。
【0022】
項6.前記被膜形成性樹脂(A)が(b−1)疎水性重合性不飽和モノマー5〜70質量%、(b−2)水酸基含有重合性不飽和モノマー0.1〜25質量%、(b−3)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー0.1〜20質量%及び(b−4)上記重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー0〜94.8質量%からなるモノマー成分(b)を共重合することにより得られる酸価1〜100mgKOH/g、水酸基価1〜100mgKOH/gの水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)である、項5に記載の水性塗料組成物。
【0023】
項7.(m−2)成分が、N−置換(メタ)アクリルアミド、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマーである項5又は6に記載の水性塗料組成物。
【0024】
項8.モノマー成分(m)が、モノマー成分(m)の合計質量を基準にして、(m−1)成分を1〜40質量%、(m−2)成分を5〜99質量含有する、項5〜7のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【0025】
項9.水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)が、コア・シェル型構造を有し、かつコア部が、コア部を構成するモノマー成分の合計質量を基準として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%をモノマー成分とする共重合体(I)であり、かつコア部とシェル部とを構成するモノマー成分の合計量における各モノマーの含有割合が、コア部とシェル部とを構成するモノマー成分の合計質量を基準として、疎水性重合性不飽和モノマー(b−1)5〜70質量%、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b−2)0.1〜25質量%、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3)0.1〜20質量%及び上記重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー(b−4)0〜94.8質量%のコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)である項6〜8のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【0026】
項10.水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)が、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%をモノマー成分とする共重合体(I)であるコア部と、疎水性重合性不飽和モノマー(b−1)5〜80質量%、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b−2)0.1〜50質量%、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3)0.1〜50質量%及び上記重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー(b−4)0〜94.8質量%をモノマー成分とする共重合体(II)であるシェル部とからなり、かつ該共重合体(I)と共重合体(II)との固形分質量比が、共重合体(I)/共重合体(II)=5/95〜95/5の範囲内のコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−2)である項6〜8のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【0027】
項11.被膜形成性樹脂(A)が、エステル結合を有する樹脂である項5〜10のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【0028】
項12.被膜形成性樹脂(A)が、界面活性剤を用いた乳化重合によって得られる水分散性アクリル樹脂である項5〜11のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【0029】
項13.項5〜12のいずれか一項に記載の水性塗料組成物が塗装された物品。
【0030】
項14.(1)被塗物に、項5〜12のいずれか一項に記載の水性塗料組成物を塗装してベースコートを形成する工程、
(2)上記の未硬化のベースコート塗面上に、クリヤーコート塗料組成物を塗装してクリヤーコートを形成する工程、並びに
(3)上記の未硬化のベースコート及び未硬化のクリヤーコートを、加熱して両塗膜を同時に硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
【0031】
項15.(1)被塗物に、第1着色塗料組成物を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
(2)上記の未硬化の第1着色塗膜上に、項5〜12のいずれか一項に記載の水性塗料組成物を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、
(3)上記の未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤーコート塗料組成物を塗装してクリヤーコートを形成する工程、並びに
(4)上記の未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤーコートを、同時に加熱硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
【0032】
項16.項14又は15に記載の複層塗膜形成方法により形成された複層塗膜を有する物品。
【0033】
項17.項1〜4のいずれか一項に記載の共重合体からなる粘性調整剤。
【発明の効果】
【0034】
本発明の共重合体は、粘度の発現性が高く、かつせん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する。特に、界面活性剤を含有する水性塗料中においても、粘度を発現し、せん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する。また、本発明の水性塗料によれば、優れた鮮映性を有する塗膜を形成することができる。また、本発明の水性塗料によれば、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた光輝性を有する塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の共重合体について詳細に説明する。
【0036】
I.本発明の共重合体
本発明の共重合体は、(m−1)炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)を5〜100質量%含有するモノマー成分(I)を重合することにより得られる1,000〜10,000の範囲内の数平均分子量を有する重合体鎖からなる基本骨格を有し、かつ重合性不飽和基を有するマクロモノマー及び
(m−2)親水基を有する重合性不飽和モノマー
を含有するモノマー成分(m)を共重合することにより得ることができる。
【0037】
本発明の共重合体は、粘度の発現性が高く、かつせん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する。特に、界面活性剤を含有する水性塗料中においても、粘度を発現し、せん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する。このような優れた粘度特性を有するため、本発明の共重合体は、粘性調整剤として使用することが好ましい。なかでも、優れた鮮映性及び光輝性を有する塗膜を形成することができるため、塗料用の粘性調整剤として好適に使用することができる。
【0038】
炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)
前記炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数4〜24のアルキル基を有する1価アルコールのモノエステル化物を使用することができる。具体的には、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは、それぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
【0040】
上記炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)としては、得られる塗膜の鮮映性の観点から、炭素数6〜18のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーが好ましく、炭素数8〜13のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーがさらに好ましい。なかでも、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレートが好ましく、2−エチルヘキシルメタクリレートが特に好ましい。
【0041】
モノマー成分(I)
モノマー成分(I)は、上記炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)を5〜100質量%含有する。なかでも、得られる塗膜の鮮映性の観点から、モノマー成分(I)中の上記炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)の含有割合が、30〜95質量%、好ましくは45〜90質量%、さらに好ましくは55〜85質量%の範囲内であることが好適である。
【0042】
モノマー成分(I)は、上記炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)以外の重合性不飽和モノマー(b)を含有することができる。この場合、モノマー成分(I)は、前記炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)及び上記炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)以外の重合性不飽和モノマー(b)からなる。
【0043】
上記炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)以外の重合性不飽和モノマー(b)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナト基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられる。これらの重合性不飽和モノマーはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
前記モノマー成分(I)は、形成される塗膜の鮮映性及び耐水性の観点から、少なくともその一部として、水酸基含有重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。具体的には、上記炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)以外の重合性不飽和モノマー(b)が、少なくともその一部として、水酸基含有重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。
【0045】
かかる水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、前記炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)以外の重合性不飽和モノマー(b)の説明で例示した水酸基含有重合性不飽和モノマーが挙げられる。これらのモノマーは、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0046】
水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、なかでも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
【0047】
モノマー成分(I)が水酸基含有重合性不飽和モノマーを含有する場合、該水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、形成される塗膜の鮮映性及び耐水性の観点から、モノマー成分(I)の合計質量を基準として、5〜60質量%、好ましくは10〜45質量%、さらに好ましくは15〜30質量%の範囲内であることが好適である。
【0048】
また、モノマー成分(I)が水酸基含有重合性不飽和モノマーを含有する場合、モノマー成分(I)を重合することにより得られる重合体の水酸基価は、形成される塗膜の鮮映性及び耐水性の観点から、20〜260mgKOH/g、好ましくは40〜200mgKOH/g、さらに好ましくは60〜130mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
【0049】
マクロモノマー(m−1)
マクロモノマー(m−1)は、重合体鎖と重合性不飽和基とを有するマクロモノマーであって、当該重合体鎖が、上記炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)を含むモノマー成分(I)を重合することにより得られる1,000〜10,000の範囲内の数平均分子量を有する重合体鎖である、マクロモノマーである。なお、本発明において、マクロモノマーは、重合性不飽和基を有する高分子量のモノマーであり、好ましくは、重合体の末端に重合性不飽和基を有する高分子量のモノマーである。従って、マクロモノマー(m−1)は、上記重合体鎖からなる基本骨格を有し、かつ少なくとも1個、好ましくは1個の重合性不飽和基を、好ましくは当該重合体鎖の末端に、有する構造を有する。
【0050】
本明細書において、マクロモノマー(m−1)が有する重合性不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。
【0051】
上記マクロモノマー(m−1)は、数平均分子量が1,000〜10,100の範囲内であることが好ましい。なかでも、得られる塗膜の鮮映性の観点から、数平均分子量が1,000〜5,000、好ましくは1,000〜3,000の範囲内であることが好適である。マクロモノマー(m−1)の数平均分子量は、例えば、モノマー成分(I)を重合する際の、連鎖移動剤の使用量、重合開始剤の使用量、反応温度、反応時間等によって、調整することができる。
【0052】
上記マクロモノマー(m−1)は、それ自体既知の方法で得ることができる。具体的には、例えば、下記の方法(1)、方法(2)、方法(3)等によって得ることができる。
【0053】
方法(1): 前記モノマー成分(I)を重合するに際して、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等の第1の化学反応性基を含有する連鎖移動剤の存在下で重合を行うことによって、重合体の末端に第1の化学反応性基を導入する。次いで、得られた重合体と、該重合体中の第1の化学反応性基と反応可能な第2の化学反応性基を有する重合性不飽和モノマーとを反応させることによって、マクロモノマー(m−1)を得ることができる。
【0054】
上記カルボキシル基、水酸基、アミノ基等の第1の化学反応性基を含有する連鎖移動剤としては、メルカプト酢酸、2ーメルカプトプロピオン酸、3ーメルカプトプロピオン酸、2ーメルカプトエタノール、2ーアミノエタンチオール等を好適に使用することができる。
【0055】
前記共重合体中の第1の化学反応性基と反応して重合性不飽和基を導入するための第2の化学反応性基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、第1の化学反応性基がカルボキシ基である場合には、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー;第1の化学反応性基が水酸基である場合には、イソシアナト基含有重合性不飽和モノマー;第1の化学反応性基がアミノ基である場合には、エポキシ基含有重合性不飽和モノマーを好適に使用することができる。
【0056】
上記エポキシ基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等を好適に使用することができる。また、上記イソシアナト基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、イソシアナトエチルアクリレート、イソシアナトエチルメタクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等を好適に使用することができる。
【0057】
方法(2): マクロモノマー(m−1)は、金属錯体を用いた触媒的連鎖移動重合(Catalytic Chain Transfer Polymerization、CCTP法)によって得ることができる。CCTP法は、例えば、特公平6−23209号公報、特公平7−35411号公報、特公平9−501457号公報、特開平9−176256号公報、Macromolecules 1996、29、8083〜8089等に記載されている。具体的には、金属錯体の存在下で、モノマー成分(I)を触媒的連鎖移動重合させることにより、マクロモノマー(m−1)を製造することができる。該触媒的連鎖移動重合は、例えば、有機溶剤中での溶液重合法、水中での乳化重合法等により、行なうことができる。また、重合の際には、前記金属錯体に加え、必要に応じて、ラジカル重合開始剤を使用してもよい。
【0058】
上記金属錯体としては、例えば、コバルト錯体、鉄錯体、ニッケル錯体、ルテニウム錯体、ロジウム錯体、パラジウム錯体、レニウム錯体、イリジウム錯体等が挙げられ、これらのうちコバルト錯体が触媒的連鎖移動剤として効率良く作用する。該金属錯体の使用量は、特に限定されるものではないが、モノマー成分(I)の合計質量100質量部を基準として、通常1×10−6〜1質量部、好ましくは1×10−4〜0.5質量部の範囲内にあることが適している。
【0059】
前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−アミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4'−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。該ラジカル重合開始剤の配合量は、特に限定されるものではないが、モノマー成分(I)の合計質量100質量部に基いて、通常、0.1〜10質量部、好ましくは0.1〜8質量部、さらに好ましくは0.1〜6質量部の範囲内であることが好適である。
【0060】
方法(3): マクロモノマー(m−1)は、付加開裂型連鎖移動剤を用いた付加開裂型連鎖移動重合法によって得ることができる。該付加開裂型連鎖移動重合法は、例えば、特開平7−2954号公報等に記載されている。具体的には、上記付加開裂型連鎖移動剤の存在下で、前記モノマー成分(I)を付加開裂型連鎖移動重合させることにより、マクロモノマー(m−1)を製造することができる。該付加開裂型連鎖移動重合は、例えば、有機溶剤中での溶液重合法、水中での乳化重合法等により、行なうことができる。また、重合の際には、該付加開裂型連鎖移動剤に加え、必要に応じて、ラジカル重合開始剤を併用することができる。
【0061】
上記付加開裂型連鎖移動剤としては、例えば、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(「α−メチルスチレンダイマー」、「MSD」と略称される場合がある)を好適に使用することができる。該付加開裂型連鎖移動剤の配合量は、特に限定されるものではないが、モノマー成分(I)の合計質量100質量部に基いて、通常、1〜20質量部、好ましくは2〜15質量部、さらに好ましくは3〜10質量部の範囲内であることが好適である。
【0062】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、前記方法(2)の説明において記載したラジカル重合開始剤を使用することができる。これらの重合開始剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。該ラジカル重合開始剤の配合量は、特に限定されるものではないが、モノマー成分(I)の合計質量100質量部に基いて、通常、1〜20質量部、好ましくは2〜15質量部、さらに好ましくは3〜10質量部の範囲内であることが好適である。
【0063】
上記方法(1)〜(3)において、重合温度は、上記ラジカル重合開始剤の種類により異なるが、60〜200℃、好ましくは80〜180℃、さらに好ましくは90〜170℃の範囲内であることが好適である。また、重合の前半と後半で異なる温度としてもよく、温度を徐々に変えながら重合を行ってもよい。
【0064】
上記方法(1)〜(3)のうち、方法(1)は、モノマー成分(I)を重合させて重合体を得る工程と、得られた重合体と重合性不飽和モノマーとを反応させて、該重合体に重合性不飽和基を導入する工程との2つの反応工程が必要である。また、方法(2)は、金属錯体を使用するため、後述する共重合体(グラフトポリマー)の製造時に、触媒的連鎖移動重合が起きたり、得られる共重合体に色が付いたりする場合がある。
【0065】
このため、反応工数の削減、得られる共重合体における着色の抑制等の観点から、マクロモノマー(m−1)は、前記方法(3)の付加開裂型連鎖移動剤を用いた付加開裂型連鎖移動重合法によって得ることが好ましい。
【0066】
尚、マクロモノマー(m−1)は、一種を単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)
本発明において、親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)としては、例えば、N−置換(メタ)アクリルアミド、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー、スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー、リン酸基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
なかでも、親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)としては、N−置換(メタ)アクリルアミド、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマーを好適に使用することができる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
モノマー成分(m)において、前記マクロモノマー(m−1)、及び親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)の含有割合は、形成される塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性の観点から、モノマー成分(m)の合計質量を基準にして、下記の範囲内であることが好ましい:
マクロモノマー(m−1):1〜40質量%、好ましくは3〜29質量%、さらに好ましくは5〜15質量%、
親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2):5〜99質量%、好ましくは10〜97質量%、さらに好ましくは20〜95質量%。
【0070】
上記N−置換(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドブチルエーテル、N−メチロールメタクリルアミドブチルエーテル、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−メチル,N−エチルアクリルアミド、N−メチル,N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールメタクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールアクリルアミドエチルエーテル、N−メチロールメタクリルアミドエチルエーテル、N−メチロールアクリルアミドプロピルエーテル、N−メチロールメタクリルアミドプロピルエーテル、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
なかでも、形成される塗膜の鮮映性の観点から、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミドが好ましく、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドがさらに好ましい。
【0072】
前記ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーは、1分子中にポリオキシアルキレン鎖と重合性不飽和基を含有するモノマーである。
【0073】
上記ポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレンブロックとポリオキシプロピレンブロックとからなる鎖、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとがランダムに結合してなる鎖等を挙げることができ、これらのポリオキシアルキレン鎖は一般に100〜5,000程度、好ましくは200〜4,000程度、さらに好ましくは300〜3,000程度の範囲内の分子量を有することが好適である。
【0074】
上記ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーの代表例としては、例えば、下記一般式(1)
【0075】
【化1】

