説明

共重合体およびその用途

【課題】優れた防汚性能と可撓性のある防汚材料によって、種々の曲面の被着体にも密着するセルフクリーニングシートやフィルムを提供する。
【解決手段】一般式(1)CH=C(−G)−C(=O)−N(−J)−Q (1)(式中、Gは水素原子またはメチル基を表し、J及びQは独立して、水素原子、メチル基、−CHOH、−CHCHOH、−CHCHCHOH、または-CHCH(OH)CHOHを表す。但し、JとQの組み合わせが同時に、水素原子と水素原子、水素原子とメチル基、メチル基とメチル基となる場合を除く。)で表される化合物(I)、分子内に少なくとも1個の水酸基と2個の(メタ)アクリロイロオキシ基を有する化合物(II)、およびジ(メタ)アクリレート化合物(III)を含む組成物を共重合して得られる共重合体からなる共重合体およびその防汚材料の用途。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚材料に好適な共重合体およびその用途に関する。更に詳しくはセルフクリーニングフィルムやシートに適し、優れた防汚性能を維持しつつ、かつ可撓性が改良された防汚材料に好適な共重合体およびその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
外壁等に付着した汚れ(外気疎水性物質等)を降雨及び散水等によって浮き上がらせて効率的に除去するセルフクリーニング性(防汚染性)を有する親水化剤(非特許文献1)
及び防曇性を有する親水化剤が注目されている(非特許文献2)。
【0003】
カーボンブラックのような燃焼生成物や排気ガス中に含まれる油分等の汚染物質が付着した際にも、表面を自己浄化(セルフクリーニング)し、もしくは容易に清掃することの可能な防汚フィルムの用途に好適な防汚材料として、既に分子内に少なくとも1個の水酸基を有するアクリルアミド誘導体と分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを含む組成物を共重合して得られる共重合体が知られている(特許文献1)。
【0004】
すなわち、特許文献1には、CH=C(−G)−C(=O)−N(−J)−Q (1)
(式中、Gは水素原子またはメチル基を表し、J及びQは、独立して、水素原子、メチル基、−CHOH、−CHCHOH、−CHCHCHOH、または-CHCH(OH)CHOHを表す。但し、JとQの組み合わせが同時に、水素原子と水素原子、水素原子とメチル基、メチル基とメチル基となる場合を除く。)で表される化合物と分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを含む組成物を共重合して得られる共重合体からなる防汚材料が開示されている。
【0005】
しかしながら、防汚材料をセルフクリーニングフィルムやシートを、広告板や自動車や船舶の窓ガラスなどの平面の被着体に密着させることは容易であるが、広告塔や船舶、自動車の外装などに貼着する場合は、防汚材料それ自体の可撓性を利用して被着体に密着させる必要がある。
【0006】
一方、上記の特許文献1には防汚材料として用いられるポリマーを構成するモノマーの一般式が多数示されている。しかしながら、防汚材料の防汚性能を維持し、かつ可撓性を改良してセフルクリーニングフィルムやシートとした場合の適用範囲を広げることについては何ら開示されていない。
【0007】
【非特許文献1】高分子,44(5),307頁、未来材料,2(1),36−41頁
【非特許文献2】東亜合成研究年報、TREND 2月号、39〜44頁
【特許文献1】WO2004/29375号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、セルフクリーニングフィルムやシートに適し、優れた防汚性能を維持しつつ、かつ可撓性が改良された防汚材料に好適な共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、一般式(1)
CH=C(−G)−C(=O)−N(−J)−Q (1)
(式中、Gは水素原子またはメチル基を表し、J及びQは、独立して、水素原子、メチル基、−CHOH、−CHCHOH、−CHCHCHOH、または-CHCH(OH)CHOHを表す。但し、JとQの組み合わせが同時に、水素原子と水素原子、水素原子とメチル基、メチル基とメチル基となる場合を除く。)で表される化合物(I)、
一般式(2)
CH=CY−C(=O)−O−D(−OH)−O−C(=O)−CX=CH(2)
(式中、X,Yは独立して水素原子又はメチル基を表し、Dは3価または4価の鎖状炭化水素残基を示し、mは1または2である。)で表される分子内に少なくとも1個の水酸基と2個の(メタ)アクリロイロオキシ基を有する化合物(II)
および、一般式(3)
CH=C(−R)−C(=O)−O−(R−O)―Z―(O−R−O−C(=O)−C(−R)=CH (3)
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に水素またはメチル基であり、RおよびRはそれぞれ独立にアルキレン基であり、Zは芳香族または脂環族炭化水素を含む2価の炭化水素残基であり、m、nは3から40の整数を示す。)で示されるジ(メタ)アクリレート化合物(III)
を含む組成物を共重合して得られる共重合体およびその用途に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた防汚性能と可撓性のある共重合体が得られ、防汚材料として好適であり、平面の被着体だけでなく、種々の曲面の被着体にも密着するセルフクリーニングシートやフィルムが得られるので、種々の野外に暴露される自動車、船舶、橋梁、建造物などに密着させて用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の共重合体からなる共重合体を構成する各化合物について以下に説明する。
一般式(1)で表される化合物(I)としては、N−メチロールアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシ−エチル)−(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシ−プロピル)−(メタ)アクリルアミド、N−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−(メタ)アクリルアミドが好ましい化合物である。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル酸とメタクリル酸の場合を並記した表示である。 これら化合物は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
一般式 CH=C(−Y)−C(=O)−O−D(−OH)−O−C(=O)−CX=CH(2)
(式中、X,Yは独立して水素原子又はメチル基を表し、Dは3価または4価の鎖状炭化水素残基を示し、mは1または2である。)で表される分子内に少なくとも1個の水酸基と2個の(メタ)アクリロイロオキシ基を有する化合物(II)は、上記一般式(2)においてDが炭素数3から6であり、3価または4価の鎖状炭化水素残基であることが望ましい。
このような化合物としては例えば、1−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシ−プロパン、2−ヒドロキシプロピル−1,3−ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートがある。
