説明

共重合体ラテックス、紙塗工用組成物及び印刷用塗工紙

【課題】塗工紙のピック強度を向上させ、生産操業性にも秀でた共重合体ラテックスの提供。
【解決手段】(a)エチレン系不飽和カルボン酸単量体1〜15質量%、および(b)単量体(a)と共重合可能な単量体(a)以外の単量体85〜99質量%を含む単量体混合物(但し(a)+(b)=100質量%)を乳化重合して得られる共重合体ラテックスであって、上記(a)エチレン系不飽和カルボン酸単量体は、(a−I)エチレン系不飽和モノカルボン酸単量体と、(a−II)エチレン系不飽和ジカルボン酸単量体とを必須成分として含み、かつ、該(a−I)エチレン系不飽和モノカルボン酸単量体の全単量体混合物に対する質量比をA1質量%、(a−II)エチレン系不飽和ジカルボン酸単量体の全単量体混合物に対する質量比をA2質量%とした場合に、A1/A2≧2の関係を満たし、さらに共重合体のトルエン不溶分が96質量%を超える共重合体ラテックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工紙用顔料バインダー、接着剤、粘着剤、繊維結合剤及び塗料などに用いられる共重合体ラテックスに関する。これらの中でも特に塗工紙用顔料バインダーとして好適に用いられる共重合体ラテックスに関する。更に詳しくは、本発明は塗工紙の接着強度(ピック強度)及び耐ブリスター性に優れ、かつ、塗工紙生産工程における操業性(抄紙工程でのロール汚れ及び仕上げ工程でのカレンダーロール汚れ)に優れる共重合体ラテックスに関する。
【背景技術】
【0002】
共重合体ラテックスは例えば、紙塗工用顔料バインダー、各種接着剤及び粘着剤、不織布や人工皮革などの繊維結合用バインダーあるいは塗料など広範な用途に用いられている。これらの用途に用いられる共重合体ラテックスには、基材や配合される顔料などに対する優れた接着力が要求される。
塗工紙は、紙の印刷適性の向上および光沢などの光学特性の向上を目的として、抄造された原紙表面にカオリンクレー、炭酸カルシウム、サチンホワイト、タルク、酸化チタンなどの無機顔料及びプラスチック顔料などの有機顔料を塗布したものである。これら顔料のバインダーとしては、ジエン系共重合体ラテックスが一般的に用いられる。顔料バインダーとして用いられる共重合体ラテックスの性質は、これを利用した塗工紙の表面強度や塗工紙の生産操業性に大きな影響を及ぼすことが知られている。
【0003】
近年、印刷の高速化や高度化が進み塗工紙に要求される性能も厳しくなってきている。特にインクのタックによる紙表面の破壊に対する抵抗性(いわゆるピック強度)や湿し水の存在下に印刷を行う際のピック強度(湿潤ピック強度)の向上が以前にも増して要求されている。また、インクの乾燥条件も厳しくなったため、塗工紙の内部に存在する水分が蒸発する際の水蒸気圧によって塗工紙表面における火脹れ、いわゆるブリスターの発生に対する抵抗性(耐ブリスター性)への要求も厳しさを増している。ピック強度の向上と耐ブリスター性の向上は一般に相反する特性であり、一方が向上すると他方が低下する関係にあるため、これらの物性を高度にバランスさせることが求められている。
【0004】
一方、塗工紙の生産においても、生産能力および生産性の向上のために、塗工速度の高速化が進んで来ている。これに伴って塗工後の加工処理の条件が過酷になったことでカレンダーロール汚れといった操業上の問題が発生する。また、資源の有効利用から塗工損紙を回収しそれを離解後パルプとして再使用する。その塗工損紙の離解工程で、共重合体ラテックスと微細なパルプ及び塗工顔料とが共凝集し(ホワイトピッチ)、抄紙工程のロールを汚す問題が発生する。これら製造工程でのロール汚れの発生が著しくなるとロールの清掃や研磨、及び交換が必要となったり、又は損紙(欠陥製品)が発生し、生産性が低下する。
【0005】
以上のような塗工紙の生産に関する問題や塗工紙の品質のために、共重合体ラテックスについても様々な改良がなされてきた。例えば、特定の単量体組成で多段重合を行う共重合体ラテックスやガラス転移温度を特定の範囲に選択する多段共重合体ラテックスの改良が多数提案されている(特許文献1〜5)。しかしながらこれらの発明では、塗工紙生産工程における操業性(抄紙工程でのロール汚れ及び、仕上げ工程でのカレンダーロール汚れ)の改善、塗工紙のピック強度向上と耐ブリスター性向上等、全ての課題を満足させる手段としていずれも不完全なものであった。
【0006】
【特許文献1】特許公開2002−226523号公報
【特許文献2】特許公開2002−234903号公報
【特許文献3】特許公開2003−268292号公報
【特許文献4】特許公開2006−112026号公報
