説明

共重合体ラテックス組成物及びその製造方法

【課題】流動性(粘度)等に優れ、かつ、印刷適性等が優れる塗工層を形成可能な紙塗工用組成物の原料となる共重合体ラテックス組成物を提供する。
【解決手段】(a)アミド基含有エチレン系不飽和単量体50〜100質量%を含有する第一の単量体成分を重合して得られる重合体(i)と、前記重合体(i)0.1〜5質量部の存在下で、(b)脂肪族共役ジエン系単量体30〜70質量%、(c)シアン化ビニル単量体5〜40質量%、及び(d)エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.1〜10質量%を含有する第二の単量体成分100質量部を乳化重合して得られる共重合体(ii)と、を含有し、かつ、数平均粒子径を測定したときの値が50〜120nmである共重合体ラテックス組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体ラテックス組成物及びその製造方法に関し、更に詳しくは、例えば、流動性(粘度)、保水性等の塗工操業性(特に高速塗工操業性)に優れ、かつ、例えば、表面強度、白紙光沢、印刷光沢等の印刷適性に優れ、特に、印刷速度範囲が広範囲にわたる場合であっても上記印刷適性が優れる塗工層を形成可能な紙塗工用組成物の原料である共重合体ラテックス組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外観や印刷適性を改良するために、カタログ、ポスター、雑誌や美術誌等は、紙(塗工原紙)に、顔料とバインダーとを含有する紙塗工用組成物を塗工して形成されている。そして、この紙塗工用組成物に含有されるバインダーとして、通常、澱粉、ラテックスなどが含まれている。バインダーとしてラテックスを含有させると、紙塗工用組成物の塗工操業性が優れるとともに、印刷光沢、インク乾燥性、表面強度等の印刷適性に優れた塗工紙を得ることができるためである。
【0003】
ところで、近年の塗工紙の高品質化、及び製造速度の高速度化に伴い、紙塗工用組成物の塗工操業性が低下し、塗工紙の製造効率が低下するという問題が生じてきた。製造効率の低下の原因の多くは、いわゆる、ストリークと呼ばれる筋状の欠陥の発生である。このストリークの発生に対する解決策としては、例えば、所定のラテックスを用いることが知られている。所定のラテックスとしては、具体的には、粒子径の小さいラテックス、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位の含有量が少ないラテックス、水溶性高分子共存下で重合して得られるラテックス(特許文献1参照)等が提案されている。水溶性高分子共存下で重合する方法としては、アクリルアミド等を含有する水溶性ポリマー存在下でポリマー微粒子を生成させる方法(特許文献2、3参照)などが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−86982号公報
【特許文献2】特開平6−73108号公報
【特許文献3】特開平10−36458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている塗工液(紙塗工用組成物)は、ストリーク等の塗工欠陥の発生を抑制し、保水性等の塗工操業性(特に高速塗工操業性)を有するという利点はあるが、未だ改良の余地を残すものであった。即ち、十分な流動性(粘度)を有するものではなく、塗工紙の高品質化及び製造速度の高速度化が要求されている近年の状況においては、保水性等の塗工操業性(特に高速塗工操業性)は未だ改良の余地を残していた。また、例えば、表面強度、白紙光沢、印刷光沢等の印刷適性に優れ、特に、印刷速度範囲が広範囲にわたる場合であっても上記印刷適性が優れた塗工層を形成可能な紙塗工用組成物は未だ開発されていなかった。また、特許文献2、3に開示されている共重合体樹脂水溶性分散液または水性ポリマー組成物は、重合して得られるラテックス粒子が、房状に集合した粒子径の大きなものであり、また水性ポリマー組成物としての粘度が非常に高いものであるため、ストリーク等の塗工欠陥の発生を抑制するために十分な流動性(粘度)及び塗工操業性を有するものではなかった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、例えば、流動性(粘度)、保水性等の塗工操業性(特に高速塗工操業性)に優れ、かつ、例えば、表面強度、白紙光沢、印刷光沢等の印刷適性に優れ、特に、印刷速度範囲が広範囲にわたる場合であっても上記印刷適性が優れる塗工層を形成可能な紙塗工用組成物の原料である共重合体ラテックス組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、所定の単量体を所定量含有する単量体成分を重合させて重合体を得、得られた重合体の所定量の存在下で、所定の単量体を所定量の含有する単量体成分を乳化重合させて得られる共重合体を含有し、かつ、数平均粒子径を測定したときの値が所定の範囲である共重合体ラテックス組成物によって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、以下に示す共重合体ラテックス組成物及びその製造方法が提供される。
【0009】
[1] (a)アミド基含有エチレン系不飽和単量体50〜100質量%を含有する第一の単量体成分を重合して得られる重合体(i)と、前記重合体(i)0.1〜5質量部の存在下で、(b)脂肪族共役ジエン系単量体30〜70質量%、(c)シアン化ビニル単量体5〜40質量%、及び(d)エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.1〜10質量%を含有する第二の単量体成分100質量部を乳化重合して得られる共重合体(ii)と、を含み、かつ、数平均粒子径を測定したときの値が50〜120nmである共重合体ラテックス組成物。
【0010】
[2] 前記第一の単量体成分が、(e)エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜50質量%、及び(f)前記(a)単量体及び前記(e)単量体と共重合可能な他の単量体1〜50質量%(但し、(a)+(e)+(f)=100質量%)を更に含有する前記[1]に記載の共重合体ラテックス組成物。
【0011】
[3] 前記第二の単量体成分が、(g)前記(b)単量体、前記(c)単量体、及び前記(d)単量体と共重合可能な他の単量体5〜55質量%(但し、(b)+(c)+(d)+(g)=100質量%)を更に含有する前記[1]または[2]に記載の共重合体ラテックス組成物。
【0012】
[4] 前記重合体(i)の重量平均分子量が、3,000〜20,000である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の共重合体ラテックス組成物。
【0013】
[5] 前記共重合体(ii)のガラス転移温度が、−100〜60℃の範囲に少なくとも1点存在し、かつ、前記共重合体(ii)は、示差熱量曲線において、転移領域の最低温度T1と最高温度T2との差(ΔT)が30℃以上である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の共重合体ラテックス組成物。
【0014】
