説明

共重合体およびその製造方法

【課題】 ニトロキサイド化合物存在下において、分子量、および分子量分布の制御が困難とされていたラジカル重合性単量体の重合を制御し、リビングラジカル重合を利用した新規材料開発の範囲を著しく広げる。
【解決手段】 メタクリル酸エステル単位と、スチレン誘導体単位またはアクリル酸エステル単位とを含む共重合体を重合する際に、一般式(3)〜(6)で示される化合物の少なくとも1種以上の存在下、メタクリル酸エステルを含む重合系に対して、少なくとも1種以上のスチレン誘導体またはアクリル酸エステルを分割して加えて、アルコキシアミン基を有する共重合体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、二種以上のラジカル重合性単量体を含む分子量および分子量分布が制御された共重合体を製造するための重合方法に関する。
【0002】本発明の重合方法によれば、分子量および分子量分布制御が困難な単量体種を構成成分とした共重合体の重合を制御することが可能となる。本発明の製造方法により得られる共重合体は、高分子ラジカル重合開始剤として利用することができ、種々の機能性新規材料に好適に使用可能である。
【0003】
【従来の技術】従来より、ラジカル重合で得られる重合体の分子量分布は一般的に広く、したがって均一な物性を有する重合体をラジカル重合により製造することは困難なことが知られている。このため、ラジカル重合において分子量、および分子量分布を制御する方法が強く求められていた。
【0004】最近、高分子重合の分野において、安定なニトロキシラジカル(いわゆる「リビングラジカル」の一種)を利用する重合が注目を集めている。このような安定なニトロキシラジカルを利用する重合により、分子量、分子量分布および形態を含めて、ポリマーの分子構造を正確に調節できる可能性がある。
【0005】ラジカル重合における分子量および分子量分布の制御方法として、過酸化ベンゾイル等のラジカル開始剤と2.2.6.6−テトラメチル−1−ピペリジニトロキシ(TEMPO)等のニトロキサイド化合物との混合物の存在下でスチレンの重合を制御する方法が特開平6−199916号公報に開示されている。ニトロキサイド化合物存在下において重合が制御される単量体としては、スチレン、あるいはスチレン誘導体が主に挙げられるが、ニトロキサイド化合物の種類によって、アクリル酸エステル類の重合制御も可能となることが報告されている。しかしながら、現在に至るまでメタクリル酸エステルの重合制御に関しては成功例がない。
【0006】このニトロキサイド化合物存在下における重合方法を利用した報告は多数知られており、その中には単独重合体のみならず、二種以上のラジカル重合性単量体を用いた共重合体を合成した例も多数報告されている。また、このような報告の中には、特開昭60−89452号公報、あるいはJ.Am.Chem.Soc.,121,3904(1999)におけるように、ニトロキサイド化合物存在下においては分子量および分子量分布の重合制御が困難とされているメタクリル酸メチルと、重合制御が可能なスチレンを共重合することにより分子量分布の狭い共重合体を合成する方法について報告しているものもある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来の方法(特開昭60−89452号公報、またはJ.Am.Chem.Soc.,121,3904(1999))で重合した重合体は分子量分布が狭く、一見スチレン単独におけると同様の重合制御が行われているように見える。しかしながら、これにより得られた重合体を高分子ラジカル重合開始剤として用いて、引き続きラジカル重合性単量体の重合を行っても、この重合体は高分子ラジカル重合開始剤として機能せず、したがって重合が全く起こらないという問題があった。換言すれば、これらの方法により得られた共重合体を用いて、リビングラジカル重合を行って、新規材料開発の範囲を広げることは不可能であった。
【0008】従って、本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決することが可能な共重合体およびその製造方法を提供することにある。
【0009】本発明の他の目的は、ニトロキサイド化合物存在下において、分子量、および分子量分布の制御が困難とされていたラジカル重合性単量体の重合を制御し、リビングラジカル重合を利用した新規材料開発の範囲を著しく広げることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、課題を解決する手段を鋭意検討した結果、ニトロキサイド化合物の存在下、一般的には該ニトロキサイド化合物を利用しても重合制御が困難とされる単量体を重合している系中に、重合制御可能な単量体を分割して添加しつつ重合を行うことが、末端にアルコキシアミン基を有するランダム共重合体の合成を可能とすることを見出した。
【0011】本発明らは更に、アクリル酸エステルの重合制御が可能なニトロキサイド化合物の存在下においてメタクリル酸エステルとアクリル酸エステルを単量体成分として重合を行う場合には、全単量体を重合開始時に投入しても、末端にアルコキシアミン基を有する共重合体の合成が可能であることをも見出した。このように、本発明により得られる重合体の末端にアルコキシアミン基が存在するならば、該重合体を高分子ラジカル重合開始剤としてブロック共重合体を製造することが可能となり、本発明の共重合体の有用性が更に増大する。
【0012】すなわち、第1の面において、本発明は、下記の一般式(1)または(2)で表されるアルコキシアミン基を末端に有する共重合体に関する。
【0013】
【化5】