【0076】
[式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基、さらに好ましくは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数2〜4、好ましくは炭素数2又は3、さらに好ましくは炭素数2のアルキレン基を表し、mは3〜150、好ましくは5〜80、さらに好ましくは8〜50の整数を表し、m個のオキシアルキレン単位(O−R)は互いに同じであっても又は互いに異なっていてもよい]
で示される重合性不飽和モノマーを挙げることができる。
【0077】
上記一般式(1)で示される重合性不飽和モノマーの具体例としては、例えば、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラピロプレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレン(プロピレン)グリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレン(プロピレン)グリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレン(プロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、本明細書において、「ポリエチレン(プロピレン)グリコール」は、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体を意味し、ブロック共重合体とランダム共重合体のいずれも含むものとする。
【0078】
なかでも、形成される塗膜の鮮映性の観点から、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレン(プロピレン)グリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレン(プロピレン)グリコール(メタ)アクリレートが好ましく、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0079】
また、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーは、一般に300〜6,000程度、好ましくは400〜5,000程度、さらに好ましくは450〜3,500程度の範囲内の分子量を有することが好適である。
【0080】
前記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0081】
前記スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0082】
前記リン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
本発明の一つの好ましい実施形態において、親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)としては、N−置換(メタ)アクリルアミド、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー及びN−ビニル−2−ピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種の、ノニオン性の親水基を有する重合性不飽和モノマーを挙げることができる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。当該実施形態においては、これらのモノマーのなかでも、形成される塗膜の鮮映性の観点から、N−置換(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0084】
当該実施形態においては、前記マクロモノマー(m−1)、及びノニオン性の親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)の配合割合は、得られる共重合体の増粘性及び該共重合体を含有する塗料によって形成される塗膜の鮮映性の観点から、モノマー成分(m)の合計質量を基準にして、下記の範囲内が好ましい:
マクロモノマー(m−1):1〜29質量%、好ましくは3〜20質量%、さらに好ましくは5〜15質量%、
ノニオン性の親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)の合計質量:20〜99質量%、好ましくは40〜97質量%、さらに好ましくは55〜95質量%。
【0085】
本発明の別の好ましい実施形態において、親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)としては、アクリル酸及びメタクリル酸より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマーを挙げることができる。これらはそれぞれ単独でもしくは組み合わせて使用することができる。当該実施形態においては、これらのモノマーのなかでも、形成される塗膜の鮮映性の観点から、アクリル酸が好ましい。
【0086】
当該実施形態においては、前記マクロモノマー(m−1)及び親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)の配合割合は、得られる共重合体の増粘性及び該共重合体を含有する塗料によって形成される塗膜の鮮映性、フリップフロップ性及び耐水性の向上ならびにメタリックムラ抑制の観点から、モノマー成分(m)の合計質量を基準にして、下記の範囲内が好ましい:
マクロモノマー(m−1):1〜40質量%、好ましくは3〜29質量%、さらに好ましくは5〜15質量%、
親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)の合計質量:5〜75質量%、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは20〜50質量%。
【0087】
その他の重合性不飽和モノマー(m−3)
その他の重合性不飽和モノマー(m−3)は、前記マクロモノマー(m−1)及び親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)以外の重合性不飽和モノマーである。該その他の重合性不飽和モノマー(m−3)は、共重合体に望まれる特性に応じて適宜選択して使用することができる。
【0088】
上記その他の重合性不飽和モノマー(m−3)の具体例を以下に列挙する。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
(i) アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート: 例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
(ii) イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii) アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv) トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v) 芳香環含有重合性不飽和モノマー: 例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi) アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii) フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii) マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix) ビニル化合物: 例えば、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x) 水酸基含有重合性不飽和モノマー: 例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;アリルアルコール等。
(xi) 含窒素重合性不飽和モノマー: 例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等。
(xii) 重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー: 例えば、アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
(xiii) エポキシ基含有重合性不飽和モノマー: 例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xiv) 紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2' −ヒドロキシ−5' −メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等。
(xv) 光安定性重合性不飽和モノマー: 例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等。
(xvi) カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
(xvii) 酸無水物基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等。
【0089】
なかでも、前記親水性基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)が2−ヒドロキシエチルアクリレートを含有しない場合、形成される塗膜の耐水性の観点から、上記重合性不飽和モノマー(m−3)は、少なくともその一部として、上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(x)を含有することが好ましい。該水酸基含有重合性不飽和モノマー(x)としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチルメタクリレートがさらに好ましい。
【0090】
重合性不飽和モノマー(m−3)が、上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(x)を含有する場合、該水酸基含有重合性不飽和モノマー(x)の含有量は、モノマー成分(m)の合計質量を基準にして、5〜79質量%、好ましくは10〜57質量%、さらに好ましくは15〜40質量%の範囲内であることが好適である。
【0091】
その他の重合性不飽和モノマー(m−3)の配合量は、モノマー成分(m)において前記(m−1)成分及び(m−2)成分との合計量が100質量%となるように、適宜設定可能である。
【0092】
本発明の共重合体は、通常、主鎖及び側鎖を有するグラフトポリマーであって、上記マクロモノマー(m−1)中の重合体鎖が側鎖部分を形成し、上記親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)及びその他の重合性不飽和モノマー(m−3)が主鎖部分を形成する。
【0093】
共重合体の製造方法
本発明の共重合体は、前記マクロモノマー(m−1)及び親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)、ならびに必要に応じて配合されるその他の重合性不飽和モノマー(m−3)からなるモノマー成分(m)を、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の方法により共重合せしめることによって製造することができる。なかでも、比較的容易な操作で行なうことができる溶液重合法が好適である。
【0094】
モノマー成分(m)を共重合する際に使用される重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−アミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4'−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤に、必要に応じて、例えば、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用してレドックス開始剤としてもよい。
【0095】
上記重合開始剤の使用量は、モノマー成分(m)の合計質量100質量部を基準にして、通常0.01〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部とすることができる。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類及び量等に応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は反応溶媒に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。
【0096】
また、溶液重合法における溶媒としては、溶剤への連鎖移動が起こりにくく、かつ水溶性である有機溶剤が好ましい。このような溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、エーテル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤が好ましい。
【0097】
重合反応時における上記有機溶剤の使用量は、モノマー成分(m)の合計質量100質量部を基準にして、通常、500重量部以下、好ましくは50〜400重量部、さらに好ましくは100〜200重量部の範囲内であることが好適である。
【0098】
本発明の共重合体の重量平均分子量は、得られる共重合体の増粘性及び該共重合体を含有する塗料によって形成される塗膜の平滑性、鮮映性及び光輝性の観点から、20,000〜1,000,000、好ましくは50,000〜600,000、さらに好ましくは100,000〜400,000の範囲内であることが好適である。
【0099】
なお、本明細書において、マクロモノマー(m−1)の数平均分子量及び共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。
【0100】
マクロモノマー(m−1)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0101】
また、共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel GMHHR−L」(商品名、東ソー社製)を1本使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:N,N−ジメチルホルムアミド(臭化リチウムとリン酸をそれぞれ10mM含む)、測定温度:25℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0102】
II.本発明の水性塗料組成物
本発明の共重合体は、粘度の発現性が高く、かつせん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有するため、水性塗料用の粘性調整剤として好適に使用することができる。なかでも、界面活性剤を含有する水性塗料においても、粘度が発現し、かつせん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する。このため、本発明の共重合体を含有する水性塗料は、優れた鮮映性を有する塗膜を形成することができる。また、本発明の水性塗料によれば、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた光輝性を有する塗膜を形成することができる。
【0103】
本発明に係る水性塗料組成物(以下、「本塗料」と略称する場合がある。)は、通常、前記共重合体と被膜形成性樹脂(A)とを含有する。
【0104】
被膜形成性樹脂(A)
被膜形成性樹脂(A)としては、従来から水性塗料のバインダー成分として使用されているそれ自体既知の水溶性又は水分散性の被膜形成性樹脂を使用することができる。該被膜形成性樹脂(A)の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0105】
なかでも、鮮映性及びフリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた外観を有し、かつ優れた耐水性を有する塗膜を形成できる観点から、被膜形成性樹脂(A)が、水分散性の被膜形成性樹脂であることが好ましい。水分散性の被膜形成性樹脂は、一般に、比較的疎水性の被膜形成性樹脂を水性媒体中に分散することにより得られるため、高い親水性が付与された水溶性の被膜形成性樹脂に比べ、耐水性に優れた塗膜が形成される。また、本発明の共重合体は疎水性の側鎖を有するため、上記のような比較的疎水性の被膜形成性樹脂と網状構造を形成し、粘度を発現するため、鮮映性及びフリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた外観を有する塗膜を形成することができる。
【0106】
上記水分散性の被膜形成性樹脂は、得られる塗料の貯蔵安定性の観点から、界面活性剤によって水分散性が付与された被膜形成性樹脂であることが好ましい。本発明の共重合体は、界面活性剤を含有する水性塗料中においても、粘度を発現し、せん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有するため、本発明の共重合体と界面活性剤によって水分散性が付与された被膜形成性樹脂とを含有する水性塗料組成物は、貯蔵安定性に優れ、かつ鮮映性及びフリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた外観を有し、かつ優れた耐水性を有する塗膜を形成することができる。
【0107】
上記界面活性剤によって水分散性が付与された被膜形成性樹脂としては、例えば、界面活性剤を用いた乳化重合法によって製造されたアクリル樹脂を好適に使用することができる。
【0108】
被膜形成性樹脂(A)は、形成される塗膜の鮮映性、フリップフロップ性及びメタリックムラ抑制の観点から、エステル結合を有する樹脂であることが好ましい。エステル結合を有する樹脂としては、例えば、エステル結合を有する重合性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を重合することにより得られる共重合体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等を好適に使用することができ、なかでもアクリル樹脂が好ましい。本発明の共重合体と、エステル結合を有する被膜形成性樹脂とを含有する水性塗料組成物が、鮮映性及びフリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた外観を有する塗膜を形成できる理由としては、本発明の共重合体の側鎖に存在する炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)中のエステル結合と、被膜形成性樹脂(A)中のエステル結合との親和性が高く、より強固に結合した網状構造が形成されるため、高い粘度が発現することが推察される。
【0109】
また、被膜形成性樹脂(A)は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基を有していることが好ましい。
【0110】
本発明の水性塗料組成物は、さらに、後記の硬化剤(B)を含有することが好ましい。本発明の水性塗料組成物が硬化剤(B)を含有する場合、上記被膜形成性樹脂(A)としては、通常、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基を有し、該硬化剤(B)と反応することにより、硬化被膜を形成することができる樹脂(基体樹脂)が用いられる。
【0111】
上記基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。なかでも、上記基体樹脂は、水酸基含有樹脂であることが好ましく、水酸基含有アクリル樹脂(A1)及び/又は水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)であることがさらに好ましい。また、水酸基含有アクリル樹脂(A1)と水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)とを、併用することが、形成される塗膜の鮮映性及び光輝性の向上の観点から、より好ましい。また、併用する場合の割合としては、水酸基含有アクリル樹脂(A1)と水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)との合計量に基づいて、前者が20〜80質量%程度、特に30〜70質量%程度で、後者が80〜20質量%程度、特に70〜30質量%程度であるのが好ましい。
【0112】
また、被膜形成性樹脂(A)は、カルボキシル基等の酸基を有する場合、酸価が5〜150mgKOH/g程度であるのが好ましく、10〜100mgKOH/g程度であるのがより好ましく、15〜80mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。また、該樹脂(A)は、水酸基を有する場合、水酸基価が1〜200mgKOH/g程度であるのが好ましく、2〜180mgKOH/g程度であるのがより好ましく、5〜170mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。
【0113】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)
水酸基含有アクリル樹脂(A1)としては、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中での乳化重合法、水中でのミニエマルション重合法等の方法により、共重合せしめることによって製造することができる。なかでも、水性塗料用の被膜形成性樹脂として使用する場合に、該樹脂の製造に必要な工数が少ないことから、水中での乳化重合法が好ましい。
【0114】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のポリオキシアルキレングリコール変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは、それぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0115】
なかでも、形成される塗膜の鮮映性、光輝性、フリップフロップ性等の向上及びメタリックムラ抑制の観点から、上記水酸基含有重合性不飽和モノマーが、エステル結合を有する水酸基含有重合性不飽和モノマーであることが好ましい。該エステル結合を有する水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のポリオキシアルキレングリコール変性体等を挙げることができる。なかでも、(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物が好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0116】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、前記共重合体の説明において、(m−2)成分、及び(m−3)成分として例示した重合性不飽和モノマーのうち、上記水酸基含有重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーであるモノマー(i)〜(ix)及び(xi)〜(xvii)等を使用することができる。これらの重合性不飽和モノマーはそれぞれ単独でもしくは2種以上で組み合わせて使用することができる。
【0117】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、アミド基を有することが好ましい。前記のアミド基を有する水酸基含有アクリル樹脂は、例えば、上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーの1種として、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有重合性不飽和モノマーを用いることにより、製造することができる。
【0118】
上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)を製造する際の前記水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、モノマー成分の合計量を基準として、1〜50質量%程度が好ましく、2〜40質量%程度がより好ましく、3〜30質量%程度がさらに好ましい。
【0119】
上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、塗料の貯蔵安定性、得られる塗膜の耐水性等の観点から、酸価が、0.1〜200mgKOH/g程度であることが好ましく、2〜150mgKOH/g程度であることがより好ましく、5〜100mgKOH/g程度であることがさらに好ましい。