[6] (a)アミド基含有エチレン系不飽和単量体50〜100質量%を含有する第一の単量体成分を重合して重合体(i)を得、得られた前記重合体(i)0.1〜5質量部の存在下で、(b)脂肪族共役ジエン系単量体30〜70質量%、(c)シアン化ビニル単量体5〜40質量%、及び(d)エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.1〜10質量%を含有する第二の単量体成分100質量部を乳化重合して、数平均粒子径を測定したときの値が50〜120nmである、前記重合体(i)と共重合体(ii)とを含む共重合体ラテックス組成物を得る共重合体ラテックス組成物の製造方法。
【0015】
[7] 前記第一の単量体成分が、(e)エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜50質量%、及び(f)前記(a)単量体及び前記(e)単量体と共重合可能な他の単量体1〜50質量%(但し、(a)+(e)+(f)=100質量%)を更に含有する前記[6]に記載の共重合体ラテックス組成物の製造方法。
【0016】
[8] 前記第二の単量体成分が、(g)前記(b)単量体、前記(c)単量体、及び前記(d)単量体と共重合可能な他の単量体5〜55質量%(但し、(b)+(c)+(d)+(g)=100質量%)を更に含有する前記[6]または[7]に記載の共重合体ラテックス組成物の製造方法。
【0017】
[9] 前記重合体(i)の重量平均分子量が、3,000〜20,000である前記[6]〜[8]のいずれかに記載の共重合体ラテックス組成物の製造方法。
【0018】
[10] 前記共重合体(ii)のガラス転移温度が、−100〜60℃の範囲に少なくとも1点存在し、かつ、前記共重合体(ii)は、示差熱量曲線において、転移領域の最低温度T1と最高温度T2との差(ΔT)が30℃以上である前記[6]〜[9]のいずれかに記載の共重合体ラテックス組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の共重合体ラテックス組成物は、例えば、流動性(粘度)、保水性等の塗工操業性(特に高速塗工操業性)に優れ、かつ、例えば、表面強度、白紙光沢、印刷光沢等の印刷適性に優れ、特に、印刷速度範囲が広範囲にわたる場合であっても上記印刷適性が優れる塗工層を形成可能な紙塗工用組成物の原料として好適である。
【0020】
本発明の共重合体ラテックス組成物の製造方法によれば、例えば、流動性(粘度)、保水性等の塗工操業性(特に高速塗工操業性)に優れ、かつ、例えば、表面強度、白紙光沢、印刷光沢等の印刷適性に優れ、特に、印刷速度範囲が広範囲にわたる場合であっても上記印刷適性が優れる塗工層を形成可能な紙塗工用組成物の原料として好適である共重合体ラテックス組成物を良好に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0022】
[1]共重合体ラテックス組成物:
本発明の共重合体ラテックス組成物の一実施形態は、(a)アミド基含有エチレン系不飽和単量体(以下、「(a)単量体」と記す場合がある)50〜100質量%を含有する第一の単量体成分を重合して得られる重合体(i)と、前記重合体(i)0.1〜5質量部の存在下で、(b)脂肪族共役ジエン系単量体(以下、「(b)単量体」と記す場合がある)30〜70質量%、(c)シアン化ビニル単量体(以下、「(c)単量体」と記す場合がある)5〜40質量%、及び(d)エチレン性不飽和カルボン酸単量体(以下、「(d)単量体」と記す場合がある)0.1〜10質量%を含有する第二の単量体成分100質量部を乳化重合して得られる共重合体(ii)と、を含有し、かつ、数平均粒子径を測定したときの値が50〜120nmであるものである。
【0023】
このような共重合体ラテックス組成物を含有すると、例えば、流動性(粘度)、保水性等の塗工操業性(特に高速塗工操業性)に優れ、かつ、例えば、表面強度、白紙光沢、印刷光沢等の印刷適性に優れ、特に、印刷速度範囲が広範囲にわたる場合であっても上記印刷適性が優れる塗工層を形成可能な紙塗工用組成物を得ることができる。
【0024】
[1−1]重合体(i):
本実施形態の共重合体ラテックス組成物に含有される重合体(i)は、(a)アミド基含有エチレン系不飽和単量体50〜100質量%を含有する第一の単量体成分を重合して得られるものである。このようにして得られる重合体(i)によって、ラテックスの保水性が向上するため、紙塗工用組成物の保水性が向上するという効果がある。
【0025】
(a)アミド基含有エチレン系不飽和単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミンプロピル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。これらの中でも、反応性が良好であるため、アクリルアミド、メタクリルアミドが好ましい。なお、これらの(a)単量体は、1種単独で、または2種以上を併用することもできる。
【0026】
(a)単量体の含有量は、第一の単量体成分全体に対して、50〜100質量%であり、80〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることが更に好ましい。(a)単量体の含有量が、50〜100質量%の範囲であると、保水性が向上する。50質量%未満であると、保水性が低下してしまう。
【0027】
第一の単量体成分は、(a)単量体以外に、(e)エチレン性不飽和カルボン酸単量体(以下、「(e)単量体」と記す場合がある)1〜50質量%、及び(f)前記(a)単量体及び前記(e)単量体と共重合可能な他の単量体1〜50質量%(但し、(a)+(e)+(f)=100質量%)を更に含有することができる。このように(a)単量体以外に、(e)単量体及び(f)単量体をそれぞれ所定量で含有することによって、反応性が良好となり、分子量制御性が向上するという効果がある。
【0028】
(e)エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等を挙げることができる。なお、これらの(e)単量体は、1種単独で、または2種以上を併用することもできる。
【0029】
(e)単量体の含有量は、第一の単量体成分全体に対して、1〜50質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることが更に好ましく、1〜10質量%であることが特に好ましい。(e)単量体の含有量が、1質量%未満であると、反応性が向上しないおそれがある。一方、50質量%超であると、共重合体ラテックス組成物の乳化重合時の重合安定性が低下し、粒子径制御が困難になるおそれがある。また共重合体ラテックス組成物中に凝集物が多くなるおそれがある。
【0030】
(f)上記(a)単量体及び上記(e)単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、芳香族ビニル単量体、アルキル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、水酸基を有する単量体、シアン化ビニル系単量体等を挙げることができる。これらの中でも、アルキル(メタ)アクリレート、シアン化ビニル系単量体が好ましい。
【0031】