(式中、Rは該アルコキシアミン基と共重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する直鎖型もしくは分岐型のアルキル基、あるいはO=P(R17)(R18)基を、R、R〜R、R15およびR16は、該アルコキシアミン基と共重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する同一又は異なる直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を示し、R、R、R、R10、R13およびR14は、水素、直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、R11、R12は直鎖型もしくは分岐型のアルキル基、水素、水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、また、R17とR18はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、パーフルオロアルキル基、ハロゲン基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0014】第2の面において、本発明は、上記した第一の発明である高分子ラジカル重合開始剤を簡便に製造する方法に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において含有量を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0016】(アルコキシアミン基を有する共重合体)本発明の共重合体は、スチレン誘導体単位またはアクリル酸エステル単位と、メタクリル酸エステル単位とを含む共重合体であって、共重合体の末端に上記一般式(1)または(2)に示されるアルコキシアミン基を有する。
【0017】(スチレン誘導体)本発明において、上記共重合体を構成するスチレン誘導体は特に限定されず、公知のスチレン誘導体を特に制限なく使用することが可能である。このスチレン誘導体として、例えばスチレン、p−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン等が好適に使用可能である。
【0018】(アクリル酸エステル)本発明において、上記共重合体を構成するアクリル酸エステルは特に限定されず、公知のアクリル酸エステルを特に制限なく使用することが可能である。このアクリル酸エステルとして、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸n−ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸エトキシエトキシエチル、アクリル酸メチルトリグリコール、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シアノエチル等が好適に使用可能である。
【0019】(メタクリル酸エステル)本発明において、上記メタクリル酸エステルは特に限定されず、公知のメタクリル酸エステルを特に制限なく使用可能である。このメタクリル酸エステルとして、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸エトキシエトキシエチル、メタクリル酸メチルトリグリコール、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸シアノエチル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸アルキル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸アリル、メタクリル酸ジアミノエチル、メタクリル酸エチルホスフェート等が好適に使用可能である。
【0020】(各単位間の含有量)本発明の共重合体中、スチレン誘導体単位またはアクリル酸エステル単位の含有量は0.1〜49.9質量%である。このスチレン誘導体単位またはアクリル酸エステル単位の含有量は、0.1〜29.9質量%の範囲であることが好ましい。このスチレン誘導体単位またはアクリル酸エステル単位の含有量が0.1質量%より少ない場合には、共重合体の分子量および分子量分布制御の困難性が増大する傾向がある。
【0021】他方、本発明においては、従来重合制御が困難であったメタクリル酸エステルを主成分とした共重合体を製造し、分子量および分子量分布が制御された重合体を利用した材料設計の幅を広げることを可能としている。本発明の共重合体において、スチレン誘導体単位またはアクリル酸エステル単位が49.9質量%を超えると、メタクリル酸エステル単位を主成分とした共重合体を得ることが困難となる。従って、本発明においてメタクリル酸エステル単位の含有量は50.1〜99.9質量%以上である。このメタクリル酸エステル単位の含有量は、70.1〜99.9質量%の範囲が好ましい。
【0022】(アルコキシアミン基)本発明の共重合の末端に存在するアルコキシアミン基としては、上記の一般式(1)または(2)に示される構造が挙げられる。
【0023】上記式(1)または(2)中、Rは該アルコキシアミン基と共重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する直鎖型もしくは分岐型のアルキル基である。ここに、「共重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長」とは炭素数1以上の基であればよい。
