説明

共重合体および上層膜形成組成物

【課題】フォトレジスト膜とインターミキシングを起こすことなくフォトレジスト上に被膜を形成でき、液浸露光時の媒体に溶出することなく安定な被膜を維持し、さらに液浸露光でないドライ露光を行なった場合からのパターン形状劣化がなく、かつアルカリ現像液に容易に溶解する上層膜を形成する共重合体を提供する。
【解決手段】炭素数1〜4のフッ素化アルキル基及び水酸基で置換されたアルキル基を有する繰返し単位(HO−C(R)(R)−)、炭素数1〜4のフッ素化アルキル基を有するスルホンアミド基を有する繰返し単位(R−SO−NH−)、およびカルボキシル基を有する繰返し単位から選ばれる少なくとも1つの繰返し単位(I)と、スルホ基を有する繰返し単位(II)とを含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法により測定される重量平均分子量が2,000〜100,000である共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規共重合体およびこの共重合体を用いたフォトレジスト膜の上層膜形成組成物に関し、特にリソグラフィの微細化のために使用される液浸露光時にフォトレジスト膜の保護と、フォトレジスト成分の溶出を抑え投影露光装置のレンズを保護する上層膜を形成するのに有用な液浸用上層膜形成組成物およびそれに用いられる共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等を製造するに際し、フォトマスクとしてのレチクルのパターンを投影光学系を介して、フォトレジストが塗布されたウェハ上の各ショット領域に転写するステッパー型、またはステップアンドスキャン方式の投影露光装置が使用されている。
投影露光装置に備えられている投影光学系の解像度は、使用する露光波長が短く、投影光学系の開口数が大きいほど高くなる。そのため、集積回路の微細化に伴い投影露光装置で使用される放射線の波長である露光波長は年々短波長化しており、投影光学系の開口数も増大してきている。
また、露光を行なう際には、解像度と同様に焦点深度も重要となる。解像度R、および焦点深度δはそれぞれ以下の数式で表される。
R=k1・λ/NA (i)
δ=k2・λ/NA2 (ii)
ここで、λは露光波長、NAは投影光学系の開口数、k1、k2はプロセス係数である。同じ解像度Rを得る場合には短い波長を有する放射線を用いた方が大きな焦点深度δを得ることができる。
【0003】
この場合、露光されるウェハ表面にはフォトレジスト膜が形成されており、このフォトレジスト膜にパターンが転写される。従来の投影露光装置では、ウェハが配置される空間は空気または窒素で満たされている。このとき、ウェハと投影露光装置のレンズとの空間が屈折率nの媒体で満たされると、上記の解像度R、焦点深度δは以下の数式にて表される。
R=k1・(λ/n)/NA (iii)
δ=k2・nλ/NA2 (iv)
例えば、ArFプロセスで、上記媒体として水を使用すると波長193nmの光の水中での屈折率n=1.44を用いると、空気または窒素を媒体とする露光時と比較し、解像度Rは69.4%(R=k1・(λ/1.44)/NA)、焦点深度は144%(δ=k2・1.44λ/NA2)となる。
このように露光するための放射線の波長を短波長化し、より微細なパターンを転写できる投影露光する方法を液浸露光といい、リソグラフィの微細化、特に数10nm単位のリソグラフィには、必須の技術と考えられ、その投影露光装置も知られている(特許文献1参照)。
液浸露光方法においては、ウェハ上に塗布・形成されたフォトレジスト膜と投影露光装置のレンズはそれぞれ屈折率nの媒体と接触する。例えば媒体として水を使用すると、フォトレジスト膜に水が浸透し、フォトレジストの解像度が低下することがある。また、投影露光装置のレンズはフォトレジストを構成する成分が水へ溶出することによりレンズ表面を汚染することもある。
【0004】
このため、フォトレジスト膜と水などの媒体とを遮断する目的で、フォトレジスト膜上に上層膜を形成する方法があるが、この上層膜は放射線の波長に対して十分な透過性とフォトレジスト膜とインターミキシングを起こすことなくフォトレジスト膜上に保護膜を形成でき、さらに液浸露光時に際して媒体に溶出することなく安定な被膜を維持し、かつ現像液であるアルカリ液に容易に溶解する上層膜が形成される必要がある。
また、通常のドライな環境での使用を前提に設計したレジストをそのまま液浸レジストとして使用できることが求められている。そのためには、液浸用ではなく、通常のドライ用として設計された元の性能を劣化させずレジスト膜を液浸用液体から保護するできる液浸用上層膜が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−176727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような課題を克服するためなされたもので、露光波長、特に193nm(ArF)での十分な透過性を持ち、フォトレジスト膜とインターミキシングを起こすことなくフォトレジスト上に被膜を形成でき、液浸露光時の媒体に溶出することなく安定な被膜を維持し、ウエハーエッジ部での密着性を向上させ、さらに液浸露光でないドライ露光を行なった場合からのパターン形状劣化がなく、かつアルカリ現像液に容易に溶解する上層膜を形成するための上層膜樹脂組成物およびこの組成物に用いられる共重合体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の共重合体は、下記式(1)で表される基を有する繰返し単位、下記式(2)で表される基を有する繰返し単位、およびカルボキシル基を有する繰返し単位から選ばれる少なくとも1つの繰返し単位(I)と、スルホ基を有する繰返し単位(II)とを含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法により測定される重量平均分子量が2,000〜100,000であることを特徴とする。
【化1】

式(1)においてR1およびR2は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のフッ素化アルキル基を表し、R1およびR2の少なくとも一方は炭素数1〜4のフッ素化アルキル基であり、式(2)においてR3は、炭素数1〜20のフッ素化アルキル基を表す。
【0008】
また、本発明の共重合体は、スルホ基を有する繰返し単位(II)を生成する単量体が下記式(3)で表されることを特徴とする。
【化2】

式(3)においてRは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、またはトリフルオロメチル基を表し、Aは、単結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基を示し、Bは、単結合、炭素数1〜20の2価の有機基を表す。
【0009】
本発明の上層膜形成組成物は、放射線照射によりパターンを形成するためのフォトレジスト膜に被覆される上層膜形成組成物であって、該組成物は現像液に溶解する樹脂が1価アルコールを含む溶媒に溶解されてなり、その樹脂が上記本発明の共重合体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の共重合体は、上記式(1)で表される基を有する繰返し単位、式(2)で表される基を有する繰返し単位、およびカルボキシル基を有する繰返し単位から選ばれる少なくとも1つの繰返し単位(I)と、スルホ基を有する繰返し単位(II)とを含むもので、1価アルコールを含む溶媒に溶解すると共に、アルカリ性現像液に溶解する。
本発明の上層膜を形成するための組成物は現像液に溶解する共重合体からなる樹脂が1価アルコールを含む溶媒に溶解されているので、フォトレジスト膜に容易に塗布することができ、その上層膜は液浸露光時に、特に水を媒体とする液浸露光時に、レンズおよびレジストを保護し、解像度、現像性等にも優れたレジストパターンを形成することができる。