【0120】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、水酸基価が、0.1〜200mgKOH/g程度であることが好ましく、2〜150mgKOH/g程度であることがより好ましく、5〜100mgKOH/g程度であることがさらに好ましい。
【0121】
本発明の好ましい1つの実施形態において、水酸基含有アクリル樹脂(A1)としては、(b−1)疎水性重合性不飽和モノマー5〜70質量%、(b−2)水酸基含有重合性不飽和モノマー0.1〜25質量%、(b−3)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー0.1〜20質量%及び(b−4)上記重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー0〜94.8質量%からなるモノマー成分(b)を共重合することにより得られる酸価1〜100mgKOH/g、水酸基価1〜100mgKOH/gの水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)を挙げることができる。水酸基含有アクリル樹脂(A1)として、上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)を使用する場合、平滑性、鮮映性及び耐水性に優れた塗膜を形成することができ、さらに光輝性顔料を含有する場合に、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された光輝性に優れた塗膜を形成することができる。
【0122】
疎水性重合性不飽和モノマー(b−1)
疎水性重合性不飽和モノマー(b−1)は、炭素数が4以上、好ましくは6〜18の、直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーであり、水酸基含有重合性不飽和モノマー等の親水性基を有するモノマーは除外される。該モノマーとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和化合物;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマーを挙げることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0123】
なかでも、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水感を向上させる観点から、上記疎水性重合性不飽和モノマー(b−1)が、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマーであることが好ましい。
【0124】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(b−2)
水酸基含有重合性不飽和モノマー(b−2)は、得られる水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)の水性媒体中における安定性を向上せしめることができる。また、後記の硬化剤(B)として水酸基との反応性を有する化合物を使用する場合に、該水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)と硬化剤(B)が架橋した、耐水性に優れた塗膜を形成することができる。水酸基含有重合性不飽和モノマー(b−2)としては、前述のものを使用することができる。
【0125】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3)
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3)は、得られる水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)の水性媒体中における安定性を向上せしめることができる。また、後記の硬化剤(B)としてカルボキシル基との反応性を有する化合物を使用する場合に、該水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)と硬化剤(B)が架橋した、耐水性に優れた塗膜を形成することができる。」
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0126】
なかでも、得られる水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)の水性媒体中における安定性の観点から、上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3)が、アクリル酸及び/又はメタクリル酸であることが好ましい。
【0127】
重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー(b−4)
モノマー成分(b)は、前記疎水性重合性不飽和モノマー(b−1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b−2)及びカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3)に加え、さらに必要に応じて、該重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー(b−4)を含有することができる。
【0128】
上記重合性不飽和モノマー(b−4)は、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)に望まれる特性に応じて適宜選択して使用することができる。該重合性不飽和モノマー(b−4)の具体例を以下に列挙する。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0129】
上記重合性不飽和モノマー(b−4)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数3以下のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等、これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー等が挙げられる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0130】
モノマー成分(b)において、前記疎水性重合性不飽和モノマー(b−1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b−2)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3)及び重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー(b−4)の含有割合は、形成される塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性の観点から、モノマー成分(m)の合計質量を基準にして、下記の範囲内であることが好ましい。
疎水性重合性不飽和モノマー(b−1):5〜70質量%、好ましくは10〜65質量%、さらに好ましくは15〜60質量%、
水酸基含有重合性不飽和モノマー(b−2):0.1〜25質量%、好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%、
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3):0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%、
重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー(b−4):0〜94.8質量%、好ましくは10〜89質量%、さらに好ましくは20〜83質量%。
【0131】
水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)は、例えば、前記疎水性重合性不飽和モノマー(b−1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b−2)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3)及び重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー(b−4)からなるモノマー成分(b)を、それ自体既知の方法により、共重合せしめることによって製造することができる。具体的には、例えば、乳化重合法;有機溶剤中で溶液重合を行った後、得られた共重合体を、界面活性剤を用いて水中に分散させる方法等を用いることができる。なかでも、得られる水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)の水性媒体中における安定性向上の観点から、乳化重合法が好ましい。上記乳化重合法は、通常、水に不溶又は難溶性の重合性不飽和モノマーを、界面活性剤を使って水に分散させた状態で重合させる方法である。
【0132】
上記(b−1)〜(b−3)及び必要に応じて(b−4)を原料として調製される水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)は、酸価が1〜100mgKOH/gの範囲内であり、水酸基価が1〜100mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。なかでも、塗料の貯蔵安定性、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性の観点から、酸価が、2〜50mgKOH/gであることがより好ましく、5〜30mgKOH/gであることがさらに好ましい。また、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性の観点から、水酸基価が、2〜80mgKOH/gであることがより好ましく、5〜60mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0133】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂
また、水酸基含有アクリル樹脂(A1)としては、形成される塗膜の鮮映性及び光輝性が向上する観点から、水分散性水酸基含有アクリル樹脂を単独使用するか、又は水分散性水酸基含有アクリル樹脂と水溶性アクリル樹脂とを併用することが好ましい。なかでも、上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂が、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂であることが好適である。
【0134】
上記コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂としては、形成される塗膜の鮮映性及び光輝性が向上する観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%程度及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%程度を共重合成分とする共重合体(I)であるコア部と、水酸基含有重合性不飽和モノマー1〜40重量%程度、疎水性重合性不飽和モノマー5〜50質量%程度及びその他の重合性不飽和モノマー10〜94質量%程度を共重合成分とする共重合体(II)であるシェル部とからなるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)を好適に使用することができる。また、共重合体(I)/共重合体(II)の割合は、形成される塗膜の鮮映性及び光輝性が向上する観点から、固形分質量比で5/95〜95/5程度が好ましく、10/90〜90/10程度がより好ましく、50/50〜85/15程度がより好ましく、65/35〜80/20程度がさらに好ましい。
【0135】
コア部共重合体(I)用モノマーとして用いる重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0136】
上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーは、コア部共重合体(I)に架橋構造を付与する機能を有する。重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア部共重合体(I)の架橋の程度に応じて適宜決定し得るが、通常、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの合計量を基準として、0.1〜30質量%程度であるのが好ましく、0.5〜10質量%程度であるのがより好ましく、1〜7質量%程度であるのが更に好ましい。
【0137】
また、上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーとしては、得られる塗膜のメタリックムラ抑制の観点から、例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマーを使用することが好ましい。このアミド基含有モノマーを使用する場合の使用量としては、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの合計量を基準として、0.1〜25質量%程度であるのが好ましく、0.5〜8質量%程度であるのがより好ましく、1〜4質量%程度であるのが更に好ましい。
【0138】
コア部共重合体(I)用モノマーとして用いる重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーは、上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーと共重合可能な重合性不飽和モノマーである。
【0139】
重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの具体例としては、例えば、前記共重合体の説明において、(m−2)成分、及び(m−3)成分として例示した重合性不飽和モノマーのうち、前記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーであるモノマー(i)〜(xi)、(xiii)〜(xvii)等が挙げられる。これらのモノマーは、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)に要求される性能に応じて、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0140】
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いられる水酸基含有重合性不飽和モノマーは、得られる水分散性アクリル樹脂に、硬化剤(B)と架橋反応する水酸基を導入せしめることによって塗膜の耐水性等を向上させると共に、該水分散性アクリル樹脂の水性媒体中における安定性を向上せしめる機能を有する。水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を用いるのが好ましい。
【0141】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、シェル部共重合体(II)を構成するモノマー合計質量を基準として、1〜40質量%程度であるのが好ましく、4〜25質量%程度であるのがより好ましく、7〜19質量%程度であるのが更に好ましい。
【0142】
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いられる疎水性重合性不飽和モノマーは、炭素数が6以上、好ましくは6〜18の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーであり、水酸基含有重合性不飽和モノマー等の親水性基を有するモノマーは除外される。該モノマーとしては、例えば、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和化合物;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマーを挙げることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0143】
また、得られる塗膜の鮮映性を向上させる観点から、上記疎水性重合性不飽和モノマーとして、炭素数6〜18のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー及び/又は芳香環含有重合性不飽和モノマーを用いるのが好ましい。特に、スチレンを用いるのがより好ましい。
【0144】
上記疎水性重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、シェル部共重合体(II)を構成するモノマー合計質量を基準として、5〜50質量%程度であるのが好ましく、7〜40質量%程度であるのがより好ましく、9〜30質量%程度であるのが更に好ましい。
【0145】
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いるその他の重合性不飽和モノマーは、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び疎水性重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーである。当該モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー等を挙げることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0146】
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの具体例は、前記コア部共重合体(I)用モノマーとして例示したものと同じである。カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、特に、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を用いることが好ましい。その他の重合性不飽和モノマーとして、上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含むことにより、得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)の水性媒体中における安定性を確保できる。
【0147】
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合の使用割合は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、シェル部共重合体(II)を構成するモノマー合計質量を基準として、1〜30質量%程度であるのが好ましく、5〜25質量%程度であるのがより好ましく、7〜19質量%程度であるのが更に好ましい。
【0148】
また、シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いるその他の重合性不飽和モノマーとしては、得られる塗膜の光輝性向上の観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーを使用せず、該共重合体(II)を未架橋型とすることが好ましい。
【0149】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)における共重合体(I)/共重合体(II)の割合は、塗膜の外観向上の観点から、固形分質量比で5/95〜95/5程度であるのが好ましく、10/90〜90/10程度であるのがより好ましく、50/50〜85/15程度であるのがより好ましく、65/35〜80/20程度であるのが更に好ましい。
【0150】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)は、得られる塗膜の耐水性等に優れる観点から、水酸基価が1〜70mgKOH/g程度であるのが好ましく、2〜50mgKOH/g程度であるのがより好ましく、5〜30mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。
【0151】
また、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)は、塗料組成物の貯蔵安定性及び得られる塗膜の耐水性等に優れる観点から、酸価が5〜90mgKOH/g程度であるのが好ましく、8〜50mgKOH/g程度であるのがより好ましく、10〜35mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。
【0152】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)は、例えば、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%程度、及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%程度からなるモノマー混合物を乳化重合してコア部共重合体(I)のエマルションを得た後、このエマルション中に、水酸基含有重合性不飽和モノマー1〜40質量%程度、疎水性重合性不飽和モノマー5〜50質量%程度、及びその他の重合性不飽和モノマー10〜94質量%程度からなるモノマー混合物を添加し、さらに乳化重合させてシェル部共重合体(II)を調製することによって得ることができる。
【0153】
コア部共重合体(I)のエマルションを調製する乳化重合は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、界面活性剤の存在下で、重合開始剤を使用してモノマー混合物を乳化重合することにより、行うことができる。
【0154】
上記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好適である。該アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等のナトリウム塩やアンモニウム塩が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。
【0155】
また、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基とを有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性界面活性剤;1分子中にアニオン性基とラジカル重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性界面活性剤を使用することもできる。これらのうち、反応性アニオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0156】
上記反応性アニオン性界面活性剤としては、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等のラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のナトリウム塩、該スルホン酸化合物のアンモニウム塩等を挙げることができる。これらのうち、ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩が、得られる塗膜の耐水性に優れるため、好ましい。該スルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、「ラテムルS−180A」(商品名、花王社製)等を挙げることができる。
【0157】
また、上記ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の中でも、ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩がより好ましい。上記ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬社製)、「ラテムルPD−104」(商品名、花王社製)、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA社製)等を挙げることができる。
【0158】
上記界面活性剤の使用量は、使用される全モノマーの合計量を基準にして、0.1〜15質量%程度が好ましく、0.5〜10質量%程度がより好ましく、1〜5質量%程度が更に好ましい。
【0159】
前記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−アミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤は、一種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤に、必要に応じて、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用して、レドックス開始剤としてもよい。
【0160】