【特許文献5】特許公開2005−256235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような状況から、塗工紙のピック強度を向上させ、更に耐ブリスター性に優れ、かつ共重合体ラテックスのベタツキ性や紙塗工用組成物の再分散性にも優れて、塗工紙の生産操業性に秀でた共重合体ラテックスを提供することを課題とする。好ましくは、該共重合体ラテックスを使用した紙塗工用組成物、印刷用塗工紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は前記課題を解決するために鋭意研究した結果、共重合体ラテックスに関し第一に共重合体を構成する単量体単位の組成、特にエチレン系不飽和カルボン酸単量体の使用割合と組成を特定条件にすること、第二に共重合体のトルエン不溶分を特定範囲に定めることに着目し本発明をなすに至った。
【0009】
即ち本発明は、以下の通りである。
[1](a)エチレン系不飽和カルボン酸単量体1〜15質量%、および(b)単量体(a)と共重合可能な単量体(a)以外の単量体85〜99質量%を含む単量体混合物(但し(a)+(b)=100質量%)を乳化重合して得られる共重合体ラテックスであって、上記(a)エチレン系不飽和カルボン酸単量体は、(a−I)エチレン系不飽和モノカルボン酸単量体と、(a−II)エチレン系不飽和ジカルボン酸単量体とを必須成分として含み、かつ、該(a−I)エチレン系不飽和モノカルボン酸単量体の全単量体混合物に対する質量比をA1質量%、(a−II)エチレン系不飽和ジカルボン酸単量体の全単量体混合物に対する質量比をA2質量%とした場合に、A1/A2≧2の関係を満たし、さらに共重合体のトルエン不溶分が96質量%を超える共重合体ラテックス。
[2]前記単量体混合物が、前記(b)単量体(a)と共重合可能な単量体(a)以外の単量体として、(c)共役ジエン系単量体と、(d)シアン化ビニル系単量体とを必須成分として含み、かつ前記の乳化重合は、少なくとも二段の重合工程を経るものであり、重合の第一工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、(c−1)共役ジエン系単量体の質量比をC1質量%、重合の第二工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、(c−2)共役ジエン系単量体の質量比をC2質量%とした場合に、C1−C2≧25の関係を満たし、さらに重合の第一工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、(d−1)シアン化ビニル系単量体の質量比をD1質量%、重合の第二工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、(d−2)シアン化ビニル系単量体の質量比をD2質量%とした場合に、0≦D1−D2≦10の関係を満たして製造される、[1]記載の共重合体ラテックス。
[3]前記共重合体は、示差走査熱量計によって得られる、温度−熱量曲線の微分曲線において、ピーク値が最大となる温度(Tmax)が−40〜+20℃の範囲にあり、かつ転移領域の最低温度をTL(℃)、転移領域の最高温度をTH(℃)とした場合に、以下の関係式を満たす、[1]又は[2]記載の共重合体ラテックス。
(Tmax−TL)/(TH−Tmax)≦0.8
【0010】
[4][1]〜[3]のいずれかの共重合体ラテックスを含有する紙塗工用組成物。
[5][4]の紙塗工用組成物を原紙に塗布してなる、塗工量が片面当り8g/m以上の印刷用塗工紙。
【発明の効果】
【0011】
本発明の共重合体ラテックスによれば、塗工紙のピック強度を向上させ、更に耐ブリスター性に優れ、かつ共重合体ラテックスのベタツキ性や紙塗工用組成物の再分散性を向上させることができる。その結果、接着強度やオフセット輪転印刷適性、並びに塗工紙生産工程における操業性(抄紙工程でのロール汚れ及び仕上げ工程でのカレンダーロール汚れ)にも優れた効果を付与する事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0013】
共重合体ラテックス、及びその製造方法
本発明の共重合体ラテックスは、(a)エチレン系不飽和カルボン酸単量体1〜15質量%、及び(b)単量体(a)と共重合可能な単量体(a)以外の単量体85〜99質量%(但し(a)+(b)=100質量%)を含む単量体混合物を乳化重合することによって得られる。以下、これらに付いて順次説明する。
【0014】
共重合体ラテックスの必須成分である(a)エチレン系不飽和カルボン酸単量体は、塗工紙のピック強度の向上と抄紙工程でのロール汚れ改良には必須の成分で、共重合体ラテックスの共重合体を構成する全単量体を100質量%とした場合、通常1〜15質量%、好ましくは1.5〜10質量%、最も好ましくは2〜7質量%の割合で用いられる。この割合で用いる事により、共重合体ラテックスに必要な分散安定性を付与し、また共重合体ラテックスの粘度を適正化して取扱いに支障を来たさない。また、(a)エチレン系不飽和カルボン酸単量体には、(a−I)エチレン系不飽和モノカルボン酸単量体と、(a−II)エチレン系不飽和ジカルボン酸単量体とを必須成分として含み、かつ、該(a−I)エチレン系不飽和モノカルボン酸単量体の全単量体混合物に対する全質量比をA1質量%、(a−II)エチレン系不飽和ジカルボン酸単量体の全単量体混合物に対する全質量比をA2質量%とした場合に、A1/A2≧2の関係を満たすことが必要である。A1/A2の関係について好ましくはA1/A2≧2.3であり、更に好ましくはA1/A2≧2.5である。これにより紙塗工用組成物の再分散性を向上させ、抄紙工程のロール汚れの発生を防止する事が出来る。エチレン系不飽和モノカルボン酸単量体の好ましい例としては、アクリル酸、メタクリル酸等の単量体、エチレン系不飽和ジカルボン酸単量体の好ましい例としてはイタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の単量体などが挙げられ、これらはそれぞれ1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0015】