【0024】上記した「共重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長」を有する限り、本発明において使用可能なアルキル基は特に限定されない。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基などが挙げられ、あるいはO=P(R17)(R18)基であって、R17とR18はメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;アリールオキシ基、アリール基、トリフルオロエチル基などのパーフルオロアルキル基;F、Cl、Iなどのハロゲン基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0025】上記式(1)または(2)中、R、R〜R、R15およびR16は、上記アルコキシアミン基と共重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する同一又は異なる直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を示す。このようなアルキル基も特に限定されない。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基など好適に使用可能であり、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0026】上記式(1)または(2)中、R、R、R、R10、R13およびRは、水素、または直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。このよううなアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基などが好適に使用可能である。
【0027】上記式(1)または(2)中、R11、R12はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基などの直鎖型もしくは分岐型のアルキル基;水素、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基、アセトキシ基、エチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアシロキシ基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0028】一般式(1)または(2)で示されるアルコキシアミン基は、特に限定されない。高分子ラジカル重合開始剤になりうるという点からは、例えば2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシ−1−ピペリジニルオキシ、1−(1−フェニルエトキシ)−2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシピペリジン、2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシ−1−ピペリジニルオキシ、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)、2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニロキシ、N−t−ブチル−N−(1−ジエチルホスフォノ−2,2−ジメチルプロピル)ニトロキサイドなどの由来の基を挙げることができる。中でも、特に2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシ−1−ピペリジニルオキシ、1−(1−フェニルエトキシ)−2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシピペリジンが好ましい。
【0029】(分子量)
【0030】本発明のアルコキシアミン基を有する共重合体の分子量は、例えば、この共重合体を高分子ラジカル重合開始剤として使用する際の所望の物性により適宜決定することができる。例えば高分子ラジカル重合体を用いてブロック共重合体をつくり、相溶化剤として使用する場合には、相用化効果の点からは、このアルコキシアミン基を有する共重合体の数平均分子量は、5×10〜5×10程度、更には1×10〜10×10程度であることが好ましい(数平均分子量はGPCで測定することができる)。
【0031】(高分子ラジカル重合開始剤)本発明のアルコキシアミン基を有する共重合体は、高分子ラジカル重合開始剤として利用することが可能である。この開始剤の使用方法は特に限定されないが、例えば単量体に該共重合体を溶解して、130℃で加熱することでラジカルを発生させ、単量体の重合を開始することができる。
【0032】(製造方法)
【0033】本発明のアルコキシアミン基を有する共重合体の製造方法は特に限定されないが、スチレン誘導体を単量体成分として重合を行う場合には、スチレン誘導体を重合系中に分割して添加しながら重合を行うことが好ましい。他方、アクリル酸エステルの重合制御が可能なニトロキサイド化合物の存在下においてアクリル酸エステルを単量体成分として重合を行う際には、アクリル酸エステルを分割して添加しながら重合する場合と、重合開始時に全単量体を一時に投入して重合を行う場合を比較しても生成する共重合体に著しい相違はなく、何れの方法を用いて重合を行ってもよい。アクリル酸エステルの重合制御が可能とは、アクリル酸エステルのみを重合した場合に得られるアクリル酸エステル重合体の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.70以下で、かつ、高分子ラジカル重合開始剤として使用可能な重合体を得られた場合に、「重合制御が可能」と判断できる。
