説明

共重合体、該共重合体を含有する水性塗料組成物及び複層塗膜形成方法

【課題】粘度の発現性が高く、かつせん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する水性塗料組成物を提供すること、特に、界面活性剤及び/又は親水性有機溶媒を含有しても、粘度を発現し、かつせん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する水性塗料組成物を提供すること。
【解決手段】ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー、ウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー、及びイミド結合を有する重合性不飽和モノマーの中から選ばれる少なくとも一種以上の含窒素重合性不飽和モノマーを有するマクロモノマーを共重合してなる共重合体(A)、並びに該含窒素重合性不飽和モノマーの中から選ばれる一種以上の重合性不飽和モノマーを共重合成分とし、かつ水分散体であることを特徴とするアクリル樹脂(B)を含有する水性塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー、ウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー、及びイミド結合を有する重合性不飽和モノマーの中から選ばれる少なくとも一種以上の水素結合性を有する含窒素重合性不飽和モノマー、並びにそれ以外の重合性不飽和モノマーからなるモノマー成分を共重合することにより得られる重合性不飽和基を有するマクロモノマーと親水基を有する重合性不飽和モノマーとを含有するモノマー成分を共重合してなる共重合体(A)、及び該含窒素重合性不飽和モノマー及びそれ以外の重合性不飽和モノマーを共重合してなり、かつ水分散体であることを特徴とするアクリル樹脂(B)を含有することを特徴とする水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の優れた外観が要求される被塗物に対する塗装は、形成される塗膜の外観や生産効率等の観点から、一般に、塗料を微粒化して塗装する方法が用いられる。このような塗装方法としては、具体的には、例えば、スプレー塗装、回転霧化塗装等が挙げられる。
【0003】
塗料を微粒化して塗装する場合、使用される塗料は、一般に、スプレー時、回転霧化時等の塗料微粒化時には、その粘度が低く、より小さな塗料粒子が形成されることが、平滑性に優れた塗膜が形成されるため、好ましい。また、一方で、塗料が被塗物に塗着した後は、塗料粘度が比較的高いことが、上層に塗装される塗料との混層が起こりにくく、鮮映性に優れた塗膜が形成され、更に被塗物の垂直面で塗膜が垂れにくくなるため、好ましい。また、上記塗料がアルミニウム顔料等の光輝性顔料を含有する場合、該塗料が被塗物に塗着した後の塗料粘度が高いと、塗料中の光輝性顔料が動きにくく、配向が乱れにくくなるため、光輝性に優れた塗膜を形成することができる。なお、光輝性に優れた塗膜とは、一般に、角度を変えて塗膜を観察した際に、観察の角度による明度の変化が顕著であり、さらに、光輝性顔料が塗膜中に比較的均一に存在して、メタリックムラがほとんど見られない塗膜をいう。また、上記のように、観察の角度による明度の変化が顕著であることは、一般に、フリップフロップ性が高いといわれる。
【0004】
上記のような理由から、微粒化時のようにせん断速度が大きい時は粘度が低く、塗料静置時や塗着時のようにせん断速度が小さい時は粘度が高い塗料であることが、貯蔵性(顔料沈降性又は色分かれ性など)や優れた外観を有する塗膜を形成することができるため、好ましい。すなわち、せん断速度の増加と共に粘度が低下する塗料であることが好適である。
【0005】
ところで、最近は、有機溶剤の揮散による環境汚染を抑制する観点から、水性塗料の開発が特に進められており、該水性塗料の代表的なバインダーの一つとして水溶性又は水分散性のアクリル樹脂が広く用いられてきている。
【0006】
上記水性塗料において、せん断速度の増加と共に粘度を低下させる手段としては、塗料中に会合型増粘剤を配合する方法が挙げられる。該会合型増粘剤は、一般に、1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性塗料中において、親水性部分が水溶液中での安定性に寄与し、疎水性部分が水性塗料中に配合している顔料やアクリル・エマルション粒子の表面に吸着したり、疎水性部分同士が会合したりすることにより、網状構造を形成し、効果的に増粘作用を示す増粘剤である。また、会合による増粘効果を上げるため、該アクリル・エマルション粒子においては、疎水性モノマーを含有する事が好ましい。
【0007】
上記会合型増粘剤は、通常、疎水性相互作用によって網状構造を形成し、粘度を発現する。一方で、大きなせん断力が加わった場合は、疎水性相互作用及び網状構造が崩れ、粘度が低下する。このため、該会合型増粘剤を含有する水性塗料は、せん断速度の増加と共に粘度が低下する粘性特性を有する。
【0008】
上記水性塗料は、一般に、疎水性の樹脂成分を水中に分散させるため、界面活性剤を含有する場合がある。また、水溶性樹脂、添加剤、又は顔料分散ペ−ストを配合する場合、含有する親水性有機溶媒が水性塗料に持ち込まれる場合がある。
【0009】
しかしながら、上記界面活性剤及び/又は親水性有機溶媒を含有する水性塗料において、会合型増粘剤を使用する場合、会合型増粘剤による粘度が発現しにくくなり、形成される塗膜の鮮映性や光輝性が低下する場合があるため、課題とされていた。具体的には、該水性塗料が被塗物に塗着した時の粘度が低いため、上層に塗装される塗料との間に混層が生じて、形成される塗膜の平滑性や鮮映性が低下したり、水性塗料が光輝性顔料を含有する場合に、塗料が塗着した後に塗料中の光輝性顔料が動き、光輝性顔料の配向が不規則になって、フリップフロップ性が低下したり、メタリックムラが発生したりする場合があった。一方で、水性塗料中の会合型増粘剤の含有量を増やすことにより、塗着した時の粘度を高くする場合は、せん断速度が大きい時の粘度も高くなり、塗料を微粒化した時の塗料粒子が大きくなるため、形成される塗膜の平滑性が劣る場合があった。
【0010】
例えば、特許文献1には、親水性ポリマーを疎水化修飾して得られる、及び/又は、疎水性ポリマーを親水化修飾して得られる、疎水性部分と親水性部分とを備える粘性制御剤は、水性分散体の粘度の濃度依存性を低減することができ、さらに、該粘性制御剤を用いた水性塗料は、塗装条件、特に温湿度条件の変動にかかわらず、安定したフロー性を発揮し、安定的に良好な仕上がりの塗膜が得られることが記載されている。しかしながら、該粘性制御剤は、粘度の発現が不十分な場合があった。特に、該粘性制御剤を、界面活性剤及び/又は親水性有機溶媒を含有する塗料中で使用した場合、十分な粘度が得られず、形成される塗膜の鮮映性及びフリップフロップ性が低下したり、メタリックムラが発生したりする傾向があった。
【0011】
また、特許文献2には、少なくとも2個のアミノ基を分子の末端に有するポリエチレングリコール類に、アミノ基1個当たりアルケニルこはく酸無水物ないしアルキルこはく酸無水物が1分子付加した会合型増粘剤が、該会合型増粘剤の添加量の変動により粘度が大きく変動することがなく、溶液調整の作業性を向上させ、製品の品質管理を容易にするため、ラテックスや水性塗料の増粘剤として優れていることが記載されている。しかしながら、該会合型増粘剤は、粘度の発現が不十分な場合があった。特に、該会合型増粘剤を、界面活性剤及び/又は親水性有機溶媒を含有する塗料中で使用した場合、十分な粘度が得られず、形成される塗膜の鮮映性及びフリップフロップ性が低下したり、メタリックムラが発生したりする傾向があった。
【0012】
また、特許文献3には、特定の構造を有するウレタン系増粘剤が、増粘性とチクソトロピック性に優れた増粘、粘度調整剤となることが記載されている。なお、チクソトロピック性とは、上述の、せん断速度の増加と共に粘度が低下する粘性特性のことである。しかしながら、該ウレタン系増粘剤は、粘度の発現が不十分な場合があった。特に、該ウレタン系増粘剤を、界面活性剤及び/又は親水性有機溶媒を含有する塗料中で使用した場合、十分な粘度が得られず、形成される塗膜の鮮映性及びフリップフロップ性が低下したり、メタリックムラが発生したりする傾向があった。
【0013】
また、特許文献4には、特定の構造を有するエマルション樹脂、ウレタン系粘性調整剤、及び疎水性溶媒を含有する水性塗料組成物が、メタリックムラが少なく、フリップフロップ性及び平滑性に優れた塗膜を形成し得ることが記載されている。しかしながら、該エマルション樹脂、ウレタン系粘性調整剤、及び疎水性溶媒を含有する水性塗料組成物でも、粘度の発現が不十分な場合があった。特に、該水性塗料組成物が界面活性剤及び/又は親水性有機溶媒を含有した場合、十分な粘度が得られず、形成される塗膜の鮮映性及びフリップフロップ性が低下したり、メタリックムラが発生したりする傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−1662号公報
【特許文献2】特開平9−272796号公報
【特許文献3】特開2002−69430号公報
【特許文献4】WO2007/126134号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、粘度の発現性が高く、かつ、せん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する水性塗料組成物を提供すること、特に、界面活性剤及び/又は親水性有機溶媒を含有する水性塗料の場合においても、粘度を発現し、かつ、せん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する水性塗料組成物を提供することである。また、本発明の他の目的は、優れた平滑性及び鮮映性を有する塗膜を形成できる水性塗料組成物を提供することである。また、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された、優れた光輝性を有する塗膜を形成できる水性塗料組成物を提供することである。また、該水性塗料組成物を使用した塗膜形成方法及び該水性塗料組成物が塗装された物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、今回、主鎖及び側鎖を有するグラフトポリマー構造を持ち、該主鎖が親水基を有する重合性不飽和モノマーを含有するモノマー成分を重合することにより得られ、かつ該側鎖が、ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー、ウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー、及びイミド結合を有する重合性不飽和モノマーの中から選ばれる少なくとも一種以上の水素結合性を有する含窒素不飽和モノマーを重合することにより得られる比較的高分子量の重合体を含む共重合体、並びに少なくとも一種以上の該含窒素不飽和モノマーを有する重合性不飽和モノマーを共重合してなり、かつ水分散体であることを特徴とするアクリル樹脂を含有する水性塗料組成物が、疎水会合及び水素結合による網状構造を形成することによって、粘度の発現性が高く、かつ、せん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有することを見出した。特に、該水性塗料組成物は、界面活性剤及び/又は親水性有機溶媒を含有しても、粘度を発現し、かつせん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する。
【0017】
すなわち、本発明は、以下の共重合体及びアクリル樹脂を含有する水性塗料組成物、該水性塗料組成物を使用した塗膜形成方法、及び該水性塗料組成物が塗装された物品を提供するものである。
1.ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a)、ウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー(b)、及びイミド結合を有する重合性不飽和モノマー(c)の中から選ばれる少なくとも一種以上の水素結合性を有する含窒素重合性不飽和モノマー(I)5〜100質量%、並びにそれ以外の重合性不飽和モノマー(II)0〜95質量%からなるモノマー成分(l)を重合することにより得られる1,000〜10,000の範囲内の数平均分子量を有する重合体からなる基本骨格を有し、かつ重合性不飽和基を有するマクロモノマー(m−1)と親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)とを含有するモノマー成分(m)を共重合してなる共重合体(A)、及び共重合体(A)以外の、ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a)、ウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー(b)、及びイミド結合を有する重合性不飽和モノマー(c)の中から選ばれる少なくとも一種以上の水素結合性を有する含窒素重合性不飽和モノマー(I)及びそれ以外の重合性不飽和モノマー(II)を共重合してなり、かつ水分散体であることを特徴とするアクリル樹脂(B)を含有することを特徴とする水性塗料組成物。
2.共重合体(A)の共重合成分である親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)が、N−置換(メタ)アクリルアミド、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の重合性不飽和モノマーである上記項1に記載の水性塗料組成物。
3.共重合体(A)のモノマー成分(m)の合計質量を基準にして、共重合成分が重合性不飽和基を有するマクロモノマー(m−1)1〜40質量%、親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)5〜99質量%ならびに上記重合性不飽和モノマー(m−1)及び(m−2)以外の重合性不飽和モノマー(m−3)0〜94質量%からなることを特徴とする上記項1又は2に記載の水性塗料組成物。
4.共重合体(A)において、モノマー成分(l)が、少なくともその一部として水酸基含有重合性不飽和モノマーを、モノマー成分(l)の合計質量を基準として5〜60質量%含有する上記項1〜3のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
5.アクリル樹脂(B)の共重合成分であるウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a)がN−メタクリロイルオキシエチル−N’−エチルウレア及び/又はN−メタクリロイルオキシエチル−N’−ブチルウレアであることを特徴とする上記項1〜4のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
6.アクリル樹脂(B)の共重合成分である水素結合性を持つ含窒素重合性不飽和モノマー(I)とそれ以外の重合性不飽和モノマー(II)の質量比率が1/99〜50/50であることを特徴とする上記項1〜5のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
7.アクリル樹脂(B)が乳化重合により共重合してなるものであることを特徴とする上記項1〜6のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
8.アクリル樹脂(B)がコア・シェル構造を有し、コアとシェルの質量比が10/90〜90/10であり、かつそのシェル部において水素結合性を有する含窒素重合性不飽和モノマー(I)の量がシェル部を構成する重合性不飽和モノマーの総量の3〜70質量%であることを特徴とする上記項7に記載の水性塗料組成物。
9.シェル部を構成する重合性不飽和モノマーの総量の20〜80質量%が、炭素数4以上の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーであることを特徴とする上記項8に記載の水性塗料組成物。
10.上記項1〜9のいずれか1項に記載の水性塗料組成物が塗装された物品。
11.(1)被塗物に、上記項1〜9のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装してベースコート塗膜を形成する工程、
(2)上記の未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤーコート塗料組成物を塗装してクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに
(3)上記の未硬化のベースコート塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜を、加熱して両塗膜を同時に硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
12.(1)被塗物に、第1着色塗料組成物を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
(2)上記の未硬化の第1着色塗膜上に、水性塗料組成物を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、
(3)上記の未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤーコート塗料組成物を塗装してクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに
(4)上記の未硬化の第1着色塗膜、上記の未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜を、同時に加熱硬化させる工程
を含み、上記第2着色塗料組成物が上記項1〜9のいずれか1項に記載の水性塗料組成物である複層塗膜形成方法
13.上記項11又は12に記載の複層塗膜形成方法により形成された複層塗膜を有する物品。
【発明の効果】
【0018】
本発明の水性塗料組成物は、粘度の発現性が高く、かつ、せん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する。特に、界面活性剤及び/又は親水性有機溶媒を含有する場合においても、粘度を発現し、せん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する。また、本発明の水性塗料組成物によれば、優れた平滑性及び鮮映性を有し、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた光輝性を有する塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の水性塗料組成物について詳細に説明する。
【0020】
I.本発明の水性塗料組成物
本発明の水性塗料組成物(以下、「本塗料」と略称する場合がある。)は、共重合体(A)及びアクリル樹脂(B)を含有する。
【0021】
上記共重合体(A)は、ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a)、ウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー(b)、及びイミド結合を有する重合性不飽和モノマー(c)の中から選ばれる少なくとも一種以上の水素結合性を有する含窒素重合性不飽和モノマー(I)5〜100質量%、並びにそれ以外の重合性不飽和モノマー(II)0〜95質量%からなるモノマー成分(l)を重合することにより得られる1,000〜10,000の範囲内の数平均分子量を有する重合体からなる基本骨格を有し、かつ重合性不飽和基を有するマクロモノマー(m−1)と親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)とを含有するモノマー成分(m)を共重合して得られるものである。
【0022】
共重合体(A)を用いた水性塗料組成物は、粘度の発現性が高く、かつ、せん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有するため、優れた平滑性、鮮映性、及び光輝性を有する塗膜を形成することができる。特に、界面活性剤及び/又は前記親水性有機溶媒を含有する水性塗料中においても、粘度を発現し、せん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する。このような優れた粘度特性を有するため、本発明において、共重合体(A)は粘性調整剤としての役割を有する。
【0023】
ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a)
ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a)は、−NH−CO−NH−で表されるウレア結合(尿素結合ともいう)を有する重合性不飽和モノマーである。
【0024】
上記ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a)は、例えば、下記イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと、アミン化合物とを反応させることによって得ることができる。
【0025】
イソシアネート基含有重合性不飽和モノマー
イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート;m−イソプロペニル−α、α-ジメチルベンジルイソシアネート;水酸基含有重合性不飽和モノマー及びジイソシアネート化合物の反応生成物;水酸基含有重合性不飽和モノマー、ジオール化合物及びジイソシアネート化合物の反応生成物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、取り扱い性、毒性の観点からイソシアネート基含有重合性不飽和モノマーが、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート及び/又は2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであることが好ましく、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであることがさらに好ましい。
【0026】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマー及びジイソシアネート化合物の反応生成物において使用される水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
【0028】
また、前記ジイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート化合物;1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1−シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物;メチレンビス(4,1−フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’−ジイソシアネート1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアネート1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物;m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4−TDI)もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6−TDI)もしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;上記ジイソシアネート化合物とジオール化合物とをイソシアネート基過剰の条件で反応させてなる化合物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0029】
また、前記水酸基含有重合性不飽和モノマー及び上記ジイソシアネート化合物の反応は、既知の方法によって、行うことができる。
【0030】
また、前記水酸基含有重合性不飽和モノマー、ジオール化合物及びジイソシアネート化合物の反応生成物において使用されるジオール化合物としては、例えば、アルキルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0031】
上記反応生成物は、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー及びジオール化合物由来の水酸基の合計量よりも、ジイソシアネート化合物由来のイソシアネート基の量が過剰となる配合割合で、これらの成分を反応させることにより、得ることができる。該反応生成物は、通常、1分子中に2個以上のウレタン結合とイソシアネート基を有する化合物である。
【0032】
また、前記イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーの市販品としては、例えば、「カレンズ MOI」、「カレンズ AOI」、「カレンズ MOI−EG」(以上、昭和電工社製)等が挙げられる。
【0033】
アミン化合物
前記アミン化合物は、1級アミン化合物又は2級アミン化合物であることが好ましく、1級アミン化合物であることがさらに好ましい。また、該アミン化合物は、ヒドロキシル基を有していてもよい。
【0034】
上記1級アミン化合物としては、例えば、エチルアミン、プロピルアミン(n−プロピルアミン、イソプロピルアミン)、ブチルアミン(n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン)、n−ペンチルアミン、1−メチルブチルアミン、1エチルプロピルアミン、2‐エチルブチルアミン、ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン、6−アミノヘキサノール、p−メトキシベンジルアミン、メトキシプロピルアミン、3,4−ジメトキシフェニルエチルアミン、2,5−ジメトキシアニリン、フルフリルアミン、テトラヒドロフルフリルアミン、ベンジルアミン、アニリン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、本発明の共重合体を含有する塗料によって形成される塗膜の平滑性及び鮮映性向上の観点から、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミンが好ましく、ブチルアミンがさらに好ましい。
【0035】
また、前記2級アミン化合物としては、例えば、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン(ジ−n−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン)、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジペンチルアミン、ジオクチルアミン(ジ−n−オクチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン)、ジデシルアミン、ジステアリルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N−メチルブチルアミン、N−ブチルエチルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−(メチルアミノ)エタノール、2−(イソプロピルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、モルホリン等等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0036】