【0013】
一般式 CH=C(−R)−C(=O)−O−(R−O)m―Z―(O−R)n−O−C(=O)−C(−R)=CH (3)
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に水素またはメチル基であり、RおよびRはそれぞれ独立にアルキレン基であり、Zは芳香族または脂環族炭化水素を含む2価の炭化水素残基であり、mおよびnはそれぞれ3から40の整数を示す。)で表されるジ(メタ)アクリレート化合物(III)のRおよびRは好ましくは炭素1から3のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基が好適である。また、Zには、フェニレン基、シクロヘキセン基などが例示される。
これらの中でも以下の一般式(4)で表されるジ(メタ)アクリレート化合物(III)が好適である。
一般式 CH=C(−R)−C(=O)−O−(R−O)m―φ−C(−R)−R−φ−(O−R)n−O−C(=O)−C(−R)=CH (4)
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に水素またはメチル基であり、RおよびRはそれぞれ独立にアルキレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立に水素、メチルまたはエチル基であり、φはフェニレン基またはシクロヘキセン基であり、mおよびnはそれぞれ3から40の整数を示す。)一般式(4)で表される化合物として、以下が例示される。
【0014】
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CHCH−O)m―φ−(O−CHCH)n−C(=O)−C(−CH)=CH( m+n=10〜30)
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CHCH−O)m―C10−(O−CHCH)n−C(=O)−C(−CH)=CH( m+n=10〜30)
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CHCH−O)m―φ−C(−CH)(−CH)−φ−(O−CHCH)n−C(=O)−C(−CH)=CH( m+n=10〜30)
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CHCH−O)m―C10−C(−CH)(−CH)−C−(O−CHCH)n−C(=O)−C(−CH)=CH ( m+n=10〜30)
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CHCH−O)m―C10−CH−C−(O−CHCH)n−C(=O)−CH=CH( m+n=10〜30)
CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CHCH−O)m ―φ−CH−φ−(O−CHCH)n−C(=O)−C(−CH)=CH( m+n=10〜30)
これらの中では、アルキレンオキサイドが、エチレンオキサイド単位であるものが望ましく、その繰り返し回数(m+n)は、6ないし40、特に10ないし30が望ましい。
【0015】
組成物中の上記の各化合物の混合比は、特に制限されない。組成物中の各化合物の混合比は、これを共重合して得られる共重合体に要求される特性に応じて適宜決定することができる。
中でも、防汚材料の優れた防汚性能を維持しつつ、その可撓性を改良するためには化合物(I):化合物(II):化合物(III)の混合比(モル比)を100:30〜100:10〜60の範囲にある組成物を共重合させることが望ましい。
【0016】
これらの組成物を共重合させることにより本発明の共重合体が得られる。
これらの組成物を共重合する方法に制限はなく、公知の方法を使用できる。通常、熱又は放射線用いて重合反応を行うが、両者を併用することもできる。前記の組成物の重合反応は大気下で行うこともできるが、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが重合時間を短縮させる点で好ましい。共重合に際しては、通常、重合速度を向上させる目的で該組成物に公知の重合開始剤を添加したり、粘度調整等のために溶媒を使用することもできる。
【0017】
熱を用いて前記の組成物を共重合させる場合、通常、これら組成物に有機過酸化物等のラジカル発生剤を加え室温から300℃以下の範囲で加熱する。
放射線を用いて前記の組成物を共重合させる場合、用いる放射線としては、波長領域が0.0001〜800nm範囲のエネルギー線であれば特に限定はされないが、α線、β線、γ線、X線、可視光、紫外線、電子線等が挙げられる。用いる放射線は、前記の組成物中に含まれる化合物に応じて適宜選択することができるが、波長領域が400〜800nmの範囲の可視光、50〜400nmの範囲の紫外線および0.01〜0.002nmの範囲の電子線が、取扱いが容易で一般的に普及しているので好ましい。重合反応に高いエネルギーが必要な場合等には、装置は高価だが電子線が用いられる場合が多い。また、前記の組成物を電子線で硬化させる場合、通常、重合開始剤は必要としない。
【0018】
これらの組成物を紫外線で共重合させる場合、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤、又は光ラジカル重合開始剤等公知の光重合開始剤が用いられ、中でも光ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。
好ましく用いられる光重合開始剤としては、例えば、ダロキュアー1173(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー651(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イルガキュアー500(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、エサキュアーKT55(ランベルティー社製)、エサキュアーKTO/46(ランベルティー社製)、エサキュアー1001(ランベルティー社製)が挙げられる。
【0019】
これら光重合開始剤の使用量は、化合物(I)、化合物(II)と化合物(III)との合計100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲が好ましく、0.5〜10重量部の範囲であればより好ましく、1〜5重量部の範囲であればさらに好ましい。
例えば、重合阻害物質である酸素が存在する大気下において、紫外線を用いて前記の組成物を共重合する場合、開始剤と重合促進剤を併用する形態が好ましい。
重合促進剤としては、例えば、化合物(I)以外のN,N−二置換アミノ基を有する化合物、メルカプト基を有する化合物、エーテル構造を有する化合物が挙げられる。
なかでも化合物(I)以外のN,N−二置換アミノ基を有し尚且つ分子内に炭素−炭素二重結合を有する化合物が、重合度又は重合速度を向上せしめ、さらに自身のブリードアウトも回避できる点で好ましい。例えば、N,N−ジ(メチルアミノ−エチル)−(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイル−モルホリンが挙げられる。