【0034】(ニトロキサイド化合物)
【0035】本発明において使用されるニトロキサイド化合物としては、下記一般式(3)〜(6)に表される化合物を用いることができる。
【0036】
【化6】


(式中、Xは少なくとも1個の炭素原子を有する基を示し、その遊離基X・はラジカル重合によって不飽和モノマーを重合させ得る基であり、Rは該アルコキシアミン基と共重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する直鎖型もしくは分岐型のアルキル基;あるいはO=P(R)(R18)基を、R、R〜R、R15およびR16は、該アルコキシアミン基と共重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する同一又は異なる直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を、R、R、R、R10、R13およびR14は、水素、直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、R11、R12は直鎖型もしくは分岐型のアルキル基、水素、水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、また、R17とR18はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、パーフルオロアルキル基、ハロゲン基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0037】上記式中、Xは特に限定はされないが例えば1−フェニルエトキシなどの少なくとも1個の炭素原子を有する基を示す。
【0038】一般式(3)〜(6)で表される化合物としては、リビングラジカル重合のいわゆる“リビング”性の点からは、例えば2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシ−1−ピペリジニルオキシ、1−(1−フェニルエトキシ)−2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシピペリジン、2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシ−1−ピペリジニルオキシ、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)、2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニロキシ、N−t−ブチル−N−(1−ジエチルホスフォノ−2,2−ジメチルプロピル)ニトロキサイドなどを挙げることができる。中でも、特に2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシ−1−ピペリジニルオキシ、1−(1−フェニルエトキシ)−2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシピペリジンが好ましい。
【0039】本発明においては、これらの一般式(3)〜(6)の化合物を用いることにより、スチレン誘導体の重合制御が可能となる。更には、一般式(3)〜(6)の化合物の構造によっては、それらの化合物を用いることにより、アクリル酸エステルの重合制御も可能となる。しかしながら、本発明者らの知見によれば、このような一般式(3)〜(6)の化合物を用いた場合であっても、メタクリル酸エステル単独の重合制御は比較的に困難であることが見出されている。
【0040】(化合物(3)および/又は(5))
【0041】本発明において利用可能な一般式(3)〜(6)の化合物のうち、化合物(3)、(5)は、加熱することによってラジカル重合によって不飽和モノマーを重合させ得る「遊離基X・」を生じるため、他のラジカル開始剤がない場合であっても本発明の共重合体を得ることが出来る。重合速度を上げるために、必要に応じて、化合物(3)、(5)と、他のラジカル開始剤とを使用しても良い。このような開始剤併用の態様において、化合物(3)または(5)と他のラジカル開始剤のモル比は、{化合物(3)または(5)}/(他のラジカル開始剤)=0.2/1以下の範囲が好ましく、0.15/1以下の範囲がより好ましい。この{化合物(3)または(5)}/(他のラジカル開始剤)のモル比が大きすぎる場合には、得られる共重合体の分子量分布が広くなる傾向がある。
【0042】(化合物(4)および/又は(6))
【0043】本発明において利用される一般式(3)〜(6)の化合物のうち、化合物(4)または(6)を用いる場合、ラジカル開始剤を併用することが好ましい。このような併用の態様において、化合物(4)または(6)とラジカル開始剤とのモル比は、{化合物(4)または(6)}/(ラジカル開始剤)=0.2/1〜2.5/1の範囲が好ましく、1/1〜1.5/1の範囲内がより好ましい。この{化合物(4)または(6)}/(ラジカル開始剤)のモル比が小さ過ぎる場合には得られる共重合体の分子量分布が広くなり、他方、このモル比が大きすぎる場合には重合速度が著しく低下する傾向がある。
【0044】(ニトロキサイド化合物の組合せ)ニトロキサイド化合物の典型的な例である化合物(3)〜(6)と、単量体との組み合わせに関しては、上記した単量体がスチレン誘導体の場合には、化合物(3)〜(6)の何れを用いることも可能である。