前記イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと上記アミン化合物との反応は、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマー中に存在するイソシアネート基と、アミン化合物中に存在する活性水素との当量比(活性水素/イソシアネート基)が、0.5/1〜2/1、好ましくは0.7/1〜1.5/1、より好ましくは0.8/1〜1.2/1となるような割合で反応させて、公知の方法により行なうことができる。
【0037】
上記イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーとアミン化合物との反応は両者を混合し、所望により温度を上げ、公知の方法で実施することができる。この反応は5〜70℃、好ましくは20〜50℃の温度で行うことが望ましい。上記反応成分の混合は、公知の方法で行うことができ、例えば、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーにアミン化合物を添加することによって行うことができる。また、上記反応成分の添加は所望によりいくつかの段階に分けて行うことができる。また、上記反応は有機溶剤、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、脂肪族炭化水素系溶剤(石油エーテル等)等の存在下で行うことができる。
【0038】
前記ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a)の具体例としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート及びエチルアミンを反応させて得られるN−メタクリロイルオキシエチル−N’−エチルウレア、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート及びイソプロピルアミンを反応させて得られるN−メタクリロイルオキシエチル−N’−イソプロピルウレア、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート及びブチルアミンを反応させて得られるN−メタクリロイルオキシエチル−N’−ブチルウレア2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート及び2−エチルヘキシルアミンを反応させて得られるN−メタクリロイルオキシエチル−N’−2エチルヘキシルウレア等が挙げられる。なかでも、N−メタクリロイルオキシエチル−N’−エチルウレア及び/又はN−メタクリロイルオキシエチル−N’−ブチルウレアが好ましい。
【0039】
ウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー(b)
ウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー(b)は、−NH−CO−O−で表されるウレタン結合を有する重合性不飽和モノマーである。
【0040】
上記ウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー(b)は、例えば、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと水酸基含有化合物とを反応させる方法;水酸基含有重合性不飽和モノマーとイソシアネート基含有化合物とを反応させる方法等によって得ることができる。
【0041】
上記イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと水酸基含有化合物とを反応させる方法において使用し得るイソシアネート基含有重合性不飽和モノマーとしては、前記ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a)の説明欄に記載したイソシアネート基含有重合性不飽和モノマーが挙げられる。なかでも、反応時の安定性の観点から、該イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーが、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであることが好ましい。
【0042】
また、前記水酸基含有化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノールなどのアルカノール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノメチルエーテルなどのエーテル基含有モノオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、メチルプロパンジオール、ペンタンジオール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル1,3−プロパンジオール、2,2’−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,4シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸−ネオペンチルグリコールエステル、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸のようなジオール類;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールオクタン、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリオール類;上記した水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ラクトン及び/又はシクロカーボネートとの開環付加物;アミノ基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ラクトン及び/又はシクロカーボネートとの開環付加物;1分子中にアミノ基と水酸基の両方を有する化合物とエポキシ基含有化合物との反応生成物;1分子中にアミノ基と水酸基の両方をもつ化合物とポリイソシアネートとの反応生成物;水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂、水酸基含有ポリカーボネート樹脂、水酸基含有ビニル系重合体、エポキシ樹脂などの公知のポリオール類等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0043】
なかでも、反応時の安定性の観点から、上記水酸基含有化合物が、炭素数2〜8のアルカノールであることが好ましい。該炭素数2〜8のアルカノールとしては、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等が挙げられ、なかでもエタノール、ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノールが好ましい。
【0044】
また、前記水酸基含有重合性不飽和モノマーとイソシアネート基含有化合物とを反応させる方法において使用される水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、反応時の安定性の観点から、該水酸基含有重合性不飽和モノマーが、2−ヒドロキシエチルメタクリレートであることが好ましい。
【0045】
また、前記イソシアネート基含有化合物としては、例えば、前記ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a)の説明欄において記載したジイソシアネート化合物;該ジイソシアネート化合物と、モノアルコール、アミン等の活性水素含有化合物とを反応させて得られるモノイソシアネート化合物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0046】
イミド結合を有する重合性不飽和モノマー(c)
イミド結合を有する重合性不飽和モノマーとして、例えばヘキサヒドロフタルイミドエチルアクリレート(アロニックスM−140:東亜合成株式会社製品)、ヘキサヒドロフタルイミドプロピレンアクリレート、フタルイミドエチルメタクリレートなどを挙げることが出来る。また該モノマーを合成することも出来、合成方法は例えば以下の公知文献で明らかにされている。
(1)加藤清ら、有機合成化学協会誌30(10)、897、(1972)、
(2)Javier de Abajoら、Polymer,vol33(5)、(1992)、
(3)特開昭56−53119号公報、
(4)特開平1−242569号公報、
(5)特開2001−172336号公報。
【0047】
重合性不飽和モノマー(I)以外の重合性不飽和モノマー(II)
重合性不飽和モノマー(I)以外の重合性不飽和モノマー(II)は、上記ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a)、ウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー(b)、及びイミド結合を有する重合性不飽和モノマー(c)以外の重合性不飽和モノマーである。
【0048】
上記重合性不飽和モノマー(II)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜24のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリ
オキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられる。これらの重合性不飽和モノマーはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
モノマー成分(l)
モノマー成分(l)は、ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a)、ウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー(b)、及びイミド結合を有する重合性不飽和モノマー(c)の中から選ばれる少なくとも一種以上の水素結合を有する含窒素重合性不飽和モノマー(I)5〜100質量%、並びにそれ以外の重合性不飽和モノマー(II)0〜95質量%からなる。
【0050】
上記モノマー成分(l)において、上記重合性不飽和モノマー(I)及び(II)の配合割合は、得られる共重合体の増粘性及び該共重合体を含有する塗料によって形成される塗膜の平滑性、鮮映性、フリップフロップ性及び耐水性の向上ならびにメタリックムラ抑制の観点から、モノマー成分(l)の合計質量を基準にして、下記の範囲内が好ましい。
ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a)、ウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー(b)、及びイミド結合を有する重合性不飽和モノマー(c)の中から選ばれる少なくとも一種以上の重合性不飽和モノマー(I)の合計量:5〜100質量%、好ましくは10〜90質量%、さらに好ましくは20〜80質量%、
重合性不飽和モノマー(I)以外の重合性不飽和モノマー(II):0〜95質量%、好ましくは10〜90質量%、さらに好ましくは20〜80質量%。
【0051】
また、上記モノマー成分(l)は、形成される塗膜の鮮映性及び耐水性の観点から、少なくともその一部として、水酸基含有重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。具体的には、前記重合性不飽和モノマー(II)が、少なくともその一部として、水酸基含有重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。
【0052】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、前記重合性不飽和モノマー(II)の説明において例示した水酸基含有重合性不飽和モノマーを使用することが可能であり、なかでも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチルメタクリレートがさらに好ましい。
【0053】
モノマー成分(l)が水酸基含有重合性不飽和モノマーを含有する場合、該水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、形成される塗膜の鮮映性及び耐水性の観点から、モノマー成分(l)の合計質量を基準として、5〜60質量%、好ましくは10〜45質量%、さらに好ましくは15〜30質量%の範囲内であることが好適である。
【0054】
また、モノマー成分(l)が水酸基含有重合性不飽和モノマーを含有する場合、モノマー成分(l)を重合することにより得られる重合体(A)の水酸基価は、形成される塗膜の鮮映性及び耐水性の観点から、20〜260mgKOH/g、好ましくは40〜200mgKOH/g、さらに好ましくは60〜130mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
【0055】
また、上記モノマー成分(l)は、形成される塗膜の鮮映性及び耐水性の観点から、少なくともその一部として、炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。具体的には、前記重合性不飽和モノマー(II)が、少なくともその一部として、炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。
【0056】
炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数4〜24のアルキル基を有する1価アルコールのモノエステル化物を使用することができる。具体的には、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは、それぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
上記炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーとしては、得られる塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレートが好ましい。
【0058】
モノマー成分(l)が炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーを含有する場合、該炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーの使用割合は、形成される塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、モノマー成分(l)の合計質量を基準として、1〜95質量%、好ましくは10〜90質量%、さらに好ましくは20〜80質量%の範囲内であることが好適である。
【0059】
マクロモノマー(m−1)
マクロモノマー(m−1)は、重合体部分と重合性不飽和基部分とを有するマクロモノマーであって、当該重合体が、上記モノマー成分(l)を重合することにより得られる1,000〜10,000の範囲内の数平均分子量を有する重合体であるマクロモノマーである。なお、本発明において、マクロモノマーは、重合性不飽和基を有する高分子量のモノマーであり、好ましくは、重合体の末端に重合性不飽和基を有する高分子量のモノマーである。従って、マクロモノマー(m−1)は、上記重合体からなる基本骨格を有し、かつ少なくとも1個、好ましくは1個の重合性不飽和基を、好ましくは当該重合体の末端に、有する構造を有する。
【0060】
本明細書において、マクロモノマー(m−1)が有する重合性不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。
【0061】
上記マクロモノマー(m−1)は、数平均分子量が1,000〜10,000の範囲内であることが好ましい。なかでも、得られる塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、数平均分子量が1,000〜5,000、好ましくは1,000〜3,000の範囲内であることが好適である。マクロモノマー(m−1)の数平均分子量は、例えば、モノマー成分(l)を重合する際の、連鎖移動剤の使用量、重合開始剤の使用量、反応温度、反応時間等によって、調整することができる。
【0062】
上記マクロモノマー(m−1)は、それ自体既知の方法で得ることができる。具体的には、例えば、下記の方法(1)、方法(2)、方法(3)等によって得ることができる。
【0063】
方法(1): 前記モノマー成分(l)を重合するに際して、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等の第1の化学反応性基を含有する連鎖移動剤の存在下で重合を行うことによって、重合体の末端に第1の化学反応性基を導入する。次いで、得られた重合体と、該重合体中の第1の化学反応性基と反応可能な第2の化学反応性基を有する重合性不飽和モノマーとを反応させることによって、マクロモノマー(m−1)を得ることができる。
【0064】
上記カルボキシル基、水酸基、アミノ基等の第1の化学反応性基を含有する連鎖移動剤としては、メルカプト酢酸、2ーメルカプトプロピオン酸、3ーメルカプトプロピオン酸、2ーメルカプトエタノール、2ーアミノエタンチオール等を好適に使用することができる。
【0065】
前記共重合体中の第1の化学反応性基と反応して重合性不飽和基を導入するための第2の化学反応性基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、第1の化学反応性基がカルボキシ基である場合には、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー;第1の化学反応性基が水酸基である場合には、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマー;第1の化学反応性基がアミノ基である場合には、エポキシ基含有重合性不飽和モノマーを好適に使用することができる。
【0066】
上記エポキシ基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等を好適に使用することができる。また、上記イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等を好適に使用することができる。
【0067】
方法(2): マクロモノマー(m−1)は、金属錯体を用いた触媒的連鎖移動重合(Catalytic Chain Transfer Polymerization、CCTP法)によって得ることができる。CCTP法は、例えば、特公平6−23209号公報、特公平7−35411号公報、特公平9−501457号公報、特開平9−176256号公報、Macromolecules 1996、29、8083〜8089等に記載されている。具体的には、金属錯体の存在下で、モノマー成分(l)を触媒的連鎖移動重合させることにより、マクロモノマー(m−1)を製造することができる。該触媒的連鎖移動重合は、例えば、有機溶剤中での溶液重合法、水中での乳化重合法等により、行なうことができる。また、重合の際には、前記金属錯体に加え、必要に応じて、ラジカル重合開始剤を使用してもよい。
【0068】
上記金属錯体としては、例えば、コバルト錯体、鉄錯体、ニッケル錯体、ルテニウム錯体、ロジウム錯体、パラジウム錯体、レニウム錯体、イリジウム錯体等が挙げられ、これらのうちコバルト錯体が触媒的連鎖移動剤として効率良く作用する。該金属錯体の使用量は、特に限定されるものではないが、モノマー成分(l)の合計質量100質量部を基準として、通常1×10−6〜1質量部、好ましくは1×10−4〜0.5質量部の範囲内にあることが適している。
【0069】
前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−アミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。該ラジカル重合開始剤の配合量は、特に限定されるものではないが、モノマー成分(l)の合計質量100質量部に基づいて、通常、0.1〜10質量部、好ましくは0.1〜8質量部、さらに好ましくは0.1〜6質量部の範囲内であることが好適である。
【0070】
方法(3): マクロモノマー(m−1)は、付加開裂型連鎖移動剤を用いた付加開裂型連鎖移動重合法によって得ることができる。該付加開裂型連鎖移動重合法は、例えば、特開平7−2954号公報等に記載されている。具体的には、上記付加開裂型連鎖移動剤の存在下で、前記モノマー成分(l)を付加開裂型連鎖移動重合させることにより、マクロモノマー(m−1)を製造することができる。該付加開裂型連鎖移動重合は、例えば、有機溶剤中での溶液重合法、水中での乳化重合法等により、行なうことができる。また、重合の際には、該付加開裂型連鎖移動剤に加え、必要に応じて、ラジカル重合開始剤を併用することができる。
【0071】
上記付加開裂型連鎖移動剤としては、例えば、2,4−ジフェニル−4−メチル−1ペンテン(「α−メチルスチレンダイマー」、「MSD」と略称される場合がある)を好適に使用することができる。該付加開裂型連鎖移動剤の配合量は、特に限定されるものではないが、モノマー成分(l)の合計質量100質量部に基づいて、通常、1〜20質量部、好ましくは2〜15質量部、さらに好ましくは3〜10質量部の範囲内であることが好適である。
【0072】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、前記方法(2)の説明において記載したラジカル重合開始剤を使用することができる。これらの重合開始剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。該ラジカル重合開始剤の配合量は、特に限定されるものではないが、モノマー成分(l)の合計質量100質量部に基づいて、通常、1〜20質量部、好ましくは2〜15質量部、さらに好ましくは3〜10質量部の範囲内であることが好適である。
【0073】
上記方法(1)〜(3)において、重合温度は、上記ラジカル重合開始剤の種類により異なるが、60〜200℃、好ましくは80〜180℃、さらに好ましくは90〜170℃の範囲内であることが好適である。また、重合の前半と後半で異なる温度としてもよく、温度を徐々に変えながら重合を行ってもよい。
【0074】
上記方法(1)〜(3)のうち、方法(1)は、モノマー成分(l)を重合させて重合体を得る工程と、得られた重合体と重合性不飽和モノマーとを反応させて、該重合体に重合性不飽和基を導入する工程との2つの反応工程が必要である。また、方法(2)は、金属錯体を使用するため、後述する共重合体(グラフトポリマー)の製造時に、触媒的連鎖移動重合が起きたり、得られる共重合体に色が付いたりする場合がある。
【0075】
このため、反応工数の削減、得られる共重合体における着色の抑制等の観点から、マクロモノマー(m−1)は、前記方法(3)の付加開裂型連鎖移動剤を用いた付加開裂型連鎖移動重合法によって得ることが好ましい。
【0076】
また、上記マクロモノマー(m−1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0077】
親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)
本発明において、親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)としては、例えば、N−置換(メタ)アクリルアミド、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー、スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー、リン酸基含有重合性不飽和モノマー、4級アンモニウム塩基含有重合性不飽和モノマー、3級アミノ基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0078】
なかでも、親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)としては、塗料中での貯蔵安定性及び/又は塗膜の耐水性の観点から、N−置換(メタ)アクリルアミド、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマーを好適に使用することができる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0079】
モノマー成分(m)において、前記マクロモノマー(m−1)、及び親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)の含有割合は、形成される塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性の観点から、モノマー成分(m)の合計質量を基準にして、下記の範囲内であることが好ましい
マクロモノマー(m−1):1〜40質量%、好ましくは3〜29質量%、さらに好ましくは5〜15質量%、
親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2):5〜99質量%、好ましくは10〜97質量%、さらに好ましくは20〜95質量%。
【0080】
上記N−置換(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドブチルエーテル、N−メチロールメタクリルアミドブチルエーテル、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−メチル,N−エチルアクリルアミド、N−メチル,N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールメタクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールアクリルアミドエチルエーテル、N−メチロールメタクリルアミドエチルエーテル、N−メチロールアクリルアミドプロピルエーテル、N−メチロールメタクリルアミドプロピルエーテル、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0081】
なかでも、形成される塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミドが好ましく、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドがさらに好ましい。
【0082】
前記ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーは、1分子中にポリオキシアルキレン鎖と重合性不飽和基を含有するモノマーである。
【0083】
上記ポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレンブロックとポリオキシプロピレンブロックとからなる鎖、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとがランダムに結合してなる鎖等を挙げることができ、これらのポリオキシアルキレン鎖は一般に100〜5,000程度、好ましくは200〜4,000程度、さらに好ましくは300〜3,000程度の範囲内の分子量を有することが好適である。
【0084】
上記ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーの代表例としては、例えば、下記一般式(1)
【0085】
【化1】