本発明の共重合体ラテックスには、(b)単量体(a)と共重合可能な単量体(a)以外の単量体として(c)共役ジエン系単量体及び(d)シアン化ビニル系単量体を用いることが好ましい。(c)共役ジエン系単量体は共重合体に柔軟性を与え、ピック強度、衝撃吸収性を与えるために有効な成分であり、該共重合体を構成する全単量体を100質量%とした場合、好ましくは35〜55質量%、より好ましくは38〜52質量%、更に好ましくは40〜50質量%の割合で用いられる。この範囲の割合で用いられることによって、共重合体ラテックスは優れたピック強度を発現し、かつ優れた耐ベタツキ性を発現する。使用される共役ジエン系単量体の好ましい例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエンなどが挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
(d)シアン化ビニル系単量体は、共重合体ラテックスのベタツキ性や湿潤ピック強度の向上に必須の成分であり、該共重合体を構成する全単量体を100質量%とした場合、全単量体に対し好ましくは15〜35質量%、より好ましくは18〜33質量%、更に好ましくは20〜30質量%の割合で用いられる。この範囲の割合で用いられることにより共重合体ラテックスの耐ベタツキ性を効果的に向上させ、かつ共重合体ラテックスの安定性を良好に保つことが出来る。シアン化ビニル系単量体の好ましい例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどが挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0016】
また、他の原料として(e)単量体(a)と共重合可能な単量体(a)、(c)、(d)以外の単量体を含むことができる。この単量体(e)を適宜選択することにより、共重合体ラテックスにさまざまな特性を付与できる。共重合可能な他の単量体の好ましい例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのヒドロキシアルキルエステル類、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノアルキルエステル類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどのピリジン類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのグリシジルエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、グリシジルメタクリルアミド、N,N−ブトキシメチルアクリルアミドなどのアミド類、酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、p−スチレンスルホン酸及びそのナトリウム塩などが挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
本発明の共重合体ラテックスは、上記の単量体の混合物(ただし、使用する前記(a)〜(e)の合計量を100質量%とする。)を乳化重合法により重合することで得られる。
本発明の共重合体ラテックスの製造は、従来商業的に用いられている乳化重合法の装置を使用して行われるものであるが、少なくとも二段の重合工程を含む多段重合法を取る事が好ましく、これにより目的の課題の達成度が増大する。多段重合法とは、例えば特開2002−226524号公報に開示されている如く、組成の異なる複数の単量体混合物を準備し、重合反応の進行に伴って系内に添加する単量体混合物の組成を、重合反応の途中で変化させる重合法である。
【0018】
上記のような多段重合法を行う場合、本発明の共重合体ラテックスで目的とする効果を高める為には、各重合段の単量体混合物の組成が重要である。重合反応における時系列的な観点で整理した場合、最初の工程を第一工程、これに続く工程を第二工程、(更にこれに続く第三工程以降が存在してもよい。)と定義した場合に、各工程における(c)共役ジエン系単量体、及び(d)シアン化ビニル系単量体の使用割合が重視すべき点である。
【0019】
