説明

共重合体の単分子膜または積層膜およびそれらの製造方法

【課題】レジスト材料などに有用な単分子膜およびそれらが複数積層した積層膜を提供する。
【解決手段】 シルセスキオキサン誘導体からなるアクリル系又はスチレン系付加重合性単量体と一般式(B)で表される付加重合性単量体との共重合体の単分子膜を基板に被覆することによって、単分子膜、または積層膜を得る。


(一般式(B)において、Rbは水素もしくはメチルを表し、Z2は−NH−であり、nは2〜20の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体の単分子膜または該単分子膜を累積させることにより得られる積層膜に関し、具体的には、シルセスキオキサン骨格を有する繰り返し単位を含む共重合体の単分子膜、またはこれを累積することにより得られる積層膜、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料に要求されるニーズの多様化・高度化に伴い、様々な種類の高機能材料が開発されている。特に、安定性、物理的強度、均一性に優れた表面を有する薄膜はレジスト材料などへの展開が期待されている。
そして、薄膜の製造方法として、分子配列が明確で、ナノレベルで膜厚をコントロールできる薄膜が得られるラングミュア・ブロジェット法(以下、「LB法」と略称し、この方法で作製された薄膜を「LB膜」という。)が知られている。
薄膜の製造方法としては、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミドまたはその共重合体を用いたLB法が研究されている(特許文献1または2)。
しかしながら、これらの文献で開示されている薄膜については安定性、物理的強度、均一性などの面で改善の余地があった。
一方、特許文献3では付加重合性官能基を有するシルセスキオキサン誘導体が開示されているが、このシルセスキオキサン誘導体を原料にして単分子膜または積層膜を得ることは試みられていなかった。
【特許文献1】特開昭62−260140号公報
【特許文献2】特開平9−302041号公報
【特許文献3】特開2004−123698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、レジスト材料などとして有用な、熱安定性、物理的強度、均一性などに優れた単分子膜およびそれらが複数積層した積層膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、1つの付加重合性官能基を含むシルセスキオキサンと他の付加重合性単量体を含有する共重合体を用いた単分子膜、およびこれを累積することにより得られる積層膜を作製することに成功し、これらの膜が熱安定性、物理的強度、均一性などに優れていることを見出して本発明を完成させた。
【0005】
本発明は以下のとおりである。
[1] 一般式(a1)および/または(a2)
【化1】

(式中、Raは水素もしくはメチルを表し、Z1は−NH−、−O−もしくは−S−を表し、mは2〜20の整数であり、R1〜R7はそれぞれ独立して、任意のメチレンが酸素で置き換えられていてもよい炭素数1〜20のアルキル、任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよい炭素数6〜20のアリール、または、アリールにおける任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよい炭素数7〜20のアリールアルキルを表し、Yは単結合または炭素数1〜10のアルキレンを表す。)で表される繰り返し単位1と、
一般式(b)
【化2】

(式中、Rbは水素もしくはメチルを表し、Z2は−NH−を表し、nは2〜20の整数である。)で表される繰り返し単位2を含有する共重合体の単分子膜、または該単分子膜を累積することにより得られる積層膜。
[2] 一般式(a1)において、Raは水素もしくはメチルを表し、Z1は−NH−もしくは−O−を表し、mは2〜10の整数を表し、一般式(a2)において、Yは単結合または炭素数1〜10のアルキレンを表し、一般式(a1)および(a2)において、R1〜R7はそれぞれ独立して、任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよい炭素数6〜20のアリールを表す、[1]に記載の単分子膜または積層膜。
[3] 一般式(a1)において、Raはメチルを表し、Z1は−O−であり、mは2〜10の整数を表し、一般式(a2)において、Yは単結合またはエチレンを表し、一般式(a1)および(a2)において、R1〜R7はそれぞれ独立して、フェニル、4-メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−プロピルフェニルまたはナフチルを表す、[1]に記載の単分子膜または積層膜。
[4] 一般式(b)において、Rbは水素を表し、Z2は−NH−を表し、nは8〜14の整数である、[1]〜[3]のいずれかに記載の単分子膜または積層膜。
[5] 繰り返し単位1と繰り返し単位2とのモル比が0.01:99.99〜99.
99:0.01である、[1]〜[4]のいずれかに記載の単分子膜または積層膜。
[6] 共重合体の重量平均分子量が5,000〜200,000である、[1]〜[5]のいずれかに記載の単分子膜または積層膜。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の単分子膜または積層膜が被覆された基板。
[8] 一般式(A)で表される付加重合性官能基を含むシルセスキオキサンと一般式(B)で表される付加重合性単量体との共重合体の単分子膜を基板に被覆することを特徴とする、単分子膜、または該単分子膜を累積することにより得られる積層膜の製造方法。
【化3】