【0086】
[式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基、さらに好ましくは水素原子又はメチル基を表し、R3は炭素数2〜4、好ましくは炭素数2又は3、さらに好ましくは炭素数2のアルキレン基を表し、mは3〜150、好ましくは5〜80、さらに好ましくは8〜50の整数を表し、m個のオキシアルキレン単位(O−R3)は互いに同じであっても又は互いに異なっていてもよい]で示される重合性不飽和モノマーを挙げることができる。
【0087】
上記一般式(1)で示される重合性不飽和モノマーの具体例としては、例えば、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラピロプレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレン(プロピレン)グリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレン(プロピレン)グリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレン(プロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、本明細書において、「ポリエチレン(プロピレン)グリコール」は、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体を意味し、ブロック共重合体とランダム共重合体のいずれも含むものとする。
【0088】
なかでも、形成される塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレン(プロピレン)グリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレン(プロピレン)グリコール(メタ)アクリレートが好ましく、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0089】
また、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーは、一般に300〜6,000程度、好ましくは400〜5,000程度、さらに好ましくは450〜3,500程度の範囲内の分子量を有することが好適である。
【0090】
前記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0091】
前記スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0092】
前記リン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0093】
その他の重合性不飽和モノマー(m−3)
その他の重合性不飽和モノマー(m−3)は、前記マクロモノマー(m−1)及び親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)以外の重合性不飽和モノマーである。該その他の重合性不飽和モノマー(m−3)は、共重合体に望まれる特性に応じて、必要に応じ、適宜選択して使用することができる。
【0094】
上記その他の重合性不飽和モノマー(m−3)の具体例を以下に列挙する。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
(i) アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート: 例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
(ii) イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii) アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv) トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v) 芳香環含有重合性不飽和モノマー: 例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi) アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii) フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii) マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix) ビニル化合物: 例えば、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x) 水酸基含有重合性不飽和モノマー: 例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;アリルアルコール等。
(xi) 含窒素重合性不飽和モノマー: 例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等。
(xii) 重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー: 例えば、アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等。
(xiii) エポキシ基含有重合性不飽和モノマー: 例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xiv) 紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’ −ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’ −ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2’ −ヒドロキシ−5’ −メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等。
(xv) 光安定性重合性不飽和モノマー: 例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ク
ロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等。
(xvi) カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
(xvii) 酸無水物基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等。
【0095】
なかでも、前記親水性基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)が2−ヒドロキシエチルアクリレートを含有しない場合、形成される塗膜の耐水性の観点から、上記重合性不飽和モノマー(m−3)は、少なくともその一部として、上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(x)を含有することが好ましい。該水酸基含有重合性不飽和モノマー(x)としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチルメタクリレートがさらに好ましい。
【0096】
重合性不飽和モノマー(m−3)が、上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(x)を含有する場合、該水酸基含有重合性不飽和モノマー(x)の含有量は、モノマー成分(m)の合計質量を基準にして、5〜79質量%、好ましくは10〜57質量%、さらに好ましくは15〜40質量%の範囲内であることが好適である。
【0097】
モノマー成分(m)
モノマー成分(m)において、前記マクロモノマー(m−1)、親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)及びその他の重合性不飽和モノマー(m−3)の含有割合は、得られる共重合体の増粘性及び該共重合体を含有する塗料によって形成される塗膜の平滑性、鮮映性、フリップフロップ性及び耐水性の向上ならびにメタリックムラ抑制の観点から、モノマー成分(m)の合計質量を基準にして、下記の範囲内である。
マクロモノマー(m−1):1〜40質量%、好ましくは3〜29質量%、さらに好ましくは5〜15質量%、
親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2):5〜99質量%、好ましくは10〜97質量%、さらに好ましくは20〜95質量%、
マクロモノマー(m−1)及び親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)以外の重合性不飽和モノマー(m−3):0〜94質量%、好ましくは0〜87質量%、さらに好ましくは0〜75質量%。
【0098】
本発明で用いる共重合体(A)は、通常、主鎖及び側鎖部分を有するグラフトポリマーであって、前記マクロモノマー(m−1)中の重合体が側鎖部分を形成し、上記親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)及びその他の重合性不飽和モノマー(m−3)が主鎖部分を形成する。
【0099】
共重合体(A)の製造方法
共重合体(A)は、前記マクロモノマー(m−1)及び親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)、ならびに必要に応じて配合されるその他の重合性不飽和モノマー(m−3)からなるモノマー成分(m)を、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の方法により共重合せしめることによって製造することができる。なかでも、比較的容易な操作で行なうことができる溶液重合法が好適である。
【0100】
モノマー成分(m)を共重合する際に使用される重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−アミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤に、必要に応じて、例えば、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用してレドックス開始剤としてもよい。
【0101】
上記重合開始剤の使用量は、モノマー成分(m)の合計質量100質量部を基準にして、通常0.01〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部とすることができる。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類及び量等に応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は反応溶媒に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。
【0102】
また、溶液重合法における溶媒としては、溶剤への連鎖移動が起こりにくく、且つ水溶性である有機溶剤が好ましい。このような溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、エーテル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤が好ましい。
【0103】
重合反応時における上記有機溶剤の使用量は、モノマー成分(m)の合計質量100質量部を基準にして、通常、500重量部以下、好ましくは50〜400重量部、さらに好ましくは100〜200重量部の範囲内であることが好適である。
【0104】
共重合体(A)の重量平均分子量は、得られる共重合体の増粘性及び該共重合体を含有する塗料によって形成される塗膜の平滑性、鮮映性及び光輝性の観点から、20,000〜1,000,000、好ましくは50,000〜600,000、さらに好ましくは100,000〜400,000の範囲内であることが好適である。
【0105】
なお、本明細書において、前記モノマー成分(l)の共重合によって得られる重合体及びマクロモノマー(m−1)の数平均分子量ならびに本発明で用いる共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。
【0106】
このうち、前記モノマー成分(I)の共重合によって得られる重合体及びマクロモノマー(m−1)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0107】
また、共重合体(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel GMHHR−L」(商品名、東ソー社製)を1本使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:ジメチルホルムアミド(臭化リチウムとリン酸をそれぞれ10mM含む)、測定温度:25℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0108】
アクリル樹脂(B)
本発明で用いるアクリル樹脂(B)は、ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a)、ウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー(b)、及びイミド結合を有する重合性不飽和モノマー(c)の中から選ばれる少なくとも一種以上の水素結合性を有する含窒素重合性不飽和モノマー(I)及びそれ以外の重合性不飽和モノマー(II)を共重合してなり、かつ水分散体であることを特徴とする。
【0109】
上記アクリル樹脂(B)は、水分散体であることを特徴とするが、水分散体の樹脂は一般的に比較的疎水性の樹脂を水性媒体中に分散することにより得られるため、高い親水性が付与された水溶性の樹脂に比べ、耐水性に優れた塗膜が形成される。また、前記共重合体(A)は比較的高分子量で、かつ疎水性の側鎖を有するため、該アクリル樹脂(B)のような比較的疎水性の樹脂と疎水会合による網状構造を形成する。更に該共重合体(A)の側鎖及び該アクリル樹脂(B)は共にウレア結合、ウレタン結合、及び/又はイミド結合を有するため、これらを含有する本発明の水性塗料組成物は水素結合により優れたチクソトロピック性の粘性を発現し、平滑性、鮮映性及びフリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた外観を有する塗膜を形成することができる。
【0110】
上記アクリル樹脂(B)は、含窒素重合性不飽和モノマー(I)及びそれ以外の重合性不飽和モノマー(II)を、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中で溶液重合する方法(後から脱溶剤及び水分散を行う)、水中での乳化重合法、水中でのミニエマルション重合法等により、共重合せしめることによって製造することができる。なかでも、製造に必要な工数が少ないことから、水中での乳化重合法が好ましい。
【0111】
上記アクリル樹脂(B)において用いる含窒素重合性不飽和モノマー(I)、及びそれ以外の重合性不飽和モノマー(II)としては、前記共重合体(A)の説明において例示した含窒素重合性不飽和モノマー(I)及びそれ以外の重合性不飽和モノマー(II)の説明で列記したものと同様な重合性不飽和モノマーを使用することができる。これらの重合性不飽和モノマーはそれぞれ単独で、もしくは2種以上で組み合わせて使用することができる。
【0112】
上記アクリル樹脂(B)において、共重合成分である含窒素重合性不飽和モノマー(I)は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性の観点から、N−メタクリロイルオキシエチル−N’−エチルウレア及び/又はN−メタクリロイルオキシエチル−N’−ブチルウレアであることが好ましい。
【0113】
上記アクリル樹脂(B)において、水素結合性を持つ含窒素重合性不飽和モノマー(I)とそれ以外の重合性不飽和モノマー(II)の質量比率は、塗料の貯蔵安定性、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性、及び耐水性の観点から、1/99〜50/50であることが好ましく、1/99〜30/70がさらに好ましい。
【0114】
上記アクリル樹脂(B)としては、例えば、含窒素重合性不飽和モノマー(I)と、それ以外の重合性不飽和モノマー(II)として、(d)水酸基含有重合性不飽和モノマー、(e)疎水性重合性不飽和モノマー、(f)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー、及び(g)重合性不飽和モノマー(a)〜(f)以外の重合性不飽和モノマー、を含むモノマー成分(o)を共重合することにより得られる酸価1〜100mgKOH/g、水酸基価1〜100mgKOH/gの水酸基含有水分散性アクリル樹脂(B’)を好適に使用することができる。
【0115】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(d)
水酸基含有重合性不飽和モノマー(d)は、得られる水酸基含有水分散性アクリル樹脂(B’)の水性媒体中における安定性を向上せしめることができる。また、後記の硬化剤(D)として水酸基との反応性を有する化合物を使用する場合に、該アクリル樹脂(B’)と硬化剤(D)が架橋した、耐水性に優れた塗膜を形成することができる。水酸基含有重合性不飽和モノマー(d)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のポリオキシアルキレングリコール変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは、それぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0116】
なかでも、形成される塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性、フリップフロップ性等の向上及びメタリックムラ抑制の観点から、上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(d)が、エステル結合を有する水酸基含有重合性不飽和モノマーであることが好ましい。該エステル結合を有する水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のポリオキシアルキレングリコール変性体等を挙げることができる。なかでも、(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物が好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0117】
疎水性重合性不飽和モノマー(e)
疎水性重合性不飽和モノマー(e)は、側鎖の炭素数が4以上、好ましくは4〜18の、直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーであり、水酸基含有重合性不飽和モノマー等の親水性基を有するモノマーは除外される。該モノマーとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和化合物;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマーを挙げることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0118】
なかでも、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水感を向上させる観点から、上記疎水性重合性不飽和モノマー(e)が、n−ブチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマーであることが好ましい。
【0119】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(f)
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(f)は、得られる水酸基含有水分散性アクリル樹脂(B’)の水性媒体中における安定性を向上せしめることができる。また、後記の硬化剤(D)としてカルボキシル基との反応性を有する化合物を使用する場合に、該アクリル樹脂(B’)と硬化剤(D)が架橋した、耐水性に優れた塗膜を形成することができる。
【0120】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(f)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等が挙げられる。
これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0121】
なかでも、得られる水酸基含有水分散性アクリル樹脂(B’)の水性媒体中における安定性の観点から、上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(f)が、アクリル酸及び/又はメタクリル酸であることが好ましい。
【0122】
重合性不飽和モノマー(a)〜(f)以外の重合性不飽和モノマー(g)
重合性不飽和モノマー(g)は、重合性不飽和モノマー(a)〜(f)以外の重合性不飽和モノマーであり、上記水酸基含有水分散性アクリル樹脂(B’)に望まれる特性に応じて適宜選択して使用することができる。該重合性不飽和モノマー(g)の具体例を以下に列挙する。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0123】
上記重合性不飽和モノマー(g)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数3以下のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等、これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー等が挙げられる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0124】
前記水酸基含有水分散性アクリル樹脂(B’)のモノマー成分(o)において、前記含窒素重合性不飽和モノマー(I)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(d)、疎水性重合性不飽和モノマー(e)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(f)、及び重合性不飽和モノマー(a)〜(f)以外の重合性不飽和モノマー(g)の含有割合は、形成される塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性の観点から、モノマー成分(o)の合計質量を基準にして、下記の範囲内であることが好ましい。
含窒素重合性不飽和モノマー(I):1.0〜70質量%、好ましくは1〜50質量%、さらに好ましくは2〜30質量%、
水酸基含有重合性不飽和モノマー(d):0.1〜25質量%、好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%、
疎水性重合性不飽和モノマー(e):1〜75質量%、好ましくは2〜65質量%、さらに好ましくは3〜55質量%、
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(f):0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%、
重合性不飽和モノマー(a)〜(f)以外の重合性不飽和モノマー(g):0〜97.8質量%、好ましくは10〜96質量%、さらに好ましくは20〜93質量%。
【0125】
上記水酸基含有水分散性アクリル樹脂(B’)は、例えば、上記含窒素重合性不飽和モノマー(I)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(d)、疎水性重合性不飽和モノマー(e)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(f)、及び重合性不飽和モノマー(a)〜(f)以外の重合性不飽和モノマー(g)からなるモノマー成分(o)を、それ自体既知の方法により、共重合せしめることによって製造することができる。具体的には、例えば、乳化重合法、有機溶剤中で溶液重合を行った後、得られた共重合体を、界面活性剤等を用いて水中に分散させる方法等を用いることができる。なかでも、得られる水酸基含有水分散性アクリル樹脂(B’)の水性媒体中における安定性向上の観点から、乳化重合法が好ましい。該乳化重合法は、通常、水に不溶又は難溶性の重合性不飽和モノマーを、界面活性剤を使って水に分散させた状態で重合させる方法である。
【0126】
上記(a)〜(g)の重合性不飽和モノマーを原料として調製される水酸基含有水分散性アクリル樹脂(B’)は、酸価が1〜100mgKOH/gの範囲内であり、水酸基価が1〜100mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。なかでも、塗料の貯蔵安定性、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性の観点から、酸価が、3〜80mgKOH/gであることがより好ましく、6〜60mgKOH/gであることがさらに好ましい。また、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性の観点から、水酸基価が、2〜75mgKOH/gであることがより好ましく、4〜50mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0127】
また、上記水酸基含有水分散性アクリル樹脂(B’)は、得られる樹脂の水性媒体中における安定性が向上する観点から、コア・シェル型構造を有し、コア部が架橋していることが好ましい。
【0128】
なかでも、形成される塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性が向上する観点から、上記水酸基含有水分散性アクリル樹脂(B’)が、コア・シェル型構造を有し、コア部が、コア部を構成するモノマー成分の合計質量を基準として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%をモノマー成分とする共重合体(α)であり、かつコア部とシェル部とを構成するモノマー成分の合計量における各モノマーの含有割合が、コア部とシェル部とを構成するモノマー成分の合計質量を基準として、含窒素重合性不飽和モノマー(I)1〜70質量%、水酸基含有重合性不飽和モノマー(d)0.1〜25質量%、疎水性重合性不飽和モノマー(e)1〜75質量%、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(f)0.1〜20質量%、上記重合性不飽和モノマー(a)〜(f)以外の重合性不飽和モノマー(g)0〜97.8質量%のコア・シェル型水分散性アクリル樹脂(B’−1)であることが好ましい。
【0129】