【0020】
これら重合促進剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
重合促進剤の使用量は、化合物(I)、化合物(II)および化合物(III)の合計重量100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲が好ましく、1〜10重量部の範囲であればさらに好ましい。
前記の組成物を共重合するに際しては必要に応じて溶媒を使用することができる。
好ましく用いられる溶媒としては、例えば、水、メタノール等の低級アルコール、水と低級アルコールの混合物等の極性溶媒が挙げられる。
溶媒の使用量は特に制限はなく、経済性等を考慮して適宜その使用量を決定することができる。
前記の組成物を種々の形状の鋳型内で共重合させることにより、種々の形状の成形体を得ることができる。前記の組成物を用いてフィルムを作成し、このフィルムを対象物の表面に貼付することもできる。また、前記の組成物を基材表面に塗布した後、共重合させて基材表面にフィルム状の膜を形成することもできる。基材表面には必要に応じてコロナ処理等の表面処理を施すこともできる。
【0021】
本発明の共重合体を防汚材料として使用し、長期間外部に曝されてもセルフクリーニング性が低下しない防汚材料とするためには、上記の化合物(I)、化合物(II)および化合物(III)を含む組成物には更に、紫外線吸収剤およびヒンダードアミン系化合物を添加することが望ましい。
【0022】
紫外線吸収剤
用いられる紫外線吸収剤は,特に限定はされず,一般に紫外線吸収剤として製造・販売されているベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、プロパンジオック酸エステル系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤等の種々の紫外線吸収剤を用いることができる。
具体的には,例えば、
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−ブチルフェノール、
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチル−ブチル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(3−オン−4−オキサ−ドデシル)−6−tert−ブチル−フェノール、
2−{5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル}−4−(3−オン−4−オキサ−ドデシル)−6−tert−ブチル−フェノール、
2−{5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル}−4−メチル−6−tert−ブチル−フェノール、
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−{5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル}−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール、
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−n−ドデシルフェノール、
メチル−3−{3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル}プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応性生物等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;
2−(4−フェノキシ−2−ヒドロキシ−フェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、
2−(2−ヒドロキシ−4−オキサ−ヘキサデシロキシ)−4,6−ジ(2、4−ジメチル−フェニル)−1,3,5−トリアジン、
2−(2−ヒドロキシ−4−オキサ−ヘプタデシロキシ)−4,6−ジ(2、4−ジメチル−フェニル)−1,3,5−トリアジン、
2−(2−ヒドロキシ−4−iso−オクチロキシ−フェニル)−4,6−ジ(2、4−ジメチル−フェニル)−1,3,5−トリアジン、商品名チヌビン400(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、
商品名チヌビン405(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)等のトリアジン系紫外線吸収剤;
2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;
2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤;
プロパンジオック酸−{(4−メトキシフェニル)−メチレン}−ジメチルエステル等のプロパンジオック酸エステル系紫外線吸収剤;
2−エチル−2’−エトキシ−オキサニリド等のオキサニリド系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0023】
ヒンダードアミン系光安定剤
用いられるヒンダードアミン系光安定剤(Hindered Amin Light Stabilizers:HALS)は、一般にHALSと略称されている通常、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格を有する化合物の総称であり、分子量により、低分子量HALS、中分子量HALS、高分子量HALS及び反応型HALSに大別される。
これらHALSとしては、具体的には、例えば、商品名チヌビン111FDL(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名チヌビン123(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製))、商品名チヌビン144(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、商品名チヌビン292(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、商品名チヌビン765(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、商品名チヌビン770(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物(商品名CHIMASSORB119FL(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製))、商品名CHIMASSORB2020FDL(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物(商品名CHIMASSORB622LD(チバ・スペシャリ・ティー・ケミカルズ株式会社製))、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](商品名CHIMASSORB944FD(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製))、商品名ホスタビンN20(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名ホスタビンN24(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名ホスタビンN30(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名ホスタビンPR−31(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名ホスタビン845(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名ナイロスタッブS−EED(クラリアント・ジャパン株式会社製)等として製造・販売されている。