即ち、重合の第一工程で使用される(c)共役ジエン系単量体を(c−1)、重合の第二工程で使用される(c)共役ジエン系単量体を(c−2)とすると、重合の第一工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、(c−1)共役ジエン系単量体の質量比をC1質量%、重合の第二工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、(c−2)共役ジエン系単量体の質量比をC2質量%とした場合に、C1−C2≧25の関係を満たす事が好ましい。C1−C2をこの範囲の割合に定めることにより共重合体に適度の柔軟性と弾性を付与してピック強度を向上させ、更にはベタツキ性を向上させる事ができ、ピック強度と仕上げ工程でのカレンダーロール汚れのバランスを最適にすることが出来る。C1−C2のより好ましい範囲はC1−C2≧28、更に好ましい範囲はC1−C2≧30である。
【0020】
また、重合の第一工程で使用される(d)シアン化ビニル系単量体を(d−1)、重合の第二工程で使用される(d)シアン化ビニル系単量体を(d−2)とすると、重合の第一工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、(d−1)シアン化ビニル系単量体の質量比をD1質量%、重合の第二工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、(d−2)シアン化ビニル系単量体の質量比をD2質量%とした場合に、0≦D1−D2≦10の関係を満たす事が好ましい。これによりベタツキ性や湿潤ピック強度を向上させる効果が増大し、かつ共重合体ラテックスの重合安定性を低下させないようにすることができる。D1−D2のより好ましい範囲は1≦D1−D2≦8である。
【0021】
本発明の共重合体ラテックスのトルエン不溶分は96質量%を超えることが必要であり、好ましくは96.5質量%以上である。これにより該ラテックスのベタツキ性が向上し、仕上げ工程でのカレンダーロール汚れ適性が改善される。加えて、紙塗工用組成物の再分散性が向上することにより抄紙工程のロール汚れの発生が改善出来る。共重合体ラテックスのトルエン不溶分の調整は、重合反応中に使用する連鎖移動剤の使用量を調整することにより可能である。前記連鎖移動剤の重合系内への添加方法としては、一括添加、回分的添加、連続的添加のいずれでもよく、これらを組み合わせてもよい。使用する連鎖移動剤としては、一般の乳化重合に使用されている公知の連鎖移動剤を使用することができる。例えば、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどのジスルフィド類、四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化誘導体、2−エチルヘキシルチオグリコレート、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられ、これらを1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明の共重合体ラテックスは、示差走査熱量計によって得られる、温度−熱量曲線の微分曲線において、特定の条件を満たすことが好ましい。第一に前記微分曲線において、ピーク値が最大となる温度(Tmax)が−40〜+20℃の範囲にあることが好ましい。(Tmax)のより好ましい範囲は−30〜+15℃である。(Tmax)の値は、共重合に用いる単量体組成により調整することが可能であり、例えば、単独重合体のガラス転移温度が低い共役ジエン系単量体の使用割合を増やせば(Tmax)は低くなり、また、単独重合体のガラス転移温度が高いシアン化ビニル系単量体の使用割合を増やせば(Tmax)は高くなる。
【0023】
第二に前記微分曲線における転移領域の最低温度をTL(℃)、転移領域の最高温度をTH(℃)とした時に(Tmax−TL)/(TH−Tmax)≦0.8の関係を満たすことが好ましい。(Tmax−TL)/(TH−Tmax)のより好ましい範囲は0.6以下である。(Tmax−TL)/(TH−Tmax)を前記範囲に調整するためには、例えば、多段重合を行う場合の各工程での単量体組成、各工程のステージ比(各工程毎の単量体混合物全量の質量比)、各工程開始時の重合転化率を調整することによりコントロール可能である。これらの因子の中でも前述のようにC1−C2≧25(重合の第一工程で使用される単量体混合物100質量%に対する共役ジエン系単量体の質量比をC1質量%、重合の第二工程で使用される単量体混合物100質量%に対する共役ジエン系単量体の質量比をC2質量%)を満たすことが有効であり、更に重合第二工程開始時の、第一工程の単量体混合物の重合転化率を60〜80質量%とすることも有効である。第一工程の重合転化率は第一工程で用いる重合遅延剤の量や重合時間により調整が可能である。重合遅延剤の好ましい例としてはα−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0024】
該共重合体ラテックスを製造するに当たっては、上述した方法以外について制限は特になく、水性媒体中で界面活性剤の存在下、ラジカル開始剤により重合を行うなどの方法を用いることができる。