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、メチルメタクリレートが好ましい。水酸基を有する単量体としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート等が挙げられる。シアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を併用することもできる。
【0032】
(f)単量体の含有量は、第一の単量体成分全体に対して、1〜50質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることが更に好ましく、1〜20質量%であることが特に好ましい。(f)単量体の含有量が、1質量%未満であると、反応性が向上しないおそれがある。一方、50質量%超であると、重合安定性が低下するおそれがある。
【0033】
第一の単量体成分の重合方法は、特に制限はなく、例えば、水溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、固相重合等を挙げることができる。これらの中でも、分子量制御が容易であるという点において、水溶液重合が好ましい。水溶液重合は、具体的には、単量体、水、開始剤、及び分子量調節剤を混合して混合液を加熱することにより行うことができる。また、重合条件は、特に制限はなく従来公知の条件で行うことができる。例えば、重合温度は30〜120℃が好ましく、50〜100℃が更に好ましく、60〜90℃が特に好ましい。重合時間は1〜10時間が好ましく、2〜6時間が更に好ましい。
【0034】
分子量調節剤としては、水溶液重合、乳化重合等で通常使用することができるものを用いることができる。例えば、クロロホルム、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素類、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸などのメルカプタン類、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン類、ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー、1,1−ジフェニルエチレンなどを挙げることができる。なお、これらの中では、水溶性のメルカプタン系分子量調節剤であるメルカプトプロピオン酸を使用することが好ましい。
【0035】
重合体(i)の重量平均分子量は、3,000〜20,000であることが好ましく、4,000〜19,000であることが更に好ましく、5,000〜13,000であることが特に好ましい。重合体(i)の重量平均分子量が、3,000未満であると、保水性の効果が得られないおそれがある。一方、20,000超であると、流動性及び保水性が低下するおそれがある。なお、本明細書において「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPCと略す場合がある)により測定したポリエチレングリコール換算の重量平均分子量を意味するものとする。
【0036】
[1−2]共重合体(ii):
本実施形態の共重合体ラテックス組成物に含有される共重合体(ii)は、重合体(i)0.1〜5質量部の存在下で、(b)脂肪族共役ジエン系単量体(以下、「(b)単量体」と記す場合がある)30〜70質量%、(c)シアン化ビニル単量体(以下、「(c)単量体」と記す場合がある)5〜40質量%、及び(d)エチレン性不飽和カルボン酸単量体(以下、「(d)単量体」と記す場合がある)0.1〜10質量%を含有する第二の単量体成分100質量部を乳化重合して得られるものである。
【0037】
このようにして得られる共重合体(ii)によって、ポリマーとしての強度が向上し、紙塗工用組成物に含有されるバインダーとしての強度、接着力が向上する。そのため、本実施形態の共重合体ラテックス組成物は、例えば、流動性(粘度)、保水性等の塗工操業性(特に高速塗工操業性)に優れ、かつ、例えば、表面強度、白紙光沢、印刷光沢等の印刷適性に優れ、特に、印刷速度範囲が広範囲にわたる場合であっても上記印刷適性が優れる塗工層を形成可能な紙塗工用組成物の原料として好適に用いることができる。
【0038】
(b)脂肪族共役ジエン系単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等を挙げることができる。これらの中でも、1,3−ブタジエンが好ましい。なお、これらは1種単独で、または2種以上を併用することもできる。
【0039】
(b)単量体の含有量は、第二の単量体成分全体に対して、30〜70質量%であり、33〜60質量%であることが好ましく、35〜55質量%であることが更に好ましい。(b)単量体の含有量が、30質量%未満であると、共重合体(ii)が硬くなりすぎるため、紙塗工用組成物のバインダーとして使用した際に接着強度が十分に得られない。一方、(b)単量体の含有量が、70質量%超であると、紙塗工用組成物によって形成される塗工層が、柔らかくなりすぎるため、ベトツキ防止性能が十分に得られない。
【0040】
(c)シアン化ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等を挙げることができる。これらの中でも、アクリロニトリルが好ましい。
【0041】
(c)単量体の含有量は、第二の単量体成分全体に対して、5〜40質量%であり、10〜35質量%であることが好ましく、15〜33質量%であることが更に好ましい。(c)単量体の含有量が、5質量%未満であると、耐インク溶剤性が低下するため、印刷光沢が低下する。一方、(c)単量体の含有量が、40質量%超であると、共重合体(ii)が硬くなりすぎるため、紙塗工用組成物のバインダーとして使用した際に接着強度が十分に得られない。
【0042】
(d)エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、既に上述した(e)単量体と同様のものを用いることができる。(d)単量体の含有量は、第二の単量体成分全体に対して、0.1〜10質量%であり、0.7〜7質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることが更に好ましい。(d)単量体の含有量が、0.1質量%未満であると、共重合体ラテックス組成物の乳化重合時の重合安定性及び分散安定性が低下する。一方、(d)単量体の含有量が、10質量%超であると、共重合体ラテックス組成物の粘度が高くなりすぎるため、塗工作業性が低下する。
【0043】
第二の単量体成分は、(b)〜(d)単量体以外に、(g)上記(b)〜(d)単量体と共重合可能な他の単量体(以下、「(g)単量体」と記す場合がある)5〜55質量%(但し、(b)+(c)+(d)+(g)=100質量%)を更に含有することが好ましい。(g)単量体としては、既に上述した(c)単量体と同様のものを用いることができる。(g)単量体の含有量は、第二の単量体成分全体に対して、5〜55質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることが更に好ましく、5〜30質量%であることが特に好ましい。(g)単量体の含有量が、5質量%未満であると、反応性が向上しないおそれがある。一方、55質量%超であると、共重合体(ii)が硬くなりすぎるため、紙塗工用組成物のバインダーとして使用した際に接着強度が十分に得られないおそれがある。
【0044】