上記重合開始剤の使用量は、一般に、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、0.1〜5質量%程度が好ましく、0.2〜3質量%程度がより好ましい。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類及び量等に応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は水性媒体に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。
【0161】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)は、上記で得られるコア部共重合体(I)のエマルションに、水酸基含有重合性不飽和モノマー、疎水性重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物を添加し、さらに重合させてシェル部共重合体(II)を形成することによって、得ることができる。
【0162】
上記シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物は、必要に応じて、前記重合開始剤、連鎖移動剤、還元剤、界面活性剤等の成分を適宜含有することができる。また、当該モノマー混合物は、そのまま滴下することもできるが、該モノマー混合物を水性媒体に分散して得られるモノマー乳化物として滴下することが望ましい。この場合におけるモノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
【0163】
シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物の重合方法としては、例えば、該モノマー混合物又はその乳化物を、一括で又は徐々に滴下して、上記コア部共重合体(I)のエマルションに、添加し、攪拌しながら適当な温度に加熱する方法が挙げられる。
かくして得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)は、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物の共重合体(I)をコア部とし、水酸基含有重合性不飽和モノマー、疎水性重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物の共重合体(II)をシェル部とする複層構造を有する。
【0164】
かくして得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)は、一般に10〜1,000nm程度、特に20〜500nm程度の範囲内の平均粒子径を有することができる。
本明細書において、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
【0165】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)の粒子の機械的安定性を向上させるために、該水分散性アクリル樹脂が有するカルボキシル基等の酸基を中和剤により中和することが望ましい。該中和剤としては、酸基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水等が挙げられる。これらの中和剤は、中和後の該水分散性アクリル樹脂の水分散液のpHが6.5〜9.0程度となるような量で用いることが望ましい。
【0166】
また、前記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)についても、得られる水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)の水性媒体中における安定性が向上する観点から、コア・シェル型構造を有し、コア部が架橋していることが好ましい。
【0167】
なかでも、形成される塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性が向上する観点から、上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)が、コア・シェル型構造を有し、コア部が、コア部を構成するモノマー成分の合計質量を基準として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%をモノマー成分とする共重合体(I)であり、かつコア部とシェル部とを構成するモノマー成分の合計量における各モノマーの含有割合が、コア部とシェル部とを構成するモノマー成分の合計質量を基準として、疎水性重合性不飽和モノマー(b−1)5〜70質量%、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b−2)0.1〜25質量%、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3)0.1〜20質量%、上記重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー(b−4)0〜94.8質量%のコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)であることが好ましい。
【0168】
上記コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)において、コア部共重合体(I)用モノマーとして用いられる重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、前述のものを用いることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0169】
該重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーの使用割合についても前述したのと同様の範囲で設定することができる。
【0170】
前記コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)において、コア部共重合体(I)用モノマーとして用いられる重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーは、上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーと共重合可能な重合性不飽和モノマーである。
【0171】
重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等のトリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該モノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)に要求される性能に応じて、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0172】
また、上記重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーとしては、少なくともその一部として、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーを使用することが好ましい。
【0173】
炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレートを挙げることができる。これらのモノマーはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0174】
重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーが上記炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーを含有する場合、該炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーの使用割合は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性及び光輝性の観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの合計量を基準として、20〜99.9質量%、好ましくは30〜99.5質量%、さらに好ましくは40〜99質量%の範囲内であることが好適である。
【0175】
また、上記コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)は、一般に10〜1,000nm程度、特に20〜500nm程度の範囲内の平均粒子径を有することができる。
【0176】
本明細書において、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)の平均粒子径は、動的光散乱法粒子径分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから、20℃で測定した値である。該動的光散乱法粒子径分布測定装置としては、例えば、「サブミクロン粒子アナライザー N5」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
【0177】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)の粒子の機械的安定性を向上させるために、該水分散性アクリル樹脂が有するカルボキシル基等の酸基を中和剤により中和することが望ましい。該中和剤としては、酸基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水等が挙げられる。これらの中和剤は、中和後の該水分散性アクリル樹脂の水分散液のpHが6.5〜9.0程度となるような量で用いることが望ましい。
【0178】
また、上記コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)は、形成される塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性が向上する観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%をモノマー成分とする共重合体(I)であるコア部と、疎水性重合性不飽和モノマー(b−1)5〜80質量%、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b−2)0.1〜50質量%、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3)0.1〜50質量%及び上記重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー(b−4)0〜94.8質量%をモノマー成分とする共重合体(II)であるシェル部とからなり、かつ該共重合体(I)と共重合体(II)との固形分質量比が、共重合体(I)/共重合体(II)=5/95〜95/5範囲内のコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−2)であることが好ましい。なかでも、共重合体(I)/共重合体(II)の割合は、形成される塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性が向上する観点から、固形分質量比で50/50〜85/15程度が好ましく、65/35〜80/20程度がさらに好ましい。
【0179】
上記コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−2)において、コア部における重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア部共重合体(I)の架橋の程度に応じて適宜決定し得るが、通常、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの合計量を基準として、0.1〜30質量%であるのが好ましく、0.5〜10質量%であるのがより好ましく、1〜7質量%であるのが更に好ましい。
【0180】
上記コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−2)において、シェル部における疎水性重合性不飽和モノマー(b−1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b−2)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3)及び上記重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー(b−4)の含有割合は、水性媒体中における安定性ならびに得られる塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性に優れる観点から、シェル部を構成するモノマー成分の合計質量を基準として、下記の範囲内であることが好適である。
疎水性重合性不飽和モノマー(b−1):5〜80質量%、好ましくは7〜70質量%、さらに好ましくは8〜65質量%、
水酸基含有重合性不飽和モノマー(b−2):0.1〜50質量%、好ましくは4〜25質量%、さらに好ましくは7〜19質量%、
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3):0.1〜50質量%、好ましくは5〜25質量%、さらに好ましくは7〜19質量%、
重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー(b−4):0〜94.8質量%、好ましくは10〜84質量%、さらに好ましくは15〜78質量%。
【0181】
また、シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いるその他の重合性不飽和モノマーとしては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性及び光輝性向上の観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーを使用せず、該共重合体(II)を未架橋型とすることが好ましい。
【0182】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−2)は、例えば、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%、及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%からなるモノマー混合物を乳化重合してコア部共重合体(I)のエマルションを得た後、このエマルション中に、疎水性重合性不飽和モノマー(b−1)5〜80質量%、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b−2)0.1〜50質量%、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3)0.1〜50質量%及び上記重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー(b−4)0〜94.8質量%からなるモノマー混合物を添加し、さらに乳化重合させてシェル部共重合体(II)を調製することによって得ることができる。
【0183】
コア部共重合体(I)のエマルションを調製する乳化重合は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、界面活性剤の存在下で、重合開始剤を使用してモノマー混合物を乳化重合することにより、行うことができる。
【0184】
上記界面活性剤及び重合開始剤は、前述のものを用いることができ、その使用量も前述の範囲にて設定することができる。
【0185】
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−2)は、上記で得られるコア部共重合体(I)のエマルションに、疎水性重合性不飽和モノマー(b−1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b−2)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3)及び上記重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー(b−4)からなるモノマー混合物を添加し、さらに重合させてシェル部共重合体(II)を形成することによって、得ることができる。
【0186】
上記シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物は、必要に応じて、前記重合開始剤、連鎖移動剤、還元剤、界面活性剤等の成分を適宜含有することができる。また、当該モノマー混合物は、そのまま滴下することもできるが、該モノマー混合物を水性媒体に分散して得られるモノマー乳化物として滴下することが望ましい。この場合におけるモノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
【0187】
シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物の重合方法としては、例えば、該モノマー混合物又はその乳化物を、一括で又は徐々に滴下して、上記コア部共重合体(I)のエマルションに、添加し、攪拌しながら適当な温度に加熱する方法が挙げられる。
【0188】
かくして得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−2)は、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物の共重合体(I)をコア部とし、疎水性重合性不飽和モノマー(b−1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b−2)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3)及び上記重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー(b−4)からなるモノマー混合物の共重合体(II)をシェル部とする複層構造を有する。
【0189】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)
本発明の水性塗料組成物において、被膜形成性樹脂(A)として、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)を使用することによって、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性等の塗膜性能を向上させることができる。
【0190】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
【0191】
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。かかる酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。
【0192】
上記脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物である。脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0193】
上記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性等の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物を用いることが特に好ましい。
【0194】
前記脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。脂環式構造は、主として4〜6員環構造である。脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0195】
上記脂環族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性等の観点から、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を用いることが好ましく、なかでも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を用いることがより好ましい。
【0196】
前記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の無水物;該芳香族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0197】
上記芳香族多塩基酸としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸を使用することが好ましい。
【0198】
また、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分を使用することもできる。かかる酸成分としては、特に限定されず、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらの酸成分は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0199】
前記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
【0200】
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分を使用することもできる。かかるアルコール成分としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0201】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、150〜250℃程度で、5〜10時間程度加熱し、該酸成分とアルコール成分のエステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法により、水酸基含有ポリエステル樹脂を製造することができる。
【0202】
上記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際には、反応容器中に、これらを一度に添加してもよいし、一方又は両者を、数回に分けて添加してもよい。また、まず、水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られた水酸基含有ポリエステル樹脂に酸無水物を反応させてハーフエステル化させてカルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。また、まず、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を付加させて水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。
【0203】
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
【0204】
また、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、該樹脂の調製中又は調製後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0205】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられ、上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
【0206】
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体;これらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;これらの各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独でもしくは2種以上混合して使用することができる。
【0207】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)としては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性に優れる観点から、原料の酸成分中の脂環族多塩基酸の含有量が、該酸成分の合計量を基準として20〜100モル%程度であるものが好ましく、25〜95モル%程度であるものがより好ましく、30〜90モル%程度であるものが更に好ましい。特に、上記脂環族多塩基酸が、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物であることが、得られる塗膜の平滑性、鮮映性等に優れる観点から、好ましい。