【0025】
使用する乳化剤についても特に制限はなく、従来公知のアニオン、カチオン、両性および非イオン性の界面活性剤を用いることができる。好ましい界面活性剤の例としては、脂肪族セッケン、ロジン酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン性界面活性剤が挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。使用される界面活性剤の量は、単量体100質量部当たり、0.3〜2.0質量部である事が好ましい。
【0026】
ラジカル開始剤は、熱または還元剤の存在下でラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものであり、無機系開始剤、有機系開始剤のいずれも使用することが可能である。好ましい例としてはペルオキソニ硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などがあり、具体的にはペルオキソニ硫酸カリウム、ペルオキソニ硫酸ナトリウム、ペルオキソニ硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスブチロニトリル、クメンハイドロパーオキサイドなどが挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また酸性亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸やその塩、エリソルビン酸やその塩、ロンガリットなどの還元剤を重合開始剤と組み合わせて用いる、いわゆるレドックス重合法を用いることもできる。
【0027】
本発明の共重合体ラテックスを製造する場合の重合温度は、特に制約はなく、通常40〜100℃の範囲で行う事が一般的であるが、生産効率と、得られる共重合体ラテックスを使用した塗工紙のピック強度等の品質の観点からは、重合開始時から単量体混合物の添加終了時までの期間においては、55〜85℃の範囲が好ましく、より好ましくは60〜80℃の範囲である。また全単量体を重合系内に添加終了後に、各単量体の重合転化率を引き上げる為に、重合温度を上げる方法(いわゆるクッキング工程)を設ける事も可能であり、この工程の重合温度は80〜100℃の範囲にある事が好ましい。
【0028】
本発明の共重合体ラテックスを製造する場合の重合固形分濃度は、生産効率と、乳化重合時の粒子径制御の観点から、好ましくは35〜60質量%、より好ましくは40〜50質量%である。ここにいう固形分濃度とは、共重合ラテックスを乾燥することにより得られる固形分質量の、乾燥前の共重合体ラテックス質量に対する割合を言う。
【0029】
本発明の共重合体ラテックスを製造する方法に関しては、乳化重合の系内に単量体混合物を添加する手段については特に制約はない。単量体混合物の一部を一括して予め乳化重合系内に仕込み重合した後、残りの単量体混合物を連続的もしくは間欠的に仕込む方法、あるいは単量体混合物を各重合段の最初から連続的または間欠的に仕込む方法を使用することができ、これらの重合方法を組み合わせて重合してもよいが、商業生産ベースにおいて、発生する重合熱の除去の観点から、製品の生産性を考慮した場合に、特に第二重合段以降については連続的に系内に添加する方法が好ましい。
【0030】
本発明の共重合体ラテックスの製造に際しては、粒子径の調整のため公知のシード重合法を用いることも可能であり、シードを作製後同一反応系内で共重合体ラテックスの重合を行うインターナルシード法、別途作製したシードを用いるエクスターナルシード法などの方法を適宜選択して用いることができる。
【0031】
また、共重合体ラテックスの粒子径は、50〜150nmであることが好ましい。より好ましくは60〜110nmである。この範囲の粒子径に設定する事により、共重合体ラテックスの粘度を好適な範囲に調整する事が可能であり、作業性を低下せしめない。更には、ピック強度・湿潤ピック強度の低下や塗料粘度上昇発生を抑制させる事ができる。
【0032】
共重合体ラテックスには、必要に応じて公知の各種重合調整剤を用いることができる。これらはたとえばpH調整剤、キレート剤などであり、pH調整剤の好ましい例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどが挙げられ、キレート剤の好ましい例としてはエチレンジアミン四酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0033】
共重合体ラテックスの、最終製品としての固形分濃度についても特に制限はなく、通常固形分濃度は30〜60質量%の範囲に希釈又は濃縮して調製される。
【0034】
共重合体ラテックスには、その効果を損ねない限り、必要に応じて各種添加剤を添加すること、あるいは他のラテックスを混合して用いることが可能であり、例えば分散剤、消泡剤、老化防止剤、耐水化剤、殺菌剤、印刷適性向上剤、滑剤などを添加すること、アルカリ感応型ラテックス、有機顔料などを混合して用いることもできる。