【0045】他方、上記した単量体がアクリル酸エステルの場合には、通常は、アクリル酸エステル単独の重合制御が可能な化合物を選択することが好ましい。このようなアクリル酸エステル単独の重合制御が可能な化合物は特に限定はされないが、リビングラジカル重合のいわゆる“リビング”性の点からは、2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシ−1−ピペリジニルオキシ、1−(1−フェニルエトキシ)−2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシピペリジン等が好適に使用可能である。
【0046】(分割して加えるべき単量体)前述したように、本発明のアルコキシアミン基を有する共重合体の製造方法において分割して加えるべき単量体は、スチレン誘導体又はアクリル酸エステルである。スチレン誘導体およびアクリル酸エステルは特に限定されないが、具体的にはスチレン誘導体およびアクリル酸エステルとして上述した化合物が挙げられる。これらのスチレン誘導体又はアクリル酸エステルは単独で用いても、必要に応じて二種以上組み合わせて用いても良い。
【0047】二種以上組み合わせて用いる場合、その組合せは、スチレン誘導体同士の組合せ、アクリル酸エステル同士の組合せ、および/又はスチレン誘導体(必要に応じて2種以上)−アクリル酸エステル(必要に応じて2種以上)の組合せのいずれであってもよい。
【0048】(添加速度)本発明の単量体(スチレン誘導体またはアクリル酸エステル)を分割して添加して共重合体を製造する場合は、単量体(スチレン誘導体またはアクリル酸エステル)の30質量%以下をメタクリル酸エステルと混合して、重合を開始し、70質量%より多い量を重合系に分割して添加するのが好ましい。単量体(スチレン誘導体又はアクリル酸エステル)の重合系への添加速度は、生成されるべき共重合体を構成する単量体の単量体反応性比等を考慮して決定することができる。この際には、重合後期にメタクリル酸エステルのみが残存しないように添加を行うことが好ましく、限定はされないが、例えば単量体(スチレン誘導体又はアクリル酸エステル)の70質量%より多い量を、重合開始から全重合時間の50%〜98%の時間をかけて滴下する方法などが挙げられる。重合系への添加は単量体のみを用いて行ってもよく、また、単量体を溶解する溶剤との混合溶液を用いて行っても良い。重合系への添加はスチレン誘導体あるいはアクリル酸エステルのみに限らず、必要に応じて、同時に(ないしは併用して)メタクリル酸エステルを分割して添加することも可能である。
【0049】(重合方法)
【0050】本発明のアルコキシアミン基を有する共重合体を得るための共重合(例えばランダム共重合)は特に制限されず、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法で行うことができる。この重合の際には、単量体の種類、重合温度等によって適当な重合方法を選択することができる。重合に開始剤を利用する場合には、重合温度、重合溶媒等を考慮し、適当なラジカル開始剤を選択して使用すればよい。
【0051】(開始剤)
【0052】上記の塊状重合、溶液重合、懸濁重合で使用可能な開始剤の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クミルパーオキシド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤が挙げられる。
【0053】(乳化重合)
【0054】上記した乳化重合を行う場合には、例えばベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、エチル3,3−ジ(t−アミルペルオキシ)ブチレート、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジイヒドロクロリド、硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性ラジカル開始剤が利用できる。
【0055】乳化重合を行う際には、一般的には乳化剤を重合系に存在させる必要がある。このような態様における乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、ソルビタンポリエチレングリコールモノラウリン酸エステル、モノパルミチン酸エステル、モノオレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、ポリエチレングリコールステアリル酸エステル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル等の非イオン界面活性剤等が利用できる。
【0056】(溶液重合)
【0057】上記溶液重合を行う場合には、単量体、ニトロキサイド化合物、およびラジカル開始剤の溶解性、および重合温度等を考慮して適当な溶剤を選択し、その溶剤中で重合を行うことができる。この溶剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、メチルエチルケトン、乳酸エチル、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0058】(重合温度)
【0059】重合温度は特に制限されないが、通常は0℃以上180℃以下の範囲が好ましく、更に70℃から150℃の範囲がより好ましい。重合温度が0℃より低い場合には重合速度は著しく低下し、結果として重合時間が長くなる傾向がある。他方、重合温度が180℃より高い場合には、重合速度の制御が困難になるのみならず、熱重合を生じる可能性が高くなる傾向がある。
【0060】最適な重合時間は、選択される重合開始剤、およびニトロキサイド化合物の種類並びに量、および重合温度により決定することができる。
【0061】(共重合体)