(一般式(A)において、
1〜R7はそれぞれ独立して、任意のメチレンが酸素で置き換えられていてもよい、炭素数1〜20のアルキル、任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよい炭素数6〜20のアリール、またはアリールにおける任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよい炭素数7〜20のアリールアルキルを表し、A1は、付加重合性官能基を示す。)
で表される化合物であり、
【化4】

(一般式(B)において、Rbは水素もしくはメチルを表し、Z2は−NH−であり、nは2〜20の整数である。)
[9] 一般式(A)において、R1〜R7は任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよい炭素数6〜20のアリールを表す、[8]に記載の方法。
[10] 一般式(A)において、R1〜R7はそれぞれ独立して、フェニル、4-メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−プロピルフェニルまたはナフチルを表す、[8]に記載の方法。
[11] 一般式(B)において、Rbは水素を表し、Z2は−NH−を表し、nは8〜14の整数である、[8]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12] 一般式(A)で表される付加重合性官能基を含むシルセスキオキサンと一般式(B)で表される付加重合性単量体とのモル比が0.01:99.99〜99.99:0.01である、[8]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[13] 共重合体の重量平均分子量が5,000〜200,000である、[8]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14] 単分子膜がラングミュア・ブロジェット法によって基板に被覆される、[8
]〜[13]のいずれかに記載の方法。
[15] 前記一般式(A)で表される付加重合性官能基を含むシルセスキオキサンが一般式(A1)または(A2)
【化5】

(Raは水素またはメチルを表し、Z1は−NH−、−O−もしくは−S−であり、mは2〜10の整数であり、Yは単結合または炭素数1〜10のアルキレンを表し、R1〜R7は一般式(A)と同様に定義される基である。)で表されるシルセスキオキサンである、[8]に記載の方法。
[16] [8]〜[15]のいずれかに記載の方法によって得られた単分子膜または積層膜。
[17] [1]〜[6]のいずれかに記載の積層膜からなるレジスト材料。
【発明の効果】
【0006】
本発明の単分子膜およびそれらが複数積層した積層膜は熱安定性、物理的強度、均一性などに優れており、Deep UV照射などによってパターンを形成することで、レジスト材料として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
1 本発明の単分子膜または積層膜に用いられる共重合体
本発明の単分子膜または積層膜に用いられる共重合体(以下、「本発明の共重合体」ともいう)は、1つの付加重合性官能基を含むシルセスキオキサンと他の付加重合性単量体とを重合させて得ることができる。
共重合体はブロック共重合などの定序性共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよいが、好ましくはランダム共重合体である。また、本発明の重合体は架橋構造を有していたり、グラフト共重合体であってもよい。
【0008】
1.1 1つの付加重合性官能基を含むシルセスキオキサン
1つの付加重合性官能基を含むシルセスキオキサンは、具体的には、一般式(A)で表される化合物である。
【化6】