また、液浸でない通常のドライ用としても使用できる。さらに通常のドライ用として設計されたレジストの性能を劣化させず、該レジスト膜を液浸用液体から保護することができる液浸用上層膜が得られる。
そのため、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの製造に極めて好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ライン・アンド・スペースパターンの断面形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の上層膜形成組成物を構成する樹脂は、液浸露光時における放射線照射時に水などの媒体に安定な膜を形成することができ、かつレジストパターンを形成するための現像液に溶解する樹脂である。
ここで、放射線照射時において水などの媒体に安定な膜とは、例えば、後述する水への安定性評価方法により測定したときの膜厚変化が初期膜厚の3%以内であることをいう。また、レジストパターン形成後の現像液に溶解するとは、アルカリ性水溶液を用いた現像後のレジストパターン上に目視で残渣がなく上層膜が除去されていることをいう。すなわち、本発明に係る樹脂は水などの媒体に対して殆ど溶解することなく、かつ放射線照射後のアルカリ性水溶液を用いる現像時に、該アルカリ性水溶液に溶解するアルカリ可溶性樹脂である。
このようなアルカリ可溶性樹脂による上層膜は、液浸露光時にフォトレジスト膜と水などの媒体とが直接接触することを防ぎ、その媒体の浸透によるフォトレジスト膜のリソグラフィ性能を劣化させることがなく、かつフォトレジスト膜より溶出する成分による投影露光装置のレンズの汚染を防止する作用がある。
【0013】
本発明の共重合体の繰返し単位(I)は、式(1)で表される基を有する繰返し単位、式(2)で表される基を有する繰返し単位、カルボキシル基を有する繰返し単位、それぞれの繰返し単位を同時に全て含む繰返し単位、またはいずれか2つを同時に含む繰返し単位として表される。
式(1)で表される基を有する繰返し単位において、炭素数1〜4のアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、炭素数1〜4のフッ素化アルキル基は、ジフルオロメチル基、パーフルオロメチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、パーフルオロエチルメチル基、パーフルオロプロピル基、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチル基、パーフルオロブチル基、1,1−ジメチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基等が挙げられる。
これらの中でパーフルオロメチル基が好ましい。
【0014】
式(1)で表される基を有する繰返し単位は、少なくともα位にフルオロアルキル基を少なくとも1個含むアルコール性水酸基をその側鎖に有する繰返し単位であり、フルオロアルキル基、特にパーフルオロメチル基の電子吸引性により、アルコール性水酸基の水素原子が離脱しやすくなり、水溶液中で酸性を呈する。そのため、純水に対しては不溶性となるが、アルカリ可溶性となる。
式(1)で表される基を有する繰返し単位の好ましい例としては、下記式(1a)で表される繰返し単位が挙げられる。
【化3】

式(1a)において、Rは式(3)のRと同一であり、R4は有機基を表し、好ましくは2価の炭化水素基を表す。2価の炭化水素基の中で好ましくは鎖状または環状の炭化水素基を表す。
好ましいR4としては、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基もしくは1,2−プロピレン基などのプロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基、ノナデカメチレン基、インサレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、または、2−プロピリデン基等の飽和鎖状炭化水素基、1,3−シクロブチレン基などのシクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基などのシクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基などのシクロヘキシレン基、1,5−シクロオクチレン基などのシクロオクチレン基等の炭素数3〜10のシクロアルキレン基などの単環式炭化水素環基、1,4−ノルボルニレン基もしくは2,5−ノルボルニレン基などのノルボルニレン基、1,5−アダマンチレン基、2,6−アダマンチレン基などのアダマンチレン基等の2〜4環式炭素数4〜30の炭化水素環基などの架橋環式炭化水素環基等が挙げられる。
【0015】
特に、R4として2価の脂肪族環状炭化水素基を含むときは、ビストリフルオロメチル−ヒドロキシ−メチル基と該脂肪族環状炭化水素基との間にスペーサーとして炭素数1〜4のアルキレン基を挿入することが好ましい。
また、式(1a)において、R4が2,5−ノルボルニレン基、2,6−ノルボルニレン基を含む炭化水素基、1,2−プロピレン基が好ましい。
【0016】
式(2)で表される基を有する繰返し単位において、R3の炭素数1〜20のフッ素化アルキル基としては、ジフルオロメチル基、パーフルオロメチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、パーフルオロエチルメチル基、パーフルオロプロピル基、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチル基、パーフルオロブチル基、1,1−ジメチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、1,1−ジメチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2−(パーフルオロプロピル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、パーフルオロペンチル基、1,1−ジメチル−2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチル基、1,1−ジメチル−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロヘキシル基、パーフルオロペンチルメチル基、パーフルオロヘキシル基、1,1−ジメチル−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、1,1−ジメチル−2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル基、2−(パーフルオロペンチル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル基、パーフルオロヘキシルメチル基、パーフルオロヘプチル基、2−(パーフルオロヘキシル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−テトラデカフルオロオクチル基、パーフルオロヘプチルメチル基、パーフルオロオクチル基、2−(パーフルオロヘプチル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロノニル基、パーフルオロオクチルメチル基、パーフルオロノニル基、2−(パーフルオロオクチル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−オクタデカフルオロデシル基、パーフルオロノニルメチル基、パーフルオロデシル基、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリドデカフルオロオクチル基等の炭素数が1〜20であるフルオロアルキル基等を挙げることができる。
これらの中で、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロオクチル基が特に好ましいが、それは窒素原子に結合した水素の酸性度が適度になるためである。