【0208】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、水酸基価が1〜200mgKOH/g程度であるのが好ましく、2〜180mgKOH/g程度であるのがより好ましく、5〜170mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)が、更にカルボキシル基を有する場合は、その酸価が5〜150mgKOH/g程度であるのが好ましく、10〜100mgKOH/g程度であるのがより好ましく、15〜80mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の数平均分子量は、500〜50,000程度であるのが好ましく、1,000〜30,000程度であるのがより好ましく、1,200〜10,000程度であるのが更に好ましい。
【0209】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の中和は塩基性化合物を用いて行なうことができる。該塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、2,2−ジメチル−3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノプロパノール等の第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジ−イソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等の第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール等の第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等のポリアミン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。該塩基性化合物は水溶性であることが好ましい。
【0210】
本発明の水性塗料組成物において、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の配合量は、本塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常2〜70質量部、好ましくは10〜50質量部、さらに好ましくは15〜40質量部の範囲内とすることができる。
【0211】
前記ポリウレタン樹脂としては、例えば、脂肪族および/又は脂環式ジイソシアネート、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール及びポリカーボネートジオールから選ばれる少なくとも1種のジオール、低分子量ポリヒドロキシ化合物及びジメチロールアルカン酸を反応させてウレタンプレポリマーを作製し、これを第3級アミンで中和し、水中に乳化分散させた後、必要に応じてポリアミン等の鎖伸長剤、架橋剤及び/又は停止剤を含む水性媒体と混合して、イソシアネート基が実質的に無くなるまで反応させてなるものを挙げることができる。上記方法により、通常、平均粒径が約0.001〜約3μmの自己乳化型のポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0212】
また、本発明の水性塗料組成物における上記ポリウレタン樹脂の配合量は、本塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常2〜70質量部、好ましくは5〜50質量部、さらに好ましくは8〜30質量部の範囲内とすることができる。
【0213】
硬化剤(B)
硬化剤(B)は、被膜形成性樹脂(A)中の水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基と反応して、本発明の水性塗料組成物を硬化し得る化合物である。硬化剤(B)としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等が挙げられる。これらのうち、水酸基と反応し得るアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物;カルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましい。なかでも、アミノ樹脂及びブロック化ポリイソシアネート化合物が好ましく、アミノ樹脂がさらに好ましい。硬化剤(B)は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0214】
上記アミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
また、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0215】
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましい。特に、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂がより好ましい。
【0216】
また、上記メラミン樹脂は、重量平均分子量が400〜6,000程度であるのが好ましく、800〜5,000程度であるのがより好ましく、1,000〜4,000程度であるのが更に好ましく、1,200〜3,000程度であるのが最も好ましい。
【0217】
なお、本明細書において、前記被膜形成性樹脂(A)及び硬化剤(B)の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0218】
メラミン樹脂としては市販品を使用できる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学社製)等が挙げられる。
【0219】
また、本発明の水性塗料組成物としては、被膜形成性樹脂(A)として、水酸基含有アクリル樹脂(A1)、好ましくは前記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)及び/又はコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)を使用し、かつ硬化剤(B)として、重量平均分子量が1,000〜4,000程度、特に1,200〜3,000程度のメラミン樹脂を使用することが、得られる塗膜のフリップフロップ性及び耐水性に優れる観点から、好ましい。)
また、硬化剤(B)として、メラミン樹脂を使用する場合は、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸;モノブチルリン酸、ジブチルリン酸、モノ2−エチルヘキシルリン酸、ジ2−エチルヘキシルリン酸等のアルキルリン酸エステル;これらの酸とアミン化合物との塩等を触媒として使用することができる。
【0220】
前記ブロック化ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物である。該ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系ブロック剤;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系ブロック剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系ブロック剤;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系ブロック剤;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系ブロック剤;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系ブロック剤;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系ブロック剤;N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系ブロック剤;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系ブロック剤;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系ブロック剤;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾールまたはイミダゾール誘導体;2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0221】
上記1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエート、3−イソシアナトメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート(通称、トリアミノノナントリイソシアネート)等の3価以上の有機ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の2量体又は3量体;これらのポリイソシアネート化合物と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂又は水とをイソシアネート基過剰の条件でウレタン化反応させてなるプレポリマー等が挙げられる。
【0222】
前記カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめたものを使用することができる。該カルボジイミド基含有化合物としては、1分子中に少なくとも2個のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミド化合物を使用することが好ましい。
【0223】
上記ポリカルボジイミド化合物としては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性等の観点から、水溶性又は水分散性のポリカルボジイミド化合物を使用することが好ましい。該水溶性又は水分散性のポリカルボジイミド化合物としては、水性媒体中に安定に溶解又は分散し得るポリカルボジイミド化合物であれば、特に制限なく使用することができる。
【0224】
上記水溶性ポリカルボジイミド化合物としては、具体的には、例えば、「カルボジライトSV−02」、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」「カルボジライトV−04」(いずれも日清紡社製、商品名)等を使用することができる。また、上記水分散性ポリカルボジイミド化合物としては、例えば、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(いずれも日清紡社製、商品名)等を使用することができる。
【0225】
上記ポリカルボジイミド化合物は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0226】
本発明に係る水性塗料組成物における前記被膜形成性樹脂(A)と上記硬化剤(B)との配合割合は、塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性向上の観点から、両者の合計量に基づいて、前者が30〜95質量%程度、好ましくは50〜90質量%程度、さらに好ましくは60〜80質量%程度で、後者が5〜70質量%程度、好ましくは10〜50質量%程度、さらに好ましくは20〜40質量%程度であることが好適である。
【0227】
硬化剤(B)は、本塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常5〜60質量部、好ましくは10〜50質量部、さらに好ましくは20〜40質量部の範囲内で本発明の水性塗料組成物に配合することができる。
【0228】
本発明に係る水性塗料組成物が水酸基含有アクリル樹脂(A1)を含有する場合、水酸基含有アクリル樹脂(A1)の配合量は、上記被膜形成性樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計固形分を基準として、2〜70質量%程度であるのが好ましく、5〜55質量%程度であるのがより好ましく、10〜40質量%程度であるのが更に好ましい。
【0229】
本発明に係る水性塗料組成物が水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)を含有する場合、該水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の配合量は、上記被膜形成性樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計固形分を基準として、2〜70質量%程度であるのが好ましく、5〜55質量%程度であるのがより好ましく、10〜40質量%程度であるのが更に好ましい。
【0230】
水性塗料組成物の調整方法
本発明に係る水性塗料組成物は、例えば、上記被膜形成性樹脂(A)及び前記共重合体、さらに必要に応じて上記硬化剤(B)等を、公知の方法により、水性媒体中に混合し、溶解又は分散せしめることによって調整することができる。
【0231】
上記水性媒体としては、水、又は水に親水性有機溶媒を溶解してなる水−有機溶媒混合溶液等を挙げることができる。上記親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル3−メトキシブタノール等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上混合して使用することができる。上記水−有機溶媒混合溶液において、水と有機溶媒との混合割合は特に制限はないが、有機溶媒の含有量が、混合溶液の1〜50質量%程度、好ましくは5〜35質量%程度であることが好適である。
【0232】
なお、上記水性塗料とは、有機溶剤型塗料と対比される用語であって、一般に、水又は水を主成分とする媒体(水性媒体)に、被膜形成性樹脂、顔料等を分散及び/又は溶解させた塗料を意味する。本発明の塗料組成物が水性塗料である場合、該塗料組成物中における水の含有量は、10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは30〜70質量%の範囲内であることが好適である。
【0233】
本発明に係る水性塗料組成物において、前記被膜形成性樹脂(A)及び共重合体の配合割合は、水性塗料組成物の貯蔵安定性、形成される塗膜の外観、塗膜性能(耐水性等)等の観点から、被膜形成性樹脂(A)100質量部を基準として、共重合体の配合量が、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上であり、かつ好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、最も好ましくは5質量部以下の範囲内であることが好適である。
【0234】
また、本発明に係る水性塗料組成物において、前記共重合体の配合量は、水性塗料組成物の貯蔵安定性、形成される塗膜の外観、塗膜性能(耐水性等)等の観点から、水性塗料組成物100質量部を基準として、0.01〜15質量部、好ましくは0.05〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜5質量部であることが好適である。
【0235】
また、前記被膜形成性樹脂(A)として、(b−1)〜(b−3)成分及び必要に応じて(b−4)成分を共重合することにより得られる酸価1〜100mgKOH/g、水酸基価1〜100mgKOH/gの水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)を用いる場合、本発明の水性塗料組成物は、前記共重合体及び水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)を、該水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、以下に述べる範囲内の量で含有することができる。
共重合体:0.05〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部、さらに好ましくは0.2〜5質量部、
水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’):2〜70質量部、好ましくは5〜55質量部、さらに好ましくは10〜40質量部。
ここで、「水性塗料組成物中の樹脂固形分」は、通常、上記共重合体及び水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)の樹脂固形分と、必要に応じて本発明の水性塗料組成物に添加配合される、その他の樹脂及び硬化剤(B)の固形分との合計である。
【0236】
本発明の共重合体を含有する水性塗料組成物が、粘度の発現性が高く、かつせん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有し、特に、該水性塗料組成物が界面活性剤を含有する場合においても、粘度を発現し、せん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する理由としては、本発明の共重合体の側鎖に存在する重合体が、炭素数4〜24のアルキル基に由来する疎水性を有するため、疎水性相互作用による網状構造が形成されて高い粘度が発現し、さらに、該重合体の数平均分子量が1,000〜10,000の範囲内であり、比較的大きな体積を有するため、該網状構造が界面活性剤によって影響されにくいことが推察される。また、炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)が、分子中にエステル結合を有することにより、上記重合体が、比較的大きな分子量を有するにも関わらず、極端な疎水性を有さないため、側鎖部分が凝集することなく、疎水性相互作用による網状構造が形成されることが推察される。また、水性塗料組成物が被膜形成性樹脂(A)として、エステル結合を有する樹脂を含有する場合、本発明の共重合体の側鎖に存在する炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)中のエステル結合と、被膜形成性樹脂(A)中のエステル結合との親和性が高く、より強固に結合した網状構造が形成されるため、高い粘度が発現することが推察される。
【0237】
本発明の水性塗料組成物は、必要に応じて、さらに、光輝性顔料、着色顔料、体質顔料、疎水性有機溶媒、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料分散剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の塗料用添加剤等を含有することができる。
【0238】
前記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母等を挙げることができる。これらの光輝性顔料は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの光輝性顔料はりん片状であることが好ましい。上記光輝性顔料としては、アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母が好ましく、アルミニウムがさらに好ましい。
【0239】
りん片状の光輝性顔料としては、長手方向寸法が通常1〜100μm程度、好ましくは5〜40μm程度であり、厚さが通常0.001〜5μm程度、好ましくは0.01〜2μm程度のものを好適に用いることができる。
【0240】
本発明の水性塗料組成物は、上記光輝性顔料を含有する場合に、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された光輝性に優れた塗膜を形成できるという利点を有する。
【0241】
本発明の水性塗料組成物が、上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の配合量は、固形分として、被膜形成性樹脂(A)100質量部に対して、通常1〜100質量部程度であることが好ましく、2〜50質量部程度であることがより好ましく、3〜30質量部程度であることが更に好ましい。
【0242】
また、本発明の水性塗料組成物は、被膜形成性樹脂(A)以外に、樹脂成分として、さらにリン酸基含有樹脂を含有することができる。特に、本発明の水性塗料組成物が、上記光輝性顔料、特にアルミニウム顔料を含有する場合、本発明の水性塗料組成物は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、メタリックムラ抑制、及び耐水性の観点から、リン酸基含有樹脂を含有することが好ましい。
【0243】
上記リン酸基含有樹脂は、例えば、リン酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを、溶液重合法等の既知の方法で共重合することによって製造することができる。上記リン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアルキルリン酸の反応生成物等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0244】
上記リン酸基含有樹脂において、上記リン酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを共重合させる際の使用割合は、前者/後者の質量比で、1/99〜40/60程度が好ましく、5/95〜35/65程度がより好ましく、10/90〜30/70程度がさらに好ましい。
【0245】
本発明の水性塗料組成物が、上記リン酸基含有樹脂を含有する場合、該リン酸基含有樹脂の配合量は、被膜形成性樹脂(A)100質量部に対して、通常0.5〜15質量部程度が好ましく、0.75〜10質量部程度がより好ましく、1〜5質量部程度が更に好ましい。
【0246】
前記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。これらの着色顔料は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0247】
本発明の水性塗料組成物が、上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の配合量は、固形分として、被膜形成性樹脂(A)100質量部に対して、通常1〜200質量部程度であることが好ましく、2〜50質量部程度であることがより好ましく、3〜30質量部程度であることが更に好ましい。
【0248】
前記体質顔料としては、例えば、タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。
【0249】
本発明の水性塗料組成物が、上記体質顔料を含有する場合、該体質顔料の配合量は、固形分として、被膜形成性樹脂(A)100質量部に対して、通常1〜200質量部程度であることが好ましく、2〜50質量部程度であることがより好ましく、3〜30質量部程度であることが更に好ましい。
【0250】
前記疎水性有機溶媒としては、20℃において、100gの水に溶解する質量が10g以下、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下の有機溶媒を使用することができる。かかる有機溶媒としては、例えば、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶媒;1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸メチルアミル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル等のエステル系溶媒;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルn−アミルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒を挙げることができる。これらは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0251】
上記疎水性有機溶媒としては、得られる塗膜の光輝性に優れる観点から、アルコール系疎水性有機溶媒が好ましく、炭素数7〜14のアルコール系疎水性有機溶媒がより好ましい。なかでも、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルコール系疎水性有機溶媒が好ましく、2−エチル−1−ヘキサノール及び/又はエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルがより好ましい。
【0252】
本発明に係る水性塗料組成物が、上記疎水性有機溶媒を含有する場合、該疎水性有機溶媒の配合量は、水性塗料組成物中の固形分100質量部を基準として、10〜100質量部程度であるのが好ましく、15〜80質量部程度であるのがより好ましく、20〜60質量部程度であるのが更に好ましい。
【0253】
本発明の水性塗料組成物の固形分は、通常、5〜70質量%程度であるのが好ましく、15〜45質量%程度であるのがより好ましく、20〜35質量%程度であるのが更に好ましい。
【0254】
本発明の水性塗料組成物は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性に優れる観点から、測定温度20℃において、せん断速度を0.0001sec−1から10,000sec−1まで変化させたときの、1,000sec−1における粘度Vが、0.1Pa・sec以下、好ましくは0.01〜0.1Pa・secの範囲内であることが好適である。
【0255】