【0009】
式(A)において、R1〜R7がそれぞれ独立して、任意のメチレンが酸素で置き換えられていてもよい炭素数1〜20のアルキル、任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよい炭素数6〜20のアリール、または、アリールにおける任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよい炭素数7〜20のアリールアルキルを表し、好ましくは、R1〜R7がそれぞれ独立して、任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよい炭素数6〜20のアリールを表す。
【0010】
任意のメチレンが酸素で置き換えられていてもよい炭素数1〜20のアルキルの例はメチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、ヘキシル、1,1,2−トリメチルプロピル、ヘプチル、オクチル、2,4,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、3−メトキシプロピルなどである。
【0011】
Rが任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよい炭素数6〜20のアリールである場合の好ましい例は、非置換のフェニル、非置換のナフチル、非置換のアルキルフェニルなどである。
アルキルフェニルの例は、4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−プロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−ペンチルフェニル、4−ヘプチルフェニル、4−オクチルフェニル、4−ノニルフェニル、4−デシルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,4,6−トリエチルフェニル、4−(1−メチルエチル)フェニル、4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、2,4,6−トリス(1−メチルエチル)フェニルなどである。
【0012】
アリールにおける任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよいアリールアルキルの好ましい例はフェニルアルキルまたはベンゼン環の任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられたフェニルアルキルである。
フェニルアルキルの例は、フェニルメチル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル、6−フェニルヘキシル、11−フェニルウンデシル、1−フェニルエチル、2−フェニルプロピル、1−メチル−2−フェニルエチル、1−フェニルプロピル、3−フェニルブチル、1−メチル−3−フェニルプロピル、2−フェニルブチル、2−メチル−2−フェニルプロピル、1−フェニルヘキシルなどである。
ベンゼン環の任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられたフェニルアルキルの例は、2−メチルフェニルメチル、3−メチルフェニルメチル、4−メチルフェニルメチル、4−ドデシルフェニルメチル、2,5−ジメチルフェニルメチル、2−(4−メチルフェニル)エチル、2−(3−メチルフェニル)エチル、2−(2,5ジメチルフェニル)エチル、2−(4−エチルフェニル)エチル、2−(3−エチルフェニル)エチル、1−(4−メチルフェニル)エチル、1−(3−メチルフェニル)エチル、1−(2−メ
チルフェニル)エチル、2−(4−メチルフェニル)プロピル、2−(2−メチルフェニル)プロピル、2−(4−エチルフェニル)プロピル、2−(2−エチルフェニル)プロピル、2−(2,3−ジメチルフェニル)プロピル、2−(2,5−ジメチルフェニル)プロピル、2−(3,5−ジメチルフェニル)プロピル、2−(2,4−ジメチルフェニル)プロピル、2−(3,4−ジメチルフェニル)プロピル、2−(2,5−ジメチルフェニル)ブチル、4−(1−メチルエチル)フェニルメチル、2−(4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル)エチル、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)プロピル、2−(3−(1−メチルエチル)フェニル)プロピルなどである。
【0013】
特に好ましくは、R1〜R7がそれぞれ独立して、フェニル、4-メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−プロピルフェニルまたはナフチルである。
【0014】
式(A)において、A1は付加重合性官能基である。
付加重合性官能基の例としては、末端オレフィン型または内部オレフィン型のラジカル重合性官能基を有する基;ビニルエーテル、プロペニルエーテルなどのカチオン重合性官能基を有する基;およびビニルカルボキシル、シアノアクリロイルなどのアニオン重合性官能基を有する基が含まれるが、好ましくはラジカル重合性官能基が挙げられる。
【0015】
上記のラジカル重合性官能基には、ラジカル重合する基であれば特に制限はなく、例えばメタクリロイル、アクリロイル、アリル、スチリル、α-メチルスチリル、ビニル、ビニルエーテル、ビニルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルアミド、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、N-置換マレイミドなどが含まれ、中でも(メタ)アクリルまたはスチリルを含む基が好ましい。ここに(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルの総称であり、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。以下、同様とする。
【0016】
式(A)において、A1が、式(I)または(II)で示されるいずれかであることが特に好ましい。
【化7】

式(I)において、mが2〜20の整数を表し、Z1が−NH−、−O−もしくは−S−を表し、Raが水素またはメチルを表す。
式(I)において、mが炭素数2〜6であることが好ましく、3であることが特に好ましい。Raがメチルを表すことがより好ましい。Z1が−O−を表すことがより好ましい。
すなわち、式(I)では、m=3、Raがメチル、Z1が−O−であることが特に好ましい。
【0017】
【化8】

式(II)において、Yが単結合または炭素数1〜10のアルキレンを表す。
式(II)において、Yが単結合または炭素数1〜6のアルキレンを示すことが好ましく、単結合またはエチレンを表すことがさらに好ましい。
【0018】
式(A)におけるA1が、式(I)または(II)である場合、式(A)は(A1)または(A2)で表される。
このような化合物は、例えば、特開2004−123698に記載された方法に従って合成することができる。すなわち、(A1)は特開2004−123698の実施例3に記載の方法によって合成することができ、(A2)も特開2004−123698の実施例2の(1−1)の化合物にビニルフェニルトリクロロシランまたはビニルフェニルアルキルトリクロロシランを反応させることによって得ることができる。
【化9】

【0019】
1.2 付加重合性単量体
付加重合性単量体は特に限定されるものではないが、一般式(B)で表される化合物が好ましい。
【化10】

【0020】
一般式(B)の式中、Rbは水素またはメチルを表し、Z2は−NH−を表し、nは2〜20の整数である。Rbは水素であることが好ましく、nは8〜14の整数であることがさらに好ましい。
【0021】
一般式(A)で表される付加重合性官能基を含むシルセスキオキサンと一般式(B)で表される付加重合性単量体とのモル比は目的とする重合体に応じて適宜決定すればよいが0.01:99.99〜99.99:0.01であることが好ましく、0.01:99.99〜10.00:90.00であることがさらに好ましい。また、共重合体の重量平均分子量が5,000〜200,000であることが好ましく、5,000〜100,000であることがさらに好ましい。
【0022】
本発明の共重合体として好ましくは、上記式(A1)の化合物および/または(A2)の化合物と上記式(B)の化合物を反応させることによって得られる、一般式(a1)および/または(a2)で表される繰り返し単位1と、一般式(b)で表される繰り返し単位2を含有する共重合体が挙げられる。
【化11】