乳化重合は、例えば、水性媒体中で乳化剤、重合開始剤、分子量調節剤等を用いる従来公知の方法で行うことができる。乳化重合の際の重合温度は、20〜60℃が好ましく、25〜60℃が更に好ましく、30〜60℃が特に好ましい。重合時間は、8〜30時間が好ましく、10〜25時間が更に好ましい。
【0045】
乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを挙げることができ、これらを1種単独で、または2種以上を併用することもできる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテルの硫酸エステルなどが挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型などのものを用いることができる。両性界面活性剤は、アニオン部分としてカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、燐酸エステル塩を挙げることができ、カチオン部分としてアミン塩、第4級アンモニウム塩などが挙げられる。両性界面活性剤としては、具体的に、はラウリルベタイン、ステアリルベタインなどのベタイン類、ラウリル−β−アラニン、ステアリル−β−アラニン、ラウリルジ(アミノエチル)グリシン、オクチルジ(アミノエチル)グリシンなどのアミノ酸タイプなどのものを用いることができる。
【0046】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性重合開始剤、過酸化ベンゾイル、ラウリルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどの油溶性重合開始剤、還元剤との組み合わせによるレドックス系重合開始剤などを挙げることができる。これらは1種単独で、または2種以上を併用することもできる。
【0047】
更に、分子量調節剤、キレート化剤、無機電解質などを使用することもできる。分子量調節剤としては、通常の乳化重合で使用可能なものを使用することができる。例えば、クロロホルム、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素類、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸などのメルカプタン類、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン類、ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー、1,1−ジフェニルエチレンなどを挙げることができる。なお、これらの中でも、難水溶性のメルカプタン系分子量調節剤であるt−ドデシルメルカプタンが好ましい。
【0048】
また、共重合体(ii)の乳化重合に際し、重合体(i)は、第二の単量体成分100質量部に対して、0.1〜5質量部存在していることが必要であり、0.3〜4質量部であることが好ましく、0.5〜3質量部であることが更に好ましい。重合体(i)の量が0.1質量部未満であると、保水性の効果が十分に得られない。一方、5質量部超であると、共重合体ラテックス組成物の乳化重合時の重合安定性が低下し、粒子径の制御が困難になる。また共重合体ラテックス組成物中に凝集物が増加する。
【0049】
共重合体(ii)のガラス転移温度は、−100〜60℃の範囲に少なくとも1点存在することが好ましく、−80〜55℃の範囲に少なくとも1点存在することが更に好ましく、−70〜50℃の範囲に少なくとも1点存在することが特に好ましい。−100℃未満であると、紙塗工用組成物により形成される塗工層が、柔らかくなりすぎるため、ベトツキ防止性能が不十分になるおそれがある。一方、60℃超であると、共重合体(ii)が硬くなりすぎるため、接着強度が不十分になるおそれがある。
【0050】
また、共重合体(ii)のガラス転移温度は、示差熱量曲線において、転移領域の最低温度T1と最高温度T2との差(ΔT)が30℃以上であることが好ましく、35℃以上であることが更に好ましく、40℃以上であることが特に好ましい。ΔTが30℃未満であると、広範な印刷速度範囲において印刷適正を高レベルに維持することが困難になるため、充分な印刷速度範囲が確保できなくなるおそれがある。また、塗工紙の表面強度及び耐衝撃性が低下し、高速印刷における変形速度の大きい衝撃に耐えられないおそれがある。
【0051】
ここで、本明細書において「共重合体(ii)のガラス転移温度」というときは、本実施形態の共重合体ラテックス組成物によってフィルムを作製し、このフィルムについて示差走査熱量計を用いてASTM法に準じ、ガラス転移温度を測定したときの値をいうものとする。示差走査熱量計としては、具体的には、セイコーインスツルメンツ社製の「DSC6100(商品名)」を用いることができる。なお、本実施形態の共重合体ラテックス組成物中の(共)重合体としては、主に、重合体(i)及び共重合体(ii)が含有されており、重合体(i)及び共重合体(ii)の含有量を比べると、共重合体(ii)の方が、重合体(i)に比べて非常に多い。そのため、共重合体ラテックス組成物のガラス転移温度を測定した場合、その測定値は共重合体(ii)のガラス転移温度と実質的に同じであると考えられる。
【0052】
また、本明細書において「示差熱量曲線の転移領域」とは、本実施形態の共重合体ラテックス組成物をサンプルとして示差走査熱量計でガラス転移温度の測定を行ったときに得られる示差熱量曲線におけるガラス転移領域であって、特に、一定の温度領域にわたって幅広く広がった状態となるときの温度領域をいう。この転移領域は、示差熱量曲線の微分曲線([温度]−[電力/時間]曲線)の上記温度領域において、転移領域のピーク部分(先端部分)の形状が、三角形の頂点部分のような形状ではなく、台形の上底のような幅広いピーク形状となったものである。このように、転移領域が幅広く広がった状態になる場合には、ASTM法に準じたガラス転移温度が複数個存在するものとして観測できるものではなく、示差熱量曲線におけるガラス転移を示す領域全体が、ガラス転移領域(転移領域)としてとらえられる。転移領域の範囲は、上記示差熱量曲線([温度]−[電力]曲線)において、[電力]の値が変化し始める温度から、[電力]の値の一連の変化が終わる温度までの範囲である。そして、このような示差熱量曲線が得られる共重合体ラテックス組成物は、ガラス転移温度の異なる複数のポリマー(重合体(i)及び共重合体(ii))を含有するため、それぞれのガラス転移温度が連続的に並ぶことによると考えられる。
【0053】
なお、重合体(i)の存在下で、(b)単量体、(c)単量体、及び(d)単量体を含有する第二の単量体成分を乳化重合すると、乳化重合液中には、乳化重合によって得られた共重合体(ii)と、乳化重合に関与せずに残存している重合体(i)とが含まれることになり、本実施形態の共重合体ラテックス組成物に含まれる重合体(i)は、上記乳化重合液に残存している重合体(i)のことを意味する。
【0054】
本実施形態の共重合体ラテックス組成物は、重合体(i)及び共重合体(ii)以外に、その他の成分を含有することもできる。その他の成分としては、例えば、減粘剤、分散剤、ベトツキ防止剤、着肉改良剤等の印刷適性剤などを挙げることができる。
【0055】