また、本発明の水性塗料組成物は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性に優れる観点から、測定温度20℃において、せん断速度を0.0001sec−1から10,000sec−1まで変化させたときの、0.1sec−1における粘度Vが、30〜100Pa・sec、好ましくは35〜70Pa・secの範囲内であることが好適である。
【0256】
上記粘度V及び粘度Vは、粘弾性測定装置を用いて、測定することができる。該粘弾性測定装置としては、例えば、「HAAKE RheoStress RS150」 (商品名、HAAKE社製)等を使用することができる。
【0257】
本発明の水性塗料組成物が、前記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1')又はコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1'')を使用する場合に、平滑性、鮮映性及び耐水性に優れた塗膜を形成することができ、さらに光輝性顔料を含有する場合に、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された光輝性に優れた塗膜を形成できる理由としては、前記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1')又はコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1'')に存在する疎水性重合性不飽和モノマーに由来する疎水性基と、本発明の共重合体の側鎖に存在する炭素数4〜24のアルキル基に由来する疎水性基との間に疎水性相互作用による網状構造が形成されるため、粘度の発現性が高く、かつせん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性が発現し、このような粘度特性によって、平滑性、鮮映性及び光輝性に優れた塗膜が形成されることが推察される。また、本発明の共重合体の側鎖に存在する重合体の数平均分子量が1,000〜10,000の範囲内であり、比較的大きな体積を有するため、上記網状構造が、前記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1')又はコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1'')を水中に分散させるために通常使用される界面活性剤によって影響されにくく、最適な粘度特性を維持できることが推察される。また、炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)が、分子中にエステル結合を有することにより、上記重合体が、比較的大きな分子量を有するにも関わらず、極端な疎水性を有さないため、側鎖部分が凝集することなく、疎水性相互作用による網状構造が形成されることが推察される。また、本発明の共重合体の側鎖に存在する炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)に由来するエステル結合と、前記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1')又はコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1'')中に存在するモノマー成分に由来するエステル結合との親和性が高く、より強固に結合した網状構造が形成されるため、高い粘度が発現することが推察される。さらに、前記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1')又はコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1'')中の疎水性重合性不飽和モノマーに由来する疎水性基によって、形成される塗膜の耐水性が向上することが推察される。
【0258】
III.本発明の塗膜形成方法
本発明の水性塗料組成物は、種々の被塗物に、塗装することにより、優れた外観の塗膜を形成することができる。
【0259】
被塗物
本発明の水性塗料組成物を適用する被塗物は、特に限定されない。該被塗物としては、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができる。これらのうち、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0260】
これらの被塗物の材質としては、特に限定されるものではない。例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂、各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;紙、布等の繊維材料等を挙げることができる。これらのうち、金属材料及びプラスチック材料が好ましい。
【0261】
上記被塗物は、上記金属材料やそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、さらに、その上に塗膜が形成されているものであってもよい。
【0262】
塗膜形成を施した被塗物としては、基材に必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜を形成したもの、該下塗り塗膜の上に中塗り塗膜を形成したもの等を挙げることができる。上記下塗り塗膜は、電着塗料、好ましくはカチオン電着塗料によって形成される塗膜であることが好適である。
【0263】
塗装方法
本発明の水性塗料組成物を被塗物に塗装することによりウェット塗膜(未硬化の塗膜)を形成した後、該ウェット塗膜を硬化させることにより、目的の塗膜を形成できる。
【0264】
本発明の水性塗料組成物の塗装方法としては、特に限定されず、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等が挙げられ、これらの塗装方法でウェット塗膜を形成することができる。なかでも、得られる塗膜の平滑性、鮮映性及びフリップフロップ性の向上ならびにメタリックムラ抑制の観点から、エアスプレー塗装又は回転霧化塗装が好ましい。また、塗装に際して、必要に応じて、静電印加してもよい。
【0265】
本発明の水性塗料組成物の塗布量は、硬化膜厚として、通常、1〜50μm程度、好ましくは3〜50μm程度、より好ましくは5〜35μm程度、さらに好ましくは8〜25μm程度となる量であることが好ましい。
【0266】
ウェット塗膜の硬化は、被塗物に本発明の水性塗料組成物を塗装後、加熱することにより行うことができる。加熱は、公知の加熱手段により行うことができる。例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用することができる。加熱温度は、80〜180℃程度が好ましく、100〜170℃程度がより好ましく、120〜160℃程度が更に好ましい。加熱時間は、特に制限されるものではないが、通常、10〜60分間程度が好ましく、20〜40分間程度がより好ましい。
【0267】
本発明の水性塗料組成物の塗装後は、上記加熱硬化を行なう前に、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は、40〜100℃程度が好ましく、50〜90℃程度がより好ましく、60〜80℃程度が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間程度が好ましく、1〜10分間程度がより好ましく、2〜5分間程度が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25℃〜80℃程度の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間程度吹き付けることにより行うことができる。
【0268】
本発明の水性塗料組成物は、ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜からなる複層塗膜を、2コート1ベーク方式で自動車車体等の被塗物に形成する場合に、該ベースコート形成用として、好適に用いることができる。この場合の塗膜形成方法は、下記方法Iに従って、行うことが出来る。
【0269】
方法I
(1)被塗物に、本発明の水性塗料組成物を塗装してベースコート塗膜を形成する工程、
(2)上記の未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤーコート塗料組成物を塗装してクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに
(3)上記の未硬化のベースコート塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜を、加熱して両塗膜を同時に硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
【0270】
上記方法Iにおける被塗物は、下塗り塗膜が形成された自動車車体、下塗り塗膜及び中塗り塗膜が形成されている自動車車体等が好ましい。上記下塗り塗膜は電着塗料によって形成された塗膜であることが好ましく、カチオン電着塗料によって形成された塗膜であることがさらに好ましい。
【0271】
本発明において、硬化塗膜とは、JIS K 5600−1−1(2004)に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600−1−1に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態を含むものである。
【0272】
本発明の水性塗料組成物を、上記方法Iの2コート1ベーク方式で塗装する場合、その塗装膜厚は、硬化膜厚として、3〜40μm程度が好ましく、5〜30μm程度がより好ましく、8〜25μm程度が更に好ましく、10〜18μm程度が更に特に好ましい。また、上記クリヤーコート塗料組成物の塗装膜厚は、硬化膜厚として、10〜80μm程度が好ましく、15〜60μm程度がより好ましく、20〜45μm程度が更に好ましい。
【0273】
また、方法Iにおいて、上記水性塗料組成物の塗装後は、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で前述のプレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。また、上記クリヤーコート塗料組成物の塗装後は、必要に応じて、室温で1〜60分間程度のインターバルをおいたり、40〜80℃程度で1〜60分間程度プレヒートすることができる。
【0274】
上記水性塗料組成物及びクリヤーコート塗料組成物の硬化は、前述した公知の加熱手段により行うことができる。加熱温度は、80〜180℃程度が好ましく、100〜170℃程度がより好ましく、120〜160℃程度が更に好ましい。また、加熱時間は、10〜60分間程度が好ましく、20〜40分間程度がより好ましい。この加熱により、ベースコート及びクリヤーコートの両塗膜を同時に硬化させることができる。
【0275】
また、本発明の水性塗料組成物は、自動車車体等の被塗物に、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤーコート塗膜からなる複層塗膜を、3コート1ベーク方式で形成する場合に、第2着色塗膜形成用として、好適に用いることができる。この場合の塗膜形成方法は、下記方法IIに従って、行うことが出来る。
【0276】
方法II
(1)被塗物に、第1着色塗料組成物を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
(2)上記の未硬化の第1着色塗膜上に、本発明の水性塗料組成物を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、
(3)上記の未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤーコート塗料組成物を塗装してクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに
(4)上記の未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜を、同時に加熱硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
【0277】
上記方法IIは、未硬化の第1着色塗膜上に、前記方法Iの塗膜形成方法を行うものである。方法IIにおける被塗物としては、下塗り塗膜を形成した自動車車体等が好ましい。上記下塗り塗膜は電着塗料によって形成されることが好ましく、カチオン電着塗料によって形成されることがさらに好ましい。
【0278】
前記方法IIにおいて、第1着色塗料組成物の塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で3〜50μm程度が好ましく、5〜30μm程度がより好ましく、10〜25μm程度が更に好ましい。また、本発明の水性塗料組成物の塗装膜厚は、硬化膜厚として、1〜30μm程度が好ましく、3〜25μm程度がより好ましく、5〜20μm程度が更に好ましい。また、クリヤーコート塗料組成物の塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で10〜80μm程度が好ましく、15〜60μm程度とするのがより好ましく、20〜45μm程度が更に好ましい。
【0279】
上記方法IIの具体例としては、例えば、下記方法II−1、方法II−2等を挙げることができる。
【0280】
方法II−1
(1)鋼板に、必要に応じて表面処理を施し、その上に電着塗料を塗装し、加熱硬化させて硬化電着塗膜を形成する工程、
(2)中塗り塗装ブースにおいて、工程(1)で得られた硬化電着塗膜上に、第1着色塗料組成物を塗装して、中塗り塗膜を形成する工程、
(3)ベースコート塗装ブースにおいて、工程(2)で得られた未硬化の中塗り塗膜上に、本発明の水性塗料組成物を塗装して、ベースコートを形成する工程、
(4)クリヤーコート塗装ブースにおいて、工程(3)で得られたベースコート塗面上に、クリヤーコート塗料を塗装してクリヤーコート塗膜を形成する工程、ならびに
(5)工程(2)〜(4)で形成された中塗り塗膜、ベースコート及びクリヤーコートを加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
【0281】
なお、上記ブースは、均一な塗装品質を確保するため、温度、湿度等の塗装環境を一定の範囲内に維持する設備であって、通常、塗装される塗料の種類ごとに分けられている。また、同一のブース内において、被塗物に塗着した塗料のタレ、ムラ等を防止するために、同一塗料が、2回に分けて塗装される場合がある。この場合、1回目の塗装が第1ステージ塗装、2回目の塗装が第2ステージ塗装と呼ばれる。
【0282】
上記方法II−1において、第1着色塗料組成物の塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で5〜50μm程度が好ましく、10〜30μm程度がより好ましく、15〜25μm程度が更に好ましい。また、本発明の水性塗料組成物の塗装膜厚は、硬化膜厚として、3〜30μm程度が好ましく、5〜25μm程度がより好ましく、8〜20μm程度が更に好ましく、9〜16μm程度が更に特に好ましい。また、クリヤーコート塗料組成物の塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で10〜80μm程度が好ましく、15〜60μm程度がより好ましく、20〜45μm程度が更に好ましい。
【0283】
また、上記方法II−1において、第1着色塗料組成物として水性第1着色塗料組成物を用いた場合、該水性第1着色塗料組成物の塗装後は、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で、前述のプレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。
【0284】
方法II−2
(1)鋼板に、必要に応じて表面処理を施し、その上に電着塗料を塗装し、加熱硬化させて硬化電着塗膜を形成する工程、
(2)ベースコート塗装ブースの第1ステージにおいて、工程(1)で得られた硬化電着塗膜上に、第1ベースコート塗料を塗装して、第1ベースコート塗膜を形成する工程、
(3)ベースコート塗装ブースの第2ステージにおいて、工程(2)で得られた第1ベースコート塗膜上に、本発明の水性塗料組成物を塗装して、第2ベースコート塗膜を形成する工程、
(4)クリヤーコート塗装ブースにおいて、工程(3)で得られた第2ベースコート塗膜上に、クリヤーコート塗料を塗装してクリヤーコート塗膜を形成する工程、ならびに
(5)工程(2)〜(4)で形成された第1ベースコート塗膜、第2ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程、
を含む複層塗膜形成方法。
【0285】
上記方法II−2において、第1着色塗料組成物の塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で3〜40μm程度が好ましく、5〜25μm程度がより好ましく、10〜20μm程度が更に好ましい。また、本発明の水性塗料組成物の塗装膜厚は、硬化膜厚として、1〜25μm程度が好ましく、3〜20μm程度がより好ましく、5〜15μm程度が更に好ましい。また、クリヤーコート塗料組成物の塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で10〜80μm程度が好ましく、15〜60μm程度がより好ましく、20〜45μm程度が更に好ましい。
【0286】
上記方法II−2の塗装方法は、中塗り塗装ブースが不要であるため、該中塗り塗装ブースの温度及び湿度を調整するためのエネルギーを削減できるという利点を有する。
【0287】
また、該方法II−2の塗装方法においては、第1着色塗料組成物及び本発明の水性塗料組成物をベースコート塗装ブースで塗装するため、通常、第1着色塗料組成物の塗装と、本発明の水性塗料組成物の塗装との間に加熱用機器が設置されず、一般に、第1着色塗料組成物を塗装して形成される第1ベースコート塗膜に対し、前述のプレヒートが行われない。このため、該方法II−2は、プレヒートのためのエネルギーを削減できるという利点を有する。したがって、省エネルギーの観点から、上記方法II−2の塗装方法においては、第1着色塗料組成物の塗装と、本発明の水性塗料組成物の塗装との間に加熱工程を含まないことが好ましい。
【0288】
また、方法IIにおいて、本発明の水性塗料組成物の塗装後は、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で前述のプレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。また、上記クリヤーコート塗料組成物の塗装後は、必要に応じて、室温で1〜60分間程度のインターバルをおいたり、40〜80℃程度で1〜60分間程度プレヒートすることができる。
【0289】
上記未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜の3層塗膜の加熱硬化は、前述した公知の加熱手段により行うことができる。加熱温度は、80〜180℃程度が好ましく、100〜170℃程度がより好ましく、120〜160℃程度が更に好ましい。また、加熱時間は、10〜60分間程度が好ましく、20〜40分間程度がより好ましい。この加熱により、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤーコート塗膜の三層塗膜を同時に硬化させることができる。
【0290】
上記方法I及びIIで用いられるクリヤーコート塗料組成物としては、自動車車体等の塗装用として公知の熱硬化性クリヤーコート塗料組成物をいずれも使用できる。例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び架橋剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物、水性熱硬化性塗料組成物、粉体熱硬化性塗料組成物等を挙げることができる。
【0291】
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、シラノール基等を挙げることができる。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物等を挙げることができる。
【0292】
クリヤーコート塗料組成物の基体樹脂/架橋剤の組み合わせとしては、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/ブロック化ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂等が好ましい。
【0293】
また、上記クリヤーコート塗料組成物としては、一液型塗料であってもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等の多液型塗料であってもよい。
【0294】
また、上記クリヤーコート塗料組成物には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有させることができ、さらに体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有せしめることができる。
【0295】
上記方法IIで用いられる第1着色塗料組成物としては、例えば、前記方法II−1においては公知の熱硬化性中塗り塗料組成物を使用することができ、前記方法II−2においては公知の熱硬化性ベースコート塗料組成物を使用することができる。具体的には、例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂、架橋剤、着色顔料及び体質顔料を含有する熱硬化性塗料組成物を、好適に使用できる。
【0296】
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基等を挙げることができる。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
第1着色塗料組成物としては、有機溶剤型塗料組成物、水性塗料組成物、粉体塗料組成物のいずれを用いてもよい。これらのうち、水性塗料組成物を用いるのが好ましい。
【0297】
上記方法I及びIIにおいて、第1着色塗料組成物及びクリヤーコート塗料組成物の塗装は、公知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装等の方法によって塗装することができる。
【実施例】
【0298】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明を一層具体的に説明する。但し、本発明は、これらにより限定されない。各例において、「部」及び「%」は、特記しない限り、質量基準による。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づく。
【0299】
マクロモノマー(m−1)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル16部及び2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(以下、「MSD」と略称することがある)3.5部を仕込み、気相に窒素ガスを通気し、攪拌しながら160℃に昇温した。160℃に達したら、n−ブチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルメタクリレート40部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート30部及びジ−tert−アミルパーオキサイド7部からなる混合液を3時間かけて滴下し、同温度で2時間攪拌した。次いで、30℃まで冷却し、エチレングリコールモノブチルエーテルで希釈して固形分65%のマクロモノマー溶液(m−1−1)を得た。得られたマクロモノマーの水酸基価は125mgKOH/g、数平均分子量は2,300であった。また、プロトンNMRでの解析によるとMSD由来のエチレン性不飽和基のうち97%以上がポリマー鎖末端に存在し、2%は消失していた。
なお、上記プロトンNMRでの解析は、溶媒として重クロロホルムを使用し、重合反応前後の、MSDの不飽和基のプロトンに基づくピーク(4.8ppm、5.1ppm)、マクロモノマー鎖末端のエチレン性不飽和基のプロトンに基づくピーク(5.0ppm、5.2ppm)及びMSDに由来する芳香族プロトン(7.2ppm)のピークを測定した後、上記MSDに由来する芳香族プロトン(7.2ppm)は重合反応前後で変化しないと仮定し、これを基準として、各不飽和基(未反応、マクロモノマー鎖末端、消失)を定量化することによって行なった。
【0300】
製造例2〜17
下記第1表に示す配合とする以外は、製造例1と同様にして合成し、固形分65%のマクロモノマー溶液(m−1−1)〜(m−1−17)を得た。
【0301】
第1表に、マクロモノマー溶液(m−1−1)〜(m−1−17)の原料組成(部)、モノマー成分(I)中の炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)の割合、水酸基価(mgKOH/g)及び数平均分子量を示す。
【0302】
【表1】