【0024】
紫外線吸収剤及びHALSの添加量は、特に限定はされないが、通常、化合物(I)、化合物(II)および化合物(III)の合計100重量部に対して、紫外線吸収剤が0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、HALSが0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部の範囲で添加される。
紫外線吸収剤の量が0.1重量部未満若しくはHALSの量が0.1重量部未満の組成物は、後述の方法で重合して得られる共重合体の耐候性の改良効果が小さくなる傾向があり、一方、紫外線吸収剤の量が10重量部を超える場合、若しくはHALSの量が10重量部を越える場合は、得られる共重合体の耐候性の改良効果がそれ以上向上せず、かえって防汚材料からなる共重合体層の硬化を阻害する虞がある。
本発明の共重合体を得るに際して、組成物に紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を添加する場合に、放射線を用いて重合させる場合は、405〜425nm域に出力ピークを有する放射線(紫外線)を用いることが好ましい。
【0025】
本発明の共重合体を得るに際し、組成物には更に必要に応じて他の重合性化合物、内部離型剤等の添加剤を添加することもできる。例えば、樹脂の屈折率を向上させるための共重合成分としての硫黄原子を有する重合性化合物、殺菌・抗菌性を付与するための銀、リチウム等の金属塩、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩等の有機金属塩、ヨウ素及びヨードニウム塩を前記の組成物に添加することができる。
【0026】
本発明の共重合体は防汚材料として好適であり、建築外装の被覆材料、熱交換機等の冷却フィンの被覆材料、建築物及び車両等の窓材料、土木材料の被覆材料、飛行機、船舶の外装の被覆材料、自動車等の車両材料、車両材料の被覆材料、風呂場材料及びその被覆材料、看板、街灯や交通標識の被覆材料などに用いられる。具体的には、本発明の防汚材料を対象物の表面に塗装して使用することもできる。
本発明の共重合体からなる防汚材料は、平面へ塗布する場合だけでなく、種々の凹凸を有する面、曲面、弾性を有する面など、可撓性が求められる場合にも用いることができる。
また、本発明の共重合体を予め基材層に積層して、これら防汚材料として利用することも行われる。基材層は、特に限定はされず、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂あるいは紙等の有機質材料からなる基材層あるいはガラス板、陶板、セラミック板、セメント板、金属板等の無機質材料からなる基材層を例示することができる。これら無機質基材層の中でも、ガラス板が透明性に優れるので好ましい。 有機質基材層としては、種々公知のフェノール樹脂、不飽和エステル樹脂、エポキシ樹脂、等の熱硬化性樹脂、ポリオレフィン(例:ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4-メチル・1-ペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(例:ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(例:ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、アクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、メタクリル酸メチル共重合体等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、あるいはこれらの混合物等の熱可塑性樹脂あるいは紙等からなる基材層であり、シート状、フィルム状、発泡体等の形状を有するものを例示することができる。
【0027】
特に基材層としてフィルム状の基材層(基材フィルム)上に防汚材料の共重合体層として積層して、防汚材料、特にセルフクリーニングフィルムやシート(積層フィルム)として用いることが好ましい。
防汚材料の共重合体層を積層する基材フィルムとしては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂あるいは紙等からなるシート状またはフィルム状のものであれば制限はなく、不織布あるいは発泡体であってもよい。これら基材フィルムのなかでも、熱可塑性樹脂からなるフィルム状のものが透明性、成形性、機械的強度等に優れているので好ましい。
基材フィルムを形成する熱可塑性樹脂としては、上記公知の熱可塑性樹脂を例示することができる。これらのなかでは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、アクリル系樹脂等、延伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂が好ましく、特にアクリル系樹脂が耐候性に優れるので好ましい。アクリル系樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートが50モル%以上と他のアクリル酸エステルとの共重合体などの硬質タイプのアクリル系樹脂、メチルメタクリレートが50モル%未満と他のアクリル酸エステル、例えばn−ブチルアクリレートなどとの共重合体、メチルメタクリレートと共にアクリル酸エステル、スチレン系モノマーなどを共重合体した共重合体などの軟質タイプのアクリル系樹脂がある。さらには上記の硬質タイプのアクリル系樹脂や軟質タイプのアクリル系樹脂に可塑剤を10%以上添加したものが挙げられる。
また、熱可塑性樹脂からなる基材フィルムは、無延伸フィルムであっても、一軸あるいは二軸延伸フィルムであっても良い。二軸延伸フィルムは透明性、機械的強度等に優れる。基材フィルムには耐候性を付与するために、基材フィルム中に公知の耐候安定剤、例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、オギザニリド系等の紫外線吸収剤を加えておくことが好ましい。
【0028】
本発明に用いる基材フィルムは、化合物(I)、化合物(II)および化合物(III)を含有する組成物との接着性(密着性)を改良するために、その表面をたとえばコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等で表面活性化処理を行っておくことが好ましい。