なお、式(a1)における、m、Ra、Z1は、それぞれ上記式(I)における、m、Ra、Z1と同様に定義され、好ましい値および基も同様である。
式(a2)における、Yは、上記式(II)におけるYと同様に定義され、好ましい基も同様である。
式(a1)および(a2)におけるR1〜R7は、上記式(A)におけるR1〜R7と同様に定義され、好ましい基も同様である。
また、式(b)におけるn、Rb、Z2は上記式(B)におけるn、Rb、Z2と同様に定義され、好ましい値および基も同様である。
【0023】
繰り返し単位1と繰り返し単位2とのモル比は目的とする重合体に応じて適宜決定すればよいが0.01:99.99〜99.99:0.01であることが好ましく、0.01:99.99〜10.00:90.00であることがさらに好ましい。また、共重合体の重量平均分子量が5,000〜200,000であることが好ましく、5,000〜100,000であることがさらに好ましい。
【0024】
1.3 重合反応
重合は、重合開始剤を用いて行うことができる。
重合開始剤の例には、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-ブチロニトリル)、ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)などのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテー
ト、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエートなどの過酸化物;およびテトラエチルチウラムジスルフィドなどのジチオカルバメート;などのラジカル重合開始剤が含まれる。
【0025】
さらに重合開始剤の例には、リビングラジカル重合開始剤、および光重合開始剤などが含まれる。
リビングラジカル重合は、原子移動ラジカル重合;可逆的付加開裂連鎖移動;ヨウ素移動重合;イニファータ重合に代表され、以下の先行文献A〜Cに記載されている重合開始剤を用いて行うことができる。
・文献A: 蒲池幹治、遠藤剛監修、ラジカル重合ハンドブック、1999年8月10日発行、エヌ・ティー・エス発行)。
・文献B: HANDBOOK OF RADICAL POLYMERIZATION, K. Matyjaszewski, T. P. Davis, Eds., John Wiley and Sons, Canada 2002
・文献C: 特開2005-105265号公報
【0026】
光重合は、文献D(フォトポリマー懇話会編、感光材料リストブック、1996年3月31日、ぶんしん出版発行)に記載の化合物を光重合開始剤として用いて行うことができる。
光重合開始剤の具体例としては、紫外線や可視光線の照射によりラジカルを発生する化合物であれば特に限定しない。光重合開始剤として用いられる化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4′-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-エチルアントラキノン、アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-4′-イソプロピルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1,4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4′-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4′-トリ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2-(4′-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3′,4′-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2′,4′-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2′-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4′-ペンチルオキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-[p-N,N-ジ(エトキシカルボニルメチル)]-2,6-ジ(トリクロロメチル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(2′-クロロフェニル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(4′-メトキシフェニル)-s-トリアジン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、3,3′-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、2-(o-クロロフェニル)-4,4′,5,5′-テトラフェニル-1,2′-ビイミダゾール、2,2′-ビス(2-クロロフェニル)-4,4′,5,5′-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2′-ビイミダゾール、2,2′-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4′,5,5′-テトラフェニル-1,2′-ビイミダゾール、2,2′-ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4′,5,5′-テトラフェニル-1,2′-ビイミダゾール、2,2′-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4′,5,5′-テトラフェニル-1,2′-ビイミダゾール、3-(2-メチル-2-ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-n-ドデシルカルバゾール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェ
ニルケトン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、等である。これらの化合物は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用することも有効である。3,3′,4,4′-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′-テトラ(t-ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′-ジ(メトキシカルボニル)-4,4′-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4′-ジ(メトキシカルボニル)-4,3′-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4′-ジ(メトキシカルボニル)-3,3′-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが好ましい。
【0027】
重合において用いられる重合開始剤の量は、単量体の総モル数に対して0.01〜10モル%とすればよい。
【0028】
また前記重合において、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤を用いることで、分子量を適切に制御することができる。連鎖移動剤の例には、チオ-β-ナフトール、チオフェノール、n-ブチルメルカプタン、エチルチオグリコレート、メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、イソプロピルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ドデカンチオール、チオリンゴ酸、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトアセテート)などのメルカプタン類;ジフェニルジサルファイド、ジエチルジチオグリコレート、ジエチルジサルファイドなどのジサルファイド類;などのほか、トルエン、メチルイソブチレート、四塩化炭素、イソプロピルベンゼン、ジエチルケトン、クロロホルム、エチルベンゼン、塩化ブチル、s-ブチルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、塩化プロピレン、メチルクロロホルム、t-ブチルベンゼン、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、酢酸、酢酸エチル、アセトン、ジオキサン、四塩化エタン、クロロベンゼン、メチルシクロヘキサン、t−ブチルアルコール、ベンゼンなどが含まれる。
連鎖移動剤は、好ましくはメルカプタン類である。特にメルカプト酢酸は、重合体の分子量を下げて、分子量分布を均一にさせ得る。連鎖移動剤は単独でも、または2種以上を混合しても使用することができる。
【0029】
本発明の重合体の具体的な製造方法は、通常の付加重合体の製造方法と同様にすればよく、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、塊状−懸濁重合法、超臨界CO2を用いた重合法を用いることができる。
溶液重合法による場合には、適切な溶剤中に、シルセスキオキサン(A1)および/または(A2)、ならびに必要に応じて単量体(B)、さらに重合開始剤、および連鎖移動剤などを溶解して、加熱または光を照射して付加重合反応させればよい。
【0030】