【0062】本発明によれば、例えば重合系中に少量の重合制御可能な単量体を分割して添加しながら重合を行うことにより、重合終了時まで重合が制御された共重合体(例えばランダム共重合体)の合成が可能となる。この方法で得られたアルコキシアミン基を有する共重合体の末端はリビング活性を有しているため、この共重合体は高分子ラジカル重合開始剤としても機能し、更に他の成分(例えば他の単量体)を利用するブロック共重合体等の合成に好適に利用可能である。
【0063】このようにして得られる本発明の共重合体又は高分子ラジカル重合開始剤は、重合が制御された共重合体である特徴を活かして、エラストマー、相溶化剤、界面活性剤、塗料、接着剤等の合成等の種々の用途にも使用することができる。
【0064】
【実施例】以下に本発明の実施例(実験結果は表1、表2に記載)を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】実施例中の評価は以下の方法に従い実施した。
【0066】(1)数平均分子量、分子量分布ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(Waters社製、HPLCポンプ510、示差屈折計 R401、データ処理 ミレニアム2010クロマトグラフィマネージャー)
カラム:Shodex K−805L(内径8mm、長さ300mm)
カラム槽温度:35℃移動相:クロロホルム、流量1.0ml/min標準サンプル:PMMA(Mn:330000、88000、34500、10300、2990)
試料:濃度 2mg/ml、クロロホルム溶液試料注入量:100μl)
【0067】(2)共重合体組成H−NMR (JEOL社製 EX270)
温度:30℃溶媒:重クロロホルム試料濃度:5質量/体積%、試料量0.5ml
【0068】実施例1
【0069】下記各成分を混合して、溶液Aを作製した。攪拌機、冷却管、窒素導入管を備えた容量100mlの三口フラスコにこの溶液Aを入れ、10ml/minの流通速度で60分間窒素バブリングした後、90℃に昇温し重合を開始した。重合開始直後より溶液Bの滴下を開始し、8時間かけて滴下を行った後、1時間後にオイルバスから取り出して重合を停止した。得られた重合溶液を800mlの攪拌しているヘキサンにゆっくり投入して再沈して重合体を取り出し、真空乾燥機にて1.3kPaまで圧力を減じて60℃で24時間乾燥させた。得られた重合体の物性は表1に示した。
【0070】
溶液Aメタクリル酸メチル 16gスチレン 0.33g1−(1−フェニルエトキシ)−2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシピペリジン 0.70gトルエン 40g
【0071】溶液B(滴下用)スチレン 3.7gトルエン 20g
【0072】実施例2
【0073】実施例1で合成したポリメタクリル酸メチル/ポリスチレン共重合体のスチレン溶液Cを作製した。溶液Cを容量5mlのガラスアンプルに注入し、二方コックで蓋をして真空ラインにつないだ後、液体窒素にて凍結させた。溶液Cが凍結したのを確認して、真空ポンプで脱気し、二方コックを閉めて真空ラインから外した。凍結させた二方コック付きガラスアンプルを室温の流水で解凍して凍結脱気した。凍結から解凍までの作業を3回行い、3回目は解凍せずに二方コックより下部でガスバーナーを用いて封管した後130℃で6時間重合を行った。重合終了後、重合溶液を真空乾燥機にて1.3kPaまで圧力を減じて70℃で24時間乾燥させて重合体を得た。得られた重合体の物性は表1に示した。
【0074】
溶液Cポリメタクリル酸メチル/ポリスチレン共重合体 0.1gスチレン 0.6g
【0075】実施例3
【0076】下記の各成分をそれぞれ混合して、溶液Dと溶液E(滴下用)を作製し、実施例1と同様にして重合を行った。得られた重合体の物性は表1に示した。
【0077】
溶液Dメタクリル酸メチル 18gスチレン 0.37g1−(1−フェニルエトキシ)−2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシピペリジン 0.70gトルエン 40g
【0078】溶液E(滴下用)スチレン 1.63gトルエン 20g
【0079】実施例4
【0080】下記の各成分を混合して、実施例3で合成したポリメタクリル酸メチル/ポリスチレン共重合体のスチレン溶液Fを作製した。この溶液Fを用いて、実施例2と同様にして重合を行った。得られた重合体の物性は表1に示した。
【0081】
溶液Fポリメタクリル酸メチル/ポリスチレン共重合体 0.1gスチレン 0.6g
【0082】実施例5
【0083】下記の各成分をそれぞれ混合して、下記の溶液Gと溶液H(滴下用)を作製した。これらの溶液Gと溶液H(滴下用)を用いて、実施例1と同様にして重合を行った。得られた重合体の物性は表1に示した。
【0084】
溶液Gメタクリル酸メチル 17.5gアクリル酸n−ブチル 0.45g1−(1−フェニルエトキシ)−2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシピペリジン 0.70g
【0085】
トルエン 40g
【0086】
溶液H(滴下用)アクリル酸n−ブチル 2.05gトルエン 20g
【0087】実施例6
【0088】下記の各成分を混合して、実施例5で合成したポリメタクリル酸メチル/ポリアクリル酸n−ブチル共重合体のスチレン溶液Iを作製した。この溶液Iを用いて、実施例2と同様の条件で重合体を得た。得られた重合体の物性は表1に示した。
【0089】
溶液Iポリメタクリル酸メチル/ポリアクリル酸n−ブチル共重合体 0.5gスチレン 1.5g
【0090】実施例7
【0091】下記の溶液Jと溶液K(滴下用)を作製した。この溶液を用いて、実施例1と同様にして重合を行った。得られた重合体の物性は表1に示した。