本実施形態の共重合体ラテックス組成物は、数平均粒子径を測定したときの値が50〜120nmであることが必要であり、60〜100nmであることが好ましく、65〜95nmであることが更に好ましい。上記数平均粒子径を測定したときの値が、50nm未満であると、共重合体ラテックス組成物の粘度が高くなりすぎるため、塗工作業性が低下する。一方、120nm超であると、保水性及び接着強度が低下する。ここで、本明細書において「数平均粒子径を測定したときの値」とは、光散乱分析法により粒子径を測定する装置(粒子径測定装置)を用いて測定した、本実施形態の共重合体ラテックス組成物に含まれる粒子の数平均粒子径を意味する。本実施形態の共重合体ラテックス組成物に含まれる粒子は、主に共重合体(ii)である。粒子径測定装置としては、具体的には、大塚電子社製の粒子径測定装置「FPRA−1000(商品名)」を用いることができる。
【0056】
[2]紙塗工用組成物:
本実施形態の共重合体ラテックス組成物は、塗工紙の塗工層を形成するための紙塗工用組成物に含有されるバインダーとして好適に用いることができる。このように本実施形態の共重合体ラテックス組成物を含有する紙塗工用組成物(以下、「本紙塗工用組成物」と記す)は、本実施形態の共重合体ラテックス組成物を含有するものであるため、流動性(粘度)、保水性等の塗工操業性(特に高速塗工操業性)に優れるという利点があり、本紙塗工用組成物によって形成された塗工層を備える塗工紙は、表面強度、白紙光沢、印刷光沢などの印刷適性に優れ、更に広い印刷速度範囲にわたって上記の優れた印刷適性を有するという利点がある。
【0057】
なお、本実施形態の共重合体ラテックス組成物は、紙塗工用組成物のバインダーとして一般的に用いられるもの、例えば、澱粉、カゼイン、大豆蛋白等とともに使用してもよく、これらの中では、澱粉が好ましい。澱粉としては、例えば、燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉等の加工澱粉を使用することができる。これらは1種単独で、または2種以上を併用することもできる。
【0058】
また、本紙塗工用組成物は、顔料、耐水性改良剤、顔料分散剤、粘度調節剤、着色顔料、蛍光染料、pH調節剤等の一般に使用されている種々の添加剤を任意に配合することができる。顔料としては、例えば、カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト等を使用することができる。これらの中でも、重質炭酸カルシウムが好ましく、また、カオリンと重質炭酸カルシウムとを併用することも好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を併用することもできる。
【0059】
本紙塗工用組成物に顔料が含有される場合、本実施形態の共重合体ラテックス組成物の固形分の含有量は、顔料100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましく、3〜25質量部であることが更に好ましく、5〜20質量部であることが特に好ましい。1質量部未満であると、バインダーとしての接着機能を十分に発現し難くなるおそれがある。30質量部超であると、塗工紙の白色度を損ねたり、過度な粘着性を生じるため塗工紙製造プロセスや塗工紙印刷プロセスで操業トラブルの原因となるおそれがある。
【0060】
なお、本紙塗工用組成物に含有される顔料と共重合体ラテックス組成物との合計量は、本紙塗工用組成物の固形分全体に対して90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
【0061】
本紙塗工用組成物を塗工原紙に塗布して製造される塗工紙(以下、「本塗工紙」ということがある。)は、特に、表面強度、白紙光沢、印刷光沢などの印刷適性に優れ、更に広い印刷速度範囲にわたってこの優れた印刷適性を有するという利点がある。以下、本塗工紙について説明する。
【0062】
本塗工紙を構成する塗工原紙は、従来公知の種々のものを用いることができる。塗工原紙は、その原料パルプの種類は特に限定されず、例えば、機械パルプ、化学パルプ、古紙パルプ(DIP)等が挙げられる。塗工原紙は、内添剤として炭酸カルシウム、クレー、タルク等の顔料、アルキルケテンダイマー、ロジン酸石鹸、硫酸バンド等のサイズ剤、カチオン澱粉、ポリアクリルアミド等の紙力増強剤、嵩高剤等を用いて製造したものであってもよい。また、塗工原紙の表面には、本紙塗工用組成物を塗布する前に、サイズプレス、ゲートロールコーター、メータードサイズプレス等を使用して、アクリルアミド、アクリル−スチレンポリマー等の表面サイズ剤を塗布することもできる。
【0063】
本塗工紙を構成する塗工層は、本紙塗工用組成物を1〜50g/m塗布して形成することが好ましい。塗布量が1g/m未満であると、白紙光沢や印刷光沢が低下するおそれがある。一方、50g/m超であると、コストに対して品質の向上が十分に得られないおそれがある。
【0064】
本塗工紙は、本紙塗工用組成物を塗工液として塗工原紙に塗布することにより製造することができる。塗工原紙に紙塗工用組成物を塗布する方法としては、塗工紙の製造方法として一般に用いられている方法を採用することができる。具体的には、ブレードコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ゲートロールコーター、チャンプレックスコーター、サイズプレスコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等を使用して塗布する方法が挙げられる。
【0065】
なお、本塗工紙を製造するに際し、塗工原紙に本紙塗工用組成物を塗布した後、未乾燥塗工紙を作製し、この未乾燥塗工紙を乾燥させることが好ましい。更に、未乾燥塗工紙を乾燥させた後、カレンダー処理を行ってもよい。カレンダー処理を行うことで、白紙光沢及び印刷光沢が良好な塗工紙を得ることができる。
【0066】
本塗工紙は、枚葉オフセット印刷用及び輪転オフセット印刷用として特に好適に用いることができる。また、平版印刷用、グラビア印刷等の凹版印刷用、及び凸版印刷用としても好適に使用することができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0068】
(合成例1)
攪拌装置及び温度調節機を備えた耐圧反応容器に、水150部、過硫酸カリウム8.0部を仕込み、窒素で重合系内を置換した。その後、重合系内の温度を75℃に昇温し、(a)アミド基含有エチレン系不飽和単量体としてアクリルアミド100部、メルカプト酢酸2.0部、及び亜硫酸水素ナトリウム2.0部を連続的に重合系内に添加し、重合を行った。なお、アクリルアミド100部、メルカプト酢酸2.0部は、2.5時間かけて連続的に添加し、亜硫酸水素ナトリウム2.0部は、3時間かけて連続的に添加した。重合後、重合系内の温度を75℃に保持し、1時間攪拌した。最終的な重合転化率は、99%であった。得られた重合体水溶液を、水酸化ナトリウムを用いてpH7.0に調整し、固形分濃度25%の重合体(i)を得た。この重合体(i)について以下の条件で重量平均分子量を測定した結果、本合成例の重合体(i)の重量平均分子量は5,000であった。
【0069】
(重量平均分子量)
重合体(i)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定装置「LC Module 1 plus」(Waters社製)を用いて下記GPC測定条件により測定し、予め作成した、分子量既知のポリエチレングリコール標準物質の検量線を用いて算出した。