上記コア・シェル型水分散性アクリル樹脂(B’−1)において、コア部共重合体(α)用モノマーとして用いられる重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0130】
上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーは、コア部共重合体(α)に架橋構造を付与する機能を有する。該重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア部共重合体(α)の架橋の程度に応じて適宜決定し得るが、通常、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び後記の重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの合計量を基準として、0.1〜30質量%であるのが好ましく、0.5〜10質量%であるのがより好ましく、1〜7質量%であるのが更に好ましい。
【0131】
前記コア・シェル型水分散性アクリル樹脂(B’−1)において、コア部共重合体(α)用モノマーとして用いられる重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーは、上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーと共重合可能な重合性不飽和モノマーである。
【0132】
上記重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等のトリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該モノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキ
シメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、コア・シェル型水分散性アクリル樹脂(B’−1)に要求される性能に応じて、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0133】
前記重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーとしては、少なくともその一部として、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーを使用することが好ましい。
【0134】
炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレートを挙げることができる。これらのモノマーはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0135】
上記コア・シェル型水分散性アクリル樹脂(B’−1)のコア部において、重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーが上記炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーを含有する場合、該炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーの使用割合は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性及び光輝性の観点から、コア部における重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの合計量を基準として、20〜99.9質量%、好ましくは30〜99.5質量%、さらに好ましくは40〜99質量%の範囲内であることが好適である。
【0136】
上記コア・シェル型水分散性アクリル樹脂(B’−1)のシェル部において、得られる塗膜の平滑性、鮮映性及び光輝性の観点から、含窒素重合性不飽和モノマー(I)の使用割合は、シェル部を構成する重合性不飽和モノマーの合計量を基準として、3〜70質量%、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜50質量%の範囲内であることが好適である。また、疎水性重合性不飽和モノマー(e)の使用割合は、シェル部を構成する重合性不飽和モノマーの合計量を基準として、20〜80質量%、好ましくは25〜75質量%、さらに好ましくは30〜70質量%の範囲内であることが好適である。
【0137】
また、上記コア・シェル型水分散性アクリル樹脂(B’−1)は、一般に10〜1,000nm程度、特に20〜500nm程度の範囲内の平均粒子径を有することができる。
【0138】
本明細書において、コア・シェル型水分散性アクリル樹脂(B’−1)の平均粒子径は、動的光散乱法粒子径分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから、20℃で測定した値である。該動的光散乱法粒子径分布測定装置としては、例えば、「サブミクロン粒子アナライザー N5」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
【0139】
コア・シェル型水分散性アクリル樹脂(B’−1)の粒子の機械的安定性を向上させるために、該水分散性アクリル樹脂が有するカルボキシル基等の酸基を中和剤により中和することが望ましい。該中和剤としては、酸基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水等が挙げられる。これらの中和剤は、中和後の該水分散性アクリル樹脂の水分散液のpHが6.5〜9.0程度となるような量で用いることが望ましい。
【0140】
また、上記コア・シェル型水分散性アクリル樹脂(B’−1)は、形成される塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性が向上する観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%をモノマー成分とする共重合体(α)であるコア部と、含窒素重合性不飽和モノマー(I)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(d)、疎水性重合性不飽和モノマー(e)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(f)、及び上記重合性不飽和モノマー(a)〜(f)以外の重合性不飽和モノマー(g)をモノマー成分とする共重合体(β)であるシェル部とからなり、かつ該共重合体(α)と共重合体(β)との固形分質量比が、共重合体(α)/共重合体(β)=10/90〜90/10範囲内のコア・シェル型水分散性アクリル樹脂(B’−2)であることが好ましい。なかでも、共重合体(α)/共重合体(β)の割合は、形成される塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性が向上する観点から、固形分質量比で50/50〜85/15程度が好ましく、65/35〜80/20程度がさらに好ましい。
【0141】
上記コア・シェル型水分散性アクリル樹脂(B’−2)において、コア部における重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア部共重合体(α)の架橋の程度に応じて適宜決定し得るが、通常、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの合計量を基準として、0.1〜30質量%であるのが好ましく、0.5〜10質量%であるのがより好ましく、1〜7質量%であるのが更に好ましい。
【0142】
上記コア・シェル型水分散性アクリル樹脂(B’−2)において、シェル部における含窒素重合性不飽和モノマー(I)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(d)、疎水性重合性不飽和モノマー(e)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(f)、及び上記重合性不飽和モノマー(a)〜(f)以外の重合性不飽和モノマー(g)の含有割合は、水性媒体中における安定性ならびに得られる塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性に優れる観点から、シェル部を構成するモノマー成分の合計質量を基準として、下記の範囲内であることが好適である。
含窒素重合性不飽和モノマー(I):3〜70質量%、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜50質量%、水酸基含有重合性不飽和モノマー(d):0.1〜50質量%、好ましくは4〜25質量%、さらに好ましくは7〜19質量%、
疎水性重合性不飽和モノマー(e):20〜80質量%、好ましくは25〜75質量%、さらに好ましくは30〜70質量%、
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(f):0.1〜50質量%、好ましくは5〜25質量%、さらに好ましくは7〜19質量%、
重合性不飽和モノマー(a)〜(f)以外の重合性不飽和モノマー(g):0〜76.8質量%、好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは20〜60質量%。
【0143】
また、シェル部共重合体(β)用重合性不飽和モノマーとして用いるその他の重合性不飽和モノマーとしては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性及び光輝性向上の観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーを使用せず、該共重合体(β)を未架橋型とすることが好ましい。
【0144】
コア・シェル型水分散性アクリル樹脂(B’−2)は、例えば、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%、及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%からなるモノマー混合物を乳化重合してコア部共重合体(α)のエマルションを得た後、このエマルション中に、含窒素重合性不飽和モノマー(I)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(d)、疎水性重合性不飽和モノマー(e)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(f)、及び上記重合性不飽和モノマー(a)〜(f)以外の重合性不飽和モノマー(g)からなるモノマー混合物を添加し、さらに乳化重合させてシェル部共重合体(β)を調製することによって得ることができる。
【0145】
コア部共重合体(α)のエマルションを調製する乳化重合は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、界面活性剤の存在下で、重合開始剤を使用してモノマー混合物を乳化重合することにより、行うことができる。
【0146】
上記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好適である。該アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等のナトリウム塩やアンモニウム塩が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。
【0147】
また、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基とを有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性界面活性剤;1分子中にアニオン性基とラジカル重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性界面活性剤を使用することもできる。これらのうち、反応性アニオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0148】
上記反応性アニオン性界面活性剤としては、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等のラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のナトリウム塩、該スルホン酸化合物のアンモニウム塩等を挙げることができる。これらのうち、ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩が、得られる塗膜の耐水性に優れるため、好ましい。該スルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、「ラテムルS−180A」(商品名、花王社製)等を挙げることができる。
【0149】
また、上記ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の中でも、ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩がより好ましい。上記ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、「アクアロンKH10」(商品名、第一工業製薬社製)、「ラテムルPD−104」(商品名、花王社製)、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA社製)等を挙げることができる。
【0150】
上記界面活性剤の使用量は、使用される全モノマーの合計量を基準にして、0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%が更に好ましい。
【0151】
前記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−アミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤に、必要に応じて、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用して、レドックス開始剤としてもよい。
【0152】
上記重合開始剤の使用量は、一般に、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、0.1〜5質量%が好ましく、0.2〜3質量%がより好ましい。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類、量等に応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は水性媒体に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。
【0153】
コア・シェル型水分散性アクリル樹脂(B’−2)は、上記で得られるコア部共重合体(α)のエマルションに、含窒素重合性不飽和モノマー(I)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(d)、疎水性重合性不飽和モノマー(e)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(f)及び上記重合性不飽和モノマー(a)〜(f)以外の重合性不飽和モノマー(g)からなるモノマー混合物を添加し、さらに重合させてシェル部共重合体(β)を形成することによって、得ることができる。
【0154】
上記シェル部共重合体(β)を形成するモノマー混合物は、必要に応じて、前記重合開始剤、連鎖移動剤、還元剤、界面活性剤等の成分を適宜含有することができる。また、当該モノマー混合物は、そのまま滴下することもできるが、該モノマー混合物を水性媒体に分散して得られるモノマー乳化物として滴下することが望ましい。この場合におけるモノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
【0155】
シェル部共重合体(β)を形成するモノマー混合物の重合方法としては、例えば、該モノマー混合物又はその乳化物を、一括で又は徐々に滴下して、上記コア部共重合体(α)のエマルションに、添加し、攪拌しながら適当な温度に加熱する方法が挙げられる。
【0156】
かくして得られるコア・シェル型水分散性アクリル樹脂(B’−2)は、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物の共重合体(α)をコア部とし、含窒素重合性不飽和モノマー(I)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(d)、疎水性重合性不飽和モノマー(e)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(f)及び上記重合性不飽和モノマー(a)〜(f)以外の重合性不飽和モノマー(g)からなるモノマー混合物の共重合体(β)をシェル部とする複層構造を有する。
【0157】
被膜形成性樹脂(C)
本発明の水性塗料組成物は、前記共重合体(A)及びアクリル樹脂(B)を必須成分とするものであり、さらに必要に応じて被膜形成性樹脂(C)及び/又は硬化剤(D)を含有することができる。該被膜形成性樹脂(C)は、後記の硬化剤(D)と反応し、硬化塗膜を形成するものであれば、特に限定されるものではなく、従来から水性塗料のバインダー成分として使用されているそれ自体既知の被膜形成性樹脂(C)を使用することができる。該被膜形成性樹脂(C)の種類としては、例えば、水溶性アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0158】
また、被膜形成性樹脂(C)は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基を有していることが好ましい。
【0159】
本発明の水性塗料組成物は、さらに、後記の硬化剤(D)を含有することが好ましい。本発明の水性塗料組成物が硬化剤(D)を含有する場合、上記被膜形成性樹脂(C)としては、通常、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基を有し、該硬化剤(D)と反応することにより、硬化被膜を形成することができる樹脂が用いられる。
【0160】
上記の硬化被膜を形成することができる樹脂としては、例えば、水溶性アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。なかでも、上記被膜形成性樹脂(C)は、水酸基含有樹脂であることが好ましく、水酸基含有水溶性アクリル樹脂(C1)、水酸基含有ポリエステル樹脂(C2)、及び/又は水酸基含有ポリウレタン樹脂(C3)であることがさらに好ましい。
【0161】
また、上記被膜形成性樹脂(C)は、カルボキシル基等の酸基を有する場合、酸価が5〜150mgKOH/g程度であるのが好ましく、10〜100mgKOH/g程度であるのがより好ましく、15〜80mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。また、該被膜形成性樹脂(C)は、水酸基を有する場合、水酸基価が1〜200mgKOH/g程度であるのが好ましく、2〜180mgKOH/g程度であるのがより好ましく、5〜170mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。
【0162】
水酸基含有水溶性アクリル樹脂(C1)
本発明の水性塗料組成物において、被膜形成性樹脂(C)として、水酸基含有水溶性アクリル樹脂(C1)を使用することができる。該水酸基含有水溶性アクリル樹脂は、水性塗料中で溶解し、顔料、光輝材、その他疎水性物質等に吸着及び被膜することができるため、特に該疎水性物質の分散安定化樹脂として好適に使用することができる。
【0163】
上記水酸基含有水溶性アクリル樹脂(C1)は、重合性不飽和モノマーを用いて、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中で溶液重合する方法で合成することができる。
【0164】
上記水酸基含有水溶性アクリル樹脂(C1)は、アクリル樹脂(B)の説明で例示した水酸基含有重合性不飽和モノマー(d)及び共重合体(A)の説明で例示した親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)を含む少なくとも二種以上の重合性不飽和モノマーを好適に使用することができる。
【0165】
上記水酸基含有水溶性アクリル樹脂(C1)における水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、モノマー成分の合計量を基準として、0.1〜50質量%程度が好ましく、1〜40質量%程度がより好ましく、2〜30質量%程度がさらに好ましい。また、親水基を有する重合性不飽和モノマーの使用割合は、モノマー成分の合計量を基準として、0.1〜80質量%程度が好ましく、1〜70質量%程度がより好ましく、2〜60質量%程度がさらに好ましい。また、水酸基含有水溶性アクリル樹脂(C1)の重量平均分子量は、3,000〜300,000程度であるのが好ましく、6,000〜200,000程度であるのがより好ましく、10,000〜100,000程度であるのが更に好ましい。
【0166】
水酸基含有ポリエステル樹脂(C2)
本発明の水性塗料組成物において、被膜形成性樹脂(C)として、水酸基含有ポリエステル樹脂(C2)を使用することができる。
【0167】
なかでも、平滑性、鮮映性及びフリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた外観を有し、かつ優れた耐水性を有する塗膜を形成できる観点から、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(C2)が、水分散性の被膜形成性樹脂であることが好ましい。水分散性の被膜形成性樹脂は、一般に、比較的疎水性の被膜形成性樹脂を水性媒体中に分散することにより得られるため、高い親水性が付与された水溶性の被膜形成性樹脂に比べ、耐水性に優れた塗膜が形成される。また、本発明で用いる共重合体(A)は比較的高分子量の側鎖を有するため、上記のような比較的疎水性の被膜形成性樹脂と網状構造を形成し、粘度を発現するため、平滑性、鮮映性及びフリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた外観を有する塗膜を形成することができる。
また、上記水分散性の被膜形成性樹脂は、得られる塗料の貯蔵安定性の観点から、界面活性剤によって水分散性が付与された被膜形成性樹脂であることが好ましい。本発明の水性塗料組成物は、界面活性剤及び/又は親水性溶媒を含有しても、粘度を発現し、せん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する。従って、本発明の水性塗料組成物は、界面活性剤によって水分散性が付与された被膜形成性樹脂を含有しても、貯蔵安定性に優れ、かつ平滑性、鮮映性及びフリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた外観を有し、かつ優れた耐水性を有する塗膜を形成することができる。
【0168】
水酸基含有ポリエステル樹脂(C2)は、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
【0169】
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。かかる酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。
【0170】
上記脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物である。脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0171】
上記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性等の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物を用いることが特に好ましい。
【0172】
前記脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。脂環式構造は、主として4〜6員環構造である。脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸
等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0173】
上記脂環族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性等の観点から、1,2シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を用いることが好ましく、なかでも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を用いることがより好ましい。
【0174】
前記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の無水物;該芳香族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0175】
上記芳香族多塩基酸としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸を使用することが好ましい。
【0176】
また、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分を使用することもできる。かかる酸成分としては、特に限定されず、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらの酸成分は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0177】
前記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
【0178】
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分を使用することもできる。かかるアルコール成分としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0179】
水酸基含有ポリエステル樹脂(C2)の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、150〜250℃程度で、5〜10時間程度加熱し、該酸成分とアルコール成分のエステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法により、水酸基含有ポリエステル樹脂を製造することができる。
【0180】