【0092】
溶液Jメタクリル酸メチル 18.8gアクリル酸n−ブチル 0.40g1−(1−フェニルエトキシ)−2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシピペリジン 0.70gトルエン 40g
【0093】溶液K(滴下用)アクリル酸n−ブチル 0.8gトルエン 20g
【0094】実施例8
【0095】下記の各成分を混合して、実施例7で合成したポリメタクリル酸メチル/ポリアクリル酸n−ブチル共重合体のスチレン溶液Lを作製した。この溶液Lを用いて、実施例2と同様の条件で重合体を得た。得られた重合体の物性は表1に示した。
【0096】
溶液Lポリメタクリル酸メチル/ポリアクリル酸n−ブチル共重合体 0.5gスチレン 1.1g
【0097】実施例9
【0098】下記の各成分を混合して、溶液Mを作製した。溶液Mを使用して重合時間を3時間にしたこと以外は実施例2と同様の条件で重合して重合溶液を得た。重合溶液を取り出し、真空乾燥機にて60℃で24時間乾燥させた。得られた重合体の物性は表1に示した。
【0099】
溶液Mメタクリル酸メチル 2.27gアクリル酸メチル 0.23g1−(1−フェニルエトキシ)−2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシピペリジン 0.089g
【0100】実施例10
【0101】下記の各成分を混合して、実施例9で合成したポリメタクリル酸メチル/ポリアクリル酸メチル共重合体のスチレン溶液Nを作製した。攪拌機、冷却管、窒素導入管を備えた三口フラスコにこの溶液Nを入れ、90℃で6時間重合を行った。その後ヘキサンで再沈して重合体を得た。得られた重合体の物性は表1に示した。
【0102】
溶液Nポリメタクリル酸メチル/ポリアクリル酸メチル共重合体 0.3gスチレン 2g
【0103】比較例1
【0104】下記の各成分を混合して、モノマー溶液Oを作製し実施例1と同様の条件で重合し、重合体を得た。得られた重合体の物性は表2に示した。
【0105】
溶液Oメタクリル酸メチル 16gスチレン 4g1−(1−フェニルエトキシ)−2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシピペリジン 0.70gトルエン 40g
【0106】比較例2
【0107】下記の各成分を混合して、比較例1で合成したポリメタクリル酸メチル/ポリスチレン共重合体のスチレン溶液Pを作製し実施例2と同様の条件で重合体を得た。結果は表2に示した。
【0108】
溶液Pポリメタクリル酸メチル/ポリスチレン共重合体 0.1gスチレン 0.6g
【0109】比較例3
【0110】下記の各成分を混合して、モノマー溶液Qを作製し実施例1と同様の条件で重合体を得た。得られた重合体の物性は表2に示した。
【0111】
溶液Qメタクリル酸メチル 19.99gスチレン 0.002g1−(1−フェニルエトキシ)−2,6−ジエチル−2,3,6−トリメチル−4−アセトキシピペリジン 0.70gトルエン 40g
【0112】溶液Rスチレン 0.008gトルエン 20g
【0113】比較例4
【0114】下記の各成分を混合して、比較例3で合成したポリメタクリル酸メチル/ポリスチレン共重合体のスチレン溶液Sを作製し実施例2と同様の条件で重合体を得た。結果は表2に示した。
【0115】
溶液S ポリメタクリル酸メチル/ポリスチレン共重合体 0.1gスチレン 0.6g
【0116】上記した実施例および比較例で得られた結果を、下記の表1および表2にまとめて示す。
【0117】
【表1】


【0118】
【表2】


【0119】
【発明の効果】上述したように本発明によれば、末端がリビング活性を有し、したがって高分子ラジカル重合開始剤として機能する、アルコキシアミン基を有する共重合体が提供される。このような高分子ラジカル重合開始剤は、例えば、ブロック共重合体等の合成に好適に利用することができる。
【0120】更に、本発明においては、ラジカル重合において分子量および分子量分布の制御に用いられるニトロキサイド化合物の存在下で制御が困難とされていた単量体を重合する際に、重合系中に少量の重合制御可能な単量体を分割して添加しながら重合を行うことで、重合終了時まで重合が制御された上記の共重合体(例えばランダム共重合体)の合成が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 スチレン誘導体単位またはアクリル酸エステル単位0.1〜49.9質量%と、メタクリル酸エステル単位50.1〜99.9質量%とを含む共重合体であって、共重合体の末端に下記一般式(1)または(2)に示されるアルコキシアミン基を有する共重合体。
【化1】


(式中、Rは該アルコキシアミン基と共重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する直鎖型もしくは分岐型のアルキル基、あるいはO=P(R17)(R18)基を、R、R〜R、R15およびR16は、該アルコキシアミン基と共重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する同一又は異なる直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を示し、R、R、R、R10、R13およびR14は、水素、直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、R11、R12は直鎖型もしくは分岐型のアルキル基、水素、水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、また、R17とR18はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、パーフルオロアルキル基、ハロゲン基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】 請求項1に記載の共重合体からなる高分子ラジカル重合開始剤。