【0035】
次に、前述の共重合体ラテックスを紙塗工用塗料のバインダーとして用いることにより紙塗工用組成物が得られる。これは、通常行われている実施態様で製造することができる。すなわち、分散剤を溶解させた水中に、カオリンクレー、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク等の無機顔料、プラスチックピグメントやバインダーピグメントとして知られる有機顔料、澱粉、カゼイン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子、増粘剤、染料、消泡剤、防腐剤、耐水化剤、滑剤、印刷適性向上剤、pH調整剤、保水剤等の各種添加剤とともに共重合体ラテックスを添加して混合し、均一な分散液(紙塗工用組成物)とする態様である。
【0036】
顔料と共重合体ラテックスとの使用割合は、紙塗工用組成物の使用目的によって適宜決定することが出来るが、顔料100質量部に対して共重合体ラテックス3〜30質量部を用いる事が好ましい。そして、この紙塗工用組成物は、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーターなどを用いる通常の方法によって原紙に塗工することができるが、ブレードコーターを用いる事が好ましい。塗工形態も原紙に対し片面、又は表裏の両面に塗工されうるものであり、また片面当たりの塗工回数についても1回であるシングル塗工の他、2回の塗工工程を行ういわゆるダブル塗工に供する事もできる。この場合、本発明の共重合体ラテックスはその下塗り用紙塗工用組成物、及び上塗り用紙塗工用組成物のいずれにも用いる事ができる。
【0037】
次に、前述の紙塗工用組成物を用いて、表面に塗工処理して印刷用塗工紙を得ることができる。この印刷用塗工紙は、オフセット枚葉式印刷用紙、オフセット輪転式印刷用紙、グラビア式印刷用紙、凸版式印刷用紙等の各種印刷用紙及び板紙、ダンボール用紙、包装紙等に好適に用いられるが、特にオフセット輪転式印刷用紙に用いられる事が望ましい。
【0038】
本発明の共重合体ラテックス、及び紙塗工用組成物が塗布された印刷用紙は塗工量が片面当たり8g/m以上であることが好ましく、この領域で優れた耐ブリスター性を発現する。
【0039】
更に、上述の共重合体ラテックスは、紙のコーティング剤、カーペットバッキング剤、その他接着剤、各種塗料にも用いる事ができる。
【0040】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例の具体的態様に限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
[各物性の評価方法]
(1)ピック強度:
RI印刷試験機(明製作所製)を用いて、印刷インク(東洋インキ製造社製 PRINTING INK;タック15)(商品名)0.4ccを1回刷りし、ゴムロールに現れたピッキング状態を別の台紙に裏取りし、その状態を観察した。評価は相対的な10点評価法とし、ピッキング現象の少ないものほど高得点とした。
(2)湿潤ピック強度:
RI印刷試験機(明製作所製)を用いてスリーブロールで塗工紙表面に給水し、その直後に印刷インク(東洋インキ製造社製 PRINTING INK;タック13)0.4cc1回刷りし、ゴムロールに現れたピッキング状態を別の台紙に裏取りし、その状態を観察した。評価は相対的な10点評価法とし、ピッキング現象の少ないものほど高得点とした。
(3)耐ブリスター性
RI印刷機(明製作所製)でオフセット輪転印刷用インキ1ccを展開し、塗工紙サンプルの両面に印刷する。印刷したサンプルを加温したシリコーンオイルの入った恒温槽に浸してブリスターが発生するか否かを観察した。恒温槽の温度を変化させてこの試験を行った。ブリスターの発生する温度が高いものほど耐ブリスター性に優れていることを示す。
(4)共重合体ラテックスの再分散性:
共重合体ラテックスを含む紙塗工用組成物を表面静電処理したマイラーフィルム上にNo.26ロッドにより塗布し、150℃で60秒間、乾燥し、紙塗工用組成物を固着させた。このマイラーフィルムを40℃の流水で3分間すすぎ、熱風乾燥機100℃で30秒間乾燥させた。マイラーフィルム上の紙塗工用組成物の残存量の程度は、目視により相対的な10段階評価を行った。紙塗工用組成物の残存量の少ないものほど高得点とした。数値は測定回数5回の平均値で示した。
(5)共重合体ラテックスのベタツキ性:
マイラーフィルムに共重合体ラテックスをNo.18のワイヤーバーで塗布し130℃で30秒乾燥した。このフィルムを黒ラシャ紙と重ね合わせ、温度80℃、線圧19600N/mのスーパーカレンダーを通過させた後、黒ラシャ紙を剥離する。この黒ラシャ紙繊維のラテックスフィルムへのベタツキによる転移状態を目視評価した。評価は相対的な10点評価法で行ない、転移の少ないものほど高得点とした。
(6)共重合体ラテックスのトルエン不溶分の測定:
共重合体ラテックスのpHを8に調整した後、130℃で30分乾燥させて成膜させる。このフィルム0.5gをトルエン30ccに浸せきし、3時間振とう後目開き45μmの金属網にてろ過して不溶分を採取し、130℃で1時間乾燥させて不溶分の重量を測定し、次式でトルエン不溶分を求める。
トルエン不溶分=(乾燥後のトルエン不溶分質量/浸せき前に採取したフィルム質量)×100(%)
(7)共重合体ラテックスのTmax、TH、及びTLの測定:
共重合体ラテックスを100℃で30分乾燥し、フィルムを作成した。このフィルムを示差走査熱量計(セイコー電子社製DSC−6220)を用いて、昇温速度15℃/minで測定して、各温度に対する熱量の微分曲線(DDSC)を得た。
【0042】
[実施例1]
共重合体ラテックスAの製造
攪はん機と内部温度調整用の温水ジャケット、及び各種原材料の定量添加設備を備えた、量産用の耐圧反応器に、重合初期の原料として水114質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.45質量部、α−メチルスチレンダイマー0.45質量部、および平均粒子径20nmのポリスチレン系共重合体のシードラテックス0.5質量部を含む重合初期原料を一括して仕込み、65℃にて充分に攪拌した。次いで、第一重合段用として調製しておいたスチレン4.52質量部、1,3−ブタジエン35質量部、メタクリル酸メチル0.14質量部、アクリロニトリル18.15質量部、ヒドロキシエチルアクリレート0.7質量部、アクリル酸1.49質量部、t−ドデシルメルカプタン0.05質量部、α−メチルスチレンダイマー0.16質量部から成る重合第一工程用の単量体及び連鎖移動剤混合物の内、12質量部をこの耐圧反応容器内に一括して仕込み、攪拌混合後、濃度30質量%のペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液0.6質量部(固形分換算)を耐圧容器内に5分間かけて添加して重合反応を開始させた。
【0043】
ペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液の添加終了から15分後、残りの第一工程用の単量体及び連鎖移動剤混合物(第一工程用単量体の内88質量%に相当)をこの耐圧容器内に添加開始し、3時間30分かけて連続的に添加を行った。一方、この残りの第一工程用の単量体及び連鎖移動剤混合物の添加と同時に、水17質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.3質量部、及びペルオキソ二硫酸ナトリウム0.4質量部からなる水系混合物の添加を開始し、第一工程用の単量体を添加終了まで連続的に添加し、重合反応を加速させた。第一工程用の単量体及び連鎖移動剤混合物の添加が終了した時点で、直ちに第二工程用の単量体及び連鎖移動剤混合物の添加を開始した。この第二工程用の単量体及び連鎖移動剤混合物は、スチレン18.96質量部、1,3−ブタジエン7.11質量部、メタクリル酸メチル0.15質量部、アクリロニトリル10.54質量部、ヒドロキシエチルアクリレート0.73質量部、アクリル酸1.51質量部、t−ドデシルメルカプタン0.05質量部、α−メチルスチレンダイマー0.17質量部から成るものであり、2時間かけて連続的にこの耐圧容器内に添加し、重合反応を継続させた。第二工程の単量体及び連鎖移動剤混合物の添加開始時期から30分後に、イタコン酸1質量部を含む固形分濃度15質量%の50℃イタコン酸水溶液を、この耐圧容器へ添加を開始し、60分かけて全量を添加した。
【0044】
第二工程の単量体混合物の添加終了後、耐圧容器内の温度を65℃に保ったまま30分間反応を継続し、その後60分間かけて95℃に昇温させ、95℃の状態で30分間重合反応を継続させて各単量体の重合転化率を高めた。
【0045】
この共重合体ラテックスには、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムを添加してpHを6.0以上に調整し、スチームストリッピング法で未反応の単量体を除去した後、水酸化ナトリウムを用いてpHを8.0に調整し、濃縮設備を用いて固形分濃度を51質量%に調整した。なお、これらの製造条件を表1にまとめた。
【0046】
次に、このようにして得られた共重合体ラテックスAについて、ラテックスフィルムのベタツキ性の評価を行った。その結果、優れたベタツキ性が得られた。
【0047】
紙塗工用組成物の調製
次に、この共重合体ラテックスAと以下の構成材料とを使用し、均一に混合して紙塗工用組成物を調製した。尚、以下の配合(質量部)は、水を除いて、全て固形分に換算した値である。
【0048】
カオリンクレー 35質量部
重質炭酸カルシウム 65質量部
ポリアクリル酸ナトリウム 0.05質量部
水酸化ナトリウム 0.06質量部
酸化でんぷん 3.0質量部
共重合体ラテックスA 8質量部
水(塗工液の全固形分濃度が66質量%となるように添加)