【0017】
式(2)で表される基を有する繰返し単位は、窒素原子に結合している水素原子が−SO2−R3基の電子吸引性により離脱しやすくなり、水溶液中で酸性を呈する。そのため、純水に対しては不溶性となるが、アルカリ可溶性となる。
式(2)で表される基を有する繰返し単位の好ましい例としては、下記式(2a)で表される繰返し単位が挙げられる。
【化4】

式(2a)において、Rは式(3)のRと同一であり、R3は式(2)のR3と同一であり、R4は式(1a)のR4と同一であるが、R4としては、エチレン基が特に好ましい。
【0018】
本発明のカルボキシル基を有する繰返し単位を生成するラジカル重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、アトロパ酸、3−アセチルオキシ(メタ)アクリル酸、3−ベンゾイルオキシ(メタ)アクリル酸、α−メトキシアクリル酸、3−シクロヘキシル(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和ポリカルボン酸類;2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−α−カルボキシアクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−α−カルボキシメチルアクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−α−メトキシカルボニルアクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−α−アセチルオキシアクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−α−フェニルアクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−α−ベンジルアクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−α−メトキシアクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−α−シクロヘキシルアクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−α−シアノアクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸等を挙げることができる。
上記の内、(メタ)アクリル酸、クロトン酸が好ましい。
【0019】
また、不飽和脂環基を有する単量体や、式(4)で示される単量体がカルボキシル基を有する単量体として挙げられる。
不飽和脂環基を有する単量体としては、2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エンカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イルメタンカルボン酸、4−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エンカルボン酸、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン−4−イルメタンカルボン酸等が挙げられるが、この中では2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エンカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イルメタンカルボン酸が好ましい。
【0020】
【化5】

式(4)で示される単量体において、Rは式(3)のRと同一であり、Aは、単結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基を表し、Bは、単結合、炭素数1から20の2価の有機基を示す。炭素数1から20の2価の有機基としては、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基もしくは1,2−プロピレン基などのプロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基、ノナデカメチレン基、インサレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、または、2−プロピリデン基等の飽和鎖状炭化水素基、フェニレン基、トリレン基等のアリレン基、1,3−シクロブチレン基などのシクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基などのシクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基などのシクロヘキシレン基、1,5−シクロオクチレン基などのシクロオクチレン基等の炭素数3〜10のシクロアルキレン基などの単環式炭化水素環基、1,4−ノルボルニレン基もしくは2,5−ノルボルニレン基などのノルボルニレン基、1,5−アダマンチレン基、2,6−アダマンチレン基などのアダマンチレン基等の2〜4環式炭素数4〜20の炭化水素環基などの架橋環式炭化水素環基等が挙げられる。
【0021】
本発明の共重合体を構成するスルホ基を有する繰返し単位(II)を与えるラジカル重合性単量体は、上記式(3)で表される。
式(3)において、AおよびBは式(4)におけるAおよびBと同一である。式(4)におけるカルボキシル基をスルホ基に代えることで式(3)が得られる。
好ましい一般式(3)で示される単量体としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、4−ビニル−1−ベンゼンスルホン酸が挙げられる。これらのスルホン酸単量体で、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸が特に好ましい。
【0022】
本発明の共重合体には、上層膜の屈折率をコントロールする目的で、少なくともα位にフルオロアルキル基を有するアルコール性水酸基をその側鎖に有する繰返し単位以外のフッ素原子を含む基をその側鎖に有する繰返し単位を含むことができる。この繰返し単位はフルオロアルキル基含有単量体を共重合することで得られる。
【0023】
フルオロアルキル基含有単量体としては、例えばジフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、2,2−ジフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、1−(パーフルオロメチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロメチル)エチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、ジ(パーフルオロメチル)メチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1−メチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1−(パーフルオロエチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロエチル)エチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロプロピル)エチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロペンチル)エチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−テトラデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘプチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘプチル)エチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロノニル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−オクタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロノニルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル基の炭素数が1〜20であるフルオロアルキル(メタ)アクリレート類、