例えば、コロナ処理、オゾン処理、酸素ガス、若しくは、窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の処理の前に、或いはこれらの処理に替えて、プライマーコート剤、アンダーコート剤、アンカーコート剤などを用いて、表面活性化処理することが望ましい。
これらのコート剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
これらのコート剤としては、溶剤型、水性型のいずれも使用可能だが、変性ポリオレフィン系、エチルビニルアルコール系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリウレタン系、ポリエステル系ポリウレタンエマルジョン、ポリ塩化ビニルエマルジョン、ウレタンアクリルエマルジョン、シリコンアクリルエマルジョン、酢酸ビニルアクリルエマルジョン、アクリルエマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、クロロプレンラテックス、ポリブタジェンラテックスのゴム系ラテックス、ポリアクリル酸エステルラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテックス、ポリブタジエンラテックス、あるいはこれらのラテックスのカルボキシル変性物若しくはディスパージョンが好ましい。これらのコ−ト剤の塗布法としては、例えば、グラビアコ−ト法、リバ−スロ−ルコ−ト法、ナイフコ−ト法、キスコ−ト法、その他等の方法で塗布することができ、その塗布量としては、通常乾燥状態で、0.05g/m2〜5g/m2である。また、これらのコート剤のうちでもポリウレタン系のコート剤が望ましい。
ポリウレタン系のコート剤は、主鎖あるいは側鎖にウレタン結合を有するものであれば特に限定するものでなく、例えば、主鎖あるいは側鎖にウレタン結合を有するもがあり、その他、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオール、アクリルポリオールなどのポリオールとイソシアネート基をもつイソシアネート化合物とを反応させてウレタン結合を形成するもがある。中でも縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなどのポリエステルポリオールとトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物とを混合して得られるポリウレタン系のコート剤が、密着性に優れるので好ましい。
ポリオール化合物とイソシアネート化合物を混合する方法は、特に限定されない。また配合比も特に制限されないが、イソシアネート化合物が少なすぎると硬化不良を引き起こす場合があるためポリオール化合物のOH基とイソシアネート化合物のNCO基が当量換算で2/1〜1/40の範囲であることが好適である。
基材フィルムには、組成物を積層しない面に、後述の粘着層を設けることもできるし、さらに粘着層の表面に剥離フィルムを設けることもできる。
共重合体層を積層した基材フィルムにおいて、該共重合体層を積層していない面には粘着層を設けることができる。粘着層に用いる粘着剤は特に制限はなく、公知の粘着剤を用いることができる。粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルエーテルポリマー系粘着剤やシリコーン粘着剤等が挙げられる。
【0029】
組成物を共重合するに際しては、粘度調整等のために溶媒を使用することができる。溶媒としては、例えば、水、メタノール等の低級アルコール、水と低級アルコールの混合物等の極性溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は特に制限はなく、経済性等を考慮して適宜その使用量を決定することができる。
本発明の積層フィルムの厚さは用途により、適宜決めることができる。中でも、通常基材フィルムの厚さが12〜100μm、好ましくは25〜80μmの範囲、水接触角が45度以下の共重合体層の厚さが0.1〜20μm、好ましくは1〜10μmの範囲にある。
本発明の積層フィルムは、基材フィルムの他の片面(上記共重合体が積層されていない面)に粘着層を積層しておいてもよい。基材フィルムの他の片面に粘着層を積層しておくと、積層フィルムを防汚フィルムとして、看板、広告、案内板等の案内板、鉄道、道路等の標識、建物の外壁、窓ガラス等に容易に貼付することができる。粘着層の厚さは通常2〜50μm、好ましくは5〜30μmの範囲にある。
【0030】
本発明の積層フィルムは、粘着層面に剥離フィルムを積層しておいてもよい。粘着層面に剥離フィルムを積層しておくことにより、積層フィルムを輸送、保管、陳列等をする際に、積層フィルムの粘着層面が汚れるのを防ぐことができる。剥離フィルムの厚さは通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲にある。
本発明の積層フィルムは、化合物(I)、化合物(II)および化合物(III)を含む組成物を共重合させてなる共重合体層の保護層としてカバーフィルムを積層フィルムを製造した後も積層しておくと、積層フィルムを輸送、保管、陳列等をする際に、共重合体層が傷ついたり、汚れたりするのを防ぐことができる。カバーフィルムの厚さは通常5〜100μm、好ましくは10〜40μmの範囲にある。
【0031】
本発明の積層フィルムは、前記基材フィルムの片面に、化合物(I)、化合物(II)および化合物(III)を含む組成物を塗布した後、必要に応じて乾燥し、その組成物からなる塗布層に前記放射線を照射して当該塗布層を形成する組成物を共重合させることにより製造することができる。
前記組成物からなる塗布層に放射線を照射するに際しては、該塗布層をカバーフィルムで被覆した後、放射線を照射することが望ましい。カバーフィルムで該塗布層を被覆する際には、該塗布層とカバーフィルムとの間に空気(酸素)を含まないように密着、即ち、組成物が酸素に触れないように空気を遮断することが好ましい。酸素を遮断することにより、組成物からなる共重合体層中に必要な光重合開始剤の量を少なくすることができ、且つ均一な共重合体層が得られ、未反応の単量体等から生じる共重合体層のベタツキを抑制することができるので好ましい。
【0032】
基材フィルムの片面に前記組成物を塗布する方法としては、特に限定はされないが、例えば、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、グラビアリバースおよびジェットノズル方式等のグラビアコーター;トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーターおよびノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター;5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーター等種々公知の塗工機を用いて、一般式(1)で表される化合物と分子内に少なくとも1個の水酸基および2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物とを含む組成物を0.1〜20μm、好ましくは1〜10μmとなるように塗布すればよい。溶媒で稀釈した組成物を用いる場合は、乾燥状態で0.1〜20μm、好ましくは1〜10μmとなるように塗布した後、60〜130℃の温度で、10秒〜2分間乾燥する方法を例示できる。