上記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際には、反応容器中に、これらを一度に添加してもよいし、一方又は両者を、数回に分けて添加してもよい。また、まず、水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られた水酸基含有ポリエステル樹脂に酸無水物を反応させてハーフエステル化させてカルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。また、まず、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を付加させて水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。
【0181】
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
【0182】
また、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(C2)は、該樹脂の調製中又は調製後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0183】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられ、上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
【0184】
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体;これらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;これらの各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独でもしくは2種以上混合して使用することができる。
【0185】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(C2)としては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性に優れる観点から、原料の酸成分中の脂環族多塩基酸の含有量が、該酸成分の合計量を基準として20〜100モル%程度であるものが好ましく、25〜95モル%程度であるものがより好ましく、30〜90モル%程度であるものが更に好ましい。特に、上記脂環族多塩基酸が、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物であることが、得られる塗膜の平滑性、鮮映性等に優れる観点から、好ましい。
【0186】
水酸基含有ポリエステル樹脂(C2)は、水酸基価が1〜200mgKOH/g程度であるのが好ましく、2〜180mgKOH/g程度であるのがより好ましく、5〜170mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。また、水酸基含有ポリエステル樹脂(C2)が、更にカルボキシル基を有する場合は、その酸価が5〜150mgKOH/g程度であるのが好ましく、10〜100mgKOH/g程度であるのがより好ましく、15〜80mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。また、水酸基含有ポリエステル樹脂(C2)の数平均分子量は、500〜50,000程度であるのが好ましく、1,000〜30,000程度であるのがより好ましく、1,200〜10,000程度であるのが更に好ましい。
【0187】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂(C2)の中和は塩基性化合物を用いて行なうことができる。該塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、2,2−ジメチル−3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノプロパノール等の第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジ−イソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等の第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール等の第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等のポリアミン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。該塩基性化合物は水溶性であることが好ましい。
【0188】
水酸基含有ポリウレタン樹脂(C3)
本発明の水性塗料組成物において、被膜形成性樹脂(C)として、水酸基含有ポリウレタン樹脂(C3)を使用することができる。
【0189】
なかでも、平滑性、鮮映性及びフリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた外観を有し、かつ優れた耐水性を有する塗膜を形成できる観点から、上記水酸基含有ポリウレタン樹脂(C3)が、水分散性の被膜形成性樹脂であることが好ましい。水分散性の被膜形成性樹脂は、一般に、比較的疎水性の被膜形成性樹脂を水性媒体中に分散することにより得られるため、高い親水性が付与された水溶性の被膜形成性樹脂に比べ、耐水性に優れた塗膜が形成される。また、本発明で用いる共重合体(A)は比較的高分子量の側鎖を有するため、上記のような比較的疎水性の被膜形成性樹脂と網状構造を形成し、粘度を発現するため、平滑性、鮮映性及びフリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた外観を有する塗膜を形成することができる。
また、上記水分散性の被膜形成性樹脂は、得られる塗料の貯蔵安定性の観点から、界面活性剤によって水分散性が付与された被膜形成性樹脂であることが好ましい。本発明の水性塗料組成物は、界面活性剤及び/又は親水性溶媒を含有しても、粘度を発現し、せん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する。従って、本発明の水性塗料組成物は、界面活性剤によって水分散性が付与された被膜形成性樹脂を含有しても、貯蔵安定性に優れ、かつ平滑性、鮮映性及びフリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた外観を有し、かつ優れた耐水性を有する塗膜を形成することができる。
【0190】
上記水酸基含有ポリウレタン樹脂(C3)としては、例えば、脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネート、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール及びポリカーボネートジオールから選ばれる少なくとも1種のジオール、低分子量ポリヒドロキシ化合物及びジメチロールアルカン酸を反応させてウレタンプレポリマーを作製し、これを第3級アミンで中和し、水中に乳化分散させた後、必要に応じてポリアミン等の鎖伸長剤、架橋剤及び/又は停止剤を含む水性媒体と混合して、イソシアネート基が実質的に無くなるまで反応させてなるものを挙げることができる。上記方法により、通常、平均粒径が約0.001〜約3μmの自己乳化型のポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0191】
硬化剤(D)
本発明の水性塗料組成物は、硬化剤(D)を含むことができる。該硬化剤(D)は、前記アクリル樹脂(B)及び/又は被膜形成性樹脂(C)中の水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基と反応して、本発明の水性塗料組成物を硬化し得る化合物である。該硬化剤(D)としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等が挙げられる。これらのうち、水酸基と反応し得るアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物;カルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましい。なかでも、アミノ樹脂及びブロック化ポリイソシアネート化合物が好ましく、アミノ樹脂がさらに好ましい。硬化剤(D)は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0192】
上記アミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。また、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0193】
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂(D−1)が好ましい。特に、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂がより好ましい。
【0194】
また、上記メラミン樹脂(D−1)は、重量平均分子量が400〜6,000程度であるのが好ましく、800〜5,000程度であるのがより好ましく、1,000〜4,000程度であるのが更に好ましく、1,200〜3,000程度であるのが最も好ましい。
【0195】
なお、本明細書において、前記共重合体(A)及びアクリル樹脂(B)、並びに必要に応じて添加配合される被膜形成性樹脂(C)及び硬化剤(D)の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0196】
メラミン樹脂(D−1)としては市販品を使用できる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学社製)等が挙げられる。
【0197】
また、本発明の水性塗料組成物としては、硬化剤(D)を使用する場合、粘性調整剤として共重合体(A)、基体樹脂としてコア・シェル型水分散性アクリル樹脂(B’−1)等のアクリル樹脂(B)、及び被膜形成性樹脂(C)を使用し、かつ硬化剤(D)として重量平均分子量が1,000〜4,000程度、特に1,200〜3,000程度のメラミン樹脂(D−1)を使用することが、得られる塗膜のフリップフロップ性及び耐水性に優れる観点から、好ましい。
【0198】
また、硬化剤(D)として、メラミン樹脂(D−1)を使用する場合は、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸;モノブチルリン酸、ジブチルリン酸、モノ2−エチルヘキシルリン酸、ジ2−エチルヘキシルリン酸等のアルキルリン酸エステル;これらの酸とアミン化合物との塩等を触媒として使用することができる。
【0199】
前記ブロック化ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物である。該ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系;イミダゾール、2エチルイミダゾール等のイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール又はイミダゾール誘導体;2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0200】
上記1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートカプロエート、3−イソシアネートメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4−イソシアネートメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート(通称、トリアミノノナントリイソシアネート)等の3価以上の有機ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の2量体又は3量体;これらのポリイソシアネート化合物と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂又は水とをイソシアネート基過剰の条件でウレタン化反応させてなるプレポリマー等が挙げられる。
【0201】
前記カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめたものを使用することができる。該カルボジイミド基含有化合物としては、1分子中に少なくとも2個のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミド化合物を使用することが好ましい。
【0202】
上記ポリカルボジイミド化合物としては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性等の観点から、水溶性又は水分散性のポリカルボジイミド化合物を使用することが好ましい。該水溶性又は水分散性のポリカルボジイミド化合物としては、水性媒体中に安定に溶解又は分散し得るポリカルボジイミド化合物であれば、特に制限なく使用することができる。
【0203】
上記水溶性ポリカルボジイミド化合物としては、具体的には、例えば、「カルボジライトSV−02」、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」「カルボジライトV−04」(いずれも日清紡社製、商品名)等を使用することができる。また、上記水分散性ポリカルボジイミド化合物としては、例えば、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(いずれも日清紡社製、商品名)等を使用することができる。
【0204】
上記ポリカルボジイミド化合物は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0205】
水性塗料組成物の調整方法
本発明に係る水性塗料組成物は、例えば、前記共重合体(A)及びアクリル樹脂(B)、並びに必要に応じて添加配合される前記被膜形成性樹脂(C)及び/又は硬化剤(D)等を、公知の方法により、水性媒体中に混合し、溶解又は分散せしめることによって調整することができる。
【0206】
上記水性媒体としては、水、又は水に親水性有機溶媒を溶解してなる水−有機溶媒混合溶液等を挙げることができる。上記親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル3−メトキシブタノール等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上混合して使用することができる。上記水−有機溶媒混合溶液において、水と有機溶媒との混合割合は特に制限はないが、有機溶媒の含有量が、混合溶液の1〜50質量%程度、好ましくは5〜35質量%程度であることが好適である。
【0207】
なお、上記水性塗料とは、有機溶剤型塗料と対比される用語であって、一般に、水又は水を主成分とする媒体(水性媒体)に、被膜形成性樹脂、顔料等を分散及び/又は溶解させた塗料を意味する。本発明の塗料組成物が水性塗料である場合、該塗料組成物中における水の含有量は、10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは30〜70質量%の範囲内であることが好適である。
【0208】
本発明の水性塗料組成物において、前記共重合体(A)、アクリル樹脂(B)の配合量は、該水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、以下に述べる範囲内の量で含有することができる。
共重合体(A):0.05〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部、さらに好ましくは0.2〜5質量部、
アクリル樹脂(B):2〜70質量部、好ましくは5〜55質量部、さらに好ましくは10〜40質量部。
また、本発明の水性塗料組成物において、前記被膜形成性樹脂(C)及び/又は硬化剤(D)を使用する場合、該被膜形成性樹脂(C)及び/又は硬化剤(D)の配合量は、該水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、以下に述べる範囲内の量で含有することができる。
前記被膜形成性樹脂(C):2〜70質量部、好ましくは5〜50質量部、さらに好ましくは8〜30質量部、
硬化剤(D):5〜60質量部、好ましくは10〜50質量部、さらに好ましくは20〜40質量部。
ここで、「水性塗料組成物中の樹脂固形分」は、通常、共重合体(A)及びアクリル樹脂(B)と、必要に応じて本発明の水性塗料組成物に添加配合される被膜形成性樹脂(C)及び/又は硬化剤(D)等の樹脂固形分との合計である。
【0209】
本発明の水性塗料組成物は、必要に応じて、さらに、光輝性顔料、着色顔料、体質顔料、疎水性有機溶媒、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料分散剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の塗料用添加剤等を含有することができる。
【0210】
前記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母等を挙げることができる。これらの光輝性顔料は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの光輝性顔料はりん片状であることが好ましい。上記光輝性顔料としては、アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母が好ましく、アルミニウムがさらに好ましい。
【0211】
りん片状の光輝性顔料としては、長手方向寸法が通常1〜100μm程度、好ましくは5〜40μm程度であり、厚さが通常0.001〜5μm程度、好ましくは0.01〜2μm程度のものを好適に用いることができる。
【0212】
本発明の水性塗料組成物は、上記光輝性顔料を含有する場合に、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された光輝性に優れた塗膜を形成できるという利点を有する。
【0213】
本発明の水性塗料組成物が、上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の配合量は、共重合体(A)及びアクリル樹脂(B)、必要に応じて添加配合される被膜形成性樹脂(C)及び硬化剤(D)等をあわせた全ての樹脂の固形分100質量部に対して、通常1〜100質量部程度であることが好ましく、2〜50質量部程度であることがより好ましく、3〜30質量部程度であることが更に好ましい。
【0214】
また、本発明の水性塗料組成物は、必要に応じて添加配合される水酸基含有水溶性アクリル樹脂(C1)の一種として、リン酸基含有アクリル樹脂(C1−1)を含有することができる。特に、本発明の水性塗料組成物が、上記光輝性顔料、特にアルミニウム顔料を含有する場合、本発明の水性塗料組成物は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、メタリックムラ抑制、及び耐水性の観点から、リン酸基含有アクリル樹脂(C1−1)を含有することが好ましい。
【0215】
上記リン酸基含有アクリル樹脂(C1−1)は、例えば、リン酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを、溶液重合法等の既知の方法で共重合することによって製造することができる。上記リン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアルキルリン酸の反応生成物等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0216】
上記リン酸基含有アクリル樹脂(C1−1)において、上記リン酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを共重合させる際の使用割合は、前者/後者の質量比で、1/99〜50/50程度が好ましく、5/95〜40/60程度がより好ましく、10/90〜30/70程度がさらに好ましい。
【0217】
本発明の水性塗料組成物が、上記リン酸基含有アクリル樹脂(C1−1)を含有する場合、該リン酸基含有アクリル樹脂(C1−1)の配合量は、共重合体(A)及びアクリル樹脂(B)、並びに必要に応じて添加配合される被膜形成性樹脂(C)及び硬化剤(D)等をあわせた全ての樹脂の固形分100質量部を基準として、通常0.5〜20質量部程度が好ましく、0.75〜15質量部程度がより好ましく、1〜10質量部程度が更に好ましい。
【0218】
前記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。これらの着色顔料は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0219】
本発明の水性塗料組成物が、上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の配合量は、共重合体(A)及びアクリル樹脂(B)、並びに必要に応じて添加配合される被膜形成性樹脂(C)及び硬化剤(D)等をあわせた全ての樹脂の固形分100質量部を基準として、通常1〜200質量部程度であることが好ましく、2〜100質量部程度であることがより好ましく、3〜50質量部程度であることが更に好ましい。
【0220】
前記体質顔料としては、例えば、タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。
【0221】
本発明の水性塗料組成物が、上記体質顔料を含有する場合、該体質顔料の配合量は、共重合体(A)及びアクリル樹脂(B)、並びに必要に応じて添加配合される被膜形成性樹脂(C)及び硬化剤(D)等をあわせた全ての樹脂の固形分100質量部を基準として、通常1〜200質量部程度であることが好ましく、2〜100質量部程度であることがより好ましく、3〜50質量部程度であることが更に好ましい。
【0222】
前記疎水性有機溶媒としては、20℃において、100gの水に溶解する質量が10g以下、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下の有機溶媒を使用することができる。かかる有機溶媒としては、例えば、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶媒;1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸メチルアミル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル等のエステル系溶媒;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルn−アミルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒を挙げることができる。これらは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0223】
上記疎水性有機溶媒としては、得られる塗膜の光輝性に優れる観点から、アルコール系疎水性有機溶媒が好ましく、炭素数7〜14のアルコール系疎水性有機溶媒がより好ましい。なかでも、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルコール系疎水性有機溶媒が好ましく、2−エチル−1−ヘキサノール及び/又はエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルがより好ましい。
【0224】
本発明に係る水性塗料組成物が、上記疎水性有機溶媒を含有する場合、該疎水性有機溶媒の配合量は、水性塗料組成物中の固形分100質量部を基準として、10〜100質量部程度であるのが好ましく、15〜80質量部程度であるのがより好ましく、20〜60質量部程度であるのが更に好ましい。
【0225】
本発明の水性塗料組成物の固形分は、通常、5〜70質量%程度であるのが好ましく、15〜45質量%程度であるのがより好ましく、20〜35質量%程度であるのが更に好ましい。
【0226】
本発明の水性塗料組成物は、粘度の発現性が高く、かつせん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を持つため、塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性に優れる。適正な粘度範囲としては、測定温度20℃において、せん断速度を0.0001sec−1から10,000sec−1まで変化させたときの、1,000sec−1における粘度V1が、0.1Pa・sec以下、好ましくは0.01〜0.1Pa・secの範囲内であることが好適である。また、せん断速度を0.0001sec−1から10,000sec−1まで変化させたときの、0.1sec−1における粘度V2が、30〜100Pa・sec、好ましくは35〜70Pa・secの範囲内であることが好適である。
【0227】
上記粘度V1及び粘度V2は、粘弾性測定装置を用いて、測定することができる。該粘弾性測定装置としては、例えば、「HAAKE RheoStress RS150」(商品名、HAAKE社製)等を使用することができる。
【0228】
本発明の水性塗料組成物が、粘度の発現性が高く、かつせん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有し、特に、該水性塗料組成物が界面活性剤及び/又は親水性溶媒を含有する場合においても、粘度を発現し、せん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有する理由としては、本発明の共重合体(A)の側鎖及びアクリル樹脂(B)が疎水性のモノマーを有し、更にウレア結合、ウレタン結合、及び/又はイミド結合を有するため、疎水会合及び水素結合が寄与する網状構造が形成されて高い粘度が発現する。更に、該共重合体(A)の側鎖であるマクロモノマー(m−1)の数平均分子量が1,000〜10,000の範囲内であり、比較的大きな体積を有するため、該網状構造が界面活性剤及び/又は親水性溶媒によって影響されにくいことが推察される。
【0229】
II.本発明の塗膜形成方法
本発明の水性塗料組成物は、種々の被塗物に塗装することにより、優れた外観の塗膜を形成することができる。
【0230】
被塗物
本発明の水性塗料組成物を適用する被塗物は、特に限定されない。該被塗物としては、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができる。これらのうち、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0231】
これらの被塗物の材質としては、特に限定されるものではない。例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn−Al、ZnNi、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂、各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;紙、布等の繊維材料等を挙げることができる。これらのうち、金属材料及びプラスチック材料が好ましい。
【0232】
上記被塗物は、上記金属材料やそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、さらに、その上に塗膜が形成されているものであってもよい。
【0233】