重合反応に用いられる溶剤の例には、炭化水素系溶剤(ベンゼン、トルエンなど)、エーテル系溶剤(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼンなど)、ハロゲン化炭化水素系溶剤(塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなど)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、アルコール系溶剤(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、t-ブチルアルコールなど)、ニトリル系溶剤(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、カーボネート系溶剤(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、アミド系溶剤(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、ハイドロクロロフルオロカーボン系溶剤(HCFC−141b、HCFC−225)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)系溶剤(炭素数2〜4、5および6以上のHFCs)、パーフルオロカーボン系溶剤(パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン)、脂環式ハイドロフルオロカーボン系溶剤(フルオロシクロペンタン、フ
ルオロシクロブタン)、酸素含有フッ素系溶剤(フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロケトン、フルオロアルコール)、芳香族系フッ素溶剤(α,α,α-トリフルオロトルエン、ヘキサフルオロベンゼン)、水が含まれる。これらを単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
用いられる溶剤の量は、トータルの単量体の濃度を10〜80重量%とする量であればよい。
反応温度は特に制限されず、目安として0〜200℃であればよく、室温〜150℃が好ましい。重合反応は、単量体の種類や、溶剤の種類に応じて、減圧、常圧または加圧下で行うことができる。
【0031】
重合反応は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。発生したラジカルが酸素と接触して失活し、重合速度が低下するのを抑制し、分子量が適切に制御された重合体を得るためである。さらに重合反応は、減圧下で溶存酸素を除去された重合系内で行われることが好ましい(減圧下で溶存酸素を除去した後、そのまま減圧下において重合反応を行ってもよい)。
【0032】
溶液中に得られた重合体は、常法により精製または単離されてもよく、その溶液のまま塗膜形成などに用いられてもよい。
【0033】
2 単分子膜の製造
本発明において、1または複数の単分子膜が被覆された基板としては、たとえばシリコンウェーハ、ガリウムヒ素板、石英板、ガラス板、セラミック板、フッ化カルシウム板のような無機基板、および、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエステル、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、アセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド等の有機基板等が挙げられる。
【0034】
前処理等が行われていない基板に直接単分子膜を被覆して使用できるが、必要に応じて単分子膜の被覆前に基板表面を前処理することができる。たとえば、基板にシリコンウェーハを用いる場合には、該シリコン基板の表面をジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルシシラザン、オクチルトリクロロシラン等のシランカップリング剤で前処理してから用いることが好ましい。シラン処理は疎水処理と反応性官能基処理に分けられるが、基板の材質やその後に被覆される単分子膜の材質等によって、適宜選択することができる。また、基板にプラスチックを用いる場合には、クロロホルム等の溶剤で洗浄する前処理がなされることが好ましい。この洗浄は超音波洗浄が好ましい。
【0035】
前処理がなされた基板上に、本発明の共重合体の単分子膜を1層以上被覆して、本発明の基板が作製される。単分子膜は、好ましくはラングミュア・ブロジェット法(LB法)を用いて次のように被覆される。
【0036】
本発明の共重合体を溶剤に溶解し、この溶液を水面上に必要量滴下して水面上に単分子膜を形成する。
本発明の共重合体を溶解する溶剤は、該ポリマーを溶解し、かつ水面上に膜を形成した後に完全に蒸発し、膜表面に残らないものがよい。好ましい溶剤の例は、ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物、脂肪族炭化水素、エステル類等である。ハロゲン化炭化水素の具体例として、クロロホルム等が挙げられる。芳香族化合物の具体例として、トルエン等が挙げられる。脂肪族炭化水素の具体例として、ヘキサン等が挙げられる。エステル類の具体例として酢酸エチル等が挙げられる。また、単分子膜作成時の溶剤の蒸発速度の観点からハロゲン化炭化水素が好ましく、具体的にはクロロホルムが好適である。
【0037】
溶剤を完全に蒸発させた後、この単分子膜を、フッ素樹脂加工がなされたバー(テフロ
ン(登録商標)バー)を用いて一定速度で圧縮することにより、水面上に高分子鎖が密に充填した単分子膜を得る。本発明の共重合体を水面に展開すると、親水性の部分が水面に配置され、疎水系の部分が水面から垂直な方向に立ち上がる傾向がある。
【0038】
水面上に展開したランダム共重合体の表面圧を所定の値に保ちながら、単分子膜が基板に付着するように、前処理した基板を空気中から水中に所定の速度で降下させ、水中から空気中に所定の速度で上昇させる。これを繰り返して単分子膜を一層ずつ基板上に累積することによりLB膜を得る。この際、基板を上昇させたときのみ付着するLB膜を累積しても、基板を下降したときのみ付着するLB膜を累積してもよい。
【0039】
LB膜が形成されているか否かは、膜面積より算出される一分子あたりの占有面積と表面圧を測定することにより判断できる。被覆するときの膜の表面圧は、表面厚(π)−面積(A)曲線において、その膜が固体凝縮膜を形成している範囲の表面圧であればよい。良好な被覆を複数回行って多層累積した累積膜を形成するためには表面圧が10〜40mN/m、好ましくは25〜30mN/mを用いるのが好ましい。
【0040】
上記溶剤に溶解するポリマーの濃度は0.0001〜0.005mol/Lが好ましく、さらに0.01〜0.02mol/Lが好ましい。特に、ポリマーの濃度が0.005mol/L以下であれば、高分子凝集体を形成することなく、良好な単分子膜が得られるので好ましい。他方、ポリマーの濃度が0.0001mol/L以上であれば、水槽の汚染を防止できる。
【0041】
単分子膜を累積して被覆させる際、基板を上下させることにより基板の両側にLB膜を累積する。この操作を繰り返すことにより、累積膜を所望の厚さにすることができる。その厚さは1〜1000層であり、好ましくは2〜200層、さらに好ましくは、2〜500層である。また、異なる組成の単分子膜を累積して被覆してもよい。
【0042】
また、本発明の積層膜は以下のようにしてレジスト材料として用いることができる。
本発明の積層膜に直接或いはフォトマスクを用いて光を照射することにより,任意のパターンを描かせる。本発明の共重合体は紫外線領域にUV吸収があることから光源として紫外線,遠紫外線を用いることができる。具体的には、高圧水銀灯やキセノンランプを用いることができる。電子線照射の場合は直接描画により任意のパターンを描かせる。
【0043】
次いで露光を行った積層膜を有機溶剤に浸漬し現像する。必要が有ればこの後リンス液で溶剤を洗い、窒素ガス或いは乾燥空気で乾燥する。未露光部分は溶解し、露光部分は架橋が進みパターンが得られ、ネガレジストを得ることができる。ここで用いる有機溶剤にはクロロホルムやクロロベンゼンのようなハロゲン化炭化水素およびトルエンのような芳香族炭化水素とハロゲン化炭化水素との混合溶剤が好適である。混合溶剤のハロゲン化炭化水素の混合比率は容積%で5以上が好適である。現像時間は用いる現像液によって異なるが数10秒〜数分間を要する。
【0044】
本発明の積層膜は露光による未露光部と露光部との溶剤に対する溶解性が大きく異なるので鮮明なパターンを描かせる事ができる。且つ膨潤や基板との剥離は起こらないので良好なレジストとなる。
【0045】
このようにして本発明の積層膜に紫外線光または電子線で露光し、共重合体中の架橋グル−プが2次元的に架橋したネットワ−クポリマ−を形成し、溶剤不溶性の高分子超薄膜を得ることができることを利用して、紫外線光および電子線レジストを得ることができる。また、その他種々の光学素子、磁気ヘッド、等の保護膜、表面改質、種々の材料への表面コーティング、等への応用分野が可能である。
【実施例】
【0046】
実施例1
N-ドデシルアクリルアミドとシルセスキオキサンを有するコモノマーからなる共重合体の合成
N-ドデシルアクリルアミド(DDA)と、特開2004−123698の実施例3に記載の方法によって合成された式(1)で表されるシルセスキオキサン(SQ)とを90:10(モル比)で混合し、テトラヒドロフラン中、アゾビスイソブチロニトリルを開始剤(全体の1mol %)としてラジカル共重合(ラジカル重合時の反応温度 60℃、ラジカル重合の反応時間 12時間)させることで分子量 Mn=1.5x104, Mw/Mn=1.86の両親媒性共重合体p(DDA/SQ)(SQ導入率10mol%)を得た。
【化12】