【0033】
積層フィルムの製造にカバーフィルムを用いる場合、カバーフィルムとしては、例えばポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体等のビニルアルコール系重合体;ポリアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリアクリロニトリルからなるフィルムが挙げられる。
【実施例】
【0034】
以下の実施例および参考例で得られた積層フィルム(被試験フィルム)の水接触角の測定、汚染性試験、基材密着性試験、可撓性の評価は以下の方法で実施した。また、各防汚材料を配合し、基材フィルムへ塗工する際、材料同士の相溶性が悪いとコート液の分離や凝集物が生成し塗工できないため塗工前に組成物の相溶性を確認した。
(1)相溶性の評価
各材料を所定量配合し、23℃、50%RHの条件に24時間後保管し、コート液に分離、凝集物、沈降物が無いか目視で確認を行った。
○:コート液に分離、凝集物、沈降物が無し
×:コート液に分離、凝集物、沈降物が認められる
【0035】
(2)水接触角
接触角測定器((Kyowa Interface Science社製、FACECA−W)を用いて、精製水(正起薬品工業社(株)製)を被試験フィルムの共重合体層面に0.02ml水滴落下し、30秒後の接触角を測定した。なお、カバーフィルム自体の水接触角も同様に測定した。
【0036】
(3)汚染性試験
<汚染物質の作製>
エンジンオイル(ヤマハ発動機(株)製 商品名2サイクルオイル オートルーブスーパーオイル50gに、カーボンブラック(三菱化成(株)製カーボンブラック#40)を0.5g混合攪拌して汚染物質を用意した。
<被試験フィルムの設置>
積層フィルムから15cm×15cmの被試験フィルムを切出し、60度に傾斜させたスチール板に貼り付けた。
<汚染物質の塗布>
2ccのポリスポイトを用いて被試験フィルムの上端に1滴づつ幅方向にずらしながら汚染物質を7滴滴下し、汚染物質が被試験フィルムの下端付近に到達するまで放置した。
<汚染物質の洗浄>
汚染物質を滴下した被試験フィルムに、23℃の水道水を入れた霧吹き器(Canyon社製、ModelT−7500)を用いて、被試験フィルムから15cmの距離から汚れの上端をめがけて幅方向に満遍なく10回吹き付け2分間放置し、この操作を5回繰り返した後、汚染物質の付着状態を次のような点数で評価した。
5:汚染物質の付着が見られない。
4:僅かに汚染物質の付着が見られる。
3:部分的に汚染物質の付着が見られる。
2:被試験フィルムの半分に汚染物質の付着が見られる。
1:全面に汚染物質の付着が見られる。
<繰返し試験>
汚染物質の塗布および洗浄を同じサンプルについて、3回繰り返し、1回目と3回目について汚染物質の付着状態を評価した。なお、繰り返し間は、洗浄により付着した水滴を除去し、ドライヤーで防汚フィルムの表面を乾燥した。
【0037】
(4)基材密着性試験
ニチバン(株)製の粘着テープ(幅 30mm)を被試験フィルムの共重合体層面側に貼着し、親指で3回軽く押しつけ貼り合わせる。その後被試験フィルムを押さえながら、素早く粘着テープを剥がし、共重合体層が基材フィルムから粘着テープ側にどれだけ剥離するかで基材密着性を評価した。
○:共重合体層の剥離が全く認められない。
△:共重合体層が基材フィルムから一部剥離し、粘着テープ側に取られる。
×:共重合体層が基材フィルムから全面剥離している。
【0038】
(5)可撓性試験
<伸び試験>
引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン)に被試験フィルム(幅15mm×長さ100mm)をセットし、引張り速度300mm/分で0〜30%延伸した。各延伸後の共重合体層を目視及び光学顕微鏡によりクラックの発生状況を確認した。クラックが発生しない延伸率(%)をもって可撓性の評価とした。
<折り曲げ試験>
2種類の方法で評価
1.マンドレルの耐屈曲試験(JIS K 5600)に準拠し、直径の異なる(2〜20mmΦ)ステンレス製の棒を準備する。被試験フィルム(幅50mm×長さ100mm)の一方の端を固定し、中央部にステンレス棒を設置する。共重合体層が外側になるようにもう一方の端を持って折り曲げて後、目視及び電子顕微鏡で共重合体層にクラックが発生したかを確認する。なお、ステンレス製棒の直径が1mmΦの場合及びステンレス棒を用いることなく折り曲げる場合(0mmΦ)も同様にして行った。
ステンレス棒の直径が細いほど曲率半径は小さくクラックが発生し易くなるため、クラックが発生しない最小のステンレス棒の直径により可撓性を評価した。
2.耐折強さ試験(JIS P 8115)に準拠し、被試験フィルム(幅15mm×長さ110mm)の共重合体層が外側になるようMIT試験機にセットし、試験を行い(試験条件;試験荷重500g、試験角度270度、折り曲げ速度:175回/分、折り曲げ先端:3mmφ 折り曲げ回数 200回)、目視及び電子顕微鏡で共重合体層にクラックが発生したかを確認する。
【0039】
実施例1
N−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−メタクリルアミド 4.0kg
3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−プロパン 2.5kg
エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート 3.5kg
の混合液に光重合開始剤としてエサキュアKT046(オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパンと、2,4,6−トリメチルペンゾフェノン及び4−メチルベンゾフェノンの混合物と、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドとの混合物) 300g、
促進剤としてACMO(アクリリロイルモルホリン) 500g
紫外線吸収剤としてチヌビン400(2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルとオキシラン((C10〜C16 主としてC12〜C13アルキルオキシ)メチル)オキシランとの反応生成物85% 1−メトキシ−2−プロパノール 15% の混合物) 100g、
HALSとしてラジカル補足剤であるチヌビン123(デカンニ酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物) 300g
を加えて混合し、組成物を調製した(組成物の配合比は表1に記載)
【0040】