【0303】
【表2】

【0304】
(注1)「アクリエステルSL」:商品名、三菱レイヨン社製、ドデシルメタクリレートとトリデシルメタクリレートの混合物。
【0305】
製造例18
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル40部を仕込み、気相に窒素ガスを通気し、攪拌しながら130℃に昇温した。130℃に達したら、n−ブチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルメタクリレート40部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート30部、3−メルカプトプロピオン酸5部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)4部からなる混合液を4時間かけて滴下し、同温度で1時間攪拌し、更に2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.5部とエチレングリコールモノブチルエーテル3部からなる混合液を1時間かけて滴下した。次いで、30℃まで冷却して固形分70%のアクリル樹脂溶液を得た。得られたアクリル樹脂溶液にグリシジルメタクリレート6.7部、4−tert−ブチルピロカテコール0.02部及びN,N−ジメチルアミノエタノール0.1部を加えて、液中に空気を通気し、攪拌しながら110℃に昇温した。110℃に達したら、同温度で6時間攪拌した。次いで、30℃まで冷却し、エチレングリコールモノブチルエーテルで希釈して固形分65%のマクロモノマー溶液(m−1−18)を得た。得られたマクロモノマーの水酸基価は147mgKOH/g、数平均分子量は2,400であった。
【0306】
製造例19
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート40部を仕込み、気相に窒素ガスを通気し、攪拌しながら130℃に昇温した。130℃に達したら、n−ブチルメタクリレート50部、2−エチルヘキシルメタクリレート50部、2−メルカプトエタノール4部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)4部からなる混合液を4時間かけて滴下し、同温度で1時間攪拌し、更に2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.5部とジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート3部からなる混合液を1時間かけて滴下した。次いで、30℃まで冷却して固形分70%のアクリル樹脂溶液を得た。得られたアクリル樹脂溶液に2−イソシアナトエチルメタクリレート(商品名:「カレンズMOI」、昭和電工株式会社製)7.6部及び4−tert−ブチルピロカテコール0.02部を加えて、液中に空気を通気し、攪拌しながら90℃に昇温した。90℃に達したら、同温度で5時間攪拌した。次いで、30℃まで冷却し、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートで希釈して固形分65%のマクロモノマー溶液(m−1−19)を得た。得られたマクロモノマーの水酸基価は0mgKOH/g、数平均分子量は2,300であった。
【0307】
製造例20
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル24部及び2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン4部を仕込み、気相に窒素ガスを通気し、攪拌しながら150℃に昇温した。150℃に達したら、n−ブチルメタクリレート15部、2−エチルヘキシルメタクリレート20部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15部及びジ−tert−アミルパーオキサイド3部からなる混合液を3時間かけて滴下し、同温度で1時間30分攪拌した。次いで、115℃まで冷却し、エチレングリコールモノブチルエーテル4.5部で希釈した。次いで、n−ブチルメタクリレート15部、2−エチルヘキシルメタクリレート20部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15部及びアゾビスイソブチロニトリル0.6部からなる混合液を2時間かけて滴下し、同温度で30分間攪拌した。次いでアゾビスイソブチロニトリル0.25部及びエチレングリコールモノブチルエーテル5部からなる混合液を1時間かけて滴下し、同温度で30分攪拌した。次いで、30℃まで冷却しエチレングリコールモノブチルエーテル22部で希釈して固形分65%のマクロモノマー溶液(m−1−20)を得た。得られたマクロモノマーの水酸基価は125mgKOH/g、数平均分子量は2,300であった。
【0308】
製造例21
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル24部及び2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン3.5部を仕込み、気相に窒素ガスを通気し、攪拌しながら160℃に昇温した。160℃に達したら、2−エチルヘキシルメタクリレート40部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部及びジ−tert−アミルパーオキサイド2.6部からなる混合液を3時間かけて滴下し、同温度で1時間30分攪拌した。次いで、120℃まで冷却し、エチレングリコールモノブチルエーテル4.5部で希釈した。次いで、2−エチルヘキシルメタクリレート40部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部及びアゾビスイソブチロニトリル0.6部からなる混合液を2時間かけて滴下し、同温度で30分間攪拌した。次いでアゾビスイソブチロニトリル0.25部及びエチレングリコールモノブチルエーテル5部からなる混合液を1時間かけて滴下し、同温度で30分攪拌した。次いで、30℃まで冷却しエチレングリコールモノブチルエーテル22部で希釈して固形分65%のマクロモノマー溶液(m−1−21)を得た。得られたマクロモノマーの水酸基価は83mgKOH/g、数平均分子量は2,200であった。
【0309】
共重合体の製造
実施例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び2つの滴下装置を備えた反応容器に、製造例1で得たマクロモノマー溶液(m−1−1)15.4部(固形分10部)、エチレングリコールモノブチルエーテル20部及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート30部を仕込み、液中に窒素ガスを吹き込みながら85℃に昇温した。次いで、同温度に保持した反応容器内に、N,N−ジメチルアクリルアミド31.5部、N−イソプロピルアクリルアミド31.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート27部、エチレングリコールモノブチルエーテル10部及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート40部からなる混合液と、「パーブチル O」(商品名、日本油脂社製、重合開始剤、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)0.15部及びエチレングリコールモノブチルエーテル20部からなる混合液とをそれぞれ4時間かけて、同時に反応容器内に滴下し、滴下終了後、同温度で2時間攪拌して熟成を行なった。次いで、同温度に保持した反応容器内に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3部及びエチレングリコールモノブチルエーテル15部からなる混合液を1時間かけて滴下し、滴下終了後、同温度で1時間攪拌して熟成を行なった。次いで、エチレングリコールモノブチルエーテルを添加しながら、30℃まで冷却し、固形分35%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体の重量平均分子量は31万であった。得られた共重合体溶液に脱イオン水215部を添加し、固形分20%の共重合体希釈液(RC−1)を得た。
【0310】
実施例2〜25、比較例1〜5
下記第2表に示す配合とする以外は、実施例1と同様にして合成し、固形分20%の共重合体希釈液(RC−2)〜(RC−30)を得た。
【0311】
下記第2表に、共重合体希釈液(RC−1)〜(RC−30)の原料組成(部)及び重量平均分子量を示す。
【0312】
【表3】

【0313】
【表4】

【0314】
【表5】

【0315】
【表6】

【0316】
(注2)「NK−エステル AM−90G」:商品名、新中村化学工業社製、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー、前記一般式(1)におけるRが水素原子、Rがメチル基、Rがエチレン基、mが9であり、分子量が454。
(注3)「PLEX 6954−0」:商品名、Degussa社製、アルキル基及びポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー(前記一般式(1)におけるRがメチル基、Rが炭素数16〜18のアルキル基、Rがエチレン基、mが25、分子量が約1422)60%、メタクリル酸20%、脱イオン水20%からなる混合物。
【0317】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)の製造
製造例22
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水128部、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA製、乳化剤、有効成分25%)3部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温させた。
【0318】
次いで下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部とを反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径95nm、固形分30%の水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(A1−1)を得た。得られた水分散性水酸基含有アクリル樹脂は、酸価が33mgKOH/g、水酸基価が25mgKOH/gであった。
【0319】
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水40部、「アデカリアソープSR−1025」2.8部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
【0320】
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水17部、「アデカリアソープSR−1025」1.2部、過硫酸アンモニウム0.03部、スチレン3部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、メタクリル酸5.1部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
【0321】
製造例23〜26
下記第3表に示す配合とする以外、製造例22と同様にして合成し、水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(A1−2)〜(A1−5)を得た。
【0322】
第3表に、水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(A1−1)〜(A1−5)の原料組成(部)、固形分(%)、酸価(mgKOH/g)及び水酸基価(mgKOH/g)を示す。
第3表において、コア部用モノマー乳化物中のメチレンビスアクリルアミド及びアリルメタクリレートは、重合性不飽和基を1分子中に2個有する重合性不飽和モノマーである。また、シェル部用モノマー乳化物中のスチレン及び2−エチルヘキシルアクリレートは、疎水性重合性不飽和モノマーである。
【0323】
【表7】

【0324】
また、第3表において、水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(A1−1)〜(A1−5)のうち、(A1−1)〜(A1−3)は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)に該当する。
【0325】
製造例27
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、n−ブチルアクリレート29部、2−ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分55%の水酸基含有アクリル樹脂溶液(A1−6)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂は酸価が47mgKOH/g、水酸基価が72mgKOH/gであった。
【0326】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の製造
製造例28
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物に、カルボキシル基を導入するために、無水トリメリット酸38.3部を加えて、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノール(20℃において100gの水に溶解する質量:0.1g)で希釈し、固形分70%の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A2−1)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、数平均分子量が1,400であった。原料組成において、酸成分中の脂環族多塩基酸の合計含有量は、該酸成分の合計量を基準として46モル%であった。
【0327】
製造例29
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン113部、ネオペンチルグリコール131部、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物80部、イソフタル酸93部及びアジピン酸91部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を導入するために、さらに無水トリメリット酸33.5部を加え、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノールで希釈し、固形分70%の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A2−2)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は,酸価が40mgKOH/g、水酸基価が161mgKOH/g、数平均分子量が1,300であった。原料組成において、酸成分中の脂環族多塩基酸の合計含有量は、該酸成分の合計量を基準として28モル%であった。
【0328】
製造例30
希釈溶剤の2−エチル−1−ヘキサノールを、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル(20℃において100gの水に溶解する質量:無限)とする以外は、製造例28と同様にして、水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A2−3)を得た。
【0329】
アルミニウム顔料分散液の製造
製造例31
攪拌混合容器内において、「GX−180A」(商品名、旭化成メタルズ社製、アルミニウム顔料ペースト、アルミニウム含有量74%)19部(固形分14部)、2−エチル−1−ヘキサノール35部、下記リン酸基含有樹脂溶液8部(固形分4部)及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、アルミニウム顔料分散液(P−1)を得た。
リン酸基含有樹脂溶液:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部、イソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、下記リン酸基含有重合性モノマー15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部、t−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分濃度50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。本樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
リン酸基含有重合性モノマー:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部、イソブタノール41部を入れ、90℃に昇温後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノ−ル59部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーの酸価は285mgKOH/gであった。
【0330】
製造例32
2−エチル−1−ヘキサノール35部を、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル35部に変更する以外は、製造例31と同様にして、アルミニウム顔料分散液(P−2)を得た。
【0331】
水性塗料組成物の製造
実施例26
撹拌混合容器に、製造例22で得た水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(A1−1)100部(固形分30部)、製造例27で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(A1−6)18部(固形分10部)、製造例28で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A2−1)43部(固形分30部)、製造例31で得たアルミニウム顔料分散液(P−1)62部及びメラミン樹脂(B−1)(メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分60%、重量平均分子量2,000)50部(固形分30部)を入れ、均一に混合し、更に、実施例1で得た共重合体希釈液(RC−1)5部(固形分1部)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、固形分25%の水性塗料組成物(X−1)を得た。
また、得られた水性塗料組成物(X−1)について、測定温度20℃において、せん断速度を0.0001sec−1から10,000sec−1まで変化させたときの、1,000sec−1における粘度Vと0.1sec−1における粘度Vとを、粘弾性測定装置「HAAKE RheoStress RS150」 (商品名、HAAKE社製)を用いて測定した。
【0332】
実施例27〜57及び比較例6〜12
配合組成を下記第4表に示す通りとする以外は、実施例26と同様にして、pH8.0、固形分25%の水性塗料組成物(X−2)〜(X−39)を得た。
【0333】
【表8】