【0070】
(GPC測定条件)
カラムは水系GPCカラム「α−2500」(東ソー社製)を用い、検出器は示差屈折率計を用いた。水系GPCカラムの温度は40℃とし、溶離液として0.1M NaCl水溶液/アセトニトリル(80/20(V/V))を用いた。なお、試料濃度は0.2質量%とし、注入量は100μlとした。
【0071】
(合成例2〜9)
表1に示す配合処方とした以外は合成例1と同様にして合成例2〜9の重合体(i)を調製した。なお、合成例2〜9において最終的な重合転化率は、全て、98%以上であった。得られた合成例2〜9の重合体(i)について、重量平均分子量を測定した。その測定結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
(合成例10)
乳化重合は、次のように行った。まず、1段目単量体成分として、水100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0部、過硫酸カリウム2.0部、亜硫酸水素ナトリウム0.22部、硫酸第一鉄7水塩0.0066部、(b)脂肪族共役ジエン系単量体としてブタジエン5.4部、(g)前記(b)〜前記(d)単量体と共重合可能な他の単量体としてスチレン2.84部、(c)シアン化ビニル単量体としてアクリロニトリル2.5部、(d)エチレン性不飽和カルボン酸単量体としてイタコン酸0.1875部、及びt−ドデシルメルカプタン0.0385部を仕込み、窒素で重合系内を置換した。その後、重合系内の温度を40℃に昇温し、この温度で1.5時間重合を行った。
【0074】
次いで、2段目単量体成分として、ブタジエン28.0部、スチレン7.25部、アクリロニトリル10.5部、(d)エチレン性不飽和カルボン酸単量体としてアクリル酸0.375部、α−メチルスチレンダイマー0.6部、t−ドデシルメルカプタン0.1562部、及び亜硫酸水素ナトリウム0.0975部を7時間かけて連続的に重合系内に添加し、重合を行った。
【0075】
更に、3段目単量体成分として、ブタジエン3.7部、スチレン13.5875部、アクリロニトリル6.0部、イタコン酸0.1875部、t−ドデシルメルカプタン0.0803部、及び亜硫酸水素ナトリウム0.075部を2時間かけて連続的に重合系内に添加した。その後、重合系内の温度を55℃に昇温した。
【0076】
その後、4段目単量体成分として、ブタジエン4.15部、アクリロニトリル8.0部、(g)前記(b)〜前記(d)単量体と共重合可能な他の単量体としてメチルメタクリレート5.0部、アクリル酸0.375部、イタコン酸0.625部、(d)エチレン性不飽和カルボン酸単量体としてメタクリル酸1.125部、α−メチルスチレンダイマー0.1部、及びt−ドデシルメルカプタン0.22部を2時間かけて、亜硫酸水素ナトリウム0.4部は3.5時間かけて連続的に重合系内に添加した。なお、1〜4段目単量体成分において、(b)脂肪族共役ジエン系単量体、(c)シアン化ビニル単量体、(d)エチレン性不飽和カルボン酸単量体、及び(g)前記(b)〜前記(d)単量体と共重合可能な他の単量体の合計量、即ち、第二の単量体成分の合計は100部である。
【0077】
(合成例11〜13)
合成例11〜13は、表2、3に示す配合量とした以外は、合成例10と同様にして乳化重合を行った。なお、以下に示す実施例及び比較例においては、上記合成例1〜9のいずれか1種の重合体(i)の存在下で、合成例10〜13のいずれかの乳化重合法によって乳化重合を行い、共重合体ラテックス組成物を得た。
【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
(実施例1)
[共重合体ラテックス組成物の合成]:
攪拌装置及び温度調節機を備えた耐圧反応容器に、合成例1で得られた重合体(i)を固形分換算で1.5部を投入し、合成例10の乳化重合法に従って乳化重合を行い、共重合体ラテックス組成物を得た。最終的な重合転化率は98%であった。得られた共重合体ラテックス組成物を、水酸化ナトリウムによってpH7.5に調整した後、水蒸気を吹き込んで未反応単量体を除去し、更に加熱水蒸気蒸留することによって固形分濃度50%の共重合体ラテックス組成物とした。この共重合体ラテックス組成物を試料として以下の評価を行った。
【0081】
(数平均粒子径)
本実施例で得られた固形分濃度50%の共重合体ラテックス組成物は、粒子径測定装置(FPAR−1000:大塚電子社製)を用いて、含有する粒子の数平均粒子径を測定した。測定値は、表4、5中に、数平均粒子径の値として示した。
【0082】
(トルエン不溶分)
固形分濃度50%の共重合体ラテックス組成物をpH8.0に調整した後、イソプロパノールを添加し、凝固させて凝固物を得た。この凝固物を洗浄、乾燥した後、約0.03gの試料を100mlのトルエンに20時間浸漬した。その後、120メッシュの金網でろ過し、残渣の量(質量)を測定した。上記試料の全固形分に対する残渣の量を算出してトルエン不溶分(質量%)とした。
【0083】
(ガラス転移温度(Tg))
固形分濃度50%の共重合体ラテックス組成物をフィルム状に塗布し、100℃で20時間真空乾燥を行い、フィルムを作製した。このフィルムを示差走査熱量計(DSC6100:セイコーインスツルメンツ社製)を用い、ASTM法に準じてガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0084】
(示差熱量曲線)
(ガラス転移温度(Tg))で作製したフィルムについて、示差走査熱量計(DSC6100:セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、ASTM法に準じて示差熱量曲線を測定した。この示差熱量曲線について転移領域の最低温度T1と最高温度T2との差(ΔT)(℃)を算出した。なお、表4、5中、「(ΔT)(℃)」と示す。
【0085】
本実施例の共重合体ラテックス組成物は、数平均粒子径の値が80nmであり、トルエン不溶分が91.4%であった。また、共重合体(ii)のガラス転移温度は−19℃であり、示差熱量曲線における転移領域の最低/最高温度の差(ΔT)は66℃であった。
【0086】
[紙塗工用組成物の調製]:
カオリンクレー50.0部、炭酸カルシウム50.0部、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.025部、水酸化ナトリウム0.05部、澱粉3.0部、及び固形分濃度50%の共重合体ラテックス組成物を固形分として10.0部を混合し、この混合物に水を適当量添加して全固形分が65%となるように調整した。その後、ミキサー(島崎社製)を用いて均一に混合し、紙塗工用組成物を調製した。この紙塗工用組成物について以下の評価を行った。
【0087】
(カラー粘度)
カラー粘度は、調製した直後の紙塗工用組成物を、BM型粘度計(型番「DVM−BII」、TOKIMEC,INC.社製)を用いて測定した。ローターは、#4を使用した。なお、カラー粘度は、その値が低いと、流動性が良く、塗工操業性に優れていることを示す。
【0088】
(ハイシェア粘度)
ハイシェア粘度は、調製した直後の紙塗工用組成物を、ハーキュレスハイシェア粘度計(型番「HR−801C」、熊谷理機工業社製)を用いて測定した。測定条件は、ボブ種別F、回転速度6600rpm、スイープ時間10秒とした。なお、ハイシェア粘度は、その値が低いと、高速塗工時の流動性が良く、塗工操業性に優れていることを示す。