【0047】
実施例2
p(DDA/SQ)LB膜の作製
実施例1で得られた共重合体をクロロホルムに溶解し、1mMの展開溶液を調製した。LB膜作製装置(協和界面科学(株)製「HBM」)にイオン交換樹脂により精製した純水を入れ、水温を19℃に保持した水面上に展開溶液を滴下し、高分子単分子膜を形成した。この単分子膜を表面圧30mN/mになるまで圧縮し、疎水処理した基板(CaF2、Si)を10mm/minの速度で上下することで基板上に累積を行った(40層)。累積に伴いp(DDA/SQ)LB膜由来の吸光度が線形的に増加することから、LB法によりシルセスキオキサンを含むハイブリットナノシートがナノレベルに均一に積層されていることが確認された。
【0048】
実施例3
p(DDA/SQ)LB膜へのdeep UV光照射によるSiO2超薄膜の作製
実施例2で得られたナノシートにDeep UV Lamp (50〜500mW/cm2)で光照射を行った。図1に光照射による吸収スペクトルの変化を示す。光照射によりドデシルアクリルアミドが分解蒸発し、ハイブリットナノシートの有機部の除去により吸収全体は減少し、広範囲において非常に透明な膜であることが確認された。
【0049】
実施例4
SiO2超薄膜の化学組成評価
図2に光照射によるFT−IRスペクトルの変化を示す。光照射に伴いアルキル鎖やベンゼン環に基づくC−H振動の減少したことから、図1のUV−Vis吸収同様、有機部の光分解が確認できた。さらに、光照射を進めるとケージ型シルセスキオキサンに基づくSi−O振動(1130cm-1)は減少し、ネットワーク構造のSi−Oに基づく1050cm-1での吸収の増加が確認できた。
さらに、これらのナノシートを用いXPS測定した結果を図3に示す。光照射するにつ
れ結合エネルギーの高エネルギーシフトが見られ、Si2pにおいて結合エネルギーは103.5eVを示し、シリコン酸化膜のSi2pの結合エネルギーに等しいことが確認できた。同様にO1sにおいてもシリコン酸化膜のO1sとエネルギーと同様であることから、光照射によりシルセスキオキサンを含むハイブリットナノシートからシリコン酸化膜の作製が可能であることが確認できた。
【0050】
実施例5
SiO2超薄膜の表面濡れ特性
図4は光照射に伴う接触角の変化を示す。
光照射前、ドデシルアクリル基やフェニルにより高い疎水性を示すのに対し(接触角 約100°)、光照射につれ膜表面の接触角は10°まで減少することが分かった。これは光照射による有機部の分解によるものと考えられる。
これらの親水・疎水性を用いることで、印刷法では困難な微細電極の自己整合電極の作製が可能であることが分かった。
【0051】
実施例6
SiO2超薄膜の微細描画
図5はSi基板上に累積したハイブリットナノシートにマスクを重ね、光照射(光源にはdeep UVランプ(ウシオ電機社製、UXM-501MA)を用い、全線を照射した。照射時間は18時間。)し、クロロホルムで現像した結果得られた微細パターンのAFM像を示す。マスクの限界である0.75マイクロメートルまで微細なパターンの作製が可能であることが分かった。さらに、これらの反応は光によるものであることから任意の場所に微細なシリコン酸化膜の作製が可能である。
【0052】
実施例7
SiO2超薄膜の機械的強度評価
低誘電率の絶縁膜は、機械的強度が要求される。一般的用いられるlow-k(低誘電率)の薄膜は様々な集積工程に持ちこたえる必要がある。Hysitron社製TriboIndenterにより、本発明の薄膜の機械的特性を評価したところ、光照射による3次元ネットワークの構築により、弾性率は光照射前の約12倍である32.2GPa、膜硬度は約10倍である1.7GPaであることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の積層膜に紫外線光または電子線で露光し、共重合体中の架橋グル−プが2次元的に架橋したネットワ−クポリマ−を形成し、溶剤不溶性の高分子超薄膜を得ことができることを利用して、紫外線光または電子線レジストを得ることができる。また、その他種々の光学素子、磁気ヘッド、等の保護膜、表面改質、種々の材料への表面コーティング、等への応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例2で得られたp(DDA/SQ)LB膜に光照射したときの吸収スペクトルの変化を示す。照射0時間〜12時間まで、1.5時間ごとにスペクトルを測定した。
【図2】実施例2で得られたp(DDA/SQ)LB膜に光照射したときのUVスペクトル測定結果を示す。照射0時間〜15時間まで、3時間ごとにスペクトルを測定した。
【図3】実施例2で得られたp(DDA/SQ)LB膜に光照射したときのXPS測定の結果を示す。
【図4】光照射に伴う接触角の変化を示す。照射0時間〜15時間まで、3時間ごとに接触角を測定した。
【図5】Si基板上に積層したp(DDA/SQ)LB膜にマスクを重ね光照射した結果得られた微細パターンのAFM像を示す(中間調画像)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(a1)および/または(a2)
【化1】