【0024】
(2,2,2−トリフルオロエチル)α−カルボキシアクリレート、(パーフルオロエチルメチル)α−カルボキシアクリレート、(2,2,2−トリフルオロエチル)α−カルボキシメチルアクリレート、(パーフルオロエチルメチル)α−カルボキシメチルアクリレート、(2,2,2−トリフルオロエチル)α−メトキシカルボニルアクリレート、(パーフルオロエチルメチル)α−メトキシカルボニルアクリレート、(2,2,2−トリフルオロエチル)α−アセチルオキシアクリレート、(パーフルオロエチルメチル)α−アセチルオキシアクリレート、(2,2,2−トリフルオロエチル)α−フェニルアクリレート、(パーフルオロエチルメチル)α−フェニルアクリレート、(2,2,2−トリフルオロエチル)α−ベンジルアクリレート、(パーフルオロエチルメチル)α−ベンジルアクリレート、(2,2,2−トリフルオロエチル)α−エトキシアクリレート、(パーフルオロエチルメチル)α−エトキシアクリレート、(2,2,2−トリフルオロエチル)α−2−メトキシエチルアクリレート、(パーフルオロエチルメチル)α−2−メトキシエチルアクリレート、(2,2,2−トリフルオロエチル)α−シクロヘキシルアクリレート、(パーフルオロエチルメチル)α−シクロヘキシルアクリレート、(2,2,2−トリフルオロエチル)α−シアノアクリレート、(パーフルオロエチルメチル)α−シアノアクリレート、3[4[1−トリフルオロメチル−2,2−ビス[ビス(トリフルオロメチル)フルオロメチル]エチニルオキシ]ベンゾオキシ]2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)2−フェニルアクリレート、(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)2−ベンジルアクリレート、(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)2−エトキシアクリレート、(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)2−シクロヘキシルアクリレート、(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)2−シアノアクリレート等を挙げることができる。これらのフルオロアルキル基含有単量体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
本発明において、フルオロアルキル基含有単量体としては、フルオロアルキル基の炭素数が1〜20であるフルオロアルキル(メタ)アクリレート類が好ましく、なかでもパーフルオロアルキル(メタ)アクリレートおよびパーフルオロアルキル基がメチレン基、エチレン基あるいはスルホニルアミノ基を介してエステル酸素原子に結合したフルオロアルキル(メタ)アクリレート類が特に好ましい。
【0025】
また、本発明の共重合体には、共重合体の分子量、ガラス転移点、シリコン基板、フォトレジスト膜、下層反射防止膜等への密着性、または溶媒への接触角などを制御する目的で、他のラジカル重合性単量体を共重合することができる。「他の」とは、前出のラジカル重合性単量体以外のラジカル重合性単量体の意味である。また、酸解離性基含有単量体を共重合することができる。
他のラジカル重合性単量体または酸解離性基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリル酸アリールエステル類、ジカルボン酸ジエステル類、ニトリル基含有ラジカル重合性単量体、アミド結合含有ラジカル重合性単量体、脂肪酸ビニル類、塩素含有ラジカル重合性単量体、共役ジオレフィン、水酸基含有(メタ)アクリル酸脂環族アルキルエステル、(メタ)アクリル酸脂環族アルキルエステル等を挙げることができる。
特に本発明の共重合体には、他の繰返し単位を生成する(メタ)アクリル酸のラクトンエステル類および(メタ)アクリル酸のアダマンタンエステル類から選ばれた少なくとも1つの単量体を配合することが好ましい。これらの単量体としては、(メタ)アクリル酸δ−ラクトンエステル類、(メタ)アクリル酸γ−ラクトンエステル類、(メタ)アクリル酸アダマンタンエステル類、(トリフルオロ)アクリル酸アダマンタンエステル類、(メタ)アクリル酸ノルボルネンラクトンn−メタクリルエステル類、(トリフルオロ)アクリル酸ノルボルネンラクトンn−メタクリルエステル類等を挙げることができる。
【0026】
上記他の単量体の具体的としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシ−ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、1−メチル−1−シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチル−1−シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−プロピル−1−シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−ブチル−1−シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−メチル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−エチル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−プロピル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−ブチル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレート、また、水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、1−ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−1−メチルエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルなどのジカルボン酸ジエステル;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル;スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニ−ルトルエン、p−メトキシスチレン等の芳香族ビニル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有ラジカル重合性単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、トリフルオロメタンスルホニルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミド結合含有ラジカル重合性単量体;酢酸ビニルなどの脂肪酸ビニル類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素含有ラジカル重合性単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ジメチルブタジエン等の共役ジオレフィン類を用いることができる。
【0027】
(メタ)アクリル酸のラクトンエステル類由来等の繰返し単位を生成する単量体の具体例としては、