【0089】
(保水性)
保水性は、調製した紙塗工用組成物を、AA−GWR保水性測定装置「M−250」(Kaltec Scientific,Inc.社製)を用いて測定した。測定条件は、0.45μmのMEMBRAN FILTERを使用し、測定圧力1.75kg/cm、測定時間360秒で行った。なお、この測定値が低い場合には、保水性が高く、塗工操業性に優れていることを示す。
【0090】
本実施例の共重合体ラテックス組成物を含む紙塗工用組成物は、カラー粘度が1250mPa・s、ハイシェア粘度が34.2mPa・s、保水性が32.0g/mであった。なお、pHが8.5であった。
【0091】
[塗工紙の製造]:
塗布量が片面12.0±0.5g/mとなるように上記紙塗工用組成物を塗工原紙の両面に塗布した。塗布は電動式ブレードコーター(熊谷理機工業社製)を用いた。塗布後、電気式熱風乾燥機を用いて180℃で5秒間加熱し、乾燥した未処理塗工紙を得た。得られた未処理塗工紙を温度23℃、湿度60%の恒温恒湿槽に1昼夜放置し、その後、線圧140kg/cm、ロール温度50℃の条件でスーパーカレンダー処理を2回行い、塗工紙を製造した。この塗工紙について以下の評価を行った。
【0092】
(ドライピック強度)
RI印刷機(明製作所社製)を用い、塗工紙に所定の文字などを印刷した。このときのピッキングの程度を目視で判定し、5段階で評価した。評価基準は、ピッキング現象の少ないものほど高得点(5点)とした。具体的には、ピッキングがない場合を5点、少しピッキングがある場合を4点、部分的にピッキングがある場合を3点、全体的にピッキングがある場合を2点、全体的に激しくピッキングがある場合を1点とした。なお、評価値は6回測定した後の平均値を示した。
【0093】
(ウェットピック強度)
塗工紙の表面を吸水ロールで湿らせた後、RI印刷機(明製作所社製)を用いて上記塗工紙の表面に所定の文字などを印刷した。このときのピッキングの程度を目視で判定し、5段階で評価した。評価基準は、ピッキング現象の少ないものほど高得点(5点)とした。具体的には、ピッキングがない場合を5点、少しピッキングがある場合を4点、部分的にピッキングがある場合を3点、全体的にピッキングがある場合を2点、全体的に激しくピッキングがある場合を1点とした。なお、評価値は6回測定した後の平均値を示した。
【0094】
(白紙光沢)
村上式光沢計(村上色彩技術研究所社製)を用い、75°の角度における塗工紙の白紙光沢を測定した。なお、測定値が大きい程、白紙光沢が高いことを示す。
【0095】
(印刷光沢)
RI印刷機(明製作所社製)を用いて、塗工紙に市販のオフセット印刷用墨インキ(商品名「SMX タック グレード 15」、東洋インキ製作所社製)を1度ベタ塗りした。その後、村上式光沢計(村上色彩技術研究所社製)を用い、ベタ塗りした面の60°の角度における印刷光沢を測定した。測定値が大きい程、印刷光沢が高いことを示す。
【0096】
本実施例の共重合体ラテックス組成物を含む紙塗工用組成物によって形成した塗工層を備える塗工紙は、ドライピック強度が4.2であり、ウェットピック強度が3.9であり、白紙光沢が67.0であり、印刷光沢が67.7であった。
【0097】
(実施例2〜5,7〜11、比較例1,4〜6)
表4、5に示す配合処方とすること以外は、前述の実施例1と同様にして、共重合体ラテックス組成物を得、得られた共重合体ラテックス組成物について数平均粒子径の値、トルエン不溶分、ガラス転移温度、示差熱量曲線における転移領域の最低/最高温度の差(ΔT)を測定した。また、得られた共重合体ラテックス組成物を含む紙塗工用組成物を調製し、カラー粘度、ハイシェア粘度、保水性の各評価を行った。更に、上記紙塗工用組成物によって塗布層を形成した塗工紙を製造し、ドライピック強度、ウェットピック強度、白紙光沢、印刷光沢の各評価を行った。実施例2〜5,7〜11の評価結果は表4に示し、比較例1,4〜6の評価結果は表5に示す。
【0098】
【表4】

【0099】
【表5】

【0100】
(実施例6、比較例2)
攪拌装置及び温度調節機を備えた耐圧反応容器に、合成例2の重合体(i)(但し、比較例2では使用しない)、及び表2に示す「1段目単量体成分」を仕込み、窒素で重合系内を置換した。その後、重合系内の温度を45℃に昇温し、この温度で2.5時間乳化重合を行った。次いで、表2に示す「2段目単量体成分」を2時間かけて連続的に重合系内に添加し、重合を進めた。更に、表3に示す「3段目単量体成分」を4時間かけて連続的に重合系内に添加した。その後、重合系内の温度を50℃に昇温し、表3に示す「4段目単量体成分」のうち亜硫酸水素ナトリウムを除く各成分を2.5時間かけて連続的に重合系内に添加し、亜硫酸水素ナトリウムは5時間かけて連続的に重合系内に添加して反応させ、共重合体ラテックス組成物を得た。なお、最終的な重合転化率は98%であった。このようにして得られた共重合体ラテックス組成物を、水酸化ナトリウムによってpH7.5に調整した後、水蒸気を吹き込んで未反応の単量体を除去し、更に加熱水蒸気蒸留によって固形分濃度50%の共重合体ラテックス組成物を得た。その後、前述の実施例1と同様にして、紙塗工用組成物を調製し、塗工紙を製造した。そして、得られた固形分濃度50%の共重合体ラテックス組成物、調製した紙塗工用組成物、及び製造した塗工紙について各種測定及び評価を行った。実施例6の評価結果は表4に示し、比較例2の評価結果は表5に示す。
【0101】
(比較例3)
攪拌装置及び温度調節機を備えた耐圧反応容器に、表2に示す「1段目単量体成分」を仕込み、窒素で重合系内を置換した。その後、重合系内の温度を45℃に昇温し、この温度で4時間重合を行った。次いで、重合系内の温度を55℃に昇温し、表2に示す「2段目単量体成分」のうち亜硫酸水素ナトリウムを除く各成分を5時間かけて連続的に重合系内に添加し、亜硫酸水素ナトリウムは9時間かけて連続的に重合系内に添加して反応させ、共重合体ラテックス組成物を得た。なお、最終的な重合転化率は98%であった。このようにして得られた共重合体ラテックス組成物を、水酸化ナトリウムによってpH7.5に調整した後、水蒸気を吹き込んで未反応の単量体を除去し、更に加熱水蒸気蒸留によって固形分濃度50%の共重合体ラテックス組成物を得た。その後、前述の実施例1と同様にして、紙塗工用組成物を調製し、塗工紙を製造した。そして、得られた固形分濃度50%の共重合体ラテックス組成物、調製した紙塗工用組成物、及び製造した塗工紙について各種測定及び評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0102】
(実施例12)
攪拌装置及び温度調節機を備えた耐圧反応容器に、合成例2の重合体(i)、及び表2に示す「1段目単量体成分」を仕込み、窒素で重合系内を置換した。その後、重合系内の温度を45℃に昇温し、この温度で2.5時間乳化重合を行った。次いで、表2に示す「2段目単量体成分」を2時間かけて連続的に重合系内に添加し、重合を行った。更に、表3に示す「3段目単量体成分」を4時間かけて連続的に重合系内に添加した。その後、重合系内の温度を50℃に昇温し、表3に示す「4段目単量体成分」のうち亜硫酸水素ナトリウムを除く各成分を2.5時間かけて連続的に重合系内に添加し、亜硫酸水素ナトリウムは5時間かけて連続的に重合系内に添加して反応させ、共重合体ラテックス組成物を得た。なお、最終的な重合転化率は98%であった。このようにして得られた共重合体ラテックス組成物を、水酸化ナトリウムによってpH7.5に調整した後、水蒸気を吹き込んで未反応の単量体を除去し、更に加熱水蒸気蒸留によって固形分濃度50%の共重合体ラテックス組成物を得た。その後、前述の実施例1と同様にして、紙塗工用組成物を調製し、塗工紙を製造した。そして、得られた固形分濃度50%の共重合体ラテックス組成物、調製した紙塗工用組成物、及び製造した塗工紙について各種測定及び評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0103】