【0334】
【表9】

【0335】
【表10】

【0336】
【表11】

【0337】
(注4)メラミン樹脂(B−2):メチルエーテル化メラミン樹脂、固形分80%、重量平均分子量800。
(注5)「バイヒジュールVPLS2310」:商品名、住化バイエルウレタン社製、ブロック化ポリイソシアネート化合物、固形分38%。
(注6)「ACRYSOL RM−825」:商品名、ロームアンドハース社製、ウレタン会合型粘性調整剤、固形分25%。
【0338】
被塗物の作製
製造例33
30cm×45cmのリン酸亜鉛処理された冷延鋼板に、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料組成物(商品名「エレクロンGT−10」、関西ペイント社製)を膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分加熱して硬化させた。次いで、この電着塗膜上に中塗り塗料組成物(商品名「TP−65−2」、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂・アミノ樹脂系有機溶剤型塗料組成物)を膜厚35μmになるように塗装し、140℃で30分間加熱して硬化させた。かくして、鋼板上に電着塗膜及び中塗り塗膜を形成してなる被塗物を作製した。
【0339】
塗膜形成方法
実施例58
実施例22で得られた水性塗料組成物(X−1)を、前記塗膜形成方法Iの2コート1ベーク方式におけるベースコート形成用塗料として使用して、被塗物上にベースコート及びクリヤーコートからなる複層塗膜を形成した。
即ち、製造例33で得た被塗物に、水性塗料組成物(X−1)を、回転霧化型のベル型塗装機を用いて、膜厚15μmとなるように塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、その未硬化塗面上にアクリル樹脂系有機溶剤型上塗りクリヤーコート塗料組成物(商品名「マジクロンKINO−1210」、関西ペイント社製)を膜厚40μmとなるように塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱してこの両塗膜を同時に硬化させた。かくして、被塗物上にベースコート及びクリヤーコートからなる複層塗膜が形成された試験板を得た。
【0340】
実施例59〜89及び比較例13〜19
水性塗料組成物(X−1)に代えて、第5表に示した水性塗料組成物を用いる以外は、実施例58と同様にして、実施例59〜89及び比較例13〜19の試験板を得た。
【0341】
評価試験1
上記実施例58〜89及び比較例13〜19で得られた各試験板について、鮮映性、フリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性の評価を行なった。試験方法は、下記の通りである。
【0342】
鮮映性:各試験板について、「Wave Scan」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるShort Wave(SW)値に基づいて、鮮映性を評価した。SW値が小さいほど塗面の鮮映性が高いことを示す。
【0343】
フリップフロップ性:角度を変えて各試験板を目視し、下記基準でフリップフロップ性を評価した。
A:目視の角度による明度の変化が顕著である(極めて優れたフリップフロップ性を有する)。
B:目視の角度による明度の変化が大きい(フリップフロップ性に優れる)。
C:目視の角度による明度の変化がやや小さい(フリップフロップ性がやや劣る)。
D:目視の角度による明度の変化が小さい(フリップフロップ性が劣る)。
【0344】
メタリックムラ:各試験板を目視にて観察し、メタリックムラの発生程度を下記基準で評価した。
A:メタリックムラがほとんど認められず、極めて優れた塗膜外観を有する。
B:メタリックムラがわずかに認められるが、優れた塗膜外観を有する。
C:メタリックムラが認められ、塗膜外観がやや劣る。
D:メタリックムラが多く認められ、塗膜外観が劣る。
【0345】
耐水性:試験板を、40℃の温水に240時間浸漬後引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、試験板上の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べた。耐水性の評価基準は、次の通りである。
A:ゴバン目塗膜が100個残存し、かつフチカケが生じていない、
B:ゴバン目塗膜が100個残存しているが、フチカケが生じている、
C:ゴバン目塗膜が90〜99個残存している、
D:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。
【0346】
総合評価
本発明の属する自動車等の塗装においては、鮮映性、フリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性の全てが優れていることが求められる。従って、下記の基準で総合評価を行った。
A:鮮映性((SW)値)が12以下であり、かつフリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性が全てAである。
B:鮮映性((SW)値)が12以下であり、フリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性が全てA又はBであり、かつ少なくとも1つがBである。
C:鮮映性((SW)値)が12以下であり、フリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性が全てA、B又はCであり、かつ少なくとも1つがCである。
D:鮮映性((SW)値)が13以上であるか、又はフリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性のうち少なくとも1つがDである。
【0347】
第5表に、塗膜性能の試験結果を示す。
【0348】
【表12】

【0349】
共重合体の製造
実施例90〜120、比較例20〜24
下記第6表に示す配合とする以外は、実施例1と同様にして合成し、固形分20%の共重合体希釈液(RC−31)〜(RC−66)を得た。
【0350】
下記第6表に、共重合体希釈液(RC−31)〜(RC−66)の原料組成(部)及び重量平均分子量を示す。
【0351】
【表13】

【0352】
【表14】

【0353】
【表15】

【0354】
【表16】

【0355】
(注2)「NK−エステル AM−90G」:前記に同じ。
(注3)「PLEX 6954−0」:前記に同じ。
【0356】
水性塗料組成物の製造
実施例121〜158及び比較例25〜31
配合組成を下記第7表に示す通りとする以外は、実施例26と同様にして、pH8.0、固形分25%の水性塗料組成物(X−40)〜(X−84)を得た。
【0357】
【表17】

【0358】
【表18】

【0359】
【表19】

【0360】
【表20】

【0361】
【表21】

【0362】
(注4)メラミン樹脂(B−2):前記に同じ。
(注5)「バイヒジュールVPLS2310」:前記に同じ。
(注6)「ACRYSOL RM−825」:前記に同じ。
【0363】
塗膜形成方法
実施例159〜196及び比較例32〜38
水性塗料組成物(X−1)に代えて、第8表に示した水性塗料組成物を用いる以外は、実施例58と同様にして、実施例159〜196及び比較例32〜38の試験板を得た。
【0364】
評価試験2
上記実施例159〜196及び比較例32〜38で得られた各試験板について、鮮映性、フリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性の評価ならびにこれらの総合評価を行なった。各試験方法は、前述の評価試験1に記載の通りである。
【0365】
第8表に、塗膜性能の試験結果を示す。
【0366】
【表22】

【0367】
共重合体の製造
実施例197〜228及び比較例39〜43
下記第9表に示す配合とする以外は、実施例1と同様にして合成し、固形分20%の共重合体希釈液(RC−67)〜(RC−103)を得た。
【0368】
下記第9表に、共重合体希釈液(RC−67)〜(RC−103)の原料組成(部)及び重量平均分子量を示す。
【0369】
【表23】

【0370】
【表24】

【0371】
【表25】

【0372】
【表26】

【0373】
(注2)「NK−エステル AM−90G」:前記に同じ。
(注3)「PLEX 6954−0」::前記に同じ。
【0374】
製造例34〜47
下記第10表に示す配合とする以外、製造例22と同様にして合成し、水分散性アクリル樹脂水分散液(A1−7)〜(A1−20)を得た。
【0375】
第10表に、水分散性アクリル樹脂水分散液(A1−7)〜(A1−20)の原料組成(部)、固形分(%)、酸価(mgKOH/g)及び水酸基価(mgKOH/g)を示す。
【0376】
【表27】

【0377】
【表28】

【0378】
また、第10表において、水分散性アクリル樹脂水分散液(A1−7)〜(A1−20)のうち、(A1−7)〜(A1−17)及び(A1−19)は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)に該当し、(A1−7)〜(A1−17)は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−2)に該当する。
【0379】
水性塗料組成物の製造
実施例229〜275及び比較例44〜50
配合組成を下記第11表に示す通りとする以外は、実施例1と同様にして、pH8.0、固形分25%の水性塗料組成物(X−85)〜(X−138)を得た。
【0380】
【表29】

【0381】
【表30】

【0382】
【表31】

【0383】
【表32】

【0384】
【表33】

【0385】
(注4)メラミン樹脂(B−2):前記に同じ。
(注5)「バイヒジュールVPLS2310」:前記に同じ。
(注6)「ACRYSOL RM−825」:前記に同じ。
【0386】
塗膜形成方法
実施例276〜322及び比較例51〜57
水性塗料組成物(X−1)に代えて、第12表に示した水性塗料組成物を用いる以外は、実施例58と同様にして、実施例276〜322及び比較例51〜57の試験板を得た。
【0387】
評価試験3
上記実施例276〜322及び比較例51〜57で得られた各試験板について、平滑性、鮮映性、フリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性の評価を行なった。試験方法は、下記の通りである。
【0388】
平滑性:各試験板について、「Wave Scan」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるLong Wave(LW)値に基づいて、平滑性を評価した。LW値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを示す。
【0389】
鮮映性、フリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性は、前述の評価試験1に記載の方法により、試験及び評価を行った。
【0390】
本発明の属する自動車等の塗装においては、鮮映性、フリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性が優れていることに加え、平滑性が高いのが好ましい。従って、評価試験3においては、下記の基準で総合評価を行った。
A:平滑性((LW)値)が10以下であり、鮮映性((SW)値)が12以下であり、かつフリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性が全てAである。
B:平滑性((LW)値)が10以下であり、鮮映性((SW)値)が12以下であり、フリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性が全てA又はBであり、かつ少なくとも1つがBである。
C:平滑性((LW)値)が10以下であり、鮮映性((SW)値)が12以下であり、フリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性が全てA、B又はCであり、かつ少なくとも1つがCである。
D:平滑性((LW)値)が11以上であるか、鮮映性((SW)値)が13以上であるか、又はフリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性のうち少なくとも1つがDである。
【0391】
第12表に、塗膜性能の試験結果を示す。
【0392】
【表34】

【0393】
【表35】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(m−1)炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)を5〜100質量%含有するモノマー成分(I)を重合することにより得られる1,000〜10,000の範囲内の数平均分子量を有する重合体鎖からなる基本骨格を有し、かつ重合性不飽和基を有するマクロモノマー及び
(m−2)親水基を有する重合性不飽和モノマー
を含有するモノマー成分(m)を共重合することにより得られる共重合体。
【請求項2】
(m−2)成分が、N−置換(メタ)アクリルアミド、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー及びN−ビニル−2−ピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種のノニオン性の親水基を有する重合性不飽和モノマーであり、かつ該(m−1)及び(m−2)成分の含有割合が、モノマー成分(m)の合計質量を基準にして、(m−1)成分が1〜29質量%の範囲内であり、かつ(m−2)成分が20〜99質量%の範囲内である、請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
モノマー成分(I)が、少なくともその一部として、水酸基含有重合性不飽和モノマーを、モノマー成分(I)の合計質量を基準として、5〜60質量%含有する請求項1又は2に記載の共重合体。
【請求項4】
(m−2)成分が、アクリル酸及びメタクリル酸より選ばれる少なくとも1種の親水基を有する重合性不飽和モノマーであり、かつ該(m−1)及び(m−2)成分の含有割合が、モノマー成分(m)の合計質量を基準にして、(m−1)成分が1〜40質量%の範囲内であり、かつ(m−2)成分の合計質量が5〜75質量%の範囲内である、請求項1又は3に記載の共重合体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の共重合体及び被膜形成性樹脂(A)を含有する水性塗料組成物。
【請求項6】
前記被膜形成性樹脂(A)が(b−1)疎水性重合性不飽和モノマー5〜70質量%、(b−2)水酸基含有重合性不飽和モノマー0.1〜25質量%、(b−3)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー0.1〜20質量%及び(b−4)上記重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー0〜94.8質量%からなるモノマー成分(b)を共重合することにより得られる酸価1〜100mgKOH/g、水酸基価1〜100mgKOH/gの水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)である、請求項5に記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
(m−2)成分が、N−置換(メタ)アクリルアミド、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマーである請求項5又は6に記載の水性塗料組成物。
【請求項8】
モノマー成分(m)が、モノマー成分(m)の合計質量を基準にして、(m−1)成分を1〜40質量%、(m−2)成分を5〜99質量含有する、請求項5〜7のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【請求項9】
水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)が、コア・シェル型構造を有し、かつコア部が、コア部を構成するモノマー成分の合計質量を基準として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%をモノマー成分とする共重合体(I)であり、かつコア部とシェル部とを構成するモノマー成分の合計量における各モノマーの含有割合が、コア部とシェル部とを構成するモノマー成分の合計質量を基準として、疎水性重合性不飽和モノマー(b−1)5〜70質量%、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b−2)0.1〜25質量%、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3)0.1〜20質量%及び上記重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー(b−4)0〜94.8質量%のコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)である請求項6〜8のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【請求項10】
水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)が、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%をモノマー成分とする共重合体(I)であるコア部と、疎水性重合性不飽和モノマー(b−1)5〜80質量%、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b−2)0.1〜50質量%、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b−3)0.1〜50質量%及び上記重合性不飽和モノマー(b−1)〜(b−3)以外の重合性不飽和モノマー(b−4)0〜94.8質量%をモノマー成分とする共重合体(II)であるシェル部とからなり、かつ該共重合体(I)と共重合体(II)との固形分質量比が、共重合体(I)/共重合体(II)=5/95〜95/5の範囲内のコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−2)である請求項6〜8のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【請求項11】
被膜形成性樹脂(A)が、エステル結合を有する樹脂である請求項5〜10のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【請求項12】
被膜形成性樹脂(A)が、界面活性剤を用いた乳化重合によって得られる水分散性アクリル樹脂である請求項5〜11のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【請求項13】
請求項5〜12のいずれか一項に記載の水性塗料組成物が塗装された物品。
【請求項14】
(1)被塗物に、請求項5〜12のいずれか一項に記載の水性塗料組成物を塗装してベースコートを形成する工程、
(2)上記の未硬化のベースコート塗面上に、クリヤーコート塗料組成物を塗装してクリヤーコートを形成する工程、並びに
(3)上記の未硬化のベースコート及び未硬化のクリヤーコートを、加熱して両塗膜を同時に硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
【請求項15】
(1)被塗物に、第1着色塗料組成物を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
(2)上記の未硬化の第1着色塗膜上に、請求項5〜12のいずれか一項に記載の水性塗料組成物を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、
(3)上記の未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤーコート塗料組成物を塗装してクリヤーコートを形成する工程、並びに
(4)上記の未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤーコートを、同時に加熱硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の複層塗膜形成方法により形成された複層塗膜を有する物品。
【請求項17】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の共重合体からなる粘性調整剤。

【公開番号】特開2011−225802(P2011−225802A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200548(P2010−200548)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】