厚さ50μmのアクリル系フィルム(三菱レイヨン社製アクリプレンフィルムHBS006)からなる基材層に、アンカー剤(三井武田ケミカル(株)製:商品名 タケラックA−310:タケネートD110N=3:2で混合し、酢酸エチルで希釈した液)をグラビアロールにて塗布、乾燥して厚み0.2g/mのプライマー層を得た。更に、組成物として上記のように配合した液を、グラビアロール(格子;#200)を用い、リバースキッス方式で速度;4m/分で3.6g/m塗布した。その後、塗布面をカバーフィルムとして東セロ(株)製ポリビニルアルコールフィルム「ビニロンLH」厚み17μmで空気が入らないように被覆し、それをUV照射装置(フュージョン社製 F600V Vバルブ)を用いて、UV強度:2240mW/cm(320〜390nm)、1400mW/cm(280〜320nm)、70mW/cm(250〜260nm)、4870mW/cm(395〜445nm)、積算光量:1370mJ/cm(320〜390nm)、860mJ/cm(280〜320nm)、40mJ/cm(250〜260nm)、2860mJ/cm(395〜445nm)の条件でカバーフィルム面にUVを照射して組成物層を重合させた後、40℃のオーブン中で1日エージングを行い、次いで、カバーフィルムを剥離して積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表2および表3に示す。防汚性は繰り返しも含めて良好で、28%の延伸率でもクラックの発生は認められなかった。
【0041】
実施例
実施例1で用いた組成物及び比率を
N−メチロールアクリルアミド 4.0kg
3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−プロパン 2.5kg
エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート 3.5kg
とした。
メタノールでN−メチロールアクリルアミドを溶解後、組成物を所定量配合し、実施例1と同様のプライマー層を有する基材フィルムにグラビアロールにて塗布した。塗布後80℃の熱風乾燥炉で10秒間乾燥し、その後の工程は実施例1と同様に行い積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表2および表3に示す。防汚性は繰り返しも含めて良好で、28%の延伸率でもクラックの発生は認められなかった。
【0042】
実施例
実施例1で用いた基材フィルムをアクリル系フィルム(三菱レイヨン社製アクリプレンフィルムHBS006)から、基材層として、軟質タイプのアクリル系樹脂(メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、およびスチレンの共重合体)からなる厚み300μのフィルムに代える以外は実施例1と同様に行い積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表2および表3に示す。防汚性は繰り返しも含めて良好で、36%の延伸率でもクラックの発生は認められなかった。
【0043】
実施例
実施例1で用いた基材フィルムをアクリル系フィルム(三菱レイヨン社製アクリプレンフィルムHBS006)から基材層として、軟質タイプのアクリル系樹脂(メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、およびスチレンの共重合体)70質量部及び可塑剤を30質量部からなる厚さ100μmのフィルムに代える以外は実施例1と同様に行い積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表2および表3に示す。防汚性は繰り返しも含めて良好で、36%の延伸率でもクラックの発生は認められなかった。
【0044】
実施例
実施例1で用いた基材フィルムをアクリル系フィルム(三菱レイヨン社製アクリプレンフィルムHBS006)から基材層として、アクリル樹脂系フィルムである(厚さ100μm)を用いる以外は、実施例1と同様に行い積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表2および表3に示す。防汚性は繰り返しも含めて良好で、36%の延伸率でもクラックの発生は認められなかった。
【0045】
実施例
実施例1で用いた基材フィルムをアクリル系フィルム(三菱レイヨン社製アクリプレンフィルムHBS006)から基材層として、ポリカーボネート樹脂のシートである「ユーピロン」のサンガードタイプ(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、厚さ400μm)を用いる以外は、実施例1と同様に行い積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表2および表3に示す。防汚性は繰り返しも含めて良好で、基材の破断点まで クラックの発生は認められなかった。
【0046】
参考例1
実施例1で用いた組成物を、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレートを用いないで
N−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−メタクリルアミド 4.0kg、
3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−プロパン 6.0kg
の混合液にした以外は実施例1と同様に行い積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表2および表3に示す。防汚性は繰り返しを含めて良好で有るが3%を超える延伸率ではクラックが発生した。
【0047】
参考例2
実施例1で用いた組成物の比率を、
N−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−メタクリルアミド 4.0kg
3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−プロパン 5.0kg
エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート 1.0kg
とした以外は実施例1と同様に行い積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表2および表3に示す。防汚性は繰り返しを含めて良好で有るが3%を超える延伸率ではクラックが発生した。
【0048】
比較例1
実施例1で用いた組成物と比率を、
N−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−メタクリルアミド 4.0kg
1,9−ノナンジオールジメタクリレート 6.0kg
とした以外は実施例1と同様に行ったが、組成物の相溶性が悪く液の分離が認められ、積層フィルムは得られなかった。
比較例2
実施例1で用いた組成物と比率を、
N−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−メタクリルアミド 2.0kg
3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−プロパン 2.0kg
2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート 6.0kg
とした以外は実施例1と同様に行い積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表2及び表3に示す。延伸率は28%までクラックの発生は認められないが、防汚性が劣る。
【0049】
なお、表1に記載した化合物の内容は、次の通りである。
化合物A: N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−メタクリルアミド
化合物B: N−メチロールアクリルアミド
化合物C: 3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−プロパン