塗膜形成を施した被塗物としては、基材に必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜を形成したもの、該下塗り塗膜の上に中塗り塗膜を形成したもの等を挙げることができる。上記下塗り塗膜は、電着塗料、好ましくはカチオン電着塗料によって形成される塗膜であることが好適である。
【0234】
塗装方法
本発明の水性塗料組成物を被塗物に塗装することによりウェット塗膜(未硬化の塗膜)を形成した後、該ウェット塗膜を硬化させることにより、目的の塗膜を形成できる。
【0235】
本発明の水性塗料組成物の塗装方法としては、特に限定されず、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等が挙げられ、これらの塗装方法でウェット塗膜を形成することができる。なかでも、得られる塗膜の平滑性、鮮映性及びフリップフロップ性の向上ならびにメタリックムラ抑制の観点から、エアスプレー塗装又は回転霧化塗装が好ましい。また、塗装に際して、必要に応じて、静電印加してもよい。
【0236】
本発明の水性塗料組成物の塗布量は、硬化膜厚として、通常、1〜50μm程度、好ましくは3〜50μm程度、より好ましくは5〜35μm程度、さらに好ましくは8〜25μm程度となる量であることが好ましい。
【0237】
ウェット塗膜の硬化は、被塗物に本発明の水性塗料組成物を塗装後、加熱することにより行うことができる。加熱は、公知の加熱手段により行うことができる。例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用することができる。加熱温度は、80〜180℃程度が好ましく、100〜170℃程度がより好ましく、120〜160℃程度が更に好ましい。加熱時間は、特に制限されるものではないが、通常、10〜60分間程度が好ましく、20〜40分間程度がより好ましい。
【0238】
本発明の水性塗料組成物の塗装後は、上記加熱硬化を行なう前に、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は、40〜100℃程度が好ましく、50〜90℃程度がより好ましく、60〜80℃程度が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間程度が好ましく、1〜10分間程度がより好ましく、2〜5分間程度が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25℃〜80℃程度の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間程度吹き付けることにより行うことができる。
【0239】
本発明の水性塗料組成物は、ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜からなる複層塗膜を、2コート1ベーク方式で自動車車体等の被塗物に形成する場合に、該ベースコート形成用として、好適に用いることができる。この場合の塗膜形成方法は、下記方法Iに従って、行うことができる。
【0240】
方法I
(1)被塗物に、本発明の水性塗料組成物を塗装してベースコート塗膜を形成する工程、
(2)上記未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤーコート塗料組成物を塗装してクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに
(3)上記未硬化のベースコート塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜を、加熱して両塗膜を同時に硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
【0241】
上記方法Iにおける被塗物は、下塗り塗膜が形成された自動車車体、下塗り塗膜及び中塗り塗膜が形成されている自動車車体等が好ましい。上記下塗り塗膜は電着塗料によって形成された塗膜であることが好ましく、カチオン電着塗料によって形成された塗膜であることがさらに好ましい。
【0242】
本発明において、硬化塗膜とは、JIS K 5600−1−1(2004)に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600−1−1に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態を含むものである。
【0243】
本発明の水性塗料組成物を、上記方法Iの2コート1ベーク方式で塗装する場合、その塗装膜厚は、硬化膜厚として、3〜40μm程度が好ましく、5〜30μm程度がより好ましく、8〜25μm程度が更に好ましく、10〜18μm程度が更に特に好ましい。また、上記クリヤーコート塗料組成物の塗装膜厚は、硬化膜厚として、10〜80μm程度が好ましく、15〜60μm程度がより好ましく、20〜45μm程度が更に好ましい。
【0244】
また、方法Iにおいて、上記水性塗料組成物の塗装後は、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で前述のプレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。また、上記クリヤーコート塗料組成物の塗装後は、必要に応じて、室温で1〜60分間程度のインターバルをおいたり、40〜80℃程度で1〜60分間程度プレヒートすることができる。
【0245】
上記水性塗料組成物及びクリヤーコート塗料組成物の硬化は、前述した公知の加熱手段により行うことができる。加熱温度は、80〜180℃程度が好ましく、100〜170℃程度がより好ましく、120〜160℃程度が更に好ましい。また、加熱時間は、10〜60分間程度が好ましく、20〜40分間程度がより好ましい。この加熱により、ベースコート及びクリヤーコートの両塗膜を同時に硬化させることができる。
【0246】
本発明の水性塗料組成物は、自動車車体等の被塗物に、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤーコート塗膜からなる複層塗膜を、3コート1ベーク方式で形成する場合に、第2着色塗膜形成用として、好適に用いることができる。この場合の塗膜形成方法は、下記方法IIに従って、行うことが出来る。
【0247】
方法II
(1)被塗物に、第1着色塗料組成物を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、(2)上記未硬化の第1着色塗膜上に、本発明の水性塗料組成物を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、
(3)上記未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤーコート塗料組成物を塗装してクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに
(4)上記未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜を、同時に加熱硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
【0248】
上記方法IIは、未硬化の第1着色塗膜上に、前記方法Iの塗膜形成方法を行うものである。方法IIにおける被塗物としては、下塗り塗膜を形成した自動車車体等が好ましい。上記下塗り塗膜は電着塗料によって形成されることが好ましく、カチオン電着塗料によって形成されることがさらに好ましい。
【0249】
前記方法IIにおいて、第1着色塗料組成物の塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で3〜50μm程度が好ましく、5〜30μm程度がより好ましく、10〜25μm程度が更に好ましい。また、本発明の水性塗料組成物の塗装膜厚は、硬化膜厚として、1〜30μm程度が好ましく、3〜25μm程度がより好ましく、5〜20μm程度が更に好ましい。また、クリヤーコート塗料組成物の塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で10〜80μm程度が好ましく、15〜60μm程度とするのがより好ましく、20〜45μm程度が更に好ましい。
【0250】
上記方法IIの具体例としては、例えば、下記方法II−1、方法II−2等を挙げることができる。
【0251】
方法II−1
(1)鋼板に、必要に応じて表面処理を施し、その上に電着塗料を塗装し、加熱硬化させて硬化電着塗膜を形成する工程、
(2)中塗り塗装ブースにおいて、工程(1)で得られた硬化電着塗膜上に、第1着色塗料組成物を塗装して、中塗り塗膜を形成する工程、
(3)ベースコート塗装ブースにおいて、工程(2)で得られた未硬化の中塗り塗膜上に、本発明の水性塗料組成物を塗装して、ベースコートを形成する工程、
(4)クリヤーコート塗装ブースにおいて、工程(3)で得られたベースコート塗面上に、クリヤーコート塗料を塗装してクリヤーコート塗膜を形成する工程、ならびに
(5)工程(2)〜(4)で形成された中塗り塗膜、ベースコート及びクリヤーコートを加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程を含む複層塗膜形成方法。
【0252】
なお、上記ブースは、均一な塗装品質を確保するため、温度、湿度等の塗装環境を一定の範囲内に維持する設備であって、通常、塗装される塗料の種類ごとに分けられている。また、同一のブース内において、被塗物に塗着した塗料のタレ、ムラ等を防止するために、同一塗料が、2回に分けて塗装される場合がある。この場合、1回目の塗装が第1ステージ塗装、2回目の塗装が第2ステージ塗装と呼ばれる。
【0253】
上記方法II−1において、第1着色塗料組成物の塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で5〜50μm程度が好ましく、10〜30μm程度がより好ましく、15〜25μm程度が更に好ましい。また、本発明の水性塗料組成物の塗装膜厚は、硬化膜厚として、3〜30μm程度が好ましく、5〜25μm程度がより好ましく、8〜20μm程度が更に好ましく、9〜16μm程度が更に特に好ましい。また、クリヤーコート塗料組成物の塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で10〜80μm程度が好ましく、15〜60μm程度がより好ましく、20〜45μm程度が更に好ましい。
【0254】
また、上記方法II−1において、第1着色塗料組成物として水性第1着色塗料組成物を用いた場合、該水性第1着色塗料組成物の塗装後は、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で、前述のプレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。
【0255】
方法II−2
(1)鋼板に、必要に応じて表面処理を施し、その上に電着塗料を塗装し、加熱硬化させて硬化電着塗膜を形成する工程、
(2)ベースコート塗装ブースの第1ステージにおいて、工程(1)で得られた硬化電着塗膜上に、第1ベースコート塗料を塗装して、第1ベースコート塗膜を形成する工程、(3)ベースコート塗装ブースの第2ステージにおいて、工程(2)で得られた第1ベースコート塗膜上に、本発明の水性塗料組成物を塗装して、第2ベースコート塗膜を形成する工程、
(4)クリヤーコート塗装ブースにおいて、工程(3)で得られた第2ベースコート塗膜上に、クリヤーコート塗料を塗装してクリヤーコート塗膜を形成する工程、ならびに(5)工程(2)〜(4)で形成された第1ベースコート塗膜、第2ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程、を含む複層塗膜形成方法。
【0256】
上記方法II−2において、第1着色塗料組成物の塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で3〜40μm程度が好ましく、5〜25μm程度がより好ましく、10〜20μm程度が更に好ましい。また、本発明の水性塗料組成物の塗装膜厚は、硬化膜厚として、1〜25μm程度が好ましく、3〜20μm程度がより好ましく、5〜15μm程度が更に好ましい。また、クリヤーコート塗料組成物の塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で10〜80μm程度が好ましく、15〜60μm程度がより好ましく、20〜45μm程度が更に好ましい。
【0257】
上記方法II−2の塗装方法は、中塗り塗装ブースが不要であるため、該中塗り塗装ブースの温度及び湿度を調整するためのエネルギーを削減できるという利点を有する。
【0258】
また、該方法II−2の塗装方法においては、第1着色塗料組成物及び本発明の水性塗料組成物をベースコート塗装ブースで塗装するため、通常、第1着色塗料組成物の塗装と、本発明の水性塗料組成物の塗装との間に加熱用機器が設置されず、一般に、第1着色塗料組成物を塗装して形成される第1ベースコート塗膜に対し、前述のプレヒートが行われない。このため、該方法II−2は、プレヒートのためのエネルギーを削減できるという利点を有する。したがって、省エネルギーの観点から、上記方法II−2の塗装方法においては、第1着色塗料組成物の塗装と、本発明の水性塗料組成物の塗装との間に加熱工程を含まないことが好ましい。
【0259】
また、方法IIにおいて、本発明の水性塗料組成物の塗装後は、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で前述のプレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。また、上記クリヤーコート塗料組成物の塗装後は、必要に応じて、室温で1〜60分間程度のインターバルをおいたり、40〜80℃程度で1〜60分間程度プレヒートすることができる。
【0260】
上記未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜の3層塗膜の加熱硬化は、前述した公知の加熱手段により行うことができる。加熱温度は、80〜180℃程度が好ましく、100〜170℃程度がより好ましく、120〜160℃程度が更に好ましい。また、加熱時間は、10〜60分間程度が好ましく、20〜40分間程度がより好ましい。この加熱により、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤーコート塗膜の三層塗膜を同時に硬化させることができる。
【0261】
上記方法I〜IIで用いられるクリヤーコート塗料組成物としては、自動車車体等の塗装用として公知の熱硬化性クリヤーコート塗料組成物をいずれも使用できる。例えば、架橋性官能基を有する被膜形成性樹脂及び架橋剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物、水性熱硬化性塗料組成物、粉体熱硬化性塗料組成物等を挙げることができる。
【0262】
上記被膜形成性樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、シラノール基等を挙げることができる。被膜形成性樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物等を挙げることができる。
【0263】
上記方法IIで用いられる第1着色塗料組成物としては、例えば、前記方法II−1においては公知の熱硬化性中塗り塗料組成物を使用することができ、前記方法II−2においては公知の熱硬化性ベースコート塗料組成物を使用することができる。具体的には、例えば、架橋性官能基を有する被膜形成性樹脂、架橋剤、着色顔料及び体質顔料を含有する熱硬化性塗料組成物を、好適に使用できる。
【0264】
上記被膜形成性樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基等を挙げることができる。被膜形成性樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
上記方法IIで用いられる第1着色塗料組成物としては、有機溶剤型塗料組成物、水性塗料組成物、粉体塗料組成物のいずれを用いてもよい。これらのうち、水性塗料組成物を用いるのが好ましい。
【0265】
クリヤーコート塗料組成物の被膜形成性樹脂/架橋剤の組み合わせとしては、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/ブロック化ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂等が好ましい。
【0266】
また、上記クリヤーコート塗料組成物としては、一液型塗料であってもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等の多液型塗料であってもよい。
【0267】
また、上記クリヤーコート塗料組成物には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有させることができ、さらに体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有せしめることができる。
【0268】
上記方法I〜IIにおいて、第1着色塗料組成物及びクリヤーコート塗料組成物の塗装は、公知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装等の方法によって塗装することができる。
【実施例】
【0269】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明を一層具体的に説明する。但し、本発明は、これらにより限定されない。各例において、「部」及び「%」は、特記しない限り、質量基準による。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づく。
【0270】
ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、テトラヒドロフラン40部及び2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート52.9部を仕込み、15℃に降温した。次いで、15℃を維持しつつ、攪拌しながら、エチルアミンの37.8%メタノール溶液37部を1時間かけて滴下し、滴下終了後、室温で2時間攪拌して熟成を行なった。次いで、60℃に昇温し、減圧下で脱溶剤を行うことにより、ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a−1)(有効成分100%)を得た。
【0271】
製造例2
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、テトラヒドロフラン40部及び2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート51.2部を仕込み、35℃に昇温した。次いで、35℃を維持しつつ、攪拌しながら、ブチルアミン24.1部を1時間かけて滴下し、滴下終了後、35℃で2時間攪拌して熟成を行なった。次いで、60℃に昇温し、減圧下で脱溶剤を行うことにより、ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a−2)(有効成分100%)を得た。
【0272】
製造例3
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、テトラヒドロフラン40部及び2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート51.2部を仕込み、35℃に昇温した。次いで、35℃を維持しつつ、攪拌しながら、イソプロピルアミン19.5部を1時間かけて滴下し、滴下終了後、35℃で2時間攪拌して熟成を行なった。次いで、60℃に昇温し、減圧下で脱溶剤を行うことにより、ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a−3)(有効成分100%)を得た。
【0273】
製造例4
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、テトラヒドロフラン40部及び2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート51.2部を仕込み、35℃に昇温した。次いで、35℃を維持しつつ、攪拌しながら、2−エチルヘキシルアミン42.6部を1時間かけて滴下し、滴下終了後、35℃で2時間攪拌して熟成を行なった。次いで、60℃に昇温し、減圧下で脱溶剤を行うことにより、ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a−4)(有効成分100%)を得た。
【0274】
製造例5
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、テトラヒドロフラン40部及び2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート51.2部を仕込み、35℃に昇温した。次いで、35℃を維持しつつ、攪拌しながら、ジエチルアミン24.1部を1時間かけて滴下し、滴下終了後、35℃で2時間攪拌して熟成を行なった。次いで、60℃に昇温し、減圧下で脱溶剤を行うことにより、ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a−5)(有効成分100%)を得た。
【0275】
製造例6
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、空気導入管、乾燥管及び滴下装置を備えた反応容器に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート42.9部及びp−メトキシフェノール0.039部を仕込み、乾燥空気を毎分20mLで導入しながら、60℃に昇温した。次いで、60℃を維持しつつ、攪拌と乾燥空気の導入とを行いながら、イソホロンジイソシアネート66.6部を1時間かけて滴下し、滴下終了後、60℃で2時間攪拌して熟成を行なった。次いで、80℃に昇温し、同温度でさらに1時間攪拌して熟成を行った。次いで、10℃に降温し、テトラヒドロフラン50部を加えた後、10℃を維持しつつ、攪拌しながら、ブチルアミン19.7部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間攪拌して熟成を行なった。その後、60℃に昇温し、減圧下で脱溶剤を行うことにより、ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a−6)(有効成分100%)を得た。なお、上記ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a−6)はウレア結合以外にウレタン結合も有する。
【0276】
ウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー(b)の製造
製造例7
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、空気導入管、乾燥管及び滴下装置を備えた反応容器に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート67.7部及びpメトキシフェノール0.40部を仕込み、乾燥空気を毎分20mLで導入しながら、50℃に昇温した。次いで、50℃を維持しつつ、攪拌と乾燥空気の導入とを行いながら、ブタノール32.3部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃に昇温し、同温度で1時間攪拌して熟成を行った。次いで、100℃に昇温し、同温度で1時間攪拌して熟成を行い、ウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー(b−1)(有効成分100%)を得た。
【0277】
イミド結合を有する重合性不飽和モノマー(c)の製造
製造例8
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、空気導入管、乾燥管及び滴下装置を備えた反応容器に、メタクリル酸52.4部、N-ヒドロキシエチルフタルイミド47.6部、トルエン64.2部、p−メトキシフェノール0.08部、p−トルエンスルホン酸一水和物4.7部を仕込み、乾燥空気を導入しながら、130℃まで昇温した。次いで攪拌しながら3時間縮合反応させた後、80℃まで冷却し、更にトルエンを150部加え、室温まで冷却した。次いで、5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えて洗浄し、さらに中性になるまで純水で洗浄した後、飽和食塩水で脱水した。油相に対して50部のアセトンと1重量%の硫酸ナトリウムを加え、脱水した。その後硫酸ナトリウムをろ過によって取り除き、70℃まで加熱して、固形分35%になるまで溶剤を減圧留去した。氷水を用いて10℃まで冷却し、析出した結晶をろ過し、イミド結合を有する重合性不飽和モノマー(c−1)を得た。
【0278】
マクロモノマー(m−1)の製造
製造例9
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル16部及び2,4−ジフェニル4−メチル−1−ペンテン(以下、「MSD」と略称することがある)3.5部を仕込み、気相に窒素ガスを通気し、攪拌しながら160℃に昇温した。160℃に達したら、製造例1で得たウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a−1)30部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート30部、n−ブチルメタクリレート40部及びジ−tertアミルパーオキサイド7部からなる混合液を3時間かけて滴下し、同温度で2時間攪拌した。次いで、30℃まで冷却し、エチレングリコールモノブチルエーテルで希釈して固形分65%のマクロモノマー溶液(m−1−1)を得た。得られたマクロモノマーの水酸基価は125mgKOH/g、数平均分子量は2,200であった。また、プロトンNMRでの解析によるとMSD由来の重合性不飽和基のうち97%以上がポリマー鎖末端に存在し、2%は消失していた。
なお、上記プロトンNMRでの解析は、溶媒として重クロロホルムを使用し、重合反応前後の、MSDの不飽和基のプロトンに基づくピーク(4.8ppm、5.1ppm)、マクロモノマー鎖末端の重合性不飽和基のプロトンに基づくピーク(5.0ppm、5.2ppm)及びMSDに由来する芳香族プロトン(7.2ppm)のピークを測定した後、上記MSDに由来する芳香族プロトン(7.2ppm)は重合反応前後で変化しないと仮定し、これを基準として、各不飽和基(未反応、マクロモノマー鎖末端、消失)を定量化することによって行なった。
【0279】
製造例10〜33
下記第1表に示す配合とする以外は、製造例9と同様にして合成し、固形分65%のマクロモノマー溶液(m−1−2)〜(m−1−25)を得た。
【0280】
第1表に、マクロモノマー溶液(m−1−1)〜(m−1−25)の原料組成(部)、モノマー成分(l)中の重合性不飽和モノマー(I)及び(II)の割合、水酸基価(mgKOH/g)ならびに数平均分子量を示す。
【0281】
【表1】