(式中、Raは水素もしくはメチルを表し、Z1は−NH−、−O−もしくは−S−を表し、mは2〜20の整数であり、R1〜R7はそれぞれ独立して、任意のメチレンが酸素で置き換えられていてもよい炭素数1〜20のアルキル、任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよい炭素数6〜20のアリール、または、アリールにおける任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよい炭素数7〜20のアリールアルキルを表し、Yは単結合または炭素数1〜10のアルキレンを表す。)で表される繰り返し単位1と、
一般式(b)
【化2】

(式中、Rbは水素もしくはメチルを表し、Z2は−NH−を表し、nは2〜20の整数である。)で表される繰り返し単位2を含有する共重合体の単分子膜、または該単分子膜を累積することにより得られる積層膜。
【請求項2】
一般式(a1)において、Raは水素もしくはメチルを表し、Z1は−NH−もしくは−O−を表し、mは2〜10の整数を表し、一般式(a2)において、Yは単結合または炭素数1〜10のアルキレンを表し、一般式(a1)および(a2)において、R1〜R7はそれぞれ独立して、任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよい炭素数6〜20のアリールを表す、請求項1に記載の単分子膜または積層膜。
【請求項3】
一般式(a1)において、Raはメチルを表し、Z1は−O−であり、mは2〜10の整数を表し、一般式(a2)において、Yは単結合またはエチレンを表し、一般式(a1)および(a2)において、R1〜R7はそれぞれ独立して、フェニル、4-メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−プロピルフェニルまたはナフチルを表す、請求項1に記載の単分子膜または積層膜。
【請求項4】
一般式(b)において、Rbは水素を表し、Z2は−NH−を表し、nは8〜14の整数である、請求項1〜3のいずれかに記載の単分子膜または積層膜。
【請求項5】
繰り返し単位1と繰り返し単位2とのモル比が0.01:99.99〜99.99:0.01である、請求項1〜4のいずれかに記載の単分子膜または積層膜。
【請求項6】
共重合体の重量平均分子量が5,000〜200,000である、請求項1〜5のいずれかに記載の単分子膜または積層膜。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の単分子膜または積層膜が被覆された基板。
【請求項8】
一般式(A)で表される付加重合性官能基を含むシルセスキオキサンと下記一般式(B)で表される付加重合性単量体との共重合体の単分子膜を基板に被覆することを特徴とする、単分子膜、または該単分子膜を累積することにより得られる積層膜の製造方法。
【化3】