2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−プロピル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸δ−ラクトンエステル類として、4−(4−メチル−テトラヒドロ−2−ピロン)ニルメタクリレート、(メタ)アクリル酸γ−ラクトンエステル類として、3−(2−テトラヒドロフラノン)ニルメタクリレート、3−(3−メチル−テトラヒドロ−2−フラン)ニルメタクリレート、(トリフルオロ)アクリル酸アドマンタンエステル類として、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル‐メタクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル−1−トリフルオロメチルアクリレート、(トリフルオロ)アクリル酸ノルボルネンラクトンn−メタクリルエステル類として、3−オキサ−2−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル−1−トリフルオロメチルアクリレート、3−オキサ−2−オキサトリシクロ[4.2.1.01,8]−1−トリフルオロメチル−ノナン−5−イルアクリレートなどが挙げられる。
これらのうち、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、4−(4−メチル−テトラヒドロ−2−ピロン)ニルメタクリレート、3−(2−テトラヒドロフラノン)ニルメタクリレート、3−(3−メチル−テトラヒドロ−2−フラン)ニルメタクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル−1−トリフルオロメチルアクリレート、3−オキサ−2−オキサトリシクロ[4.2.1.01,8]−1−トリフルオロメチル−ノナン−5−イルアクリレートが好ましい例として挙げられる。
これらの単量体は単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
本発明の共重合体は、上記繰返し単位(I)および繰返し単位(II)を必須成分として含む共重合体である。好ましくは、(イ)繰返し単位(I)および繰返し単位(II)のみを成分とする共重合体、(ロ)繰返し単位(I)、繰返し単位(II)、およびその他の繰返し単位として、(1)式で表される以外のフッ素原子を含む基をその側鎖に有する繰返し単位および/または(メタ)アクリル酸のアダマンタンエステル類から選ばれた少なくとも1つの化合物由来の繰返し単位を成分とする共重合体が挙げられる。
式(1)で表される基を有する繰返し単位(以下、繰返し単位IAという)、式(2)で表される基を有する繰返し単位(以下、繰返し単位IBという)、カルボキシル基を有する繰返し単位(以下、繰返し単位ICという)、スルホ基を有する繰返し単位(以下、繰返し単位IIという)、その他の繰返し単位(以下、繰返し単位IIIという)との割合は、(IAのモル%)÷60+(IBのモル%)÷40+(ICのモル%)÷25の値が0.7以上、好ましくは0.8以上であり、繰返し単位ICが50モル%以下、好ましくは40モル%以下であり、
繰返し単位IIが0.5モル%〜50モル%、好ましくは1モル%〜30モル%であり、
繰返し単位IIIが0モル%〜90モル%、好ましくは0モル%〜80モル%である。
【0029】
(IAのモル%)÷60+(IBのモル%)÷40+(ICのモル%)÷25の値が0.7未満では、現像液であるアルカリ水溶液への溶解性が低くなり該上層膜の除去ができずに現像後のレジストパターン上に残渣が発生してしまうおそれがあり、
繰返し単位ICが50モル%をこえると液浸用液体が膜を膨潤させ光学イメージに悪影響をおよぼすおそれがあり、
繰返し単位IIが0.5モル%未満では、ドライ露光を行なった場合からのパターン形状劣化が起きるおそれがあり、50モル%をこえると液浸用液体が膜を膨潤させ光学イメージに悪影響をおよぼすおそれがあり、
繰返し単位IIIが90モル%をこえると、現像液であるアルカリ水溶液への溶解性が低くなり該上層膜の除去ができずに現像後のレジストパターン上に残渣が発生してしまうおそれがある。
【0030】
本発明の共重合体は、例えば、各繰返し単位を生成する単量体の混合物を、ラジカル重合開始剤を使用し、必要に応じて連鎖移動剤の存在下、適当な溶媒中で重合することにより製造することができる。
重合に使用できる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類が挙げられる。これらのうち、環状エーテル類、多価アルコールのアルキルエーテル類、多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類、ケトン類、エステル類などが好ましい。
【0031】
また、ラジカル共重合における重合触媒としては、通常のラジカル重合開始剤が使用でき、例えば2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−(2−メチルプロピオン酸メチル)、2,2'−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス−(4−メトキシ−2−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート、1,1'−ビス−(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどの有機過酸化物および過酸化水素などを挙げることができる。過酸化物をラジカル重合開始剤に使用する場合、還元剤を組み合わせてレドックス型の開始剤としてもよい。
また、上記重合における反応温度は、通常、40〜120℃、好ましくは50〜100℃であり、反応時間は、通常、1〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
【0032】
上記重合で得られる共重合体の重量平均分子量(以下、Mwと略称する)はゲルパーミエーションクロマト法ポリスチレン換算で通常2,000〜100,000であり、好ましくは2,500〜50,000、より好ましくは3,000〜20,000である。この場合、共重合体のMwが2,000未満では、上層膜としての耐水性などの耐溶媒性および機械的特性が著しく低く、一方100,000をこえると、後述する溶媒に対する溶解性が著しく悪い。また、共重合体のMwとゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算数平均分子量(以下、Mnと略称する)との比(Mw/Mn)は、通常、1〜5、好ましくは1〜3である。
なお、共重合体は、ハロゲン、金属等の不純物が少ないほど好ましく、それにより、上層膜としての塗布性とアルカリ現像液への均一な溶解性をさらに改善することができる。共重合体の精製法としては、例えば、水洗、液々抽出等の化学的精製法や、これらの化学的精製法と限外ろ過、遠心分離等の物理的精製法との組み合わせ等を挙げることができる。本発明の共重合体は、上層膜形成組成物の樹脂成分として使用でき、共重合体を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0033】
本発明の上層膜形成組成物を構成する溶媒は、上記共重合体を溶解させるとともに、フォトレジスト膜上に塗布するに際し、そのフォトレジスト膜とインターミキシングを起こすなどしてリソグラフィの性能を劣化させることがない溶媒が使用できる。