表4、5に示すように、実施例1〜12の共重合体ラテックス組成物を用いれば、比較例1〜6の共重合体ラテックス組成物を用いた場合に比して、流動性(粘度)、保水性等の塗工操業性(特に高速塗工操業性)に優れた紙塗工用組成物を製造することができ、かつ、表面強度、白紙光沢、印刷光沢などの印刷適性に優れ、更に、印刷速度範囲が広範囲にわたる場合であっても上記印刷適性が優れる塗工層を備える塗工紙を形成可能であることが明らかである。
【0104】
実施例2〜5の共重合体ラテックス組成物において、実施例4及び実施例5の共重合体ラテックス組成物は重合体(i)の配合量が多いため、保水性が更に良好であることが確認できた。
【0105】
実施例1、4、7、及び8の共重合体ラテックス組成物において、実施例1,4の共重合体ラテックス組成物は重合体(i)の重量平均分子量が5,000〜13,000の範囲(5,000及び10,500)であるため、保水性が更に良好であることが確認できた。
【0106】
実施例4,9,及び10の共重合体ラテックス組成物において、実施例4の共重合体ラテックス組成物は、(a)アミド基含有エチレン系不飽和単量体としてアクリルアミドを100質量%含有させて得られたものであるため、カラー粘度、ハイシェア粘度低く、保水性が更に良好であることが確認できた。
【0107】
実施例1〜12のうち、実施例1〜10の共重合体ラテックス組成物は、重合体(i)の重量平均分子量が3,000〜20,000の範囲であるため、保水性が更に良好であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の共重合体ラテックス組成物は、例えば、流動性(粘度)、保水性等の塗工操業性(特に高速塗工操業性)に優れ、かつ、例えば、表面強度、白紙光沢、印刷光沢等の印刷適性に優れ、特に、印刷速度範囲が広範囲にわたる場合であっても上記印刷適性が優れる塗工層を形成可能な紙塗工用組成物の原料として好適に使用することができる。
【0109】
本発明の共重合体ラテックス組成物の製造方法は、例えば、流動性(粘度)、保水性等の塗工操業性(特に高速塗工操業性)に優れ、かつ、例えば、表面強度、白紙光沢、印刷光沢等の印刷適性に優れ、特に、印刷速度範囲が広範囲にわたる場合であっても上記印刷適性が優れる塗工層を形成可能な紙塗工用組成物の原料として好適である共重合体ラテックス組成物を良好に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アミド基含有エチレン系不飽和単量体50〜100質量%
を含有する第一の単量体成分を重合して得られる重合体(i)と、
前記重合体(i)0.1〜5質量部の存在下で、
(b)脂肪族共役ジエン系単量体30〜70質量%、
(c)シアン化ビニル単量体5〜40質量%、及び
(d)エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.1〜10質量%
を含有する第二の単量体成分100質量部を乳化重合して得られる共重合体(ii)と、を含み、
かつ、数平均粒子径を測定したときの値が50〜120nmである共重合体ラテックス組成物。
【請求項2】
前記第一の単量体成分が、(e)エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜50質量%、及び(f)前記(a)単量体及び前記(e)単量体と共重合可能な他の単量体1〜50質量%(但し、(a)+(e)+(f)=100質量%)を更に含有する請求項1に記載の共重合体ラテックス組成物。
【請求項3】
前記第二の単量体成分が、(g)前記(b)単量体、前記(c)単量体、及び前記(d)単量体と共重合可能な他の単量体5〜55質量%(但し、(b)+(c)+(d)+(g)=100質量%)を更に含有する請求項1または2に記載の共重合体ラテックス組成物。
【請求項4】
前記重合体(i)の重量平均分子量が、3,000〜20,000である請求項1〜3のいずれか一項に記載の共重合体ラテックス組成物。
【請求項5】
前記共重合体(ii)のガラス転移温度が、−100〜60℃の範囲に少なくとも1点存在し、かつ、前記共重合体(ii)は、示差熱量曲線において、転移領域の最低温度T1と最高温度T2との差(ΔT)が30℃以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の共重合体ラテックス組成物。
【請求項6】
(a)アミド基含有エチレン系不飽和単量体50〜100質量%を含有する第一の単量体成分を重合して重合体(i)を得、得られた前記重合体(i)0.1〜5質量部の存在下で、(b)脂肪族共役ジエン系単量体30〜70質量%、(c)シアン化ビニル単量体5〜40質量%、及び(d)エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.1〜10質量%を含有する第二の単量体成分100質量部を乳化重合して、数平均粒子径を測定したときの値が50〜120nmである、前記重合体(i)と共重合体(ii)とを含む共重合体ラテックス組成物を得る共重合体ラテックス組成物の製造方法。
【請求項7】
前記第一の単量体成分が、(e)エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜50質量%、及び(f)前記(a)単量体及び前記(e)単量体と共重合可能な他の単量体1〜50質量%(但し、(a)+(e)+(f)=100質量%)を更に含有する請求項6に記載の共重合体ラテックス組成物の製造方法。
【請求項8】
前記第二の単量体成分が、(g)前記(b)単量体、前記(c)単量体、及び前記(d)単量体と共重合可能な他の単量体5〜55質量%(但し、(b)+(c)+(d)+(g)=100質量%)を更に含有する請求項6または7に記載の共重合体ラテックス組成物の製造方法。
【請求項9】
前記重合体(i)の重量平均分子量が、3,000〜20,000である請求項6〜8のいずれか一項に記載の共重合体ラテックス組成物の製造方法。
【請求項10】
前記共重合体(ii)のガラス転移温度が、−100〜60℃の範囲に少なくとも1点存在し、かつ、前記共重合体(ii)は、示差熱量曲線において、転移領域の最低温度T1と最高温度T2との差(ΔT)が30℃以上である請求項6〜9のいずれか一項に記載の共重合体ラテックス組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−106266(P2008−106266A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253550(P2007−253550)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】