(一般式(A)において、
1〜R7はそれぞれ独立して、任意のメチレンが酸素で置き換えられていてもよい、炭素数1〜20のアルキル、任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよい炭素数6〜20のアリール、またはアリールにおける任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよい炭素数7〜20のアリールアルキルを表し、A1は、付加重合性官能基を示す。)
で表される化合物であり、
【化4】

(一般式(B)において、Rbは水素もしくはメチルを表し、Z2は−NH−であり、nは2〜20の整数である。)
【請求項9】
一般式(A)において、R1〜R7は任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよい炭素数6〜20のアリールを表す、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
一般式(A)において、R1〜R7はそれぞれ独立して、フェニル、4-メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−プロピルフェニルまたはナフチルを表す、請求項8に記載の
方法。
【請求項11】
一般式(B)において、Rbは水素を表し、Z2は−NH−を表し、nは8〜14の整数である、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
一般式(A)で表される付加重合性官能基を含むシルセスキオキサンと一般式(B)で表される付加重合性単量体とのモル比が0.01:99.99〜99.99:0.01である、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
共重合体の重量平均分子量が5,000〜200,000である、請求項8〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
単分子膜がラングミュア・ブロジェット法によって基板に被覆される、請求項8〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記一般式(A)で表される付加重合性官能基を含むシルセスキオキサンが一般式(A1)または(A2)
【化5】

(Raは水素またはメチルを表し、Z1は−NH−、−O−もしくは−S−であり、mは2〜10の整数であり、Yは単結合または炭素数1〜10のアルキレンを表し、R1〜R7は一般式(A)と同様に定義される基である。)で表されるシルセスキオキサンである、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
請求項8〜15のいずれかに記載の方法によって得られた単分子膜または積層膜。
【請求項17】
請求項1〜6のいずれかに記載の積層膜からなるレジスト材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−114409(P2009−114409A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292008(P2007−292008)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行所 社団法人高分子学会 第56回高分子学会年次大会 予稿集 平成19年5月10日 発行
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】