そのような溶媒としては、1価アルコールを含む溶媒が挙げられる。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−メチルー2−ブタノール、3−メチルー2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2,2−ジメチル−3−ペンタノール、2,3−ジメチル−3−ペンタノール、2,4−ジメチル−3−ペンタノール、4,4−ジメチル−2−ペンタノール、3−エチル−3−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、2−メチル−3−ヘキサノール、5−メチル−1−ヘキサノール、5−メチル−2−ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、4−メチル−3−ヘプタノール、6−メチル−2−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、2−プロピル−1−ペンタノール、2,4,4−トリメチル−1−ペンタノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、3−エチル−2,2−ジメチル−ペンタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、2−デカノール、4−デカノール、3,7−ジメチル−1−オクタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノールが挙げられる。
これらの1価アルコールのうち、炭素数4から8の1価アルコールが好ましく、n−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノールさらに好ましい。
【0034】
また、該上層膜をフォトレジスト膜上に塗布するに際し、塗布性を調整する目的で、他の溶媒を混合することもできる。他の溶媒は、フォトレジスト膜を浸食せずに、かつ上層膜を均一に塗布する作用がある。
他の溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類、水が挙げられる。これらのうち、環状エーテル類、多価アルコールのアルキルエーテル類、多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類、ケトン類、エステル類、水が好ましい。
【0035】
上記、他の溶媒の配合割合は、溶媒成分中の30重量%以下であり、好ましくは20重量%以下である。30重量%をこえると、フォトレジスト膜を浸食し、上層膜との間にインターミキシングを起こすなどの不具合を発生し、フォトレジストの解像性能を著しく劣化させる。
【0036】
本発明の上層膜形成組成物には、塗布性、消泡性、レベリング性などを向上させる目的で界面活性剤を配合することもできる。
界面活性剤としては、例えばBM−1000、BM−1100(以上、BMケミー社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−135、同FC−170C、同FC−430、同FC−431(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145(以上、旭硝子(株)製)、SH−28PA、同−190、同−193、SZ−6032、SF−8428(以上、東レダウコーニングシリコーン(株)製)、NBX−15(以上、ネオス(株)製)などの商品名で市販されているフッ素系界面活性剤、またはポリフローNO.75(共栄社化学(株)製)などの商品名で市販されている非フッ素系界面活性剤を使用することができる。
これらの界面活性剤の配合量は、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して好ましくは5重量部以下である。
【0037】
本発明の上層膜形成組成物は、放射線照射によりパターンを形成するためのフォトレジスト膜上に被覆される。特に液浸用上層膜形成組成物として用いることができる。液浸用上層膜形成組成物として用いる場合の例について以下、説明する。
基板上にフォトレジストを塗布してフォトレジスト膜を形成する工程において、基板は、例えばシリコンウェハ、アルミニウムで被覆したウェハ等を用いることができる。また、レジスト膜の潜在能力を最大限に引き出すため、例えば特公平6−12452号公報等に開示されているように、使用される基板上に有機系あるいは無機系の反射防止膜を形成しておくことができる。
使用されるフォトレジストは、特に限定されるものではなく、レジストの使用目的に応じて適時選定することができる。レジストの例としては、酸発生剤を含有する化学増幅型のポジ型またはネガ型レジスト等を挙げることができる。
本発明の上層膜を用いる場合、特にポジ型レジストが好ましい。化学増幅型ポジ型レジストにおいては、露光により酸発生剤から発生した酸の作用によって、重合体中の酸解離性有機基が解離して、例えばカルボキシル基を生じ、その結果、レジストの露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が高くなり、該露光部がアルカリ現像液によって溶解、除去され、ポジ型のレジストパターンが得られる。
フォトレジスト膜は、フォトレジスト膜を形成するための樹脂を適当な溶媒中に、例えば0.1〜20重量%の固形分濃度で溶解したのち、例えば孔径30nm程度のフィルターでろ過して溶液を調製し、このレジスト溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布方法により基板上に塗布し、予備焼成(以下、「PB」という。)して溶媒を揮発することにより形成する。なお、この場合、市販のレジスト溶液をそのまま使用できる。
【0038】
該フォトレジスト膜に上記上層膜形成組成物を用いて上層膜を形成する工程は、フォトレジスト膜上に本発明の上層膜形成組成物を塗布し、通常、再度焼成することにより、本発明の上層膜を形成する工程である。この工程は、フォトレジスト膜を保護することと、フォトレジスト膜より液体へレジスト中に含有する成分が溶出することにより生じる投影露光装置のレンズの汚染を防止する目的で上層膜を形成する工程である。
上層膜の厚さはλ/4m(λは放射線の波長、mは上層膜の屈折率)の奇数倍に近いほど、レジスト膜の上側界面における反射抑制効果が大きくなる。このため、上層膜の厚さをこの値に近づけることが好ましい。なお、本発明においては、レジスト溶液塗布後の予備焼成および上層膜形成組成物溶液塗布後の焼成のいずれかの処理は、工程簡略化のため省略してもよい。
【0039】
該フォトレジスト膜および上層膜に、例えば、水を媒体として、所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射し、ついで現像することにより、レジストパターンを形成する工程は、液浸露光を行ない、所定の温度で焼成を行なった後に現像する工程である。
フォトレジスト膜および上層膜間に満たされる水はpHを調整することもできる。特に純水が好ましい。
液浸露光に用いられる放射線は、使用されるフォトレジスト膜およびフォトレジスト膜と液浸用上層膜との組み合わせに応じて、例えば可視光線;g線、i線等の紫外線;エキシマレーザ等の遠紫外線;シンクロトロン放射線等のX線;電子線等の荷電粒子線の如き各種放射線を選択使用することができる。特にArFエキシマレーザ(波長193nm)あるいはKrFエキシマレーザ(波長248nm)が好ましい。
また、レジスト膜の解像度、パターン形状、現像性等を向上させるために、露光後に焼成(以下、「PEB」という。)を行なうことが好ましい。その焼成温度は、使用されるレジスト等によって適宜調節されるが、通常、30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃である。
ついでフォトレジスト膜を現像液で現像し、洗浄して、所望のレジストパターンを形成する。この場合、本発明の上層膜は別途剥離工程に付する必要はなく、現像中あるいは現像後の洗浄中に完全に除去される。これが本発明の重要な特徴の1つである。
【0040】
本発明におけるレジストパターンの形成に際して使用される現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノナン等を溶解したアルカリ性水溶液を挙げることができる。また、これらの現像液には、水溶性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加することもできる。上記アルカリ性水溶液を用いて現像した場合は、通常、現像後水洗する。