化合物D: エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート
化合物E: 1,9−ノナンジオールジメタクリレート
化合物F: 2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート
【0050】
光重合開始剤: ランベルティー・ケミカル・スペシャルティ社製 商品名;エサキュアKT046(オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパンと、2,4,6−トリメチルペンゾフェノン及び4−メチルベンゾフェノンの混合物と、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドとの混合物)
促進剤: 興人(株)社製 商品名;ACMO(アクリリロイルモルホリン)
紫外線吸収剤: チバスペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;TINUVIN 400〔2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニル、とオキシラン((C10−C16 主としてC12−C13アルキルオキシ)メチル)オキシランとの反応生成物85%/1−メトキシ−2−プロパノール 15%〕
HALS: チバスペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;TINUVIN 123〔デカンニ酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル-1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物〕
また表1に記載した塗工基材フィルム1ないし5の内容は、次の通りである。
1: アクリル系樹脂フィルム(三菱レイヨン製 商品名;アクリプレンHBS006、メチルメタクリレートが50モル%以上とアクリル酸エステルとの共重合体からなる硬質タイプのアクリル系樹脂)厚さ50μm
2: アクリル系樹脂フィルム(メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/スチレンの共重合体=57/41/2(mol%)の共重合体からなる軟質タイプのアクリル系樹脂) 厚さ300μm、
3: アクリル系樹脂フィルム(メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/スチレンの共重合体=57/41/2(mol%)の共重合体からなる軟質タイプのアクリル系樹脂70質量部及び可塑剤を30質量部) 厚さ100μm
4: アクリル系樹脂フィルム(東洋インキ製造株式会社製「ダイナカル エコサイン」)厚さ100μm
5: ポリカーボネートフィルム(三菱エンジニアリングプラスチック社製 商品名;ユーピロンシートサンガード)厚さ400μm
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明にかかる防汚材料は、防汚性能及び防曇性能を必要とする材料、例えば、建築材料、光学材料、電化製品の材料もしくは当該材料の被覆材等として、また塗料としても有用であり、さらに、本発明にかかる積層フィルムからなる防汚フィルムは、看板、広告、案内板等の案内板、鉄道、道路等の標識、建物の外壁、窓ガラス、農業用被覆材、テント等の被覆材料として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1) CH=C(−G)−C(=O)−N(−J)−Q (1)
(式中、Gは水素原子またはメチル基を表し、J及びQは、独立して、水素原子、メチル基、−CHOH、−CHCHOH、−CHCHCHOH、または-CHCH(OH)CHOHを表す。但し、JとQの組み合わせが同時に、水素原子と水素原子、水素原子とメチル基、メチル基とメチル基となる場合を除く。)で表される化合物(I)、
一般式 CH=C(Y)−C(=O)−O−D(−OH)−O−C(=O)−CX=CH(2)
(式中、X,Yは独立して水素原子又はメチル基を表し、Dは3価または4価の鎖状炭化水素残基を示し、mは1または2である。)で表される分子内に少なくとも1個の水酸基と2個の(メタ)アクリロイロオキシ基を有する化合物(II)
および
一般式 CH=C(−R)−C(=O)−O−(R−O)―Z―(O−R−O−C(=O)−C(−R)=CH (3)
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に水素またはメチル基であり、RおよびRはそれぞれ独立にアルキレン基であり、Zは芳香族または脂環族炭化水素を含む2価の炭化水素残基であり、mおよびnはそれぞれ3から40の整数を示す。)で表されるジ(メタ)アクリレート化合物(III)
を含む組成物を共重合して得られる共重合体。
【請求項2】
化合物(I)が、N−(ジヒドロキシプロピル)−メタクリルアミドである請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
化合物(II)が、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレートである請求項1に記載の共重合体。
【請求項4】
化合物(III)が、
一般式 CH=C(−R)−C(=O)−O−(R−O)―φ−C(−R)(−R)−φ−(O−R−O−C(=O)−C(−R)=CH (4)
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に水素またはメチル基であり、RおよびRはそれぞれ独立にアルキレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立に水素、メチルまたはエチル基であり、φはフェニレン基であり、mおよびnはそれぞれ3から40の整数を示す。)で表されるジ(メタ)アクリレート化合物(III)である請求項1ないし3のいずれかに記載の共重合体。
【請求項5】
組成物中の化合物(I):化合物(II):化合物(III)の割合(モル比)が、100:30〜100:10〜60である請求項1から4のいずれかに記載の共重合体。
【請求項6】
化合物(I)、化合物(II)および化合物(III)を含む組成物が、さらに紫外線吸収剤およびヒンダードアミン系安定剤を含む組成物であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の共重合体。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の共重合体からなる防汚材料。
【請求項8】
基材層の片面に、請求項1ないし6のいずれかに記載の共重合体が積層されてなる積層体。
【請求項9】
基材層の片面に、化合物(I)、化合物(II)および化合物(III)を含有する組成物からなる塗布層を形成した後、当該塗布層の表面にカバーフィルムを被覆し、次いで、該塗布層に放射線を照射することによる請求項8記載の積層体の製造方法。

【公開番号】特開2006−274202(P2006−274202A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99777(P2005−99777)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】