【0282】
【表2】

【0283】
【表3】

【0284】
共重合体(A)の製造
製造例34
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び2つの滴下装置を備えた反応容器に、製造例9で得たマクロモノマー溶液(m−1−1)15.4部(固形分10部)、エチレングリコールモノブチルエーテル20部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート30部を仕込み、液中に窒素ガスを吹き込みながら85℃に昇温した。次いで、同温度に保持した反応容器内に、N,N−ジメチルアクリルアミド35部、N−イソプロピルアクリルアミド35部、2−ヒドロキシエチルアクリレート30部、エチレングリコールモノブチルエーテル10部及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート40部からなる混合液と、「パーブチル O」(商品名、日本油脂社製、重合開始剤、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)0.15部及びエチレングリコールモノブチルエーテル20部からなる混合液とをそれぞれ4時間かけて、同時に反応容器内に滴下し、滴下終了後、同温度で2時間攪拌して熟成を行なった。次いで、同温度に保持した反応容器内に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3部及びエチレングリコールモノブチルエーテル15部からなる混合液を1時間かけて滴下し、滴下終了後、同温度で1時間攪拌して熟成を行なった。次いで、エチレングリコールモノブチルエーテルを添加しながら、30℃まで冷却し、固形分35%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体の重量平均分子量は31万であった。得られた共重合体溶液に脱イオン水215部を添加し、固形分20%の共重合体希釈液(A−1)を得た。
【0285】
製造例35〜70
下記第2表に示す配合とする以外は、製造例34と同様にして合成し、固形分20%の共重合体希釈液(A−2)〜(A−36)を得た。
【0286】
下記第2表に、共重合体溶液(A−1)〜(A−36)の原料組成(部)及び重量平均分子量を示す。
【0287】
【表4】