なお、カオリンクレーとしては、アマゾンプラス(粒子径2μm以下の割合=97質量%以上)(商品名)、重質炭酸カルシウムとしてはカービタル90(粒子径2μm以下の割合=90質量%以上)(商品名)、ポリアクリル酸ナトリウムとしてはアロンT−50(東亞合成株式会社製)(商品名)および酸化でんぷんとしては王子コーンスターチB(王子コーンスターチ社製)(商品名)をそれぞれ使用した。
【0049】
次に、このようにして得られた紙塗工用塗料組成物を、塗工量が片面8g/mになるように坪量74g/mの塗工原紙にブレードコーターで塗工し、乾燥した後、ロール温度50℃、線圧147000N/mでスーパーカレンダー処理を行い塗工紙を得た。得られた塗工紙を印刷試験で評価した。また、紙塗工用組成物を用い共重合体ラテックスAの再分散性の評価を行った。
【0050】
この塗工紙のピック強度、湿潤ピック強度、耐ブリスター性、を評価した。
結果を表1に記載した。優れたピック強度、耐ブリスター性、優れた再分散性が得られた。
【0051】
[実施例2〜6]
共重合体ラテックスを製造する各工程の原料組成、重合温度、後添加するエチレン系不飽和カルボン酸単量体を表1に示す通りに変更する以外は、実施例1と同様の方法で共重合体ラテックスB、C、D、E、Fを得た。
【0052】
[比較例1〜5]
共重合体ラテックスを製造する各工程の原料組成、重合温度、後添加するエチレン系不飽和カルボン酸単量体の量を表2に示す通りに変更する以外は、実施例1と同様の重合を行い、共重合体ラテックスH、I、J、K,Lを得た。表2記載の共重合体ラテックスはいずれも本発明の範囲を外れたものであり、ピック強度、耐ブリスター性、ベタツキ性及び紙塗工用組成物の再分散性が劣っていた。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例1記載の共重合体ラテックスについての、示差走査熱量計による温度−熱量曲線の微分曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エチレン系不飽和カルボン酸単量体1〜15質量%、および(b)単量体(a)と共重合可能な単量体(a)以外の単量体85〜99質量%を含む単量体混合物(但し(a)+(b)=100質量%)を乳化重合して得られる共重合体ラテックスであって、上記(a)エチレン系不飽和カルボン酸単量体は、(a−I)エチレン系不飽和モノカルボン酸単量体と、(a−II)エチレン系不飽和ジカルボン酸単量体とを必須成分として含み、かつ、該(a−I)エチレン系不飽和モノカルボン酸単量体の全単量体混合物に対する質量比をA1質量%、(a−II)エチレン系不飽和ジカルボン酸単量体の全単量体混合物に対する質量比をA2質量%とした場合に、A1/A2≧2の関係を満たし、さらに共重合体のトルエン不溶分が96質量%を超える共重合体ラテックス。
【請求項2】
前記単量体混合物が、前記(b)単量体(a)と共重合可能な単量体(a)以外の単量体として、(c)共役ジエン系単量体と、(d)シアン化ビニル系単量体とを必須成分として含み、かつ前記の乳化重合は、少なくとも二段の重合工程を経るものであり、重合の第一工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、(c−1)共役ジエン系単量体の質量比をC1質量%、重合の第二工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、(c−2)共役ジエン系単量体の質量比をC2質量%とした場合に、C1−C2≧25の関係を満たし、さらに重合の第一工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、(d−1)シアン化ビニル系単量体の質量比をD1質量%、重合の第二工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、(d−2)シアン化ビニル系単量体の質量比をD2質量%とした場合に、0≦D1−D2≦10の関係を満たして製造される、請求項1記載の共重合体ラテックス。
【請求項3】
前記共重合体は、示差走査熱量計によって得られる、温度−熱量曲線の微分曲線において、ピーク値が最大となる温度(Tmax)が−40〜+20℃の範囲にあり、かつ転移領域の最低温度をTL(℃)、転移領域の最高温度をTH(℃)とした場合に、以下の関係式を満たす、請求項1又は2記載の共重合体ラテックス。
(Tmax−TL)/(TH−Tmax)≦0.8
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの共重合体ラテックスを含有する紙塗工用組成物。
【請求項5】
請求項4の紙塗工用組成物を原紙に塗布してなる、塗工量が片面当り8g/m以上の印刷用塗工紙。

【図1】
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【公開番号】特開2010−84071(P2010−84071A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256538(P2008−256538)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】