【実施例】
【0041】
実施例1〜実施例46、および比較例1〜比較例2
表1に示す割合で各共重合体を以下に示す方法により合成した。なお、各共重合体のMwおよびMnは、東ソー(株)製高速GPC装置(型式「HLC−8120」)に東ソー(株)製のGPCカラム(商品名「G2000HXL」;2本、「G3000HXL」;1本、「G4000HXL」;1本)を用い、流量1.0 ml/分、溶出溶剤テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。また、共重合体の各繰返し単位の割合は、13C NMRにより測定した。
【0042】
各共重合体の合成に用いた単量体を式(M−1)〜(M−15)、(S−1)〜(S−4)として以下に表す。
【化6】

上記単量体において、式(M−1)および(M−2)が繰返し単位IAを生成する単量体であり、式(M−3)が繰返し単位IBを生成する単量体であり、式(M−4)が繰返し単位ICを生成する単量体であり、式(S−1)〜(S−4)が繰返し単位IIを生成する単量体であり、式(M−5)〜(M−15)が繰返し単位IIIを生成する単量体である。
【0043】
表1に示す仕込みモル%となる重量の単量体および開始剤(2,2'−アゾビス−(2−メチルプロピオン酸メチル))を200gのイソプロパノールに溶解した単量体溶液を準備した。仕込み時の単量体の合計量は100gに調製した。
温度計および滴下漏斗を備えた1500mlの三つ口フラスコにイソプロパノール100gを加え、30分間窒素パージを行なった。フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら、80℃になるように加熱した。滴下漏斗に先ほど準備した単量体溶液を加え、3時間かけて滴下した。滴下終了後さらに3時間反応を続け、30℃以下になるまで冷却して共重合液を得た。
但し、実施例4の共重合体(A−4)および実施例16の共重合体(A−16)の合成時には、イソプロパノール100gの代わりに、イソプロパノール90gと/水10gの混合溶剤を使用した。
【表1】

【0044】
得られた各共重合体の中で、実施例1〜実施例12の各共重合体(A−1〜A−12)、実施例14〜実施例46の各共重合体(A−14〜A−46)については「後処理法(1)」、実施例13〜実施例22の各共重合体(A−13〜A−22)、比較例の共重合体(C−1)および(C−2)については「後処理法(2)」の方法により後処理を行なった。それぞれの方法を以下に示す。
後処理法(1)
上記共重合液を、200gになるまで濃縮し、メタノール200gとn−ヘプタン1600gとともに分液漏斗に移し、十分攪拌した後下層を分離した。その下層、メタノール200gとn−ヘプタン1600gを混合し分液漏斗に移し、下層を分離した。ここで得た下層を4−メチル−2−ペンタノールに溶剤置換を行なった。溶剤置換を行なった試料の固形分濃度は、樹脂溶液0.3gをアルミ皿に載せ140℃に加熱したホットプレート上で2時間加熱を行なったときの残渣の重量から算出し、その後の上層膜溶液調製と収率計算に利用した。得られた共重合体のMw、Mw/Mn(分子量の分散度)、収率(重量%)、および共重合体中の各繰返し単位の割合を測定した。結果を表2に示す。
後処理法(2)
上記共重合液を、攪拌している3000gのn−ヘプタンに20分かけて滴下を行ない、さらに1時間攪拌を続けた。得られたスラリー溶液をブフナー漏斗でろ過し、得られた白色粉末を600gのn−ヘプタンに加え攪拌し、スラリー溶液を調製し、再度ブフナー漏斗にてろ過を行なった。得られた粉末を50℃に設定した真空乾燥機で24時間乾燥を行なった。得られた共重合体のMw、Mw/Mn(分子量の分散度)、収率(重量%)、および共重合体中の各繰返し単位の割合を測定した。結果を表2に示す。
【表2】

【0045】
実施例47〜実施例92、および比較例3〜比較例5
液浸用上層膜形成組成物を上記実施例で得られた共重合体を用いて作製した。表2に示す共重合体の固形分1gに対して、表3に示す溶媒99gの比率になるように溶媒を加え2時間攪拌した後、孔径200nmのフィルターでろ過して溶液を調製した。なお、表3において、Bはn−ブタノールを、4M2Pは4−メチル−2−ペンタノールをそれぞれ表す。表3において混合溶媒の場合の溶媒比は重量比を表す。
得られた上層膜形成組成物の評価を次に示す方法で行なった。結果を表3に示す。なお、比較例5は参照例として示したもので、上層膜を用いないでパターニング評価を行なった例である。
(1)溶解性の評価方法(溶解性)
実施例47〜92および比較例3〜5については、表3に示す溶媒99gに該上層膜用樹脂となる共重合体1gを加え、スリーワンモーターを使用して100rpm、3時間攪拌した。なお、実施例1〜12で得られた共重合体は、その共重合体溶液を100℃で24時間乾燥して乾固したものを使用した。その後、共重合体と溶媒との混合物が均一な溶液となっていれば溶解性が良好であると判断して「○」、溶け残りや白濁が見られれば溶解性が乏しいとして「×」とした。
【0046】
(2)上層膜除去性の評価方法(除去性)
CLEAN TRACK ACT8(東京エレクトロン(株))にて8インチシリコンウェハ上に上記上層膜をスピンコート、90℃、60秒ベークを行ない、膜厚32nmの塗膜を形成した。膜厚はラムダエースVM90(大日本スクリーン(株))を用いて測定した。本塗膜をCLEAN TRACK ACT8で60秒間パドル現像(現像液2.38%TMAH水溶液)を行ない、振り切りによりスピンドライした後、ウェハ表面を観察した。このとき、残渣がなく現像されていれば、除去性「○」、残渣が観察されれば「×」とした。
(3)インターミキシングの評価方法(インターミキシング)
予めHMDS処理(100℃、60秒)を行なった8インチシリコンウェハ上にJSR ArF AR1221Jをスピンコート、ホットプレート上で90℃、60秒PBを行ない所定膜厚(300nm)の塗膜を形成した。本塗膜上に、上記液浸用上層膜組成物をスピンコート、PB(90℃、60秒)により膜厚32nmの塗膜を形成した後、CLEAN TRACK ACT8のリンスノズルより超純水をウェハ上に60秒間吐出させ、4000rpmで15秒間振り切りによりスピンドライを行ない、ついで同CLEAN TRACK ACT8でLDノズルにてパドル現像を60秒間行ない、上記上層膜を除去した。なお、この現像工程では現像液として2.38%TMAH水溶液を使用した。液浸用塗膜は、現像工程により除去されるが、レジスト塗膜は未露光であり、そのまま残存する。当工程の前後にてラムダエースVM90(大日本スクリーン(株))で膜厚測定を行ない、レジスト膜厚の変化が0.5%以内であれば、レジスト塗膜と液浸用上層膜間でのインターミキシングが無いと判断して「○」、0.5%をこえたときは「×」とした。
【0047】
(4)液浸用上層膜組成物の水への安定性評価(耐水性)
8インチシリコンウェハ上にスピンコート、PB(90℃、60秒)により液浸用上層膜組成物の塗膜(膜厚30nm)を形成し、ラムダエースVM90で膜厚測定を行なった。同基板上に、CLEAN TRACK ACT8のリンスノズルより超純水をウェハ上に60秒間吐出させた後、4000rpmで15秒間振り切りによりスピンドライした。この基板を、再び膜厚測定した。このときの膜厚の減少量が初期膜厚の3%以内であれば、安定と判断して「○」、3%をこえれば「×」とした。
【0048】
(5)パターンニング評価1
上記上層膜を使用したレジストのパターニングの評価方法を記す。
8インチシリコンウェハ上に下層反射防止膜ARC29A(ブルワーサイエンス社製)をスピンコートにより膜厚77nm(PB205℃、60秒)で塗膜を形成した後、JSR ArF AR1221Jのパターニングを実施した。AR1221Jは、スピンコート、PB(130℃、90秒)により膜厚205nmとして塗布し、PB後に本上層膜をスピンコート、PB(90℃、60秒)により膜厚32nmの塗膜を形成した。ついで、ArF投影露光装置S306C(ニコン(株))で、NA:0.78、シグマ:0.85、2/3Annの光学条件にて露光を行ない、CLEAN TRACK ACT8のリンスノズルより超純水をウェハ上に60秒間吐出させた後、4000rpmで15秒間振り切りによりスピンドライした。その後、CLEAN TRACK ACT8ホットプレートにてPEB(130℃、90秒)を行ない、同CLEAN TRACK ACT8のLDノズルにてパドル現像(60秒間)、超純水にてリンス、ついで4000rpmで15秒間振り切りによりスピンドライした。