【0288】
【表5】

【0289】
【表6】

【0290】
【表7】

【0291】
(注1)「NK−エステル AM−90G」:商品名、新中村化学工業社製、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー、下記一般式(1)
【0292】
【化2】

【0293】
において、R1が水素原子、R2がメチル基、R3がエチレン基、mが9であり、分子量が454。
【0294】
アクリル樹脂(B)の製造
製造例71
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水128部、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA製、乳化剤、有効成分25%)3部を仕込み、窒素気流中で攪拌混合し、80℃に昇温した。
【0295】
次いで、下記コア部用モノマー乳化物全量のうちの1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部とを反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行った。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、平均粒子径148nm、固形分30%の水酸基含有水分散性アクリル樹脂水分散液(B−1)を得た。得られた水分散性アクリル樹脂(B)は、酸価が14.3mgKOH/g、水酸基価が9.4mgKOH/gであった。
【0296】
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水46.2部、「アクアロンKH−10」0.79部、過硫酸アンモニウム0.32部、エチレングリコールジメタクリレート3.0部、メチルメタクリレート64部、n−ブチルアクリレート10部を混合攪拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
【0297】
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水13.8部、「アクアロンKH−10」0.24部、過硫酸アンモニウム0.03部、メチルメタクリレート2.3部、n−ブチルアクリレート6.44部、スチレン2.98部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2.19部、メタクリル酸2.19部、及び製造例1で得たウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a−1)6.9部を混合攪拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
【0298】
製造例72〜94
下記第3表に示す配合とする以外、製造例71と同様にして合成し、水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(B−2)〜(B−24)を得た。
【0299】
第3表に、水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(B−1)〜(B−24)の原料組成(部)、固形分(%)、水酸基価(mgKOH/g)、酸価(mgKOH/g)、及び平均粒子径(nm)を示す。
【0300】
【表8】

【0301】
【表9】

【0302】
【表10】

【0303】
(注2)アロニックスM−140:商品名、東亜合成株式会社製、ヘキサヒドロフタルイミドエチルアクリレート
【0304】
リン酸基含有水溶性アクリル樹脂(C1−1)の製造
製造例95
温度計、サーモスタット、攪拌器、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部、イソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、下記リン酸基含有重合性モノマー15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部、t−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分濃度50%の水酸基含有樹脂溶液(C1−1)を得た。本樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
リン酸基含有重合性モノマー:温度計、サーモスタット、攪拌器、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部、イソブタノール41部を入れ、90℃に昇温後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノ−ル59部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーの酸価は285mgKOH/gであった。
【0305】
アルミニウム顔料分散液の製造
製造例96
攪拌混合容器内において、「Gt180A」(商品名、旭化成メタルズ社製、アルミニウム顔料ペースト、アルミニウム含有量74%)19部(固形分14部)、2−エチル−1−ヘキサノール34.8部、上記水酸基含有アクリル樹脂溶液(C1−1)8部(固形分4部)及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、アルミニウム顔料分散液(P−1)を得た。
【0306】
水酸基含有ポリエステル樹脂(C2)の製造
製造例97
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物に、カルボキシル基を導入するために、無水トリメリット酸38.3部を加えて、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノール(20℃において100gの水に溶解する質量:0.1g)で希釈し、固形分70%の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(C2−1)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、数平均分子量が1,400であった。原料組成において、酸成分中の脂環族多塩基酸の合計含有量は、該酸成分の合計量を基準として46モル%であった。
【0307】
水性塗料組成物の製造
実施例1
攪拌混合容器に、製造例71で得た水酸基含有水分散性アクリル樹脂水分散液(B−1)116.67部(固形分35部)、製造例97で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(C2−1)43部(固形分30部)、製造例96で得たアルミニウム顔料分散液(P−1)62部(アルミニウム顔料固形分14部、リン酸基含有アクリル樹脂(C1−1)固形分4部)、及びメラミン樹脂(D−1)(メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂固形分60%、重量平均分子量2,000)50部(固形分30部)を入れ、均一に混合し、更に、製造例1で得た共重合体希釈液(A−1)5部(固形分1部)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、固形分25%の水性塗料組成物(X−1)を得た。
【0308】
実施例2〜52及び比較例1〜10
配合組成を下記第4表に示す通りとする以外は、実施例1と同様にして、pH8.0、固形分25%の水性塗料組成物(X−2)〜(X−62)を得た。
【0309】
【表11】

【0310】
【表12】

【0311】
【表13】

【0312】
【表14】

【0313】
【表15】

【0314】
【表16】

【0315】
【表17】

【0316】
(注3)メラミン樹脂(D−1):メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂固形分60%、重量平均分子量2,000
(注4)「ACRYSOL RM−825」:商品名、ロームアンドハース社製、ウレタン会合型粘性調整剤、固形分25%
【0317】
被塗物の作製
製造例98
30cm×45cmのリン酸亜鉛処理された冷延鋼板に、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料組成物(商品名「エレクロンGT−10」、関西ペイント社製)を膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分加熱して硬化させた。次いで、この電着塗膜上に中塗り塗料組成物(商品名「TP−65−2」、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂・アミノ樹脂系有機溶剤型塗料組成物)を膜厚35μmになるように塗装し、140℃で30分間加熱して硬化させた。かくして、鋼板上に電着塗膜及び中塗り塗膜を形成してなる被塗物を作製した。
【0318】
試験板の製作
実施例53
実施例1で得られた水性塗料組成物(X−1)を、前記塗膜形成方法Iの2コート1ベーク方式におけるベースコート形成用塗料として使用して、被塗物上にベースコート及びクリヤーコートからなる複層塗膜を形成した。
即ち、製造例98で得た被塗物に、水性塗料組成物(X−1)を、回転霧化型のベル型塗装機を用いて、膜厚15μmとなるように塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行った。次いで、その未硬化塗面上にアクリル樹脂系有機溶剤型上塗りクリヤー塗料組成物(商品名「マジクロンKINO−1210」、関西ペイント社製)を膜厚40μmとなるように塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱してこの両塗膜を同時に硬化させた。かくして、被塗物上にベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜からなる複層塗膜が形成された試験板を得た。
【0319】
実施例54〜104及び比較例11〜20
第5表に示した水性塗料組成物を用いる以外は、実施例53と同様にして、実施例54〜104及び比較例11〜20の試験板を得た。
【0320】
実施例105
30cm×45cmのリン酸亜鉛処理された冷延鋼板に、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料組成物(商品名「エレクロンGT−10」、関西ペイント社製)を膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分加熱して硬化させた。次いで、この電着塗膜上に第1着色塗料組成物(商品名「TP−65−2」、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂・アミノ樹脂系有機溶剤型塗料組成物)を膜厚25μmになるように塗装し、5分間放置した後、80℃で5分間プレヒートを行った。次いで7分間セッティングした後、その未硬化塗面上に実施例54と同じ塗料を同じ工程及び条件で塗り重ね、加熱硬化させた。
かくして、実施例1で得られた水性塗料組成物(X−1)を前記塗膜形成方法IIの3コート1ベーク方式におけるベースコート形成用塗料(第2塗料組成物)として使用し、電着塗膜上に第1着色塗膜、第2着色塗膜、及びクリヤーコート塗膜からなる複層塗膜が形成された試験板を得た。
【0321】
比較例21
比較例1で得られた水性塗料組成物(X−53)を前記塗膜形成方法IIの3コート1ベーク方式におけるベースコート形成用塗料(第2塗料組成物)として用いる以外は、実施例105と同じ塗料を同じ工程及び条件で塗り重ね、比較例21の試験板を得た。
【0322】
評価試験
上記実施例53〜105及び比較例11〜21で得られた各試験板について、平滑性、鮮映性、フリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性の評価を行なった。試験方法は、下記の通りである。
【0323】
平滑性:各試験板について、「Wave Scan」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるLong Wave(LW)値に基づいて、平滑性を評価した。LW値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを示す。
【0324】
鮮映性:各試験板について、「Wave Scan」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるShort Wave(SW)値に基づいて、鮮映性を評価した。SW値が小さいほど塗面の鮮映性が高いことを示す。
【0325】
フリップフロップ性: 各試験板について、多角度分光測色計MA−68(商品名、X−Rite社製)を用いて、受光角15度及び受光角110度のL値(明度)を測定し、下記の式によってFF値を求めた。
FF値=受光角15度のL値/受光角110度のL値。
FF値が大きいほど、観察角度(受光角)によるL値(明度)の変化が大きく、フリップフロップ性に優れていることを示す。
【0326】
メタリックムラ:各試験板を目視にて観察し、メタリックムラの発生程度を下記基準で評価した。
◎:メタリックムラがほとんど認められず、極めて優れた塗膜外観を有する。
○:メタリックムラがわずかに認められるが、優れた塗膜外観を有する。
△:メタリックムラが認められ、塗膜外観がやや劣る。
×:メタリックムラが多く認められ、塗膜外観が劣る。
【0327】
耐水性:試験板を、40℃の温水に240時間浸漬後引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、試験板上の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べた。耐水性の評価基準は、次の通りである。
◎:ゴバン目塗膜が100個残存し、且つフチカケが生じていない、
○:ゴバン目塗膜が100個残存しているが、フチカケが生じている、
△:ゴバン目塗膜が90〜99個残存している、
×:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。
【0328】
第5表に、塗膜性能の試験結果を示す。
【0329】
【表18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a)、ウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー(b)、及びイミド結合を有する重合性不飽和モノマー(c)の中から選ばれる少なくとも一種以上の水素結合性を有する含窒素重合性不飽和モノマー(I)5〜100質量%、並びにそれ以外の重合性不飽和モノマー(II)0〜95質量%からなるモノマー成分(l)を重合することにより得られる1,000〜10,000の範囲内の数平均分子量を有する重合体からなる基本骨格を有し、かつ重合性不飽和基を有するマクロモノマー(m−1)と親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)とを含有するモノマー成分(m)を共重合してなる共重合体(A)、及び共重合体(A)以外の、ウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a)、ウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー(b)、及びイミド結合を有する重合性不飽和モノマー(c)の中から選ばれる少なくとも一種以上の水素結合性を有する含窒素重合性不飽和モノマー(I)及びそれ以外の重合性不飽和モノマー(II)を共重合してなり、かつ水分散体であることを特徴とするアクリル樹脂(B)を含有することを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
共重合体(A)の共重合成分である親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)が、N−置換(メタ)アクリルアミド、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の重合性不飽和モノマーである請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
共重合体(A)のモノマー成分(m)の合計質量を基準にして、共重合成分が重合性不飽和基を有するマクロモノマー(m−1)1〜40質量%、親水基を有する重合性不飽和モノマー(m−2)5〜99質量%ならびに上記重合性不飽和モノマー(m−1)及び(m−2)以外の重合性不飽和モノマー(m−3)0〜94質量%からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
共重合体(A)において、モノマー成分(l)が、少なくともその一部として水酸基含有重合性不飽和モノマーを、モノマー成分(l)の合計質量を基準として5〜60質量%含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
アクリル樹脂(B)の共重合成分であるウレア結合を有する重合性不飽和モノマー(a)がN−メタクリロイルオキシエチル−N’−エチルウレア及び/又はN−メタクリロイルオキシエチル−N’−ブチルウレアであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
アクリル樹脂(B)の共重合成分である水素結合性を持つ含窒素重合性不飽和モノマー(I)とそれ以外の重合性不飽和モノマー(II)の質量比率が1/99〜50/50であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
アクリル樹脂(B)が乳化重合により共重合してなるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項8】
アクリル樹脂(B)がコア・シェル構造を有し、コアとシェルの質量比が10/90〜90/10であり、かつそのシェル部において水素結合性を有する含窒素重合性不飽和モノマー(I)の量がシェル部を構成する重合性不飽和モノマーの総量の3〜70質量%であることを特徴とする請求項7に記載の水性塗料組成物。
【請求項9】
シェル部を構成する重合性不飽和モノマーの総量の20〜80質量%が、炭素数4以上の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーであることを特徴とする請求項8に記載の水性塗料組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の水性塗料組成物が塗装された物品。
【請求項11】
(1)被塗物に、請求項1〜9のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装してベースコート塗膜を形成する工程、
(2)上記の未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤーコート塗料組成物を塗装してクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに
(3)上記の未硬化のベースコート塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜を、加熱して両塗膜を同時に硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
【請求項12】
(1)被塗物に、第1着色塗料組成物を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
(2)上記の未硬化の第1着色塗膜上に、第2着色塗料組成物を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、
(3)上記の未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤーコート塗料組成物を塗装してクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに
(4)上記の未硬化の第1着色塗膜、上記の未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜を、同時に加熱硬化させる工程
を含み、上記第2着色塗料組成物が請求項1〜9のいずれか1項に記載の水性塗料組成物である複層塗膜形成方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の複層塗膜形成方法により形成された複層塗膜を有する物品。

【公開番号】特開2013−53204(P2013−53204A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191484(P2011−191484)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】