【請求項3】 メタクリル酸エステル単位と、スチレン誘導体単位またはアクリル酸エステル単位とを含む共重合体を重合する際に、下記一般式(3)〜(6)で示される化合物の少なくとも1種以上の存在下、メタクリル酸エステルを含む重合系に対して、少なくとも1種以上のスチレン誘導体またはアクリル酸エステルを分割して加えることを特徴とする請求項1に記載の共重合体の製造方法。
【化2】


(式中、Xは少なくとも1個の炭素原子を有する基を示し、その遊離基X・はラジカル重合によって不飽和モノマーを重合させ得る基であり、Rは該アルコキシアミン基と共重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する直鎖型もしくは分岐型のアルキル基;あるいはO=P(R)(R18)基を、R、R〜R、R15およびR16は、該アルコキシアミン基と共重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する同一又は異なる直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を、R、R、R、R10、R13およびR14は、水素、直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、R11、R12は直鎖型もしくは分岐型のアルキル基、水素、水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、また、R17とR18はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、パーフルオロアルキル基、ハロゲン基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項4】 下記一般式(3)〜(6)で示される化合物から選ばれた少なくとも1種以上の化合物の存在下で、アクリル酸エステル誘導体単位0.1〜49.9質量%とメタクリル酸エステル単位50.1〜99.9質量%とを含む単量体を重合することを特徴とする、末端に下記一般式(1)または(2)に示されるアルコキシアミン基を有する共重合体の製造方法。
【化3】


(式中、Rは該アルコキシアミン基と共重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する直鎖型もしくは分岐型のアルキル基、あるいはO=P(R17)(R18)基を、R、R〜R、R15およびR16は、該アルコキシアミン基と共重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する同一又は異なる直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を示し、R、R、R、R10、R13およびR14は、水素、直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、R11、R12は直鎖型もしくは分岐型のアルキル基、水素、水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、また、R17とR18はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、パーフルオロアルキル基、ハロゲン基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化4】


(式中、Xは少なくとも1個の炭素原子を有する基を示し、その遊離基X・はラジカル重合によって不飽和モノマーを重合させ得る基であり、Rは該アルコキシアミン基と共重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する直鎖型もしくは分岐型のアルキル基;あるいはO=P(R)(R18)基を、R、R〜R、R15およびR16は、該アルコキシアミン基と共重合体末端との結合に立体障害および結合エネルギーの低下を与える鎖長を有する同一又は異なる直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を、R、R、R、R10、R13およびR14は、水素、直鎖型もしくは分岐型のアルキル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、R11、R12は直鎖型もしくは分岐型のアルキル基、水素、水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、また、R17とR18はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、パーフルオロアルキル基、ハロゲン基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。)

【公開番号】特開2003−268046(P2003−268046A)
【公開日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−76337(P2002−76337)
【出願日】平成14年3月19日(2002.3.19)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】