本基板を走査型電子顕微鏡(日立計測器(株)製S−9360)で90nmライン・アンド・スペースのパターンを観察し、線幅が90nmになる露光量を最適露光量とした。この最適露光量において解像しているライン・アンド・スペースパターンの最小寸法を解像度とした。その結果を表3に示した。また、90nmライン・アンド・スペースパターンの断面形状を観察した。図1はライン・アンド・スペースパターンの断面形状である。基板1上に形成されたパターン2の膜の中間での線幅Lbと、膜の上部での線幅Laを測り、0.9<=(La−Lb)/Lb<=1.1の時を「矩形」、(La−Lb)/Lb<0.9の時を「テーパー」、(La−Lb)/Lb>1.1の時を「頭張り」として評価した。
なお、実施例5の場合は、AR1221Jをスピンコート、PB(130℃、90秒)により膜厚205nmとして塗布した後、上層膜を形成することなく、上記と同様にしてパターンニング評価を行なった。
(6)パターンニング評価2
上記上層膜を使用したレジストのパターニングの評価方法を記す。
8インチシリコンウェハ上に下層反射防止膜ARC29A(ブルワーサイエンス社製)をスピンコートにより膜厚77nm(PB205℃、60秒)で塗膜を形成した後、JSR ArF AR1682Jのパターニングを実施した。AR1682Jは、スピンコート、PB(110℃、90秒)により膜厚205nmとして塗布し、PB後に本上層膜をスピンコート、PB(90℃、60秒)により膜厚32nmの塗膜を形成した。ついで、ArF投影露光装置S306C(ニコン(株))で、NA:0.78、シグマ:0.85、2/3Annの光学条件にて露光を行ない、CLEAN TRACK ACT8のリンスノズルより超純水をウェハ上に60秒間吐出させた後、4000rpmで15秒間振り切りによりスピンドライした。その後、CLEAN TRACK ACT8ホットプレートにてPEB(110℃、90秒)を行ない、同CLEAN TRACK ACT8のLDノズルにてパドル現像(60秒間)、超純水にてリンス、ついで4000rpmで15秒間振り切りによりスピンドライした。
本基板を走査型電子顕微鏡(日立計測器(株)製S−9360)で90nmライン・アンド・スペースのパターンを観察し、線幅が90nmになる露光量を最適露光量とした。この最適露光量に於いて解像しているライン・アンド・スペースパターンの最小寸法を解像度とした。その結果を表3に示した。また、図1に示すように、90nmライン・アンド・スペースパターンの断面形状を観察し、膜の中間での線幅Lbと、膜の上部での線幅Laを測り、0.9<=(La−Lb)/Lb<=1.1の時を「矩形」、(La−Lb)/Lb<0.9の時を「テーパー」、(La−Lb)/Lb>1.1の時を「頭張り」として評価した。
なお、実施例5の場合は、AR1682Jをスピンコート、PB(110℃、90秒)により膜厚205nmとして塗布した後、上層膜を形成することなく、上記と同様にしてパターンニング評価を行なった。
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0049】
上述した本発明の共重合体は、1価アルコールを含む溶媒に溶解すると共に、アルカリ性現像液に溶解するので、フォトレジスト膜に容易に塗布することができ、その上層膜は液浸露光時に、特に水を媒体とする液浸露光時に、レンズおよびレジストを保護し、解像度、現像性等にも優れたレジストパターンを形成できる上層膜形成組成物が得られる。そのため、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの製造に極めて好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 基板
2 パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される基を有する繰返し単位、下記式(2)で表される基を有する繰返し単位、およびカルボキシル基を有する繰返し単位から選ばれる少なくとも1つの繰返し単位(I)と、スルホ基を有する繰返し単位(II)とを含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法により測定される重量平均分子量が2,000〜100,000であることを特徴とする共重合体。
【化1】

(式(1)においてR1およびR2は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のフッ素化アルキル基を表し、R1およびR2の少なくとも一方は炭素数1〜4のフッ素化アルキル基であり、
式(2)においてR3は、炭素数1〜20のフッ素化アルキル基を表す。)
【請求項2】
スルホ基を有する繰返し単位(II)を生成する単量体が下記式(3)で表されることを特徴とする請求項1記載の共重合体。
【化2】

(Rは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、またはトリフルオロメチル基を表し、Aは、単結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基を表し、Bは、単結合、炭素数1〜20の2価の有機基を表す。)
【請求項3】
前記式(1)で表される基を有する繰返し単位が下記式(1a)で表されることを特徴とする請求項1記載の共重合体。
【化3】

(式(1a)においてRは式(3)のRと同一であり、R4は2価の炭化水素基を表す。)
【請求項4】
前記式(2)で表される基を有する繰返し単位が下記式(2a)で表されることを特徴とする請求項1記載の共重合体。
【化4】

(式(2a)においてRは式(3)のRと同一であり、R3は式(2)のR3と同一である。R4はエチレン基を表す。)
【請求項5】
前記式(3)が、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、および4−ビニル−1−ベンゼンスルホン酸から選ばれる少なくとも1つの繰返し単位であることを特徴とする請求項2記載の共重合体。
【請求項6】
共重合体の配合割合は、[(前記式(1)で表される基を有する繰返し単位(IA)のモル%)÷60]+[(前記式(2)で表される基を有する繰返し単位(IB)のモル%)÷40]+[(カルボキシル基を有する繰返し単位(IC)のモル%)÷25]の値が0.7以上の関係を満たすことを特徴とする請求項1または請求項2記載の共重合体。
【請求項7】
放射線照射によりパターンを形成するためのフォトレジスト膜に被覆される上層膜形成組成物であって、
該組成物は、現像液に溶解する樹脂が1価アルコールを含む溶媒に溶解されてなり、その樹脂が請求項1または請求項2記載の共重合体であることを特徴とする上層膜形成組成物。
【請求項8】
前記溶媒は、炭素数4〜8の1価アルコールであることを特徴とする請求項7記載の上層膜形成組成物。
【請求項9】
放射線照射によりパターンを形成するためのフォトレジスト膜に被覆される上層膜形成組成物であって、
該組成物は、液浸用上層膜形成組成物であることを特徴とする請求項7記載の上層膜形成組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−144734(P2012−144734A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−55325(P2012−55325)
【出願日】平成24年3月13日(2012.3.13)
【分割の表示】特願2006−537763(P2006−537763)の分割
【原出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】